JP3774310B2 - 漁網用防汚剤、防汚方法および該防汚剤で処理された漁網 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、漁網用防汚剤、防汚方法および該防汚剤で処理された漁網に関し、さらに詳しくは、網染め作業性が良好で広範な水棲生物に対してその付着を長期間防止し得るような長期防汚性に優れた漁網用防汚剤、防汚方法および該防汚剤で処理された漁網に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
養殖網、定置網等の漁網は、海中に長期間設置されるため、この漁網に各種水棲生物例えば、ヒドロゾア等の腔腸動物、青ノリ等の海草類、フジツボ、シロウスホヤ、セルプラ、コケムシ、軟体動物などが多量に付着すると、漁網が重くなり破損しやすくなったり、漁網の取扱い性が低下し、また漁網の網目が目詰まりを起こし海水の流通を阻害し養殖魚類を死に至らしめるなどの被害が生じる恐れがある。
【0003】
このため、従来よりヒドロゾア等の各種水棲生物の付着を防止すべく、種々の漁網用防汚剤が提案されている。
例えば、▲1▼特開平7-133207号公報には、ピリジン-トリフェニルボロン又はピリジン-トリフェニルボロンとシリコーンオイルを含有する漁網具防汚剤が記載され、該シリコーンオイルとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、該漁網具防汚剤に配合可能な樹脂ビヒクルとして、ポリエステル樹脂、ロジン系樹脂等が挙げられている。
【0004】
しかしながら上記のピリジン-トリフェニルボロンが溶剤不溶性のため、該漁網具防汚剤を漁網に均一に含浸させることは困難であり、網染め作業性に劣るとの問題点がある。
【0005】
▲2▼特開平8-277372号公報には、側鎖にトリオルガノシリル基を有し、かつアルコキシまたはアリーロキシエチレンオキシド基を有する特定の加水分解性シリルエステル共重合体、トリフェニルボラン・ピリジン錯体を含み、さらに必要により該錯体以外の海棲生物付着阻害剤、溶解速度調整剤を含有する塗料組成物が記載されている。この海棲生物付着阻害剤としては、例えば、2,3,5,6-テトラクロロ-4-メチルスルホニル-ピリジン等が挙げられ、また溶解速度調整剤としては、ロジンまたはその誘導体、流動パラフィンの他に、ジメチルシリコーンオイル、ポリエーテルシリコーン等のシリコーンオイルが挙げられている。
【0006】
しかしながらこの公報に記載の塗料組成物には、有機溶媒不溶性のトリフェニルボラン・ピリジン錯体が含まれており、均一に網染め処理できず、また網染め処理後には樹脂の加水分解が速すぎ、また耐水性が悪いという問題点がある。
【0007】
▲3▼特開平7-291813号公報には、1〜25重量%のピリジン-トリフェニルボランを有効成分として含有する腔腸動物付着防止用漁網防汚剤が記載されており、該漁網防汚剤には、テトラアルキルチウラムジスルフィド例えば、テトラエチルチウラムジスルフィド等を有効成分として配合でき、溶出調整剤としてポリブテン、パラフィン類、ワセリン等を配合できることが記載され、また使用可能な樹脂としてロジン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられている。このようなピリジン-トリフェニルボランを含有する漁網用防汚剤では、上記▲2▼特開平8-277372号公報に記載の漁網用防汚剤と同様の問題点がある。
【0008】
▲4▼また、特開平8-295608号公報には、式:
【0009】
【化3】
【0010】
(式中、R1は、炭素数3〜30のアルキル基を示す)により表されるトリフェニルボラン・アルキルアミン錯化合物の1種または2種以上を有効成分として好ましくは1〜25重量%含有し、さらに、これらを溶解する有機溶剤を含有する有機溶剤溶解型の漁網防汚剤が記載され、この漁網防汚剤には、テトラアルキルチウラムジスルフィド類が配合可能であり、また溶出調整剤として、ポリブテン、パラフィン類、ワセリン等を配合できることが記載され、また使用可能な樹脂としてロジン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられている。なお、上記アルキルアミンとしては、n-ドデシルアミン、n-オクタデシルアミン等が挙げられている。
【0011】
また、▲5▼特開平8-295609号公報には、式:
【0012】
【化4】
【0013】
(式中、R1は、n-オクタデシル基を示す)により表されるトリフェニルボラン-アルキルアミン錯化合物と、有機溶剤とを含有する有機溶剤溶解型の漁網防汚剤、すなわち上記▲4▼特開平8-295608号において、R1をn-オクタデシル基に限定したものが記載されている。
【0014】
なお、▲6▼米国特許3,211,679号明細書には、トリフェニルボランと、炭素数4〜20のアルキルアミンまたは環状アミン(ピリジン系化合物)との錯体が有効量で約25%以上の量で含まれた防汚塗料が記載されている。また、該明細書には、トリフェニルボラン・ピリジン錯体に代えて、亜酸化銅を含有するビニル系塗料が記載されている。しかしながら、該明細書には、トリフェニルボラン・アルキルアミン錯体とポリエーテルシリコーンとを併用するとの技術的思想は、何等記載も示唆もされていない。さらに、このUSP3,211,679号に記載の防汚塗料は、トリフェニルボランアミン錯体含有率が25重量%以上になると、防汚塗料組成物の粘稠性が大きくなりすぎ、塗料の取扱いが不便になるとともに乾燥後においても粘着性を有したり、また剥離、脱落しやすいとの問題点もある。
【0015】
また、▲7▼特公昭39-28579号公報には、トリフェニルボラン(但しフェニルはハロまたは低級アルコキシ置換基をp位に有していてもよい)、トリトリルボランまたはトリナフチルボランと、特定のアミン化合物との錯化合物を活性剤として含有する微生物成長抑制用組成物が記載され、微生物として不完全菌、藻類等が挙げられている。
【0016】
▲8▼特開平3-20370号公報には、アクリル樹脂等の皮膜形成性樹脂と、該樹脂100部に対してHLBが3〜12のオキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサン(ポリエーテルシリコーンオイル)1〜50部で含有する防汚塗料が記載されている。
【0017】
しかしながら、上記何れの公報等に記載の防汚剤においても、防汚性または網染め作業性の何れかの点で充分でないとの問題点があった。
そこで本発明者等は上記問題点を解決すべく鋭意研究して、先に、▲9▼特開平9-176576号公報において、親水性親油性バランス(HLB)が2〜7のオキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサン(ポリエーテルシリコーン)(A)とビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート(B)とを(A)100部に対して(B)10〜5000部で含有する水中防汚剤組成物、およびこの水中防汚剤組成物で防汚処理した漁網等を提案し、また
(10)特開平9-176577号公報において、HLBが2〜7のオキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサン(A)と亜酸化銅(B)とを(A)100部に対して(B)10〜5000部で含有する水中防汚剤組成物、およびこの水中防汚剤組成物で防汚処理した漁網等を提案している。これら本願発明者等が提案した水中防汚剤組成物で防汚処理した漁網は、かなりの程度までヒドロムシ等の腔腸動物あるいは海草等の付着を防止できるものであったが、防汚性および網染め作業性の点でさらなる改良の余地があった。
【0018】
このため本願発明者らがさらに鋭意研究を重ねたところ、ポリエーテルシリコーンと、トリフェニルボロン・ロジンアミン錯体またはトリフェニルボロン・アルキルアミン錯体とを含有する漁網用防汚剤によれば、防汚処理して得られる漁網は広範な水棲生物に対して長期継続的に防汚性に優れ、しかも網染め作業性にも優れることなどを見出して本発明を完成するに至った。
【0019】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、適度な防汚剤溶出速度を有し、広範な付着生物に対して優れた防汚性能を長期継続的に発揮でき、しかも網染め作業性にも優れるような非錫系の漁網用防汚剤を提供することを目的としている。
【0020】
本発明は、このような防汚剤にて網染めされ、環境汚染の恐れが少なく長期防汚性に優れた防汚処理された漁網、並びに漁網の防汚方法を提供することを目的としている。
【0021】
【発明の概要】
本発明に係る漁網用防汚剤は、
(a)トリフェニルボロン・ロジンアミン錯体または下記式[I]で表されるトリフェニルボロン・アルキルアミン錯体と、
(b)下記式[II]で表され、その親水性親油性バランス(HLB)が2.0〜7.0であるポリエーテルシリコーンと、
(c)樹脂と、
(d)有機溶剤と
を含有することを特徴としている。
【0022】
【化5】
【0023】
(式[I]中、R1は炭素数3〜30のアルキル基を示す。)
【0024】
【化6】
【0025】
(式[II]中、X1、X2、X3はそれぞれ独立に-R-A-(R3O)n-R4[Rは炭素数1〜5のアルキレン基、Aは単結合または酸素原子、R3は炭素数1〜5のアルキレン基、R4は炭素数1〜5のアルキル基または水素を示し、nは繰返し単位を示す。]、または炭素数1〜5のアルキル基を示し、これらX1、X2、X3のうちの少なくとも1個は-R-A-(R3O)n-R4[R、A、R3、R4、n:同上]であり、R2は炭素数1〜3のアルキル基を示し、r、mはそれぞれ繰返し単位総数を示し、[−Si(R2)2O−]と[−Si(R2)(X1)O−]との結合順序は任意である。)。
【0026】
本発明においては、上記R2は、メチル基であることが好ましい。
本発明においては、さらに、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジンおよび2-ピリジンチオール-1-オキシド金属塩、テトラエチルチウラムジスルフィドのうちの何れか1種以上の有機防汚剤を含有することが好ましい。
【0027】
本発明の漁網用防汚剤には、上記(a)トリフェニルボロン・ロジンアミン錯体またはトリフェニルボロン・アルキルアミン錯体が1〜25重量%の量で、(b)ポリエーテルシリコーンが0.5〜15重量%の量で含有されていることが好ましい。
なお、本発明においては、上記(a)成分としては、トリフェニルボロン・ロジンアミン錯体とトリフェニルボロン・アルキルアミン錯体との両者を含んでいてもよいが、このように両者を含む場合には、それらの合計量で示す。
【0028】
本発明に係る漁網の防汚方法では、好ましくは漁網を上記漁網用防汚剤中に浸漬するなどの方法で、漁網に上記の漁網用防汚剤を塗布することを特徴としている。
【0029】
本発明に係る漁網は、上記の漁網用防汚剤にて網染め処理されている。
本発明によれば、有効成分が有機溶剤可溶性であり、塗布硬化前は適度な粘稠性を有し、例えば、漁網を漁網用防汚剤に浸漬することにより均一に網染めできるなど網染め作業性に優れ、塗布硬化後は、適度な防汚剤溶出速度を有し、広範な漁網付着生物に対して優れた防汚性能を長期継続的に発揮し得るような非錫系の漁網用防汚剤が提供される。
【0030】
本発明に係る漁網の防汚方法によれば、環境汚染を引き起こす恐れもなく、上記防汚剤にて網染めされて長期防汚性に優れた漁網が得られる。
【0031】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る漁網用防汚剤について具体的に説明する。
[漁網用防汚剤]
本発明に係る漁網用防汚剤(塗料組成物、防汚塗料ともいう)は、
(a)トリフェニルボロン・ロジンアミン錯体または下記式[I]で表されるトリフェニルボロン・アルキルアミン錯体と、
(b)下記式[II]で表され、その親水性親油性バランス(HLB)が2.0〜7.0であるポリエーテルシリコーンと、
(c)樹脂と、
(d)有機溶剤と
を含有する塗料組成物である。
<トリフェニルボロン・ロジンアミン錯体またはトリフェニルボロン・アルキルアミン錯体(a)>
(a-1)トリフェニルボロン・ロジンアミン錯体は、トリフェニルボロンとロジンアミンとの錯体であって、該ロジンアミンは、ロジンのアミノ化物であり、アミノ化のベースとなるこのロジン中には、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、ピマル酸、デヒドロアビエチン酸等の樹脂酸が含有されている。ロジン中に含有されるこれらの樹脂酸はそれぞれアミノ化され、アビエチルアミン、ネオアビエチルアミン、ジヒドロアビエチルアミン、テトラヒドロアビエチルアミン等となる。そして例えば、これらのうちのアビエチルアミンと前記トリフェニルボロンとから形成される錯体は、トリフェニルボロン・アビエチルアミン錯体である。
【0032】
本発明におけるトリフェニルボロン・ロジンアミン錯体(a-1)は、トリフェニルボロン・アビエチルアミン錯体、トリフェニルボロン・ネオアビエチルアミン錯体など複数の錯体の混合物であってもよく、何れか1種の錯体単独であってもよい。
【0033】
トリフェニルボロン・アルキルアミン錯体(a-2)は、下記式[I]で表される。
【0034】
【化7】
【0035】
(式[I]中、R1は炭素数3〜30のアルキル基を示す。)
上記トリフェニルボロン・ロジンアミン錯体(a-1)またはトリフェニルボロン・アルキルアミン錯体(a-2)は、該漁網用防汚剤中に合計で1〜25重量%、好ましくは3〜15重量%の量で含まれていることが望ましい。このトリフェニルボロン・アルキルアミン錯体(a-2)の含有率がこのような範囲にあると防汚性および網染め作業性の両方の面から優れている。また該トリフェニルボロン・ロジンアミン錯体(a-1)またはトリフェニルボロン・アルキルアミン錯体(a-2)は、漁網用防汚剤中に含まれる樹脂固形分100重量部に対して、通常、10〜100重量部、好ましくは30〜80重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0036】
このトリフェニルボロン・ロジンアミン錯体(a-1)またはトリフェニルボロン・アルキルアミン錯体(a-2)が該漁網用防汚剤中に上記量で含まれていると、漁網用防汚剤(塗料)は適度な粘稠性を有し取り扱い性に優れ、塗布硬化後には、網染めされた漁網表面にべたつきがなく、漁網に含浸・付着し乾燥した塗料が漁網から脱落しにくい。
【0037】
上記R1としては炭素数3〜30の直鎖状または分岐アルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、n-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、i-ブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、nードデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、nーヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコシル基、n-ヘンエイコシル基、n-ドコシル基、n-トリコシル基、n-テトラコシル基、n-ペンタコシル基、n-ヘキサコシル基、n-ヘプタコシル基、n-オクタコシル基、n-ノナコシル基、n-トリアコンチル基が挙げられ、炭素数5〜25の直鎖状または分岐状アルキル基が好ましく、特に炭素数10〜20の上記直鎖状アルキル基が好ましい。
【0038】
このようなR1を有するトリフェニルボロン・アルキルアミン錯体は、1種または2種以上組合わせて用いることができる。
<ポリエーテルシリコーン(b)>
ポリエーテルシリコーン(b)は、下記式[II]で表され、その親水性親油性バランス(HLB)が2.0〜7.0、好ましくは3.0〜6.5である。このHLBは、エチレンオキシドの量(重量%)を5で割った値(エチレンオキシド量/5)で示され、このHLBが上記2.0〜7.0の範囲にあると防汚性が良好であり、2.0未満では、該防汚剤で網染めした漁網からの防汚剤の溶出量が少なく、水棲生物の付着を有効に防止できず、また7.0を超えると溶出量が多過ぎて長期防汚性に劣る傾向がある。
【0039】
【化8】
【0040】
(式[II]中、X1、X2、X3はそれぞれ独立にポリエーテル基:-R-A-(R3O)n-R4[Rは炭素数1〜5のアルキレン基、Aは単結合または酸素原子、R3は炭素数1〜5のアルキレン基、R4は炭素数1〜5のアルキル基または水素を示し、nは繰返し単位数を示す。]、または炭素数1〜5のアルキル基を示し、これらX1、X2、X3のうちの少なくとも1個は-R-A-(R3O)n-R4[R、A、R3、R4、n:同上]であり、R2は炭素数1〜3のアルキル基を示し、r、mはそれぞれ繰返し単位総数を示し、繰返し単位[−Si(R2)2O−]と[−Si(R2)(X1)O−]との結合順序は任意である。)。
【0041】
このようなポリエーテルシリコーンは、ポリエーテル変性シリコーンとも言われ、
(イ):X1、X2、X3のうちのX1が「-R-A-(C2H4O)n-CH3(R,A,n:同上)」等のポリエーテル基であり、X2、X3がメチル基等のアルキル基である側鎖型ポリエーテルシリコーン、あるいは
(ロ):X1、X2、X3のうちのX1がメチル基等のアルキル基であり、X2、X3が「-R-A-(C2H4O)n-CH3(R,A,n:同上)」等のポリエーテル基である両末端型ポリエーテルシリコーン、さらには、
(ハ):側鎖と片末端、(ニ):側鎖と両末端、あるいは(ホ):片末端のみに上記ポリエーテル基が結合した複合型ポリエーテルシリコーン等が挙げられる。これらのうちでは、側鎖型ポリエーテルシリコーン(イ)または両末端型ポリエーテルシリコーン(ロ)が防汚性等の点から好ましい。
【0042】
上記ポリエーテル基:「-R-A-(R3O)n-R4」中のRは、炭素数1〜5、好ましくは炭素数2〜5のアルキレン基を示すが、このアルキレン基としては、直鎖状または分岐状であってもよく、具体的には、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、i-プロピレン基、n-ブチレン基等が挙げられ、中でも直鎖状のものが好ましく、さらにはエチレン基、n-プロピレン基が好ましく、特にエチレン基が好ましい。
【0043】
R3は炭素数1〜5の同上のアルキレン基を示し、好ましくはエチレン基が挙げられる。繰返し単位数nは1〜30の数である。
R4は炭素数1〜5のアルキル基または水素を示し、好ましくはアルキル基であり、このようなアルキル基としては、上記したようなものが例示でき、防汚性の点、ポリエーテルシリコーン(b)と樹脂(c)との相溶性の点などを考慮するとメチル基が特に好ましい。
【0044】
このようなポリエーテル基としては、例えば、
-C3H6-O-(C2H4O)n-C2H5、-C2H4-O-(C3H6O)n-CH3、-C3H6-O-(C2H4O)n-CH3、-C2H4-O-(C3H6O)n-CH3、-C3H6-(C2H4O)n-CH3、-C2H4-(C3H6O)n-CH3、-C3H6-(C2H4O)n-H、-C2H4-(C3H6O)n-H、-(C3H6O)n-CH3、-CH2-O-(C2H4O)n-CH3、-CH2-O-(C2H4O)n-H、-(C2H4O)n-CH3、-(C2H4O)n-H、-CH2-O-(C4H6O)n-CH3、-CH2-O-(C4H6O)n-H、-(C4H6O)n-H 等が挙げられ、
防汚性の点、ポリエーテルシリコーン(b)と樹脂(c)との相溶性の点などを考慮すると、ポリエーテル基としては、末端がメトキシ基のものが好ましく、より具体的には-C3H6-O-(C2H4O)n-CH3、-C2H4-O-(C3H6O)n-CH3が特に好ましい。
【0045】
上記R2は、炭素数1〜3のアルキル基を示し、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基が挙げられ、複数のR2は互いに同一であっても異なっていてもよいが、何れもメチル基であることが好ましい。また、繰返し単位[−Si(R2)2O−]と繰返し単位[−Si(R2)(X1)O−]との結合順序は任意であり、換言すれば、側鎖のX1がとくに上記ポリエーテル基:「-R-A-(R3O)n-R4」である場合、このX1は、ポリエーテルシリコーン分子中の側鎖基群のうちの任意の位置に存在していてもよい。繰返し単位数rは1〜7000の数であり、またmは1〜50の数である。また、このようなポリエーテルシリコーンの分子量は、通常、1,000〜50,000、好ましくは3,000〜10,000程度である。
【0046】
このようなポリエーテルシリコーンオイル(b)は、1種または2種以上組合わせて用いることができる。
このようなポリエーテルシリコーン(b)は、本発明の漁網用防汚剤中に、通常、0.5〜15重量%、好ましくは1〜8重量%の量で含まれていることが好ましい。また漁網用防汚剤中に含まれる樹脂固形分100重量部に対して、該ポリエーテルシリコーン(b)は、通常、5〜60重量部、好ましくは15〜50重量部の量で含まれていることが望ましい。
<(c)樹脂>
(c)樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリブテン樹脂、シリコーンゴム、ウレタン樹脂(ゴム)、ポリアミド樹脂、塩化ビニル系共重合樹脂、塩化ゴム(樹脂)、塩素化オレフィン樹脂、スチレン・ブタジエン共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、変性ビニル樹脂、アルキッド樹脂、クマロン樹脂、トリアルキルシリルアクリレート(共)重合体(シリル系樹脂)、石油樹脂等の難あるいは非水溶性樹脂(以下、難/非水溶性樹脂ともいう)が挙げられる。
【0047】
このような難/非水溶性樹脂のうちでは、アクリル樹脂、塩化ビニル系共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、変性ビニル樹脂、ポリブテン、クロマン樹脂、スチレン・ブタジエン共重合樹脂が好ましく用いられ、特にアクリル樹脂がポリエーテルシリコーンとの相溶性が良好であり、防汚性、網染め性に優れた漁網用防汚剤が得られる点で好ましい。
【0048】
上記塩化ビニル系共重合樹脂として、さらに具体的には、例えば、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル・ビニルi-ブチルエーテル共重合樹脂、塩化ビニル・プロピオン酸ビニル共重合樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体の塩素化物が挙げられる。
【0049】
本発明においては、これらの樹脂あるいはゴムを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
このような塩化ビニル系共重合樹脂のうちでは、
▲1▼塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニル/酢酸ビニル(重量比)が80〜90/20〜10(合計100重量部)であり、(数)平均分子量が20000〜35000のものが好ましい。
【0050】
▲2▼塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合樹脂としては、塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール(重量比)が80〜90/11〜4/9〜6(合計100重量部)であり、(数)平均分子量が15000〜40000のものが好ましい。
【0051】
▲3▼塩化ビニル・ビニルi-ブチルエーテル共重合樹脂としては、塩化ビニル/ビニルi-ブチルエーテル(重量比)が75〜25/55〜45(合計100重量部)であり、例えば、(数)平均分子量が15000〜20000のものが挙げられる。
【0052】
▲4▼塩化ビニル・プロピオン酸ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニル/プロピオン酸ビニル(重量比)が70〜50/30〜50(合計100重量部)であり、(数)平均分子量が15000〜40000のものが好ましい。
【0053】
上記スチレン・ブタジエン共重合樹脂としては、スチレン/ブタジエン(重量比)が、65〜75/35〜25(合計100重量部)であり、(数)平均分子量が10000〜20000程度のものが用いられる。
【0054】
本発明においては、上記難/非水溶性樹脂と、下記のような水溶性樹脂とを組合わせて用いることができる。
水溶性樹脂としては、ロジン(例:商品名「ロジンWW」)、モノカルボン酸およびその塩が挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、炭素数9〜19程度の脂肪酸、ナフテン酸が挙げられる。モノカルボン酸の塩としては、Cu塩、Zn塩、Ca塩等が挙げられる。これらの水溶性樹脂のうちでは、特にロジンが好ましい。ロジンには、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどがあるが、本発明ではいずれをも使用することができる。これらの水溶性樹脂は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの水溶性樹脂は、防汚剤中に、好ましくは、0.1〜30重量%、さらに好ましくは0.5〜20重量%の量で含有されていることが望ましい。水溶性樹脂の配合割合は、塗膜の防汚性能および耐水性能の観点からこの範囲にあることが望ましい。
【0055】
このような水溶性樹脂と、前記難/非水溶性樹脂との組み合わせのうちでは、(i)塩化ビニル系共重合樹脂と水溶性樹脂との組み合わせ、(ii)スチレン・ブタジエン共重合樹脂と水溶性樹脂との組み合わせが好ましい。
【0056】
なお、このように1種または2種以上の難/非水溶性樹脂と、水溶性樹脂とを組み合わせて用いる場合、水溶性樹脂100重量部に対して、塩化ビニル系共重合樹脂などの難/非水溶性樹脂は、合計で0.1〜99重量部、好ましくは30〜80重量部程度の量で用いることが初期防汚性能を適正な範囲にコントロールでき、しかも長期防汚性能にも優れるため望ましい。
【0057】
このような樹脂(c)は、本発明の漁網用防汚剤中に、通常、3〜40重量%、好ましくは5〜30重量%の量で含まれていることが好ましい。
<(d)有機溶剤>
本発明の漁網用防汚剤では、上記のような各種成分は、有機溶剤に溶解若しくは分散、好ましくは溶解している。ここで使用される溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ケトン系、エステル系、アルコール系、エーテル系など、通常、漁網用防汚剤に配合されるような各種溶剤が用いられる。上記芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン等等が挙げられ、ケトン系溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルイソブチルケトン等が挙げられ、エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられ、アルコール系溶剤としては、例えば、商品名「イプゾール100(出光石油化学(株)製)、溶剤混合物」、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、i-ブタノール等が挙げられる。これらの溶剤のうちでは、臭気、引火点、乾燥性等の点からキシレンが最も好ましい。これらの溶剤は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
【0058】
このような溶剤の量は、通常特に限定されないが、該溶剤は、本発明の漁網用防汚剤100重量部中に、通常、40〜80重量部、好ましくは50〜75重量部の量で含まれることが多い。
【0059】
このような(a-1)トリフェニルボロン・ロジンアミン錯体または(a-2)トリフェニルボロン・アルキルアミン錯体と、(b)ポリエーテルシリコーンと、(c)樹脂と、(d)有機溶剤とを含有する本発明の漁網用防汚剤は、含有成分が溶剤可溶性であるため、均一処理性(例えば、漁網を均一に網染め処理できること)および作業性に優れ、塗布硬化後は、適度な防汚剤溶出速度を有し、広範な漁網付着生物に対して優れた防汚性能を長期継続的に発揮できる。
<(e)有機防汚剤>
本発明に係る上記漁網用防汚剤には、上記(a)トリフェニルボロン・ロジンアミン錯体またはトリフェニルボロン・アルキルアミン錯体、(b)ポリエーテルシリコーン、(c)樹脂および(d)有機溶剤に加えて、
さらに、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジン、2-ピリジンチオール-1-オキシド金属塩、テトラエチルチウラムジスルフィド等の有機防汚剤(e)が含まれていてもよい。
【0060】
これらの有機防汚剤(e)うちでは、4,5-ジクロロ-2-n-オクチルー4ーイソチアゾリン-3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジンおよび2-ピリジンチオールー1ーオキシド金属塩、テトラエチルチウラムジスルフィドのうちから選択される少なくとも1種の有機防汚剤が含有されていることが望ましい。
【0061】
2-ピリジンチオールー1ーオキシド金属塩としては、2-ピリジンチオール-1-オキシド亜鉛塩、2-ピリジンチオール-1-オキシド銅塩が望ましい。
このような有機防汚剤(e)を含む漁網用防汚剤においては、それぞれ上記量のトリフェニルボロン・ロジンアミン錯体またはトリフェニルボロン・アルキルアミン錯体(a)、ポリエーテルシリコーン(b)、樹脂(c)、有機溶媒(d)に加えて上記(e)有機防汚剤が通常、0.5〜10重量%、好ましくは1〜10重量%の量で含まれていることが望ましい。また漁網用防汚剤中に含まれる樹脂固形分100重量部に対して、該有機防汚剤(e)は、通常、3〜50重量部、好ましくは5〜30重量部の量で含まれていることが望ましい。このような量で、有機防汚剤(e)が漁網用防汚剤中に含まれていると、適度な防汚剤溶出速度を有し、広範な漁網付着生物に対していっそう優れた防汚性能を長期継続的に発揮できる傾向がある。なお、上記量すなわち防汚剤中に10重量%を超えて、あるいは樹脂固形分100重量部に対して50重量部を超える量で漁網用防汚剤中に(e)有機防汚剤が含有されていると、これら(e)有機防汚剤の溶剤への溶解性が低下し所望の物性の漁網用防汚剤が得られず、また網染めした漁網に粘着性が生ずる傾向がある。
<任意成分>
このような本発明に係る漁網用防汚剤は、上記トリフェニルボロン・ロジンアミン錯体またはトリフェニルボロン・アルキルアミン錯体(a)、ポリエーテルシリコーン(b)、樹脂(c)に加えて、さらには上記有機化合物(d)が含まれていてもよく、また以下に述べるような脱水剤、可塑剤、タレ止め・沈降防止剤、安定剤、顔料など、通常漁網用防汚剤に配合されるような各種成分が含まれていてもよい。
【0062】
脱水剤が含有されたこのような防汚剤では、貯蔵安定性を一層向上させることができ、このような脱水剤としては、無水石膏(CaSO4)、合成ゼオライト系吸着剤(商品名:モレキュラーシーブ等)、オルソギ酸メチル、オルソ酢酸メチル等のオルソエステル類、オルソほう酸エステル、シリケート類やイソシアネート類(商品名:アディティブTI)等が挙げられ、無水石膏、モレキュラーシーブが好ましく、特にモレキュラーシーブが好ましく用いられる。このような脱水剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0063】
このような脱水剤は、本発明の漁網用防汚剤中に、通常、0.1〜10重量%程度の量で含まれていてもよく、例えば、合成ゼオライトでは、0.2〜5重量%程度の量で含まれていてもよい。
【0064】
可塑剤としては、TCP(トリクレジルフォスフェート)、塩化パラフィン、ポリビニルエチルエーテルなどが使用できる。このような可塑剤は、この防汚剤中に、例えば、0〜2重量%程度の量で配合される。
【0065】
タレ止め・沈降防止剤としては、有機粘土などのような防汚剤の貯蔵安定性を害するもの以外は、任意量で配合されていてもよい。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、有機粘度系Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの塩類、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス系、ポリアマイドワックス系および両者の混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等が挙げられ、好ましくは、ポリアマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス、有機粘度系が用いられる。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、楠本化成(株)製の「ディスパロン305」、「ディスパロン4200-20」等の他、「ディスパロンA630-20X」等の商品名で上市されているものが挙げられる。
【0066】
このようなタレ止め・沈降防止剤は、この防汚剤中に、例えば、2〜10重量%の量で配合される。
安定剤としては、(低分子エポキシ樹脂,商品名「EP828」)等が挙げられる。
【0067】
顔料としては、従来公知の有機系、無機系の各種顔料を用いることができる。
有機系顔料としては、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、紺青等が挙げられる。無機系顔料としては、例えば、チタン白、ベンガラ、バライト粉、白亜、酸化鉄粉等のように中性で非反応性のもの;亜鉛華(ZnO)、鉛白、鉛丹、亜鉛末、亜酸化鉛粉等のように塩基性で漁網用防汚剤中の酸性物質と反応性のもの(活性顔料)等が挙げられる。なお、染料等の各種着色剤も含まれていてもよい。このような各種顔料は、防汚剤中に、例えば、合計で5〜35重量%程度の量で配合される。特に、活性顔料とそれ以外の顔料とを併用する場合には、活性顔料は、防汚剤中に、例えば、3〜8重量%の量で、またそれ以外の上記顔料は、4〜25重量%程度の量で配合してもよい。
本発明の漁網用防汚剤では、上記のような各種成分は、溶剤に溶解若しくは分散している。
【0068】
上記のような漁網用防汚剤(防汚剤、防汚塗料組成物)は、漁網の網染めに好ましく使用される。漁網の網染めを行うには、常法に従えばよく、例えば、漁網用防汚剤の中に漁網を浸漬して漁網の繊維内あるいは繊維間に漁網用防汚剤を浸透含浸させた後、漁網を引き上げ乾燥させればよい。なお、敷延あるいは広げて吊るした漁網の表裏面に漁網用防汚剤を静電塗装の方法で、あるいはエアガン、エアレス塗装等の方法で散布してもよい。このように網染めし乾燥した後の漁網の重量増加は、漁網1kg当たり、通常80〜200g程度である。
【0069】
上記のような漁網用防汚剤は、上記のように主に漁網の防汚処理に好適に使用されるが、例えば、火力・原子力発電所の給排水口等の水中構造物、湾岸道路、海底トンネル、港湾設備、運河・水路等のような各種海洋土木工事の汚泥拡散防止膜、船舶、漁業資材(例:ロープ、漁網、浮き子、ブイ)などの各種成形体の表面に常法に従って1回〜複数回塗布してもよく、このようにすれば防汚性に優れ、防汚剤成分が長期間に亘って徐放可能であり、厚塗りしても適度の可撓性を有し耐クラック性に優れた防汚塗膜被覆船舶または水中構造物などが得られる。
【0070】
このような本発明に係る防汚剤を漁網をはじめ、各種成形体の表面に塗布硬化してなる防汚塗膜は、アオサ、フジツボ、アオノリ、セルプラ、カキ、フサコケムシ等の水棲生物の付着を長期間継続的に防止できるなど防汚性に優れている。
【0071】
このような漁網用防汚剤は、漁網の材質が、ポリエチレン、ナイロン、麻、金属、ポリエステルなどである場合に良好に含浸付着する。また、該防汚剤は、既存の防汚処理漁網表面に含浸付着させてもよい。
【0072】
このように漁網用防汚剤を漁網等に塗布すれば、水棲生物の付着を阻止でき漁網の網目の閉塞を防止でき、しかも環境汚染の恐れが少ない。
なお、この本発明に係る防汚剤は、直接漁網に含浸塗布してもよく、また予めプライマーなどの下地材が塗布された漁網等の表面に塗布してもよい。さらには、既に従来の漁網用防汚剤による防汚処理が行われ、あるいは本発明の防汚剤処理が行われている漁網の表面に、補修用として本発明の防汚剤による塗布処理を施してもよい。
【0073】
上記のようにして得られる本発明に係る防汚処理漁網は、環境汚染の虞が少なく広汎な漁網付着生物に対して長期防汚性に優れている。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、網染め作業性に優れ、塗布硬化後すなわち網染め作業後は、適度な防汚剤溶出速度を有し、広範な漁網付着生物に対して優れた防汚性能を長期継続的に発揮し得るような非錫系の漁網用防汚剤が提供される。
【0075】
本発明に係る漁網の防汚方法では、環境汚染の恐れが少ない。
【0076】
【実施例】
以下、本発明について実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何等限定されるものではない。
【0077】
なお、以下の実施例、比較例で使用した各配合成分およびその組成、物性、製造販売元等は、下記の通り。
(イ)「アクリル樹脂」
ブチルアクリレート・メチルメタクリレート共重合体(共重合重量比:ブチルアクリレート/メチルメタクリレート=53/47)、Tg:0℃、50%キシレン液。
(ロ)「シリコーンオイルKF6016」
信越化学(株)製、側鎖型ポリエーテルシリコーンオイル、HLB値=4.5。
【0078】
前記式[II]中、R2,X2,X3=CH3、X1=「-C3H6-O-(C2H4O)n-CH3」、屈折率=1.417(nD25)、粘度=150cs(25℃)。
(ハ)「シリコーンオイルFZ-2154」
日本ユニカー(株)製、両末端型ポリエーテルシリコーンオイル、HLB値=6.0。前記式[II]中のX1,R2=CH3、X2,X3=「-R-O-(C2H4O)R4」、粘度=110cs。
(ニ)「シリコーンオイルKF6013」
信越化学(株)製、側鎖型ポリエーテルシリコーンオイル、HLB値=10.0、前記式[II]中のX1=「-C3H6-(C2H4O)n-R4」、R2,X2,X3=CH3、屈折率=1.436、粘度=400cs。
(ホ)「シリコーンオイルTSF451-100」
東芝シリコーン(株)製、ジメチルポリシロキサンオイル、HLB値=0。
(ヘ)「シリコーンオイルTSF4446」
東芝シリコーン(株)製、側鎖型ポリエーテルシリコーンオイル、HLB値=4.8、前記式[II]中のX1=「-C3H6-(C2H4O)n-H」、R2,X2,X3=CH3、屈折率=1.424、粘度=1400cs。
(ト)「ポリブテンLV-50」
日本石油化学(株)製、分子量=430、粘度=103cs(40℃)。
【0079】
【実施例A】
<調製法>
表1に示す配合組成の漁網用防汚剤を常法に従って調製した。
【0080】
すなわちトリフェニルボランオクタデシルアミン12重量部と、アクリル樹脂26重量部と、側鎖型ポリエーテルシリコーンオイル(商品名:シリコーンオイルKF6016、信越化学(株)製、HLB:4.5)を5重量部と、キシレン57重量部とを混合して漁網用防汚剤(合計100重量部)を調製した。
<試験法>
上記の方法で調製した漁網用防汚剤に、ポリエチレン製無結節網(7節、400デニール/50本)を浸漬して、該網に上記漁網用防汚剤を塗布した後で風乾した。このような網染め処理により、漁網重量増加は、100g/漁網1kgとなった。ついで、得られた防汚剤塗設漁網を、平成8年11月10日より平成9年4月10日までの間、及び平成9年4月10日より同年9月10日までの間の各5ヶ月間、計2回に亘り高知県宿毛湾の海中に浸漬し、生物の付着状況を調査した。
【0081】
なお、漁網の海中への浸漬方法は、以下のとおり。
(イ)漁網寸法:縦40cm×幅80cm、
【0082】
(ハ)張設方法:漁網と同一寸法の鉄枠に上記漁網を張設。
また、漁網の網染め作業性についても調査した。
結果を表2に示す。
【0083】
【実施例B〜F、比較例G〜L】
実施例Aにおいて、配合組成をそれぞれ表1に示すように変えた以外は、実施例Aと同様にして、漁網用防汚剤を調製した。
【0084】
得られた漁網用防汚剤を実施例Aと同様の方法で、漁網(ポリエチレン製無結節網)に塗設し、水棲生物の付着状況を調査した。
また、漁網の網染め作業性についても調査した。
【0085】
結果を表2に示す。
<付着生物>
なお、表2中で、11月10日〜4月10日の間、防汚処理した漁網を海中に浸漬した際の漁網付着生物の種類は、ヒドロゾアがほとんどであり、その他フジツボ、セルプラ、アオノリが付着していた。
【0086】
また、4月10日〜9月10日の間、防汚処理した漁網を海中に浸漬した際の漁網付着生物の種類は、赤フジツボ、シロウスホヤ、セルプラであった。
<防汚性評価基準>
0:水棲生物の付着なし(水棲生物の付着面積が5%未満)。
【0087】
1:水棲生物の付着面積が5%以上〜10%未満。
2:水棲生物の付着面積が10%以上〜20%未満。
3:水棲生物の付着面積が20%以上〜40%未満。
【0088】
4:水棲生物の付着面積が40%以上〜80%未満。
5:水棲生物の付着面積が80%以上。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
上記表2によれば、実施例A〜Fに示すように、トリフェニルボロン・ロジンアミン錯体またはトリフェニルボロン・アルキルアミン錯体(a)、ポリエーテルシリコーン(b)、樹脂成分(c)、有機溶剤(d)に加えて、さらに4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、テトラエチルチウラムジスルフィド等の有機防汚剤(e)を含有する本発明の漁網用防汚剤は、あらゆる水棲生物に対して防汚性に優れ、しかも長期間この防汚性が持続し、また網染め作業性にも優れることが解る。
【0092】
これに対して、比較例Gに示すように、本発明の溶出調整剤(可塑剤、撥水剤)のポリエーテルシリコーン(b)に代えて、可塑剤としてターシャリノニルペンタスルフィドを配合し、あるいは比較例Iに示すように、HLB値:0のシリコーンオイルおよび「ポリブテンLV50」を配合しても、防汚性に劣ることが解る。
【0093】
また、比較例Hに示すように、ポリエーテルシリコーンを用いても、そのHLB値:7.0を超えたHLB:10では、長期防汚性、すなわち初期の優れた防汚性がそのまま長期間持続する性質に乏しいことが解る。
【0094】
また、比較例J,K,Lに示されるように、トリフェニルボロン・ロジンアミン錯体またはトリフェニルボロン・アルキルアミン錯体[I]以外の従来の防汚剤が配合された漁網用防汚剤では、対象となる水棲生物に選択性があり、すなわち一部の水棲生物には有効でも広範な水棲生物のすべてに防汚効果が十分というわけではなく、また、比較例K,Lに示すように、防汚剤成分のトリフェニルボロン・アルキルピリジン錯体は、キシレンに不溶であり、防汚剤中で該トリフェニルボロン・アルキルピリジン錯体の沈澱が生ずるため、網染め時には充分な攪拌が必要であり、作業性に劣ることが解る。
Claims (6)
- (a)トリフェニルボロン・ロジンアミン錯体または下記式[I]で表されるトリフェニルボロン・アルキルアミン錯体と、
(b)下記式[II]で表され、その親水性親油性バランス(HLB)が2.0〜7.0であるポリエーテルシリコーンと、
(c)樹脂と、
(d)有機溶剤と
を含有することを特徴とする漁網用防汚剤:
- 上記R2がメチル基である請求項1に記載の漁網用防汚剤。
- さらに、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジン、2-ピリジンチオール-1-オキシド金属塩、テトラエチルチウラムジスルフィドのうちの何れか1種以上の有機防汚剤を含有することを特徴とする請求項1〜2の何れかに記載の漁網用防汚剤。
- 上記(a)トリフェニルボロン・ロジンアミン錯体またはトリフェニルボロン・アルキルアミン錯体が1〜25重量%の量で、(b)ポリエーテルシリコーンが0.5〜15重量%の量で含有されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の漁網用防汚剤。
- 漁網に、上記請求項1〜4の何れかに記載の漁網用防汚剤を塗布することを特徴とする漁網の防汚方法。
- 請求項1〜4のうちの何れかの漁網用防汚剤にて網染め処理された漁網。
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