JP5070933B2 - 下引き層形成用塗布液、下引き層形成用塗布液の製造方法、電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジ - Google Patents

下引き層形成用塗布液、下引き層形成用塗布液の製造方法、電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジ Download PDF

Info

Publication number
JP5070933B2
JP5070933B2 JP2007133452A JP2007133452A JP5070933B2 JP 5070933 B2 JP5070933 B2 JP 5070933B2 JP 2007133452 A JP2007133452 A JP 2007133452A JP 2007133452 A JP2007133452 A JP 2007133452A JP 5070933 B2 JP5070933 B2 JP 5070933B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
undercoat layer
coating solution
forming
photosensitive member
metal oxide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2007133452A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007334331A (ja
Inventor
宏恵 渕上
耕三 石尾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP2007133452A priority Critical patent/JP5070933B2/ja
Publication of JP2007334331A publication Critical patent/JP2007334331A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5070933B2 publication Critical patent/JP5070933B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、電子写真感光体の下引き層を塗布、乾燥して形成する際に用いる下引き層形成用塗布液及びその製造方法、並びに、該下引き層形成用塗布液を用いた電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジに関する。
電子写真技術は、即時性、高品質の画像が得られることなどから、近年では複写機の分野にとどまらず、各種プリンターの分野でも広く使われ応用されている。電子写真技術の中核となる電子写真感光体(以下適宜、単に「感光体」という)については、その光導電材料として、無機系の光導電材料に比し、無公害、製造が容易等の利点を有する有機系の光導電材料を使用した有機感光体が開発されている。
通常、有機感光体は、導電性支持体上に感光層を形成してなる。感光体のタイプとしては、光導電性材料をバインダー樹脂中に溶解または分散させた単層の感光層(単層型感光層)を有する、いわゆる単層型感光体;電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を積層してなる複数の層からなる感光層(積層型感光層)を有する、いわゆる積層型感光体などが知られている。
有機感光体では、感光体の使用環境の変化や繰り返し使用による電気特性等の変化により、当該感光体を用いて形成された画像に様々な欠陥が見られることがある。これを改善する技術の一つとして、安定して良好な画像を形成するために、導電性基板と感光層との間にバインダー樹脂と酸化チタン粒子とを有する下引き層を設ける方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
有機感光体の有する層は、通常、その生産性の高さから、各種溶媒中に材料を溶解または分散した塗布液を、塗布、乾燥することにより形成される。この際、酸化チタン粒子とバインダー樹脂とを含有する下引き層では、酸化チタン粒子とバインダー樹脂とは下引き層中において相溶しない状態で存在しているため、当該下引き層形成用塗布液は、酸化チタン粒子を分散した塗布液により塗布形成される。
従来、このような塗布液は、酸化チタン粒子を長時間に亘り、ボールミル、サンドグラインドミル、遊星ミル、ロールミルなどの公知の機械的な粉砕装置で有機溶媒中にて湿式分散することにより製造するのが一般的であった(例えば、特許文献1参照)。そして、下引き層形成用塗布液中の酸化チタン粒子を分散メディアを用いて分散する場合、分散メディアの材質をチタニアまたはジルコニアにすることにより、低温低湿条件下でも帯電露光繰り返し特性の優れた電子写真感光体を提供することができることが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
一方で、微小粒子の粉砕や分散に使用する粉砕装置についても、従来から開発がなされている。そのような技術としては、特許文献3記載の技術などが挙げられる。
特開平11−202519号公報 特開平6−273962号公報 特開2006−35167号公報
しかしながら、より高画質の画像形成が要求される中で、従来の技術では、画像の点や、生産時における塗布液の安定性等、種々の点で未だ性能的に不十分な点が多かった。
本発明は、前記の電子写真技術の背景を鑑みて創案されたもので、高い安定性を有する下引き層形成用塗布液及びその製造方法、様々な使用環境下でも高い画質の画像を形成することが可能で、しかも黒点や色点などの画像欠陥が発現し難い高性能の電子写真感光体、並びに、該電子写真感光体を用いた画像形成装置及び電子写真カートリッジを提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、下引き層形成用塗布液における金属酸化物粒子を、特定方式の媒体攪拌型粉砕機を用いて粒度を特定範囲に管理することにより、高性能の下引き層形成用塗布液が得られること、及び、その際の分散に利用される分散メディアとして、通常用いられる分散メディアの粒子径に比し、特に小粒子径の分散メディアを用いることにより、使用時の安定性に優れた下引き層形成用塗布液を得ることができることを見出した。さらに、該塗布液を塗布、乾燥して得られる下引き層を有する電子写真感光体は、異なる使用環境においても良好な電気特性を有すること、該電子写真感光体を用いた画像形成装置によれば高品質な画像を形成することが可能であり、しかも絶縁破壊などにより発生すると考えられる黒点や色点などの画像欠陥が極めて発現し難いことを見いだした。以上の知見に基づき、本発明者らは、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含有する、電子写真感光体の下引き層形成用塗布液において、該金属酸化物粒子として、平均粒子径5〜100μmのメディアを使用し、湿式攪拌ミルを用いて分散された金属酸化物粒子を含有することを特徴とする、電子写真感光体の下引き層形成用塗布液に存する(請求項1)。
このとき、前記湿式攪拌ミルが、メディア分離用のスクリーンを備えることが好ましい(請求項2)。
また、前記湿式攪拌ミルが、一端側にスラリー入り口を有する筒状の容器と、前記容器内に長手方向に延びるように配置された回転自在な攪拌軸と、前記容器の外において前記攪拌軸に連結された駆動装置とを備え、前記攪拌軸は、攪拌部材を有し、前記攪拌軸と前記容器内面との間の空間にメディアが入れられており、前記スラリー入り口からスラリーを導入しながら前記駆動装置により前記攪拌軸を回転駆動することにより、前記スラリー内の固形物が粉砕されるようになっており、前記攪拌軸は、前記容器の他端近傍にメディア入り口を有する中空部が形成され、前記攪拌軸には前記中空部を前記攪拌軸と前記容器内面との間の前記空間に連通させるスリットが形成され、前記スラリーの動きに伴って前記容器の前記他端近傍に達した前記メディアが、前記スラリー入り口から前記攪拌軸の前記中空部に入り、前記スリットから前記攪拌軸と前記容器内面との間の前記空間に戻る循環運動をするようになっており、前記攪拌軸の前記中空部内にスラリー出口が配置され、前記中空部内に前記スラリー出口を囲むように前記スクリーンが設けられ、前記スクリーンが回転駆動されるようになっていることが好ましい(請求項3)。
さらに、前記湿式攪拌ミルにおいて、前記スラリー出口は前記攪拌軸に形成され、前記スクリーンは前記攪拌軸に固定されて、該攪拌軸とともに回転駆動されるようになっており、前記攪拌軸内には前記スラリー出口に通じるスラリー出口通路が設けられたことが好ましい(請求項4)。
また、前記湿式攪拌ミルにおいては、前記スラリー出口は前記攪拌軸の前記中空部内に回転自在に配置された管状のスラリー出口部材により構成され、前記スクリーンは前記管状のスラリー出口部材に固定され、前記攪拌軸とは別に前記管状のスラリー出口部材を回転駆動する手段が設けられていても好ましい(請求項5)。
さらに、前記攪拌部材は、前記攪拌軸の周面から放射状に突出する部材であることが好ましい(請求項6)。
また、本発明の下引き層形成用塗布液においては、該下引き層形成用塗布液中の該金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、体積平均径Mvが0.1μm以下であって、且つ、小粒子径側から累積を行なった体積粒度分布累積90%粒子径が0.3μm以下であることが好ましい(請求項7)。
さらに、本発明の下引き層形成用塗布液においては、該下引き層形成用塗布液中の該金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、体積平均径Mvが0.1μm以下であって、且つ、体積平均径Mvと個数平均径Mpとの比Mv/Mpが下記式(1)を満たすことも好ましい(請求項8)。
1.10 ≦ Mv/Mp ≦ 1.40 (1)
また、本発明の下引き層形成用塗布液においては、該下引き層形成用塗布液中の該金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、体積平均径Mvが0.1μm以下であって、且つ、体積粒度分布幅指標SDが下記式(2)を満たすことも好ましい(請求項9)。
0.010 ≦ SD ≦ 0.040 (2)
(ただし、SD=(D84−D16)/2であり、D84は体積粒度分布累積カーブが84%となる点の粒径(μm)を表し、D16は体積粒度分布累積カーブが16%となる点の粒径(μm)を表す。粒度分布の累積は小粒径側より行なう。)
本発明の別の要旨は、金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含有する、電子写真感光体の下引き層形成用塗布液の製造方法において、前記金属酸化物粒子として、平均粒子径5〜100μmのメディアを使用し、湿式攪拌ミルを用いて分散された金属酸化物粒子を使用することを特徴とする、電子写真感光体の下引き層形成用塗布液の製造方法に存する(請求項10)。
このとき、前記湿式攪拌ミルが、メディア分離用のスクリーンを備えることが好ましい(請求項11)。
また、前記湿式攪拌ミルが、一端側にスラリー入り口を有する筒状の容器と、前記容器内に長手方向に延びるように配置された回転自在な攪拌軸と、前記容器の外において前記攪拌軸に連結された駆動装置とを備え、前記攪拌軸は、攪拌部材を有し、前記攪拌軸と前記容器内面との間の空間にメディアが入れられており、前記スラリー入り口からスラリーを導入しながら前記駆動装置により前記攪拌軸を回転駆動することにより、前記スラリー内の固形物が粉砕されるようになっており、前記攪拌軸は、前記容器の他端近傍にメディア入り口を有する中空部が形成され、前記攪拌軸には前記中空部を前記攪拌軸と前記容器内面との間の前記空間に連通させるスリットが形成され、前記スラリーの動きに伴って前記容器の前記他端近傍に達した前記メディアが、前記スラリー入り口から前記攪拌軸の前記中空部に入り、前記スリットから前記攪拌軸と前記容器内面との間の前記空間に戻る循環運動をするようになっており、前記攪拌軸の前記中空部内にスラリー出口が配置され、前記中空部内に前記スラリー出口を囲むようにスクリーンが設けられ、前記スクリーンが回転駆動されるようになった湿式攪拌ミルであることが好ましい(請求項12)。
本発明の更に別の要旨は、導電性支持体上に、バインダー樹脂及び金属酸化物粒子を含有する下引き層と、該下引き層上に形成される感光層とを有する電子写真感光体において、該下引き層が、前記の下引き層形成用塗布液を塗布乾燥してなることを特徴とする、電子写真感光体に存する(請求項13)。
本発明の更に別の要旨は、前記の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した該電子写真感光体に対し像露光を行ない静電潜像を形成する像露光手段と、前記静電潜像をトナーで現像する現像手段と、前記トナーを被転写体に転写する転写手段とを備えることを特徴とする、画像形成装置に存する(請求項14)。
このとき、該帯電手段が、該電子写真感光体に接触配置することが好ましい(請求項15)。
本発明の更に別の要旨は、前記の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した該電子写真感光体に対し像露光を行ない静電潜像を形成する像露光手段、前記静電潜像をトナーで現像する現像手段、前記トナーを被転写体に転写する転写手段、被転写体に転写された前記トナーを定着させる定着手段、及び、該電子写真感光体に付着した前記トナーを回収するクリーニング手段の少なくとも一つとを備えることを特徴とする、電子写真カートリッジに存する(請求項16)。
このとき、電子写真カートリッジは、少なくとも該帯電手段及び該電子写真感光体を備え、該帯電手段が該電子写真感光体に接触配置することが好ましい(請求項17)。
本発明によれば、高い安定性を有する下引き層形成用塗布液及びその製造方法、様々な使用環境下でも高い画質の画像を形成することが可能で、しかも黒点や色点などの画像欠陥が発現し難い高性能の電子写真感光体、並びに、該電子写真感光体を用いた画像形成装置及び電子写真カートリッジを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施形態の代表例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変形して実施することができる。
本発明は、電子写真感光体の下引き層形成用塗布液及びその製造方法、並びに、前記下引き層形成用塗布液を塗布形成してなる下引き層を有する電子写真感光体、前記電子写真感光体を用いる画像形成装置、及び、前記電子写真感光体を用いた電子写真カートリッジに係るものである。
また、本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に下引き層と感光層とを有するものである。本発明に係る下引き層は、導電性支持体と感光層との間に設けられ、導電性支持体と感光層との接着性の改善、導電性支持体の汚れや傷のなどの隠蔽、不純物や表面物性の不均質化によるキャリヤ注入の防止、電気特性の不均一性の改良、繰り返し使用による表面電位低下の防止、画質欠陥の原因となる局所的な表面電位変動の防止等の機能の少なくともいずれか一つを有し、光電特性の発現に必須ではない層である。
[I.下引き層形成用塗布液]
本発明の下引き層形成用塗布液は、下引き層を形成するために用いられるもので、金属酸化物粒子と、バインダー樹脂とを含有する。また、通常、本発明の下引き層形成用塗布液は、溶媒を含有している。さらに、本発明の下引き層形成用塗布液は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、その他の成分を含有していてもよい。
[I−1.金属酸化物粒子]
[I−1−1.金属酸化物粒子の種類]
本発明に係る金属酸化物粒子としては、電子写真感光体に使用可能な如何なる金属酸化物粒子も使用することができる。
金属酸化物粒子を形成する金属酸化物の具体例を挙げると、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物;チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物などが挙げられる。これらの中でも、バンドギャップが2〜4eVの金属酸化物からなる金属酸化物粒子が好ましい。バンドギャップが小さすぎると、導電性支持体からのキャリア注入が起こりやすくなり、黒点や色点などの画像欠陥が発生しやすくなりる。また、バンドギャップが大きすぎると、電子のトラッピングにより電荷の移動が阻害されて、電気特性が悪化する可能性があるためである。
なお、金属酸化物粒子は、一種類の粒子のみを用いても良いし、複数の種類の粒子を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、金属酸化物粒子は、1種の金属酸化物のみから形成されているものを用いてもよく、2種以上の金属酸化物を任意の組み合わせ及び比率で併用して形成されているものでも良い。
前記の金属酸化物粒子を形成する金属酸化物の中でも、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素及び酸化亜鉛が好ましく、酸化チタン及び酸化アルミニウムがより好ましく、酸化チタンが特には好ましい。
また、金属酸化物粒子の結晶型は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。例えば、金属酸化物として酸化チタンを用いた金属酸化物粒子(即ち、酸化チタン粒子)の結晶型に制限は無く、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。また、酸化チタン粒子の結晶型は、前記の結晶状態の異なるものから、複数の結晶状態のものが含まれていてもよい。
さらに、金属酸化物粒子は、その表面に種々の表面処理を行なってもよい。例えば、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、またはステアリン酸、ポリオール、有機珪素化合物等の有機物などの処理剤による処理を施していてもよい。
特に、金属酸化物粒子として酸化チタン粒子を用いる場合には、有機珪素化合物により表面処理されていることが好ましい。有機珪素化合物としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン等のシリコーンオイル;メチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のオルガノシラン;ヘキサメチルジシラザン等のシラザン;ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。
また、金属酸化物粒子は、特に、下記式(i)の構造で表されるシラン処理剤で処理することが好ましい。このシラン処理剤は、金属酸化物粒子との反応性も良く良好な処理剤である。
Figure 0005070933
前記式(i)中、R1及びR2は、それぞれ独立してアルキル基を表す。R1及びR2の炭素数に制限は無いが、通常1以上、また、通常18以下、好ましくは10以下、より好ましくは6以下である。R1及びR2のうち好適なものの例を挙げると、メチル基、エチル基などが挙げられる。
また、前記式(i)中、R3は、アルキル基又はアルコキシ基を表わす。R3の炭素数に制限は無いが、通常1以上、また、通常18以下、好ましくは10以下、より好ましくは6以下である。R3のうち好適なものの例を挙げると、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
1〜R3の炭素数が多くなりすぎると金属酸化物粒子との反応性が低下したり、処理後の金属酸化物粒子の下引き層形成用塗布液中での分散安定性が低下する可能性がある。
なお、これらの表面処理された金属酸化物粒子の最表面は、通常、前記のような処理剤で処理されている。この際、上述した表面処理は、1つの表面処理のみを行なってもよく、2つ以上の表面処理を任意の組み合わせで行なってもよい。例えば、前記の式(i)で表わされるシラン処理剤による表面処理のその前に酸化アルミニウム、酸化珪素または酸化ジルコニウム等の処理剤などで処理されていても構わない。また、異なる表面処理を施された金属酸化物粒子を、任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
本発明に係る金属酸化物粒子のうち、商品化されているものの例を挙げる。ただし、本発明に係る金属酸化物粒子は、以下に例示される商品に限定されるものではない。
酸化チタン粒子の具体的な商品の例としては、表面処理を施していない超微粒子酸化チタン「TTO−55(N)」;Al23被覆を施した超微粒子酸化チタン「TTO−55(A)」、「TTO−55(B)」;ステアリン酸で表面処理を施した超微粒子酸化チタン「TTO−55(C)」;Al23とオルガノシロキサンで表面処理を施した超微粒子酸化チタン「TTO−55(S)」;高純度酸化チタン「CR−EL」;硫酸法酸化チタン「R−550」、「R−580」、「R−630」、「R−670」、「R−680」、「R−780」、「A−100」、「A−220」、「W−10」;塩素法酸化チタン「CR−50」、「CR−58」、「CR−60」、「CR−60−2」、「CR−67」;導電性酸化チタン「SN−100P」、「SN−100D」、「ET−300W」;(以上、石原産業株式会社製)等が挙げられる。また、「R−60」、「A−110」、「A−150」などの酸化チタン;をはじめ、Al23被覆を施した「SR−1」、「R−GL」、「R−5N」、「R−5N−2」、「R−52N」、「RK−1」、「A−SP」;SiO2、Al23被覆を施した「R−GX」、「R−7E」;ZnO、SiO2、Al23被覆を施した「R−650」;ZrO2、Al23被覆を施した「R−61N」;(以上、堺化学工業株式会社製)等も挙げられる。さらに、SiO2、Al23で表面処理された「TR−700」;ZnO、SiO2、Al23で表面処理された「TR−840」、「TA−500」の他、「TA−100」、「TA−200」、「TA−300」など表面未処理の酸化チタン;Al23で表面処理を施した「TA−400」(以上、富士チタン工業株式会社製);表面処理を施していない「MT−150W」、「MT−500B」;SiO2、Al23で表面処理された「MT−100SA」、「MT−500SA」;SiO2、Al23とオルガノシロキサンで表面処理された「MT−100SAS」、「MT−500SAS」(テイカ株式会社製)等も挙げられる。
また、酸化アルミニウム粒子の具体的な商品の例としては、「Aluminium Oxide C」(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
さらに、酸化珪素粒子の具体的な商品の例としては、「200CF」、「R972」(日本アエロジル社製)、「KEP−30」(日本触媒株式会社製)等が挙げられる。
また、酸化スズ粒子の具体的な商品の例としては、「SN−100P」(石原産業株式会社製)等が挙げられる。
さらに、酸化亜鉛粒子の具体的な商品の例としては「MZ−305S」(テイカ株式会社製)等が挙げられる。
[I−1−2.金属酸化物粒子の粒径分布]
本発明の下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子は、一次粒子として存在するのが望ましい。しかし、通常は、そのようなことは少なく、凝集して凝集体二次粒子として存在するか、両者が混在する場合がほとんどである。したがって、その状態での粒度分布が如何にあるべきかは非常に重要である。具体的には、本発明に係る金属酸化物粒子については、その粒径分布に関し、以下の条件(a)〜(c)の少なくとも1つ、好ましくは2以上、より好ましくは3つ全てが成立することが好ましい。
[I−1−2−1.条件(a)についての説明]
条件(a):
本発明の下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、体積平均径Mvが0.1μm以下であって、且つ、小粒子径側から累積を行なった体積粒度分布累積90%粒子径D90が0.3μm以下であることが好ましい。
〔体積平均径Mvについて〕
本発明に係る金属酸化物粒子は、前記の体積平均径Mvが、通常0.1μm以下、好ましくは95nm以下、より好ましくは90nm以下である。
下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の体積平均径Mvを前記のような範囲(0.1μm以下)とすることにより、下引き層形成用塗布液中での沈殿や粘性変化を少なくすることができる。これにより、結果として下引き層形成後の膜厚及び表面性が均一とすることができる。一方、金属酸化物粒子の体積平均径Mvが大きくなりすぎる場合(0.1μmを超える場合)は、逆に、下引き層形成用塗布液中での沈殿や粘性変化が大きくなり、結果として下引き層形成後の膜厚及び表面性が不均一となるため、その上層(電荷発生層など)の品質にも悪影響を及ぼす可能性がある。
なお、金属酸化物粒子の体積平均径Mvの下限に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上である。体積平均径Mvが過剰に小さい場合には、金属酸化物粒子の再凝集が起こる可能性があり、その場合には下引き層形成用塗布液の保存安定性が低下することがある。
〔金属酸化物粒子の体積粒度分布累積90%粒子径D90について〕
本発明に係る金属酸化物粒子は、下引き層測定用分散液中で動的光散乱法により測定された体積粒度分布累積90%粒子径D90が、通常0.3μm以下、好ましくは0.25μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。また、前記の体積粒度分布累積90%粒子径D90の下限に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上である。従来の電子写真感光体では、下引き層に、下引き層の表裏を貫通できるほど大きい金属酸化物粒子が含有され、当該大きな金属酸化物粒子によって、画像形成時に欠陥が生じる可能性があった。さらに、帯電手段として接触式のものを用いた場合には、感光層に帯電を行なう際に当該金属酸化物粒子を通って導電性基体から感光層に電荷が移動し、適切に帯電を行なうことができなくなる可能性もあった。しかし、体積粒度分布累積90%粒子径D90を前記のような範囲(0.3μm以下)とすることにより、前記の悪影響を及ぼす粗大粒子を少なくなることから、下引き層の膜厚及び表面性が均一となる。
なお、体積粒度分布累積90%粒子径D90を測定する場合、累積は小粒径側から行なうようにする。
[I−1−2−2.条件(b)についての説明]
条件(b):
本発明の下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、体積平均径Mvが0.1μm以下であって、且つ、体積平均径Mvと個数平均径Mpとの比Mv/Mpが下記式(1)を満たすことが好ましい。
1.10 ≦ Mv/Mp ≦ 1.40 (1)
〔体積平均径Mvについて〕
条件(b)においても、体積平均径Mvについては、条件(a)について説明した内容と同様である。
〔体積平均径Mvと個数平均径Mpとの比Mv/Mpについて〕
本発明に係る金属酸化物粒子は、その体積平均径Mvと個数平均径Mpとの比Mv/Mpが、通常1.10以上、好ましくは1.20以上、また、通常1.40以下、好ましくは1.35以下である。したがって、本発明に係る金属酸化物粒子は、通常は下記式(1)を満たすものであり、好ましくは下記式(3)を満たすものである。
1.10 ≦ Mv/Mp ≦ 1.40 (1)
1.20 ≦ Mv/Mp ≦ 1.35 (3)
本発明に係る金属酸化物粒子が球形で一次粒子として存在するのであれば、前記の比Mv/Mp=1.0であり、これは望ましいことではある。しかし、このように比Mv/Mp=1.0となる金属酸化物粒子は、実際には実用上得られるものではない。本発明者らは、仮に金属酸化物粒子が凝集していても、その凝集状態が球に近いものであれば、具体的には前記式(1)の範囲を満たすものであれば、下引き層形成用塗布液としてゲル化や粘性変化が少なく、長期保存が可能であり、結果として下引き層形成後の膜厚及び表面性が均一となることを見出した。一方、下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子が前記式(1)を満たさない場合は、液中でのゲル化や粘性変化が大きく、結果として下引き層形成後の膜厚及び表面性が不均一となるため、その上層(電荷発生層など)の品質にも悪影響を及ぼすことになる可能性がある。
[I−1−2−3.条件(c)についての説明]
条件(c):
本発明の下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、体積平均径Mvが0.1μm以下であって、且つ、体積粒度分布幅指標SDが下記式(2)を満たすことが好ましい。
0.010 ≦ SD ≦ 0.040 (2)
(ただし、SD=(D84−D16)/2であり、D84は体積粒度分布累積カーブが84%となる点の粒径(μm)を表し、D16は体積粒度分布累積カーブが16%となる点の粒径(μm)を表す。粒度分布の累積は小粒径側より行なう。)
〔体積平均径Mvについて〕
条件(c)においても、体積平均径Mvについては、条件(a)について説明した内容と同様である。
〔体積粒度分布幅指標SDについて〕
本発明に係る金属酸化物粒子は、その体積粒度分布幅指標SDが、通常0.010以上、好ましくは0.020以上、また、通常0.040以下、好ましくは0.030以下である。したがって、本発明に係る金属酸化物粒子は、通常は下記式(2)を満たすものであり、好ましくは下記式(4)を満たすものである。
0.010 ≦ SD ≦ 0.040 (2)
0.020 ≦ SD ≦ 0.030 (4)
前記の体積粒度分布幅指標SDは、金属酸化物粒子の凝集後の粒度分布のシャープさを示す指標である。本発明に係る金属酸化物粒子が単分散の単一粒径として存在するのであれば、体積粒度分布幅指標SD=0であり、これは理想的ではあるものの、実際には実用上得ることは非常に困難である。本発明者らは、仮に金属酸化物粒子が凝集していても、その凝集状態が適度に狭いものであれば、具体的には上記式(2)の範囲を満たすものであれば、下引き層形成用塗布液としてゲル化や粘性変化が少なく、長期保存が可能であり、結果として下引き層形成後の膜厚及び表面性が均一となることを新規に見出した。一方、下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子が式(2)を満たさない場合は、例えばD84が大きすぎる場合は下引き層形成用塗布液中での粗大粒子の沈降現象が見られ、例えばD16が小さすぎる場合は液中での微細粒子の再凝集現象が見られるなど、液中でのゲル化や粘性変化が大きく、結果として下引き層形成後の膜厚及び表面性が不均一となるため、その上層(電荷発生層など)の品質にも悪影響を及ぼす可能性がある。
[I−1−2−4.Mv、Mp、D90及びSDの測定方法]
本発明に係る金属酸化物粒子の体積平均径Mv、個数平均径Mp、体積粒度分布累積90%粒子径D90、並びに、体積粒度分布幅指標SDを求めるための体積粒度分布累積84%粒子径D84及び体積粒度分布累積16%粒子径D16は、本発明の下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の粒子径を動的光散乱法により直接計測して得られる値である。この際、金属酸化物粒子がどのような存在形態であっても、動的光散乱法により測定された値を用いるものとする。
動的光散乱法は、微小に分散された粒子のブラウン運動の速さを、粒子にレーザー光を照射してその速度に応じた位相の異なる光の散乱(ドップラーシフト)を検出して粒度分布を求めるものである。本発明の下引き層形成用塗布液中における金属酸化物粒子の体積平均径Mv、個数平均径Mp、体積粒度分布累積90%粒子径D90、体積粒度分布累積84%粒子径D84及び体積粒度分布累積16%粒子径D16の値は、下引き層形成用塗布液中に金属酸化物粒子が安定に分散しているときの値であり、分散前の粉体としての金属酸化物粒子、ウエットケーキの粒径を意味していない。実際の測定では、具体的には、動的光散乱方式粒度分析計(日機装社製、MICROTRAC UPA model:9340−UPA、以下UPAと略す)を用いて、以下の設定にて行なうものとする。具体的な測定操作は、上記粒度分析計の取扱説明書(日機装社製、書類No.T15−490A00、改訂No.E)に基づいて行なう。
・動的光散乱方式粒度分析計の設定
測定上限 :5.9978μm
測定下限 :0.0035μm
チャンネル数 :44
測定時間 :300sec.
粒子透過性 :吸収
粒子屈折率 :N/A(適用しない)
粒子形状 :非球形
密度 :4.20(g/cm3) (*)
分散媒種類 :下引き層形成用塗布液に用いた溶媒(**)
分散媒屈折率 :下引き層形成用塗布液に用いた溶媒の屈折率
(*)密度の値は二酸化チタン粒子の場合であり、他の粒子の場合は、前記取扱説明書に記載の数値を用いる。
(**)本発明においては、特に言及しない限り、分散媒(即ち、下引き層形成用塗布液に用いた溶媒)としては、メタノール/プロパノール=7/3の混合溶媒を使用することが好ましい。
なお、下引き層形成用塗布液が濃すぎて、その濃度が測定装置の測定可能範囲外となっている場合には、下引き層形成用塗布液をメタノールと1−プロパノールとの混合溶媒(重量比:メタノール/1−プロパノール=7/3;屈折率=1.35)で希釈し、当該下引き層形成用塗布液の濃度を測定装置が測定可能な範囲に収めるようにする。例えば、上記のUPAの場合、測定に適したサンプル濃度指数(SIGNAL LEVEL)が0.6〜0.8になるように、メタノールと1−プロパノールとの混合溶媒で下引き層形成用塗布液を希釈する。
このように希釈を行なったとしても、下引き層形成用塗布液中における金属酸化物粒子の粒子径は変化しないものと考えられるため、前記の希釈を行なった結果測定された体積平均径Mv、個数平均径Mp、体積粒度分布累積90%粒子径D90、及び、体積粒度分布幅指標SDは、本発明に係る「下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、体積平均径Mv、個数平均径Mp、体積粒度分布累積90%粒子径D90、及び、体積粒度分布幅指標SD」として取り扱うものとする。
また、動的光散乱による粒度の測定は、25℃で行なうものとする。
体積平均径Mvは、上記の測定により得られる金属酸化物粒子の粒度分布の結果から、以下の式(A)により計算して得られる値であり、個数平均径Mpは、同じく以下の式(B)により計算して得られる値である。
Figure 0005070933
Figure 0005070933
なお、式(A)及び式(B)において、nは粒子個数、vは粒子体積、dは粒子径をそれぞれ表す。
さらに、体積粒度分布累積90%粒子径D90は、上記のように動的光散乱法により粒度分布を測定した場合に、金属酸化物粒子の全体積を100%として、上述した動的光散乱法により体積粒度分布の累積カーブを求めた時、その累積カーブが90%となる点の粒子径を堆積粒度分布累積90%粒子径とする。なお、累積は小粒子径側から行なう。
また、体積粒度分布幅指標SDは、以下のように定義される。即ち、小粒径側から累積される体積粒度分布の累積カーブ(体積粒度分布累積カーブ)が84%となる点の粒径(μm)をD84とし、同じく累積カーブが16%となる点の粒径(μm)をD16とした時、体積粒度分布幅指標SDは下記式(C)で表される。
SD(μm)= (D84−D16)/2 (C)
また、本発明の下引き層形成用塗布液の吸光度は、通常知られる分光光度計(absorption spectrophotometer)により測定することができる。吸光度を測定する際のセルサイズ、試料濃度などの条件は、使用する金属酸化物粒子の粒子径、屈折率などの物性により変化するため、通常、測定しようとする波長領域(本発明においては、400nm〜1000nm)において、検出器の測定限界を超えないように適宜試料濃度を調整する。本発明では、液中の金属酸化物粒子の量が、0.0075重量%〜0.012重量%となるように試料濃度を調整する。試料濃度を調製するための溶媒には、通常、下引き層形成用塗布液の溶媒として用いられている溶媒が用いられるが、下引き層形成用塗布液の溶媒及びバインダー樹脂と相溶性があり、混合した場合に濁りなどを生じず、400nm〜1000nmの波長領域において大きな光吸収を持たないものであればどのようなものでも使用することができる。具体例を挙げれば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール類;トルエン、キシレン等の炭化水素類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などが用いられる。
また、測定する際のセルサイズ(光路長)は、10mmのものを用いる。使用するセルは、400nm〜1000nmの範囲において実質的に透明であるものであればどのようなものを用いてもかまわないが、石英のセルを用いることが好ましく、特には試料セルと標準セルの透過率特性の差が特定範囲内にあるようなマッチドセルを用いることが好ましい。
[I−1−3.金属酸化物粒子のその他の物性]
本発明に係る金属酸化物粒子の平均一次粒子径に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、本発明に係る金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは70nm以下、より好ましくは50nm以下である。
なお、この平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(Transmission electron microscope:以下適宜、「TEM」という)により直接観察される粒子の径の算術平均値によって求めることが可能である。
また、本発明に係る金属酸化物粒子の屈折率にも制限はなく、電子写真感光体に用いることのできるものであれば、どのようなものも使用可能である。本発明に係る金属酸化物粒子の屈折率は、通常1.3以上、好ましくは1.4以上、また、通常3.0以下、好ましくは2.9以下、より好ましくは2.8である。
なお、金属酸化物粒子の屈折率は、各種の刊行物に記載されている文献値を用いることができる。例えばフィラー活用辞典(フィラー研究会編,大成社,1994)によれば下記表1のようになっている。
Figure 0005070933
本発明の下引き層形成用塗布液において、金属酸化物粒子とバインダー樹脂との使用比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、本発明の下引き層形成用塗布液においては、バインダー樹脂1重量部に対して、金属酸化物粒子は、通常0.5重量部以上、好ましくは0.7重量部以上、より好ましくは1.0重量部以上、また、通常4重量部以下、好ましくは3.8重量部以下、より好ましくは3.5重量部以下の範囲で用いる。金属酸化物粒子がバインダー樹脂に対して少なすぎると得られる電子写真感光体の電気特性が悪化し、特に残留電位が上昇する可能性があり、多すぎると該電子写真感光体を用いて形成される画像に黒点や色点などの画像欠陥が増加する可能性がある。
[I−1−4.金属酸化物粒子の分散工程]
本発明に係る金属酸化物粒子としては、平均粒子径5〜100μmのメディア(以下適宜、「分散メディア」という)を使用し、湿式攪拌ミルを用いて分散された金属酸化物粒子を用いる。以下、このようにして金属酸化物粒子を分散させる分散工程について、説明する。
湿式攪拌ミルは、溶媒(以下適宜、分散時に使用する溶媒を「分散溶媒」という)中にて金属酸化物粒子を湿式分散するものである。分散される際には、金属酸化物粒子はスラリーとなっている。即ち、スラリーは、少なくとも金属酸化物粒子と分散溶媒とを含有する組成物である。湿式攪拌ミルを用いた分散工程により、本発明に係る金属酸化物粒子は分散し、上述した所定の粒径分布を有するようになるものと考えられる。
なお、この際、分散溶媒は、下引き層形成用塗布液に用いる溶媒を使用してもよく、それ以外の溶媒を使用してもよい。
分散メディアとしては、その平均粒子径が、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは90μm以下のものを使用する。このように平均粒子径が小さい分散メディアを用いることで、本発明に係る金属酸化物粒子の粒径分布を好ましい状態にすることが可能である。ただし、小さな粒径の分散メディアの方が短時間で均一な分散液を与える傾向があるが、過度に粒径が小さくなると分散メディアの質量が小さくなりすぎて衝撃力が弱まり、効率よい分散ができなくなることがある。
分散メディアは通常、真球に近い形状をしているため、例えば、JIS Z 8801:2000等に記載のふるいによりふるい分けする方法や、画像解析により測定することにより平均粒子径を求めることができ、アルキメデス法により密度を測定することができる。具体的には例えば、(株)ニレコ製のLUZEX50等に代表される画像解析装置により、分散メディアの平均粒子径と真球度を測定することが可能である。
分散メディアの密度に制限は無いが、通常5.5g/cm3以上のものが用いられ、好
ましくは5.9g/cm3以上、より好ましくは6.0g/cm3以上のものが用いられる。一般に、より高密度の分散メディアを使用して分散した方が短時間で均一な分散液を与える傾向がある。分散メディアの真球度としては、1.08以下のものが好ましく、より好ましくは1.07以下の真球度を持つ分散メディアを用いる。
分散メディアの材質としては、前記のスラリーが含有する分散溶媒に不溶、且つ、比重が前記スラリーより大きなものであって、スラリーと反応したり、スラリーを変質させたりしないものであれば、公知の如何なる分散メディアも使用することができる。その例としては、クローム球(玉軸受用鋼球)、カーボン球(炭素鋼球)等のスチール球;ステンレス球;窒化珪素球、炭化珪素、ジルコニア、アルミナ等のセラミック球;窒化チタン、炭窒化チタン等の膜でコーティングされた球などが挙げられる。これらの中でもセラミック球が好ましく、特にはジルコニア焼成ボールが好ましい。より具体的には、特許第3400836号公報に記載のジルコニア焼成ビーズを用いることが特に好ましい。
なお、分散メディアは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
分散用のメディア(即ち、分散メディア)を利用して分散する湿式攪拌ミルに制限はない。ただし、分散メディアを分散スラリーから確実に分離するためには、スクリーン分離方式の湿式攪拌ミルが、ギャップ方式、スリット方式あるいは遠心方式に比較して優れている。スクリーン分離方式の湿式攪拌ミルはメディア分離用のスクリーンを備えていて、このスクリーンで濾すことにより、スラリーと分散メディアとを分離するものである。スクリーン分離方式の湿式攪拌ミルは、本発明に係る粒径分布を有する金属酸化物粒子と分散メディアとの分離を安定して行なうことができる点で優れている。特に、本発明のように5〜100μmの微粒の分散メディアを用いる場合には、実質的に、ギャップ方式やスリット方式の湿式攪拌ミルでは分散メディアの分離は非常に困難である。また、遠心方式の湿式攪拌ミルでは、分散メディアのスラリー側への混入が起こり易く、その場合には、下引き層塗布液としてスジ等の塗布欠陥が生ずる可能性がある。
前記のスクリーンの目のサイズは、分散メディアとスラリーとを分離できる限り任意であるが、通常は、分散メディアの直径の1/2以下であり、好ましくは分散メディアの直径の1/3以下である。
スクリーン分離方式の湿式攪拌ミルの中でも、特に、一端側にスラリー入り口を有する筒状の容器と、前記容器内に長手方向に延びるように配置された回転自在な攪拌軸と、前記容器の外において前記攪拌軸に連結された駆動装置とを備え、前記攪拌軸は、攪拌部材を有し、前記攪拌軸と前記容器内面との間の空間にメディアが入れられており、前記スラリー入り口からスラリーを導入しながら前記駆動装置により前記攪拌軸を回転駆動することにより、前記スラリー内の固形物が粉砕されるようになっており、前記攪拌軸は、前記容器の他端近傍にメディア入り口を有する中空部が形成され、前記攪拌軸には前記中空部を前記攪拌軸と前記容器内面との間の前記空間に連通させるスリットが形成され、前記スラリーの動きに伴って前記容器の前記他端近傍に達した前記メディアが、前記スラリー入り口から前記攪拌軸の前記中空部に入り、前記スリットから前記攪拌軸と前記容器内面との間の前記空間に戻る循環運動をするようになっており、前記攪拌軸の前記中空部内にスラリー出口が配置され、前記中空部内に前記スラリー出口を囲むように前記スクリーンが設けられ、前記スクリーンが回転駆動されるようになった湿式攪拌ミルを用いることが好ましい。
この際、前記の好ましい構成の湿式攪拌ミルにおいては、前記スラリー出口は前記攪拌軸に形成され、前記スクリーンは前記攪拌軸に固定されて、該攪拌軸とともに回転駆動されるようになっており、更に、前記攪拌軸内には前記スラリー出口に通じるスラリー出口通路が設けられていることが好ましい。
または、前記の好ましい構成の湿式攪拌ミルにおいては、前記スラリー出口は前記攪拌軸の前記中空部内に回転自在に配置された管状のスラリー出口部材により構成され、前記スクリーンは前記管状部材に固定され、更に、前記攪拌軸とは別に前記管状部材を回転駆動する手段が設けられていることも好ましい。
このような好ましい構成の湿式攪拌ミルを用いれば、スラリーから分散メディアを分離するためのスクリーンが回転駆動されるため、スクリーン近傍に達したスラリー及び分散メディアには回転運動が誘起される。この回転運動による遠心力はスラリーよりも分散メディアの方が高くなるため、分散メディアにはスクリーンから離れる付勢力が生じる。このため、分散メディアはスクリーンに接近することなく循環することになるので、異常発熱や異常磨耗、スクリーンの目詰まりを生じることなく、金属酸化物粒子の分散を行なうことができる。
以下、上述した好ましい構成の湿式攪拌ミルの構成をより具体的に説明するため、当該湿式攪拌ミルの実施形態を示して説明を行なう。ただし、本発明において使用される湿式攪拌ミルは、ここで例示するものに限定されない。
図1(A)及び(B)は、上述した好ましい構成の湿式攪拌ミルの第一実施形態を示す縦断面図及び横断面図である。
図1(A),(B)に示すように、湿式攪拌ミル101は、円筒状の容器102を備えており、該容器102の両端には蓋部材103及び底部材104が液蜜に取り付けられている。容器102の内部には、軸方向に延びるように回転自在な攪拌軸106が配置され、該攪拌軸106と容器102の内面との間に空間すなわち粉砕室105が形成されている。この粉砕室105にはガラスビーズやセラミックビーズのような分散メディア(図示せず)が充填される。分散メディアは、ナノメートルサイズの粉砕のために、上述したように5〜100μmの平均粒子径を有するものとする。
攪拌軸106には、軸方向及び周方向に間隔をもって放射状に外向きに突出するように複数の棒状攪拌部材107が固定されている。攪拌部材107は、棒状の代わりに円盤状としてもよく、円盤状の場合には、攪拌部材107は、複数個が軸方向に間隔をもって攪拌軸106に固定される。
容器102の蓋部材103に隣接する軸方向一端部付近には、スラリー入り口管111が固定されてスラリー入り口を構成する。攪拌軸106は、蓋部材103を貫通して容器102の外部に延びる軸部分を有し、この軸部分が支持部材108により容器102に対し回転自在であるが軸方向には移動しないように支持される。攪拌軸106を回転駆動するための駆動装置は、図示しない電動モータその他適当な原動機である。攪拌軸106の上述した軸部分にはプーリー110が取り付けられ、該プーリー110が伝動ベルト109により原動機の出力軸に設けたプーリー(図示せず)に連結されている。この連結により、攪拌軸106が電動モータ等の原動機により回転駆動される。
攪拌軸106は、容器102のスラリー入り口管111から遠い側の端部が符号115で示すように開口したコップ型の中空形状であり、攪拌軸106は、その中空部112に対応する壁部分にスリット116が形成されている。攪拌軸106の端部における上述の開口115は分散メディア循環用入り口を構成し、スリット116は分散メディア循環用出口117を構成する。
攪拌軸106の中空部112には、攪拌軸106を貫通して該中空部112内に延びるスラリー出口管118が配置される。スラリー出口管118の端部は攪拌軸106の中空部112内に位置してスラリー出口113を構成する。スラリー出口管118は、スラリー出口113に連通し、攪拌軸106を軸方向に通るスラリー出口通路を構成する。
攪拌軸106の中空部112には、スクリーン114がスラリー出口113を囲むように配置される。このスクリーン114は、攪拌軸106に固定され、該攪拌軸106とともに回転するようになっている。
作動に際しては、攪拌軸106を連続的に回転駆動しながら、分散すべき固形物(即ち、金属酸化物粒子)を含むスラリーがスラリーポンプ(図示せず)により所定の流量でスラリー入り口管111から連続的に導入される。湿式攪拌ミルの作動は周知であるので、詳細な説明は省略する。
粉砕室105のスラリー入り口管111から遠い側の端部近傍においては、スラリーと分散メディアは、矢印120で示すように、攪拌軸106の端部の開口115により形成される分散メディア循環用入り口から攪拌軸106の中空部112内に入り、スラリーは、スクリーン114を通り、スラリー出口113からスラリー出口管118内を通って取り出される。分散メディアは、遠心力の作用により半径方向外向きに付勢されるため、スクリーン114から離れてスリット116により形成される分散メディア循環用出口117を通って粉砕室105に戻される。したがって、分散メディアが微小直径の場合に、分散メディアがスクリーン114を目詰まりさせる可能性はなくなる。その結果、スクリーン114の異常磨耗が防止され、異常発熱も生じない。
図2は、上述した好ましい構成の湿式攪拌ミルの第二実施形態を示す縦断面図である。この実施形態においては、図1の実施形態に対応する部分は図1と同様の符号付して示し、説明は、図1の実施形態との相違点についてのみ行なう。
この実施形態においては、スラリー出口管118は、攪拌軸106から分離して形成される。スラリー出口管118の一端部は攪拌軸106の中空部112内に位置してスラリー出口113を構成する。スラリー出口113を囲むスクリーン114は、底部材104を軸方向に貫通して容器102の外側に延びる回転軸を有し、この回転軸は、支持部材121により底部材104に対し回転自在であるが軸方向には移動しないように支持される。スクリーン114の回転軸の外側端部にはプーリー123が固定され、この回転軸は、該プーリー123に巻かれた伝動ベルト122を介して図示しない電動モータのような駆動装置により回転駆動される。この実施形態の作動は、図1の実施形態の作動と同様であるので、詳細については説明を省略する。
本実施形態の湿式攪拌ミルも、第一実施形態と同様に、分散メディアが微小直径の場合に、分散メディアがスクリーン114を目詰まりさせる可能性はなくなる。その結果、スクリーン114の異常磨耗が防止され、異常発熱も生じない。
前記のような好ましい構成の湿式撹拌ミルの例を挙げると、スターミルZRS2、ZRS4、ZRS10(以上、アシザワ・ファインテック社製);ピコミルPCMH−C2M、PCMH−C5M、PCMH−C20M(以上、浅田鉄工社製)などが挙げられる。
また、湿式攪拌ミルを用いて金属酸化物粒子を分散させる場合、湿式攪拌ミル内に充填される分散メディアの充填率は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常は50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、また、通常100%以下、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である。
さらに、本発明に係る湿式攪拌ミルの運転条件は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、前記運転条件は、下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の体積平均径Mv、下引き層形成用塗布液の安定性、下引き層形成用塗布液を塗布形成してなる下引き層の表面形状、下引き層形成用塗布液を塗布形成してなる下引き層を有する電子写真感光体の特性に影響する。特に、前記運転条件のうち、スラリーの供給速度と、ロータの回転速度が影響の大きいものとして挙げられる。
また、湿式攪拌ミルを用いて分散を行なう際には、小粒径の分散メディアを用いた上で、金属酸化物粒子の供給速度を大きく(スラリー流量を大きく)し、且つ、ロータの回転速度を小さく(ロータ周速が低く)した方が、スラリー中の金属酸化物粒子に対する衝撃力がマイルドとなって、得られる金属酸化物粒子の粒度分布を小粒化しつつシャープ化(微粒や粗粒が少ない)でき、しかも形状的にも丸め化できるので、望ましい方向である。
スラリーの供給速度は、湿式攪拌ミル中にスラリーの滞留する時間が関係するため、湿式攪拌ミルの粉砕室容積及びその形状の影響を受けるが、通常用いられるミルの粉砕室容積1リットル(以下、Lと略記することがある)あたり、通常20kg/時間以上、好ましくは30kg/時間以上、また、通常80kg/時間以下、好ましくは70kg/時間以下の範囲である。
また、ロータの回転速度は、ロータの形状やベッセルとの間隙などのパラメータの影響を受けるが、ロータ先端部の周速は、通常1m/秒以上、好ましくは3m/秒以上、より好ましくは5m/秒以上、また、通常20m/秒以下、好ましくは15m/秒以下、より好ましくは12m/秒以下である。
さらに、分散メディアの使用量に制限はない。ただし、分散メディアは、通常、スラリーに対し、容積比で1〜5倍用いる。
また、分散に際しては、分散メディア以外に、分散後に容易に除去することのできる分散助剤を併用して実施することも可能である。分散助剤の例としては、食塩、ぼう硝等が挙げられる。なお、分散助剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
金属酸化物粒子の分散は、上述したように、分散溶媒の共存下湿式で行なうことが好ましい。また、金属酸化物粒子を適切に分散することができることができる限り、分散溶媒以外の成分を共存させてもよい。このような共存させても良い成分としては、例えば、バインダー樹脂や各種添加剤などが挙げられる。
分散溶媒としては、特に制限されないが、下引き層形成用塗布液に用いる溶媒を用いれば、分散後に溶媒交換などの工程を経る必要が無くなり好適である。これらの分散溶媒は何れか1種を用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用し、混合溶媒として用いても良い。
分散溶媒の使用量は、生産性の観点から、分散対象となる金属酸化物1重量部に対して、通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上、また、通常500重量部以下、好ましくは100重量部以下の範囲である。
また、機械的分散時の温度としては、溶媒(または混合溶媒)の凝固点以上、沸点以下で行なうことが可能であるが、製造時の安全性の面から、通常、10℃以上、200℃以下の範囲で行なわれる。
分散メディアを用いて分散した金属酸化物粒子は、そのまま本発明の下引き層形成用塗布液に用いても良いが、通常は、分散処理後、スラリーから分散メディアを分離・除去し、更に、超音波処理を施すことが好ましい。超音波処理は、金属酸化物粒子に超音波振動を加えるものである。
振動周波数等の超音波処理時の条件には特に制限はないが、通常10kHz以上、好ましくは15kHz以上、また、通常40kHz以下、好ましくは35kHz以下の周波数の発振器により超音波振動を加える。
また、超音波発振機の出力に特に制限はないが、通常100W〜5kWのものが用いられる。
さらに、通常、多量のスラリーを大出力の超音波発振機による超音波で処理するよりも、少量のスラリーを小出力の超音波発振機による超音波で処理する方が分散効率が良い。そのため、一度に処理するスラリーの量は、通常1L以上、好ましくは5L以上、より好ましくは10L以上、また、通常50L以下、好ましくは30L以下、より好ましくは20L以下である。また、この場合の超音波発振機の出力は、通常200W以上、好ましくは300W以上、より好ましくは500W以上、また、通常3kW以下、好ましくは2kW以下、より好ましくは1.5kW以下である。
金属酸化物粒子に超音波振動を加える方法に特に制限はないが、例えば、スラリーを納めた容器中に超音波発振機を直接浸漬する方法、スラリーを納めた容器外壁に超音波発振機を接触させる方法、超音波発振機により振動を加えた液体の中にスラリーを納めた容器を浸漬する方法などが挙げられる。これらの方法の中でも、超音波発振機により振動を加えた液体の中にスラリーを納めた容器を浸漬する方法が好適に用いられる。
前記の場合、超音波発振機により振動を加える液体に制限は無いが、例えば、水;メタノール等のアルコール類;トルエンなどの芳香族炭化水素類;シリコーンオイルなどの油脂類が挙げられる。中でも、製造上の安全性、コスト、洗浄性などを勘案すれば、水を用いることが好ましい。
超音波発振機により振動を加えた液体の中にスラリーを納めた容器を浸漬する方法では、該液体の温度により超音波処理の効率が変化するため、該液体の温度を一定に保つことが好ましい。加えた超音波振動により振動を加えた液体の温度が上昇することがある。該液体の温度は、通常5℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、また、通常60℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下の温度範囲において超音波処理することが好ましい。
超音波処理する際にスラリーを納める容器に制限は無い。例えば、電子写真感光体用の感光層を形成するのに用いられる下引き層形成用塗布液を入れるのに通常用いられる容器であればどのような容器を使用することも可能である。具体例を挙げると、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂製の容器や、ガラス製容器、金属製の缶などが挙げられる。これらの中では金属製の缶が好ましく、特に、JIS Z 1602 に規定される、18リットル金属製缶が好適に用いられる。有機溶媒に侵され難く、衝撃に強いからである。
また、分散後のスラリーや、超音波処理後のスラリーは、その他の工程を経てから使用してもよい。例えば、粗大な粒子を除去するために、必要に応じて濾過した後で使用することが好ましい。この場合の濾過メディアとしては、通常濾過するために用いられる、セルロース繊維、樹脂繊維、ガラス繊維など、何れの濾過材を用いても構わない。濾過メディアの形態としては、濾過面積が大きく効率がよいことなどの理由により、芯材に各種繊維を巻き付けた、いわゆるワインドフィルターが好ましい。芯材としては従前公知の何れの芯材も用いることができるが、ステンレスの芯材、ポリプロピレンなどの、前記スラリーやスラリーが含有する溶媒に溶解しない樹脂製の芯材等が挙げられる。
[I−2.バインダー樹脂]
本発明の下引き層形成用塗布液において使用されるバインダー樹脂としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。通常は、有機溶剤等の溶媒に可溶であって、且つ、形成後の下引き層が、感光層形成用の塗布液に用いられる有機溶剤等の溶媒に不溶であるか、溶解性の低く、実質上混合しないものを用いる。
このようなバインダー樹脂としては、例えば、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できる。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等のポリアミド樹脂は、良好な分散性および塗布性を示し好ましい。
ポリアミド樹脂としては例えば、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン等を共重合させた、いわゆる共重合ナイロンや、N−アルコキシメチル変性ナイロン、N−アルコキシエチル変性ナイロンのようにナイロンを化学的に変性させたタイプ等のアルコール可溶性ナイロン樹脂などを挙げることができる。具体的な商品としては、例えば「CM4000」「CM8000」(以上、東レ製)、「F−30K」「MF−30」「EF−30T」(以上、ナガセケムテック株式会社製)等が挙げられる。
これらポリアミド樹脂の中でも、下記式(ii)で表されるジアミンに対応するジアミン成分(以下適宜、「式(ii)に対応するジアミン成分」という)を構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂が特に好ましく用いられる。
Figure 0005070933
前記式(ii)において、R4〜R7は、水素原子または有機置換基を表す。m、nはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。なお、置換基が複数ある場合、それらの置換基は互いに同じでも良く、異なっていてもよい。
4〜R7で表される有機置換基として好適なものの例を挙げると、ヘテロ原子を含んでいても構わない炭化水素基が挙げられる。この中でも好ましいものとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基等のアリール基が挙げられ、更に好ましくはアルキル基、またはアルコキシ基である。特に好ましくは、メチル基、エチル基である。
また、R4〜R7で表される有機置換基の炭素数は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常20以下、好ましくは18以下、より好ましくは12以下、また、通常1以上である。炭素数が大きすぎると、溶解性が悪化し、また、溶解ができたとしても下引き層形成用塗布液としての保存安定性が悪化する傾向を示す。
前記式(ii)に対応するジアミン成分を構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂は、式(ii)に対応するジアミン成分以外の構成成分(以下適宜、単に「その他のポリアミド構成成分」という)を構成単位として含んでいてもよい。その他のポリアミド構成成分としては、例えば、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム類;1,4−ブタンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,20−アイコサンジカルボン酸等のジカルボン酸類;1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等のジアミン類;ピペラジン等などが挙げられる。この際、前記の共重合ポリアミド樹脂は、その構成成分を、例えば、二元、三元、四元等に共重合させたものが挙げられる。
前記式(ii)に対応するジアミン成分を構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂がその他のポリアミド構成成分を構成単位として含む場合、全構成成分中に占める式(ii)に対応するジアミン成分の割合に制限は無いが、通常5mol%以上、好ましくは10mol%以上、より好ましくは15mol%以上、また、通常40mol%以下、好ましくは30mol%以下である。式(ii)に対応するジアミン成分が多すぎると下引き層形成用塗布液の安定性が悪くなる可能性があり、少なすぎると高温高湿度条件での電気特性の変化が大きくなり、電気特性の環境変化に対する安定性が悪くなる可能性がある。
前記の共重合ポリアミド樹脂の具体例を以下に示す。但し、具体例中、共重合比率はモノマーの仕込み比率(モル比率)を表す。
Figure 0005070933
前記の共重合ポリアミドの製造方法には特に制限はなく、通常のポリアミドの重縮合方法が適宜適用される。例えば溶融重合法、溶液重合法、界面重合法等の重縮合方法が適宜適用できる。また、重合に際して、例えば、酢酸や安息香酸等の一塩基酸;ヘキシルアミン、アニリン等の一酸塩基などを、分子量調節剤として重合系に含有させてもよい。
なお、バインダー樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、本発明に係るバインダー樹脂の数平均分子量にも制限は無い。例えば、バインダー樹脂として共重合ポリアミドを使用する場合、共重合ポリアミドの数平均分子量は、通常10000以上、好ましくは15000以上、また、通常50000以下、好ましくは35000以下である。数平均分子量が小さすぎても、大きすぎても下引き層の均一性を保つことが難しくなりやすい。
本発明の下引き層形成用塗布液におけるバインダー樹脂の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、本発明の下引き層形成用塗布液におけるバインダー樹脂の含有率は、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下の範囲で用いる。
[I−3.溶媒]
本発明の下引き層形成用塗布液に用いる溶媒(下引き層用溶媒)としては、本発明に係るバインダー樹脂を溶解させうるものであれば、任意のものを使用することができる。この溶媒としては、通常は有機溶媒を使用する。溶媒の例を挙げると、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールまたはノルマルプロピルアルコール等の炭素数5以下のアルコール類;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、トリクレン、四塩化炭素、1,2−ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド等の含窒素有機溶媒類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などが挙げられる。
また、前記溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。さらに、単独では本発明に係るバインダー樹脂を溶解しない溶媒であっても、他の溶媒(例えば、上記例示の有機溶媒など)との混合溶媒とすることでバインダー樹脂を溶解可能であれば、使用することができる。一般に、混合溶媒を用いた方が塗布ムラを少なくすることができる。
本発明の下引き層形成用塗布液において、溶媒と、金属酸化物粒子、バインダー樹脂などの固形分との量比は、下引き層形成用塗布液の塗布方法により異なり、適用する塗布方法において均一な塗膜が形成されるように適宜変更して用いればよい。具体的な範囲を示すと、下引き層形成用塗布液中の固形分の濃度は、通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上、また、通常30重量%以下、好ましくは25重量%以下であることが、下引き層形成用塗布液の安定性及び塗布性の面から、好ましい。
[I−4.その他の成分]
本発明の下引き層形成用塗布液は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した金属酸化物粒子、バインダー樹脂及び溶媒以外の成分を含有していてもよい。例えば、下引き層形成用塗布液には、その他の成分として添加剤を含有させてもよい。
添加剤としては、例えば、亜リン酸ソーダ、次亜リン酸ソーダ、亜リン酸、次亜リン酸やヒンダードフェノールに代表される熱安定剤やその他の重合添加剤などが挙げられる。なお、添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
[I−5.本発明の下引き層形成用塗布液の利点]
本発明の下引き層形成用塗布液は、保存安定性が高い。保存安定性の指標としては様々なものがあるが、例えば、本発明の下引き層形成用塗布液は、作製時と室温120日保存後の粘度変化率(即ち、120日保存後の粘度と作製時との粘度の差を、作製時の粘度で除した値)が、通常20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。なお、粘度は、E型粘度計(トキメック社製、製品名 ED)を用い、JIS Z 8803に準じた方法で測定できる。
また、本発明の下引き層形成用塗布液を用いれば、電子写真感光体を高品質に、且つ、高効率に製造することが可能である。
[II.下引き層形成用塗布液の製造方法]
本発明の下引き層形成用塗布液の製造方法は、金属酸化物粒子として、上述した分散工程により分散した金属酸化物粒子を使用するものである。したがって、本発明の下引き層形成用塗布液は、平均粒子径5〜100μmの分散メディアを使用し湿式攪拌ミルを用いて金属酸化物粒子を分散する分散工程を経て製造されることになる。
分散工程で分散された金属酸化物粒子と、バインダー樹脂、溶媒及びその他成分等とを混合して下引き層形成用塗布液を製造する際、その混合の順番及び時機に制限は無い。例えば、分散工程で得られたスラリーに、必要に応じて更に溶媒、バインダー樹脂(結着剤)、その他の成分(添加剤等)などを混合して、下引き層形成用塗布液とすることができる。なお、金属酸化物粒子は、分散工程の工程前、工程中及び工程後のいずれの段階で下引き層形成用塗布液用の溶媒及びバインダー樹脂、並びに、必要に応じて用いられるその他の成分と混合してもよい。したがって、金属酸化物粒子は、分散工程における分散又は超音波処理の工程前、工程中及び工程後のいずれかにおいて、下引き層形成用塗布液用の溶媒及びバインダー樹脂、並びに、必要に応じて用いられるその他の成分と混合すればよい。このため、金属酸化物粒子と、溶媒、バインダー樹脂、その他の成分などとの混合は、必ずしも分散や超音波処理の後に行なわなくてもよい。
本発明の下引き層形成用塗布液の製造方法によれば、本発明の下引き層形成用塗布液を効率よく生産できる上に、より保存安定性が高い下引き層形成用塗布液を得ることができる。したがって、より高品質の電子写真感光体を効率よく得ることができる。
[III.下引き層形成方法]
本発明の下引き層形成用塗布液を導電性支持体上に塗布乾燥することにより、電子写真感光体の下引き層を形成することができる。本発明の下引き層形成用塗布液を塗布する方法に制限は無いが、例えば、浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、スパイラル塗布、リング塗布、バーコート塗布、ロールコート塗布、ブレード塗布等が挙げられる。なお、これらの塗布法は1種のみで実施しても良く、2種以上を任意に組み合わせて実施しても良い。
スプレー塗布法としては、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、静電エアスプレー、静電エアレススプレー、回転霧化式静電スプレー、ホットスプレー、ホットエアレススプレー等がある。また、均一な膜厚を得るための微粒化度、付着効率等を考えると、回転霧化式静電スプレーにおいて、再公表平1−805198号公報に開示されている搬送方法、即ち、円筒状ワークを回転させながらその軸方向に間隔を開けることなく連続して搬送することを実施することが好ましい。これにより、総合的に高い付着効率で下引き層の膜厚の均一性に優れた電子写真感光体を得ることができる。
スパイラル塗布法としては、特開昭52−119651号公報に開示されている注液塗布機またはカーテン塗布機を用いた方法、特開平1−231966号公報に開示されている微小開口部から塗料を筋状に連続して飛翔させる方法、特開平3−193161号公報に開示されているマルチノズル体を用いた方法等がある。
浸漬塗布法の場合、通常、下引き層形成用塗布液の全固形分濃度は、通常1重量%以上、好ましくは10重量%以上であって、通常50重量%以下、好ましくは35重量%以下の範囲とし、粘度を好ましくは0.1cps以上、また、好ましくは100cps以下の範囲とする。なお、1cps=1×10-3Pa・sである。
塗布後、塗布膜を乾燥するが、必要且つ充分な乾燥が行なわれる様に乾燥温度、時間を調整することが好ましい。乾燥温度は、通常100℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、また、通常250℃以下、好ましくは170℃以下、より好ましくは140℃以下の範囲である。乾燥方法に制限は無く、例えば、熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機および遠赤外線乾燥機などを用いることができる。
[IV.電子写真感光体]
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、下引き層と、前記下引き層上に形成される感光層とを有する。したがって、下引き層は、導電性支持体と感光層との間に設けられる。また、本発明の電子写真感光体においては、この下引き層は、本発明の下引き層形成用塗布液を塗布乾燥してなるものである。
また、感光層の構成は、公知の電子写真感光体に適用可能な如何なる構成も採用することが可能である。具体例を挙げると、電荷発生物質や電荷輸送物質等の光導電性材料をバインダー樹脂中に溶解又は分散させた単層の感光層(即ち、単層型感光層)を有する、いわゆる単層型感光体;電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を積層してなる複数の層からなる感光層(即ち、積層型感光層)を有する、いわゆる積層型感光体などが挙げられる。一般に光導電性材料は、単層型でも積層型でも、機能としては同等の性能を示すことが知られている。
本発明の電子写真感光体の有する感光層は、公知のいずれの形態であっても構わないが、感光体の機械的物性、電気特性、製造安定性など総合的に勘案して、積層型の感光体が好ましい。特に、導電性支持体上に下引き層と電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に積層した順積層型感光体がより好ましい。
以下、本発明の電子写真感光体の構成要素につき、実施形態を挙げて説明する。ただし、本発明の電子写真感光体の構成要素は以下の実施形態に限定されるものではない。
[IV−1.導電性支持体]
導電性支持体に特に制限は無いが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料;金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を混合して導電性を付与した樹脂材料;アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫合金)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙などが主として使用される。
また、導電性支持体の形態としては、例えば、ドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。また、金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性などの制御のためや欠陥被覆のため、適当な抵抗値を持つ導電性材料を塗布したものでもよい。
さらに、導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化処理を施してから用いてもよい。陽極酸化処理を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより陽極酸化被膜が形成されるが、これらの酸性浴のうちでも特に硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化の場合、硫酸濃度は100〜300g/L、溶存アルミニウム濃度は2〜15g/L、液温は15〜30℃、電解電圧は10〜20V、電流密度は0.5〜2A/dm2の範囲内に設定されるのが好
ましいが、前記条件に限定されるものではない。
このようにして形成された陽極酸化被膜に対しては、封孔処理を行なうことは好ましい。封孔処理は、公知の方法で行なわれればよいが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、或いは、主成分として酢酸ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる高温封孔処理が施されるのが好ましい。
上記低温封孔処理の場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液濃度は、適宜選べるが、3〜6g/Lの範囲で使用された場合、より好ましい結果が得られる。また、封孔処理をスムーズに進めるために、処理温度としては、通常25℃以上、好ましくは30℃以上、また、通常40℃以下、好ましくは35℃以下の範囲が好ましい。また、同様の観点から、フッ化ニッケル水溶液pHは、通常4.5以上、好ましくは5.5以上、また、通常6.5以下、好ましくは6.0以下の範囲で処理するのが好ましい。pH調節剤としては、例えば、シュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることが出来る。また、処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1〜3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性を更に改良するために、例えばフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に含有させておいてもよい。次いで水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。
一方、前記高温封孔処理の場合の封孔剤としては、例えば、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩水溶液などを用いることが出来るが、特に酢酸ニッケル水溶液を用いることが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合の濃度は5〜20g/Lの範囲内で使用するのが好ましい。処理温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは98℃以下の範囲で、また、酢酸ニッケル水溶液のpHは5.0〜6.0の範囲で処理することが好ましい。ここで、pH調節剤としては、例えばアンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることが出来る。また、処理時間は通常10分以上、好ましくは15分以上処理するのが好ましい。なお、この場合も被膜物性を改良するために、例えば酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に含有させてもよい。更に、実質上塩類を含有しない高温水または高温水蒸気により処理しても構わない。次いで水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。
陽極酸化被膜の平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件を必要とすることがある。この場合、生産性が悪くなると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じやすくなることがある。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に7μm以下で形成されることが好ましい。
導電性支持体の表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであってもよい。また、安価化のためには切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。特に引き抜き加工、インパクト加工、しごき加工等の非切削アルミニウム支持体を用いる場合、処理により、表面に存在した汚れや異物等の付着物、小さな傷等が無くなり、均一で清浄な支持体が得られるので好ましい。
[IV−2.下引き層]
本発明の電子写真感光体においては、下引き層は、本発明の下引き層形成用塗布液を塗布乾燥してなるものである。したがって、下引き層は、バインダー樹脂及び金属酸化物粒子を含有する。また、下引き層は、本発明の効果を著しく損なわない限りその他の成分を含有していてもよい。なお、これらのバインダー樹脂、金属酸化物粒子、及びその他の成分は、本発明の下引き層形成用塗布液の説明において述べたものと同様である。
下引き層形成用塗布液から下引き層を形成する方法は、上述したとおりである([III.下引き層形成方法]を参照)。
下引き層の膜厚は任意であるが、本発明の電子写真感光体の感光体特性及び塗布性を向上させる観点から、通常は0.1μm以上、20μm以下の範囲が好ましい。また、下引き層には、公知の酸化防止剤等の添加剤を含有させてもよい。
[IV−2−1.下引き層を分散させた場合の金属酸化物粒子の粒度分布]
また、本発明の電子写真感光体においては、メタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に下引き層を分散した液(以下適宜、「下引き層測定用分散液」という)中の金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、体積平均径Mv’、個数平均径Mp’、体積粒度分布累積90%粒子径D90’及び体積粒度分布幅指標SD’が、それぞれ、下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、体積平均径Mv、個数平均径Mp、体積粒度分布累積90%粒子径D90及び体積粒度分布幅指標SDと同様の条件を満たすことが、同様の理由により好ましい。
即ち、本発明の電子写真感光体においては、下引き層測定用分散液中の金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、体積平均径Mv’が0.1μm以下であって、且つ、小粒子径側から累積を行なった体積粒度分布累積90%粒子径D90’が0.3μm以下であることが好ましい([I−1−2−1.条件(a)についての説明]を参照)。
また、本発明の電子写真感光体においては、下引き層測定用分散液中の金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、体積平均径Mv’が0.1μm以下であって、且つ、体積平均径Mv’と個数平均径Mp’との比Mv’/Mp’が下記式(1’)を満たすことが好ましい([I−1−2−2.条件(b)についての説明]を参照)。
1.10 ≦ Mv’/Mp’ ≦ 1.40 (1’)
さらに、本発明の電子写真感光体においては、下引き層測定用分散液中の金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、体積平均径Mv’が0.1μm以下であって、且つ、体積粒度分布幅指標SD’が下記式(2’)を満たすことが好ましい([I−1−2−3.条件(c)についての説明]を参照)。
0.010 ≦ SD’ ≦ 0.040 (2’)
ただし、SD’=(D84’−D16’)/2であり、D84’は体積粒度分布累積カーブが84%となる点の粒径(μm)を表し、D16’は体積粒度分布累積カーブが16%となる点の粒径(μm)を表す。粒度分布の累積は小粒径側より行なう。
なお、前記の体積平均径Mv’、個数平均径Mp’、体積粒度分布累積90%粒子径D90’、並びに、体積粒度分布幅指標SD’を求めるための体積粒度分布累積84%粒子径D84’及び体積粒度分布累積16%粒子径D16’の測定方法は、下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子を直接測定するものではなく、層形成された下引き層をメタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した混合溶媒(これが、粒度測定時の分散媒となる)に分散して、その分散液(下引き層測定用分散液)中の金属酸化物粒子の粒度を動的光散乱法で測定する点で、上述した体積平均径Mv、個数平均径Mp、体積粒度分布累積90%粒子径D90、並びに、体積粒度分布幅指標SDを求めるための体積粒度分布累積84%粒子径D84及び体積粒度分布累積16%粒子径D16の測定方法とは異なるが、その他の点は同様である([I−1−2−4.Mv、Mp、D90及びSDの測定方法]の説明を参照)。
[IV−2−2.下引き層の表面形状]
本発明に係る下引き層は、その表面形状に制限は無いが、通常、その表面粗さは非常に小さくなる。例えば、下引き層の任意の微小矩形領域をエリアとして線粗さではなくの面粗さとして計測した場合、JIS B 0601:1994に定義されるRa(算術平均粗さ)、Ry(最大高さ)及びRz(十点平均粗さ)は、通常、以下の範囲になる。
即ち、本発明に係る下引き層のRa(算術平均粗さ)は、通常10nm以下である。
また、本発明に係る下引き層のRy(最大高さ)は、通常70nm以下である。
さらに、本発明に係る下引き層のRz(十点平均粗さ)は、通常50nm以下である。
なお、前記の表面形状に関する指標(Ra、Ry及びRz)は、AFM(原子間力顕微鏡)VN−8000(キーエンス社製)を用い、一つの下引き層表面画像あたり概略10000nm×10000nmの微小エリアを任意に5ヶ所とってそれぞれの面粗さを測定し、その平均値を用いる。測定入力モードは「単体」、解析形状は「矩形」とし、下地のうねり等の補正を行なうようにする。
[IV−2−3.下引き層を分散させた場合の吸光度]
本発明に係る下引き層は、該下引き層を結着しているバインダー樹脂を溶解できる溶媒に分散して分散液とした場合に、通常は、該分散液の吸光度が特定の物性を示す。この場合、前記分散液の吸光度も、本発明に係る電子写真感光体の下引き層形成用塗布液の吸光度を測定する場合と同様にして測定することができる。
本発明に係る下引き層を分散して分散液とする際には、下引き層を結着するバインダー樹脂については実質上溶解せず、下引き層の上に形成されている感光層などを溶解できる溶媒により下引き層上の層を溶解除去した後、下引き層を結着するバインダー樹脂を溶媒に溶解することによって分散液とすることができる。この際、下引き層を溶解できる溶媒としては、400nm〜1000nmの波長領域において大きな光吸収を持たない溶媒を使用すればよい。
下引き層を溶解できる溶媒の具体例を挙げると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール類が用いられ、特にはメタノール、エタノール、1−プロパノールが用いられる。また、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
本発明に係る下引き層を、メタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒で分散した分散液の、波長400nmの光に対する吸光度と波長1000nmの光に対する吸光度との差(吸光度差)は、以下の通りである。即ち、前記の吸光度差は、金属酸化物粒子の屈折率が2.0以上の場合には、通常0.3(Abs)以下、好ましくは0.2(Abs)以下である。また、金属酸化物粒子の屈折率が2.0未満の場合には、通常0.02(Abs)以下、好ましくは0.01(Abs)以下である。
なお、吸光度の値は、測定する液の固形分濃度に依存する。このため、吸光度の測定を行なう場合、前記分散液中の金属酸化物粒子の濃度が、0.003重量%〜0.0075重量%の範囲となるように分散することが好ましい。
[IV−2−4.下引き層の反射率]
本発明に係る下引き層の正反射率は、通常、本発明に特定の値を示す。本発明に係る下引き層の正反射率とは、導電性支持体に対する、導電性支持体上の下引き層の正反射率を示している。この下引き層の正反射率は、下引き層の膜厚によって変化するため、ここでは下引き層の膜厚を2μmとした場合の反射率として規定する。
本発明に係る下引き層は、下引き層が含有する金属酸化物粒子の屈折率が2.0以上の場合には、該下引き層が2μmである場合に換算した、該導電性支持体の波長480nmの光に対する正反射に対する、該下引き層の波長480nmの光に対する正反射の比が、通常50%以上である。
一方、下引き層が含有する金属酸化物粒子の屈折率が2.0未満の場合には、該下引き層が2μmである場合に換算した、該導電性支持体の波長400nmの光に対する正反射に対する、該下引き層の波長400nmの光に対する正反射の比が、通常50%以上である。
ここで、該下引き層が、複数種の屈折率2.0以上の金属酸化物粒子を含有する場合でも、複数種の屈折率2.0未満の金属酸化物粒子を含有する場合でも、上記と同様の正反射であるものが好ましい。また、該下引き層が、屈折率2.0以上の金属酸化物粒子、および屈折率2.0未満の金属酸化物粒子を同時に含んでいる場合では、屈折率2.0以上の金属酸化物粒子を含有する場合と同様に、該下引き層が2μmである場合に換算した、該導電性支持体の波長480nmの光に対する正反射に対する、該下引き層の波長480nmの光に対する正反射の比が、上記の範囲(50%以上)であることが好ましい。
以上、下引き層の膜厚が2μmである場合について詳しく説明したが、本発明に係る電子写真感光体においては、下引き層の膜厚が2μmであることに限定されず、任意の膜厚であってかまわない。下引き層の膜厚が2μm以外の厚さの場合には、当該下引き層を形成する際に用いた下引き層形成用塗布液を用いて、該電子写真感光体と同等の導電性支持体上に、膜厚2μmの下引き層を塗布形成してその下引き層について正反射率を測定することができる。また、別の方法としては、当該電子写真感光体の下引き層の正反射率を測定し、その膜厚が2μmである場合に換算する方法がある。
以下、その換算方法について説明する。
特定の単色光が下引き層を通過し、導電性支持体上で正反射し、ふたたび下引き層を通過して検出される場合に、光に対して垂直な厚さdLの薄い層を仮定する。
厚さdLの薄い層を通過後の光の強度の減少量−dIは、前記の層を通過する前の光の強度Iと、層の厚さdLとに比例すると考えられ、式で表現すると次のように書くことができる(kは定数)。
−dI=kIdL (D)
式(D)を変形すると次の様になる。
−dI/I=kdL (E)
式(E)の両辺をそれぞれ、I0からIまで、0からLまでの区間で積分すると次の様
な式が得られる。なお、I0は入射光の強度を表わす。
log(I0/I)=kL (F)
式(F)は、溶液系に於いてLambertの法則と呼ばれるものと同じであり、本発明に於ける反射率の測定にも適用することができる。
式(F)を変形すると、
I=I0exp(−kL) (G)
となり、入射光が導電性支持体表面に到達するまでの挙動が式(G)で表される。
一方、正反射率は、入射光の導電性支持体に対する反射光を分母とするため、素管表面での反射率R=I1/I0を考える。ここで、I1は反射光の強度を表わす。
すると、式(G)に従って導電性支持体表面に到達した光は、反射率Rを乗じられた上で正反射し、ふたたび光路長Lを通って下引き層表面に出ていく。すなわち、
I=I0exp(−kL)・R・exp(−kL) (H)
となり、R=I1/I0を代入し、さらに変形することで、
I/I1=exp(−2kL) (I)
という関係式を得ることができる。これが、導電性支持体に対する反射率に対する、下引き層に対する反射率の値であり、これを正反射率と定義する。
さて、上述の通り、2μmの下引き層に於いて光路長は往復で4μmになるが、任意の導電性支持体上の下引き層の反射率Tは、下引き層の膜厚L(このとき光路長2Lとなる)の関数であり、T(L)と表される。式(I)から、
T(L)=I/I1=exp(−2kL) (J)
が成立する。
一方、知りたい値はT(2)であるため、式(J)にL=2を代入して、
T(2)=I/I1=exp(−4k) (K)
となり、式(J)と式(K)を連立させてkを消去すると、
T(2)=T(L)2/L (L)
となる。
即ち、下引き層の膜厚がL(μm)であるとき、該下引き層の反射率T(L)を測定することで、下引き層が2μmである場合の反射率T(2)を相当の確度で見積もることができる。下引き層の膜厚Lの値は、粗さ計などの任意の膜厚計測装置で計測することができる。
[IV−3.感光層]
[IV−3−1.電荷発生物質]
本発明で電子写真感光体に用いる電荷発生物質としては、従来から本用途に用いることが提案されている任意の物質を用いることができる。このような物質としては例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントアントロン系顔料、キナクリドン系顔料、シアニン系顔料、ピリリウム系顔料、チアピリリウム系顔料、インジゴ系顔料、多環キノン系顔料、スクエアリック酸系顔料などが挙げられる。特にフタロシアニン顔料、またはアゾ顔料が好ましい。フタロシアニン顔料は、比較的長波長のレーザー光に対して高感度の感光体が得られる点で、また、アゾ顔料は、白色光及び比較的短波長のレーザー光に対し十分な感度を持つ点で、それぞれ優れている。
本発明では、電荷発生物質としてフタロシアニン系化合物を用いる場合に高い効果を示し好ましい。フタロシアニン系化合物の具体例としては、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、またはその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニンなどが挙げられる。
また、フタロシアニン系化合物の結晶型にも制限は無いが、特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型,I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体などが好適である。なお、これらのフタロシアニンの中でも、A型(β型)、B型(α型)及びD型(Y型)チタニルフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。
さらに、これらのフタロシアニン系化合物の中でも、CuKα特性X線に対するX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)が、27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン、9.3°、13.2°、26.2°及び27.1°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン、9.2°、14.1°、15.3°、19.7°、27.1°に主たる回折ピークを有するジヒドロキシシリコンフタロシアニン、8.5°、12.2°、13.8°、16.9°、22.4°、28.4°及び30.1°に主たる回折ピークを示すジクロロスズフタロシアニン、7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に主たる回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニン、並びに、7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°に回折ピークを示すクロロガリウムフタロシアニンが好ましい。これらの中でも、27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンが特に好ましく、この場合、9.5°、24.1°及び27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンがとりわけ好ましい。
また、電荷発生物質は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。したがって、前記のフタロシアニン系化合物も、単一の化合物のもののみを用いてもよいし、2種以上の化合物の混合あるいは混晶状態でもよい。ここでのフタロシアニン系化合物の混合あるいは混晶状態として、それぞれの構成要素を後から混合して用いてもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン系化合物の製造・処理工程において混合状態を生じさせたものでもよい。このような処理としては、例えば、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が挙げられる。混晶状態を生じさせるための方法に制限は無く、例えば、特開平10−48859号公報記載のように、2種類の結晶を混合後に機械的に摩砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。
また、フタロシアニン系化合物を用いる場合に、フタロシアニン系化合物以外の電荷発生物質を併用しても構わない。例えば、アゾ顔料、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、ベンズイミダゾール顔料、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、スクエアリウム塩等の電荷発生物質を混合して用いることができる。
電荷発生物質は、感光層形成用塗布液中に分散されるが、該感光層形成用塗布液中に分散される前に、予め前粉砕されていても構わない。前粉砕は、種々の装置を用いて行なうことができるが、通常はボールミル、サンドグラインドミルなどを用いて行なう。これらの粉砕装置に投入する粉砕媒体としては、粉砕処理に際して、粉砕媒体が粉化することがなく、かつ分散処理後は容易に分離できるものであればどのようなものでも使用することが可能で、例えば、ガラス、アルミナ、ジルコニア、ステンレス、セラミックス等の、ビーズやボールなどが挙げられる。前粉砕では、体積平均粒子径で500μm以下となるよう粉砕することが好ましく、より好ましくは250μm以下まで粉砕する。なお、電荷発生物質の体積平均粒子径は、当業者が通常用いるどのような方法で測定しても構わないが、通常は、通常沈降法や遠心沈降法で測定される。
[IV−3−2.電荷輸送物質]
電荷輸送物質に制限は無い。電荷輸送物質の例を挙げると、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリグリシジルカルバゾール、ポリアセナフチレン等の高分子化合物;ピレン,アントラセン等の多環芳香族化合物;インドール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、ピラゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアジアゾール誘導体等の複素環化合物;p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、N−メチルカルバゾール−3−カルバルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン系化合物;5−(4−(ジ−p−トリルアミノ)ベンジリデン)−5H−ジベンゾ(a,d)シクロヘプテン等のスチリル系化合物;p−トリトリルアミン等のトリアリールアミン系化合物;N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン等のベンジジン系化合物;ブタジエン系化合物;ジ−(p−ジトリルアミノフェニル)メタン等のトリフェニルメタン系化合物などが挙げられる。これらの中でも、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、スチリル系化合物、ブタジエン系化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、もしくはこれらが複数結合されたものが好適に用いられる。これらの電荷輸送物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
[IV−3−3.感光層用バインダー樹脂]
本発明の電子写真感光体に係る感光層は、光導電性材料を各種バインダー樹脂で結着した形で形成する。感光層用バインダー樹脂としては、電子写真感光体に用いることができる公知の如何なるバインダー樹脂も使用可能である。感光層用バインダー樹脂の具体例を挙げると、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリアクル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエステルポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体、及びその共重合体等が用いられる。またこれらの部分的架橋硬化物も使用できる。なお、感光層用バインダー樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
[IV−3−4.電荷発生物質を含有する層]
・積層型感光体
本発明の電子写真感光体がいわゆる積層型感光体である場合、電荷発生物質を含有する層は、通常、電荷発生層である。ただし、積層型感光体において、本発明の効果を著しく損なわない限り、電荷発生物質が電荷輸送層中に含まれていても構わない。
電荷発生物質の体積平均粒子径に制限は無い。ただし、積層型の感光体に使用する場合は、電荷発生物質の体積平均粒子径は、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下である。なお、電荷発生物質の体積平均粒子径は、上述した動的光散乱法のほか、レーザー回折散乱法、光透過式遠心沈降法などにより測定できる。
また、電荷発生層の膜厚は任意であるが、通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、また、通常2μm以下、好ましくは0.8μm以下が好適である。
電荷発生物質を含有する層が電荷発生層である場合、当該電荷発生層中の電荷発生物質の使用比率は、電荷発生層に含まれる感光層用バインダー樹脂100重量部に対して、通常30重量部以上、好ましくは50重量部以上、また、通常500重量部以下、好ましくは300重量部以下である。電荷発生物質の使用量が少なすぎると電子写真感光体としての電気特性が十分ではなくなる可能性があり、多すぎると塗布液の安定性を損なう可能性がある。
さらに、電荷発生層には、成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、シリコーンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤を含有していてもよい。なお、これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
・単層型感光体
本発明の電子写真感光体がいわゆる単層型感光体である場合、後に記載する電荷輸送層と同様の配合割合の感光層用バインダー樹脂と電荷輸送物質とを主成分とするマトリックス中に、前記電荷発生物質が分散される。
単層型の感光層に使用する場合には、電荷発生物質の粒子径は十分小さいことが望ましい。このため、単層型の感光層では、電荷発生物質の体積平均粒子径では、通常0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下である。
単層型感光層の膜厚は任意であるが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは45μm以下である。
感光層内に分散される電荷発生物質の量は任意であるが、少なすぎると十分な感度が得られなくなる可能性があり、多すぎると帯電性の低下、感度の低下などが生じる可能性がある。このため、単層型感光層中の電荷発生物質の含有率は、通常0.5重量%以上、好ましくは10重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは45重量%以下である。
また単層型感光体の感光層も、成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、シリコーンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤を含有していてもよい。なお、これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
[IV−3−5.電荷輸送物質を含有する層]
本発明の電子写真感光体がいわゆる積層型感光体である場合、電荷輸送物質を含有する層は、通常、電荷輸送層である。電荷輸送層は、電荷輸送機能を有する樹脂単独で形成されても良いが、前記電荷輸送物質が感光層用バインダー樹脂中に分散または溶解された構成がより好ましい。
電荷輸送層の膜厚は任意であるが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、また、通常60μm以下、好ましくは45μm以下、より好ましくは27μm以下である。
一方、本発明の電子写真感光体がいわゆる単層型感光体である場合、単層型感光層は、電荷発生物質の分散されるマトリックスとして、前記電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散または溶解された構成が用いられる。
電荷輸送物質を含有する層に使用されるバインダー樹脂としては、上述した感光層用バインダー樹脂を使用することができる。中でも、特に電荷輸送物質を含む層に用いて好適なものの例を挙げると、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体、及びその共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂など、並びに、これらの部分的架橋硬化物などが挙げられる。なお、このバインダー樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、電荷輸送層及び単層型感光層において、前記バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、バインダー樹脂100重量部に対して、電荷輸送物質が、通常20重量部以上、好ましくは30重量部以上、より好ましくは40重量部以上、また、通常200重量部以下、好ましくは150重量部以下、より好ましくは120重量部以下の範囲で使用される。
さらに、電荷輸送物質を含有する層は、必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、レベリング剤、電子吸引性物質等の各種添加剤を含んでいてもよい。なお、これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
[IV−3−6.その他の層]
本発明の電子写真感光体は、上述した下引き層及び感光層以外にも、その他の層を有していてもよい。
例を挙げると、最表面層として従来公知の、例えば熱可塑性あるいは熱硬化性ポリマーを主体とする表面保護層やオーバーコート層を設けてもよい。
[IV−3−7.層形成法]
感光体が有する下引き層以外の各層の形成方法に制限は無く、任意の方法を用いることができる。例えば、本発明の下引き層形成用塗布液で下引き層を形成する場合のように、層に含有させる物質を溶媒に溶解又は分散させて得られた塗布液(感光層形成用塗布液、電荷発生層形成用塗布液、電荷輸送層形成用塗布液など)を、例えば浸漬塗布方法、スプレー塗布方法、リング塗布方法等の公知の方法を用いて順次塗布し、乾燥させて形成される。この場合、塗布液は、必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
塗布液に用いる溶媒に制限は無いが、通常は有機溶媒を使用する。好ましい溶媒の例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、1−ヘキサノール、1,3−ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のエーテルケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の(ハロ)芳香族炭化水素類;酢酸メチル,酢酸エチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類が挙げられる。またこれらの溶媒の中でも特に、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、エーテルケトン類が、好適に用いられる。また、より好適なものとしては、トルエン、キシレン、1−ヘキサノール、1,3−ブタンジオール、テトラヒドロフラン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等が挙げられる。
前記の溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。特に2種以上を混合して併用することが好ましい溶媒の例としては、エーテル類、アルコール類、アミド類、スルホキシド類、エーテルケトン類などが挙げられるが、中でも1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類、1−プロパノール等のアルコール類が適している。特に好適には、エーテル類が挙げられる。これは、特にオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生物質として塗布液を製造する際に、該フタロシアニンの結晶形安定化能、分散安定性などの面からである。
なお、塗布液に用いる溶媒の量に制限は無く、塗布液の組成や塗布方法などに応じて、適切な量を用いるようにすれば良い。
[IV−3−8.本発明の電子写真感光体の利点]
本発明の電子写真感光体は、様々な使用環境下でも高い画質の画像を形成することが可能である。また、耐久安定性に優れ、しかも絶縁破壊などにより発生すると考えられる黒点や色点などの画像欠陥が発現し難い。したがって、本発明の電子写真感光体は、画像形成に用いた場合、環境による影響を抑制しながら、高品質の画像を形成することが可能である。
また、従来の電子写真感光体では、下引き層に、金属酸化物粒子が凝集してなる粗大な金属酸化物粒子凝集体が含有され、当該粗大な金属酸化物粒子凝集体によって、画像形成時に欠陥が生じる可能性があった。さらに、帯電手段として接触式のものを用いた場合には、感光層に帯電を行なう際に当該金属酸化物粒子を通って感光層から導電性支持体に電荷が移動し、適切に帯電を行なうことができなくなる可能性もあった。しかし、本発明の電子写真感光体では、平均粒径が非常に小さく、且つ、良好な粒径分布を有する金属酸化物粒子を用いた下引き層を備えているため、欠陥や、適切に帯電できなくなることを抑制でき、高品質な画像形成が可能である。
[V.画像形成装置]
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を示す図3を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図3に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置(帯電手段)2、露光装置(露光手段;像露光手段)3、現像装置(現像手段)4及び転写装置(転写手段)5を備えて構成され、更に、必要に応じてクリーニング装置(クリーニング手段)6及び定着装置(定着手段)7が設けられる。
本発明の画像形成装置では、感光体1として、上述した本発明の電子写真感光体を備えている。電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図3ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。図3では帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ブラシ等の接触型帯電装置などがよく用いられる。
中でも、本発明の効果を有効に活用するには、帯電装置は、電気写真感光体1に対して接触配置することが好ましい。帯電装置2が感光体1に接触配置されることが画像形成装置の小型化等のためには好ましいことではあるものの、従来の技術では、一般に、低温低湿下での露光−帯電繰り返し特性が安定せず、得られる画像に黒点、色点などの画像欠陥が多発する傾向があった。しかし、本発明の技術を用いれば、このような接触帯電装置を用いても低温低湿下での露光−帯電繰り返し特性は安定し、画像欠陥の発生も抑制することが可能であるので、本発明においては、帯電装置2として接触帯電装置を感光体1に接触配置することが好ましい。
なお、電子写真感光体1及び帯電装置2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下適宜、感光体カートリッジという)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されており、本発明においてもそのような形態で用いることが望ましい。そして、例えば電子写真感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、この感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、後述するトナーについても、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナーが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっており、本発明においてもそのような形態で用いることが望ましい。更に、電子写真感光体1、帯電装置2、トナーが全て備えられたカートリッジを用いることもある。なお、本発明においては、前記のように、帯電手段2が前記感光体1に接触配置した場合に、その効果が顕著に発揮されることから、この構成が望ましい。
露光装置3は、電子写真感光体1に対し露光(像露光)を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED(発光ダイオード)などが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば、波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長350nm〜600nmの短波長の単色光などで露光を行なえばよい。これらの中でも波長350nm〜600nmの短波長の単色光などで露光することが好ましく、より好ましくは波長380nm〜500nmの単色光で露光することである。
現像装置4は前記の静電潜像を現像するものである。その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式などの任意の装置を用いることができる。図3では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケルなどの金属ロール、またはこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロールなどからなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅などの金属ブレード、またはこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法などを用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト状の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を転写材(被転写体、用紙、媒体)Pに転写するものである。本発明においては、転写装置5が転写材を介して感光体に接触配置される場合に一層効果的である。
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。但し、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図3では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス、アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にフッ素樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどの公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
なお、感光体1は、上記のように帯電装置2と組み合わせてカートリッジとして構成する場合、さらに、現像装置4を備えて構成することが好ましい。さらに、前記の感光体1に加えて、必要に応じて、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(電子写真カートリッジ)として構成し、この電子写真カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。即ち、本発明の電子写真カートリッジは、本発明の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した該電子写真感光体に対し像露光を行ない静電潜像を形成する像露光手段、前記静電潜像をトナーで現像する現像手段、前記トナーを被転写体に転写する転写手段、被転写体に転写されたトナーを定着させる定着手段、及び、該電子写真感光体に付着した前記トナーを回収するクリーニング手段の少なくとも一つとを備えて構成できる。また、特に、本発明においては、前記のように、帯電手段が前記電子写真感光体に接触配置した場合に、その効果が顕著に発揮されることから、電子写真カートリッジは、少なくとも帯電装置2及び感光体1を備え、帯電装置2が感光体1に接触配置する構成が好ましい。
さらに、この場合、上記実施形態で説明したカートリッジと同様に、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
また、本発明の画像形成装置及び電気写真カートリッジによれば、高品質の画像を形成することができる。特に、従来は、転写装置5が転写材を介して感光体に接触配置される場合には画像の品質劣化が生じやすかったが、本発明の画像形成装置及び電気写真カートリッジはそのような品質劣化が生じる可能性が小さいため、効果的である。
[VI.本発明の主な利点]
本発明によれば、以下に説明する利点の少なくとも一つを得ることが可能である。
即ち、本発明によれば、下引き層形成用塗布液は安定した状態となり、ゲル化したり、分散された酸化チタン粒子が沈殿したりすることがなく、長期保存および使用が可能となる。また、該塗布液の使用時における粘性をはじめとする物性の変化が小さくなり、連続して支持体上に塗布し乾燥して感光層を形成する際に、製造されたそれぞれの感光層の膜厚が均一なものとなる。
更に、本発明の下引き層形成用塗布液の製造方法により製造された塗布液を用いて形成された下引き層を有する電子写真感光体は、低温低湿度でも安定した電気特性を有し、電気特性に優れている。
そして、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置によれば、絶縁破壊等を原因とする黒点や色点などの画像欠陥の極めて少ない良好な画像を形成することができ、特に該電子写真感光体に接触配置する帯電手段により帯電される画像形成装置において、黒点や色点などの画像欠陥の極めて少ない良好な画像を形成することができる。
また、本発明の電子写真感光体を用い、像露光手段に用いられる光の波長が350nm〜600nmである画像形成装置によれば、初期帯電電位および感度が高いことからして高品質の画像を得ることができる。
以下、本発明について、実施例及び比較例を示して更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これらに限定されるものではない。なお、実施例の説明において「部」は断りがない限り、「重量部」を示す。
[実施例1]
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業株式会社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、ヘンシェルミキサーにて混合して得られた表面処理酸化チタン50部と、メタノール117部を混合してなる原料スラリー5kg(スラリー比重約1.03)を、ミル粉砕室容積約1.5L(実容積約0.75L)の図1に示す湿式攪拌ミルを用い、遠心分離回転スクリーンとして目開き0.03mmのものをセットし、分散媒体として直径約100μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製 YTZ)を充填率約85%で用い、次いで、ロータ周速6m/秒、液流量約60kg/時間の液循環状態で5時間分散処理し、酸化チタン分散液を作製した。
前記酸化チタン分散液と、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、および、ε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、出力1200Wの超音波発振器による超音波分散処理を1時間行ない、更に孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルター(アドバンテック製 マイテックス LC)により濾過し、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比が3/1であり、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒の重量比が7/1/2であって、含有する固形分の濃度が18.0重量%の下引き層形成用塗布液Aを得た。
Figure 0005070933
この下引き層形成用塗布液Aについて、作製時と室温120日保存後の粘度変化率(120日保存後の粘度と作製時の粘度の差を、作製時の粘度で除した値)と、作製時の酸化チタンの粒度分布とを測定した。粘度は、E型粘度計(トキメック社製、製品名 ED)を用い、JIS Z 8803に準じた方法で測定した。一方、粒度分布は、粒度分析計(日機装社製、商品名:マイクロトラックUPA(MODEL 9340))を用いて測定した。結果を表2に示す。
[実施例2]
分散する際の分散メディアとして、直径約50μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製 YTZ)を用い、遠心分離回転スクリーンとして0.02mmの目開きのものを用い、液流量を約30kg/時間の液循環状態とした以外は、実施例1と同様にして下引き層形成用塗布液Bを作製し、実施例1と同様にして物性を測定した。結果を表2に示す。
[実施例3]
分散する際のロータ周速を、12m/秒とした以外は、実施例2と同様にして下引き層形成用塗布液Cを作製し、実施例1と同様にして物性を測定した。結果を表2に示す。
[実施例4]
分散する際の分散メディアとして、直径約30μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製 YTZ)を用い、遠心分離回転スクリーンとして0.01mmの目開きのものを用いた以外は、実施例2と同様にして下引き層形成用塗布液Dを作製し、実施例1と同様にして物性を測定した。結果を表2に示す。
[実施例5]
実施例2において使用した湿式攪拌ミル(図1参照)の代わりに図2に示す湿式攪拌ミルを用いた以外は、実施例2と同様にして下引き層形成用塗布液Eを作製し、実施例1と同様にして物性を測定した。結果を表2に示す。
[比較例1]
実施例1の表面処理酸化チタン50部と、メタノール117部とを混合し、直径約5mmのアルミナボール(株式会社ニッカトー製 HD)を用いてボールミルで5時間分散して得た分散スラリー液をそのまま用いて、図1に示す湿式攪拌ミルを用いて分散しなかった以外は、実施例1と同様にして下引き層形成用塗布液Fを作製し、その固形分濃度を0.015重量%(金属酸化物粒子濃度、0.011重量%)とした以外は、実施例1と同様にして物性を測定した。結果を表2に示す。
[比較例2]
比較例1でボールミル分散に用いたボールを、直径約5mmのジルコニアボール(株式会社ニッカトー製 YTZ)を用いた以外は、比較例1と同様にして下引き層形成用塗布液Gを作製し、実施例1と同様にして物性を測定した。結果を表2に示す。
[比較例3]
比較例1において使用した表面処理酸化チタンの代わりに、平均一次粒子径13nmの、日本アエロジル社製 Aluminum Oxide C(酸化アルミニウム粒子)を用いて、ボールミルで分散する代わりに出力600Wの超音波発振器により6時間分散した以外は、比較例1と同様にして下引き層形成用塗布液Hを作製し、実施例1と同様にして物性を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0005070933
表2から分かるように、本発明の方法により作製された下引き層形成用塗布液A〜Eは、平均粒子径が小さく、且つ粒子径の分布幅が小さいため、液の安定性が高く、均一な下引き層を形成することが可能であった。しかも、下引き層形成用塗布液A〜Eは長期間の保存によっても粘度変化が小さく安定性が高く、また、該下引き層形成用塗布液を塗布形成してなる下引き層の均一性が高く、光を散乱させにくいため、正反射率が高いことが認められた。
[実施例6]
下引き層形成用塗布液Aを、外径24mm、長さ236.5mm、肉厚0.75mmのアルミニウム切削管上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が2μmとなるように塗布し、乾燥させて下引き層を形成した。下引き層の表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ、凝集物は殆ど観察されなかった。
電荷発生物質として、図4に示すCuKα特性X線に対する粉末X線回折スペクトルパターンを有するオキシチタニウムフタロシアニン20重量部と、1,2−ジメトキシエタン280重量部とを混合し、サンドグラインドミルで2時間分散処理を行ない、分散液を作製した。続いてこの分散液と、10重量部のポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)と、253重量部の1,2−ジメトキシエタンと、85重量部の4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2とを混合し、更に234重量部の1,2−ジメトキシエタンを混合し、超音波分散機処理した後に、孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルター(アドバンテック社製 マイテックス LC)でろ過し、電荷発生層用塗布液を作製した。この電荷発生層用塗布液を、前記下引き層上に乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように、浸漬塗布により塗布、乾燥して電荷発生層を形成した。
次にこの電荷発生層の上に、下記に示すヒドラゾン化合物56部と、
Figure 0005070933
下記に示すヒドラゾン化合物14部と、
Figure 0005070933
下記繰り返し構造を有するポリカーボネート樹脂100部と、
Figure 0005070933
シリコーンオイル0.05重量部とを、テトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640重量部に溶解させた電荷輸送層用塗布液を、乾燥後の膜厚が17μmとなるように塗布し、室温において25分間風乾した。さらに125℃において20分間乾燥して電荷輸送層を設けて電子写真感光体を作製した。この電子写真感光体を感光体P1とする。
この感光体P1の絶縁破壊強度を、下記のようにして測定した。即ち、温度25℃、相対湿度50%環境下に該感光体を固定し、体積抵抗率が約2MΩ・cmでドラム長より両端が約2cmずつ短い帯電ローラを押し当て、直流電圧−3kVを印加し、絶縁破壊するまでの時間を測定した。その結果を表3に示す。
また、該感光体を電子写真学会測定標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)に装着し、表面電位が−700Vになるように帯電させた後、780nmのレーザー光を5.0μJ/cm2の強度で照射し、露光後100m秒後の表面電位を、温度25℃、相対湿度
50%(以下、NN環境ということがある)環境下、および温度5℃、相対湿度10%(以下、LL環境ということがある)で測定した。その結果を表3に示す。なお、表3においてNN環境下での表面電位をVL(NN)で表わし、LL環境下での表面電位をVL(LL)で表わす。
[実施例7]
下引き層の膜厚が3μmとなるように下引き層を設けた以外は、実施例6と同様にして感光体P2を作製した。この際の下引き層を、実施例6と同様に、表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ凝集物は殆ど観察されなかった。実施例6と同様にして感光体P2を評価した結果を表3に示す。
[実施例8]
酸化チタンと共重合ポリアミドの重量比を、酸化チタン/共重合ポリアミド=2/1とした以外は、実施例1と同様にして下引き層形成用塗布液A2を作製した。
下引き層形成用塗布液として前記塗布液A2を用いた以外は、実施例6と同様にして感光体P3を作製した。この際の下引き層を、実施例6と同様に、表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ凝集物は殆ど観察されなかった。実施例6と同様にして感光体P3を評価した結果を表3に示す。
[実施例9]
下引き層形成用塗布液として、前記実施例2に記載の下引き層形成用塗布液Bを用いた以外は、実施例6と同様にして感光体Q1を作製した。この際の下引き層を、実施例6と同様に、表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ凝集物は殆ど観察されなかった。また、この下引き層の表面形状を、前記のAFM(キーエンス社製、VN−8000システム)で面粗さ計測を行なったところ、平均値としてRaが4.3nm、Ryが47.5nm、Rzが37.3nmの非常に粗さの小さい均一な表面が得られることが分かった。実施例6と同様にして感光体Q1を評価した結果を表3に示す。
[実施例10]
下引き層の膜厚が3μmとなるように下引き層を設けた以外は、実施例9と同様にして感光体Q2を作製した。この際の下引き層を、実施例6と同様に、表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ凝集物は殆ど観察されなかった。実施例6と同様にして、感光体Q2を評価した結果を表3に示す。
[実施例11]
下引き層形成用塗布液として、前記実施例3に記載の下引き層形成用塗布液Cを用いた以外は、実施例6と同様にして感光体R1を作製した。この際の下引き層を、実施例6と同様に、表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ凝集物は殆ど観察されなかった。実施例6と同様にして感光体R1を評価した結果を表3に示す。
[実施例12]
下引き層の膜厚が3μmとなるように下引き層を設けた以外は、実施例11と同様にして感光体R2を作製した。この際の下引き層を、実施例6と同様に、表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ凝集物は殆ど観察されなかった。実施例6と同様にして、感光体R2を評価した結果を表3に示す。
[実施例13]
酸化チタンと共重合ポリアミドの重量比を、酸化チタン/共重合ポリアミド=2/1とした以外は、実施例3と同様にして下引き層形成用塗布液C2を作製した。
下引き層形成用塗布液として前記塗布液C2を用いた以外は、実施例11と同様にして感光体R3を作製した。この際の下引き層を、実施例6と同様に、表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ凝集物は殆ど観察されなかった。実施例6と同様にして感光体R3を評価した結果を表3に示す。
[実施例14]
下引き層形成用塗布液として、前記実施例4に記載の下引き層形成用塗布液Dを用いた以外は、実施例6と同様にして感光体S1を作製した。この際の下引き層を、実施例6と同様に、表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ凝集物は殆ど観察されなかった。また、実施例6と同様にして下引き層の表面形状を測定したところ、面粗さ計測の平均値としてRaが3.7nm、Ryが30.6nm、Rzが19.5nmの非常に粗さの小さい均一な表面が得られることが分かった。実施例6と同様にして感光体S1を評価した結果を表3に示す。
[実施例15]
下引き層の膜厚が3μmとなるように下引き層を設けた以外は、実施例14と同様にして感光体S2を作製した。この際の下引き層を、実施例6と同様に、表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ凝集物は殆ど観察されなかった。実施例6と同様にして、感光体S2を評価した結果を表3に示す。
[実施例16]
酸化チタンと共重合ポリアミドの重量比を、酸化チタン/共重合ポリアミド=2/1とした以外は、実施例4と同様にして下引き層形成用塗布液D2を作製した。
下引き層形成用塗布液として前記塗布液D2を用いた以外は、実施例14と同様にして感光体S3を作製した。この際の下引き層を、実施例6と同様に、表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ凝集物は殆ど観察されなかった。実施例6と同様にして感光体S3を評価した結果を表3に示す。
[比較例4]
下引き層形成用塗布液として、前記比較例1に記載の下引き層形成用塗布液Fを用いた以外は、実施例6と同様にして感光体T1を作製した。この際の下引き層を、実施例6と同様に、表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ、多数の酸化チタン凝集物が見られた。また、この際の下引き層の表面形状を実施例9と同様にして測定したところ、面粗さ計測の平均値としてRaが12.7nm、Ryが140.1nm、Rzが98.8nmの非常に粗さの大きい不均一な表面であることが分かった。実施例6と同様にして感光体T1を評価した結果を表3に示す。
[比較例5]
下引き層の膜厚が3μmとなるように下引き層を設けた以外は、比較例4と同様にして感光体T2を作製した。この際の下引き層を、実施例6と同様に、表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ、多数の酸化チタン凝集物が見られた。実施例6と同様にして感光体T2を評価した結果を表3に示す。
[比較例6]
下引き層形成用塗布液として、前記比較例2に記載の下引き層形成用塗布液Gを用いた以外は、実施例6と同様にして感光体U1を作製した。この際の下引き層を、実施例6と同様に、表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ、多数の酸化チタン凝集物が見られた。感光体U1は、下引き層の成分および厚さのむらが激しく、電気特性を評価することはできなかった。
Figure 0005070933
実施例6〜16及び比較例4〜6で行なった電子顕微鏡観察及びAFMによる面粗さ測定の結果から、本発明の電子写真感光体は、凝集などの無い均一な下引き層を有することが確認された。また、表3から、本発明の電子写真感光体は、耐絶縁破壊性能に優れることが確認された。
[実施例17]
下引き層形成用塗布液として、前記実施例2に記載の下引き層形成用塗布液Bを用い、外径30mm、長さ285mm、肉厚0.8mmのアルミニウム切削管上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が2.4μmとなるように塗布し、乾燥させて下引き層を形成した。下引き層の表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ、凝集物は殆ど観察されなかった。
この下引き層94.2cm2を、メタノール70g、1−プロパノール30gの混合溶
液に浸漬し、出力600Wの超音波発振器により5分間超音波処理して下引き層分散液を得て、該分散液中の金属酸化物凝集体二次粒子の粒度分布を実施例1と同様の方法で測定したところ、体積平均径Mv’は0.070μmであって、体積粒度分布累積90%粒子径D90’が0.103μmであった。
実施例6と同様にして作製した電荷発生層用塗布液を、前記下引き層上に乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように、浸漬塗布により塗布、乾燥して電荷発生層を形成した。
次にこの電荷発生層の上に、電荷輸送物質として以下に示す構造を主体とする、特開2002−080432公報記載の組成物(A)60部、
Figure 0005070933
下記繰り返し構造を有するポリカーボネート樹脂100部、
Figure 0005070933
及びシリコーンオイル0.05重量部を、テトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640重量部に溶解させた塗布液を、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗布し、乾燥して電荷輸送層を設け、電子写真感光体を作製した。
この電子写真感光体の感光層94.2cm2を、テトラヒドロフラン100cm3に浸漬し、出力600Wの超音波発振器により5分間超音波処理して溶解除去した後、同部分をメタノール70g、1−プロパノール30gの混合溶液に浸漬し、出力600Wの超音波発振器により5分間超音波処理して下引き層分散液を得て、該分散液中の金属酸化物粒子の粒度分布を実施例1と同様の方法で測定したところ、体積平均径Mv’は0.076μmであって、体積粒度分布累積90%粒子径D90’が0.119μmであった。
作製した感光体を、セイコーエプソン株式会社製カラープリンター(製品名:InterColor LP−1500C)のカートリッジ(イメージングユニットカートリッジとして、スコロトロン帯電部材及びブレードクリーニング部材を有する)に装着し、フルカラー画像を形成したところ、良好な画像を得ることができた。得られた画像1.6cm四方中に観察される微小色点の数を表4に示す。
また、下引き層形成用塗布液を3ヵ月間保存し、3ヶ月後に、同様の操作により感光体を作製してフルカラー画像を形成した。得られた画像1.6cm四方中に観察される微小色点の数を、3ヵ月後の画像欠陥として表4に示す。
[実施例18]
下引き層形成用塗布液として、前記実施例3に記載の下引き層形成用塗布液Cを用いた以外は、実施例17と同様にしてフルカラー画像を形成したところ、良好な画像を得ることができた。得られた画像1.6cm四方中に観察される微小色点の数を表4に示す。
また、実施例17と同様、3ヵ月後にもフルカラー画像を形成し、3ヶ月後の画像欠陥を計測した。この結果も表4に示す。
[実施例19]
下引き層形成用塗布液として、前記実施例4に記載の下引き層形成用塗布液Dを用いた以外は、実施例17と同様にしてフルカラー画像を形成したところ、良好な画像を得ることができた。得られた画像1.6cm四方中に観察される微小色点の数を表4に示す。
また、実施例17と同様、3ヵ月後にもフルカラー画像を形成し、3ヶ月後の画像欠陥を計測した。この結果も表4に示す。
[比較例7]
下引き層形成用塗布液として、前記比較例1に記載の下引き層形成用塗布液Fを用いた以外は、実施例17と同様にして電子写真感光体を作製した。
該電子写真感光体の下引き層94.2cm2を、メタノール70g、1−プロパノール30gの混合溶液に浸漬し、出力600Wの超音波発振器により5分間超音波処理して下引き層分散液を得て、該分散液中の金属酸化物粒子の粒度分布を実施例1と同様の方法で測定したところ、体積平均径Mv’は0.113μmであって、体積粒度分布累積90%粒子径D90’が0.196μmであった。
また、この電子写真感光体の感光層94.2cm2を、テトラヒドロフラン100cm3に浸漬し、出力600Wの超音波発振器により5分間超音波処理して溶解除去した後、同部分をメタノール70g、1−プロパノール30gの混合溶液に浸漬し、出力600Wの超音波発振器により5分間超音波処理して下引き層分散液を得て、該分散液中の金属酸化物粒子の粒度分布を実施例1と同様の方法で測定したところ、体積平均径Mv’は0.123μmであって、体積粒度分布累積90%粒子径D90’が0.193μmであった。
この電子写真感光体を用いて、実施例17と同様にしてフルカラー画像を形成したところ、多数の色点が観察され、良好な画像を得ることはできなかった。得られた画像1.6cm四方中に観察される微小色点の数を表4に示す。
また、実施例17と同様、3ヵ月後にもフルカラー画像を形成し、3ヶ月後の画像欠陥を計測した。この結果も表4に示す。
Figure 0005070933
表4から、本発明の電子写真感光体は、感光体特性も良好で絶縁破壊にも強く、しかも色点などの画像欠陥の少ない非常に優れた性能を有していることが確認された。さらに、本発明の下引き層形成用塗布液を用いた場合には、下引き層形成用塗布液の保存後においても保存前と同様に良好な電子写真感光体が得られることも確認された。
[実施例20]
実施例9で作製した感光体Q1を25℃50%環境下に該感光体を固定し、体積抵抗率が約2MΩ・cmでドラム長より両端が約2cmずつ短い帯電ローラを押し当て、直流電圧−1kVを1分間印加した後、直流電圧−1.5kVを1分間印加し、同様にして1分間印加する毎に−0.5kVずつ電圧を下げることを繰り返した場合、直流電圧−4.5kVを印加したところで、絶縁破壊が起こった。
[実施例21]
実施例9で用いた下引き層形成用塗布液Bの代わりに、下引き層形成用塗布液Dを用いた以外は、実施例9と同様にして作製した感光体に、実施例20と同様の方法で直流電圧を印加したところ、直流電圧−4.5kVを印加したところで、絶縁破壊が起こった。
[比較例8]
実施例9で作製した感光体Q1の代わりに、比較例4で作製した感光体T1を用いた以外は、実施例21と同様にして感光体に直流電圧を印加したところ、直流電圧−3.5kVを印加したところで、絶縁破壊が起こった。
[実施例22]
実施例9で作製した感光体Q1を、Samsung社製のプリンターML1430(一体型カートリッジとして、接触帯電ローラ部材及びモノクロ現像部材を有する)に搭載して、印字濃度5%で絶縁破壊による画像欠陥が観察されるまで画像形成を繰り返したところ、50000枚の画像を形成してもなお、画像欠陥は観察されなかった。
[比較例9]
比較例4で作製した感光体T1を、Samsung社製のプリンターML1430に搭載して、印字濃度5%で絶縁破壊による画像欠陥が観察されるまで画像形成を繰り返したところ、35000枚の画像を形成した時点で、画像欠陥が観察された。
[実施例23]
下引き層形成用塗布液Bを、外径24mm、長さ236.5mm、肉厚0.75mmのアルミニウム切削管上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が2μmとなるように塗布し、乾燥させて下引き層を形成した。
下記式で表される電荷発生物質1.5部と、
Figure 0005070933
1,2−ジメトキシエタン30部とを混合し、サンドグラインドミルで8時間粉砕し、微粒化分散処理を行なった。続いて、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)0.75部、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製品、PKHH)0.75部を1,2−ジメトキシエタン28.5部に溶解したバインダー溶液と混合し、最後に1,2−ジメトキシエタンと4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンの任意混合液13.5部を加えて、固形分(顔料+樹脂)濃度4.0重量%の電荷発生層形成用塗布液を調製した。
この電荷発生層形成用塗布液を、前記下引き層上に乾燥後の膜厚が0.6μmとなるように浸漬塗布した後、乾燥して電荷発生層を形成した。
次に、この電荷発生層の上に、下記に示すトリフェニルアミン化合物67部と、
Figure 0005070933
下記繰り返し構造を有するポリカーボネート樹脂100部と、
Figure 0005070933
下記構造の化合物0.5部と、
Figure 0005070933
シリコーンオイル0.02重量部とを、テトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640重量部に溶解させた電荷輸送層用塗布液を、乾燥後の膜厚が25μmとなるように塗布し、室温において25分間風乾し、さらに125℃において20分間乾燥して電荷輸送層を設けて電子写真感光体を作製した。
以上で得られた電子写真感光体を、電子写真学会標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)に装着し、以下の手順に従って、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性の評価を行なった。
暗所で、スコロトロン帯電器のグリッド電圧−800Vで放電を行ない感光体を帯電させたときの、感光体初期表面電位を測定した。次に、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで450nmの単色光としたものを照射して、表面電位が−350Vとなる時の照射エネルギー(μJ/cm2)を測定し、この値を感度E1/2としたところ、初期帯電電位
は−708V、感度E1/2は3.288μJ/cm2であった。初期帯電電位は数値が
高い(電位の絶対値が大きい)ほうが帯電性が良く、感度は数値が小さいほど高感度であることを示す。
[比較例10]
下引き層形成用塗布液として、前記比較例1に記載の下引き層形成用塗布液Fを用いた以外は、実施例23と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例23と同様にして電気特性を評価したところ、初期帯電電位は−696V、感度E1/2は3.304μJ/cm2であった。
実施例23と比較例10の結果から、本発明の電子写真感光体は特に、露光波長が350nm〜600nmの単色光で露光した場合に、感度に優れることが分かる。
本発明の下引き層形成用塗布液は保存安定性が高く、該塗布液を塗布してなる下引き層を有する電子写真感光体を高品質に高効率に製造することが可能であって、該電子写真感光体は、耐久安定性に優れ、画像欠陥などが発生し難いため、該感光体を用いる画像形成装置によれば、高品質の画像を形成することができる。また、塗布液の製造方法によれば、前記下引き層形成用塗布液を効率よく生産できる上に、より保存安定性が高い下引き層形成用塗布液を得ることができ、更にはより高品質の電子写真感光体を得ることができる。よって、電子写真感光体が用いられる各種の分野、例えば複写機、プリンター、印刷機等の分野において好適に用いることができる。
本発明に係る湿式攪拌ミルの第一実施形態を示すもので、(A)はその湿式攪拌ミルの縦断面図であり、(B)はその湿式攪拌ミルの横断面図である。 本発明に係る湿式攪拌ミルの第二実施形態を示す縦断面図である。 本発明の電子写真感光体を備えた画像形成装置の一実施態様の要部構成を示す概略図である。 実施例6〜16及び比較例4〜6の電子写真感光体において、電荷発生物質として用いたオキシチタニウムフタロシアニンの、CuKα特性X線に対する粉末X線回折スペクトルパターンである。
符号の説明
1 感光体
2 帯電装置(帯電ローラ)
3 露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 クリーニング装置
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(定着ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙(用紙、媒体)
101 粉砕機(媒体攪拌ミル)
102 容器
103 蓋部材
104 底部材
105 粉砕室
106 攪拌軸
107 攪拌部材
112 中空部
113 スラリー出口
114 スクリーン
115 媒体循環用入り口
116 スリット
117 媒体循環用出口
118 スラリー出口管

Claims (17)

  1. 金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含有する、電子写真感光体の下引き層形成用塗布液において、
    該金属酸化物粒子として、平均粒子径5〜100μmのメディアを使用し、湿式攪拌ミルを用いて分散された金属酸化物粒子を含有する
    ことを特徴とする、電子写真感光体の下引き層形成用塗布液。
  2. 前記湿式攪拌ミルが、メディア分離用のスクリーンを備える
    ことを特徴とする、請求項1記載の電子写真感光体の下引き層形成用塗布液。
  3. 前記湿式攪拌ミルが、
    一端側にスラリー入り口を有する筒状の容器と、前記容器内に長手方向に延びるように配置された回転自在な攪拌軸と、前記容器の外において前記攪拌軸に連結された駆動装置とを備え、
    前記攪拌軸は、攪拌部材を有し、前記攪拌軸と前記容器内面との間の空間にメディアが入れられており、前記スラリー入り口からスラリーを導入しながら前記駆動装置により前記攪拌軸を回転駆動することにより、前記スラリー内の固形物が粉砕されるようになっており、
    前記攪拌軸は、前記容器の他端近傍にメディア入り口を有する中空部が形成され、前記攪拌軸には前記中空部を前記攪拌軸と前記容器内面との間の前記空間に連通させるスリットが形成され、前記スラリーの動きに伴って前記容器の前記他端近傍に達した前記メディアが、前記スラリー入り口から前記攪拌軸の前記中空部に入り、前記スリットから前記攪拌軸と前記容器内面との間の前記空間に戻る循環運動をするようになっており、
    前記攪拌軸の前記中空部内にスラリー出口が配置され、前記中空部内に前記スラリー出口を囲むように前記スクリーンが設けられ、前記スクリーンが回転駆動されるようになった
    ことを特徴とする、請求項2記載の電子写真感光体の下引き層形成用塗布液。
  4. 前記湿式攪拌ミルにおいて、
    前記スラリー出口は前記攪拌軸に形成され、
    前記スクリーンは前記攪拌軸に固定されて、該攪拌軸とともに回転駆動されるようになっており、
    前記攪拌軸内には前記スラリー出口に通じるスラリー出口通路が設けられた
    ことを特徴とする、請求項3記載の電子写真感光体の下引き層形成用塗布液。
  5. 前記湿式攪拌ミルにおいて、
    前記スラリー出口は前記攪拌軸の前記中空部内に回転自在に配置された管状のスラリー出口部材により構成され、
    前記スクリーンは前記管状のスラリー出口部材に固定され、
    前記攪拌軸とは別に前記管状のスラリー出口部材を回転駆動する手段が設けられた
    ことを特徴とする、請求項3記載の電子写真感光体の下引き層形成用塗布液。
  6. 前記攪拌部材は、前記攪拌軸の周面から放射状に突出する部材である
    ことを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体の下引き層形成用塗布液。
  7. 該下引き層形成用塗布液中の該金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、体積平均径Mvが0.1μm以下であって、且つ、小粒子径側から累積を行なった体積粒度分布累積90%粒子径が0.3μm以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子写真感光体の下引き層形成用塗布液。
  8. 該下引き層形成用塗布液中の該金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、体積平均径Mvが0.1μm以下であって、且つ、体積平均径Mvと個数平均径Mpとの比Mv/Mpが下記式(1)を満たす
    ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子写真感光体の下引き層形成用塗布液。
    1.10 ≦ Mv/Mp ≦ 1.40 (1)
  9. 該下引き層形成用塗布液中の該金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、体積平均径Mvが0.1μm以下であって、且つ、体積粒度分布幅指標SDが下記式(2)を満たす
    ことを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電子写真感光体の下引き層形成用塗布液。
    0.010 ≦ SD ≦ 0.040 (2)
    (ただし、SD=(D84−D16)/2であり、D84は体積粒度分布累積カーブが84%となる点の粒径(μm)を表し、D16は体積粒度分布累積カーブが16%となる点の粒径(μm)を表す。粒度分布の累積は小粒径側より行なう。)
  10. 金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含有する、電子写真感光体の下引き層形成用塗布液の製造方法において、
    前記金属酸化物粒子として、平均粒子径5〜100μmのメディアを使用し、湿式攪拌ミルを用いて分散された金属酸化物粒子を使用する
    ことを特徴とする、電子写真感光体の下引き層形成用塗布液の製造方法。
  11. 前記湿式攪拌ミルが、メディア分離用のスクリーンを備える
    ことを特徴とする、請求項10記載の電子写真感光体の下引き層形成用塗布液の製造方法。
  12. 前記湿式攪拌ミルが、
    一端側にスラリー入り口を有する筒状の容器と、前記容器内に長手方向に延びるように配置された回転自在な攪拌軸と、前記容器の外において前記攪拌軸に連結された駆動装置とを備え、
    前記攪拌軸は、攪拌部材を有し、前記攪拌軸と前記容器内面との間の空間にメディアが入れられており、前記スラリー入り口からスラリーを導入しながら前記駆動装置により前記攪拌軸を回転駆動することにより、前記スラリー内の固形物が粉砕されるようになっており、
    前記攪拌軸は、前記容器の他端近傍にメディア入り口を有する中空部が形成され、前記攪拌軸には前記中空部を前記攪拌軸と前記容器内面との間の前記空間に連通させるスリットが形成され、前記スラリーの動きに伴って前記容器の前記他端近傍に達した前記メディアが、前記スラリー入り口から前記攪拌軸の前記中空部に入り、前記スリットから前記攪拌軸と前記容器内面との間の前記空間に戻る循環運動をするようになっており、
    前記攪拌軸の前記中空部内にスラリー出口が配置され、前記中空部内に前記スラリー出口を囲むようにスクリーンが設けられ、前記スクリーンが回転駆動されるようになった湿式攪拌ミルである
    ことを特徴とする、請求項11記載の電子写真感光体の下引き層形成用塗布液の製造方法。
  13. 導電性支持体上に、バインダー樹脂及び金属酸化物粒子を含有する下引き層と、該下引き層上に形成される感光層とを有する電子写真感光体において、
    該下引き層が、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の下引き層形成用塗布液を塗布乾燥してなる
    ことを特徴とする、電子写真感光体。
  14. 請求項13記載の電子写真感光体と、
    該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
    帯電した該電子写真感光体に対し像露光を行ない静電潜像を形成する像露光手段と、
    前記静電潜像をトナーで現像する現像手段と、
    前記トナーを被転写体に転写する転写手段とを備える
    ことを特徴とする、画像形成装置。
  15. 該帯電手段が、該電子写真感光体に接触配置する
    ことを特徴とする、請求項14に記載の画像形成装置。
  16. 請求項13記載の電子写真感光体と、
    該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した該電子写真感光体に対し像露光を行ない静電潜像を形成する像露光手段、前記静電潜像をトナーで現像する現像手段、前記トナーを被転写体に転写する転写手段、被転写体に転写された前記トナーを定着させる定着手段、及び、該電子写真感光体に付着した前記トナーを回収するクリーニング手段の少なくとも一つとを備える
    ことを特徴とする、電子写真カートリッジ。
  17. 少なくとも、該帯電手段及び該電子写真感光体を備え、
    該帯電手段が該電子写真感光体に接触配置する
    ことを特徴とする、請求項16記載の電子写真カートリッジ。
JP2007133452A 2006-05-18 2007-05-18 下引き層形成用塗布液、下引き層形成用塗布液の製造方法、電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジ Active JP5070933B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007133452A JP5070933B2 (ja) 2006-05-18 2007-05-18 下引き層形成用塗布液、下引き層形成用塗布液の製造方法、電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジ

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006139537 2006-05-18
JP2006139537 2006-05-18
JP2007133452A JP5070933B2 (ja) 2006-05-18 2007-05-18 下引き層形成用塗布液、下引き層形成用塗布液の製造方法、電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007334331A JP2007334331A (ja) 2007-12-27
JP5070933B2 true JP5070933B2 (ja) 2012-11-14

Family

ID=38933808

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007133452A Active JP5070933B2 (ja) 2006-05-18 2007-05-18 下引き層形成用塗布液、下引き層形成用塗布液の製造方法、電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5070933B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016180800A (ja) * 2015-03-23 2016-10-13 三菱化学株式会社 電子写真感光体、画像形成装置、及びカートリッジ
CN115026973B (zh) * 2022-08-10 2022-11-01 常州市龙吟塑业有限公司 一种基于输血网加工的自动化上料设备

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0771591A4 (en) * 1995-06-06 2000-05-31 Kotobuki Giken Kogyo Kk WET BALL AGITATION GRINDER AND METHOD
JP4517996B2 (ja) * 2004-11-19 2010-08-04 三菱化学株式会社 下引き層形成用塗布液、該塗布液の製造方法、該塗布液を塗布してなる下引き層を有する感光体、該感光体を用いる画像形成装置、および該感光体を用いる電子写真カートリッジ

Also Published As

Publication number Publication date
JP2007334331A (ja) 2007-12-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4983951B2 (ja) 下引き層形成用塗布液、該塗布液の製造方法、該塗布液を塗布してなる下引き層を有する感光体、該感光体を用いる画像形成装置、および該感光体を用いる電子写真カートリッジ
JP4517996B2 (ja) 下引き層形成用塗布液、該塗布液の製造方法、該塗布液を塗布してなる下引き層を有する感光体、該感光体を用いる画像形成装置、および該感光体を用いる電子写真カートリッジ
WO2007135987A1 (ja) 電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジ
US8394559B2 (en) Coating liquid for forming undercoat layer, photoreceptor having undercoat layer formed of the coating liquid, image-forming apparatus including the photoreceptor, and electrophotographic cartridge including the photoreceptor
WO2007135989A1 (ja) 電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジ
JP5239212B2 (ja) 下引き層形成用塗布液、下引き層形成用塗布液の製造方法、電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジ
TWI402639B (zh) 底塗層形成用塗佈液,底塗層形成用塗佈液之製造方法,電子照片感光體,圖像形成裝置及電子照片匣
JP5194555B2 (ja) 電子写真感光体及び導電性基体の製造方法、並びに、画像形成装置及び電子写真カートリッジ
JP5070933B2 (ja) 下引き層形成用塗布液、下引き層形成用塗布液の製造方法、電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジ
JP5067012B2 (ja) 下引き層を形成するための塗布液の製造方法、電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジ
JP5194552B2 (ja) 電子写真感光体の下引き層形成用塗布液
JP5181531B2 (ja) 電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジ
JP5181529B2 (ja) 下引き層形成用塗布液、下引き層形成用塗布液の製造方法、電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジ
JP5067013B2 (ja) 下引き層を形成するための塗布液、下引き層を形成するための塗布液の製造方法、電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジ
JP2007334341A (ja) 下引き層形成用塗布液、該塗布液を塗布してなる下引き層を有する感光体、該感光体を用いる画像形成装置、および該感光体を用いる電子写真カートリッジ
JP4985093B2 (ja) 電子写真感光体の下引き層形成用塗布液の製造方法及びそれを使用して製造された下引き層形成用塗布液
JP5181530B2 (ja) 下引き層形成用塗布液、下引き層形成用塗布液の製造方法、電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジ
JP5245288B2 (ja) 電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジ
JP2007334336A (ja) 電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジ
JP2007334338A (ja) 電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジ
JP2007334339A (ja) 画像形成装置
JP2007334337A (ja) 電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真カートリッジ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100408

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20111011

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120403

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120601

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120724

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120806

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5070933

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150831

Year of fee payment: 3

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350