JP5292548B2 - 外来遺伝子発現カイコ繭の製糸方法及びそれによる製品 - Google Patents

外来遺伝子発現カイコ繭の製糸方法及びそれによる製品 Download PDF

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Description

本発明は、外来遺伝子発現カイコ繭の製糸方法及び当該方法により得られる製品に関する。より具体的には本発明は、外来遺伝子発現カイコ繭から糸を引き出す段階において、外来遺伝子発現カイコ繭の特性を失わせることなく繭を乾燥、煮繭、繰糸する技術に関する。
生繭の中の蛹は、そのままおいておけば蛾に変態し、繭糸によって構成される繭殻の繭糸を押しのけ、蛾として繭殻から出る。これによりその繭は繰糸不能となるため、蛾が繭殻から出る前に、殺蛹と繭乾燥を行う必要がある。通常繭乾燥を行う場合、初期温度を115℃以上(130℃以上で行う場合もある)とし、その後徐々に温度を下げ、5時間から6時間かけて60℃まで下げるなどの方法が行われている。
また煮繭は通常、進行式煮繭機を用いて行われる。煮繭は、40℃程度の温度における繭糸の浸漬から始まり、100℃を超える温度にて蒸気処理を行う浸透高温処理、その後75℃くらいの低温部へ繭糸を入れる浸透低温処理、その後再び蒸気処理を行う触蒸処理、沸騰温度から徐々に60℃位まで温度を下げる調整処理等により行われる。このように煮繭では、蒸気及び沸点に近い高温水と低温水を組み合わせた処理により、繭腔内へ蒸気や湯の出し入れを行う。これにより、繭層セリシン(繭糸の周りを覆っている水溶性タンパク質)が膨潤柔和され、繭からの繭糸の解れが良くなる。
繰糸では、約90℃熱水の中の繭から稲穂の穂先を利用して繭から糸口を出す索緒(さくちょ)を行い、糸口を出し繰糸を行う。
このような従来の製糸方法では、絹タンパクは高温により熱変性を受ける。その結果、絹の染色性や織物の風合いが損なわれる。近年、外来タンパク質を含有するカイコ繭の作出が行われているが、外来タンパク質の性質を損なうことなく繭を生糸とする技術が求められている。
なお、本発明の先行技術文献を以下に示す。
低温薬品煮繭装置:松本 介・真砂義郎・勝野盛夫、 実用新案出願公開 昭55-11197 真空煮繭機:西尾方男、特許公報 昭49-13926
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、外来タンパク質の性質を損なうことなく、またフィブロインタンパク質、セリシンタンパク質が熱変性を受けずに、外来遺伝子を発現するカイコの繭を生糸とする方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するに当たり、通常繭を生糸とする際に行われているような100℃を越える条件下での繭の乾燥ではなく、低温(概ね80℃以下)条件下での繭の乾燥を試みた。また煮繭においては、従来の100℃以上の高温蒸気処理や沸点近くの高温水処理ではなく、低温かつ真空浸透処理(減圧処理)を試みた。またこれとは異なる煮繭方法として、アルカリによるセリシンの膨潤、界面活性剤、酵素等による繭層への湯水の浸透の組み合わせ処理を試みた。さらに本発明者らは、従来よりも低温で繰糸を行うことを試みた。
その結果本発明者らは、外来遺伝子を発現するカイコの繭に含まれる外来タンパク質の性質を損なうことなく、またフィブロインタンパク質、セリシンタンパク質が熱変性を受けずに、絹糸腺中に外来遺伝子を発現するカイコの繭を生糸とすることが可能であることを見出した。本発明はこのような知見に基づくものであり、次の〔1〕〜〔12〕を提供する。
〔1〕アルカリ剤、界面活性剤、酵素等の少なくとも1つを含む低温溶液で真空浸透することを特徴とする、トランスジェニックカイコが吐糸した繭を生糸とする方法、
〔2〕下記(a)から(g)の工程を含む、〔1〕に記載の方法;
(a)絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが吐糸した繭を概ね80℃以下の条件下にて、又は常温かつ真空条件下にて乾燥させる工程、
(b)工程(a)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液に浸漬する工程、
(c)工程(b)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液中で真空浸透する工程、
(d)工程(c)の繭を真空脱水する工程、
(e)工程(d)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液中で真空浸透する工程、
(f)工程(e)の繭を水に浸漬する工程、及び
(g)工程(f)の繭を低温(概ね50℃以下)の条件下で繰糸する工程、
〔3〕アルカリ剤が炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群より選択され、界面活性剤がノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選択され、酵素がタンパク質分解酵素である、〔2〕に記載の方法、
〔4〕下記(a)から(g)の工程を含む、絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが吐糸した繭を生糸とする方法;
(a)絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが吐糸した繭を概ね80℃以下の条件下にて、又は常温かつ真空条件下にて乾燥させる工程、
(b)工程(a)の繭を低温湯水(概ね80℃以下)に浸漬する工程、
(c)工程(b)の繭を低温湯水中(概ね80℃以下)で真空浸透する工程、
(d)工程(c)の繭を真空脱水する工程、
(e)工程(d)の繭を低温湯水中(概ね80℃以下)で真空浸透する工程、
(f)工程(e)の繭を水に浸漬する工程、及び
(g)工程(f)の繭を低温(概ね50℃以下)の条件下で繰糸する工程、
〔5〕外来タンパク質が蛍光色素タンパク質、細胞付着活性を有するタンパク質、酸性及びアルカリ性のアミノ酸を主とするペプチド、及びカイコ以外の生物由来のフィブロインタンパク質及びセリシンタンパク質からなる群より選択される、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法、
〔6〕〔1〕〜〔5〕に記載の方法によって得られる生糸、
〔7〕〔6〕に記載の生糸から得られる編み物及び織物、
〔8〕〔6〕に記載の生糸から得られる立体構造物、
〔9〕〔6〕に記載の生糸から作成される医療用資材、
〔10〕手術用縫合糸、人工血管、人工皮膚、人工腱、人工骨からなる群より選択される〔9〕に記載の医療用資材、
〔11〕下記(a)から(g)の工程を含む遺伝子組換え生糸の製造方法;
(a)絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが吐糸した繭を概ね80℃以下の条件下にて、又は常温かつ真空条件下にて乾燥させる工程、
(b)工程(a)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液に浸漬する工程、
(c)工程(b)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液中で真空浸透する工程、
(d)工程(c)の繭を真空脱水する工程、
(e)工程(d)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液中で真空浸透する工程、
(f)工程(e)の繭を水に浸漬する工程、及び
(g)工程(f)の繭を低温(概ね50℃以下)の条件下で繰糸する工程、
〔12〕下記(a)から(g)の工程を含む遺伝子組換え生糸の製造方法;
(a)絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが吐糸した繭を概ね80℃以下の条件下にて、又は常温かつ真空条件下にて乾燥させる工程、
(b)工程(a)の繭を低温湯水(概ね80℃以下)に浸漬する工程、
(c)工程(b)の繭を低温湯水中(概ね80℃以下)で真空浸透する工程、
(d)工程(c)の繭を真空脱水する工程、
(e)工程(d)の繭を低温湯水中(概ね80℃以下)で真空浸透する工程、
(f)工程(e)の繭を水に浸漬する工程、及び
(g)工程(f)の繭を低温(概ね50℃以下)の条件下で繰糸する工程。
本発明により、外来タンパク質の性質を損なうことなく、またフィブロインタンパク質、セリシンタンパク質が熱変性を受けずに、絹糸腺中に外来遺伝子を発現するカイコの繭を生糸とする方法が提供された。カイコの品種改良において、従来の交配による方法では限界があることから、近年、遺伝子組換え技術を使用した外来遺伝子を発現するカイコの繭の作出が活発に行われている。しかしながら、外来遺伝子を発現するカイコの繭を従来の方法で製糸すると、外来タンパク質が変性してしまうという問題があった。
一方本発明の方法を用いることにより、絹糸腺中に外来遺伝子を発現するカイコが吐糸した繭の特徴がそのまま生かされた生糸を得ることが可能である。本発明は、外来遺伝子を発現するカイコの繭を生糸とする際に有用である。
〔発明の実施の形態〕
本発明は、アルカリ剤、界面活性剤、酵素等の少なくとも1つを含む低温溶液で真空浸透することを特徴とする、絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが吐糸した繭を生糸とする方法に関する。また本発明は、遺伝子組換え生糸の製造方法に関する。
より具体的には本発明は、以下の工程を含む絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが吐糸した繭を生糸とする方法に関する。また本発明は、以下の工程を含む遺伝子組換え生糸の製造方法に関する。
(a)絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが吐糸した繭を概ね80℃以下の条件下にて、又は常温かつ真空条件下にて乾燥させる工程、
(b)工程(a)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液に浸漬する工程、
(c)工程(b)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液中で真空浸透する工程、
(d)工程(c)の繭を真空脱水する工程、
(e)工程(d)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液中で真空浸透する工程、
(f)工程(e)の繭を水に浸漬する工程、及び
(g)工程(f)の繭を低温(概ね50℃以下)の条件下で繰糸する工程。
(1)トランスジェニックカイコが吐糸した繭
本発明ではまず、絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコを取得する。絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコは、例えば、後部絹糸腺特異的に発現するタンパク質をコードするDNA(例えば、フィブロインH鎖またはL鎖のタンパク質をコードする遺伝子)に、外来タンパク質をコードするDNAを繋ぎ、この融合遺伝子を有するトランスジェニックカイコを作ることによって取得することができる。当業者であれば、例えば以下の文献に開示された内容に従い、絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコを以下の文献に記載の公知の手法によって製造、取得することが出来るがこれらの方法に限定されない。
・ 特開2006-137739
・ WO2008/081922
・ Tamura, T., Thibert, C., Royer, C., Kanda, T., Abraham, E., Kamba, M., Komoto, N., Thomas, J.L., Mauchamp, B., Chavancy, G., Shirk, P., Fraser, M., Prudhomme, J.C., Couble, P., Toshiki, T., Chantal, T., Corinne, R., Toshio, K., Eappen, A., Mari, K., Natuo, K., Jean-Luc, T., Bernard, M., Gerard, C., Paul, S., Malcolm, F., Jean-Claude, P. and Pierre, C. (2000) Germline transformation of the silkworm Bombyx mori L. using a piggyBac transposon-derived vector. Nat Biotechnol, 18, 81-84
・ Tomita, M., Munetsuna, H., Sato, T., Adachi, T., Hino, R., Hayashi, M., Shimizu, K., Nakamura, N., Tamura, T. and Yoshizato, K. (2003) Transgenic silkworms produce recombinant human type III procollagen in cocoons. Nat Biotechnol, 21, 52-56.
・ Yamao, M., Katayama, N., Nakazawa, H., Yamakawa, M., Hayashi, Y., Hara, S., Kamei, K. and Mori, H. (1999) Gene targeting in the silkworm by use of a baculovirus. Genes Dev, 13, 511-516.
・ Kojima K, Kuwana Y, Sezutsu H,Kobayashi I, Uchino K, Tamura T, Tamada Y. 2007. New Method for Modification of Fibroin Heavy Chain Protein in Transgenic Silkworm. Biosci BiotechnolBiochem.71, 2943-2951.
・ Kurihara H, Sezutsu H, Tamura T, YamadaK. 2007. Production of an active feline interferon in the cocoonof transgenic silkworms using the fibroin H-chain expression system.Biochem. Biophys. Res. Commun. 355, 976-980.
・ Tamura, T., Kuwabara, K., Uchino, K.,Kobayashi, I., and Kanda,T. 2007 An Improved DNA Injection Method forSilkworm Eggs Drastically Increases the Efficiency of ProducingTransgenic Silkworms. J. Insect Biotechnol. Sericol.76,155-159.
・ Yanagisawa S, Zhu Z, Kobayashi I,Uchino K, Tamada Y, Tamura T, Asakura T. 2007. Improving Cell-AdhesiveProperties of Recombinant Bombyx mori Silk by Incorporation of Collagen or Fibronectin Derived Peptides Produced by Transgenic Silkworms. Biomacromolecules8(11), 3487-3492.等
本発明のトランスジェニックカイコは、絹糸腺内に外来タンパク質を有する。絹糸線内に含まれる外来タンパク質としては、例えばCFP、GFP、YFP、DsRed、KO、KikGr、Kaede、Dronpa等の蛍光・色素タンパク質、コラーゲンやフィブロネクチン、細胞の成長因子等の細胞付着活性を有するタンパク質、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン等の酸性及びアルカリ性のアミノ酸を主とするペプチド、クモやヤママユガ、真珠貝等カイコ以外の生物由来のフィブロインタンパク質及びセリシンタンパク質及びその一次構造に由来するペプチド等が挙げられるがこれらに限定されない。
絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが取得されれば、当業者であれば容易に当該カイコから繭を得ることが出来る。
(2)繭の乾燥
本発明では、絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが吐糸した繭を概ね80度以下(例えば79度、78度、77度、76度、75度、74度、73度、72度、71度が挙げられるがこれらに限定されない)の条件下で乾燥させる。より好ましくは70度以下、さらに好ましくは60度以上70度以下(例えば61度、62度、63度、64度、65度、66度、67度、68度、69度が挙げられるがこれらに限定されない)、特に好ましくは55度以上65度以下(例えば56度、57度、58度、59度、60度、61度、62度、63度、64度が挙げられるがこれらに限定されない)の条件下で繭を乾燥させる。
繭の乾燥は、熱風式乾燥機を使用して乾燥させることが出来るほか、真空式乾燥機、マイクロウェーブ(電磁波)を使用して行うことも出来る。
繭を乾燥させる程度は、その品種や性状によって異なるが、36-44%の乾燥歩合が得られるまで乾燥させることが好ましい。乾燥歩合は、当業者であれば繭の性状に応じて適切に決定することが出来る。例えば「春嶺×鐘月」等の普通蚕繭では、42-43%の乾燥歩合が適切であるが、繭層重の割に蛹重が重い場合はより小さい乾燥歩合を選択することが出来る(例えば36-38%程度の乾燥歩合とすることが出来る)。なお本発明においては、繭の乾燥は一定温度の条件下で行うことが好ましい。
また本発明では、絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが吐糸した繭を概ね80度以下の条件下で乾燥させる代わりに、常温かつ真空条件下で乾燥させることも可能である。常温かつ真空条件下での乾燥は、上述とおり、熱風式乾燥機を使用して乾燥させることが出来るほか、真空式乾燥機、マイクロウェーブ(電磁波)を使用して行うことも出来る。例えば、繭を60℃の一定温度で乾燥させる場合、図1に示すように、24時間程度の時間をかけることにより、約45%の乾燥歩合にもっていくことが出来る。このようにして得られる繭は、黴が生えることなく保存が可能となる。
なおこのような方法で繭を乾燥させる場合、蛹から出た水分を早く乾燥機の外へはき出す必要がある。乾燥機の中が湿気で満たされると繭糸の解れ(解じょ)が悪くなるためである。真空条件下で乾燥する場合、温度をかけながら真空にすることにより、熱風のみによって乾燥させる場合に比べ、効率よく乾燥させることが出来る。
(3)アルカリ剤、界面活性剤、酵素等を含む溶液への浸漬
本発明では、繭をアルカリ剤、界面活性剤、酵素等の少なくとも1つを含む溶液に浸漬する。より好ましくは、繭をアルカリ剤及び界面活性剤を含む溶液、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液に浸漬する。
本発明のアルカリ剤としては、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムが挙げられるがこれらに限定されない。
また本発明の界面活性剤としてはノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられるがこれらに限定されない。
ノニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテルなどが挙げられるがこれらに限定されない。
アニオン系界面活性剤としては、例えば脂肪酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩などが挙げられるがこれらに限定されない。
カチオン系界面活性剤としては、例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩などが挙げられるがこれらに限定されない。
両性系界面活性剤としては、例えばアルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタインなどが挙げられるがこれらに限定されない。
また本発明の酵素としてはタンパク質分解酵素が挙げられるがこれに限定されない。タンパク質分解酵素としては、例えばセリンプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、システインプロテアーゼ、金属プロテアーゼ、パパイン酵素、アルカラーゼなどが挙げられるがこれらに限定されない。
浸漬処理は、例えば以下のようにして行うことが出来るが、これに限定されない。金属製の網籠へ入れた繭を例えば炭酸ナトリウム0.15%、ノニオン系界面活性剤0.3%混合溶液(処理水)へ20分浸漬する。これにより、繭層表面に水分が浸み込む状態とすることが出来る。炭酸ナトリウム、界面活性剤の濃度、及び処理時間は、当業者であれば繭の性状によって適宜調整することが出来る。
なお本発明においては、酵素及び界面活性剤を含む溶液がより好ましい。
(4)アルカリ剤、界面活性剤、酵素等を含む溶液中での真空浸透
本発明では繭を、アルカリ剤、界面活性剤、酵素の少なくとも1つを含む溶液中で真空浸透する。より好ましくは、繭をアルカリ剤及び界面活性剤を含む溶液、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液に浸漬する。アルカリ剤、界面活性剤、酵素としては、上述のものが挙げられる。
真空浸透処理は、例えば以下の方法により行うことが出来る。浸漬処理した繭を処理水へ入れたまま真空装置へ移動し、真空とする。真空度は-620mmHg程度が適当であるがこれに限定されない。真空度が例えば-620mmHgに到達した時点で、5分〜10分かけて常圧まで復圧する。こうすることにより、繭腔内外の圧力差により処理水が徐々に繭層内へ浸透する。このときに急激に復圧すると一気に処理水が繭腔内へ入ろうとするため、繭が圧力差により潰れる場合がある。また処理水が繭層の薄い部分や繭層通り易い部分を通るため、均一な煮繭ができない場合がある。従って、急激な復圧は避けるべきである。当業者であれば、繭の性状に応じて適切な復圧時間を設定することが出来る。
なお本発明においては、アルカリ剤及び界面活性剤を含む溶液で前述の浸漬処理を行った場合、真空浸透処理もアルカリ剤及び界面活性剤を含む溶液で行うことが好ましい。また酵素及び界面活性剤を含む溶液で前述の浸漬処理を行った場合、真空浸透処理も酵素及び界面活性剤を含む溶液で行うことが好ましい。
(5)真空脱水
本発明では、アルカリ剤、界面活性剤、酵素の少なくとも1つを含む溶液中で真空浸透した繭を真空中で脱水する。真空脱水の方法は特に限定されるものではないが、例えば以下の方法により繭を真空中で脱水することが出来る。真空浸透処理した繭を処理水から引き上げ、真空装置で真空処理を行う。真空度は上記と同様-620mmHg程度とすることが好ましいがこれに限定されない。この真空処理は、例えば5分〜10分かけるなど、徐々に行うことが好ましい。徐々に真空処理を行うことにより繭腔内の処理水を徐々に繭層の外に排出することが出来る。急激に真空処理を行うと、溶液が繭層の薄い所や、処理水の通り易い所を通るため、均一な煮繭処理ができない場合がある。
(6)アルカリ剤、界面活性剤、酵素等を含む溶液中での真空浸透
本発明では真空中で脱水した繭に対して、再度、アルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液中で真空浸透処理を行う。真空浸透処理は、例えば上述の方法によって行うことが出来るがこの方法に限定されない。
真空浸透と真空脱水を繰り返すことにより、繭糸の解離性を増すことができる。一方、真空浸透と真空脱水を繰り返すことにより上緒糸が増加し、生糸量歩合が減少するなどの弊害も生ずる。従って、真空浸透と真空脱水の回数は繭特性により調整することが肝要である。例えば、真空浸透、真空脱水、真空浸透のサイクルを1回あるいは2回繰り返しとすることが出来る。
なおこの処理も、上記(4)と同様、真空処理によって繭腔内へ処理水を浸透させる時には、真空状態から常圧への復圧は時間をかけて徐々に行うことが好ましい。逆に真空処理によって繭腔内の処理水を繭腔外へ排出する時には、時間をかけて真空状態へ移行することが好ましい。煮繭処理においては、繭層の繭糸の膠着部位のセリシンを徐々に膨潤軟和させることが重要である。本発明においては、アルカリ剤や酵素等がセリシンの膨潤軟和の役目を担い、界面活性剤が繭層繭糸の膠着部位への浸透の役目を担う。
なお、アルカリ剤及び界面活性剤を含む溶液で前述の浸漬処理や真空浸透処理を行った場合、再度の真空浸透処理もアルカリ剤及び界面活性剤を含む溶液で行うことが好ましい。また酵素及び界面活性剤を含む溶液で前述の浸漬処理や真空浸透処理を行った場合、再度の真空浸透処理も酵素及び界面活性剤を含む溶液で行うことが好ましい。
(7)繭の水への浸漬
本発明の方法では次に、繭を水に浸漬する。(6)までの煮繭処理により得られた繭は、その表面がアルカリで覆われている。そのまま放置しておくと、繭層表面に付着しているアルカリによりセリシンが膨潤する傾向となり、緒糸が多くなる。そのため、常温水に浸漬し、繭層表面のセリシンを収斂させる必要がある。繭の水への浸漬は、繭層表面に付着しているアルカリがとれ、繭層表面のセリシンが収斂するまで(例えば10分から20分程度)行う。
(8)繰糸
本発明では、60℃以下の条件下で繰糸を行う。より好ましくは50度以下、より好ましくは35度から45度の条件下(例えば35度、36度、37度、38度、39度、40度、41度、42度、43度、44度、45度が挙げられるがこれらに限定されない)で繰糸を行う。繰糸は自動繰糸機、多条繰糸機もしくは座繰器により行うことが出来る。
繰糸は、上記方法により繭層セリシンを膨潤軟和させた繭から繭糸を引き出し、それを数本、セリシンで抱合させながら1本の生糸とするものである。繰糸に先立ち、概ね80℃以下の温湯内で索緒箒(稲穂を束ねたもの)で、繭の表面をこすり、数本の繭糸を引き出した(索緒と称す)後に、1本の糸口になるまで、更に引き出して正緒とする(抄緒と称す)。その繭(正緒繭)から引き出した繭糸を目的の太さになるように数本合わせ集緒器(例えば陶器等で作られたもので、ボタン形状でその中心に細い孔の開いたもの)を通過した生糸を、集緒器上に設けられた二つの鼓車で再び集緒器近くに戻し、集緒器から上がってきたばかりの糸条と縒り合わせて(ケンネル縒りと称す)小枠に巻き取る。座繰器、多条繰糸機は目的繊度にあうように一定の繭数で繰糸を行い(定粒式)、自動繰糸機では繊度感知器により一定の太さとなるように繊度制御を行う(定繊式)。繰糸については、文献(総合蚕糸学 日本蚕糸学会編 P.358-369. 1979.、日本製糸技術史 加藤宗一著 P.59-144. 1976.)も参照される。
また本発明は、以下(a)から(g)の工程を含む絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが吐糸した繭を生糸とする方法を提供する。また以下(a)から(g)の工程を含む遺伝子組換え生糸の製造方法を提供する。
(a)絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが吐糸した繭を概ね80℃以下の条件下にて、又は常温かつ真空条件下にて乾燥させる工程、
(b)工程(a)の繭を低温湯水(概ね80℃以下)に浸漬する工程、
(c)工程(b)の繭を低温湯水中(概ね80℃以下)で真空浸透する工程、
(d)工程(c)の繭を真空脱水する工程、
(e)工程(d)の繭を低温湯水中(概ね80℃以下)で真空浸透する工程、
(f)工程(e)の繭を水に浸漬する工程、及び
(g)工程(f)の繭を低温(概ね50℃以下)の条件下で繰糸する工程。
上記方法においてトランスジェニックカイコの繭の取得、繭の乾燥、繭の低温湯水への浸漬、繭の真空浸透、繭の真空脱水、繭の水への浸漬、繭の繰糸は上述の方法によって行うことが出来る。
本発明においては、80度以下(例えば79度、78度、77度、76度、75度、74度、73度、72度、71度が挙げられるがこれらに限定されない)の低温湯水、より好ましくは70度以下(例えば69度、68度、67度、66度、65度、64度、63度、62度、61度が挙げられるがこれらに限定されない)の低温湯水、さらに好ましくは55度以上60度以下(例えば56度、57度、58度、59度が挙げられるがこれらに限定されない)の低温湯水が用いられる。
また本発明は、上記方法によって得られる生糸を提供する。さらに本発明は当該生糸から得られる編み物及び織物を提供する。加えて本発明は、当該生糸から得られる立体構造物を提供する。本発明の立体構造物の例としてはランプシェード、ワンピース・ジャケット・ショール等の洋装品、着物、帯、洋服、パネル、壁紙、椅子のシート、名刺、本の表装等が挙げられるがこれに限定されない。ランプシェード、ワンピース・ジャケット・ショール等の洋装品、着物、帯、洋服、パネル、壁紙、椅子のシート、名刺、本の表装等は周知の方法によって作成することが出来る。
さらに本発明は、本発明の方法によって得られる生糸から作成される医療用資材を提供する。医療用資材としては手術用縫合糸、人工血管、人工皮膚、人工腱、人工骨、角膜培養のフィルム等が挙げられるがこれらに限定されない。本発明の生糸の医療用資材用に使用するための加工等は、当業者に公知の方法によって行うことが出来る。
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕絹糸線内に外来遺伝子を発現するカイコの繭の製糸
1.方法
1.1 乾燥工程
通常、最高温度115℃ないし120℃から徐々に温度を下げて、5時間30分位経過後に60℃へ変えていくという乾燥方法が行われている。この場合、約42%の乾燥歩合が得られる。一方本実施例では、温度勾配はとらずに、60℃の一定温度に保たれた乾燥機内に繭を入れ、20時間から24時間かけて繭を乾燥させた。結果、目的とする乾燥歩合が得られた(図1)。
1.2 煮繭工程
本発明では、低温(60℃以下)状態で繭層セリシンを膨潤軟和するために、アルカリ剤、界面活性剤、酵素等を用いて煮繭を行う。以下に、アルカリ剤及び界面活性剤を用いた例を示す。
まず、0.1〜0.4%の炭酸ナトリウム、0.2〜0.4%のノニオン系界面活性剤を作製し、その中に外来遺伝子発現カイコの繭を20分間浸漬させた。その後、真空容器中で-600mmHgまで真空にして、その状態で放置後徐々に復圧させ、繭腔内へ徐々に溶液を浸透させた。その後真空容器内で溶液から繭を出し、その状態で真空状態とさせ繭腔内の溶液を脱水させた。この操作により繭層繭糸の籠目構造に溶液が浸潤するため、繭糸相互を膠着させているセリシンを膨潤軟和させることができる。その後、繭を再び溶液に入れ、再び真空状態として繭腔内に溶液を浸透させ、終了後常温水によりセリシンを収斂させた。以上の工程を図2に示す。
1.3 繰糸工程
通常繭から緒糸を出すために、85℃〜90℃の熱湯に入れて、繭層表面のセリシンを膨潤軟和させながら索緒箒にて繭糸を導き出す処理を行う。また繰糸では、約40℃の繰解槽の煮熟繭から繭糸を解離し、約60℃の雰囲気中の小枠に生糸を巻き取っている。本発明では、索緒温度、繰解槽の温度を50℃、小枠部の温度を40℃とし、緒糸、繰糸を行った。
2.結果
表1は、絹糸線内に外来遺伝子を発現するカイコの繭について繰糸を行った結果を示す。従来、60℃以下の低温繰糸では繰糸は不能であったが、本発明の方法を使用することにより繰糸を行うことが出来た。
本発明は、絹糸線内に外来遺伝子を発現するカイコの繭を対象として、従来にない低温処理による製糸技術を提供するものであり、生繭繰糸(生繭を高温乾燥しないで生の状態のまま繰糸すること)を行う場合など、絹糸線内に外来遺伝子を発現するカイコの繭に限らず、通常使われる普通品種繭にも適用できる。
〔実施例2〕蛍光発色するトランスジェニック繭糸のインテリア用素材としての利用
蛍光発色するトランスジェニック繭糸を、インテリア用素材として利用した。蛍光発色するトランスジェニック繭糸を直接、球形の型枠に自身の持っているセリシンで膠着させながら巻き、乾燥後、型枠から外した。このような方法により作製されたインテリアを図3に示す。図3左は内側に光源のないもの(外部からの光だけのもの)、図3中は光源に白色光を用いたもの、図3右は光源にブラックライトを用いたものである。蛍光発色するトランスジェニック繭糸を素材としたインテリアでは、ブラックライトにより蛍光を発することが確認された。
〔実施例3〕細胞付着性繭糸の人工血管基材への応用
細胞付着性を有するトランスジェニック繭糸により人工血管用基材を作製した(図4)。図4に示した人工血管は、内径が1.5mm〜5mmまでのものであり、この素材は繭乾燥60℃、煮繭は60℃以下、繰糸は50℃で行った結果得られた生糸より作製したものである。図5は、トランスジェニック繭糸による人工血管基材とPTFE(テフロン(登録商標)系樹脂)による人工血管基材をラットへ移植した状態を示す。図6は、それらをラットへ移植後3ヶ月経過した状態を示す。トランスジェニック繭糸による人工血管基材では、細胞増殖が進んでいることがわかる。
〔参考例〕トランスジェニックカイコの繭の作成
蛍光を持つトランスジェニックカイコはKojimaら(2007)又はKuriharaら(2007)に記載されたベクターに緑色蛍光タンパク質(GFP)又は赤色蛍光タンパク質(DsRed)遺伝子を挿入し、プラスミドとして大腸菌からDNAを精製した。このベクタープラスミドをTamuraら(2007)の方法に従って、カイコの卵中に注射した。プラスミドを注射した卵から孵化した幼虫の次世代において、胚の単眼や繭の蛍光により、トランスジェニックカイコを同定し、これらを系統化した。系統化されたトランスジェニックカイコと実用品種を交配し、選抜育成することによって繭形質を高め、得られた日本種系統と中国系統を交配してF1を作成した。このF1を桑の葉又は人工飼料で飼育することにより、蛍光を持つトランスジェニックカイコの繭を作成した。
繭の乾燥歩合の時間変化を示すグラフである。 絹糸線内に外来遺伝子を発現するカイコの繭の煮繭例を示す図である。 蛍光発色するトランスジェニック繭糸のインテリア用素材としての利用を示す写真である。 細胞付着性を有するトランスジェニック繭糸より作成した人工血管を示す写真である。 トランスジェニック繭糸による人工血管基材とPTFE(テフロン系樹脂)による人工血管基材をラットへ移植した状態を示す写真である。 トランスジェニック繭糸による人工血管基材とPTFE(テフロン系樹脂)による人工血管基材をラットへ移植後3ヶ月経過した状態を示す写真である。

Claims (10)

  1. アルカリ剤、界面活性剤、酵素等の少なくとも1つを含む60℃以下の溶液で真空浸透することを特徴とする、トランスジェニックカイコが吐糸した繭を外来タンパク質の性質を損なうことなく生糸とする方法。
  2. 下記(a)から(g)の工程を含む、請求項1に記載の方法;
    (a)絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが吐糸した繭を80℃以下の条件下にて、又は常温かつ真空条件下にて乾燥させる工程、
    (b)工程(a)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液に浸漬する工程、
    (c)工程(b)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む60℃以下の溶液中で真空浸透する工程、
    (d)工程(c)の繭を真空脱水する工程、
    (e)工程(d)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む60℃以下の溶液中で真空浸透する工程、
    (f)工程(e)の繭を水に浸漬する工程、及び
    (g)工程(f)の繭を低温(50℃以下)の条件下で繰糸する工程。
  3. アルカリ剤が炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群より選択され、界面活性剤がノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選択され、酵素がタンパク質分解酵素である、請求項2に記載の方法。
  4. 外来タンパク質が蛍光色素タンパク質、細胞付着活性を有するタンパク質、酸性及びアルカリ性のアミノ酸を主とするペプチド、及びカイコ以外の生物由来のフィブロインタンパク質及びセリシンタンパク質からなる群より選択される、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  5. 請求項1〜に記載の方法によって得られる生糸。
  6. 請求項に記載の生糸から得られる編み物及び織物。
  7. 請求項に記載の生糸から得られる立体構造物。
  8. 請求項に記載の生糸から作成される医療用資材。
  9. 手術用縫合糸、人工血管、人工皮膚、人工腱、人工骨、及び角膜培養のフィルムからなる群より選択される請求項に記載の医療用資材。
  10. 下記(a)から(g)の工程を含む、外来タンパク質の性質を損なうことなく遺伝子組換え生糸製造する方法;
    (a)絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが吐糸した繭を80℃以下の条件下にて、又は常温かつ真空条件下にて乾燥させる工程、
    (b)工程(a)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液に浸漬する工程、
    (c)工程(b)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む60℃以下の溶液中で真空浸透する工程、
    (d)工程(c)の繭を真空脱水する工程、
    (e)工程(d)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む60℃以下の溶液中で真空浸透する工程、
    (f)工程(e)の繭を水に浸漬する工程、及び
    (g)工程(f)の繭を低温(50℃以下)の条件下で繰糸する工程。
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