JP2004135528A - カイコを利用したタンパク質の製造方法 - Google Patents
カイコを利用したタンパク質の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004135528A JP2004135528A JP2002301454A JP2002301454A JP2004135528A JP 2004135528 A JP2004135528 A JP 2004135528A JP 2002301454 A JP2002301454 A JP 2002301454A JP 2002301454 A JP2002301454 A JP 2002301454A JP 2004135528 A JP2004135528 A JP 2004135528A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- silkworm
- peptide
- transgenic
- gene
- silk thread
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Peptides Or Proteins (AREA)
Abstract
【解決手段】フィブロインL鎖の遺伝子に異常があり、そのためフィブロインH鎖やL鎖が殆ど合成されないカイコの突然変異系統Nd−sDに、フィブロインL鎖遺伝子のプロモーターにこの遺伝子のcDNAを繋ぎ、その下流にGFP遺伝子を繋いだ融合遺伝子を導入することで、Nd−sDのトランスジェニックカイコを作出した。突然変異でない正常のカイコに同じ遺伝子を導入し、Nd−sDのトランスジェニック個体と該遺伝子の発現量を比較した結果、Nd−sDのトランスジェニック個体では数倍のタンパク質が合成されていることが確認された。さらに、正常個体に大量に存在する内在性のフィブロインL鎖タンパク質は、Nd−sDのトランスジェニック個体では全く存在しないことが明らかとなった。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているカイコを利用した任意のペプチドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年カイコに外来遺伝子を導入し、発現させることが可能になった。カイコは高度に家畜化された昆虫で、絹糸を作るために絹糸腺と呼ばれる大きな器官を持っている。この器官の中で絹糸タンパク質が生産され、絹糸として繭中に分泌される。
【0003】
遺伝子操作技術を利用して、組換えタンパク質を生産する方法には、大腸菌、酵母、核多核体病、動植物の培養細胞、トランスジェニック植物や動物など多くの方法が開発され、利用されている。また、トランスポゾンやマーカー遺伝子を利用したトランスジェニックカイコの作出方法が開発されている(非特許文献1〜6)。トランスジェニックカイコを利用して、異種生物のタンパク質を作る利点として、1)比較的簡単に、しかも短期間に作ることができること、2)高等生物であるため、微生物に比べ本来の構造に近い、活性型のタンパク質がえられること、3)容易に大量に増殖でき、大量飼育が可能なことがあげられる。これらに加え、絹糸腺のタンパク質合成能力は非常に高く、この点でも他の生物より優れている。
【0004】
そのため、これまでに既にトランスジェニックカイコを利用した、ヒト・コラーゲン等の医薬品の生産についての研究が行われ、徐々に実用化に向けての研究が進んでいる(非特許文献7)。
【0005】
しかしながら、正常なカイコでの絹糸腺では複数のタンパク質が生産されている。カイコの絹糸腺内で異種タンパク質を発現させた場合、これらの内在性のタンパク質が邪魔をして、十分な量を合成できない。また、導入した遺伝子と内在性の遺伝子の競合が起き、このことも発現量を減少させる原因となる。これに加え、内在性のタンパク質の存在は導入した遺伝子由来のタンパク質を精製する場合にも妨げる要因の一つとなり、精製操作をより複雑なものにする(非特許文献8および9)。
【0006】
なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に記す。
【非特許文献1】田村俊樹(1999)トランスポソンを利用した形質転換カイコの作出方法.第7回昆虫機能研究会講演要旨、p10−22.
【非特許文献2】Horn, C., B. Jaunich and E. A. Wimmer, 2000 Highly sensitive, fluorescent transformation marker for Drosophila transgenesis. Dev Genes Evol 210: 623−629.
【非特許文献3】Horn, C., and E. A. Wimmer, 2000 A versatile vector set for animal transgenesis. Dev Genes Evol 210: 630−637.
【非特許文献4】Thomas, J. L., M. Da Rocha, A. Besse, B. Mauchamp and G. Chavancy, 2002 3xP3−EGFP marker facilitates screening for transgenic silkworm Bombyx mori L. from the embryonic stage onwards. Insect BiochemMol Biol 32: 247−253.
【非特許文献5】Tamura, T., Thibert, C., Royer ,C., Kanda, T., Abraham, E., Kamba, M., Komoto, N., Thomas, J.−L., Mauchamp, B., Chavancy, G., Shirk, P., Fraser, M., Prudhomme, J.−C. and Couble, P. (2000) A piggyBacelement−derived vector efficiently promotes germ−line transformation inthe silkworm Bombyx mori L. Nature Biotechnology 18, 81−84.
【非特許文献6】Berghammer, A. J., M. Klingler and E. A. Wimmer, 1999 A universal marker for transgenic insects. Nature 402: 370−371
【非特許文献7】富田正浩・佐藤勉・安達敬泰・宗綱洋人・田村俊樹・神田俊男・吉里勝利(2001)ヒトコラーゲン遺伝子を組み込んだトランスジェニックカイコの作出.第24回日本分子生物学会年会講演要旨.
【非特許文献8】水野重樹(1987)生化学59巻1308−20
【非特許文献9】田村俊樹 (1993) 遺伝子工学(蚕糸学入門,日本蚕糸学会編)pp148−153,大日本蚕糸会(東京)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、カイコにおいて、任意のペプチドを大量に製造する方法を提供することにある。より詳細には、絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているカイコを利用した任意のペプチドの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
カイコは絹糸線という器官でフィブロインL鎖、H鎖、p25及びセリシンというタンパク質を合成する。このうち、フィブロインL鎖とH鎖は絹の主成分で、絹糸線の後部で合成され、カイコが繭を作るときに絹糸腺の前部から吐糸される。本発明者らは、正常なカイコのフィブロインL鎖遺伝子のプロモーターにこの遺伝子のcDNAを繋ぎ、その下流にGFP遺伝子を繋いだ融合遺伝子を作出し、この遺伝子を既に報告されたトランスジェニックカイコを作るためのベクタープラスミドに挿入した。このベクターを利用して、融合遺伝子をカイコの突然変異系統Nd−sDに導入し、突然変異系統のトランスジェニックカイコを作出した。
【0009】
この突然変異系統はL鎖の遺伝子に異常(DNAの欠損)があり、そのためフィブロインH鎖やL鎖が殆ど合成されない。そのため、変異体の絹糸腺は正常より遥かに小さな未発達の状態でとどまっている。
【0010】
変異体のトランスジェニックカイコを作出することにより、1)絹糸腺の大きさが大きくなり、正常のサイズに近いものになること、2)合成された融合タンパク質が絹糸腺後部の細胞から内腔に分泌され、中部絹糸腺に蓄積すること、3)この突然変異の繭にも、蛍光タンパク質の観察やウェスタンブロッテイングにより融合タンパク質の存在が観察されたこと、4)突然変異でない正常のカイコに同じ遺伝子を導入し、発現量を突然変異のトランスジェニック個体と比較した結果、突然変異種では数倍のタンパク質が合成されていることが確認されるともに正常個体に大量に存在する内在性のフィブロインL鎖タンパク質は全く存在しなかったこと等の特徴が実験的に証明された。
【0011】
即ち、本発明は、絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているカイコを利用した任意のペプチドの製造方法に関し、以下の〔1〕〜〔13〕を提供するものである。
〔1〕 以下の(a)〜(c)の工程を含む、任意のペプチドの製造方法。
(a)絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているカイコの卵に、絹糸を構成するペプチドをコードするDNAのプロモーター領域の下流に任意のペプチドをコードするDNAが機能的に結合したDNAを導入する工程
(b)該DNAが導入された卵から生じたカイコの中から、トランスジェニックカイコを選択する工程
(c)選択されたトランスジェニックカイコから任意のペプチドを回収する工程〔2〕 〔1〕に記載の工程に、さらに、回収された任意のペプチドと医薬上許容される担体とを混合する工程を含む、医薬組成物の製造方法。
〔3〕 以下の(a)および(b)の工程を含む、トランスジェニックカイコの製造方法。
(a)絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているカイコの卵に、絹糸を構成するペプチドをコードするDNAのプロモーター領域の下流に任意のペプチドをコードするDNAが機能的に結合したDNAを導入する工程
(b)該DNAが導入された卵から生じたカイコの中から、トランスジェニックカイコを選択する工程
〔4〕 絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているカイコが、絹糸を構成するペプチドをコードする遺伝子領域の変異によって該ペプチドの生産が抑制されているカイコである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕 絹糸を構成するペプチドをコードする遺伝子領域の変異によって該ペプチドの生産が抑制されているカイコが、突然変異系統のカイコである、〔4〕に記載の方法。
〔6〕 絹糸を構成するペプチドがフィブロインである、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕 突然変異系統のカイコがNd−sDである、〔5〕に記載の方法。
〔8〕 絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているカイコのトランスジェニックカイコであって、絹糸を構成するペプチドをコードするDNAのプロモーター領域の下流に任意のペプチドをコードするDNAが機能的に結合したDNAを有するトランスジェニックカイコ。
〔9〕 絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているカイコが、絹糸を構成するペプチドをコードする遺伝子領域の変異によって該ペプチドの生産が抑制されているカイコである、〔8〕に記載のトランスジェニックカイコ。
〔10〕 絹糸を構成するペプチドをコードする遺伝子領域の変異によって該ペプチドの生産が抑制されているカイコが、突然変異系統のカイコである、〔9〕に記載のトランスジェニックカイコ。
〔11〕 絹糸を構成するペプチドがフィブロインである、〔8〕〜〔10〕のいずれかに記載のトランスジェニックカイコ。
〔12〕 突然変異系統のカイコがNd−sDである、〔10〕に記載のトランスジェニックカイコ。
〔13〕 〔8〕〜〔12〕のいずれかに記載のトランスジェニックカイコの繭。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているカイコを利用した任意のペプチドの製造方法を提供する。トランスジェニックカイコを利用することにより、比較的簡単に、しかも短期間に任意のペプチドの製造が可能である。また、カイコは、高等生物であるため、微生物に比べ本来の構造に近い、活性型のペプチドの製造が可能である。さらに、本発明の方法によって、従来の方法よりも、カイコにおける任意のペプチドの生産量を向上させること、また、純度を高めることが可能になった。
【0013】
本発明の任意のペプチドの製造方法においては、まず、絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているカイコの卵に、絹糸を構成するペプチドをコードするDNAのプロモーター領域の下流に任意のペプチドをコードするDNAが機能的に結合したDNAを導入する。
【0014】
本発明において、「ペプチド」とは、アミノ酸同士がペプチド結合により結合した化合物を指す。従って、鎖長の長いペプチドである「ポリペプチド」や「タンパク質」もまた本発明の「ペプチド」に含まれる。また、本発明における絹糸を構成するペプチドとしては、例えばフィブロインL鎖、H鎖、セリシン、p25(fibrohexamarin)が挙げられるが、好ましくはフィブロインL鎖またはH鎖であり、より好ましくはフィブロインL鎖である。
【0015】
また、本発明におけるカイコとしては、好ましくは絹糸を構成するペプチドをコードする遺伝子領域(コード領域、プロモーター領域、非翻訳領域を含む)の変異によって絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているカイコ、より好ましくは該変異によって絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されている突然変異系統のカイコ、さらに好ましくは該変異によって絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されている裸蛹系統のカイコ、さらにより好ましくはNd−sDが挙げられるが、絹糸を構成するペプチドの生産抑制の原因が、人為的か否か、また、変異に依存するか否かに関わらず、絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているカイコであれば、本発明のカイコに含まれる。
【0016】
絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているカイコは人為的に作出することが可能である。例えば、2重鎖のRNAを用いることにより、カイコのある遺伝子の機能が欠損した所謂トランスジェニックカイコの作製も可能である(Quan, G. X., Kanda, T. and Tamura, T.(2002):Induction of the white egg 3 mutant phenotype by injection of the double−stranded RNA of the silkworm white gene. Insect Molecular Biology 11217−222)。また、カイコのある遺伝子の機能が欠損した所謂トランスジェニックカイコの作製は、ウイルスをベクターとして用いることによっても行うことができる(Yamao, M., Katayama, N., Nakazawa, H., Yamakawa, M., Hayashi, Y., Hara, S., Kamei, K., & Mori, H. (1999).Gene targeting in the silkworm by use of a baculovirus. Genes Dev, 13(5), 511−516.)。
【0017】
このように作出されたカイコにおいて、絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているか否かは、絹糸腺の大きさで判断することができる。また、作出されたカイコの繭の重量、その繭の絹糸を構成するペプチドの含有量を計測することなどで判断することができる。
【0018】
本発明においては、上記カイコの卵に、絹糸を構成するペプチドをコードするDNAのプロモーター領域の下流に任意のペプチドをコードするDNAが機能的に結合したDNAを導入する。ここで、「機能的に結合した」とは、絹糸を構成するペプチドをコードするDNAのプロモーター領域に転写因子が結合することにより、任意のペプチドをコードするDNAの発現が誘導されるように、絹糸を構成するペプチドをコードするDNAのプロモーター領域と任意のペプチドをコードするDNAとが結合していることをいう。従って、任意のペプチドをコードするDNAが他の遺伝子と結合しており、他の遺伝子産物との融合タンパク質を形成する場合であっても、絹糸を構成するペプチドをコードするDNAのプロモーター領域に転写因子が結合することによって、該融合タンパク質の発現が誘導されるものであれば、上記「機能的に結合した」の意に含まれる。
【0019】
本発明において、好ましくは、トランスポソンの逆位末端反復配列(Handler AM, McCombs SD, Fraser MJ, Saul SH.(1998) Proc Natl Acad Sci U S A 95(13):7520−5)の間に、上記DNAを挿入したベクターとともに、トランスポゾン転移酵素をコードするDNAを有するベクター(ヘルパーベクター)をカイコ卵に導入する。ヘルパーベクターとしては、pHA3PIG (Tamura, T., Thibert, C., Royer ,C., Kanda, T., Abraham, E., Kamba, M., Komoto, N., Thomas, J.−L., Mauchamp, B., Chavancy, G., Shirk, P., Fraser, M., Prudhomme, J.−C. and Couble, P., 2000, Nature Biotechnology 18, 81−84)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0020】
また、本発明では、バキュロウイルスベクターを使用することにより、絹糸を構成するペプチドをコードするDNAのプロモーター領域の下流に任意のペプチドをコードするDNAが結合したDNAを有するトランスジェニックカイコを作出することも可能である(Yamao, M., N. Katayama, H. Nakazawa, M. Yamakawa, Y. Hayashi et al., 1999, Genes Dev 13: 511−516)。
【0021】
本発明におけるトランスポゾンとしては、piggyBacが好ましいが、これに限定されるものではなく、マリーナ(mariner)、ミノス(minos)等を用いることもできる(Shimizu, K., Kamba, M., Sonobe, H., Kanda, T., Klinakis, A. G., Savakis, C., & Tamura, T. (2000) Insect Mol. Biol., 9, 277−281;Wang W, Swevers L, Iatrou K.(2000) Insect Mol Biol 9(2):145−55)。
【0022】
カイコ卵へのDNAの導入は、例えば、カイコの発生初期卵へ、トランスポゾンpiggyBacをベクターとして注射する方法(Tamura, T., Thibert, C., Royer ,C.,Kanda, T., Abraham, E., Kamba, M., Komoto, N., Thomas, J.−L., Mauchamp,B., Chavancy, G., Shirk, P., Fraser, M., Prudhomme, J.−C. and Couble, P., 2000, Nature Biotechnology 18, 81−84)に従って行うことができる。
【0023】
カイコ卵にDNAが導入されたかどうかを調べる方法として、例えば、注射したDNAを卵から再度抽出して測定する方法(Nagaraju, J., Kanda, T., Yukuhiro, K., Chavancy, G., Tamura, T., & Couble, P. (1996). Attempt of transgenesis of the silkworm(Bombyx mori L) by egg−injection of foreign DNA. Appl. Entomol. Zool., 31, 589−598)や、注射した遺伝子としてのDNAの卵内での発現を見る方法(Tamura, T., Kanda, T., Takiya, S., Okano, K., & Maekawa, H. (1990). Transient expression of chimeric CAT genes injected into early embryos of the domesticated silkworm, Bombyx mori. Jpn. J. Genet., 65, 401−410)等を挙げることができる。
【0024】
以下、カイコ卵へのDNAの導入方法を例示するが、この方法に限定されるものでない。例えば、カイコ卵へDNA注入用の管を使用して直接卵内へDNAを導入することが可能であるが、好ましい態様としては、前もって物理的または化学的に卵殻に穴を空け、該穴からDNAを導入する。この際、DNA注入用の管を挿入角度が該卵の背側の側面に対してほぼ垂直となるように該穴から卵内に挿入することができる。
【0025】
本発明において、物理的に卵殻に穴を空ける方法としては、例えば針、微小レーザー等を用いて穴を空ける方法が挙げられる。好適には針を用いた方法によって卵殻に穴を空けることができる。該針は、カイコの卵殻に穴を空けることができるものであれば、その針の材質、強度等は、特に制限されない。なお、本発明における針とは、通常、先端が尖った棒状の針を指すが、この形状に限定されず、卵殻に穴を空けることができるものであれば、全体の形状は特に制限されない。例えば、先端の尖ったピラミッド型の物質、または先端の尖った三角錐の形状の物質もまた、本発明の「針」に含まれる。本発明においては、タングステン針を好適に使用することができる。本発明の針の太さ(直径)は、後述のキャピラリーが通過可能な穴を空けることができる程度の太さであればよく、通常2〜20μm、好ましくは5〜10μmである。一方、化学的に卵殻に穴を空ける方法としては、例えば薬品(次亜塩素酸等)等を用いて穴を空ける方法が挙げられる。
【0026】
本発明において、穴を空ける位置としては、該穴からDNA注入用の管を挿入した場合に卵の背側の側面に対する挿入角度を、ほぼ垂直にできる位置ならば特に制限はないが、好ましくは背側の側面またはその反対側であり、より好ましくは背側の側面であり、さらにより好ましくは卵の背側側面のやや降誕よりの中央部である。
【0027】
本発明において、「ほぼ垂直」とは、70°〜120°を意味し、好ましくは80°〜90°を意味する。本発明において、「将来的に生殖細胞になる位置」としては、通常、卵の背側の卵表に近い位置(通常、卵表から0.01mm〜0.05mmの位置)であり、好ましくは、卵の背側中央の卵表に近い位置でやや後極よりの位置である。
【0028】
本発明のDNA注入用の管は、その管の材質、強度、内径等は特に制限されないが、DNA注入用の管を挿入する前に、物理的または化学的に卵殻に穴を空ける場合は、空けられた穴を通過できる太さ(外径)であることが好ましい。本発明のDNA注入用の管としては、例えば、ガラスキャピラリー等を挙げることができる。
【0029】
本発明のDNAの導入方法において、好ましい態様としては、上記のカイコ卵に物理的または化学的に穴を空け、DNA注入用の管を挿入角度が該卵の背側の側面に対してほぼ垂直となるように該穴から卵内に挿入し、DNAを注入する工程を、針とDNA注入用の管が一体型となったマニュピュレーターを使用して行う。通常、該マニュピュレーターを構成要素の1つとする装置を使用して本発明は好適に実施される。
【0030】
このような装置としては、解剖顕微鏡、照明装置、可動式のステージ、顕微鏡に金具で固定した粗動マニュピュレーター、このマニュピュレーターに付けたマイクロマニュピュレーター、DNAを注射するための空気圧を調整するインジェクターから構成されている。インジェクターに用いる圧力は窒素ボンベから供給され、圧力のスイッチはフットスイッチによっていれることができる。注射はガラススライド等の基板上に固定した卵に対して行い、卵の位置は移動式のステージによって決める。また、マイクロマニュピュレーターのガラスキャピラリーは4本のチューブで繋がれた操作部によって操作する。実際の手順は、卵に対するタングステン針の位置を粗動マニュピュレーターで決め、ステージのレバーで水平方向に卵を動かし穴を空ける。続いて、マイクロマニュピュレーターの操作部のレバーを操作して、穴の位置にガラスキャピラリーの先端を誘導し、再びステージのレバーによりキャピラリーを卵に挿入する。この場合、卵の背側の側面に対し垂直にガラスキャピラリーが挿入される必要がある。フットスイッチを入れDNAを注射し、レバーを操作して卵からキャピラリーを抜く。空けた穴を瞬間接着剤等でふさぎ、一定の温度および、一定の湿度のインキュベーターで保護する。本発明に使用される装置としては、好適には、特許第1654050号に記載の装置または該装置を改良した装置が挙げられる。
【0031】
また、本発明の態様においては、DNAの導入に用いるカイコ卵が基板に固定されていることが好ましい。本発明の基板として、例えば、スライドグラス、プラスチック板等を用いることができるが、これらに特に制限されない。本発明の上記態様においては、カイコ卵内の将来的に生殖細胞になる位置に正確にDNAを注射するために、卵の方向を揃えて固定することが望ましい。また、上記態様においては、基板へ固定するカイコ卵の数には、特に制限はない。また、複数個のカイコ卵を用いる場合、カイコ卵を基板へ固定する方向性としては、好ましくは背腹の向きが一定となるような方向である。本発明の上記カイコ卵の基板への固定は、例えば、水性の糊をあらかじめ塗布した市販の台紙(バラ種台紙)の上に産卵させ、台紙に水を加えて卵をはがし、次いで濡れた状態の卵を基板に整列させ、風乾することによって行う。卵をスライドグラス上に卵の方向を揃えて固定することが好ましい。また、卵の基盤への固定は両面テープや接着剤等を用いることによっても可能である。
【0032】
本発明の任意のペプチドの製造方法においては、次いで、該DNAが導入された卵から生じたカイコの中から、トランスジェニックカイコを選択する。本発明において、トランスジェニックカイコを選択するには、例えば、選択マーカーを用いて行うことができる。本発明における選択マーカーとしては、当業者において一般的に使用されるマーカー、例えば、GFP等の蛍光タンパク質や皮膚が透明になる油蚕、卵色が白くなる白卵などの突然変異に対応する野生型の遺伝子等を挙げることができる。これらマーカーを有しているカイコを、例えば、蛍光、体色、卵色などを指標に選択することができる。
【0033】
本発明の任意のペプチドの製造方法においては、次いで、選択されたトランスジェニックカイコから任意のペプチドを回収する。回収方法としては、繭を60%LiSCNで溶かし、20mMTris、5M ureaで透析することによって回収する方法(Inoue, S., Tsuda, H., Tanaka, H., Magoshi, Y and Mizuno (2001) Sericologia 4,
157−163. )を使用することができる。
【0034】
また、本発明は、医薬組成物の製造方法を提供する。該方法においては、回収された任意のペプチドと医薬上許容される担体とを混合する。該担体としては、例えば界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等が挙げられるが、これらに制限されず、その他常用の担体を適宜使用することができる。具体的には、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を挙げることができる。
【0035】
また、本発明は、絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているカイコのトランスジェニックカイコであって、絹糸を構成するペプチドをコードするDNAのプロモーター領域の下流に任意のペプチドをコードするDNAが機能的に結合したDNAを有するトランスジェニックカイコを提供する。このようなカイコを使用することで、任意のペプチドを大量に生産することができる。このようなカイコは、例えば、上述の方法で作出することができる。また、本発明におけるトランスジェニックカイコの状態に特に制限はなく、例えば卵の状態であってもよい。さらに、本発明は、上記トランスジェニックカイコの繭を提供する。このような繭は、任意のペプチドを大量に含有する繭として有用である。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
[実施例1]
カイコは絹糸線という器官でフィブロインL鎖、H鎖、p25及びセリシンというタンパク質を合成する。このうち、フィブロインL鎖とH鎖は絹の主成分で、絹糸線の後部で合成され、カイコが繭を作るときに絹糸腺の前部から吐糸される。
【0037】
本実施例ではフィブロインL鎖の遺伝子とこの遺伝子が欠失を起こしているため、正常に絹タンパク質を合成できない突然変異系統Nd−sD (Mori K, Tanaka K,Kikuchi Y, Waga M, Waga S, Mizuno S.(1995) J Mol Biol. 251(2):217−28)を利用した。この突然変異系統は独立法人農業生物資源研究所で保存・維持され、一般に提供されている。
【0038】
導入する遺伝子には検出を容易にするため、フィブロインL鎖と緑色蛍光タンパク質(GFP)の融合遺伝子を用いた。すなわち、正常なカイコのフィブロインL鎖遺伝子のプロモーターにこの遺伝子のcDNAを繋ぎ、その下流にGFP遺伝子を繋いだ融合遺伝子を作出した。この融合遺伝子を既に報告されたトランスポゾンpiggyBacをベクターとするトランスジェニックカイコを作るためのプラスミドに挿入し、カイコの形質転換のためのベクターとした(図1)。
【0039】
[実施例2]
このベクタープラスミドとヘルパープラスミドpHA3PIG (Tamura, T., Thibert, C., Royer ,C., Kanda, T., Abraham, E., Kamba, M., Komoto, N., Thomas, J.−L., Mauchamp, B., Chavancy, G., Shirk, P., Fraser, M., Prudhomme, J.−C. and Couble, P., 2000, Nature Biotechnology 18, 81−84)を発生初期の卵に注射することにより、トランスジェニックカイコを作出した。この場合、融合タンパク質遺伝子を導入するためのホストとしてカイコの突然変異系統Nd−sDと正常なカイコとを用いた。導入方法は既に報告されているカイコの発生初期卵へ、トランスポゾンpiggyBacをベクターとして注射する方法(Tamura, T., Thibert,C., Royer ,C., Kanda, T., Abraham, E., Kamba, M., Komoto, N., Thomas, J.−L., Mauchamp, B., Chavancy, G., Shirk, P., Fraser, M., Prudhomme, J.−C. and Couble, P., 2000, Nature Biotechnology 18, 81−84)を用いた。
【0040】
遺伝子が導入された個体のスクリーニングは注射後の次の世代で行い、目的とする遺伝子が導入されているかどうかはサザン及び絹糸腺でのGFP遺伝子の発現によって確かめた。融合タンパク質の合成、移動は蛍光実体蛍光顕微鏡によって観察するとともに、ノーザン及びウエスタンブロッティングにより調べた。
【0041】
カイコの発生初期の卵に図1の遺伝子とヘルパープラスミドpHA3PIGを正常系統とNd−sD突然変異系統の卵に注射することにより、次世代において目的とする遺伝子が導入された2系統のトランスジェニックカイコが得られた。
【0042】
非導入のNd−sD突然変異系統ではL鎖の遺伝子に異常(DNAの欠損)があり、そのためフィブロインH鎖やL鎖が殆ど合成されない。かろうじて、セリシンだけが合成されるが、このタンパク質は繊維となる絹の外側を保護するための膠着性タンパク質であるため、本体である絹そのものはほとんど生成されない(Mori K, Tanaka K, Kikuchi Y, Waga M, Waga S, Mizuno S.(1995) J Mol Biol. 251(2):217−28)。そのため、変異体の絹糸腺は正常より遥かに小さな未発達の状態でとどまっている(図2、Nd−sD 可視光下)。一方、突然変異系統Nd−sDに目的とする遺伝子を導入したトランスジェニックカイコでは、絹糸腺の大きさが大きくなり、正常のサイズに近くなるまで回復している(図2、トランスジェニック 可視光下)。融合タンパク質の発現を蛍光実体顕微鏡で観察したところ、もとの突然変異系統の絹糸腺ではフィブロインL鎖と融合したGFPは蛍光を発するはずであるが、このような蛍光は全く観察されなかった(図2、Nd−sD 蛍光下)。しかし、突然変異系統に融合遺伝子を導入したトランスジェニックカイコでは絹糸腺後部の細胞から中部にかけて強い蛍光が観察された(図2、トランスジェニック 蛍光下)。また、後部絹糸腺の細胞をさらに拡大してみた結果、蛍光を発する物質は絹糸腺細胞ではなく、絹糸腺の内腔に存在することが分かった(図2、トランスジェニック PSG拡大図 蛍光下)。このことから、導入された遺伝子の発現によって生じたフィブロインL鎖とGFPの融合タンパク質は、絹糸腺の内腔に分泌され、中部絹糸腺に蓄積することが明らかになった。
【0043】
[実施例3]
次に、この絹糸腺に蓄積したタンパク質が最終的に絹糸として吐糸されるかどうかを知るため、突然変異体とそのトランスジェニックカイコの繭の蛍光を調べた。その結果、突然変異体の繭はセリシンタンパク質のみしか含まれないため、正常なカイコでは見られない非常に層の薄い、脆弱な繭を作った(図3、Nd−sD可視光下)。しかし、この突然変異系統にフィブロインL鎖とGFPの融合タンパク質遺伝子を導入した個体では正常なカイコが作る繭と殆ど変わらない形状の繭を作った(図3、トランスジェニック 可視光下)。これらの繭を蛍光実体顕微鏡で観察したところ、突然変異が作る繭には蛍光が全く観察されなかった(図3、Nd−sD 蛍光下)。しかし、突然変異系統のトランスジェニックカイコが作る繭には、非常に強い蛍光が観察され、大量のフィブロインL鎖とGFPの融合タンパク質を含有していることが示唆された(図3、トランスジェニック 蛍光下)。
【0044】
[実施例4]
次に、突然変異体のトランスジェニックカイコの繭に含まれる融合タンパク質の量と正常のカイコに同じ遺伝子を導入して作成したトランスジェニックカイコの量とを比較した。正常なカイコではフィブロインL鎖の遺伝子は機能しているため、フィブロインL鎖の抗体を用いたウェスタンブロッティングにおいて、大量のフィブロインL鎖が検出される(図4、レーン1)。しかし、フィブロインL鎖の遺伝子に異常のある突然変異系統Nd−sDの繭にはフィブロインL鎖タンパク質は存在しない(図4、レーン3)。正常なカイコのトランスジェニック個体の繭にはフィブロインL鎖とL鎖とGFPが融合したタンパク質が検出された(図4、レーン2)。しかし、突然変異体の繭から抽出したタンパク質では導入した融合タンパク質だけが検出され、L鎖タンパク質の混入はなかった(図4、レーン4)。抗体にGFPを用いたウェスタンブロッティングでも同じような結果が観察された。この場合、トランスジェニックカイコにのみ融合タンパク質が合成されていることが再度確認された(図4、レーン5〜8)。バンドの強さから見ても、量的な比較では突然変異体のトランスジェニックカイコの方が正常のトランスジェニックカイコの作るタンパク量より多いことが分かった(図4、レーン6と8)。
【0045】
絹糸腺での絹タンパクの合成系に異常があるため、正常な繭を作らない突然変異系統にフィブロインL鎖とGFPの融合タンパク質遺伝子を導入したトランスジェニックカイコを作ることにより、大量の融合タンパク質を絹糸腺で合成し、繭中に分泌させる方法を確立した。この方法は、正常なカイコに同じ融合遺伝子を導入して、組換えタンパク質を合成する方法に比較し、突然変異種では数倍のタンパク質が合成されていることが確認されるともに正常個体に大量に存在する内在性のフィブロインL鎖タンパク質は全く存在しなかった。このことは遺伝子組換え手法を利用してカイコの絹糸腺において、外来の有用タンパク質の合成するうえで大きな利点がある。すなわち、1)突然変異Nd−sDの利用は導入した遺伝子由来のタンパク質の合成能力を向上させる。2)内在性の類似タンパク質の混入を避けることができるため、導入した外来遺伝子による組換えタンパク質の精製が容易になる。
【0046】
以上のことから、トランスジェニックカイコの絹糸腺を利用して医薬品などの組換えタンパク質を合成する上で、このような本来の遺伝子の発現が抑制されているカイコを利用して、その生産量を向上させ、純度を高める方法は有効な生産手段の一つと考えられ、今後カイコを用いた有用物質の生産系の効率を高める上で重要な方法であると考えられる。
【0047】
【発明の効果】
本発明により、カイコにおいて任意のペプチドの生産量を向上させること、また、純度を高めることが可能になった。さらに、内在性タンパク質の混入を避けることができるため、任意のペプチドの精製が容易になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】トランスジェニックカイコの作出に用いたプラスミドベクターの構造を示す図である。矢印はトランスポソンpiggyBacの逆位末端反復配列を示し、fiLpはフィブロリンL鎖遺伝子のプロモーター領域を示し、fiLcはフィブロリンL鎖遺伝子のcDNAを示し、GFPは緑色蛍光タンパク質遺伝子を示し、fiLポリAはフィブロリンL鎖遺伝子のポリA領域を示す。
【図2】突然変異体Nd−sDとトランスジェニックカイコの絹糸腺を示す写真である。
【図3】突然変異体Nd−sDとトランスジェニックカイコの繭を示す写真である。
【図4】突然変異系統の繭糸におけるフィブロリンL鎖融合遺伝子産物を示す写真である。1、2、5および6はフィブロリンL鎖抗体との反応を示し、3、4、7および8はGFP抗体との反応を示す。また、1および3は正常カイコを示し、2および4は正常カイコのトランスジェニックを示し、5および7は突然変異系統Nd−sDを示し、6および8は突然変異系統のトランスジェニックカイコを示す。
Claims (13)
- 以下の(a)〜(c)の工程を含む、任意のペプチドの製造方法。
(a)絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているカイコの卵に、絹糸を構成するペプチドをコードするDNAのプロモーター領域の下流に任意のペプチドをコードするDNAが機能的に結合したDNAを導入する工程
(b)該DNAが導入された卵から生じたカイコの中から、トランスジェニックカイコを選択する工程
(c)選択されたトランスジェニックカイコから任意のペプチドを回収する工程 - 請求項1に記載の工程に、さらに、回収された任意のペプチドと医薬上許容される担体とを混合する工程を含む、医薬組成物の製造方法。
- 以下の(a)および(b)の工程を含む、トランスジェニックカイコの製造方法。
(a)絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているカイコの卵に、絹糸を構成するペプチドをコードするDNAのプロモーター領域の下流に任意のペプチドをコードするDNAが機能的に結合したDNAを導入する工程
(b)該DNAが導入された卵から生じたカイコの中から、トランスジェニックカイコを選択する工程 - 絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているカイコが、絹糸を構成するペプチドをコードする遺伝子領域の変異によって該ペプチドの生産が抑制されているカイコである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 絹糸を構成するペプチドをコードする遺伝子領域の変異によって該ペプチドの生産が抑制されているカイコが、突然変異系統のカイコである、請求項4に記載の方法。
- 絹糸を構成するペプチドがフィブロインである、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- 突然変異系統のカイコがNd−sDである、請求項5に記載の方法。
- 絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているカイコのトランスジェニックカイコであって、絹糸を構成するペプチドをコードするDNAのプロモーター領域の下流に任意のペプチドをコードするDNAが機能的に結合したDNAを有するトランスジェニックカイコ。
- 絹糸を構成するペプチドの生産が抑制されているカイコが、絹糸を構成するペプチドをコードする遺伝子領域の変異によって該ペプチドの生産が抑制されているカイコである、請求項8に記載のトランスジェニックカイコ。
- 絹糸を構成するペプチドをコードする遺伝子領域の変異によって該ペプチドの生産が抑制されているカイコが、突然変異系統のカイコである、請求項9に記載のトランスジェニックカイコ。
- 絹糸を構成するペプチドがフィブロインである、請求項8〜10のいずれかに記載のトランスジェニックカイコ。
- 突然変異系統のカイコがNd−sDである、請求項10に記載のトランスジェニックカイコ。
- 請求項8〜12のいずれかに記載のトランスジェニックカイコの繭。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002301454A JP2004135528A (ja) | 2002-10-16 | 2002-10-16 | カイコを利用したタンパク質の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002301454A JP2004135528A (ja) | 2002-10-16 | 2002-10-16 | カイコを利用したタンパク質の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004135528A true JP2004135528A (ja) | 2004-05-13 |
Family
ID=32449787
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002301454A Pending JP2004135528A (ja) | 2002-10-16 | 2002-10-16 | カイコを利用したタンパク質の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004135528A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2008032748A1 (fr) * | 2006-09-12 | 2008-03-20 | Hiroshima Industrial Promotion Organization | Ver à soie transgénique capable de produire une molécule anticorps fonctionnelle |
US20110023154A1 (en) * | 2008-12-04 | 2011-01-27 | Sigma-Aldrich Co. | Silkworm genome editing with zinc finger nucleases |
US8426674B2 (en) | 2006-12-28 | 2013-04-23 | Nitto Boseki Co., Ltd. | Method for production of TRACP5b |
US8952215B2 (en) | 2005-10-18 | 2015-02-10 | Nitto Boseki Co., Ltd. | Antibody-producing transgenic silkworms and methods for producing the same |
WO2015060159A1 (ja) * | 2013-10-25 | 2015-04-30 | 独立行政法人農業生物資源研究所 | 外因性遺伝子発現増強剤 |
-
2002
- 2002-10-16 JP JP2002301454A patent/JP2004135528A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US8952215B2 (en) | 2005-10-18 | 2015-02-10 | Nitto Boseki Co., Ltd. | Antibody-producing transgenic silkworms and methods for producing the same |
WO2008032748A1 (fr) * | 2006-09-12 | 2008-03-20 | Hiroshima Industrial Promotion Organization | Ver à soie transgénique capable de produire une molécule anticorps fonctionnelle |
US8426674B2 (en) | 2006-12-28 | 2013-04-23 | Nitto Boseki Co., Ltd. | Method for production of TRACP5b |
US20110023154A1 (en) * | 2008-12-04 | 2011-01-27 | Sigma-Aldrich Co. | Silkworm genome editing with zinc finger nucleases |
WO2015060159A1 (ja) * | 2013-10-25 | 2015-04-30 | 独立行政法人農業生物資源研究所 | 外因性遺伝子発現増強剤 |
JPWO2015060159A1 (ja) * | 2013-10-25 | 2017-03-09 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 | 外因性遺伝子発現増強剤 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5131798B2 (ja) | カイコ中部絹糸腺特異的遺伝子発現系を利用したタンパク質の製造方法 | |
US5545808A (en) | Transgenic salmonid fish expressing exogenous salmonid growth hormone | |
WO2015060159A1 (ja) | 外因性遺伝子発現増強剤 | |
EP2581446B1 (en) | Method for producing pentameric crp, pentameric crp-producing transgenic silkworm and method for constructing same, dna encoding canine monomeric crp and expression vector containing the dna | |
CN111793644B (zh) | 家蚕丝心蛋白重链表达系统及其制备方法和应用 | |
CN111518832B (zh) | 蜘蛛梨状腺丝蛋白基因序列的应用及其改良家蚕丝性能的方法 | |
CN111518831A (zh) | 蜘蛛葡萄状腺丝蛋白基因序列的应用及其改良家蚕丝性能的方法 | |
KR101235297B1 (ko) | 지렁이의 생식소 재생능력을 이용한 형질전환 지렁이의 제조방법, 이에 의해 제조된 형질전환 지렁이, 및 형질전환 지렁이의 체액으로부터 재조합 단백질의 생산방법 | |
CN110551190B (zh) | 一种利用家蚕生产蜘蛛丝的方法 | |
JP2004135528A (ja) | カイコを利用したタンパク質の製造方法 | |
JP2005095063A (ja) | カイコ絹糸腺細胞から絹糸腺内腔への移行活性を有するタンパク質からシグナル領域が除去されたタンパク質の製造方法 | |
JP4431739B2 (ja) | カイコのキヌレニン酸化酵素遺伝子をコードするdnaの利用 | |
JP2004016144A (ja) | ヒト・コラーゲンを産生する形質転換カイコ | |
JP5997772B2 (ja) | カイコフィブロイン重鎖遺伝子の突然変異配列、及び突然変異を誘発する方法と応用 | |
CN111793645B (zh) | 一种家蚕丝心蛋白重链表达系统及其制备方法和应用 | |
JP2005333913A (ja) | 核多角体病ウイルスに対して抵抗性を示すトランスジェニックカイコ、およびその製造方法 | |
JP2012187123A (ja) | カイコ中部絹糸腺特異的遺伝子発現系を利用したタンパク質の製造方法 | |
JP5240699B2 (ja) | 効率的なトランスジェニックカイコの作出方法 | |
JP5177431B2 (ja) | TRACP5bの製造方法 | |
JP6964843B2 (ja) | バイナリー遺伝子発現システム | |
JP2008187947A (ja) | 抗ウイルスタンパク質遺伝子ノックダウンによる有用タンパク質高発現カイコおよびその利用 | |
KR100268713B1 (ko) | T-세포가 결핍된 유전자 이식 마우스 | |
US20210047655A1 (en) | Transgenic silkworms expressing hagfish thread keratin | |
JP5688849B2 (ja) | トランスジェニック金魚 | |
RU2757114C1 (ru) | Способ получения линии гуманизированных мышей, трансгенных по hACE2 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A711 | Notification of change in applicant |
Effective date: 20040225 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060630 |
|
A521 | Written amendment |
Effective date: 20060825 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 |
|
A02 | Decision of refusal |
Effective date: 20070508 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |
|
A521 | Written amendment |
Effective date: 20070705 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20070627 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20070830 |
|
A911 | Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20070904 |
|
A912 | Removal of reconsideration by examiner before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A912 Effective date: 20071109 |