JP6967858B2 - 防汚塗料組成物、その塗膜、防汚塗膜付き基材、漁網、基材の防汚方法および防汚塗膜付き基材の製造方法 - Google Patents
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Description
さらに、火力、原子力発電所等の海水の給排水管に水棲生物が付着、繁殖すると冷却水の給排水循環に支障をきたすことがある。
防汚剤(A)とシリコーンオイル(B)と塗膜形成樹脂(C)とを含有し、
前記防汚剤(A)がビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート(a1)を含有し、かつジフェニルメチルボラン・4−イソプロピルピリジンおよび/またはトリフェニルボラン・n−オクタデシルアミン(a2)を含有する
防汚塗料組成物。
[2]
前記シリコーンオイル(B)がポリエーテル変性シリコーンオイルである前記[1]に記載の防汚塗料組成物。
[3]
前記塗膜形成樹脂(C)がアクリル樹脂である前記[1]または[2]に記載の防汚塗料組成物。
[4]
さらに、ポリオレフィン、ポリスルフィド、流動パラフィン、ワックス、およびワセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種の可塑性樹脂(D)を含む前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
[5]
前記防汚剤(A)が防汚剤(a3)を含み、前記防汚剤(a3)が、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−1,3,5−トリアジン、テトラエチルチウラムジスルフィド、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、銅ピリチオン、ジンクピリチオン、2,3−ジクロロ−N−(2',6'−ジエチルフェニル)マレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2'−エチル−6'−メチルフェニル)マレイミド、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル、クロロメチル−n−オクチルジスルフィド、ジンクジメチルジチオカーバメート、マンガン−2−エチレンビスジチオカーバメート、およびジンクエチレンビスジチオカーバメートからなる群から選ばれた少なくとも1種である前記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
[6]
前記ポリエーテル変性シリコーンオイルのHLBが0.5〜10である前記[2]に記載の防汚塗料組成物。
[7]
ジフェニルメチルボラン・4−イソプロピルピリジンおよびトリフェニルボラン・n−オクタデシルアミンの合計の含有量が、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート(a1)100質量部に対し、3〜200質量部である前記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
[8]
漁具の塗装に使用される、前記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。[9]
前記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物から形成された防汚塗膜。[10]
基材と、前記基材の表面に設けられた前記[9]に記載の防汚塗膜とを有する防汚塗膜付き基材。
[11]
前記基材が漁具、船舶または水中構造物である前記[10]に記載の防汚塗膜付き基材。
[12]
前記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物で網染めされた漁網。
[13]
前記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物を基材に塗布するかまたは含浸させ、次いで硬化させる、基材の防汚方法。
[14]
基材の表面に、前記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物を塗布するかまたは含浸させる工程と、前記工程により前記基材に塗布されたまたは含浸された前記防汚塗料組成物を硬化させる工程とを備える防汚塗膜付き基材の製造方法。
このような防汚塗料組成物を用いれば、長期間に亘り防汚効果の優れた防汚塗膜を漁具、船舶、水中構造物などの表面に、特に好適な場合として漁網の表面に形成することができる。
なお、「(メタ)アクリル((meth)acryl)」は、アクリル(acryl)およびメタクリル(methacryl)を総称する語句である。
本発明の防汚塗料組成物は、防汚剤(A)と、シリコーンオイル(B)と、塗膜形成樹脂(C)とを含有し、前記防汚剤(A)は、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート(a1)(以下、「防汚剤(a1)」ともいう。)および、ジフェニルメチルボラン・4−イソプロピルピリジンおよび/またはトリフェニルボラン・n−オクタデシルアミン(a2)(以下、「防汚剤(a2)」ともいう。)を含有しており、目的に応じて、任意成分をさらに含んでいてもよい。
本発明の防汚塗料組成物に含有される、防汚剤(A)は、防汚剤(a1)と防汚剤(a2)とを含有しており、前記防汚剤(a1)は、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメートであり、前記防汚剤(a2)は、ジフェニルメチルボラン・4−イソプロピルピリジンおよび/またはトリフェニルボラン・n−オクタデシルアミンである。かかる防汚剤の組み合わせによれば、従来知られていた防汚剤の単独使用および組み合わせ使用と比較して、広範な水棲生物に対して長期的に優れた防汚効果が発揮される。
また、防汚剤(A)は、前記防汚剤(a1)および前記防汚剤(a2)以外に後述する他の防汚剤(a3)をさらに含有してもよい。
ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート(a1)は下記一般式[I]で表される化合物である。
ジフェニルメチルボラン・4−イソプロピルピリジン(以下、(a21)成分ともいう)は下記一般式[II]で表される化合物である。
本発明に係る防汚塗料組成物に含まれる前記防汚剤(a2)の含有量((a21)成分および(a22)成分の合計の含有量)は、防汚塗料組成物(固形分)100質量%中に、好ましくは0.5〜87.5質量%、さらに好ましくは1〜73質量%、特に好ましくは2〜40質量%である。前記防汚剤(a2)の含有量がこの範囲にあることで、本発明の防汚塗料組成物から得られる防汚塗膜は、二枚貝等の貝類への防汚性に優れる。また、前記防汚剤(a2)の含有量は、前記防汚剤(a1)100質量部に対し、3〜200質量部、さらに好ましくは6〜80質量部であると、より防汚性に優れる。
本発明で用いられるシリコーンオイル(B)は下記一般式[IV]で表される化合物である。
−R2−A−(R3O)q−(R4O)r−R5 ・・・[IVa]で表される。
R2、R3およびR4は、それぞれ独立に炭素数1〜5の2価の炭化水素基、好ましくは2価の飽和炭化水素基、より好ましくは炭素数2〜5のアルキレン基を示す。このアルキレン基は、直鎖状または分岐状であってもよく、好ましくは直鎖状である。アルキレン基としては、たとえばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基およびテトラメチレン基が挙げられ、エチレン基およびトリメチレン基が好ましい。
R2は好ましくはエチレン基またはトリメチレン基であり、R3は好ましくはエチレン基であり、R4は好ましくはトリメチレン基である。
R5は炭素数1〜5のアルキル基または水素原子を示し、好ましくはアルキル基である。このアルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基およびペンチル基が挙げられる。
防汚性、またはシリコーンオイル(B)と後述する塗膜形成樹脂(C)との相溶性などを考慮すると、前記ポリエーテル基としては、好ましくは、-C3H6-O-(C2H4O)q-C2H5、-C2H4-O-(C3H6O)q-CH3、-C3H6-O-(C2H4O)q-CH3、-C2H4-O-(C3H6O)q-H、-C3H6-(C2H4O)q-CH3、-C2H4-(C3H6O)q-CH3、-C3H6-(C2H4O)q-H、-C2H4-(C3H6O)q-H、-C3H6-O-(C3H6O)q-CH3、-CH2-O-(C2H4O)q-CH3、-CH2-O-(C2H4O)q-H、-C2H4-O-(C2H4O)q-CH3、-C2H4-O-(C2H4O)q-H、-CH2-O-(C3H6O)q-CH3、-CH2-O-(C3H6O)q-H、-CH2-O-(C4H8O)q-CH3、-CH2-O-(C4H8O)q-H、-C3H6-O-(C3H6O)q-H、-C4H8-O-(C4H8O)q-H、-C3H6-O-(C2H4O)q-(C3H6O)r-CH3、-C3H6-O-(C2H4O)q-(C3H6O)r-H、-C3H6-O-(C3H6O)q-(C2H4O)r-CH3、および-C3H6-O-(C3H6O)q-(C2H4O)r-Hが挙げられる。これらの化学式において、C2H4は(CH2)2(エチレン基)であり、C3H6は(CH2)3(トリメチレン基)またはCH(CH3)CH2(プロピレン基)であり、好ましくは(CH2)3である。
前記シリコーンオイル(B)は、ジメチルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル及び変性シリコーンオイル等が挙げられる。
(a):前記式[IV]において、X1が前記式[IVa]で表されるポリエーテル基であり、X2およびX3がメチル基等のアルキル基であり、mが1以上の整数である側鎖型ポリエーテル変性シリコーン、
(b):前記式[IV]において、X1がメチル基等のアルキル基であり、X2およびX3が前記式[IVa]で表されるポリエーテル基である両末端型ポリエーテル変性シリコーン、
(c):前記式[IV]において、X1ならびにX2およびX3の一方が前記式[IVa]で表されるポリエーテル基であり、X2およびX3の一方が炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基であり、mが1以上の整数であるポリエーテル変性シリコーンオイル、
(d):前記式[IV]において、X1、X2およびX3が前記式[IVa]で表されるポリエーテル基であり、mが1以上の整数であるポリエーテル変性シリコーンオイル、
(e):前記式[IV]において、X2およびX3の一方が前記式[IVa]で表されるポリエーテル基であり、X1ならびにX2およびX3の一方が炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基であるポリエーテル変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらの中では、側鎖型ポリエーテル変性シリコーン(a)または両末端型ポリエーテル変性シリコーン(b)が防汚性等の点から好ましい。
前記ポリエーテル変性シリコーンオイルは、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明で用いられる塗膜形成樹脂(C)としては、公知の防汚塗料組成物、特に漁網用防汚塗料組成物に配合されている塗膜形成性樹脂を用いることができる。たとえば、(メタ)アクリル酸金属塩共重合体、ポリエステル金属塩共重合体、シリルエステル含有共重合体、ポリシロキサンブロック含有金属塩共重合体、硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−ビニルイソブチルエーテル共重合体、塩化ゴム系樹脂、アクリル樹脂(前記(メタ)アクリル酸金属塩共重合体、前記シリルエステル含有共重合体、前記ポリシロキサンブロック含有金属塩共重合体、および前記硫黄含有オルガノポリシロキサンブロックビニル共重合体を除く。)、スチレン−ブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂(前記ポリエステル金属塩共重合体を除く。)、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、合成ゴム、石油系樹脂、ロジンエステル系樹脂、ロジン系石鹸、およびロジン等が挙げられ、これらの塗膜形成樹脂は、いずれか1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、本発明の防汚塗料組成物を漁網に塗布する場合は、柔軟性および防汚性の点からアクリル樹脂が好ましい。
(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ラウリルエステル、(メタ)アクリル酸トリデシルエステル、(メタ)アクリル酸ステアリルエステル、(メタ)アクリル酸アリルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、(メタ)アクリル酸メトキシエステル、(メタ)アクリル酸エトキシエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルエステルなどが挙げられ、これらは1種単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いてもよい。(メタ)アクリル酸系エステルと共重合し得る不飽和単量体としては、たとえば、
(メタ)アクリル酸などのモノカルボン酸類;
イタコン酸、マレイン酸、コハク酸等のジカルボン酸類またはこれらのハーフエステル(モノエステル)もしくはジエステル;
スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン類;および
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類
が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いて(メタ)アクリル酸系エステルと共重合させてもよい。
本発明の防汚塗料組成物は、可塑性樹脂(D)(但し、塗膜形成樹脂(C)に用いられる樹脂を除く。)を含んでいてもよい。前記可塑性樹脂(D)としては、たとえばポリオレフィン、ポリスルフィド、流動パラフィン、ワックス、およびワセリンが挙げられる。可塑性樹脂(D)を添加することにより、防汚塗膜の防汚性を向上させるとともに、さらに防汚剤(A)の溶出を調整し長期に亘る防汚効果を発揮することができる。
式;R -(S)q- R ・・・[V]
で表わされるジアルキルポリスルフィドである。式[V]中、2つのRは、それぞれ独立に炭素数1〜20個のアルキル基を表す。qは2以上の整数であり、2〜10の整数であることが防汚性の面から好ましい。
このような可塑性樹脂(D)のうちでは、ポリブテンおよびポリスルフィドが防汚効果向上の面から好ましい。
本発明の防汚塗料組成物における可塑性樹脂(D)の含有量は、防汚塗料組成物(固形分)100質量%中に、好ましくは0.5〜30質量%、さらに好ましくは2〜20質量%である。可塑性樹脂(D)の含有量がこの範囲にあることで、本発明の防汚塗料組成物から形成される防汚塗膜、および本発明の組成物で網染めされた漁網等は、柔軟性に優れる。
本発明の防汚塗料組成物は、防汚剤(A)としてさらに、他の防汚剤(a3)((a1)および(a2)を除く。)を含有してもよい。
本発明の防汚塗料組成物における他の防汚剤(a3)の含有量は、防汚塗料組成物(固形分)100質量%中に、好ましくは2〜50質量%、さらに好ましくは3〜30質量%である。他の防汚剤(a3)の含有量がこの範囲にあることで、本発明の防汚塗料組成物から得られる防汚塗膜は、防汚性および造膜性に優れる。
また、前記防汚剤(a3)は、防汚剤(A)中に、0〜30質量%含有されていることが好ましい。
本発明の防汚塗料組成物は溶剤(E)を含んでいてもよい。溶剤(E)としては、防汚塗料組成物、特に漁網用防汚塗料組成物に従来配合されてきた、防汚剤などの各種成分を容易に分散することのできる、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤等の有機溶剤を用いることができる。
前記芳香族炭化水素系溶剤としては、たとえば、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、プロピルベンゼンが挙げられる。
前記アルコール系溶剤としては、たとえば、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノールが挙げられる。
前記エーテル系溶剤としては、たとえばプロピレングリコールモノメチルエーテル、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMAC)が挙げられる。
これらの溶剤の中では、溶解力、引火点、蒸発速度、臭気の点から、キシレンが好ましい。
本発明の防汚塗料組成物における溶剤(E)の配合量は、防汚塗料組成物の量を100質量%とすると、通常、20〜80質量%、好ましくは、30〜70質量%の量であることが多い。
本発明の防汚塗料組成物は、上記のような成分を含有してなるが、脱水剤、揺変剤(沈降防止剤・たれ止剤)、界面活性剤、増粘剤、安定剤、顔料、消泡剤などのその他の成分(F)を含んでいてもよい。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
揺変剤としては例えば、酸化ポリエチレンワックス、脂肪酸アマイドワックス、およびベントン等が挙げられる。
本発明の防汚塗料組成物は、それぞれ所定の量の前記各成分を、一般的な装置および手法を用いて混合・撹拌することにより製造できる。
また、本発明の防汚塗料組成物は、貯蔵安定性が優れているため、長期間保存することが可能である。さらに、長期保存後の防汚塗料組成物は製造時と変わらない安定した塗膜を形成することができる。
本発明に係る防汚塗膜は、本発明の防汚塗料組成物から形成されたことを特徴としている。
本発明の防汚塗料組成物は、たとえば、火力、原子力発電所の給排水口等の水中構造物、湾岸道路、海底トンネル、港湾設備、運河、水路等のような各種海洋土木工事の汚泥拡散防止膜、船舶(例:船底部)、漁具(例:ロープ、漁網、浮き子、ブイ)などの海水または真水と接触する各種基材の表面の防汚に使用できる。具体的には、本発明の防汚塗料組成物を基材の表面に常法に従って1回〜複数回塗布し、または含浸させ、次いで乾燥させるなどして硬化させることにより、防汚性に優れ、防汚剤成分が長期間に亘って徐放可能であり、厚塗りしても適度の可撓性を有し耐クラック性に優れた防汚塗膜が形成される。
このように網染めによる漁網の重量増加は、漁網1kg当たり、通常80〜300g程度である。本発明の組成物で網染めされた漁網は、その繊維内または繊維間に本発明の防汚塗料組成物の固形分を有しており、さらにその表面に本発明の防汚塗膜を有していてもよい。
また、以下の実施例において、「部」とは、特にその趣旨に反しない限り、「質量部」の意味である。
<塗膜形成樹脂の重量平均分子量(Mw)>
塗膜形成樹脂であるアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)を下記条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法を用いて測定した。
装置 :「HLC−8120GPC」(東ソー(株)製)
カラム:「TSKgel SuperH2000」及び「TSKgel SuperH4000」を連結(いずれも、東ソー(株)製、6mm(内径)×15cm(長さ))
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速 :0.500ml/min
検出器:RI
カラム恒温槽温度:40℃
標準物質 :ポリスチレン
サンプル調製法:各製造例で調製された樹脂溶液に少量の塩化カルシウムを加えて脱水した後、メンブレムフィルターで濾過して得られた濾物をGPC測定サンプルとした。
前記アクリル樹脂溶液の25℃における粘度は、E型粘度計(トキメック社製「VISCONIC EMD」)により測定した。
攪拌機、還流冷却機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、キシレンを67.5質量部、仕込んで、窒素ガス雰囲気下90℃まで昇温した。ここにメタクリル酸メチルを28質量部、アクリル酸ブチルを40質量部、およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを0.6質量部、3時間かけて滴下後、攪拌を続けながら2時間、90℃で保持した。その後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを0.03質量部、1時間おきに4回加えた後、105℃まで昇温し30分間撹拌を行い、アクリル樹脂溶液1を得た。得られたアクリル樹脂溶液1溶液の外観は透明、NV(105℃熱風乾燥機中3時間乾燥後の加熱残分)は49.3%、粘度は420mPa・sとなり、重量平均分子量(Mw)は、35,200であった。
攪拌機、還流冷却機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、キシレンを100質量部、仕込み、100℃に保持した。次いで、このフラスコ内に、メタクリル酸メチルを55質量部、アクリル酸ブチルを45質量部、および2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を5質量部、含む混合液を3時間かけて滴下した。滴下後、攪拌を続けながら4時間、100℃で保持し、アクリル樹脂溶液2を得た。得られたアクリル樹脂溶液2の外観は透明、NV(105℃熱風乾燥機中3時間乾燥後の加熱残分)50.2%、粘度は80mPa・s、重量平均分子量(Mw)は9,400であった。
攪拌機、還流冷却機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、キシレンを39.5質量部、仕込んで、窒素ガス雰囲気下85℃まで昇温した。次いで、このフラスコ内に、メタクリル酸メチルを25質量部、アクリル酸ブチルを28質量部、メタクリル酸ラウリル/メタクリル酸トリデシル混合物(質量比40:60)を5質量部、およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを0.1質量部、2時間かけて滴下後、攪拌を続けながら2時間、90℃で保持した。その後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを0.03質量部、1時間おきに3回加え、更に撹拌を続けながらt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを0.04質量部、30分おきに2回加えた。その後105℃まで昇温し30分間撹拌を行った後、キシレンを18g加えてアクリル樹脂溶液3を得た。得られたアクリル樹脂溶液3の外観は透明、NV(105℃熱風乾燥機中3時間乾燥後の加熱残分)は50.2%、粘度は7,140mPa・s、重量平均分子量(Mw)は、116,500であった。
[実施例1]
ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメートを15質量部、ジフェニルメチルボラン・4−イソプロピルピリジンを1質量部、シリコーンオイル「KF−6016」を2質量部、アクリル樹脂溶液1を25質量部、「日石ポリブテンLV−50」を5質量部、酸化ポリエチレンワックス「ディスパロン4200−20」を1質量部、アマイドワックス「ディスパロン6900−20X」を1質量部、およびキシレン・エチルベンゼン混合溶剤を50質量部混合して、防汚塗料組成物を調製した。
実施例1で使用された防汚剤、シリコーンオイル、樹脂、その他添加剤および溶剤を、表1〜3に示されるように変更したことを除いては、実施例1と同様にして、防汚塗料組成物を調製した。
(1)アクリル樹脂溶液1:アクリル樹脂のキシレン溶液(固形分約50%)
(2)アクリル樹脂溶液2:低分子量アクリル樹脂のキシレン溶液(固形分約50%)
(3)アクリル樹脂溶液3:長鎖アルキル基含有アクリル樹脂のキシレン溶液(固形分約50%)
(4)「KF−6016」:信越化学工業(株)製,ポリエーテル変性シリコーンオイル HLB=4.5
(5)「KF−945」:信越化学工業(株)製、ポリエーテル変性シリコーンオイル(EO/PO型) HLB=4.0
(6)「ST114PA」:信越化学工業(株)製,ポリエーテル変性シリコーンオイル HLB=5.6
(7)「X−22−6191」:信越化学工業(株)製,ポリエーテル変性シリコーンオイル HLB=2.0
(8)「日石ポリブテンLV−50」:JXエネルギー(株)製,ポリブテン樹脂
(9)「DAF−1」:DIC(株)製,ポリスルフィド樹脂
(10)「ディスパロン4200−20」:楠本化成(株)製,酸化ポリエチレンワックス(固形分20%)
(11)「ディスパロン6900−20X」:楠本化成(株)製,アマイドワックス(固形分20%)
実施例1〜28および比較例1〜16の防汚塗料組成物について、以下の性能評価(1)〜(3)を行った。比較例17では、防汚塗料組成物を塗装していない漁網(防汚塗料組成物非塗装の漁網)に対して、性能評価(1)および(2)を行った。その結果を表1〜3に示す。
(1)静置防汚性評価A
実施例および比較例で調製した防汚塗料組成物のそれぞれに、ポリエチレン製無結節網(7節、400デニール/50本)を浸漬して、この漁網に該防汚塗料組成物を含浸・塗布させ、室内で48時間風乾し、防汚塗膜付き漁網を得た。
この防汚塗膜付き漁網を神奈川県相模湾内の海面下約2mに、浸漬した。浸漬開始から3ヶ月毎に、漁網の防汚塗膜の全面積を100%とした場合における水棲生物が付着している防汚塗膜面積(付着面積)の比率(%)を測定し、下記評価基準に基づいて静置防汚性を評価した。また、表中の付着生物名は、浸漬12ヶ月後において、漁網に付着したことが認められた付着生物名を示している。
A:付着面積0%
B:付着面積0%より大きく5%未満
C:付着面積5%〜10%未満
D:付着面積10%〜30%未満
E:付着面積30%〜50%未満
F:付着面積50%以上
実施例および比較例で調製した防汚塗料組成物のそれぞれについて、40℃の恒温器で1ヶ月貯蔵し、その後、ポリエチレン製無結節網(7節、400デニール/50本)を浸漬して、この漁網に該防汚塗料組成物を含浸・塗布させ、室内で48時間風乾し、防汚塗膜付き漁網を得た。
この防汚塗膜付き漁網を神奈川県相模湾内の海面下約2mに、浸漬した。浸漬後から3ヶ月毎に、漁網の防汚塗膜の全面積を100%とした場合における水棲生物が付着している防汚塗膜面積(付着面積)の比率(%)を測定し、下記評価基準に基づいて静置防汚性を評価した。また、表中の付着生物名は、浸漬9ヶ月後において、漁網に付着したことが認められた付着生物名を示している。
A:付着面積0%
B:付着面積0%より大きく5%未満
C:付着面積5%〜10%未満
D:付着面積10%〜30%未満
E:付着面積30%〜50%未満
F:付着面積50%以上
実施例および比較例で調製した防汚塗料組成物のそれぞれについて、密封した容器に入れて常温(23℃の恒温器)で3ヶ月または6ヶ月貯蔵したものと、40℃の恒温器で1ヶ月貯蔵したものとを用意し、貯蔵後の塗料組成物の状態および粘性を確認し、下記評価基準に基づいて評価した。
良好・・・貯蔵前の塗料組成物と、貯蔵後の塗料組成物を比較して、変化なし
微粒・・・微小な粒が認められる
変色・・・貯蔵前の塗料組成物と、貯蔵後の塗料組成物を比較して、色相に変化がある
また、本発明の防汚塗料組成物は、良好な貯蔵安定性を示す。
Claims (13)
- 防汚剤(A)とシリコーンオイル(B)と塗膜形成樹脂(C)とを含有し、
前記防汚剤(A)がビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメートである防汚剤(a1)を含有し、かつジフェニルメチルボラン・4−イソプロピルピリジンおよび/またはトリフェニルボラン・n−オクタデシルアミンである防汚剤(a2)を含有し、
前記シリコーンオイル(B)がポリエーテル変性シリコーンオイルであり、
前記塗膜形成樹脂(C)がアクリル樹脂である
防汚塗料組成物(但し、ジアルキルサルファイド化合物の水分散エマルジョンを含む防汚塗料組成物を除く。)。 - さらに、ポリオレフィン、ポリスルフィド、流動パラフィン、ワックス、およびワセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種の可塑性樹脂(D)を含む請求項1に記載の防汚塗料組成物。
- 前記防汚剤(A)がさらに防汚剤(a3)を含み、前記防汚剤(a3)が、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−1,3,5−トリアジン、テトラエチルチウラムジスルフィド、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、銅ピリチオン、ジンクピリチオン、2,3−ジクロロ−N−(2',6'−ジエチルフェニル)マレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2'−エチル−6'−メチルフェニル)マレイミド、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル、クロロメチル−n−オクチルジスルフィド、ジンクジメチルジチオカーバメート、マンガン−2−エチレンビスジチオカーバメート、およびジンクエチレンビスジチオカーバメートからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1または2に記載の防汚塗料組成物。
- 前記ポリエーテル変性シリコーンオイルのHLBが0.5〜10である請求項1〜3のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
- 前記防汚剤(a2)の含有量が、前記防汚剤(a1)100質量部に対し、3〜200質量部である請求項1〜4のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
- 前記防汚剤(a2)の含有量が、前記防汚剤(a1)100質量部に対し、17〜80質量部である請求項5に記載の防汚塗料組成物。
- 漁具の塗装に使用される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物から形成された防汚塗膜。
- 基材と、前記基材の表面に設けられた請求項8に記載の防汚塗膜とを有する防汚塗膜付き基材。
- 前記基材が漁具、船舶または水中構造物である請求項9に記載の防汚塗膜付き基材。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物で網染めされた漁網。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物を基材に塗布するかまたは含浸させ、次いで硬化させる、基材の防汚方法。
- 基材の表面に、請求項1〜7のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物を塗布するかまたは含浸させる工程と、前記工程により前記基材に塗布されたまたは含浸された前記防汚塗料組成物を硬化させる工程とを備える防汚塗膜付き基材の製造方法。
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