以下、本発明に係る建物ユニットの組み立て施工方法に使用する建物ユニットと、この建物ユニットを被覆する建物ユニット用カバーについて図面に基づき詳細に説明する。図1は、建物ユニット用カバーで被覆する建物ユニットの斜視図、図2は、図1の建物ユニットの要部構成を示す模式図である。本発明の建物ユニットの組み立て施工方法を用いて、複数の建物ユニットを基礎上に載置固定し、さらに積み上げて組み立て固定することでユニット建物を構築することができる。
図1,2において、ユニット建物を構成する建物ユニット1は長辺方向及び短辺方向を有する直方体状に形成されており、ユニット建物は、例えば直方体状の複数の建物ユニットを並置すると共に、上下に重ねて構成される。1つの建物ユニット1は、鋼製の構造材、例えば角鋼の柱材、C鋼の梁材を溶接で直方体状に接合して形成したボックスラーメン構造のものであり、長辺方向の下梁1a,1a、短辺方向の下梁1b,1b、4本の柱1c,1c,1d,1d、長辺方向の上梁1e,1e、短辺方向の上梁1f,1fとから直方体状に形成される。そして、建物ユニット1には、図示していないが、複数の天井根太が上梁1e,1e間に架設され、複数の床根太が下梁1a,1a間に架設されている。
建物ユニット1には、図2の模式図に示すように、長辺方向の上梁1e,1eと、短辺方向の上梁1f,1fとにより上面2が形成され、短辺方向の上梁1fと、短辺方向の下梁1bと、柱1c,1cとにより一方の短辺側の側面3aが形成され、短辺方向の上梁1fと、短辺方向の下梁1bと、柱1d,1dとにより他方の短辺側の側面3bが形成され、長辺方向の上梁1e,1eと、柱1c,1c及び柱1d,1dにより長辺側の側面4a,4bが形成され、長辺方向の下梁1a,1aと、短辺方向の下梁1b,1bとにより下面5が形成される。そして、図1に示すように、4本の柱1c,1c,1d,1dに上面には、この建物ユニット1を吊り上げるための例えばアイボルト6がねじ込まれるねじ孔が形成されている。
また、建物ユニット1内には、図示していないが、床材、天井材、壁材の他に、必要に応じて、設備機器、配線、配管等が組み込まれている。建物ユニット1は本実施の形態では長辺方向の長さLが5メートルを超える、例えば5.4メートル程度の長さであり、短辺方向の長さWが2.5メートル程度であり、高さHが2.8メートル程度の直方体をしている。そして、短辺方向の長さWと高さHで構成される面が短辺側の側面3a,3bであり、長辺方向の長さLと高さHで構成される面が長辺側の側面4a,4bである。なお、長辺方向の長さ、短辺方向の長さ、及び高さは適宜設定できる。
このように構成された建物ユニット1は工場内で製作されたあと、屋外に設置されることがあり、また、建築地までの輸送中に降雨等から保護するために防水性を有する建物ユニット用カバーで被覆される。本発明は、このように構成された建物ユニット用カバーを被せた建物ユニットの組み立て施工方法に関するものであり、本発明で用いられる建物ユニット用カバー(以下、ユニットカバーという)9は、直方体状の建物ユニット1を被覆するカバーであって、前記のように長辺方向及び短辺方向を有している。
建物ユニット1を被覆して保護するユニットカバー9は、図3に示されるように、長辺方向に直角に3つに分割されて構成される。すなわち、ユニットカバー9は建物ユニット1の長辺方向の両端部を被覆する2つの妻カバー体10A,10Bと、建物ユニットの中央部を被覆する胴巻カバー体20とから構成され、妻カバー体10A,10Bは左右反転した同一構成である。妻カバー体10A,10Bは、それぞれ建物ユニット1の短辺側の側面3aを覆う側面11と、この側面11に連続して建物ユニットの上面2の一部を覆う上面12と、長辺側の2つの側面4a,4bの一部を覆う側面13,14とを備えており、下方及び側方の一方が開口する形状を有している。また、妻カバー体10A,10Bは上面及び2つの側面の開放側の端部に連結部15,15が形成されている。この連結部については後述する。
胴巻カバー体20は、建物ユニット1の上面2の長辺方向の中央部を覆う上面部21と、これに連続して建物ユニット1の2つの側面4a,4bの中央部を覆う側面22,23とを備えており、下方及び両方側方が開口する形状を有している。そして、上面21及び2つの側面22,23の両端部に連結部25,25が形成されている。妻カバー体10A,10Bと、胴巻カバー体20とは、建物ユニット1の長辺方向の途中で重ねられるように、長辺方向の長さが設定され、妻カバー体10A,10Bの連結部15,15と胴巻カバー体20の連結部25により連結されるように構成されている。
すなわち、建物ユニット1の長辺方向の長さをLとし、妻カバー体10A,10Bの長辺方向の長さL1とし、胴巻カバー体20の長辺方向の長さをL2とすると、L1+L1+L2はLより大きく設定され、連結部分で重なるように長さが設定されている。そして、連結部を重ねて3つのカバー体を連結すると、L1+L1+L2が、建物ユニット1の長辺方向の長さLと略一致するように設定されている。このように3つのカバー体10A,10B,20は長辺方向で重ねられた状態で連結されるため、被覆したとき漏水等で内部の建物ユニット1に被害を及ぼすことがない。また、妻カバー体10A,10B、及び胴巻カバー体20の高さは、建物ユニット1の高さHより僅かに大きい高さに設定されている。このように、ユニットカバー9は複数に分割構成されており、後述する説明での一部のカバー体は胴巻カバー体20であり、残部のカバー体は妻カバー体10A,10Bである。
ユニットカバー9を構成する妻カバー体10A,10Bには、上面のコーナー部に貫通孔12aが形成されている。この貫通孔12aは建物ユニット1を輸送時や組み立て時に吊り上げるときに、ユニットの四隅の柱1c,1c,1d,1dの上端に固定される吊り上げ用のアイボルト6を露出するための孔である。この孔には雨水の浸入を防止するパッキングや止水構造を備えることが好ましく、貫通孔の代わりにスリットを設けるように構成してもよい。止水構造については後述する。
ここで、3つのカバー体10A,10B,20を連結する連結部15,25について、図4,5を参照して詳細に説明する。一方の妻カバー体10Aの連結部15は胴巻カバー体20の連結部25と連結され、他方の妻カバー体10Bの連結部15は胴巻カバー体20の連結部25と連結されるもので、その構成は同一であるため、一方側の連結部25について詳細に説明する。
連結部15,25は、それぞれのカバー体を構成するシート状物10a,20aの端部の上面に固定された端部ベルト状物16,26と、端部ベルト状物の幅eより大きい幅の間隔fを有してシート状物10a,20aの上面に固定された内側ベルト状物16a,26aと、内側ベルト状物16a,26aの上面から端部ベルト状物16,26の方向に延出されたシート状物17,27と、シート状物17,27の下面に端部ベルト状物16,26と対向するように固定された上側ベルト状物17a,27aとから構成されている。各ベルト状物は素材であるシート状物10a,20aより厚く構成され、シート状物に縫い込んで固定され、あるいは接着等で固定されている。
そして、本実施形態では、内側ベルト状物16a,26aの幅は端部ベルト状物の幅eと同じに設定され、上側ベルト状物17a,27aの幅も同じ幅eに設定されている。さらに、上側ベルト状物17a,27aと内側ベルト状物16a,26aとの間隔も幅eより大きい間隔fに設定されている。このため、幅eの上側ベルト状物17a,27aと端部ベルト状物16,26は、これより大きい幅の間隔f内に嵌合することができる構成となっている。また、シート状物17,27はシート状物10a,20aと同様に布や不織布等で構成され、湾曲させることや折り返すこと、手繰り寄せることが可能となっている。
上側ベルト状物17a,27aの下端は他のベルト状物より僅かに延長され、固定ベルトとして機能する固定用のDリング18,28が固定されている。このDリングはシングルのもの、ダブルのもののどちらでも適用でき、図示していないベルトや紐等で反対側のDリングに連結され、連結部を建物ユニット1に密着させることができる。妻カバー体10A,10Bの建物ユニット1の短辺方向の側面3a,3bと対向する面には、下端にベルト状物19が固定され補強されている。このベルト状物19は、見栄えを向上させる補強であり、建物ユニット1を輸送するときに走行風によるバタツキが防止される。同様のベルト状物を胴巻カバー体20の下端部に固定してもよい。また、ベルト状物19は妻カバー体の両側部に連続して固定してもよい。
つぎに、妻カバー体10A,10Bの上部コーナーに形成された貫通孔12aの止水構造について説明する。妻カバー体10A,10Bの建物ユニット1の柱1c上部に対応する位置には、図6に示されるように、前記のように貫通孔12aが形成され、雨水等の浸入を防止する止水パッキング7が矩形状の補強カバーを介して水密状態に固定されている。この止水パッキング7はドーナッツ状に形成され、貫通孔12aに嵌合され、建物ユニット1の柱1c上部に前記したアイボルト6や、栓ボルト8を螺合した状態で防水構造にすることができるものである。
止水パッキング7は例えば軟質のゴムやシリコンゴムで形成され、中央にはアイボルト6等が貫通する貫通孔が形成されている。そして、貫通孔の周囲は傾斜面となっており、栓ボルト8を螺合させるときには栓ボルトの傾斜面が密着するように構成されている。止水パッキング7の貫通孔にアイボルト6や栓ボルト8を螺合させることで、妻カバー体10A,10Bは建物ユニット1に固定される。なお、栓ボルト8には六角穴が形成され、この六角穴に六角レンチを挿入し建物ユニット1の柱1cの上部のナット1gにねじ込む構成である。
前記の止水構造で用いた止水パッキングはゴム等の軟質材で形成したものを示したが、図6(d)で示す変更例では、金属製等の硬質材からなる止水リング7Aとゴムパッキング7Bとで構成したものである。この止水リング7Aは、中心にアイボルト6や栓ボルト8を挿通する貫通孔が形成され、外周側に薄肉のリング部が延出している。このリング部の裏側に妻カバー体10Aが水密状態に固定される。そして、中心部には下方に開口する溝部が形成され、この溝部に防水のためのゴムパッンキグ7Bが挿入され、柱1cの上端面に密着する構成となっている。外周側に延出する薄肉のリング部は、中心部に一体的に形成しても、別部材で形成して溶接等で一体化してもよい。
このように構成された連結部15,25を備える建物ユニット用カバー9の連結動作を図7に基づいて説明する。連結部15,25によれば、図7(a)に示すように、一方の連結部15の端部ベルト状物16と内側ベルト状物16aとの間隔fに、他方の連結部25の端部ベルト状物26を位置させると、一方の連結部の端部ベルト状物16が他方の連結部25の端部ベルト状物26と内側ベルト状物26aとの間隔f内に位置する。このため、2つの連結部の端部ベルト状部16,26と、内側ベルト状物16a,26aとが交互に位置し、その厚みで引っ掛かるため連結状態が強固となる。
そして、図7(b)に示すように、一方の連結部15のシート状物17と上側ベルト状物17aとを重ね、さらに、図7(c)に示すように、他方の連結部25のシート状物27と上側ベルト状物27aとを重ねるため、連結状態がさらに強固となる。また、連結部分は連結部15と連結部25のシート状物が4層となり、相互に噛み合った状態となるため、防水性能が向上し漏水の恐れが非常に少なくなる。なお、図示していないが、この連結部分を固定ベルトで締め付けて建物ユニットに密着させるように構成してもよい。このように、連結部15,25を用いてカバー体10A,20,10Bを連結することで、作業性が向上し、建物ユニット1を確実に保護することができる。
本発明の建物ユニットの組み立て施工方法では、雨天時にユニットカバーを被せた状態で1階の建物ユニットを基礎上に組み立て施工し、その上にユニットカバーを被せた状態で2階の建物ユニットを組み立て施工するが、その後の晴天時に下方に位置する1階の建物ユニットのユニットカバーを外すために、2階の建物ユニットを上昇させる昇降装置としてジャッキ装置を使用する。以下、このジャッキ装置について図8,9を参照して詳細に説明する。
図8,9において、ジャッキ装置30は1階の建物ユニットの天井コーナー部に設置されるジャッキ架台31と、2階の建物ユニットの床コーナー部に設置されるジャッキ受台32と、ジャッキ架台31とジャッキ受台32との間に設置されるジャッキ本体33とから構成される。ジャッキ架台31は1階建物ユニットの上梁の下方のリブに対接する火打ち梁状のベースであり、四角柱状の梁と、その梁の両端に固着されたベース板から構成され、上梁の下リブに固定したズレ止めボルトに係合するものである。また、ジャッキ受台32は2階建物ユニットの下梁の上リブに対接する火打ち梁状のアタッチメントであり、同様に下梁の上リブに固定したズレ止めのボルトに係合するように構成されている。
ジャッキ本体33は、本実施形態では油圧式の手動式のジャッキであり、1つの建物ユニットの四隅に4つのジャッキ本体を設置し、図示していない油圧供給装置から4つのジャッキ本体に送油ホースで油圧を手動で供給するものである。ジャッキ架台31とジャッキ受台32との間にジャッキ本体33を設置し、ジャッキ本体に油圧を供給することで、ジャッキ架台31に対してジャッキ受台32を上昇させると共に、油圧を抜くことでジャッキ受台32を下降させることができる装置である。なお、ジャッキ装置は手動式のものに限らず、電動式のもの、あるいは手動の機械式のもの等、適宜のものを使用することができる。
前記の如く構成された本実施形態の建物ユニットの組み立て施工方法について、図10〜15を参照して以下に説明する。ユニット建物を構成するための複数の建物ユニットを建築現場に輸送し、地盤上に構築された基礎K上に複数の建物ユニットを組み立ててユニット建物を構築する施工について、以下に説明する。本実施形態では、1階用の建物ユニット1Aを6個と、2階用の建物ユニット1Bを4個用いてユニット建物を構築する例について説明する。
図10において、(a)は建物ユニット1の斜視図、(b)は建物ユニットにユニットカバーを被せた状態の斜視図、(c)は建物ユニットを載置する基礎の斜視図、(d)は基礎上に1階用の建物ユニット及び2階用の建物ユニットを載置固定したユニット建物の斜視図、(e)は建物ユニットを組み立て施工するときに1階と2階の建物ユニット間に設置するスペーサの斜視図である。
工場で製作された建物ユニット1A,1Bは、前記のように3つに分割される建物ユニット用カバー9で図10(b)のように被覆され、トラック等の輸送手段で建築現場まで輸送される。輸送中は建物ユニット1A,1Bはユニットカバー9で覆われているため、雨が降っても雨水で濡れることが防止される。図10(c)は基礎Kを示しており、6個の建物ユニットが載置できる大きさに設定され、外周部Kaと中心を横切る中心部Kbとを有し、中心部の幅Kwは建物ユニットが長辺方向に1直線上に並べられたとき、ユニット間に隙間ができる程度に広幅に形成されている。
建築現場まで運ばれた建物ユニット1A,1Bは、従来では雨天時には建物ユニットを保護する意味で組み立て施工せず、晴天になるまで施工を中断する。また、1階の建物ユニット1Aのみを基礎に固定し、2階の建物ユニット1Bを持ち帰ることもある。晴天になると、建物ユニット1を被覆しているユニットカバー9を取り外し、現場に築かれた基礎K上にクレーン等で吊り上げて設置される。先ず、1階用の建物ユニット1Aを基礎K上に設置してアンカーボルトで固定し、次いで2階用の建物ユニット1Bを1階用の建物ユニット1A上に積み上げ固定して、ユニット建物を構築する。そして、図10(d)に示されるようにユニット建物が構築される。建物ユニット間には長辺方向に沿って水平方向の間隔D1が形成され、短辺方向に沿って水平方向の間隔D2が形成される。
本発明の建物ユニットの組み立て施工方法では、雨天時でも、建物ユニット1を濡らすことなく組み立て施工することができる方法である。雨天時には、建物ユニット1を覆うユニットカバー9を外さずに組み立て施工することができるため、晴天を待つことや、建物ユニットを持ち帰ることがなくなり、作業時間を短縮することができると共に、作業効率をあげることができ、持ち帰りコスト、再度のクレーン費用等の費用を削減できる組み立て施工方法である。
雨天時に施工するときは、現場に構築された基礎K上に、クレーン等を用いて1階用の建物ユニット1Aを、カバー体10A,20,10Bを連結したユニットカバー9で被覆したまま建物ユニットの上部の四隅に固定されたアイボルト6を用いて吊り上げ、基礎K上に順次載置固定する。図11は1階用の建物ユニット1Aが6個設置された状態を示している。
建物ユニットを吊り上げるアイボルト6の周囲は止水パッキング7で妻カバー体10A,10Bの貫通孔12aが塞がれているため、吊り上げボルト部分での漏水は防止される。1番目の建物ユニット1Aが基礎K上に固定された後、同様にして2〜6番目の1階用の建物ユニット1Aも基礎K上に固定される。このとき、建物ユニット1A間には所定の間隔が形成されて、それぞれの建物ユニットが固定される。本実施形態では、妻側の間隔はD1に設定され、桁側の間隔はD2に設定されている。
基礎K上に固定された1階用の建物ユニット1Aの四隅のアイボルト6を外し、この雌ねじ部分に図13(a)に示される雨天据付用ジョイントピンJPをねじ込む。このジョイントピンJPは下端に雄ねじが形成され、中間は2階用建物ユニットの柱の下端の貫通孔の挿通できる軸部となっており、上端は先細のガイド軸部となっている。ジョイントピンJPを柱1cの上端のナット1gにねじ込んでも、ジョイントピンは止水パッキング7で軸部分が止水されているため、ユニットカバー9の内部に雨水が浸入することがない。
ジョイントピンJPに雨天据付用スペーサSPを装着する。スペーサSPは1階用の建物ユニット1Aと2階用の建物ユニット1Bとの間にスペースを形成するものであり、図10(e)に示されるように、この例では直方体で縦方向にジョイントピンが挿入できる装着孔が形成され、この装着孔は側方に開口している。スペーサSPの高さはh1に設定され、この高さが1階用と2階用の建物ユニット間の隙間D3の基準となる。h1は20mm程度が好ましい。図13(a)、(b)では、スペーサSPの高さh1と、下階の建物ユニットの柱1cと上階の建物ユニットの柱1cとの隙間D3とは異なっているが、実際には止水パッキング7の厚さは建物ユニットの重量で潰れ、妻カバー体10Aの厚さは無視できるため、スペーサSPの高さh1と隙間D3とは実質的に等しくなる。
このようにして、図12のように、基礎K上に1階用の建物ユニット1Aを6個並べてアンカーボルトで固定したあと、ユニットカバー9を外さずに、ユニットカバー9で被覆された2階用の建物ユニット1Bを吊り上げて組み立て施工する。図12,13に示すように、1階用建物ユニット1Aの上部の四隅から突出する4本のジョイントピンJPにはスペーサSPが装着され、2階用建物ユニット1Bの柱の下端に形成された貫通孔をジョイントピンに合わせて建物ユニット1Bを下降させる。ジョイントピンJPの上端は先細に尖っているため、位置合わせが容易に行える。位置合わせが完了したあと2階用の建物ユニット1Bを下降させると1階用の建物ユニット1Aの上部に、スペーサで隙間D3を有して2階用の建物ユニット1Bが載置される。隙間D3はスペーサの高さh1に等しい。なお、図12では、スペーサSPの高さを大きく図示している。
2階用の4個の建物ユニット1Bを1階用の6個の建物ユニット1Aの上に載置すると、妻側には間隔D1が、桁側には間隔D2が、上下には隙間D3が形成された状態で、10個の建物ユニット1A,1Bが組み立てられる。2階用の建物ユニット1Bは、アイボルト6で吊り上げが完了後、アイボルトを外して栓ボルト8で止水パッキング7を締め付けるため、妻カバー体の貫通孔12aからの漏水は防止される。
なお、栓ボルト8で締めずに、図12に示すように隣接する建物ユニット同士をジョイントJTで連結するようにパッキングを挟んでボルト止めしてもよい。このように、2階の建物ユニットの上部をジョイントJTで連結するため、仮止めの複数の建物ユニットの設置状態を安定させることができる。本発明の建物ユニットの組み立て施工方法では、雨天時でも建物ユニット1が濡れることなく組み立て施工することができるため、従来のように建物ユニットを持ち帰ることがなくなり、作業時間を短縮することができると共に、効率良く組み立てることができ、コストダウンを達成することができる。
本発明の建物ユニットの組み立て施工方法で雨天時に組み立てられた建物ユニットは全てユニットカバー9で被覆されており、雨天時にはこのままの状態で維持され、晴天時に次の工程が実施される。2階用の建物ユニット1B、あるいは1階用の外側に面している建物ユニット1Aのユニットカバー9は容易に外すことができる。すなわち、中央の胴巻カバー体20と、妻カバー体10A、10Bとを連結する連結部15,25を外すと、胴巻カバー体20は巻き取ることで容易に外すことができる。妻カバー体10A、10Bは栓ボルト8、あるいはアイボルト6を外すことで建物ユニットからフリーの状態となるため、容易に外すことができる。
つぎに、2階用の建物ユニット1Bが載っている1階用の建物ユニット1Aからユニットカバー9を外す工程について説明する。この工程では、先ず、スペーサSPにより形成されたD3の隙間を利用して、妻カバー体10A、胴巻カバー体20、妻カバー体10Bを分離し、図14に示すように、胴巻カバー体20を巻き取って取り外す(一部のカバー体の取り外し工程)。このあと、2階用の建物ユニット1Bを1階用の建物ユニット1Aから上昇させ、図13(c)のように、さらに大きい隙間D4を形成し、ジョイントピンJPを抜いて、その広げられた隙間D4から妻カバー体10Aを取り外す(残部のカバー体の取り外し工程)。
すなわち、建物ユニット1A,1Bの四隅に、火打ち梁状のジャッキ架台31とジャッキ受台32を取り付け、これらの間に小型のジャッキ本体33を設置して2階用の建物ユニット1Bを僅かに上昇させる。上昇させることで、1,2階の建物ユニット間に、20mm+10mm程度の広げられた隙間D4を形成し、ジョイントピンJPを抜いて妻カバー体10Aを引抜く。なお、2階の建物ユニット1Bを大きく上昇させてジョイントピンの先端が2階建物ユニットの柱下端の貫通孔から抜け出し、妻カバー体が通過できるようにしてもよい。この1,2階の建物ユニットの隙間D4を用いて、電気配線の接続、配管の連結等の作業を行うことができる。
このように、1,2階の建物ユニット間に挟まれたスペーサSPによる隙間D3を利用して、1階建物ユニットに被せられたユニットカバー9の連結部15,25を外し、連結の外れた中央の胴巻カバー体20(一部のカバー体)を巻き取り、次いで、ジャッキ装置30で2階用の建物ユニット1Bを上昇させて隙間をD4に広げ、ジョイントピンJPを抜いて妻カバー体10Aを側方に移動すると、妻カバー体(残部のカバー体)を容易に外すことができる。このあと、ジョイントピンJPは再びねじ込んでおく。建物ユニットが隣接する側の妻カバー体は、ユニット間の水平方向の間隔D1、D2から妻カバー体を撤去することができる。このようにして、1方の妻カバー体の貫通孔からジョイントピンJPを抜くことで一方の妻カバー体を外し、他方の妻カバー体も同様にして外すことができる。
1階の建物ユニット1Aから胴巻カバー体20及び2枚の妻カバー体10A、10Bを外した後、ジャッキを下降させると2階の建物ユニット1BはジョイントピンJPに沿って下降し、1階の建物ユニット1Aの柱1cの上端面に密着する。このあと、図15(a)のようにジョイントピンJPを外し、図15(b)のように専用の連結ボルトBで1,2階の建物ユニット1A,1Bの柱1c、1cを連結固定する。
建物ユニット1Aと建物ユニット1Bとの連結は、図16に示されるように構成してもよい。図16では、1階の建物ユニット1Aの柱1cと、2階の建物ユニット1Bの柱1cとを連結せず、柱1cと上梁、下梁等の梁材とを連結して補強するジョイントプレート部分で連結している。下階の建物ユニット1Aの上梁1e及び上梁1fと、柱1cとの連結部分の補強材であるジョイントプレート9には連結孔9aが貫通形成され、上階の建物ユニット1Bの下梁1a及び下梁1bと、柱1cとの連結部分の補強材であるジョイントプレート9にも同様に連結孔9aが貫通形成されている。そして、両方の貫通孔9aにボルトB1挿通させ、ナットN1を締めこむ。4本の柱1cの全てのジョイントプレート部分で建物ユニット1Aと建物ユニット1Bとが連結される。この連結構造では、ボルトナットの締め込みが外部から行えるため、柱内部のボルト締めと比較して施工が容易となる特長がある。
このようにして、1,2階の全ての建物ユニットからユニットカバー9を外し、1,2階の建物ユニットを連結用ボルトBで連結固定することで、建物ユニットの組み立て施工は完了する。このあと、1階の建物ユニット1A,1A…同士間の隙間を図示していない連結具を用いて連結し、1階の全ての建物ユニットの水平方向の連結を行う。また、2階の建物ユニット1Bについても、同様に水平方向の連結を行う。そして、組み立ての完了した建物ユニットの上部に、小型のクレーン等を用いて屋根の架設を行う。
このように本発明の建物ユニットの組み立て施工方法では、雨天時にも建物ユニットを濡らすことなく組み立て施工することができるため、従来のように晴天になるのを待つ必要がなく、また、1階の建物ユニットのみを組み立てて2階の建物ユニットを工場等へ持ち帰ることがなく、施工時間の短縮、コストの削減が可能となる。また、後日晴天の際に、建物ユニット用カバーをかけた建物ユニットから、大型のクレーンを用いずにカバーを外すことが出来るため、大型クレーン手配が不要となり、施工日の設定が容易でかつ費用も削減出来る。
つぎに、本発明のさらに他の実施形態について図17〜26を参照して説明する。この実施形態の建物ユニットの組み立て施工方法と、この施工方法で使用する建物ユニット用カバーは、直方体状の建物ユニットの寸法に合わせた下方開口の直方体状に形成された1つのユニットカバー40で構成され、前記の実施形態に示す分割された複数のカバー体、すなわち妻カバー体10A,10B及び胴巻カバー体20から構成されるユニットカバー9と異なっている。
建物ユニット1は、前記した実施形態と同様に4本の下梁1a,1bと、4本の柱材1c,1dと、4本の上梁1e,1fとから直方体状に構成され、4本の柱材1c,1dの下端部を水平方向に4本の下梁1a,1bで連結し、4本の柱材の上端部を水平方向に4本の上梁1e,1fで連結して形成され、4本の柱材は角パイプの上端開口と下端開口を矩形の鋼板で塞いで形成されている。そして、柱材の上端の鋼板には貫通孔の奥に雌ねじを有するナット1gが溶接で固着され、雌ねじ孔を有する構成とされ、柱材の下端の鋼板には貫通孔1hが形成されている。貫通孔1hには後述するジョイントピンJP1が嵌合する。
建物ユニット1を覆うユニットカバー40は、直方体の建物ユニット1を覆うように直方体に形成され、上カバー面41と4つの横カバー面42〜45により下方開口に構成されている。そして、4つの横カバー面は建物ユニット1の柱材が位置するコーナー部分に縦ファスナー46が設けられて連結され、下方開口で2つの側面が開く直方体に構成されている。縦ファスナー46は具体的には4つの横カバー面のうちの妻側の側面42,43の面に形成され、妻側の側面を開くように構成されている。縦ファスナーは、図示のスライドファスナーの他、マジックテープ等の面ファスナーでもよい。このユニットカバー40は妻側の横カバー面を開いて被せることができるため、建物ユニット1より僅かに大きいサイズに設定され、被せたときに建物ユニットにぴったりと被さり、内部空間に余裕の無い大きさに設定されている。
ユニットカバー40は妻側の横カバー面42,43の上部角部に持ち手ベルト47が縫い付けられている。また、桁側の長い横カバー面44,45の下部には紐を通して下方に引っ張るための三角形状のペケット48が底辺に平行に複数個所に縫い付けられている。ユニットカバー40の天井を構成する上カバー面41には、4つの角部にドーナツ形状の止水金具50が固定されている。この止水金具50は建物ユニット1にユニットカバー40を被せた状態で建物ユニット1に固定する機能を有するものである。建物ユニット1とユニットカバー40との間には、ポリエチレンフィルムで形成したフィルムカバー49が挟まれ、建物ユニット1を二重に保護している。このフィルムカバー49は、止水金具50に相当する位置に補強用のリングテープ49aが貼着されている。
ここで、止水金具50について図19を参照して詳細に説明する。止水金具50は2つのリング状の部材を重ねて構成され、上金具51は中心部が肉厚で外周の薄肉部が延出しており、中心の厚肉部には貫通孔51aが形成され、貫通孔の上部は面取りされて傾斜面51bとなっており、上方に広がるテーパー孔が形成されている。また、肉厚部の下面には円周溝部51cが形成されている。もう1つの部材である下金具52は座金状に形成され、上金具51の薄肉部に重なるような形状に形成されている。
そして、上金具51の薄肉部と下金具52との間にユニットカバーの上カバー面41に形成された貫通孔を挟んで接着剤等で防水状態に固定される構成となっている。また、上金具51と下金具52とは皿ねじ53で固定されている。そして、上金具51の円周溝部51cには防水パッキング54が装着されている。止水金具50の貫通孔51aは、建物ユニット1の柱材1c,1dの上端面に形成された雌ねじ孔(ナット1g)と一致する位置に設定されている。なお、雌ねじ孔としてナット1gの例を示したが、柱材の上部開口を塞ぐ鋼板を厚板として、この板材に雌ねじを切って形成してもよい。
止水金具50の貫通孔51aにねじ込まれる止めねじ55は、貫通孔51aのテーパーに合わせた皿ねじの形状であり、下端には建物ユニット1の柱材の柱頭部に形成された雌ねじ孔1gにねじ込むことができる雄ねじが形成されている。止めねじ55の上面には六角穴が形成されている。建物ユニット1にユニットカバー40を被せると、止水金具50の貫通孔51aは4本の柱材の柱頭部に形成された雌ねじ孔と一致する位置に形成され、止水金具50の貫通孔51aを通して止めねじ55を柱頭部の雌ねじ孔にねじ込むことでユニットカバー40を建物ユニット1に固定することができる構成となっている。また、止水金具50に止めねじ55をねじ込むことで、防水パッキング54が圧縮され、貫通孔51aからの漏水を防止することができる。
本実施形態のユニットカバー40を被せる建物ユニット1には、柱頭部の雌ねじ孔1gに、この建物ユニットを据え付ける際に吊り上げるための吊り具60がねじ込まれる。この吊り具60は図20(b)に示されるように、雌ねじ孔1gにねじ込まれる固定ボルト61と、この固定ボルトの上部に揺動可能に支持されたU字状の吊り部材62とから構成されており、図示していないクレーンのフックを4本の柱頭部にねじ込まれた吊り部材62の湾曲部に引掛けることで、建物ユニット1を吊り上げることができる構成となっている。
また、柱材の柱頭部の雌ねじ孔には、図21(a)に示されるように、ジョイントピンJP1がねじ込まれる。ジョイントピンJP1は4本の柱材の上端の雌ねじ孔に突出固定される連結部材として機能する。ジョイントピンJP1は建物ユニット1を構成する柱材の柱頭部の雌ねじ孔1gにねじ込める雄ねじが下端に形成されており、上端部はテーパーが付き徐々に細くなる形状となっている。ユニットカバー40が被せられた下階の建物ユニット1の上に上階の建物ユニット1を載せたときに、ピンが上階の建物ユニット1の柱材の柱底部に形成された貫通孔1hから外れない長さを有している。
ジョイントピンJP1には、スペーサ65が装着される。スペーサ65は下階の建物ユニットと上階の建物ユニットとの間に挟まれて空間を形成する機能を有すると共に、防水機能を有しており、例えばスポンジ等の軟質の防水材でリング状に形成され、内周の孔径はジョイントピンJP1の外径より小さく設定され、ジョイントピンJP1の外周に外嵌保持され、ジョイントピンJP1とカバー体40に固定された止水金具50との間を防水状態とし、漏水を防止できる構成となっている。なお、スペーサ65は種々の変更が可能であり、金属製のリングの内側にスポンジ等の防水材を嵌合させ、リングの上下面にスポンジ製のリングを配置したサンドイッチ構成としたものや、軟質の防水材と、その上下に固定した金属製のワッシャ等でサンドイッチされた構成とし、中間の防水材でジョイントピンに保持される構成としてもよい。このように、スペーサ65は空間を形成すると共に、防水機能を有するものである。
上階に設置される建物ユニット1の上面と、ユニットカバー40との間には、図25に示されるユニットカバー40の上カバー面41の中心部を持上げるためのカバー持上げ体70が載置される。このカバー持上げ体はベースとなる板状体71の短辺に一端辺が連結された湾曲体72を備え、板状体71上の中心部に固定された筒状体73と、この筒状体を貫通する紐74と、板状体71を所定位置に係止するフック75とを備えており、カバー持上げ体70を建物ユニット1の上部に載置し、フック75を上梁等に引掛け、紐74を引くことで平坦な板状体71に対して湾曲体72を湾曲させ、湾曲体の最上部でユニットカバー40の上面を持上げる機能を有するものである。
このように構成されたユニットカバー40と、カバー持上げ体70とを用いた建物ユニットの施工方法について、図20〜26を参照して以下に説明する。この施工方法では1階用の建物ユニット1Aを6個、2階用の建物ユニット1Bを6個使用し、2階建てのユニット建物を構築する例について説明する。12個の建物ユニット1A,1Bは工場で製作された後、それぞれフィルムカバー49を被せた後、ユニットカバー40で被覆される。建物ユニット1にユニットカバー40を被せるときは、縦ファスナー46を開いて下方を広げることができ、建物ユニット1に容易に被せることができる。また、横カバー面には持ち手ベルト47が縫い付けられており、このベルトを使用して上カバー面41を移動させると、止水金具50を柱材1c,1dの柱頭部の雌ねじ孔1gと容易に合わせることができる。
そして、図18、図20(a)に示すように、4つの止水金具50の貫通孔51aに止めねじ55をねじ込み、ユニットカバーの上カバー面41を建物ユニット1に固定する。止水金具50は防水パッキング54と止めねじ55により漏水が防止され、建物ユニット1にユニットカバー40を容易に固定することができる。このあとトラックの荷台に載置され、ペケット48に紐をかけて下方に引張り、トラック等の輸送手段で建築現場まで輸送される。輸送中、建物ユニット1はユニットカバー40とフィルムカバー49で覆われており、止水金具50部分の漏水が防止されているため、雨が降っても雨水で濡れることが防止される。また、ユニットカバー40は建物ユニット1A,1Bより僅かに大きい寸法で形成されているため、輸送中にばたつくことが防止される。
建築現場まで運ばれた建物ユニット1A,1Bは、ユニットカバー40とフィルムカバー49で二重に保護されているため、雨天でも建物ユニットを濡らすことなく施工することができる。止水金具50の止めねじ55を外し、図20(b)に示すように、柱材1c、1dの柱頭部の雌ねじ孔1gに吊り具60の固定ボルト61をねじ込み固定し、クレーンのフックを吊り具60の吊り部材62に引掛けて建物ユニット1Aを吊り上げる。吊り具60とユニットカバー40の止水金具50との間は漏水が防止されているため、吊り上げ作業中も建物ユニット1Aは雨水から保護される。
このようにして、ユニットカバー40を被せた状態で、1階の建物ユニット1Aを基礎上に載置固定する。基礎上に固定した建物ユニット1Aは吊り具60が外され、図21(a)に示すように、ジョイントピンJP1が雌ねじ孔1gにねじ込まれる。そして、ジョイントピンにはスペーサ65が外嵌され、ジョイントピントJP1と止水金具50との間の漏水を防止する。1階の全ての建物ユニット1Aを基礎上に載置固定した後、2階の建物ユニット1Bの施工を行う。
2階の建物ユニット1Bは、1階の建物ユニット1Aと同様にユニットカバー40とフィルムカバー49を被せた状態で吊り上げて施工される。すなわち、1階の建物ユニットと同様に、ユニットカバー40を固定している止めねじ55を外し、雌ねじ孔51aに吊り具60をねじ込んで、4個の吊り具60を用いてクレーンで吊り上げる。そして、図22に示すように、1階の建物ユニット1Aの柱頭部にねじ込まれたジョイントピンJP1に合わせて2階の建物ユニット1Bを下降させ、柱底部の貫通孔1hをジョイントピンJP1に合わせて外嵌させ、2階の建物ユニット1Bを1階の建物ユニット1A上に載置する。2階の建物ユニット1Bは、1階の建物ユニット1Aにジョイントピンで位置決めされ、精度よく載置できる。スペーサ65は、2階の建物ユニットにより圧縮されて平板状となり、防水機能を発揮する。スペーサ65は圧縮されるが所定の厚さを有してスペーサとして機能する。2階の建物ユニット1Bは、柱頭部の雌ねじ51aに止めねじ55をねじ込んで漏水を防止すると共に、ユニットカバー40を固定する。
このあと、上階の建物ユニット1Bを下階の建物ユニット1Aの上部に載置する工程の後工程として、2階の建物ユニット1Bの上カバー面41と建物ユニットの天井面との間にカバー持上げ体70を設置する。建物ユニット1Bの天井根太等で構成される天井面状にカバー持上げ体70の板状体71を載置し、フック75を一方の上梁に引掛けてから紐74を他方の上梁側に引張り、その位置で固定すると湾曲体72が曲げられ、湾曲体72の中央部が上昇してユニットカバー40の上カバー面41を持上げることができる。ユニットカバー40は縦ファスナー46で側面を開くことができるため、カバー持上げ体70の設置を容易に行うことができる。
このように、ユニットカバー40の上カバー面41の中央部が持上げられると、降雨があってもユニットカバー40の上カバー面41に雨水が溜まることがなく、カバー内部への漏水を防止することができる。このように、1,2階が積み上げられた建物ユニット1A,1Bは雨天時でも濡れることなく、ここまでの工程を仮施工として完了することができる。仮施工の後の工程は晴天時に行う。晴天時にユニットカバー40を外すとき、カバーの上面に溜まり水がないため施工が容易となり、建物ユニットの濡れを防止できる。なお、カバー持上げ体70の設置は上階の建物ユニット設置後に行うことに限らず、設置前や、ユニットカバーを被せるときに設置して上カバー面41を持上げてもよい。
これにより、2階の建物ユニット1Bと1階の建物ユニット1Aは、ユニットカバー40が被った状態で組み立てられ、雨天時でも1階の建物ユニット1Aと、2階の建物ユニット1Bとの組み立てを完了することができる。すなわち、1階の建物ユニット1Aと、2階の建物ユニット1Bとを重ねて設置する仮施工を雨天時でも容易に行うことができ、しかも建物ユニット1A,1Bを雨水から保護することができる。このため、建築現場で降雨となった場合でも、建物ユニットを工場に持ち帰ることなく、基礎上に重ねて設置する仮施工を実施することができる。
組み立てられた1階の建物ユニット1Aと2階の建物ユニット1Bは、晴天時にユニットカバー40が外され回収される。ユニットカバーは足場や隣接する建物ユニットの天井面から外すことができる。ユニットカバーを固定している止めねじ55を外し、縦ファスナー46を引き上げると横カバー面が開くため、容易に外すことができる。全ての2階の建物ユニット1Bからユニットカバー40を取り外し、建物ユニット1Bを吊り具60を用いてクレーンで吊り上げ、退避スペースに下ろす。退避スペースがない場合は、他の2階の建物ユニット上に一時的に載置する。また、2階の建物ユニット1Bを吊り上げたまま、1階の建物ユニット1Aと2階の建物ユニット1Bとの間に作業スペースを作り、1階の建物ユニット1Aに被せられたユニットカバー40を外してもよい。このときには、図22の状態から上階の建物ユニット1Bを吊り上げ、図23のように、スペーサ65をジョイントピンJP1から引抜き、ユニットカバー40とフィルムカバー49を取り外す。ユニットカバー40の取り外しは手作業でも、クレーンで持ち手ベルトを引掛けて外してもよい。
1階の建物ユニット1Aからユニットカバー40とフィルムカバー49を外した後、吊り上げられていた2階の建物ユニット1Bを1階の建物ユニット1A上に戻す。このとき、ジョイントピンJP1に合わせて2階の建物ユニット1Bを下降させる。そして、1階の建物ユニット1Aに2階の建物ユニット1Bを連結固定する。これにより、ユニットカバー40を被せた状態で、1階と2階の建物ユニット1A,1Bを組み立てる仮施工後の、ユニットカバー40を外す本施工が完了する。なお、2階の建物ユニット1Bのユニットカバー40とフィルムカバー49の取り外しは最後に行ってもよい。
前記した建物ユニットの組み立て施工方法では、建物ユニット据付日が雨天であっても、実施することができるため、輸送用のトラック変更やユニット積み替え等の工場出荷段取りの変更が不要となる。また、建物ユニットを再輸送する際のトラック待機場を借りずにすみ、かつトラックが再度通学路等を通る際の通行許可申請が不要となる。さらに、天気予報で雨天が予想され、据付をキャンセルし、実際には晴天となった場合の機会損失、CS低下が防止される。さらに、トラックの手配が不要なため据付日の再段取りが容易で早くでき、工期延長によるCS低下を防止することができる。
さらに、据付日に出荷し、雨天となった場合の、ユニットの持ち帰り、再輸送の費用、大型クレーン、作業員、ガードマン等のキャンセル料、トラック待機場借地料、道路使用許可等の申請費用、据付を強行した場合の濡れ補修費用等の発生があるが、本実施形態の建物ユニットの施工方法では、これら費用や作業を削減することができる。
前記した建物ユニットの組み立て施工方法では、雨天でも建物ユニットの仮施工を行うことができ、通常は後日の晴天時にユニットカバーを外す本施工を行うが、1日の作業で、例えば午前中は雨天である場合でも建物ユニットの据え付けの仮施工を終了し、午後に晴天となった場合は、仮施工後の建物ユニットからユニットカバーを取り外す本施工を行うこともできる。
なお、ユニットカバー40の内側にフィルムカバーを被せる例について説明したが、フィルムカバーは使用しなくてもよい。また、カバー持上げ体として、湾曲体を用いてユニットカバーの上カバー面を持上げる例について説明したが、ゴム製の球体等にエアーを吹き込んで膨らませ上カバー面を持上げるものでもよい。さらに、カバー持上げ体は複数を並べて使用し、上カバー面を持上げるように構成してもよい。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、建物ユニットの組み立て施工として、2階建てのユニット建物の例を示したが、3階建て以上のユニット建物の組み立て施工にも適用できることは勿論である。
また、建物ユニットを被覆するユニットカバーとして、3つに分割されるものを示したが、2つに分割されるものや、4つ以上に分割されるもの等、適宜選択することができる。さらに、2階用の建物ユニットを上昇させる工程で昇降装置を用いる例を示したが、クレーン等で2階用の建物ユニットを上昇させるように構成してもよい。
ユニットカバー9を構成する妻カバー体、及び胴巻カバー体を連結する連結部15,25として、重ねて連結する例を示したが、重ねないで連結するファスナーのような連結部や、面ファスナーのような連結部、ボタンとボタンホール、フック等の連結部を用いてもよい。このような連結部においても、雨水等が浸入しないための止水構造を用いることが好ましい。