JP5189717B2 - 防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体または水中構造物 - Google Patents

防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体または水中構造物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている防汚塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体または水中構造物に関し、さらに詳しくは塗膜にクラックが発生しにくく、塗膜付着性が良好で塗膜剥離が起きにくく、塗膜の加水分解速度が良好に制御され、防汚性、特に高汚損環境下における防汚性や長期防汚性に優れしかも加水分解による塗膜消耗速度を良好にコントロールでき、船底、水中構造物、漁網などへの水棲生物の付着を長期間効果的に防止し得るような自己研摩性防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体または水中構造物に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
船底、海洋構造物、漁網などは、水中に長期間さらされることにより、その表面に、貝、フジツボ等の動物類、ノリ(海苔)等の植物類、あるいはバクテリア類などの各種水棲生物が付着・繁殖すると、外観が損ねられ、その機能が害されることがある。
【0003】
特に船底にこのような水棲生物が付着・繁殖すると、船全体の表面粗度が増加し、船速の低下、燃費の拡大などを招くことがある。また、このような水棲生物を船底から取り除くには、多大な労力、作業時間が必要となる。また、バクテリア類が水中構造物などに付着・繁殖し、さらにそこにスライム(ヘドロ状物)が付着して腐敗を生じたり、さらに大型の付着生物が鉄鋼構造物などのような水中構造物の表面に付着・繁殖してその水中構造物の腐食防止用の塗膜などを損傷すると、その水中構造物の強度や機能が低下し寿命が著しく低下する等の被害が生ずる虞がある。
【0004】
従来では、このような被害を防止すべく、船底などには防汚性に優れた防汚塗料として、例えば、トリブチル錫メタクリレートとメチルメタクリレート等との共重合体と、亜酸化銅(Cu2O)とを含有するものが塗布されていた。この防汚塗料中の該共重合体は、海水中で加水分解されてビストリブチル錫オキサイド(トリブチル錫エーテル,Bu3Sn-O-SnBu3:Buはブチル基)あるいはトリブチル錫ハロゲン化物(Bu3SnX:Xはハロゲン原子)等の有機錫化合物を放出して防汚効果を発揮するとともに、加水分解された共重合体自身も水溶性化して海水中に溶解していく「加水分解性自己研磨型塗料」であるため、船底塗装表面は、樹脂残渣が残らず、常に活性な表面を保つことができる。
【0005】
しかしながら、このような有機錫化合物は、毒性が強く、海洋汚染、奇形魚類や奇形貝類の発生、食物連鎖による生態系への悪影響などが懸念され、これに代わり得るような「錫や錫系化合物を含有しない防汚塗料」の開発が求められている。
このような錫や錫系化合物を含有しない防汚塗料としては、例えば、▲1▼特開平4-264170号公報、▲2▼特開平4-264169号公報、▲3▼特開平4-264168号公報に記載のシリルエステル系防汚塗料が挙げられる。しかしながら、これらの防汚塗料には、▲4▼特開平6-157941号公報、▲5▼特開平6-157940号公報などにも教示されているように、防汚性に劣り、クラック、剥離が生ずるとの問題点がある。
【0006】
また、▲6▼特開平2-196869号公報には、トリメチルシリルメタクリレート、エチルメタクリレートおよびメトキシエチルアクリレートをアゾ系重合開始剤の存在下に共重合してなり、トリメチルシリル基によりブロックされたカルボン酸基を含有するブロックされた酸官能性コポリマー(A)と、多価カチオンの化合物(B)とを含有する防汚塗料が教示されている。しかしながら、この防汚塗料から得られる塗膜は、耐クラック性が充分満足しうるものではないという問題点がある。
【0007】
▲7▼特表昭60-500452号および▲8▼特開昭63-215780号公報には、(メタ)アクリル酸のトリアルキルシリルエステルなどのオルガノシリル基を有するビニル系単量体などを他のビニル系単量体と共重合させてなり、数平均分子量が3000〜40000の防汚塗料用樹脂が記載され、さらにオルトギ酸トリメチル等の有機系水結合剤、酸化第一銅等の防汚剤、ベンガラ等の顔料などを配合し得る旨記載されているが、上記▲5▼特開平6-157940号公報にも記載されているように、この防汚塗料用樹脂は、貯蔵中にゲル化しやすく、この防汚塗料から形成される塗膜は、耐クラック性、耐剥離性に劣るとの問題点がある。
【0008】
また上記▲7▼特表昭60-500452号に対応する特公平5-32433号公報には、毒物(a)と、式[(−CH2-CXCOOR)−(B)−:XはHまたはCH3であり、RはSiR’3又はSi(OR’)3でR’はアルキル基などを示し、Bはエチレン性不飽和単量体残基を示す]で表される反復単位を有し、特定の加水分解速度などを有する重合体結合材(b)とからなる防汚塗料が開示され、さらに溶剤、水感受性顔料成分、不活性顔料、充填剤、遅延剤を含有し得る旨記載されているが、この公報記載の防汚塗料から得られる塗膜は、耐クラック性に劣るとの問題点がある。
【0009】
▲8▼ 特開平7-18216号公報には、(A)分子内に、式:-COO-SiR123(R1〜R3は炭素数1〜18のアルキル基などを示す)で表されるトリ有機珪素エステル基を有する有機珪素含有重合体と、(B)銅または銅化合物とを主成分とする塗料組成物において、上記のA,B成分以外の必須成分として、(C)式:
【0010】
【化1】
Figure 0005189717
【0011】
(R4〜R6は水素原子、炭素数1〜18のアルコキシ基、シクロアルコキシ基、などを示し、R7は炭素数1〜18のアルキル基などを示し、nは1〜3の整数を示す)で表されるアルコキシ基含有珪素化合物を含有した塗料組成物が開示されている。しかしながら、該公報に記載の塗料組成物から得られる塗膜は、耐クラック性や高汚損環境下における防汚性に劣るとの問題点がある。なお、高汚損環境下とは、内海などの富栄養海域・環境や更にそのような海域で静置しあるいは船舶などでは運航〜停止を頻繁に繰り返したり10ノット以下程度の低速で稼動しているような状態を指す。
【0012】
なお、▲9▼ 特開平7-102193号公報には、式:X−SiR123(但し、式中R1〜R3はいずれもアルキル基、アリール基の中から選ばれた基であって、互いに同一の基であっても異なる基であってもよい。Xはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレノイルオキシ基またはフマロイルオキシ基である。)で表される単量体Aと、
式:Y−(CH2CH2O)n−R4(但しR4はアルキル基またはアリール基であり、Yはアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基であり、nは1〜25の整数である。)で表される単量体Bとを含む単量体混合物の共重合体と、防汚剤とを必須成分として含有する塗料組成物が開示されている。さらに、該防汚剤としては、無機化合物として亜酸化銅、銅粉等の銅化合物、硫酸亜鉛、酸化亜鉛等が挙げられ、金属を含む有機化合物としてオキシン銅等の有機銅系化合物;有機ニッケル系化合物;ジンクピリチオン等の有機亜鉛系化合物;が挙げられている。
【0013】
(10) 特開平8-199095号公報には、上記特開平7-102193号公報に記載の式(1):X−SiR123で表される単量体Aと、
式(2):Y−(CH)−R4(OR5)(但しR4はアルキル基、R5はアルキル基またはシクロアルキル基である。Yはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基またはフマロイルオキシ基であある。)で表される単量体Bと、必要によりこれらA、Bと共重合性の単量体Cとを含む単量体混合物の共重合体と、防汚剤とを必須成分として含有する塗料組成物が開示されている。さらに、該防汚剤としては、無機化合物として亜酸化銅、銅粉等の銅化合物、硫酸亜鉛、酸化亜鉛等が挙げられ、金属を含む有機化合物としてオキシン銅等の有機銅系化合物;有機ニッケル系化合物;ジンクピリチオン等の有機亜鉛系化合物;が挙げられている。
【0014】
(11) 特開平8-269388号公報には、式(1):X−SiR123
(但し、式中R1〜R3はいずれも炭素数1〜20の炭化水素基であって、互いに同一の基であっても異なる基であってもよい。Xはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基である。)で表される単量体Aと、式(2):Y−(CH2CH2O)n−R4(但しR4はアルキル基またはアリール基であり、Yはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基であり、nは1〜25の整数である。)で表される単量体Bとを含む単量体混合物の共重合体と、ビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)銅塩(:銅ピリチオン)とを、必須成分として含有する塗料組成物が開示されている。さらに、上記単量体Aとして、ジメチル−t−ブチルシリルアクリレート等が挙げられ、上記防汚剤としては、無機化合物として亜酸化銅、銅粉等の銅化合物、硫酸亜鉛、酸化亜鉛等が挙げられ、金属を含む有機化合物としてオキシン銅等の有機銅系化合物;有機ニッケル系化合物;ジンクピリチオン等の有機亜鉛系化合物;が挙げられている。また、添加可能な溶解速度調整剤としてロジン、ロジン誘導体などが挙げられている。
【0015】
(12) 特開平8-269389号公報には、トリオルガノシリル基を有する不飽和単量体と、分子内に三級アミノ基、四級アンモニウム基、窒素原子含有複素環またはアルコキシないしアリーロキシアルキレングリコール基を有するか、または活性水素を含有しないが分極性を有する不飽和単量体とを含む単量体混合物の共重合体と、防汚剤とを含む塗料組成物が開示されている。また、該組成物に配合可能な成分として、上記特開平8-269388号公報に記載の防汚剤と同様の防汚剤が挙げられている。
【0016】
(13) 特開平8-269390号公報には、式(1):X−SiR123
(但し、式中R1〜R3は何れもアルキル基、アリール基の中から選ばれた基であって、互いに同一の基であっても異なる基であってもよい。Xはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基である。)で表される単量体Aを用いた重合体と、
式(2):Y−(CH2CH2O)n−R4(但しR4はアルキル基またはアリール基であり、Yはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基であり、nは1〜25の整数である。)で表される単量体Bを用いた重合体と、
防汚剤とを含む塗料組成物が開示されている。上記防汚剤としては、上記特開平8-269388号公報に記載の防汚剤と同様の防汚剤が挙げられている。また、添加可能な成分としてロジン等の樹脂、沈降防止剤などが挙げられている。
【0017】
(14) 特開平8-277372号公報には、前記(11):特開平8-269388号公報に記載の式(1):X−SiR123で表される単量体Aと、同じく同公報に記載の式(2):Y−(CH2CH2O)n−R4で表される単量体Bとを含む単量体混合物の共重合体と、トリフェニルボロンピリジン錯体とを含有し、樹脂成分および海棲生物付着阻害剤が金属を含まない重合体および金属を含まない有機系阻害剤のみで構成された塗料組成物が開示されている。また、添加可能な溶解速度調整剤としてロジン、ロジン誘導体などが挙げられている。
【0018】
(15) 特開平10-30071号公報には、(A)ロジン、ロジン誘導体またはロジン金属塩からなるロジン系化合物の1種または2種以上と、(B)式(1):X−SiR123(但し、式中R1〜R3は何れもアルキル基、アリール基の中から選ばれた基であって、互いに同一の基であっても異なる基であってもよい。Xはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレノイルオキシ基、フマロイルオキシ基、イタコノイルオキシ基、シトラコノイルオキシ基である。)で表される単量体Mの1種または2種以の重合体、および/または、該単量体Mの1種または2種以上とそれ以外の重合性単量体の1種または2種以上との重合体からなる有機シリルエステル基含有重合体と、(C)防汚剤とを含む塗料組成物が開示されている。上記防汚剤としては、上記特開平8-269388号公報に記載の防汚剤と同様の防汚剤が挙げられている。また、添加可能な成分として、顔料、塩素化パラフィン、沈降防止剤などが挙げられている。
【0019】
しかしながらこれら▲9▼〜(15)に記載の塗料組成物では、得られる塗膜は耐クラック性に劣るか、あるいは得られる塗膜は耐クラック性、耐剥離性、塗膜付着性、防汚性特に高汚損環境下における防汚性や長期防汚性、加水分解等による自己研磨性などのバランスの点で充分でない。
【0020】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、塗膜にクラックが発生しにくく、塗膜付着性が良好で塗膜剥離が起きにくく、塗膜の加水分解速度が良好に制御され、防汚性能(防汚活性)に優れ、しかも加水分解による塗膜消耗速度を良好にコントロールでき、船底、水中構造物、漁網などへの水棲生物の付着を長期間効果的に防止し得るような自己研摩性(消耗性)に優れた防汚塗膜を形成できる防汚塗料組成物を提供することを目的としている。
【0021】
また本発明は、このような防汚塗料組成物から形成されている塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体または水中構造物を提供することを目的としている。
【0022】
【発明の概要】
本発明に係る防汚塗料組成物は、
(a)銅および/または銅化合物と、
(b)(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体と、
(c)[I]:H2C=CHO−R(式[I]中、Rはアルキル基またはシクロアルキル
基を示す。)で表されるビニルエーテルから誘導される成分単位を含有する
ビニルエーテル系(共)重合体と、
を含有することを特徴としている。
【0023】
本発明の上記防汚塗料組成物には、さらに、(d)酸化亜鉛、(e)無機脱水剤、(f)溶出促進成分、上記(a)成分以外の(a-1)有機防汚剤のうちの少なくとも何れか1種以上が含有されていても良い。
本発明においては、上記有機防汚剤(a-1)が、金属ピリチオン類、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルおよびピリジン−トリフェニルボランの群から選ばれた少なくとも1種の有機防汚剤であることが好ましい。
【0024】
本発明においては、上記有機防汚剤(a-1)が、金属ピリチオン類である場合、該金属ピリチオン類としては、銅ピリチオンおよび/またはジンクピリチオンであることが好ましい。
本発明においては、上記有機防汚剤(a-1)が、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンであることが好ましい。
【0025】
本発明においては、上記有機防汚剤(a-1)が、
N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルおよびピリジン−トリフェニルボランの群から選ばれた少なくとも1種の有機防汚剤と、
金属ピリチオン類と、
の併用系であることが好ましく、さらには、
上記有機防汚剤(a-1)が、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、金属ピリチオン類のうちの銅ピリチオンおよび/またはジンクピリチオンと、の併用系であることが好ましい。
【0026】
本発明においては、上記(メタ)アクリル酸シリルエステル系共重合体(b)が、重合性不飽和カルボン酸のアルキル基含有シリルエステルから誘導される成分単位を20〜80重量%の量で有しゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)が2000以上で20万以下の被膜形成性共重合体であることが好ましい。特に、上記重合性不飽和カルボン酸のアルキル基含有シリルエステルが、ジイソプロピルメチルシリル(メタ)アクリレート、ジsec−ブチル−メチル−シリル(メタ)アクリレート、sec−ブチル−ジメチルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−sec−ブチルシリル(メタ)アクリレートのうちから選択されることが望ましい。
【0027】
また、本発明においては、上記ビニルエーテル系(共)重合体(c)は、上記式[I]で表されるビニルエーテルの単独重合体またはこのビニルエーテルを主成分として50重量%以上の量で含有するビニルエーテル系共重合体(これらをまとめて、単に「ビニルエーテル系(共)重合体」とも言う。)であることが望ましい。
【0028】
本発明に係る防汚塗膜は、上記防汚塗料組成物から形成されている。
本発明に係る船体または水中構造物の防汚方法は、上記の防汚塗料組成物を船体または水中構造物の表面に塗布して、その表面を被覆することを特徴としている。
本発明に係る防汚塗膜被覆船体または水中構造物は、上記の防汚塗料組成物からなる塗膜にて船体または水中構造物の表面が被覆されていることを特徴としている。
【0029】
このような本発明に係る一液タイプの防汚塗料組成物によれば、特に耐クラック性、防汚性能に優れ、船底などの基材あるいはプライマー層などに対する塗膜付着性、耐剥離性などの物性に優れ、水中浸漬初期から適度な塗膜消耗速度を有し、加水分解性が長期間持続し、船舶・水中構造物・漁網等に付着しようとする水棲生物に対して優れた防汚性能を長期継続的に発揮し得る性能である長期防汚性や高汚損環境下における防汚性に優れ、加水分解による塗膜消耗速度が良好にコントロールされて消耗性(自己研磨性)に優れるなど、諸特性のバランス良く優れた防汚塗膜を形成することができ、加えてこの防汚塗料組成物は、貯蔵安定性等にも優れている。
【0030】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る防汚塗料組成物について、具体的に説明する。
被膜形成性共重合体
本発明に係る防汚塗料組成物は、
防汚剤としての銅および/または銅化合物(銅ピリチオン類を除く。)(a)と、
自己研磨性を有する塗膜形成成分としての(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体(b)と、
得られる塗膜の防汚性、溶出速度安定性等の向上に寄与し、塗膜形成成分としても機能する成分としてのビニルエーテル系(共)重合体(c)すなわち、式[I]:H2C=CHO−R(式[I]中、Rはアルキル基(炭素数1〜25)またはシクロアルキル基(炭素数3〜25)を示す。)で表されるビニルエーテルから誘導される成分単位を含有するビニルエーテル系(共)重合体(c)と、
を含有している。
【0031】
(a) 銅および/または銅化合物]
上記銅化合物としては、その分子量が通常63.5〜2000、好ましくは63.5〜1000のものが用いられる。
このような銅化合物としては、有機系、無機系の銅化合物の何れであってもよく、無機系の銅化合物としては、例えば、亜酸化銅、チオシアン化銅(チオシアン酸第一銅、ロダン銅)、塩基性硫酸銅、塩化銅、酸化銅等が挙げられ、
有機系の銅化合物(銅ピリチオン類を除く。)としては、例えば、塩基性酢酸銅、オキシン銅、ノニルフェノールスルホン酸銅、カツパービス(エチレンジアミン)−ビス(ドデシルベンゼンスルホネート)、ナフテン酸銅、ロジン銅、ビス(ペンタクロロフェノール酸)銅などが挙げられ、好ましくは無機系の銅化合物例えば、亜酸化銅、チオシアン化銅(ロダン銅)が用いられる。
【0032】
このような銅化合物は、銅に代えて、あるいは銅と共に1種または2種以上組合わせて用いることができる。
このような(a)銅および/または銅化合物は、本発明の塗料組成物中に、合計で通常、1〜70重量%、好ましくは3〜65重量%の量で含まれていることが望ましい。また塗料組成物中に含まれる(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体(b)100重量部に対して、該銅および/または銅化合物(a)は、合計で通常、3〜1400重量部、好ましくは10〜1300重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0033】
この銅および/または銅化合物(a)が、該防汚塗料組成物中にこの範囲にあると、防汚性に優れるようになる傾向がある。
(b) (メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体]
この(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体(b)は、重合性不飽和カルボン酸のアルキル基含有シリルエステル(i)から誘導される成分単位を20〜80重量%の量で有し、さらにはゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)が2000以上で20万以下、好ましくは3000〜10万であることが望ましい。
【0034】
この重合性不飽和カルボン酸のアルキル基含有シリルエステル(i)は、例えば、下記式[II]:
【0035】
【化2】
Figure 0005189717
【0036】
で表される。この式[II]中、R1は、水素原子またはメチル基等のアルキル基を表し、R2、R3およびR4は、メチル基、エチル基、プロピル基、sec−,tert−,iso−ブチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基等の炭素数が1〜18個程度のアルキル基、炭素数が3〜10のシクロアルキル基、上記アルキル基などの置換基を有していてもよいフェニル基のいずれかを表し、R2、R3およびR4は互いに異なっていてもよく同一であってもよい。このようなアルキル基含有シリルエステル(i)としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸トリメチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリエチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリブチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリイソブチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリ−sec−ブチルシリルエステル等のようにR2、R3およびR4が同一のアルキル基含有シリルエステル;
(メタ)アクリル酸ジイソプロピル−メチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸ジsec−ブチル−メチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル−ジメチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸モノメチルジプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸メチルエチルプロピルシリルエステル等のようにR2、R3およびR4のうちの1部または全部が互いに異なったアルキル基含有シリルエステルなどが挙げられる。
【0037】
本発明においては、このようなアルキル基含有シリルエステルを1種単独で用いてもよく、また2種以上組み合わせて用いてもよい。このようなアルキル基含有シリルエステルの内では、R2、R3およびR4のうちの少なくとも1つのアルキル基の炭素数が3以上であるものが好ましく、またR2、R3およびR4の総炭素数が5〜21程度のものが好ましい。このようなアルキル基含有シリルエステルのうちでは、特にアルキル基含有シリルエステル共重合体合成の容易性、あるいはこのようなアルキル基含有シリルエステル共重合体を用いてなる防汚塗料組成物の造膜性、貯蔵安定性、研掃性の制御のしやすさなどを考慮すると、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリイソブチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸ジsec−ブチル−メチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル−ジメチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリsec−ブチルシリルエステルが最も好ましく用いられる。
【0038】
このようなアルキル基含有シリルエステルと共重合されるモノマー(コモノマー)(ii)としては、任意の重合性不飽和化合物(エチレン性不飽和単量体)を用いることができ、このような重合性不飽和化合物(ii)としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル等の各種置換基を有していてもよい(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;
などを挙げることができ、好ましくは、メタアクリル酸メチルエステル(MMA)が用いられる。このようなMMAは、コモノマー(エチレン性不飽和単量体)中に、通常、30重量%以上、好ましくは、50重量%以上の量で含まれていることが好ましく、このような量でMMAを含有してなる共重合体では、ガラス転移温度(Tg)が、例えば10〜60℃と高く、得られる防汚塗料組成物からなる塗膜の強度は優れている。
【0039】
この(メタ)アクリル酸アルキルシリルエステル(i)等のような重合性不飽和化合物から誘導される成分単位と、他の重合性不飽和化合物(ii)から誘導される成分単位とは、共重合体中においては、通常ランダムに結合している。
なお、このような共重合体中にカルボン酸残基が存在していると、得られる防汚塗料組成物の貯蔵安定性を著しく低下させるため、該共重合体中には、カルボン酸残基が存在しないことが望ましい。該共重合体の合成時には、カルボン酸残基を有しない高純度のモノマーを用いることが好ましい。
【0040】
このような(メタ)アクリル酸シリルエステル共重合体中には、上述したように1種または2種以上の上記のような重合性不飽和カルボン酸のアルキル基含有シリルエステル(i)から誘導される成分単位(アルキル基含有シリルエステル成分単位)が含まれていてもよいが、このようなアルキル基含有シリルエステル(i)成分単位が、その合計量として20〜80重量%の量で、好ましくは35〜75重量%の量で該共重合体中に含有されていると、この防汚塗料組成物から長期防汚性に優れた防汚塗膜が得られるため好ましい。また、この共重合体のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は、2000以上で20万以下、好ましくは3000〜10万であることが望ましく、またこの共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.0〜10.0、好ましくは1.5〜6.0、特に好ましくは2.0〜5.0であることが望ましく、またこの共重合体のガラス転移温度(Tg℃)は、通常0〜80℃、好ましくは10〜60℃であり、
また50%溶液での粘度(25℃)は30〜30000cps、好ましくは50〜20000cpsであることが望ましい。
【0041】
この共重合体の重量平均分子量などが上記の範囲にあると、塗膜の長期防汚性、皮膜形成性、皮膜の耐衝撃性、皮膜の耐クラック性および防汚塗料組成物の貯蔵安定性が優れるようになる。
<(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体(b)の調製>
このような(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体(b)を調製するには、上記式[II]で表されるシリル(メタ)アクリレート(i)20〜80重量%と、該シリル(メタ)アクリレート(i)と共重合し得るメチルメタアクリレートなどの不飽和単量体(ii)20〜80重量%((i)+(ii)=100重量%)とを、ラジカル重合開始剤の存在下に、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等の各種方法にてランダム共重合させればよい。
【0042】
ラジカル重合開始剤としては、従来より公知のアゾ化合物、過酸化物などを広く用いることができ、アゾ化合物としては、具体的には、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられ、
過酸化物としては例えば過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシオクテート、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸塩(カリ塩、アンモニウム塩)等が挙げられる。
【0043】
上記重合物を防汚塗料に用いる場合には、上記各種重合法のうちでは、有機溶剤中で重合が行われる溶液重合法が好ましく、溶液重合の際用いられる有機溶剤としては、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール類;ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;等が挙げられる。
【0044】
これらの溶剤は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
このような(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体(b)は、本発明の塗料組成物(但し溶剤を除く。)中に、合計で通常、3〜70重量%、好ましくは5〜50重量%の量で含まれていることが望ましい。
この(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体(b)が、該防汚塗料組成物中にこの範囲にあると、塗膜強度、防汚性、自己研磨性に優れるようになる傾向がある。
【0045】
[(c)ビニルエーテル系(共)重合体]
ビニルエーテル系(共)重合体(c)は、ポリビニルエーテルとも言い、
式[I]:H2C=CHO−R ・・・・・[I]
[式[I]中、Rはアルキル基またはシクロアルキル基を示す。]
で表されるビニルエーテルから誘導される成分単位を含有する(共)重合体である
【0046】
上記ビニルエーテル[I]は、ビニルエーテル結合(H2C=CH−O−)を有するビニルエーテルであり、式[I]中の炭化水素基Rとしては、通常、その炭素数が1〜25の脂肪族系、3〜25の脂環族系、6〜25の芳香族系の炭化水素基が挙げられ、脂肪族系では、直鎖状でも分岐を有していても良く、またシクロヘキシル環に代表されるような脂環構造を有していても良い。また、上記炭化水素(炭素数が2以上の場合)を構成する炭素原子C1は該アルキル基中に含まれ炭素原子C1に隣接する炭素原子C2と、酸素原子を介してエーテル結合(C1−O−C2)を形成していても良く、また、炭化水素基を構成する水素原子は、他の官能基(−OH、−NH2 など)にて置換されていても良い。
【0047】
より具体的には、上記ビニルエーテル[I]としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等の直鎖状アルキル基含有ビニルエーテル類;イソプロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等の分岐状アルキル基含有ビニルエーテル類;シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキル基含有ビニルエーテル類;等が挙げられる。
【0048】
本発明においては、これらのビニルエーテル[I]を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
上記ビニルエーテル系(共)重合体は、上記式[I]で表されるビニルエーテルの単独重合体またはこのビニルエーテル[I]を主成分として50重量%以上の量で含有するビニルエーテル系共重合体(これらをまとめて、単に「ビニルエーテル系(共)重合体」とも言う。)であることが望ましい。
【0049】
上記ビニルエーテル系(共)重合体として具体的には、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソプロピルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテルなどを例示することができる。
本発明においては、これらのビニルエーテル系(共)重合体を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0050】
このようなビニルエーテル系(共)重合体は、防汚塗料組成物中に、合計で通常、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%の量で含まれていることが望ましい。また防汚塗料組成物中に含まれる(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体100重量部に対して、該ビニルエーテル系(共)重合体は、通常、0.3〜60重量部、好ましくは0.6〜40重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0051】
このビニルエーテル系(共)重合体が、該防汚塗料組成物中にこの範囲にあると、得られる塗膜の防汚性、耐クラック性、耐剥離性、溶出速度安定性などにいっそう優れるようになる傾向がある。
<その他の成分>
このように本発明の防汚塗料組成物は、上記銅および/または銅化合物(a)、上記(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体(b)、およびビニルエーテル系(共)重合体(c)を必須成分として含有しているが、
これらの成分以外に上記銅、銅化合物(a)以外の(a-1)有機防汚剤、(d)酸化亜鉛(亜鉛華)、(e)無機脱水剤、(f)ロジン等の溶出促進成分、タレ止め・沈降防止剤、塩素化パラフィン等の可塑剤、顔料、消泡剤、色別れ防止剤、水結合剤、上記ビニルエーテル系(共)重合体を除くアクリル樹脂などの各種樹脂など、下記のような成分を含有していてもよい。
【0052】
[(a-1)その他の有機防汚剤]
本発明においては、防汚剤として、前記銅および/または銅化合物(a)(特に銅および/または無機銅化合物)に加えて、下記のような有機防汚剤(a-1)を用いることが望ましい。
有機防汚剤(a-1)としては、例えば、下記式[IV]で示されるピリチオン系化合物(すなわち、金属−ピリチオン類)[式中R1〜R4は、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基を示し、Mは、Zn、Cu、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Fe、Al等の金属を示し、nは価数を示す]:
【0053】
【化3】
Figure 0005189717
【0054】
、テトラメチルチウラムジサルファイド、カーバメート系の化合物(例:ジンクジメチルジチオカーバメート、マンガニーズエチレンビスジチオカーバメート)、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、ピリジン−トリフェニルボロン、4,5−ジクロロ-2-n-オクチル-4−イソチアゾリン−3−オン、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン等を挙げることができる。
【0055】
これらの有機防汚剤(a-1)のうちでは、金属ピリチオン類、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、ピリジン−トリフェニルボロン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジンの群から選ばれた少なくとも1種の有機防汚剤を用いることが好ましく、
さらには、有機防汚剤として、上記金属ピリチオン類と、それ以外の上記有機防汚剤とを併用することが好ましく、
本発明においては、このような有機防汚剤を、前記銅および/または銅化合物(a)と併用することが好ましい。
【0056】
本発明のさらに好ましい態様においては、上記金属ピリチオン類のうちでは、銅ピリチオンおよび/またはジンクピリチオンが望ましく、また、金属ピリチオン類以外の他の有機防汚剤のうちでは、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンが好ましい。また、本発明においては、防汚剤として、前記銅および/または銅化合物(a)とともに、この金属ピリチオン類のうちの銅ピリチオンおよび/またはジンクピリチオンと、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンなどの防汚剤と組み合わせて用いることができる。
【0057】
これらの有機防汚剤(a-1)は、この防汚塗料組成物中に、通常、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%の量で含まれていることが望ましい。
また有機防汚剤(a-1)は、防汚塗料組成物中に含まれるシリル(メタ)アクリレート共重合体(b)100重量部に対して、通常、0.3〜300重量部、好ましくは2〜200重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0058】
また、本発明に係る防汚塗料組成物には、銅および/または銅化合物(a)と、ジンクピリチオンなどの「他の有機防汚剤(a-1)」とは、防汚塗料組成物調製時に用いられる防汚剤、被膜形成性共重合体などの種類あるいはこのような防汚塗料組成物が塗布形成される船舶等の種類(船舶では、外航−内航用、各種海水域用、木造−FRP−鋼鉄船用等)などにもより一概に決定されないが、上記(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体(b)100重量部に対して、防汚剤総量((a)+(a-1))として通常10〜1400重量部の量で、好ましくは20〜1300重量部の量で含有されていることが望ましい。
【0059】
この防汚剤総量が10重量部未満では、防汚性に劣ることがあり、また1400重量部を超えるとそれ以上の防汚性は期待できない上に、耐クラック性に劣ることがある。
例えば、防汚剤として銅ピリチオン、ジンクピリチオンなどのピリチオン類と、亜酸化銅(Cu2O)とを組み合わせて用いる場合、ピリチオン類は、(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体(b)100重量部に対して2〜200重量部の量で、また、亜酸化銅は上記(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体(b)100重量部に対して通常10〜1300重量部程度の量で防汚塗料組成物中に含有されていても良い。このように銅ピリチオンおよび/またはジンクピリチオンと、亜酸化銅とを含有していても、本発明の防汚塗料組成物は、前述したような従来例に係る防汚塗料と異なり貯蔵安定性に優れ、貯蔵中に増粘・ゲル化しない。
【0060】
[(d)酸化亜鉛(亜鉛華)]
このような本発明に係る防汚塗料組成物には、酸化亜鉛(亜鉛華)が含有されていても良い。このように酸化亜鉛が配合された防汚塗料組成物では、得られる塗膜強度が向上し、塗膜の研掃性を効果的に制御できる。
このような亜鉛華は、消耗度調整、塗膜硬度調整の観点から、この防汚塗料組成物中に、通常、0.5〜35重量部、好ましくは1〜25重量部の量で、換言すれば、上記(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体(b)100重量部に対して5〜400重量部の量で配合することが好ましい。
【0061】
[脱水剤(特に無機脱水剤(e))]
本発明に係る防汚塗料組成物には、無機系あるいは有機系の脱水剤、好ましくは無機系の脱水剤(e)が配合されていても良い。このように脱水剤が配合された防汚塗料組成物では、貯蔵安定性を一層向上させることができる。
脱水剤としては、具体的には、例えば、無水石膏(CaSO4)、合成ゼオライト系吸着剤(商品名:モレキュラーシーブ等)、オルソギ酸メチル、オルソ酢酸メチル等のオルソエステル類、オルソほう酸エステル、シリケート類やイソシアネート類(商品名:アディティブT1)等が挙げられ、このうちで、無機脱水剤としては、無水石膏、モレキュラーシーブが好ましく、特にモレキュラーシーブが好ましく用いられる。このような脱水剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0062】
このような脱水剤特に無機脱水剤は、上記シリル(メタ)アクリレート系共重合体(b)100重量部に対して、通常、0.02〜100重量部、好ましくは0.2〜50重量部の量で配合することが好ましい。
また、このような脱水剤、特に無機脱水剤は、この防汚塗料組成物中に、合計で通常、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の量で含まれていることが望ましい。このような量で脱水剤、好ましくは上記無機脱水剤が防汚塗料組成物中に含まれていると、貯蔵安定性が向上する傾向がある。
【0063】
[(f)溶出促進成分]
溶出促進成分(f)は、海水中で塗膜の自己研磨作用を促進する働きを有し、このような溶出促進成分としては、ロジンおよびその誘導体、モノカルボン酸およびその塩等が挙げられる。
ロジンには、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどがあるが、本発明ではいずれをも使用することができる。ロジンの誘導体としては、例えば、不均化ロジン、低融点不均化ロジン、水添ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジン、アルデヒド変性ロジン、ロジンのポリオキシアルキレンエステル、還元ロジン(ロジンアルコール)、ロジンおよびロジン誘導体の金属塩(ロジンおよびロジン誘導体の銅塩、亜鉛塩、マグネシウム塩など)、ロジンアミン等が挙げられる。これらのロジン及びその誘導体は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0064】
モノカルボン酸としては、例えば、炭素数5〜30程度の脂肪酸、合成脂肪酸、ナフテン酸が挙げられる。モノカルボン酸の塩としては、Cu塩、Zn塩、Mg塩、Ca塩等が挙げられる。
これらの溶出促進成分のうちでは、ロジンまたはその誘導体またはナフテン酸の金属塩が好ましく、さらには、ロジンまたはその誘導体が好ましい。
【0065】
これらの溶出促進成分は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの溶出促進成分は、防汚塗料組成物中に固形分換算で、0.1〜30重量%、好ましくは、0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜15重量%の量で含有されていることが望ましい。溶出促進成分の配合割合は、塗膜の防汚性能および耐水性能の観点からこの範囲にあることが望ましい。
【0066】
また防汚塗料組成物中に含まれるシリル(メタ)アクリレート共重合体100重量部に対して、該溶出促進成分は、合計で通常、0.3〜600重量部、好ましくは2〜300重量部の量で含まれていることが望ましい。
この溶出促進成分が、該防汚塗料組成物中にこの範囲にあると、防汚性や塗膜の消耗性に優れるようになる傾向がある。
【0067】
[タレ止め・沈降防止剤]
タレ止め・沈降防止剤としては、従来より公知のタレ止め・沈降防止剤が、任意量で配合されていてもよい。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの塩類、ポリエチレンワックス、水添ヒマシ油ワックス系、(ポリ)アマイドワックス系および両者の混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等が挙げられ、好ましくは水添ヒマシ油ワックス、(ポリ)アマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックスが用いられる。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、楠本化成(株)製の「ディスパロンA-603-20X」、「ディスパロン4200-20」等の商品名で上市されているものが挙げられる。
【0068】
[顔料、溶剤]
顔料としては、従来公知の有機系、無機系の各種顔料(例:チタン白、ベンガラ、有機赤色顔料、タルクなど)を用いることができる。なお、染料等の各種着色剤も含まれていてもよい。
顔料の形態として針状、扁平状、鱗片状のものを使用することにより塗膜の耐クラック性を一層向上させることが可能である。
【0069】
溶剤としては、例えば、脂肪族系、芳香族系(例:キシレン、トルエン等)、ケトン系、エステル系、エーテル系など通常、防汚塗料に配合されるような各種溶剤が用いられる。
防汚塗料組成物の製造
このような防汚塗料組成物は、従来より公知の方法を適宜利用することにより製造することができ、例えば、上記(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体(b)と、該(共)重合体(b)100重量部に対して3〜1400重量部の量の銅および/または銅化合物(a)、0〜300重量部の量の有機防汚剤(a-1)(但し防汚剤総量((a)+(a-1))で10〜1400重量部)と、0.3〜60重量部の量のビニルエーテル系(共)重合体(c)とに加えて、それぞれ必要により用いられる、5〜400重量部の量の亜鉛華(d)と、0〜600重量部の量の溶出促進成分(f)と、0.03〜200重量部の量の脱水剤(例:無水石膏、モレキュラーシーブ)と、適宜量で用いられるタレ止め・沈降防止剤、顔料、溶剤などとを一度にあるいは任意の順序で加えて撹拌・混合・分散等すればよい。
【0070】
この防汚塗料組成物は、1液性で貯蔵安定性に優れ、防汚塗料の付着性、耐久性、防汚性といった各種要求性能を満足するものである。
上記のような防汚塗料組成物を水中・水上構造物すなわち海洋構造物(例:原子力発電所の給排水口)、湾岸道路、海底トンネル、港湾設備、運河・水路等のような各種海洋土木工事の汚泥拡散防止膜、船舶、漁具(例:ロープ、漁網)などの各種成形体の表面に常法に従って1回〜複数回塗布すれば、耐クラック性、防汚性に優れた防汚塗膜被覆船体または海洋構造物などが得られる。なお、この本発明に係る防汚塗料組成物は、直接上記船体または海洋(水中)構造物等の表面に塗布してもよく、また予め防錆剤、プライマーなどの下地材が塗布された船体または海洋構造物等の表面に塗布してもよい。さらには、既に従来の防汚塗料による塗装が行われ、あるいは本発明発明の防汚塗料組成物による塗装が行われている船体、海洋構造物等の表面に、補修用として本発明の防汚塗料組成物を上塗りしてもよい。このようにして船体、海洋構造物等の表面に形成された防汚塗膜の厚さは特に限定されないが、例えば、30〜150μm/回程度である。
【0071】
【発明の効果】
このような本発明に係る一液タイプの防汚塗料組成物によれば、得られる塗膜は、特に耐クラック性、防汚性能に優れ、船底などの基材あるいはプライマー層などに対する塗膜付着性、耐剥離性などの物性に優れ、水中浸漬初期から適度な塗膜消耗速度を有し、加水分解性が長期間持続し、船舶・水中構造物・漁網等に付着しようとする水棲生物に対して優れた防汚性能を長期継続的に発揮し得る性能である長期防汚性能も優れ、加水分解による塗膜消耗速度が良好にコントロールされて消耗性(自己研磨性)に優れるなど、これら諸特性にバランス良く優れた防汚塗膜を形成することができる。
【0072】
また、本発明によれば、このような防汚塗料組成物を用いた、環境汚染の恐れの極めて少ない防汚方法が提供される。
【0073】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何等制限されるものではない。なお、以下の実施例、比較例等において、「部」は「重量部」の意味である。また、表中の各成分量例えば、共重合体溶液成分量、亜酸化銅、亜鉛華などの量、あるいは溶媒(例:キシレン)量などは、特に断らない限りいずれも「重量部」表示で示す。
ポリマーの製造例]
(共重合体S−1の製造)
撹拌機、コンデンサー、温度計、滴下装置、窒素導入管、加熱・冷却ジャケットを備えた反応容器にキシレン100部を仕込み窒素気流下で85℃の温度条件に加熱撹拌を行った。
【0074】
同温度を保持しつつ滴下装置より、上記反応器内にトリイソプロピルシリルアクリレート50部、メチルメタクリレート50部および重合開始剤の2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1部の混合物を2時間かけて滴下した。
その後同温度で4時間撹拌を行った後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4部を加え更に同温度で4時間攪拌を行い、無色透明の共重合体溶液S−1を得た。
【0075】
得られた共重合体溶液S−1の加熱残分(105℃の熱風乾燥器中3時間乾燥後の加熱残分)は51.2重量%であり、25℃における粘度は408cpsであり、GPC測定による数平均分子量(Mn)は6618であり、重量平均分子量(Mw)は19434であった。
(共重合体S−2〜共重合体S−11の製造)
上記共重合体S−1の製造の際に、滴下配合成分を表1に示すように変えた以外は、上記と同様にして共重合体S−2〜共重合体S−11を得て、上記と同様にこれらの共重合体(溶液)の物性値を測定した。
【0076】
結果を併せて表1〜表2に示す。
【0077】
【表1】
Figure 0005189717
【0078】
【表2】
Figure 0005189717
【0079】
【実施例1〜13、比較例1〜4】
[防汚塗料組成物の製造例]
表3〜表4に示す配合組成の各防汚塗料組成物を製造した(各成分量は重量部表示)。
表3〜表4に示す配合組成の防汚塗料組成物を製造するに際しては、ガラスビーズを入れたペイントシェーカー内でこれらの配合成分を一緒にして2時間振とうした後、室温で12時間熟成を行った。次いで100メッシュのフィルタにて濾過して、所望の防汚塗料組成物を得た。
【0080】
該防汚塗料組成物について常温で2ヶ月間貯蔵後の貯蔵安定性を表3〜表4に合わせて示す。貯蔵安定性の評価は、塗料調製直後と常温2ヶ月間貯蔵後についてその粘度(ストーマー粘度計により測定した25℃におけるKu値)の増加度により行った。
(評価基準)
5:粘度の増加が10未満
4:粘度の増加が10以上20未満
3:粘度の増加が20以上30未満
2:粘度の増加が30以上
1:流動性がなくKu値の測定が不可。
【0081】
また、該防汚塗料組成物を用いた防汚性、消耗度の評価を下記のようにして行った。
結果を表3〜表4に合わせて示す。
[防汚性の評価]
広島湾の海水中に設置した回転ドラムの側面に取付け可能なように曲げ加工が施された70×200×3mmのサンドブラスト板を用意した。
【0082】
このサンドブラスト板に、エポキシ系ジンクリッチプライマー、エポキシ系防食塗料、ビニル系バインダーコートをそれぞれの乾燥膜厚が20μm、150μm、50μmとなるように1日毎に順次重ねて塗装した後、供試防汚塗料組成物をその乾燥後の膜厚が200μmとなるように塗装し、試験板を得た。回転ドラムにこの試験板を取り付けて周速5ノット、50%稼動条件(夜間12時間稼動、昼間12時間停止の交互運転)にて12ヶ月間高汚損環境条件での試験を行い防汚性の評価を行った。
【0083】
防汚性の評価については目視で行い以下の基準を用いた。
(評価基準)
5:塗膜表面に付着物を認めない
4:塗膜表面に薄いスライムの付着を認める
3:塗膜表面に濃いスライムの付着を認める
2:塗膜表面にスライムの付着及び部分的にシオミドロなど植物の付着を認
める
1:塗膜表面全体がシオミドロなどの植物で覆われている
また、下記のような条件で消耗度の評価を行った。
【0084】
[消耗度の評価]
直径300mmで厚さ3mmの円盤状サンドブラスト板にエポキシ系ジンクリッチプライマー、エポキシ系防食塗料、ビニル系バインダーコートをそれぞれの乾燥膜厚が20μm、150μm、50μmとなるよう1日毎に順次重ねて塗装した後、7日間室内で乾燥した。その後隙間500μmのアプリケーターを用い供試防汚塗料組成物を円心から半径方向に放射状に塗装し、試験板を得た。25℃の海水を入れた恒温槽中でモーターにこの試験板を取り付け、周速15ノットで2ヶ月間回転し、円周付近の消耗度(膜厚減少)を測定した。
【0085】
評価結果を合わせて表3〜表4に示す。
また、膜厚減少測定時の塗膜状態を目視で観察し、以下の基準にて評価を行った。
(評価基準)
5:塗膜に異常を認めない
4:部分的に微細なワレを認める
3:全体的に微細なワレを認める
2:部分的に顕著なワレを認める
1:全体的に顕著なワレを認める
評価結果を合わせて表3〜表4に示す。
【0086】
なお、表中の成分名称等は以下の通りである。
▲1▼「トヨパラックス150」東ソー(株)製の塩素化パラフィン、
平均炭素数:14.5、塩素含有量:50%、
粘度:12ポイズ/25℃、比重:1.25/25℃。
▲2▼「ルトナールA−25」BASF社製のポリビニルエチルエーテル、
粘度:2.5〜6.0Pa・s/23℃、比重:0.96/20℃。
▲3▼「ルトナールM40」BASF社製のポリビニルメチルエーテル、
固形分100%品(規格値95%以上)
▲4▼「ロジン溶液」WWロジンの50%キシレン溶液
▲5▼「ナフテン酸銅溶液」ナフテン酸銅のキシレン溶液、
溶液中の銅含有率:8%。
▲6▼「可溶性無水石膏D−1」(株)ノリタケカンパニーリミテド製、
IIICaSO4、白色粉末、平均粒径15μm。
▲7▼「ディスパロン4200−20」楠本化成(株)製、
酸化ポリエチレンワックス 20%キシレンペースト
▲8▼「ディスパロンA603−20X」楠本化成(株)製
脂肪酸アマイドワックス 20%キシレンペースト
【0087】
【表3】
Figure 0005189717
【0088】
【表4】
Figure 0005189717

Claims (18)

  1. (a)銅および/または銅化合物(銅ピリチオン類を除く)と、
    (b)重合性不飽和カルボン酸のアルキル基含有シリルエステルから誘導される成分単位を有し 、該重合性不飽和カルボン酸のアルキル基含有シリルエステルが、ジイソプロピルメチルシリル(メタ)アクリレート、ジsec−ブチル−メチル−シリル(メタ)アクリレート、sec−ブチル−ジメチルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−sec−ブチルシリル(メタ)アクリレートのうちから選択された1種または2種以上である(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体と、
    (c)[I]:H2C=CHO−R(式[I]中、Rは、アルキル基(炭素数1または2)を示す。)で表されるビニルエーテルから誘導される成分単位を含有するビニルエーテル単独重合体と、
    を含有し、
    上記(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体(b)を、防汚塗料組成物(但し溶剤を除く)中に、合計で3〜70重量%の量で含有し、
    上記(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体(b)100重量部に対して、上記銅および/または銅化合物(a)を、合計で3〜1400重量部の量で含有し、
    上記(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体(b)100重量部に対して、上記ビニルエーテル単独重合体を、0.3〜60重量部の量で含有する
    ことを特徴とする防汚塗料組成物。
  2. さらに、(d)酸化亜鉛が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の防汚塗料組成物。
  3. 上記酸化亜鉛(d)が、上記(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体(b)100重量部に対して5〜400重量部の量で含まれることを特徴とする請求項2に記載の防汚塗料組成物。
  4. さらに、(e)無機脱水剤が含有されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の防汚塗料組成物。
  5. 上記無機脱水剤(e)が、上記シリル(メタ)アクリレート系共重合体(b)100重量部に対して0.02〜100重量部の量で含まれることを特徴とする請求項4に記載の防汚塗料組成物。
  6. さらに、(f)溶出促進成分が含有されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の防汚塗料組成物。
  7. 上記溶出促進成分(f)が、上記シリル(メタ)アクリレート系共重合体(b)100重量部に対して0.3〜600重量部の量で含まれることを特徴とする請求項6に記載の防汚塗料組成物。
  8. さらに、上記銅および/または銅化合物(a)以外の(a-1)有機防汚剤が含有されていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の防汚塗料組成物。
  9. 上記有機防汚剤(a-1)が、上記シリル(メタ)アクリレート系共重合体(b)100重量部に対して0.3〜300重量部の量で含まれることを特徴とする請求項8に記載の防汚塗料組成物。
  10. 上記有機防汚剤(a-1)が、金属ピリチオン類、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルおよびピリジン−トリフェニルボランの群から選ばれた少なくとも1種の有機防汚剤である請求項8または9に記載の防汚塗料組成物。
  11. 上記有機防汚剤(a-1)が、金属ピリチオン類の銅ピリチオンおよび/またはジンクピリチオンである請求項8または9に記載の防汚塗料組成物。
  12. 上記有機防汚剤(a-1)が、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンである請求項8または9に記載の防汚塗料組成物。
  13. 上記有機防汚剤(a-1)が、
    N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルおよびピリジン−トリフェニルボランの群から選ばれた少なくとも1種の有機防汚剤と、
    金属ピリチオン類と、
    の併用系である請求項8または9に記載の防汚塗料組成物。
  14. 上記有機防汚剤(a-1)が、
    銅ピリチオンおよび/またはジンクピリチオンと、
    4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、
    の併用系である請求項8または9に記載の防汚塗料組成物。
  15. 上記(メタ)アクリル酸シリルエステル系(共)重合体(b)が、上記重合性不飽和カルボン酸のアルキル基含有シリルエステルから誘導される成分単位を20〜80重量%の量で有し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量が2000以上で20万以下の被膜形成性共重合体であることを特徴とする請求項1〜14の何れかに記載の防汚塗料組成物。
  16. 請求項1〜15の何れかに記載の防汚塗料組成物から形成されている塗膜。
  17. 請求項1〜15の何れかに記載の防汚塗料組成物を船体または水中構造物の表面に塗布して、その表面を被覆することを特徴とする船体または水中構造物の防汚方法。
  18. 請求項1〜15の何れかに記載の防汚塗料組成物からなる塗膜にて船体または水中構造物の表面が被覆されていることを特徴とする船体または水中構造物。
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