JP3733197B2 - 防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体、水中・水上構造物または漁業資材 - Google Patents
防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体、水中・水上構造物または漁業資材 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体、水中・水上構造物または漁業資材に関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、アオサ、フジツボ等の水棲生物の付着を防止できるなど防汚性に優れ、耐変色性に優れ、さらに貯蔵安定性も良好な防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体、水中・水上構造物または漁業資材に関する。
【0003】
【発明の技術的背景】
船底、水上・水中構造物、漁網などは、水中に長期間さらされることにより、その表面に、貝、フジツボ等の動物類、ノリ(海苔)等の藻類、あるいはバクテリア類などの各種水棲生物が付着・繁殖すると、外観が損ねられ、その機能が害されることがある。
【0004】
特に船底にこのような水棲生物が付着・繁殖すると、船全体の表面粗度が増加し、船速の低下、燃費の拡大などを招く虞が高い。また、このような水棲生物を船底から取り除くには、ドックにおける多大な労力、作業時間が必要となる。また、バクテリア類が水中構造物などに付着・繁殖しスライム(ヘドロ状物)が付着すると、これらが腐敗し、その物性が劣化し寿命が著しく低下する等の被害が生ずる虞がある。
【0005】
このため従来では、船底など専ら水中に浸漬するような部位での上記のような被害を防止するとの観点のみから、各種防汚塗料の研究開発がなされてきた。
換言すれば、従来では船体の水線部や水中構造物の喫水線近傍などのように、直射日光の照射と海水中への浸漬との交互条件が繰り返される部位であり、人目に触れるため美観も求められる部位に塗布するとの観点からの塗料の研究開発は行われていなかった。
【0006】
船体の水線部などは、上記のように人目に触れる部分であり美観の点から白色塗装されることが多いが、この水線部は、海水中への浸漬と、海面上に露出し強烈な直射日光の照射とが繰り返される部分であるため、塗料中に防汚剤として配合されるCu2Oの酸化等により、この水線部が僅かに緑変あるいは黒変するなど変色しても、著しく美観を損なってしまう。
【0007】
従来、船底など専ら水中に浸漬する部位への水棲生物などの付着被害を防止すべく、船底などには種々の防汚塗料が塗布されている。
このような防汚塗料としては、例えば、トリブチル錫メタクリレートとメチルメタクリレート等との共重合体と、亜酸化銅(Cu2O)とを含有する錫ポリマー型防汚塗料が挙げられる。この防汚塗料中の該共重合体は、海水中で加水分解されてビストリブチル錫オキサイド(トリブチル錫エーテル,Bu3Sn-O-SnBu3:Buはブチル基)あるいはトリブチル錫ハロゲン化物(Bu3SnX:Xはハロゲン原子)等の有機錫化合物を放出して防汚効果を発揮するとともに、加水分解された共重合体自身も水溶性化して海水中に溶解していく「加水分解性自己研磨型塗料」であるため、船底塗装表面は、樹脂残渣が残らず、常に活性な表面を保つことができる。特にアルミニウム合金を素材とする船体においては、現在もこのタイプの防汚塗料が多く使用されているのが現状である。
【0008】
しかしながら、このような有機錫化合物は、毒性が強く、海洋汚染、奇形魚類の発生、食物連鎖による生態系への悪影響などが懸念され、これに代わり得るような、錫を含有しない防汚塗料の開発が求められていた。
【0009】
このような錫を含有しない防汚塗料(錫フリー型防汚塗料)としては、例えば、特開平4-264170号公報、特開平4-264169号公報、特開平4-264168号公報に記載のシリルエステル系防汚塗料が挙げられる。しかしながら、これらの公報においては、水中への浸漬と直射日光の照射とが繰返されるような環境下での耐変色性については何等教示されていない。またこれらの防汚塗料には、特開平6-157941号公報、特開平6-157940号公報などにも教示されているように防汚性に劣るとの問題点もあった。
【0010】
また、例えば、上記特開平6-157941号公報、特開平6-157940号公報などにも記載されているように、従来では、防汚塗料には、防汚性の点から亜酸化銅(Cu2O)が25〜50重量%程度の量で含有されていることが多い(例:特開平6-157941号公報の実施例6〜8では、塗料組成物175重量部中に亜酸化銅が50.0重量部(28.6重量%))。
【0011】
しかしながら、これら公報に記載されているような、亜酸化銅が多量に配合された錫フリー型防汚塗料を例えば船舶等の水線部に塗布すると、得られた塗膜は、前述したように海水と太陽光線とに繰り返して接すると変色し易いという問題点があった。
【0012】
また、特開平7−291813号公報には、1〜25重量%のピリジン−トリフェニルボランを有効成分として含有する腔腸動物付着防止用漁網防汚剤、および該ピリジン−トリフェニルボランに加えて、さらに1,3−ジシアノテトラクロロベンゼンと2-(チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾールと、それぞれ特定の式で示されるテトラアルキルチウラムジスルフィドと2,3−ジクロロマレイミド類とジチオカルバミン酸金属塩とフェノール類とピリチオン金属塩とを含有する腔腸動物付着防止用漁網防汚剤が記載され、またこれら成分に加えて溶出調整剤が含まれたものが記載されている。該溶出調整剤としては、ロジン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられている。また、その実施例には、ピリチオン銅が配合された態様が示されている。
【0013】
該公報に記載の腔腸動物付着防止用漁網防汚剤では、上述したような従来の錫フリー型防汚塗料と比較すれば防汚効果の向上は認められるが、前述したような錫ポリマー型防汚塗料と比較すると、防汚性に劣っており、求められる防汚性能には達していない。
【0014】
このように従来は、防汚性に優れ、長期間にわたり塗装直後の鮮やかな色調が保持できるような耐変色性に優れ、さらに貯蔵安定性に優れた錫フリー型防汚塗料は見出されていない。
【0015】
また、特開平9−3366号公報には、ピリジン-トリフェニルボランを第1の有効成分として含み、第2の有効成分が、マンガニーズスチレンビスジチオカーバメート、ジンクエチレンビスジチオカーバメート、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート、亜酸化銅、チオシアン酸銅、ビス(2-ピリジルチオ-1-オキシド)、N-(フルオロジクロロメチルチオ)-フタルイミド、N-(ジクロロフルオロメチルチオ)-N,N'-ジメチル-N-フェニルスルファミド、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-イソチアゾリン-3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4-メチルスルホニルピリジンおよび3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメートよりなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物である水中防汚塗料が記載されている。
【0016】
防汚塗料では、水妻生物が付着せず、かつ環境を汚染しない程度の量で少量ずつ溶出するようにしなければならない。
ところが、ピリジン-トリフェニルボランと、他の防汚剤、特に銅化合物とを組み合わせて使用すると、銅イオンの影響でピリジン-トリフェニルボランが短期間で分解するため、防汚作用が比較的短期間で急速に低下することがある。このように銅イオン等の影響によってピリジン-トリフェニルボランのような防汚剤が短期間で分解することは、塗料全体の防汚性能が短期間で減失することは勿論、過剰に溶出した防汚成分は近傍の環境汚染の一時的な要因となることも考えられる。また、防汚塗料は、水棲成分の付着を防止することから、この防汚塗料が被塗装物の最外側面を形成するので、船舶等の被塗装物の外観は防汚塗料によって決定される。従って、防汚塗料によって形成される塗膜は均一でかつ美麗でなければならない。
【0017】
本発明者はピリジン-トリフェニルボランおよびロダン銅を併用することによって優れた防汚性能及び美観が維持できることに着目し、従来は短期間でピリジン-トリフェニルボランが分解するため実用が困難であったが、これに無機脱水剤および/またはジンクピリチオンを併用することによって長期間貯蔵安定性を確保することが達成できるとの知見を得て本発明を完成した。
【0018】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、優れた防汚効果を有すると共に貯蔵安定性に優れた防汚塗料組成物を提供することを目的としている。さらに本発明は、防汚性に優れた防汚塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体、水中・水上構造物または漁業資材を提供することを目的としている。
【0019】
【発明の概要】
本発明に係る防汚塗料組成物は、ビニル系樹脂および/またはシリル系樹脂と、ピリジン-トリフェニルボランと、ロダン銅と、無機脱水剤としての無水石膏とを含有することを特徴としている。
【0020】
本発明に係る防汚塗膜は、上記いずれかの防汚塗料組成物から形成されている。
本発明に係る船体、水中・水上構造物または漁業資材の防汚方法は、上記いずれかの防汚塗料組成物を用いることを特徴としている。
【0021】
本発明に係る船体、水中・水上構造物または漁業資材は、上記いずれかの防汚塗料組成物からなる塗膜にて船体、水中・水上構造物または漁業資材の表面が被覆されていることを特徴としている。
【0022】
防汚塗料組成物において、本発明で採用するように、ピリジン-トリフェニルボランと、ロダン銅と、無機脱水剤および/またはジンクピリチオンとを併用することにより、防汚剤であるピリジン-トリフェニルボランとロダン銅とが相乗的に作用して、それぞれの防汚剤を単独で用いた場合よりも高い防汚効果を示すと共に、無機脱水剤および/またはジンクピリチオンの使用によって、上記の防汚剤を含有する塗料組成物を長期間貯蔵あるいは保存した場合であっても、防汚成分が安定に維持されるため、本発明の防汚塗料組成物は、優れた保存安定性・貯蔵安定性を示す。
【0023】
また、上記のような本発明に係る一液タイプの防汚塗料組成物によれば、環境汚染の虞が少なく、防汚性に優れ、しかも耐変色性(すなわち、喫水線の変動などにより繰返して直射日光に晒されたり、水中に浸漬されたりすることによっても変色しにくいこと)に優れた塗膜を形成できる。
【0024】
さらに、本発明の防汚塗料組成物によれば、上記効果に加えて、さらに船体がアルミニウム合金で製造された船舶へも、アルミニウム合金製の船体を腐食させることが少ないという大きな利点がある。
【0025】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る防汚塗料組成物について具体的に説明する。
[防汚塗料組成物]
本発明に係る防汚塗料組成物は、ピリジン−トリフェニルボランと、ロダン銅と、無機脱水剤および/またはジンクピリチオンとを含有している。
【0026】
[ピリジン−トリフェニルボラン]
このピリジン−トリフェニルボランは、下記式[I]で示される。
【0027】
【化1】
【0028】
このようなピリジン−トリフェニルボランの粒子径は、通常、特に限定されないが、本発明においては、その平均粒子径が0.1〜10μmであることが好ましい。このような粒子径のピリジン−トリフェニルボランを用いると、得られる防汚塗料組成物は、長期懸濁分散性(沈降防止能、貯蔵安定性)に優れ、長期保管により該成分がもし沈降してしまった場合にも攪拌すれば容易に再分散でき(すなわち、再分散性に優れ)、しかも該防汚塗料組成物を用いて塗布形成された塗膜(防汚塗膜)は、防汚性に優れるため好ましい。
【0029】
[ロダン銅(ロダン化銅)]
ロダン銅(ロダン化銅)は、チオシアン酸銅とも言い、式:「CuSCN,Cu(SCN)2」で示される。
【0030】
このようなロダン銅の平均粒子径は、通常、0.1〜10μm、好ましくは0.5〜5μm程度である。ロダン銅の平均粒子径は、塗膜組成物の粘度および防汚性能の観点からこの範囲にあることが望ましい。
【0031】
上記のようにピリジン−トリフェニルボランとロダン銅とを併用することにより、これらの防汚成分を単独で使用した場合よりの高い防汚効果を示す。ピリジン−トリフェニルボランとロダン銅とは、通常は1:10〜10:1の重量比、好ましくは1:5〜5:1の重量比で配合される。上記のような量比でピリジン−トリフェニルボランとロダン銅とを配合することにより、特に優れた相乗効果を示す。
【0032】
[無機脱水剤]
無機脱水剤を使用することにより本発明の防汚塗料組成物の貯蔵安定性を一層向上させることができる。このような無機脱水剤としては、無水石膏(CaSO4)、合成ゼオライト系吸着剤(例;商品名:モレキュラーシーブ等)、オルソギ酸メチル、オルソ酢酸メチル等のオルソエステル類、オルソほう酸エステル、シリケート類やイソシアネート類(例;商品名:アディティブTI)等が挙げられ、無水石膏、合成ゼオライト系吸着剤(特にモレキュラーシーブ)が好ましく、特に無水石膏が好ましく用いられる。このような無機脱水剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0033】
[ジンクピリチオン]
ジンクピリチオン(2-ピリミジンチオール-1-オキシド亜鉛)は、下記式[II]で示される。
【0034】
【化2】
【0035】
このようなジンクピリチオンの平均粒子径は、0.5〜5μmであることが好ましい。
本発明に係る防汚塗料組成物には、前記ピリジン-トリフェニルボランは、通常、1〜20重量%、好ましくは5〜15重量%の量で含有される。ピリジン−トリフェニルボランの配合割合は、防汚塗料組成物の防汚性能および塗料粘度の観点から、この範囲にあることが望ましい。ロダン銅は、通常、0.5〜30重量%、好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは10〜20重量%の量で含有されていることが望ましい。ロダン銅の配合割合は、塗料粘度および形成された塗膜の防汚性の観点からこの範囲にあることが望ましい。また無機脱水剤を使用する場合、使用する脱水剤の種類によってその配合量は異なるが、例えば無水石膏を使用する場合には、この無水石膏は通常は0.5〜10重量%、好ましくは0.8〜8重量%の量で含有されていることが望ましい。また、無機脱水剤として例えば合成ゼオライト系吸着剤を使用する場合には、通常、0.2〜5重量%、好ましくは0.3〜4重量%の量で配合されることが望ましい。無機脱水剤の配合割合は、塗料の貯蔵安定性および適切な粘度維持の観点からこの範囲にあることが望ましい。上記ジンクピリチオンを配合する場合、このジンクピリチオンは、通常は、0.1〜10重量%、好ましくは1〜3重量%の量で含有されることが望ましい。ジンクピリチオンの配合割合は、塗料の貯蔵安定性および適切な粘度維持の観点からこの範囲にあることが望ましい。なお、無機脱水剤とジンクピリチオンとを併用する場合には、無機脱水剤とジンクピリチオンとは、通常は1:10〜10:1の重量比、好ましくは1:5〜5:1の重量比で配合される。上記のような量比で無機脱水剤とジンクピリチオンとを配合することにより、貯蔵・保存安定性が特に良好になる。
【0036】
本発明に係る防汚塗料組成物に使用される基材樹脂としては、防汚塗料に通常使用されている樹脂を用いることができ、ビニル系樹脂、アクリル亜鉛ポリマー、シリル系樹脂を使用することが好ましく、さらにこれらと水溶性樹脂とを併用することが特に好ましい。
【0037】
ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニル系共重合樹脂、塩化ゴム(樹脂)、塩素化オレフィン樹脂、スチレン・ブタジエン共重合樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、塩化ビニル系共重合樹脂、スチレン・ブタジエン共重合樹脂、アクリル樹脂が好ましく用いられる。
【0038】
塩化ビニル系共重合樹脂としては、具体的には、例えば、
▲1▼塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂[塩化ビニル/酢酸ビニル(重量比)=80〜90/20〜10で、(数)平均分子量が10000〜35000]、
▲2▼塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合樹脂[塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール(重量比)=80〜90/11〜4/9〜6で、(数)平均分子量が25000〜4000]、
▲3▼塩化ビニル・ビニルi-ブチルエーテル共重合樹脂[塩化ビニル/ビニルi-ブチルエーテル(重量比)=75〜25/55〜45で、(数)平均分子量が15000〜2000]、
▲4▼塩化ビニル・プロピオン酸ビニル共重合樹脂[塩化ビニル/プロピオン酸ビニル(重量比)=70〜50/30〜50で、(数)平均分子量が15000〜2000]等が挙げられる。
【0039】
上記スチレン・ブタジエン共重合樹脂としては、スチレン/ブタジエン(重量比)が、90〜98/10〜2で、(数)平均分子量が100000〜10000程度のものが用いられる。
【0040】
アクリル樹脂としては、(a)(メタ)アクリル酸および/またはそのエステルを(共)重合してなる樹脂[数平均分子量:50000〜5000程度のもの]、
(b)(メタ)アクリル酸および/またはそのエステルと、これら以外の各種アクリル系単量体(例:アクリルアミド、アクリル酸グリシジル)、ビニル単量体(例:エチレン)、スチレン等とを共重合してなる樹脂[主成分の(メタ)アクリル酸(エステル)含量:95〜60重量%、分子量:50000〜5000]、
等が挙げられる。
【0041】
これらのビニル系樹脂は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらのビニル系樹脂は、防汚塗料組成物中に固形分換算で、好ましくは、1〜12重量%、さらに好ましくは2〜8重量%の量で含有されていることが望ましい。ビニル樹脂の配合割合は、塗膜物性および防汚性能の観点からこの範囲にあることが望ましい。
【0042】
シリル系樹脂は、通常は、原料モノマーの一部としてシリル化された(メタ)アクリル系単量体[例:(メタ)アクリル酸アルキルシリルエステル]を用いて形成された重合体である。ここでシリル基には、通常1〜3個のアルキル基が結合している。このアルキル基の炭素数1〜7であることが好ましい。このようなシリル化された(メタ)アクリル系単量体の例としては、(メタ)アクリル酸トリメチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリエチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリブチルシリルエステル等のように同一のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルシリルエステル;(メタ)アクリル酸ジメチルプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸モノメチルジプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸メチルエチルプロピルシリルエステル等のように異なるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸シリルエステルなどが挙げられる。このような(メタ)アクリル酸アルキルシリルエステルのうちでは、特に(メタ)アクリル酸トリアルキルシリルエステルは、合成が容易であり、あるいはこのようなトリアルキルシリルエステルを用いてなる防汚塗料組成物は、造膜性がよく、貯蔵安定性がよく、さらに、研掃性が制御しやすいことから好ましく用いられる。
【0043】
このような(メタ)アクリル酸アルキルシリルエステルと共重合体を形成する他のモノマーとしては、任意の重合性不飽和化合物(エチレン性不飽和単量体)を用いることができ、このような重合性不飽和化合物としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類などを挙げることができ、好ましくは、メタアクリル酸メチルエステル(MMA)が用いられる。このようなMMAは、通常、30重量%以上、好ましくは、50重量%以上の量で共重合される。このような量でMMAを含有してなる共重合体では、ガラス転移温度(Tg)が、例えば30〜60℃と高く、防汚塗料組成物からなる塗膜が所期の強度を有する。
【0044】
本発明において、基材樹脂としてクマロン樹脂を使用することもできる。このクマロン樹脂は、クマロン成分単位、インデン成分単位、スチレン成分単位を主鎖に含む共重合体である。なお、このクマロン樹脂は、末端がフェノールで変性されていてもよく、また、このクマロン樹脂中の芳香族環の少なくとも一部が水素添加されていてもよい。このクマロン樹脂には、数平均分子量が200〜300の液状品と、数平均分子量が600〜800の固形品とがあり、本発明では液状品、固形品のいずれをも使用することができる。本発明で使用されるクマロン樹脂の内、液状品の粘度(25℃)は通常は5〜20ポイズの範囲内にあり、固形品の軟化温度は通常は90〜120℃である。クマロン樹脂は、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)などに溶解するので、本発明の防汚塗料組成物中に安定に溶解する。
【0045】
また、本発明では、上記の基材樹脂に加えて、水溶性樹脂(溶解性樹脂)を配合することもできる。ここで水溶性樹脂としては、ロジン(ロジンWW)、モノカルボン酸(例:炭素数9〜19程度の脂肪酸、ナフテン酸)およびその塩(例:Cu、Zn、Ca塩等)を配合することができる。特にロジンを使用することが好ましい。ロジンには、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどがあるが、本発明ではいずれをも使用することができる。これらの水溶性樹脂は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの水溶性樹脂は、防汚塗料組成物中に固形分換算で、好ましくは、2〜15重量%、さらに好ましくは4〜12重量%の量で含有されていることが望ましい。水溶性樹脂の配合割合は、塗膜の防汚性能および耐水性能の観点からこの範囲にあることが望ましい。
【0046】
なお、本発明の防汚塗料組成物中における基材樹脂を形成する上記樹脂成分の合計の含有率は、通常は、5〜20重量%、好ましくは6〜18重量%の範囲内にある。
【0047】
ピリジン−トリフェニルボランと、ロダン銅と、無機脱水剤および/またはジンクピリチオンとを含有する本発明の防汚塗料組成物は、ピリジン−トリフェニルボランとロダン銅とが相乗的に作用して優れた防汚性を示すと共に、無機脱水剤および/またはジンクピリチオンによって防汚塗料の保存・貯蔵安定性が向上する。
【0048】
このような本発明に係る防汚塗料組成物は、いわゆる錫フリー型防汚塗料であり、この塗料組成物からなる塗膜は、環境汚染の虞が少なく(低公害タイプ)であり、しかも水中微生物・動植物(例:スライム、藻、フジツボなど)の付着繁殖に対して優れた防汚性能を発揮し、耐変色性に優れ塗工後長期間に亘って優れた美観を保持でき、船舶、漁網、水中・水上構造物等種々の用途に好適に使用でき、さらに貯蔵安定性に優れている。
【0049】
さらに詳説すると、船体等の没水部には、前述したように、従来、防汚剤として亜酸化銅(Cu2O)が25〜50重量%程度の量で配合された防汚塗料が塗布されることが多い。従って、鮮明色を得ることができず、さらに白色防汚塗料中のCu2Oの酸化などにより変色(黒変、緑変)し易いなどの大きな欠点があった。これに対して本発明に係る防汚塗料組成物からなる塗膜では、鮮明色を得ることができると共に、耐変色性にも優れ、例えば、白色塗装面であっても、黒変、緑変などの変色は殆ど生ぜず、塗工直後の鮮やか色調が長期間保持できる。
【0050】
また、本発明の防汚塗料組成物は、防汚成分としてロダン銅のような銅化合物を含有していても、ピリジン-トリフェニルボランの分解を制御できる。また、銅化合物を含有する場合であっても、アルミニウム合金からなる船体を腐食させることが少ない。
【0051】
[防汚塗料組成物の製造]
このような防汚塗料組成物は、従来より公知の方法を適宜利用することにより製造することができ、例えば、上記ピリジン−トリフェニルボランおよびロダン銅と、無機脱水剤および/またはジンクピリチオンと、必要によりビニル系樹脂、水溶性樹脂、酸化チタン等の着色顔料、任意量のタレ止め・沈降防止剤、可塑剤、溶剤(例:キシレン)などとを所定の割合で一度にあるいは任意の順序で加えて攪拌・混合し、溶媒に分散すればよい。
【0052】
[その他の配合成分]
このような本発明に係る防汚塗料組成物は、上記ピリジン−トリフェニルボランとロダン銅と、無機脱水剤および/またはジンクピリチオンと、さらに必要により配合されるビニル系樹脂、水溶性樹脂の他に、後述するような可塑剤、タレ止め・沈降防止剤、顔料などを含んでいてもよい。
【0053】
可塑剤としては、TCP(トリクレジルフォスフェート)、塩化パラフィン、ポリビニルエチルエーテルなどが使用できる。
タレ止め・沈降防止剤としては、有機粘度系Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの塩類、ポリエチレンワックス、アミドワックス、水添ヒマシ油ワックス系、ポリアマイドワックス系および両者の混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等が挙げられ、好ましくは、ポリアマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス、有機粘度系が用いられる。
【0054】
顔料としては、従来公知の有機系、無機系の各種顔料(例:チタン白、ベンガラ)を用いることができる。なお、染料等の各種着色剤も含まれていてもよい。また、本発明の防汚塗料組成物には、他の有機防汚剤を配合することもできる。他の有機防汚剤の例としては、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿酸(商品名:DCMU)、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド(商品名:IT−354)、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノSトリアジン(商品名:イルガロール1051)、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−イソチアゾリン−3−オン(商品名:ケーソン930)、テトラクロロイソフタロニトリル(商品名:N−96)、2−ピリジンチオール−1−オキシド銅塩(商品名:銅ピリチオン)、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン(商品名:テンシルS−100)などが挙げられる。
【0055】
本発明の防汚塗料では、上記のような成分は、溶剤に溶解若しくは分散している。ここで使用される溶剤としては、例えば、脂肪族系、芳香族系(例:キシレン、トルエン等)、ケトン系、エステル系、エーテル系など、通常、防汚塗料に配合されるような各種溶剤が用いられる。
【0056】
上記のような防汚塗料組成物を水中構造物(例:火力・原子力発電所の給排水口)、湾岸道路、海底トンネル、港湾設備、運河・水路等のような各種海洋土木工事の汚泥拡散防止膜、船舶、漁業資材(例:ロープ、漁網、浮き子)などの各種成形体の表面に常法に従って1回〜複数回塗布すれば、鮮明色で、耐変色性、防汚性に優れた防汚塗膜被覆船体または水中構造物などが得られる。
【0057】
すなわちこのような本発明に係る防汚塗料組成物を各種成形体の表面に塗布硬化してなる防汚塗膜は、アオサ、フジツボ、アオノリ、セルプラ、カキ、フサコケムシ等の水棲生物の付着を防止できるなど防汚性に優れ、美観、耐変色性などに優れている。
【0058】
特に、該防汚塗料組成物はアルミニウム合金、FRP、鋼鉄、木などを素材とする船舶の船体没水部表面に塗布すれば、上記水棲生物の付着が防止でき、船舶の運航速度低下の防止、燃費の増大防止を図ることができる。また該防汚塗料組成物を水線部に塗布し防汚塗膜を形成すれば、防汚性に優れるのみならず、該水線部が海水中への浸漬と太陽光の照射とを繰り返し受けても変色せず、塗工直後の鮮やかな色調そのままの美観を長期間保持できる。また例えば、該防汚塗料組成物を海中構造物表面に塗布すれば、海中生物の付着防止を図ることができ、該構造物の機能、美観を長期間維持でき、漁網に塗布すれば、漁網の網目の閉塞を防止できる。
【0059】
なお、この本発明に係る防汚塗料組成物は、直接漁網に塗布してもよく、また予め防錆剤、プライマーなどの下地材が塗布された船体または水中構造物等の表面に塗布してもよい。さらには、既に従来の防汚塗料による塗装が行なわれ、あるいは本発明の防汚塗料組成物による塗装が行われている船体、水中構造物等の表面に、補修用として本発明の防汚塗料組成物を上塗りしてもよい。このようにして船体、水中構造物等の表面に形成された防汚塗膜の厚さは特に限定されないが、例えば、30〜150μm/回程度である。
【0060】
【発明の効果】
本発明に係る防汚塗料組成物によれば、ピリジン−トリフェニルボランとロダン銅とを含有することにより両者が相乗的に作用してこれらを単独で使用した場合よりも優れた防汚性能が発現すると共に、無機脱水剤および/またはジンクピリチオンを用いることにより本発明の防汚塗料組成物の貯蔵・保存安定性が長期間維持できる。
【0061】
本発明に係る防汚塗料組成物によれば、防汚性、鮮明度、耐変色性に優れた防汚塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体、水中・水上構造物または漁業資材が得られる。
【0062】
さらに、本発明の防汚塗料組成物は、アルミニウム合金製の船体などに塗設しても、アルミニウム合金製の船体などを腐食させることが少ないという特性を有している。
【0063】
【実施例】
以下、本発明について、実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこのような実施例により何等限定されるものではない。
【0064】
以下の実施例、比較例において「%」は、特にその意に反しない限り、「重量%」の意味である。
下記の実施例、比較例における試験方法は、以下のとおり。
【0065】
(1) 防汚性能試験(静置浸海防汚性試験)
(試験片の作製)
予め防錆塗料を塗布した塗板(サイズ:300mm×100mm×2.3mm)の塗膜表面に乾燥膜厚が100μm/コートになるように各例の防汚塗料組成物をスプレーで2回塗布して防汚性能試験用試験片を作製した。
【0066】
(試験方法)
広島湾の海上筏において、試験片を海水面から1.5m水中に沈めた位置に固定して12ヶ月にわたり、静置浸海防汚性試験を行なった。そして試験片を海水中に静置してから1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月経過時に試験片を観察し、各試験片における海中生物の付着率(付着面積率%)を求めた。
【0067】
(2) 貯蔵安定性試験
塗料製造後、40℃の恒温機で7日、14日、1ヶ月、3ヶ月保管した後、塗料中のピリジントリフェニルボラン含有量を測定した。測定方法はIRスペクトルにより行った。
【0068】
以下の実施例、比較例で用いた成分は、下記のとおり。
[トリアルキルシリルアクリレート(共)重合体の製造例]
(共重合体S−1の製造)
攪拌機、コンデンサー、温度計、滴下装置、加熱・冷却ジャケットを備えた反応容器にキシレン100部を仕込み窒素気流下で90℃の温度条件に加熱攪拌を行った。
【0069】
同温度を保持しつつ滴下装置より、上記反応器内にトリブチルシリルメタクリレート40部、メチルメタクリレート60部および重合開始剤の2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.2部の混合物を4時間かけて滴下した。
【0070】
その後同温度で4時間攪拌を続けて無色透明の共重合体溶液S−1を得た。
得られた共重合体溶液S−1を105℃で3時間加熱した後の加熱残分は49.9重量%であり、GPCによる残存モノマーの定量結果より各モノマーの95重量%以上は、共重合体中に組み込まれ、反応中の重合率変化は各モノマーでほぼ等しく、これらのモノマーから誘導される各成分単位はほぼそれぞれ用いられたモノマー量比で、ランダムに配列しているものと考えられる。
【0071】
またこの共重合体溶液S−1中の共重合体(加熱残分)S−1のガラス転移温度(Tg)は51℃であり、共重合体溶液S−1の25℃における粘度は295cpsであり、GPC測定による数平均分子量(Mn)は11200であり、重量平均分子量(Mw)は21200であった。
【0072】
【実施例1】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験(静置浸海防汚性試験)、貯蔵安定性試験を行った。
【0073】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表1に示す。
【0074】
【実施例2】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0075】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表1に示す。
【0076】
【実施例3】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0077】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表1に示す。
【0078】
【参考例1】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
ピリジン−トリフェニルボラン 10% ロダン銅 20% ジンクピリチオン 2% ロジンWW 10% メチルメタクリレート・ブチルメタクリレート共重合樹脂 5% [ローム&ハース社製、商品名パラロイトB−66、 固形分100重量%、(略号番号:B−66)] TCP 2% 亜鉛華3号 10% フタロシアニンブルー S−2010 5% ベントン34 1% エロジール200 1% メチルイソブチルケトン 5% キシレン 29% (合計: 100%)
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0079】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表1に示す。
【0080】
【実施例5】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0081】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表1に示す。
【0082】
【実施例6】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0083】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表1に示す。
【0084】
【実施例7】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0085】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表1に示す。
【0086】
【実施例8】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0087】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表1に示す。
【0088】
【比較例1】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0089】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表2に示す。
【0090】
【比較例2】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0091】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表2に示す。
【0092】
【比較例3】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0093】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表2に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
表3の防汚性試験結果より明らかなようにピリジン−トリフェニルボランおよびロダン銅に加えて無機脱水剤および/またはジンクピリチオンを併用することにより、これらを単独で使用した場合よりも高い防汚性が発現し、長期間に亘って試験片表面への海中生物の付着は認められないが、比較例で示すように、防汚成分がいずれか一方である場合には、短期間でかなりの海中生物の付着が認められる。
【0098】
【表4】
【0099】
なお、評価基準は、以下のとおり。
○ :ピリジントリフェニルボラン含有量の低下が認められず、また成分の沈降が認められない。
【0100】
○-1:ピリジントリフェニルボラン含有量の低下はないものの、一部成分が沈降した。
△ :ピリジントリフェニルボラン含有量の低下が認められると共に、成分の沈降がかなり認められる。
【0101】
× :相当量のピリジントリフェニルボランが分解し、全体に固液分離が認められる。
表4の貯蔵安定試験結果より明らかなように、実施例の防汚塗料では長期間の貯蔵によっても防汚成分の沈降などが見られなかったが、比較例に示したように無機脱水剤および/またはジンクピリチオンを用いない組成物では貯蔵期間が長くなるにつれて成分の沈降が認められた。
【発明の技術分野】
本発明は、防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体、水中・水上構造物または漁業資材に関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、アオサ、フジツボ等の水棲生物の付着を防止できるなど防汚性に優れ、耐変色性に優れ、さらに貯蔵安定性も良好な防汚塗料組成物、この防汚塗料組成物から形成されている塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体、水中・水上構造物または漁業資材に関する。
【0003】
【発明の技術的背景】
船底、水上・水中構造物、漁網などは、水中に長期間さらされることにより、その表面に、貝、フジツボ等の動物類、ノリ(海苔)等の藻類、あるいはバクテリア類などの各種水棲生物が付着・繁殖すると、外観が損ねられ、その機能が害されることがある。
【0004】
特に船底にこのような水棲生物が付着・繁殖すると、船全体の表面粗度が増加し、船速の低下、燃費の拡大などを招く虞が高い。また、このような水棲生物を船底から取り除くには、ドックにおける多大な労力、作業時間が必要となる。また、バクテリア類が水中構造物などに付着・繁殖しスライム(ヘドロ状物)が付着すると、これらが腐敗し、その物性が劣化し寿命が著しく低下する等の被害が生ずる虞がある。
【0005】
このため従来では、船底など専ら水中に浸漬するような部位での上記のような被害を防止するとの観点のみから、各種防汚塗料の研究開発がなされてきた。
換言すれば、従来では船体の水線部や水中構造物の喫水線近傍などのように、直射日光の照射と海水中への浸漬との交互条件が繰り返される部位であり、人目に触れるため美観も求められる部位に塗布するとの観点からの塗料の研究開発は行われていなかった。
【0006】
船体の水線部などは、上記のように人目に触れる部分であり美観の点から白色塗装されることが多いが、この水線部は、海水中への浸漬と、海面上に露出し強烈な直射日光の照射とが繰り返される部分であるため、塗料中に防汚剤として配合されるCu2Oの酸化等により、この水線部が僅かに緑変あるいは黒変するなど変色しても、著しく美観を損なってしまう。
【0007】
従来、船底など専ら水中に浸漬する部位への水棲生物などの付着被害を防止すべく、船底などには種々の防汚塗料が塗布されている。
このような防汚塗料としては、例えば、トリブチル錫メタクリレートとメチルメタクリレート等との共重合体と、亜酸化銅(Cu2O)とを含有する錫ポリマー型防汚塗料が挙げられる。この防汚塗料中の該共重合体は、海水中で加水分解されてビストリブチル錫オキサイド(トリブチル錫エーテル,Bu3Sn-O-SnBu3:Buはブチル基)あるいはトリブチル錫ハロゲン化物(Bu3SnX:Xはハロゲン原子)等の有機錫化合物を放出して防汚効果を発揮するとともに、加水分解された共重合体自身も水溶性化して海水中に溶解していく「加水分解性自己研磨型塗料」であるため、船底塗装表面は、樹脂残渣が残らず、常に活性な表面を保つことができる。特にアルミニウム合金を素材とする船体においては、現在もこのタイプの防汚塗料が多く使用されているのが現状である。
【0008】
しかしながら、このような有機錫化合物は、毒性が強く、海洋汚染、奇形魚類の発生、食物連鎖による生態系への悪影響などが懸念され、これに代わり得るような、錫を含有しない防汚塗料の開発が求められていた。
【0009】
このような錫を含有しない防汚塗料(錫フリー型防汚塗料)としては、例えば、特開平4-264170号公報、特開平4-264169号公報、特開平4-264168号公報に記載のシリルエステル系防汚塗料が挙げられる。しかしながら、これらの公報においては、水中への浸漬と直射日光の照射とが繰返されるような環境下での耐変色性については何等教示されていない。またこれらの防汚塗料には、特開平6-157941号公報、特開平6-157940号公報などにも教示されているように防汚性に劣るとの問題点もあった。
【0010】
また、例えば、上記特開平6-157941号公報、特開平6-157940号公報などにも記載されているように、従来では、防汚塗料には、防汚性の点から亜酸化銅(Cu2O)が25〜50重量%程度の量で含有されていることが多い(例:特開平6-157941号公報の実施例6〜8では、塗料組成物175重量部中に亜酸化銅が50.0重量部(28.6重量%))。
【0011】
しかしながら、これら公報に記載されているような、亜酸化銅が多量に配合された錫フリー型防汚塗料を例えば船舶等の水線部に塗布すると、得られた塗膜は、前述したように海水と太陽光線とに繰り返して接すると変色し易いという問題点があった。
【0012】
また、特開平7−291813号公報には、1〜25重量%のピリジン−トリフェニルボランを有効成分として含有する腔腸動物付着防止用漁網防汚剤、および該ピリジン−トリフェニルボランに加えて、さらに1,3−ジシアノテトラクロロベンゼンと2-(チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾールと、それぞれ特定の式で示されるテトラアルキルチウラムジスルフィドと2,3−ジクロロマレイミド類とジチオカルバミン酸金属塩とフェノール類とピリチオン金属塩とを含有する腔腸動物付着防止用漁網防汚剤が記載され、またこれら成分に加えて溶出調整剤が含まれたものが記載されている。該溶出調整剤としては、ロジン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられている。また、その実施例には、ピリチオン銅が配合された態様が示されている。
【0013】
該公報に記載の腔腸動物付着防止用漁網防汚剤では、上述したような従来の錫フリー型防汚塗料と比較すれば防汚効果の向上は認められるが、前述したような錫ポリマー型防汚塗料と比較すると、防汚性に劣っており、求められる防汚性能には達していない。
【0014】
このように従来は、防汚性に優れ、長期間にわたり塗装直後の鮮やかな色調が保持できるような耐変色性に優れ、さらに貯蔵安定性に優れた錫フリー型防汚塗料は見出されていない。
【0015】
また、特開平9−3366号公報には、ピリジン-トリフェニルボランを第1の有効成分として含み、第2の有効成分が、マンガニーズスチレンビスジチオカーバメート、ジンクエチレンビスジチオカーバメート、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート、亜酸化銅、チオシアン酸銅、ビス(2-ピリジルチオ-1-オキシド)、N-(フルオロジクロロメチルチオ)-フタルイミド、N-(ジクロロフルオロメチルチオ)-N,N'-ジメチル-N-フェニルスルファミド、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-イソチアゾリン-3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4-メチルスルホニルピリジンおよび3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメートよりなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物である水中防汚塗料が記載されている。
【0016】
防汚塗料では、水妻生物が付着せず、かつ環境を汚染しない程度の量で少量ずつ溶出するようにしなければならない。
ところが、ピリジン-トリフェニルボランと、他の防汚剤、特に銅化合物とを組み合わせて使用すると、銅イオンの影響でピリジン-トリフェニルボランが短期間で分解するため、防汚作用が比較的短期間で急速に低下することがある。このように銅イオン等の影響によってピリジン-トリフェニルボランのような防汚剤が短期間で分解することは、塗料全体の防汚性能が短期間で減失することは勿論、過剰に溶出した防汚成分は近傍の環境汚染の一時的な要因となることも考えられる。また、防汚塗料は、水棲成分の付着を防止することから、この防汚塗料が被塗装物の最外側面を形成するので、船舶等の被塗装物の外観は防汚塗料によって決定される。従って、防汚塗料によって形成される塗膜は均一でかつ美麗でなければならない。
【0017】
本発明者はピリジン-トリフェニルボランおよびロダン銅を併用することによって優れた防汚性能及び美観が維持できることに着目し、従来は短期間でピリジン-トリフェニルボランが分解するため実用が困難であったが、これに無機脱水剤および/またはジンクピリチオンを併用することによって長期間貯蔵安定性を確保することが達成できるとの知見を得て本発明を完成した。
【0018】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、優れた防汚効果を有すると共に貯蔵安定性に優れた防汚塗料組成物を提供することを目的としている。さらに本発明は、防汚性に優れた防汚塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体、水中・水上構造物または漁業資材を提供することを目的としている。
【0019】
【発明の概要】
本発明に係る防汚塗料組成物は、ビニル系樹脂および/またはシリル系樹脂と、ピリジン-トリフェニルボランと、ロダン銅と、無機脱水剤としての無水石膏とを含有することを特徴としている。
【0020】
本発明に係る防汚塗膜は、上記いずれかの防汚塗料組成物から形成されている。
本発明に係る船体、水中・水上構造物または漁業資材の防汚方法は、上記いずれかの防汚塗料組成物を用いることを特徴としている。
【0021】
本発明に係る船体、水中・水上構造物または漁業資材は、上記いずれかの防汚塗料組成物からなる塗膜にて船体、水中・水上構造物または漁業資材の表面が被覆されていることを特徴としている。
【0022】
防汚塗料組成物において、本発明で採用するように、ピリジン-トリフェニルボランと、ロダン銅と、無機脱水剤および/またはジンクピリチオンとを併用することにより、防汚剤であるピリジン-トリフェニルボランとロダン銅とが相乗的に作用して、それぞれの防汚剤を単独で用いた場合よりも高い防汚効果を示すと共に、無機脱水剤および/またはジンクピリチオンの使用によって、上記の防汚剤を含有する塗料組成物を長期間貯蔵あるいは保存した場合であっても、防汚成分が安定に維持されるため、本発明の防汚塗料組成物は、優れた保存安定性・貯蔵安定性を示す。
【0023】
また、上記のような本発明に係る一液タイプの防汚塗料組成物によれば、環境汚染の虞が少なく、防汚性に優れ、しかも耐変色性(すなわち、喫水線の変動などにより繰返して直射日光に晒されたり、水中に浸漬されたりすることによっても変色しにくいこと)に優れた塗膜を形成できる。
【0024】
さらに、本発明の防汚塗料組成物によれば、上記効果に加えて、さらに船体がアルミニウム合金で製造された船舶へも、アルミニウム合金製の船体を腐食させることが少ないという大きな利点がある。
【0025】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る防汚塗料組成物について具体的に説明する。
[防汚塗料組成物]
本発明に係る防汚塗料組成物は、ピリジン−トリフェニルボランと、ロダン銅と、無機脱水剤および/またはジンクピリチオンとを含有している。
【0026】
[ピリジン−トリフェニルボラン]
このピリジン−トリフェニルボランは、下記式[I]で示される。
【0027】
【化1】
【0028】
このようなピリジン−トリフェニルボランの粒子径は、通常、特に限定されないが、本発明においては、その平均粒子径が0.1〜10μmであることが好ましい。このような粒子径のピリジン−トリフェニルボランを用いると、得られる防汚塗料組成物は、長期懸濁分散性(沈降防止能、貯蔵安定性)に優れ、長期保管により該成分がもし沈降してしまった場合にも攪拌すれば容易に再分散でき(すなわち、再分散性に優れ)、しかも該防汚塗料組成物を用いて塗布形成された塗膜(防汚塗膜)は、防汚性に優れるため好ましい。
【0029】
[ロダン銅(ロダン化銅)]
ロダン銅(ロダン化銅)は、チオシアン酸銅とも言い、式:「CuSCN,Cu(SCN)2」で示される。
【0030】
このようなロダン銅の平均粒子径は、通常、0.1〜10μm、好ましくは0.5〜5μm程度である。ロダン銅の平均粒子径は、塗膜組成物の粘度および防汚性能の観点からこの範囲にあることが望ましい。
【0031】
上記のようにピリジン−トリフェニルボランとロダン銅とを併用することにより、これらの防汚成分を単独で使用した場合よりの高い防汚効果を示す。ピリジン−トリフェニルボランとロダン銅とは、通常は1:10〜10:1の重量比、好ましくは1:5〜5:1の重量比で配合される。上記のような量比でピリジン−トリフェニルボランとロダン銅とを配合することにより、特に優れた相乗効果を示す。
【0032】
[無機脱水剤]
無機脱水剤を使用することにより本発明の防汚塗料組成物の貯蔵安定性を一層向上させることができる。このような無機脱水剤としては、無水石膏(CaSO4)、合成ゼオライト系吸着剤(例;商品名:モレキュラーシーブ等)、オルソギ酸メチル、オルソ酢酸メチル等のオルソエステル類、オルソほう酸エステル、シリケート類やイソシアネート類(例;商品名:アディティブTI)等が挙げられ、無水石膏、合成ゼオライト系吸着剤(特にモレキュラーシーブ)が好ましく、特に無水石膏が好ましく用いられる。このような無機脱水剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0033】
[ジンクピリチオン]
ジンクピリチオン(2-ピリミジンチオール-1-オキシド亜鉛)は、下記式[II]で示される。
【0034】
【化2】
【0035】
このようなジンクピリチオンの平均粒子径は、0.5〜5μmであることが好ましい。
本発明に係る防汚塗料組成物には、前記ピリジン-トリフェニルボランは、通常、1〜20重量%、好ましくは5〜15重量%の量で含有される。ピリジン−トリフェニルボランの配合割合は、防汚塗料組成物の防汚性能および塗料粘度の観点から、この範囲にあることが望ましい。ロダン銅は、通常、0.5〜30重量%、好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは10〜20重量%の量で含有されていることが望ましい。ロダン銅の配合割合は、塗料粘度および形成された塗膜の防汚性の観点からこの範囲にあることが望ましい。また無機脱水剤を使用する場合、使用する脱水剤の種類によってその配合量は異なるが、例えば無水石膏を使用する場合には、この無水石膏は通常は0.5〜10重量%、好ましくは0.8〜8重量%の量で含有されていることが望ましい。また、無機脱水剤として例えば合成ゼオライト系吸着剤を使用する場合には、通常、0.2〜5重量%、好ましくは0.3〜4重量%の量で配合されることが望ましい。無機脱水剤の配合割合は、塗料の貯蔵安定性および適切な粘度維持の観点からこの範囲にあることが望ましい。上記ジンクピリチオンを配合する場合、このジンクピリチオンは、通常は、0.1〜10重量%、好ましくは1〜3重量%の量で含有されることが望ましい。ジンクピリチオンの配合割合は、塗料の貯蔵安定性および適切な粘度維持の観点からこの範囲にあることが望ましい。なお、無機脱水剤とジンクピリチオンとを併用する場合には、無機脱水剤とジンクピリチオンとは、通常は1:10〜10:1の重量比、好ましくは1:5〜5:1の重量比で配合される。上記のような量比で無機脱水剤とジンクピリチオンとを配合することにより、貯蔵・保存安定性が特に良好になる。
【0036】
本発明に係る防汚塗料組成物に使用される基材樹脂としては、防汚塗料に通常使用されている樹脂を用いることができ、ビニル系樹脂、アクリル亜鉛ポリマー、シリル系樹脂を使用することが好ましく、さらにこれらと水溶性樹脂とを併用することが特に好ましい。
【0037】
ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニル系共重合樹脂、塩化ゴム(樹脂)、塩素化オレフィン樹脂、スチレン・ブタジエン共重合樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、塩化ビニル系共重合樹脂、スチレン・ブタジエン共重合樹脂、アクリル樹脂が好ましく用いられる。
【0038】
塩化ビニル系共重合樹脂としては、具体的には、例えば、
▲1▼塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂[塩化ビニル/酢酸ビニル(重量比)=80〜90/20〜10で、(数)平均分子量が10000〜35000]、
▲2▼塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合樹脂[塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール(重量比)=80〜90/11〜4/9〜6で、(数)平均分子量が25000〜4000]、
▲3▼塩化ビニル・ビニルi-ブチルエーテル共重合樹脂[塩化ビニル/ビニルi-ブチルエーテル(重量比)=75〜25/55〜45で、(数)平均分子量が15000〜2000]、
▲4▼塩化ビニル・プロピオン酸ビニル共重合樹脂[塩化ビニル/プロピオン酸ビニル(重量比)=70〜50/30〜50で、(数)平均分子量が15000〜2000]等が挙げられる。
【0039】
上記スチレン・ブタジエン共重合樹脂としては、スチレン/ブタジエン(重量比)が、90〜98/10〜2で、(数)平均分子量が100000〜10000程度のものが用いられる。
【0040】
アクリル樹脂としては、(a)(メタ)アクリル酸および/またはそのエステルを(共)重合してなる樹脂[数平均分子量:50000〜5000程度のもの]、
(b)(メタ)アクリル酸および/またはそのエステルと、これら以外の各種アクリル系単量体(例:アクリルアミド、アクリル酸グリシジル)、ビニル単量体(例:エチレン)、スチレン等とを共重合してなる樹脂[主成分の(メタ)アクリル酸(エステル)含量:95〜60重量%、分子量:50000〜5000]、
等が挙げられる。
【0041】
これらのビニル系樹脂は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらのビニル系樹脂は、防汚塗料組成物中に固形分換算で、好ましくは、1〜12重量%、さらに好ましくは2〜8重量%の量で含有されていることが望ましい。ビニル樹脂の配合割合は、塗膜物性および防汚性能の観点からこの範囲にあることが望ましい。
【0042】
シリル系樹脂は、通常は、原料モノマーの一部としてシリル化された(メタ)アクリル系単量体[例:(メタ)アクリル酸アルキルシリルエステル]を用いて形成された重合体である。ここでシリル基には、通常1〜3個のアルキル基が結合している。このアルキル基の炭素数1〜7であることが好ましい。このようなシリル化された(メタ)アクリル系単量体の例としては、(メタ)アクリル酸トリメチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリエチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリブチルシリルエステル等のように同一のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルシリルエステル;(メタ)アクリル酸ジメチルプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸モノメチルジプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸メチルエチルプロピルシリルエステル等のように異なるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸シリルエステルなどが挙げられる。このような(メタ)アクリル酸アルキルシリルエステルのうちでは、特に(メタ)アクリル酸トリアルキルシリルエステルは、合成が容易であり、あるいはこのようなトリアルキルシリルエステルを用いてなる防汚塗料組成物は、造膜性がよく、貯蔵安定性がよく、さらに、研掃性が制御しやすいことから好ましく用いられる。
【0043】
このような(メタ)アクリル酸アルキルシリルエステルと共重合体を形成する他のモノマーとしては、任意の重合性不飽和化合物(エチレン性不飽和単量体)を用いることができ、このような重合性不飽和化合物としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類などを挙げることができ、好ましくは、メタアクリル酸メチルエステル(MMA)が用いられる。このようなMMAは、通常、30重量%以上、好ましくは、50重量%以上の量で共重合される。このような量でMMAを含有してなる共重合体では、ガラス転移温度(Tg)が、例えば30〜60℃と高く、防汚塗料組成物からなる塗膜が所期の強度を有する。
【0044】
本発明において、基材樹脂としてクマロン樹脂を使用することもできる。このクマロン樹脂は、クマロン成分単位、インデン成分単位、スチレン成分単位を主鎖に含む共重合体である。なお、このクマロン樹脂は、末端がフェノールで変性されていてもよく、また、このクマロン樹脂中の芳香族環の少なくとも一部が水素添加されていてもよい。このクマロン樹脂には、数平均分子量が200〜300の液状品と、数平均分子量が600〜800の固形品とがあり、本発明では液状品、固形品のいずれをも使用することができる。本発明で使用されるクマロン樹脂の内、液状品の粘度(25℃)は通常は5〜20ポイズの範囲内にあり、固形品の軟化温度は通常は90〜120℃である。クマロン樹脂は、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)などに溶解するので、本発明の防汚塗料組成物中に安定に溶解する。
【0045】
また、本発明では、上記の基材樹脂に加えて、水溶性樹脂(溶解性樹脂)を配合することもできる。ここで水溶性樹脂としては、ロジン(ロジンWW)、モノカルボン酸(例:炭素数9〜19程度の脂肪酸、ナフテン酸)およびその塩(例:Cu、Zn、Ca塩等)を配合することができる。特にロジンを使用することが好ましい。ロジンには、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどがあるが、本発明ではいずれをも使用することができる。これらの水溶性樹脂は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの水溶性樹脂は、防汚塗料組成物中に固形分換算で、好ましくは、2〜15重量%、さらに好ましくは4〜12重量%の量で含有されていることが望ましい。水溶性樹脂の配合割合は、塗膜の防汚性能および耐水性能の観点からこの範囲にあることが望ましい。
【0046】
なお、本発明の防汚塗料組成物中における基材樹脂を形成する上記樹脂成分の合計の含有率は、通常は、5〜20重量%、好ましくは6〜18重量%の範囲内にある。
【0047】
ピリジン−トリフェニルボランと、ロダン銅と、無機脱水剤および/またはジンクピリチオンとを含有する本発明の防汚塗料組成物は、ピリジン−トリフェニルボランとロダン銅とが相乗的に作用して優れた防汚性を示すと共に、無機脱水剤および/またはジンクピリチオンによって防汚塗料の保存・貯蔵安定性が向上する。
【0048】
このような本発明に係る防汚塗料組成物は、いわゆる錫フリー型防汚塗料であり、この塗料組成物からなる塗膜は、環境汚染の虞が少なく(低公害タイプ)であり、しかも水中微生物・動植物(例:スライム、藻、フジツボなど)の付着繁殖に対して優れた防汚性能を発揮し、耐変色性に優れ塗工後長期間に亘って優れた美観を保持でき、船舶、漁網、水中・水上構造物等種々の用途に好適に使用でき、さらに貯蔵安定性に優れている。
【0049】
さらに詳説すると、船体等の没水部には、前述したように、従来、防汚剤として亜酸化銅(Cu2O)が25〜50重量%程度の量で配合された防汚塗料が塗布されることが多い。従って、鮮明色を得ることができず、さらに白色防汚塗料中のCu2Oの酸化などにより変色(黒変、緑変)し易いなどの大きな欠点があった。これに対して本発明に係る防汚塗料組成物からなる塗膜では、鮮明色を得ることができると共に、耐変色性にも優れ、例えば、白色塗装面であっても、黒変、緑変などの変色は殆ど生ぜず、塗工直後の鮮やか色調が長期間保持できる。
【0050】
また、本発明の防汚塗料組成物は、防汚成分としてロダン銅のような銅化合物を含有していても、ピリジン-トリフェニルボランの分解を制御できる。また、銅化合物を含有する場合であっても、アルミニウム合金からなる船体を腐食させることが少ない。
【0051】
[防汚塗料組成物の製造]
このような防汚塗料組成物は、従来より公知の方法を適宜利用することにより製造することができ、例えば、上記ピリジン−トリフェニルボランおよびロダン銅と、無機脱水剤および/またはジンクピリチオンと、必要によりビニル系樹脂、水溶性樹脂、酸化チタン等の着色顔料、任意量のタレ止め・沈降防止剤、可塑剤、溶剤(例:キシレン)などとを所定の割合で一度にあるいは任意の順序で加えて攪拌・混合し、溶媒に分散すればよい。
【0052】
[その他の配合成分]
このような本発明に係る防汚塗料組成物は、上記ピリジン−トリフェニルボランとロダン銅と、無機脱水剤および/またはジンクピリチオンと、さらに必要により配合されるビニル系樹脂、水溶性樹脂の他に、後述するような可塑剤、タレ止め・沈降防止剤、顔料などを含んでいてもよい。
【0053】
可塑剤としては、TCP(トリクレジルフォスフェート)、塩化パラフィン、ポリビニルエチルエーテルなどが使用できる。
タレ止め・沈降防止剤としては、有機粘度系Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの塩類、ポリエチレンワックス、アミドワックス、水添ヒマシ油ワックス系、ポリアマイドワックス系および両者の混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等が挙げられ、好ましくは、ポリアマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス、有機粘度系が用いられる。
【0054】
顔料としては、従来公知の有機系、無機系の各種顔料(例:チタン白、ベンガラ)を用いることができる。なお、染料等の各種着色剤も含まれていてもよい。また、本発明の防汚塗料組成物には、他の有機防汚剤を配合することもできる。他の有機防汚剤の例としては、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿酸(商品名:DCMU)、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド(商品名:IT−354)、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノSトリアジン(商品名:イルガロール1051)、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−イソチアゾリン−3−オン(商品名:ケーソン930)、テトラクロロイソフタロニトリル(商品名:N−96)、2−ピリジンチオール−1−オキシド銅塩(商品名:銅ピリチオン)、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン(商品名:テンシルS−100)などが挙げられる。
【0055】
本発明の防汚塗料では、上記のような成分は、溶剤に溶解若しくは分散している。ここで使用される溶剤としては、例えば、脂肪族系、芳香族系(例:キシレン、トルエン等)、ケトン系、エステル系、エーテル系など、通常、防汚塗料に配合されるような各種溶剤が用いられる。
【0056】
上記のような防汚塗料組成物を水中構造物(例:火力・原子力発電所の給排水口)、湾岸道路、海底トンネル、港湾設備、運河・水路等のような各種海洋土木工事の汚泥拡散防止膜、船舶、漁業資材(例:ロープ、漁網、浮き子)などの各種成形体の表面に常法に従って1回〜複数回塗布すれば、鮮明色で、耐変色性、防汚性に優れた防汚塗膜被覆船体または水中構造物などが得られる。
【0057】
すなわちこのような本発明に係る防汚塗料組成物を各種成形体の表面に塗布硬化してなる防汚塗膜は、アオサ、フジツボ、アオノリ、セルプラ、カキ、フサコケムシ等の水棲生物の付着を防止できるなど防汚性に優れ、美観、耐変色性などに優れている。
【0058】
特に、該防汚塗料組成物はアルミニウム合金、FRP、鋼鉄、木などを素材とする船舶の船体没水部表面に塗布すれば、上記水棲生物の付着が防止でき、船舶の運航速度低下の防止、燃費の増大防止を図ることができる。また該防汚塗料組成物を水線部に塗布し防汚塗膜を形成すれば、防汚性に優れるのみならず、該水線部が海水中への浸漬と太陽光の照射とを繰り返し受けても変色せず、塗工直後の鮮やかな色調そのままの美観を長期間保持できる。また例えば、該防汚塗料組成物を海中構造物表面に塗布すれば、海中生物の付着防止を図ることができ、該構造物の機能、美観を長期間維持でき、漁網に塗布すれば、漁網の網目の閉塞を防止できる。
【0059】
なお、この本発明に係る防汚塗料組成物は、直接漁網に塗布してもよく、また予め防錆剤、プライマーなどの下地材が塗布された船体または水中構造物等の表面に塗布してもよい。さらには、既に従来の防汚塗料による塗装が行なわれ、あるいは本発明の防汚塗料組成物による塗装が行われている船体、水中構造物等の表面に、補修用として本発明の防汚塗料組成物を上塗りしてもよい。このようにして船体、水中構造物等の表面に形成された防汚塗膜の厚さは特に限定されないが、例えば、30〜150μm/回程度である。
【0060】
【発明の効果】
本発明に係る防汚塗料組成物によれば、ピリジン−トリフェニルボランとロダン銅とを含有することにより両者が相乗的に作用してこれらを単独で使用した場合よりも優れた防汚性能が発現すると共に、無機脱水剤および/またはジンクピリチオンを用いることにより本発明の防汚塗料組成物の貯蔵・保存安定性が長期間維持できる。
【0061】
本発明に係る防汚塗料組成物によれば、防汚性、鮮明度、耐変色性に優れた防汚塗膜および該防汚塗料組成物を用いた防汚方法並びに該塗膜で被覆された船体、水中・水上構造物または漁業資材が得られる。
【0062】
さらに、本発明の防汚塗料組成物は、アルミニウム合金製の船体などに塗設しても、アルミニウム合金製の船体などを腐食させることが少ないという特性を有している。
【0063】
【実施例】
以下、本発明について、実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこのような実施例により何等限定されるものではない。
【0064】
以下の実施例、比較例において「%」は、特にその意に反しない限り、「重量%」の意味である。
下記の実施例、比較例における試験方法は、以下のとおり。
【0065】
(1) 防汚性能試験(静置浸海防汚性試験)
(試験片の作製)
予め防錆塗料を塗布した塗板(サイズ:300mm×100mm×2.3mm)の塗膜表面に乾燥膜厚が100μm/コートになるように各例の防汚塗料組成物をスプレーで2回塗布して防汚性能試験用試験片を作製した。
【0066】
(試験方法)
広島湾の海上筏において、試験片を海水面から1.5m水中に沈めた位置に固定して12ヶ月にわたり、静置浸海防汚性試験を行なった。そして試験片を海水中に静置してから1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月経過時に試験片を観察し、各試験片における海中生物の付着率(付着面積率%)を求めた。
【0067】
(2) 貯蔵安定性試験
塗料製造後、40℃の恒温機で7日、14日、1ヶ月、3ヶ月保管した後、塗料中のピリジントリフェニルボラン含有量を測定した。測定方法はIRスペクトルにより行った。
【0068】
以下の実施例、比較例で用いた成分は、下記のとおり。
[トリアルキルシリルアクリレート(共)重合体の製造例]
(共重合体S−1の製造)
攪拌機、コンデンサー、温度計、滴下装置、加熱・冷却ジャケットを備えた反応容器にキシレン100部を仕込み窒素気流下で90℃の温度条件に加熱攪拌を行った。
【0069】
同温度を保持しつつ滴下装置より、上記反応器内にトリブチルシリルメタクリレート40部、メチルメタクリレート60部および重合開始剤の2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.2部の混合物を4時間かけて滴下した。
【0070】
その後同温度で4時間攪拌を続けて無色透明の共重合体溶液S−1を得た。
得られた共重合体溶液S−1を105℃で3時間加熱した後の加熱残分は49.9重量%であり、GPCによる残存モノマーの定量結果より各モノマーの95重量%以上は、共重合体中に組み込まれ、反応中の重合率変化は各モノマーでほぼ等しく、これらのモノマーから誘導される各成分単位はほぼそれぞれ用いられたモノマー量比で、ランダムに配列しているものと考えられる。
【0071】
またこの共重合体溶液S−1中の共重合体(加熱残分)S−1のガラス転移温度(Tg)は51℃であり、共重合体溶液S−1の25℃における粘度は295cpsであり、GPC測定による数平均分子量(Mn)は11200であり、重量平均分子量(Mw)は21200であった。
【0072】
【実施例1】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験(静置浸海防汚性試験)、貯蔵安定性試験を行った。
【0073】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表1に示す。
【0074】
【実施例2】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0075】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表1に示す。
【0076】
【実施例3】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0077】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表1に示す。
【0078】
【参考例1】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
ピリジン−トリフェニルボラン 10% ロダン銅 20% ジンクピリチオン 2% ロジンWW 10% メチルメタクリレート・ブチルメタクリレート共重合樹脂 5% [ローム&ハース社製、商品名パラロイトB−66、 固形分100重量%、(略号番号:B−66)] TCP 2% 亜鉛華3号 10% フタロシアニンブルー S−2010 5% ベントン34 1% エロジール200 1% メチルイソブチルケトン 5% キシレン 29% (合計: 100%)
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0079】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表1に示す。
【0080】
【実施例5】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0081】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表1に示す。
【0082】
【実施例6】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0083】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表1に示す。
【0084】
【実施例7】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0085】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表1に示す。
【0086】
【実施例8】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0087】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表1に示す。
【0088】
【比較例1】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0089】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表2に示す。
【0090】
【比較例2】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0091】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表2に示す。
【0092】
【比較例3】
下記配合組成の防汚塗料組成物を調製した。
上記防汚塗料組成物について、防汚性能試験、貯蔵安定性試験を行った。
【0093】
防汚性能試験結果を表3に示し、貯蔵安定性試験結果を表4に示す。
また、該防汚塗料組成物の配合組成を併せて表2に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
表3の防汚性試験結果より明らかなようにピリジン−トリフェニルボランおよびロダン銅に加えて無機脱水剤および/またはジンクピリチオンを併用することにより、これらを単独で使用した場合よりも高い防汚性が発現し、長期間に亘って試験片表面への海中生物の付着は認められないが、比較例で示すように、防汚成分がいずれか一方である場合には、短期間でかなりの海中生物の付着が認められる。
【0098】
【表4】
【0099】
なお、評価基準は、以下のとおり。
○ :ピリジントリフェニルボラン含有量の低下が認められず、また成分の沈降が認められない。
【0100】
○-1:ピリジントリフェニルボラン含有量の低下はないものの、一部成分が沈降した。
△ :ピリジントリフェニルボラン含有量の低下が認められると共に、成分の沈降がかなり認められる。
【0101】
× :相当量のピリジントリフェニルボランが分解し、全体に固液分離が認められる。
表4の貯蔵安定試験結果より明らかなように、実施例の防汚塗料では長期間の貯蔵によっても防汚成分の沈降などが見られなかったが、比較例に示したように無機脱水剤および/またはジンクピリチオンを用いない組成物では貯蔵期間が長くなるにつれて成分の沈降が認められた。
Claims (10)
- ビニル系樹脂および/またはシリル系樹脂と、ピリジン-トリフェニルボランと、ロダン銅と、無機脱水剤としての無水石膏とを含有することを特徴とする防汚塗料組成物。
- さらに、ジンクピリチオンを含有することを特徴とする請求項1に記載の防汚塗料組成物。
- 前記防汚塗料組成物中に、さらにロジン、炭素数9〜19程度のモノカルボン酸樹脂またはこれらの塩のいずれかの水溶性樹脂が含有されていることを特徴とする請求項1〜2の何れかに記載の防汚塗料組成物。
- 前記ピリジン−トリフェニルボランが、防汚塗料組成物中に0.5〜20重量%の量で含有され、かつロダン銅が、防汚塗料組成物中に0.5〜30重量%の量で含有されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の防汚塗料組成物。
- 前記無機脱水剤の無水石膏が、防汚塗料組成物中に0.5〜10重量%の量で含有されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の防汚塗料組成物。
- 前記ジンクピリチオンが、防汚塗料組成物中に0.1〜10重量%の量で含有されることを特徴とする請求項1〜5の何れかに防汚塗料組成物。
- 前記防汚塗料組成物中に基材樹脂として、ビニル系樹脂および/またはシリル系樹脂が5〜20重量%の範囲内の量で含有されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項記載の防汚塗料組成物。
- 請求項1〜7の何れかに記載の防汚塗料組成物から形成されている塗膜。
- 請求項1〜7の何れかに記載の防汚塗料組成物を用いることを特徴とする船体、水中・水上構造物または漁業資材の防汚方法。
- 請求項1〜7の何れかに記載の防汚塗料組成物からなる塗膜にて船体、水中・水上構造物または漁業資材の表面が被覆されていることを特徴とする船体、水中・水上構造物または漁業資材。
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