JP4776839B2 - 防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている防汚塗膜、該防汚塗料組成物を用いた防汚方法および該塗膜で被覆された船体または水中構造物 - Google Patents

防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている防汚塗膜、該防汚塗料組成物を用いた防汚方法および該塗膜で被覆された船体または水中構造物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体を含有する防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている防汚塗膜、該防汚塗料組成物を用いた防汚方法および該塗膜で被覆された船体または水中構造物に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
船底、水中構造物、漁網などは、水中に長期間さらされることにより、その表面に、カキ、イガイ、フジツボ等の動物類、ノリ(海苔)等の植物類、あるいはバクテリア類などの各種水棲生物が付着・繁殖すると、外観が損ねられ、その機能が害されることがある。
【0003】
特に船底にこのような水棲生物が付着・繁殖すると、船底の表面粗度が増加し、船速の低下、燃費の拡大などを招くことがある。また、このような水棲生物を船底から取り除くには、多大な労力、作業時間が必要となる。また、バクテリア類が水中構造物などに付着・繁殖し、さらにそこにスライム(ヘドロ状物)が付着して腐敗を生じたり、さらに大型の付着生物が鉄鋼構造物などのような水中構造物の表面に付着・繁殖してその水中構造物の腐食防止用の塗膜などを損傷すると、その水中構造物の強度や機能が低下し寿命が著しく低下する等の被害が生ずる虞がある。
【0004】
従来では、このような被害を防止すべく、船底などには防汚性に優れた防汚塗料として、たとえば、トリブチル錫メタクリレートとメチルメタクリレート等との共重合体と、亜酸化銅(Cu2O)とを含有するものが塗布されていた。この防 汚塗料中の該共重合体は、海水中で加水分解されてビストリブチル錫オキサイド(トリブチル錫エーテル,Bu3Sn-O-SnBu3:Buはブチル基)あるいはトリブチル錫ハロゲン化物(Bu3SnX:Xはハロゲン原子)等の有機錫化合物を放出して防汚効果を発揮するとともに、加水分解された共重合体自身も水溶性化して海水中に溶解していく「加水分解性自己研磨型塗料」であるため、船底塗装表面は、樹脂残渣が残らず、常に活性な表面を保つことができる。
【0005】
しかしながら、このような有機錫化合物は、毒性が強く、海洋汚染、奇形魚類や奇形貝類の発生、食物連鎖による生態系への悪影響などが懸念され、これに代わり得るような錫を含有せずに防汚性の良好な防汚塗料の開発が求められている。
このような錫を含有しない防汚塗料としては、たとえば、▲1▼特開平4-264170号公報、▲2▼特開平4-264169号公報、▲3▼特開平4-264168号公報に記載のシリルエステル系防汚塗料が挙げられる。しかしながら、これらの防汚塗料には、▲4▼特開平6-157941号公報、▲5▼特開平6-157940号公報などにも教示されているように、防汚性に劣り、クラック、剥離が生ずるとの問題点がある。
【0006】
また、▲6▼特開平2-196869号公報には、トリメチルシリルメタクリレート、エチルメタクリレートおよびメトキシエチルアクリレートをアゾ系重合開始剤の存在下に共重合してなり、トリメチルシリル基によりブロックされたカルボン酸基を含有するブロックされた酸官能性コポリマー(A)と、多価カチオンの化合物(B)とを含有する防汚塗料が教示されている。しかしながら、この防汚塗料から得られる塗膜は、耐クラック性が充分満足しうるものではないという問題点がある。
【0007】
▲7▼特表昭60-500452号および特開昭63-215780号公報には、(メタ)アクリル酸のトリアルキルシリルエステルなどのオルガノシリル基を有するビニル系単量体などを他のビニル系単量体と共重合させてなり、数平均分子量が3000〜40000の防汚塗料用樹脂が記載され、さらにオルトギ酸トリメチル等の有機系水結合剤、酸化第一銅等の防汚剤、ベンガラ等の顔料などを配合し得る旨記載されているが、上記▲5▼特開平6-157940号公報にも記載されているように、この防汚塗料用樹脂は、貯蔵中にゲル化しやすく、この防汚塗料から形成される塗膜は、耐クラック性、耐剥離性に劣るとの問題点がある。
【0008】
また上記▲7▼特表昭60-500452号に対応する特公平5-32433号公報には、毒物(a)と、式([−CH2-CX(COOR)−(B)−]:XはHまたはCH3であり、RはSiR'3又はSi(OR')3でR'はアルキル基などを示し、Bはエチレン性不飽和単量体残基を示す)で表される反復単位を有し、特定の加水分解速度などを有する重合体結合材(b)とからなる防汚塗料が開示され、さらに溶剤、水感受性顔料成分、不活性顔料、充填剤、遅延剤を含有し得る旨記載されているが、この公報記載の防汚塗料から得られる塗膜は、耐クラック性に劣るとの問題点がある。
【0009】
▲8▼特開平7-18216号公報には、(A)分子内に、式(I):-COO-SiR123(R1〜R3は炭素数1〜18のアルキル基などを示す)で表されるトリ有機珪素エステル基を有する有機珪素含有単量体Aの重合体と、(B)銅または銅化合物とを主成分とする塗料組成物において、上記の(A),(B)成分以外の必須成分として、(C)式:
【0010】
【化3】
Figure 0004776839
【0011】
((C)中、R4〜R6は水素原子、炭素数1〜18のアルコキシ基、シクロアルコキシ基、などを示し、R7は炭素数1〜18のアルキル基などを示し、nは1〜3の整数を示す)で表されるアルコキシ基含有珪素化合物を含有した塗料組成物が開示されている。また、該公報には、上記式(I)で表される基を有する単量体Aと共重合可能なビニル系単量体Bとの共重合体ABが含まれていてもよい旨記載され、単量体Bとして、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられている。
【0012】
しかしながら、該公報に記載の塗料組成物から得られる塗膜は、耐クラック性や防汚性あるいは防汚性のうち特に高汚損環境下における防汚性に劣るとの問題点がある。なお、高汚損環境下とは、船舶または水中構造物が内海などの富栄養海域環境やさらにそのような海域で静置されたり、あるいは船舶などでは運航〜停止を頻繁に繰り返したり10ノット以下程度の低速で稼動しているような状態を指す。
【0013】
なお、▲9▼特開平7-102193号公報には、式:X−SiR123(ただし、式中R1〜R3はいずれもアルキル基、アリール基の中から選ばれた基であって、互いに同一の基であっても異なる基であってもよい。Xはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基またはフマロイルオキシ基である。)で表される単量体Aと、
式:Y−(CH2CH2O)n−R4(ただし、R4はアルキル基またはアリール基であり、Yはアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基であり、nは1〜25の整数である。)で表される単量体Bとを含む単量体混合物の共重合体と、防汚剤とを必須成分として含有する塗料組成物が開示されている。さらに、該防汚剤としては、無機化合物として亜酸化銅、銅粉等の銅化合物、硫酸亜鉛、酸化亜鉛等が挙げられ、金属を含む有機化合物としてオキシン銅等の有機銅系化合物;有機ニッケル系化合物;ジンクピリチオン等の有機亜鉛系化合物;が挙げられている。しかしながら、該公報には、(ポリ)オキシアルキレンのブロック構造を有する有機シリルエステル基含有重合体は何ら示されていない上に、該公報に記載の塗料では防汚性あるいは高汚損環境下における防汚性に劣るとの問題点がある。
【0014】
(10)特開平8-199095号公報には、上記特開平7-102193号公報に記載の式(1):X−SiR123で表される単量体Aと、
式(2):Y−(CH(R4))−(OR5)(ただしR4はアルキル基、R5はアルキル基またはシクロアルキル基である。Yはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基またはフマロイルオキシ基である。)で表される単量体Bと、必要によりこれらA、Bと共重合可能なビニル系単量体Cとを含む単量体混合物の共重合体と、防汚剤とを必須成分として含有する塗料組成物が開示されている。このビニル系単量体Cとしては、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられている。さらに、該防汚剤としては、無機化合物として亜酸化銅、銅粉等の銅化合物、硫酸亜鉛、酸化亜鉛等が挙げられ、金属を含む有機化合物としてオキシン銅等の有機銅系化合物;有機ニッケル系化合物;ジンクピリチオン等の有機亜鉛系化合物;が挙げられている。
【0015】
(11)特開平8-269388号公報には、式(1):X−SiR123(ただし、式中R1〜R3はいずれも炭素数1〜20の炭化水素基であって、互いに同一の基であっても異なる基であってもよい。Xはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基である。)で表される単量体Aと、式(2):Y−(CH2CH2O)n−R4(ただしR4はアルキル基またはアリール基であり、Yはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基であり、nは1〜25の整数である。)で表される単量体Bとを含む単量体混合物の共重合体と、ビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)銅塩(:銅ピリチオン)とを、必須成分として含有する塗料組成物が開示されている。さらに、上記単量体Aとして、ジメチル−t−ブチルシリルアクリレート等が挙げられ、上記防汚剤としては、無機化合物として亜酸化銅、銅粉等の銅化合物、硫酸亜鉛、酸化亜鉛等が挙げられ、金属を含む有機化合物としてオキシン銅等の有機銅系化合物;有機ニッケル系化合物;ジンクピリチオン・等の有機亜鉛系化合物;が挙げられている。また、添加可能な溶解速度調整剤としてロジン、ロジン誘導体などが挙げられている。
【0016】
(12)特開平8-269389号公報には、トリオルガノシリル基を有する不飽和単量体Aと、下記式(2)〜(9)の何れかで表される単量体Bとを含む単量体混合物の共重合体と、防汚剤とを含有する塗料組成物が開示されている。
各単量体Bは、それぞれ下記の通りである。
式(2)CH2=CR4COOR5−NR67(R4 は、HまたはCH3を示し、R5はアルキレン基を示し、R6、R7は、アルキル基であって、互いに同一でも異なっていてもよい。)で示される三級アミノ基含有単量体、
式(3)CH2=CR8COOR9−NR101112 (Y)(R8はHまたはCH3を示し、R9はアルキレン基を示し、R10〜R12は、アルキル基であって、互いに同一でも異なっていてもよく、Yはハロゲン原子を示す。)で示される四級アンモニウム塩含有単量体、
式(4)CH2=CH−Z(ZはN含有複素環からなる基を示す。)で示される窒素含有複素環を含む単量体、
式(5)CH2=CR13COO(R14O)m(R15O)n(R16O)o−R17 (R13は、H、CH3を示し、R14はエチレン基を示し、R15は炭素数3のアルキレン基を示し、R16は炭素数4のアルキレン基を示し、R17はアルキル基、アリール基を示す。m、n、oは0以上の整数でn、oは同時に0でない。)で示される分子内にアルコキシ基またはアリーロキシアルキレングリコール基を有する単量体、
式(6)CH2=CR18CONR1920(R18は、H、CH3を示し、R19、R20は、アルキル基であり互いに同一でも異なっていてもよい。)で示される(メタ)アクリル酸アミド、
式(7)CH2=CR21CON()Q(R21は、H、CH3を示し、N()Qは、N含有基で、QにO、N、S等を含有してもよい。)で示される窒素含有環状炭化水素基を含む(メタ)アクリル酸アミド、
式(8)CH2=CR23COOCH2−T(R23は、H、CH3を示し、Tは、フラン環、テトラヒドロフラン環を示す。)で示されるフラン環含有(メタ)アクリル酸系エステル、
式(9)CH2=CH−CN。
【0017】
また、上記単量体A、Bと共重合可能な任意成分として、アクリル酸、アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等種々の共重合性モノマーが挙げられている。
またその実施例には、トリn−ブチルシリルアクリレート(TBSA)とジエチルアミノエチルメタクリレート(DEAEMA)とメチルメタクリレート(MMA)とからなる共重合体や、トリn−ブチルシリルアクリレート(TBSA)とN,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)とメチルメタクリレート(MMA)とからなる共重合体等が示されているが、(ポリ)オキシアルキレンのブロック構造を有する有機シリルエステル基含有共重合体は何ら示されていない。
【0018】
また、該組成物に配合可能な成分として、上記特開平8-269388号公報に記載の防汚剤と同様の防汚剤が挙げられている。
(13)特開平8-269390号公報には、式(1):X−SiR123(ただし、式中R1〜R3は何れもアルキル基、アリール基の中から選ばれた基であって、互いに同一の基であっても異なる基であってもよい。Xはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基である。)で表される単量体Aを用いた重合体と、
式(2):Y−(CH2CH2O)n−R4(ただしR4はアルキル基またはアリール基であり、Yはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基であり、nは1〜25の整数である。)で表される単量体Bを用いた重合体と、
防汚剤とを含む塗料組成物が開示されている。上記防汚剤としては、上記特開平8-269388号公報に記載の防汚剤と同様の防汚剤が挙げられている。また、添加可能な成分としてロジン等の樹脂、沈降防止剤などが挙げられている。
【0019】
(14)特開平8-277372号公報には、前記(11):特開平8-269388号公報に記載の式(1):X−SiR123で表される単量体Aと、同じく同公報に記載の式(2):Y−(CH2CH2O)n−R4で表される単量体Bとを含む単量体混合物の共重合体と、トリフェニルボロンピリジン錯体とを含有し、樹脂成分および海棲生物付着阻害剤が金属を含まない重合体および金属を含まない有機系阻害剤のみで構成された塗料組成物が開示されている。また、添加可能な溶解速度調整剤としてロジン、ロジン誘導体などが挙げられている。
【0020】
(15)特開平10-30071号公報には、(A)ロジン、ロジン誘導体またはロジン金属塩からなるロジン系化合物の1種または2種以上と、(B)式(1):X−SiR123(ただし、式中R1〜R3は何れもアルキル基、アリール基の中から選ばれた基であって、互いに同一の基であっても異なる基であってもよい。Xはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基、イタコノイルオキシ基、シトラコノイルオキシ基である。)で表される単量体Mの1種または2種以の重合体、および/または、該単量体Mの1種または2種以上とそれ以外の重合性単量体の1種または2種以上との重合体からなる有機シリルエステル基含有重合体と、(C)防汚剤とを含む塗料組成物が開示されている。また、単量体Mと共重合可能な任意成分としての他の単量体として、アクリル酸、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等が挙げられているが、該公報には、(ポリ)オキシアルキレンのブロック構造を有する有機シリルエステル基含有重合体は何ら示されていない。
【0021】
なお、上記防汚剤としては、上記特開平8-269388号公報に記載の防汚剤と同様の防汚剤が挙げられている。また、添加可能な成分として、顔料、塩素化パラフィン、沈降防止剤などが挙げられている。
しかしながらこれら▲9▼〜(15)には、(ポリ)オキシアルキレンのブロック構造を有する有機シリルエステル基含有共重合体は何ら示されておらず、また、これら公報に記載の塗料組成物では、得られる塗膜は耐クラック性に劣るか、あるいは得られる塗膜は耐クラック性、耐剥離性(塗膜付着性)、防汚性能あるいは防汚性のうち特に高汚損環境下における防汚性や、長期防汚性、自己研磨性などのバランスの点で充分でない。
【0022】
さらに、(16)特公平5−82865号公報には、共重合可能な任意成分として、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等が挙げられている。また(17)特開平9−48947号公報、(18)特開平9−48948号公報、(19)特開平9−48949号公報、(20)特開平9−48950号公報、(21)特開平9−48951号公報、(22)特公平5−32433号公報、(23)USP4,593,055、(24)特開平2−1968669号公報、(25)WO91/14743には、シリル(メタ)アクリレート系共重合体が記載されている。しかしながら、これら公報(16)〜(25)には、(ポリ)オキシアルキレンのブロック構造を有する有機シリルエステル基含有共重合体は何ら示されていない。また、これら公報(16)〜(25)に記載の共重合体を用いた防汚塗料では、得られる塗膜は耐クラック性に劣るか、あるいは得られる塗膜は耐クラック性、耐剥離性(塗膜付着性)、防汚性能あるいは防汚性のうち特に高汚損環境下における防汚性や、長期防汚性、自己研磨性などのバランスの点でさらなる改良の余地がある。
【0023】
また、(26)特開昭63−215780号公報には、共重合成分としてメチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、アクリルアミド等を用いた共重合体が示され、該共重合体と亜酸化銅とを配合した防汚塗料が示されているが、上記公報に記載の防汚塗料などと同様の問題点がある。
また、(27)WO96/03465には、3から8官能の多官能メルカプト化合物を用いて得られるスター型ポリマーが記載されており、このポリマーは低粘度のため、高固型分濃度の塗料の調製が可能で貯蔵中に増粘やゲル化を生じにくい傾向にあるとの記載されている。また、該WO96/03465公報には、モノマーとして不飽和カルボン酸シリルエステルを使用する旨が使用されている。しかしながら(ポリ)オキシアルキレンのように親水性を有し、防汚塗料の防汚性能を向上するようなブロック構造を有する有機シリルエステル基含有共重合体は何ら示されていない上に、少なくともAB型あるいはABA型のブロック共重合体は示されていない。
【0024】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、塗膜にクラックが発生しにくく、塗膜付着性が良好で塗膜剥離が起きにくく、塗膜の加水分解速度が良好に制御され、防汚性能(防汚活性)あるいは防汚性のうち特に高汚損環境下における防汚性や、長期防汚性に優れた防汚塗膜が得られる防汚塗料を得ることが可能な防汚塗料組成物を提供することを目的としている。
【0025】
さらに本発明は、このような防汚塗料組成物から形成されている防汚塗膜、該防汚塗料組成物を用いた防汚方法および該塗膜で被覆された船体または水中構造物を提供することを目的としている。
【0026】
【発明の概要】
本発明に係る防汚塗料組成物は、
[A-1](a)重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位と、
(b)上記(a)成分単位以外の他の重合性不飽和単量体単位と
から構成されるシリルエステル共重合体ブロック単位と、
[A-2]下記式(1)または(2)で表されるメルカプト化合物
【0027】
【化4】
Figure 0004776839
【0028】
(上記式中、1価以上の炭素数1〜30の炭化水素基またはエーテル結合含有炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜30の二価炭化水素基または−CH(R3)−で表される基を示し、R3はR4−O−R5で表される基を示し、R4は炭素数1〜30の二価炭化水素基を示し、R5は炭素数1〜30の一価の炭化水素基を示す。
【0029】
【化5】
Figure 0004776839
【0030】
nは1〜5の整数を示し、mは1〜100の整数を示し、lは1〜5の整数を示し、kは0〜100の整数を示し、aは0または1の整数を示し、jは1〜50の整数を示し、iはR1の価数を示す。)
から誘導されるブロック単位と
からなる(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体を含有することを特徴としている。
【0031】
前記重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位(a)として、下記式(I)で表されるシリル(メタ)アクリレートから誘導される成分単位(a-1)を含有することが好ましい。
−CH2−CR(COOSiRabc)− …(I)
(式(I)中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、Ra、Rb、Rcは、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、トリメチルシリルオキシ基を示す。)
上記式(I)中のRa、Rb、Rcの少なくとも1つが、分岐アルキル基またはシクロアルキル基であることが好ましい。
【0032】
このような重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位(a)は、下記式(II)で表されるシリル(メタ)アクリレート成分単位(a-2)と
−CH2−CR(COOSiR111213)− …(II)
(式(II)中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、R11およびR12は、それぞれ独立に、炭素数が1〜10の直鎖アルキル基または置換されていてもよいフェニル基またはトリメチルシリルオキシ基を示し、R13は、環構造または分岐を有していてもよい炭素数が1〜18のアルキル基、炭素数が6〜10の置換されていてもよいフェニル基、またはトリメチルシリルオキシ基を示す。)
下記式(III)で表されるシリル(メタ)アクリレート成分単位(a-3)と
−CH2−CR(COOSiR141516)− …(III)
(式(III)中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、R14およびR15は、それぞれ独立に、炭素数が3〜10の分岐またはシクロアルキル基を示し、
16は、炭素数が1〜10の直鎖アルキル基、炭素数が3〜10の分岐またはシクロアルキル基、または炭素数が6〜10の置換されていてもよいフェニル基またはトリメチルシリルオキシ基を示す。)
からなることが好ましい。
【0033】
前記(a)成分単位以外の他の重合性不飽和単量体単位(b)は、
(b-1)極性基含有アクリル系不飽和単量体から誘導される成分単位からなることが好ましい。
前記極性基含有アクリル系不飽和単量体から誘導される成分単位(b-1)は、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、アルコキシル基、ポリオキシアルキレン基、アルキルポリオキシアルキレン基、アミノ基、N置換アミノ基、アミド基、N置換アミド基、エポキシ基、オキシラン基、テトラヒドロフルフリル基およびモルホリノ基からなる群から選ばれる一種以上の極性基を有していることが好ましい。
【0034】
本発明に係る防汚塗料組成物は、さらに防汚剤(B)を含有していることが好ましい。
本発明に係る防汚塗料組成物は、さらに、酸化亜鉛(C)を含有していることが好ましい。
本発明に係る防汚塗料組成物は、さらに、無機脱水剤(D)を含有していることが好ましい。
【0035】
本発明に係る防汚塗料組成物は、さらに溶出促進成分(E)を含有していることが好ましい。
本発明に係る防汚塗膜は、前記記載の防汚塗料組成物から形成されてなることを特徴としている。
本発明に係る船体または水中構造物の防汚方法は、上記記載の防汚塗料組成物を用いることを特徴としている。
【0036】
本発明に係る船体または水中構造物は、上記記載の防汚塗料組成物からなる塗膜にて船体または水中構造物の表面が被覆されていることを特徴としている。
本発明に係る防汚塗料組成物には、特定の(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体が含まれているので、塗膜にクラックが発生しにくく、塗膜付着性が良好で塗膜剥離が起きにくく、塗膜の加水分解速度が良好に制御され、防汚性能(防汚活性)あるいは防汚性のうち特に高汚損環境下における防汚性や、長期防汚性に優れ、しかもこれら特性にバランスよく優れた防汚塗膜を得ることが可能な防汚塗料組成物が提供される。
【0037】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る防汚塗料組成物について具体的に説明する。
本発明に係る防汚塗料組成物は、
[A-1](a)重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位と、(b)上記(a)成分単位以外の他の重合性不飽和単量体単位とから構成されるシリルエステル共重合体ブロック単位と、
[A-2]特定のメルカプト化合物から誘導されるブロック単位と
からなる(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体を含んでいる。なお、(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体における「(ポリ)オキシアルキレン」とは、シリルエステル共重合体中にオキシアルキレンまたはポリオキシアルキレンが含まれていることを意味する。
【0038】
[(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体]
シリルエステル共重合体ブロック単位( A-1
まず、このシリルエステル共重合体ブロック単位(A-1)を構成する各成分単位(a)および(b)について説明する。
(a) 重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位
重合性不飽和カルボン酸シリルエステルとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコ二塩基酸などのα,β-不飽和ジカルボン酸、α,β-不飽和ジカルボン酸のハーフエステル構造である不飽和モノカルボン酸などのシリルエステルが挙げられる。
【0039】
このような重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位としては、シリル(メタ)アクリレートから誘導される成分単位(a-1)が好ましい。
このようなシリル(メタ)アクリレートから誘導される成分単位としては、具体的には下記式(I)で表される。
−CH2−CR(COOSiRabc)− …(I)
上記式(I)中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、Ra、Rb、Rcは、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、トリメチルシリルオキシ基、の何れかを示し、上記直鎖アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜18、さらに好ましくは1〜6であり、分岐アルキル基またはシクロアルキル基の炭素数は、好ましくは3〜10、さらに好ましくは3〜8である。また、上記フェニル基中の水素原子と置換可能な置換基としては、アルキル、アリール、ハロゲンなどが挙げられ、置換基を有していてもよいフェニル基の炭素数は6〜18、好ましくは6〜12の範囲にある。
【0040】
このようなシリル(メタ)アクリレート成分単位を誘導しうるシリル(メタ)アクリレート(a-1)は、下記式(i)で表される。
式(i):
【0041】
【化6】
Figure 0004776839
【0042】
式(i)中、Rは、上記式(I)中のR1と同様のものであって、水素原子またはメチル基を示し、Ra、Rb、Rcも上記式(I)中のRa、Rb、Rcと同様のものであって、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、トリメチルシリルオキシ基の何れかを示す。
【0043】
このようなシリル(メタ)アクリレート(a-1)としては、具体的には、たとえば、(メタ)アクリル酸トリメチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリエチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリブチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリsec−ブチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリiso−ブチルシリルエステル等のようにRa、RbおよびRcが同一のシリル(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸ジsec−ブチル−メチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル−ジメチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸モノメチルジプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸メチルエチルプロピルシリルエステル等のようにRa、RbおよびRcのうちの1部または全部が互いに異なったシリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0044】
このようなシリル(メタ)アクリレート成分単位(a-1)を含む共重合体は、防汚塗料用ビヒクルとして使用すると、自己研磨性(消耗性)に優れるとともに、長期間の防汚性に優れた防汚塗膜を形成できる。
本発明では、前記式(I)で表されるシリル(メタ)アクリレートから誘導される成分単位(a-1)のRa〜Rcの少なくとも1つが、分岐アルキル基またはシクロアルキル基あることが好ましい。このような分岐アルキル基またはシクロアルキル基を有する成分を、防汚塗料用ビヒクルとして使用すると、耐クラック性、耐剥離性に優れた防汚塗膜を形成できる。
【0045】
また、(a)重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位として、下記式(II)で表されるシリル(メタ)アクリレート成分単位(a-2)と
−CH2−CR(COOSiR111213)− …(II)
(式(II)中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、R11およびR12は、それぞれ独立に、炭素数が1〜10の直鎖アルキル基または置換されていてもよいフェニル基またはトリメチルシリルオキシ基を示し、R13は、環構造または分岐を有していてもよい炭素数が1〜18のアルキル基、炭素数が6〜10の置換されていてもよいフェニル基、またはトリメチルシリルオキシ基を示す。)
下記式(III)で表されるシリル(メタ)アクリレート成分単位(a-3)と
−CH2−CR(COOSiR141516)− …(III)
(式(III)中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、R14およびR15は、それぞれ独立に、炭素数が3〜10の分岐またはシクロアルキル基を示し、
16は、炭素数が1〜10の直鎖アルキル基、炭素数が3〜10の分岐またはシクロアルキル基、または炭素数が6〜10の置換されていてもよいフェニル基またはトリメチルシリルオキシ基を示す。)
からなることが好ましい。
【0046】
以下、この各成分単位について説明する。
シリル(メタ)アクリレート成分単位 (a-2)
シリル(メタ)アクリレート成分単位(a-2)は、下記式(II)で表される。
−CH2−CR(COOSiR111213)− …(II)
式(II)中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、R11およびR12は、それぞれ独立に、炭素数が1〜10、好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜6の直鎖アルキル基または置換されていてもよいフェニル基またはトリメチルシリルオキシ基を示す。上記直鎖アルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基が挙げられる。
【0047】
上記フェニル基中の水素原子と置換可能な置換基としては、アルキル、アリール、ハロゲンなどが挙げられる。
13は、環構造または分岐を有していてもよい炭素数が1〜18、好ましくは1〜12、さらに好ましくは1〜9のアルキル基、炭素数が6〜10、好ましくは6〜8の置換されていてもよいフェニル基、またはトリメチルシリルオキシ基:「(CH3)3SiO−」である。
【0048】
このようなアルキル基としては、上記例示した直鎖状アルキル基の他;
iso−プロピル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、neo−ペンチル基等の分岐状アルキル基;
シクロヘキシル基、エチリデンノルボニル基等の脂環構造(シクロヘキサン環、ノルボルナン環)を有する脂環式アルキル基;
等が挙げられる。
【0049】
これらのなかでも、R11、R12、R13としては、互いに同一でも異なっていてもよいが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、トリメチルシリルオキシ基が好ましく、特に、メチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基が好ましい。
このようなシリル(メタ)アクリレート成分単位(a-2)を誘導しうるシリル(メタ)アクリレート(a-2)は、下記式(ii)で表される。
【0050】
CH2=CR(COOSiR111213) …(ii)
式(ii)中、Rは、上記式(II)中のRと同様のものであり、R11〜R13も上記式(II)中のR11〜R13と同様のものである。
このようなシリル(メタ)アクリレート(a-2)としては、具体的には、(メタ)アクリル酸トリメチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸トリエチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸トリn−プロピルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸トリn−ブチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸トリn−ペンチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸トリn−ヘキシルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸トリn−ヘプチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸トリn−オクチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸トリn−ノニルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸トリn−デシルシリルエステルのようにR11〜R13が同一の脂肪族系シリル(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリル酸トリフェニルシリルエステルの他、(メタ)アクリル酸トリス(トリメチルシリルオキシ)シリルエステル等のR11〜R13が同一の芳香族系あるいはシロキサン系シリル(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリル酸ジメチルn−プロピルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸イソプロピルジメチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸ジn−ブチル−iso−ブチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸n−ヘキシル−ジメチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸sec−ブチル−ジメチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸モノメチルジn−プロピルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸メチルエチルn−プロピルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸エチリデンノルボルニル−ジメチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸トリメチルシリルオキシ−ジメチルシリルエステル(CH2=C(CH3)COOSi(CH3)2(OSi(CH3)3)、CH2=CHCOOSi(CH3)2(OSi(CH3)3))等のようにR11〜R13のうちの一部または全部が互いに異なった脂肪族系のシリル(メタ)アクリレート類;
等が挙げられる。
【0051】
これらのシリル(メタ)アクリレート(a-2)は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
シリル(メタ)アクリレート成分単位 (a-3)
シリル(メタ)アクリレート成分単位(a-3)は、下記式(III)で表される。
−CH2−CR(COOSiR141516)− …(III)
式(III)中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、R14およびR15は、それぞれ独立に、炭素数が3〜10、好ましくは3〜8の分岐アルキル基または炭素数が3〜10、好ましくは3〜9のシクロアルキル基を示す。
【0052】
上記分岐アルキル基としては、上記式(II)中のものと同様に、iso-プロピル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、neo-ペンチル基等の分岐状アルキル基が挙げられる。
上記シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基、エチリデンノルボルニル基が挙げられる。
【0053】
16は、炭素数が1〜10、好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜6の直鎖アルキル基、炭素数が3〜10、好ましくは3〜9の分岐またはシクロアルキル基、または炭素数が6〜10、好ましくは6〜8の置換されていてもよいフェニル基、またはトリメチルシリルオキシ基を示す。
このR16中の直鎖アルキル基、分岐またはシクロアルキル基、フェニル基などとしては、具体的には、上記と同様の基を挙げることができる。
【0054】
これらのうちでは、R14、R15、R16としては、互いに同一でも異なっていてもよいが、同一の場合には、iso-プロピル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基が好ましく、特に、iso-プロピル基、sec-ブチル基が好ましい。 また、R14、R15、R16の一部または全部が異なる場合には、R14、R15は互いに同一でも異なっていてもよいが、R14、R15としては、iso-プロピル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が好ましく、R16としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso-ブチル基、トリメチルシリルオキシ基が好ましい。
【0055】
このようなシリル(メタ)アクリレート成分単位(a-3)を誘導しうるシリル(メタ)アクリレート(a-3)は、下記式(iii)で表される。
CH2=CR(COOSiR141516) …(iii)
式(iii)中、R、R14、R15、R16は、上記式(II)中のR、R14、R15、R16と同様のものである。
【0056】
このようなシリル(メタ)アクリレート(a-3)としては、具体的には、たとえば、
(メタ)アクリル酸トリiso-プロピルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸トリiso-ブチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸トリsec-ブチルシリルエステルのようにR14、R15およびR16が同一のシリル(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸ジiso-プロピル−シクロヘキシルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸ジiso-プロピル−フェニルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸ジiso-プロピル−トリメチルシロキシシリルエステル、
(メタ)アクリル酸ジsec-ブチル−メチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸ジsec-ブチル−エチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸ジsec-ブチル−トリメチルシリルオキシシリルエステル、
(メタ)アクリル酸iso-プロピル−sec-ブチル−メチルシリルエステルのように、R14、R15およびR16のうちの1部または全部が互いに異なったシリル(メタ)アクリレート;
などが挙げられる。
【0057】
本発明においては、このようなシリル(メタ)アクリレート(a-3)は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
以上のようなシリル(メタ)アクリレート成分単位のうちでは、特にシリルエステル共重合体ブロック単位(A-1)合成の容易性、あるいはこのようなシリルエステル共重合体ブロック単位(A-1)を含むブロック共重合体を用いてなる防汚塗料組成物の造膜性、貯蔵安定性、研掃性の制御のしやすさなどを考慮すると、
シリル(メタ)アクリレート(a-2)のうちの、
(メタ)アクリル酸トリメチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸トリエチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸トリn−プロピルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸トリn−ブチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸n−ヘキシル−ジメチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸n−オクチル−ジメチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸iso-プロピル−ジメチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸エチリデンノルボルニル−ジメチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸トリメチルシリルオキシ−ジメチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸ビス(トリメチルシリルオキシ)−メチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸トリス(トリメチルシリルオキシ)シリルエステル
から選択される何れか1種または2種以上から誘導される成分単位と、
シリル(メタ)アクリレート(a-3)のうちの、
(メタ)アクリル酸トリiso-プロピルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸トリiso-ブチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸トリsec-ブチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸ジsec-ブチル−メチルシリルエステル、
(メタ)アクリル酸ジiso-プロピル−トリメチルシリルオキシシリルエステル、
(メタ)アクリル酸ジsec-ブチル−トリメチルシリルオキシシリルエステルから選択される何れか1種または2種以上の成分単位と
を組み合わせたものが好ましい。
【0058】
さらには、
シリル(メタ)アクリレート(a-2)のうちの、(メタ)アクリル酸トリn−ブチルシリルエステルから誘導される成分単位と、
シリル(メタ)アクリレート(a-3)のうちの、(メタ)アクリル酸トリiso-プロピルシリルエステルから誘導された成分単位の組み合わせが好ましい。
【0059】
不飽和単量体成分単位 (b)
不飽和単量体成分単位(b)は、上記重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位(a)とともにシリル(メタ)アクリレート共重合体ブロック単位を構成しており、しかも上記重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位(a)とは異なる成分単位であって、このような不飽和単量体成分単位(b)を誘導しうる不飽和単量体としては、たとえば、
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-,iso-,tert-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の疎水性(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メチルポリオキシエチレン、(メタ)アクリル酸メチルポリオキシプロピレン等の親水性(メタ)アクリル酸エステル類;
スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン類;
酢酸ビニル、安息香酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;
クロトン酸エステル類、イタコン酸エステル類、フマル酸エステル類、マレイン酸エステル類等が挙げられ、これらのうちでは、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン類、ビニルエステル類が適度の塗膜強度を有する防汚塗膜が得られるため好ましい。特に、親水性(メタ)アクリル酸エステル類を使用すると塗膜の消耗性を増大させることができ、この目的ではアクリルアミド誘導体などの親水性を有するコモノマーの使用も可能である。
【0060】
また、本発明では、不飽和単量体成分単位(b)として、(b-1)極性基含有アクリル系不飽和単量体から誘導される成分単位が好ましい。
極性基としては、 前記極性基含有アクリル系不飽和単量体から誘導される成分単位(b-1)が、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、アルコキシル基、ポリオキシアルキレン基、アルキルポリオキシアルキレン基、アミノ基、N置換アミノ基、アミド基、N置換アミド基、エポキシ基、オキシラン基、オキソラン基、オキセタン基、テトラヒドロフルフリル基およびモルホリノ基からなる群から選ばれる一種以上の極性基を有していることが好ましい。
【0061】
このような極性基含有アクリル系不飽和単量体から誘導される成分単位(b-1)は下記式(IV)で表される。
【0062】
【化7】
Figure 0004776839
【0063】
式(IV)中、R5は、水素原子またはメチル基を示し、Wは極性基を示す。
極性基WはZR6で表され、Zは、酸素原子または−NR7を示す。
Zが酸素原子である場合には、R6は置換基を有していてもよいヒドロキシアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基、式:
【0064】
【化8】
Figure 0004776839
【0065】
で表されるポリアルキレングリコール基(ただし、R8は、アルキレン基であり、nは、2〜50の整数を示し、xは1〜100の整数、Ryはアルキル基を示す。)、または式
【0066】
【化9】
Figure 0004776839
【0067】
(式中、R9は、エーテル結合を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示し、複数のR10は、互いに同一でも異なっていてもよく、Hまたは炭素数1〜5のアルキル基を示し、隣接する炭素原子に結合するR10同士は互いに結合して環構造を形成していてもよい。)で表されるエポキシ基またはオキセタン基を示す。
【0068】
上記式(IV)中のヒドロキシアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜18、さらに好ましくは2〜9であり、また上記ヒドロキシシクロアルキル基の炭素数は、好ましくは3〜10、さらに好ましくは3〜8であり、上記アルキレン基R8の炭素数は、1〜8、好ましくは2〜4である。ヒドロキシアルキル基またはヒドロキシシクロアルキル基の置換基は、好ましくは塩素などのハロゲン原子、フェニル基、ヒドロキシ基である。
【0069】
また、Zが−NR7である場合には、R7は、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、置換アミノ基、アシル基、アルコキシ基の何れかで置換されていてもよい上記と同様の炭素数のアルキル基を示し、R6は水素原子を示す。
このような極性基を有する不飽和単量体成分単位(b-1)を含んでいる共重合体は、防汚塗料ビヒクルとして用いたときに、特に高汚損海域での防汚性に優れている。
【0070】
このような極性基を有する不飽和単量体成分単位(b-1)を誘導しうる不飽和単量体(b-1)は、下記式(IV-a)で表される。
式(IV-a):
【0071】
【化10】
Figure 0004776839
【0072】
式(IV-a)中、R5およびWは、上記式(IV)中のR5およびWと同様のものを示す。
このような不飽和単量体(IV-a)としては、具体的には、たとえば、式(IV-a)中、Wを構成するZR6のうちZが酸素原子であるものとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=2)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=4)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=5)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=8)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=10)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=15)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(n=5)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(n=9)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(n=12)、2-メトキシエチルアクリレート、3-ブトキシプロピルメタクリルレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタフリレート(n=35)等が挙げられる。
【0073】
また、Zが酸素原子であり、エポキシ基またはオキセタン基を有する不飽和単量体(IV-a)としては、
【0074】
【化11】
Figure 0004776839
【0075】
また、上記式(IV-a)中、Zが−NR7であるものとしては、具体的には、たとえば、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0076】
以上の不飽和単量体は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
これらの不飽和単量体(b)は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
シリルエステル共重合体ブロック単位(A-1)中には、上記重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位(a)10〜95重量%、好ましくは20〜85重量%の範囲で、上記(a)以外の不飽和単量体成分単位(b)は5〜90重量%、好ましくは15〜80重量%((a)+(b)=100重量%)の量で含まれていることが、塗膜へのクラックの発生防止、塗膜の耐剥離性、塗膜強度、消耗性の点で望ましい。また重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位(a)として、シリル(メタ)アクリレート成分単位(a-2)および(a-3)が含まれている場合、シリル(メタ)アクリレート成分単位(a-2)は、0.1〜60重量%、好ましくは0.5〜40重量%の量で、シリル(メタ)アクリレート成分単位(a-3)は10〜70重量%、好ましくは30〜65重量%の量(ただし、(a-2)+(a-3)は上記成分単位(a)の範囲内である)にあることが望ましい。
【0077】
[メルカプト化合物から誘導されるブロック単位(A-2)]
ブロック単位(A-2)は下記式(1)または(2)で表されるメルカプト化合物から誘導される。
【0078】
【化12】
Figure 0004776839
【0079】
上記式中、R1は炭素数1〜30、好ましくは1〜20であって、かつ1価以上の炭化水素基またはエーテル結合含有炭化水素基である。このようなR1は、脂肪族炭化水素基であっても、脂環族炭化水素基であっても、さらにはアルキル基で置換されていてもよい芳香族脂肪族炭化水素基であってもよい。またR1が2価以上の場合、R1を構成する1つの炭素原子のみが複数の酸素原子結合基(−O−)と結合していてもよく、また炭化水素基を構成する複数の炭素原子が、それぞれ酸素原子結合基と結合していてもよい。
【0080】
2は炭素数1〜30、好ましくは1〜20の二価炭化水素基または−CH(R3)−で表される基を示す。
3はR4−O−R5で表される基を示し、R4は炭素数1〜30、好ましくは1〜10の二価炭化水素基を示し、R5は炭素数1〜30、好ましくは1〜20の一価の炭化水素基を示す。
【0081】
【化13】
Figure 0004776839
【0082】
nは1〜5、好ましくは1〜4の整数を示す。
mは1〜100、好ましくは1〜60の整数を示す。
lは1〜5の整数を示し、kは0〜100の整数を示し、aは0または1の整数を示し、jは1〜50の整数を示し、iはR1の価数を示す。
から構成される。
【0083】
また、メルカプト化合物中に2種以上の相違したアルキレンオキサイド鎖(OCn2n)が存在する場合、メルカプト化合物中で同じアルキレンオキサイド鎖同士がブロックを形成していてもよく、また2種以上の相違したアルキレンオキサイド鎖(OCn2n)mがランダムに配列していてもよい。
このようなメルカプト化合物としては、
【0084】
【化14】
Figure 0004776839
【0085】
【化15】
Figure 0004776839
【0086】
などが挙げられる。
このようなメルカプト化合物の数平均分子量は100〜10000、好ましくは150〜8000、さらに好ましくは150〜5000の範囲にあることが好ましい。
このようなメルカプト化合物から誘導されるブロック単位が含まれていると、防汚塗料用のビヒクルとして用いた場合の表面更新性が良好であるという優れた特性を有するブロック共重合体が得られる。なお、表面更新性が良好であるとは自己研摩型防汚塗料塗膜が消耗しながら表面を更新する際に防汚剤の溶出痕より形成される最表層の多孔質層(いわゆるスケルトン層)の厚さが薄く、常に活性の高い塗膜表面が露出している状態を指す。
【0087】
またこのようなメルカプト化合物を用いて製造される(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体は通常のシリルエステル共重合体に比較し低分子量であり、その溶液は低粘度であるという特徴を有する。
従って本発明の(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体を用いた防汚塗料組成物は溶媒の使用量を極力低減することが可能でかつ塗装時の作業性が良好であるという優れた特性を有する。
【0088】
本発明で使用される(ポリ)オキシアルキブロックシリルエステル共重合体(A)においては、これらの成分単位(A-1)および/または(A-2)は、それぞれ、1種または2種以上存在していてもよい。
このような本発明に係る(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体では、各成分単位(A-1)と(A-2)の合計を100重量%とするとき、上記シリルエステル共重合体ブロック単位(A-1)は、通常、40〜99.9重量%、好ましくは50〜99.5重量%、特に好ましくは70〜99重量%の量で、
メルカプト化合物から構成されるブロック単位(A-2)は、通常0.1〜60重量%、好ましくは0.5〜50重量%、特に好ましくは1〜30重量%の量で、含まれていることが望ましい。
【0089】
メルカプト化合物ブロック単位(A-2)量が上記範囲にあると、防汚性が良好で塗膜の更新性に優れ、しかも塗膜の硬度、摩耗性などの物性も優れる傾向がある。
(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体を構成する成分単位(A-2)を誘導するメルカプト化合物が、「SH」を1個有する化合物である場合(上記した式(1)および(2)のiが1の化合物)には、該共重合体中においては、成分単位(A-1)の片末端を封止するように、該共重合体の片末端部に1個の成分単位(A-2)が存在しているものと思われる。(すなわち、A−B型)
また、たとえば、成分単位(A-2)を誘導するメルカプト化合物が、「SH」を両末端に1個ずつ有する成分単位である場合(上記式(1)および(2)のiが2の化合物)には、該共重合体中においては、成分単位(A-1)の一末端と成分単位(A-2)とが結合し、さらにその成分単位(A-2)の末端が、他の成分単位(A-1)の一末端と結合しているものと思われる。(すなわち、A−B−A型)
これらのブロック共重合体の他に、3つ以上の成分単位(A-1)の鎖の末端位置が、成分単位(A-2)の3つ以上のS元素に結合した、いわゆる星型などの配列をしているものも考えられる。
【0090】
本発明では、(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体として、A−B−A型または星型のものが好ましい。
【0091】
【化16】
Figure 0004776839
【0092】
このようなブロック共重合体の例えば50%濃度の溶液の25℃における粘度は、用いられる共重合体の用途によっても異なり一概に決定されないが、共重合体を含む組成物の塗装性、溶剤希釈したときのタレ防止などの観点を考慮すると、通常、5cps〜200,000(20万)cps、好ましくは10〜50,000(5万)cpsであることが望ましい。
【0093】
ブロック共重合体の重量平均分子量が500〜20万、好ましくは1000〜10万、さらに好ましくは1500〜8万の範囲にあることが好ましい。
このような(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体(A)は、前記シリルエステル共重合体成分と前記メルカプト化合物とをブロック共重合することによって製造できる。
【0094】
以下、(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体の製造方法について説明する。
(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体の製造方法
このような(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体を得るには、シリルエステル共重合体成分(A-1)の重合条件下にメルカプト化合物(A-2)を存在させてブロック共重合を行う。
【0095】
より具体的には、シリルエステル共重合体成分(A-1)の構成成分である上記した重合性不飽和カルボン酸シリルエステル (a)と重合性不飽和カルボン酸シリルエステル以外の不飽和単量体 (b)とをシリルエステル共重合体成分(A-1)中の量として重合性不飽和カルボン酸シリルエステル(a)を10〜95重量%好ましくは20〜85%の範囲で、不飽和単量体(b)を5〜90重量%好ましくは15〜80重量%((a)+(b)=100重量%)となる量で使用し、メルカプト化合物(A-2)を(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体中の量として0.1〜60重量%、好ましくは0.5〜50重量%となる量で使用し、これらをラジカル重合開始剤の存在下に、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等の各種方法にてブロック重合させればよい。
【0096】
このような方法で重合したブロック重合体は通常ランダム共重合したシリルエステル共重合体成分(A-1)鎖と(ポリ)オキシアルキレンブロック鎖より構成される。
ラジカル重合開始剤としては、従来より公知のアゾ化合物、過酸化物などを広く用いることができ、アゾ化合物としては、具体的には、たとえば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられ、
過酸化物としては、たとえば、過酸化ベンゾイル、tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシオクテート、クメンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸塩(カリウム塩、アンモニウム塩)等が挙げられる。
【0097】
また、下記式のような開始剤を使用することもできる。
【0098】
【化17】
Figure 0004776839
【0099】
x、nは1以上の整数を示す。
このような開始剤を使用すると更に(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体の親水性を向上することができ、防汚塗料組成物の防汚性や消耗性を一層向上することができる。なお、上記式で表される開始剤では、上記のようなメルカプト化合物を用いない場合においても、たとえば不飽和カルボン酸シリルエステルを重合させてシリルエステル共重合体を製造する場合においても、好適に使用することができる。
【0100】
上記重合物を防汚塗料に用いる場合には、上記各種重合法のうちでは、有機溶剤中で重合が行われる溶液重合法や塊状重合法が好ましく、溶液重合の際用いられる有機溶剤としては、溶媒としては、上記共重合用モノマーの何れとも反応せず不活性であり、かつ、これらモノマーを溶解し得る限り特に限定されないが、たとえば、
キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類;
ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;
イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール類;
ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;
メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;
等が挙げられる。これらの溶剤は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
【0101】
共重合用触媒は、(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体の構成成分の合計100重量部に対して、たとえば、0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部の量で用いられる。このような触媒は1度に添加してもよく、複数回に分けて添加してもよいが、複数回に分けて添加することが分子量の調整、反応効率、転化率の点で好ましい。
【0102】
また、溶媒は、共重合用モノマーの合計100重量部に対して、たとえば、0〜1000重量部、好ましくは10〜500重量部の量で用いられる。
こうして重合されたシリルエステル共重合体(A-1)の重量分子量は、500〜20万、好ましくは1000〜10万、さらに好ましくは1500〜8万の範囲にあることが望ましい。
【0103】
このような(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体のブロック重合では、たとえば下記式(X)に示すようにシリルエステル共重合体(A-1)の成長過程にある末端ラジカルがメルカプト化合物(A-2)のS原子に連鎖移動し、本発明の(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体が得られる。
【0104】
【化18】
Figure 0004776839
【0105】
(なお、上記式中の略号の意味は、それぞれ前記に同じ。)
このようにして得られる(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体は、メルカプト化合物(A-2)のメルカプト基の官能数と応じてA−B型(1官能)、ABA型(2官能)、星型(3官能以上)のものが得られる。
本発明においては、このような反応は各成分の添加順序や溶媒の有無について、適宜選択して行うことができるが、好ましくは溶媒を用い、その他の成分を一括に仕込み、あるいは適当に分割して順次仕込んで反応させれば良い。反応温度は、たとえば30〜200℃、好ましくは40〜180℃、さらに好ましくは50℃〜150℃の温度で、30分〜24時間程度重合反応を進行させて、本発明の(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体を得ることができる。
【0106】
このような方法で得られる(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体は通常、A−B型、A−B−A型、または星型のブロック構造を有している。
以上のような反応の同定は、GPC、IRスペクトル、NMRスペクトルの測定などにより行うことができる。
【0107】
防汚塗料組成物
本発明に係る防汚塗料組成物は、上記した(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体(A)を塗膜形成成分として、含有している。
このような本発明に係る防汚塗料組成物には、さらに、各種添加剤を含有している。
【0108】
この(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体が含有された防汚塗料組成物によれば、塗膜にクラックが発生しにくく、塗膜付着性が良好で塗膜剥離が起きにくく、塗膜の加水分解速度が良好に制御され、防汚性能あるいは防汚性のうち特に高汚損環境下における防汚性や、長期防汚性に優れた防汚塗膜が得られる。
【0109】
本発明に係る防汚塗料組成物(P)は、上記(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体(A)を必須成分として含有しているが、この(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体(A)以外に、防汚剤(B)、酸化亜鉛(亜鉛華)(C)、無機脱水剤(D)、タレ止め・沈降防止剤、ロジン等の溶出促進成分、塩素化パラフィン等の可塑剤、着色顔料、体質顔料などの各種顔料、アクリル樹脂、ポリアルキルビニルエーテル(ビニルエーテル系(共)重合体)などの各種樹脂、消泡剤、色別れ防止剤、レベリング剤などの各種添加剤などのような成分を含有していてもよい。
【0110】
以下に、このような(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体(A)以外の成分および各種添加剤について説明する。
[防汚剤(B)]
防汚剤(B)としては、無機系、有機系の何れであってもよく、従来より公知のものを広く用いることができるが、本発明においては、
銅および/または銅化合物(B−1)、金属ピリチオン類(B−2)等の有機防汚剤が好ましい。
【0111】
本発明に係る防汚塗料組成物に含有させる銅および/または銅化合物(B−1)(ピリチオン類を除く。以下同様。)について説明すると、上記銅および/または銅化合物としては、その分子量が通常63.5〜2000、好ましくは63.5〜1000のものが用いられる。
このような銅化合物(B−1)としては、有機系、無機系の銅化合物の何れであってもよく、このうち無機系の銅化合物としては、たとえば、亜酸化銅、チオシアン酸銅(チオシアン酸第一銅、ロダン銅)、塩基性硫酸銅、塩化銅、酸化銅等が挙げられ、
有機系の銅化合物としては、たとえば、塩基性酢酸銅、オキシン銅、ノニルフェノールスルホン酸銅、カツパービス(エチレンジアミン)−ビス(ドデシルベンゼンスルホネート)、ナフテン酸銅、ロジン酸銅、ビス(ペンタクロロフェノール酸)銅などが挙げられ、好ましくは無機系の亜酸化銅、チオシアン化銅(ロダン銅)が用いられる。
【0112】
このような銅化合物は、銅に代えて、あるいは銅とともに1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
このような銅および/または銅化合物は、本発明の防汚塗料組成物中に、合計で通常、1〜70重量%、好ましくは3〜65重量%の量で含まれていることが望ましい。また防汚塗料組成物中に含まれる(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体(A)100重量部に対して、該銅および/または銅化合物(B−1)は、合計で通常、3〜1400重量部、好ましくは10〜1300重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0113】
この銅および/または銅化合物が、該防汚塗料組成物中にこの範囲で含まれていると、防汚性に優れた防汚塗膜を形成することができる。
本発明においては、防汚剤として、上記銅および/または銅化合物(B-1)とともに、あるいは上記銅および/または銅化合物に代えて、有機防汚剤を用いることができる。有機防汚剤としては、たとえば、金属ピリチオン類(B−2)を用いることができる。金属ピリチオン類としては、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、鉛などの金属ピリチオン類を例示できる。上記金属ピリチオン類のうちでは、銅ピリチオン、ジンクピリチオンが好ましく、とくに銅ピリチオンが好ましい。
【0114】
このようなピリチオン系化合物(B−2)は、本発明の防汚塗料組成物中に、合計で通常、0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%の量で含まれていることが望ましい。また防汚塗料組成物中に含まれる(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体(A)100重量部に対して、該ピリチオン系化合物(B−2)は、合計で通常、0.3〜300重量部、好ましくは2〜200重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0115】
本発明においては、このピリチオン系化合物(B−2)とともに、あるいはこのピリチオン系化合物に代えて下記の防汚剤(他の防汚剤)を含有していてもよく、このような他の防汚剤としては、従来より公知の各種防汚剤を用いることができ、具体的には、たとえば、
テトラメチルチウラムジサルファイド、カーバメート系の化合物(例:ジンクジメチルジチオカーバメート、マンガン-2-エチレンビスジチオカーバメート)、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ-s-トリアジン、4,5−ジクロロ-2-n-オクチル-4−イソチアゾリン−3−オン、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、ピリジン-トリフェニルボラン、アミン−トリフェニルボラン等を挙げることができる。
【0116】
本発明においては、このような防汚剤をジンクピリチオン(上記式(IV)で、R1〜R4=H、M=Zn、n=2のものに相当)、銅ピリチオン(上記式(IV)で、R1〜R4=H、M=Cu、n=2のものに相当)等のピリチオン系化合物(金属ピリチオン類)とともに、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。たとえば、銅ピリチオンおよび/またはジンクピリチオンと、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンとを組み合わせて用いることができる。
【0117】
また、この防汚塗料組成物中に含まれる銅および/または銅化合物(B−1)、ピリチオン系化合物(B−2)などの各種防汚剤の合計含有量は、防汚塗料組成物調製時に用いられる防汚剤、被膜形成性共重合体などの種類あるいはこのような防汚塗料組成物が塗布形成される船舶等の種類(船舶では、航路、船速、稼働率、大きさや船底の部位)などにもより一概に決定されないが、上記(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体(A)100重量部に対して、防汚剤総量として通常10〜1400重量部の量で、好ましくは20〜1300重量部の量で含有されていることが望ましい。
【0118】
この防汚剤総量が10重量部未満では、防汚性に劣ることがあり、また1400重量部を超えるとそれ以上の防汚性は期待できない上に、耐クラック性に劣ることがある。
たとえば、防汚塗料組成物の防汚剤としてジンクピリチオンと亜酸化銅(Cu2O)とを組み合わせて用いる場合、ジンクピリチオンは、(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体(A)100重量部に対して2〜200重量部の量で、また、この亜酸化銅は、上記(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体(A)100重量部に対して通常10〜1300重量部程度の量で防汚塗料組成物中に含有されていてもよい。このようにジンクピリチオンと亜酸化銅とを含有していても、この防汚塗料組成物は、前述したような従来例に係る防汚塗料と異なり貯蔵安定性に優れ、貯蔵中に増粘・ゲル化しない。
【0119】
また、たとえば、防汚塗料組成物の防汚剤として銅ピリチオンと亜酸化銅(Cu2O)とを組み合わせて用いる場合、銅ピリチオンは、(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体(A)100重量部に対して2〜200重量部の量で、また、この亜酸化銅は、(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体(A)100重量部に対して通常10〜1300重量部程度の量で防汚塗料組成物中に含有されていてもよい。
【0120】
[酸化亜鉛(亜鉛華)(C)]
本発明に係る防汚塗料組成物には、酸化亜鉛(亜鉛華)(C)が含有されていてもよい。このように酸化亜鉛が配合された防汚塗料組成物では、得られる塗膜強度が向上し、塗膜の研掃性を効果的に制御できる。
また、このような酸化亜鉛は、消耗度調整、塗膜硬度調整の観点から、この防汚塗料組成物中に、通常、0.5〜35重量%、好ましくは1〜25重量%の量で含まれていることが望ましい。
【0121】
[無機脱水剤(D)]
本発明に係る防汚塗料組成物には、無機系あるいは有機系の脱水剤、好ましくは無機系の脱水剤(無機脱水剤(D))が配合されていてもよい。このように脱水剤が配合された防汚塗料組成物では、貯蔵安定性を一層向上させることができる。
【0122】
脱水剤としては、具体的には、たとえば、無水石膏(CaSO4)、合成ゼオライト系吸着剤(商品名:モレキュラーシーブ等)、オルソギ酸メチル、オルソ酢酸メチル等のオルソエステル類、オルソほう酸エステル、シリケート類やイソシアネート類(商品名:アディティブT1)等が挙げられ、特に無機系脱水剤(D)としては、無水石膏、モレキュラーシーブが好ましく用いられる。このような無機脱水剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0123】
このような脱水剤特に無機脱水剤は、上記(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体(A)100重量部に対して、通常、0.02〜100重量部、好ましくは0.2〜50重量部の量で配合することが好ましい。
また、このような無機脱水剤は、この防汚塗料組成物中に、合計で通常、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の量で含まれていることが望ましい。このような量で無機脱水剤が防汚塗料組成物中に含まれていると、貯蔵安定性が向上する傾向がある。
【0124】
[溶出促進成分(E)]
本発明に係る防汚塗料組成物には、溶出促進成分(E)が含まれていてもよく、たとえば、ロジン、ロジン誘導体、有機カルボン酸および有機カルボン酸金属塩などが挙げられる。
ロジンには、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどがあるが、本発明ではいずれをも使用することができる。ロジン誘導体としては、たとえば、不均化ロジン、低融点不均化ロジン、水添ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジン、アルデヒド変性ロジン、ロジンのポリオキシアルキレンエステル、還元ロジン(ロジンアルコール)、ロジンの金属塩(ロジンの銅塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩など)、ロジンアミン等が挙げられる。これらのロジンおよびその誘導体は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0125】
有機カルボン酸としては、たとえば、炭素数5〜30程度の脂肪酸、合成脂肪酸などが挙げられる。このような有機カルボン酸としては、具体的に、ピバル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、イソノナン酸、バーサチック酸、トール油脂肪酸、イソステアリン酸、ナフテン酸、2−エチルヘキサン酸、やし油脂肪酸、大豆油脂肪酸などが挙げられる。有機カルボン酸の金属塩としては、銅塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。
【0126】
これらの溶出促進成分のうちでは、ロジンまたはその誘導体が好ましい。これらの溶出促進成分は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
これらの溶出促進成分は、防汚塗料組成物100重量部中に、0.1〜30重量部、好ましくは、0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜15重量部の量で含有されていることが望ましい。溶出促進成分の配合割合は、塗膜の強度、防汚性能および耐水性能の観点からこの範囲にあることが望ましい。
【0127】
また防汚塗料組成物中に含まれる(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体(A)100重量部に対して、該溶出促進成分は、合計で通常、0.3〜600重量部、好ましくは2〜300重量部の量で含まれていることが望ましい。
この溶出促進成分が、該防汚塗料組成物中にこの範囲にあると、防汚性や塗膜の消耗性に優れるようになる傾向がある。
【0128】
[ビニルエーテル系(共)重合体(F)]
本発明の防汚塗料組成物において、ビニルエーテル系(共)重合体を配合すると、得られる塗膜の耐クラック性、耐剥離性、溶出速度安定性等の向上に寄与し、塗膜形成成分としても機能するようになる。
上記ビニルエーテル系(共)重合体として具体的には、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソプロピルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテルなどを例示することができる。
【0129】
このようなビニルエーテル系(共)重合体(F)は、防汚塗料組成物100重量部中に、合計で通常、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部の量で含まれていることが望ましい。また防汚塗料組成物中に含まれるシリルエステル共重合体(A)100重量部に対して、該ビニルエーテル系(共)重合体は、通常、0.3〜60重量部、好ましくは0.6〜40重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0130】
また、ビニルエーテル系(共)重合体に代えて、あるいはビニルエーテル系(共)重合体とともに、各種の親水性基含有重合体を使用することができる。このような親水性基含有重合体としては、(メトキシ)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(共)重合体のような各種(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート(共)重合体などが挙げられ、これらの使用によって、ビニルエーテル系(共)重合体と同様の効果を得ることが可能である。
【0131】
[可塑剤(G)]
可塑剤としては、正リン酸エステル、塩素化パラフィン、フタル酸エステル、アジピン酸エステル等、通常、塗料用に用いられる可塑剤が使用される。これらの可塑剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
このような可塑剤を配合する場合には、可塑剤は、この防汚塗料組成物中に、たとえば、0.1〜10重量%の量で配合される。
【0132】
これらの可塑剤は、得られる防汚塗料組成物からなる塗膜(本明細書中では、「防汚塗膜」とも言う)の耐クラック性の向上に寄与するが、これら可塑剤のうちで、塩素化パラフィンまたはトリクレジルフォスフェート(TCP)などの正リン酸エステルが好ましく用いられる。
この塩素化パラフィンとしては、直鎖状でもよく分岐を有していていてもよく、室温で液状でも固体(粉体)でもよい。このような塩素化パラフィンとしては、東ソー(株)製の「トヨパラックス150」、「トヨパラックスA-70」などが挙げられる。本発明においては、このような塩素含有率、炭素数などの異なる2種以上の塩素化パラフィンを適宜組み合わせて用いることができる。このように2種以上の塩素化パラフィンを組み合わせて用いる場合には、上記塩素化パラフィンの炭素数、塩素化率は、防汚塗料組成物中に含まれるこれらの塩素化パラフィンの炭素数あるいは塩素化率の平均値で示す。
【0133】
(G)可塑剤として、このような塩素化パラフィンを用いる場合は、防汚塗料組成物100重量部中に、通常、0.05〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部の量で含まれていることが望ましい。また防汚塗料組成物中に含まれるシリルエステル共重合体(A)100重量部に対して、該塩素化パラフィンは、1〜50重量部、好ましくは2〜40重量部の量で含まれていることが望ましい。また、この塩素化パラフィンの量がこの範囲にあると、塗膜のクラックの抑制効果、塗膜強度および耐ダメージ(衝撃)性に優れるようになる。
【0134】
また、(G)可塑剤として、正リン酸エステルを用いる場合、防汚塗料組成物100重量部中に、通常、0.05〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部の量で含まれていることが望ましい。
また防汚塗料組成物中に含まれるシリルエステル共重合体(A)100重量部に対して、正リン酸エステルは、1〜50重量部、好ましくは2〜40重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0135】
このように可塑剤(G)として正リン酸エステルが含まれていると、割れ、剥がれの少ない塗膜が形成でき、また塗膜の消耗度を高めることができる。
[脱水剤(H)]
この防汚塗料組成物には、無機系あるいは有機系の脱水剤が配合されていてもよい。このように脱水剤が配合された防汚塗料組成物では、貯蔵安定性を一層向上させることができる。
【0136】
脱水剤としては、具体的には、たとえば、無水石膏(CaSO4)、合成ゼオライト系吸着剤(商品名:モレキュラーシーブ等)、オルソギ酸メチル、オルソ酢酸メチル等のオルソエステル類、オルソほう酸エステル、シリケート類やイソシアネート類(商品名:アディティブT1)等が挙げられ、このうちで無機脱水剤(H)としては、無水石膏、モレキュラーシーブが好ましく用いられる。このような脱水剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0137】
このような脱水剤は、上記(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体(A)100重量部に対して、通常、0.02〜100重量部、好ましくは0.2〜50重量部の量で配合することが好ましい。
また、このような脱水剤は、この防汚塗料組成物中に、合計で通常、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜8重量%の量で含まれていることが望ましい。このような量で脱水剤が防汚塗料組成物中に含まれていると、貯蔵安定性が向上する傾向がある。
【0138】
<その他の成分>
本発明に係る防汚塗料組成物は、上記成分以外に、タレ止め・沈降防止剤、着色顔料、体質顔料などの各種顔料、上記ビニルエーテル系(共)重合体を除くアクリル樹脂などの各種樹脂、消泡剤、色別れ防止剤、レベリング剤などの各種添加剤など、下記のような成分を含有していてもよい。
【0139】
[タレ止め・沈降防止剤]
タレ止め・沈降防止剤としては、従来より公知のものが任意量で配合されていてもよい。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの塩類、ポリエチレンワックス、水添ヒマシ油ワックス系、ポリアマイドワックス系および両者の混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等が挙げられ、好ましくは水添ヒマシ油ワックス、ポリアマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックスが用いられる。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、楠本化成(株)製の「ディスパロンA-603-20X」、「ディスパロン4200-20」等の商品名で上市されているものが挙げられる。
【0140】
[顔料、溶剤]
顔料としては、従来公知の有機系、無機系の各種顔料(例:チタン白、ベンガラ、有機赤色顔料、タルクなど)を用いることができる。なお、染料等の各種着色剤も含まれていてもよい。
顔料の形態として針状、扁平状、鱗片状のものを使用することにより塗膜の耐クラック性を一層向上させることが可能である。
【0141】
溶剤としては、たとえば、脂肪族系、芳香族系(例:キシレン、トルエン等)、ケトン系、エステル系、エーテル系など通常、防汚塗料に配合されるような各種溶剤が用いられる。また、本発明に係る防汚塗料組成物中に含まれる溶剤には、上記シリルエステル共重合体を調製する際に使用した溶媒が含まれていてもよい。
【0142】
[各種樹脂]
各種樹脂としては、アクリル樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ゴム樹脂、石油樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ブチラール樹脂、アイオモノマー樹脂などが挙げられる。
[防汚塗料組成物の製造]
本発明に係る防汚塗料組成物は、従来より公知の方法を適宜利用することにより製造することができ、たとえば、上記(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体(A)と、該共重合体(A)100重量部に対して、3〜1400重量部の量の銅および/または銅化合物(B)と、0.07〜1200重量部の有機防汚剤(C)と、2〜700重量部の量の酸化亜鉛(D)と、0〜600重量部の量の溶出促進成分(E)と、0.3〜200重量部の量のビニルエーテル系(共)重合体(F)と、1〜50重量部の量の可塑剤(G)と、0.03〜200重量部の量の脱水剤(例:無水石膏、モレキュラーシーブ)(H)と、適宜量で用いられるタレ止め・沈降防止剤、顔料、溶剤などとを一度にあるいは任意の順序で加えて撹拌・混合・分散等すればよい。
【0143】
この防汚塗料組成物は、一液性で貯蔵安定性に優れ、防汚塗料の付着性、耐久性、防汚性といった各種要求性能を満足するものである。
上記のような防汚塗料組成物を水中・水上構造物すなわち海洋構造物(例:原子力発電所の給排水口)、湾岸道路、海底トンネル、港湾設備、運河・水路等のような各種海洋土木工事の汚泥拡散防止膜、船舶、漁具(例:ロープ、漁網)などの各種成形体(基材)の表面に常法に従って1回〜複数回塗布・乾燥させれば、耐クラック性、防汚性に優れた防汚塗膜被覆船体または海洋構造物などが得られる。なお、この防汚塗料組成物は、直接上記船体または海洋構造物等の表面に塗布してもよく、また予め防錆剤、プライマーなどの下地材が塗布された船体または海洋構造物等の表面に塗布してもよい。さらには、既に従来の防汚塗料による塗装が行われ、あるいは本発明の防汚塗料組成物による塗装が行われている船体、海洋構造物等の表面に、補修用として本発明の防汚塗料組成物を上塗りしてもよい。このようにして船体、海洋構造物等の表面に形成された防汚塗膜の厚さは特に限定されないが、たとえば、30〜150μm/回程度である。
【0144】
【発明の効果】
本発明によれば、得られた塗膜にクラックが発生しにくく、塗膜付着性が良好で塗膜剥離が起きにくく、塗膜の加水分解速度が良好に制御され、防汚性特に高汚損環境下における防汚性や、長期防汚性に優れ、しかもこれら特性にバランスよく優れた防汚塗料組成物が得られる。
【0145】
また本発明によれば、このような優れた特性を有する塗膜および該塗膜で被覆され、上記特性を有する船体または水中構造物が提供される。
また本発明によれば、このような防汚塗料組成物を用いた、環境汚染の恐れの極めて少ない防汚方法が提供される。
【0146】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何等制限されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において、「部」は「重量部」の意味である。
【0147】
【製造実施例】
(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体(BP−1)の製造)
撹拌機、コンデンサー、温度計、滴下装置、窒素導入管、加熱冷却ジャケットを備えた反応容器にキシレン100部を仕込み窒素を吸き込みながら85℃の温度条件に加熱撹拌を行った。同温度を保持しつつ滴下装置より、上記反応容器内にトリイソプロピルシリルアクリレート40部、メチルメタクリレート55部、下記に示すメルカプト化合物(M−1)5部および重合開始剤の2,2'-アゾビスイソブチロニトリル1部の混合物を2時間かけて滴下した。その後同温度で4時間撹拌を行った後、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.4部を加え、さらに同温度で4時間撹拌を行い、無色透明の(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体(BP−1)溶液を得た。
【0148】
得られた共重合体(BP−1)溶液の加熱残分(105℃の熱風乾燥機中3時間乾燥後の加熱残分)は50.5重量%であり、25℃における粘度は72cpsであり、GPCにより測定した数平均分子量(Mn)は2748であり、重量平均分子量(Mw)は5603であった。
共重合体BP−1のGPCクロマトグラムを図1にIRスペクトルのチャートを図2に示す。
【0149】
GPCおよびIRの測定条件は以下の通りである。
(GPC測定条件)
Figure 0004776839
【0150】
【化19】
Figure 0004776839
【0151】
共重合体(BP−2)〜共重合体(BP−20)および共重合体(H−1)および(H−2)の製造
前記共重合体(BP−1)の製造において、滴下成分の混合物の組成を表1に示すように変えた以外は、上記と同様にして共重合体(BP−2)〜(BP−20)および比較例用共重合体H-1およびH-2を得、上記と同様にこれらの共重合体(溶液)の物性値を測定した。
【0152】
共重合体を調製する際に使用したメルカプト化合物M−2〜M-12は下記化合物である。
【0153】
【化20】
Figure 0004776839
【0154】
結果を合わせて表1に示す。
【0155】
【表1】
Figure 0004776839
【0156】
【表2】
Figure 0004776839
【0157】
【実施例1〜28】
防汚塗料組成物(BPP - 1)〜(BBP - 28)の調製
表2に示す配合組成の配合成分をガラスビーズをメディアとしたペイントシェーカーに仕込み、2時間振とうした後、100メッシュのフィルターにて濾過して、所望の防汚塗料組成物を得た。
【0158】
該防汚塗料組成物について常温で2ヶ月間貯蔵後の貯蔵安定性を評価した。
結果を表2に合わせて示す。
貯蔵安定性の評価は塗料試作直後と常温2ヶ月間貯蔵後の粘度(ストーマー粘度計により測定した25℃におけるKu値)の増加度により以下の尺度で評価した。
【0159】
(評価基準)
5:粘度の増加が10未満
4:粘度の増加が10以上20未満
3:粘度の増加が20以上30未満
2:粘度の増加が30以上
1:流動性がなくKu値の測定が不可
また、該防汚塗料組成物を用いた防汚性、消耗度の評価を下記のようにして行った。
【0160】
結果を表2に合わせて示す。
防汚性の評価
また、広島湾の海水中に設置した回転ドラムの側面に取付可能なように曲げ加工が施された70×200×3mmのサンドブラスト鋼板を用意した。
このサンドブラスト鋼板に、エポキシ系ジンクリッチプライマー、エポキシ系防食塗料、ビニル系バインダーコートをそれぞれの乾燥膜厚が20μm、150μm、50μmとなるように塗装し、その後スキマ500μmのアプリケーターを用い供試防汚塗料組成物を円心から半径方向に放射状に塗装した後7日間室内で乾燥し、試験板を得た。
【0161】
回転ドラムにこの試験板を取り付けて周速5ノット、50%稼動条件(夜間12時間稼動、昼間12時間停止の交互運転)にて12ヶ月間高汚損環境条件での試験を行い防汚性の評価を行った。
防汚性の評価については目視で行い以上の基準を用いた。
(評価基準)
5:塗膜表面に付着物を認めない
4:塗膜表面に薄いスライムの付着を認める
3:塗膜表面に濃いスライムの付着を認める
2:塗膜表面にスライムの付着および部分的にシオミドロなどの植物の付着を認める
1:塗膜表面全体がシオミドロなどの植物で覆われている
また、下記のような条件で消耗度の調査を行った。
(消耗性評価)
直径300mmで厚さ3mmの円盤状サンドブラスト鋼板にエポキシ系ジンクリッチプライマー、エポキシ系防食塗料、ビニル系バインダーコートをそれぞれの乾燥膜厚が20μm、150μm、50μmとなるよう1日毎に順次重ねて塗装した後、7日間室内で乾燥した。その後スキマ500μmのアプリケーターを用い供試防汚塗料組成物を円心から半径方向に放射状に塗装した後7日間室内で乾燥し、試験板を得た。
【0162】
25℃の海水を入れた恒温槽中でモーターにこの試験板を取り付け、周速15ノットで12ヶ月間回転し、円周付近の消耗度(膜厚減少)を測定した。
評価結果を合わせて表2に示す。
さらにまた、膜厚減少測定時の塗膜状態を目視で観察し以下の基準にて評価を行った。
【0163】
(評価基準)
5:塗膜に異常を認めない
4:部分的に微細なワレを認める
3:全体的に微細なワレを認める
2:部分的に顕著なワレを認める
1:全体的に顕著なワレを認める
評価結果を合わせて表2に示す。
【0164】
なお、表2中の成分名称等は以下の通りである。
▲1▼「トヨパラックス150」東ソー(株)製の塩素化パラフィン、
平均炭素数:14.5、塩素含有量:50%
粘度:12ポイズ/25℃、比重:1.25/25℃。
▲2▼「ルトナールA−25」BASF社製のポリビニルエチルエーテル、
粘度:2.5〜6.0Pa・s/23℃、比重:0.96/20℃。
▲3▼「ロジン溶液」WWロジンの50%キシレン溶液
▲4▼「ナフテン酸銅溶液」ナフテン酸銅のキシレン溶液、
溶液中の銅含有率:8%。
▲5▼「可溶性無水石膏D−1」(株)ノリタケカンパニーリミテド製、
IIICaSO4、白色粉末、平均粒径15μm。
▲6▼「ディスパロン4200−20」楠本化成(株)製、
酸化ポリエチレンワックス(20%キシレンペースト)
▲7▼「ディスパロンA603−20X」楠本化成(株)製
脂肪酸アマイドワックス(20%キシレンペースト)
▲8▼キョーワノイックN:協和油化(株)3,5,5-トリメチルヘキサン酸(イソノナン酸)
▲9▼バーサチック10(バーサチック酸):シェル化学、三級合成脂肪酸(平均炭素数10)
(10)ナフテン酸:酸価200
【0165】
【比較例1および2】
実施例1〜28において、防汚塗料組成物の配合を表2に示すようにした以外は実施例1〜28と同様にして、貯蔵安定性および防汚性を評価した。
結果を表2に示す。
【0166】
【表3】
Figure 0004776839
【0167】
【表4】
Figure 0004776839
【0168】
【表5】
Figure 0004776839

【図面の簡単な説明】
【図1】シリルエステル共重合体(BP−1)のGPCクロマトグラムを示す。
【図2】シリルエステル共重合体(BP−1)のIRスペクトルのチャートを示す。
【図3】シリルエステル共重合体(BP−2)のGPCクロマトグラムを示す。
【図4】シリルエステル共重合体(BP−2)のIRスペクトルのチャートを示す。
【図5】シリルエステル共重合体(BP−3)のGPCクロマトグラムを示す。
【図6】シリルエステル共重合体(BP−3)のIRスペクトルのチャートを示す。
【図7】シリルエステル共重合体(BP−4)のGPCクロマトグラムを示す。
【図8】シリルエステル共重合体(BP−4)のIRスペクトルのチャートを示す。
【図9】シリルエステル共重合体(BP−5)のGPCクロマトグラムを示す。
【図10】シリルエステル共重合体(BP−5)のIRスペクトルのチャートを示す。
【図11】シリルエステル共重合体(BP−6)のGPCクロマトグラムを示す。
【図12】シリルエステル共重合体(BP−6)のIRスペクトルのチャートを示す。
【図13】シリルエステル共重合体(BP−7)のGPCクロマトグラムを示す。
【図14】シリルエステル共重合体(BP−7)のIRスペクトルのチャートを示す。
【図15】シリルエステル共重合体(BP−8)のGPCクロマトグラムを示す。
【図16】シリルエステル共重合体(BP−8)のIRスペクトルのチャートを示す。
【図17】シリルエステル共重合体(BP−9)のGPCクロマトグラムを示す。
【図18】シリルエステル共重合体(BP−9)のIRスペクトルのチャートを示す。
【図19】シリルエステル共重合体(BP−10)のGPCクロマトグラムを示す。
【図20】シリルエステル共重合体(BP−10)のIRスペクトルのチャートを示す。
【図21】シリルエステル共重合体(BP−11)のGPCクロマトグラムを示す。
【図22】シリルエステル共重合体(BP−11)のIRスペクトルのチャートを示す。
【図23】シリルエステル共重合体(BP−12)のGPCクロマトグラムを示す。
【図24】シリルエステル共重合体(BP−12)のIRスペクトルのチャートを示す。
【図25】シリルエステル共重合体(BP−13)のGPCクロマトグラムを示す。
【図26】シリルエステル共重合体(BP−13)のIRスペクトルのチャートを示す。

Claims (11)

  1. [A-1](a)重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位と、(b)上記(a)成分単位以外の他の重合性不飽和単量体単位とから構成され、前記成分単位(a)として、
    下記式(I)で表されるシリル(メタ)アクリレートから誘導される成分単位(a-1)を含有し、
    −CH 2 −CR(COOSiR a b c )− …(I)
    (式(I)中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、R a 、R b 、R c は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、フェニル基の水素原子とアルキル、アリール、ハロゲンが置換した基、トリメチルシリルオキシ基を示し、R a 、R b 、R c の少なくとも1つが、分岐アルキル基またはシクロアルキル基である、シリルエステル共重合体ブロック単位と、
    [A-2]下記式(1)または(2)で表されるメルカプト化合物
    Figure 0004776839
    (上記式中、R1は、1価以上の炭素数1〜30の炭化水素基またはエーテル結合含有炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜30の二価炭化水素基または−CH(R3)−で表される基を示し、R3はR4−O−R5で表される基を示し、R4は炭素数1〜30の二価炭化水素基を示し、R5は炭素数1〜30の一価の炭化水素基を示す。
    Figure 0004776839
    nは1〜5の整数を示し、mは1〜100の整数を示し、lは1〜5の整数を示し、kは0〜100の整数を示し、aは0または1の整数を示し、jは1〜50の整数を示し、iはR1の価数を示す。)から誘導されるブロック単位とからなり、
    シリルエステル共重合体ブロック単位重合体ブロック単位[A-1]中には、上記重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位(a)10〜95重量%、上記(a)以外の不飽和単量体成分単位(b)は5〜90重量%((a)+(b)=100重量%)の量で含まれ、かつ各成分単位[A-1]と[A-2]の合計を100重量%とするとき、上記シリルエステル共重合体ブロック単位[A-1]は、40〜99.9重量%の量で含まれることを特徴とする(ポリ)オキシアルキレンブロックシリルエステル共重合体を含有することを特徴とする防汚塗料組成物。
  2. 重合性不飽和カルボン酸シリルエステルから誘導される成分単位(a)が、
    下記式(II)で表されるシリル(メタ)アクリレート成分単位(a-2)と:
    −CH2−CR(COOSiR111213)− …(II)
    (式(II)中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、R11およびR12は、それぞれ独立に、炭素数が1〜10の直鎖アルキル基、フェニル基、または、フェニル基の水素原子とアルキル、アリール、ハロゲンが置換した基、またはトリメチルシリルオキシ基を示し、R13は、環構造または分岐を有していてもよい炭素数が1〜18のアルキル基、フェニル基、フェニル基の水素原子とアルキル、アリール、ハロゲンが置換した炭素数6〜10の基、またはトリメチルシリルオキシ基を示す。)
    下記式(III)で表されるシリル(メタ)アクリレート成分単位(a-3)と:
    −CH2−CR(COOSiR141516)− …(III)
    (式(III)中、Rは、水素原子またはメチル基を示し、R14およびR15は、それぞれ独立に、炭素数が3〜10の分岐またはシクロアルキル基を示し、R16は、炭素数が1〜10の直鎖アルキル基、炭素数が3〜10の分岐またはシクロアルキル基、またはフェニル基、フェニル基の水素原子とアルキル、アリール、ハロゲンが置換した炭素数6から10の基、またはトリメチルシリルオキシ基を示す。)から構成されることを特徴とする請求項1に記載の防汚塗料組成物。
  3. 前記(a)成分単位以外の他の重合性不飽和単量体単位(b)が、
    (b-1)極性基含有アクリル系不飽和単量体から誘導される成分単位からなることを特徴とする請求項1または2に記載の防汚塗料組成物。
  4. 前記極性基含有アクリル系不飽和単量体から誘導される成分単位(b-1)が、
    ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、アルコキシル基、ポリオキシアルキレン基、アルキルポリオキシアルキレン基、アミノ基、N置換アミノ基、アミド基、N置換アミド基、エポキシ基、オキソラン基、オキセタン基、オキシラン基、テトラヒドロフルフリル基およびモルホリノ基からなる群から選ばれる一種以上の極性基含有アクリル系不飽和単量体から誘導される成分単位であることを特徴とする請求項3に記載の防汚塗料組成物。
  5. さらに防汚剤(B)を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
  6. さらに、酸化亜鉛(C)を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
  7. さらに、無機脱水剤(D)を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
  8. さらに、溶出促進成分(E)を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の防汚塗料組成物から形成されてなることを特徴とする防汚塗膜。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載の防汚塗料組成物から形成された防汚塗膜で表面を被覆された船舶、水中構造物または漁具・漁網。
  11. 船舶、水中構造物または漁具・漁網の基材表面に、請求項1〜8のいずれかに記載の防汚塗料組成物を塗布し乾燥させて、得られた塗膜で、上記基材表面を被覆する船舶、水中構造物または漁具・漁網の防汚方法。
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