JP5281218B2 - 防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている防汚塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体または水中構造物 - Google Patents
防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている防汚塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体または水中構造物 Download PDFInfo
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式:Y−(CH2CH2O)n−R4(但しR4はアルキル基またはアリール基であり、Yはアクリロイルオキシ基またはメ タクリロイルオキシ基であり、nは1〜25の整数である。)で表される単量体Bとを含む単量体混合物の共重合体と、防汚剤とを必須成分として含有する塗料組成物が開示されている。さらに、該防汚剤としては、無機化合物として亜酸化銅、銅粉等の銅化合物、硫酸亜鉛、酸化亜鉛等が挙げられ、金属を含む有機化合物としてオキシン銅等の有機銅系化合物;有機ニッケル系化合物;ジンクピリチオン等の有機亜鉛系化合物;が挙げられている。しかしながら、該公報には、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等を用いた有機シリルエステル基含有重合体は何ら示されていない上に、高汚損環境下における防汚性に劣るとの問題点がある。
式(2):Y−(CH(R4))−(OR5)(但しR4はアルキル基、R5はアルキル基またはシクロアルキル基である。Yはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基またはフマロイルオキシ基である。)で表される単量体Bと、必要によりこれらA、Bと共重合可能なビニル系単量体Cとを含む単量体混合物の共重合体と、防汚剤とを必須成分として含有する塗料組成物が開示されている。このビニル系単量体Cとしては、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられている。さらに、該防汚剤としては、無機化合物として亜酸化銅、銅粉等の銅化合物、硫酸亜鉛、酸化亜鉛等が挙げられ、金属を含む有機化合物としてオキシン銅等の有機銅系化合物;有機ニッケル系化合物;ジンクピリチオン等の有機亜鉛系化合物;が挙げられている。
(但し、式中R1〜R3はいずれも炭素数1〜20の炭化水素基であって、互いに同一の基であっても異なる基であってもよい。Xはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基である。)で表される単量体Aと、式(2):Y−(CH2CH2O)n−R4(但しR4はアルキル基またはアリール基であり、Yはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基であり、nは1〜25の整数である。)で表される単量体Bとを含む単量体混合物の共重合体と、ビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)銅塩(:銅ピリチオン)とを、必須成分として含有する塗料組成物が開示されている。さらに、上記単量体Aとして、ジメチル−t−ブチルシリルアクリレート等が挙げられ、上記防汚剤としては、無機化合物として亜酸化銅、銅粉等の銅化合物、硫酸亜鉛、酸化亜鉛等が挙げられ、金属を含む有機化合物としてオキシン銅等の有機銅系化合物;有機ニッケル系化合物;ジンクピリチオン等の有機亜鉛系化合物;が挙げられている。また、添加可能な溶解速度調整剤としてロジン、ロジン誘導体などが挙げられている。
式(2)CH2=CR4COOR5−NR6R7[R4 は、HまたはCH3 を示し、R5はアルキレン基を示し、R6、R7は、アルキル基であって、互いに同一でも異なっていてもよい。]で示される三級アミノ基含有単量体、
式(3)CH2=CR8COOR9−NR10R11R12(Y)[R8はHまたはCH3を示し、R9はアルキレン基を示し、R10〜R12は、アルキル基であって、互いに同一でも異なっていてもよく、Yはハロゲン原子を示す。]で示される四級アンモニウム塩含有単量体、
式(4)CH2=CH−Z[ZはN含有複素環からなる基を示す。]で示される窒素含有複素環を含む単量体、
式(5)CH2=CR13COO(R14O)m(R15O)n(R16O)o−R17[R13は、H、CH3を示し、R14はエチレン基を示し、R15は炭素数3のアルキレン基を示し、R16は炭素数4のアルキレン基を示し、R17はアルキル基、アリール基を示す。m、n、oは0以上の整数でn、oは同時に0でない。]で示される分子内にアルコキシ基またはアリーロキシアルキレングリコール基を有する単量体、
式(6)CH2=CR18CONR19R20[R18は、H、CH3を示し、R19、R20 は、アルキル基であり互いに同一でも異なっていてもよい。]で示される(メタ)アクリル酸アミド、
式(7)CH2=CR21CON()Q[R21は、H、CH3を示し、N()Qは、N含有基で、QにO、N、S等を含有してもよい。]で示される窒素含有環状炭化水素基を含む(メタ)アクリル酸アミド、
式(8)CH2=CR23COOCH2−T[R23は、H、CH3を示し、Tは、フラン環、テトラヒドロフラン環を示す。]で示されるフラン環含有(メタ)アクリル酸系エステル、
式(9)CH2=CH−CN。
(13) 特開平8-269390号公報には、式(1):X−SiR1R2R3
(但し、式中R1〜R3は何れもアルキル基、アリール基の中から選ばれた基であって、互いに同一の基であっても異なる基であってもよい。Xはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基である。)で表される単量体Aを用いた重合体と、
式(2):Y−(CH2CH2O)n−R4(但しR4はアルキル基またはアリール基であり、Yはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基またはイタコノイルオキシ基であり、nは1〜25の整数である。)で表される単量体Bを用いた重合体と、
防汚剤とを含む塗料組成物が開示されている。上記防汚剤としては、上記特開平8-269388号公報に記載の防汚剤と同様の防汚剤が挙げられている。また、添加可能な成分としてロジン等の樹脂、沈降防止剤などが挙げられている。
[A]
防汚剤と、
[B]
(a)式[I]:
で表されるシリル(メタ)アクリレート成分単位20〜80重量%、
(b)式[II]:
Zが酸素原子である場合には、R6は置換基を有していてもよいヒドロキシアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基または式:
Zが−NR7である場合には、R7は、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、置換アミノ基、アシル基、アルコキシ基の何れかで置換されていてもよいアルキル基を示し、R6は水素原子を示す。]で表されるアクリル系不飽和単量体成分単位0.01〜40重量%、
および
(c)上記(a)成分単位および(b)成分単位以外の他の不飽和単量体成分単位5〜79.99重量%(但し(a)+(b)+(C)=100重量%)
から構成され、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量が20万以下であるシリル(メタ)アタリレート共重合体と、
[C]
式[III]:H2C=CHO−R
(式[III]中、Rは炭化水素基を示す。)
で表されるビニルエーテルから誘導される成分単位を含有する(共)重合体と、
を含有することを特徴としている。
本発明に係る防汚塗料組成物は、防汚剤[A]と、上記のシリル(メタ)アクリレート共重合体[B]と、上記のビニルエーテル系(共)重合体[C]と、溶出促進成分[D]とを含有することが好ましい。
本発明においては、上記溶出促進成分が、ロジン、ロジン誘導体、ナフテン酸およびその金属塩のうちから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
本発明に係る船体または水中構造物の防汚方法は、上記記載の防汚塗料組成物を用いることを特徴としている。
本発明に係る防汚塗料組成物によれば、塗膜にクラックが発生しにくく、塗膜付着性が良好で塗膜剥離が起きにくく、塗膜の加水分解速度が良好に制御され、防汚性特に高汚損環境下における防汚性や長期防汚性に優れ、しかもこれら特性にバランスよく優れた防汚塗膜が得られる。
本発明に係る防汚塗料組成物には、防汚剤[A]と、自己研磨性を有する塗膜形成成分としてのシリル(メタ)アクリレート共重合体[B]とに加えて、
得られる塗膜の防汚性、溶出速度安定性等の向上に寄与し、塗膜形成成分としても機能する成分としてのビニルエーテル系(共)重合体[C]すなわち、式[III]:H2C=CHO−R(式[III]中、Rは炭化水素基を示す。)で表されるビニルエーテルから誘導される成分単位を含有する(共)重合体[C]および/または溶出促進成分[D]が少なくとも含有されている。
<防汚剤[A]>
防汚剤[A]としては、無機系、有機系の何れであってもよく、従来より公知のものを広く用いることができるが、本発明においては、銅および/または銅化合物が好ましい。上記銅化合物としては、その分子量が通常63.5〜2000、好ましくは63.5〜1000のものが用いられる。
有機系の銅化合物としては、例えば、塩基性酢酸銅、オキシン銅、ノニルフェノールスルホン酸銅、カツパービス(エチレンジアミン)−ビス(ドデシルベンゼンスルホネート)、ナフテン酸銅、ロジン銅、ビス(ペンタクロロフェノール酸)銅などが挙げられ、好ましくは無機系の亜酸化銅、チオシアン化銅(ロダン銅)が用いられる。
このような銅および/または銅化合物は、この防汚塗料組成物中に、合計で通常、1〜70重量%、好ましくは3〜65重量%の量で含まれていることが望ましい。また防汚塗料組成物中に含まれるシリル(メタ)アクリレート共重合体100重童部に対して、該銅および/または銅化合物は、合計で通常、3〜1400重量部、好ましくは10〜1300重量部の量で含まれていることが望ましい。
本発明においては、防汚剤として、上記銅および/または銅化合物と共に、あるいは上記銅および/または銅化合物に代えて、下記式[IV]で示されるピリチオン系化合物(すなわち、金属−ピリチオン類)[式中R1〜R4は、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基を示し、Mは、Zn、Cu、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Fe、Al等の金属を示し、nは価数を示す]などが含まれていてもよい。
テトラメチルチウラムジサルファイド、カーバメート系の毒物(例:ジンクジメチルジチオカーバメート、マンガン-2-エチレンビスジチオカーバメート)、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、4,5−ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、ピリジン-トリフェニルボラン等を挙げることができる。本発明においては、このような防汚剤をジンクピリチオン(上記式[IV]で、R1〜R4=H、M=Zn、n=2のものに相当)等のピリチオン系化合物とともに、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
また、この防汚塗料組成物に含まれる銅および/または銅化合物、ピリチオン系化合物などの各種防汚剤の含有量は、防汚塗料組成物調製時に用いられる防汚剤、被膜形成性共重合体などの種類あるいはこのような防汚塗料組成物が塗布形成される船舶等の種類(船舶では、外航−内航用、各種海水域用、木造−鋼鉄船用等)などにもより一概に決定されないが、上記シリル(メタ)アクリレート共重合体100重童部に対して、防汚剤総量として通常10〜1400重量部の量で、好ましくは20〜1300重量部の量で含有されていることが望ましい。
このシリル(メタ)アクリレート共重合体[B]は、下記式[I]で表されるシリル(メタ)アクリレート成分単位(a)と、下記式[II]で表される不飽和単量体成分単位(b)と、これら成分単位(a)および(b)以外の他の不飽和単量体成分単位(c)とから構成されている。
[シリル(メタ)アクリレート成分単位(a)]
シリル(メタ)アクリレート成分単位(a)は、下記式[I]で表される。
式[I-a]:
(メタ)アクリル酸ジsec−ブチル−メチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル−ジメチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸モノメチルジプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸メチルエチルプロピルシリルエステル等のようにR2、R3およびR4のうちの1部または全部が互いに異なったシリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
アクリル系不飽和単量体成分単位(b)(単に、不飽和単量体成分単位(b)とも言う。)は、下記式[II]で表される。
Zが酸素原子である場合には、R6は置換基を有していてもよいヒドロキシアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基または式:
上記式[II]中のヒドロキシアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜18、さらに好ましくは2〜9であり、また上記ヒドロキシシクロアルキル基の炭素数は、好ましくは3〜10、さらに好ましくは3〜8であり、上記ポリアルキレングリコール基中のアルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜8、さらに好ましくは2〜4である。
式[II-a]:
上記式[II-a]中のヒドロキシアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜18、さらに好ましくは2〜9であり、また上記ヒドロキシシクロアルキル基の炭素数は、好ましくは3〜10、さらに好ましくは3〜8であり、上記ポリアルキレングリコール基中のアルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜8、さらに好ましくは2〜4である。
また、Zが−NR7である場合には、R7は、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、置換アミノ基、アシル基、アルコキシ基の何れかで置換されていてもよいアルキル基を示し、R6は水素原子を示す。
これらの不飽和単量体[II-a]のうちでは、ヒドロキシル基含有モノマーが好ましく、ヒドロキシル基含有モノマーのうちでは2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレートなどを用いると、適度の溶出性を有する防汚塗膜が得られるため好ましい。
不飽和単量体成分単位(c)は、上記成分単位(a)および上記成分単位(b)と共に本発明のシリル(メタ)アクリレート共重合体を構成しており、しかも上記成分単位(a)、(b)の何れとも異なる成分単位であって、このような不飽和単量体成分単位(c)を誘導しうる不飽和単量体(c1)としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸オクチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;
スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン類;
酢酸ビニル、安息香酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;
クロトン酸エステル類、イタコン酸エステル類、フマル酸エステル類、マレイン酸エステル類等が挙げられ、これらのうちでは、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン類、ビニルエステル類が適度の塗膜強度を有する防汚塗膜が得られるため好ましい。
本発明に係るシリル(メタ)アクリレート共重合体には、上記シリル(メタ)アクリレート成分単位(a)は、20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%の量で、アクリル系不飽和単量体成分単位(b)は0.01〜40重量%、好ましくは0.1〜20重量%の量で、不飽和単量体成分単位(c)は5〜79.99重量%、好ましくは10〜60重量%((a)+(b)+(c)=100重量%)の量で含まれていることが、塗膜強度と消耗性の点で望ましい。
<シリル(メタ)アクリレート共重合体[B]の製造>
このようなシリル(メタ)アクリレート共重合体[B]を得るには、上記式[I-a]で表されるシリル(メタ)アクリレート(a1)20〜80重量%と、上記式[II-a]で表される不飽和単量体(b1)0.01〜40重量%と、上記単量体[I-a]および[II-a]と共重合しうる他の不飽和単量体(c1)5〜79.99重量%(但し(a1)+(b1)+(c1)=100重量%)をラジカル重合開始剤の存在下に、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等の各種方法にてランダム重合させればよい。
過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシオクテート、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸塩(カリ塩、アンモニウム塩)等が挙げられる。
ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;
イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール類;
ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;
メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;
等が挙げられる。これらの溶剤は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
<ビニルエーテル系(共)重合体[C]>
このビニルエーテル系(共)重合体[C]は、
式[III]:H2C=CHO−R
(式[III]中、Rは炭化水素基を示す。)
で表されるビニルエーテルから誘導される成分単位を含有する(共)重合体である。
<溶出促進成分[D]>
溶出促進成分[D]は、海水中で塗膜の自己研磨作用を促進する働きを有し、このような溶出促進成分としては、ロジン(例:商品名「ロジンWW」)およびその誘導体、モノカルボン酸およびその塩等が挙げられる。
<防汚塗料組成物>
本発明に係る防汚塗料組成物には、上記のような銅および/または銅化合物に代表される防汚剤[A]と、上記シリル(メタ)アクリレート共重合体[B]とに加えて、ビニルエーテル系(共)重合体[C]および/または溶出促進成分[D]とが少なくとも含有されている。このような防汚塗料組成物によれば、塗膜にクラックが発生しにくく、塗膜付着性が良好で塗膜剥離が起きにくく、塗膜の加水分解速度が良好に制御され、防汚性特に高汚損環境下における防汚性や長期防汚性に優れた防汚塗膜が得られる。
これらの成分[A]、[B]、[C](および/または[D])以外に、酸化亜鉛(亜鉛華)、脱水剤、タレ止め・沈降防止剤、塩素化パラフィン等の可塑剤、着色顔料、体質顔料などの各種顔料、上記ビニルエーテル系(共)重合体を除くアクリル樹脂などの各種樹脂、消泡剤、色別れ防止剤、レベリング剤などの各種添加剤など、下記のような成分を含有していてもよい。
[酸化亜鉛(亜鉛華)]
このような防汚塗料組成物には、酸化亜鉛(亜鉛華)が含有されていても良い。このように酸化亜鉛が配合された防汚塗料組成物では、得られる塗膜強度が向上し、塗膜の研掃性を効果的に制御できる。
[脱水剤]
この防汚塗料組成物には、無機系あるいは有機系の脱水剤、好ましくは無機系の脱水剤(無機脱水剤)が配合されていても良い。このように脱水剤が配合された防汚塗料組成物では、貯蔵安定性を一層向上させることができる。
[タレ止め・沈降防止剤]
タレ止め・沈降防止剤としては、公知のタレ止め、沈降防止剤が任意量で配合されていてもよい。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの塩類、ポリエチレンワックス、アミドワックス、水添ヒマシ油ワックス系,ポリアマイドワックス系および両者の混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等が挙げられ、好ましくは水添ヒマシ油ワックス、ポリアマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックスが用いられる。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、楠本化成(株)製の「ディスパロンA-603-20X」、「ディスパロン4200-20」等の商品名で上市されているものが挙げられる。
[顔料、溶剤]
顔料としては、従来公知の有機系、無機系の各種顔料(例:チタン白、ベンガラ、有機赤色顔料、タルクなど)を用いることができる。なお、染料等の各種着色剤も含まれていてもよい。
溶剤としては、例えば、脂肪族系、芳香族系(例:キシレン、トルエン等)、ケトン系、エステル系、エーテル系など通常、防汚塗料に配合されるような各種溶剤が用いられる。
<防汚塗料組成物の製造>
本発明に係る防汚塗料組成物は、従来より公知の方法を適宜利用することにより製造することができ、例えば、上記シリル(メタ)アクリレート共重合体[B]と、該共重合体[B]100重量部に対して3〜1400重量部の量の銅および/または銅化合物、0〜300重量部の量のピリチオン系化合物(但し防汚剤[A]総量で25〜1200重量部)と、0.3〜200重量部の量のビニルエーテル系(共)重合体[C]と、0.5〜500重量部の量の溶出促進成分[D](但し、[C]と[D]とは何れか一方でもよい。)と、2〜700重量部の量で必要により用いられる亜鉛華と、0.03〜200重量部の量の脱水剤(例:無水石膏、モレキュラーシーブ)と、適宜量で用いられるタレ止め・沈降防止剤、顔料、溶剤などとを一度にあるいは任意の順序で加えて攪拌・混合・分散すればよい。
上記のような防汚塗料組成物を水中構造物(例:原子力発電所の給排水口)、湾岸道路、海底トンネル、港湾設備、運河・水路等のような各種海洋土木工事の汚泥拡散防止膜、船舶、漁具(例:ロープ、漁網)などの各種成形体の表面に常法に従って1回〜複数回塗布すれば、耐クラック性、防汚性に優れた防汚塗膜被覆船体または水中構造物などが得られる。なお、この防汚塗料組成物は、直接上記船体または水中構造物等の表面に塗布してもよく、また予め防錆剤、プライマーなどの下地材が塗布された船体または水中構造物等の表面に塗布してもよい。さらには、既に従来の防汚塗料による塗装が行われ、あるいは上記防汚剤[A]、シリル(メタ)アクリレート共重合体[B]、ビニルエーテル系(共)重合体[C]([C]に代えて、または[C]と共に溶出促進成分[D]を用いても良い。)などが含有された本発明の防汚塗料組成物による塗装が行われている船体、水中構造物等の表面に、補修用として本発明の防汚塗料組成物を上塗りしてもよい。このようにして船体、水中構造物等の表面に形成された防汚塗膜の厚さは特に限定されないが、例えば、30〜150μm/回程度である。
また本発明によれば、このような防汚塗料組成物を用いた、環境汚染の恐れの極めて少ない防汚方法が提供される。
(共重合体S−1の製造)
攪拌機、コンデンサー、温度計、滴下装置、窒素導入管、加熱・冷却ジャケットを備えた反応容器にキシレン100部を仕込み窒素気流下で85℃の温度条件に加熱攪拌を行った。同温度を保持しつつ滴下装置より、上記反応器内にトリイソプロピルシリルアクリレート50部、メチルメタクリレート45部、2−ヒドロキシプロピルアクリレート5部および重合開始剤の2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1部の混合物を2時間かけて滴下した。その後同温度で4時間攪拌を行なった後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4部を加え更に同温度で4時間攪拌を行ない、無色透明の共重合体溶液S−1を得た。
[GPC測定条件]
装 置:東ソー社製 HLC−8120GPC
カラム:東ソー社製 Super H2000+H4000
6mmI.D.,15cm
溶離液:THF
流 速:0.500ml/min
検出器:RI
カラム恒温槽温度:40℃
[IR測定条件]
装 置:日立製作所製
270−30形 日立赤外分光光度計
測定方法:KBrセル、塗布法
(共重合体S−2〜共重合体S−23および比較例用共重合体H1〜H5の製造)
上記共重合体S−1の製造の際に、滴下配合成分を表1〜5に示すように変えた以外は、上記と同様にして共重合体S−2〜共重合体S−23および比較例用共重合体H1〜H5を得て、上記と同様にこれらの共重合体(溶液)の物性値を測定した。
表6〜12に示す配合組成の防汚塗料組成物を製造するに際しては、ガラスビーズを入れたペイントシェーカー内でこれらの配合成分を一緒にして2時間振とうした後、100メッシュのフィルターにてロ過して、所望の防汚塗料組成物を得た。
貯蔵安定性の評価は塗料試作直後と常温2ヶ月間貯蔵後の粘度(ストーマー粘度計により測定した25℃におけるKu値)の増加度により行った。
5:粘度の増加が10未満
4:粘度の増加が20未満
3:粘度の増加が30未満
2:粘度の増加が30以上
1:流動性がなくKu値の測定が不可。
結果を表6〜12に合わせて示す。
広島湾の海水中に設置した回転ドラムの側面に取付け可能なように曲げ加工が施された70×200×3mmのサンドブラスト鋼板を用意した。
(評価基準)
5:塗膜表面に付着物を認めない
4:塗膜表面に薄いスライムの付着を認める
3:塗膜表面に濃いスライムの付着を認める
2:塗膜表面にスライムの付着及び部分的にシオミドロなど植物の付着を認める
1:塗膜表面全体がシオミドロなどの植物で覆われている
また、下記のような条件で消耗度の評価を行った。
直径300mmで厚さ3mmの円盤状サンドブラスト鋼板にエポキシ系ジンクリッチプライマー、エポキシ系防食塗料、ビニル系バインダーコートをそれぞれの乾燥膜厚が20μm、150μm、50μmとなるよう1日毎に順次重ねて塗装した後、7日間室内で乾燥した。その後隙間500μmのアプリケーターを用い供試防汚塗料組成物を円心から半径方向に放射状に塗装し、試験板を得た。25℃の海水を入れた恒温槽中でモーターにこの試験板を取り付け、周速15ノットで1ヶ月間回転し、円周付近の消耗度(膜厚減少)を測定した。
また、膜厚減少測定時の塗膜状態を目視で観察し、以下の基準にて評価を行った。
5:塗膜に異常を認めない
4:部分的に微細なワレを認める
3:全体的に微細なワレを認める
2:部分的に顕著なワレを認める
1:全体的に顕著なワレを認める
評価結果を合わせて表6〜12に示す。
▲1▼「トヨパラックス150」東ソー(株)製の塩素化パラフィン、
平均炭素数:14.5、塩素含有量:50%、
粘度:12ポイズ/25℃、比重:1.25/25℃。
▲2▼「ルトナールA−25」BASF社製のポリビニルエチルエーテル、
粘度:2.5〜6.0Pa・s/23℃、比重:0.96/20℃。
▲3▼「ロジン溶液」WWロジンの50%キシレン溶液
▲4▼「ナフテン酸銅溶液」ナフテン酸銅のキシレン溶液、
溶液中の銅含有率:8%。
▲5▼「可溶性無水石膏D−1」(株)ノリタケカンパニーリミテド製、
IIICaSO4、白色粉末、平均粒径15μm。
▲6▼「ディスパロン4200−20」楠本化成(株)製、
酸化ポリエチレンワックス 20%キシレンペースト
▲7▼「ディスパロンA603−20X」楠本化成(株)製
脂肪酸アマイドワックス 20%キシレンペースト
Claims (9)
- [A]
防汚剤と、
[B]
(a)式[I]:
【化1】
[式[I]中、R1は、水素原子またはメチル基を示し、R2、R3、R4は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれアルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基の何れかを示す。]
で表されるシリル(メタ)アクリレート成分単位20〜80重量%、
(b)式[II]:
【化2】
[式[II]中、R5は、水素原子またはメチル基を示し、Zは、酸素原子または−NR7を示し、
Zが酸素原子である場合には、R6は置換基を有していてもよいヒドロキシアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基または式:
【化3】
で表されるポリアルキレングリコール基[但し、R8は、アルキレン基であり、nは、2〜50の整数を示す。]を示し、
Zが−NR7である場合には、R7は、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、置換アミノ基、アシル基、アルコキシ基の何れかで置換されていてもよいアルキル基を示し、R6は水素原子を示す。]で表されるアクリル系不飽和単量体成分単位0.01〜40重量%、
および
(c)上記(a)成分単位および(b)成分単位以外の他の不飽和単量体成分単位5〜79.99重量%(但し(a)+(b)+(c)=100重量%)
から構成され、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量が20万以下であるシリル(メタ)アクリレート共重合体と、
[C]
式[III]:H2C=CHO−R
(式[III]中、Rは炭化水素基を示す。)
で表されるビニルエーテルから誘導される成分単位を含有する(共)重合体と、
を含有し、
前記ビニルエーテル系(共)重合体[C]を、前記シリル(メタ)アクリレート共重合体[B]100重量部に対して、0.3〜60重量部の量で含有する
ことを特徴とする防汚塗料組成物。
- [A]防汚剤と、
[B]上記請求項1に記載のシリル(メタ)アクリレート共重合体と、
[D]溶出促進成分と
を含有し、
前記溶出促進成分[D]を、前記シリル(メタ)アクリレート共重合体[B]100重量部に対して、0.3〜600重量部の量で含有し、
前記溶出促進成分[D]が、ロジン、ロジン誘導体、モノカルボン酸およびその塩
のうちから選ばれた少なくとも1種である
ことを特徴とする防汚塗料組成物。
- [A]防汚剤と、
[B]上記請求項1に記載のシリル(メタ)アクリレート共重合体と、
[C]上記請求項1に記載のビニルエーテル系(共)重合体と、
[D]上記請求項2に記載の溶出促進成分と
を含有し、
前記ビニルエーテル系(共)重合体[C]を、前記シリル(メタ)アクリレート共重合体[B]100重量部に対して、0.3〜60重量部の量で含有し、
前記溶出促進成分[D]を、前記シリル(メタ)アクリレート共重合体[B]100重量部に対して、0.3〜600重量部の量で含有する
ことを特徴とする防汚塗料組成物。
- 上記防汚剤が、銅および/または銅化合物である請求項1〜3の何れかに記載の防汚塗料組成物。
- 上記溶出促進成分が、ロジン、ロジン誘導体、ナフテン酸およびその金属塩のうちから選ばれた少なくとも1種である請求項2〜4の何れかに記載の防汚塗料組成物。
- 上記不飽和単量体成分単位(c)が、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、ビニルエステルのうちから選択される1種または2種以上の化合物から誘導されるものである請求項1〜5の何れかに記載の防汚塗料組成物。
- 請求項1〜6の何れかに記載の防汚塗料組成物から形成されている防汚塗膜。
- 請求項1〜6の何れかに記載の防汚塗料組成物を用いることを特徴とする船体または水中構造物の防汚方法。
- 請求項1〜6の何れかに記載の防汚塗料組成物からなる塗膜にて船体または水中構造物の表面が被覆されていることを特徴とする船体または水中構造物。
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