JP5177431B2 - TRACP5bの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、カイコを利用した酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ5b(TRACP5b)の製造方法に関する。また本発明は、TRACP5bを産生するカイコに関する。
血清中の酸性ホスファターゼは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、原点より0〜5の6つのバンドに分けられる。そのバンドの中で5番目のものは、酒石酸に抵抗性を示し、Band 5酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRACP 5:Tartrate Resistant Acid Phosphatase 5)と呼ばれている。
5番目のバンドはさらに、Acidicディスク電気泳動によって2つのバンドに分かれ、それぞれTRACP5a、TRACP5bと呼ばれている。TRACP5aは血小板やその他の成分に由来する酵素であり、血中値は変動しない。一方TRACP5bは、骨吸収に伴い血中値が変動することから、破骨細胞に由来すると考えられている。TRACP5bの特異的阻害剤、活性化剤、又はモジュレーターの開発において、候補化合物をスクリーニングするためには、TRACP5bを大量に必要とする。
そのため、これまでに多くの研究者が、有用なヒトTRACP5bの作製を試みてきた。しかしながら、in vivoで直接TRACP5bを発現させた成功例はなく、大量の破骨細胞腫から精製する(非特許文献1)か、新鮮かつ大量の血清から単離せざるをえなかった(非特許文献2)。一方、昆虫細胞にTRACP5を発現させ(非特許文献3)、得られるTRACP5をin vitroでプロテアーゼを作用させてTRACP5bを作製しようという試みが知られている。しかしながら、極めてわずかしか目的物を得ることができないのが実状である(非特許文献4)。
これまでに本発明者らは、大腸菌、昆虫細胞、哺乳動物細胞などに様々な工夫を行い、TRACP5bを産生する試みを行ってきたが、成功することは出来なかった。その理由は、これらの系ではTRACP5bの生成における特殊な翻訳後修飾(非特許文献4)を再現できないことにある。また本発明者らは、TRACP5を作製してin vitroでカテプシンKなどによる酵素処理を行う方法を試みたが、工業化という観点で安定した酵素蛋白質の製造方法を確立することができなかった。
一方、近年、カイコによる遺伝子産物の生産技術が開発され、外来遺伝子の導入法や導入遺伝子発現制御法の研究が進められ、新たなタンパク質製造法として期待されている。例えば、組換えカイコ作出技術を利用して、絹糸腺の中に導入遺伝子を発現させ、組換えタンパク質を生産させることが知られている。カイコは真核生物であるため、大腸菌等の微生物や植物と比較すると、ほ乳類に近い型のタンパク質を作ることができる。また、カイコは組換えタンパク質を作るのに相応しい絹糸腺という器官を持っているので、一匹当たり1g弱のタンパク質を作る能力がある。さらに、人工飼料による清浄飼育が可能で、数万匹規模での大量飼育を容易に行うことができる。しかも、自然界に豊富にある桑の葉を用いてカイコの大量飼育を行えば、組換えタンパク質を安価かつ大量に得ることができる。
一方、組換えバキユロウイルスを用いて、ウイルス感染のカイコ幼虫を作製し、その体液から、インターフェロン等の医薬品(抗腫瘍・抗ウイルス剤等)等に用いられる有用蛋白質を得る方法もいくつか知られている。これも、カイコの蛋白質生成能力を生かした新たな蛋白質製造の方法を提供したといえる。
J.J.Stepan, K. H. W. Lau, S. Mohan, F. R. Singer, D. J. Baylink, (1990) PURIFICATION AND N-TERMINAL ACID SEQUENCE OF THE TARTRATE-RESISTANT ACID PHOSPHATASE FROM HUMAN OSTEOCLASTOMA: EVIDENCE FOR A SINGLE STRUCTURE. BIOCHEMICAL AND BIOPHYSICAL RESEARCH COMMUNICATIONS 168, 792-800. K. W. Lam, D. Ted Eastlund, Chin-Yang Li, Lung T. Yam, (1978) Biochemical Properties of Tartrate-Resistant Acid Phosphatase in Serum of Adults and Children CLINICAL CHEMISTRY 24, 1105-1108 Alison R. Hayman, Timotyh M. Cox, (1994) Purple Acid Phosphatase of the Human Macrophage and Osteoclast. THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY 269, 1294-1300. Jenny Ljusberg, Yunling Wang, Pernilla Lang, Maria Norgard, Robert Dodds, Kjell Hultenby, Barbro Ek-Rylander, Goran Andersson, (2005) Proteolytic Excision of a Repressive Loop Domain in Tartrate-resistant Acid Phosphatase by Cathepsin K in Osteoclasts. THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY 280, 28370-28381
上述したように、TRACP5bの重要性が増しているにもかかわらず、その製造には数多くの課題がある。そこで本発明者らは、カイコの特徴を生かし、カイコによるヒトTRACP5bの発現を検討した。即ち本発明が解決しようとする課題は、カイコを利用して、TRACP5bを大量に製造する方法を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、TRACP5をカイコで大量に製造し、そのTRACP5を処理してTRACP5bを製造することを試みたところ、驚くべきことに、ヒトTRACP5遺伝子を導入したカイコの絹糸腺から、直接、TRACP5bが生産されることを発見した。本発明は、かかる経過により成し遂げられたものである。
すなわち本発明は、カイコの絹糸線におけるTRACP5bの製造方法に関し、以下の〔1〕〜〔49〕を提供する。
〔1〕以下の(a)及び(b)の工程を含む、TRACP5bの製造方法;
(a)TRACP5をコードするDNAが導入されたカイコを製造する工程、
(b)製造されたカイコから、TRACP5bを回収する工程、
〔2〕以下の(a)及び(b)の工程を含む、TRACP5bの製造方法;
(a)絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを有するカイコであって、TRACP5bを絹糸腺に分泌するカイコを製造する工程、
(b)製造されたカイコから、該TRACP5bを回収する工程、
〔3〕カイコが、以下の(i)及び(ii)に記載のDNAを有するカイコである、〔2〕に記載の方法;
(i)絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNA、
(ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNA、
〔4〕カイコが、以下の(i)及び(ii)に記載のカイコを交配させることで製造される、〔2〕に記載の方法、
(i)絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNAを有するカイコ、
(ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNAを有するカイコ、
〔5〕転写制御因子がGAL4であり、標的プロモーターがUASである、〔3〕又は〔4〕に記載の方法、
〔6〕絹糸腺が中部絹糸腺又は後部絹糸腺である〔2〕から〔5〕のいずれかに記載の方法、
〔7〕絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターが、セリシン1タンパク質又はセリシン2タンパク質をコードするDNAのプロモーターである、〔6〕に記載の方法、
〔7−1〕セリシン1タンパク質をコードするDNAのプロモーターが、以下の(a)又は(b)である、〔7〕に記載の方法;
(a)配列番号:7に記載の塩基配列を含むDNA、
(b)配列番号:7に記載の塩基配列において1又は複数の塩基が置換、欠失、付加、及び/又は挿入された塩基配列を含むDNA、
〔7−2〕セリシン2タンパク質をコードするDNAのプロモーターが、以下の(a)又は(b)である、〔7〕に記載の方法;
(a)配列番号:8に記載の塩基配列を含むDNA、
(b)配列番号:8に記載の塩基配列において1又は複数の塩基が置換、欠失、付加、及び/又は挿入された塩基配列を含むDNA、
〔8〕絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターが、フィブロインタンパク質をコードするDNAのプロモーターである、〔6〕に記載の方法、
〔8−1〕フィブロインタンパク質をコードするDNAのプロモーターが、以下の(a)又は(b)である、〔8〕に記載の方法;
(a)配列番号:9に記載の塩基配列を含むDNA、
(b)配列番号:9に記載の塩基配列において1又は複数の塩基が置換、欠失、付加、及び/又は挿入された塩基配列を含むDNA、
〔9〕TRACP5がシグナル配列を有する、〔1〕から〔8−1〕のいずれかに記載の方法、
〔10〕TRACP5をコードするDNAをカイコに導入する工程を含む、TRACP5bを分泌するカイコの製造方法、
〔11〕TRACP5をコードするDNAをカイコ卵に導入する工程を含む、TRACP5bを分泌するカイコの製造方法、
〔12〕絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを有するカイコ卵を製造する工程を含む、TRACP5bを絹糸腺に分泌するカイコの製造方法、
〔13〕カイコが、以下の(i)及び(ii)に記載のDNAを有するカイコである、〔12〕に記載の方法;
(i)絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNA、
(ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNA、
〔14〕カイコが、以下の(i)及び(ii)に記載のカイコを交配させることで製造される、〔12〕に記載の方法;
(i)絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNAを有するカイコ、
(ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNAを有するカイコ、
〔15〕転写制御因子がGAL4であり、標的プロモーターがUASである、〔13〕又は〔14〕に記載の方法、
〔16〕絹糸腺が中部絹糸腺又は後部絹糸腺である〔12〕から〔15〕のいずれかに記載の方法、
〔17〕絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターが、セリシン1タンパク質又はセリシン2タンパク質をコードするDNAのプロモーターである、〔16〕に記載の方法、
〔17−1〕セリシン1タンパク質をコードするDNAのプロモーターが、以下の(a)又は(b)である、〔17〕に記載の方法;
(a)配列番号:7に記載の塩基配列を含むDNA、
(b)配列番号:7に記載の塩基配列において1又は複数の塩基が置換、欠失、付加、及び/又は挿入された塩基配列を含むDNA、
〔17−2〕セリシン2タンパク質をコードするDNAのプロモーターが、以下の(a)又は(b)である、〔17〕に記載の方法;
(a)配列番号:8に記載の塩基配列を含むDNA、
(b)配列番号:8に記載の塩基配列において1又は複数の塩基が置換、欠失、付加、及び/又は挿入された塩基配列を含むDNA、
〔18〕絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターが、フィブロインタンパク質をコードするDNAのプロモーターである、〔16〕に記載の方法、
〔18−1〕フィブロインタンパク質をコードするDNAのプロモーターが、以下の(a)又は(b)である、〔18〕に記載の方法;
(a)配列番号:9に記載の塩基配列を含むDNA、
(b)配列番号:9に記載の塩基配列において1又は複数の塩基が置換、欠失、付加、及び/又は挿入された塩基配列を含むDNA、
〔19〕TRACP5がシグナル配列を有する、〔10〕から〔18−1〕のいずれかに記載の方法、
〔20〕TRACP5をコードするDNAを有するカイコであって、TRACP5bを分泌するカイコ、
〔21〕絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを有するカイコであって、TRACP5bを絹糸腺に分泌するカイコ、
〔22〕以下の(i)及び(ii)に記載のDNAを有する、〔21〕に記載のカイコ;
(i)絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNA、
(ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNA、
〔23〕以下の(i)及び(ii)に記載のカイコを交配させることで製造される、〔21〕に記載のカイコ;
(i)絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNAを有するカイコ、
(ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNAを有するカイコ、
〔24〕転写制御因子がGAL4であり、標的プロモーターがUASである、〔22〕又は〔23〕に記載のカイコ、
〔25〕絹糸腺が中部絹糸腺又は後部絹糸腺である〔21〕から〔24〕のいずれかに記載のカイコ、
〔26〕絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターが、セリシン1タンパク質又はセリシン2タンパク質をコードするDNAのプロモーターである、〔25〕に記載のカイコ、
〔26−1〕セリシン1タンパク質をコードするDNAのプロモーターが、以下の(a)又は(b)である、〔26〕に記載のカイコ;
(a)配列番号:7に記載の塩基配列を含むDNA、
(b)配列番号:7に記載の塩基配列において1又は複数の塩基が置換、欠失、付加、及び/又は挿入された塩基配列を含むDNA、
〔26−2〕セリシン2タンパク質をコードするDNAのプロモーターが、以下の(a)又は(b)である、〔26〕に記載のカイコ;
(a)配列番号:8に記載の塩基配列を含むDNA、
(b)配列番号:8に記載の塩基配列において1又は複数の塩基が置換、欠失、付加、及び/又は挿入された塩基配列を含むDNA、
〔27〕絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターが、フィブロインタンパク質をコードするDNAのプロモーターである、〔25〕に記載のカイコ、
〔27−1〕フィブロインタンパク質をコードするDNAのプロモーターが、以下の(a)又は(b)である、〔27〕に記載のカイコ;
(a)配列番号:9に記載の塩基配列を含むDNA、
(b)配列番号:9に記載の塩基配列において1又は複数の塩基が置換、欠失、付加、及び/又は挿入された塩基配列を含むDNA、
〔28〕TRACP5がシグナル配列を有する、〔20〕から〔27−1〕のいずれかに記載のカイコ、
〔29〕転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNAを有するカイコ、
〔30〕転写制御因子がGAL4であり、標的プロモーターがUASである、〔29〕に記載のカイコ、
〔31〕TRACP5がシグナル配列を有する、〔29〕又は〔30〕に記載のカイコ、
〔32〕TRACP5bがTRACP5bの特異的阻害剤、活性化剤、又はモジュレーターの候補化合物のスクリーニングに使用される、〔1〕から〔9〕のいずれかに記載の方法、
〔33〕TRACP5bの特異的阻害剤、活性化剤、又はモジュレーターが骨吸収の増加に関連する疾患の治療に使用される、〔32〕に記載の方法、
〔34〕骨吸収の増加に関連する疾患が組織障害、骨代謝病、又は骨粗鬆症からなる群より選択される疾患である、〔33〕に記載の方法、
〔35〕以下の(a)及び(b)の工程を含む、TRACP5bの製造方法;
(a)細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを有するカイコであって、TRACP5bを脂肪体に分泌するカイコを製造する工程、
(b)製造されたカイコから、該TRACP5bを回収する工程、
〔36〕カイコが、以下の(i)及び(ii)に記載のDNAを有するカイコである、〔35〕に記載の方法;
(i)細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNA、
(ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNA、
〔37〕カイコが、以下の(i)及び(ii)に記載のカイコを交配させることで製造される、〔35〕に記載の方法;
(i)細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNAを有するカイコ、
(ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5bをコードするDNAを有するカイコ、
〔38〕転写制御因子がGAL4であり、標的プロモーターがUASである、〔36〕又は〔37〕に記載の方法、
〔38−1〕細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーターが、以下の(a)又は(b)である、〔38〕に記載の方法;
(a)配列番号:10に記載の塩基配列を含むDNA、
(b)配列番号:10に記載の塩基配列において1又は複数の塩基が置換、欠失、付加、及び/又は挿入された塩基配列を含むDNA、
〔39〕TRACP5がシグナル配列を有する、〔35〕から〔38−1〕のいずれかに記載の方法、
〔40〕細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを有するカイコ卵を製造する工程を含む、TRACP5bを脂肪体に分泌するカイコの製造方法、
〔41〕カイコが、以下の(i)及び(ii)に記載のDNAを有するカイコである、〔40〕に記載の方法;
(i)細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNA、
(ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNA、
〔42〕カイコが、以下の(i)及び(ii)に記載のカイコを交配させることで製造される、〔40〕に記載の方法;
(i)細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNAを有するカイコ、
(ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNAを有するカイコ、
〔43〕転写制御因子がGAL4であり、標的プロモーターがUASである、〔41〕又は〔42〕に記載の方法、
〔43−1〕細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーターが、以下の(a)又は(b)である、〔43〕に記載の方法;
(a)配列番号:10に記載の塩基配列を含むDNA、
(b)配列番号:10に記載の塩基配列において1又は複数の塩基が置換、欠失、付加、及び/又は挿入された塩基配列を含むDNA、
〔44〕TRACP5がシグナル配列を有する、〔40〕から〔43−1〕のいずれかに記載の方法、
〔45〕細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを有するカイコであって、TRACP5bを脂肪体に分泌するカイコ、
〔46〕以下の(i)及び(ii)に記載のDNAを有する、〔45〕に記載のカイコ;
(i)細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNA、
(ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNA、
〔47〕以下の(i)及び(ii)に記載のカイコを交配させることで製造される、〔45〕に記載のカイコ;
(i)細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNAを有するカイコ、
(ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNAを有するカイコ、
〔48〕転写制御因子がGAL4であり、標的プロモーターがUASである、〔46〕又は〔47〕に記載のカイコ、
〔48−1〕細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーターが、以下の(a)又は(b)である、〔48〕に記載のカイコ;
(a)配列番号:10に記載の塩基配列を含むDNA、
(b)配列番号:10に記載の塩基配列において1又は複数の塩基が置換、欠失、付加、及び/又は挿入された塩基配列を含むDNA、
〔49〕TRACP5がシグナル配列を有する、〔45〕から〔48−1〕のいずれかに記載のカイコ。
組換えカイコ作出のためのベクター pBMCSUASsigTRACP の構造を示す図である。 Ser1-GAL4系統とUAS-TRACP系統の交配によるヒトTRACP発現カイコの樹立を説明する図である。 GAL4遺伝子を持つ個体とUASを持つ個体の実体蛍光顕微鏡写真である。 RT-PCRによる交雑系統におけるGAL4遺伝子およびTRACP遺伝子の転写の確認を示す写真である。 Acidicディスク電気泳動で活性染色を行った時、TRACP発現カイコから得られたTRACPはヒト骨由来あるいは血清と同じく下部陰極側にバンドが位置したことからTRACP 5bの産生を示す図である。
〔発明の実施の形態〕
本発明は、カイコを利用したTRACP5bの製造方法に関する。本発明は、本発明者らが、カイコの体内において活性を有するTRACP5bを産生させることに成功したことに基づく。すなわち本発明は、以下の(a)及び(b)の工程を含む、TRACP5bの製造方法を提供する。
(a)TRACP5をコードするDNAが導入されたカイコを製造する工程。
(b)製造されたカイコから、TRACP5bを回収する工程。
本発明に用いるTRACP5としては、ヒト由来、マウス由来、ラット由来等のTRACP5が例示できる。本発明においてTRACP5をコードするDNAは、それを有するカイコが絹糸腺にTRACP5bを分泌する限り何ら制限されないが、ヒト由来のTRACP5がその応用用途の面から好ましい。具体的には、一例として、配列番号:5に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むDNAが挙げられる。また、配列番号:5に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列であって、酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含むDNAが例示できる。該DNAから得られるタンパク質がTRACP5bの活性を有するかどうかは、例えば、PCT国際公開2004年59320号公報、PCT国際公開2004年77059号公報、特表2002年510050号公報に記載のように、サンプルを、TRACP5bに対するモノクローナル抗体に結合した後、結合したTRACP5bを、TRACP5b用基質を用いてその至適pHにて測定することにより、判定することができる。
あるタンパク質と機能的に同等なタンパク質を調製するための、当業者によく知られた方法としては、ポリペプチドに変異を導入する方法が知られている。例えば、当業者であれば、部位特異的変異誘発法(Hashimoto-Gotoh, T. et al. (1995) Gene 152, 271-275、Zoller, MJ, and Smith, M.(1983) Methods Enzymol. 100, 468-500、Kramer, W. et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456、Kramer W, and Fritz HJ(1987) Methods. Enzymol. 154, 350-367、Kunkel,TA(1985) Proc Natl Acad Sci USA. 82, 488-492、Kunkel (1988) Methods Enzymol. 85, 2763-2766)などを用いて、TRACP5に適宜変異を導入することにより、TRACP5bと機能的に同等なタンパク質を調製することができる。また、アミノ酸の変異は自然界においても生じうる。このように、TRACP5のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が変異したアミノ酸配列を有し、TRACP5と機能的に同等なタンパク質をコードする塩基配列を含むDNAも、本発明のTRACP5bの製造に用いられる。なお、このような変異体における、変異するアミノ酸数は、通常、50アミノ酸以内であり、好ましくは30アミノ酸以内であり、さらに好ましくは10アミノ酸以内(例えば、5アミノ酸以内)であると考えられる。
変異するアミノ酸残基においては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが望ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ酸(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。
あるアミノ酸配列に対する1又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することはすでに知られている(Mark, D. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1984) 81, 5662-5666 、Zoller, M. J. & Smith, M. Nucleic Acids Research (1982) 10, 6487-6500 、Wang, A. et al., Science 224, 1431-1433 、Dalbadie-McFarland, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982) 79, 6409-6413 )。
本発明においては、産生されるTRACP5bの活性を保持するため、または、分泌を促進し回収量を多くするために、TRACP5をコードするDNAは分泌シグナル(シグナル配列)を有していてもよい。分泌タンパク質や膜内在性タンパク質は、小胞体膜結合性のリボソーム上で合成された後に、脂質二重層を通り抜けなければならない。シグナル配列とは、この時に必要な、タンパク質のN末端に存在するアミノ酸残基である。
本発明におけるシグナル配列は、上記機能を有するものであれば特に限定されず、例えばヒト、マウス、ラット、ウサギ、ロバ、ヤギ、ウマ、トリ、イヌ、ネコ、酵母、昆虫由来のシグナル配列を好適に使用することが出来る。
また本発明の好ましいシグナル配列として、例えば、TRACP5のシグナル配列が挙げられる。TRACP5の由来は特に制限されず、例えばヒト、マウス、ラット、ウサギ、ロバ、ヤギ、ウマ、トリ、イヌ、ネコ由来のTRACP5が挙げられる。本発明においてヒトTRACP5bを製造する場合、特に好ましいシグナル配列は、ヒトTRACP5のシグナル配列である。これらのシグナル配列を用いることにより、発現したTRACP5bを効率よく製造させることができる。
ヒト由来のTRACP5のシグナル配列としては、配列番号:6に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質が挙げられる。また、配列番号:6に記載のタンパク質と同等の活性を有するものであれば、配列番号:6に記載のアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列も、シグナル配列として使用できる。ここで「機能的に同等」とは、対象となるタンパク質が配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と同様の生物学的あるいは生化学的活性を有することを指す。
本発明におけるシグナル配列は、これに制限されるものではないが、TRACP5bのN末端に結合していることが好ましい。
なお、本発明の方法によって製造されるTRACP5bは、本発明の方法によって製造される限りなんら限定されず、シグナル配列を有していても、有していなくてもよい。即ち、本発明の製造方法によって製造されるTRACP5bには、シグナル配列を有しているTRACP5b、シグナル配列を有していないTRACP5bの両方が含まれる。
本発明において製造されるTRACP5bは、TRACP5をコードするDNAから転写され、破骨細胞由来のTRACP5活性、すなわち、TRACP5b活性を有する酵素であれば、特に限定されない。TRACP5b活性を有するか否かは、当業者に周知のTRACP5b測定法によって判定することが可能である。本発明において製造されるTRACP5bは、好ましくはTRACP5bの特異的阻害剤、活性化剤、又はモジュレーターの候補化合物のスクリーニングに用いられる。またTRACP5bは、Acidicディスク電気泳動で活性染色を行った時、下部陰極側にバンドが位置し、破骨細胞から入手した酒石酸耐性酸性ホスファターゼと同一のところに位置するものが好ましい。なお、TRACP5をコードするDNAの1つの例として、配列番号:4に記載の塩基配列からなるDNAが挙げられる。
以下、本発明のTRACP5bの製造方法をより具体的に説明する。本発明のTRACP5bの製造方法においてはまず、TRACP5をコードするDNAが導入されたカイコを製造する。TRACP5をコードするDNAが導入されたカイコを製造する方法としては、例えば、
(i)絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを有するトランスジェニックカイコであって、TRACP5bを絹糸腺に分泌するトランスジェニックカイコを製造する方法(第一例)、
(ii)TRACP5をコードするDNAを含むウイルスを作成しそれをカイコ生体内に感染させて製造する方法(第二例)
等を例示することができるが、これらに限定されない。
本発明において、TRACP5をコードするDNAが導入されたカイコを製造する方法として、TRACP5をコードするDNAを含むウイルスを作成しそれをカイコ生体内に感染させて製造する方法(第二例)を用いる場合、例えば、特開平7−289270号に記載の方法によって行うことが出来る。より具体的には、ウイルス(好ましくはバキュロウイルス、更に好ましくはカイコ核多角体病ウイルス)DNAの蛋白構造遺伝子部分の全部または一部とTRACP5を連結させた塩基配列を有するウイルスを作成し、それをカイコ生体内に感染させることにより製造することができる。
また第二例を用いる場合、製造されたカイコからTRACP5bを回収する方法としては、カイコの体液を抽出してTRACP5bを回収する方法が挙げられる。具体的には、例えば、カイコの腹部を切り、冷水で体液を抽出し精製することにより、TRACP5bを回収することができる。
なお本発明のTRACP5bの製造方法においては、TRACP5bを大量にかつ簡単に製造することができる点で、前記第一例が好ましい。これ以降、第一例に関して詳細に説明する。
本発明のTRACP5bの製造方法の1つの具体的な好ましい態様においては、TRACP5bは、カイコの絹糸腺において産生されることを特徴とする。すなわち本発明は、以下の(a)及び(b)の工程を含む、TRACP5bの製造方法に関する。
(a)絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを有するカイコであって、TRACP5bを絹糸腺に分泌するカイコを製造する工程。
(b)製造されたカイコから、該TRACP5bを回収する工程。
本発明のカイコを製造する工程においては、例えばまず、カイコ卵に、絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを導入する。
次いで、製造されたカイコ卵から生じたカイコの中から、TRACP5bを絹糸腺に分泌するカイコを選択することにより、TRACP5bを絹糸腺に分泌するカイコを製造する。
本発明において、カイコを選択するには、例えば、選択マーカーを用いて行うことができる。本発明における選択マーカーとしては、当業者において一般的に使用されるマーカー、例えば、CFP、GFP、YFP、DsRed等の蛍光タンパク質を使用することができる。これらのマーカーを用いることにより、実体蛍光顕微鏡で観察するだけでカイコを検出することができる。また、蛍光色が異なるので、複数のマーカーを同時に使用することもできる。
なお、TRACP5をコードするDNAの1つの例として、配列番号:4に記載の塩基配列からなるDNAが挙げられる。このようなDNAが挿入されたベクターをカイコに導入することによって、カイコの絹糸腺中にTRACP5bを分泌することが可能である。
本発明においては、TRACP5bは絹糸腺に分泌される。絹糸腺とはカイコの体内に2本1組として存在する器官であり、絹糸タンパク質の合成器官である。絹糸腺は後部絹糸腺、中部絹糸腺、前部絹糸腺に分けられ、絹タンパク質の合成は後部絹糸腺及び中部絹糸腺にて行われる。本発明において好ましい絹糸腺は、中部絹糸腺及び後部絹糸腺である。
本発明における絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって直接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを有するカイコ卵としては、例えば、絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、TRACP5をコードするDNAが機能的に結合したDNAを有するカイコ卵が挙げられる。このようなカイコ卵は、絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、TRACP5をコードするDNAが機能的に結合したDNAをカイコ卵に導入することで製造できる。
また、本発明における絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを有するカイコ卵としては、例えば、
(i)絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、転写制御因子をコードするDNAが機能的に結合したDNA、及び
(ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、TRACP5をコードするDNAが機能的に結合したDNA、
を有するカイコ卵が挙げられる。
なお本発明においては、絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAは、TRACP5bの分泌を促進し回収量を多くするため、シグナル配列を有していてもよい。シグナル配列の具体的な態様は、上述の通りである。
上記「機能的に結合した」とは、プロモーターに転写制御因子が結合することにより、プロモーターの下流に存在するDNAの発現が誘導されるように、該プロモーターと該DNAとが結合していることをいう。従って、該DNAが他の遺伝子と結合しており、他の遺伝子産物との融合タンパク質を形成する場合であっても、該プロモーターに転写制御因子が結合することによって、該融合タンパク質の発現が誘導されるものであれば、上記「機能的に結合した」の意に含まれる。
上記転写制御因子と標的配列の組み合わせとしては、GAL4とUAS、TetRとTREなどが挙げられる。GAL4とUAS、又はTetRとTREを用いることにより、目的とする遺伝子の発現部位や時期、量を正確に制御でき、多くの組織で容易に発現させることができる。また、発現させる遺伝子が致死性の遺伝子でも系統の作出が可能である。
上記カイコ卵を製造する方法としては、種々の方法を選択できる。例えば、上記(i)及び(ii)のDNAを別々のカイコ卵に導入する。両方のDNAを有するカイコ卵は、それぞれのDNAが導入されたカイコ卵から生じたカイコ同士を交配させることで得ることができる。この場合、転写制御因子により、発現する組織、時期、量などを決めることができるため、発現させたい遺伝子を導入した系統と交配することにより、多くの系統を作ることなく、各組織や時期、量などを変えることができる利点がある。また、目的遺伝子を発現させた場合、不妊になる場合でも実験が可能である。さらに、単独のプロモーターを使った場合より、導入遺伝子からの生産物の量が増えるという利点もある。また、上記(i)及び(ii)のDNAを有するカイコ卵は、片方のDNAが導入されたカイコが産卵した卵に、もう片方のDNAを人為的に導入することで得ることもできる。また、上記(i)のDNAと上記(ii)のDNAを、同じ卵に導入することによっても、両方のDNAを有するカイコ卵を得ることが出来る(Imamura, M., Nakai, J., Inoue, S., Quan, G.-X., Kanda, T. and Tamura, T.(2003)Targeted gene expression using the GAL4/UAS system in the silkworm Bombyx mori. Fourth International Workshop on Transgenesis and Genomics of Invertegrate Organisms, Asilomar, P53.)。
カイコ卵へのDNAの導入は、例えば、カイコの発生初期卵へ、トランスポゾンをベクターとして注射する方法(Tamura, T., Thibert, C., Royer ,C., Kanda, T., Abraham, E., Kamba, M., Komoto, N., Thomas, J.-L., Mauchamp, B., Chavancy, G., Shirk, P., Fraser, M., Prudhomme, J.-C. and Couble, P., 2000, Nature Biotechnology 18, 81-84)に従って行うことができる。例えば、トランスポゾンの逆位末端反復配列(Handler AM, McCombs SD, Fraser MJ, Saul SH.(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95(13):7520-5)の間に上記DNAを挿入したベクターとともに、トランスポゾン転移酵素をコードするDNAを有するベクター(ヘルパーベクター)をカイコ卵に導入する。ヘルパーベクターとしては、pHA3PIG (Tamura, T., Thibert, C., Royer ,C., Kanda, T., Abraham, E., Kamba, M., Komoto, N., Thomas, J.-L., Mauchamp, B., Chavancy, G., Shirk, P., Fraser, M., Prudhomme, J.-C. and Couble, P., 2000, Nature Biotechnology 18, 81-84)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明におけるトランスポゾンとしては、piggyBacが好ましいが、これに限定されるものではなく、マリーナ(mariner)、ミノス(minos)等を用いることもできる(Shimizu, K., Kamba, M., Sonobe, H., Kanda, T., Klinakis, A. G., Savakis, C. and Tamura, T. (2000) Insect Mol. Biol., 9, 277-281;Wang W, Swevers L, Iatrou K.(2000) Insect Mol Biol 9(2):145-55)。
また本発明における絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターとしては、中部絹糸腺においては、例えばセリシン1タンパク質又はセリシン2タンパク質をコードするDNAのプロモーターが挙げられる。セリシン1タンパク質又はセリシン2タンパク質をコードするDNAのプロモーターとしては、配列番号:7又は8に記載の塩基配列を含むDNAが挙げられる。配列番号:7又は8に記載の塩基配列を含むDNAとしては、配列番号:7又は8に記載の塩基配列からなるDNA、配列番号:7又は8に記載の塩基配列からなるDNAの上流域や下流域を含むDNAなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。配列番号:7又は8に記載の塩基配列からなるDNAの上流域や下流域は、文献(Okamoto, H., Ishikawa, E. and Suzuki, Y. (1982) Structural analysis of sericin genes. Homologies with fibroin gene in the 5' flanking nucleotide sequences. J Biol Chem, 257, 15192-15199.、Garel, A., Deleage, G. and Prudhomme, J.C. (1997) Structure and organization of the Bombyx mori sericin 1 gene and of the sericins 1 deduced from the sequence of the Ser 1B cDNA. Insect Biochem Mol Biol, 27, 469-477.、Michaille, J.J., Garel, A. and Prudhomme, J.C. (1990) Cloning and characterization of the highly polymorphic Ser2 gene of Bombyx mori. Gene, 86, 177-184.)に開示されている。
また、本発明における中部絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターとしては、配列番号:7又は8に記載の塩基配列を含むDNAと構造的に類似しており、かつ、配列番号:7又は8に記載の塩基配列を含むDNAと同等あるいは改善されたプロモーター活性を持つDNAも挙げられる。このようなDNAとしては、例えば、配列番号:7又は8に記載の塩基配列において1又は複数の塩基が置換、欠失、付加、及び/又は挿入された塩基配列を含むDNAが例示できる。該DNAは、ハイブリダイゼーション技術やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術、site-directed mutagenesis法、DNA合成等の方法により調製することが可能である。調製されたDNAがプロモーター活性を有するか否かは、当業者においてはレポーター遺伝子を用いた周知のレポーターアッセイ等により検討することが可能である。
該レポーター遺伝子としては、その発現が検出可能なものであれば特に制限されず、例えば、当業者において一般的に使用されるCAT遺伝子、lacZ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、β-グルクロニダーゼ遺伝子(GUS)及びGFP遺伝子等を挙げることができる。レポーター遺伝子の発現レベルは、該レポーター遺伝子の種類に応じて、当業者に公知の方法により測定することができる。例えば、レポーター遺伝子がCAT遺伝子である場合には、該遺伝子産物によるクロラムフェニコールのアセチル化を検出することによって、レポーター遺伝子の発現レベルを測定することができる。レポーター遺伝子がlacZ遺伝子である場合には、該遺伝子発現産物の触媒作用による色素化合物の発色を検出することにより、また、ルシフェラーゼ遺伝子である場合には、該遺伝子発現産物の触媒作用による蛍光化合物の蛍光を検出することにより、また、β-グルクロニダーゼ遺伝子(GUS)である場合には、該遺伝子発現産物の触媒作用によるGlucuron(ICN社)の発光や5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-グルクロニド(X-Gluc)の発色を検出することにより、さらに、GFP遺伝子である場合には、GFPタンパク質による蛍光を検出することにより、レポーター遺伝子の発現レベルを測定することができる。
一方、本発明における後部絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターとしては、例えばフィブロインL鎖タンパク質をコードするDNAのプロモーターが挙げられる。フィブロインL鎖タンパク質をコードするDNAのプロモーターとしては、配列番号:9に記載の塩基配列を含むDNAが挙げられる。配列番号:9に記載の塩基配列を含むDNAとしては、配列番号:9に記載の塩基配列からなるDNA、配列番号:9に記載の塩基配列からなるDNAの上流域や下流域を含むDNAなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。配列番号:9に記載の塩基配列からなるDNAの上流域や下流域は、文献(KIKUCHI, Y., K. MORI, S. SUZUKI, K. YAMAGUCHI and S. MIZUNO, 1992 Structure of the Bombyx mori fibroin light-chain-encoding gene: upstream sequence elements common to the light and heavy chain. Gene 110: 151-158.)に開示されている。
また、本発明における後部絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターとして、配列番号:9に記載の塩基配列を含むDNAと構造的に類似しており、かつ、配列番号:9に記載の塩基配列を含むDNAと同等あるいは改善されたプロモーター活性を持つDNAも挙げられる。これらのプロモーターは、上述の方法により調整することが可能である。
本発明のTRACP5bの製造方法は、カイコ体内で合成されたTRACP5bを回収する工程を含む。合成されたTRACP5bは、不溶化せずに、活性のある状態で、中部絹糸腺又は後部絹糸腺に分泌される。従って、TRACP5bは、中部絹糸腺又は後部絹糸腺から回収することが可能である。TRACP5bを中部絹糸腺又は後部絹糸腺から回収する方法としては、例えば、吐糸期になったカイコを解剖し、中部絹糸腺又は後部絹糸腺を20mM Tris-HCl pH7.4中に摘出し、絹糸腺をピンセットやメスで傷をいれる事により絹糸腺中のTRACP5bを回収できるが、これに限定されない。
絹糸腺から抽出したタンパク質溶液からTRACP5bを精製するには、例えば、以下のようにすると良い。抽出液をCM-Sepharoseカラムにアプライし、塩濃度を変化させたリニアグラジエントで溶出し、この溶出画分のTRACP5b活性を測定し、TRACP5b活性のあるフラクションを回収し、スピンカラムで濃縮する。続いて、得られるTRACP5b活性液をSuperdex200カラムでゲルろ過を行い、同様にTRACP5b活性を有する画分を回収し濃縮する。さらに、ヘパリンカラム(HiTrap Heparin HP、 GEヘルスケア社)で塩濃度を変化させたリニアグラジエントで精製し、同様にTRACP5b活性を有するフラクションをスピンカラムで濃縮する。これらのフラクションは、例えば、酸性電気泳動でTRACP5bの有無、精製状況を確認できる。
また本発明のTRACP5bは、例えば、カイコが吐糸した繭から回収することも可能である。回収方法としては、当業者に周知の方法、例えば繭を60%LiSCNで溶かし、20mMTris、5M ureaで透析することによって回収する方法(Inoue, S., Tsuda, H., Tanaka, H., Magoshi, Y and Mizuno (2001) Sericologia 4, 157-163. )を使用することができるが、これに限定されない。また、その他の回収法としては、例えば界面活性剤を用いる方法や水溶液で溶かす方法等が可能である。
また、本発明におけるカイコとしては、特に制限はないが、TRACP5bの大量生産のために、フィブロインタンパク質などの絹糸を構成するタンパク質をコードするDNA領域(コード領域、プロモーター領域、非翻訳領域を含む)の変異によって、絹糸を構成するタンパク質の生産が抑制されているカイコを用いることが好ましい。このようなカイコとしては、絹糸を構成するタンパク質をコードするDNA領域の変異によって絹糸を構成するタンパク質の生産が抑制されている突然変異系統のカイコ、好ましくは該変異によって絹糸を構成するタンパク質の生産が抑制されている裸蛹系統のカイコ、より好ましくはNd-sDが挙げられるが、これらに限定されない。本発明のカイコは、絹糸を構成するタンパク質の生産抑制の原因が人為的か否か、また、自然界において生じた変異に依存するか否かに関わらず、絹糸を構成するタンパク質の生産が抑制されているカイコであればよい。
このようなカイコの1つの態様は、セリシン蚕として当業者には周知のカイコである。セリシン蚕を利用することによって、中部絹糸腺におけるTRACP5bの大量生産が可能となり、染色体に導入されたTRACP5をコードするDNAから合成されるTRACP5bの精製も容易になる。また、後部絹糸腺においてTRACP5bを産生させる際にも、生産量の点でセリシン蚕を用いることが好ましい。
また、本発明におけるカイコとしては、非休眠卵を産下する性質を有するカイコ、休眠卵を産下する性質を有するカイコ(例えば実用品種であるぐんま、200、春嶺、鐘月、錦秋、鐘和等)を使用することができる。ここで、休眠卵とは産卵後胚発生が一時的に停止する卵を言い、非休眠卵とは産卵後胚発生が停止せず、幼虫が孵化する卵を言う。
休眠卵を産下する性質を有するカイコを用いる場合は、非休眠卵を産下させ、該非休眠卵にDNAを導入する。非休眠卵を産下させる方法としては、例えばぐんまにおいては、休眠卵を15℃〜21℃で培養することで該休眠卵から生じた成虫に非休眠卵を産下させる方法、好ましくは休眠卵を16℃〜20℃で培養することで該休眠卵から生じた成虫に非休眠卵を産下させる方法、より好ましくは休眠卵を18℃で培養することで該休眠卵から生じた成虫に非休眠卵を産下させる方法、最も好ましくは休眠卵を18℃で培養することで該休眠卵から生じた幼虫を全明で飼育し、生育した成虫に非休眠卵を産下させる方法を挙げることができる。また、200においては、休眠卵を15℃〜21℃で培養することで該休眠卵から生じた成虫に非休眠卵を産下させる方法、好ましくは休眠卵を16℃〜20℃で培養することで該休眠卵から生じた成虫に非休眠卵を産下させる方法、より好ましくは休眠卵を18℃で培養することで該休眠卵から生じた成虫に非休眠卵を産下させる方法、又は休眠卵から生じた幼虫を全明で飼育し、生育した成虫に非休眠卵を産下させる方法、最も好ましくは休眠卵を25℃で培養することで該休眠卵から生じた幼虫を全明で飼育し、生育した成虫に非休眠卵を産下させる方法が挙げられるが、これらに限定されない。
卵の培養は、例えば、18℃〜25℃のインキュベーター、又は定温の部屋に入れることによって行うことができ、幼虫の飼育は20℃〜29℃の飼育室で人工飼料を用いて行うことができる。
本発明の上記休眠卵の培養は、当業者においては、一般的なカイコ卵の培養法に従って行うことができる。例えば、「文部省(1978)蚕種製造.pp193、実教出版社、東京」に記載の方法に従って培養を行う。また、本発明におけるカイコ幼虫の飼育は、当業者においては、周知の方法によって行うことができる。例えば、「文部省(1978)蚕種製造.pp193、実教出版社、東京」に記載の方法に従って飼育を行う。
本発明において、産卵された卵が非休眠卵であるか否かは、卵の色で判定することができる。一般に休眠卵は濃い茶褐色に着色し、非休眠卵は黄白色であることが知られている。よって本発明においては、濃い茶褐色ではないこと、より好ましくは黄白色であることをもって産卵された卵が非休眠卵であると判定する。
以下、カイコ卵へのDNAの導入方法の具体例を記すが、本発明におけるカイコ卵へのDNAの導入方法は、この方法に限定されるものでない。例えば、カイコ卵へDNA注入用の管を使用して直接卵内へDNAを導入することが可能であるが、好ましい態様としては、前もって物理的又は化学的に卵殻に穴を空け、該穴からDNAを導入する。この際、DNA注入用の管を挿入角度が該卵の腹側の側面に対してほぼ垂直となるように該穴から卵内に挿入することができる。
本発明において、物理的に卵殻に穴を空ける方法としては、例えば針、微小レーザー等を用いて穴を空ける方法が挙げられる。好適には針を用いた方法によって卵殻に穴を空けることができる。該針は、カイコの卵殻に穴を空けることができるものであれば、その針の材質、強度等は、特に制限されない。なお、本発明における針とは、通常、先端が尖った棒状の針を指すが、この形状に限定されず、卵殻に穴を空けることができるものであれば、全体の形状は特に制限されない。例えば、先端の尖ったピラミッド型の物質、又は先端の尖った三角錐の形状の物質もまた、本発明の「針」に含まれる。本発明においては、タングステン針を好適に使用することができる。本発明の針の太さ(直径)は、後述のキャピラリが通過可能な穴を空けることができる程度の太さであればよく、通常2〜20μm、好ましくは5〜10μmである。一方、化学的に卵殻に穴を空ける方法としては、例えば薬品(次亜塩素酸等)等を用いて穴を空ける方法が挙げられる。
本発明において、穴を空ける位置としては、該穴からDNA注入用の管を挿入した場合に卵の腹側の側面に対する挿入角度を、ほぼ垂直にできる位置ならば特に制限はないが、好ましくは腹側の側面又はその反対側であり、より好ましくは腹側の側面であり、さらに好ましくは卵の腹側側面のやや後端よりの中央部である。
本発明において、「ほぼ垂直」とは、70°〜120°を意味し、好ましくは80°〜90°を意味する。本発明において、「将来的に生殖細胞になる位置」としては、通常、卵の腹側の卵表に近い位置(通常、卵表から0.01mm〜0.05mmの位置)であり、好ましくは、卵の腹側中央の卵表に近い位置でやや後極よりの位置である。
本発明のDNA注入用の管の材質、強度、内径等は特に制限されないが、DNA注入用の管を挿入する前に、物理的又は化学的に卵殻に穴を空ける場合は、空けられた穴を通過できる太さ(外径)であることが好ましい。本発明のDNA注入用の管としては、例えば、ガラスキャピラリー等を挙げることができる。
本発明のDNAの導入方法において、好ましい態様としては、上記のカイコ卵に物理的又は化学的に穴を空け、DNA注入用の管を挿入角度が該卵の腹側の側面に対してほぼ垂直となるように該穴から卵内に挿入し、DNAを注入する工程を、針とDNA注入用の管が一体型となったマニュピュレーターを使用して行う。通常、該マニュピュレーターを構成要素の1つとする装置を使用して本発明は好適に実施される。
このような装置としては、解剖顕微鏡、照明装置、可動式のステージ、顕微鏡に金具で固定した粗動マニュピュレーター、このマニュピュレーターに付けたマイクロマニュピュレーター、DNAを注射するための空気圧を調整するインジェクターから構成されている。インジェクターに用いる圧力は窒素ボンベから供給され、圧力のスイッチはフットスイッチによっていれることができる。注射はガラススライド等の基板上に固定した卵に対して行い、卵の位置は移動式のステージによって決める。また、マイクロマニュピュレーターのガラスキャピラリーは4本のチューブで繋がれた操作部によって操作する。実際の手順は、卵に対するタングステン針の位置を粗動マニュピュレーターで決め、ステージのレバーで水平方向に卵を動かし穴を空ける。続いて、マイクロマニュピュレーターの操作部のレバーを操作して、穴の位置にガラスキャピラリーの先端を誘導し、再びステージのレバーによりキャピラリを卵に挿入する。この場合、卵の腹側の側面に対し垂直にガラスキャピラリーが挿入される必要がある。フットスイッチを入れDNAを注射し、レバーを操作して卵からキャピラリを抜く。空けた穴を瞬間接着剤等でふさぎ、一定の温度及び、一定の湿度のインキュベーターで保護する。本発明に使用される装置としては、好適には、特許第1654050号に記載の装置又は該装置を改良した装置が挙げられる。
また、本発明の態様においては、DNAの導入に用いるカイコ卵が基板に固定されていることが好ましい。本発明の基板として、例えば、スライドグラス、プラスチック板等を用いることができるが、これらに特に制限されない。本発明の上記態様においては、カイコ卵内の将来的に生殖細胞になる位置に正確にDNAを注射するために、卵の方向を揃えて固定することが望ましい。また、上記態様においては、基板へ固定するカイコ卵の数には、特に制限はない。また、複数個のカイコ卵を用いる場合、カイコ卵を基板へ固定する方向性としては、好ましくは背腹の向きが一定となるような方向である。本発明の上記カイコ卵の基板への固定は、例えば、水性の糊をあらかじめ塗布した市販の台紙(バラ種台紙)の上に産卵させ、台紙に水を加えて卵をはがし、次いで濡れた状態の卵を基板に整列させ、風乾することによって行う。卵はスライドグラス上に卵の方向を揃えて固定することが好ましい。また、卵の基盤への固定は両面テープや接着剤等を用いることによっても可能である。
カイコ卵にDNAが導入されたか否かは、例えば、注射したDNAを卵から再度抽出して測定する方法(Nagaraju, J., Kanda, T., Yukuhiro, K., Chavancy, G., Tamura, T. and Couble, P.(1996)Attempt of transgenesis of the silkworm(Bombyx mori L) by egg-injection of foreign DNA. Appl. Entomol. Zool., 31, 589-598)や、注射したDNAの卵内での発現を見る方法(Tamura, T., Kanda, T., Takiya, S., Okano, K. and Maekawa, H. (1990). Transient expression of chimeric CAT genes injected into early embryos of the domesticated silkworm, Bombyx mori. Jpn. J. Genet., 65, 401-410)等によって確認することができる。
本発明のTRACP5bの製造方法の別の具体的な態様においては、TRACP5bは、カイコの脂肪体において産生されることを特徴とする。すなわち本発明は、以下の(a)及び(b)の工程を含む、TRACP5bの製造方法に関する。
(a)細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを有するカイコであって、TRACP5bを脂肪体に分泌するカイコを製造する工程。
(b)製造されたカイコから、該TRACP5bを回収する工程。
本発明のカイコを製造する工程においては、まず、細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを有するカイコ卵を製造する。次いで、製造されたカイコ卵から生じたカイコの中から、TRACP5bを脂肪体に分泌するカイコを選択する。カイコの選択は、上述の方法によって行うことが出来る。
本発明における細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって直接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを有するカイコ卵としては、例えば、細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、TRACP5をコードするDNAが機能的に結合したDNAを有するカイコ卵が挙げられる。このようなカイコ卵は、細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、TRACP5をコードするDNAが機能的に結合したDNAをカイコ卵に導入することで製造できる。
また、本発明における細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを有するカイコ卵としては、例えば、(i)細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、転写制御因子をコードするDNAが機能的に結合したDNA、及び(ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、TRACP5をコードするDNAが機能的に結合したDNA、を有するカイコ卵が挙げられる。「機能的に結合した」の定義は、上述の通りである。また、転写制御因子と標的配列の組み合わせも、上述のものが挙げられる。
カイコ卵の製造は上述の方法によって行うことが可能である。例えば、上記(i)及び(ii)のDNAを別々のカイコ卵に導入する。両方のDNAを有するカイコ卵は、それぞれのDNAが導入されたカイコ卵から生じたカイコ同士を交配させることで得ることができる。また、上記(i)及び(ii)のDNAを有するカイコ卵は、片方のDNAが導入されたカイコが産卵した卵に、もう片方のDNAを人為的に導入することで得ることが出来る。さらには、上記(i)のDNAと上記(ii)のDNAを、同じ卵に導入することによっても、両方のDNAを有するカイコ卵を得ることが出来る。カイコ卵へのDNAの導入は、上述の方法によって行うことが出来る。
上記細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーターとしては、配列番号:10に記載の塩基配列を含むDNAが挙げられる。配列番号:10に記載の塩基配列を含むDNAとしては、配列番号:10に記載の塩基配列からなるDNA、配列番号:10に記載の塩基配列からなるDNAの上流域や下流域を含むDNAなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明における細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーターとして、配列番号:10に記載の塩基配列を含むDNAと構造的に類似しており、かつ、配列番号:10に記載の塩基配列を含むDNAと同等あるいは改善されたプロモーター活性能を持つDNAも挙げられる。これらのプロモーターもまた、上述の方法により調整することが可能である。配列番号:10に記載の塩基配列からなるDNAの上流域や下流域は、文献(MANGE, A., E. JULIEN, J. C. PRUDHOMME and P. COUBLE, 1997 A strong inhibitory element down-regulates SRE-stimulated transcription of the A3 cytoplasmic actin gene of Bombyx mori. J Mol Biol 265: 266-274.)に開示されている。
上記転写制御因子と標的配列の組み合わせは、上述のものを使用することが可能である。なお、細胞質アクチンをコードするDNAのプロモーターの下流にGAL4遺伝子を繋いだものをカイコゲノムに挿入したカイコ(上記(i)のDNAを有するカイコ卵から作出されたカイコ)の具体的な態様および作出方法は、文献(IMAMURA, M., J. NAKAI, S. INOUE, G. X. QUAN, T. KANDA et al., 2003 Targeted gene expression using the GAL4/UAS system in the silkworm Bombyx mori. Genetics 165: 1329-1340.)に開示されている。
なお本発明においては、細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAは、シグナル配列を有していてもよい。シグナル配列の具体的な態様は、上述の通りである。
上記の方法によって産生されるTRACP5bは、例えば脂肪体から回収することが出来る。脂肪体からのTRACP5bの回収は、当業者であれば公知の方法、例えば幼虫体内から脂肪体を摘出し、タンパク質抽出のための緩衝液でホモジェナイズすることや脂肪体から体液に分泌させ、体液を分取することによって行うことが可能である。
また、TRACP5bとTRACP5aの分離も、上述の方法によって行うことが可能である。
なお、本発明の方法によって製造されるTRACP5bは、本発明の方法によって製造される限りなんら限定されず、シグナル配列を有していても、有していなくてもよい。即ち、本発明のTRACP5bの製造方法によって製造されるTRACP5bには、シグナル配列を有しているTRACP5b、シグナル配列を有していないTRACP5bの両方が含まれる。
また、本発明は、TRACP5をコードするDNAを有するカイコであって、TRACP5bを分泌するカイコに関する。具体的には、絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを有するカイコであって、TRACP5bを絹糸腺に分泌するカイコに関する。もしくは、(i)絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNA、及び(ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNAを有するカイコ、又は絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、TRACP5をコードするDNAが機能的に結合したDNAを有するカイコを提供する。
なお本発明においては、絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAは、TRACP5bの分泌を促進し回収量を多くするため、シグナル配列を有していてもよい。シグナル配列の具体的な態様は上述の通りである。
さらに本発明は、細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを有するカイコであって、TRACP5bを脂肪体に分泌するカイコに関する。具体的には、(i)細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNA、及び(ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNAを有するカイコ、又は細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、TRACP5をコードするDNAが機能的に結合したDNAを有するカイコを提供する。
なお本発明においては、細胞質アクチンタンパク質をコードするDNAのプロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAは、TRACP5bの分泌を促進し回収量を多くするため、シグナル配列を有していてもよい。シグナル配列の具体的な態様は上述の通りである。また本発明のカイコには、その卵も含まれる。
これらのカイコは、上述の方法によって作成することが出来る。また本発明のカイコの状態に特に制限はなく、例えば卵の状態であってもよい。本発明のカイコを使用することで、TRACP5bを大量に生産することができる。
また、本発明は、転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNAを有するカイコも提供する。転写制御因子、標的プロモーターとしては、上述のものが挙げられる。このようなカイコは、上記(i)及び(ii)のDNAを有するカイコの製造や、その卵の製造に利用できる。
なお本発明においては、絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAは、TRACP5bの分泌を促進し回収量を多くするため、シグナル配列を有していてもよい。シグナル配列の具体的な態様は上述の通りである。
さらに、本発明は、本発明のカイコによって吐糸された繭を提供する。このような繭は、TRACP5bを大量に含有する繭として有用である。また、本発明は、該繭から製造される絹糸であって、TRACP5bを含む絹糸を提供する。また、公知の手法により、本発明の絹糸を含有する絹織物、例えばTRACP5bを含有する絹織物を作製することができる。本発明はこのような絹織物も提供するものである。
また、本発明は、本発明の方法に用いるためのDNAを提供する。このようなDNAとしては、(a)セリシン又はフィブロインをコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNA、(b)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNA、(c)セリシン又はフィブロインをコードするDNAのプロモーターの下流に、TRACP5をコードするDNAが機能的に結合したDNA、などが挙げられ、これらの組み合わせからなるキットとして提供してもよい。また、本発明は、トランスポゾンの逆位末端反復配列の間に、(a)〜(c)のDNAを挿入したベクターを提供する。さらに、該ベクターとトランスポゾン転移酵素をコードするDNAを有するベクター(ヘルパーベクター)を含むキットを提供する。
なお、転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNA、及び、セリシン又はフィブロインをコードするDNAのプロモーターの下流に、TRACP5をコードするDNAが機能的に結合したDNAは、TRACP5bの分泌を促進し回収量を多くするため、シグナル配列を有していてもよい。シグナル配列の具体的な態様は、上述の通りである。
本発明の製造方法により得られるTRACP5bは、例えば、TRACP5bの特異的阻害剤、活性化剤、又はモジュレーターの候補化合物のスクリーニングに使用することが出来る。TRACP5bの特異的阻害剤、活性化剤、又はモジュレーターは、骨吸収の増加に関連する疾患の治療に有用である。骨吸収の増加に関連する疾患としては、組織障害、骨代謝病、骨粗鬆症等が挙げられるがこれらに限定されない。
TRACP5bの特異的阻害剤、活性化剤、又はモジュレーターの候補化合物のスクリーニングは、例えば、以下の(a)〜(c)の工程を含む方法によって行うことが出来る。
(a)TRACP5bに対する基質の存在下において、本発明の方法によって製造されたTRACP5bと被検化合物を混合する工程
(b)TRACP5b活性を測定する工程
(c)被検化合物の非存在下と比較して、TRACP5b活性を変化させた被検化合物を選択する工程
TRACP5bの特異的阻害剤、活性化剤、又はモジュレーターの候補化合物のスクリーニングにおいては、まず、TRACP5bに対する基質の存在下において、本発明の方法によって製造されたTRACP5bと被検化合物を混合する。本発明の方法における被検化合物としては、特に制限はなく、例えば、天然化合物、有機化合物、無機化合物、タンパク質、ペプチド等の単一化合物、並びに、化合物ライブラリー、遺伝子ライブラリーの発現産物、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物、原核細胞抽出物、真核単細胞抽出物もしくは動物細胞抽出物等を挙げることができる。
また、TRACP5bに対する基質としてはp-ニトロフェニルリン酸エステル等の合成基質が挙げられるが、これに限定されない。
TRACP5b活性の測定は、例えば、基質としてp-ニトロフェニルリン酸エステルを用いて、TRACP5bとその基質との反応によって生成されるヒドロキシ化合物、すなわちp−ニトロフェノールの量を測定することによって行う。p−ニトロフェノールの量は、例えば、波長405nmの吸光度を測定することにより測定でき、その波長の吸光度の変化を測定することにより、TRACP5b活性を測定することができる。
最後に、上記で測定されたTRACP5b活性と、被検化合物の非存在下におけるTRACP5b活性とを比較する。比較の結果、TRACP5b活性を変化させた被検化合物は、TRACP5bのモジュレーターとして選択される。特に、比較の結果TRACP5b活性を減少させた被検化合物は、TRACP5bの特異的阻害剤の候補化合物として選択される。また、比較の結果TRACP5b活性を増加させた被検化合物は、TRACP5bの活性化剤の候補化合物として選択される。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
材料と方法
[ベクター構築]
本発明ではまず、ヒトTRACPを組換えカイコに発現させるために使用するプラスミドベクターpBMCSUASsigTRACP(図1および配列番号:1)を作成した。この組換えカイコ作出のためのベクターは、酵母の転写制御因子GAL4の存在下で遺伝子発現を促すプロモーターUASの下流に、トランスポゾンpiggyBacの逆位末端反復配列の間に挿入されたヒトTRACP遺伝子を有する。またこのベクターは、組換えカイコを同定するためのマーカー遺伝子として、胚の単眼や蛾の複眼、神経由来の組織での発現を促すプロモーターに連結された緑色蛍光タンパク質遺伝子3xP3GFPを有している(Horn, C., and E. A. Wimmer,(2000)Dev Genes Evol 210: 630-637;Murizio et al.(1994) Protein Science,3:1476-1484)。
[組換えカイコの作出、および組換え蛋白質発現系統の樹立]
組換えカイコの作出のため、プラスミドベクターpBMCSUASsigTRACPとヘルパープラスミドをカイコ初期胚461個にインジェクションした。60の探卵蛾数からマーカー遺伝子を持つ初期胚を調べた結果、5蛾区の組換えカイコを確認した(表1)。最終的に、この中から3蛾区の組換え体を系統化する事ができた。本発明においては、ヒト酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ遺伝子を絹糸腺に発現させるためのGAL4系統として、既に系統化されているSer1-GAL4系統(田村ら、日蚕講要74、p51)を用いた。この組換えカイコは胚の単眼および蛾の複眼に赤色蛍光タンパク質を発現する。さらにこの組換えカイコは、中部絹糸腺でのみGAL4遺伝子を発現していることから、UASに制御される導入遺伝子を発現することが確認されている(田村ら、2004)。そこで、図2に示すように、導入したヒトTRACP遺伝子を発現させるため、得られたUAS-TRACP系統の3蛾区の中から2系統を、上記のSer1-GAL4系統と交配した。ここで用いたSer1-GAL4系統は、胚の単眼で赤色蛍光タンパク質を発現している。UAS-TRACP系統とSer1-GAL4系統を交配して得られた次世代の産卵後6日目の卵を、実体蛍光顕微鏡で観察し、赤色蛍光タンパク質と緑色蛍光タンパク質の両方を持つSer1-GAL4/UAS-TRACP個体を同定した(図3)。Ser1-GAL4/UAS-TRACP個体を飼育して、5令吐糸期のカイコから絹糸腺を摘出し、20mM Tris-HCl 100mM NaCl pH7.4で蛋白質を抽出した。同様に、コントロールとしてヒトTRACP遺伝子を持たないSer1-GAL4系統の5令吐糸0日目のカイコについても絹糸腺を摘出し蛋白質を抽出した。
Figure 0005177431
[RT-PCR]
ヒトTRACP遺伝子の転写を確認するため、RT-PCRは以下のように行った。上述した通り、GAL4とUASの両方の遺伝子を持つ個体を飼育し、5令吐糸期のカイコから中部絹糸腺を摘出した。同様に、コントロールとしてSer1-GAL4系統の5令吐糸0日目のカイコについても絹糸腺を摘出した。次いで、摘出した中部絹糸腺をガラスホモジナイザー(WHEATON社)へ移し、ISOGEN(ニッポンジーン社)を用いてtotal RNAを抽出した。このtotal RNAをDPEC水で50μg/20μlに調製し、First-strand cDNA Synthesis Kit(GEヘルスケア社)を使用し、添付文書に従ってcDNAへの逆転写を行った。この逆転写産物を鋳型として以下のPCRを行った。すなわち、TaKaRa Ex Taq HS(タカラバイオ社)に添付の10×PCRバッファーを5μl、150μMのプラスミドベクターpBMCSUASsigTRACP(配列番号:1)、150μMのプライマー(配列番号:2および3)、0.2mM dNTPsを、2単位EX Taq HSとなるように加え、全量50μlとした。eppendorf社のDNAサーマルサイクラーにて98℃ 2min 1回、98℃ 10sec、57.5℃ 30sec、72℃ 30secのサイクルを40回、72℃ 4min 1回の伸長反応を行った。
[活性測定]
TRACP5bは、次のようにして測定した。ヒトTRACP5bを認識するモノクローナル抗体Trk62(受託番号IPOD FERMBP7890)を感作したマイクロプレートに、Ser1-GAL4/UAS-TRACP個体あるいはコントロールであるSer1-GAL4個体の絹糸腺から抽出したタンパク質溶液を室温で1時間反応させた。続いて洗浄操作を行った後、酒石酸およびクロロニトロフェニルリン酸を含む基質緩衝液を加え37℃で1時間インキュベーションし、405nmの吸光度を測定することによりTRACP5bを測定した(表2)。
[Acidicディスク電気泳動によるTRACP5b産生の確認]
Acidicディスク電気泳動は、以下の手順で行った。ディスク電気泳動装置(ATTO社)のキャピラリーガラス管に7.5%アクリルアミド分離ゲルを45mm積層し、その上に2.5%アクリルアミド濃縮ゲル4mmを重層した。これに、Ser1-GAL4/UAS-TRACP個体、すなわち本発明のカイコの絹糸腺から抽出したタンパク質溶液をCM-Sepharoseカラムにアプライし、10mM Tris-HCl pH7.2、NaCl 0-0.5Mのリニアグラジエントで溶出した。この溶出画分のTRACP活性を測定し、TRACP活性のあるフラクションを回収し、スピンカラムで濃縮した。続いて、Superdex200カラムでゲルろ過を行い、同様にTRACP活性を有する画分を回収し濃縮した。さらに、TRACP活性を有する画分をヘパリンカラム(HiTrap Heparin HP、 GEヘルスケア社)を使用し、NaClを含む20mM Tris-HCl pH7.2のリニアグラジエント(0.35M - 1M)で精製した。同様にTRACP活性を有するピーク1およびピーク2からなるフラクションをそれぞれスピンカラムで20U/Lとなるよう濃縮した。この濃縮サンプル50μLにBSAおよびグリセロールを加え、キャピラリ上部にアプライした。そして、35mM β-アラニンpH4.0 の泳動バッファーにてキャピラリ上部が陽極となるように4mA/キャピラリで90分間通電した。通電終了後、α-ナフチル酸、Fast Garnet GBC、酒石酸を含む0.1M クエン酸緩衝液(pH5.0)からなる染色液中に浸し、活性染色を行った。同様に、コントロールとしてヒト血清についても同様の電気泳動を行った。この結果、図5に示すようにSer1-GAL4/UAS-TRACP個体から抽出した組換え蛋白質は、ヒト骨由来TRACP5bあるいはヒト血清と同じくTRACP5bを産生している事が明らかとなった。
結果
図1はヒト酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ遺伝子組換えカイコを作出するためのプラスミドベクターである。このプラスミドベクターとヘルパープラスミドpA3PIG (Tamura et al., Nature Biotechnology (2000) 18,81-84.)を461個のカイコ卵に注射した。次世代の胚の単眼に発現した緑色蛍光タンパク質を蛍光顕微鏡で観察した結果、5蛾区の組換え体を確認することが出来た(表1)。これらの組換えカイコを飼育し、3蛾区について系統化する事ができた。図2に示すように、得られたUAS-TRACP系統をSer1-GAL4系統と交配し、組換えヒト酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼを発現するSer1-GAL4/UAS-TRACP系統を樹立した。ここで交配した雌蛾が産卵した産卵後6日目の胚を実体蛍光顕微鏡で観察し、図3のように単眼に緑色蛍光タンパク質及び赤色蛍光タンパク質の両方を有する個体を確認した。このSer1-GAL4/UAS-TRACP系統を飼育し、5令吐糸期の絹糸腺からtotalRNAを抽出した。得られたtotalRNAについてRT-PCRを行ったところ、図4の通りGAL4遺伝子とTRACP遺伝子の転写が確認された。
2蛾区のSer1-GAL4/UAS-TRACP系統の絹糸腺由来の蛋白質では、TRACP5bが存在するのに対し、コントロールでは、存在しなかった。また、キャピラリ上部を陽極とする酸性電気泳動によっても、本発明のカイコの絹糸腺から抽出した液から、TRACP5bが得られることが明らかになった。
Figure 0005177431
本発明によって、カイコを利用したTRACP5bの製造方法が提供された。従来、TRACP5bを入手するためには、ケガ等何らかの理由で不要になったヒトの骨からTRACP5bを抽出する必要があった。しかしこの方法では、わずかな量のTRACP5bが得られるに過ぎない。一方、本発明を用いれば、以下に示すとおり、TRACP5bを大量に製造することが可能である。
まず、TRACP5bを製造するカイコは、蛋白質を作るのに相応しい絹糸腺という器官を持ち、一匹当たり数百mgのタンパク質を作る能力がある。さらにカイコは、人工飼料による清浄飼育が可能で、数万頭規模での大量飼育を容易に行うことができる。加えて、カイコの大量飼育は自然界に豊富にある桑の葉を用いて行うことが出来るため、安価にTRACP5bを製造することが可能である。
本発明の方法によって得られるTRACP5bは、例えば、TRACP5bの特異的阻害剤、活性化剤、又はモジュレーターの候補化合物のスクリーニングに使用可能である。

Claims (30)

  1. 以下の(a)及び(b)の工程を含む、TRACP5bの製造方法;
    (a)絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを有するカイコであって、TRACP5bを絹糸腺に分泌するカイコを製造する工程、
    (b)製造されたカイコから、該TRACP5bを回収する工程。
  2. カイコが、以下の(i)及び(ii)に記載のDNAを有するカイコである、請求項に記載の方法;
    (i)絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNA、
    (ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNA。
  3. カイコが、以下の(i)及び(ii)に記載のカイコを交配させることで製造される、請求項に記載の方法;
    (i)絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNAを有するカイコ、
    (ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNAを有するカイコ。
  4. 転写制御因子がGAL4であり、標的プロモーターがUAS、または、転写制御因子がTetRであり、標的プロモーターがTREである、請求項2又は3に記載の方法。
  5. 転写制御因子がGAL4であり、標的プロモーターがUASである、請求項又はに記載の方法。
  6. 絹糸腺が中部絹糸腺又は後部絹糸腺である請求項から5のいずれかに記載の方法。
  7. 絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターが、セリシン1タンパク質又はセリシン2タンパク質をコードするDNAのプロモーターである、請求項6に記載の方法。
  8. 絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターが、フィブロインタンパク質をコードするDNAのプロモーターである、請求項6に記載の方法。
  9. TRACP5がシグナル配列を有する、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
  10. 絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを有するカイコ卵を製造する工程を含む、TRACP5bを絹糸腺に分泌するカイコの製造方法。
  11. カイコが、以下の(i)及び(ii)に記載のDNAを有するカイコである、請求項10に記載の方法;
    (i)絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNA、
    (ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNA。
  12. カイコが、以下の(i)及び(ii)に記載のカイコを交配させることで製造される、請求項10に記載の方法;
    (i)絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNAを有するカイコ、
    (ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNAを有するカイコ。
  13. 転写制御因子がGAL4であり、標的プロモーターがUAS、または、転写制御因子がTetRであり、標的プロモーターがTREである、請求項11又は12に記載の方法。
  14. 転写制御因子がGAL4であり、標的プロモーターがUASである、請求項11又は12に記載の方法。
  15. 絹糸腺が中部絹糸腺又は後部絹糸腺である請求項10から14のいずれかに記載の方法。
  16. 絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターが、セリシン1タンパク質又はセリシン2タンパク質をコードするDNAのプロモーターである、請求項15に記載の方法。
  17. 絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターが、フィブロインタンパク質をコードするDNAのプロモーターである、請求項15に記載の方法。
  18. TRACP5がシグナル配列を有する、請求項10から17のいずれかに記載の方法。
  19. 絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーター、及び該プロモーターによって直接的又は間接的に発現制御されるTRACP5をコードするDNAを有するカイコであって、TRACP5bを絹糸腺に分泌するカイコ。
  20. 以下の(i)及び(ii)に記載のDNAを有する、請求項19に記載のカイコ;
    (i)絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNA、
    (ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNA。
  21. 以下の(i)及び(ii)に記載のカイコを交配させることで製造される、請求項19に記載のカイコ;
    (i)絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターの下流に、機能的に結合した転写制御因子をコードするDNAを有するカイコ、
    (ii)該転写制御因子の標的プロモーターの下流に、機能的に結合したTRACP5をコードするDNAを有するカイコ。
  22. 転写制御因子がGAL4であり、標的プロモーターがUAS、または、転写制御因子がTetRであり、標的プロモーターがTREである、請求項20又は21に記載のカイコ。
  23. 転写制御因子がGAL4であり、標的プロモーターがUASである、請求項20又は21に記載のカイコ。
  24. 絹糸腺が中部絹糸腺又は後部絹糸腺である請求項19から23のいずれかに記載のカイコ。
  25. 絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターが、セリシン1タンパク質又はセリシン2タンパク質をコードするDNAのプロモーターである、請求項24に記載のカイコ。
  26. 絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNAのプロモーターが、フィブロインタンパク質をコードするDNAのプロモーターである、請求項24に記載のカイコ。
  27. TRACP5がシグナル配列を有する、請求項19から26のいずれかに記載のカイコ。
  28. TRACP5bがTRACP5bの特異的阻害剤、活性化剤、又はモジュレーターの候補化合物のスクリーニングに使用される、請求項1から請求項9のいずれかに記載の方法。
  29. TRACP5bの特異的阻害剤、活性化剤、又はモジュレーターが骨吸収の増加に関連する疾患の治療に使用される、請求項28に記載の方法。
  30. 骨吸収の増加に関連する疾患が組織障害、骨代謝病、又は骨粗鬆症からなる群より選択される疾患である、請求項29に記載の方法。
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