JP5194555B2 - 電子写真感光体及び導電性基体の製造方法、並びに、画像形成装置及び電子写真カートリッジ - Google Patents

電子写真感光体及び導電性基体の製造方法、並びに、画像形成装置及び電子写真カートリッジ Download PDF

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Description

本発明は、電子写真感光体及びそれに用いる導電性基体の製造方法、並びに、それを用いた画像形成装置及び電子写真カートリッジに関するものである。
電子写真技術は、即時性、高品質の画像が得られることなどから、近年では複写機の分野にとどまらず、各種プリンターの分野でも広く使われ応用されている。電子写真技術の中核となる電子写真感光体(以下適宜、単に「感光体」という)については、その光導電材料として、無機系の光導電材料に比し、無公害、製造が容易等の利点を有する有機系の光導電材料を使用した有機感光体が開発されている。
通常、有機感光体は、導電性基体(導電性支持体)上に感光層を形成してなる。感光体のタイプとしては、光導電性材料をバインダー樹脂中に溶解または分散させた単層の感光層(単層型感光層)を有する、いわゆる単層型感光体;電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とを積層してなる複数の層からなる感光層(積層型感光層)を有する、いわゆる積層型感光体などが知られている。
有機感光体では、感光体の使用環境の変化や繰り返し使用による電気特性等の変化により、当該感光体を用いて形成された画像に様々な欠陥が見られることがある。これを改善する技術の一つとして、安定して良好な画像を形成するために、導電性基板と感光層との間にバインダー樹脂と酸化チタン粒子とを有する下引き層を設ける方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
有機感光体の有する層は、通常、その生産性の高さから、各種溶媒中に材料を溶解または分散した塗布液を、塗布、乾燥することにより形成される。この際、酸化チタン粒子とバインダー樹脂とを含有する下引き層では、酸化チタン粒子とバインダー樹脂は下引き層中において相溶しない状態で存在しているため、当該下引き層形成用塗布液は、酸化チタン粒子を分散した塗布液により塗布形成される。
従来、このような塗布液は、酸化チタン粒子を長時間に亘り、ボールミル、サンドグラインドミル、遊星ミル、ロールミルなどの公知の機械的な粉砕装置で有機溶媒中にて湿式分散することにより製造するのが一般的であった(例えば、特許文献1参照)。そして、下引き層形成用塗布液中の酸化チタン粒子を分散メディアを用いて分散する場合、分散メディアの材質をチタニアまたはジルコニアにすることにより、低温低湿条件下でも帯電露光繰り返し特性の優れた電子写真感光体を提供することができることが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、一般的に、酸化チタン粒子は凝集して二次粒子となっており、これを一次粒子に近い形に分散することにより、黒点、色点などの画像欠陥が少なくなることが知られている。
一方、感光体を用いて画像形成を行なう場合、画像欠陥の1種として干渉縞という画像ムラが生じることがある。これは、レーザーや発光ダイオード(LED)による書き込み光が、電子写真感光体の基体表面や塗布膜界面で反射干渉し、塗布膜の微妙な膜厚差により電荷発生層に作用する光強度にムラが生じることで、感度が部位により変化することに起因する。
この干渉縞欠陥を防止する方策としては、基体表面を粗面化する方法が有効であり、各種粗面化法が提案されている(特許文献3〜9)。
特開平11−202519号公報 特開平6−273962号公報 特開2000−105481号公報 特開平6−138683号公報 特開2001−296679号公報 特開平5−224437号公報 特開平8−248660号公報 特開平6−138683号公報 特開平1−123246号公報
しかしながら、基体表面の粗度を大きくしすぎると、基体の粗さが基体上に形成される塗布膜厚の均一性に悪影響を及ぼしたり、基体にバリが生じ局所的に塗布膜厚の薄い部分が生じ、画像上で黒点、黒すじ、色点などの画像欠陥を生じることがある。
また、下引き層中に分散された酸化チタン等の金属酸化物粒子は、レーザーやLEDなどによる書き込む光を散乱させる点において干渉縞を緩和させる効果がある。しかし、黒点や色点などの画像欠陥を低減させるために該金属酸化物粒子が一次粒子に近い形に分散されると、下引き層による干渉縞緩和効果が少なくなり、画像上の干渉縞が増加する。さらに、干渉縞を低減させるために基体表面を著しく粗面化すると、黒点、色点、黒すじなどの画像欠陥を増加させる結果となる。
このように、すべての画像欠陥をバランスよく低減させるという点で未だ性能的に不十分な点が多かった。
本発明は、前記の電子写真技術の背景を鑑みて創案されたもので、黒点、色点、干渉縞などの画像欠陥が発現し難い高性能の電子写真感光体、及び、それに用いる導電性基体の製造方法、並びに、それを用いた画像形成装置及び電子写真カートリッジを提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題に関し鋭意検討した結果、下引き層中の酸化チタン粒子の粒度を特定範囲に管理することにより、異なる使用環境においても良好な電気特性を有し、黒点、色点などの画像欠陥の極めて発現し難い高品質な画像を形成することが可能であり、なおかつ、特定の範囲の表面粗さを有する導電性基体と組み合わせることにより干渉縞が発現し難い高画質な画像を形成することを見いだし、本発明に至った。
即ち、本発明の要旨は、表面の最大高さ粗さRzが0.8≦Rz≦2μmである導電性基体上に、金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含有する下引き層と、該下引き層上に形成された感光層とを有する電子写真感光体において、該下引き層をメタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に分散した液中の該金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、凝集体二次粒子の体積平均粒子径が0.1μm以下であって、且つ、凝集体二次粒子の累積90%粒子径が0.3μm以下であることを特徴とする、電子写真感光体に存する(請求項1)。
このとき、該導電性基体表面形状が切削加工により形成されていることが好ましい(請求項2)。
また、該導電性基体表面に微細な溝が形成され、該溝の形状が、該導電性基体表面を平面上に展開した場合に、曲線且つ不連続であることが好ましい(請求項3)。
さらに、該導電性基体表面に形成された溝が、格子状であることが好ましい(請求項4)。
また、該導電性基体の表面のクルトシスRkuが3.5≦Rku≦25であり、且つ、該導電性基体の表面に形成された溝幅Lが0.5μm≦L≦6.0μmであることが好ましい(請求項5)。
本発明の別の要旨は、前記の電子写真感光体が備える導電性基体の製造方法であって、可撓性材料を前記導電性基体表面に接触させ、前記導電性基体表面に対して相対的に移動させることを特徴とする、導電性基体の製造方法に存する(請求項6)。
このとき、前記導電性基体の表面が、予め、切削加工、しごき加工、研削加工、及び、ホーニング加工のいずれかの加工を施されていることが好ましい(請求項7〜10)。
また、前記可撓性材料としては、ブラシを用いることが好ましく(請求項11)、特に、砥粒を練り込んだ樹脂により形成されたブラシを用いることがより好ましい(請求項12)。
本発明の更に別の要旨は、前記の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した該電子写真感光体に対し像露光を行ない静電潜像を形成する像露光手段と、前記静電潜像をトナーで現像する現像手段と、前記トナーを被転写体に転写する転写手段とを備えることを特徴とする、画像形成装置に存する(請求項13)。
本発明の更に別の要旨は、前記の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した該電子写真感光体に対し像露光を行ない静電潜像を形成する像露光手段、前記静電潜像をトナーで現像する現像手段、前記トナーを被転写体に転写する転写手段、被転写体に転写されたトナーを定着させる定着手段、及び、該電子写真感光体に付着した前記トナーを回収するクリーニング手段の少なくとも一つを備えることを特徴とする、電子写真カートリッジに存する(請求項14)。
本発明によれば、黒点、色点、干渉縞などの画像欠陥が発現し難い高性能の電子写真感光体及びそれに用いる導電性基体、並びに、それを用いた画像形成装置及び電子写真カートリッジを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施形態の代表例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に、金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含有する下引き層と、該下引き層上に形成された感光層とを有して構成されたものである。また、本発明の電子写真感光体においては、導電性基体として所定の表面粗さを有するものを用いると共に、下引き層として所定の粒径分布を有する金属酸化物粒子を含むものを用いるようにしている。
[I.導電性基体]
[I−1.導電性基体の表面粗さ]
本発明に係る導電性基体は所定範囲の最大高さ粗さRzを有していて、これにより、干渉縞欠陥を防止できるようになっている。具体的には、本発明に係る導電性基体は、その表面の最大高さ粗さRzが、通常0.8μm以上、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは1.1μm以上、また、通常2μm以下、好ましくは1.8μm以下であり、より好ましくは1.6μm以下である。最大高さ粗さRzが小さすぎると反射光の散乱効果が不十分となる可能性があり、大きすぎると画像黒点等の欠陥が出やすくなることがある。なお、前記の最大高さ粗さRzは、JIS B 0601:2001で規定されている。また、ここでいう導電性基体の表面とは、導電性基体の表面の少なくとも一部をいうが、通常は、導電性基体の画像形成領域をいう。
表面の粗さが上記範囲の最大高さ粗さRzとなっている限り、本発明に係る導電性基体の表面形状に制限は無く、また、当該導電性基体の表面の粗面化の方法も任意である。
例えば、導電性基体の軸とほぼ直交する方向に溝を形成しても良い。このような溝は、切削加工により粗面化を行なった場合に形成されることが多い。しかし、この場合、感光体への書き込み光の反射光は基体軸と平行な特定の面内で散乱することになり、干渉縞抑制効果を十分に得られない可能性がある。
そこで、本発明に係る導電性基体の表面を粗面化するにあたっては、導電性基体の表面に、導電性基体表面を平面上に展開した場合に、曲線且つ不連続な形状となる微細な溝(以下適宜、「弧状溝」という)を形成することが好ましい。ここで、導電性基体表面を平面上に展開した場合に、曲線且つ不連続な形状とは、導電性基体表面に観察される溝を平面上に投影した際の形状を意味しており、当該形状となる微細な溝は、深さの変化等があるものの、開口部は基体表面内に存在し、実質上、基体表面と平行な面方向に曲線且つ不連続となる。弧状溝により粗面化された導電性基体を使用することで、導電性基体の表面における反射光の規則性は乱れ、塗布膜(即ち、下引き層や感光層)界面反射光との干渉も乱れる。これによって、干渉縞抑制効果を高くすることが可能となる。また、導電性基体の表面に直線状の溝を形成して粗面化を行なった場合には溝により散乱される反射光の方向は特定の角度方向となるが、弧状溝のように溝形状を曲線とすることにより散乱される反射光の方向は微妙に変化する。さらに、溝を不連続とすることにより溝の継目部分での反射光の方向が変化する。これらのことから、弧状溝による粗面化を行なえば導電性基体表面での反射光の方向が複雑になり、干渉縞を抑制する効果が高くなる。
また、弧状溝は、格子状に形成されていることが好ましい。即ち、導電性基体の表面に形成された弧状溝は通常は多数形成されるため、導電性基体の表面には弧状溝が多数形成されてなる溝模様が形成されることとなるが、この溝模様も、格子状となることが好ましい。これにより、導電性基体の表面形状の不規則性を一層高めることができるため、干渉縞をより安定して防止することができる。
本発明に係る導電性基体の表面の粗さの指標としては、前記の最大高さ粗さRzを満たせば他に制限は無いが、以下の条件を満たすことが好ましい。
即ち、本発明に係る導電性基体の表面のクルトシスRkuは、通常3.5以上、好ましくは4.2以上、より好ましくは4.5以上、また、通常25以下、好ましくは15以下、より好ましくは9以下である。クルトシスRkuは粗さ分布波形の尖りを示すものであり、このクルトシスRkuが前記範囲に収まることにより、画像形成時の画像欠陥を防ぐことが可能であり、且つ、導電性基体の実用上の生産性が良好となる。なお、クルトシスRkuは、JIS B 0601:2001に定められた方法により測定可能である。
クルトシスRkuは、弧状溝がまばらな状態では大きな値を取り、導電性基体の表面の粗面化が進行すると小さくなってゆく傾向がある。加工法により若干差はあるが、通常は、粗面化の進行に従いクルトシスRkuは次第に小さくなり3に近い数値に収束する。なお、例えば、ホーニング加工やブラスト加工のような技術で粗面化を行なった場合、クルトシスRkuは通常2.5〜3程度となることが多い。また、バイトを用いた切削加工による粗面化を行なった場合は、鋸歯状の凹凸が形成されることによりクルトシスRkuは通常2〜3程度となることが多い。
また、前記の弧状溝が形成された場合、当該弧状溝の溝幅Lは、通常0.5μm以上、好ましくは0.6μm以上、より好ましくは0.7μm以上、また、通常6.0μm以下、好ましくは4.0μm以下、より好ましくは3.0μm以下である。溝幅Lが狭過ぎると導電性基体の生産性が悪くなることがあり、広過ぎると導電性基体の表面の凹凸の深さも合わせて大きくなり、画像形成時に黒すじなどの画像欠陥が出やすくなることがある。
なお、溝幅Lは、光学顕微鏡にて倍率400倍で観察される導電性基体表面の任意の20本の溝について、それぞれ任意の5点の溝幅を測定し、得られる合計100ヶ所の溝幅値の算術平均値を溝幅Lとして測定することができる。
特に、本発明に係る導電性基体は、上述した最大高さ粗さRz、クルトシスRku及び溝幅Lが、いずれも上記の好ましい範囲に収まっていることが好ましい。即ち、本発明の導電性基体は、表面の最大高さ粗さRzが0.8≦Rz≦2μmであり、表面のクルトシスRkuが3.5≦Rku≦25であり、且つ、表面に形成された溝幅Lが0.5≦L≦6.0μmであることが特に好ましいのである。
[I−2.導電性基体の構成]
本発明の導電性基体としては、周知の電子写真感光体に採用されているものが使用できる。例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料からなるドラム、シートあるいはこれらの金属箔のラミネート物、蒸着物、あるいは表面にアルミニウム、銅、パラジウム、酸化すず、酸化インジウム等の導電性層を設けたポリエステルフィルム、紙等の絶縁性基体などが挙げられる。さらに、例えば、金属粉末、カーボンブラック、ヨウ化銅、高分子電解質等の導電性物質を適当なバインダー樹脂とともに塗布して導電処理したプラスチックフィルム、プラスチックドラム、紙、紙管等も挙げられる。また、例えば、金属粉末、カーボンブラック、炭素繊維等の導電性物質を含有し、導電性となったプラスチックのシートやドラムなども挙げられる。また、例えば、酸化スズ、酸化インジウム等の導電性金属酸化物で導電処理したプラスチックフィルムやベルトなども挙げられる。
中でも、アルミニウム等の金属で形成されたエンドレスパイプが好ましい。特にアルミニウム又はアルミニウム合金(以下、アルミニウムと総称することがある)のエンドレスパイプは、本発明にかかる導電性基体として好適に用いることができる。
[I−3.導電性基体の製造方法]
導電性基体を粗面化して、本発明に係る導電性基体を製造する方法は任意である。
一般的な粗面化の方法としては、例えば、旋盤等による切削加工により導電性基体の表面形状を形成し、導電性基体の表面に凹凸を形成する方法がある。この切削加工によって上記の最大高さ粗さRzを実現することが可能である。
ただし、切削加工により粗面化を行なう場合には、表面粗さの微妙な変化が干渉縞の有無に影響することがある。このため、切削加工により粗面化を行なう場合には、切削条件の維持管理に細心の注意を払うことになる。また、通常の切削加工の場合、上述したような、規則性の高い連続した溝が基体軸とほぼ直交する方向に形成されることが多い。
そこで、本発明に係る導電性基体の製造方法において、粗面化方法としては、可撓性材料を導電性基体表面に接触させ、導電性基体表面に対して相対的に移動させることで粗面化を行なうことが好ましい。以下、この粗面化方法について説明する。
まず、粗面化の対象となる導電性基体を用意する。導電性基体は上述したように任意であるが、中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金のエンドレスパイプが好ましい。
前記のエンドレスパイプを成形して製造する際に用いられる成形方法にも制限は無い。成形方法としては、例えば、押出加工、引抜加工、切削加工、しごき加工などが知られており、これらの複数の加工工程を組み合わせて最終的なエンドレスパイプが成形されることが多い。通常、最終の工程として切削加工やしごき加工が行なわれる。中でも、しごき加工による成形は生産性に優れているため、好ましい。しごき加工により導電性基体の成形を行なうようにすれば、切削加工により成形する場合に比べて、導電性基体の製造に要する時間を大幅に短縮することができる。
アルミニウムのエンドレスパイプは、前記のような通常の加工法により成形されたものをそのまま用いることができる。ただし、電子写真感光体として要求される機械的精度を満足するためには、粗面化を行なう前に、予め、しごき加工、切削加工、研削加工、ホーニング加工等の加工(事前加工)の少なくとも一つを行なって、ある程度導電性基体の表面に凹凸を形成させた後に、表面を所定の表面粗さ(前記の最大高さ粗さRz)に加工する手法により得られた導電性基体が好ましい。
また、アルミニウムのエンドレスパイプ以外の導電性基体を用いる場合にも、前記の事前加工を予め行ない、ある程度導電性基体の表面に凹凸を形成させた後に、弧状溝の形成を行なうようにすることが好ましい。このような事前加工を行なうことにより、導電性基体の生産性が向上する。即ち、事前処理の種類に応じて、導電性基体の表面に、軸方向、周方向などに延在する連続的又は断続的な溝を形成することが可能であるため、導電性基体の表面形状を、弧状溝のみを形成した場合に比べてより不規則にすることができ、これにより、より優れた干渉縞抑制効果を得ることが可能となる。
なお、導電性基体の成形時に行なう加工のうち、しごき加工や切削加工などの成形加工は、前記の事前加工としても作用することになる。
導電性基体を用意したら、当該導電性基体の表面に、可撓性材料を擦り材として接触させ、相対的に移動させることによって、弧状溝を形成する。擦り材が接触部位で変形することにより、接触開始から終了に至る間で擦り速度が変化するため溝形状は曲線となる。一般的に用いられる曲面の表面を有する導電性基体では、導電性基体と擦り材の回転軸を平行にして接触させない限り、溝形状は曲線となる。即ち、本発明に係る弧状溝を形成する際に、導電性基体と擦り材の回転軸は平行でない位置関係にある。
可撓性材料としては、例えば、ゴムや樹脂、スポンジ、ブラシ、布、不織布といったものが挙げられるがこの限りではない。また、弧状溝の生成効率を上げるために、これら可撓性材料に砥粒を入れたものが好ましく、特に、砥粒を練りこんだ樹脂により形成されているブラシが更に好ましい。
可撓性のほとんど無い砥石のようなものを擦り材として用いた場合、導電性基体の表面に深く傷が入る部位が生じることがある。細かな砥粒を用いることで溝を浅くできるが、この場合には生産性が低下するだけでなく、砥石が目詰まりする可能性がある。導電性基体としてアルミニウム又はその合金が用いられる場合があるが、目詰まりした研削粉は柔らかなアルミニウム又はその合金の表面に転写されやすいことから、異物欠陥となりやすい。また、砥石は接触部位での変形がほとんどないことから、溝長さは短く直線状となることが多い。
使用するブラシとしては、ナイロン等の樹脂に砥粒が練り込まれたものが好ましい。一般的に用いられる研削ブラシはブラシ材(いわゆる、「ブラシの毛」)の先端部での研削力を主に利用しているが、砥粒入りブラシでは、ブラシ材の胴部での研削を有効に活用できる。このため、接触部を広くすることができ、生産性も上がり、更にはブラシの弾性を活かし、凹凸が大きくなり過ぎず除去量も少なく抑えた穏やかな研削が可能となる。また、ブラシ材の柔軟性および接触部分が常時変化することにより目詰まりも生じにくい。この特徴を活かし、砥石研削の場合は目詰まりして使えないような、小粒径の砥粒を用いることも可能となり、表面粗さを容易に低く抑えることができるため、干渉縞以外の画像欠陥に対しても効果が高い。さらに、形成される弧状溝の不規則性が高いことも、干渉縞抑制に高い効果を与える。
また、上述した最大高さ粗さRz、クルトシスRku及び溝幅Lは、使用するブラシ材の長さ、硬さ、植え込み密度、ブラシに練り込まれる砥粒の粒径等の物性、並びに、ブラシの回転数、及びブラシを導電性基体に当接させる時間等の処理条件により制御することができる。
最大高さ粗さRzは、これらの中でも特に、ブラシに練り込まれる砥粒の粒径に大きく影響され、砥粒粒径が大きいとRzも大きく、砥粒粒径が小さいとRzも小さくなる傾向がある。このため、前記砥粒の粒径は、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは35μm以下のものを用いる。
また、クルトシスRkuは、ブラシが導電性基体に接触する頻度に関係があり、特にブラシの回転数、ブラシと導電性基体との処理時間及びブラシによる粗面化処理の処理回数により変化する。通常、処理開始当初はクルトシスRkuが大きく、処理を進めると小さくなってゆく。したがって、処理途中のクルトシスRkuを計測し、クルトシスRkuが上述した好適な範囲となった時点で処理を終えれば所望の弧状溝が形成された導電性基体を得ることができる。
さらに、粗面化処理を行なう際の条件は一定でもよく、変化させても良い。特に、異なる条件の処理を複数回行なえば、弧状溝を格子状に形成することができ、好ましい。
ところで、一般に、切削加工、研削加工、ホーニング加工等により導電性基体表面に凹凸を形成した場合、微細なバリが生じることが知られている。このバリは導電性基体上に下引き層や感光層を形成した際に局所的に下引き層や感光層の膜厚が薄い部分が形成されることになり、画像上で黒点、色点、黒すじなどの画像欠陥となることが多い。ところが、上述したように可撓性材料を擦り材として導電性基体表面に接触させ、相対的に移動させることにより、導電性基体表面のバリが除去される。したがって、本発明の導電性基体の粗面化方法によれば、もし事前処理によりバリが生じたとしても、最終的には導電性基体の品質は低下しないという利点も得られる。
以下、上述した粗面化方法について、例を示して具体的に説明する。
図1は、導電性基体の粗面化方法の一例を説明するための模式的な図である。導電性基体1は、内拡把持機構2により回転可能に把持され、内拡把持機構2の回転に伴って軸(以下適宜、「基体軸」という)1Aのまわりに回転されるようになっている。
可撓性材料で形成された擦り材であるホイール状ブラシ3は、移動可能かつ軸(以下適宜、「ブラシ軸」という)3Aのまわりに回転可能に、そのブラシ材が導電性基体1に接触しうるように配設されている。これにより、ブラシ3は、ブラシ軸3Aを中心として回転しながら、導電性基体1に対して相対的に移動できるようになっている。ブラシ3の移動方向は、導電性基体1の表面の画像形成領域にあたる部位がブラシ3と接することができる限り任意であるが、通常は、導電性基体1の軸方向と平行方向(図1中上下方向)に移動する。
本例のようなホイール状ブラシ3の場合、弧状溝(図2,3参照)を形成するためにブラシ3の回転軸(通常は、ブラシ軸3A)は導電性基体1に対して平行でない位置関係とすることが好ましい。即ち、導電性基体1とブラシ3との回転軸の傾きやブラシ偏摩耗による当たりの不均一により加工ムラが出るのを防ぐため、ブラシ3の回転軸(即ち、ブラシ軸3A)は導電性基体1の基体軸1Aに対して同一平面上ではない位置(ねじれの位置)に設定されることが好ましい。
これは、基体軸1Aとブラシ軸3Aとが平行な場合には、曲線且つ不連続な弧状溝を形成することが難しいからである。また、この場合には、ブラシ材の長さの差や密度差によりブラシ3に研磨力の不均一性(特に、ブラシ軸3Aの方向の不均一性)が生じ、当該不均一性がそのまま導電性基体1の表面に転写されることから、導電性基体1の表面の研磨状態も軸方向に不均一となりムラが生じることがあるためである。
なお、特開平9−114118号公報に開示されるような、ブラシ3或いは導電性基体1を軸方向に相対的に揺動させる技術によって局部的な加工ムラは改善するが、その場合でも、導電性基体1の軸方向全体で見た場合の加工ムラは生じることがある。
本例のような構成で弧状溝の形成をする場合には、ブラシ3を導電性基体1の表面に接触させ、ブラシ3を回転させながら導電性基体1の軸方向にブラシ3を移動させる。この際、導電性基体1も基体軸1Aを中心として回転させるようにする。なお、図1において、導電性基体1及びブラシ3の回転方向を矢印で示す。
これにより、ブラシ3が弾性変形しながら導電性基体1に接触するため、導電性基体1の表面には弧状溝が形成される。特に、図1のように基体軸1Aとブラシ軸3Aとが略直交するように配設した場合には、ブラシ3の回転数を低く且つ当たり代を小さく設定することで、導電性基体1を展開したときに、図2に示すような斜め方向の弧状溝が形成される。一方、ブラシ3の回転数を高く且つ当たり代を大きくすると、図3に示すような斜めの格子状の弧状溝が形成される。両者を比較すると、ブラシ3の回転数を高く且つ当たり代を大きくする方が、生産性が高まるため、より好ましい。
また、導電性基体1に対するブラシ3の相対的な移動は、通常は一回で十分であるが、複数回行なっても構わない。複数回移動させる場合、常に一方向へ移動しても構わないし、相対的に往復しても構わない。
なお、この例ではホイール状ブラシ3を用いたが、ブラシの形状に制限は無い。例えば、図4に示すようなカップ状ブラシ4などを用いてもよい。カップ状ブラシ4を用いた場合は、ブラシ軸4Aが基体軸1Aに対して平行でなければ、双方の軸1A,4Aが同一平面上にあっても構わない。なお、図4において、図1と同様の符号を用いて示す部位は、図1と同様のものを表わす。
また、図1に示したようなホイール状ブラシ3を用いる場合、ホイール状ブラシ3の構成に制限は無い。したがって、導電性基体1にブラシ材を千鳥植え込みしてなしても構わないが、より植え込み密度を上げるため、チャンネルブラシ4を軸材に巻き付ける等の方式により構成されたなされたものが好ましい。
さらに、図5のように複数のブラシ3を用いても良い。複数のブラシ3を用いることにより生産性は向上し、各ブラシ3の回転条件を変えることによって導電性基体1の表面をより複雑な形状の粗面とすることができるため、干渉縞抑制効果も更に向上させられる。なお、図5において、図1と同様の符号を用いて示す部位は、図1と同様のものを表わす。
ところで、導電性基体1の表面には研磨粉(例えば、削られた導電性基体1の粉など)が残留していることがある。また、ブラシ3が砥粒を含んでいる場合、当該砥粒がブラシ3から脱離し、導電性基体1の表面に残留することもある。したがって、粗面化を行なう時には、前記の研磨粉やブラシ3から脱離した砥粒等の微粒子を導電性基体1の表面から除去するために、洗浄液を掛ける、あるいは、洗浄液に浸漬しながら実施することが好ましい。洗浄液に制限は無く、有機系、水系等の各種洗浄剤を用いることができるが、微粒子の吸着を防ぐため、半導体洗浄で使用されているようなアンモニア添加水を使用することもできる。
さらに、粗面化により導電性基体1の表面には新生面が露出することから、粗面化後直ちに下引き層の塗布形成を行わない場合には、表面腐食を防ぐために洗浄液の代わりに加工油を用いて粗面化を実施し、導電性基体1の表面を保護することも可能である。このような場合も含め、粗面化後、下引き層の形成前に仕上げの洗浄を実施することが好ましく、更には下引き層形成前の導電性基体の洗浄工程において粗面化工程を組み込むことが、生産性を高める上でより好ましい。例えば、図6に示すように、洗浄ブラシ5の直下に粗面化用のブラシ3を組み込むことにより、粗面化直後に強力に物理洗浄することができ、導電性基体1の表面状態を清浄な状態を維持しつつ粗面化が可能となる。なお、図6において、図1と同様の符号を用いて示す部位は、図1と同様のものを表わす。
また、ここではブラシ3が移動することにより導電性基体1に対してブラシ3が相対的に移動するようにしたが、導電性基体1を移動させることで導電性基体1に対してブラシ3が相対的に移動するようにしてもよい。また、導電性基体1及びブラシ3の両方が移動することにより導電性基体1に対してブラシ3が相対的に移動するようにしてもよい。
[I−4.導電性基体についてのその他の事項]
導電性基体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化処理を施したものを用いてもよい。陽極酸化処理を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
[II.下引き層]
下引き層は、金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含有する層である。また、下引き層は、本発明の効果を著しく損なわない限りその他の成分を含有していてもよい。
本発明に係る下引き層は、導電性基体と感光層との間に設けられ、導電性基体と感光層との接着性の改善、導電性基体の汚れや傷のなどの隠蔽、不純物や表面物性の不均質化によるキャリヤ注入の防止、電気特性の不均一性の改良、繰り返し使用による表面電位低下の防止、画質欠陥の原因となる局所的な表面電位変動の防止等の機能の少なくともいずれか一つを有し、光電特性の発現に必須ではない層である。
[II−1.金属酸化物粒子]
[II−1−1.金属酸化物粒子の種類]
本発明に係る金属酸化物粒子としては、電子写真感光体に使用可能な如何なる金属酸化物粒子も使用することができる。
金属酸化物粒子を形成する金属酸化物の具体例を挙げると、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物;チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物などが挙げられる。これらの中でも、バンドギャップが2〜4eVの金属酸化物からなる金属酸化物粒子が好ましい。バンドギャップが小さすぎると、導電性基体からのキャリア注入が起こりやすくなり、黒点や色点などの画像欠陥が発生しやすくなる。また、バンドギャップが大きすぎると、電子のトラッピングにより電荷の移動が阻害されて、電気特性が悪化する可能性があるためである。
なお、金属酸化物粒子は、一種類の粒子のみを用いても良いし、複数の種類の粒子を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、金属酸化物粒子は、1種の金属酸化物のみから形成されているものを用いてもよく、2種以上の金属酸化物を任意の組み合わせ及び比率で併用して形成されているものでも良い。
前記の金属酸化物粒子を形成する金属酸化物の中でも、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素及び酸化亜鉛が好ましく、酸化チタン及び酸化アルミニウムがより好ましく、酸化チタンが特には好ましい。
また、金属酸化物粒子の結晶型は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。例えば、金属酸化物として酸化チタンを用いた金属酸化物粒子(即ち、酸化チタン粒子)の結晶型に制限は無く、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。また、酸化チタン粒子の結晶型は、前記の結晶状態の異なるものから、複数の結晶状態のものが含まれていてもよい。
さらに、金属酸化物粒子は、その表面に種々の表面処理を行なってもよい。例えば、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、またはステアリン酸、ポリオール、有機珪素化合物等の有機物などの処理剤による処理を施していてもよい。
特に、金属酸化物粒子として酸化チタン粒子を用いる場合には、有機珪素化合物により表面処理されていることが好ましい。有機珪素化合物としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン等のシリコーンオイル;メチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のオルガノシラン;ヘキサメチルジシラザン等のシラザン;ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。
また、金属酸化物粒子は、特に、下記式(i)の構造で表されるシラン処理剤で処理することが好ましい。このシラン処理剤は、金属酸化物粒子との反応性も良く良好な処理剤である。
Figure 0005194555
前記式(i)中、R1及びR2は、それぞれ独立してアルキル基を表す。R1及びR2の炭素数に制限は無いが、通常1以上、また、通常18以下、好ましくは10以下、より好ましくは6以下である。R1及びR2のうち好適なものの例を挙げると、メチル基、エチル基などが挙げられる。
また、前記式(i)中、R3は、アルキル基又はアルコキシ基を表わす。R3の炭素数に制限は無いが、通常1以上、また、通常18以下、好ましくは10以下、より好ましくは6以下である。R3のうち好適なものの例を挙げると、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
1〜R3の炭素数が多くなりすぎると金属酸化物粒子との反応性が低下したり、処理後の金属酸化物粒子の下引き層形成用塗布液中での分散安定性が低下する可能性がある。
なお、これらの表面処理された金属酸化物粒子の最表面は、通常、前記のような処理剤で処理されている。この際、上述した表面処理は、1つの表面処理のみを行なってもよく、2つ以上の表面処理を任意の組み合わせで行なってもよい。例えば、前記の式(i)で表わされるシラン処理剤による表面処理のその前に酸化アルミ、酸化珪素または酸化ジルコニウム等の処理剤などで処理されていても構わない。また、異なる表面処理を施された金属酸化物粒子を、任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
本発明に係る金属酸化物粒子のうち、商品化されているものの例を挙げる。ただし、本発明に係る金属酸化物粒子は、以下に例示される商品に限定されるものではない。
酸化チタン粒子の具体的な商品の例としては、表面処理を施していない超微粒子酸化チタン「TTO−55(N)」;Al23被覆を施した超微粒子酸化チタン「TTO−55(A)」、「TTO−55(B)」;ステアリン酸で表面処理を施した超微粒子酸化チタン「TTO−55(C)」;Al23とオルガノシロキサンで表面処理を施した超微粒子酸化チタン「TTO−55(S)」;高純度酸化チタン「CR−EL」;硫酸法酸化チタン「R−550」、「R−580」、「R−630」、「R−670」、「R−680」、「R−780」、「A−100」、「A−220」、「W−10」;塩素法酸化チタン「CR−50」、「CR−58」、「CR−60」、「CR−60−2」、「CR−67」;導電性酸化チタン「SN−100P」、「SN−100D」、「ET−300W」;(以上、石原産業株式会社製)等が挙げられる。また、「R−60」、「A−110」、「A−150」などの酸化チタン;をはじめ、Al23被覆を施した「SR−1」、「R−GL」、「R−5N」、「R−5N−2」、「R−52N」、「RK−1」、「A−SP」;SiO2、Al23被覆を施した「R−GX」、「R−7E」;ZnO、SiO2、Al23被覆を施した「R−650」;ZrO2、Al23被覆を施した「R−61N」;(以上、堺化学工業株式会社製)等も挙げられる。さらに、SiO2、Al23で表面処理された「TR−700」;ZnO、SiO2、Al23で表面処理された「TR−840」、「TA−500」の他、「TA−100」、「TA−200」、「TA−300」など表面未処理の酸化チタン;Al23で表面処理を施した「TA−400」(以上、富士チタン工業株式会社製);表面処理を施していない「MT−150W」、「MT−500B」;SiO2、Al23で表面処理された「MT−100SA」、「MT−500SA」;SiO2、Al23とオルガノシロキサンで表面処理された「MT−100SAS」、「MT−500SAS」(テイカ株式会社製)等も挙げられる。
また、酸化アルミニウム粒子の具体的な商品の例としては、「Aluminium Oxide C」(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
さらに、酸化珪素粒子の具体的な商品の例としては、「200CF」、「R972」(日本アエロジル社製)、「KEP−30」(日本触媒株式会社製)等が挙げられる。
また、酸化スズ粒子の具体的な商品の例としては、「SN−100P」(石原産業株式会社製)等が挙げられる。
さらに、酸化亜鉛粒子の具体的な商品の例としては「MZ−305S」(テイカ株式会社製)等が挙げられる。
[II−1−2.金属酸化物粒子の物性]
本発明に係る金属酸化物粒子については、その粒径分布に関し、以下の要件が成立する。即ち、本発明にかかる下引き層をメタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に分散した液(以下適宜、「下引き層測定用分散液」という)中の金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、体積平均粒子径が0.1μm以下であって、且つ、累積90%粒子径が0.3μm以下である。
以下、この点につき詳しく説明する。
〔金属酸化物粒子の体積平均粒子径について〕
本発明に係る金属酸化物粒子は、下引き層測定用分散液中で動的光散乱法により測定された体積平均粒子径が、0.1μm以下、好ましくは95nm以下、より好ましくは90nm以下である。また、前記の体積平均粒子径の下限に制限は無いが、通常20nm以上である。上記範囲を満たすことにより、本発明の電子写真感光体は、低温低湿下での露光−帯電繰り返し特性が安定し、得られる画像に黒点、色点などの画像欠陥が生じることを抑制することができる。
〔金属酸化物粒子の累積90%粒子径について〕
本発明に係る金属酸化物粒子は、下引き層測定用分散液中で動的光散乱法により測定された累積90%粒子径が、0.3μm以下、好ましくは0.25μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。また、前記の累積90%粒子径の下限に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上である。従来の電子写真感光体では、下引き層に、金属酸化物粒子が凝集することによってなる、下引き層の表裏を貫通できるほど粗大な金属酸化物粒子凝集体が含有され、当該粗大な金属酸化物粒子凝集体によって、画像形成時に欠陥が生じる可能性があった。さらに、帯電手段として接触式のものを用いた場合には、感光層に帯電を行なう際に当該金属酸化物粒子を通って感光層から導電性支持体に電荷が移動し、適切に帯電を行なうことができなくなる可能性もあった。しかし、本発明の電子写真感光体では、累積90%粒子径が非常に小さいため、前記のように欠陥の原因となるような大きな金属酸化物粒子が非常に少なくなる。この結果、本発明の電子写真感光体では、欠陥の発生、及び、適切に帯電できなくなることを抑制でき、高品質な画像形成が可能である。
〔体積平均粒子径及び累積90%粒子径の測定方法〕
本発明に係る金属酸化物粒子の前記体積平均粒子径及び前記累積90%粒子径は、下引き層を、メタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した混合溶媒(これが、粒度測定時の分散媒となる)に分散して下引き層測定用分散液を調製し、その下引き層測定用分散液中の金属酸化物粒子の粒度分布を動的光散乱法で測定することにより得られる値である。
動的光散乱法は、微小に分散された粒子のブラウン運動の速さを、粒子にレーザー光を照射してその速度に応じた位相の異なる光の散乱(ドップラーシフト)を検出して粒度分布を求めるものである。下引き層測定用分散液中における金属酸化物粒子の体積平均粒子径及び累積90%粒子径の値は、下引き層測定用分散液中で金属酸化物粒子が安定に分散しているときの値であり、下引き層形成後の下引き層内での粒径を意味していない。実際の測定では、前記の体積平均粒子径及び累積90%粒子径については、具体的には、動的光散乱方式粒度分析計(日機装社製、MICROTRAC UPA model:9340−UPA、以下UPAと略す)を用いて、以下の設定にて行なうものとする。具体的な測定操作は、上記粒度分析計の取扱説明書(日機装社製、書類No.T15−490A00、改訂No.E)に基づいて行なう。
・動的光散乱方式粒度分析計の設定
測定上限 :5.9978μm
測定下限 :0.0035μm
チャンネル数 :44
測定時間 :300sec.
粒子透過性 :吸収
粒子屈折率 :N/A(適用しない)
粒子形状 :非球形
密度 :4.20g/cm3(*)
分散媒種類 :メタノール/1−プロパノール=7/3
分散媒屈折率 :1.35
(*)密度の値は二酸化チタン粒子の場合であり、他の粒子の場合は、前記取扱説明書に記載の数値を用いる。
なお、分散媒であるメタノールと1−プロパノールとの混合溶媒(重量比:メタノール/1−プロパノール=7/3;屈折率=1.35)の使用量は、試料である下引き層測定用分散液のサンプル濃度指数(SIGNAL LEVEL)が0.6〜0.8になる量とする。
また、動的光散乱による粒度の測定は、25℃で行なうものとする。
本発明に係る金属酸化物粒子の体積平均粒子径及び累積90%粒子径とは、上記のように動的光散乱法により粒度分布を測定した場合に、金属酸化物粒子の全体積を100%として、上述した動的光散乱法により小粒径側から体積粒度分布の累積カーブを求めた時、その累積カーブが50%となる点の粒子径を体積平均粒子径(中心径:Median径)とし、累積カーブが90%となる点の粒子径を累積90%粒子径とする。
〔その他の物性〕
本発明に係る金属酸化物粒子の平均一次粒子径に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、本発明に係る金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは70nm以下、より好ましくは50nm以下である。
なお、この平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(Transmission electron microscope:以下適宜「TEM」という)により直接観察される粒子の径の算術平均値によって求めることが可能である。
また、本発明に係る金属酸化物粒子の屈折率にも制限はなく、電子写真感光体に用いることのできるものであれば、どのようなものも使用可能である。本発明に係る金属酸化物粒子の屈折率は、通常1.3以上、好ましくは1.4以上、また、通常3.0以下、好ましくは2.9以下、より好ましくは2.8以下である。
なお、金属酸化物粒子の屈折率は、各種の刊行物に記載されている文献値を用いることができる。例えば、フィラー活用辞典(フィラー研究会編,大成社,1994)によれば下記表1のようになっている。
Figure 0005194555
本発明の下引き層において、金属酸化物粒子とバインダー樹脂との使用比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、本発明の下引き層においては、バインダー樹脂1重量部に対して、金属酸化物粒子は、通常0.5重量部以上、好ましくは0.7重量部以上、より好ましくは1.0重量部以上、また、通常8重量部以下、好ましくは4重量部以下、より好ましくは3.8重量部以下、特に好ましくは3.5重量部以下の範囲で用いる。金属酸化物粒子がバインダー樹脂に対して少なすぎると得られる電子写真感光体の電気特性が悪化し、特に残留電位が上昇する可能性があり、多すぎると該電子写真感光体を用いて形成される画像に黒点や色点などの画像欠陥が増加する可能性がある。
[II−2.バインダー樹脂]
本発明の下引き層において使用されるバインダー樹脂としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。通常は、有機溶剤等の溶媒に可溶であって、且つ、下引き層が、感光層形成用の塗布液に用いられる有機溶剤等の溶媒に不溶であるか、溶解性の低く、実質上混合しないものを用いる。
このようなバインダー樹脂としては、例えば、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できる。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等のポリアミド樹脂は、良好な分散性および塗布性を示し好ましい。
ポリアミド樹脂としては、例えば、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン等を共重合させた、いわゆる共重合ナイロン;N−アルコキシメチル変性ナイロン、N−アルコキシエチル変性ナイロンのようにナイロンを化学的に変性させたタイプ等のアルコール可溶性ナイロン樹脂などを挙げることができる。具体的な商品としては、例えば「CM4000」「CM8000」(以上、東レ製)、「F−30K」「MF−30」「EF−30T」(以上、ナガセケムテック株式会社製)等が挙げられる。
これらポリアミド樹脂の中でも、下記式(ii)で表されるジアミンに対応するジアミン成分(以下適宜、「式(ii)に対応するジアミン成分」という)を構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂が特に好ましく用いられる。
Figure 0005194555
前記式(ii)において、R4〜R7は、水素原子または有機置換基を表す。m、nはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。なお、置換基が複数ある場合、それらの置換基は互いに同じでも良く、異なっていてもよい。
4〜R7で表される有機置換基として好適なものの例を挙げると、ヘテロ原子を含んでいても構わない炭化水素基が挙げられる。この中でも好ましいものとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基等のアリール基が挙げられ、更に好ましくはアルキル基、またはアルコキシ基である。特に好ましくは、メチル基、エチル基である。
また、R4〜R7で表される有機置換基の炭素数は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常20以下、好ましくは18以下、より好ましくは12以下、また、通常1以上である。炭素数が大きすぎると、下引き層形成用塗布液を用意する際に溶媒への溶解性が悪化し、また、溶解ができたとしても下引き層形成用塗布液としての保存安定性が悪化する傾向を示す。
前記式(ii)に対応するジアミン成分を構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂は、式(ii)に対応するジアミン成分以外の構成成分(以下適宜、単に「その他のポリアミド構成成分」という)を構成単位として含んでいてもよい。その他のポリアミド構成成分としては、例えば、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム類;1,4−ブタンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,20−アイコサンジカルボン酸等のジカルボン酸類;1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等のジアミン類;ピペラジン等などが挙げられる。この際、前記の共重合ポリアミド樹脂は、その構成成分を、例えば、二元、三元、四元等に共重合させたものが挙げられる。
前記式(ii)に対応するジアミン成分を構成成分として含む共重合ポリアミド樹脂がその他のポリアミド構成成分を構成単位として含む場合、全構成成分中に占める式(ii)に対応するジアミン成分の割合に制限は無いが、通常5mol%以上、好ましくは10mol%以上、より好ましくは15mol%以上、また、通常40mol%以下、好ましくは30mol%以下である。式(ii)に対応するジアミン成分が多すぎると下引き層形成用塗布液の安定性が悪くなる可能性があり、少なすぎると高温高湿度条件での電気特性の変化が大きくなり、電気特性の環境変化に対する安定性が悪くなる可能性がある。
前記の共重合ポリアミド樹脂の具体例を以下に示す。但し、具体例中、共重合比率はモノマーの仕込み比率(モル比率)を表す。
Figure 0005194555
前記の共重合ポリアミドの製造方法には特に制限はなく、通常のポリアミドの重縮合方法が適宜適用される。例えば溶融重合法、溶液重合法、界面重合法等の重縮合方法が適宜適用できる。また、重合に際して、例えば、酢酸や安息香酸等の一塩基酸;ヘキシルアミン、アニリン等の一酸塩基などを、分子量調節剤として重合系に含有させてもよい。
なお、バインダー樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、本発明に係るバインダー樹脂の数平均分子量にも制限は無い。例えば、バインダー樹脂として共重合ポリアミドを使用する場合、共重合ポリアミドの数平均分子量は、通常10000以上、好ましくは15000以上、また、通常50000以下、好ましくは35000以下である。数平均分子量が小さすぎても、大きすぎても下引き層の均一性を保つことが難しくなりやすい。
[II−3.その他の成分]
本発明の下引き層は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した金属酸化物粒子、バインダー樹脂及び溶媒以外の成分を含有していてもよい。例えば、下引き層には、その他の成分として添加剤を含有させてもよい。
添加剤としては、例えば、亜リン酸ソーダ、次亜リン酸ソーダ、亜リン酸、次亜リン酸やヒンダードフェノールに代表される熱安定剤、その他の重合添加剤、酸化防止剤などが挙げられる。なお、添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
[II−4.下引き層の物性]
〔膜厚〕
下引き層の膜厚は任意であるが、本発明の電子写真感光体の感光体特性及び塗布性を向上させる観点から、通常は0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上、また、通常20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下の範囲が好ましい。
〔表面粗さ〕
本発明に係る下引き層は、その表面形状に制限はないが、通常、面内2乗平均平方根粗さ(RMS)、面内算術平均粗さ(Ra)、面内最大粗さ(P−V)に特徴を有する。なお、これらの数値は、JIS B 0601:2001の規格における、二乗平均平方根高さ、算術平均高さ、最大高さ、の基準長さを基準面に拡張した数値であり、基準面における高さ方向の値であるZ(x)を用いて、面内2乗平均平方根粗さ(RMS)はZ(x)の二乗平均平方根を、面内算術平均粗さ(Ra)はZ(x)の絶対値の平均を、面内最大粗さ(P−V)はZ(x)の山高さの最大値と谷深さの最大値との和を、それぞれ表す。
本発明に係る下引き層の面内2乗平均平方根粗さ(RMS)は、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下の範囲にある。面内2乗平均平方根粗さ(RMS)が小さすぎると上層との接着性が悪化する可能性があり、大きすぎると上層の塗布膜厚均一性の悪化を招く可能性がある。
本発明に係る下引き層の面内算術平均粗さ(Ra)は、通常10nm以上、また、通常50nm以下の範囲にある。面内算術平均粗さ(Ra)が小さすぎると上層との接着性が悪化する可能性があり、大きすぎると上層の塗布膜厚均一性の悪化を招く可能性がある。
本発明に係る下引き層の面内最大粗さ(P−V)は、通常100nm以上、好ましくは300nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは800nm以下の範囲にある。面内最大粗さ(P−V)が小さすぎると上層との接着性が悪化する可能性があり、大きすぎると上層の塗布膜厚均一性の悪化を招く可能性がある。
なお、前記の表面形状に関する指標(RMS、Ra、P−V)の数値は、基準面内の凹凸を高精度に測定することが可能な表面形状分析装置により測定されれば、どのような表面形状分析装置により測定されても構わないが、光干渉顕微鏡を用いて高精度位相シフト検出法と干渉縞の次数計数を組み合わせて、試料表面の凹凸を検出する方法により測定することが好ましい。より具体的には、株式会社菱化システムのMicromapを用いて、干渉縞アドレッシング方式により、Waveモードで測定することが好ましい。
〔分散液とした場合の吸光度〕
また、本発明に係る下引き層は、該下引き層を結着しているバインダー樹脂を溶解できる溶媒に分散して分散液(以下適宜、「吸光度測定用分散液」という)とした場合に、通常は、該分散液の吸光度が特定の物性を示すものである。
吸光度測定用分散液の吸光度は、通常知られる分光光度計(absorption spectrophotometer)により測定することができる。吸光度を測定する際のセルサイズ、試料濃度などの条件は、使用する金属酸化物粒子の粒子径、屈折率などの物性により変化するため、通常、測定しようとする波長領域(本発明においては、400nm〜1000nm)において、検出器の測定限界を超えないように適宜試料濃度を調整する。
また、測定する際のセルサイズ(光路長)は、10mmの物を用いる。使用するセルは、400nm〜1000nmの範囲において実質的に透明であるものであればどのようなものを用いてもかまわないが、石英のセルを用いることが好ましく、特には試料セルと標準セルの透過率特性の差が特定範囲内にあるようなマッチドセルを用いることが好ましい。
本発明に係る下引き層を分散して吸光度測定用分散液とする際には、下引き層を結着するバインダー樹脂については実質上溶解せず、下引き層の上に形成されている感光層などを溶解できる溶媒により下引き層上の層を溶解除去した後、下引き層を結着するバインダー樹脂を溶媒に溶解することによって吸光度測定用分散液とすることができる。この際、下引き層を溶解できる溶媒としては、400nm〜1000nmの波長領域において大きな光吸収を持たない溶媒を使用すればよい。
下引き層を溶解できる溶媒の具体例を挙げると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール類が用いられ、特にはメタノール、エタノール、1−プロパノールが用いられる。また、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
特に、本発明に係る下引き層を、メタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒で分散した吸光度測定用分散液の、波長400nmの光に対する吸光度と波長1000nmの光に対する吸光度との差(吸光度差)は、以下の通りである。即ち、前記の吸光度差は、金属酸化物粒子の屈折率が2.0以上の場合には、通常0.3(Abs)以下、好ましくは0.2(Abs)以下である。また、金属酸化物粒子の屈折率が2.0未満の場合には、通常0.02(Abs)以下、好ましくは0.01(Abs)以下である。
なお、吸光度の値は、測定する液の固形分濃度に依存する。このため、吸光度の測定を行なう場合、前記分散液中の金属酸化物粒子の濃度が、0.003重量%〜0.0075重量%の範囲となるように分散することが好ましい。
〔下引き層の正反射率〕
本発明に係る下引き層の正反射率は、通常、本発明に特定の値を示す。本発明に係る下引き層の正反射率とは、導電性基体に対する、導電性基体上の下引き層の正反射率を示している。この下引き層の正反射率は、下引き層の膜厚によって変化するため、ここでは下引き層の膜厚を2μmとした場合の反射率として規定する。
本発明に係る下引き層は、下引き層が含有する金属酸化物粒子の屈折率が2.0以上の場合には、該下引き層が2μmである場合に換算した、該導電性基体の波長480nmの光に対する正反射に対する、該下引き層の波長480nmの光に対する正反射の比が、通常50%以上である。
一方、下引き層が含有する金属酸化物粒子の屈折率が2.0未満の場合には、該下引き層が2μmである場合に換算した、該導電性基体の波長400nmの光に対する正反射に対する、該下引き層の波長400nmの光に対する正反射の比が、通常50%以上である。
ここで、該下引き層が、複数種の屈折率2.0以上の金属酸化物粒子を含有する場合でも、複数種の屈折率2.0未満の金属酸化物粒子を含有する場合でも、上記と同様の正反射であるものが好ましい。また、該下引き層が、屈折率2.0以上の金属酸化物粒子、および屈折率2.0未満の金属酸化物粒子を同時に含んでいる場合では、屈折率2.0以上の金属酸化物粒子を含有する場合と同様に、該下引き層が2μmである場合に換算した、該導電性基体の波長480nmの光に対する正反射に対する、該下引き層の波長480nmの光に対する正反射の比が、上記の範囲(50%以上)であることが好ましい。
以上、下引き層の膜厚が2μmである場合について詳しく説明したが、本発明に係る電子写真感光体においては、下引き層の膜厚が2μmであることに限定されず、任意の膜厚であってかまわない。下引き層の膜厚が2μm以外の厚さの場合には、当該下引き層を形成する際に用いた下引き層形成用塗布液(後述する)を用いて、該電子写真感光体と同等の導電性基体上に、膜厚2μmの下引き層を塗布形成してその下引き層について正反射率を測定することができる。また、別の方法としては、当該電子写真感光体の下引き層の正反射率を測定し、その膜厚が2μmである場合に換算する方法がある。
以下、その換算方法について説明する。
特定の単色光が下引き層を通過し、導電性基体上で正反射し、ふたたび下引き層を通過して検出される場合に、光に対して垂直な厚さdLの薄い層を仮定する。
厚さdLの薄い層を通過後の光の強度の減少量−dIは、前記の層を通過する前の光の強度Iと、層の厚さdLとに比例すると考えられ、式で表現すると次のように書くことができる(kは定数)。
−dI=kIdL (A)
式(A)を変形すると次の様になる。
−dI/I=kdL (B)
式(B)の両辺をそれぞれ、I0からIまで、0からLまでの区間で積分すると次の様な式が得られる。なお、I0は入射光の強度を表わす。
log(I0/I)=kL (C)
式(C)は、溶液系に於いてLambertの法則と呼ばれるものと同じであり、本発明に於ける反射率の測定にも適用することができる。
式(C)を変形すると、
I=I0exp(−kL) (D)
となり、入射光が導電性基体表面に到達するまでの挙動が式(D)で表される。
一方、正反射率は、入射光の導電性基体に対する反射光を分母とするため、素管表面での反射率R=I1/I0を考える。ここで、I1は反射光の強度を表わす。
すると、式(D)に従って導電性基体表面に到達した光は、反射率Rを乗じられた上で正反射し、ふたたび光路長Lを通って下引き層表面に出ていく。すなわち、
I=I0exp(−kL)・R・exp(−kL) (E)
となり、R=I1/I0を代入し、さらに変形することで、
I/I1=exp(−2kL) (F)
という関係式を得ることができる。これが、導電性基体に対する反射率に対する、下引き層に対する反射率の値であり、これを正反射率と定義する。
さて、上述の通り、2μmの下引き層に於いて光路長は往復で4μmになるが、任意の導電性基体上の下引き層の反射率Tは、下引き層の膜厚L(このとき光路長2Lとなる)の関数であり、T(L)と表される。式(F)から、
T(L)=I/I1=exp(−2kL) (G)
が成立する。
一方、知りたい値はT(2)であるため、式(G)にL=2を代入して、
T(2)=I/I1=exp(−4k) (H)
となり、式(G)と式(H)を連立させてkを消去すると、
T(2)=T(L)2/L (I)
となる。
即ち、下引き層の膜厚がL(μm)であるとき、該下引き層の反射率T(L)を測定することで、下引き層が2μmである場合の反射率T(2)を相当の確度で見積もることができる。下引き層の膜厚Lの値は、粗さ計などの任意の膜厚計測装置で計測することができる。
[III.下引き層の形成方法]
本発明に係る下引き層の形成方法に制限は無い。ただし、通常は、金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含有する下引き層形成用塗布液を導電性基体の表面に塗布し、乾燥させて、下引き層を得る。
[III−1.下引き層形成用塗布液]
本発明に係る下引き層形成用塗布液は、下引き層を形成するために用いられるもので、金属酸化物粒子と、バインダー樹脂とを含有する。また、通常、本発明に係る下引き層形成用塗布液は溶媒を含有している。さらに、本発明に係る下引き層形成用塗布液は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、その他の成分を含有していてもよい。
[III−1−1.金属酸化物粒子]
金属酸化物粒子は、下引き層に含有される金属酸化物粒子として説明したものと同様である。
ただし、本発明に係る下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の粒径分布に関しては、通常は、以下の要件が成立する。即ち、本発明に係る下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される体積平均粒子径及び累積90%粒子径は、それぞれ、上述した下引き層測定用分散液中の金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される体積平均粒子径及び累積90%粒子径と同様である。
よって、本発明に係る下引き層形成用塗布液においては、金属酸化物粒子の体積平均粒子径が、通常0.1μm以下である(〔金属酸化物粒子の体積平均粒子径について〕を参照)。
本発明に係る下引き層形成用塗布液中において、金属酸化物粒子は、一次粒子として存在するのが望ましい。しかし、通常は、そのようなことは少なく、凝集して凝集体二次粒子として存在するか、両者が混在する場合がほとんどである。したがって、その状態での粒度分布が如何にあるべきかは非常に重要である。
そこで、本発明に係る下引き層形成用塗布液においては、下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の体積平均粒子径を前記のような範囲(0.1μm以下)とすることにより、下引き層形成用塗布液中での沈殿や粘性変化を少なくするようにした。これにより、結果として下引き層形成後の膜厚及び表面性が均一とすることができる。一方、金属酸化物粒子の体積平均粒子径が大きくなりすぎる場合(0.1μmを超える場合)は、逆に、下引き層形成用塗布液中での沈殿や粘性変化が大きくなり、結果として下引き層形成後の膜厚及び表面性が不均一となるため、その上層(電荷発生層など)の品質にも悪影響を及ぼす可能性がある。
また、本発明に係る下引き層形成用塗布液においては、金属酸化物粒子の累積90%粒子径が、通常0.3μm以下である(〔金属酸化物粒子の累積90%粒子径について〕参照)。
本発明に係る金属酸化物粒子が下引き層形成用塗布液中で球形の一次粒子として存在するのであれば、これは望ましいことではある。しかし、このような金属酸化物粒子は、実際には実用上得られるものではない。本発明者らは、仮に金属酸化物粒子が凝集していても、累積90%粒子径が十分に小さいものであれば、即ち、具体的には累積90%粒子径が0.3μm以下であれば、下引き層形成用塗布液としてゲル化や粘性変化が少なく、長期保存が可能であり、結果として下引き層形成後の膜厚及び表面性が均一となることを見出した。一方、下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子が大きすぎると、液中でのゲル化や粘性変化が大きく、結果として下引き層形成後の膜厚及び表面性が不均一となるため、その上層(電荷発生層など)の品質にも悪影響を及ぼすことになる可能性がある。
なお、前記の下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の体積平均粒子径及び累積90%粒子径の測定方法は、下引き層測定用分散液中の金属酸化物粒子を測定するものではなく、下引き層形成用塗布液を直接測定するものであり、以下の点で、上述した下引き層測定用分散液中の金属酸化物粒子の体積平均粒子径及び累積90%粒子径の測定方法とは異なる。なお、以下の点以外では、前記の下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の体積平均粒子径及び累積90%粒子径の測定方法は、下引き層測定用分散液中の金属酸化物粒子の体積平均粒子径及び累積90%粒子径の測定方法と同様である。
即ち、下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の体積平均粒子径及び累積90%粒子径の測定の際には、分散媒種類は、下引き層形成用塗布液に用いた溶媒となり、分散媒屈折率は、下引き層形成用塗布液に用いた溶媒の屈折率を採用する。また、下引き層形成用塗布液が濃すぎて、その濃度が測定装置の測定可能範囲外となっている場合には、下引き層形成用塗布液をメタノールと1−プロパノールとの混合溶媒(重量比:メタノール/1−プロパノール=7/3;屈折率=1.35)で希釈し、当該下引き層形成用塗布液の濃度を測定装置が測定可能な範囲に収めるようにする。例えば、上記のUPAの場合、測定に適したサンプル濃度指数(SIGNAL LEVEL)が0.6〜0.8になるように、メタノールと1−プロパノールとの混合溶媒で下引き層形成用塗布液を希釈する。このように希釈を行なったとしても、下引き層形成用塗布液中における金属酸化物粒子の体積粒子径は変化しないものと考えられるため、前記の希釈を行なった結果測定された体積平均粒子径及び累積90%粒子径は、下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の体積平均粒子径及び累積90%粒子径として取り扱うものとする。
また、本発明に係る下引き層形成用塗布液の吸光度は、通常知られる分光光度計(absorption spectrophotometer)により測定することができる。吸光度を測定する際のセルサイズ、試料濃度などの条件は、使用する金属酸化物粒子の粒子径、屈折率などの物性により変化するため、通常、測定しようとする波長領域(本発明においては、400nm〜1000nm)において、検出器の測定限界を超えないように適宜試料濃度を調整する。本発明では、下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の量が、0.0075重量%〜0.012重量%となるように試料濃度を調整する。試料濃度を調製するための溶媒には、通常、下引き層形成用塗布液の溶媒として用いられている溶媒が用いられるが、下引き層形成用塗布液の溶媒及びバインダー樹脂と相溶性があり、混合した場合に濁りなどを生じず、400nm〜1000nmの波長領域において大きな光吸収を持たないものであればどのようなものでも使用することができる。具体例を挙げれば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール類;トルエン、キシレン等の炭化水素類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などが用いられる。
また、測定する際のセルサイズ(光路長)は、10mmのものを用いる。使用するセルは、400nm〜1000nmの範囲において実質的に透明であるものであればどのようなものを用いてもかまわないが、石英のセルを用いることが好ましく、特には試料セルと標準セルの透過率特性の差が特定範囲内にあるようなマッチドセルを用いることが好ましい。
[III−1−2.バインダー樹脂]
下引き層形成用塗布液に含まれるバインダー樹脂は、下引き層に含有されるバインダー樹脂として説明したものと同様である。
ただし、下引き層形成用塗布液におけるバインダー樹脂の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下の範囲で用いる。
[III−1−3.溶媒]
本発明に係る下引き層形成用塗布液に用いる溶媒(下引き層用溶媒)としては、本発明に係るバインダー樹脂を溶解させうるものであれば、任意のものを使用することができる。この溶媒としては、通常は有機溶媒を使用する。溶媒の例を挙げると、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールまたはノルマルプロピルアルコール等の炭素数5以下のアルコール類;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、トリクレン、四塩化炭素、1,2−ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド等の含窒素有機溶媒類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などが挙げられる。
また、前記溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。さらに、単独では本発明に係るバインダー樹脂を溶解しない溶媒であっても、他の溶媒(例えば、上記例示の有機溶媒など)との混合溶媒とすることでバインダー樹脂を溶解可能であれば、使用することができる。一般に、混合溶媒を用いた方が塗布ムラを少なくすることができる。
本発明に係る下引き層形成用塗布液において、溶媒と、金属酸化物粒子、バインダー樹脂などの固形分との量比は、下引き層形成用塗布液の塗布方法により異なり、適用する塗布方法において均一な塗膜が形成されるように適宜変更して用いればよい。具体的な範囲を示すと、下引き層形成用塗布液中の固形分の濃度は、通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上、また、通常30重量%以下、好ましくは25重量%以下であることが、下引き層形成用塗布液の安定性及び塗布性の面から、好ましい。
[III−1−4.その他の成分]
下引き層形成用塗布液に含まれるその他の成分は、下引き層に含有されるその他の成分として説明したものと同様である。
[III−1−5.下引き層形成用塗布液の利点]
本発明に係る下引き層形成用塗布液は、保存安定性が高い。保存安定性の指標としては様々なものがあるが、例えば、本発明に係る下引き層形成用塗布液は、作製時と室温120日保存後の粘度変化率(即ち、120日保存後の粘度と作製時との粘度の差を、作製時の粘度で除した値)が、通常20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。なお、粘度は、E型粘度計(トキメック社製、製品名 ED)を用い、JIS Z 8803に準じた方法で測定できる。
また、本発明に係る下引き層形成用塗布液を用いれば、電子写真感光体を高品質に、且つ、高効率に製造することが可能である。
[III−2.下引き層形成用塗布液の製造方法]
本発明に係る下引き層形成用塗布液の製造方法に制限は無い。ただし、本発明に係る下引き層形成用塗布液は上述したように金属酸化物粒子を含有するものであり、金属酸化物粒子は下引き層形成用塗布液中に分散されて存在する。したがって、本発明に係る下引き層形成用塗布液の製造方法は、通常、金属酸化物粒子を分散させる分散工程を有する。
金属酸化物粒子を分散させるには、例えば、ボールミル、サンドグラインドミル、遊星ミル、ロールミルなどの公知の機械的な粉砕装置(分散装置)で、溶媒(以下適宜、分散時に使用する溶媒を「分散溶媒」という)中にて湿式分散すれば良い。この分散工程により、本発明に係る金属酸化物粒子は分散し、上述した所定の粒径分布を有するようになるものと考えられる。また、分散溶媒は、下引き層形成用塗布液に用いる溶媒を使用してもよく、それ以外の溶媒を使用してもよい。ただし、分散溶媒として下引き層形成用塗布液に用いる溶媒以外の溶媒を用いる場合は、分散後に金属酸化物粒子と下引き層形成用塗布液に用いる溶媒とを混合したり溶媒交換したりすることになるが、この際には、金属酸化物粒子が凝集して所定の粒径分布を有さなくならないようにしながら、前記の混合や溶媒交換などをすることが好ましい。
湿式分散の手法の中でも、特に、分散メディアを利用して分散するものが好ましい。
分散メディアを利用して分散する分散装置としては、公知のどのような分散装置を用いて分散しても構わない。分散メディアを利用して分散する分散装置の例を挙げると、ペブルミル、ボールミル、サンドミル、スクリーンミル、ギャップミル、振動ミル、ペイントシェーカー、アトライター等が挙げられる。これらの中でも、金属酸化物粒子を循環させて分散できるものが好ましい。また、分散効率、到達粒径の細かさ、連続運転の容易さ等の点から、例えばサンドミル、スクリーンミル、ギャップミル等の湿式攪拌ボールミルが特に好ましい。なお、前記のこれらのミルは、縦型、横型いずれのものでもよい。また、ミルのディスク形状は、平板型、垂直ピン型、水平ピン型等任意のものを使用できる。好ましくは、液循環型のサンドミルが用いられる。
なお、これらの分散装置は1種のみで実施しても良く、2種以上を任意に組み合わせて実施しても良い。
また、分散メディアを利用して分散を行なう際、所定の平均粒子径を有する分散メディアを使用することにより、下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の体積平均粒子径及び前記の累積90%粒子径を上述した範囲内に収めることができる。
即ち、本発明に係る下引き層形成用塗布液の製造方法において、湿式攪拌ボールミル中で金属酸化物粒子の分散を行なう場合には、当該湿式攪拌ボールミルの分散メディアとして、平均粒子径が、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常200μm以下、好ましくは100μm以下の分散メディアを使用する。小さな粒径の分散メディアの方が短時間で均一な分散液を与える傾向があるが、過度に粒径が小さくなると分散メディアの質量が小さくなりすぎて効率よい分散ができなくなる可能性がある。
また、前記のような平均粒子径を有する分散メディアを使用することが、前記の製造方法により、下引き層形成用塗布液中における金属酸化物粒子の体積平均粒粒子径及び累積90%粒子径を所望の範囲に収めることができる一因であると考えられる。したがって、湿式攪拌ボールミル中で上記の平均粒子径を有する分散メディアを用いて分散された金属酸化物粒子を用いて製造した下引き層形成用塗布液は、本発明に係る下引き層形成用塗布液の要件を良好に満たすのである。
分散メディアは通常、真球に近い形状をしているため、例えば、JIS Z 8801:2000等に記載のふるいによりふるい分けする方法や、画像解析により測定することにより平均粒子径を求めることができ、アルキメデス法により密度を測定することができる。具体的には例えば、(株)ニレコ製のLUZEX50等に代表される画像解析装置により、分散メディアの平均粒子径と真球度を測定することが可能である。
分散メディアの密度に制限は無いが、通常5.5g/cm3以上のものが用いられ、好ましくは5.9g/cm3以上、より好ましくは6.0g/cm3以上のものが用いられる。一般に、より高密度の分散メディアを使用して分散した方が短時間で均一な分散液を与える傾向がある。分散メディアの真球度としては、1.08以下のものが好ましく、より好ましくは1.07以下の真球度を持つ分散メディアを用いる。
分散メディアの材質としては、前記のスラリーが含有する分散溶媒に不溶、且つ、比重が前記スラリーより大きなものであって、スラリーと反応したり、スラリーを変質させたりしないものであれば、公知の如何なる分散メディアも使用することができる。その例としては、クローム球(玉軸受用鋼球)、カーボン球(炭素鋼球)等のスチール球;ステンレス球;窒化珪素球、炭化珪素、ジルコニア、アルミナ等のセラミック球;窒化チタン、炭窒化チタン等の膜でコーティングされた球などが挙げられる。これらの中でもセラミック球が好ましく、特にはジルコニア焼成ボールが好ましい。より具体的には、特許第3400836号公報に記載のジルコニア焼成ビーズを用いることが特に好ましい。
なお、分散メディアは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、前記湿式攪拌ボールミルの中でも、特に、筒形のステータと、ステータの一端に設けられるスラリーの供給口と、ステータの他端に設けられるスラリーの排出口と、ステータ内に充填される分散メディア、及び、供給口より供給されるスラリーを攪拌混合するロータと、排出口に連結すると共に、回転可能に設けられ、遠心力の作用により分散メディアとスラリーとを分離し、スラリーを排出口より排出するためのセパレータとを備えるものを用いることが好ましい。
ここで、スラリーは、少なくとも金属酸化物粒子と分散溶媒とを含有している。
以下、この湿式攪拌ボールミルの構成につき、詳しく説明する。
ステータは、内部に中空部を有する筒形(通常は、円筒形状)の容器で、その一端にはスラリーの供給口が形成され、その他端にはスラリーの排出口が形成されている。さらに、内部の中空部には分散メディアが充填され、当該分散メディアによってスラリー中の金属酸化物粒子が分散されるようになっている。また、供給口からはステータ内にスラリーが供給され、ステータ内のスラリーは排出口からステータの外に排出されるようになっている。
また、ロータは、ステータの内部に設けられ、前記の分散メディアとスラリーとを攪拌混合するものである。なお、ロータのタイプとしては、例えば、ピン、ディスク、アニューラタイプなどがあるが、いずれのタイプのロータを用いても良い。
さらに、セパレータは、分散メディアとスラリーとを分離するものである。このセパレータは、ステータの排出口に連結するように設けられている。そして、ステータ内のスラリー及び分散メディアを分離し、スラリーをステータの排出口からステータの外部に送出するように構成されている。
また、ここで用いているセパレータは回転可能に設けられたものであり、望ましくはインペラタイプのものであって、セパレータの回転により生じる遠心力の作用によって分散メディアとスラリーとが分離されるようになっている。
なお、セパレータは、前記のロータと一体をなして回転するようにしてもよく、ロータとは別個に独立して回転するようにしても良い。
また、湿式攪拌ボールミルは、前記のセパレータの回転軸となるシャフトを備えていることが好ましい。さらに、このシャフトの軸心には、排出口と通ずる中空な排出路が形成されていることが好ましい。即ち、湿式攪拌ボールミルを、少なくとも、円筒形のステータと、ステータの一端に設けられるスラリーの供給口と、ステータの他端に設けられるスラリーの排出口と、ステータ内に充填される分散メディア、及び、供給口より供給されるスラリーを攪拌混合するロータと、排出口に連結すると共に、回転可能に設けられ、遠心力の作用により分散メディアとスラリーとを分離し、スラリーを排出口より排出するインペラタイプのセパレータと、セパレータの回転軸となるシャフトとを備えるように構成し、更に、シャフトの軸心に、排出口と通ずる中空な排出路が形成されていることが好ましい。
シャフトに形成された前記の排出路は、セパレータの回転中心と、ステータの排出口とを連通している。このため、前記の排出路を通って、セパレータによって分散メディアから分離されたスラリーが排出口に送り出され、排出口からステータの外部に排出されるようになっている。この際、前記の排出路はシャフトの軸心を通るが、軸心では遠心力が作用しないため、スラリーは運動エネルギーを有しない状態で排出される。このために運動エネルギーが無駄に放出されず、無駄な動力が消費されなくなる。
このような湿式攪拌ボールミルは、横向きでもよいが、分散メディアの充填率を多くするために縦向きとすることが好ましい。この際、排出口はミル上端に設けられることが好ましい。さらに、この際には、セパレータも分散メディア充填レベルより上方に設けるのが望ましい。
排出口をミル上端に設ける場合には、供給口はミル底部に設けられることになる。この場合、より好ましい態様としては、供給口を、弁座と、弁座に昇降可能に嵌合し、弁座のエッジと線接触が可能なV形、台形或いはコーン状の弁体とにより構成する。これにより、弁座のエッジと弁体との間に分散メディアが通過し得ないような環状のスリットを形成することができるようになる。したがって、供給口において、スラリーは供給されるが、分散メディアの落ち込みは防止できるようになる。また、弁体を上昇させることによりスリットを広げて分散メディアを排出させたり、或いは弁体を降下させることによりスリットを閉じてミルを密閉させることが可能である。更にスリットは弁体と弁座のエッジで形成されるため、スラリー中の粗粒子(金属酸化物粒子)が噛み込み難く、噛み込んでも上下に抜け出し易く詰まりを生じにくい。
また、弁体を振動手段により上下に振動させるようにすれば、スリットに噛み込んだ粗粒子をスリットより抜け出させることができるうえ、噛み込み自体が生じ難くなる。しかも弁体の振動によりスラリーに剪断力が加わって粘度が低下し、上記スリットへのスラリー通過量(即ち、供給量)を増加させることができる。弁体を振動させる振動手段に制限は無いが、例えば、バイブレータなどの機械的手段のほか、弁体と一体をなすピストンに作用する圧縮空気の圧力を変動させる手段、例えば往復動型の圧縮機、圧縮空気の吸排を切換える電磁切換弁等を用いることができる。
このような湿式攪拌ボールミルには、また、底部に分散メディアを分離するスクリーンと、スラリーの取出し口を設け、分散終了後、湿式攪拌ボールミル内に残留するスラリーを取り出せるようにするのが望ましい。
また、湿式攪拌ボールミルを縦置きにして、シャフトをステータの上端に軸支すると共に、ステータ上端のシャフトを支承する軸承部に、Oリングと、メイティングリングを有するメカニカルシールとを設け、更に、軸承部にOリングが嵌合する環状溝を形成して当該環状溝にOリングを装着するようにした場合には、当該環状溝の下側部に、下方に向かって拡開するテーパ状の切込みを形成することが好ましい。即ち、湿式攪拌ボールミルを、円筒形の縦型のステータと、ステータの底部に設けられるスラリーの供給口と、ステータの上端に設けられるスラリーの排出口と、ステータの上端に軸支され、モータ等の駆動手段によって回転駆動されるシャフトと、シャフトに固定され、ステータ内に充填される分散メディア及び供給口より供給されたスラリーを攪拌混合するピン、ディスク或いはアニューラタイプのロータと、排出口近くに設けられ、スラリーより分散メディアを分離するセパレータと、ステータ上端のシャフトを支承する軸承部に設けられるメカニカルシールとを備えて構成すると共に、メカニカルシールのメイティングリングと接触するOリングが嵌合する環状溝の下側部に下方に向かって拡開するテーパ状の切込みを形成することが好ましい。
前記の湿式攪拌ボールミルによれば、メカニカルシールを分散メディアやスラリーが運動エネルギーを殆ど有しない軸心部で、しかもそれらの液面レベルより上方のステータ上端に設けることにより、メカニカルシールのメイティングリングとOリング嵌合溝下側部との間に分散メディアやスラリーが入り込むのを大幅に減らすことができる。
その上、Oリングが嵌合する環状溝の下側部は、切込みにより下方に向かって拡開し、クリアランスが広がっているため、スラリーや分散メディアが入り込んで噛み込んだり、固化することによる詰まりを生じ難く、メイティングリングのシールリングへの追随が円滑に行なわれてメカニカルシールの機能維持が行なわれる。なお、Oリングが嵌合する嵌合溝の下側部は断面V形をなし、全体が薄肉となる訳ではないから、強度が損なわれることはないし、Oリングの保持機能が損なわれることもない。
また、特に、前記のセパレータは、対向する内側面にブレードの嵌合溝を備えた二枚のディスクと、前記嵌合溝に嵌合してディスク間に介在するブレードと、ブレードを介在させた前記ディスクを両側より挟持する支持手段とを備えて構成することが好ましい。即ち、前記湿式攪拌ボールミルとして、筒形のステータと、前記ステータの一端に設けられるスラリーの供給口と、前記ステータの他端に設けられる前記スラリーの排出口と、前記ステータ内に充填される前記分散メディア、及び、前記供給口より供給されるスラリーを攪拌混合するロータと、前記排出口に連結すると共に、前記ステータ内に回転可能に設けられ、遠心力の作用により前記分散メディアと前記スラリーとを分離し、前記スラリーを前記排出口より排出するためのセパレータとを備えて構成すると共に、前記セパレータに、対向する内側面にブレードの嵌合溝を備えた二枚のディスクと、前記嵌合溝に嵌合して前記ディスク間に介在する前記ブレードと、前記ブレードを介在させた前記ディスクを両側より挟持する支持手段とを備えさせることが好ましい。この際、好ましい態様において、支持手段は、段付軸をなすシャフトの段と、シャフトに嵌合してディスクを押さえる円筒状の押え手段とより構成され、シャフトの段と押え手段とでブレードを介在させたディスクを両側より挟み込んで支持するように構成される。このような湿式攪拌ボールミルにより、下引き層中の金属酸化物粒子が容易に前記の体積平均粒子径及び累積90%粒子径の範囲に収まることができるようになる。また、ここで、セパレータはインペラタイプの構成が好ましい。
以下、上述した縦型の湿式攪拌ボールミルの構成をより具体的に説明するため、湿式攪拌ボールミルの一実施形態を示して説明を行なう。ただし、本発明の下引き層用塗布液を製造するために使用される攪拌装置は、ここで例示するものに限定されない。
図7は、この実施形態の湿式攪拌ボールミルの構成を模式的に表わす縦断面図である。図7において、スラリー(図示省略)は、縦型湿式攪拌ボールミルに供給され、該ミルで分散メディア(図示省略)と共に攪拌されることにより粉砕されたのち、セパレータ14で分散メディアを分離してシャフト15の軸心に形成された排出路19を通って排出され、戻される経路(図示省略)を辿り、循環粉砕されるようになっている。
縦型湿式攪拌ボールミルは、図7に詳細に示されるように、縦向きの円筒形で、かつミル冷却のための冷却水が通されるジャケット16を備えたステータ17と、ステータ17の軸心に位置してステータ17の上部において回転可能に軸承されると共に、軸承部に図8(後述する)に示すメカニカルシールを備え、かつ上側部の軸心を中空な排出路19としたシャフト15と、シャフト15の下端部に径方向に突設されるピンないしディスク状のロータ21と、シャフト15の上部に固着され、駆動力を伝達するプーリ24と、シャフト15の上端の開口端に装着されるロータリージョイント25と、ステータ17内の上部近くにおいてシャフト15に固着されるメディア分離のためのセパレータ14と、ステータ17の底部にシャフト15の軸端に対向して設けられるスラリーの供給口26と、ステータ17の底部の偏心位置に設けられるスラリー取出し口29に設置される格子状のスクリーンサポート27上に取着され、分散メディアを分離するスクリーン28とからなっている。
セパレータ14は、シャフト15に一定の間隔を存して固着される一対のディスク31と、両ディスク31を連結するブレード32とよりなってインペラを構成し、シャフト15と共に回転してディスク31の間に入り込んだ分散メディアとスラリーに遠心力を付与し、その比重差により分散メディアを径方向外方に飛ばす一方、スラリーをシャフト15の軸心の排出路19を通って排出させるようになっている。
スラリーの供給口26は、ステータ17の底部に形成される弁座に昇降可能に嵌合する逆台形状の弁体35と、ステータ17の底部より下向きに突出する有底の円筒体36よりなり、スラリーの供給により弁体35が押し上げられると、弁座との間に環状のスリット(図示せず)が形成され、これよりスラリーがステータ17の内に供給されるようになっている。
原料供給時の弁体35は、円筒体36内に送り込まれたスラリーの供給圧によりミル内の圧力に抗して上昇し、弁座との間にスリットを形成するようになっている。
スリットでの詰まりを解消するため、弁体35が短い周期で上限位置まで上昇する上下動を繰返して噛み込みを解消できるようにしてある。この弁体35の振動は、常時行なっておいてもよいし、スラリー中に粗粒子が多量に含まれる場合に行なってもよく、また詰まりによってスラリーの供給圧が上昇したとき、これに連動して行なわれるようにしてもよい。
メカニカルシールは、図8に詳細に示されるように、シャフト15に固定されるシールリング100にステータ側のメイティングリング101をバネ102の作用により圧着し、ステータ17とメイティングリング101とのシールは、ステータ側の嵌合溝103に嵌合するOリング104によって行なうようになっているもので、図8において、Oリング嵌合溝103の下側部には、下向きに拡開するテーパ状の切込み(図示せず)が入れられ、嵌合溝103の下側部とメイティングリング101との間のクリアランス最小部分の長さaが狭く、メディアやスラリーが入り込んで固化し、メイティングリング101の動きが阻害されてシールリング100との間のシールが損なわれることのないようにしてある。
上記実施形態では、ロータ21とセパレータ14は同じシャフト15に固定されているが、別の実施形態では同軸上に配置した別々のシャフトに固定され、別個に回転駆動される。ロータとセパレータとを同じシャフトに取り付けた上記図示する実施形態においては、駆動装置が一つですむため構造が簡単になるのに対し、ロータとシャフトとを別々のシャフトに取り付けて、別々の駆動装置によって回転駆動させるようにした後者の実施形態では、ロータとセパレータとをそれぞれ最適な回転数で駆動させることができる。
図9に示すボールミルは、シャフト105を段付軸とし、シャフト下端よりセパレータ106を嵌挿し、ついでスペーサ107とディスクないしピン状のロータ108とを交互に嵌挿したのち、シャフト下端にストッパー109をネジ110により止着し、シャフト105の段105aとストッパー109とによりセパレータ106、スペーサ107及びロータ108を挟み込んで連結し固定したもので、セパレータ106は図10に示すように、内側に対向する面にそれぞれブレード嵌合溝114を形成した一対のディスク115と、両ディスク間に介在してブレード嵌合溝114に嵌合させたブレード116と、両ディスク115を一定の間隔に維持し、排出路111に通ずる孔112を形成した環状のスペーサ113とよりなってインペラを構成している。
なお、本実施形態で例示したような構造を有する湿式撹拌ボールミルとしては、具体的には例えば寿工業株式会社製のウルトラアペックスミルが挙げられる。
本実施形態の湿式攪拌ボールミルは以上のように構成されているので、スラリーの分散を行なう際には、以下のような手順により行なう。即ち、本実施形態の湿式攪拌ボールミルのステータ17内に分散メディア(図示せず)を充填し、外部動力により駆動されてロータ21及びセパレータ14が回転駆動される一方、スラリーが一定量、供給口26に送られる。これにより、弁座のエッジと弁体35との間に形成されるスリット(図示せず)を通してステータ7の内にスラリーが供給される。
ロータ21の回転によりステータ7内のスラリーと分散メディアとが攪拌混合されてスラリーの粉砕が行なわれる。また、セパレータ14の回転により、セパレータ14内に入り込んだ分散メディアとスラリーとが比重差により分離され、比重の重い分散メディアが径方向外方に飛ばされるのに対し、比重の軽いスラリーがシャフト15の軸心に形成された排出路19を通して排出され、原料タンクに戻される。粉砕がある程度進行した段階でスラリーの粒度を適宜測定し、所望粒度に達すると、一旦原料ポンプを停止し、ついでミルの運転を停止し、粉砕を終了する。
また、湿式攪拌ボールミルを用いて金属酸化物粒子を分散させる場合、湿式攪拌ボールミル内に充填する分散メディアの充填率に制限は無く、金属酸化物粒子を所望の粒度分布を有するようになるまで分散を行なうことができれば、任意である。ただし、前記のような縦型湿式攪拌ボールミルを用いて金属酸化物粒子を分散させる場合には、湿式攪拌ボールミル内に充填される分散メディアの充填率は、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、また、通常100%以下、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である。
金属酸化物粒子を分散させるのに適用される湿式攪拌ボールミルは、セパレータがスクリーンやスリット機構であってもよいが、前記のように、インペラタイプのものが望ましく、縦型であることが好ましい。湿式攪拌ボールミルは縦向きにし、セパレータをミル上部に設けることが望まれるが、特に分散メディアの充填率を上記の範囲に設定すると、粉砕が最も効率的に行なわれるうえ、セパレータをメディア充填レベルより上方に位置させることが可能となり、分散メディアがセパレータに乗って排出されるのを防止することができる効果もある。
また、金属酸化物粒子を分散するのに適用される湿式攪拌ボールミルの運転条件は、下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の体積平均粒粒子径及び累積90%粒子径、下引き層形成用塗布液の安定性、該下引き層形成用塗布液を塗布形成してなる下引き層の表面形状、該下引き層形成用塗布液を塗布形成してなる下引き層を有する電子写真感光体の特性に影響する。特にスラリー供給速度と、ロータの回転速度が影響の大きいものとして挙げられる。
スラリーの供給速度は、湿式攪拌ボールミル中にスラリーが滞留する時間が関係するため、ミルの容積およびその形状の影響を受けるが、通常用いられるステータの場合、湿式攪拌ボールミル容積1リットル(以下、Lと略記することがある)あたり、通常20kg/時間以上、好ましくは30kg/時間以上、また、通常80kg/時間以下、好ましくは70kg/時間以下の範囲である。
また、ロータの回転速度は、ロータの形状やステータとの間隙などのパラメータの影響を受けるが、通常用いられるステータ及びロータの場合、ロータ先端部の周速は、通常5m/秒以上、好ましくは8m/秒以上、より好ましくは10m/秒以上、また、通常20m/秒以下、好ましくは15m/秒以下、より好ましくは12m/秒以下の範囲である。
さらに、分散メディアの使用量に制限は無い。ただし、分散メディアは、通常、スラリーに対し、容積比で、1〜5倍用いる。分散メディア以外に、分散後に容易に除去することのできる分散助剤を併用して実施することも可能である。分散助剤の例としては、食塩、ぼう硝等が挙げられる。
また、金属酸化物粒子の分散は、分散溶媒の共存下湿式で行なうことが好ましい。また、金属酸化物粒子を適切に分散することができることができる限り、分散溶媒以外の成分を共存させてもよい。このような共存させても良い成分としては、例えば、バインダー樹脂や各種添加剤などが挙げられる。
分散溶媒としては、特に制限されないが、前記の下引き層形成用塗布液に用いる溶媒を用いれば、分散後に溶媒交換などの工程を経る必要が無くなり好適である。これらの分散溶媒は何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用し、混合溶媒として用いても良い。
分散溶媒の使用量は、生産性の観点から、分散対象となる金属酸化物1重量部に対して、通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上、また、通常500重量部以下、好ましくは100重量部以下の範囲である。
また、機械的分散時の温度としては、溶媒(または混合溶媒)の凝固点以上、沸点以下で行なうことが可能であるが、製造時の安全性の面から、通常、10℃以上、200℃以下の範囲で行なわれる。
分散メディアを用いた分散処理後、スラリーから分散メディアを分離・除去し、更に、超音波処理を施すことが好ましい。超音波処理は、金属酸化物粒子に超音波振動を加えるものである。
振動周波数等の超音波処理時の条件には特に制限はないが、通常10kHz以上、好ましくは15kHz以上、また、通常40kHz以下、好ましくは35kHz以下の周波数の発振器により超音波振動を加える。
また、超音波発振機の出力に特に制限はないが、通常100W〜5kWのものが用いられる。
さらに、通常、多量のスラリーを大出力の超音波発振機による超音波で処理するよりも、少量のスラリーを小出力の超音波発振機による超音波で処理する方が分散効率が良い。そのため、一度に処理するスラリーの量は、通常1L以上、好ましくは5L以上、より好ましくは10L以上、また、通常50L以下、好ましくは30L以下、より好ましくは20L以下である。また、この場合の超音波発振機の出力は、好ましくは200W以上、より好ましくは300W以上、更に好ましくは500W以上、また、好ましくは3kW以下、より好ましくは2kW以下、更に好ましくは1.5kW以下である。
金属酸化物粒子に超音波振動を加える方法に特に制限はないが、例えば、スラリーを納めた容器中に超音波発振機を直接浸漬する方法、スラリーを納めた容器外壁に超音波発振機を接触させる方法、超音波発振機により振動を加えた液体の中にスラリーを納めた容器を浸漬する方法などが挙げられる。これらの方法の中でも、超音波発振機により振動を加えた液体の中にスラリーを納めた容器を浸漬する方法が好適に用いられる。
前記の場合、超音波発振機により振動を加える液体に制限は無いが、例えば、水;メタノール等のアルコール類;トルエンなどの芳香族炭化水素類;シリコーンオイルなどの油脂類が挙げられる。中でも、製造上の安全性、コスト、洗浄性などを勘案すれば、水を用いることが好ましい。
超音波発振機により振動を加えた液体の中にスラリーを納めた容器を浸漬する方法では、該液体の温度により超音波処理の効率が変化するため、該液体の温度を一定に保つことが好ましい。加えた超音波振動により振動を加えた液体の温度が上昇することがある。該液体の温度は、通常5℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、また、通常60℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下の温度範囲において超音波処理することが好ましい。
超音波処理する際にスラリーを納める容器に制限は無い。例えば、電子写真感光体用の感光層を形成するのに用いられる下引き層形成用塗布液を入れるのに通常用いられる容器であればどのような容器を使用することも可能である。具体例を挙げると、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂製の容器や、ガラス製容器、金属製の缶などが挙げられる。これらの中では金属製の缶が好ましく、特に、JIS Z 1602 に規定される、18リットル金属製缶が好適に用いられる。有機溶媒に侵され難く、衝撃に強いからである。
また、分散後のスラリーや、超音波処理後のスラリーは、粗大な粒子を除去するために、必要に応じて濾過した後使用される。この場合の濾過メディアとしては、通常濾過するために用いられる、セルロース繊維、樹脂繊維、ガラス繊維など、何れの濾過材を用いても構わない。濾過メディアの形態としては、濾過面積が大きく効率がよいことなどの理由により、芯材に各種繊維を巻き付けた、いわゆるワインドフィルターが好ましい。芯材としては従前公知の何れの芯材も用いることができるが、ステンレスの芯材、ポリプロピレンなどの、前記スラリーやスラリーが含有する溶媒に溶解しない樹脂製の芯材等が挙げられる。
このようにして得られたスラリーは、必要に応じて更に溶媒、バインダー樹脂(結着剤)、その他の成分(助剤等)などを含有させて、下引き層形成用塗布液とする。なお、金属酸化物粒子は、前記の分散又は超音波処理の工程前、工程中及び工程後のいずれかにおいて、下引き層形成用塗布液用の溶媒及びバインダー樹脂、並びに、必要に応じて用いられるその他の成分と混合すればよい。したがって、金属酸化物粒子と、溶媒、バインダー樹脂、その他の成分などとの混合は、必ずしも分散や超音波処理の後に行なわなくてもよい。
以上、説明した本発明に係る下引き層形成用塗布液の製造方法によれば、本発明に係る下引き層形成用塗布液を効率よく生産できる上に、より保存安定性が高い下引き層形成用塗布液を得ることができる。したがって、より高品質の電子写真感光体を効率よく得ることができる。
[III−3.下引き層の形成]
本発明に係る下引き層形成用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥することにより、本発明に係る下引き層を形成することができる。本発明に係る下引き層形成用塗布液を塗布する方法に制限は無いが、例えば、浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、スパイラル塗布、リング塗布、バーコート塗布、ロールコート塗布、ブレード塗布等が挙げられる。なお、これらの塗布法は1種のみで実施しても良く、2種以上を任意に組み合わせて実施しても良い。
スプレー塗布法としては、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、静電エアスプレー、静電エアレススプレー、回転霧化式静電スプレー、ホットスプレー、ホットエアレススプレー等がある。また、均一な膜厚を得るための微粒化度、付着効率等を考えると、回転霧化式静電スプレーにおいて、再公表平1−805198号公報に開示されている搬送方法、即ち、円筒状ワークを回転させながらその軸方向に間隔を開けることなく連続して搬送することを実施することが好ましい。これにより、総合的に高い付着効率で下引き層の膜厚の均一性に優れた電子写真感光体を得ることができる。
スパイラル塗布法としては、特開昭52−119651号公報に開示されている注液塗布機またはカーテン塗布機を用いた方法、特開平1−231966号公報に開示されている微小開口部から塗料を筋状に連続して飛翔させる方法、特開平3−193161号公報に開示されているマルチノズル体を用いた方法等がある。
浸漬塗布法の場合、通常、下引き層形成用塗布液の全固形分濃度は、通常1重量%以上、好ましくは10重量%以上であって、通常50重量%以下、好ましくは35重量%以下の範囲とし、粘度を好ましくは0.1cps以上、また、好ましくは100cps以下の範囲とする。なお、1cps=1×10-3Pa・sである。
塗布後、塗布膜を乾燥するが、必要且つ充分な乾燥が行なわれる様に乾燥温度、時間を調整することが好ましい。乾燥温度は、通常100℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、また、通常250℃以下、好ましくは170℃以下、より好ましくは140℃以下の範囲である。乾燥方法に制限は無く、例えば、熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機および遠赤外線乾燥機などを用いることができる。
[IV.感光層]
感光層の構成は、公知の電子写真感光体に適用可能な如何なる構成も採用することが可能である。具体例を挙げると、光導電性材料をバインダー樹脂中に溶解又は分散させた単層の感光層(即ち、単層型感光層)を有する、いわゆる単層型感光体;電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を積層してなる複数の層からなる感光層(即ち、積層型感光層)を有する、いわゆる積層型感光体などが挙げられる。一般に光導電性材料は、単層型でも積層型でも、機能としては同等の性能を示すことが知られている。
本発明の電子写真感光体の有する感光層は、公知のいずれの形態であっても構わないが、感光体の機械的物性、電気特性、製造安定性など総合的に勘案して、積層型の感光体が好ましい。特に、導電性基体上に下引き層と電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に積層した順積層型感光体がより好ましい。
[IV−1.電荷発生物質]
本発明で電子写真感光体に用いる電荷発生物質としては、従来から本用途に用いることが提案されている任意の物質を用いることができる。このような物質としては例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントアントロン系顔料、キナクリドン系顔料、シアニン系顔料、ピリリウム系顔料、チアピリリウム系顔料、インジゴ系顔料、多環キノン系顔料、スクエアリック酸系顔料などが挙げられる。特にフタロシアニン顔料、またはアゾ顔料が好ましい。フタロシアニン顔料は、比較的長波長のレーザー光に対して高感度の感光体が得られる点で、また、アゾ顔料は、白色光及び比較的短波長のレーザー光に対し十分な感度を持つ点で、それぞれ優れている。
本発明では、電荷発生物質としてフタロシアニン系化合物を用いる場合に高い効果を示し好ましい。フタロシアニン系化合物の具体例としては、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、またはその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニンなどが挙げられる。
また、フタロシアニン系化合物の結晶型にも制限は無いが、特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型,I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体などが好適である。なお、これらのフタロシアニンの中でも、A型(β型)、B型(α型)及びD型(Y型)チタニルフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。
さらに、これらのフタロシアニン系化合物の中でも、CuKα特性X線に対するX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)が、27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン、9.3°、13.2°、26.2°及び27.1°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン、9.2°、14.1°、15.3°、19.7°、27.1°に主たる回折ピークを有するジヒドロキシシリコンフタロシアニン、8.5°、12.2°、13.8°、16.9°、22.4°、28.4°及び30.1°に主たる回折ピークを示すジクロロスズフタロシアニン、7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に主たる回折ピークを示すヒドロキシガリウムフタロシアニン、並びに、7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°に回折ピークを示すクロロガリウムフタロシアニンが好ましい。これらの中でも、27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンが特に好ましく、この場合、9.5°、24.1°及び27.3°に主たる回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンがとりわけ好ましい。
また、電荷発生物質は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。したがって、前記のフタロシアニン系化合物も、単一の化合物のもののみを用いてもよいし、2種以上の化合物の混合あるいは混晶状態でもよい。ここでのフタロシアニン系化合物の混合あるいは混晶状態として、それぞれの構成要素を後から混合して用いてもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン系化合物の製造・処理工程において混合状態を生じさせたものでもよい。このような処理としては、例えば、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が挙げられる。混晶状態を生じさせるための方法に制限は無く、例えば、特開平10−48859号公報記載のように、2種類の結晶を混合後に機械的に摩砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。
また、フタロシアニン系化合物を用いる場合に、フタロシアニン系化合物以外の電荷発生物質を併用しても構わない。例えば、アゾ顔料、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、ベンズイミダゾール顔料、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、スクエアリウム塩等の電荷発生物質を混合して用いることができる。
電荷発生物質は、感光層形成用塗布液中に分散されるが、該感光層形成用塗布液中に分散される前に、予め前粉砕されていても構わない。前粉砕は、種々の装置を用いて行なうことができるが、通常はボールミル、サンドグラインドミルなどを用いて行なう。これらの粉砕装置に投入する粉砕媒体としては、粉砕処理に際して、粉砕媒体が粉化することがなく、かつ分散処理後は容易に分離できるものであればどのようなものでも使用することが可能で、例えば、ガラス、アルミナ、ジルコニア、ステンレス、セラミックス等の、ビーズやボールなどが挙げられる。前粉砕では、体積平均粒子径で500μm以下となるよう粉砕することが好ましく、より好ましくは250μm以下まで粉砕する。なお、電荷発生物質の体積平均粒子径は、当業者が通常用いるどのような方法で測定しても構わないが、通常は、通常沈降法や遠心沈降法で測定される。
[IV−2.電荷輸送物質]
電荷輸送物質に制限は無い。電荷輸送物質の例を挙げると、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリグリシジルカルバゾール、ポリアセナフチレン等の高分子化合物;ピレン,アントラセン等の多環芳香族化合物;インドール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、ピラゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアジアゾール誘導体等の複素環化合物;p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、N−メチルカルバゾール−3−カルバルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン系化合物;5−(4−(ジ−p−トリルアミノ)ベンジリデン)−5H−ジベンゾ(a,d)シクロヘプテン等のスチリル系化合物;p−トリトリルアミン等のトリアリールアミン系化合物;N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン等のベンジジン系化合物;ブタジエン系化合物;ジ−(p−ジトリルアミノフェニル)メタン等のトリフェニルメタン系化合物などが挙げられる。これらの中でも、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、スチリル系化合物、ブタジエン系化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、もしくはこれらが複数結合されたものが好適に用いられる。これらの電荷輸送物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
[IV−3.感光層用バインダー樹脂]
本発明の電子写真感光体に係る感光層は、光導電性材料を各種バインダー樹脂で結着した形で形成する。感光層用バインダー樹脂としては、電子写真感光体に用いることができる公知の如何なるバインダー樹脂も使用可能である。感光層用バインダー樹脂の具体例を挙げると、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリアクル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエステルポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体、及びその共重合体等が用いられる。またこれらの部分的架橋硬化物も使用できる。なお、感光層用バインダー樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
[IV−4.電荷発生物質を含有する層]
・積層型感光体
本発明の電子写真感光体がいわゆる積層型感光体である場合、電荷発生物質を含有する層は、通常、電荷発生層である。ただし、積層型感光体において、本発明の効果を著しく損なわない限り、電荷発生物質が電荷輸送層中に含まれていても構わない。
電荷発生物質の体積平均粒子径に制限は無い。ところで、通常、電荷発生物質は感光層形成用塗布液中に分散されるが、当該分散方法に制限は無く、例えば、ボールミル分散方法、アトライター分散法、サンドミル分散法等が挙げられる。この際、当該感光層形成用塗布液中における電荷発生物質の粒径は、通常0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下に微細化することが有効である。
また、電荷発生層の膜厚は任意であるが、通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、また、通常2μm以下、好ましくは0.8μm以下が好適である。
電荷発生物質を含有する層が電荷発生層である場合、当該電荷発生層中の電荷発生物質の使用比率は、電荷発生層に含まれる感光層用バインダー樹脂100重量部に対して、通常30重量部以上、好ましくは50重量部以上、また、通常500重量部以下、好ましくは300重量部以下である。電荷発生物質の使用量が少なすぎると電子写真感光体としての電気特性が十分ではなくなる可能性があり、多すぎると塗布液の安定性を損なう可能性がある。
さらに、電荷発生層には、成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、シリコーンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤を含有していてもよい。なお、これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
・単層型感光体
本発明の電子写真感光体がいわゆる単層型感光体である場合、後に記載する電荷輸送層と同様の配合割合の感光層用バインダー樹脂と電荷輸送物質とを主成分とするマトリックス中に、前記電荷発生物質が分散される。
単層型の感光層に使用する場合には、電荷発生物質の粒子径は十分小さいことが望ましい。このため、単層型の感光層では、電荷発生物質の体積平均粒子径では、通常0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下である。
単層型感光層の膜厚は任意であるが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは45μm以下である。
感光層内に分散される電荷発生物質の量は任意であるが、少なすぎると十分な感度が得られなくなる可能性があり、多すぎると帯電性の低下、感度の低下などが生じる可能性がある。このため、単層型感光層中の電荷発生物質の含有率は、通常0.5重量%以上、好ましくは1.0重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは45重量%以下である。
また単層型感光体の感光層も、成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、シリコーンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤を含有していてもよい。なお、これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
[IV−5.電荷輸送物質を含有する層]
本発明の電子写真感光体がいわゆる積層型感光体である場合、電荷輸送物質を含有する層は、通常、電荷輸送層である。電荷輸送層は、電荷輸送機能を有する樹脂単独で形成されても良いが、前記電荷輸送物質が感光層用バインダー樹脂中に分散または溶解された構成がより好ましい。
電荷輸送層の膜厚は任意であるが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、また、通常60μm以下、好ましくは45μm以下、より好ましくは27μm以下である。
一方、本発明の電子写真感光体がいわゆる単層型感光体である場合、単層型感光層は、電荷発生物質の分散されるマトリックスとして、前記電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散または溶解された構成が用いられる。
電荷輸送物質を含有する層に使用されるバインダー樹脂としては、上述した感光層用バインダー樹脂を使用することができる。中でも、特に電荷輸送物質を含む層に用いて好適なものの例を挙げると、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体、及びその共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂など、並びに、これらの部分的架橋硬化物などが挙げられる。なお、このバインダー樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、電荷輸送層及び単層型感光層において、前記バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、バインダー樹脂100重量部に対して、電荷輸送物質が、通常20重量部以上、好ましくは30重量部以上、より好ましくは40重量部以上、また、通常200重量部以下、好ましくは150重量部以下、より好ましくは120重量部以下の範囲で使用される。
さらに、電荷輸送物質を含有する層は、必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、レベリング剤、電子吸引性物質等の各種添加剤を含んでいてもよい。なお、これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
[IV−6.その他の層]
本発明の電子写真感光体は、上述した下引き層及び感光層以外にも、その他の層を有していてもよい。
例を挙げると、最表面層として従来公知の、熱可塑性あるいは熱硬化性ポリマーを主体とする表面保護層やオーバーコート層を設けてもよい。
[IV−7.層形成法]
感光体が有する下引き層以外の各層の形成方法に制限は無く、任意の方法を用いることができる。例えば、本発明に係る下引き層形成用塗布液で下引き層を形成する場合のように、層に含有させる物質を溶媒に溶解又は分散させて得られた塗布液(感光層形成用塗布液、電荷発生層形成用塗布液、電荷輸送層形成用塗布液など)を、例えば浸漬塗布方法、スプレー塗布方法、リング塗布方法等の公知の方法を用いて順次塗布し、乾燥させて形成される。この場合、塗布液は、必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
塗布液に用いる溶媒に制限は無いが、通常は有機溶媒を使用する。好ましい溶媒の例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、1−ヘキサノール、1,3−ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のエーテルケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の(ハロ)芳香族炭化水素類;酢酸メチル,酢酸エチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類が挙げられる。またこれらの溶媒の中でも特に、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、エーテルケトン類が、好適に用いられる。また、より好適なものとしては、トルエン、キシレン、1−ヘキサノール、1,3−ブタンジオール、テトラヒドロフラン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等が挙げられる。
前記の溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。特に2種以上を混合して併用することが好ましい溶媒の例としては、エーテル類、アルコール類、アミド類、スルホキシド類、スルホキシド類、エーテルケトン類などが挙げられるが、中でも1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類、1−プロパノール等のアルコール類が適している。特に好適には、エーテル類である。これは、特にオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生物質として塗布液を製造する際に、該フタロシアニンの結晶形安定化能、分散安定性などの面からである。
なお、塗布液に用いる溶媒の量に制限は無く、塗布液の組成や塗布方法などに応じて、適切な量を用いるようにすれば良い。
[V.本発明の電子写真感光体の利点]
本発明の電子写真感光体は、露光光の干渉による縞を防止しながら、黒点、色点、黒すじなどの、画像欠陥を発現させず、良好な画像を得ることができる。また、以下のような利点を得られる場合もある。
即ち、様々な使用環境下でも高い画質の画像を形成することが可能であり、しかも、耐久安定性に優れる。したがって、本発明の電子写真感光体は、画像形成に用いた場合、環境による影響を抑制しながら、高品質の画像を形成することが可能である。
さらに、従来の電子写真感光体では、下引き層に、酸化物粒子が凝集した粗大な金属酸化物粒子が含有され、当該粗大な金属酸化物粒子によって、画像形成時に欠陥が生じる可能性があった。さらに、帯電手段として接触式のものを用いた場合には、感光層に帯電を行なう際に当該金属酸化物粒子を通って感光層から導電性基体に電荷が移動し、適切に帯電を行なうことができなくなる可能性もあった。しかし、本発明の電子写真感光体では、平均粒径が非常に小さく、且つ、良好な粒径分布を有する金属酸化物粒子を用いた下引き層を備えているため、欠陥や、適切に帯電できなくなることを抑制でき、高品質な画像形成が可能である。
[VI.画像形成装置]
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を示す図11を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図11に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体201、帯電装置(帯電手段)202、露光装置(露光手段;像露光手段)203、現像装置(現像手段)204及び転写装置(転写手段)205を備えて構成され、更に、必要に応じてクリーニング装置(クリーニング手段)206及び定着装置(定着手段)207が設けられる。
また、本発明の画像形成装置では、感光体201として、上述した本発明の電子写真感光体を備えている。即ち、本発明の画像形成装置は、電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した該電子写真感光体に対し像露光を行ない静電潜像を形成する像露光手段と、前記静電潜像をトナーで現像する現像手段と、前記トナーを被転写体に転写する転写手段とを備える画像形成装置において、該電子写真感光体として、表面の最大高さ粗さRzが0.8≦Rz≦2μmである導電性基体上に、金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含有する下引き層と、該下引き層上に形成された感光層とを有する電子写真感光体であって、該下引き層をメタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に分散した液中の該金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、体積平均粒子径が0.1μm以下であって、且つ、累積90%粒子径が0.3μm以下であるものを備えているのである。
電子写真感光体201は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図11ではその一例として、円筒状の導電性基体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体201の外周面に沿って、帯電装置202、露光装置203、現像装置204、転写装置205及びクリーニング装置206がそれぞれ配置されている。
帯電装置202は、電子写真感光体201を帯電させるもので、電子写真感光体201の表面を所定電位に均一帯電させる。本発明の効果を有効に活用するには、帯電装置は、電気写真感光体201に対して接触配置することが好ましい。図11では帯電装置202の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ブラシ等の接触型帯電装置などがよく用いられる。
なお、電子写真感光体201及び帯電装置202は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下適宜、感光体カートリッジという)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されている。そして、例えば電子写真感光体201や帯電装置202が劣化した場合に、この感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、後述するトナーについても、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナーが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。更に、電子写真感光体201、帯電装置202、トナーが全て備えられたカートリッジを用いることもある。
露光装置203は、電子写真感光体201に対し露光(像露光)を行なって電子写真感光体201の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED(発光ダイオード)などが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば、波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長350nm〜600nmの短波長の単色光などで露光を行なえばよい。これらの中でも波長350nm〜600nmの短波長の単色光などで露光することが好ましく、より好ましくは波長380nm〜500nmの単色光で露光することである。
現像装置204は前記の静電潜像を現像するものである。その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式などの任意の装置を用いることができる。図11では、現像装置204は、現像槽241、アジテータ242、供給ローラ243、現像ローラ244、及び、規制部材245からなり、現像槽241の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置204に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
供給ローラ243は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ244は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケルなどの金属ロール、またはこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロールなどからなる。この現像ローラ244の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ244は、電子写真感光体201と供給ローラ243との間に配置され、電子写真感光体201及び供給ローラ243に各々当接している。供給ローラ243及び現像ローラ244は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ243は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ244に供給する。現像ローラ244は、供給ローラ243によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体201の表面に接触させる。
規制部材245は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅などの金属ブレード、またはこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材245は、現像ローラ244に当接し、ばね等によって現像ローラ244側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材245に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ242は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ243側に搬送する。アジテータ242は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法などを用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト状の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
転写装置205は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置205が電子写真感光体201に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置205は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体201に形成されたトナー像を転写材(被転写体,用紙,媒体)Pに転写するものである。本発明においては、転写装置205が転写材を介して感光体に接触配置される場合に効果的である。
クリーニング装置206について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置206は、感光体201に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。但し、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング装置206は無くても構わない。
定着装置207は、上部定着部材(定着ローラ)271及び下部定着部材(定着ローラ)272から構成され、定着部材271又は272の内部には加熱装置273が備えられている。なお、図11では、上部定着部材271の内部に加熱装置273が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材271,272は、ステンレス、アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にフッ素樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどの公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材271,272は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材271と下部定着部材272との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体201の表面(感光面)が、帯電装置202によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体201の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置203により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体201の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置204で行なう。
現像装置204は、供給ローラ243により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)245により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体201の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ244に担持しながら搬送して、感光体201の表面に接触させる。
現像ローラ244に担持された帯電トナーTが感光体201の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体201の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置205によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体201の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置206で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置207を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
なお、感光体201は、上記のように帯電装置202と組み合わせてカートリッジとして構成する場合、さらに、現像装置204を備えて構成することが好ましい。さらに、前記の感光体201に加えて、必要に応じて、帯電装置202、露光装置203、現像装置204、転写装置205、クリーニング装置206、及び定着装置207のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(電子写真カートリッジ)として構成し、この電子写真カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。即ち、本発明の電子写真カートリッジは、電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した該電子写真感光体に対し像露光を行ない静電潜像を形成する像露光手段、前記静電潜像をトナーで現像する現像手段、前記トナーを被転写体に転写する転写手段、被転写体に転写されたトナーを定着させる定着手段、及び、該電子写真感光体に付着した前記トナーを回収するクリーニング手段の少なくとも一つを備えた電子写真カートリッジであって、該電子写真感光体として、表面の最大高さ粗さRzが0.8≦Rz≦2μmである導電性基体上に、金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含有する下引き層と、該下引き層上に形成された感光層とを有する電子写真感光体であって、該下引き層をメタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に分散した液中の該金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、体積平均粒子径が0.1μm以下であって、且つ、累積90%粒子径が0.3μm以下であるものを備えているのである。
この場合、上記実施形態で説明したカートリッジと同様に、例えば電子写真感光体101やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
本発明の画像形成装置及び電気写真カートリッジによれば、高品質の画像を形成することができる。特に、従来は、転写装置5が転写材を介して感光体に接触配置される場合には画像の品質劣化が生じやすかったが、本発明の画像形成装置及び電気写真カートリッジはそのような品質劣化が生じる可能性が小さいため、効果的である。
以下、本発明について、実施例及び比較例を示して更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これらに限定されるものではない。なお、実施例の説明において「部」は断りがない限り、「重量部」を示す。
[実施例1]
[基体1]
最大高さ粗さRzが1.3μmとなるように多結晶ダイヤモンドバイトを用いた切削加工により外径φ30mm×長さ357mm×厚さ1.0mmのJIS H4040に規定されるA6063アルミ合金製の基体1を作製した。また、作製した基体1を一部取り置き、取り置いたものを用いて、基体1の面内算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz、及び、クルトシスRkuをそれぞれ測定した。具体的な測定方法としては、(株)東京精密社製の表面粗さ測定器「Surfcom 480A」を用い、JIS B0601:1994に従い測定された数値をJIS B0601:2001の規定に読み替えた。結果を表3に示す。
[下引き層用塗布液]
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業株式会社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、ヘンシェルミキサーにて混合して得られた表面処理酸化チタン50部と、メタノール120部を混合してなる原料スラリー1kgを、直径約100μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製 YTZ)を分散メディアとして、ミル容積約0.15Lの寿工業株式会社製ウルトラアペックスミル(UAM−015型)を用い、ロータ周速10m/秒、液流量10kg/時間の液循環状態で1時間分散処理し、酸化チタン分散液を作製した。
前記酸化チタン分散液と、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、および、ε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、出力1200Wの超音波発振器による超音波分散処理を1時間行ない、更に孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルター(アドバンテック製 マイテックス LC)により濾過し、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比が3/1であり、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒の重量比が7/1/2であって、含有する固形分の濃度が18.0重量%の下引き層形成用塗布液Aを得た。
Figure 0005194555
この下引き層形成用塗布液Aについて、前記のUPAを用いて測定した粒度分布(体積平均粒子径及び累積90%粒子径)を表2に示す。
下引き層形成用塗布液Aを、前記基体1上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が1.5μmとなるように塗布し、乾燥させて下引き層を形成した。下引き層の表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ、凝集物は殆ど観察されなかった。
[電荷発生層用塗布液]
電荷発生物質として、図12に示すCuKα特性X線に対する粉末X線回折スペクトルパターンを有するオキシチタニウムフタロシアニン20重量部と、1,2−ジメトキシエタン280重量部とを混合し、サンドグラインドミルで2時間分散処理を行ない、分散液を作製した。続いてこの分散液と、10重量部のポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)、253重量部の1,2−ジメトキシエタン、85重量部の4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2を混合し、更に234重量部の1,2−ジメトキシエタンを混合し、超音波分散機処理した後に、孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルター(アドバンテック社製 マイテックス LC)でろ過し、電荷発生層用塗布液1を作製した。この電荷発生層用塗布液1を、前記下引き層上に乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように、浸漬塗布により塗布、乾燥して電荷発生層を形成した。
[電荷輸送層用塗布液]
次にこの電荷発生層の上に、下記に示すヒドラゾン化合物56部と、
Figure 0005194555
下記に示すヒドラゾン化合物14部と、
Figure 0005194555
下記繰り返し構造を有するポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量 約4万)100部と、
Figure 0005194555
シリコーンオイル0.05重量部とを、テトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640重量部に溶解させた電荷輸送層用塗布液を、乾燥後の膜厚が17μmとなるように塗布し、室温において25分間風乾した。
さらに125℃において20分間乾燥して電荷輸送層を設けて電子写真感光体を作製した。この電子写真感光体を感光体P1とする。
このようにして得られた感光体P1に駆動用のフランジ部材を取り付け、キヤノン製モノクロレーザービーム式プリンターLBP−850のカートリッジに組み込み、画像を形成して目視により画像評価を実施した。その結果を表3に示す。なお、表3において、干渉縞、黒点及び黒スジについて、それぞれが、無かった場合は「○」、確認できるが使用上許容できる程度である場合は「△」、使用上許容できない程度であった場合は「×」で表示してある。
[実施例2]
外径φ60mmのPVC製円筒土台に、穴径φ5mm×穴間隔10mmの千鳥状に穴を明け、径φ0.45mm、粒度#500(平均粒径34μm)のアルミナ砥粒入りナイロン材(デュポン社製「タイネックスA」)を長さ25mmとなるよう植えたブラシを用い、外径φ30mm×長さ357mm×厚さ1.0mmのJIS H4040に規定されるA6063アルミ合金製の鏡面切削管(Ra0.03 Rz0.2)に対し、基体回転数200rpm、ブラシ回転数750rpm、当て代10mm、引き上げ速度5mm/秒、振り掛け水量1L/分の条件で粗面化加工を実施した。ここで、引き上げ速度は、溝の密度がまばらにならない程度に極力速くなるように設定した。
次に、粗面化加工した管を洗浄した。まず、キザイ(株)製の脱脂剤「NG−30」を濃度4重量%で溶解した60℃の液に5分間浸漬し、続いて3槽からなる常温の純水に順次1分間ずつ浸漬して脱脂剤を除去した後、82℃の純水に10秒浸漬させ、10mm/秒の速度で引き上げて湯上げ乾燥した。最後に150℃のクリーンオーブン中で10分間仕上げ乾燥を実施し、室温まで放冷した。この結果、基体表面には図3に示すような、曲線且つ不連続で、斜めの格子状の溝が形成された基体2を得た。
このようにして形成した基体2の一部は表面粗さ及び溝幅測定用として取り置き、別の洗浄の終了した基体2に実施例1と同様に下引き層及び感光層を形成し、感光体P2を得た。
このようにして得られた感光体P2を用いて、実施例1と同様に画像を形成して目視により画像評価を実施した。その結果を表3に示す。
また、取り置いていた基体2の面内算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz、及び、クルトシスRkuをそれぞれ実施例1と同様に測定した。さらに、基体2の表面に形成された溝の溝幅Lの最大値(横溝最大値)及び最小値(横溝最小値)を、光学顕微鏡にて観察、撮影した基体表面写真(400倍)からそれぞれ測定した。その結果も表3に示す。
[実施例3]
外径φ30mm×長さ357mm×厚さ1.0mmのJIS H4040に規定されるA3003アルミ合金製のしごき管を用いた以外は実施例2と同様に粗面化加工を行ない、基体3を得た。
このようにして形成した基体3の一部は表面粗さ及び溝幅測定用として取り置き、別の洗浄の終了した基体3に実施例1と同様に感光層を形成し、感光体P3を得た。
このようにして得られた感光体P3を用いて、実施例1と同様に画像を形成して目視により画像評価を実施した。その結果を表3に示す。
また、実施例2と同様にして、取り置いていた基体3の面内算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz、及び、クルトシスRkuをそれぞれ測定した。さらに、基体3の表面に形成された溝の溝幅Lの最大値(横溝最大値)及び最小値(横溝最小値)を、それぞれ測定した。その結果も表3に示す。
[実施例4]
特開平7−43922号公報に記載されているのと同様にセンタレス研削機を用いてRz1.0umとなるように研削を行なった、外径φ30mm×長さ357mm×厚さ1.0mmのJIS H4040に規定されるA3003アルミ合金製研削管を、ブラシ材を、径φ0.3mm、粒度#500(平均粒径34μm)のアルミナ砥粒入りナイロン材(旭化成(株)社製「サングリット」)とし、粗面化加工条件を、基体回転数250rpm、ブラシ回転数750rpm、当て代6mm、引き上げ速度5mm/秒、振り掛け水量1L/分の条件とした以外は実施例1と同様にし、基体表面に図3に示すような、曲線且つ不連続で、斜めの溝を形成し、基体4を得た。
このようにして形成した基体4の一部は表面粗さ及び溝幅測定用として取り置き、別の洗浄の終了した基体4に実施例1と同様に感光層を形成し、感光体P4を得た。
このようにして得られた感光体P4を用いて、実施例1と同様に画像を形成して目視により画像評価を実施した。その結果を表3に示す。
また、実施例2と同様にして、取り置いていた基体4の面内算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz、及び、クルトシスRkuをそれぞれ測定した。さらに、基体4の表面に形成された溝の溝幅Lの最大値(横溝最大値)及び最小値(横溝最小値)を、それぞれ測定した。その結果も表3に示す。
[実施例5]
外径φ30mm×長さ357mm×厚さ1.0mmのJIS H4040に規定されるA3003アルミ合金製の鏡面切削管(Ra=0.03μm;Rz=0.2μm)を特開平5−216261号公報の実施例4記載と同様の方法で乾式ホーニング処理を行なった。
この基体を、ブラシ材を、径φ0.3mm、粒度#1000(平均粒径16μm)のアルミナ砥粒入りナイロン材(旭化成(株)社製「サングリット」)とし、粗面化加工条件を、基体回転数250rpm、ブラシ回転数750rpm、当て代6mm、引き上げ速度10mm/秒、振り掛け水量1L/分の条件とした以外は実施例1と同様にし、基体表面に図3に示すような、曲線且つ不連続で、斜めの溝を形成し、基体5を得た。
このようにして形成した基体5の一部は表面粗さおよび溝幅測定用として取り置き、別の洗浄の終了した管に実施例1と同様に感光層を形成し、感光体P5を得た。
このようにして得られた感光体P5を用いて、実施例1と同様に画像を形成して目視により画像評価を実施した。その結果を表3に示す。
また、実施例2と同様にして、取り置いていた基体5の面内算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz、及び、クルトシスRkuをそれぞれ測定した。さらに、基体5の表面に形成された溝の溝幅Lの最大値(横溝最大値)及び最小値(横溝最小値)を、それぞれ測定した。その結果も表3に示す。
[実施例6]
外径φ30mm×長さ357mm×厚さ1.0mmのJIS H4040に規定されるA3003アルミ合金製のしごき管を用い、ブラシ材を、径φ0.3mm、粒度#1000(平均粒径16μm)のアルミナ砥粒入りナイロン材(旭化成(株)社製「サングリット」)とし、粗面化加工条件を、基体回転数300rpm、ブラシ回転数100rpm、当て代4mm、引き上げ速度1mm/秒、振り掛け水量1L/分の条件とした以外は実施例1と同様にし、基体表面に図2に示すような、曲線且つ不連続で、斜めの溝を形成し、基体6を得た。
この基体6を一部取り置き、取り置いたものを用いて、実施例2と同様にして、基体6の面内算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz、クルトシスRku、並びに、基体6の表面に形成された溝の溝幅Lの最大値(横溝最大値)及び最小値(横溝最小値)を、それぞれ測定した。その結果を表3に示す。
ウルトラアペックスミルで分散する際の分散メディアとして、直径約50μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製 YTZ)を用いた以外は、実施例1と同様にして下引き層形成用塗布液Bを作製し、実施例1と同様にして物性を測定した。結果を表2に示す。
下引き層形成用塗布液Bを、前記基体6上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が2μmとなるように塗布し、乾燥させて下引き層を形成した。下引き層の表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ、凝集物は殆ど観察されなかった。
この下引き層94.2cm2を、メタノール70g、1−プロパノール30gの混合溶
液に浸漬し、出力600Wの超音波発振器により5分間超音波処理して下引き層分散液を得て、該分散液中の金属酸化物粒子の粒度分布を実施例1と同様にUPAで測定したところ、体積平均粒子径は0.09μm、累積90%粒子径は0.14μmであった。
前記下引き層上に、実施例1と同様に電荷発生層及び電荷輸送層を形成し、感光体P6を得た。
この感光体P6の感光層94.2cm2を、テトラヒドロフラン100cm3に浸漬し、出力600Wの超音波発振器により5分間超音波処理して溶解除去した後、同部分をメタノール70g、1−プロパノール30gの混合溶液に浸漬し、出力600Wの超音波発振器により5分間超音波処理して下引き層分散液を得て、該分散液中の金属酸化物粒子の粒度分布を実施例1と同様のUPAで測定したところ、体積平均粒子径は0.09μm、累積90%粒子径は0.14μmであった。
このようにして得られた感光体P6を用いて、実施例1と同様に画像を形成して目視により画像評価を実施した。その結果を表3に示す。
[実施例7]
ウルトラアペックスミルで分散する際のロータ周速を12m/秒とした以外は、実施例6と同様にして下引き層形成用塗布液Cを作製し、実施例1と同様にして物性を測定した。結果を表2に示す。
下引き層形成用塗布液Cを、前記基体3上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が2μmとなるように塗布し、乾燥させて下引き層を形成した。下引き層の表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ、凝集物は殆ど観察されなかった。
前記下引き層上に実施例1と同様に電荷発生層及び電荷輸送層を形成し、感光体P7を得た。
このようにして得られた感光体P7を用いて、実施例1と同様に画像を形成して目視により画像評価を実施した。その結果を表3に示す。
[実施例8]
外径φ30mm×長さ357mm×厚さ1.0mmのJIS H4040に規定されるA3003アルミ合金製のしごき管を用い、ブラシ材を、径φ0.4mm、粒度#800(平均粒径20μm)のアルミナ砥粒入りナイロン材(東レモノフィラメント(株)社製「トレグリット」)とし、粗面化加工条件を、基体回転数250rpm、ブラシ回転数750rpm、当て代6mm、引き上げ速度8mm/秒、振り掛け水量1L/分の条件とした以外は実施例1と同様にし、基体表面に図3に示すような、曲線且つ不連続で、斜めの溝を形成し、基体7を得た。
この基体7を一部取り置き、取り置いたものを用いて、実施例2と同様にして、基体7の面内算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz、クルトシスRku、並びに、基体7の表面に形成された溝の溝幅Lの最大値(横溝最大値)及び最小値(横溝最小値)を、それぞれ測定した。その結果を表3に示す。
ウルトラアペックスミルで分散する際の分散メディアとして、直径約30μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製 YTZ)を用いた以外は、実施例7と同様にして下引き層形成用塗布液Dを作製し、実施例1と同様にして物性を測定した。結果を表2に示す。
下引き層形成用塗布液Dを、前記基体7上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が2μmとなるように塗布し、乾燥させて下引き層を形成した。下引き層の表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ、凝集物は殆ど観察されなかった。
前記下引き層上に、実施例1と同様に電荷発生層及び電荷輸送層を形成し、感光体P8を得た。
このようにして得られた感光体P8を用いて、実施例1と同様に画像を形成して目視により画像評価を実施した。その結果を表3に示す。
[実施例9]
外径φ30mm×長さ357mm×厚さ1.0mmのJIS H4040に規定されるA3003アルミ合金製のしごき管を用い、ブラシ材を、径φ0.45mm、粒度#500(平均粒径340μm)のアルミナ砥粒入りナイロン材(旭化成(株)社製「サングリット」)とし、粗面化加工条件を、基体回転数250rpm、ブラシ回転数750rpm、当て代6mm、引き上げ速度10mm/秒、振り掛け水量1L/分の条件とした以外は実施例1と同様にし、基体表面に図3に示すような、曲線且つ不連続で、斜めの溝を形成し、基体8を得た。
この基体8を一部取り置き、取り置いたものを用いて、実施例2と同様にして、基体8の面内算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz、クルトシスRku、並びに、基体8の表面に形成された溝の溝幅Lの最大値(横溝最大値)及び最小値(横溝最小値)を、それぞれ測定した。その結果を表3に示す。
下引き層形成用塗布液Dを、前記基体8上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が2μmとなるように塗布し、乾燥させて下引き層を形成した。下引き層の表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ、凝集物は殆ど観察されなかった。
前記下引き層上に、実施例1と同様に電荷発生層及び電荷輸送層を形成し、感光体P9を得た。
このようにして得られた感光体P9を用いて、実施例1と同様に画像を形成して目視により画像評価を実施した。その結果を表3に示す。
[実施例10]
外径φ30mm×長さ346mm×厚さ1.0mmのJIS H4040に規定されるA3003アルミ合金製の基体を用いて実施例2と同様に粗面化を行ない、基体9を得た。
この基体9を一部取り置き、取り置いたものを用いて、実施例2と同様にして、基体9の面内算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz、クルトシスRku、並びに、基体9の表面に形成された溝の溝幅Lの最大値(横溝最大値)及び最小値(横溝最小値)を、それぞれ測定した。その結果を表3に示す。
下引き層形成用塗布液Dを、前記基体9上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が2μmとなるように塗布し、乾燥させて下引き層を形成した。下引き層の表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ、凝集物は殆ど観察されなかった。
次に、この電荷発生層の上に、電荷輸送物質として下記式に示す構造を主体とする、特開2002−080432公報の実施例1に記載の製造方法により製造された組成物(A)を60部と、
Figure 0005194555
下記繰り返し構造を有するポリカーボネート樹脂100部(粘度平均分子量 約3万)と、
Figure 0005194555
シリコーンオイル0.05重量部とを、テトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640重量部に溶解させた塗布液を、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗布し、乾燥して電荷輸送層を設け、電子写真感光体P10を作製した。
作製した感光体P10を、パナソニックコミュニケーション株式会社製複写機(製品名:Workio DP1820)のカートリッジ(一体型カートリッジとして、2成分トナー、スコロトロン帯電部材、及びブレードクリーニング部材を有する)に装着し、画像を形成したところ、良好な画像を得ることができた。
[実施例11]
引き上げ速度1.3mm/秒とした以外は実施例10と同様にして基体10を得た。
この基体10を一部取り置き、取り置いたものを用いて、実施例2と同様にして、基体10の面内算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz、クルトシスRku、並びに、基体10の表面に形成された溝の溝幅Lの最大値(横溝最大値)及び最小値(横溝最小値)を、それぞれ測定した。その結果を表3に示す。
基体10に、実施例10と同様にして感光層を形成し、感光体P11を得た。
作製した感光体P11を、パナソニックコミュニケーション株式会社製複写機(製品名:Workio DP1820)のカートリッジに装着し、画像を形成したところ、良好な画像を得ることができた。
[実施例12]
外径φ30mm×長さ388mm×厚さ0.75mmのJIS H4040に規定されるA3003アルミ合金製のしごき管を用い、実施例2と同様に粗面化処理を行ない、基体表面に図3に示すような、曲線且つ不連続で、斜めの溝を形成し、基体11を得た。
この基体11を一部取り置き、取り置いたものを用いて、実施例2と同様にして、基体11の面内算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz、クルトシスRku、並びに、基体11の表面に形成された溝の溝幅Lの最大値(横溝最大値)及び最小値(横溝最小値)を、それぞれ測定した。その結果を表3に示す。
表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドの重量比を2/1とした以外は、実施例2と同様にして下引き層形成用塗布液Eを作製した。この下引き層形成用塗布液Eについて、実施例1と同様にして物性を測定した。結果を表2に示す。
下引き層形成用塗布液Eを、前記基体11上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が2μmとなるように塗布し、乾燥させて下引き層を形成した。下引き層の表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ、凝集物は殆ど観察されなかった。
前記下引き層上に実施例10と同様に電荷発生層及び電荷輸送層を形成し、感光体P12を得た。
作製した感光体を、パナソニックコミュニケーション株式会社製複写機(製品名:Workio C262)のカートリッジ(一体型カートリッジとして、2成分トナー、接触帯電ローラ部材、及びブレードクリーニング部材を有する)に装着し、画像を形成したところ、良好な画像を得ることができた。
[実施例13]
外径φ30mm×長さ388mm×厚さ0.75mmのJIS H4040に規定されるA3003アルミ合金製のしごき管を用い、実施例11と同様に粗面化処理を行ない、基体表面に図3に示すような、曲線且つ不連続で、斜めの溝を形成し、基体12を得た。
この基体12を一部取り置き、取り置いたものを用いて、実施例2と同様にして、基体12の面内算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz、クルトシスRku、並びに、基体12の表面に形成された溝の溝幅Lの最大値(横溝最大値)及び最小値(横溝最小値)を、それぞれ測定した。その結果を表3に示す。
前記基体12上に実施例12と同様に電荷発生層及び電荷輸送層を形成し、感光体P13を得た。
作製した感光体を、パナソニックコミュニケーション株式会社製複写機(製品名:Workio C262)のカートリッジに装着し、画像を形成したところ、良好な画像を得ることができた。
[比較例1]
表面の最大高さ粗さRzが0.6μmとなるように、多結晶ダイヤモンドバイトを用いた切削加工により外径φ30mm×長さ357mm×厚さ1.0mmのJIS H4040に規定されるA6063アルミ合金製製の基体13を作製した。
この基体13を一部取り置き、取り置いたものを用いて、実施例1と同様にして、基体13の面内算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz及びクルトシスRkuを、それぞれ測定した。その結果を表3に示す。
基体13に、実施例1と同様にして感光層を形成し、感光体P14を得た。
このようにして得られた感光体P14を用いて、実施例1と同様に画像を形成して目視により画像評価を実施した。その結果を表3に示す。
[比較例2]
表面処理酸化チタン50部と、メタノール120部とを混合し、直径約5mmのアルミナボール(株式会社ニッカトー製 HD)を用いてボールミルで5時間分散して得た分散スラリー液をそのまま用いて、ウルトラアペックスミルを用いて分散しなかった以外は、実施例1と同様にして下引き層形成用塗布液Fを作製した。
この下引き層形成用塗布液Fについて、実施例1と同様にして物性を測定した。結果を表2に示す。
下引き層形成用塗布液Fを、前記基体1上に、浸漬塗布により、乾燥後の膜厚が1.5μmとなるように塗布し、乾燥させて下引き層を形成した。下引き層の表面を走査型電子顕微鏡により観察をしたところ、凝集物が観察された。
この上に実施例1と同様にして電荷発生層および電荷輸送層を形成し、感光体P15を得た。
このようにして得られた感光体P15を用いて、実施例1と同様に画像を形成して目視により画像評価を実施した。その結果を表3に示す。
[比較例3]
外径φ30mm×長さ357mm×厚さ1.0mmのJIS H4040に規定されるA3003アルミ合金製のしごき管を用い、ブラシ材を、径φ0.3mm、粒度#1000(平均粒径16μm)のアルミナ砥粒入りナイロン材(旭化成(株)社製「サングリット」)とし、粗面化加工条件を、基体回転数200rpm、ブラシ回転数750rpm、当て代10mm、引き上げ速度5mm/秒、振り掛け水量1L/分の条件とした以外は実施例2と同様にし、曲線且つ不連続で、斜めの溝を形成し、基体14を得た。
この基体14を一部取り置き、取り置いたものを用いて、実施例2と同様にして、基体14の面内算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz、クルトシスRku、並びに、基体14の表面に形成された溝の溝幅Lの最大値(横溝最大値)及び最小値(横溝最小値)を、それぞれ測定した。その結果を表3に示す。
基体14に、実施例1と同様にして感光層を形成し、感光体P16を得た。
このようにして得られた感光体P16を用いて、実施例1と同様に画像を形成して目視により画像評価を実施した。その結果を表3に示す。
[比較例4]
基体3に、比較例2と同様にして感光層を形成し、感光体P17を得た。
このようにして得られた感光体P17を用いて、実施例1と同様に画像を形成して目視により画像評価を実施した。その結果を表3に示す。
[比較例5]
外径φ30mm×長さ346mm×厚さ1.0mmのJIS H4040に規定されるA3003アルミ合金製の基体を用いて実施例8と同様に粗面化を行い、基体15を得た。
この基体15を一部取り置き、取り置いたものを用いて、実施例2と同様にして、基体15の面内算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz、クルトシスRku、並びに、基体15の表面に形成された溝の溝幅Lの最大値(横溝最大値)及び最小値(横溝最小値)を、それぞれ測定した。その結果を表3に示す。
基体15に、実施例10と同様にして感光層を形成し、感光体P18を得た。
作製した感光体を、パナソニックコミュニケーション株式会社製複写機(製品名:Workio DP1820)のカートリッジに装着し、画像を形成したところ、良好な画像を得ることができた。
[比較例6]
外径φ30mm×長さ388mm×厚さ0.75mmのJIS H4040に規定されるA3003アルミ合金製のしごき管を用い、実施例8と同様に粗面化処理を行ない、基体16を得た。
この基体16を一部取り置き、取り置いたものを用いて、実施例2と同様にして、基体16の面内算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz、クルトシスRku、並びに、基体16の表面に形成された溝の溝幅Lの最大値(横溝最大値)及び最小値(横溝最小値)を、それぞれ測定した。その結果を表3に示す。
基体16に、実施例12と同様にして感光層を形成し、感光体P19を得た。
作製した感光体P19を、パナソニックコミュニケーション株式会社製複写機(製品名:Workio C262)のカートリッジに装着し、画像を形成したところ、良好な画像を得ることができた。
[比較例7]
表面の最大高さ粗さRzが1.4μmとなるように多結晶ダイヤモンドバイトを用いた切削加工により外径φ30mm×長さ357mm×厚さ1.0mmのJIS H4040に規定されるA6063アルミ合金製の基体17を作製した。
この基体17を一部取り置き、取り置いたものを用いて、実施例1と同様にして、基体17の面内算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz及びクルトシスRkuを、それぞれ測定した。その結果を表3に示す。
基体17に、実施例1と同様にして感光層を形成し、感光体P20を得た。
このようにして得られた感光体P20を用いて、実施例1と同様に画像を形成して目視により画像評価を実施した。その結果を表3に示す。
[比較例8]
外径φ30mm×長さ346mm×厚さ1.0mmのJIS H4040に規定されるA3003アルミ合金製のしごき管を用いて、ブラシ材を、径φ0.55mm、粒度#500(平均粒径34μm)のアルミナ砥粒入りナイロン材(デュポン社製「タイネックスA」)とし、粗面化加工条件を、基体回転数250rpm、ブラシ回転数750rpm、当て代6mm、引き上げ速度1.3mm/秒、振り掛け水量1L/分の条件とした以外は実施例2と同様にし、基体表面に曲線且つ不連続で、斜めの溝を形成し、基体18を得た。
この基体18を一部取り置き、取り置いたものを用いて、実施例2と同様にして、基体18の面内算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz、クルトシスRku、並びに、基体18の表面に形成された溝の溝幅Lの最大値(横溝最大値)及び最小値(横溝最小値)を、それぞれ測定した。その結果を表3に示す。
基体18に、実施例10と同様にして感光層を形成し、感光体P21を得た。
作製した感光体P21を、パナソニックコミュニケーション株式会社製複写機(製品名:Workio DP1820)のカートリッジに装着し、画像を形成したところ、良好な画像を得ることができた。
Figure 0005194555
Figure 0005194555
本発明は産業上の任意の分野において用いることができ、特に、電子写真方式のプリンター、ファクシミリ、複写機などに好適に用いることができる。
本発明に係る導電性基体の粗面化方法の一例を説明するための模式的な図である。 本発明に係る導電性基体の表面を平面に展開した場合の、溝の形状の一例を示す模式図である。 本発明に係る導電性基体の表面を平面に展開した場合の、溝の形状の一例を示す模式図である。 本発明に係る導電性基体を製造する方法の一例を説明するための模式的な図である。 本発明に係る導電性基体を製造する方法の一例を説明するための模式的な図である。 本発明に係る導電性基体を製造する方法の一例を説明するための模式的な図である。 本発明の一実施形態に係る湿式攪拌ボールミルの構成を模式的に表わす縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る湿式攪拌ボールミルで使用されるメカニカルシールを模式的に表わす拡大縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る湿式攪拌ボールミルの別の例を模式的に表わす縦断面図である。 図9に示す湿式攪拌ボールミルのセパレータを模式的に表わす横断面図である。 本発明の電子写真感光体を備えた画像形成装置の一実施態様の要部構成を示す概略図である。 本発明の実施例及び比較例の電子写真感光体において、電荷発生物質として用いたオキシチタニウムフタロシアニンの、CuKα特性X線に対する粉末X線回折スペクトルパターンである。
符号の説明
1 導電性基体
1A 導電性基体の軸
2 内拡把持機構
3 ホイール状ブラシ
3A ホイール状ブラシの軸
4 カップ状ブラシ
4A カップ状ブラシの軸
5 洗浄ブラシ
14 セパレータ
15 シャフト
16 ジャケット
17 ステータ
19 排出路
21 ロータ
24 プーリ
25 ロータリージョイント
26 原料スラリーの供給口
27 スクリーンサポート
28 スクリーン
29 製品スラリー取出し口
31 ディスク
32 ブレード
35 弁体
100 シーリング
101 メイティングリング
102 バネ
103 嵌合溝
104 Oリング
105 シャフト
106 セパレータ
107 スペーサ
108 ロータ
109 ストッパー
110 ネジ
111 排出路
112 孔
113 スペーサ
114 ブレード嵌合溝
115 ディスク
116 ブレード
201 感光体
202 帯電装置(帯電ローラ)
203 露光装置
204 現像装置
205 転写装置
206 クリーニング装置
207 定着装置
241 現像槽
242 アジテータ
243 供給ローラ
244 現像ローラ
245 規制部材
271 上部定着部材(定着ローラ)
272 下部定着部材(定着ローラ)
273 加熱装置
T トナー
P 転写材(用紙、媒体)

Claims (14)

  1. 表面の最大高さ粗さRzが0.8μm≦Rz≦2μmである導電性基体上に、金属酸化物粒子及びバインダー樹脂を含有する下引き層と、該下引き層上に形成された感光層とを有する電子写真感光体において、
    該下引き層をメタノールと1−プロパノールとを7:3の重量比で混合した溶媒に分散した液中の該金属酸化物粒子の動的光散乱法により測定される、凝集体二次粒子の体積平均粒子径が0.1μm以下であって、且つ、凝集体二次粒子の累積90%粒子径が0.3μm以下である
    ことを特徴とする、電子写真感光体。
  2. 該導電性基体表面形状が切削加工により形成されている
    ことを特徴とする、請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 該導電性基体表面に微細な溝が形成され、
    該溝の形状が、該導電性基体表面を平面上に展開した場合に、曲線且つ不連続である
    ことを特徴とする、請求項1記載の電子写真感光体。
  4. 該導電性基体表面に形成された溝が、格子状である
    ことを特徴とする、請求項3に記載の電子写真感光体。
  5. 該導電性基体の表面のクルトシスRkuが3.5≦Rku≦25であり、且つ、
    該導電性基体の表面に形成された溝幅Lが0.5μm≦L≦6.0μmである
    ことを特徴とする、請求項3又は請求項4記載の電子写真感光体。
  6. 請求項1及び請求項3〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体が備える導電性基体の製造方法であって、
    可撓性材料を前記導電性基体表面に接触させ、前記導電性基体表面に対して相対的に移動させる
    ことを特徴とする、導電性基体の製造方法。
  7. 前記導電性基体の表面が、予め切削加工されている
    ことを特徴とする、請求項6記載の導電性基体の製造方法。
  8. 前記導電性基体の表面が、予めしごき加工されている
    ことを特徴とする、請求項6又は請求項7記載の導電性基体の製造方法。
  9. 前記導電性基体の表面が、予め研削加工されている
    ことを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の導電性基体の製造方法。
  10. 前記導電性基体の表面が、予めホーニング加工されている
    ことを特徴とする、請求項6〜9のいずれか1項に記載の導電性基体の製造方法。
  11. 前記可撓性材料としてブラシを用いる
    ことを特徴とする、請求項6〜10のいずれか1項に記載の導電性基体の製造方法。
  12. 前記ブラシが、砥粒を練り込んだ樹脂により形成されている
    ことを特徴とする、請求項11に記載の導電性基体の製造方法。
  13. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
    該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
    帯電した該電子写真感光体に対し像露光を行ない静電潜像を形成する像露光手段と、
    前記静電潜像をトナーで現像する現像手段と、
    前記トナーを被転写体に転写する転写手段とを備える
    ことを特徴とする、画像形成装置。
  14. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
    該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した該電子写真感光体に対し像露光を行ない静電潜像を形成する像露光手段、前記静電潜像をトナーで現像する現像手段、前記トナーを被転写体に転写する転写手段、被転写体に転写されたトナーを定着させる定着手段、及び、該電子写真感光体に付着した前記トナーを回収するクリーニング手段の少なくとも一つを備える
    ことを特徴とする、電子写真カートリッジ。
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