図面を参照すると、図1は、本発明のフライス組立体の1つの特定の実施形態を示す。このフライス組立体は40で概略的に示される。フライス組立体40は切り屑形成および材料除去操作に用いられる(あるいは、切り屑形成による材料除去用のフライス組立体である)。このような操作においては材料が工作物から除去される。操作においては、フライス組立体40は、矢印「R」で示す方向に回転する。
フライス組立体40は、42で概略的に示す通常円筒形のフライス本体を含む。フライス本体は、周囲表面46を含む切削リム44を有する。フライス40は、さらに、(図1に見られるように)切削リム44から下方に付属する付属一体カラー(depending integral collar)48を含む。この特定の実施形態においては、フライス組立体40は、さらに、切削リム44の周囲表面46に間隔を空けて配置される複数のポケット部を含む。これは、52で概略的に示されている。以下にさらに詳しく述べるように、各ポケット部52は、その中にフライスインサート組立体を収容し、確実に固定して保持する。
フライス本体42には、この特定の実施形態に示されるポケット部とは異なる多くのポケット部を設けることができることを理解するべきである。さらに、ポケット部の間の間隔も、ここに開示されるのとは異なるものにすることができる点を理解するべきである。この点に関して、ポケット部の個数および位置は、フライス組立体に関する特定の用途に応じて変えることが可能である。出願人は、本発明の範囲を、添付の図面に示すようなフライス本体の特定の幾何学的形状およびその中におけるポケット部の方位に限定することを意図していない。
各ポケット部52は、前縁凹面54と、この前縁凹面54に隣接しかつそれに後続する(trail)シート部分(図1および5における括弧部分60参照)とを有する。移行領域58が前縁凹面54とシート部分60との間を繋ぐ。本発明の記述範囲においては、「前縁の(leading)」および「後続する(trailing)」という用語(並びに類似の関連用語)は、フライス組立体の操作に関して、ポケット部およびフライスインサート組立体の構造的様態の相対的位置のことを言う。例えば、同じ構成部品に関して、「前縁の」その部分は、フライス組立体の操作の間において「後続する」その部分より回転において先行している。このような相対的用語の使用は、本発明の範囲を限定するように意図されたものではなく、あくまでも、構造の種々の特徴部を相互に対して規定するためのものである。
シート部分60は、シート部分60の後続端におけるシート面62を含む。シート面62は半径方向の配置(radial disposition)および軸方向の配置を有する。また、シート面62は上部端部64および底部端部66を有する。フライス本体42は、シート面62にその終端を有する閉じたネジ孔68を含む。このネジ孔68は、以下に述べるようにネジ付きの固定具を収容する。「上部」および「底部」等の用語の使用は、図1に表現される位置に示される構造要素の相対的方位に関するものである。このような相対的用語の使用は、本発明の範囲を制限するように意図されたものではなく、あくまでも、構造の種々の特徴部を相互に対して規定するためのものである。
シート部分60は、さらに、シート面62に繋がる後続の傾斜シート面74を含む。フライス本体42は2つのクーラント流路76を含み、この2つの流路76は、開口77によって示すように、後続の傾斜シート面74において開放されている。後続の傾斜面74における開口77は、ポケット部の開口であると見做すことができる。これらのクーラント流路76は、以下に述べるように、ポケット部に含まれるフライスインサートに対するクーラントの流れ用の導管となる。クーラント流路76からのクーラントの流れは、図1の矢印によって示される。
シート部分60は、また、後続の傾斜シート面74に隣接する前縁の傾斜シート面80を含む。フライスインサート組立体がポケット部内部に保持される場合、フライスインサートは前縁の傾斜シート面80の上に載り(かつそれによって支持され)、シムは後続の傾斜シート面74の上に載り、かつそれによって支持される。前縁の傾斜シート面80および後続の傾斜シート面74は半径方向の配置および軸方向の配置を有することを理解するべきである。
シート部分60は、さらに、前縁の傾斜シート面80に隣接するクランプシート面84を含む。肩部86が、前縁の傾斜シート面80をクランプシート面84に繋ぐ。もう1つの肩部88が、クランプシート面84と前縁凹面54との間の移行部である。クランプシート面84と、肩部86および88とは半径方向および軸方向の配置を有する。フライス本体42は、クランプシート面84に開いているネジ孔(または開口)90を含む。ネジ孔90は、クランプを貫通する保持ピンを収容するように設計される。この場合、クランプは、シムおよびフライスインサートをポケット部内に確実に保持することを補助する。
図6に示すように、フライス本体42は、さらに中心のクーラント(または流体)溜め94を含み、このクーラント溜め94は、図6に「クーラント供給源」として表示されるクーラント源と連通する。中心のクーラント溜め94は、上方に延びる(has an upward)(または図6に見られるように一般的に垂直方位の)中央の直立壁面96によって画定される。直立壁面96はフライス本体42の底面98から上方に延びており、底面98も、中心のクーラント溜め94を(部分的に)画定する。中心の直立壁面96は、図6に見られるように、上端100を有する。
中心の直立壁面96は複数のクーラント流路76の対を含み、この流路対76はクーラント溜め94とポケット部52との間の流体連通を提供する。各クーラント流路対76は1つのポケット部52に対応しており、対応するクーラント流路対76から、クーラントが対応するポケット部52に供給される。出願人は、クーラント流路76について、いかなる特定のサイズまたは内部の幾何学的形状にも限定する意図は有していないが、出願人としては、クーラント流路76の寸法および幾何学的形状は、対応するポケット部に、従ってそのポケット部内に保持される対応するフライスインサートに十分なクーラント流量を供給するようなものであると考えている。
図6および7に示すように、フライス組立体40は、さらに、106で概略的に示すロックスクリューを含む。ロックスクリュー106は、図7に見られるように上部端部108および底部端部110を有する。また、ロックスクリュー106は、その上部端部108に隣接して、肩部114を画定する拡大直径部分112を有する。拡大直径部分112から、細長い一体型の円筒形シャンク116が突き出ている。さらに、ロックスクリュー106は、その長さを貫通して延びる中心の六角形の縦方向穿孔118をその中に含む。
ロックスクリュー106は、さらにまた、ロックスクリュー106の縦軸Z−Zに対してある角度で配備される半径方向に傾斜した複数の穿孔124を含む。傾斜穿孔124は、それぞれ、中心穿孔118と、ロックスクリュー106の上部の円形の角部122との間の流体連通を提供する。この傾斜穿孔124は、クーラントがクーラント源からクーラント溜めに流れることができる付加的な流路を提供する。図6および7に矢印で示すように、クーラントは、底部端部120において六角形の穿孔118に流入し、穿孔118を貫通して流れ、六角形穿孔118の上部端部122において六角形穿孔118から流出して、上部端部122の上をあらゆる方向に流れる。クーラントは、また、矢印で示すように傾斜穿孔124を経由して中心穿孔118から流出する。ロックスクリュー106から流出するクーラントは(中心穿孔118または傾斜穿孔124のいずれを経由するにせよ)、矢印で示すように続いて中心のクーラント溜め94に流入する。
図8および9に示すように、フライス組立体40は、また、126で概略的に示すクーラント溜めのキャップを含む。このクーラント溜めのキャップ126は、中心のクーラント溜め94を部分的に画定するものであり、上面128および底面130を有し、そのキャップ126の周囲に等間隔に配置される複数のボルト孔132を含む。ボルト孔132は、それぞれ、クーラント溜めキャップ126をフライス本体42に固定するボルト134(図6参照)を収容するように調整される。クーラント溜めキャップ126は、さらに、複数のノッチ138を有する一般的に円形の付属一体型フランジ136を含む。この場合、ノッチ138はフランジ136の周囲に等間隔に配置される。
図10〜図21を参照すると、フライス組立体40は、さらに、それぞれが150で概略的に示す複数のフライスインサート組立体(あるいは切削インサート組立体)を含む。出願人は、「切削インサート」という用語が、フライスインサートおよび旋削インサート、並びに、例えば切り屑形成および材料除去操作などの材料除去操作において工作物と係合して材料を除去するのに用いられる他の形式および種類のインサートを(制限なしに)含意すると考えていることが理解されるべきである。
図1から明らかなように、ポケット部52、特にシート部分60が、それぞれ、フライスインサート組立体150を収容して保持する。フライスインサート組立体150はいくつかの構成要素を含む。すなわち、フライスインサート(さらに広範囲に切削インサートと考えることもできる)、シム、クランプ、およびネジ部材であり、これらについて以下に詳しく記述する。図1および図10に示すように、クーラントは、選択された切削部位(または切削エッジ)に隣接する位置においてフライスインサートから流出する。以下に明らかになるように、シムには3つの異なる実施形態がある。
上記のように、フライスインサート組立体150は152で概略的に示すシムを含む。シム152の1つの特定の実施形態が図10および11に示される。シム152は、上面154と底面156と周囲の側面(peripheral flank surface)(または端面)158とを有する。また、シム152は、3つの穿孔をその中に含む。これらの穿孔の1つは、ネジ部材164を収容する固定具用穿孔160である。このネジ部材164が、シム152およびフライスインサートを、当業者にはよく知られた方式でフライス本体42に装着する。シム152は、また、4つの角部(162A、162B、162C、162D)を有する。この内、角部162Bおよび162Cは鋭利な角部であり、角部162Aおよび162Dは、平面によって規定される平坦な角部である。
シム152に含まれる他の2つの穿孔は相互に流体連通している。この2つの穿孔は、それぞれ、クーラントが、後続の傾斜シート面74において開放されているクーラント流路76からシム152の上面154に流れるための流路を提供する。この2つの穿孔は、合わせて1つの内部クーラント流路と考えられる。この2つの穿孔の内の1つは、周囲の側端部158の1つにおいて開放される細長いスロット166であり、半径方向に内側の方向に延びて、中心穿孔168であるもう一方の穿孔と交差する。中心穿孔168はシム152の上面154において開放されている。矢印に示すように、クーラントは、スロット166から流入して、中心穿孔160に流れる。クーラント(図11に見られるように垂直の矢印で表現される)は中心穿孔168からフライスインサートの中に流入するが、これについては以下に述べる。
図12は、シムの別の実施形態を示す。この場合、170で概略的に示すシムは、上面172と底面174と周囲の側面または端部176とを有する。また、シム170は、その中に4つの穿孔を含む。1つの穿孔は、ネジ部材182を収容する固定具用穿孔178である。このネジ部材182が、シム170およびフライスインサートを、当業者にはよく知られた方式でフライス本体42に装着する。シム170は、4つの角部(180A、180B、180C、180D)を有する。この内、角部180Bおよび180Cは鋭利な角部であり、角部180Aおよび180Dは、平面によって規定される平坦な角部である。
他の穿孔の内の2つは、クーラントが、後続の傾斜シート面74において開放されているクーラント流路76からシム170の上面172に流れるための流路である。この2つの穿孔は、合わせて、内部クーラント流路と考えることができる。この2つの穿孔の内の1つは、周囲の側面176の内の1つにおいて開放される細長いスロット184であり、半径方向に内側の方向に延びて、中心穿孔186と交差する。中心穿孔186はシム170の上面172において開放されている。
最後に、4番目の穿孔は、半径方向の穿孔188であって、クーラントの流れを、フライスインサートの係合切削エッジに隣接するシム170の周囲表面に向けて導く流体流路である。この場合、半径方向穿孔188は細長いスロット184と流体連通しているので、スロット184に流入するクーラントの少なくとも幾分かは半径方向穿孔188に流入する。半径方向穿孔188は、内部のクーラント流路と連通する半径方向のクーラント流路と考えることができる。
半径方向の穿孔188は、シム170の1つの角部(180A)の近くで前縁表面172において開放されるように配置される。以下に述べるように、シム170がフライスインサートと一緒に組み立てられると、シムは、工作物と係合するフライスインサートの切削エッジに角部180Aが隣接するような方位に向けられる。これは、運転時に、(「G」で表示される)矢印で示すように、クーラントが、細長いスロット170からシム170に流入し、さらに中心穿孔186および半径方向穿孔188に流入することを意味している。クーラントは、(矢印「H」で表現されるように)中心穿孔186から、以下に述べるようにフライスインサートに流入する。さらに、クーラントは、(矢印「I」で表現されるように)半径方向穿孔188から流出して、係合切削エッジに隣接するフライスインサートの周囲の逃げ面(peripheral flank surface)を越えて流れ、選択された切削部位(すなわちフライスインサートが工作物と係合する部位)に向かいかつインサート−切り屑界面の近傍におけるクーラントの付加的な流れをもたらす。フライスインサートから流出するクーラントの流れについては以下に詳述するが、図13は、フライスインサートから流出するクーラント(矢印「I」)を示している。
図14〜図14Cを参照すると、フライスインサート組立体150は、さらにフライスインサート190を含む。フライスインサート190は粉末冶金技術によって製造するのが一般的である。この点に関して、フライスインサート用の出発粉末成分は、最初に、当初の粉末混合物にブレンドまたは粉砕される。潤滑剤または一時結合剤(fugitive binder)は通常当初成分として含まれる。当初の粉末混合物は、続いて、部分密度を有するフライスインサートの形状(すなわち圧粉体)に圧縮される。
次に、圧粉体が、通常高温において、かつ場合によっては加圧下で行われる圧密処理にかけられる。圧密処理は、圧力焼結法、真空焼結法、高温静水圧圧縮法、および他の既知の圧密法を含むことができる。得られる製品は、本質的に完全に密な圧密後のフライスインサートである。圧密後のフライスインサートは、未被膜処理のフライスインサートを形成するために、種々の仕上げ操作、例えば、研磨または吹き付け加工その他を施すことができる。
未被膜処理のフライスインサートは、その上の被膜なしに有用である場合がある。代替的に、未被膜処理のフライスインサートに被膜系を形成して(apply a coating scheme)被膜フライスインサートとすることが有利である場合もある。被膜系は、1つ以上の個別の被膜層を含む広範囲の適切な被膜系のいずれかとすることができ、物理蒸着(PVD)法および化学蒸着(CVD)法を含む広範囲の被膜生成技術のいずれか1つ以上によって被覆生成できる。
フライスインサートは、切削インサートとして用いるのに適した任意の1つの材料から製造できる。次のような材料が、切削インサート用として有用な材料の例である。すなわち、工具鋼、超硬合金、サーメットまたはセラミックである。工具鋼に関しては、次の特許文献が切削インサートとしての使用に適した工具鋼を開示している。すなわち、「高速度鋼(High speed Steel)」について米国特許第4,276,085号明細書が、「超硬高速度工具鋼(Superhard high-speed tool steel)」について米国特許第4,880,461号明細書が、「焼結された粉末製の高速度工具鋼およびその製造法(High Speed Tool Steel Produced by Sintered Powder and Method of Producing the Same)」に関して米国特許第5,252,119号明細書が開示している。超硬合金に関しては、次の特許文献が切削インサートとしての使用に適した超硬合金を開示している。すなわち、「ジルコニウムおよびニオブを含む超硬合金体およびその製造法(a Cemented Carbide Body Containing Zirconium and Niobium and Method of Making the Same)」に関して米国特許出願公開第2006/0171837A1号明細書が、「優先的に結合剤の富化された超硬合金体および製造法 (Preferentially Binder Enriched Cemented Carbide Bodies and Method of Manufacture)」に関して米国再発行特許第34,180号明細書が、「非層別表面結合剤富化を有するC多孔度基体を備えた被膜切削インサート(a Coated Cutting Insert with A C Porosity Substrate Having Non-Stratified Surface Binder Enrichment)」に関して米国特許第5,955,186号明細書が開示している。サーメットに関しては、次の特許文献が切削インサートとしての使用に適したサーメットを開示している。すなわち、「複合材およびその製造プロセス(Composite and Process for the Production Thereof)」について米国特許第6,124,040号明細書が、「Co−Ni−Fe結合剤を有するサーメットの切削インサート(a Cutting Insert of a Cermet Having a Co-Ni-Fe Binder)」について米国特許第6,010,283号明細書が開示している。セラミックに関しては、次の特許文献が切削インサートとしての使用に適したセラミックを開示している。すなわち、「アルミナ−ジルコニア−炭化ケイ素−マグネシアセラミックの切削工具(an Alumina-zirconia-silicon carbide-magnesia Ceramic Cutting Tools)」について米国特許第5,024,976号明細書が、「サイアロン切削工具の組成(a Sialon Cutting Tool Composition)」について米国特許第4,880,755号明細書が、「窒化ケイ素セラミックおよびそれから製作した切削工具(a silicon Nitride Ceramic and Cutting Tool made Thereof)」について米国特許第5,525,134号明細書が、「粗い炭化ケイ素ウィスカによって補強したセラミック体およびその製造法(a Ceramic Body Reinforced with Coarse Silicon Carbide Whiskers and Method for Making the Same)」に関して米国特許第6,905,922号明細書が、「イッテルビウム含有サイアロンおよび製造法(a SiAlON Containing Ytterbium and Method of Making)」に関して米国特許第7,094,717号明細書が開示している。
フライスインサート190は、すくい面192と、反対側の底部のシート面194と、周囲の逃げ面196とを有する。すくい面192および底部のシート面194は、通常互に平行に配置される。図14Aに示すように、周囲の逃げ面196は中心軸C−Cに対して角度Bを含むように配設される。
図示の特定の実施形態においては、フライスインサート190は、4つの別個の異なる切削エッジを有しており、これらが符号238、240、242および244で表示されている。この切削エッジ(238、240、242、244)は、それぞれ、すくい面192および周囲の逃げ面196の一部と交差する。この切削エッジは、それぞれ、フライスインサート190上の位置を意味する切削部位であると見做すことができる。この切削部位が、材料除去操作が行われる時に工作物から材料を除去するように工作物と係合する。
フライスインサート190のすくい面192は、その中に凹窩(indention)(または中心凹窩)200を含む。この中心凹窩200は、すくい面192内に含まれる中心開口(またはクーラント流入流路)202を取り囲む。フライスインサート190のすくい面192は、さらに、その中に複数の個別の窪みを包含し、この個別の窪みは、それぞれ、中心凹窩200と交差する。以下にさらに詳述するように、この各個別の窪みは、また、フライスインサート190の特定の切削エッジ(または切削部位)に対応する。
個別の窪みの記述に関しては、各個別の窪みは本質的に同じ幾何学的形状を有するので、1つの個別の窪みについて詳述すれば、他の個別の窪みの詳細説明についても十分であろう。この個別の窪みの詳細説明に関して、第1の個別の窪み210は周囲の端部212を有し、この周囲の端部212は、半径方向の内側の部分214と半径方向の外側の部分216とを有する。個別の窪み210の半径方向の外側の部分216は、フライスインサート190の切削エッジ242の半径方向の内側にその終端部を有するが、それは切削エッジ242に近接している。すくい面192には周囲部分218があり、その周囲部分218が、個別の窪み210の半径方向の外側の部分216を切削エッジ242から分離している。従って、個別の窪み210は切削エッジ242に対応しており、これは、クーラントが個別の窪み210を通って流れる時に、クーラントが、切削エッジ242に隣接して、実際には切削エッジ242の下部に(半径方向には前方に)流出することを意味すると言うことができる。フライスインサート190は、切削エッジの任意のいずれかが工作物と係合するように割り出す(index)ことが可能であることを理解するべきである。以下に明らかになるように、クーラントは、工作物と係合するように選択された切削エッジに対応する個別の窪みを経由して流れる。
アーチ状の表面のアーチ特性によって、クーラントの流れの半径方向に外側の方向への滑らかな方向変換が、過度の量の乱流を発生することなく行われる。この個別の窪みを画定する表面は、個別の窪みの深さ(すなわち、個別の窪みの特定表面とすくい面192との間の距離)が半径方向に外側の方向に減少するような輪郭を有するが、この表面輪郭によって、クーラントの流れの切削エッジの方向への効率的な供給が促進される。
図面、特に図14から分かるように、個別の窪みは、そのすくい面と同一平面の幅を有する。少なくとも個別の窪みと中心凹窩とが交差する位置から、その幅は半径方向に外側の方向に減少し、これによって、クーラントの流れの切削エッジの方向への効率的な供給が促進される。この点に関して、個別の窪み内における半径方向に外側の方向のクーラントの流れは、個別の窪みの半径方向の外側の部分に向かって集中している。
個別の窪みが容積を有することも理解できる。各個別の窪みの容積は、半径方向に外側の方向に減少しており、それによって、クーラントの流れの切削エッジの方向への効率的な供給が促進される。この点に関して、個別の窪み内における半径方向に外側の方向のクーラントの流れは、個別の窪みの半径方向の外側の部分に向かって集中している。
図14は、その他の個別の窪みが、個別の窪み230、個別の窪み232および個別の窪み234であることを示している。これらの他の個別の窪み(230、232および234)のそれぞれの幾何学的形状は、個別の窪み210のそれと同じであり、簡潔さのためにここでは繰り返さない。
図14をなお参照すると、個別の窪み238および240の間に、アーチ状のシール面220が位置している。個別の窪み240および210の間にはアーチ状のシール面222が位置し、個別の窪み210および230の間にはアーチ状のシール面224が位置し、個別の窪み230および232の間にはアーチ状のシール面226が位置している。これらのシール面の機能は、方向変換要素250とフライスインサートとの間のシールの形成を容易にすることにある。
図15〜図16Cを参照すると、フライスインサート組立体150は、250で概略的に示す方向変換要素をさらに含む。方向変換要素250は、以下に詳述するように、フライスインサートと組み合わせて用いるように想定されている。方向変換要素250は種々の材料から製造できる。材料選定に関しては、方向変換要素250が、切削またはフライス加工(すなわち材料除去操作)からの切り屑の流れによる摩滅に抵抗力を有すること、並びに、クーラントの流れによる腐食に抵抗するための腐食摩耗抵抗力を有することが有利である。方向変換要素250用として適切な材料には、工具鋼、ステンレス鋼、超硬合金、サーメットおよびセラミックが含まれる。また、出願人は、方向変換要素を1つ以上の被膜層で被膜処理することも可能であると考えている。
方向変換要素250は対向する表面を有する。すなわち、底面252および反対側の上面264である。フライス組立体が運転状態にある時は、材料除去操作から形成される切り屑にさらされる可能性がある底面252が上面264に対して前縁表面になる(すなわち回転において先行している)。以下に述べるように、方向変換要素250がフライスインサート190に組み込まれると、その上面264は、フライスインサート190のすくい面192内に設けられる空洞(この空洞は個別の窪みを含む)の内部に位置する。
底面252は、一般的に平面の中央表面部分254を有する。この中央表面部分254は、一般的に、方向変換要素250の中心の縦軸(D−D)に垂直である。また、中央表面部分254は円周の境界端256を有する。底面252は、さらに、この円周の境界端256から半径方向に外側の方向に延びる円錐状の周囲表面部分258を含む。この円錐状の表面部分258の終端部は、通常円形の周囲の端部260であるが、以下に述べるようにフランジ領域はその例外部分である。円錐状の表面部分258は、中央の表面部分254に対して「F」の角度で設けられる。
方向変換要素250の上面264は、収容開口272を画定するカラー270を包含する方向変換要素の中心本体266を含む。収容開口272は、フライスインサートのクーラント流入流路からのクーラントの流れを収容するように想定されている。方向変換要素の中心本体266は、さらに、収容開口272から半径方向に外側の方向に延びるクーラントトラフ274を含む。クーラントトラフ274は収容開口272と連通しており、そのため、クーラントは、収容開口272からクーラントトラフ274に、かつそれに沿って流れることができる。クーラントトラフ274は、テーパ化された末端フランジ280まで延びている。このテーパ化された末端フランジ280は1つの部分282を有しており、その部分282は、その末端フランジ280のもう1つの部分284よりも半径方向に外側の方向にさらに遠くまで延びている。
さらに、方向変換要素250の上面264は、上面252および底面264の交差部における周囲境界端260から延びる円錐状の部分267を有する。この円錐状の部分267は、方向変換要素250の周囲の範囲のほとんどの部分に拡がる。特定の実施形態においては、この円錐状の部分267は、中心軸D−Dに対して、約45°に等しい角度Eに設けられている。角度Eは約5°〜約85°の範囲にすることができることを理解するべきである。角度Eの大きさは、すくい面の対応する表面領域の輪郭に合致する。このすくい面の表面領域は、これらの表面において方向変換要素とフライスインサートとの間のシールを形成する。
図15に示すように、クーラント(矢印「H」)は、フライスインサート組立体150に流入し、さらに収容開口272に流入する。クーラントはクーラントトラフ274の表面に衝突して、クーラントトラフ274の長さを半径方向に外側の方向に移動し、テーパ化されたフランジ280の表面上を通過する。クーラントの大部分は、半径方向の外側の寸法が小さい方のテーパ化フランジ280のもう一方の部分184の上を流れるが、クーラントの幾分かは、半径方向の外側の寸法が大きい方のテーパ化フランジ280の一方の部分282の上を流れるであろうことを予期できる。
フライスインサート組立体150は、290で概略的に示すクランプを含む。クランプ290は、上面292と底面294と周囲端面296とを有する。また、クランプ290は、ネジ部材またはピン300を収容するように調整される穿孔298を含む。クランプ298の目的は、フライスインサート190および方向変換要素250をシム152に対してくさび止めして、フライスインサート190および方向変換要素250をフライス本体32のポケット部52内に確実に保持することにある。フライスインサート、あるいは、シムおよびフライスインサートの組み合わせ体をフライス本体のポケット部内に機械的に保持するためのクランプの使用については、フライスの分野における当業者にはよく知られているところである。
フライスインサート組立体150が図12に示すシム170を用いる場合のフライスインサート組立体150のフライス本体42のポケット部52内への組み込みに関しては、シム170の底面174が、シート面62に対して固く押し付けられる。シム170における細長いスロット184の方位は、スロット184が、後続の傾斜シート面74におけるクーラント流路76の終端と同心となるような(またはそれと合致するような)方位である。フライスインサート190の底面194はシム170の上面172に対して固く押し付けられる。
フライスインサート組立体150を組み立てるために、方向変換要素250の上面264がフライスインサート190のすくい面192に対して固く押し付けられる。この位置にある時には、方向変換要素の中心本体は、フライスインサート190のすくい面192における空洞内に包含される。
方向変換要素250がフライスインサート190に対して固く押し付けられ場合には、円錐状の表面部分258の表面領域の対応部分と、個別の窪みの間にある中心凹窩200の部分との間に、表面対表面接触の局所部分が存在する。前記のように、これらの局所部分はアーチ状のシール面220、222、224および226である。これらの接触局所部分において、方向変換要素250とフライスインサート190との間の流体をほぼ通さないシールが形成される。
方向変換要素250がフライスインサート190に対して固く押し付けられると、方向変換要素250の(収容開口272を画定する)カラー270は、フライスインサート190のクーラント流入流路202と同心になる。同心であることによって、収容開口272は、クーラント流入流路202からフライスインサート190に流入するクーラントを収容することができる。
方向変換要素250がフライスインサート190に組み込まれると、方向変換要素250のフランジ280に隣接する(すなわち対応する)個別の窪み(210、230、232、234)は、クーラントトラフ274と共に、クーラントの流れをフライスインサート190の対応する切削エッジ(238、240、242、244)に向かって導く導管を画定する。この導管はフライスインサートの残りの空洞に対してはほぼ流体的に絶縁の状態にあるので、フライスインサート190に流入するほぼすべてのクーラントが、この導管を通って、選択された切削エッジに向かって流れる。
方向変換要素250のフランジ280の位置は、任意の1つの個別の窪みと、それに対応する選択された切削エッジとに合致するように選択できる。通常、クーラントを切削部位の近傍に供給することが重要であるので、この選択された切削エッジは、材料除去操作(例えばフライス加工)において工作物と係合する切削エッジである。
図16Dを参照すると、組み立てられたフライスインサート190および方向変換要素250の断面図が示されている。クーラントは、クーラント流入流路202から組立体に流入して(矢印「H」参照)、さらに方向変換要素250の収容開口272に流入することが分かる。クーラントは、クーラントトラフ274と、選択された切削エッジに対応する個別の窪みとの間に画定される導管を通って流れ続ける。この場合、この切削エッジは、個別の窪み232に対応する切削エッジ238である。
矢印Jに示すように、フライスインサート−方向変換要素組立体を出るクーラントは、フライスインサート190のすくい面192に沿う平面の下側に流出するので、クーラントが切削面の下側に流出する。クーラントは、続いて、矢印Jによって分かるように、切削部位に向かって上方に吹き付けられる。クーラントの噴射を切削部位に向かって上方に導くことによって、クーラントがインサート−切り屑界面の部位またはその近傍に衝突し得るようになる。これによって、クーラントの噴射を切削部位に向かって上方に導くことに結び付くいくつかの利点がもたらされる。この場合、この利点には、フライスインサート−工作物界面に発生する熱の負の影響の低減と、フライスインサート−切り屑界面における潤滑の改善によるフライスインサート上への工作物材料の蓄積の回避または低減と、フライスインサート−切り屑界面の近傍からの切り屑の除去を促進することによる切り屑再切削の回避とが含まれる。
フライス組立体40全体の運転に関して、フライス組立体40は、機械工具駆動体等の作用の下で、図1に見られるように反時計回りの方向(矢印R参照)に回転する。中心のクーラント溜め94はクーラント供給源と連通しており、クーラント供給源は、通常、フライス組立体40の回転運転中圧力条件下にある。理解できるように、クーラントは、ロックスクリュー106の中心の六角形の縦方向穿孔118を通って流れて、そこから流出し、さらに上端面108の上を流れて、中心のクーラント溜め94に流入する。
クーラントは、クーラント流路76を通って中心のクーラント溜め94から流出し、クーラント流路76内を移動して、シート部分60の後続の傾斜シート面74において流出する。以下に述べるように、クーラントは、この位置においてフライスインサート組立体150に流入する。
クーラントは、細長いスロット184からシム170に流入し、続いて中心のクーラント穿孔186に流入する。クーラントの流れは、中心のクーラント穿孔186から、方向変換要素250のカラー270によって画定される収容開口272に流れ込む。方向変換要素250はフライスインサート190の中心の空洞内に配置されている。クーラントは、続いて、方向変換要素250の半径方向トラフ274と、隣接する個別の窪みを画定する表面との間に画定される導管を経由して流れる。クーラントの流れは、フランジ280において、クーラントがフランジ280の両方の部分(282、284)の上を流れるような態様でその導管から流出する。クーラントは、続いて、切削エッジの上に流れ、切削部位におけるインサート−切り屑界面の近傍にクーラントが供給される。
図17を参照すると、フライスインサート組立体150は、クーラントを、工作物と係合する選択された切削エッジ(例えば、図17に示される切削エッジ242)に選択的に直接導くことができる。クーラントの方向の選択は、方向変換要素250を係合切削エッジ242に合致するように選択位置に回転することによって実行される。図17に示すように、方向変換要素250は、そのフランジ280がフライスインサート190の切削エッジ242と同一線上に並ぶように位置決めされる。この位置にある時は、クーラントは、上記のように、切削エッジ242に向かって移動し、切削エッジ242の下部に流出するであろう。この場合、クーラントの流れは小さい部分と大きい部分との上を通過し、それによって、その流れが係合切削エッジ242に導かれることに留意するべきである。
周知のように、フライス加工操作においては、工作物との係合用として新しい切削エッジを用意するために、フライスインサート190を割り出す、あるいは再配置することが必要になる時点が到来する。割り出し可能なフライスインサートの場合には、これは、フライスインサート190を、新しい切削エッジ(例えば切削エッジ240)が出るようにポケット部52内で回転することを意味する。一例として、かつ、図17をなお参照して説明すると、切削エッジ242が摩耗状態となり、あるいは交換が必要な状態に達した時には、フライスインサート190を割り出し操作して、工作物と係合する切削エッジとして切削エッジ240が出るようにする。クーラントを新しい切削エッジ240に供給するために、図17に見られるように、方向変換要素250を、時計回りの方向に約90°回転させる。クーラントトラフ274は、切削エッジ240に対応する個別の窪みと協働して、クーラントを係合切削エッジに導くであろう。
図17に示すように、クーラントは(矢印「J」で示すように)、切削エッジと工作物との界面において切削エッジの下側の位置に流出する。その結果、クーラントによって、フライスインサート−切り屑界面に発生する熱の負の影響が低減される。さらに別の結果として、クーラントの存在によって、フライスインサート−切り屑界面における潤滑が改善され、フライスインサート上への工作物材料の蓄積が回避または低減される。さらに、クーラントの流れによって、フライスインサート−切り屑界面の近傍からの切り屑の除去が促進され、切り屑の再切削が回避される。
図18を参照すると、別の実施形態の方向変換要素300を、フライスインサート190と組み合わせて示している。この実施形態の方向変換要素300は前記の実施形態の方向変換要素250と同様のものであるが、方向変換要素304の左右の向き(handedness)が異なる点が違っている。この点に関して、方向変換要素300は右手型の方向変換要素、方向変換要素250は左手型の方向変換要素である。
図17の実施形態の場合と同様に、フライスインサート組立体150は、クーラントを、工作物と係合する選択された切削エッジに選択的に直接導くことができる。これは、方向変換要素を、係合切削エッジ対して選択された位置に回転することによって行われる。図18に示すように、方向変換要素300は、そのフランジ302がフライスインサート190の切削エッジ244と同一線上に並ぶように位置決めされる。この位置にある時は、クーラントは、上記のように切削エッジ244に向かって移動し、切削エッジ244の下部に流出するであろう。フライスインサート190の割り出し操作に先立って、方向変換要素250に関して上記に述べたのと同様に、方向変換要素300を回転させて、フランジ302が新しい切削エッジに対して同一線上になるようする。従って、方向変換要素300を選択的に位置決めできることにより、フライス加工操作時に、新しく選択された切削エッジにクーラントを供給するためのフライスインサート組立体の能力を強化することを理解することができる。この状態にある場合には、クーラントは新しい切削エッジの下側に供給されるであろう。
図19は、さらに別の特殊な実施形態の方向変換要素304を示す。この実施形態の構造は、方向変換要素250の外形に準拠しているが、フランジ306が延長された部分を有しないという点が違っている。その結果、方向変換要素304がフライスインサートに取り付けられた時に、クーラントの流れはフランジの全表面にわたって流出し、方向変換要素250および方向変換要素300の場合のような指向性を有しない。
図20〜図22は、前記と同様のフライスインサート190と、方向変換要素250と、クランプ290とを含むフライスインサート組立体320を示す。しかし、シム322は、周囲の端部における細長いスロットを有することなく、底面における中心のクーラント孔324を含むという点において異なっている。図20に示すように、ポケット部は、一般的に直立のシート面にクーラント流路316を有する。クーラントは、図20において矢印「K」で示すように、クーラント流路316から流出する。
フライスインサート組立体がポケット部内に装着される場合、中心のクーラント孔324はクーラント流路316と同心の位置にある。図21および22は、クーラントの流れが、中心のクーラント孔324に直接流入し、続いて、前記の態様でフライスインサート−方向変換要素組立体に流入する様子を示している。クーラントは、さらに、前記と同様の態様でフライスインサート190を通って流れる。図20は、フライスインサートから流出するクーラントを矢印「L」で表現している。
図23は、別の実施形態のフライスインサート330を示す。このインサート330においては、2つの個別の窪み332、334がただ1つの切削エッジ(または切削部位)336に対応している。この場合、この2つの個別の窪みは、フライスインサート190の個別の窪みとは幾分異なる幾何学的形状を有する。この幾何学的形状は、フライスインサート190のものとは異なるが、フライスインサート330の個別の窪み(332、334)も、切削エッジ336に向かうクーラントの流れの効率的な供給を促進するように機能する。それによって、半径方向に外側の方向における個別の窪み内のクーラントの流れが、個別の窪みの半径方向の外側の部分に向かって集中している。フライスインサート330の他の切削エッジを参照すると、2つの個別の窪み332A、334Aが切削エッジ(または切削部位)336Aに対応し、2つの個別の窪み332B、334Bが切削エッジ(または切削部位)336Bに対応し、2つの個別の窪み332C、334CAが切削エッジ(または切削部位)336Cに対応している。
個別の窪み(332、334)は、対応する方向変換要素のクーラントトラフが両方の個別の窪みを包含し得るように十分に狭いものであることを理解するべきである。そうすることによって、両方の個別の窪み(332、334)およびクーラントトラフが、一緒に組み立てられた時に、フライスインサート(190)−方向変換要素(250)組立体の場合と同様に、方向変換要素とフライスインサートとの間の液密なシールの形成に基づく流体的に絶縁された導管を形成する。
特定の実施形態のフライス組立体の性能を証明するために試験を行った。この場合、図1の特定の実施形態に従って製作された100mm直径のフライスを、幅7.62cmおよび長さ25.4cmのTi−6AL−4Vチタン合金の焼きなましブロックをフライス加工するのに用いた。試験フライス加工は、フライス組立体の中心が工作物の中心と同心のまたぎフライス加工(straddle milling)によって行った。金属切削条件は次の表1に記載する。
ケナメタル(Kennametal)の等級K322は、炭化タングステン−コバルト系のフライスグレード(milling grade)であり、約9.75重量%のコバルトと、粒径1〜6ミクロンの残余の炭化タングステンとを、一般に認められている不純物と共に含む。K322等級は、ロックウェルAスケールにおける約90.8の公称硬度と、約180〜約220エルステッドの磁気飽和値とを有する。
比較のために、次のクーラント供給条件を用いて試験を行った。すなわち、クーラントがフライスインサートおよび工作物を巻き込む溢流クーラント方式と、主軸経由のクーラント供給方式と、本発明に基づくフライスインサートによるクーラント供給方式とである。試験結果を次の表2に示す。表中の圧力はポンプのゲージから測定し、流量は、30秒間5ガロンバケツに収容してその貯留量を計量することによって測定した。
工具寿命の基準に関しては、工具の摩耗を測定するため、ブロックを横切る各パスの後に30X(倍率)で光学像を撮った。刃先(nose)、逃げ面またはすくい面のどれか1つにおいて摩耗が0.38mmを超えた時をもって、工具寿命の終端を決定した。表2に見られるように、工具寿命は、摩耗限界に達するまでのパス数で報告されており、また、工具寿命は、摩耗限界に達するまでに工作物から除去された材料の容積(cm3)、および、摩耗限界に達するのに要した時間で報告されている。表2の結果は、Ti−6Al−4V合金をフライス加工する場合、本発明のフライスインサートは、従来型のクーラント溢流方式を用いる場合に比べると約4倍長い工具寿命を呈し、従来型の主軸経由のクーラント供給方式を用いる場合に比べると約2.2倍長い工具寿命を呈することを示している。
フライス組立体30は、切削エッジおよび工作物の界面において切削エッジの下側にクーラントを供給するという点から、いくつかの利点を有する。1つの結果として、クーラントによって、フライスインサート−工作物界面に発生する熱の負の影響が低減される。さらに別の結果として、クーラントの存在によって、フライスインサート−切り屑界面における潤滑が改善され、フライスインサート上への工作物材料の蓄積が回避または低減される。さらに、クーラントの流れによって、フライスインサート−切り屑界面の近傍からの切り屑の除去が促進され、切り屑の再切削が回避される。
本発明は、切り屑形成および材料除去操作に用いられるフライス並びにフライスインサートであって、フライスインサートと工作物との間の界面へのクーラントの供給が改善されたフライス並びにフライスインサートを提供することが明らかである。クーラント供給の改善の結果としていくつかの利点が存在する。
この点に関して、本発明は、切り屑形成および材料除去操作に用いられるフライス並びにフライスインサートであって、フライスインサートと工作物との間の界面(すなわち工作物上の切り屑生成部位)へのクーラントの供給が改善されたフライス並びにフライスインサートを提供する。その結果、クーラントによって、フライスインサート−工作物界面に発生する熱の負の影響が低減される。さらに別の結果として、クーラントの存在によって、フライスインサート−切り屑界面における潤滑が改善され、フライスインサート上への工作物材料の蓄積が回避または低減される。さらに、クーラントの流れによって、フライスインサート−切り屑界面の近傍からの切り屑の除去が促進され、切り屑の再切削が回避される。
本明細書において特定した特許および他の文献資料は、参照によって本明細書に組み込まれる。本発明の他の実施態様は、本明細書、またはここに開示された本発明の実際を精査すれば、当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は、あくまでも例示用のものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の真の範囲および精神は特許請求の範囲に示される。