JP5199869B2 - テトラブロモビスフェノールaの作製方法 - Google Patents

テトラブロモビスフェノールaの作製方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5199869B2
JP5199869B2 JP2008520058A JP2008520058A JP5199869B2 JP 5199869 B2 JP5199869 B2 JP 5199869B2 JP 2008520058 A JP2008520058 A JP 2008520058A JP 2008520058 A JP2008520058 A JP 2008520058A JP 5199869 B2 JP5199869 B2 JP 5199869B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
reaction
bromine
tetrabromobisphenol
organic phase
reactor
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2008520058A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009500395A (ja
Inventor
ツィルベルマン,ヨーゼフ
Original Assignee
ブロマイン コンパウンズ リミテッド
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ブロマイン コンパウンズ リミテッド filed Critical ブロマイン コンパウンズ リミテッド
Publication of JP2009500395A publication Critical patent/JP2009500395A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5199869B2 publication Critical patent/JP5199869B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07CACYCLIC OR CARBOCYCLIC COMPOUNDS
    • C07C37/00Preparation of compounds having hydroxy or O-metal groups bound to a carbon atom of a six-membered aromatic ring
    • C07C37/62Preparation of compounds having hydroxy or O-metal groups bound to a carbon atom of a six-membered aromatic ring by introduction of halogen; by substitution of halogen atoms by other halogen atoms

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Description

本発明は、テトラブロモビスフェノールAの作製方法に関する。
4,4'-イソプロピリデン-ビス(2,6-ジブロモフェノール)は、テトラブロモビスフェノールA (本明細書中においては、TBBAと略すこともある)としても知られており、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびポリカーボネート樹脂の製造における反応性難燃剤として、ならびにアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系における難燃添加剤として用いられている。これらの用途に関しては、高品質のテトラブロモビスフェノールAを使用することが一般に必要とされる。このテトラブロモビスフェノールAは、実質的に反応副生成物および加水分解性臭素が含まれておらず、良好な色特性を有し、かつ非常に低い臭化物イオン含有量でなければならない。いくつかの用途においては、また、特定の粒径および粒径分布を有する自由流動性(free-flowing)粉体を使用する必要がある。
テトラブロモビスフェノールAの製造は、一般にビスフェノールAの臭素化に基づいている。これに関して、当該分野において様々な方法が記載されており、これらは上記の一般的な反応スキームを改善するための様々な反応条件を示唆している。
特許文献1および特許文献2では、溶媒として低級アルコール水溶液を使用してビスフェノールAの臭素化を行うことによって、臭化メチル副生成物および臭化エチル副生成物が不要に形成される問題に対処することが開示されている。特許文献2ではまた、ビスフェノールAを臭素化するための、連続式操作法が記載されている。
水と混和しない有機溶媒を使用したビスフェノールAの臭素化もまた、当該分野において開示されている (例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10および特許文献11)。これらの文献に記載されている方法は、水の存在下で実施されるために、反応混合物は2つの液相、すなわち有機相と水相とから成る。臭素化反応中に形成された臭化水素をin-situにてリサイクルするために過酸化水素を使用して、ビスフェノール-A核のさらなる臭素化に利用可能な分子状臭素を得ることもまた、上記文献中に提案されている。
テトラブロモビスフェノールAは通常、様々な不純物(例えば、臭素化フェノール)および発色性の化学物質が混入している。例えば、上記の水と混和しない有機溶媒と水相とを含んで成る二相システムにおけるビスフェノールAの臭素化に関連する、望ましくない分解副生成物としては、トリブロモフェノールがある。
米国特許第5475153号 国際公開第96/33964号 米国特許第3546302号 米国特許第3929907号 米国特許第6365786号 Ger. Offen. 2613969 Ger. East 159066 Ger. East 211781 イスラエル国特許第64410号 ロシア国特許第2034823号 特開平7-033700号公報
本発明は、水および酸化剤の存在下、ジクロロメタン中にてビスフェノールAを臭素化するための方法に関する。本方法によって、ごく少量の有機混入物のみが混入している、白色の自由流動性粉体の形態で高純度の結晶性テトラブロモビスフェノールAを得ることができる。最も有利には、本発明によって提供される方法は、連続式操作法によって実施される。
本発明は主に、テトラブロモビスフェノールAの作製方法に関し、当該方法は、
i)ビスフェノールAと臭素とを、過酸化水素水の存在下、ジクロロメタン中室温〜還流温度の温度にて反応させるステップであって、かかるジクロロメタンは、当該反応によって形成されたビスフェノールAの臭素化誘導体がほぼ溶解するのに十分な量で存在する、上記ステップ、
ii)ステップi)にて得られた実質的に固体を含まない反応混合物を水相および有機相に分離し、有機相よりテトラブロモビスフェノールAを沈殿し、そして沈殿したテトラブロモビスフェノールAを有機相より単離するステップ、
を含む。
一般的に言うと、本発明の方法は上記ステップi)およびii)にそれぞれ規定されるように、臭素化反応とその後の、固形にて生成物を回収するための後処理とを含む。
本明細書中において、「ビスフェノールAの臭素化誘導体」という用語は、1または複数の以下の臭素化生成物を指す:ジ-、トリ-およびテトラブロモビスフェノールA。本発明の方法は、十分に大量な量で用いられるジクロロメタン溶媒を必要とする。それは、臭素化反応の過程で形成されたビスフェノールAの臭素化誘導体は、当該ジクロロメタン中にほぼ溶解するためである。「ビスフェノールAの臭素化誘導体をほぼ溶解する」および「実質的に固体を含まない反応混合物」という用語は、ビスフェノールAの臭素化誘導体がジクロロメタン中に完全に溶解しているか、または場合によりジクロロメタン中に懸濁している状態を指す。この状態において、有機相中に懸濁しているビスフェノールAの臭素化誘導体の重量濃度は、3重量%以下、好ましくは1重量%以下である。
ビスフェノールAの臭素化誘導体がジクロロメタン中に実質的に完全に溶解し、好ましくは反応混合物における有機相対水相の容積比が少なくとも6:1、より好ましくは少なくとも10:1となる、本発明の条件下で臭素化反応を実施することによって、所望の粒径分布と良好な流動性とを有する高純度の生成物が得られ、かつ不要な分解反応生成物(例えば、トリブロモフェノール)の形成を最小限に抑えることができることを見出した。
本発明の臭素化反応は、ジクロロメタンが室温〜還流温度の温度にて、好ましくは当該溶媒が30℃〜還流温度の温度にて、より好ましくは当該溶媒が35℃〜還流温度にて、最も好ましくはジクロロメタンの還流温度(大気圧で38〜41℃)にて実施する。この反応は一般に、大気圧下にて実施する点に留意しなければならない。しかし、所望される場合、大気圧未満または加圧下にて臭素化反応を実施することは可能である。この場合にはもちろん、系の還流温度は、上記の特定の値とは異なってくるであろう。
本発明方法で用いられるジクロロメタンの量は、形成されたビスフェノールAの臭素化誘導体がほぼ溶解するのに十分な程大量に必要であり、それによって、反応混合物から当該臭素化誘導体が自然沈降するのを防ぐ。その際、反応混合物中に存在する様々な混入物は沈殿物質によって捉えられ得る。本発明のこの特徴は、以下に詳細に記載されるように、連続式で当該方法を実施するために特に重要である。量的には、以下のような量でジクロロメタンを用いるのが特に好ましいことを見出した:臭素化反応完了時の有機相中のテトラブロモビスフェノールAの算出濃度が、約15〜25重量%、好ましくは約20〜23重量%である(これらの算出濃度は、出発物質として用いられるビスフェノールAが、テトラブロモビスフェノールAに完全に変換しているという想定に基づく)。ビスフェノールAは反応槽に、溶かした状態で、または好適な固体添加装置(addition feeder)を使用して固体として、またはジクロロメタン中のスラリーとして添加することが可能である(最後の選択肢が好ましい)。臭素化反応を上記の好ましい条件により(すなわち、常圧下還流温度にて)実施する場合、上記スラリー中のビスフェノールA出発物質の含有量は、最も好ましくは7.0〜12.3重量%である。このビスフェノールA出発物質の濃度は、最終反応混合物の有機相中に所望される濃度のテトラブロモビスフェノールAを生じる(すなわち、最終有機相中に約15〜25重量%のテトラブロモビスフェノールA)。
形成された全てのHBrが反応槽中に存在する酸化剤によって臭素に量的に酸化されたと考えると、完全なテトラ臭素化に必要とされる臭素の総量は、1モルのBPAにつき一般に2モルである。化学量論的にわずかに過剰量の臭素、すなわち、1モルのビスフェノールAにつき2モルをわずかに上回る臭素を使用することが好ましく、より好ましくは、1モルのビスフェノールAにつき2.05〜2.1モルの臭素を使用する。
本発明において用いられる酸化剤、すなわち過酸化水素は、通常30〜70重量%、好ましくは約50重量%の濃度の水溶液の形態で提供される。過酸化水素は、反応中に形成された実質的に全ての臭化水素を臭素に変換するのに十分な量で用いる。過酸化水素の量は、1モルのビスフェノールAにつき2〜2.1モルが好ましく、さらに好ましくは1モルのビスフェノールAにつき2.05〜2.1モルである。
有機相と水相との容積比は、それぞれ用いたジクロロメタンおよびH2O2 水溶液中のビスフェノールA出発物質および酸化剤の濃度に応じて、好ましくは少なくとも6:1、最も好ましくは6:1〜26:1である。例えば、用いた過酸化水素水溶液の濃度が約50重量%であり、ジクロロメタン中のビスフェノールAの濃度が7〜12.3重量%(最終反応混合物中のテトラブロモビスフェノールAが15〜25重量%である所望される濃度に対応する)場合、有機相と水相との容積比は最も好ましくは、10:1〜18:1でなければならない。
反応がバッチ式で実施される場合、様々な反応物質および試薬を所望される順序に従って反応槽に導入することができる。しかし、酸化剤が臭素に対して過剰モルにて存在する条件下で、反応を実施するのが好ましい。したがって、反応槽にビスフェノールA、ジクロロメタン溶媒および予定量の内の一部の過酸化水素水を周囲温度にて入れ、その後当該反応槽に残りの酸化剤を、臭素、より好ましくはジクロロメタン中の臭素溶液と同時に段階的に添加する。反応槽への酸化剤および臭素は、小分けにして(a portion-wise manner)段階的に添加しても良いし、最も好ましくは継続的に、一定の割合で添加しても良い。この割合は、様々な製造過程のパラメーター(例えば、冷却システムの有効性など)に応じて、当業者が容易に調整することができる。例えば、臭素は10〜120分間かけて一定の割合で反応槽に添加することができる。上記条件下にて、過酸化水素は反応混合物中に、臭素に対して過剰モルにて存在する。
本発明におけるバッチ式臭素化反応の典型的な反応時間は、45〜140分の間で変えることができる。しかし、上記反応時間は、反応の規模、熱除去の速度などに応じて、短くも長くもなり得る点を理解すべきである。
本発明方法における臭素化反応は、バッチ式でも、複合型のバッチ-連続式(例えば、バッチ反応器にて臭素化反応を開始し、連続式にて臭素化反応を完了する)によっても行うことができる。本発明における臭素化反応を連続式で実施するのが特に有利である。臭素化反応の過程で用いた還流条件によって、十分に迅速な反応速度を確保することができ、その間、反応混合物中に存在する大量の有機溶媒が反応生成物の沈殿を抑え、その結果、固体を含まない液状反応物の連続的な取り出しおよび供給が容易となる。本発明における臭素化反応により、副生成物が大量に形成されることなく、実質的にトリブロモフェノールを含まない反応混合物が得られることが予想外にも見出された。本明細書中において、「実質的にトリブロモフェノールを含まない」という用語は、最終臭素化混合物中のトリブロモフェノール含有量がTBBAと比べて0.6%未満(GC面積%)であることを意味する。
従って、本発明の特に好ましい実施形態において、以下のステップを含む方法が提供される:
i)第1反応量にビスフェノールAおよび臭素を連続的に供給し、これらをジクロロメタン中過酸化水素水の存在下、室温〜還流温度の温度にて反応させ(ジクロロメタンは当該反応により形成されたビスフェノールAの臭素化誘導体をほぼ溶解するのに十分な量で用いられる)、実質的に固体を含まない反応物を第1反応量より連続的に取り出し、当該反応物と臭素とを第2反応量にて接触させ、テトラブロモビスフェノールAを主生成物とする実質的に固体を含まない最終反応混合物を形成するステップ;
ii)実質的に固体を含まない最終反応混合物を水相および有機相に分離し、有機相よりテトラブロモビスフェノールAを沈殿し、そして有機相より沈殿したテトラブロモビスフェノールAを単離するステップ。
本明細書中において「主生成物」という用語は、最終臭素化混合物中に得られた生成物が、少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%テトラブロモビスフェノールA(GC解析によって得られた面積%)を含むことを意味する。
連続式工程に関して、本明細書における「反応量」という用語は、それに反応物質が連続して導入される量および、そこから生成物が取り出される量を意味しており、当該反応量内にて原則的に一定量の反応混合物が維持されている。本発明方法において、臭素化反応は第1反応量中にて開始し、この反応量にビスフェノールA出発物質および好適量の臭素を連続して供給し、そして過酸化水素の存在下ジクロロメタン中にて反応させ、ビスフェノールAの臭素化誘導体の混合物(この混合物は好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも65%、最も好ましくは少なくとも75%テトラブロモビスフェノールA (GC面積%)を含む)を含有する実質的に固体を含まない反応物を形成する。その後、第2反応量に上記固体を含まない反応物を好適量の臭素と共に連続して供給し、所望されるテトラ臭素化を完了する。
一般的に、第1および第2反応量はそれぞれ別個の反応槽に提供し、当該反応槽は連続撹拌反応器の形態であることが最も好ましい。しかし、本発明における第1および第2反応量は必要に応じて、単一の反応槽(例えば、管状の栓流型反応器)に提供しても良い点を理解すべきである。
図1は、本発明において連続式方法を実施するにあたって、反応器の特に好ましい配置を模式的に示す。図1に示される好ましい実施形態において、第1反応量1は連続撹拌反応器11に提供され、これにビスフェノールA、臭素、過酸化水素水溶液およびジクロロメタンを連続して加え、そしてここからビスフェノールAの臭素化誘導体を含む反応物を連続的に取り出す。第2反応量2は最も好ましくは、2またはそれ以上、最も好ましくは3個の連続して配置されている連続撹拌反応器(21、22および23に示されている)内、あるいは管状栓流型反応器(示していない)内に提供される。好適量の臭素は連続して配置されている最初の連続撹拌反応器21に連続して供給し、その間、ビスフェノール-Aの臭素化誘導体を含む、反応器11より出てきた反応物は最初の反応器21に連続して供給される。その結果、反応器21、22および23内に提供されている第2反応量内にて徐々に所望されるテトラ臭素化が行われる。
反応物質を反応器11に効率的に導入するために、別個の撹拌槽(図中に示していない)にてジクロロメタン中にビスフェノールAのスラリーを作製し、その後、このスラリーを上記撹拌槽より連続反応器11に重力流またはスラリーを供給するポンプによって供給するのが、特に好ましい。この方法によって、ビスフェノールAを連続反応器11内の所望される任意のポイントに封管(dip pipe)によって(必要な場合)供給することができる。一般的な方法スキームに関して上記の、ビスフェノールAとジクロロメタン溶媒との好ましい重量比はまた、臭素化反応が図1に示されるように連続式で実施される場合にも適用される。
上記のように、1モルのビスフェノールAにつき2モルをわずかに上回る臭素を用いるのが好ましく、より好ましくは2.05〜2.1モルの臭素を使用する。上記説明より理解し得るように、臭素化反応に用いられる臭素の総量は第1反応量および第2反応量に分割される(以下に詳細に説明する)。
反応器11に入れられる臭素の量は好ましくは、完全なテトラ臭素化に必要とされる全臭素の80〜95%であり、より好ましくは約85〜93%である。臭素は純粋な液体臭素またはジクロロメタン溶液の形態で、反応器11に、ビスフェノールAの供給と同時に供給する。臭素の総量の少なくとも80%を反応器11に導入することによって、有機相中に完全に溶解可能なビスフェノールAの臭素化誘導体の混合物の形成を促進し、そして反応器11内の反応物中の固体からなる沈殿物を反応器の排出口により取り除く。具体的には、上記条件下にてビスフェノールAの臭素化誘導体には、ごく少量の望ましくない分解副生成物が混入しており、例えばトリブロモフェノールの量は、ビスフェノールAの臭素化誘導体の総量に対して0.2重量%未満であることが最も好ましい。
本発明において用いられる酸化剤、すなわち、過酸化水素は水溶液の形態で、臭素の供給と同時に反応器11に供給される。過酸化水素は用いられる臭素の量と同じ量を反応器11に添加し、残りは臭素化を完了させるために第2反応量に添加する。しかし操作上の観点から、全ての過酸化水素を第1反応量に、すなわち、反応器11に供給するのが好ましい。
反応器11の内容物は35℃〜還流温度、最も好ましくは還流温度周辺の温度に維持する。
本発明の方法は、2つの発熱反応、つまり臭素化と臭化水素の酸化、ならびに水相によるHBrの発熱吸収を含む。臭素化は好ましくは還流冷却器を使用して還流にて行うことにより、溶媒蒸発法によって熱除去が可能となる。かかる溶媒蒸発法は、熱交換器により反応物を冷却するよりも効率的である。
反応器11における滞留時間は主に、冷却システムの効率に左右される。反応器への投入量および反応器からの排出量から成る供給速度を調節して、滞留時間を約0.5〜4時間、好ましくは0.6〜1.5時間とする。本明細書において、反応器の滞留時間とは、反応器の含有物量を反応物が反応器より取り出される際の流速で除したものを指す。
反応器11より連続的に取り出された反応物は二相系であり、ジクロロメタン中に溶解したビスフェノールAの臭素化誘導体を含有する有機相と主に過剰量の過酸化水素を含有する水相から成る。回収した反応物を、連続して配置されている反応器21、22、23のうちの最初の反応器21に連続的に供給し、その間、臭素もまた反応器21に連続的に供給し、反応物中に存在する上記ビスフェノールAの臭素化誘導体の所望されるテトラ臭素化をなし得る。その結果、主生成物として所望されるテトラブロモビスフェノールAを含有する有機相と水相とから成る固体を含まない反応混合物を得ることができる。
上記のように、完全なテトラ臭素化に必要とされる全臭素の残りの5〜20%は反応器21に供給する。連続的に配置されている反応器21、22および23内の温度は、35〜40℃、好ましくは38〜40℃、最も好ましくは還流温度である。反応器21、22および23の総容積を調節して、全滞留時間が、テトラ臭素化を完了するのに十分であるようにする。反応器の内の全滞留時間は、約10〜30分間、好ましくは10〜20分間である。
未反応の臭素が、ar-臭素化のために十分なオルト位を有しておらず、結果として主なテトラブロモビスフェノールA 分解生成物としてトリブロモフェノールおよび4-イソプロピリデン-2,6-ジブロモフェノールの形成を生じるテトラブロモビスフェノールAのイプソ位を攻撃する場合、臭素化の終了時に相当量の望ましくない副生成物が生じることが見出された。一方、臭素化反応終了時に過剰量の臭素が存在することによって、必要程度の臭素化を許容できる滞留時間内に達成することができるが、過剰量の臭素はテトラブロモビスフェノールAの分解を生じ得る。
最終反応混合物の有機相中の未反応の臭素濃度は、臭素化の程度および望ましくない副反応(すなわち、テトラブロモビスフェノールAの分解)レベルの指標となる。最終有機相中の未反応の臭素の最適濃度は、約1,000〜約10,000 ppm、好ましくは約2,000〜約6,000 ppm (ppm値は最終反応混合物の有機相の重量に基づく)であることが見出された。これらの濃度は、本発明の製造過程の選択したパラメーターの範囲内で所望される程度の臭素化が得られ、かつ望ましくない副生成物の形成が十分に抑制されていることを示す。
最終反応混合物中の未反応の臭素濃度が約1000 ppm 未満である場合、所望されるテトラ臭素化反応は第2反応量に達しない。最終反応混合物中の未反応の臭素濃度が約10000 ppm以上である場合、高収率で高純度のテトラブロモビスフェノールAを得ることを妨げる量まで副生成物が急増する。
所望されるレベルの未反応の臭素は、第2反応量が提供される、複数個連続して配置されている反応器のうちの最後の反応器(すなわち、図1における反応器23)の排出口における当該臭素濃度を測定し、および当該複数の反応器のうちの最初の反応器(すなわち、図1における反応器21)に供給される臭素を最終反応量中の未反応の臭素の所望される濃度に調節することによって維持する。
臭素化反応(バッチ式または連続式)が完了したら、最終反応混合物を還元剤で処理する。当該還元剤は亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、水酸化アンモニウムおよびヒドラジンから成る群より選択されるのが最も好ましい。
特に好ましくは、臭素化反応において、ジクロロメタン対ビスフェノールAを十分に大きな比率で使用する。その結果、テトラブロモビスフェノールAの自然沈降は実質的に、臭素化反応自体だけでなく、その後の最終反応混合物の後処理の過程でも(少なくとも水相から有機相を分離するまで)抑えられる。自然沈降により臭素化反応の間に有機相より得られたテトラブロモビスフェノールAは、有機混入物および無機混入物をとらえる。これは、その色特性を悪化し得る増加量の有機混入物および増加量の臭化物を含む。さらに、相分離が完了する前に分離した最終反応混合物より自然に分離したテトラブロモビスフェノールAの質は、分離した有機相(特に、水で十分に洗浄した分離した有機相)から沈殿した際に得た生成物と比較して、粒径分布および流動性特性の観点において劣っていることが見受けられた。臭素化反応に用いられるビスフェノールA 出発物質およびジクロロメタンの好ましい重量比(上記)(溶媒中の出発物質の濃度の7〜12.3重量%)は、少なくとも、粗製反応混合物がその有機相および水相に分離するまで、粗製反応混合物からの生成物の自然沈降を適切に抑制するのに十分である。
したがって、上に解説したように未反応の臭素および微量の過酸化水素の還元の後、テトラブロモビスフェノールAが溶解している有機相と無機塩を含有する水相とから成る二相の混合物をさらに、バッチ式または連続式で処理し、そこから生成物を回収する。二相の混合物を分離し、実質的に固体を含まない有機相を水で洗浄する。撹拌反応器をバッチ式で実施する洗浄に使用する。継続的に洗浄するために、連続撹拌反応器またはKarrカラムのカスケードを使用した向流抽出を用いることができる。
水を用いた有機相(生成物が溶解している)の洗浄は、残留している臭化物および硫酸塩の含有量を所望される最小レベルまで減らし、それらが生成物の結晶化の間に沈殿するのを避けるのに有用である。かかる沈殿は生成物の質を低下させる。洗浄は製造過程の後処理過程に用いられる装置の耐食性に必要とされるpH値となるまで実施する。一般に、有機相の洗浄は2回連続的に等量の水を用いて実施するのが好ましいが、用いる水の総量は有機相の量と少なくとも等量である。
洗浄した有機相は、実質的に全てのテトラブロモビスフェノールAを溶液として含有する溶液の形態である。本発明の方法は、洗浄した有機相よりテトラブロモビスフェノールAを「沈殿する」ステップを要する。この沈殿とは好ましくは結晶化であり、所望の粒径分布を有する高純度の生成物を得ることを目的としている。結晶化は一般に公知の方法(例えば、フラッシュ冷却結晶化法および蒸発結晶法など)により実施する。最も好ましくは、ジクロロメタン溶液からの生成物の結晶化は、当該溶液をその溶媒の一部を蒸発することによって濃縮して懸濁液を形成し(当該懸濁液中のテトラブロモビスフェノールAの濃度は60〜70重量%が最も好ましい)、その後当該懸濁液を5〜10℃の温度に冷却することを含む。
液相からの結晶の分離は、従来的な固体−液体分離装置(例えばフィルターおよび遠心分離機)を使用して行う。生成物のケーキを、フィルターまたは遠心分離機から除去する前に、冷却したジクロロメタンを用いて洗浄する。ろ液は最初の有機相と同様に処理して、さらに得られた生成物を回収しても良い。
本発明方法によって得られたテトラブロモビスフェノールA生成物は、融点が180℃を超えており、好ましくは少なくとも99%の純度(ガスクロマトグラフィー面積)であり、特定の粒径および粒径分布を有する白色の自由流動性粉体であり、臭化物イオン含有量が10 ppm未満であり、アセトン中50%溶液のAPHA色度が30未満であり、および1.5 N水酸化ナトリウム中20%溶液のAPHA色度が70未満である。収率は、用いたビスフェノールA 出発物質の量に基づいて95%以上である。
多数の例示的かつ非限定的な本発明の実施形態が、以下の実施例に関連して記載される。
実施例において、特に明記しない限り、溶質および固体生成物の特性について用いられている全ての%は、ガスクロマトグラフィー(GC)解析によって得られた面積%値である。
以下の略語が実施例中に用いられている:
BPA- ビスフェノールA
MC- ジクロロメタン
TBBA- テトラブロモビスフェノールA
TBP- トリブロモフェノール
PSD- 粒度分布
反応混合物および最終生成物のGC解析は、HP 5890シリーズII装置にて行った。オーブン:初期温度130℃、0.5分間維持し、その後、30℃/分にて300℃まで上げた。インジェクター:250℃。検出器(FID):300℃。カラム:キャピラリー、Rtx 1, 15 m×0.25 mm (ID) ×0.25μm,クロスボンド処理した100%ジメチルポリシロキサンを充填した。分割比:1:100。流速(N2):1 ml/分。
反応混合物中のTBPおよびTBBAの定量的HPLC解析を、Varian 9010機器で行った。計量した有機相のサンプル(2〜3g)は減圧下、室温にて、7分間かけてストリッピングし、MCを完全に除去した。固形残留物を計量し、既知量のアセトニトリル(5〜7 g)に溶解した。このアセトニトリル溶液を定量的に分析した。用いたカラムは、5ミクロンKromasil KR100-5 C18 (25 cm×4.6 mm)であった。HPLC条件:流速1.5 ml/分、検出:λ= 230 nm;溶出:80%アセトニトリル、20%水、0.1%酢酸。
TBBAの粒径分布(PSD)は、Mastersizer 2000におけるMalvernレーザー回折法によって、1重量%界面活性剤(Atlox)を添加した水中にて測定した。
無機臭化物含有量の定量は、アセトン中銀滴定によって行った。
アセトン中のTBBA溶液(50%)の色度(APHA)は、光度計またはコンパレータを使用して、APHA (Hazen)単位について測定する。
1.5N NaOH中のTBBA溶液(20%)の色度(APHA)は、光度計またはコンパレータを使用して、APHA (Hazen)単位について測定する。
実施例1
テトラブロモビスフェノールAの連続式製造
i)システムの概要
当該システムは、図1に示されている配置を参照にして記載されている。
第1反応量 (この中で臭素化を開始した)
反応システムは、ジクロロメタン中のBPAのスラリーを製造するための撹拌槽および反応器(図1中11で示される)から成り、機械式撹拌器、温度計および還流冷却器を備えていた。BPAスラリー、臭素(ニートまたはジクロロメタン中の溶液として)および過酸化水素水は反応器に、蠕動ポンプによって連続的にかつ同時に供給した。BPA、臭素および過酸化水素を添加するのと同時に、反応混合物は重力流によって次の反応器(図1中の21で示される)に絶え間なく流れ落ち、それによって反応器11中の反応量は一定のままであった。
第2反応量(この中で臭素化を完了した)
第2反応量を、一連の3つの反応器(図1中21、22および23で示される)から成るカスケード内に供給した。各反応器は機械式撹拌器、温度計および還流冷却器を備えていた。反応器11より流出する反応物および臭素化の完了に必要とされる残りの臭素は、当該カスケード中の最初の反応器21に連続的に供給した。この反応溶液は、カスケード中の一の反応器から次の反応器へと重力流によって流れ落ちた。反応器11に由来する部分的に臭素化されている物質と臭素とを供給するのと同時に、上記反応器(21、22および23)のカスケードのうちの最後の反応器23から流出する最終臭素化混合物は、当該反応器のカスケード内の反応量が一定のままであるような流速で、撹拌槽に絶え間なく流れ落ちた。還元剤溶液は撹拌槽に連続して供給し、未反応の臭素および微量の過酸化水素を中和化した。
ii)開始
連続操作を開始するために、ビスフェノールAの臭素化誘導体の混合物(最初の反応ゾーンから流出した流出液の混合物に相当する組成を有する)をバッチ式で製造した。
予め調製したジクロロメタン中11.4重量%のBPAスラリー(806 g)および54.3 gの52%過酸化水素水溶液を、機械式撹拌器、温度計および還流冷却器を備えた2L反応器に入れた。この反応器の内容物に123 gの臭素を、還流条件下にて1時間かけて加えた。この反応混合物は固体を含まなかった。この溶質は、0.4%ジブロモビスフェノールA、25%トリブロモビスフェノールAおよび74.2%TBBAを含んでいた。このように調製した約650 mlのビスフェノールAの臭素化誘導体混合物を反応器11に入れた。残りは反応器21および22に入れた。
iii) 連続操作
予め調製したジクロロメタン中11.4重量%のBPAスラリー、52%H2O2水溶液および臭素は、それぞれ11.5、0.78および1.75 g/分の一定の割合で供給を開始した。Br2対BPAおよびH2O2対BPAのモル比(すなわち、単位時間当たりの反応器11に加えたBr2およびH2O2のモル量を単位時間当たりに加えたBPAのモル量で除した数)はそれぞれ、1.9および2.07であった。それらの試薬の継続的な供給を開始するのと同時に、継続的な取り出しも開始し、反応量を650 mlに維持した。臭素化混合物を反応熱によって還流にて維持した(39〜41℃)。
反応器11における平均滞留時間は約60分間であった。反応器11からの流出液は、0.1%未満トリブロモフェノール、0.5〜1%ジブロモビスフェノールA、22〜25%トリブロモビスフェノールAおよび74〜77%TBBAから成る溶質組成にて安定させた。
反応器11からの流出液を反応器(21、22および23)のカスケードに供給した。このカスケードは、3つの類似した反応器から構成した。完全なテトラ臭素化に必要とされる残りの臭素を、反応器11からの流出液と同時に、約0.15 g/分の一定の速度で、カスケードの最初の反応器(21)に供給した。反応器(21、22および23)のカスケードにおける反応温度は38〜40℃であった。このカスケード内の反応混合物の総量は、最終溶液を同時に取り出すことによって160 mlに制御した。反応器21、22および23のカスケードにおける平均滞留時間は約15分間であった。1.5時間の継続的操作の後、カスケードからの流出液は、0.2〜0.3%トリブロモフェノール、0.5〜1.5%トリブロモビスフェノールAおよび97.5〜99.2%TBBAから成る溶質組成にて安定させた。反応器11ならびに反応器21、22および23のカスケードは、試薬の継続的な添加および反応混合物の取り出しを行いながら6時間操作した。
4つ全ての反応器の生産性は、安定した継続的な操作の間、1mlの反応量につき1時間でTBBA約0.28 gと算出された。
反応器21への臭素の供給速度を制御し、臭素化段階から外れる(すなわち、反応器23から流出する)反応混合物の色度(明るい黄橙色)を維持した。比色計(USB2000 Plug-and-Play Spectrometer)によって測定した最終反応混合物の有機相中の未反応の臭素濃度は上記操作の間、2400〜4500 ppmで変化した。
第2反応量(図1に示される配置における反応器21、22および23に提供される)由来の流出液からなる組成物を安定させた後、有機相と水相とからなる、固体を含まない完全に臭素化された混合物を4時間かけて撹拌槽中に回収した。この間、38%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を一定の速度で撹拌槽に供給し、未反応の臭素および微量の過酸化水素を還元した。
iv)反応混合物の処理
回収した二相からなる、固体を含まない混合物はTBBAを含有する有機相と無機塩を含有する水相とから成り、これをさらにバッチ式で処理した。有機相を分離した。定量的HPLC解析によるとこの有機相は、0.11重量%トリブロモフェノールおよび23.2重量%TBBAを含んでいた。
水(2×1500 ml)で有機相を洗浄した後、ジクロロメタンの一部をストリッピングし、形成したスラリー中のTBBA含有量を65〜70%とした。スラリーを撹拌しながらゆっくりと10℃まで冷却し、1時間この温度で維持した。この固体をろ過によって分離し、冷却したジクロロメタンで洗浄し、そして乾燥した。TBBAの第一生成物(586 g)を、181.4℃の融点を有する自由流動性の白色粉体として得た。これはGC解析によると、0.4%トリブロモビスフェノールAおよび99.6%TBBAであった。そのAPHA色度は以下の通りであった:アセトン中生成物の50%溶液にて15および1.5 N NaOH中20%溶液にて10。臭化物イオン含有量は3 ppmであった。Malvernレーザー回折法によって水中で測定した粒径分布(PSD) は以下の通りであった:d(0.1) 154μm, d(0.5) 300μm, d(0.9) 545μm, 平均粒径 327μm。
ろ過後に残った母液および洗浄液を最初の有機相と同様に処理した。TBBAの第二生成物(128 g)を181.2℃の融点を有する自由流動性の白色粉体として得た。これはGC解析によると、0.7%トリブロモビスフェノールAおよび99.3%TBBAであった。そのAPHA色度は以下の通りであった:アセトン中生成物の50%溶液にて20および1.5 N NaOH中20%溶液にて40。臭化物イオン含有量は7 ppmであった。そのPSDは以下の通りであった:d(0.1) 142μm, d(0.5) 336μm, d(0.9) 780μm, 平均粒径 407μm。
第二生成物のろ過および洗浄後に残った母液を、最初の有機相と同様に処理した。第三生成物(13 g)を180.0℃の融点を有するオフホワイト色の粉体として得た。これはGC解析によると、0.3%トリブロモフェノール、1.2%トリブロモビスフェノールAおよび98.4%TBBAであった。
単離したTBBAの総量(727 g)は、4時間の安定した継続的な操作の間に反応に供給されたBPAに基づいて96.8%の収率に相当した。
実施例2
テトラブロモビスフェノールAのバッチ式製造
機械式撹拌器、温度計および還流冷却器を備える1L反応器に、周囲温度にてBPA (45.66 g, 0.2 mol)、MC (366 g)および52%過酸化水素水溶液 (8.4 g, 0.128 mol)を入れた。残りの52%過酸化水素水溶液 (18.7 g, 0.286 mol)と予め22 g MCと混合した臭素 (66.2 g, 0.414 mol)とを、それぞれ15分間および1時間かけて一定の速度で、蠕動ポンプによって同時に供給した。反応熱により臭素化を還流(39〜41℃)に維持した。臭素を導入し終えてから約15分後、亜硫酸水素ナトリウム-亜硫酸ナトリウム溶液を加え、未反応の臭素を還元した。最終臭素化混合物は二相から成り、固体は含んでいなかった。
その後の生成物を結晶化するための後処理法および結晶の単離は、実施例1にて継続的な操作について記載した方法と同様に行った。
実施例3 (比較)
BPAの臭素化は、予め調製したジクロロメタン中23.3重量%BPAスラリーを使用してバッチ式で行った。このスラリーは約42重量%の最終反応物の有機相中のTBBAの算出濃度に相当する。
機械式撹拌器、温度計および還流冷却器を備える1L反応器に、周囲温度にてジクロロメタン中23.3重量%のBPAスラリー (0.4 mol BPA) 391.4 gおよび53.6 gの52%過酸化水素水溶液 (0.82 mol)を入れた。臭素(132.4 g, 0.828 mol)を1時間かけて反応器の内容物に加えた。この臭素化混合物を反応熱により還流(39〜41℃)に維持した。形成したTBBAの約60%が臭素化の間に沈殿した。臭素を導入し終えてから15分後、亜硫酸水素ナトリウム溶液を加えて、未反応の臭素を還元した。さらに430 gのジクロロメタンをスラリーに加え、固体を含まない二相の混合物を得た。定量的HPLC解析によると、この有機相は0.3重量%トリブロモフェノールおよび22.7重量%TBBAを含んでいた。分離後、有機相を実施例1に記載したのと同様の方法で処理した。TBBAの第一生成物(163.2 g)を181.3℃の融点を有する自由流動性の白色粉体として得た。これはGC解析によると、0.5%トリブロモビスフェノールAおよび99.5%TBBAであった。そのAPHA色度は以下の通りであった:アセトン中生成物の50%溶液にて15および1.5 N NaOH中20%溶液にて20。臭化物イオン含有量は5 ppmであった。そのPSDは以下の通りであった:d(0.1) 142μm, d(0.5) 271μm, d(0.9) 503μm, 平均粒径 271μm。
自由流動性の白色粉体である第二生成物(31 g)は、融点が181.1℃であった。これはGC解析によると、0.7%トリブロモビスフェノールAおよび99.3%TBBAであった。そのAPHA色度は以下の通りであった:アセトン中生成物の50%溶液にて30および1.5 N NaOH中20%溶液にて70。臭化物イオン含有量は8 ppmであった。そのPSDは以下の通りであった:d(0.1) 141μm, d(0.5) 326μm, d(0.9) 610μm。帯黄色粉体であるTBBAの第三生成物(7.9 g)は、臭素化フェノールと共に、1.3%トリブロモビスフェノールA、98.3%TBBAを含んでいた(GC面積)。
単離したTBBAの総量(202.1 g)は、BPAに基づいて92.9%の収率に相当した。約42%(本発明方法における25%未満との比較)の最終有機相中のTBBAの算出濃度に相当する比較的少量のジクロロメタンを用いて臭素化を実施することによって、水相に対する有機相の容積比が著しく減少することは明らかである。本発明者らは、多くの臭素が水相に入るために、次亜臭素酸の形成が増加し、比較的大量のトリブロモフェノールおよび他の臭素化フェノールの形成と共に、TBBAおよび他の臭素化ビスフェノールAの分解が最終的に増大すると考えた。
実施例4 (比較)
BPAの臭素化は、予め調製したジクロロメタン中15.2重量%のBPAスラリーを使用してバッチ式で行った。このスラリーは約30重量%の最終反応物の有機相中のTBBAの算出濃度に相当する。
機械式撹拌器、温度計および還流冷却器を備える1L反応器に、周囲温度にてジクロロメタン中15.2重量%のBPAスラリー (0.4 mol BPA) 600 gおよび53.6 gの52%過酸化水素水溶液 (0.82 mol)を入れた。臭素(132.4 g, 0.828 mol)を1時間かけて反応器の内容物に加えた。この臭素化混合物を反応熱により還流(39〜41℃)に維持した。全ての臭素を供給した後、臭素化を完了するのに15分以上を必要とした。亜硫酸ナトリウム溶液を加えて、未反応の臭素および微量の過酸化水素を還元した。数分以内にTBBAが沈殿し始め、相当な量のTBBA固体を含有する懸濁液を得た。この懸濁液を周囲温度にてろ過し、そしてケーキを湯(2×200 ml)で洗浄した。181.7℃の融点を有する流動性の乏しい白色の微粉体として第一生成物(87 g)を得た。これはGC解析によると、0.4%トリブロモビスフェノールAおよび99.6%TBBAであった。1.5 N NaOH中20%溶液のAPHA色度は170であった。臭化物イオン含有量は52 ppmであった。そのPSDは以下の通りであった:d(0.1) 2μm, d(0.5) 26μm, d(0.9) 93μm, 平均粒径 36μm。この質の低い生成物は形成された全TBBAの約40%に相当した。
この有機相を水で洗浄し、上記実施例に記載されるのと同様の方法で結晶化した。融点が181.1℃である自由流動性の白色粉体としてTBBAの第二生成物(114.9 g)を得た。これはGC解析によると、0.5%トリブロモビスフェノールAおよび99.5%TBBAであった。そのAPHA色度は以下の通りであった:アセトン中生成物の50%溶液にて20および1.5 N NaOH中20%溶液にて70。臭化物イオン含有量は6 ppmであった。そのPSDは以下の通りであった:d(0.1) 135μm, d(0.5) 290μm, d(0.9) 490μm。帯黄色粉体であるTBBAの第三生成物(5 g)は、臭素化フェノールと共に1.2%トリブロモビスフェノールAおよび98.4%TBBAを含んでいた(GC面積)。単離したTBBAの総量(206.9 g)は、BPAに基づいて95.1%の収率に相当した。
本実施例は、最終反応混合物からのTBBAの自然沈降を防ぐのに十分量ではないジクロロメタンを用いて臭素化を実施した場合の問題を示す。このような条件下で沈殿した生成物は、TBBA 結晶中に含まれる無機臭化物および着色物を効率的に精製できないことを見出した。さらに、水相の存在下にて自然沈降させると、生成物(第一生成物)は非常に小さな粒子からなり、流動性が乏しかった。特定の粒径および粒径分布を得ることはできなかった。
本実施例において得られた結果を以下にまとめる。
Figure 0005199869
Figure 0005199869
本発明の連続式方法を実施するための、反応器の好ましい配置を示す。

Claims (12)

  1. テトラブロモビスフェノールAの作製方法であって、
    i)第1反応量にビスフェノールAおよび臭素を連続的に供給し、該ビスフェノールAと臭素を過酸化水素水の存在下、ジクロロメタン中室温〜還流温度の温度にて反応させ、ここで、それによって形成されたビスフェノールAの臭素化誘導体がほぼ溶解するのに十分な量で該ジクロロメタンが存在し、
    該第1反応量から実質的に固体を含まない反応物を連続的に取り出し、該反応物と臭素とを第2反応量中で接触させ、テトラブロモビスフェノールAを主生成物とする実質的に固体を含まない最終反応混合物を形成するステップ、
    ii)ステップi)にて得られた実質的に固体を含まない最終反応混合物を水相および有機相に分離し、該有機相よりテトラブロモビスフェノールAを沈殿し、そして沈殿したテトラブロモビスフェノールAを該有機相より単離するステップ、
    を含む、上記方法。
  2. 臭素化反応を30℃〜還流温度の温度で実施する、請求項1記載の方法。
  3. 有機相と水相との容積比が少なくとも6:1である、請求項1記載の方法。
  4. 有機相中のテトラブロモビスフェノールAの濃度が15〜25重量%である、請求項1記載の方法。
  5. 第1反応量に供給される臭素の量が臭素化反応に用いられる臭素の総量の80〜95%である、請求項1記載の方法。
  6. ステップi)にて得られた実質的に固体を含まない最終反応混合物の有機相が未反応の臭素を1000〜10,000 ppm含む、請求項1記載の方法。
  7. 第1反応量を最初の連続反応器に提供し、第2反応量を少なくとも2つの連続して配置されている連続反応器内に提供し、該最初の反応器から流出する反応物および臭素を少なくとも2つの連続して配置されている反応器の内の最初の反応器に連続して供給する、請求項1記載の方法。
  8. ステップ(i)にて得られた実質的に固体を含まない最終反応混合物を、水相および有機相に分離する前に、還元剤で処理して未反応の臭素および過酸化水素を還元する、請求項1記載の方法。
  9. 還元剤が亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムおよびヒドラジンからなる群より選択される、請求項8記載の方法。
  10. 有機相からテトラブロモビスフェノールAを沈殿する前に、分離した有機相を水で洗浄し、実質的に全てのテトラブロモビスフェノールAを溶質として含有するジクロロメタン溶液として洗浄した有機相を得るステップをさらに含む、請求項8記載の方法。
  11. 有機相からのテトラブロモビスフェノールAの沈殿を、洗浄した有機相の一部のジクロロメタン溶媒を蒸発させて懸濁液を形成し、該懸濁液を冷却して、液相よりテトラブロモビスフェノールA結晶を分離することによって行う、請求項10記載の方法。
  12. 得られたテトラブロモビスフェノールAが1または複数の以下の特徴を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
    (i) 少なくとも99%の純度(ガスクロマトグラフィー面積);
    (ii) 10 ppm未満の臭化物イオン含有量;
    (iii) アセトン中50%溶液のAPHA色度が30未満;
    (iv) 1.5 N水酸化ナトリウム中20%溶液のAPHA色度が70未満;
    (v) 180℃より高い融点。
JP2008520058A 2005-07-07 2006-07-03 テトラブロモビスフェノールaの作製方法 Expired - Fee Related JP5199869B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
IL169592 2005-07-07
IL169592A IL169592A (en) 2005-07-07 2005-07-07 Process for making tetrabromobisphenol a
PCT/IL2006/000771 WO2007007315A2 (en) 2005-07-07 2006-07-03 A process for the preparation of tetrabromobisphenol a

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009500395A JP2009500395A (ja) 2009-01-08
JP5199869B2 true JP5199869B2 (ja) 2013-05-15

Family

ID=37637580

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008520058A Expired - Fee Related JP5199869B2 (ja) 2005-07-07 2006-07-03 テトラブロモビスフェノールaの作製方法

Country Status (6)

Country Link
US (1) US7834221B2 (ja)
EP (1) EP1899288A4 (ja)
JP (1) JP5199869B2 (ja)
CN (1) CN101258118B (ja)
IL (1) IL169592A (ja)
WO (1) WO2007007315A2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8664330B2 (en) * 2003-04-04 2014-03-04 Henkel US IP LLC Reactive hot melt adhesive with improved hydrolysis resistance
CN100582070C (zh) * 2009-02-20 2010-01-20 山东默锐化学有限公司 四溴双酚a的制备方法
CN101531572B (zh) * 2009-03-20 2012-01-11 淮海工学院 四溴双酚a钠盐和四溴双酚a的联产方法
CN101519340B (zh) * 2009-04-05 2011-12-28 淮海工学院 六溴环十二烷和四溴双酚-a的联产方法
CN102879493A (zh) * 2012-09-21 2013-01-16 东莞市美塑塑料科技有限公司 塑胶材料中四溴双酚a的测定方法
DE102019106524B4 (de) * 2019-03-14 2024-06-06 Mpm Environment Intelligence Gmbh Verfahren zum vollständigen Recyceln von mit anorganischen Fasern verstärkten Epoxidverbundwerkstofen mit Borhalogeniden
CN112778094B (zh) * 2021-02-02 2023-02-17 山东迈特新材料科技有限公司 一种高纯度四溴双酚a的制备工艺
CN114656335A (zh) * 2022-04-13 2022-06-24 山东海王化工股份有限公司 一种四溴双酚a中间层物料回收再利用工艺
CN115487529B (zh) * 2022-09-15 2023-09-12 山东金宜善新材料有限公司 四溴双酚a生产用循环结晶设备

Family Cites Families (16)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE159066C (ja)
DE211781C (ja) 1909-02-24
US3546302A (en) 1964-04-03 1970-12-08 Dow Chemical Co Process for brominating phenols
DE2227439B2 (de) 1972-06-06 1977-05-05 Deutsche Gold- Und Silber-Scheideanstalt Vormals Roessler, 6000 Frankfurt Chlorierung oder bromierung phenolischer verbindungen
DE2613969C3 (de) 1976-04-01 1979-05-03 Chemische Fabrik Kalk Gmbh, 5000 Koeln Verfahren zur Herstellung von bromierten Phenolen
DE3935224A1 (de) 1989-10-23 1991-04-25 Degussa Verfahren zur herstellung von tetrabrom-4,4'-alkylidendiphenolen
RU2034823C1 (ru) 1992-07-22 1995-05-10 Иркутский институт органической химии СО РАН Способ получения 2,2-бис-(3,5-дибром-4-гидроксифенил)пропана
JPH0733700A (ja) 1993-07-26 1995-02-03 Mitsui Toatsu Chem Inc アルキルデン−ビス(ジブロモフェノール)の製造法
US5475133A (en) * 1994-11-28 1995-12-12 The Regents Of The University Of California Bis-propargyl thermosets
US5475153A (en) 1995-01-04 1995-12-12 Great Lakes Chemical Corp. Process to produce tetrabromobisphenol with the reduced formation of alkyl bromide by-products
DE69616525T2 (de) 1995-03-06 2002-05-08 Albemarle Corp Verfahren zur herstellung von tetrabrombisphenol-a
WO1996033964A1 (en) 1995-04-24 1996-10-31 Albemarle Corporation A process for the preparation of tetrabromobisphenol-a
US6355786B1 (en) * 1998-10-30 2002-03-12 Vanderbilt University Purified and isolated protein zero related (PZR) and therapeutic and screening methods using same
US6245950B1 (en) 2000-03-30 2001-06-12 Council Of Scientific And Industrial Research Process for the preparation of tetrabromobisphenol-A
DE60001446T2 (de) * 2000-03-31 2003-10-23 Council Scient Ind Res Verfahren zur Herstellung von Tetrabromobisphenol-A
US6365786B1 (en) 2001-01-22 2002-04-02 Council Of Scientific And Industrial Research Eco-friendly method of preparation of high purity tetrabromobisphenol-A

Also Published As

Publication number Publication date
US7834221B2 (en) 2010-11-16
JP2009500395A (ja) 2009-01-08
WO2007007315A3 (en) 2008-01-17
US20100010274A1 (en) 2010-01-14
IL169592A0 (en) 2007-07-04
CN101258118A (zh) 2008-09-03
WO2007007315A2 (en) 2007-01-18
CN101258118B (zh) 2012-05-30
EP1899288A4 (en) 2010-04-07
IL169592A (en) 2013-11-28
EP1899288A2 (en) 2008-03-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5199869B2 (ja) テトラブロモビスフェノールaの作製方法
EP3077353B1 (en) Process for purifying 2,5-dichlorophenol
JP4917059B2 (ja) テトラブロモビスフェノール−aの製造方法
GB2032920A (en) Process for preparing terephthalic acid
JPH09176065A (ja) ベンジルアルコールの連続製造方法
EP2323990B1 (en) Methods for the production of 2-halo-4-nitroimidazole and intermediates thereof
US4492807A (en) Method for purification of bisphenol A
JPH029832A (ja) 固形物の洗浄回収方法
JP2009242316A (ja) ビスフェノールaの製造方法
CN111362807B (zh) 一种3-硝基-2-甲基苯甲酸的制备方法
JP3882201B2 (ja) テトラブロモビスフェノール−aの製造方法
CN113166012A (zh) 3,3,5-三甲基环己叉基双酚(bp-tmc)的制备方法
WO2014010510A1 (ja) ビスフェノールaの製造方法
US6147264A (en) Process for producing tetrabromobisphenol-A
TW200526565A (en) Method for producing bisphenol A
JP5446067B2 (ja) ビスフェノールaの製造方法
US20010049456A1 (en) Method of crystallizing tetrabromobisphenol A
JP4552418B2 (ja) ビスフェノールaの製造方法
JP2697056B2 (ja) p―ヒドロキシベンズアルデヒドの製造法
JP5247184B2 (ja) ビスフェノールaの製造方法
JP2005220094A (ja) ビスフェノールaの製造方法
JP3882859B2 (ja) 水加ヒドラジンの製造方法
KR820002006B1 (ko) 테레푸탈산의 회수 방법
JP2005247781A (ja) ビスフェノールaの製造方法
JP2002068718A (ja) フリーヒドロキシルアミン水溶液の高収率製造法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090522

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20111220

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20120307

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20120314

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120509

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20121016

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130107

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130129

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130208

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160215

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees