JP5561932B2 - 水系防汚塗料組成物、その製造方法、その塗膜、その塗膜で被覆された基材および防汚方法 - Google Patents
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Description
る防汚塗料組成物が開示され、該塗料組成物はキシレン等の溶剤希釈型の塗料として用いられ、得られる塗膜は、研磨性、長期防汚性が良好とされている。
(2)
また、この防汚塗料用樹脂20〜95重量%と微水溶性樹脂5〜80重量%とを併用する態様も開示され(請求項2)、微水溶性樹脂として、ロジン、ロジン金属塩(実施例7〜9:ロジンZn塩、ロジンCu塩)、変性ロジン、ビニルエーテル共重合体およびポリ
N−ビニルピロリドンが挙げられている。
そのため近年、環境保全、塗装作業環境の改善の面から水性化が望まれていた。
してなる水性樹脂エマルジョン(A)を防汚性を有するバインダーとして含有してなる水性防汚樹脂組成物が開示されている。
しかしながら、これらの特許文献4−5に記載の水性防汚樹脂組成物では、貯蔵安定性の点で不良であり、また、得られる塗膜は、耐水性において不十分という問題点があった。
少なくとも、
(A)樹脂酸金属塩の水性エマルションと、
(B)合成樹脂エマルションと、
(C)防汚剤と、
を配合してなることを特徴としている。
この樹脂酸金属塩が、ロジン、ナフテン酸、バーサチック酸、およびトリフェニルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸のうちの何れかの物質の亜鉛塩、銅塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩およびバリウム塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属塩であることが好ましく、特に、
この樹脂酸金属塩が、バーサチック酸、ウッドロジン、トール油ロジンおよびガムロジンのうちの何れかの物質の亜鉛塩、銅塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩およびバリウム塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂酸金属塩であることが望ましい。
本発明におけるロジンとはウッドロジン、トール油ロジンおよびガムロジンのほかに水添ロジン、不均化ロジン等のロジン誘導体を含む。
本発明においては、樹脂酸金属塩の水性エマルション(A)中の固形分が10〜80重量%であることがエマルションの安定性の点で望ましい。
ビニル化合物の重合体、または、ビニル化合物と、これと共重合可能な他のモノマーとを共重合させてなるビニル系共重合体;
スチレンの重合体、または、スチレンと、これと共重合可能な他のモノマーとを共重合させてなるスチレン系共重合体;
のうちから選択される何れ1種または2種以上の樹脂を含有した水性エマルションである
ことが(A)との混合性の点で望ましい。
本発明では、樹脂酸金属塩の水性エマルション(A)中の固形分100重量部に対して、合成樹脂エマルション(B)を固形分として10〜1000重量部の割合で含有することが塗膜物性の点で望ましい。
られる点で望ましい。
少なくとも、それぞれ上述したような成分である、
(A)樹脂酸金属塩の水性エマルションと、
(B)合成樹脂エマルションと、
(C)防汚剤と、
を一度にまたは任意の順序で配合することを特徴としている。
本発明に係る船体または水中構造物の防汚方法では、上記のいずれかに記載の水系防汚塗料組成物を船体または水中構造物に塗布して船体または水中構造物上に防汚塗膜を形成することを特徴としている。
また本発明によれば、上記のような水系防汚塗料組成物を、安全かつ効率的に製造し得るような水系防汚塗料組成物の製造方法が提供される。
[水系防汚塗料組成物]
本発明に係る水系防汚塗料組成物は、少なくとも、
(A)樹脂酸金属塩の水性エマルション(成分(A)ともいう。)と、
(B)合成樹脂エマルション(成分(B))と、
(C)防汚剤(成分(C))と、
を配合してなることを特徴としている。
成分(B)中の合成樹脂(B')量{成分(B)を105℃の恒温器中で3時間乾燥後の加熱残分(固形分ともいう。以下同様。)}に換算して、通常、10〜1000重量部、好ましくは、10〜300重量部の量で配合することが塗料の貯蔵安定性の点で望ましく、また、
防汚剤(C)は、通常、10〜1500重量部、好ましくは、100〜900重量部の量で配合することが得られる防汚塗膜の長期防汚性、塗膜物性の点で望ましい。
塩に代表される樹脂酸金属塩(A’)の含有量{成分(A)を105℃の恒温器中で3時間乾燥後の加熱残分。固形分ともいう。JIS K 5601−1−2加熱残分に準拠。以下同様。}は、通常、1〜30重量%、好ましくは、1〜20重量%であり、
合成樹脂(B’)の含有量{成分(B)につき同上の条件での加熱残分}は、通常、3〜30重量%、好ましくは、5〜25重量%であり、
乳化分散剤(a1)、(b1)の含有量{乳化分散剤(a1)、(b1)につき、同上の条件での加熱残分}は、合計で、通常、0.1〜15重量%、好ましくは、0.5〜10重量%であり、
防汚剤(C)の含有量{同上の加熱残分}は、通常、5〜60重量%、好ましくは、5〜45重量%である。
以下、各成分(A)、(B)、(C)等について説明する。
<(A)樹脂酸金属塩の水性エマルション(成分(A))>
本発明においては、樹脂酸金属塩の水性エマルション(A)中の樹脂酸金属塩が、ロジンの金属塩、ナフテン酸の金属塩、バーサチック酸の金属塩、およびトリフェニルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸の金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが海水溶解性の点で好ましく、さらには、
この樹脂酸金属塩が、ロジン、ナフテン酸、バーサチック酸、およびトリフェニルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸のうちの何れかの物質の亜鉛塩、銅塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩およびバリウム塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属塩であることが好ましく、特に、
この樹脂酸金属塩が、バーサチック酸、ウッドロジン、トール油ロジンおよびガムロジンのうちの何れかの物質の亜鉛塩、銅塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩およびバリウム塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂酸金属塩であることが得られる防汚塗膜の海水溶解性の点で望ましい。
s/25℃、好ましくは、100〜500 mPa・s/25℃である。またその平均粒
子径(大塚電子(株)製「FPAR−1000」にて、25℃で測定。)は、通常100〜600nm程度である。
<(B)合成樹脂エマルション(成分(B))>
本発明においては、上記合成樹脂エマルション(B)は、該エマルション(B)中に、合成樹脂として、(メタ)アクリル酸の重合体、または、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他のモノマーとを共重合させてなる(メタ)アクリル酸系共重合体[以下、これらをまとめて(メタ)アクリル酸系(共)重合体(b1)等ともいう。];
ビニル化合物の重合体、または、ビニル化合物と、これと共重合可能な他のモノマーとを共重合させてなるビニル系共重合体[以下、これらをまとめてビニル系(共)重合体(b2)等ともいう。];
スチレンの重合体、または、スチレンと、これと共重合可能な他のモノマーとを共重合
させてなるスチレン系共重合体[以下、これらをまとめてスチレン系(共)重合体(b3)等ともいう。];
のうちから選択される何れか1種または2種以上の樹脂を含有した水性エマルションであることが塗膜の物性の点で望ましい。
(メタ)アクリル酸系(共)重合体(b1)は、特開平11−61002号公報(中国塗料(株))の[0026]〜[0028]、に記載のものなど、従来より公知の(メタ)アクリル酸の(単独)重合体または(メタ)アクリル酸系共重合体であって、かつ、これら重合体または共重合体が、(メタ)アクリル酸、その金属塩、そのアルキルエステルまたはそのシリルエステルの(単独)重合体または共重合体樹脂であることが望ましい。
ビニル系(共)重合体(b2):
ビニル系(共)重合体(b2)としては、従来より公知のものを広く使用でき、例えば、特開平11−61002号公報(中国塗料(株))の[0020]〜[0024]に記載のビニル系共重合体樹脂、例えば、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル・ビニルi-ブチルエーテル共重合樹脂、塩化ビニル・プロピオン酸ビニル共重合樹脂など、従来より公知のビニル化合物(例:塩化ビニル、酢酸ビニル、スチレンなど)の(単独)重合体、または、ビニル化合物と、これと共重合可能な他のモノマーとを共重合させてなるビニル系共重合体が挙げられる。
スチレン系(共)重合体(b3):
スチレン系(共)重合体(b3)としては、例えば、特開平11−61002号公報(中国塗料(株))の[0025]に記載のスチレン・ブタジエン共重合体樹脂など、スチレンの(単独)重合体、または、スチレンと、これと共重合可能な他のモノマーとを共重合させてなるスチレン系共重合体が挙げられる。
これら(共)重合体(b1)〜(b3)が含まれた樹脂エマルションは従来より公知の方法により製造してもよく、また市販品をそのまま用いてもよい。
50.0重量%、新中村化学工業(株)製)、「MX−3363」(アクリルシリコン樹脂エマルション、固形分:45.5重量%)、三菱レイヨン(株)製)、「WSR−390」(アクリル樹脂エマルション、固形分:50.0%)、中国塗料(株)製)などが挙げられる。
01−1−2加熱残分、105℃の恒温器中で3時間乾燥)が30〜70重量%、好ましくは、40〜60重量%であることが樹脂エマルションの安定性の点で望ましい。
5601−1−2加熱残分。105℃の恒温器中で3時間乾燥。)100重量部に対して
、合成樹脂エマルション(B)を固形分として10〜1000重量部、好ましくは、10〜300重量部の割合で含有することが塗料の貯蔵安定性の点で望ましい。
<(C)防汚剤(成分(C))>
防汚剤(C)としては、特に限定されないが、有機系、無機系のいずれの防汚剤であってもよく、
無機系防汚剤としては、亜酸化銅、金属銅粉、チオシアン化第1銅(ロダン銅)等の銅または銅化合物(ピリチオン系化合物を除く。);
硫化亜鉛;などが用いられる。
テトラメチルチウラムジサルフィド等のテトラアルキルチウラムジサルフィド;
ジンクジメチルジチオカーバメート、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート(商品名「TOC−3204F」、ローム アンド ハース社製)、ジンクエチレンビスジチオカーバメイト(商品名「ジネブ」、ローム アンド ハース社製)等のカーバメート系防汚剤;
ピリジン‐トリフェニルボラン、4‐イソプロピルピリジン‐ジフェニルメチルボラン、トリフェニルホウ素のアルキルアミン錯体等の後述するアミン・有機ボラン錯体類;
2,4,6‐トリフェニルマレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2’,6’−ジエチルフェニル)マレイミドおよび2,3−ジクロロ−N−(2’−エチル−6’−メチルフェニル)マレイミド等のマレイミド類;
2,4,5,6‐テトラクロロイソフタロニトリル、N,N‐ジメチルジクロロフェニル尿素、4,5‐ジクロロ‐2‐n‐オクチル‐4‐イソチアゾリン‐3‐オン、
2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピル−S−トリアジン、クロロメチル−n−オクチルジスルフィッド、N,N’−ジメチル−N’−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、N,N’−ジメチル−N’−トリル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、などの有機防汚剤を用いることができる。
(アミン・有機ボラン錯体)
ここで上記アミン・有機ボラン錯体について詳述すると、上記アミン・有機ボラン錯体は、アミンと有機ボラン化合物との錯体であって、好ましくは、トリフェニルボランのアルキルアミン錯体(アルキル基炭素数C1〜20。トリフェニルボランと錯体を形成するアルキルアミンは、第一、第二、第三アミンの何れでもよい。)等が挙げられる。
(B)一般式(II)
ジn−ブチルアミン、ジn−ヘキシルアミン、ジn−オクチルアミン、ジn−デシルアミン、ジn−ドデシルアミン、ジn−トリデシルアミン、ジn−テトラデシルアミン、ジn−ヘキサデシルアミン、ジn−オクタデシルアミン、ジフェニルアミン等の第二アミン;
トリn−プロピルアミン、トリn−ヘキシルアミン、トリn−オクチルアミン、トリn−デシルアミン、トリn−ドデシルアミン、トリn−トリデシルアミン、トリn−テトラデシルアミン、トリn−ヘキサデシルアミン、トリn−オクタデシルアミン、トリフェニルアミン等の第三アミン;
ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2−クロロピリジン、3−クロロピリジン、4−クロロピリジンなどのピリジンまたはその核置換体等のピリジン類などを例示することができる。
また、本発明に係る水系防汚塗料組成物においては、防汚剤(C)が有機防汚剤であることが防汚効果の向上の点で望ましい。
このように、上記の銅化合物と、有機防汚剤とを含有する場合、
有機防汚剤としては、ピリチオン化合物、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、さらには、
有機防汚剤としては、銅ピリチオン、ジンクピリチオン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、さらには、
特に塗料の貯蔵安定性を考慮した好適態様では、上記の銅化合物と、有機防汚剤とを含有する場合、亜酸化銅と、銅ピリチオンまたはジンクピリチオンとを含有することが望ましい。
塗料組成物には、実質的に亜酸化銅を含有しないことが望ましい。
このような観点では、防汚剤(C)としては、有機系の防汚剤が好ましく用いられ、具体的には、ジンクピリチオン、ピリジン−トリフェニルボラン錯体、4−イソプロピルビリジン−ジフェニルメチルボラン錯体および4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンクロロメチル−n−オクチルジスルフィッド、N,N’−ジメチル−N’−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、N,N’−ジメチル−N’−トリル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機防汚剤が好ましい。
ルピリジン−ジフェニルメチルボラン錯体との組み合わせ;
(ii)ジンクピリチオンと、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの組み合わせ;
(iii)銅化合物(c10)と、銅ピリチオン、ジンクピリチオン、ピリジン−トリフ
ェニルボラン錯体、4−イソプロピルビリジン−ジフェニルメチルボラン錯体および4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機防汚剤(c30)との組み合わせ;
(iv)亜酸化銅と、銅ピリチオンまたはジンクピリチオンとの組み合わせ;
(v)亜酸化銅と、銅ピリチオンまたはジンクピリチオンと、4,5−ジクロロ−2−
n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの組み合わせ;
など。
本発明に係る水系防汚塗料組成物を製造するには、少なくとも、それぞれ上述したような成分である、
(A)樹脂酸金属塩の水性エマルション(成分(A)ともいう。)と、
(B)合成樹脂エマルション(成分(B))と、
(C)防汚剤(成分(C))と、
を一度に、または任意の順序で配合すればよい。
組成物の調製に際しては、必要により加熱、攪拌等してもよい。
また、上記成分(A)、(B)としては特開2000−309771号公報等に記載の従来より公知のものをそのまま用いてもよく、また、これら成分(A)、(B)を製造するには、これら公報等に記載されているような、従来より公知の方法を適宜利用することができ、好適には下記の方法が採用される。
<ロジン金属塩(亜鉛塩)等に代表される樹脂酸金属塩の製造>
成分(A)を製造するには、例えば、反応容器内に樹脂酸(例:ロジン、ナフテン酸、バーサチック酸等)あるいはその誘導体(例:エステル)と有機溶媒(例:キシレン)を入れ
、ロジン等の樹脂酸あるいはその誘導体を有機溶媒に溶解させる。
ク酸亜鉛塩)を得る。
<ロジン金属塩(例:ロジン亜鉛塩)等に代表される樹脂酸金属塩のエマルジョンの製造>
次いで、ロジン亜鉛塩(R)等の樹脂酸金属塩が含まれた上記反応液に、乳化分散剤(例:ポリオキシエチレンラウリルエーテル)をロジン亜鉛塩(R)等の樹脂酸金属塩(例:ロジン金属塩)100g当たり、10〜30gの量で、ディスパー攪拌しながら入れて溶解させ、樹脂酸金属塩(例:ロジン金属塩)を均一に乳化分散させる。なお、ロジン金属塩等の樹脂酸金属塩、乳化分散剤は、何れも、作業効率の点で加熱して用いてもよく、乳化分散剤は、加熱溶融状態で用いることが望ましい。
(前記と同様、105℃の恒温器中3時間乾燥後の加熱残分。)は、樹脂酸金属塩エマルションの種類や製法により異なり、一概に決定されないが、例えば、上記製法で得られたロジン金属塩エマルションでは、10〜80重量%、好ましくは、35〜55重量%であり、粘度(測定法は同上。)は通常、10〜900 mPa・s/25℃、好ましくは、1
00〜500 mPa・s/25℃、特に好ましくは、100〜400mPa・s/25
℃であり、含まれる樹脂の平均粒子径(測定法は同上。)は通常100〜600nm程度、好ましくは、200〜500nm程度である。
<(B)合成樹脂エマルション(成分(B))及びその製造>
合成樹脂エマルション(B)としては、上記公報等に記載の方法を適宜利用して製造してもよく、また市販品を利用してもよい。
本発明に係る塗膜は、上記のいずれかに記載の水系防汚塗料組成物から形成されていることを特徴としている。
[発明の効果]
このような本発明に係る水系防汚塗料組成物(防汚塗料組成物)は貯蔵安定性に優れ長期保存可能である。しかもこの防汚塗料組成物よりなる塗膜は、防汚性にも優れており、該防汚塗料組成物を船舶外板没水部等に塗布硬化して得られる防汚塗膜は、防汚性に優れており、塗膜からの防汚剤の溶出速度(溶出量)をコントロールでき、長期間に亘る安定した防汚性能の確保が可能である。従って、防汚塗装のインターバルを開けることができる。
[実施例]
以下、本発明について、実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこのような実施例により何等限定されるものではない。
[合成例1]
<ロジン亜鉛塩の調製>
攪拌機、コンデンサー、温度計、滴下装置、窒素導入管、加熱、冷却ジャケットを備えた500ml反応容器にキシレン120部、WWロジン161部を仕込み窒素気流下で常温から昇温して50℃の温度まで加熱攪拌を行いWWロジンを溶解させた後、亜鉛華24部を投入し窒素気流下にて50℃から昇温して85℃まで加熱攪拌し、温度85℃で9時間攪拌を行った。溶液が透明になったのを確認した後、生成した水を除去する為、溶媒のキシレンと共沸脱水した。次いで、液温150℃に保持し、この温度でもはや水が留出せず液が透明になったのを確認後、反応を終了し透明なロジン亜鉛塩(R)含有物を得た。
<ロジン亜鉛エマルションの調製>
500mlポリ容器に30℃に加熱保温したロジン亜鉛塩(R)含有物を225g仕
込み、加熱溶融した乳化剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)27gを、ディスパーにて攪拌しながら投入し溶解させ均一に混ぜた。
[合成例2]
<バーサチック酸亜鉛塩の調製>
攪拌機、コンデンサー、温度計、滴下装置、窒素導入管、加熱、冷却ジャケットを備えた500ml反応容器にキシレン20部、バーサチック酸144部を仕込み窒素気流下で常温から昇温して50℃の温度まで加熱攪拌を行い、亜鉛華45部を投入し窒素気流下に
て50℃から昇温して85℃まで加熱攪拌し、温度85℃で9時間攪拌を行った。溶液が透明になったのを確認した後、生成した水を除去する為、溶媒のキシレンと共沸脱水した。次いで、液温150℃に保持し、この温度でもはや水が留出せず液が透明になったのを確認後、反応を終了し透明なバーサチック酸亜鉛塩(V)含有物を得た。
<バーサチック酸亜鉛エマルションの調製>
500mlポリ容器に30℃に加熱保温したバーサチック酸亜鉛塩(V)含有物を1
44g仕込み、加熱溶融した乳化剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)12gを、ディスパーにて攪拌しながら投入し溶解させ均一に混ぜた。
[水系防汚塗料組成物の製造]
次いで、予め防錆塗料(商品名:「バンノー500R」、中国塗料(株)製)が乾燥膜厚(100μm(厚)で塗布硬化されている鋼板(寸法:300mm×100mm×2.3mm(厚))に、上記の水系防汚塗料組成物を、乾燥塗膜が100μmになるように塗装し常温で乾燥させた。
その結果、海中浸漬1ヵ月後〜12ヵ月後では、評価「0」(海中生物の付着なし。)
となった。
評価基準は以下の通り。
<評価基準>
<海中生物の付着面積評価基準(静置防汚性評価基準)>
0点・・・・・海中生物の付着なし。
1点・・・・・海中生物の付着面積が10%未満。
2点・・・・・海中生物の付着面積が10%以上25%未満。
3点・・・・・海中生物の付着面積が25%以上50%未満。
4点・・・・・海中生物の付着面積が50%以上70%未満。
5点・・・・・海中生物の付着面積が100%。
<水系防汚塗料組成物の調製>
なお、下記表1の実施例1に示す水系防汚塗料組成物は、常法に従って以下のようにして調製した。
成分(A)として、合成例1のワニス(R1)[粘度:340mPa・s/25℃、固形分(加熱残分)44.2%、]14重量部、
成分(B)として「ニューコート TS−100」{アクリル樹脂エマルションション、固形分:50.0重量%、粘度:3000mPa・s以下、製造会社:新中村化学(株)製}12重量部、
防汚剤成分(C)として、亜酸化銅(古河機械金属(株)製)35重量部、
顔料として、ベンガラ(着色顔料)4重量部、
酸化亜鉛(体質顔料)5重量部、および
酸化チタン(着色顔料)10重量部、
「Disperbyk−190」(分散剤、ビックケミー社製)1重量部、
「アデカノールUH−752」(粘性調整剤、(株)アデカ、(旧)旭電化工業(株)製)1重量部、
「BYK−012」(消泡剤、ビックケミー社製)0.3重量部、
「ベントンHD」(粘度調整剤、ヘクトライトクレイ、エレメンティス社製)1重量部、
プロピレングリコール(造膜助剤)1重量部、
ブチルセロソルブ(造膜助剤)0.5重量部、
グリセリン(造膜助剤)1重量部、
蒸留水14.2重量部、
を、高速分散機を用いて混練分散させて水系防汚塗料組成物を得た。
貯蔵安定性は、23℃で2週間(14日間)保持した場合も「良好(色別れ、相分離等なく再分散性が良好なもの。)」となった。
結果を表3に示す。
<貯蔵安定性試験>
塗料製造後、23℃および40℃の恒温機で14日、1ヶ月、3ヶ月保管した後、塗料の分散状態を目視にて評価する。
<評価基準>
良好・・・・色別れ、相分離等なく再分散性が良好なもの。
[実施例2〜15,比較例1〜7]
実施例1において、防汚塗料組成物の配合組成を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして防汚塗料組成物を調製し、上記と同様の試験を行った。
[実施例16]
上記[合成例2]で得た樹脂エマルジョン(V1)を使用し、表2に示す水系防汚塗料組成物(防汚塗料)を、実施例1と同様の方法にて作成し、上記と同様の試験を行った。
[実施例17〜31,比較例8〜10]
実施例16において、防汚塗料組成物の配合組成を表2に示すように変えた以外は、実施例16と同様にして防汚塗料組成物を調製し、上記と同様の試験を行った。
なお、これら実施例、比較例等で使用した主な配合成分等の物性、機能(役割)、メーカー等を表5にまとめて示す。
Claims (18)
- 少なくとも、
(A)樹脂酸金属塩の水性エマルションと、
(B)合成樹脂の水性エマルションと、
(C)防汚剤と、
を配合してなることを特徴とする水系防汚塗料組成物。 - 樹脂酸金属塩の水性エマルション(A)中の樹脂酸金属塩が、ロジンの金属塩、ナフテン酸の金属塩、バーサチック酸の金属塩、およびトリフェニルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸の金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の水系防汚塗料組成物。
- 樹脂酸金属塩の水性エマルション(A)中の樹脂酸金属塩が、ロジン、ナフテン酸、バーサチック酸、およびトリフェニルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸のうちの何れかの物質の亜鉛塩、銅塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩およびバリウム塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属塩であることを特徴とする請求項1または2に記載の水系防汚塗料組成物。
- 樹脂酸金属塩の水性エマルション(A)中の樹脂酸金属塩が、バーサチック酸、ウッドロジン、トール油ロジンおよびガムロジンのうちの何れかの物質の亜鉛塩、銅塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩およびバリウム塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂酸金属塩であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水系防汚塗料組成物。
- 樹脂酸金属塩の水性エマルション(A)中の固形分が10〜80重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水系防汚塗料組成物。
- 合成樹脂の水性エマルション(B)が、
(メタ)アクリル酸の重合体、または、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他のモノマーとを共重合させてなる(メタ)アクリル酸系共重合体;
ビニル化合物の重合体、または、ビニル化合物と、これと共重合可能な他のモノマーとを共重合させてなるビニル系共重合体;
スチレンの重合体、または、スチレンと、これと共重合可能な他のモノマーとを共重合させてなるスチレン系共重合体;
のうちから選択される何れか1種または2種以上の樹脂を含有した水性エマルション
であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水系防汚塗料組成物。 - 合成樹脂の水性エマルション(B)中の合成樹脂が、上記請求項6に記載の(メタ)アクリル酸の重合体または(メタ)アクリル酸系共重合体であって、かつ、これら重合体または共重合体が、(メタ)アクリル酸、その金属塩、そのアルキルエステルまたはそのシリルエステルの重合体または共重合体樹脂であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の水系防汚塗料組成物。
- 合成樹脂の水性エマルション(B)中の固形分が20〜80重量%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の水系防汚塗料組成物。
- 樹脂酸金属塩の水性エマルション(A)中の固形分100重量部に対して、合成樹脂の水性エマルション(B)を固形分として10〜1000重量部の割合で含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の水系防汚塗料組成物。
- 防汚剤(C)が亜酸化銅、金属銅粉、チオシアン化第1銅(ロダン銅)、硫化亜鉛、銅ピリチオン、ジンクピリチオン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピル−S−トリアジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート、トリフェニルホウ素のアルキルアミン錯体、ピリジン−トリフェニルボラン錯体、4−イソプロピルピリジン−ジフェニルメチルボラン錯体、クロロメチル−n−オクチルジスルフィッド、N,N'−ジメチル−N'−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、N,N'−ジメチル−N'−トリル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、テトラアルキルチウラムジスルフィッド、ジンクジメチルジチオカーバメイト、ジンクエチレンビスジチオカーバメイト、2,3−ジクロロ−N−(2',6'−ジエチルフェニル)マレイミドおよび2,3−ジクロロ−N−(2'−エチル−6'−メチルフェニル)マレイミドからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の水系防汚塗料組成物。
- 前記防汚剤(C)として、亜酸化銅と、銅ピリチオンまたはジンクピリチオンとを含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の水系防汚塗料組成物。
- 前記防汚剤(C)として、ジンクピリチオンと、ピリジン−トリフェニルボラン錯体または4−イソプロピルピリジン−ジフェニルメチルボラン錯体とを含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の水系防汚塗料組成物。
- 樹脂酸金属塩の水性エマルション(A)中の固形分100重量部に対して、防汚剤(C)を10〜1500重量部の割合で含有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の水系防汚塗料組成物。
- 水系防汚塗料組成物中における水の含有量が、5〜50重量%である請求項1〜13のいずれかに記載の水系防汚塗料組成物。
- 少なくとも、
(A)樹脂酸金属塩の水性エマルションと、
(B)合成樹脂の水性エマルションと、
(C)防汚剤と、
を一度にまたは任意の順序で配合することを特徴とする水系防汚塗料組成物の製造方法。 - 請求項1〜14のいずれかに記載の水系防汚塗料組成物から形成されている塗膜。
- 請求項1〜14のいずれかに記載の水系防汚塗料組成物を船体または水中構造物に塗布して船体または水中構造物上に防汚塗膜を形成することを特徴とする船体または水中構造物の防汚方法。
- 請求項1〜14のいずれかに記載の水系防汚塗料組成物からなる塗膜にて船体または水中構造物の表面が被覆されていることを特徴とする防汚塗膜付き船体または水中構造物。
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