JP4642204B2 - 防汚塗料組成物、該組成物からなる塗膜、該塗膜で被覆された基材、および防汚方法 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、シリルエステル共重合体を含有する防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている防汚塗膜、該防汚塗料組成物を用いた防汚方法および該塗膜で被覆された船体または水中構造物に関する。
さらに詳しくは、塗膜にクラックが発生しにくく、塗膜付着性が良好で塗膜剥離が起きにくく、特にエポキシ樹脂塗料との付着性が良好で塗膜の加水分解速度が良好に制御され、防汚性能(防汚活性)あるいは防汚性のうち、特に長期防汚性に優れた防汚塗膜が得られる防汚塗料を製造しうる防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている防汚塗膜、該防汚塗料組成物を用いた防汚方法および該塗膜で被覆された船体または水中構造物に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
船底、水中構造物、漁網などは、水中に長期間さらされることにより、その表面に、カキ、イガイ、フジツボ等の動物類、ノリ(海苔)等の植物類、あるいはバクテリア類などの各種水棲生物が付着・繁殖すると、外観が損ねられ、その機能が害されることがある。
【0003】
特に船底にこのような水棲生物が付着・繁殖すると、船全体の表面粗度が増加し、船速の低下、燃費の拡大などを招くことがある。また、このような水棲生物を船底から取り除くには、多大な労力、作業時間が必要となる。また、バクテリア類が水中構造物などに付着・繁殖し、さらにそこにスライム(ヘドロ状物)が付着して腐敗を生じたり、さらに大型の付着生物が鉄鋼構造物などのような水中構造物の表面に付着・繁殖してその水中構造物の腐食防止用の塗膜などを損傷すると、その水中構造物の強度や機能が低下し寿命が著しく低下する等の被害が生ずる虞がある。
【0004】
従来では、このような被害を防止すべく、船底などには防汚性に優れた防汚塗料として、たとえば、トリブチル錫メタクリレートとメチルメタクリレート等との共重合体と、亜酸化銅(Cu2O)とを含有するものが塗布されていた。この防 汚塗料中の該共重合体は、海水中で加水分解されてビストリブチル錫オキサイド(トリブチル錫エーテル,Bu3Sn-O-SnBu3:Buはブチル基)あるいはトリブチル錫ハロゲン化物(Bu3SnX:Xはハロゲン原子)等の有機錫化合物を放出して防汚効果を発揮するとともに、加水分解された共重合体自身も水溶性化して海水中に溶解していく「加水分解性自己研磨型塗料」であるため、船底塗装表面は、樹脂残渣が残らず、常に活性な表面を保つことができる。
【0005】
しかしながら、このような有機錫化合物は、毒性が強く、海洋汚染、奇形魚類や奇形貝類の発生、食物連鎖による生態系への悪影響などが懸念され、これに代わり得るような錫を含有しない防汚塗料の開発が求められている。
このような錫を含有しない防汚塗料としては、たとえば、▲1▼特開平4-26417 0号公報、▲2▼特開平4-264169号公報、▲3▼特開平4-264168号公報に記載のシリルエステル系防汚塗料が挙げられる。しかしながら、これらの防汚塗料には、▲4▼特開平6-157941号公報、▲5▼特開平6-157940号公報などにも教示されているように、防汚性に劣り、クラック、剥離が生ずるとの問題点がある。
【0006】
また、▲6▼特開平2-196869号公報には、トリメチルシリルメタクリレート、エチルメタクリレートおよびメトキシエチルアクリレートをアゾ系重合開始剤の存在下に共重合してなり、トリメチルシリル基によりブロックされたカルボン酸基を含有するブロックされた酸官能性コポリマー(A)と、多価カチオンの化合物(B)とを含有する防汚塗料が教示されている。しかしながら、この防汚塗料から得られる塗膜は、耐クラック性が充分満足しうるものではないという問題点がある。
【0007】
▲7▼特表昭60-500452号および特開昭63-215780号公報には、(メタ)アクリル酸のトリアルキルシリルエステルなどのオルガノシリル基を有するビニル系単量体などを他のビニル系単量体と共重合させてなり、数平均分子量が3000〜40000の防汚塗料用樹脂が記載され、さらにオルトギ酸トリメチル等の有機系水結合剤、酸化第一銅等の防汚剤、ベンガラ等の顔料などを配合し得る旨記載されているが、上記▲5▼特開平6-157940号公報にも記載されているように、この防汚塗料用樹脂は、貯蔵中にゲル化しやすく、この防汚塗料から形成される塗膜は、耐クラック性、耐剥離性に劣るとの問題点がある。
【0008】
また上記▲7▼特表昭60-500452号に対応する特公平5-32433号公報には、毒物(a)と、式([−CH2-CX(COOR)−(B)−]:XはHまたはCH3であり、RはSiR'3又はSi(OR')3でR'はアルキル基などを示し、Bはエチレン性不飽和単量体残基を示す)で表される反復単位を有し、特定の加水分解速度などを有する重合体結合材(b)とからなる防汚塗料が開示され、さらに溶剤、水感受性顔料成分、不活性顔料、充填剤、遅延剤を含有し得る旨記載されているが、この公報記載の防汚塗料から得られる塗膜は、耐クラック性に劣るとの問題点がある。
【0009】
▲8▼特開平7-18216号公報には、(A)分子内に、式(I):-COO-SiR1R2R3(R1〜R3は炭素数1〜18のアルキル基などを示す)で表されるトリ有機珪素エステル基を有する有機珪素含有単量体Aの重合体と、(B)銅または銅化合物とを主成分とする塗料組成物において、上記の(A),(B)成分以外の必須成分として、(C)式:
【0010】
【化2】
【0011】
((C)中、R4〜R6は水素原子、炭素数1〜18のアルコキシ基、シクロアルコキシ基、などを示し、R7は炭素数1〜18のアルキル基などを示し、nは1〜3の整数を示す)で表されるアルコキシ基含有珪素化合物を含有した塗料組成物が開示されている。また、該公報には、上記式(I)で表される基を有する単量体Aと共重合可能なビニル系単量体Bとの共重合体ABが含まれていてもよい旨記載され、単量体Bとして、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられている。
【0012】
ところで鋼船を代表とする海洋鉄鋼構造物は没水部の腐食の防止のため一般に重防食塗料と呼ばれる防食性に優れた塗料が塗装される。
この重防食塗料に用いる樹脂組成物としては防食性に優れたエポキシ樹脂が汎用され、通常アミン系硬化剤を用いた2液型塗料として使用されている。
鉄鋼構造物の没水部に防汚塗料組成物を適用する場合、このようにエポキシ樹脂塗料の塗膜上に直接塗装すると付着性が充分でなくビニル系等のバイダーコートなどを用いて付着性を確保する方法が一般的である。エポキシ樹脂塗料と防汚塗料組成物の付着性が良好であると、上記のようなバインダーコートは不要となり、塗料品種の低減、塗装回数の低減という優れた効果が発現される。
【0013】
しかしながら、前記した公報に記載の塗料組成物から得られる塗膜は、エポキシ樹脂塗料との付着性や長期防汚性の点で充分ではなかった。
なお、▲9▼特開平7-102193号公報には、式:X−SiR1R2R3(但し、式中R1〜R3はいずれもアルキル基、アリール基の中から選ばれた基であって、互いに同一の基であっても異なる基であってもよい。Xはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基またはフマロイルオキシ基である。)で表される単量体Aと、
式:Y−(CH2CH2O)n−R4(但し、R4はアルキル基またはアリール基であり、Yはアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基であり、nは1〜25の整数である。)で表される単量体Bとを含む単量体混合物の共重合体と、防汚剤とを必須成分として含有する塗料組成物が開示されている。さらに、該防汚剤としては、無機化合物として亜酸化銅、銅粉等の銅化合物、硫酸亜鉛、酸化亜鉛等が挙げられ、金属を含む有機化合物としてオキシン銅等の有機銅系化合物;有機ニッケル系化合物;ジンクピリチオン等の有機亜鉛系化合物;が挙げられている。しかしながら、該公報には、グリシジル(メタ)アクリレート等を用いた有機シリルエステル基含有重合体は何ら示されていない上に、該公報に記載の塗料ではエポキシ樹脂塗料との付着性や長期防汚性の点で充分ではなかった。
【0014】
(10)特開平8-199095号公報には、上記特開平7-102193号公報に記載の式(1):X−SiR1R2R3で表される単量体Aと、
式(2):Y−(CH(R4))−(OR5)(但しR4はアルキル基、R5はアルキル基またはシクロアルキル基である。Yはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基またはフマロイルオキシ基である。)で表される単量体Bと、必要によりこれらA、Bと共重合可能なビニル系単量体Cとを含む単量体混合物の共重合体と、防汚剤とを必須成分として含有する塗料組成物が開示されている。このビニル系単量体Cとしては、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられている。さらに、該防汚剤としては、無機化合物として亜酸化銅、銅粉等の銅化合物、硫酸亜鉛、酸化亜鉛等が挙げられ、金属を含む有機化合物としてオキシン銅等の有機銅系化合物;有機ニッケル系化合物;ジンクピリチオン等の有機亜鉛系化合物;が挙げられている。
【0015】
しかしながら、該公報には、グリシジル(メタ)アクリレート等を用いた有機シリルエステル基含有重合体は何ら示されていない上に、該公報に記載の塗料ではエポキシ樹脂塗料との付着性や長期防汚性の点で充分ではなかった。
(11)特開平8-269388号公報には、式(1):X−SiR1R2R3(但し、式中R1〜R3はいずれも炭素数1〜20の炭化水素基であって、互いに同一の基であっても異なる基であってもよい。Xはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基である。)で表される単量体Aと、式(2):Y−(CH2CH2O)n−R4(但しR4はアルキル基またはアリール基であり、Yはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基であり、nは1〜25の整数である。)で表される単量体Bとを含む単量体混合物の共重合体と、ビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)銅塩(:銅ピリチオン)とを、必須成分として含有する塗料組成物が開示されている。さらに、上記単量体Aとして、ジメチル−t−ブチルシリルアクリレート等が挙げられ、上記防汚剤としては、無機化合物として亜酸化銅、銅粉等の銅化合物、硫酸亜鉛、酸化亜鉛等が挙げられ、金属を含む有機化合物としてオキシン銅等の有機銅系化合物;有機ニッケル系化合物;ジンクピリチオン・等の有機亜鉛系化合物;が挙げられている。また、添加可能な溶解速度調整剤としてロジン、ロジン誘導体などが挙げられている。
【0016】
しかしながら、該公報には、グリシジル(メタ)アクリレート等を用いた有機シリルエステル基含有重合体は何ら示されていない上に、該公報に記載の塗料ではエポキシ樹脂塗料との付着性や長期防汚性の点で充分ではなかった。
(12)特開平8-269389号公報には、トリオルガノシリル基を有する不飽和単量体Aと、下記式(2)〜(9)の何れかで表される単量体Bとを含む単量体混合物の共重合体と、防汚剤とを含有する塗料組成物が開示されている。
【0017】
各単量体Bは、それぞれ下記の通りである。
式(2)CH2=CR4COOR5−NR6R7(R4 は、HまたはCH3を示し、R5はアルキレン基を示し、R6、R7は、アルキル基であって、互いに同一でも異なっていてもよい。)で示される三級アミノ基含有単量体、
式(3)CH2=CR8COOR9−NR10R11R12 (Y)(R8はHまたはCH3を示し、R9はアルキレン基を示し、R10〜R12は、アルキル基であって、互いに同一でも異なっていてもよく、Yはハロゲン原子を示す。)で示される四級アンモニウム塩含有単量体、
式(4)CH2=CH−Z(ZはN含有複素環からなる基を示す。)で示される窒素含有複素環を含む単量体、
式(5)CH2=CR13COO(R14O)m(R15O)n(R16O)o−R17 (R13は、H、CH3を示し、R14はエチレン基を示し、R15は炭素数3のアルキレン基を示し、R16は炭素数4のアルキレン基を示し、R17はアルキル基、アリール基を示す。m、n、oは0以上の整数でn、oは同時に0でない。)で示される分子内にアルコキシ基またはアリーロキシアルキレングリコール基を有する単量体、式(6)CH2=CR18CONR19R20(R18は、H、CH3を示し、R19、R20は、アルキル基であり互いに同一でも異なっていてもよい。)で示される(メタ)アクリル酸アミド、
式(7)CH2=CR21CON()Q(R21は、H、CH3を示し、N()Qは、N含有基で、QにO、N、S等を含有してもよい。)で示される窒素含有環状炭化水素基を含む(メタ)アクリル酸アミド、
式(8)CH2=CR23COOCH2−T(R23は、H、CH3を示し、Tは、フラン環、テトラヒドロフラン環を示す。)で示されるフラン環含有(メタ)アクリル酸系エステル、
式(9)CH2=CH−CN。
【0018】
また、上記単量体A、Bと共重合可能な任意成分として、アクリル酸、アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等種々の共重合性モノマーが挙げられている。
またその実施例には、トリn−ブチルシリルアクリレート(TBSA)とジエチルアミノエチルメタクリレート(DEAEMA)とメチルメタクリレート(MMA)とからなる共重合体や、トリn−ブチルシリルアクリレート(TBSA)とN,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)とメチルメタクリレート(MMA)とからなる共重合体等が示されている。しかしながら、該公報には、グリシジル(メタ)アクリレート等を用いた有機シリルエステル基含有重合体は何ら示されていない上に、該公報に記載の塗料ではエポキシ樹脂塗料との付着性や長期防汚性の点で充分ではなかった。
【0019】
また、該組成物に配合可能な成分として、上記特開平8-269388号公報に記載の防汚剤と同様の防汚剤が挙げられている。
(13) 特開平8-269390号公報には、式(1):X−SiR1R2R3(但し、式中R1〜R3は何れもアルキル基、アリール基の中から選ばれた基であって、互いに同一の基であっても異なる基であってもよい。Xはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基である。)で表される単量体Aを用いた重合体と、
式(2):Y−(CH2CH2O)n−R4(但しR4はアルキル基またはアリール基であり、Yはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基であり、nは1〜25の整数である。)で表される単量体Bを用いた重合体と、
防汚剤とを含む塗料組成物が開示されている。上記防汚剤としては、上記特開平8-269388号公報に記載の防汚剤と同様の防汚剤が挙げられている。また、添加可能な成分としてロジン等の樹脂、沈降防止剤などが挙げられている。
【0020】
(14)特開平8-277372号公報には、前記(11):特開平8-269388号公報に記載の式(1):X−SiR1R2R3で表される単量体Aと、同じく同公報に記載の式(2):Y−(CH2CH2O)n−R4で表される単量体Bとを含む単量体混合物の共重合体と、トリフェニルボロンピリジン錯体とを含有し、樹脂成分および海棲生物付着阻害剤が金属を含まない重合体および金属を含まない有機系阻害剤のみで構成された塗料組成物が開示されている。また、添加可能な溶解速度調整剤としてロジン、ロジン誘導体などが挙げられている。
【0021】
(15)特開平10-30071号公報には、(A)ロジン、ロジン誘導体またはロジン金属塩からなるロジン系化合物の1種または2種以上と、(B)式(1):X−SiR1R2R3(但し、式中R1〜R3は何れもアルキル基、アリール基の中から選ばれた基であって、互いに同一の基であっても異なる基であってもよい。Xはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基、イタコノイルオキシ基、シトラコノイルオキシ基である。)で表される単量体Mの1種または2種以の重合体、および/または、該単量体Mの1種または2種以上とそれ以外の重合性単量体の1種または2種以上との重合体からなる有機シリルエステル基含有重合体と、(C)防汚剤とを含む塗料組成物が開示されている。また、単量体Mと共重合可能な任意成分としての他の単量体として、アクリル酸、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等が挙げられている。しかしながら、該公報には、グリシジル(メタ)アクリレート等を用いた有機シリルエステル基含有重合体は何ら示されていない上に、該公報に記載の塗料ではエポキシ樹脂塗料との付着性や長期防汚性の点で充分ではなかった。
【0022】
なお、上記防汚剤としては、上記特開平8-269388号公報に記載の防汚剤と同様の防汚剤が挙げられている。また、添加可能な成分として、顔料、塩素化パラフィン、沈降防止剤などが挙げられている。
しかしながらこれら▲9▼〜(15)には、グリシジル(メタ)アクリレート等を用いた有機シリルエステル基含有重合体は何ら示されておらず、また、これら公報に記載の塗料組成物では、エポキシ樹脂塗料との付着性や長期防汚性の点で充分ではなかった。
【0023】
さらに、(16)特公平5−82865号公報には、共重合可能な任意成分として、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等が挙げられている。また(17)特開平9−48947号公報、(18)特開平9−48948号公報、(19)特開平9−48949号公報、(20)特開平9−48950号公報、(21)特開平9−48951号公報、(22)特公平5−32433号公報、(23)USP4,593,055、(24)特開平2−196869号公報、(25)WO91/14743には、シリル(メタ)アクリレート系共重合体が記載されている。
【0024】
しかしながら、これら公報(16)〜(25)には、グリシジル(メタ)アクリレート等を用いた有機シリルエステル基含有共重合体は何ら示されておらず、また、これら公報に記載の塗料組成物では、エポキシ樹脂塗料との付着性や長期防汚性の点で充分ではなかった。また、これら公報(16)〜(25)に記載の共重合体を用いた防汚塗料では、得られる塗膜は、耐クラック性、耐剥離性(塗膜付着性)、防汚性能あるいは防汚性のうち特に長期防汚性や自己研磨性などのバランスの点でさらなる改良の余地があった。
【0025】
また、(26)特開昭63−215780号公報には、共重合成分としてメチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、アクリルアミド等を用いた共重合体が示され、該共重合体と亜酸化銅とを配合した防汚塗料が示されているが、上記公報に記載の防汚塗料などと同様の問題点があった。
【0026】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、塗膜にクラックが発生しにくく、塗膜付着性が良好で塗膜剥離が起きにくく、特にエポキシ樹脂塗料との付着性が良好で、塗膜の加水分解速度が良好に制御され、防汚性能(防汚活性)あるいは防汚性のうち特に長期防汚性に優れた防汚塗膜を形成しうる防汚塗料を得ることが可能な防汚塗料組成物を提供することを目的としている。
【0027】
さらに本発明は、このような防汚塗料組成物から形成されている防汚塗膜、該防汚塗料組成物を用いた防汚方法および該塗膜で被覆された船体または水中構造物を提供することを目的としている。
【0028】
【発明の概要】
本発明に係る防汚塗料組成物は、
(a)重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位と、
(b)重合性不飽和カルボン酸のエポキシ基またはオキセタン基含有アルコールエステルから誘導される成分単位と、
(c)上記(a)成分単位以外の他の重合性不飽和単量体単位と
から構成されるシリルエステル共重合体(A)を含有している。
【0029】
前記重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位(a)は、下記式(I)で表されるシリル(メタ)アクリレートから誘導される成分単位を含有していることが望ましい。
【0030】
【化3】
【0031】
(式(I)中、R1は、水素またはメチル基を示し、R2、R3、R4は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基の何れかを示す。)
前記式(I)中、R2が分岐アルキル基またはシクロアルキル基であることが好ましい。
【0032】
重合性不飽和カルボン酸のエポキシ基またはオキセタン基含有アルコールエステルから誘導される成分単位(b)は、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートまたは3−(メタ)アクリロキシメチル−3−エチルオキセタンから誘導される成分単位であることが好ましい。
【0033】
本発明に係る防汚塗料組成物は、さらに防汚剤(B)を含有していることが好ましい。
本発明に係る防汚塗料組成物は、さらに、酸化亜鉛(C)を含有していることが好ましい。
本発明に係る防汚塗料組成物は、さらに、無機脱水剤(D)を含有していることが好ましい。
【0034】
本発明に係る防汚塗料組成物は、さらに溶出促進成分(E)を含有していることが好ましい。
本発明に係る防汚塗膜は、前記記載の防汚塗料組成物から形成されてなることを特徴としている。
本発明に係る船体または水中構造物の防汚方法は、上記記載の防汚塗料組成物を用いることを特徴としている。
【0035】
本発明に係る船体または水中構造物は、上記記載の防汚塗料組成物からなる塗膜にて船体または水中構造物の表面が被覆されていることを特徴としている。
本発明によれば、塗膜にクラックが発生しにくく、塗膜付着性が良好で塗膜剥離が起きにくく、特にエポキシ樹脂塗料との付着性が良好で塗膜の加水分解速度が良好に制御され、防汚性能(防汚活性)あるいは防汚性のうち特に長期防汚性に優れ、しかもこれら特性にバランスよく優れた防汚塗膜を得ることが可能な防汚塗料組成物が提供される。
【0036】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る防汚塗料組成物について具体的に説明する。
本発明に係る防汚塗料組成物は、(a)重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位と、
(b)重合性不飽和カルボン酸のエポキシ基またはオキセタン基含有アルコールエステルから誘導される成分単位と、
(c)上記(a)成分単位以外の他の重合性不飽和単量体単位と
から構成されるシリルエステル共重合体(A)を含有している。
【0037】
[シリルエステル共重合体(A)]
まず、このシリルエステル共重合体(A)を構成する各成分単位(a)、(b)、(c)について説明する。
(a) 重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位
重合性不飽和カルボン酸シリルエステルとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコ二塩基酸などのα,β-不飽和ジカルボン酸のシリルエステル、α,β-不飽和ジカルボン酸のハーフエステル構造である不飽和モノカルボン酸のシリルエステルが挙げられる。
【0038】
このような重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位としては、下記式(I)で表されるシリル(メタ)アクリレート成分単位が好ましい。
【0039】
【化4】
【0040】
式(I)中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2、R3、R4は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれアルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基の何れかを示し、上記アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜18、さらに好ましくは1〜6であり、シクロアルキル基の炭素数は、好ましくは3〜10、さらに好ましくは3〜8である。また、上記フェニル基中の水素原子と置換可能な置換基としては、アルキル、アリール、ハロゲンなどが挙げられる。
【0041】
このようなシリル(メタ)アクリレート成分単位を誘導しうるシリル(メタ)アクリレートは、下記式(I-a)で表される。
式(I-a):
【0042】
【化5】
【0043】
式(I-a)中、R1は、上記式(I)中のR1と同様のものであって、水素原子またはメチル基を示し、R2、R3、R4も上記式(I)中のR2、R3、R4と同様のものであって、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ上記と同様のアルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基の何れかを示す。
【0044】
このようなシリル(メタ)アクリレート(I-a)としては、具体的には、たとえば、(メタ)アクリル酸トリメチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリエチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリブチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリsec−ブチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリiso−ブチルシリルエステル等のようにR2、R3およびR4が同一のシリル(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸ジsec−ブチル−メチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル−ジメチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸モノメチルジプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸メチルエチルプロピルシリルエステル等のようにR2、R3およびR4のうちの1部または全部が互いに異なったシリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。以上のシリル(メタ)アクリレートは組み合わせて用いることができる。
【0045】
このようなシリル(メタ)アクリレートの内では、R2、R3およびR4が、それぞれ独立にメチル基、エチル基、n−、iso−プロピル基、sec−,tert−,iso−ブチル基等の炭素数が1〜18程度のアルキル基であるものが好ましく、さらにはR2が分岐アルキル基またはシクロアルキルであるものが好ましい。R3およびR4は、R2と同一であっても異なっていてもよい。さらには、R4R2、R3およびR4の総炭素数が5〜21程度のものが好ましい。このようなシリル(メタ)アクリレートのうちでは、特にシリル(メタ)アクリレート共重合体合成の容易性、あるいはこのようなシリル(メタ)アクリレート共重合体を用いてなる防汚塗料組成物の造膜性、貯蔵安定性、研掃性の制御のしやすさなどを考慮すると、(メタ)アクリル酸トリiso−プロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリiso−ブチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸ジsec−ブチル−メチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル−ジメチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリsec−ブチルシリルエステルが最も好ましく用いられる。
【0046】
(b) 重合性不飽和カルボン酸のエポキシ基またはオキセタン基含有アルコールエステルから誘導される成分単位
重合性不飽和カルボン酸のエポキシ基またはオキセタン基含有アルコールエステルから誘導される成分単位としては、下記式(II-1)または(II-2):
【0047】
【化6】
【0048】
[式(II-1)および(II-2)中、R3は、HまたはCH3を示し、R4は、エーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示し、W1は、
【0049】
【化7】
【0050】
(式中、複数のR5は、互いに同一でも異なっていてもよく、Hまたは炭素数1〜5のアルキル基を示し、隣接する炭素原子に結合するR5同士は他の炭素原子、たとえば、エポキシ基を構成する炭素原子などとともに互いに結合してシクロヘキシル環などの環構造、特に脂環構造を形成していてもよい。)を示す。]
で表される。W2はW1と同じものまたは炭素数1〜10のアルキル基を示す。
【0051】
このような重合性不飽和カルボン酸のエポキシ基またはオキセタン基含有アルコールエステルから誘導される成分単位は、下記不飽和カルボン酸のエポキシ基またはオキセタン基含有エステル(II-1a)または(II-2a)から誘導される。
【0052】
【化8】
【0053】
[式(II-1a)および(II-2a)中、R3、R4、W1およびW2は前記式(II-1)および(II-2)と同様である。]
このような不飽和カルボン酸のエポキシ基またはオキセタン基含有エステル(II-1a)または(II-2a)として、より具体的には、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコ二塩基酸などα,β-不飽和ジカルボン酸のエポキシ基またはオキセタン基含有アルコールエステル、および前記α,β−不飽和ジカルボン酸のハーフエステル構造である不飽和モノカルボン酸のエポキシ基またはオキセタン基含有アルコールエステルが挙げられる。
【0054】
エポキシ基含有アルコールとしては、グリシジルアルコール、3,4−エポキシシクロヘキシルメタノールなどが挙げられ、オキセタン基含有アルコールとしては、オキセタンアルコール、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどが挙げられる。
このような重合性不飽和カルボン酸のエポキシ基またはオキセタン基含有アルコールエステルのうち、特に、下記式で表される(メタ)アクリレート系単量体が望ましい。
【0055】
【化9】
【0056】
上記式中、R3、R4およびR5は前記式(II-1)および(II-2)と同様である。
このような(メタ)アクリレート系単量体としては、
【0057】
【化10】
【0058】
などが挙げられる。
これらの化合物を使用することで防食塗膜であるエポキシ樹脂塗料との付着性が向上する。その理由としては、エポキシ樹脂塗料に用いられるアミン系硬化剤とこれらの成分とに反応性があるためと思慮される。
本発明においては、このような(メタ)アクリレート系単量体は1種または2種以上組み合わせて用いることができる。このような(メタ)アクリレート系単量体のうちでは、特にシリルエステル共重合体合成の容易性、あるいはこのようなシリルエステル共重合体を用いてなる防汚塗料組成物の造膜性、貯蔵安定性、研掃性の制御のしやすさなどを考慮すると、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートまたは3−(メタ)アクリロキシメチル−3−エチルオキセタンが最も好ましく用いられる。
【0059】
不飽和単量体成分単位 (c)
不飽和単量体成分単位(c)は、上記成分単位(a)および上記成分単位(b)とともに本発明のシリルエステル共重合体を構成しており、しかも上記成分単位(a)、(b)の何れとも異なる成分単位である。
このような不飽和単量体成分単位(c)を誘導しうる不飽和単量体(c-1)としては、具体的には、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸オクチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;
スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン類;
酢酸ビニル、安息香酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;
クロトン酸エステル類、イタコン酸エステル類、フマル酸エステル類、マレイン酸エステル類等が挙げられ、これらのうちでは、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン類、ビニルエステル類が適度の塗膜強度を有する防汚塗膜が得られるため好ましい。
【0060】
また、不飽和単量体成分単位(c)として、下記式(III)で表されるアクリル系不飽和単量体成分単位(c-2)が含まれていてもよい。
【0061】
【化11】
【0062】
式(III)中、R5は、水素原子またはメチル基を示し、Zは、酸素原子または−NR7を示す。
Zが酸素原子である場合には、R6は置換基を有していてもよいヒドロキシアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基または式:
【0063】
【化12】
【0064】
で表されるポリアルキレングリコール基またはアルコキシポリアルキレングリコール(但し、R8は、アルキレン基であり、nは、2〜50の整数、oは、1〜100の整数、R9はアルキル基を示す。)を示す。
上記式(III)中のヒドロキシアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜18、さらに好ましくは2〜9であり、また上記ヒドロキシシクロアルキル基の炭素数は、好ましくは3〜10、さらに好ましくは3〜8であり、上記アルキレン基R8の炭素数は、1〜8、好ましくは2〜4であり、上記アルキル基R9の炭素数は1〜18、好ましくは1〜8である。ヒドロキシアルキル基またはヒドロキシシクロアルキル基の置換基は、好ましくは塩素などのハロゲン原子、フェニル基、ヒドロキシ基である。
【0065】
また、Zが−NR7である場合には、R7は、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、置換アミノ基、アシル基、アルコキシ基の何れかで置換されていてもよい上記と同様の炭素数のアルキル基を示し、R6は水素原子を示す。
このような不飽和単量体成分単位(c-2)を誘導しうる不飽和単量体は、下記式(III-a)で表される。
【0066】
式(III-a):
【0067】
【化13】
【0068】
式(III-a)中、R5は、上記式(III)中のR5と同様のものであって、水素原子またはメチル基を示し、Zは、上記式(III)中のZと同様のものであって、酸素原子または−NR7を示す。
Zが酸素原子である場合には、R6は置換基を有していてもよいヒドロキシアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基または式:
【0069】
【化14】
【0070】
で表されるポリアルキレングリコール基またはアルコキシポリアルキレングリコール(但し、R8は、アルキレン基であり、nは、2〜50の整数、oは、1〜100の整数、R9はアルキル基を示す。)を示す。
上記式[III-a]中のヒドロキシアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜18、さらに好ましくは2〜9であり、また上記ヒドロキシシクロアルキル基の炭素数は、好ましくは3〜10、さらに好ましくは3〜8であり、上記アルキレン基R8の炭素数は、好ましくは1〜8、さらに好ましくは2〜4であり、上記アルキル基R9の炭素数は1〜18,好ましくは1〜8である。
【0071】
また、Zが−NR7である場合には、R7は、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、置換アミノ基、アシル基、アルコキシ基の何れかで置換されていてもよいアルキル基を示し、R6は水素原子を示す。
このような不飽和単量体(III-a)としては、具体的には、たとえば、式(III-a)中、Zが酸素原子であるものとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=2)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=4)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=5)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=8)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=10)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=15)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(n=5)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(n=9)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(n=12)、2−メトキシエチルアクリレート、3−ブトキシプロピルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=35)等が挙げられる。
【0072】
また、上記式(III-a)中、Zが−NR7であるものとしては、具体的には、たとえば、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0073】
これらの不飽和単量体(III-a)のうちでは、ヒドロキシル基含有モノマーおよびZが−NR7であるモノマーが好ましく、ヒドロキシル基含有モノマーのうちでは2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレートなど、Zが−NR7であるモノマーのなかでもN−エトキシメチルアクリルアミドなどを用いると、適度の溶出性を有する防汚塗膜が得られるため好ましい。
【0074】
以上の不飽和単量体は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
本発明に係るシリルエステル共重合体中に、上記重合性不飽和カルボン酸シリルエステル成分単位(a)は、20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%の量で、重合性不飽和カルボン酸のエポキシ基またはオキセタン基含有アルコールエステル成分単位(b)は0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%の量で、その他の不飽和単量体成分単位(c)は0.5〜70重量%、好ましくは5〜60重量%((a)+(b)+(c)=100重量%)の量で含まれていることが、塗膜強度と消耗性の点で望ましい。
【0075】
またこのようなシリルエステル共重合体(A)のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量は、20万以下、好ましくは5000〜10万であることが、該シリルエステル共重合体(A)を配合した防汚塗料調製の容易性、得られた防汚塗料の塗装作業性、防汚塗膜の消耗速度、耐クラック性などの点で望ましい。
【0076】
シリルエステル共重合体(A)の製造
このようなシリル(メタ)アクリレート共重合体(A)を得るには、
前記した重合性不飽和カルボン酸シリルエステル単量体20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%と、重合性不飽和カルボン酸のエポキシ基またはオキセタン基含有アルコールエステル0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%と、前記これらの単量体と共重合しうる他の不飽和単量体0〜70重量%(但し、これらの合計100重量%)をラジカル重合開始剤の存在下に、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等の各種方法にてランダム重合させればよい。
【0077】
ラジカル重合開始剤としては、従来より公知のアゾ化合物、過酸化物などを広く用いることができ、アゾ化合物としては、具体的には、たとえば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられ、
過酸化物としては、たとえば、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシオクテート、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸塩(カリ塩、アンモニウム塩)等が挙げられる。
【0078】
上記重合物を防汚塗料に用いる場合には、上記各種重合法のうちでは、有機溶剤中で重合が行われる溶液重合法や塊状重合法が好ましく、溶液重合の際用いられる有機溶剤としては、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類;
ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;
イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール類;
ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;
メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;
等が挙げられる。これらの溶剤は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
【0079】
防汚塗料組成物
本発明に係る防汚塗料組成物は、上記したシリルエステル共重合体(A)を塗膜形成成分として、含有している。このようなシリルエステル共重合体(A)は、本発明に係る防汚塗料組成物(後述する各種添加剤、溶剤を含む)中に、2〜30重量%、好ましくは5〜20重量%の量で含まれていることが望ましい。
【0080】
このような本発明に係る防汚塗料組成物には、さらに、各種添加剤を含有している。
このシリルエステル共重合体が含有された防汚塗料組成物によれば、塗膜にクラックが発生しにくく、塗膜付着性が良好で塗膜剥離が起きにくく、塗膜の加水分解速度が良好に制御され、防汚性能あるいは防汚性のうち特に長期防汚性に優れた防汚塗膜が得られる。
【0081】
本発明に係る防汚塗料組成物(P)は、上記シリルエステル共重合体(A)を必須成分として含有しているが、このシリルエステル共重合体(A)以外に、防汚剤(B)、酸化亜鉛(亜鉛華)(C)、無機脱水剤(D)、タレ止め・沈降防止剤、ロジン等の溶出促進成分、塩素化パラフィン等の可塑剤、着色顔料、体質顔料などの各種顔料、アクリル樹脂、ポリアルキルビニルエーテル(ビニルエーテル系(共)重合体)などの各種樹脂、消泡剤、色別れ防止剤、レベリング剤などの各種添加剤などのような成分を含有していてもよい。
【0082】
以下に、このようなシリルエステル共重合体(A)以外の成分および各種添加剤について説明する。
[防汚剤(B)]
防汚剤(B)としては、無機系、有機系の何れであってもよく、従来より公知のものを広く用いることができるが、本発明においては、
銅および/または銅化合物(B−1)、金属ピリチオン類(B−2)等の有機防汚剤が好ましい。
【0083】
本発明に係る防汚塗料組成物に含有させる銅および/または銅化合物(B−1)(ピリチオン類を除く。以下同様。)について説明すると、上記銅および/または銅化合物としては、その分子量が通常63.5〜2000、好ましくは63.5〜1000のものが用いられる。
このような銅化合物(B−1)としては、有機系、無機系の銅化合物の何れであってもよく、このうち無機系の銅化合物としては、たとえば、亜酸化銅、チオシアン酸銅(チオシアン酸第一銅、ロダン銅)、塩基性硫酸銅、塩化銅、酸化銅等が挙げられ、
有機系の銅化合物としては、たとえば、塩基性酢酸銅、オキシン銅、ノニルフェノールスルホン酸銅、カツパービス(エチレンジアミン)−ビス(ドデシルベンゼンスルホネート)、ナフテン酸銅、ロジン酸銅、ビス(ペンタクロロフェノール酸)銅などが挙げられ、好ましくは無機系の亜酸化銅、チオシアン化銅(ロダン銅)が用いられる。
【0084】
このような銅化合物は、銅に代えて、あるいは銅とともに1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
このような銅および/または銅化合物は、本発明の防汚塗料組成物中に、合計で通常、1〜70重量%、好ましくは3〜65重量%の量で含まれていることが望ましい。また防汚塗料組成物中に含まれるシリルエステル共重合体(A)100重量部に対して、該銅および/または銅化合物(B−1)は、合計で通常、3〜1400重量部、好ましくは10〜1300重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0085】
この銅および/または銅化合物が、該防汚塗料組成物中にこの範囲で含まれていると、防汚性に優れた防汚塗膜を形成することができる。
本発明においては、防汚剤として、上記銅および/または銅化合物(B-1)とともに、あるいは上記銅および/または銅化合物に代えて、有機防汚剤を用いることができる。有機防汚剤としては、たとえば、金属ピリチオン類(B−2)を用いることができる。金属ピリチオン類としては、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、鉛などの金属ピリチオン類を例示できる。上記金属ピリチオン類のうちでは、銅ピリチオン、ジンクピリチオンが好ましく、とくに銅ピリチオンが好ましい。
【0086】
このようなピリチオン系化合物(B−2)は、本発明の防汚塗料組成物中に、合計で通常、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%の量で含まれていることが望ましい。また防汚塗料組成物中に含まれるシリルエステル共重合体(A)100重量部に対して、該ピリチオン系化合物(B−2)は、合計で通常、0.3〜300重量部、好ましくは2〜200重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0087】
本発明においては、このピリチオン系化合物(B−2)とともに、あるいはこのピリチオン系化合物に代えて下記の防汚剤(他の防汚剤)を含有していてもよく、このような他の防汚剤としては、従来より公知の各種防汚剤を用いることができ、具体的には、たとえば、
テトラメチルチウラムジサルファイド、カーバメート系の化合物(例:ジンクジメチルジチオカーバメート、マンガン-2-エチレンビスジチオカーバメート)、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ-s-トリアジン、4,5−ジクロロ-2-n-オクチル-4−イソチアゾリン−3−オン、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、ピリジン-トリフェニルボラン、アミン−トリフェニルボラン等を挙げることができる。
【0088】
本発明においては、このような防汚剤をジンクピリチオン(上記式(IV)で、R1〜R4=H、M=Zn、n=2のものに相当)、銅ピリチオン(上記式(IV)で、R1〜R4=H、M=Cu、n=2のものに相当)等のピリチオン系化合物(金属ピリチオン類)とともに、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。たとえば、銅ピリチオンおよび/またはジンクピリチオンと、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンとを組み合わせて用いることができる。
【0089】
また、この防汚塗料組成物中に含まれる銅および/または銅化合物(B−1)、ピリチオン系化合物(B−2)などの各種防汚剤の合計含有量は、防汚塗料組成物調製時に用いられる防汚剤、被膜形成性共重合体などの種類あるいはこのような防汚塗料組成物が塗布形成される船舶等の種類(船舶では、外航−内航用、各種海水域用、木造−鋼鉄船用等)などにもより一概に決定されないが、上記シリルエステル共重合体(A)100重量部に対して、防汚剤総量として通常10〜1400重量部の量で、好ましくは20〜1300重量部の量で含有されていることが望ましい。
【0090】
この防汚剤総量が10重量部未満では、防汚性に劣ることがあり、また1400重量部を超えるとそれ以上の防汚性は期待できない上に、耐クラック性に劣ることがある。
たとえば、防汚塗料組成物の防汚剤としてジンクピリチオンと亜酸化銅(Cu2O)とを組み合わせて用いる場合、ジンクピリチオンは、シリル(メタ)アクリレート共重合体100重量部に対して2〜200重量部の量で、また、この亜酸化銅は、上記シリルエステル共重合体100重量部に対して通常10〜1300重量部程度の量で防汚塗料組成物中に含有されていてもよい。このようにジンクピリチオンと亜酸化銅とを含有していても、この防汚塗料組成物は、前述したような従来例に係る防汚塗料と異なり貯蔵安定性に優れ、貯蔵中に増粘・ゲル化しない。
【0091】
また、たとえば、防汚塗料組成物の防汚剤として銅ピリチオンと亜酸化銅(Cu2O)とを組み合わせて用いる場合、銅ピリチオンは、シリルエステル共重合体(A)100重量部に対して2〜200重量部の量で、また、この亜酸化銅は、シリルエステル共重合体(A)100重量部に対して通常10〜1300重量部程度の量で防汚塗料組成物中に含有されていてもよい。
【0092】
[酸化亜鉛(亜鉛華)(C)]
本発明に係る防汚塗料組成物には、酸化亜鉛(亜鉛華)(C)が含有されていてもよい。このように酸化亜鉛が配合された防汚塗料組成物では、得られる塗膜強度が向上し、塗膜の研掃性を効果的に制御できる。
このような酸化亜鉛(C)は、シリルエステル共重合体(A)100重量部に対して1.5〜1200重量部の量で、好ましくは4〜600重量部の量で防汚塗料組成物中に含有されていることが望ましい。
【0093】
また、このような酸化亜鉛は、消耗度調整、塗膜硬度調整の観点から、この防汚塗料組成物中に、通常、0.5〜35重量%、好ましくは1〜25重量%の量で含まれていることが望ましい。
[無機脱水剤(D)]
本発明に係る防汚塗料組成物には、無機系あるいは有機系の脱水剤、好ましくは無機系の脱水剤(無機脱水剤(D))が配合されていてもよい。このように脱水剤が配合された防汚塗料組成物では、貯蔵安定性を一層向上させることができる。
【0094】
脱水剤としては、具体的には、たとえば、無水石膏(CaSO4)、合成ゼオライト系吸着剤(商品名:モレキュラーシーブ等)、オルソギ酸メチル、オルソ酢酸メチル等のオルソエステル類、オルソほう酸エステル、シリケート類やイソシアネート類(商品名:アディティブT1)等が挙げられ、特に無機脱水剤(D)としては、無水石膏、モレキュラーシーブが好ましく用いられる。このような無機脱水剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0095】
このような脱水剤、特に無機脱水剤は、上記シリルエステル共重合体(A)100重量部に対して、通常、0.02〜100重量部、好ましくは0.2〜50重量部の量で配合することが好ましい。
また、このような無機脱水剤は、この防汚塗料組成物中に、合計で通常、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜8重量%の量で含まれていることが望ましい。このような量で無機脱水剤が防汚塗料組成物中に含まれていると、貯蔵安定性が向上する傾向がある。
【0096】
[溶出促進成分(E)]
本発明に係る防汚塗料組成物には、溶出促進成分(E)が含まれていてもよく、たとえば、ロジン、ロジン誘導体、有機カルボン酸および有機カルボン酸金属塩などが挙げられる。
ロジンには、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどがあるが、本発明ではいずれをも使用することができる。ロジン誘導体としては、たとえば、不均化ロジン、低融点不均化ロジン、水添ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジン、アルデヒド変性ロジン、ロジンのポリオキシアルキレンエステル、還元ロジン(ロジンアルコール)、ロジンの金属塩(ロジンの銅塩、亜鉛塩、マグネシウム塩など)、ロジンアミン等が挙げられる。これらのロジンおよびその誘導体は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0097】
有機カルボン酸としては、たとえば、炭素数5〜30程度の脂肪酸、合成脂肪酸、ナフテン酸が挙げられる。有機カルボン酸の金属塩としては、Cu塩、Zn塩、Mg塩、Ca塩等が挙げられる。
これらの溶出促進成分のうちでは、ロジンまたはその誘導体が好ましい。これらの溶出促進成分は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0098】
これらの溶出促進成分が含まれている場合は、溶出促進成分は、防汚塗料組成物中に、0.1〜30重量%、好ましくは、0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜15重量%の割合で含有されていることが望ましい。溶出促進成分の配合割合は、塗膜の防汚性能および耐水性能の観点からこの範囲にあることが望ましい。また防汚塗料組成物中に含まれるシリルエステル共重合体(A)100重量部に対して、該溶出促進成分(E)は、合計で通常、0.3〜600重量部、好ましくは2〜300重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0099】
この溶出促進成分が、該防汚塗料組成物中にこの範囲にあると、防汚性や塗膜の消耗性に優れるようになる傾向がある。
[ビニルエーテル系(共)重合体(F)]
ビニルエーテル系(共)重合体は、ビニルエーテル成分単位を有し、得られる塗膜の耐クラック性、耐剥離性、溶出速度安定性等の向上に寄与し、塗膜形成成分としても機能する。
【0100】
上記ビニルエーテル系(共)重合体として具体的には、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソプロピルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテルなどを例示することができる。
このようなビニルエーテル系(共)重合体(F)が含まれている場合、防汚塗料組成物中に、合計で通常、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%の割合で含まれていることが望ましい。また防汚塗料組成物中に含まれるシリルエステル共重合体(A)100重量部に対して、該ビニルエーテル系(共)重合体は、通常、0.3〜(200)重量部、好ましくは0.6〜(150)重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0101】
このビニルエーテル系(共)重合体が、該防汚塗料組成物中にこの範囲にあると、得られる塗膜の耐クラック性、耐剥離性、溶出速度安定性に優れるようになる傾向がある。
また、ビニルエーテル系(共)重合体に代えて、あるいはビニルエーテル系(共)重合体とともに、各種の親水性基含有重合体を使用することができる。このような親水性基含有重合体としては、(メトキシ)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(共)重合体のような各種(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート(共)重合体などが挙げられ、これらの使用によって、ビニルエーテル系(共)重合体と同様の効果を得ることが可能である。
【0102】
[可塑剤(G)]
可塑剤としては、正リン酸エステル、塩素化パラフィン、フタル酸エステル、アジピン酸エステル等、通常、塗料用に用いられる可塑剤が使用される。これらの可塑剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
このような可塑剤を配合する場合には、可塑剤は、この防汚塗料組成物中に、たとえば、0.1〜10重量%の量で配合される。
【0103】
これらの可塑剤は、得られる防汚塗料組成物からなる塗膜(本明細書中では、「防汚塗膜」とも言う)の耐クラック性の向上に寄与するが、これら可塑剤のうちで、塩素化パラフィンまたはトリクレジルフォスフェート(TCP)などの正リン酸エステルが好ましく用いられる。
この塩素化パラフィンとしては、直鎖状でもよく分岐を有していていてもよく、室温で液状でも固体(粉体)でもよい。
【0104】
このような塩素化パラフィンとしては、東ソー(株)製の「トヨパラックス150」、「トヨパラックスA-70」などが挙げられる。本発明においては、このような塩素含有率、炭素数などの異なる2種以上の塩素化パラフィンを適宜組み合わせて用いることができる。
(G)可塑剤として、このような塩素化パラフィンを用いる場合は、防汚塗料組成物中に、通常、0.05〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%の割合で含まれていることが望ましい。また防汚塗料組成物中に含まれるシリルエステル共重合体(A)100重量部に対して、該塩素化パラフィンは、1〜50重量部、好ましくは2〜40重量部の量で含まれていることが望ましい。また、この塩素化パラフィンの量がこの範囲にあると、塗膜のクラックの抑制効果、塗膜強度および耐ダメージ(衝撃)に優れるようになる。
【0105】
また、(G)可塑剤として、正リン酸エステルを用いる場合、防汚塗料組成物中に、通常、0.05〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%の割合で含まれていることが望ましい。
また防汚塗料組成物中に含まれるシリルエステル共重合体(A)100重量部に対して、正リン酸エステルは、1〜50重量部、好ましくは2〜40重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0106】
このように可塑剤(G)として正リン酸エステルが含まれていると、割れ、剥がれの少ない塗膜が形成でき、また塗膜の消耗度を速めることができる。
<その他の成分>
本発明に係る防汚塗料組成物は、上記成分以外に、タレ止め・沈降防止剤、着色顔料、体質顔料などの各種顔料、溶剤、上記ビニルエーテル系(共)重合体を除くアクリル樹脂などの各種樹脂、消泡剤、色別れ防止剤、レベリング剤などの各種添加剤など、さらには下記のような成分を含有していてもよい。
【0107】
[タレ止め・沈降防止剤]
タレ止め・沈降防止剤としては、従来より公知のものが任意量で配合されていてもよい。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの塩類、ポリエチレンワックス、水添ヒマシ油ワックス系、ポリアマイドワックス系および両者の混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等が挙げられ、好ましくは水添ヒマシ油ワックス、ポリアマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックスが用いられる。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、楠本化成(株)製の「ディスパロンA-603-20X」、「ディスパロン4200-20」等の商品名で上市されているものが挙げられる。
【0108】
[顔料、溶剤]
顔料としては、従来公知の有機系、無機系の各種顔料(例:チタン白、ベンガラ、有機赤色顔料、タルクなど)を用いることができる。なお、染料等の各種着色剤も含まれていてもよい。
顔料の形態として針状、扁平状、鱗片状のものを使用することにより塗膜の耐クラック性を一層向上させることが可能である。
【0109】
溶剤としては、たとえば、脂肪族系、芳香族系(例:キシレン、トルエン等)、ケトン系、エステル系、エーテル系など通常、防汚塗料に配合されるような各種溶剤が用いられる。また、本発明に係る防汚塗料組成物中に含まれる溶剤には、上記シリルエステル共重合体を調製する際に使用した溶媒が含まれていてもよい。
【0110】
[各種樹脂]
各種樹脂としては、アクリル樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ゴム樹脂、石油樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂などが挙げられる。
[防汚塗料組成物の製造]
本発明に係る防汚塗料組成物は、従来より公知の方法を適宜利用することにより製造することができ、たとえば、上記シリルエステル共重合体(A)と、防汚剤(B)、酸化亜鉛(亜鉛華)(C)、無機脱水剤(D)、タレ止め・沈降防止剤、ロジン等の溶出促進成分、塩素化パラフィン等の可塑剤、着色顔料、体質顔料などの各種顔料、溶剤、アクリル樹脂、ポリアルキルビニルエーテル(ビニルエーテル系(共)重合体)などの各種添加剤を一度にあるいは任意の順序で加えて撹拌・混合・分散等すればよい。
【0111】
この防汚塗料組成物は、一液性で貯蔵安定性に優れ、防汚塗料の付着性、耐久性、防汚性といった各種要求性能を満足するものである。
上記のような防汚塗料組成物を水中・水上構造物すなわち海洋構造物(例:原子力発電所の給排水口)、湾岸道路、海底トンネル、港湾設備、運河・水路等のような各種海洋土木工事の汚泥拡散防止膜、船舶、漁具(例:ロープ、漁網)などの各種成形体(基材)の表面に常法に従って1回〜複数回塗布・硬化させれば、耐クラック性、防汚性に優れた防汚塗膜被覆船体または海洋構造物などが得られる。なお、この防汚塗料組成物は、直接上記船体または海洋構造物等の表面に塗布してもよく、また予め防錆剤、プライマーなどの下地材が塗布された船体または海洋構造物等の表面に塗布してもよい。さらには、既に従来の防汚塗料による塗装が行われ、あるいは本発明の防汚塗料組成物による塗装が行われている船体、海洋構造物等の表面に、補修用として本発明の防汚塗料組成物を上塗りしてもよい。このようにして船体、海洋構造物等の表面に形成された防汚塗膜の厚さは特に限定されないが、たとえば、30〜150μm/回程度である。防汚塗膜の硬化は通常、乾燥して、溶剤を揮散することによって行われる。
【0112】
【発明の効果】
本発明によれば、得られた塗膜にクラックが発生しにくく、塗膜付着性が良好で塗膜剥離が起きにくく、特にエポキシ樹脂塗料との付着性が良好で塗膜の加水分解速度が良好に制御され、防汚性特に長期防汚性に優れ、しかもこれら特性にバランスよく優れた防汚塗料組成物が得られる。
【0113】
また本発明によれば、このような優れた特性を有する塗膜および該塗膜で被覆され、上記特性を有する船体または水中構造物が提供される。
また本発明によれば、このような防汚塗料組成物を用いた、環境汚染の恐れの極めて少ない防汚方法が提供される。
【0114】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において、「部」は「重量部」の意味である。
【0115】
【製造実施例1】
シリル(メタ)アクリレート共重合体(KE−1)の製造
撹拌機、コンデンサー、温度計、滴下装置、窒素導入管、加熱・冷却ジャケットを備えた反応容器にキシレン100部を仕込み窒素を吹き込みながら85℃の温度条件に加熱撹拌を行った。
【0116】
85℃を保持しながら、滴下装置より、上記反応容器内にトリイソプロピルシリルアクリレート60部、メチルメタクリレート35部、グリシジルメタクリレート5部および重合開始剤の2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1部の混合物を2時間かけて滴下した。
その後同温度(85℃)で4時間撹拌を行った後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4部を加え更に同温度で4時間撹拌を行い、無色透明のシリル(メタ)アクリレート共重合体(KE−1)溶液を得た。
【0117】
得られた共重合体(KE−1)溶液の加熱残分(105℃の熱風乾燥機中3時間乾燥後の加熱残分)は50.3重量%であり、25℃における粘度は184cpsであり、GPCにより測定した数平均分子量(Mn)は4560であり、重量平均分子量(Mw)は17749であった。
共重合体(KE−1)のGPCクロマトグラムを図1に、IRスペクトルのチャートを図2に示す。
【0118】
GPCおよびIRの測定条件は以下の通りである。
[GPC測定条件]
装 置:東ソー社製 HLC−8120GPC
カラム:東ソー社製 Super H2000+H4000
6mm I.D.,15cm
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
流 速:0.500ml/min
検出器:RI
カラム恒温槽温度:40℃
[IR測定条件]
装 置:日立製作所製 270−30形 日立赤外分光光度計
測定方法:KBrセル、塗布法
【0119】
【製造実施例2】
共重合体(KE−2)〜(KE−8)、(H−1)および(H−2)の製造
前記共重合体(KE−1)の製造において、滴下成分の混合物の組成を表1に示すように変えた以外は、上記と同様にしてシリルエステル共重合体(KE−2)〜(KE−8)、(H−1)および(H−2)を得た。得られた共重合体について、上記製造実施例1と同様に物性値を測定した。
【0120】
結果を合わせて表1に示す。
また、共重合体(KE−2)のGPCクロマトグラムを図3に、IRスペクトルのチャートを図4に、共重合体(KE−3)のGPCクロマトグラムを図5に、IRスペクトルのチャートを図6に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
【実施例1】
防汚塗料組成物の調製
表2に示す配合組成の防汚塗料を常法に従って調製した。
すなわち、上記共重合体(KE−1)含有液[固形分50.3重量%]を26重量部、亜酸化銅43重量部、銅ピリチオン3重量部、チタン白1.8重量部、ベンガラ0.2重量部、タレ止め防止剤「ディスパロン4200-20」1.5重量部、「ディスパロンA603-20X」4重量部、溶剤(キシレン)13.5重量部を混合し、ガラスビーズをメディアとしたペイントシェーカーに仕込み、2時間振とうした後、100メッシュのフィルターにてロ過して、所望の防汚塗料組成物を得た。
【0123】
該防汚塗料組成物について常温で2ヶ月間貯蔵後の貯蔵安定性を表2に合わせて示す。
貯蔵安定性
貯蔵安定性の評価は塗料試作直後と常温2ヶ月間貯蔵後の粘度(ストーマー粘度計により測定した25℃におけるKu値)の増加度により、以下の基準で評価した。
(評価基準)
5:粘度の増加が10未満
4:粘度の増加が10以上20未満
3:粘度の増加が20以上30未満
2:粘度の増加が30以上
1:流動性がなくKu値の測定が不可
防汚塗膜性能
また、該防汚塗料組成物を用いて防汚塗膜を形成し、防汚性、消耗度、塗膜状態、エポキシ樹脂塗料(塗膜)との付着性を下記のようにして行った。
【0124】
評価結果を合わせて表2に示す。
[防汚性の評価]
広島湾の海水中に設置した回転ドラムの側面に取付け可能なように曲げ加工が施された70×200×3mmのサンドブラスト鋼板を用意した。
このサンドブラスト鋼板に、エポキシ系ジンクリッチプライマーを乾燥膜厚が20μmとなるように塗装し、翌日よりバンノ−500AC(中国塗料(株)製、エポキシ樹脂系防食塗料/アミン硬化型2液塗料)を、プライマー塗膜表面に、1回の塗装によって形成される乾燥膜厚が100μmとなるように、1日毎に2回(2日)順次重ねて塗装した。次いで、上記調製した防汚塗料組成物をその乾燥膜厚が200μmとなるように塗装・乾燥して防汚塗膜を形成し、試験板を得た。
【0125】
回転ドラムにこの試験板を取り付けて周速10ノット、50%稼動条件(夜間12時間稼動、昼間12時間停止の交互運転)にて30ヶ月間防汚性試験を行い防汚性の評価を行った。
防汚性の評価については目視で行い以下の規準を用いた。
(評価基準)
5:塗膜表面に生物の付着を認めない
4:生物の付着面積が5%未満
3:生物の付着面積が20%未満
2:生物の付着面積が50%未満
1:生物の付着面積が50%以上
[消耗性の評価]
塗膜の消耗性の評価は、下記のような条件で行った。
【0126】
直径300mmで厚さ3mmの円盤状サンドブラスト鋼板にエポキシ系ジンクリッチプライマー、エポキシ系防食塗料、ビニル系バインダーコートをそれぞれの乾燥膜厚が20μm、150μm、50μmとなるよう1日毎に順次重ねて塗装した後、7日間室内で乾燥した。
その後、隙間500μmのアプリケーターを用い供試防汚塗料組成物を円心から半径方向に放射状に塗装し、試験板を得た。
【0127】
25℃の海水を入れた恒温槽中でモーターにこの試験板を取り付け、周速15ノットで12ヶ月間回転し、円周付近の消耗度(膜厚減少)を測定した。
また、膜厚減少測定時の塗膜状態を目視で観察し、以下の規準にて評価を行った。
(評価基準)
5:塗膜に異常を認めない
4:部分的に微細なワレを認める
3:全体的に微細なワレを認める
2:部分的に顕著なワレを認める
1:全体的に顕著なワレを認める
[エポキシ樹脂塗料(塗膜)との付着性]
また、下記のような条件で付着性(エポキシ樹脂塗料(塗膜)との付着性)の評価を行った。
【0128】
70×150×2.3mmのサンドブラスト鋼板に、エポキシ系ジンクリッチプライマーを乾燥膜厚が20μmとなるように塗装し、翌日よりバンノ−500AC(中国塗料(株)製、エポキシ樹脂系防食塗料/アミン硬化型2液塗料)を、プライマー塗膜表面に、1回の塗装によって形成される乾燥膜厚が100μmとなるように、1日毎に2回(2日)順次重ねて塗装し、室温で1日乾燥後南向き45℃の角度に設置したバクロ台に取り付け1ヶ月間の間、屋外暴露した。
【0129】
その後バクロ面に、前記調製した防汚塗料組成物を、1回の乾燥膜厚が100μmとなるよう1日毎に2回順次重ねて塗装し(すなわち100μm×2回)、7日間室内で乾燥後広島湾内に設置した筏より水深1mの場所に12ヶ月間浸漬した。
試験板を引き上げ水洗、乾燥後2mm×25個のゴバン目試験を行い付着性の評価を行った。付着性の評価はバンノ−500ACと供試防汚塗料塗膜の層間ではがれず残存するゴバン目の個数により行った。
【0130】
なお、表2中の成分名称等は以下の通りである。
▲1▼「トヨパラックス150」東ソー(株)製の塩素化パラフィン
平均炭素数:14.5、塩素含有量:50%、粘度:12ポイズ/25℃、比重:1.25/25℃
▲2▼「ルトナールA−25」BASF社製のポリビニルエチルエーテル
粘度2.5〜6.0Pa・s/23℃、比重:0.96/20℃
▲3▼「ロジン溶液」WWロジンの50%キシレン溶液
▲4▼「ナフテン酸銅溶液」ナフテン酸銅のキシレン溶液
溶液中の銅含有率:8%
▲5▼「可溶性無水石膏D−1」(株)ノリタケカンパニーリミテッド製
IIICaSO4、白色粉末、平均粒径15μm
▲6▼「ディスパロン4200-20」楠本化成(株)製
酸化ポリエチレンワックス 20%キシレンペースト
▲7▼「ディスパロンA603-20X」楠本化成(株)製
脂肪酸アマイドワックス 20%キシレンペースト
【0131】
【実施例2〜10】
防汚塗料組成物の調製
実施例1において、使用するシリルエステル共重合体として、(KE−1)〜(KE−8)のいずれかを使用し、かつ防汚塗料組成物の配合を表2に示すようにして以外は、実施例1と同様にして、防汚塗料組成物を調製した。
【0132】
得られた防汚塗料組成物について、実施例1と同様にして貯蔵安定性および防汚塗膜の防汚性、消耗度、塗膜状態、エポキシ樹脂塗料(塗膜)との付着性を評価した。
結果を表2に合わせて示す。
【0133】
【比較例1〜3】
防汚塗料組成物の調製
実施例1において、使用するシリルエステル共重合体として、(H−1)、(H−2)のいずれかを使用し、かつ防汚塗料組成物の配合を表2に示すようにして以外は、実施例1と同様にして、防汚塗料組成物を調製した。
【0134】
得られた防汚塗料組成物について、実施例1と同様にして貯蔵安定性および防汚塗膜の防汚性、消耗度、塗膜状態、エポキシ樹脂塗料(塗膜)との付着性を評価した。
結果を表2に合わせて示す。
【0135】
【表2】
【0136】
表2から明らかなように、実施例1〜10のように、重合性不飽和カルボン酸のエポキシ基またはオキセタン基含有アルコールエステルから誘導される成分単位を含むシリルエステル共重合体を含む防汚塗料組成物は、貯蔵安定性が高く、防汚塗膜を形成したときに、長期防汚性に優れ、塗膜の加水分解速度が良好に制御されているとともに、エポキシ樹脂塗料との付着性が良好である。
【0137】
これに対し、比較例1〜3のように、重合性不飽和カルボン酸のエポキシ基またはオキセタン基含有アルコールエステルから誘導される成分単位を含んでいないシリルエステル共重合体を含む防汚塗料組成物は、防汚塗膜を形成したときに、エポキシ樹脂塗料との付着性が不充分であり、また加水分解速度と防汚性能とのバランスが悪く、長期防汚性および被膜の消耗性が不充分である。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造実施例1で製造したシリルエステル共重合体(KE−1)のGPCクロマトグラムを示す。
【図2】製造実施例1で製造したシリルエステル共重合体(KE−1)のIRスペクトルのチャートを示す。
【図3】製造実施例2で製造したシリルエステル共重合体(KE−2)のGPCクロマトグラムを示す。
【図4】製造実施例2で製造したシリルエステル共重合体(KE−2)のIRスペクトルのチャートを示す。
【図5】製造実施例2で製造したシリルエステル共重合体(KE−3)のGPCクロマトグラムを示す。
【図6】製造実施例2で製造したシリルエステル共重合体(KE−3)のIRスペクトルのチャートを示す。
Claims (9)
- (a)重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位と、(b)重合性不飽和カルボン酸のエポキシ基またはオキセタン基含有アルコールエステルから誘導される成分単位と、(c)上記(a)成分単位以外の他の重合性不飽和単量体単位とから構成されるシリルエステル共重合体(A)と防汚剤(B)を含有し、
重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位(a)が、下記式(I)で表されるシリル(メタ)アクリレートから誘導される成分単位を含有することを特徴とする船体ないし水中構造物用防汚塗料組成物。
- 前記式(I)中、R2が分岐アルキル基またはシクロアルキルであることを特徴とする請求項1に記載の防汚塗料組成物。
- 重合性不飽和カルボン酸のエポキシ基またはオキセタン基含有アルコールエステルから誘導される成分単位(b)が、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートまたは3−(メタ)アクリロキシメチル−3−エチルオキセタンから誘導される成分単位であることを特徴とする請求項1または2に記載の防汚塗料組成物。
- さらに、酸化亜鉛(C)を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
- さらに、無機脱水剤(D)を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
- さらに、溶出促進成分(E)を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の防汚塗料組成物から形成されてなることを特徴とする防汚塗膜。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の防汚塗料組成物から形成された防汚塗膜で表面を被覆された船舶、水中構造物または漁具・漁網。
- 船舶、水中構造物または漁具・漁網の基材表面に、請求項1〜6のいずれかに記載の防汚塗料組成物を塗布し硬化させて、得られた塗膜で、上記基材表面を被覆する船舶、水中構造物または漁具・漁網の防汚方法。
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