JP3824746B2 - 非錫系防汚塗料組成物、防汚塗膜、防汚方法および該防汚塗膜で被覆された船舶 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、非錫系防汚塗料組成物、防汚塗膜、防汚方法および該防汚塗膜で被覆された船舶に関し、さらに詳しくは、長期防汚性、付着性、耐クラック性などに優れた防汚塗膜を形成できるような非錫系防汚塗料組成物に関する。またこのような非錫系防汚塗料組成物からなる防汚塗膜、このような塗膜が得られるような防汚方法および該防汚塗膜で被覆された船舶に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
船底、水上・水中構造物、漁網などは、水中に長期間さらされることにより、その表面に、貝、フジツボ等の動物類、ノリ(海苔)等の藻類、あるいはバクテリア類などの各種水棲生物が付着・繁殖すると、外観が損ねられ、その機能が害されることがある。
【0003】
特に船底にこのような水棲生物が付着・繁殖すると、船全体の表面粗度が増加し、船速の低下、燃費の拡大、美観の低下などを招く虞が高い。また、このような水棲生物を船底から取り除くには、ドックにおける多大な労力、作業時間が必要となる。また、バクテリア類が水中構造物などに付着・繁殖しスライム(ヘドロ状物)が付着すると、これらが腐敗し、その物性、機能が劣化し寿命が著しく低下する等の被害が生ずる虞がある。
【0004】
ところで、FRP船では、防汚塗料はFRP船表面(あるいはゲルコート処理FRP船表面)に付着しにくく、FRP船表面に塗布形成された防汚塗膜は、比較的簡単に剥離してしまい、船舶外表面の汚損、外観不良が生じやすいという問題点がある。
【0005】
また、長期間使用されて汚損、外観不良が生じたFRP船では、従来、通常充分な水洗洗浄が行われることなく、既存の防汚塗膜表面に新たに防汚塗料が上塗されているが、この新しい防汚塗膜が、元の防汚塗膜の表面から比較的簡単に剥離してしまう傾向がある。
【0006】
このため、FRP船表面などに塗布しても容易に剥離せず、優れた防汚性能が長期間継続的に発揮されるような防汚塗料の開発が求められている。
なお、従来よりFRP船を含めて船舶の船底等に塗装される防汚塗料としては、例えば、トリブチル錫メタクリレートとメチルメタクリレート等との共重合体と、亜酸化銅(Cu2O)とを含有する錫ポリマー型防汚塗料が挙げられる。この防汚塗料中の該共重合体は、海水中で加水分解されてビストリブチル錫オキサイド(トリブチル錫エーテル,Bu3Sn-O-SnBu3:Buはブチル基)あるいはトリブチル錫ハロゲン化物(Bu3SnX:Xはハロゲン原子)等の有機錫化合物を放出して防汚効果を発揮するとともに、加水分解された共重合体自身も水溶性化して海水中に溶解していく「加水分解性自己研磨型塗料」であるため、船底塗装表面は、樹脂残渣が残らず、常に活性な表面を保つことができる。
【0007】
しかしながら、このような有機錫化合物は、毒性が強く、海洋汚染、奇形魚類の発生、食物連鎖による生態系への悪影響などが懸念され、これに代わり得るような、錫を含有しない防汚塗料の開発が求められている。
【0008】
このような錫を含有しない防汚塗料(錫フリー型防汚塗料)としては、例えば、特開平4-264170号公報、特開平4-264169号公報、特開平4-264168号公報に記載のシリルエステル系防汚塗料が挙げられる。しかしながら、これらの公報に記載の防汚塗料では、特開平6-157941号公報、特開平6-157940号公報などにも教示されているように防汚性に劣り、また塗装直後は防汚剤溶出量が多く初期防汚性能は良好であっても、従来の錫系防汚塗料に比して、長期間継続的な防汚性能に劣るとの問題点がある。
【0009】
このため、本発明者らは、長期防汚性、耐クラック性などに優れ、特にFRP船表面や既存の防汚塗膜表面に塗布しても耐剥離性に優れた塗膜を形成できるような防汚塗料組成物を見出すべく鋭意研究したところ、
驚くべきことに非錫系塗膜形成樹脂成分と、エチレン・酢酸ビニル共重合体の塩素化物または該共重合体の部分加水分解物の塩素化物と、防汚剤とを含有する防汚塗料組成物を船体等の表面に塗布硬化すれば、特に長期防汚性、耐クラック性、FRP船等の船体(塗装船体)表面への被着性(付着性)に優れた塗膜が得られることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、長期防汚性(防汚剤徐放性)、付着性、可撓性に優れ、クラックが生じにくい防汚塗膜を形成できるような非錫系防汚塗料組成物を提供することを目的としている。
【0011】
本発明は、FRP船等の船舶外板基材表面に直接塗装しても基材との付着性に優れ、また既存の防汚塗装面に上塗りすれば塗膜相互の付着性に優れた防汚塗膜を形成できるような非錫系防汚塗料組成物を提供することを目的としている。
【0012】
【発明の概要】
本発明に係る非錫系防汚塗料組成物は、(a)非錫系塗膜形成樹脂成分と、(b)エチレン・酢酸ビニル共重合体の塩素化物または該共重合体の部分加水分解物の塩素化物と、(c)防汚剤とを含有することを特徴としている。
【0013】
本発明においては、上記非錫系塗膜形成樹脂成分(a)が、(i)塩化ビニル系共重合樹脂と水溶性樹脂との組み合わせ、(ii)アクリル樹脂と水溶性樹脂との組み合わせ、(iii)アクリル亜鉛ポリマー、(iv)シリルアクリレート系樹脂のうちの何れか1種であることが好ましい。
【0014】
本発明の非錫系防汚塗料組成物には、防汚剤として、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2-メチルチオ-4-t-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノSトリアジン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−イソチアゾリン−3−オン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、2-ピリジンチオール-1-オキシド亜鉛塩、2-ピリジンチオール-1-オキシド銅塩のうちの何れか1種以上と、亜酸化銅とが組み合わせて含有されているか、あるいは上記防汚剤として、ピリジン−トリフェニルボラン、2-ピリジンチオール-1-オキシド亜鉛塩のうちの何れか1種以上と、ロダン銅とが組み合わせて含有されていることが好ましい。
【0015】
本発明に係る防汚塗膜は、上記非錫系防汚塗料組成物を塗布硬化して形成されている。
本発明に係る船舶外板の防汚方法は、海水と接触する船舶外板表面に、上記の非錫系防汚塗料組成物を塗布し、防汚塗膜を形成することを特徴としている。
【0016】
本発明に係る船舶においては、海水と接触する船舶外板の表面が、上記の非錫系防汚塗料組成物を塗布硬化してなる防汚塗膜にて被覆されていることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、長期防汚性(防汚剤徐放性)に優れ、可撓性を有し耐クラック性に優れた防汚塗膜を形成でき、船舶外板表面に塗布形成されている既存の防汚塗膜表面に本発明の防汚塗膜を形成すれば塗膜相互の付着性(密着性)に優れた塗膜を形成でき、またFRP船体表面に直接塗布してもFRPとの付着性に優れる塗膜を形成できるような非錫系防汚塗料組成物が提供される。
【0018】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る非錫系防汚塗料組成物について具体的に説明する。
[非錫系防汚塗料組成物]
本発明に係る非錫系防汚塗料組成物には、(a)非錫系塗膜形成樹脂成分と、(b)エチレン・酢酸ビニル共重合体の塩素化物または該共重合体の部分加水分解物の塩素化物と、(c)防汚剤とが含有されている。
【0019】
非錫系塗膜形成樹脂成分 (a)
非錫系塗膜形成樹脂成分(a)としては、塩化ビニル系共重合樹脂、塩化ゴム(樹脂)、海水中で塗膜の自己研磨作用を抑制する働きを有する海水不溶解性の塩素化オレフィン樹脂、塗膜の耐水性向上に寄与するスチレン・ブタジエン共重合樹脂、アクリル樹脂等のビニル系樹脂;シリルアクリレート系樹脂;アクリル亜鉛ポリマー;等が挙げられる。なお、本明細書では、これらビニル系樹脂には、上記塩素化物(b)は含まない。
【0020】
<ビニル系樹脂>
ビニル系樹脂は、海水中で塗膜の自己研磨作用を抑制する働きを有する海水不溶解性の樹脂であって、このビニル系樹脂のうちで、塩化ビニル系共重合樹脂としては、具体的には、例えば、▲1▼塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、▲2▼塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合樹脂、▲3▼塩化ビニル・ビニルi-ブチルエーテル共重合樹脂、▲4▼塩化ビニル・プロピオン酸ビニル共重合樹脂が挙げられる。
【0021】
このようなビニル系樹脂のうちでは、
▲1▼塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニル/酢酸ビニル(重量比)が80〜90/20〜10(合計100重量部)であり、数平均分子量が10000〜35000のものが好ましい。
【0022】
▲2▼塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合樹脂としては、塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール(重量比)が80〜90/11〜4/9〜6(合計100重量部)であり、数平均分子量が25000〜4000のものが好ましい。
【0023】
▲3▼塩化ビニル・ビニルi-ブチルエーテル共重合樹脂としては、塩化ビニル/ビニルi-ブチルエーテル(重量比)が75〜25/55〜45(合計100重量部)であり、数平均分子量が15000〜2000のものが好ましい。
【0024】
▲4▼塩化ビニル・プロピオン酸ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニル/プロピオン酸ビニル(重量比)が70〜50/30〜50(合計100重量部)であり、数平均分子量が15000〜2000のものが好ましい。
【0025】
上記スチレン・ブタジエン共重合樹脂は、塗膜の耐水性向上等に寄与し、このスチレン・ブタジエン共重合樹脂としては、スチレン/ブタジエン(重量比)が、90〜98/10〜2(合計100重量部)であり、数平均分子量が100000〜10000程度のものが用いられる。
【0026】
アクリル樹脂としては、(aa)(メタ)アクリル酸および/またはそのエステルを(共)重合してなる樹脂;
(bb)(メタ)アクリル酸および/またはそのエステル(イ)と、これら以外の各種アクリル系単量体(ロ)、ビニル単量体(ハ)、スチレン(ニ)等とを共重合してなる樹脂;
等が挙げられる。
【0027】
前者の樹脂(aa)は、海水中で塗膜の自己研磨作用を抑制する働きを有する不溶解性樹脂であって、このアクリル樹脂(aa)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレートとブチル(メタ)アクリレートとの共重合体が挙げられる。本発明では、このような樹脂(aa)のうちでは、その数平均分子量が50000〜5000程度のものが好ましい。
【0028】
後者の樹脂(bb)としては、主成分の(メタ)アクリル酸(エステル)含量が95〜60重量%であり、その分子量が50000〜5000のものが好ましい。なお、このアクリル系単量体(ロ)としては、例えば、アクリルアミド、アクリル酸グリシジルが挙げられ、ビニル単量体(ハ)としては、エチレン等が挙げられる。
【0029】
これらのビニル系樹脂は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらのビニル系樹脂が防汚塗料組成物中に含有される場合には、防汚塗料組成物中に固形分換算で、好ましくは、1〜12重量%、さらに好ましくは2〜8重量%の量で含有されていることが望ましい。ビニル系樹脂の含有量は、塗膜物性および防汚性能の観点からこの範囲にあることが望ましい。
【0030】
<シリルアクリレート系樹脂>
シリルアクリレート系樹脂は、通常は、原料モノマーの一部として、シリルエステル化された(メタ)アクリル系単量体を用いて形成された重合体である。ここでシリル基には、通常1〜3個のアルキル基が結合している。このアルキル基の炭素数は1〜7であることが好ましい。このようなシリルエステル化された(メタ)アクリル系単量体の例としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルシリルエステルが挙げられる。
【0031】
より具体的には、(メタ)アクリル酸トリメチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリエチルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸トリブチルシリルエステル等のように同一のアルキル基のみを有する(メタ)アクリル酸アルキルシリルエステル;(メタ)アクリル酸ジメチルプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸モノメチルジプロピルシリルエステル、(メタ)アクリル酸メチルエチルプロピルシリルエステル等のように異なるアルキル基を1個以上有する(メタ)アクリル酸シリルエステルなどが挙げられる。
【0032】
このような(メタ)アクリル酸アルキルシリルエステルのうちでは、特に(メタ)アクリル酸トリアルキルシリルエステルは、合成が容易であり、あるいはこのようなトリアルキルシリルエステルを用いてなる防汚塗料組成物は、造膜性がよく、貯蔵安定性がよく、さらに、研掃性が制御しやすいことから好ましく用いられる。
【0033】
このような(メタ)アクリル酸アルキルシリルエステルと共重合体を形成する他のモノマーとしては、任意の重合性不飽和化合物(エチレン性不飽和単量体)を用いることができ、このような重合性不飽和化合物としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類などを挙げることができ、好ましくは、メタアクリル酸メチルエステル(MMA)が用いられる。このようなMMAは、通常、30重量%以上、好ましくは、50重量%以上の量で共重合される。このような量でMMAを含有してなる共重合体では、ガラス転移温度(Tg)が、例えば30〜60℃と高く、防汚塗料組成物からなる塗膜が所期の強度を有する。
【0034】
<アクリル亜鉛ポリマー(亜鉛アクリル系ポリマー)>
このアクリル亜鉛ポリマーは、
式:Ra−COO−Zn−OH・・・・(A)
式:Ra−COO−Zn−OOC−Ra・・・・(B)
[式(A)および(B)中、Raは基体樹脂を示す。]で表され、分子内に金属(Zn)カルボキシレートを有する樹脂である。
【0035】
このようなアクリル亜鉛ポリマーのベースとなる基体樹脂Raは、その酸価が、通常、30〜300程度のビニル系重合体であり、このような基体樹脂を用いて、上記式(A)および(B)で示されるアクリル亜鉛ポリマーを製造するには、例えば、分子内にカルボキシル基を有する樹脂(イ)に、2価の金属(Zn)の酸化物あるいは水酸化物(ロ)を、樹脂(イ)1モルに対して(ロ)0.1〜1モル程度の量で、少量の水の存在下に反応させればよい。
【0036】
分子内にカルボキシル基を有する樹脂(イ)としては、ポリエステル、ポリウレタン、天然樹脂、ビニル重合体等が挙げられ、ビニル樹脂が好ましい。
ビニル樹脂としては、例えば、アクリル酸/メチル(メタ)アクリレート/エチル(メタ)アクリレート共重合体であって、数平均分子量が5000〜20,000程度で、上記酸価のものが挙げられる。
【0037】
ポリエステルとしては、例えば、アジピン酸/ネオペンチルグリコール/トリメチロールプロパン共重合体であってその分子末端にOH基を有するものに、無水コハク酸を付加してなり、数平均分子量が1000〜5000程度で、上記酸価のものが挙げられる。
【0038】
なお、本発明では、このアクリル亜鉛ポリマーと共に、上記式(A)および(B)において、Znに代えてCa,Mg、Fe等の2価の金属が含まれたものを本発明の目的に反しない範囲で少量併用してもよい。
【0039】
このようなアクリル亜鉛ポリマーなどの具体例、その製法については、特開平8-209005号公報および特開平5-171066号公報に記載のものを採用することができる。
【0040】
本発明においては、上述したような非錫系塗膜形成樹脂成分(a)として、ビニル系樹脂を用いる場合、下記のような水溶性樹脂を併用することが好ましい。
<水溶性樹脂>
水溶性樹脂(溶解性樹脂)は、海水中で塗膜の自己研磨作用を促進する働きを有し、このような水溶性樹脂としては、ロジン(例:商品名「ロジンWW」)、モノカルボン酸およびその塩が挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、炭素数9〜19程度の脂肪酸、ナフテン酸が挙げられる。モノカルボン酸の塩としては、Cu塩、Zn塩、Ca塩等が挙げられる。これらの水溶性樹脂のうちでは、特にロジンが好ましい。ロジンには、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどがあるが、本発明ではいずれをも使用することができる。これらの水溶性樹脂は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの水溶性樹脂は、防汚塗料組成物中に固形分換算で、0.1〜30重量%、好ましくは、0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜15重量%の量で含有されていることが望ましい。水溶性樹脂の配合割合は、塗膜の防汚性能および耐水性能の観点からこの範囲にあることが望ましい。
【0041】
このようなビニル系樹脂と水溶性樹脂との組み合わせのうちでは、(i)塩化ビニル系共重合樹脂と水溶性樹脂との組み合わせ、(ii)アクリル樹脂と水溶性樹脂との組み合わせが好ましい。このように、非錫系塗膜形成樹脂成分(a)として、単独では、非水溶性かつ硬質で防汚剤徐放性の乏しい塩化ビニル系共重合樹脂あるいはアクリル樹脂と、ロジン等の水溶性樹脂とを組合わせて用いると、防汚剤の初期徐放性が著しく高く、長期防汚性が低くなってしまうが、さらに、塩素化物(b)を組合わせることにより、初期徐放性を適正な範囲に抑制でき、しかも長期防汚性も維持できる。アクリル亜鉛ポリマーは、単独で用いてもこのような効果を発揮できる。
【0042】
このように(i)塩化ビニル系共重合樹脂と水溶性樹脂とを組み合わせて用い、あるいは(ii)アクリル系樹脂と水溶性樹脂とを組み合わせて用いる場合、水溶性樹脂100重量部に対して、塩化ビニル系共重合樹脂、アクリル系樹脂は、合計で0.1〜99重量部、好ましくは30〜70重量部程度の量で用いることが初期防汚性能を適正な範囲にコントロールでき、しかも長期防汚性能にも優れるため望ましい。
【0043】
本発明においては、上記したような非錫系塗膜形成樹脂成分(a)のうちでは、特に、(i)塩化ビニル系共重合樹脂と水溶性樹脂との組み合わせ、(ii)アクリル樹脂と水溶性樹脂との組み合わせ、(iii)アクリル亜鉛ポリマー、(iv)シリルアクリレート系樹脂のうちの何れか1種であることが望ましい。
【0044】
(b) エチレン・酢酸ビニル共重合体の塩素化物または
該共重合体の部分加水分解物の塩素化物(塩素化物 (b) )
(b)エチレン・酢酸ビニル共重合体の塩素化物または該共重合体の部分加水分解物の塩素化物(これらをまとめて、単に「塩素化物(b)」、塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体とも言う。)は、本発明の非錫系防汚塗料組成物からなる塗膜(防汚塗膜)において、海水中での自己研磨抑制作用、塗膜物性改良、FRPとの付着性向上等に寄与する不溶解性樹脂であって、この塩素化物(b)としては、例えば、以下のようなものが用いられる。
【0045】
まず、エチレン・酢酸ビニル共重合体の塩素化物調製の際には、ベースとなるエチレン・酢酸ビニル共重合体としては、通常塗料用として使用されるもので、該エチレン・酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含量が通常、7〜60モル%、好ましくは30〜55モル%で、エチレン含量が残部量(両者の合計100モル%)のものが用いられる。
【0046】
また、該エチレン・酢酸ビニル共重合体の塩素化物(塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体とも言う)では、その塩素化率が通常、15〜35%、好ましくは20〜30%である。
【0047】
また、該エチレン・酢酸ビニル共重合体の塩素化物では、その重量平均分子量(GPCにて測定)が150,000〜350,000、好ましくは200,000〜300,000であり、
溶媒(トルエン)にて濃度20%に希釈した「エチレン・酢酸ビニル共重合体の塩素化物」は、温度25℃で測定した粘度(B型粘度計にて測定)が通常、500〜3000センチポイズ(cps/25℃)、好ましくは1000〜2000センチポイズである。
【0048】
このような塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体としては、例えば、日本製紙(株)より上市されている「スーパークロンB」等が挙げられる。
また上記エチレン・酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物の塩素化物は、エチレン・酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物を塩素化したものである。
【0049】
なお、エチレン・酢酸ビニル共重合体を加水分解すると、部分的に加水分解されたエチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマーが生ずる他、一部のポリマーは、完全に加水分解されてエチレン・ビニルアルコールコポリマーになっていると考えられる。
【0050】
このような塩素化物(b)は、本発明の非錫系防汚塗料組成物中に、通常0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%の量で含まれていることが望ましい。
【0051】
この塩素化物(b)が該非錫系防汚塗料組成物中にこのような量で含まれていると、塗膜から徐々に放出される防汚剤の溶出量が適正にコントロールされ長期防汚性能が確保でき、厚膜塗装時にも塗膜の可塑性が発揮されクラックの発生が防止でき、しかもFRP船体表面あるいは防汚塗膜表面への本発明の防汚塗料組成物の良好な付着性が保持できるため好ましい。
【0052】
防汚剤 (c)
防汚剤(c)としては、有機系、無機系の何れであってもよく、具体的には、例えば、亜酸化銅(Cu2O)、ロダン銅(チオシアン酸銅:「CuSCN,Cu(SCN)2」)、銅粉等の銅または銅化合物の他、下記式[III]で示される金属−ピリチオンおよびその誘導体[式中R1〜R4は、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基を示し、Mは、Cu、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Fe、Al等の金属を示し、nは価数を示す]:
【0053】
【化1】
【0054】
、テトラメチルチウラムジサルファイド、カーバメート系の毒物(例:ジンクジメチルジチオカーバメート、マンガン-2-エチレンビスジチオカーバメート)、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−イソチアゾリン−3−オン、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、ピリジン−トリフェニルボラン(商品名「PKボロン」)、2、2-メチルチオ-4-t-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノSトリアジン(商品名「イルガロール1051」)等を挙げることができる。
【0055】
このような防汚剤は1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
このような防汚剤の防汚塗料組成物中の含有量は、防汚剤の種類、その組み合わせ、船舶の種類等にもより異なり一概に決定されないが、例えば、非錫系防汚塗料組成物中に、合計で、0.1〜70重量%程度の量で配合される。
【0056】
特に、これらの防汚剤の中でも好ましく用いられる亜酸化銅は、それ以外の防汚剤と組み合わせて用いることが好ましく、このように亜酸化銅と併用することが好ましい防汚剤としては、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素(商品名「DCMU」)、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド(商品名「IT354」)、2-メチルチオ-4-t-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノSトリアジン(商品名「イルガロール1051」)、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−イソチアゾリン−3−オン(商品名「ケーソン930」)、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル(商品名「N-96」)、2-ピリジンチオール-1-オキシド亜鉛塩(商品名「ジンクピリチオン、ZPT」)、2-ピリジンチオール-1-オキシド銅塩(CuPT)等が挙げられる。
【0057】
このように亜酸化銅とそれ以外の上記防汚剤とを併用する場合には、非錫系防汚塗料組成物中に、亜酸化銅は通常、25〜50重量%の量で、それ以外の上記防汚剤は10重量%以下の量で配合することが好ましい。
【0058】
また、ロダン銅を使用する場合には、他の防汚剤と併用することができ、このようにロダン銅と併用することが好ましい防汚剤としては、ピリジン−トリフェニルボラン(PKボロン)、2-ピリジンチオール-1-オキシド亜鉛塩(ジンクピリチオン、ZPT)が挙げられる。このようにロダン銅とそれ以外の上記防汚剤とを併用する場合には、非錫系防汚塗料組成物中に、ロダン銅は、通常0.5〜30重量%の量で、ピリジン−トリフェニルボランは0.5〜20重量%の量で、2-ピリジンチオール-1-オキシド亜鉛塩は、10重量%以下の量で配合されることが好ましい。
【0059】
[防汚塗料組成物の製造]
このような防汚塗料組成物は、従来より公知の方法を適宜利用することにより製造することができ、例えば、それぞれ上記量の非錫系塗膜形成樹脂成分(a)と上記塩素化物(b)と防汚剤(c)とに加えて、さらに必要により、それぞれ適宜量の脱水剤、着色顔料、タレ止め・沈降防止剤、可塑剤、溶剤などとを所定の割合で一度にあるいは任意の順序で加えて攪拌・混合すればよい。
【0060】
[その他の配合成分]
このような本発明に係る防汚塗料組成物は、上記非錫系塗膜形成樹脂成分(a)、塩素化物(b)、防汚剤(c)の他に、後述するような脱水剤、可塑剤、タレ止め・沈降防止剤、安定剤、顔料など、通常防汚塗料に配合されるような各種成分を含んでいてもよい。
【0061】
脱水剤が含有された防汚塗料組成物では、貯蔵安定性を一層向上させることができ、このような脱水剤としては、無水石膏(CaSO4)、合成ゼオライト系吸着剤(商品名:モレキュラーシーブ等)、オルソギ酸メチル、オルソ酢酸メチル等のオルソエステル類、オルソほう酸エステル、シリケート類やイソシアネート類(商品名:アディティブTI)等が挙げられ、無水石膏、モレキュラーシーブが好ましく、特にモレキュラーシーブが好ましく用いられる。このような脱水剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0062】
このような脱水剤は、本発明の非錫系防汚塗料組成物中に、通常、0.1〜10重量%程度の量で含まれていてもよく、例えば、合成ゼオライトでは、0.2〜5重量%程度の量で含まれていてもよい。
【0063】
可塑剤としては、TCP(トリクレジルフォスフェート)、塩化パラフィン、ポリビニルエチルエーテルなどが使用できる。このような可塑剤は、非錫系防汚塗料組成物中に、例えば、0〜2重量%程度の量で配合される。
【0064】
タレ止め・沈降防止剤としては、有機粘土などのような防汚塗料組成物の貯蔵安定性を害するもの以外は、任意量で配合されていてもよい。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、有機粘度系Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの塩類、ポリエチレンワックス、アミドワックス、水添ヒマシ油ワックス系、ポリアマイドワックス系および両者の混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等が挙げられ、好ましくは、ポリアマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス、有機粘度系が用いられる。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、楠本化成(株)製の「ディスパロン305」、「ディスパロン4200-20」等の他、「ディスパロンA630-20X」等の商品名で上市されているものが挙げられる。
【0065】
このようなタレ止め・沈降防止剤は、非錫系防汚塗料組成物中に、例えば、2〜10重量%の量で配合される。
安定剤としては、エポキシ樹脂(商品名「E-028-90X」大竹化学社製)等が挙げられる。
【0066】
顔料としては、従来公知の有機系、無機系の各種顔料を用いることができる。有機系顔料としては、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、紺青等が挙げられる。無機系顔料としては、例えば、チタン白、ベンガラ、バライト粉、白亜、酸化鉄粉等のように中性で非反応性のもの;亜鉛華(ZnO)、鉛白、鉛丹、亜鉛末、亜酸化鉛粉等のように塩基性で塗料中の酸性物質と反応性のもの(活性顔料)等が挙げられる。なお、染料等の各種着色剤も含まれていてもよい。なお、前記アクリル-亜鉛ポリマーと、このZnO等の活性顔料は組み合わせて使用しないことが望ましい。このような各種顔料は、非錫系防汚塗料組成物中に、例えば、合計で5〜35重量%程度の量で配合される。特に、活性顔料とそれ以外の顔料とを併用する場合には、活性顔料は、非錫系防汚塗料組成物中に、例えば、3〜8重量%の量で、またそれ以外の上記顔料は、4〜25重量%程度の量で配合してもよい。
【0067】
本発明の防汚塗料では、上記のような各種成分は、溶剤に溶解若しくは分散している。ここで使用される溶剤としては、例えば、脂肪族系、芳香族系(例:キシレン、トルエン等)、ケトン系(例:MIBK)、エステル系、エーテル系など、通常、防汚塗料に配合されるような各種溶剤が用いられる。
【0068】
上記のような防汚塗料組成物(非錫系防汚塗料組成物)を水中構造物(例:火力・原子力発電所の給排水口)、湾岸道路、海底トンネル、港湾設備、運河・水路等のような各種海洋土木工事の汚泥拡散防止膜、船舶、漁業資材(例:ロープ、漁網、浮き子、ブイ)などの各種成形体の表面に常法に従って1回〜複数回塗布すれば防汚性に優れ、防汚剤成分が長期間に亘って徐放可能であり、厚塗りしても適度の可撓性を有し耐クラック性に優れた防汚塗膜被覆船舶または水中構造物などが得られる。
【0069】
すなわちこのような本発明に係る防汚塗料組成物を各種成形体の表面に塗布硬化してなる防汚塗膜は、アオサ、フジツボ、アオノリ、セルプラ、カキ、フサコケムシ等の水棲生物の付着を長期間継続的に防止できるなど防汚性に優れている。
【0070】
特に、該防汚塗料組成物は、船舶等の素材が、FRP、鋼鉄、木、アルミニウム合金などに良好に付着し、特にその素材がFRPであるようなものの没水部表面に塗布すれば、予めプライマー処理しなくとも強固に付着し、長期継続的に防汚剤が溶出し上記水棲生物の付着が防止でき、船舶の運航速度低下の防止、燃費の増大防止を図ることができる。また、該防汚塗料組成物は、既存の防汚塗膜表面に上塗しても、防汚塗膜相互の付着性(耐剥離性)に優れ層間剥離しにくい。
【0071】
また例えば、該防汚塗料組成物を海中構造物表面に塗布すれば、海中生物の付着防止を図ることができ、該構造物の機能を長期間維持でき、漁網に塗布すれば、漁網の網目の閉塞を防止できる。
【0072】
なお、この本発明に係る防汚塗料組成物は、直接漁網に塗布してもよく、また予め防錆剤、プライマーなどの下地材が塗布された船舶または水中構造物等の表面に塗布してもよい。さらには、既に従来の防汚塗料による塗装が行われ、あるいは本発明発明の防汚塗料組成物による塗装が行われている船舶(特にFRP船)、水中構造物等の表面に、補修用として本発明の防汚塗料組成物を上塗りしてもよい。このようにして船舶、水中構造物等の表面に形成された防汚塗膜の厚さは特に限定されないが、例えば、30〜150μm/回程度である。
【0073】
【発明の効果】
このような本発明に係る非錫系防汚塗料組成物(防汚塗料)を船舶外板没水部に塗布硬化して得られる防汚塗膜は、防汚性に優れており、塗膜からの防汚剤の溶出速度(溶出量)をコントロールでき、長期間に亘る安定した防汚性能の確保が可能である。従って、防汚塗装のインターバルを開けることができる。
【0074】
また、この非錫系防汚塗料組成物は、特にガラス繊維強化プラスチック(FRP)との付着性に優れているため、FRP船などの表面に、予めプライマー塗装することなく直接塗装しても、FRP船表面に付着性に優れた塗膜を形成できる。このため、この非錫系防汚塗料組成物によれば、FRP船用のプライマー塗装工程を省略可能であり、船体塗装作業の効率化、塗装経費節減等を図ることができる。
【0075】
また、本発明に係る非錫系防汚塗料組成物は、防汚塗膜(AF)に対する付着性にも優れているので、例えば、長期間運航され傷んだ船舶の防汚塗膜表面にこの防汚塗料組成物を上塗・補修塗装すれば、既存の防汚塗膜との密着性(付着性)に優れた防汚塗膜を既存の防汚塗膜表面に形成できる。
【0076】
また、本発明に係る防汚塗料組成物には、塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体が含有されているため、膜厚の大きな塗膜を船舶等の外表面に形成しても、該塗膜は適度の可塑性を有しており、付着性に優れ、該塗膜にクラックが生じにくい。
【0077】
【実施例】
以下、本発明について、実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこのような実施例により何等限定されるものではない。
【0078】
以下の実施例、比較例において「%」は、特にその意に反しない限り、「重量%」の意味である。
【0079】
【実施例A1】
下記表2に示す防汚塗料組成物を常法に従って以下のようにして調製した。すなわち、塩素化エチレン酢酸ビニル共重合樹脂[日本製紙社製:商品名「スーパークロンB」、塩素化率約26.5%、分子量約25万、固形分(加熱残分)20%]7.5重量部、ロジンWW(固形分100%)10重量部、塩化ビニル・ビニルイソブチルエーテル共重合体[BASF社製:ラロフレックスMP-15、固形分100%]5重量部、酸化亜鉛5重量部、フタロシアニンブルー2.5重量部、チタン白5重量部、亜酸化銅40重量部、2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル[サンノプコ社製:商品名「ノプコサイドN-96」、固形分100%]3重量部、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−イソチアゾリン−3−オン[ロームアンドハース社製:商品名「ケーソン930」、固形分30%]3.5重量部、酸化ポリエチレンワックス[楠本化成社製:商品名「ディスパロン4200-20」、固形分20%]3重量部、ポリアマイドワックス[楠本化成社製:ディスパロンA630-20X、固形分20%]3重量部、エポキシ樹脂[大竹化学社製:E−028−90X、分子量約380、固形分90%]3重量部、キシレン7.2重量部、トルエン2重量部、メチルイソブチルケトン(MIBK)3重量部を、ペイントコンディショナーを用いて混練分散を行い防汚塗料組成物を得た。
【0080】
該防汚塗料組成物からなる塗膜(防汚塗膜)の防汚性能、FRPとの付着性、既存の防汚塗膜表面への付着性などを評価した。
結果を下記表2に示す。
【0081】
【実施例A2〜A4,比較例A1〜A3】
実施例A1において、防汚塗料組成物の配合組成を下記表2〜3に示すように代えた以外は、実施例A1と同様にして防汚塗料組成物を調製した。
【0082】
該防汚塗料組成物からなる塗膜(防汚塗膜)の防汚性能、FRPとの付着性、既存の防汚塗膜表面への付着性などを評価した。
結果を下記表2〜3に示す。
【0083】
なお、下記の実施例、比較例における試験方法は、以下のとおり。
(1) 防汚性能試験(静置浸海防汚性試験)
(試験片の作製)
予め防錆塗料を塗布した塗板(サイズ:300mm×100mm×2.3mm)の塗膜表面に乾燥膜厚が100μm/コートになるように各例の防汚塗料組成物をスプレーで2回塗布して防汚性能試験用試験片を作製した。
(試験方法)
この試験片を、広島湾に設置された海上筏の海水面から1.5m水中に沈めた位置に固定して、12ヶ月にわたり静置浸海防汚性試験を行なった。そして試験片を海水中に静置してから12ヶ月経過時に試験片を観察し、各試験片における海中生物の防汚性を求めた。
【0084】
評価基準は、以下の通り。
5点:海中生物の付着面積が0%。
4点:海中生物の付着面積が0%を超え5%以下。
【0085】
3点:海中生物の付着面積が5%を超え10%以下。
2点:海中生物の付着面積が10%を超え25%以下。
【0086】
1点:海中生物の付着面積が25%を超え50%以下。
0点:海中生物の付着面積が50%を超える。
(2)FRP面への防汚塗膜の付着性試験
ゲルコート塗布FRP板(サイズ:300mm×100mm×3mmt)をアセトンにて脱脂し、サンドペーパー(#400)処理した後、各防汚塗料組成物をその乾燥膜厚が100μm/コートとなるように2回塗布してFRP面への付着性試験用試験片を作製した。
【0087】
(試験方法)
各試験片を、広島湾に設置されている海上筏の海水面から1.5m水中に沈めた位置に固定した後、6ヶ月間経過時にそれらの試験片を引き上げて乾燥した後、FRP面への防汚塗膜の付着性を下記「JIS K-5400 8.5.2 碁盤目テープ法」により評価した。
【0088】
<碁盤目試験の評価点数>
10点:切り傷1本ごとが、細くて両側が滑らかで、切り傷の交点と正方形の一目一目に剥がれがない。
【0089】
8点:切り傷の交点にわずかな剥がれがあって、正方形の一目一目に剥がれがなく、欠損部の面積は全正方形面積の5%以内。
6点:切り傷の両側と交点とに剥がれがあって、欠損部の面積は全正方形面積の5〜15%。
【0090】
4点:切り傷による剥がれの幅が広く、欠損部の面積は全正方形面積の15〜35%。
2点:切り傷による剥がれの幅は「4点」よりも広く、欠損部の面積は全正方形面積の35〜65%。
【0091】
0点:剥がれの面積は、全正方形面積の65%以上。
(3) 既存の防汚塗膜表面への防汚塗膜の上塗付着性試験(防汚塗膜同士の付着性試験)
(試験片の作製及び試験方法)
予め防錆塗料が塗布された塗装板(サイズ:300mm×100mm×2.3mmt)の塗膜表面に、乾燥膜厚が100μm/コートになるように、従来より使用されている錫フリー防汚塗料(非錫系防汚塗料)を塗装した。ついでこの塗装板を、広島湾に設置されている海上筏の海水面から1.5m水中に沈めた位置に固定して12ヶ月間に亘り浸漬した。
【0092】
その後、この塗装板を海水中より引き上げて、高圧水洗浄を行い充分に乾燥し、既損の防汚塗膜表面(劣化)を作製した。
この劣化防汚塗膜表面に表2〜3に示す種々の防汚塗料組成物をスプレーで2回塗装して、該防汚塗料組成物の乾燥膜厚が100μm/コートの塗膜を形成した。
【0093】
このようにして得られた防汚塗膜付き試験板を、上記と同様にして再び海水中に浸漬した後、6ヶ月経過時に、上記と同様に海水中より引き上げ乾燥した後、下記表1に示す「JIS K-5400 Xカットテープ法」にて、既存塗膜表面への上塗付着性試験を行った。
【0094】
結果を表2〜3に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
なお、以下の表で用いた各成分の一般名称、物性、分子量、共重合比、製造元などは以下の通り。
(1)エチレン・酢酸ビニル共重合体塩素化物(塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体):(海水)不溶解性樹脂、商品名「スーパークロンB」、GPC法による重量平均分子量(Mw)約25万、固形分(加熱残分)20%、粘度1000〜2000cps/25℃、塩素化率約26.5%、日本製紙社製。
【0097】
(2)塩素化ポリエチレン:商品名「スーパークロン510」、固形分100%、日本製紙社製、海水不溶解性樹脂。
(3)塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体:商品名「VYHH」、ユニオンカーバイト社製、海水不溶解性樹脂。
【0098】
(4)ロジン:ロジンWW、固形分100%、大竹化学社製、海水溶解性樹脂。
(5)塩化ビニル・ビニルイソブチルエーテル共重合体:商品名「ラロフレックスMP-15、25、35」、固形分100%、BASF社製、不溶解性樹脂。
【0099】
(6)メチルメタクリレート・ブチルメタクリレート共重合体:商品名「パラロイドB-66」、固形分100%、ローム・アンド・ハース社製。不溶解性樹脂。
【0100】
(7)スチレン・ブタジエン共重合体:商品名「プリオライトS-5B」、グッドイヤー社製。
(8)酸化亜鉛:亜鉛華#3、九州白水社製、体質顔料。
【0101】
(9)フタロシアニンブルー:シアニンブルーS-2010、大日精化社製、着色顔料。
(10)2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル:N-96(ノプコサイドN-96)、サンノプコ社製、防汚剤。
【0102】
(11)4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−イソチアゾリン−3−オン:ケーソン930、固形分30%、ロームアンドハース社製、防汚剤。
(12)ピリジントリフェニルボラン:PKボロン、北興化学社製、防汚剤。
【0103】
(13)2-ピリジンチオール-1-オキシド-亜鉛塩:ZPT、オーリン社製、防汚剤。
(14)可溶性無水石膏(CaSO4):石膏D-1、ノリタケ社製、安定剤(脱水剤)。
【0104】
(15)酸化ポリエチレンワックス:ディスパロン4200-20、固形分20%、楠本化成社製、沈降防止剤。
(16)脂肪酸アマイドワックス:ディスパロンA630-20X、固形分20%、楠本化成社製、揺変剤。
【0105】
(17)ビスフェノールAジグリシジルエーテルエポキシ樹脂:E-028-90X、大竹化学社製、安定剤、分子量約380、固形分90%。
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
【実施例B1〜B2,比較例B1〜B3】
上記実施例A1において、防汚塗料組成物の配合組成を下記表4〜5に示すように変えた以外は実施例A1と同様にして防汚塗膜を形成し、各種物性を評価した。
【0109】
結果を表4〜5に示す。
【0110】
【表4】
【0111】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明で用いられる塩素化エチレン酢酸ビニル共重合体(スーパークロンB、エチレン・酢酸ビニル共重合体の塩素化物)のIRチャートである。
Claims (8)
- (a)非錫系塗膜形成樹脂成分と、(b)エチレン・酢酸ビニル共重合体の塩素化物または該共重合体の部分加水分解物の塩素化物と、(c)防汚剤とを含有することを特徴とする非錫系防汚塗料組成物。
- 上記非錫系塗膜形成樹脂成分(a)が、(i)塩化ビニル系共重合樹脂と水溶性樹脂との組み合わせ、(ii)アクリル樹脂と水溶性樹脂との組み合わせ、(iii)アクリル亜鉛ポリマー、(iv)シリルアクリレート系樹脂のうちの何れか1種であることを特徴とする請求項1に記載の非錫系防汚塗料組成物。
- 上記水溶性樹脂がロジンであることを特徴とする請求項2に記載の非錫系防汚塗料組成物。
- 上記防汚剤として、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2-メチルチオ-4-t-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノSトリアジン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−イソチアゾリン−3−オン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、2-ピリジンチオール-1-オキシド亜鉛塩、2-ピリジンチオール-1-オキシド銅塩のうちの何れか1種以上と、亜酸化銅とを含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の非錫系防汚塗料組成物。
- 上記防汚剤として、ピリジン−トリフェニルボラン、2-ピリジンチオール-1-オキシド亜鉛塩のうちの何れか1種以上と、ロダン銅とを含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の非錫系防汚塗料組成物。
- 請求項1〜5の何れかに記載の非錫系防汚塗料組成物から形成されたことを特徴とする防汚塗膜。
- 海水と接触する船舶外板表面に、請求項1〜5の何れかに記載の非錫系防汚塗料組成物を塗布し、防汚塗膜を形成することを特徴とする船舶外板の防汚方法。
- 海水と接触する船舶外板の表面が、請求項1〜5の何れかに記載の非錫系防汚塗料組成物を塗布硬化してなる防汚塗膜にて被覆されていることを特徴とする船舶。
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