以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施形態の代表例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変形して実施することができる。
[感光層形成用塗布液及びその製造方法]
本発明の感光層形成用塗布液の製造方法は、電荷発生材料及びバインダー樹脂を含有する感光層形成用塗布液の製造において、電荷発生材料を感光層形成用塗布液中に分散するための分散メディアとして、平均粒子径1.0μm〜350μmの範囲内の分散メディアを用いる。製造された感光層形成用塗布液は、分散メディアが分離除去され、電荷発生材料とバインダー樹脂とが塗布液中に分散されたものであり、電荷発生材料と電荷輸送材料を含有する単層型感光層形成用の「感光層形成用塗布液」として、又は、電荷発生層と電荷輸送層とを積層してなる積層型感光層形成用の「電荷発生層形成用塗布液」として用いられる。
<電荷発生材料>
電荷発生材料は感光層形成用塗布液を構成するものであり、従来から電子写真感光体の感光層用として用いることが提案されている各種の材料を用いることができる。電荷発生材料としては、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントアントロン系顔料、キナクリドン系顔料、シアニン系顔料、ピリリウム系顔料、チアピリリウム系顔料、インジゴ系顔料、多環キノン系顔料、スクエアリック酸系顔料等が挙げられる。特にフタロシアニン顔料又はアゾ顔料が好ましい。フタロシアニン顔料は、比較的長波長のレーザー光に対して高感度の電子写真感光体を形成できる点で、また、アゾ顔料は、白色光及び比較的短波長のレーザー光に対して十分な感度の電子写真感光体を形成できる点で、それぞれ優れている。
電荷発生材料としてフタロシアニン顔料を用いた場合には、上記のような優れた効果を示すので好ましい。フタロシアニン顔料としては、具体的には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位した、各種の結晶型からなるフタロシアニン顔料が挙げられる。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型の無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のオキシチタニウムフタロシアニン、オキシバナジウムフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型、I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好ましく用いられる。なお、これらのフタロシアニン顔料の中でも、A型(β型)、B型(α型)及びD型(Y型)のオキシチタニウムフタロシアニン、II型のクロロガリウムフタロシアニン、V型のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましく用いられる。さらに、これらのフタロシアニン顔料の中でも、CuKα特性X線に対するX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)が、27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン、9.3°,13.2°,26.2°及び27.1°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン、9.2,14.1,15.3,19.7,27.1°に主たる回折ピークを有するジヒドロキシシリコンフタロシアニン、8.5°,12.2°,13.8°,16.9°,22.4°,28.4°及び30.1°に主たる回折ピークを示すジクロロスズフタロシアニン、7.5°,9.9°,12.5°,16.3°,18.6°,25.1°及び28.3°に主たる回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニン、並びに、7.4°,16.6°,25.5°及び28.3°に回折ピークを示すクロロガリウムフタロシアニンが好ましく用いられる。これらの中でも、27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンが特に好ましく用いられ、この場合、9.5°、24.1°及び27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンがとりわけ好ましく用いられる。
フタロシアニン顔料は、単一の化合物のもののみを用いてもよいし、幾つかの混合状態又は混晶状態からなるものでもよい。ここでのフタロシアニン顔料の混合状態又は混晶状態は、それぞれのフタロシアニン顔料を後から混合して生じさせたものでもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン顔料の製造工程又は処理工程において生じさせたものでもよい。混合状態又は混晶状態とするための処理としては、酸ペースト処理、磨砕処理、溶剤処理等が知られている。混晶状態を生じさせるためには、特開平10−48859号公報に記載のように、2種類の結晶を混合した後に機械的に摩砕、不定形化し、その後に溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。
また、電荷発生材料としてフタロシアニン顔料を用いる場合に、フタロシアニン顔料以外の電荷発生材料を併用しても構わない。例えば、アゾ顔料、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、ベンズイミダゾール顔料、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、スクエアリウム塩等を併用することができる。
また、アゾ顔料を併用する場合には、各種公知のビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。好ましいアゾ顔料の例を下記に示す。なお、下記一般式において、Cp1ないし、Cp3は、カップラーを表す。
カップラーCp1ないしCp3としては、好ましくは、以下構造を示す。なお、下記構造中の「※」は結合位置を表す。
特に、好適なアゾ化合物の例を以下に示す。
電荷発生材料は、感光層形成用塗布液中に分散されるが、該塗布液中に分散される前に、予め前粉砕されていても構わない。前粉砕は、種々の粉砕装置を用いて行うことができるが、通常はボールミル、サンドグラインドミル等の粉砕装置を用いて行う。これらの粉砕装置に投入する粉砕媒体としては、粉砕処理に際して、粉砕媒体が粉化することがなく、かつ分散処理後は容易に分離できるものであればどのようなものでも使用することが可能であるが、好ましくは、ガラス、アルミナ、ジルコニア、ステンレス、セラミックス等のビーズやボールが挙げられる。前粉砕では、体積平均粒子径で500μm以下となるよう粉砕することが好ましく、より好ましくは250μm以下まで粉砕する。体積平均粒子径は、当業者が通常用いるどのような方法で測定しても構わないが、通常沈降法や遠心沈降法で測定される。
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂としては、電子写真感光体の感光層形成用塗布液に通常用いられるような、有機溶剤に可溶なバインダー樹脂が用いられる。また、感光層形成用塗布液が積層型感光層の電荷発生層を形成するための塗布液である場合において、形成された電荷発生層上に他の層を形成する場合は、用いるバインダー樹脂は、その「他の層」を形成する塗布液に含まれる有機溶剤に不溶であるか、溶解性が低く実質上混合しないものであれば、特に限定されるものではない。
バインダー樹脂の例としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールやアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマーの中から選択して用いることができるが、これらのポリマーに限定されるものではない。また、これらバインダー樹脂は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
バインダー樹脂を溶解させ、塗布液の作製に用いられる溶媒又は分散媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等の鎖状、分岐、及び環状ケトン系溶媒、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状、及び環状エーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、水等が挙げられる。特に、後述する下引き層を溶解しないものが好ましく用いられる。また、これらの溶媒又は分散媒は、単独、又は2種以上を併用しても用いることが可能である。
電荷発生材料と電荷輸送材料を別々の層に分離、積層した機能分離型感光層(いわゆる積層型感光層)の電荷発生層を塗布液で形成する場合において、塗布液を構成するバインダー樹脂と電荷発生材料との配合比(重量)は、バインダー樹脂100重量部に対して電荷発生材料を10重量部〜1000重量部、好ましくは30重量部〜500重量部の範囲である。また、この場合の電荷発生層の膜厚は、通常0.1μm〜4μm、好ましくは0.15μm〜0.6μmである。電荷発生材料の配合比率が高すぎる場合は、電荷発生材料の凝集等の問題により塗布液の安定性が低下することがあり、一方、電荷発生材料の配合比率が低すぎる場合は、感光体としての感度の低下をまねくことから、前記範囲内で使用することが好ましい。
一方、電荷発生材料と電荷輸送材料を同一の層中に有する単層型感光層を塗布液で形成する場合において、塗布液を構成するバインダー樹脂、電荷発生材料及び電荷輸送材料のうち、バインダー樹脂と電荷発生材料との配合比(重量)は、バインダー樹脂100重量部に対して電荷発生材料を0.2重量部〜100重量部、好ましくは0.5重量部〜20重量部の範囲である。また、この場合の感光層の膜厚は、通常1μm〜40μm、好ましくは5μm〜30μmである。電荷発生材料の配合比率が高すぎる場合は、電荷発生材料の凝集等の問題により塗布液の安定性が低下することがあり、一方、電荷発生材料の配合比率が低すぎる場合は、感光体としての感度の低下をまねくことから、前記範囲内で使用することが好ましい。
電荷発生材料と電荷輸送材料を同一の層中に有する単層型感光層を塗布液で形成する場合に用いる電荷輸送材料としては、例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリグリシジルカルバゾール、ポリアセナフチレン等の高分子化合物;ピレン,アントラセン等の多環芳香族化合物;インドール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、ピラゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアジアゾール誘導体等の複素環化合物;p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン,N−メチルカルバゾール−3−カルバルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン系化合物;5−(4−(ジ−p−トリルアミノ)ベンジリデン)−5H−ジベンゾ(a,d)シクロヘプテン等のスチリル系化合物;p−トリトリルアミン等のトリアリールアミン系化合物;N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン等のベンジジン系化合物;ブタジエン系化合物;ジ−(p−ジトリルアミノフェニル)メタン等のトリフェニルメタン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、スチリル系化合物、ブタジエン系化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、もしくはこれらが複数結合されたものが好適に用いられる。これらの電荷輸送材料は単独でも、いくつかを混合して用いてもよい。
<分散メディア>
分散メディアとしては各種のものを適用可能であるが、真球に近い形状からなる分散メディアが好ましく用いられる。分散メディアは、例えばJIS Z 8801:2000等に記載のふるいによりふるい分けする方法や、画像解析により測定することにより平均粒子径を求めることができ、アルキメデス法により密度を測定することができる。具体的には例えば、(株)ニレコ製のLUZEX50等に代表される画像解析装置により、平均粒子径と真球度を測定することができる。
分散メディアの平均粒子径としては、通常1.0μm〜350μmの範囲内のものが用いられ、特に10μm〜100μmの範囲内のものがより好ましく用いられる。一般に小さな粒径の分散メディアの方が、短時間で均一な分散液を与える傾向があるが、過度に粒径が小さくなると分散メディアの質量が小さくなりすぎて効率よい分散ができなくなることがある。
分散メディアの密度としては、通常5.5g/cm3以上のものが用いられ、好ましくは5.9g/cm3以上、より好ましくは6.0g/cm3以上のものが用いられる。一般に、より高密度の分散メディアを使用して分散した方が短時間で均一な分散液を与える傾向がある。密度の上限は分散メディアの材質により一概にはいえないが、使用可能な材質を考慮すれば、通常10g/cm3程度となる。分散メディアの密度は、例えば液浸法や気体容積法等により測定することができる。
分散メディアの真球度としては、1.08以下のものが好ましく、より好ましくは1.07以下である。
分散メディアの材質としては、感光層形成用塗布液に不溶、且つ、比重が感光層形成用塗布液よりも大きなものであって、感光層形成用塗布液と反応したり、感光層形成用塗布液を変質させたりしないものであれば、公知の如何なる分散メディアも使用することができる。具体的には、クローム球(玉軸受用鋼球)、カーボン球(炭素鋼球)等のスチール球;ステンレス球;窒化珪素球、炭化珪素、ジルコニア、アルミナ等のセラミック球;窒化チタン、炭窒化チタン等の膜でコーティングされた球等が挙げられるが、これらの中でもセラミック球が好ましく、特にはジルコニアビーズが好ましい。より具体的には、ジルコニア焼成ビーズ、特に特許第3400836号公報に記載のジルコニア焼成ビーズを用いることが好ましい。
<分散方法>
電荷発生材料及びバインダー樹脂を含有する感光層形成用塗布液において、電荷発生材料は塗布液中に分散されて存在する。塗布液中に電荷発生材料を分散させる方法としては、上記の分散メディアを用い、公知の粉砕装置や分散装置で有機溶媒中にて湿式分散する方法を適用できる。公知の粉砕装置や分散装置としては、例えばボールミル、サンドグラインドミル、遊星ミル、ロールミル等の公知の機械的な粉砕装置や、ペブルミル、ボールミル、サンドミル、スクリーンミル、ギャップミル、振動ミル、ペイントシェーカー、アトライター等の分散装置を挙げることができる。
中でも、塗布液を循環させて分散できるものが好ましく、分散効率、到達粒径の細かさ、連続運転の容易さ等の点から、湿式攪拌ボールミル、例えばサンドミル、スクリーンミル、ギャップミルが好ましく用いられる。これらのミルは、縦型、横型のいずれのものでもよい。また、ミルのディスク形状は、平板型、垂直ピン型、水平ピン型等、任意のものを使用できる。好ましくは、液循環型のサンドミルが用いられる。
湿式攪拌ボールミルとしては、筒状のステータと、該ステータの一端に設けられるスラリー供給口と、該ステータの他端に設けられるスラリー排出口と、該ステータ内に充填される前記分散メディアと、前記スラリー供給口より供給された、前記電荷発生材料及び前記バインダー樹脂を含有するスラリーを攪拌混合するピン、ディスク或いはアニューラタイプのロータと、前記スラリー排出口に連結され、遠心力の作用により分散メディアとスラリーに分離して、分離後のスラリーを前記スラリー排出口より排出させるためのセパレータとを有するものであって、前記セパレータを回転駆動するシャフトの軸心が、上記スラリー排出口と通ずる中空な排出路を有するものが好ましい。
また、ここで好ましく用いているセパレータは、回転可能に設けられたものであり、望ましくは、インペラタイプのものであって、ロータと一体をなして回転するか或いはロータとは別個に独立して回転し、セパレータの回転により生じる遠心力の作用によって分散メディアとスラリーとが分離されるようになっている。
このような湿式攪拌ボールミルによれば、セパレータにより分散メディアを分離したスラリーは、シャフトの軸心の中空な排出路を通って排出される。このとき、シャフトの軸心では遠心力が作用しないため、スラリーは運動エネルギーを有しない状態で排出される。このため、上記湿式撹拌ボールミルを用いれば、運動エネルギーが無駄に放出されず、無駄な動力が消費されなくなるという効果がある。
このような湿式攪拌ボールミルは、横向きでも縦向きでもよいが、分散メディアの充填率を多くするために、好ましくは縦向きであり、スラリー排出口がミル上端に設けられることが好ましい。また、セパレータも分散メディアの充填レベルより上方に設けるのが望ましい。スラリー排出口をミル上端に設ける場合、スラリー供給口はミル底部に設けられる。
好ましい態様において、スラリー供給口は、弁座と、該弁座に昇降可能に嵌合し、該弁座のエッジと線接触が可能なV形、台形或いはコーン状の弁体とにより構成される。弁座のエッジとV形、台形或いはコーン状の弁体との間に、分散メディアが通過し得ないような環状のスリットを形成することにより、原料スラリーは供給されるが、分散メディアの落ち込みは防止できる。また、弁体を上昇させることによりスリットを広げて分散メディアを排出させたり、或いは弁体を降下させることによりスリットを閉じてミルを密閉させることが可能である。更に、スリットは弁体と弁座のエッジで形成されるため、原料スラリー中の租粒子が噛み込み難く、噛み込んでも上下に抜け出し易く詰まりを生じ難いという利点がある。
また、弁体を振動手段により上下に振動させるようにすれば、スリットに噛み込んだ粗粒子をスリットより抜け出させることができるうえ、噛み込み自体が生じ難くなる。しかも、弁体の振動により原料スラリーに剪断力が加わって粘度が低下し、上記スリットへの原料スラリー通過量、すなわち供給量を増加させることができる。弁体を振動させる振動手段としては、バイブレータ等の機械的手段のほか、弁体と一体をなすピストンに作用する圧縮空気の圧力を変動させる手段、例えば往復動型の圧縮機、圧縮空気の吸排を切換える電磁切換弁等を用いることができる。
また、このような湿式攪拌ボールミルの底部には、分散メディアを分離するスクリーンと、製品スラリーの取出し口とを設け、分散処理後、ミル内に残留する製品スラリーを取り出せるようにするのが望ましい。
すなわち、縦型の湿式攪拌ボールミルは、筒状の縦型のステータと、該ステータの底部に設けられるスラリー供給口と、該ステータの上端に設けられるスラリー排出口と、該ステータの上端に軸支され、モータ等の駆動手段によって回転駆動するシャフトと、該シャフトに固定され、該ステータ内に充填される分散メディアと、該スラリー供給口より供給された、前記電荷発生材料及び前記バインダー樹脂を含有するスラリーを攪拌混合するピン、ディスク或いはアニューラタイプのロータと、該スラリー排出口の近くに設けられ、スラリーから分散メディアを分離するセパレータと、該ステータ上端のシャフトを支承する軸承部に設けられるメカニカルシールとからなっている。この縦型の湿式攪拌ボールミルにおいて、メカニカルシールのメイティングリングと接触するOリングが嵌合する環状溝の下側部に、下方に向かって拡開するテーパ状の切込みが形成されていることが好ましい。
こうした湿式攪拌ボールミルによれば、メカニカルシールを、分散メディアやスラリーが運動エネルギーを殆ど有しない軸心部で、しかもそれらの液面レベルより上方のステータ上端に設けることにより、メカニカルシールのメイティングリングとOリング嵌合溝下側部との間に分散メディアやスラリーが入り込むのを大幅に減らすことができる。
その上、Oリングが嵌合する環状溝の下側部は、切込みにより下方に向かって拡開し、クリアランスが広がっているため、スラリーや分散メディアが入り込んで噛み込んだり、固化することによる詰まりを生じ難く、メイティングリングのシールリングへの追随が円滑に行われてメカニカルシールの機能維持が行われる。なお、Oリングが嵌合する嵌合溝の下側部は断面V形をなし、全体が薄肉となる訳ではないから、強度が損なわれることはないし、Oリングの保持機能が損なわれることもない。
上記湿式攪拌ボールミルにおいて、セパレータが、対向する内側面にブレードの嵌合溝を備えた二枚のディスクと、該嵌合溝に嵌合して前記ディスク間に介在するブレードと、該ブレードを介在させた前記ディスクを両側より挟持する支持手段とを有することが好ましい。好ましい態様において、支持手段は、段付軸をなすシャフトの段と、シャフトに嵌合してディスクを押さえる円筒状の押え手段とにより構成され、シャフトの段と押え手段とでブレードを介在させたディスクを両側より挟み込んで支持するようにされる。
図1は、縦型の湿式攪拌ボールミルの一例を示す断面図である。図1において、原料スラリーは、湿式攪拌ボールミルに供給され、該ミルで分散メディアと共に攪拌されることにより粉砕されたのち、セパレータ14で分散メディアを分離してシャフト15の軸心を通って排出され、戻される経路を辿り、循環粉砕されるようになっている。
縦型の湿式攪拌ボールミルは、図1に詳細に示されるように、縦向きの円筒形で、かつミル冷却のための冷却水が通されるジャケット16を備えたステータ17と、ステータ17の軸心に位置してステータ上部において回転可能に軸承されると共に、軸承部にメカニカルシールを備え、かつ上側部の軸心を中空な排出路19としたシャフト15と、シャフト下端部に径方向に突設されるピンないしディスク状のロータ21と、シャフト上部に固着され、駆動力を伝達するプーリ24と、シャフト上端の開口端に装着されるロータリージョイント25と、ステータ内の上部近くにおいてシャフト15に固着される分散メディア分離のためのセパレータ14と、ステータ底部にシャフト15の軸端に対向して設けられる原料スラリー供給口26と、ステータ底部の偏心位置に設けられる製品スラリー取出し口29に設置される格子状のスクリーンサポート27上に取着され、分散メディアを分離するスクリーン28とからなっている。
セパレータ14は、シャフト15に一定の間隔を存して固着される一対のディスク31と、両ディスク31を連結するブレード32とからなり、インペラを構成し、シャフト15と共に回転してディスク間に入り込んだ分散メディアとスラリーに遠心力を付与し、その比重差により分散メディアを径方向外方に飛ばす一方、スラリーをシャフト15の軸心の排出路19を通って排出させるようにしている。原料スラリー供給口26は、ステータ底部に形成される弁座に昇降可能に嵌合する逆台形状の弁体35と、ステータ底部より下向きに突出する有底の円筒体36とからなり、原料スラリーの供給により弁体35が押し上げられると、弁座との間に環状のスリットが形成され、これより原料スラリーがミル内に供給されるようになっている。
原料スラリー供給時の弁体35は、円筒体36内に送り込まれた原料スラリーの供給圧によりミル内の圧力に抗して上昇し、弁座との間にスリットを形成する。
スリットでの詰まりを解消するため、弁体35が短い周期で上限位置まで上昇する上下動を繰返し、こうした上下動振動により噛み込みを解消できるようにしてある。この弁体35の振動は、常時行ってもよいし、原料スラリー中に粗粒子が多量に含まれる場合に行ってもよく、また、詰まりによって原料スラリーの供給圧が上昇したとき、これに連動して行ってもよい。
このような構造を有する湿式撹拌ボールミルとしては、具体的には例えば、寿工業株式会社製のウルトラアペックスミルが挙げられる。
次に、原料スラリーの粉砕方法について説明する。ボールミルのステータ17内に分散メディアを充填し、外部動力により駆動されてロータ21及びセパレータ14が回転駆動される一方、原料スラリーが一定量、スラリー供給口26に送られ、これにより弁座のエッジと弁体35との間に形成されるスリットを通して原料スラリーがミル内に供給される。
ロータ21の回転により、ミル内の原料スラリーと分散メディアが攪拌混合され、スラリーの粉砕が行われる。また、セパレータ14の回転により、セパレータ内に入り込んだ分散メディアとスラリーが比重差により分離され、比重の重い分散メディアが径方向外方に飛ばされるのに対し、比重の軽いスラリーがシャフト15の軸心に形成される排出路19を通して排出され、原料タンクに戻される。粉砕がある程度進行した段階でスラリーの粒度を適宜測定し、所望粒度に達すると、一旦原料ポンプを停止し、次いでミルの運転を停止し、粉砕を終了する。
このような縦型湿式攪拌ボールミルを用いて、粒子状の電荷発生材料を分散させる場合、ミル内に充填される分散メディアの充填率は、50〜100%で粉砕するようにするのが好ましく、より好ましくは70〜95%、特に好ましくは80〜90%である。
本発明に係る感光層形成用塗布液を分散するのに適用される湿式攪拌ボールミルは、セパレータがスクリーンやスリット機構であってもよいが、インペラタイプのものが望ましく、縦型であることが好ましい。湿式攪拌ボールミルは縦向きにし、セパレータをミル上部に設けることが望まれるが、特に分散メディアの充填率を60〜90%に設定すると、粉砕が最も効率的に行われるうえ、セパレータを分散メディアの充填レベルより上方に位置させることが可能となり、分散メディアがセパレータに乗って排出されるのを防止することができるという効果もある。
本発明に係る感光層形成用塗布液を分散するのに適用される湿式攪拌ボールミルの運転条件は、該塗布液中の電荷発生材料凝集体二次粒子の体積平均粒子径、該塗布液の安定性、該塗布液を塗布形成してなる感光層(電荷発生層)の表面形状、該塗布液を塗布形成してなる感光層(電荷発生層)を有する電子写真感光体の特性に影響し、特に該塗布液の供給速度と、ロータの回転速度が影響の大きいものとして挙げられる。
感光層形成用塗布液の供給速度は、ミル中に下引き層形成用塗布液の滞留する時間が関係するため、ミルの容積及びその形状の影響を受けるが、通常用いられるステータの場合、ミル容積1リットル(以下、Lと略記することがある)あたり20kg/時間〜80kg/時間の範囲が好ましく、より好ましくはミル容積1Lあたり30kg/時間〜70kg/時間の範囲である。
また、湿式撹拌ボールミルを用いてフタロシアニン顔料等の電荷発生材料を分散させる場合、湿式撹拌ボールミル内に充填する分散メディアの充填率に制限はなく、電荷発生材料を所望の粒度分布を有するようになるまで分散を行うことができれば、任意である。ただし、前記のような縦型湿式撹拌ボールミルを用いて電荷発生材料を分散させる場合には、湿式撹拌ボールミル内に充填される分散メディアの充填率は、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、また、通常100%以下、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である。
また、ロータの回転速度は、ロータの形状やステータとの間隙等のパラメータの影響を受けるが、通常用いられるステータ及びロータの場合、ロータ先端部の周速が5m/秒〜20m/秒の範囲となることが好ましく、より好ましくは8m/秒〜15m/秒の範囲であり、特には10m/秒〜12m/秒である。
分散メディアは、通常、感光層形成用塗布液に対し容積比で0.5〜5倍用いる。分散メディア以外に、分散後に容易に除去することのできる分散助剤を併用して実施することも可能である。分散助剤の例としては、食塩、ぼう硝等が挙げられる。
電荷発生材料の分散は、分散溶媒の共存下で湿式で行うことが好ましいが、バインダー樹脂や各種添加剤を同時に混合していても構わない。該溶媒としては、特に制限されないが、下引き層形成用塗布液に用いる有機溶媒を用いれば、分散後に溶媒交換等の工程を経る必要が無くなり好適である。これらの溶媒は何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて混合溶媒として用いても良い。
特に、結晶変換の起こり易いY型オキシチタニウムフタロシアニン等は、バインダー樹脂の存在下で分散するのが好ましい。
溶媒の使用量は、生産性の観点から、分散対象となる電荷発生材料1重量部に対して通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上、また、通常500重量部以下、好ましくは100重量部以下の範囲である。機械的分散時の温度としては、溶媒(又は混合溶媒)の凝固点以上、沸点以下で行うことが可能であるが、製造時の安全性の面から、通常、0℃以上、200℃以下の範囲で行なわれる。特に、上述のY型オキシチタニウムフタロシアニン等は、低温度が好ましく、0°以上、20°以下が好ましい。
分散メディアを用いた分散処理後、該分散メディアを分離・除去し、更に超音波処理することが好ましい。超音波処理は、感光層形成用塗布液に超音波振動を加えるものであるが、振動周波数等には特に制限はなく、通常、周波数10kHz〜40kHz、好ましくは15kHz〜35kHzの発振器により超音波振動を加える。
超音波発振機の出力に特に制限はないが、通常100W〜5kWのものが用いられる。通常、多量の塗布液を大出力の超音波発振機による超音波で処理するよりも、少量の塗布液を小出力の超音波発振機による超音波で処理する方が分散効率が良い。そのため、一度に処理する感光層形成用塗布液の量は、1〜50Lが好ましく、5〜30Lがより好ましく、10〜20Lが特に好ましい。また、この場合の超音波発振機の出力は、200W〜3kWが好ましく、300W〜2kWがより好ましく、500W〜1.5kWが特に好ましい。
感光層形成用塗布液に超音波振動を加える方法に特に制限はないが、塗布液を納めた容器中に超音波発振機を直接浸漬する方法、塗布液を納めた容器外壁に超音波発振機を接触させる方法、超音波発信機により振動を加えた液体の中に塗布液を納めた溶液を浸漬する方法等が挙げられる。
これらの方法の中でも、超音波発信機により振動を加えた液体の中に塗布液を納めた溶液を浸漬する方法が好適に用いられる。この場合、超音波発信機により振動を加える液体としては、水;メタノール等のアルコール類;トルエン等の芳香族炭化水素類;シリコーンオイル等の油脂類が挙げられるが、製造上の安全性、コスト、洗浄性等を勘案すれば、水を用いることが好ましい。超音波発信機により振動を加えた液体の中に塗布液を納めた溶液を浸漬する方法では、該液体の温度により超音波処理の効率が変化するため、該液体の温度を一定に保つことが好ましい。加えた超音波振動により振動を加えた液体の温度が上昇することがある。該液体の温度は、通常は5〜60℃、好ましくは10〜50℃、より好ましくは15〜40℃の温度範囲において超音波処理することが好ましい。
超音波処理する際に塗布液を納める容器としては、電子写真感光体用の感光層を形成するのに用いられる塗布液を入れるのに通常用いられる容器であればどのような容器でも構わないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂製の容器や、ガラス製容器、金属製の缶が挙げられる。これらの中では金属製の缶が好ましく、特に、JIS Z 1602に規定される、18リットル金属製缶が好適に用いられる。有機溶媒に侵され難く、衝撃に強いからである。
感光層形成用塗布液は、粗大な粒子を除去するために、必要に応じて濾過した後使用される。この場合の濾過メディアとしては、通常濾過するために用いられる、セルロース繊維、樹脂繊維、ガラス繊維等、何れの濾過材を用いても構わない。濾過メディアの形態としては、濾過面積が大きく効率がよいこと等の理由により、芯材に各種繊維を巻き付けた、いわゆるワインドフィルターが好ましい。芯材としては、従前公知の何れの芯材も用いることができるが、ステンレスの芯材、ポリプロピレン等の感光層形成用塗布液に溶解しない樹脂製の芯材等が挙げられる。
このようにして製造された感光層形成用塗布液は、所望により更に結着剤や種々の助剤等を添加して、電荷発生層の形成に用いる。また、本<分散方法>の項目で述べた方法は、後述する下引き層形成用塗布液を製造する際にも非常に有効であり、併用することが好ましい。
<感光層形成用塗布液>
本発明の電子写真感光体の感光層形成用塗布液は、上述した分散方法により分散処理されてなるものである。
感光層形成用塗布液中の電荷発生材料は、一次粒子として存在するのが望ましいことではあるものの、通常は、そのようなことは少なく、凝集して凝集体二次粒子として存在するか、両者が混在する場合がほとんどである。従って、その状態での粒度分布が如何にあるべきかは非常に重要である。特に電荷発生材料がフタロシアニン顔料の場合、塗布液中の粒子状の電荷発生材料(以下、電荷発生粒子ともいう。)の累積50%粒子径(累積中位径ないしMedian径ともいう。)D50が0.13μm以下であることが好ましい。この範囲とすることにより、塗布液中での電荷発生粒子の沈殿や粘性変化が少なく、結果として感光層形成後の膜厚及び表面性が均一となる。一方、電荷発生粒子の動的光散乱法により測定される累積50%粒子径D50が0.13μmを超える場合は、塗布液中での電荷発生粒子の沈殿や粘性変化が大きく、結果として感光層形成後の膜厚及び表面性が不均一となるため、品質に悪影響を及ぼすので好ましくない。更に、累積50%粒子径が0.12μm以下であることが好ましい。なお、細かすぎると、電荷発生粒子間の相互作用が失われるので、累積50%粒子径は0.02μm以上が好ましく、更に好ましくは、0.03μm以上である。
また、電荷発生材料の累積90%粒子径D90は、0.25μm以下であることが好ましい。なお、累積90%粒子径と累積50%粒子径との差(D90−D50)の絶対値は、0.10μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.08μm以下である。
本発明において、電荷発生材料の「累積50%粒子径」及び「累積90%粒子径」とは、動的光散乱法により粒度分布を測定した場合に、電荷発生材料である電荷発生粒子の全体積を100%として、小粒径側から体積粒度分布の累積カーブを求めた時、その累積カーブが50%となる点の粒子径を累積50%粒子径とし、その累積カーブが90%となる点の粒子径を累積90%粒子径と定義する。
本発明者らは、累積50%粒子径、累積90%粒子径、及びD90−D50が上記範囲を満たすものであれば、塗布液としてゲル化や粘性変化が少なく、長期保存が可能であり、結果として感光層を形成した後の膜厚及び表面性が均一となることを見出した。一方、塗布液中の電荷発生粒子が上記範囲を満たさない場合は、塗布液中でのゲル化や粘性変化が大きく、結果として感光層を形成した後の膜厚及び表面性が不均一となるため、品質にも悪影響を及ぼすことになるので好ましくない。
動的光散乱法は、微小に分散された粒子のブラウン運動の速さを、粒子にレーザー光を照射してその速度に応じた位相の異なる光の散乱(ドップラーシフト)を検出して粒度分布を求めるものである。本発明の感光層形成用塗布液中における電荷発生粒子の体積粒子径の値は、塗布液中に電荷発生粒子が安定に分散しているときの値であり、分散前の粉体としての電荷発生粒子、ウエットケーキの粒径を意味していない。実際の測定では、上記の累積50%粒子径D50については、具体的には、動的光散乱方式粒度分析計(日機装社製、MICROTRAC UPA model:9340−UPA、以下UPAと略す。)を用いて、以下の設定にて行った。具体的な測定操作は、上記粒度分析計の取扱説明書(日機装社製、書類No.T15−490A00、改訂No.E)に基づいて行った。
測定上限 :5.9978μm
測定下限 :0.0035μm
チャンネル数:44
測定時間 :300sec.
粒子透過性 :吸収
粒子屈折率 :N/A(適用しない)
粒子形状 :非球形
分散媒種類 :フタロシアニン顔料の場合はジメトキシエタン/4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン=9/1
アゾ顔料の場合はジメトキシエタン
分散媒屈折率:1.35
密度 :1.60(g/cm3;フタロシアニン顔料)
48(g/cm3;アゾ顔料)
なお、測定時は、サンプル濃度指数(SIGNAL LEVEL)が0.6〜0.8になるように、分散溶媒で希釈し、25℃で測定した。
<感光層の形成方法>
感光層(積層型感光層においては電荷発生層)は、本発明の感光層形成用塗布液を支持体上、通常は導電性支持体上に形成された下引き層上に、浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、スパイラル塗布、リング塗布、バーコート塗布、ロールコート塗布、ブレード塗布等の公知の塗布方法により塗布し、乾燥することにより形成される。
スプレー塗布法としては、エアスプレー、エアレススプレー、静電エアスプレー、静電エアレススプレー、回転霧化式静電スプレー、ホットスプレー、ホットエアレススプレー等があるが、均一な膜厚を得るための微粒化度、付着効率等を考えると回転霧化式静電スプレーにおいて、再公表平1−805198号公報に開示されている搬送方法、すなわち円筒状ワークを回転させながらその軸方向に間隔を開けることなく連続して搬送することにより、総合的に高い付着効率で膜厚の均一性に優れた感光層を得ることができる。
スパイラル塗布法としては、特開昭52−119651号公報に開示されている注液塗布機又はカーテン塗布機を用いた方法、特開平1−231966号公報に開示されている微小開口部から塗料を筋状に連続して飛翔させる方法、特開平3−193161号公報に開示されているマルチノズル体を用いた方法等がある。
浸漬塗布法の場合、通常、感光層形成用塗布液の全固形分濃度は、通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上であって、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下の範囲とし、感光層形成用塗布液の粘度を好ましくは0.1mPa・s以上、更に好ましくは、0.5mPa・s以上、また、好ましくは100mPa・s以下更に好ましくは、20mPa・s以下の範囲とする。
塗布形成した感光層の表面形状は、面内2乗平均平方根粗さ(RMS)、面内算術平均粗さ(Ra)、面内最大粗さ(P−V)に特徴を持つものであり、これらの数値は、JIS B 0601:2001の規格における、二乗平均平方根高さ、算術平均高さ、最大高さ、の基準長さを基準面に拡張した数値であり、基準面における高さ方向の値であるZ(x)を用いて、面内2乗平均平方根粗さ(RMS)はZ(x)の二乗平均平方根を、面内算術平均粗さ(Ra)はZ(x)の絶対値の平均を、面内最大粗さ(P−V)はZ(x)の山高さの最大値と谷深さの最大値との和を表す。本発明において感光層の面内2乗平均平方根粗さ(RMS)は、通常10〜100nmの範囲にあり、好ましくは20〜50nmの範囲にある。本発明において感光層の面内算術平均粗さ(Ra)は、通常10〜50nmの範囲にあり、好ましくは10〜50nmの範囲にある。また、本発明において感光層の面内最大粗さ(P−V)は、通常100〜1000nmの範囲にあり、好ましくは300〜800nmの範囲にある。
これらの表面形状の数値は、基準面内の凹凸を高精度に測定することが可能な表面形状分析装置により測定されれば、どのような表面形状分析装置により測定されても構わないが、光干渉顕微鏡を用いて高精度位相シフト検出法と干渉縞の次数計数を組み合わせて、試料表面の凹凸を検出する方法により測定することが好ましい。より具体的には、株式会社菱化システムのMicromapを用いて、干渉縞アドレッシング方式により、Waveモードで測定することが好ましい。
[電子写真感光体]
本発明に係る電子写真感光体は、導電性支持体上に、上述した感光層形成用塗布液を用いて形成した感光層を有するものである。形成された感光層は、感度発現、導電性支持体(下引き層を有する場合には下引き層)との接着性改良、電気特性の不均一性の改良、繰り返し使用による表面電位低下の防止、画質欠陥の原因となる局所的な表面電位変動の防止等の機能を有し、光電特性の発現に必須の層である。
本発明の電子写真感光体を構成する感光層は、電荷発生機能を有する層を有するものであれば、公知の電子写真感光体に適用可能な如何なる構成も採用することが可能である。具体的には例えば、光導電性材料(電荷発生材料、電荷輸送材料等)をバインダー樹脂中に溶解又は分散させた単層の感光層を有する、いわゆる単層型感光層;電荷発生材料を含有する電荷発生層と、電荷輸送材料を含有する電荷輸送層を積層してなる複数の層からなる感光層を有する、いわゆる積層型感光層等が挙げられる。一般に光導電性材料は、単層型でも積層型でも、機能としては同等の性能を示すことが知られている。単層型の場合は、感光層全体が、電荷発生層を担っている。
本発明の電子写真感光体の有する感光層は、公知のいずれの形態であっても構わないが、感光体の機械的物性、電気特性、製造安定性等総合的に勘案して、積層型の感光体が好ましく、より好ましくは導電性支持体上に電荷発生層と電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に積層した順積層型感光層が好ましい。
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、電荷発生材料とバインダー樹脂を含有する感光層(電荷発生層)を有する電子写真感光体において、該感光層形成用塗布液が以下特徴を有するものである。
(1)平均粒子径1.0μm〜350μmの分散メディアを用いて電荷発生材料が分散されている、
(2)該分散メディアがジルコニアビーズである、
(3)該分散手法がボールミルを用いて行われたものである、
(4)湿式攪拌ボールミルとして、筒状のステータと、該ステータの一端に設けられるスラリー供給口と、該ステータの他端に設けられるスラリー排出口と、該ステータ内に充填される前記分散メディアと、前記スラリー供給口より供給された、前記電荷発生材料及び前記バインダー樹脂を含有するスラリーを攪拌混合するロータと、前記スラリー排出口に連結され、遠心力の作用により分散メディアとスラリーに分離して、分離後のスラリーを前記スラリー排出口より排出させるセパレータとを有する湿式攪拌ボールミルであって、前記セパレータを回転駆動するシャフトの軸心が、上記スラリー排出口と通ずる中空な排出路を有するボールミルを用いた分散処理により得られる、
(5)湿式撹拌ボールミルとして、筒状のステータと、該ステータの一端に設けられるスラリー供給口と、該ステータの他端に設けられるスラリー排出口と、該ステータ内に充填される前記分散メディアと、前記スラリー供給口より供給された、前記電荷発生材料及び前記バインダー樹脂を含有するスラリーを攪拌混合するロータと、前記スラリー排出口に連結され、遠心力の作用により分散メディアとスラリーに分離して、分離後のスラリーを前記スラリー排出口より排出させるセパレータとを有する湿式攪拌ボールミルであって、前記セパレータが、対向する内側面にブレードの嵌合溝を備えた二枚のディスクと、該嵌合溝に嵌合して前記ディスク間に介在するブレードと、該ブレードを介在させた前記ディスクを両側より挟持する支持手段とを有するボールミルを用いた分散処理により得られる、
(6)塗布液中の電荷発生材料(フタロシアニン顔料)の動的光散乱法により測定される累積50%粒子径D50が0.13μm以下である。
<導電性支持体>
導電性支持体としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(インジウム−錫酸化物)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性等の制御のためや欠陥被覆のため、適当な抵抗値を持つ導電性材料を塗布したものでもよい。
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合には、陽極酸化処理を施してから用いてもよい。陽極酸化処理を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴中で陽極酸化処理することにより陽極酸化被膜が形成されるが、硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化の場合、硫酸濃度は100〜300g/L、溶存アルミニウム濃度は2〜15g/L、液温は15〜30℃、電解電圧は10〜20V、電流密度は0.5〜2A/dm2の範囲内に設定されるのが好ましいが、前記条件に限定されるものではない。
このようにして形成された陽極酸化被膜に対して、封孔処理を行うことが好ましい。封孔処理は、公知の方法で行なわれればよいが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、あるいは主成分として酢酸ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる高温封孔処理が施されるのが好ましい。
上記低温封孔処理の場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液の濃度は、適宜選べるが、3〜6g/lの範囲で使用された場合、より好ましい結果が得られる。また、封孔処理をスムーズに進めるために、処理温度としては、通常25℃以上、好ましくは30℃以上、また、通常40℃以下、好ましくは35℃以下の範囲で、また、フッ化ニッケル水溶液のpHは、通常4.5以上、好ましくは5.5以上、また、通常6.5以下、好ましくは6.0以下の範囲で処理するのがよい。pH調節剤としては、シュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることができる。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1〜3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性を更に改良するためにフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に添加しておいてもよい。次いで、水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。
前記高温封孔処理の場合の封孔剤としては、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩水溶液を用いることができるが、特に酢酸ニッケルを用いるのが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合の濃度は、5〜20g/Lの範囲内で使用するのが好ましい。処理温度は、通常80℃以上、好ましくは90℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは98℃以下の範囲で、また、酢酸ニッケル水溶液のpHは、5.0〜6.0の範囲で処理するのが好ましい。ここで、pH調節剤としては、アンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることができる。処理時間は10分以上、好ましくは15分以上処理するのが好ましい。なお、この場合も被膜物性を改良するために酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に添加してもよい。更に、実質上塩類を含有しない高温水又は高温水蒸気により処理しても構わない。次いで、水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。
陽極酸化被膜の平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件を必要とする。従って生産性が悪くなると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じやすくなる。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は通常20μm以下、特に7μm以下で形成されることが好ましい。
導電性支持体の表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理したりすることにより粗面化されていてもよい。また、導電性支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであってもよい。また、導電性支持体として、安価化のためには切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。特に引き抜き加工、インパクト加工、しごき加工等の非切削アルミニウム支持体を用いる場合、処理により、表面に存在した汚れや異物等の付着物、小さな傷等が無くなり、均一で清浄な支持体が得られるので好ましい。
<下引き層>
導電性支持体と感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。下引き層としては、樹脂単独、或いは、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。また、下引き層は、単一層であっても、複数層からなるものであってもかまわない。
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子等が挙げられる。これらは一種類の粒子を単独で用いても良いし、複数の種類の粒子を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いても良い。これらの金属酸化物粒子の中でも、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理が施されていても良い。これらの処理は何れか1種でもよく、2種以上が施されていてもよい。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスの何れも用いることができる。なお、酸化チタン粒子は、その結晶型が1種類のみであってもよく、2種以上の結晶型が任意の組み合わせ及び比率で含まれていてもよい。
金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも下引き層の原料であるバインダー樹脂等の特性及び液の安定性の面から、平均一次粒径として通常10nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下のものが望ましい。この平均一次粒径は、TEM写真から得た。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。なお、これらは単独で用いても良く、或いは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、硬化剤とともに硬化した形で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性及び塗布性を示すので好ましい。
特に、これらポリアミド樹脂の中でも、下記一般式(1)で表されるジアミンを構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂が特に好ましく用いられる。
一般式(1)において、R4〜R7は、水素原子又は有機置換基を表す。m,nはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、置換基が複数の場合それらの置換基は互いに異なっていてもよい。R4〜R7で表される有機置換基としては、炭素数20以下の、ヘテロ原子を含んでいても構わない炭化水素基が好ましく、より好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基等のアリール基が挙げられ、更に好ましくはアルキル基、又はアルコキシ基が挙げられ、特に好ましくはメチル基、エチル基が挙げられる。
前記一般式(1)で表されるジアミンを構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂は、他に例えば、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム類;1,4−ブタンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,20−アイコサンジカルボン酸等のジカルボン酸類;1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等のジアミン類;ピペラジン等を組み合わせて、二元、三元、四元等に共重合させたものが挙げられる。この共重合比率について特に限定はないが、通常、前記一般式(1)で表されるジアミン成分が5〜40mol%であり、好ましくは5〜30mol%である。
共重合ポリアミド樹脂の数平均分子量としては、10000〜50000が好ましく、特に好適には15000〜35000である。数平均分子量が小さすぎても、大きすぎても膜の均一性を保つことが難しくなり易い。共重合ポリアミド樹脂の製造方法には特に制限はなく、通常のポリアミド樹脂の重縮合方法が適宜適用され、溶融重合法、溶液重合法、界面重合法等が用いられる。また、重合に際して、酢酸や安息香酸等の一塩基酸、あるいは、ヘキシルアミン、アニリン等の一酸塩基、分子量調節剤として加えることも何ら差し支えない。また、重合に際し、亜リン酸ソーダ、次亜リン酸ソーダ、亜リン酸、次亜リン酸やヒンダードフェノールに代表される熱安定剤やその他の重合添加剤を加えることも可能である。
下引き層用として好ましく使用される共重合ポリアミド樹脂の具体例を以下に示す。但し、具体例中、共重合比率はモノマーの仕込み比率(モル比率)を表す。
下引き層に用いられるバインダー樹脂に対する金属酸化物粒子の混合比は任意に選べるが、通常はバインダー樹脂100重量部に対して、10重量部以上500重量部以下の範囲で使用することが、塗布液の安定性、塗布性の面で好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、電子写真感光体の電気特性、強露光特性、画像特性、及び繰り返し特性、並びに製造時の塗布性を向上させる観点から、通常は0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、また、通常30μm以下、好ましくは20μm以下が望ましい。
なお、下引き層には、画像欠陥防止等を目的として、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させてもよい。
また、下引き層形成用に使用される塗布液は、動的光散乱法により測定される体積平均径Mvが0.1μm以下であって、且つ、体積平均径Mvと個数平均径Mpとの比Mv/Mpが、1.10≦Mv/Mp≦1.40、を満たす金属酸化物粒子を含有するのが好ましい。
Mv/Mpについては、以下の式を満たすものであるのが一層好適である。
ここで規定する金属酸化物粒子の体積平均粒子径Mv及び個数平均径Mpとは、どのような存在形態であれ、下引き層形成用塗布液の粒子の粒子径を動的光散乱法により直接計測して得られる値である。
動的光散乱法は、微小に分散された粒子のブラウン運動の速さを、粒子にレーザー光を照射してその速度に応じた位相の異なる光の散乱(ドップラーシフト)を検出して粒度分布を求めるものである。下引き層形成用塗布液中における金属酸化物粒子の体積粒子径の値は、塗布液中に粒子が安定に分散しているときの値であり、分散前の粉体としての金属酸化物粒子、ウエットケーキの粒径を意味していない。実際の測定では、上記の体積平均径Mv、個数平均径Mpについては、具体的には、動的光散乱方式粒度分析計(日機装社製、MICROTRAC UPA model:9340−UPA、以下UPAと略す)を用いて、以下の設定にて行った。具体的な測定操作は、上記粒度分析計の取扱説明書(日機装社製、書類No.T15−490A00、改訂No.E)に基づいて行った。
測定上限 :5.9978μm
測定下限 :0.0035μm
チャンネル数:44
測定時間 :300sec.
粒子透過性 :吸収
粒子屈折率 :N/A(適用しない)
粒子形状 :非球形
密度 :4.20(g/cm3) (*)
分散媒種類 :Methanol/1−propanol=7/3
分散媒屈折率:1.35
(*)二酸化チタン粒子の場合であり、他の粒子の場合は、前記取扱説明書に記載の数値を用いた。なお、測定時は、サンプル濃度指数(SIGNAL LEVEL)が0.6〜0.8になるように、メタノール/1−プロパノール=7/3の混合溶媒で希釈し、25℃で測定した。
体積平均径Mvは、上記の測定により得られる粒子の粒度分布の結果から、以下の式(A)により、個数平均径Mpは、同じく以下の式(B)により計算して得られる値である。以下において、nは粒子個数、vは粒子体積、dは粒子径を表す。
また、一般的に、下引き層形成用塗布液は、金属酸化物粒子を含有するものであるが、該金属酸化物粒子はその下引き層形成用塗布液中に分散されて存在する。該塗布液中に金属酸化物粒子を分散させるには、例えば、ボールミル、サンドグラインドミル、遊星ミル、ロールミル等の公知の機械的な粉砕装置で有機溶媒中にて湿式分散することにより製造することができるが、上記の感光層形成用塗布液の製造方法の場合と同様に、分散メディアを利用して分散することが好ましい。
分散メディアを利用して分散する分散装置としては、公知のどのような分散装置を用いて分散しても構わないが、ペブルミル、ボールミル、サンドミル、スクリーンミル、ギャップミル、振動ミル、ペイントシェーカー、アトライター等が挙げられる。これらの中でも下引き層形成用塗布液を循環させて分散できるものが好ましく、分散効率、到達粒径の細かさ、連続運転の容易さ等の点から、湿式攪拌ボールミル、例えばサンドミル、スクリーンミル、ギャップミルが用いられる。これらのミルは、縦型、横型いずれのものでもよい。また、ミルのディスク形状は、平板型、垂直ピン型、水平ピン型等任意のものを使用できる。好ましくは、液循環型のボールミルが用いられる。この、液循環型のボールミルは、上記“感光層形成用塗布液及びその製造方法”における“分散方法”の項で述べたものと同じである。
下引き層形成用塗布液の場合においても、上述した感光層形成用塗布液の場合と同様の液循環型の分散方法、及び同様の分散メディアを使用することが好ましい。
下引き層形成用塗布液に超音波振動を加える方法に特に制限はないが、該塗布液を納めた容器中に超音波発振機を直接浸漬する方法、該塗布液を納めた容器外壁に超音波発振機を接触させる方法、超音波発信機により振動を加えた液体の中に該塗布液を納めた溶液を浸漬する方法等が挙げられる。これらの方法の中でも、超音波発信機により振動を加えた液体の中に該塗布液を納めた溶液を浸漬する方法が好適に用いられる。この場合、超音波発信機により振動を加える液体としては、水;メタノール等のアルコール類;トルエン等の芳香族炭化水素類;シリコーンオイル等の油脂類が挙げられるが、製造上の安全性、コスト、洗浄性等を勘案すれば、水を用いることが好ましい。超音波発信機により振動を加えた液体の中に該塗布液を納めた溶液を浸漬する方法では、該液体の温度により超音波処理の効率が変化するため、該液体の温度を一定に保つことが好ましい。加えた超音波振動により振動を加えた液体の温度が上昇することがある。該液体の温度は、通常は5〜60℃、好ましくは10〜50℃、より好ましくは15〜40℃の温度範囲において超音波処理することが好ましい。
超音波処理する際に下引き層形成用塗布液を納める容器としては、電子写真感光体用の下引き層を形成するのに用いられる下引き層形成用塗布液を入れるのに通常用いられる容器であればどのような容器でも構わないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂製の容器や、ガラス製容器、金属製の缶が挙げられる。これらの中では金属製の缶が好ましく、特に、JIS Z 1602に規定される、18リットル金属製缶が好適に用いられる。有機溶媒に侵され難く、衝撃に強いからである。
下引き層形成用塗布液は、粗大な粒子を除去するために、必要に応じて濾過した後に使用される。この場合の濾過メディアとしては、通常濾過するために用いられる、セルロース繊維、樹脂繊維、ガラス繊維等、何れの濾過材を用いても構わない。濾過メディアの形態としては、濾過面積が大きく効率がよいこと等の理由により、芯材に各種繊維を巻き付けた、いわゆるワインドフィルターが好ましい。芯材としては、従前公知の何れの芯材も用いることができるが、ステンレスの芯材、ポリプロピレン等の下引き層形成用塗布液に溶解しない樹脂製の芯材等が挙げられる。
このようにして製造された下引き層形成用塗布液は、所望により更に結着剤や種々の助剤等を添加して、下引き層の形成に用いられる。
下引き層は、下引き層形成用塗布液を支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、スパイラル塗布、リング塗布、バーコート塗布、ロールコート塗布、ブレード塗布等の公知の塗布方法により塗布し、乾燥することにより形成される。
スプレー塗布法としては、エアスプレー、エアレススプレー、静電エアスプレー、静電エアレススプレー、回転霧化式静電スプレー、ホットスプレー、ホットエアレススプレー等があるが、均一な膜厚を得るための微粒化度、付着効率等を考えると回転霧化式静電スプレーにおいて、再公表平1−805198号公報に開示されている搬送方法、すなわち円筒状ワークを回転させながらその軸方向に間隔を開けることなく連続して搬送することにより、総合的に高い付着効率で膜厚の均一性に優れた電子写真感光体を得ることができる。
スパイラル塗布法としては、特開昭52−119651号公報に開示されている注液塗布機又はカーテン塗布機を用いた方法、特開平1−231966号公報に開示されている微小開口部から塗料を筋状に連続して飛翔させる方法、特開平3−193161号公報に開示されているマルチノズル体を用いた方法等がある。
浸漬塗布法の場合、通常、下引き層形成用塗布液の全固形分濃度は、通常1重量%以上、好ましくは10重量%以上であって、通常50重量%以下、好ましくは35重量%以下の範囲とし、粘度を好ましくは0.1mPa・s以上、また、好ましくは100mPa・s以下の範囲とする。
塗布後の塗布膜は乾燥されるが、必要且つ充分な乾燥が行われる様に乾燥温度、時間を調整する。乾燥温度は通常100〜250℃、好ましくは110℃〜170℃、さらに好ましくは115℃〜140℃の範囲である。乾燥方法としては、熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機及び遠赤外線乾燥機を用いることができる。
<感光層>
感光層は、上述の導電性支持体上に(前述の下引き層を設けた場合は下引き層上に)、本発明の感光層形成用塗布液を塗布、乾燥させることにより形成される。感光層の型式としては、電荷発生材料と電荷輸送材料とが同一層に存在し、それらがバインダー樹脂中に分散した単層構造のもの(単層型感光層)と、電荷発生材料がバインダー樹脂中に分散された電荷発生層及び電荷輸送材料がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層を含む、二層以上の層からなる積層構造のもの(積層型感光層)とが挙げられるが、何れの形態であってもよい。なお、本発明の感光層形成用塗布液は、電荷発生材料を含有するものであるので、単層型感光層の場合においてはさらに電荷輸送材料を含むように調製されて感光層を形成するために用いられ、積層型感光層の場合においては、電荷輸送層を形成するために用いられる。
また、積層型感光層としては、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層して設ける順積層型感光層と、逆に電荷輸送層、電荷発生層の順に積層して設ける逆積層型感光層とが挙げられるが、どのような形態を採用することも可能である。
<電荷発生材料を含有する層>
(積層型感光層)
感光層がいわゆる積層型感光層である場合、電荷発生材料を含有する層は、通常電荷発生層であるが、電荷発生材料は電荷輸送層中に含まれていても構わない。電荷発生材料を含有する層が電荷発生層である場合、電荷発生材料の配合量は、電荷発生層に含まれるバインダー樹脂100重量部に対して、通常30〜500重量部の範囲で配合され、より好ましくは50〜300重量部の範囲である。バインダー樹脂に対する電荷発生材料の配合量が少なすぎると、電子写真感光体としての電気特性が十分ではなくなり、その配合量が少なすぎると、塗布液の安定性を損なう。電荷発生材料を含有する層中の電荷発生材料の体積平均粒子径は、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。電荷発生層の膜厚は、通常0.1μm〜2μm、好ましくは0.15μm〜0.8μmである。電荷発生層には、成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、シリコーンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤を含有していてもよい。
(単層型感光層)
感光層がいわゆる単層型感光層である場合には、後に記載する電荷輸送層と同様の配合割合のバインダー樹脂及び電荷輸送材料を主成分とするマトリックス中に、前記”感光層形成用塗布液”の欄で説明した電荷発生材料が分散される。この場合の電荷発生材料の粒子径及び配合量は、同欄で説明したものと同じである。この単層型感光層においては、該マトリックスは、電荷発生層と電荷輸送層を兼ねるので、本マトリックスを形成させる塗布液は、本発明の感光層形成用塗布液に包含される。
感光層内に分散される電荷発生材料の量は、少なすぎると十分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下等の弊害があるため、例えば好ましくは0.5〜50重量%の範囲、より好ましくは10〜45重量%の範囲で使用される。感光層の膜厚は、通常5〜50μm、より好ましくは10〜45μmで使用される。また、単層型感光層も、成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、シリコーンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤を含有していてもよい。
<電荷輸送材料を含有する層>
いわゆる積層型感光層の場合、電荷輸送層は電荷輸送機能を持った樹脂単独で形成されても良いが、下記の電荷輸送材料がバインダー樹脂中に分散又は溶解された構成がより好ましい。一方、いわゆる単層型感光層の場合、電荷発生材料の分散されるマトリックスとして、下記の電荷輸送材料がバインダー樹脂中に分散又は溶解された構成が用いられる。
電荷輸送材料としては、例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリグリシジルカルバゾール、ポリアセナフチレン等の高分子化合物;ピレン,アントラセン等の多環芳香族化合物;インドール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、ピラゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアジアゾール誘導体等の複素環化合物;p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン,N−メチルカルバゾール−3−カルバルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン系化合物;5−(4−(ジ−p−トリルアミノ)ベンジリデン)−5H−ジベンゾ(a,d)シクロヘプテン等のスチリル系化合物;p−トリトリルアミン等のトリアリールアミン系化合物;N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン等のベンジジン系化合物;ブタジエン系化合物;ジ−(p−ジトリルアミノフェニル)メタン等のトリフェニルメタン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、スチリル系化合物、ブタジエン系化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、もしくはこれらが複数結合されたものが好適に用いられる。これらの電荷輸送材料は単独でも、いくつかを混合して用いてもよい。
電荷輸送材料を含有する層に使用されるバインダー樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、及びその共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等が挙げられ、またこれらの部分的架橋硬化物も使用できる。
また、電荷輸送材料を含有する層には、必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、レベリング剤、電子吸引性物質等の各種添加剤を含んでいてもよい。電荷輸送材料を含有する層の膜厚は、通常5〜60μm、好ましくは10〜45μm、より好ましくは15〜27μmの厚さで使用される。
前記バインダー樹脂と電荷輸送材料との割合は、通常バインダー樹脂100重量部に対して電荷輸送材料が20〜200重量部、好ましくは30〜150重量部の範囲で、より好ましくは40〜120重量部の範囲で使用される。
<表面層>
最表面層として従来公知の、例えば熱可塑性あるいは熱硬化性ポリマーを主体とする表面保護層やオーバーコート層を設けてもよい。
<各層の形成法>
電子写真感光体を構成する上記各層は、本発明の感光層形成用塗布液のように、層に含有させる物質を溶媒に溶解又は分散させて得られた塗布液を、例えば浸漬塗布方法、スプレー塗布方法、リング塗布方法等の公知の方法を用いて順次塗布、形成される。この場合、必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
塗布液の作製に用いる有機溶媒としては、前記の湿式機械的分散に用いることのできる溶媒が使用できる。好ましい例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、シクロヘキサノン,1−ヘキサノール,1,3−ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のエーテルケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の(ハロ)芳香族炭化水素類;酢酸メチル,酢酸エチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類が挙げられる。またこれらの溶媒の中でも特に、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテルケトン類が、好適に用いられる。また、より好適なものとしては、トルエン,キシレン,1−ヘキサノール,1,3−ブタンジオール,4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等が挙げられる。
これらの中から少なくとも1種類の溶媒が用いられるが、これらの溶媒の中から2種類以上を混合して用いても構わない。混合する溶媒としては、エーテル類、アルコール類、アミド類、スルホキシド類、エーテルケトン類アミド類、スルホキシド類、エーテルケトン類が適しているが、中でも1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類、1−プロパノール等のアルコール類が適している。特に好適には、エーテル類が混合される。これは、特にオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生材料として塗布液を製造する際に、該フタロシアニン顔料の結晶形安定化能、分散安定性等の面からである。
[画像形成装置]
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置の実施の形態について、装置の要部構成を示す図2を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図2に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置2、露光装置3、現像装置4及び転写装置5を備えて構成され、更に、必要に応じてクリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
本発明の電子写真感光体を使用しない場合は、低温低湿下での露光−帯電繰り返し特性が安定せず、得られる画像に黒点、色点等の画像欠陥が多発するようになり、画像形成装置として鮮明かつ安定的な画像形成が行えなくなるので好ましくない。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図2ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。図2では帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ブラシ等の接触型帯電装置等がよく用いられる。
なお、電子写真感光体1及び帯電装置2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下適宜、感光体カートリッジという)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されており、本発明においてもそのような形態で用いることが望ましい。また、本発明においては、前記のように、帯電手段が前記電子写真感光体に接触配置した場合に、その効果が顕著に発揮されるから、この構成が望ましい。
そして、例えば電子写真感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、この感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、後述するトナーについても、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナーが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。更に、電子写真感光体1、帯電装置2、トナーが全て備えられたカートリッジを用いることもある。
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行って電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED等が挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行うようにしてもよい。露光を行う際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長350nm〜600nmの短波長の単色光等で露光を行えばよい。これらの中でも波長350nm〜600nmの短波長の単色光等で露光することが好ましく、より好ましくは波長380nm〜500nmの単色光で露光することである。
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像等の乾式現像方式や、湿式現像方式等の任意の装置を用いることができる。図2では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジ等の容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄,ステンレス鋼,アルミニウム,ニッケル等の金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコーン樹脂,ウレタン樹脂,フッ素樹脂等を被覆した樹脂ロール等からなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂等の樹脂ブレード、ステンレス鋼,アルミニウム,銅,真鍮,リン青銅等の金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法等を用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト状の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を転写材(用紙,媒体)Pに転写するものである。本発明においては、転写装置5が転写材を介して感光体に接触配置される場合に効果的である。
クリーニング装置6については特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナー等、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。但し、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
定着装置7は、上部定着部材(加圧ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73がそなえられている。なお、図2では、上部定着部材71の内部に加熱装置73がそなえられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス,アルミニウム等の金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にフッ素樹脂で被覆した定着ロール、定着シート等の公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着等、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された画像形成装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行う。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行うことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行うことで電子写真感光体の除電を行う工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程等の工程を行うことができる構成としたり、オフセット印刷を行う構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
また、本実施形態では、本発明の電子写真感光体カートリッジを、電子写真感光体1及び帯電装置2を備えた感光体カートリッジを例示して説明したが、本発明の電子写真感光体カートリッジは、電子写真感光体1と、帯電装置(帯電部)2、露光装置(露光部)3及び現像装置(現像部)4のうちの少なくともいずれか一つとを備えていればよい。具体的には、例えば、本発明の電子写真感光体カートリッジは、電子写真感光体1、帯電装置(帯電部)2、露光装置(露光部)3及び現像装置(現像部)4を全て備えたカートリッジとして構成してもよい。
以下本発明の実施例、比較例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらに限定されるものではない。なお、実施例で用いる「部」は断りがない限り、「重量部」を示す。
[実施例1]
ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)10部を、1,2−ジメトキシエタン/4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン=9/1混合溶液に溶解させポリマー溶液を作製した。この後、D型オキシチタニウムフタロシアニン20部(特願2004−291274号公報記載の製造例1による。)を1,2−ジメトキシエタン/4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン=9/1混合溶液に懸濁させた液を調製し、前もって作製しておいたポリマー溶液に添加し、固形分濃度3.8wt%の溶液を作製した。直径約30μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製、商品名:YTZ)を分散メディアとして、ミル容積約0.15Lの寿工業株式会社製ウルトラアペックスミル(UAM−015型。以下、UAMと略記することがある。)を用い、ロータ周速8m/秒、液流量10kg/時間、5℃〜12℃の冷却液を循環させた状態で20分間分散処理した後、150分間US処理を行い、電荷発生層用塗布液SE1を作製した。
この電荷発生層用塗布液SE1について、作製時と室温120日保存後の粘度変化率(120日保存後の粘度と作製時の粘度の差を、作製時の粘度で除した値)と、作製時のフタロシアニン顔料の粒度分布と、分散指数を測定した。
粘度は、E型粘度計(トキメック社製、製品名:ED)を用い、JIS Z 8803に準じた方法で測定し、粒度分布は、前記のUPAを用いて測定した。また、分散指数は、775nmの吸光度が1になるように塗布液を希釈した後、775nmでの吸光度を1000nmでの吸光度で除した値を分散指数とした。結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において、D型オキシチタニウムフタロシアニン(特願2004−291274号公報記載の製造例1による。)のウルトラアペックスミルによる分散を40分間にする以外は、実施例1と同様にして、電荷発生層用塗布液SE2を作製した。さらに、実施例1と同様に、粘度変化率、粒度分布、分散指数について測定した。結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、D型オキシチタニウムフタロシアニン(特願2004−291274号公報記載の製造例1による。)のウルトラアペックスミルによる分散を60分間にする以外は、実施例1と同様にして、電荷発生層用塗布液SE3を作製した。さらに、実施例1と同様に、粘度変化率、粒度分布、分散指数について測定した。結果を表1に示す。
[比較例1]
D型オキシチタニウムフタロシアニン20部(特願2004−291274号公報記載の製造例1による。)と1,2−ジメトキシエタン375部を混合し、サンドグラインドミル(以下、SGMと略記することがある。)で20分間分散処理を行った(分散メディア:ポッターズ・バロティーニ株式会社製、商品名:GB200M)。続いてこの処理液を、120部の1,2−ジメトキシエタンで希釈し、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)10部を、1,2−ジメトキシエタン135部、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン76部の混合液に溶解させて得られたバインダー液の中に滴下した。この後、150分間US処理を行って、電荷発生層用塗布液SP1を調製した。さらに、実施例1と同様に、粘度変化率、粒度分布、分散指数について測定した。結果を表1に示す。
[比較例2]
D型オキシチタニウムフタロシアニン(特願2004−291274号公報記載の製造例1による。)のサンドグラインドミルによる分散を40分にする以外は、比較例1と同様にして、電荷発生層用塗布液SP2を調製した。さらに、実施例1と同様に、粘度変化率、粒度分布、分散指数について測定した。結果を表1に示す。
[比較例3]
D型オキシチタニウムフタロシアニン(特願2004−291274号公報記載の製造例1による。)のサンドグラインドミルによる分散を60分にする以外は、比較例1と同様にして、電荷発生層用塗布液SP3を調製した。さらに、実施例1と同様に、粘度変化率、粒度分布、分散指数について測定した。結果を表1に示す。
[実施例4]
A型オキシチタニウムフタロシアニン(特願平8−163133号公報記載の実施例製造法による。)20部を1,2−ジメトキシエタン/4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン=9/1混合溶液に懸濁させた液を調製した。直径約30μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製、商品名:YTZ)を分散メディアとして、ミル容積約0.15Lの寿工業株式会社製ウルトラアペックスミル(UAM−015型)を用い、ロータ周速8m/秒、液流量10kg/時間、5℃〜12℃の冷却液を循環させた状態で1時間分散処理した。この分散液を、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)10部を、1,2−ジメトキシエタン/4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン=9/1混合溶液に溶解させたポリマー溶液中に添加した後(最終固形分濃度3.8%)、150分間US処理を行い、電荷発生層用塗布液SE4を作製した。さらに、実施例1と同様に、粘度変化率、粒度分布、分散指数について測定した。結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例4において、ウルトラアペックスミルによる分散を、2時間半にする以外は、実施例4と同様にして、電荷発生層用塗布液SE5を調製した。さらに、実施例1と同様に、粘度変化率、粒度分布、分散指数について測定した。結果を表1に示す。
[比較例4]
比較例1において、D型オキシチタニウムフタロシアニンの代わりに、A型オキシチタニウムフタロシアニン(特願平8−163133号公報記載の実施例製造法による)を使用し、サンドグラインドミル(SGM)による分散を1時間にする以外は、実施例1と同様にして、電荷発生層用塗布液SP4を調製した。さらに、実施例1と同様に、粘度変化率、粒度分布、分散指数について測定した。結果を表1に示す。
[比較例5]
比較例1において、D型オキシチタニウムフタロシアニンの代わりに、A型オキシチタニウムフタロシアニン(特願平8−163133号公報記載の実施例製造法による。)を使用し、サンドグラインドミル(SGM)による分散を2時間半にする以外は、実施例1と同様にして、塗布液SP5を調製した。さらに、実施例1と同様に、粘度変化率、粒度分布、分散指数について測定した。結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例1において、D型オキシチタニウムフタロシアニンの代わりに、A型オキシチタニウムフタロシアニン(特願平8−163133号公報記載の実施例製造法による。)を使用し、直径約30μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製、商品名:YTZ)の代わりに、直径約100μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製、商品名:YTZ)を使用し、ウルトラアペックスミルによる分散を1時間にする以外は、実施例1と同様にして、電荷発生層用塗布液SE6を調製した。さらに、実施例1と同様に、粘度変化率、粒度分布、分散指数について測定した。結果を表1に示す。
[比較例6]
比較例1において、D型オキシチタニウムフタロシアニンの代わりに、A型オキシチタニウムフタロシアニン(特願平8−163133号公報記載の実施例製造法による。)を使用し、分散メディアとして直径約500μmのジルコニアビーズを使用する以外は、比較例1と同様にして、電荷発生層用塗布液SP6を調製した。さらに、実施例1と同様に、粘度変化率、粒度分布、分散指数について測定した。結果を表1に示す。
[比較例8]
下記式で表される電荷発生材料1.5部と1,2−ジメトキシエタン30部を混合し、直径約200μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製、商品名:YTZ)を分散メディアとして用い、ミル容積約0.15Lの寿工業株式会社製ウルトラアペックスミル(UAM−015型)を用い、ロータ周速8m/秒、液流量10kg/時間、5℃〜12℃の冷却液を循環させた状態で3時間分散処理した。
続いて、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)0.75部、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製品、PKHH)0.75部を1,2−ジメトキシエタン28.5部に溶解したバインダー溶液と混合し、最後に1,2−ジメトキシエタンと4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンの任意混合液13.5部を加えて、固形分(顔料+樹脂)濃度4.0重量%の電荷発生層用塗布液SE7を調製した。
分散指数は、530nmの吸光度が1になるように塗布液を希釈した後、530nmでの吸光度を640nmでの吸光度で除した値を分散指数とした。さらに、実施例1と同様に、粘度変化率、粒度分布について測定した。結果を表1に示す。
[比較例7]
実施例7で使用した電荷発生材料1.5部と1,2−ジメトキシエタン30部を混合し、サンドグラインドミルで8時間分散処理を行った(分散メディア:GB200M)。続いて、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)0.75部、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製品、PKHH)0.75部を1,2−ジメトキシエタン28.5部に溶解したバインダー溶液と混合し、最後に1,2−ジメトキシエタンと4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンの任意混合液13.5部を加えて、固形分(顔料+樹脂)濃度4.0重量%の電荷発生層用塗布液SP7を調製した。分散指数は実施例7と同様に測定し、粘度変化率、粒度分布は実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
[評価1]
本発明の製造方法により調製された電荷発生層用塗布液は、既存の手法で作製されたものと比較して、平均粒子径が小さく、且つ粒子径の分布幅が小さいため、液の安定性が高く、均一な電荷発生層を形成することが可能であって、しかも長期間の保存によっても粘度変化が小さく安定性が高い。また、同様の分散を得るのに必要とする時間が、古典的なサンドグラインドミル等に比べて非常に短く、効率が高く、生産性の高い手法に基づいて作製された塗布液であることが言える。
[実施例8]
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業株式会社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、ヘンシェルミキサーにて混合して得られた表面処理酸化チタン50部と、メタノール120部を混合してなる原料スラリー1kgを、直径約100μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製 YTZ)を分散メディアとして、ミル容積約0.15Lの寿工業株式会社製ウルトラアペックスミル(UAM−015型)を用い、ロータ周速10m/秒、液流量10kg/時間の液循環状態で1時間分散処理し、酸化チタン分散液を作製した。
前記酸化チタン分散液と、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、及び、ε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、出力1200Wの超音波発信器による超音波分散処理を1時間行い、更に孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルター(アドバンテック製 マイテックス LC)により濾過し、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比が3/1であり、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒の重量比が7/1/2であって、含有する固形分の濃度が18.0重量%の下引き層形成用分散液Aを得た。
得られた下引き層形成用塗布液Aを、外径24mm、長さ236.5mm、肉厚0.75mmのアルミニウム切削管上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が2μmとなるように塗布し、乾燥させて下引き層を形成した。
電荷発生層用分散液SE3を、孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルター(アドバンテック社製 マイテックス LC)でろ過し、電荷発生層用塗布液を作製した。この電荷発生層用塗布液を、前記下引き層上に乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように、浸漬塗布により塗布、乾燥して電荷発生層を形成した。
次にこの電荷発生層の上に、下記に示すヒドラゾン化合物56部と、
下記に示すヒドラゾン化合物14部と、
下記繰り返し構造を有するポリカーボネート樹脂100部と、
シリコーンオイル0.05重量部とを、テトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640重量部に溶解させた電荷輸送層用塗布液を、乾燥後の膜厚が17μmとなるように塗布し、室温において25分間風乾した。さらに、125℃において20分間乾燥して電荷輸送層を設けて電子写真感光体を作製した。この電子写真感光体を感光体P1とする。
[評価2]
この感光体P1の絶縁破壊強度を、下記のようにして測定した。すなわち、温度25℃、相対湿度50%環境下に該感光体を固定し、体積抵抗率が約2MΩ・cmでドラム長より両端が約2cmずつ短い帯電ローラを押し当て、直流電圧−3kVを印加し、絶縁破壊するまでの時間を測定した結果、22分であった。
また、該感光体を、電子写真学会測定標準に従って製造された電子写真特性評価装置(電子写真学会編、「続電子写真技術の基礎と応用」、コロナ社、1996年発行、404頁〜405頁)(三菱化学株式会社製)に装着し、表面電位が−700Vになるように帯電させた後、780nmのレーザー光を5.0μJ/cm2の強度で照射し、露光後100m秒後の表面電位(VL)を、温度25℃、相対湿度50%(以下、NN環境ということがある)環境下、及び温度5℃、相対湿度10%(以下、LL環境ということがある)で測定した。その結果を表2に記す。
本発明の電子写真感光体は、凝集等の無い均一な層を有し、環境差による電位の変動が小さく、しかも耐絶縁破壊性能に優れる。
[実施例9]
下引き層形成用塗布液として、前記実施例に記載の下引き層形成用塗布液Aを用い、外径30mm、長さ285mm、肉厚0.8mmのアルミニウム切削管上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が2.4μmとなるように塗布し、乾燥させて下引き層を形成した。
電荷発生層用塗布液SE3を、前記下引き層上に乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように、浸漬塗布により塗布、乾燥して電荷発生層を形成した。
次に、この電荷発生層の上に、電荷輸送材料として下記組成物(A)に示す構造を主体とする、特開2002−080432号公報の実施例1の記載に従い製造した組成物(A)を60部、
下記繰り返し構造を有するポリカーボネート樹脂100部、
及びシリコーンオイル0.05重量部を、テトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640重量部に溶解させた塗布液を、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗布し、乾燥して電荷輸送層を設け、電子写真感光体を作製した。
作製した感光体を、セイコーエプソン株式会社製カラープリンター(製品名:InterColor LP−1500C)のカートリッジに装着し、フルカラー画像を形成したところ、良好な画像を得ることができた。得られた画像1.6cm四方中に観察される微小色点の数は、8個のみであった。
本発明の電子写真感光体は、感光体特性も良好で絶縁破壊にも強く、しかも色点等の画像欠陥の少ない非常に優れた性能を有している。
[実施例10]
下引き層形成用塗布液Aを、外径24mm、長さ236.5mm、肉厚0.75mmのアルミニウム切削管上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が2μmとなるように塗布し、乾燥させて下引き層を形成した。感光層形成用塗布液SE7を、前記下引き層上に乾燥後の膜厚が0.6μmとなるように浸漬塗布した後、乾燥して電荷発生層を形成した。
次に、この電荷発生層の上に、下記に示すトリフェニルアミン化合物67部、
下記繰り返し構造を有するポリカーボネート樹脂100部、
下記構造の化合物0.5部、
及びシリコーンオイル0.02重量部を、テトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640重量部に溶解させた電荷輸送層用塗布液を、乾燥後の膜厚が25μmとなるように塗布し、室温において25分間風乾し、さらに125℃において20分間乾燥して電荷輸送層を設けて電子写真感光体を作製した。
[評価3]
以上で得られた電子写真感光体を、電子写真学会測定標準に従って製造された電子写真特性評価装置(電子写真学会編、「続電子写真技術の基礎と応用」、コロナ社、1996年発行、404頁〜405頁)(三菱化学株式会社製)に装着し、以下の手順に従って、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性の評価を行った。
暗所で、スコロトロン帯電器のグリッド電圧−800Vで放電を行ない感光体を帯電させたときの、感光体初期表面電位を測定した。次に、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで450nmの単色光としたものを照射して、表面電位が−350Vとなる時の照射エネルギー(μJ/cm2)を測定し、この値を感度E1/2としたところ、初期帯電電位は−710V、感度E1/2は3.3μJ/cm2であった。
[実施例11]
実施例8で使用した下引き層形成用塗布液Aを、表面にアルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートシート上に、乾燥後の膜厚が1.2μmになるようにワイアバーで塗布、乾燥して下引き層を設けた。次に、実施例1で使用したD型オキシチタニウムフタロシアニン5重量部(特願2004−291274号公報記載の製造例1)をトルエン70重量部と共に、直径約30μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製、商品名:YTZ)を分散メディアとして、ミル容積約0.15Lの寿工業株式会社製ウルトラアペックスミル(UAM)を用い、ロータ周速8m/秒、液流量10kg/時間、5℃〜12℃の冷却液を循環させた状態で20分間分散処理した後、150分間US処理を行い、分散液SE8を得た。また、上記のD型オキシチタニウムフタロシアニンを使用せずに、下記構造式(6)で示される電子輸送物質8重量部をトルエン112重量部と共に使用する以外は、SE8と同様にして、分散液SE9を得た。
一方、下記構造式(7)で示される正孔輸送物質60重量部と、実施例10において使用したポリカーボネート樹脂100重量部をトルエン420重量部に溶解し、レベリング剤としてシリコーンオイル0.05重量部を加え、これに上記の2種(SE8,SE9)の分散液を、ホモジナイザーにより均一になるように混合した。このように調製した塗布液を、上述の下引き層上に、乾燥後の膜厚が25μmになるように塗布し、正帯電単層型のシート状電子写真感光体EXを得た。このとき、樹脂の溶媒に対する溶解性は良好であり、塗布液調整後1ヶ月が経過してもゲル化等の症状は見られなかった。
[評価4]
電子写真学会測定標準に従って製造された電子写真特性評価装置(「続電子写真技術の基礎と応用」、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)を使用し、上記感光体EXを直径80mmのアルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体EXが有するアルミニウム基体との導通をとった上で、ドラムを一定回転数60rpmで回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行った。その際、感光体の初期表面電位が+700Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光としたものを1.5μJ/cm2で露光したときの露光後表面電位(以下、「VL+」と呼ぶことがある。)を測定した。VL測定に際しては、露光から電位測定に要する時間を100msとした。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%で行った。その結果を表3に示す。
[比較例8]
実施例11で使用したUAMの代わりに、サンドグラインドミル(SGM)で20分間分散処理を行い(分散メディア:ポッターズ・バロティーニ株式会社製、商品名:GB200M)、D型オキシチタニウムフタロシアニンを含む分散液と、上記構造式(7)で表される正孔輸送物質を含む分散液とを得る以外は、実施例11と同様にして、正帯電単層型の電子写真感光体PXを得た。このとき、樹脂の溶媒に対する溶解性は良好であったが、塗布液調整後1ヶ月が経過した時点で、溶液のゲル化が認められた。実施例11と同様にして、電気特性を測定した。その結果を表3に示す。