JP5169025B2 - 固体高分子型燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、固体高分子型燃料電池に関し、さらに詳しくは、車載用動力源、定置型小型発電器、コジェネレーションシステム等として好適な固体高分子型燃料電池に関する。
固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体(MEA)を基本単位とする。また、固体高分子型燃料電池において、電極は、一般に、拡散層と触媒層の二層構造をとる。拡散層は、触媒層に反応ガス及び電子を供給するためのものであり、カーボンペーパー、カーボンクロス等が用いられる。また、触媒層は、電極反応の反応場となる部分であり、一般に、白金等の電極触媒を担持したカーボンと固体高分子電解質との複合体からなる。
このようなMEAを構成する電解質膜あるいは触媒層内電解質には、耐酸化性に優れた全フッ素系電解質(高分子鎖内にC−H結合を含まない電解質。例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成(株)製)、フレミオン(登録商標、旭硝子(株)製)等。)を用いるのが一般的である。
また、全フッ素系電解質は、耐酸化性に優れるが、一般に極めて高価である。そのため、固体高分子型燃料電池の低コスト化を図るために、炭化水素系電解質(高分子鎖内にC−H結合を含み、C−F結合を含まない電解質)、又は、部分フッ素系電解質(高分子鎖内にC−H結合とC−F結合の双方を含む電解質)の使用も検討されている。
しかしながら、固体高分子型燃料電池を車載用動力源等として実用化するためには、解決すべき課題が残されている。例えば、固体高分子型燃料電池を低コスト化するためには、白金等の高価な貴金属触媒の使用量を低減する必要があり、そのためには、微細な触媒粒子を均一に分散させる必要がある。また、触媒金属は、電位変動によってイオン化し、電解質膜に流出することが知られている。触媒金属の流出による発電特性の低下を抑制するためには、触媒の溶出を抑制する必要がある。さらに、電極において副成した過酸化物がラジカル化すると、電解質膜を劣化させる原因となる。従って、電解質膜の劣化を抑制するためには、過酸化物がラジカル化する前に分解するのが好ましい。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、アノード触媒層にパラジウム−コバルト合金を含む膜電極接合体が開示されている。同文献には、白金がイオン化し固体高分子電解質膜に溶出する現象はカソード側で生じやすく、アノード側では使用環境が比較的穏やかである点、及びアノード触媒層においては白金系触媒の代わりにパラジウム系触媒を用いても優れた特性が得られる点が記載されている。
また、特許文献2には、白金コロイドを含む溶液を調製し、高分子電解質膜の片面に白金微粒子の付いた高分子電解質膜を作製し、この白金微粒子を絶縁することなく電極触媒層を接合することにより得られる電極電解質膜接合体が開示されている。
同文献には、電解質膜の上に白金コロイドを付着させると、白金微粒子により過酸化物が分解される点が記載されている。
特開2006−260909号公報 特開2006−79904号公報
一般に、MEAの接合性が電池性能と耐久性に大きな影響を与えることが知られている。例えば、電解質膜と触媒層との接合が不十分であると、プロトンの伝導が界面で不十分となり、初期性能は低い(触媒の利用率が小さい)。また、運転中の温度や乾湿の変動により、接合界面で電解質膜と触媒層とが剥離して、急激な電池電圧低下に至ることがある。これは、特に触媒層と電解質膜の電解質が同質でない場合に問題となりやすい。
例えば、触媒層内電解質がパーフルオロ系の高分子で、電解質膜もパーフルオロ系の高分子である場合には、上記問題は比較的小さい。一方、電解質膜が非パーフルオロ系の炭化水素系電解質で、かつ触媒層内電解質がパーフルオロ系の高分子である場合には、異質の材料(ガラス転位温度Tgが異なる)が接することになり、良好な接合を得ることが困難となる。さらに、電解質膜がセルロース、ポリエチレン、ポリアミド等の多孔質基材に高分子電解質を含浸させた、いわゆるポアフィリング膜では、基材部分が孔内の高分子と同質でないため、触媒層との接合性は、一層不安定なものとなりやすい。また、良好な接合状態が得られたとしても、その接合条件(例えば、膜の含水率の調製や接合温度、圧力など)が狭いことから、ばらつきのない接合状態を安定的に得ることが困難である。
これを改良する手段として、
(1) 膜あるいは触媒層表面に液状の高分子電解質溶液を塗布した後に接合する方法(特開2006−185800号公報参照)、
(2) 触媒層の形成をスプレー塗布で行う方法(特開2006−278073号公報参照)、
(3) 超音波を利用して接合する方法(特開2006−278073号公報参照)、
(4) 電気泳動を利用して接合する方法(特開2006−277984号公報参照)、
(5) スパッタリングを利用して接合する方法(特開2006−134602号公報参照)、
などが知られている。しかしながら、これらの方法を用いても、満足できる接合を得難く、良好な発電特性が得られないのが現状である。
本発明が解決しようとする課題は、電解質膜と触媒層との接合性が良好な固体高分子型燃料電池を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、電解質膜と触媒層内電解質が異なる材料である場合、あるいは電解質膜がポアフィリング膜である場合であっても、電解質膜と触媒層との接合性が良好な固体高分子型燃料電池を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る固体高分子型燃料電池は、
電解質膜の両面に触媒層を含む電極が接合された膜電極接合体と、
前記電解質膜と前記触媒層との界面に形成された、PdとPtとを含むPd/Pt粒子とを備え、
前記電解質膜は、多孔質支持体に電解質を含浸させたポアフィリング膜であることを要旨とする。
前記Pd/Pt粒子は、以下の方法により得られるものが好ましい。
(1) 前記電解質膜及び/又は触媒シートをPdイオンを含む第1イオン交換溶液に接触させ、前記電解質膜表面及び/又は前記触媒シート表面にある酸基の水素イオンの全部又は一部をPdイオンでイオン交換する。
(2) 前記Pdイオンを還元処理し、前記電解質膜表面及び/又は前記触媒シート表面にPd核を析出させる。
(3) 前記Pd核を析出させた前記電解質膜及び/又は前記触媒シートをPtイオンを含む第2イオン交換溶液に接触させ、前記電解質膜表面及び/又は前記触媒シート表面にある酸基の水素イオンの全部又は一部をPtイオンでイオン交換する。
(4) 前記Ptイオンを還元処理し、前記Pd/Pt粒子を析出させる。
また、前記Pd/Pt粒子は、以下の方法により得られるものが好ましい。
(1) 前記電解質膜及び/又は触媒シートをPdイオン及びPtイオンを含む第3イオン交換溶液に接触させ、前記電解質膜表面及び/又は前記触媒シート表面にある酸基の水素イオンの全部又は一部をPdイオン及びPtイオンでイオン交換する。
(2) 前記Pdイオン及びPtイオンを還元処理し、前記電解質膜表面及び/又は前記触媒シート表面に前記Pd/Pt粒子を析出させる。
電解質膜と触媒層との界面に、Pd/Pt粒子を形成すると、燃料電池特性が向上する。これは、電解質膜と触媒層との界面にPd/Pt粒子を形成することによって、電解質膜と触媒層との間の接合性が向上したためと考えられる。
また、イオン交換処理及び還元処理によりPd/Pt粒子を形成すると、高い燃料電池特性が得られる。これは、イオン交換処理及び還元処理を用いることによって、電解質膜表面及び/又は触媒層内電解質表面の親水部に優先的にPd/Pt粒子が形成されるためと考えられる。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に電極が接合された膜電極接合体(MEA)を備えている。また、固体高分子型燃料電池は、通常、このようなMEAの両面を、ガス流路を備えたセパレータで挟持し、これを複数個積層したものからなる。
本発明において、固体高分子電解質膜の材質は、特に限定されるものではなく、種々の材料を用いることができる。
すなわち、固体高分子電解質膜の材質は、高分子鎖内にC−H結合を含み、かつC−F結合を含まない炭化水素系電解質、及び高分子鎖内にC−F結合を含むフッ素系電解質のいずれであっても良い。また、フッ素系電解質は、高分子鎖内にC−H結合とC−F結合の双方を含む部分フッ素系電解質であっても良く、あるいは、高分子鎖内にC−F結合を含み、かつC−H結合を含まない全フッ素系電解質であっても良い。
なお、フッ素系電解質は、フルオロカーボン構造(−CF2−、−CFCl−)の他、クロロカーボン構造(−CCl2−)や、その他の構造(例えば、−O−、−S−、−C(=O)−、−N(R)−等。但し、「R」は、アルキル基)を備えていてもよい。また、固体高分子電解質膜を構成する高分子の分子構造は、特に限定されるものではなく、直鎖状又は分岐状のいずれであっても良く、あるいは環状構造を備えていても良い。
また、固体高分子電解質に備えられる酸基の種類についても、特に限定されるものではない。酸基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、スルホンイミド基等がある。固体高分子電解質には、これらの酸基の内、いずれか1種類のみが含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。さらに、これらの酸基は、直鎖状固体高分子化合物に直接結合していても良く、あるいは、分枝状固体高分子化合物の主鎖又は側鎖のいずれかに結合していても良い。
炭化水素系電解質としては、具体的には、
(1)高分子鎖のいずれかにスルホン酸基等の酸基が導入されたポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリサルホン、ポリエーテル等、及びこれらの誘導体(脂肪族炭化水素系電解質)、
(2)高分子鎖のいずれかにスルホン酸基等の酸基が導入されたポリスチレン、芳香環を有するポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリサルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート等、及びこれらの誘導体(部分芳香族炭化水素系電解質)、
(3)高分子鎖のいずれかにスルホン酸基等の酸基が導入されたポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレン、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド等、及びこれらの誘導体(全芳香族炭化水素系電解質)、
等が好適な一例として挙げられる。
また、部分フッ素系電解質としては、具体的には、高分子鎖のいずれかにスルホン酸基等の酸基が導入されたポリスチレン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(以下、これを「PS−g−ETFE」という。)、ポリスチレン−グラフト−ポリテトラフルオロエチレン等、及びこれらの誘導体が好適な一例として挙げられる。
また、全フッ素系電解質としては、具体的には、デュポン社製ナフィオン(登録商標)、旭化成(株)製アシプレックス(登録商標)、旭硝子(株)製フレミオン(登録商標)等、及びこれらの誘導体が好適な一例として挙げられる。
さらに、本発明において、MEAを構成する固体高分子電解質膜は、固体高分子電解質のみからなるものであっても良く、あるいは、多孔質材料、長繊維材料、短繊維材料等からなる補強材を含む複合体であっても良い。
これらの中でも、フッ素系電解質、特に全フッ素系電解質は、高分子鎖内にC−F結合を有しており、耐酸化性に優れているので、これに対して本発明を適用すれば、耐酸化性及び耐久性に優れた固体高分子型燃料電池が得られる。また、多孔質支持体に電解質を含浸させたポアフィリング膜に対して本発明を適用すると、高い効果が得られる。
MEAを構成する電極は、通常、触媒層と拡散層の二層構造を取るが、触媒層のみによって構成される場合もある。電極が触媒層と拡散層の二層構造を取る場合、電極は、触媒層を介して電解質膜に接合される。
触媒層は、電極反応の反応場となる部分であり、電極触媒又は電極触媒を担持した担体と、その周囲を被覆する触媒層内電解質とを備えている。一般に、電極触媒には、MEAの使用目的、使用条件等に応じて最適なものが用いられる。固体高分子型燃料電池の場合、電極触媒には、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム等若しくはこれらの1種若しくは2種以上を含む合金、又は、白金等の白金族元素と、コバルト、鉄、ニッケル等の遷移金属元素との合金が用いられる。触媒層に含まれる電極触媒の量は、MEAの用途、使用条件等に応じて最適な量が選択される。
触媒担体は、微粒の電極触媒を担持すると同時に、触媒層における電子の授受を行うためのものである。触媒担体には、一般に、カーボン、活性炭、フラーレン、カーボンナノフォーン、カーボンナノチューブ等が用いられる。触媒担体表面への電極触媒の担持量は、電極触媒及び触媒担体の材質、MEAの用途、使用条件等に応じて最適な担持量が選択される。
触媒層内電解質は、固体高分子電解質膜と電極との間でプロトンの授受を行うためのものである。触媒層内電解質には、通常、固体高分子電解質膜を構成する材料と同一の材料が用いられるが、異なる材料を用いても良い。触媒層内電解質の量は、MEAの用途、使用条件等に応じて最適な量が選択される。
拡散層は、触媒層との間で電子の授受を行うと同時に、反応ガスを触媒層に供給するためのものである。拡散層には、一般に、カーボンペーパ、カーボンクロス等が用いられる。また、撥水性を高めるために、カーボンペーパ等の表面に、ポリテトラフルオロエチレン等の撥水性高分子の粉末とカーボンの粉末との混合物(撥水層)をコーティングしたものを拡散層として用いても良い。
本発明に係る固体高分子型燃料電池は、上述した構成に加えて、電解質膜と触媒層との界面に形成されたPd/Pt粒子を備えていることを特徴とする。
「Pd/Pt粒子」とは、PdとPtとを含む粒子をいう。後述する方法により得られるPd/Pt粒子は、Pd核の表面がPtシェルで被覆されたコア/シェル型粒子と考えられているが、Pd/Pt粒子の形態は、これに限定されるものではない。
Pd/Pt粒子の大きさが大きくなりすぎると、セル締結時に電解質膜に損傷を与え、クラック発生の起点となりやすい。従って、Pd/Pt粒子の大きさは、小さいほど良い。良好な燃料電池特性を得るためには、Pd/Pt粒子の大きさは、100nm以下が好ましい。
電解質膜と触媒層との界面に形成するPd/Pt粒子の量は、燃料電池特性に影響を与える。一般に、Pd/Pt粒子の担持量が少なすぎると、十分な効果が得られない。従って、Pd/Pt粒子の担持量は、0.01mg/cm2以上が好ましい。
一方、Pd/Pt粒子の担持量が過剰になると、効果が飽和するだけでなく、コスト上昇を招く。従って、Pd/Pt粒子の担持量は、0.1mg/cm2以下が好ましい。
Pd/Pt粒子に含まれるPdは、微細なPd/Pt粒子を析出させるための核として機能すると考えられている。従って、Pd/Pt粒子に含まれるPd量は、微細なPd/Pt粒子を析出させるのに必要な量であれば良い。このような効果を得るためには、Pd/Pt粒子中のPd量は、10〜50at%が好ましい。
次に、本発明に係る固体高分子型燃料電池の製造方法について説明する。
電解質膜と触媒層の界面にPt微粒子を形成すると、燃料電池特性が向上する。これは、界面に形成されたPt微粒子によって電解質膜と触媒層とがイオン的に強固に結合されるためと考えられている。しかしながら、例えば無電解メッキにより電解質膜又は触媒シートの表面にPtの微粒子を析出させようとしても、Ptイオンの還元速度が遅いため、不均一になりやすい。そこで、Ptの析出を促すPt以外の核を導入する。この核としては、比較的耐食性の高い白金族粒子(Rh、Ru、Ir、Os、Pd)が望ましい。特に、これらの中でも、触媒活性の高いPdが望ましい。
電解質膜表面又は触媒シート表面にPd核を生成させ、次いでPd核の表面に、無電解メッキ法等を用いてPtを析出させると、電解質膜又は触媒シートの表面に、微細なPd/Pt粒子を均一に形成することができる。
電解質膜又は触媒シートの表面にPd粒子を形成する方法としては、
(1) Pd、Pt−Pd合金等からなるターゲットを用いたスパッター、レーザーアブレーションや蒸着等の物理的方法、
(2) Pdの有機金属錯体の還元熱分解によるCVD法、
(3) 塩化パラジウム、硝酸パラジウム、ジニトロジアンミンパラジウム、テトラアンミンパラジウムクロライド等の水溶性パラジウムイオンを含むイオン交換溶液を用いて電解質膜又は触媒シートのイオン交換処理を行い、次いで還元処理を行うイオン交換還元析出法、
(4) セラミックスや樹脂上への無電解メッキ前処理として知られているキャタライザー・アクセレーター法、又は、センシタイザー・アクチベータ法、
などがある。
但し、いずれの方法でも、多量のPdの析出は、ガス拡散性を阻害し、良好な3相帯の形成を妨げる。従って、その厚さは、100nm以下が好ましい。
これらの中でも、イオン交換還元析出法、キャタライザー・アクセレーター法、及びセンシタイザー・アクチベータ法は、電解質の親水性部分に確実にPd/Pt粒子を形成できるので、特に好ましい方法である。また、電解質膜がポアフィリング膜である場合には、多孔質支持体表面にはPd/Pt粒子が形成されず、細孔内に充填された電解質の親水性部分にのみPd/Pt粒子を選択的に形成することができるので、Pd及びPtの使用量を著しく増大させることなく、高い特性が得られる。以下、イオン交換還元析出法、キャタライザー・アクセレーター法、及びセンシタイザー・アクチベータ法について詳細に説明する。
[1. イオン交換還元析出法(1)]
イオン交換還元析出法を用いたPd/Pt粒子の形成方法の第1の具体例は、Pdイオン交換処理及び還元処理によりPd核を生成させ、次いでPtイオン交換処理及び還元処理によりPd核の表面にPtを析出させる方法であり、以下の工程を備えている。
[1.1. Pdイオン交換工程]
まず、電解質膜及び/又は触媒シートをPdイオンを含む第1イオン交換溶液に接触させ、電解質膜表面及び/又は触媒シート表面にある酸基の水素イオンの全部又は一部をPdイオンでイオン交換する。Pdイオン交換は、電解質膜又は触媒シートの一方に対して行っても良く、あるいは、双方に対して行っても良い。電解質膜と触媒層とをイオン的に強固に結合させるためには、少なくとも電解質膜に対してイオン交換処理を行うのが好ましい。触媒シートは、電極触媒及び触媒層内電解質を含む溶液を適当な基板(例えば、ポリテトラフルオロエチレンシート)上に塗布し、溶媒を除去することにより作製することができる。
第1イオン交換溶液に含まれる溶媒は、Pdイオン源を溶解させることが可能なものであればよい。溶媒には、通常、水を用いる。
第1イオン交換溶液に含まれるPdイオン濃度は、作製しようとするPd/Pt粒子の組成、担持量等に応じて、最適な濃度を選択する。一般に、Pdイオン濃度が低すぎると、所定量のイオン交換を生じさせるのに長時間を要する。一方、Pdイオン濃度が高すぎると、Pdイオンが電解質膜内部又は触媒シート内部まで拡散し、電解質膜表面又は触媒シート表面に選択的にPd核を生成させることが困難となる。Pdイオン濃度は、具体的には、10-5〜10-4mol/Lが好ましい。
Pdイオン源は、溶媒に対する溶解度が高い化合物であればよい。
また、Pdイオン源の中には、Pdイオンがアニオンになっているものがある。Pdイオンがアニオンとなっているものは、電解質に吸着され難い。従って、Pdイオン源としては、Pdイオンがカチオンになっているものが好ましい。
また、Pdイオン源としてハロゲン化物を用いても良いが、塩化物イオン等のハロゲンイオンは、
(a) 触媒金属に特異吸着して触媒活性を低下(被毒)させる作用、及び
(b) 触媒金属を腐食(溶出)させ、性能を低下させる作用
がある。従って、Pdイオン源として、ハロゲン化物(特に、塩化物)の使用は、できるだけさけるべきである。
さらに、Pdのカチオンとしては、Pd(II)、Pd(IV)のいずれの価数のカチオンでも良い。Pdに還元しやすい点から、Pd(II)の塩を用いることが好ましい。
Pdイオン源としては、具体的には、
(1) 酢酸パラジウム、水酸化パラジウム、硝酸パラジウム、シュウ酸パラジウム、亜硝酸ジアンミンパラジウム、エチレンジアミンジニトロパラジウム(II)、硫酸パラジウム、硫酸パラジウム(II)水和物、テトラニトロパラジウム酸カリウム、テトラニトロパラジウム酸ナトリウム、テトラアンミンパラジウム(II)、テトラアンミンパラジウム(II)硫酸塩、トリフルオロ酢酸パラジウムなどのハロゲンを含まない化合物(非ハロゲン化物)、
(2) 塩化パラジウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)アンモニウム、テトラクロロパラジウム(II)アンモニウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、ジアンミンジクロロパラジウム、ジクロロジアンミンパラジウム(II)、ヘキサクロロパラジウム酸(IV)カリウム、ヘキサクロロパラジウム酸(IV)ナトリウム、テトラクロロパラジウム酸、塩化テトラアンミンパラジウム(II)などの塩素を含む化合物(塩化物)、
(3) 臭化パラジウムなどの臭素を含む化合物(臭化物)、
(4) ヨウ化パラジウムなどのヨウ素を含む化合物(ヨウ化物)、
などがある。
第1イオン交換溶液と電解質膜又は触媒シートとの接触は、浸漬、スプレー塗布等の方法を用いることができる。接触条件は、目的とするイオン交換率(すなわち、目的とするPd/Pt粒子担持量)が得られるように最適なものを選択する。
一般に、接触温度が高くなるほど、及び/又は、接触時間が長くなるほど、イオン交換が進行する。従って、接触温度及び接触時間は、目的とする量のPd核が形成されるように、最適な条件を選択するのが好ましい。
例えば、接触温度が室温である場合、電解質膜又は触媒シート中のプロトンがPdイオンにほぼ100%交換されるのに要する時間は、8時間以上である。一方、40℃以上に加温すると、2〜4時間でイオン交換が完了する。従って、相対的に短時間でイオン交換を行うためには、イオン交換は加温して行うのが好ましい。
一方、接触温度が高すぎると、電解質膜又は触媒シートの表面だけでなく、内部までPdイオンが拡散しやすくなる。従って、接触温度は、60℃以下が好ましい。
また、Pdイオンを電解質膜又は触媒シートの内部まで拡散させず、表面のプロトンのみを選択的にイオン交換するためには、接触時間は、相対的に短い方が好ましい。
また、電解質膜又は触媒シートと第1イオン交換溶液とを接触させる前に、電解質膜又は触媒シートの表面部にあるプロトンを、H+より親和性の高いイオンで置換しておく(すなわち、予めNa、K、Cs等の塩基でイオン交換し、pHをアルカリ側にしておく)のが好ましい。電解質膜又は触媒シートのpHを予めアルカリ側にしておくと、電解質膜又は触媒シートの表面を選択的にPdイオンで交換するのが容易化する。
一般に、微量のPdイオンを交換する場合、イオン交換溶液に含まれる対アニオンは微量である。そのため、対アニオンが電池性能を阻害することはなく、特に水洗を必要としない。但し、電解質のプロトンの1%以上をイオン交換する場合には、対アニオンの電極被毒が無視できないことや、凝縮水のイオン伝導度が増加し、配管等が腐食するおそれが生じる。このような高濃度のイオン交換を行う場合には、イオン交換溶液との接触後、十分に水洗して、余剰のアニオンを除去することが好ましい。
また、Pdイオン源としてハロゲン化物を用いた場合、残留したハロゲンイオンが電極を被毒したり、あるいは、Pdの錯イオン化を促し、電池性能を低下させる。そのため、イオン交換後に脱ハロゲンイオン処理(例えば、温水洗浄、アニオン交換樹脂とともに洗浄など)を行うか、あるいは、特定のカチオン(例えば、Ag+、Cs+、BiO+、YbO+など)を含む水溶液で洗浄し、ハロゲンイオンを難溶性ハロゲン化物として固定することが好ましい。
さらに、Pdイオン源として、非ハロゲン化物を用いた場合であっても、Pdイオンの配位子(アンモニア、アミン、硝酸イオン、硫酸イオン等)が残存すると、Pdの溶出を促す。従って、非ハロゲン化物を用いた場合であっても、ハロゲン化物を用いた場合と同様に、十分水洗することが好ましい。
[1.2. Pd核析出工程]
次に、Pdイオンを還元処理し、電解質膜表面及び/又は触媒シート表面にPd核を析出させる。
イオン交換後の還元処理は、H2ガス等の還元性ガス雰囲気で行っても良い。しかしながら、還元ガスを用いた還元処理は、比較的高い温度で長時間を必要とする。例えば、H2ガス雰囲気では、120℃×24hrである。この場合、還元温度は、150℃以下に制限される。これは、比較的高温まで耐えられるパーフルオロ系電解質といえども、150℃を超える熱履歴を受けると、過酸化物に対するラジカル耐性が著しく低下するためである。これを防ぐために、予めNa、K、Cs等のアルカリ金属イオンをイオン交換して耐熱性を上げておいても良い(特開2001−167769号公報)が、より低温での還元処理が望ましい。そのため、H2以外の還元剤を用いて、比較的温和な条件が適用できる湿式処理、いわゆる無電解メッキが好ましい。なお、前記と同様の理由により、無電解メッキの場合においても還元温度(メッキ温度)は、150℃以下が好ましい。
湿式による還元処理は、例えば、イオン交換された電解質膜及び/又は触媒シートを加温した処理槽やメッシュ上に置き、還元剤を溶解させた水溶液と接触させることにより行う。還元剤水溶液と電解質膜又は触媒シートとの接触は、浸漬、スプレー塗布等の方法を用いることができる。
還元剤としては、過酸化水素、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、ホルムアルデヒド、ギ酸、ギ酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアンミンボラン、ヒドラジン、ブドウ糖等の還元糖類、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等を使用することができる。これらの中でも還元剤は、アスコルビン酸、ホルムアルデヒド、ギ酸、水素化ホウ素ナトリウム、及びヒドラジンからなる群から選ばれるいずれか1以上が好ましい。特に、水素化ホウ素ナトリウムは強塩基であり、アルカリを加える必要がなく、表面のみで還元反応を行わせるのに効果的である。
還元剤水溶液の好適なpHは、析出させるイオン種、還元剤の種類等により異なる。例えば、Pdイオンを還元処理する場合において、還元剤としてアスコルビン酸を用いるときには、pH1〜3が好ましい。還元剤としてホルムアルデヒド、ギ酸、又はヒドラジンを用いるときには、pH9〜12が好ましい。還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを用いるときには、pH10〜13が好ましい。
還元剤水溶液中の還元剤濃度は、目的に応じて最適な濃度を選択する。一般に、還元剤濃度が高くなるほど、短時間でPd核を析出させることができる。一方、還元剤濃度が高すぎると、電解質膜表面又は触媒シート表面に選択的にPd核を生成させるのが困難となる。還元剤濃度は、具体的には、10-3〜10-2mol/Lが好ましい。
還元剤水溶液による処理温度及び処理時間は、Pdイオン量と還元剤の濃度に応じて最適な条件を選択する。一般に、処理温度が高くなるほど、及び/又は、処理時間が長くなるほど、短時間でPd核を析出させることができる。一方、処理温度が高くなりすぎると、及び/又は、処理時間が長くなりすぎると、電解質膜表面又は触媒シート表面に選択的にPd核を生成させるのが困難となる。
例えば、水素化ホウ素ナトリウム以外の還元剤は、比較的高温まで安定であるので、処理温度は、60〜100℃が好ましい。処理時間は、数時間で十分である。この点は、水素による還元処理が180℃×4hr(特開2001−167769号公報参照)を要するのに比べて温和な条件でできる利点を有する。そのため、電解質の分解によるイオン交換容量の低下や、劣化生成物による触媒被毒を抑制することができる。
還元処理終了後は、還元処理のpH調整のために使用したNaOH等のアルカリ、未反応の還元剤及びその分解生成物を除去し、H体とする必要がある。そのため、還元処理終了後に、硫酸、リン酸、硝酸等で十分にイオン交換し、さらに温水洗することが好ましい。塩酸は、塩化物イオンの残留の可能性があるので、使用しないことが好ましい。
なお、1回のPdイオン交換及び還元処理でPd担持量が不足する場合には、所望のPd量となるまで、Pdイオン交換→還元処理(水素又は還元剤)を繰り返して行うのが好ましい。
[1.3. Ptイオン交換工程]
次に、Pd核を析出させた電解質膜及び/又は前記触媒シートをPtイオンを含む第2イオン交換溶液に浸漬し、電解質膜表面及び/又は前記触媒シート表面にある酸基の水素イオンの全部又は一部をPtイオンでイオン交換する。
第2イオン交換溶液に含まれる溶媒は、Ptイオン源を溶解させることが可能なものであればよい。溶媒には、通常、水を用いる。
第2イオン交換溶液に含まれるPtイオン濃度は、作製しようとするPd/Pt粒子の組成、担持量等に応じて、最適な濃度を選択する。一般に、Ptイオン濃度が低すぎると、所定量のイオン交換を生じさせるのに長時間を要する。一方、Ptイオン濃度が高すぎると、Pdイオンが電解質膜内部又は触媒シート内部まで拡散し、電解質膜表面又は触媒シート表面に選択的にPd核を生成させることが困難となる。Ptイオン濃度は、具体的には、10-4〜10-3mol/Lが好ましい。
Ptイオン源は、溶媒に対する溶解度が高い化合物であればよい。
また、Ptイオン源の中には、Ptイオンがアニオン(例えば、PtCl4 2-、PtCl6 2-など)になっているものがある。Ptイオンがアニオンとなっているものは、電解質に吸着され難い。従って、Ptイオン源としては、Ptイオンがカチオンになっているものが好ましい。
また、Ptイオン源としてハロゲン化物を用いても良いが、塩化物イオン等のハロゲンイオンは、
(a) 触媒金属に特異吸着して触媒活性を低下(被毒)させる作用、及び
(b) 触媒金属を腐食(溶出)させ、性能を低下させる作用
がある。従って、Ptイオン源として、ハロゲン化物(特に、塩化物)の使用は、できるだけさけるべきである。
さらに、Ptのカチオンとしては、Pt(II)、Pt(IV)のいずれの価数のカチオンでも良い。Ptに還元しやすい点から、Pt(II)の塩を用いることが好ましい。
Ptイオン源としては、具体的には、
(1) テトラアンミン白金リン酸水素水溶液、炭酸水素テトラアンミン白金、テトラアンミン白金水酸化物溶液、水酸化テトラアンミン白金水和物、硝酸テトラアンミン白金、亜硝酸ジアンミン白金アンモニア水溶液、ヘキサアンミン白金水酸化物(Pt(NH3)6(OH)4)、硝酸ヘキサアンミン白金(Pt(NH3)6(NO3)4)、硝酸ヘキサアンミン白金(Pt(NH3)6(SO4)2)などの非ハロゲン化物、
(2) 塩化白金酸(H2PtCl4、H2PtCl6)、テトラアンミンジクロライド白金(Pt(NH3)4Cl2)、ヘキサアンミンジクロライド白金(Pt(NH3)6Cl2)などの塩化物、
などがある。
第2イオン交換溶液と電解質膜又は触媒シートとの接触は、浸漬、スプレー塗布等の方法を用いることができる。接触条件は、目的とするイオン交換率(すなわち、目的とするPd/Pt粒子担持量)が得られるように最適なものを選択する。
一般に、接触温度が高くなるほど、及び/又は、接触時間が長くなるほど、イオン交換が進行する。従って、接触温度及び接触時間は、目的とする量のPd/Pt粒子が形成されるように、最適な条件を選択するのが好ましい。
例えば、接触温度が室温である場合、電解質膜又は触媒シート中のプロトンがPtイオンにほぼ100%交換されるのに要する時間は、8時間以上である。一方、40℃以上に加温すると、2〜4時間でイオン交換が完了する。従って、相対的に短時間でイオン交換を行うためには、イオン交換は加温して行うのが好ましい。
一方、接触温度が高すぎると、電解質膜又は触媒シートの表面だけでなく、内部までPtイオンが拡散しやすくなる。従って、接触温度は、60℃以下が好ましい。
また、Ptイオンを電解質膜又は触媒シートの内部まで拡散させず、表面のプロトンのみを選択的にイオン交換するためには、接触時間は、相対的に短い方が好ましい。
また、電解質膜又は触媒シートと第2イオン交換溶液とを接触させる前に、電解質膜又は触媒シートの表面部にあるプロトンを、H+より親和性の高いイオンで置換しておく(すなわち、予めNa、K、Cs等の塩基でイオン交換し、pHをアルカリ側にしておく)のが好ましい。電解質膜又は触媒シートのpHを予めアルカリ側にしておくと、電解質膜又は触媒シートの表面を選択的にPtイオンで交換するのが容易化する。
一般に、微量のPtイオンを交換する場合、イオン交換溶液に含まれる対アニオンは微量である。そのため、対アニオンが電池性能を阻害することはなく、特に水洗を必要としない。但し、電解質のプロトンの1%以上をイオン交換する場合には、対アニオンの電極被毒が無視できないことや、凝縮水のイオン伝導度が増加し、配管等が腐食するおそれが生じる。このような高濃度のイオン交換を行う場合には、イオン交換溶液との接触後、十分に水洗して、余剰のアニオンを除去することが好ましい。
また、Ptイオン源としてハロゲン化物を用いた場合、残留したハロゲンイオンが電極を被毒したり、あるいは、Ptの錯イオン化(例えば、PtCl4 2-、PtCl6 2-など)を促し、電池性能を低下させる。そのため、イオン交換後に脱ハロゲンイオン処理(例えば、温水洗浄、アニオン交換樹脂とともに洗浄など)を行うか、あるいは、特定のカチオン(例えば、Ag+、Cs+、BiO+、YbO+など)を含む水溶液で洗浄し、ハロゲンイオンを難溶性ハロゲン化物として固定することが好ましい。
さらに、Ptイオン源として、非ハロゲン化物を用いた場合であっても、Ptイオンの配位子(アンモニア、アミン、硝酸イオン、硫酸イオン等)が残存すると、Ptの溶出を促す。従って、非ハロゲン化物を用いた場合であっても、ハロゲン化物を用いた場合と同様に、十分水洗することが好ましい。
[1.4. Pt析出工程]
次に、Ptイオンを還元処理し、Pd/Pt粒子を析出させる。
イオン交換後の還元処理は、H2ガス等の還元性ガス雰囲気で行っても良い。しかしながら、Pdイオン交換後の還元処理と同様の理由から、還元処理は、比較的温和な条件が適用できる湿式処理、いわゆる無電解メッキが好ましい。
湿式による還元処理は、例えば、イオン交換された電解質膜及び/又は触媒シートを加温した処理槽やメッシュ上に置き、還元剤を溶解させた水溶液と接触させることにより行う。還元剤水溶液と電解質膜又は触媒シートとの接触は、浸漬、スプレー塗布等の方法を用いることができる。
還元剤としては、過酸化水素、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、ホルムアルデヒド、ギ酸、ギ酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアンミンボラン、ヒドラジン、ブドウ糖等の還元糖類、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等を使用することができる。これらの中でも還元剤は、アスコルビン酸、ホルムアルデヒド、ギ酸、水素化ホウ素ナトリウム、及びヒドラジンからなる群から選ばれるいずれか1以上が好ましい。特に、水素化ホウ素ナトリウムは強塩基であり、アルカリを加える必要がなく、表面のみで還元反応を行わせるのに効果的である。
還元剤水溶液の好適なpHは、析出させるイオン種、還元剤の種類等により異なる。例えば、Ptイオンを還元処理する場合において、還元剤としてアスコルビン酸を用いるときには、pH1〜3が好ましい。還元剤としてホルムアルデヒド、ギ酸、又はヒドラジンを用いるときには、pH9〜12が好ましい。還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを用いるときには、pH10〜13が好ましい。
還元剤水溶液中の還元剤濃度は、目的に応じて最適な濃度を選択する。一般に、還元剤濃度が高くなるほど、短時間でPtを析出させることができる。一方、還元剤濃度が高すぎると、Pd核の表面に選択的にPtを生成させるのが困難となる。還元剤濃度は、具体的には、10-3〜10-2mol/Lが好ましい。
還元剤水溶液による処理温度及び処理時間は、Ptイオン量と還元剤の濃度に応じて最適な条件を選択する。一般に、処理温度が高くなるほど、及び/又は、処理時間が長くなるほど、短時間でPtを析出させることができる。一方、処理温度が高くなりすぎると、及び/又は、処理時間が長くなりすぎると、Pd核の表面に選択的にPtを生成させるのが困難となる。
例えば、水素化ホウ素ナトリウム以外の還元剤は、比較的高温まで安定であるので、処理温度は、60〜100℃が好ましい。処理時間は、数時間で十分である。この点は、水素による還元処理が180℃×4hr(特開2001−167769号公報参照)を要するのに比べて温和な条件でできる利点を有する。そのため、電解質の分解によるイオン交換容量の低下や、劣化生成物による触媒被毒を抑制することができる。
還元処理終了後は、還元処理のpH調整のために使用したNaOH等のアルカリ、未反応の還元剤及びその分解生成物を除去し、H体とする必要がある。そのため、還元処理終了後に、硫酸、リン酸、硝酸等で十分にイオン交換し、さらに温水洗することが好ましい。塩酸は、塩化物イオンの残留の可能性があるので、使用しないことが好ましい。
なお、1回のPtイオン交換及び還元処理でPt担持量が不足する場合には、所望のPt量となるまで、Ptイオン交換→還元処理(水素又は還元剤)を繰り返して行うのが好ましい。
還元処理終了後、電解質膜の両面に触媒シートを転写すれば、MEAが得られる。あるいは、表面にPd/Pt粒子を担持させた電解質膜の表面に、スプレー塗布、静電塗布等の方法により、触媒金属を必要量担持させても良い。電極触媒としてPtを用いる場合、触媒層に含まれるPt総重量は、空気極側で0.2〜0.8mg/cm2、燃料極側で0.1〜0.4mg/cm2が好ましい。
触媒層を形成後、ホットプレスにより触媒層と電解質膜とを熱圧着させることにより、さらに接合を強固なものとすることができる。電解質がパーフルオロ系である場合、一般的な圧力は0.2〜0.5MPa、接合温度は120〜140℃である。
さらに、得られたMEAの両面を、ガス流路を備えたセパレータで挟持すれば、本発明に係る固体高分子型燃料電池が得られる。
[2. イオン交換還元析出法(2)]
イオン交換還元析出法を用いたPd/Pt粒子の形成方法の第2の具体例は、Pdイオン交換処理及びPtイオン交換処理を同時に行い、次いで還元処理によりPd/Pt粒子を析出させる方法である。Pdは、Ptに比べて還元速度が速い。従って、Pdイオン及びPtイオンの双方でイオン交換された電解質膜及び/又は触媒シートを還元処理すると、先にPdイオンが還元されてPd核となり、次いで生成したPd核の上にPtを析出させることができる。第2の具体例は、以下のような工程を備えている。
[2.1. Pd・Ptイオン交換工程]
まず、電解質膜及び/又は触媒シートをPdイオン及びPtイオンを含む第3イオン交換溶液に接触させ、電解質膜表面及び/又は触媒シート表面にある酸基の水素イオンの全部又は一部をPdイオン及びPtイオンでイオン交換する。イオン交換は、電解質膜又は触媒シートの一方に対して行っても良く、あるいは、双方に対して行っても良い。電解質膜と触媒層とをイオン的に強固に結合させるためには、少なくとも電解質膜に対してイオン交換処理を行うのが好ましい。
第3イオン交換溶液に含まれる溶媒は、Pdイオン源及びPtイオン源を溶解させることが可能なものであればよい。溶媒には、通常、水を用いる。
第3イオン交換溶液に含まれるPdイオン濃度及びPtイオン濃度は、作製しようとするPd/Pt粒子の組成、担持量等に応じて、最適な濃度を選択する。
一般に、第3イオン交換溶液中の総イオン(Pd+Ptイオン)濃度が低すぎると、所定量のイオン交換を生じさせるのに長時間を要する。一方、総イオン濃度が高すぎると、Pdイオン及びPtイオンが電解質膜内部又は触媒シート内部まで拡散し、電解質膜表面又は触媒シート表面に選択的にPd/Pt粒子を生成させることが困難となる。総イオン濃度は、具体的には、10-4〜10-3mol/L以上が好ましい。
なお、使用可能なPdイオン源及びPtイオン源、第3イオン交換溶液との接触方法及び接触条件等に関するその他の点については、第1の具体例のPdイオン交換工程及びPtイオン交換工程と同様であるので、説明を省略する。
[2.2. Pd/Pt粒子析出工程]
次に、Pdイオン及びPtイオンを還元処理し、電解質膜表面又は触媒シート表面にPd/Pt粒子を析出させる。
イオン交換後の還元処理は、H2ガス等の還元性ガス雰囲気で行っても良い。しかしながら、第1の具体例と同様の理由から、還元処理は、比較的温和な条件が適用できる湿式処理、いわゆる無電解メッキが好ましい。
還元処理方法、使用可能な還元剤、還元条件等に関するその他の点については、第1の具体例のPd核析出工程及びPt析出工程と同様であるので、説明を省略する。
還元処理終了後、電解質膜の両面に触媒シートを転写すれば、MEAが得られる。あるいは、表面にPd/Pt粒子を担持させた電解質膜の表面に、スプレー塗布、静電塗布等の方法により、触媒金属を必要量担持させても良い。電極触媒としてPtを用いる場合、触媒層に含まれるPt総重量は、空気極側で0.2〜0.8mg/cm2、燃料極側で0.1〜0.4mg/cm2が好ましい。
触媒層を形成後、ホットプレスにより触媒層と電解質膜とを熱圧着させることにより、さらに接合を強固なものとすることができる。電解質がパーフルオロ系である場合、一般的な圧力は0.2〜0.5MPa、接合温度は120〜140℃である。
さらに、得られたMEAの両面を、ガス流路を備えたセパレータで挟持すれば、本発明に係る固体高分子型燃料電池が得られる。
[3. イオン交換還元析出法(3)]
イオン交換還元析出法を用いたPd/Pt粒子の形成方法の第3の具体例は、電解質膜及び/又は触媒シートに対してPdイオン交換処理及びPtイオン交換処理を行い、次いで電解質膜の両面に触媒層を接合してMEAとし、さらにMEAに対して還元処理を行う方法である。
Pdイオン交換処理及びPtイオン交換処理は、個別に行っても良く、あるいは、同時に行っても良い。また、還元処理は、H2ガス等の還元性ガス雰囲気で行っても良いが、湿式処理により行うのが好ましい。イオン交換処理及び還元処理の詳細については、第1の具体例と同様であるので、説明を省略する。
還元処理終了後、MEAの両面を、ガス流路を備えたセパレータで挟持すれば、本発明に係る固体高分子型燃料電池が得られる。
[4. キャタライザー・アクセレーター法、及びセンシタイザー・アクチベータ法]
キャタライザー・アクセレーター法とは、Sn2+とPd2+の混合によりパラジウムコロイド液とし、これに被処理物を浸漬し、次に塩酸溶液に浸漬して、被処理物表面にPd核を生成させる方法をいう。また、センシタイザー・アクチベータ法とは、Sn2+を含む液(例えば、塩化第一スズ溶液)に被処理物を浸漬後、Pd2+を含む液(例えば、塩化パラジウム溶液)に被処理物を浸漬して、被処理物表面にPd核を生成させる方法をいう。無電解メッキの前処理方法として知られているこれらの方法を電解質膜又は触媒シートに適用すると、電解質膜表面又は触媒シート表面に均一かつ微細なPd核を生成させることができる。
次いで、Pd核を生成させた電解質膜又は触媒シートに対して、Ptイオン交換処理及び還元処理を行うと、電解質膜又は触媒シート表面にPd/Pt粒子を形成することができる。Ptイオン交換処理及び還元処理の詳細は、イオン交換還元析出法の第1の具体例と同様であるので説明を省略する。
還元処理終了後、電解質膜の両面に触媒シートを転写すれば、MEAが得られる。あるいは、表面にPd/Pt粒子を担持させた電解質膜の表面に、スプレー塗布、静電塗布等の方法により、触媒金属を必要量担持させても良い。触媒層を形成後、ホットプレスにより触媒層と電解質膜とを熱圧着させることにより、さらに接合を強固なものとすることができる。さらに、得られたMEAの両面を、ガス流路を備えたセパレータで挟持すれば、本発明に係る固体高分子型燃料電池が得られる。
次に本発明に係る固体高分子型燃料電池及びその製造方法の作用について説明する。
従来の触媒層形成方法としては、転写法、スプレー塗布法、静電塗布法、スパッタリング法、蒸着法などが知られている。しかしながら、従来の方法では、電解質膜と触媒層との接合性が不十分となりやすい。これは、従来の触媒層形成方法では、必ずしも触媒金属粒子と電解質膜のイオンチャンネル部分とが密に接触しておらず、言い換えるならば水を媒介できる親水性の部分に触媒粒子が十分存在していないためと考えられる。これは、親水性部分と疎水性部分とが偏在しているポアフィリング膜では大きな問題となっている。一般的にポアフィリング膜は、支持体なしの膜に比べて、予想以上に電池性能が低いことが多い。
すなわち、ポアフィリング膜で触媒の利用率が小さい理由は、接合界面での3相帯の形成が従来の触媒層形成方法では不十分と考えられる。
3相帯の形成を改良する手段としては、
(1) 予め電解質膜又は担体と電解質のみからなる(触媒金属は含まない)転写シートを触媒金属イオンとイオン交換し、それを水素ガスで還元(イオン交換+水素還元)する方法(特開2001−167769号公報参照)、
(2) 還元剤により触媒金属粒子を析出させる無電解メッキ法(特開1998−330979号公報、特開1993−222543号公報、WO04/054019号公報等参照)、
などが知られている。
しかしながら、水素ガスでの還元は長時間を要し、また無電解メッキ法においては均一に比表面積の大きい嵩高い微粒子を担持させることが困難である。例えば、無電解メッキ法による均一な触媒粒子の析出は、ポリエチレンやPVDF等の親水性に劣る多孔質支持体を用いたポアフィリング膜上では特に難しい。
それにも増して、これらイオン交換+還元処理による析出では、イオン交換できる金属イオン量が電解質の酸基量に規定されてしまう。すなわち、1回のイオン交換+還元処理で形成できる触媒金属量は、電解質膜や触媒層の厚さが薄いと、極少量(例えば、0.1mg/cm2以下)に限られ、このような処理を複数回繰り返す必要があった。
一方、Pt使用量低減のために、Pd−Co合金担持カーボンを含む単層の燃料極触媒層、及び、Pt担持カーボンを含む第1層(電解質膜側)とPd−Co合金担持カーボンを含む第2層(拡散層側)の2層構造を有する空気極側触媒層をスクリーン印刷法を用いて形成する方法が知られている(特開2006−260909号公報)。しかしながら、これらは、いずれも電解質膜と触媒層の接合界面における3相帯の形成の最適化に関する指針を示したものではない。また、このような方法では、電解質膜/触媒層界面の親水性部分での接合は不十分であり、耐久性も満足なものとはいいがたい。
これに対し、電解質膜/触媒層界面にPd/Pt粒子を形成すると、電解質膜/触媒層界面の接合性が向上し、電池性能が向上する。これは、予め電解質膜/触媒層界面に均一かつ微細なPd/Pt粒子を形成することによって、接合界面における3相帯の形成が促進され、強固なイオンチャンネルが形成されたためと考えられる。
また、Pd/Pt粒子形成方法として、イオン交換還元析出法、キャタライザー・アクセレーター法、又はセンシタイザー・アクチベータ法を用いると、他の方法(例えば、スパッター法、スプレー塗布法、転写法等の物理的方法)を用いた場合に比べて、高い効果が得られる。さらに、本発明に係る方法をポアフィリング膜に適用すると、さらに高い効果が得られる。これは、物理的方法では親水領域のみに選択的にPd/Pt粒子を担持させることが困難であるのに対し、イオン交換還元析出法等は、親水部分のプロトンとの反応を利用しているために、的確に親水部にPd/Pt粒子を形成することができるためと考えられる。その結果、界面に形成したPd/Pt粒子の触媒としての利用率は、物理的方法を用いて形成した場合に比べて高くなると考えられる。
さらに、界面にPd/Pt粒子を形成すると、電解質のラジカル耐性が向上する。これは、イオン交換還元析出法等により得られるPd/Pt粒子は、理想的にはコア/シェル型粒子になっていると考えられるが、一部はPdコアが露出しており、Pdが次の(1)式に示す過酸化水素の分解(接触分解)触媒として働くためと考えられる。
2H22 → 2H2O + O2 ・・・(1)
また、Pd金属は、耐久過程で徐々に溶出して、一部が電解質の酸基とイオン交換し、電解質に固定される。そこでは、次の(2)式〜(4)式に示すように、Pd2+イオンは酸化剤として働き、Fe2+イオンを難溶性のFe3+にする働きがある。従って、Fe2+/Fe3+の可逆的な酸化・還元反応に伴う・OH、・OOHラジカルを生成する反応(フェントン反応)を抑制すると考えられる。
Pd → Pd2+ + 2e- ・・・(2) E0=0.95V vs RHE
Fe2+ → Fe3+ + e- ・・・(3) E0=0.75V vs RHE
∴ 2Fe2+ + Pd2+ → 2Fe3+ + Pd ・・・(4)
この作用は、Ptイオンに比べてPdイオンが遙かに高い。ところで、過酸化水素生成は、膜/触媒層接合界面近くの触媒層で起きると考えられている。これらのことより、膜/触媒層接合界面にPd/Pt粒子を析出させることにより、過酸化水素による電解質の化学劣化を効果的に抑制することができる。すなわち、触媒層全体にPd金属又はPdイオンを存在させるよりも効率よく耐久性を向上させることができる。
(実施例1)
[1. 試料の作製]
大きさ36mm×14mmのパーフルオロ電解質膜に、Fe(II)イオン及びPt(IV)イオン(ヘキサアンミンダイクロライド)、又は、Fe(II)イオン及びPd(II)イオン(ジニトロアンミンパラジウム)を含む水溶液に室温で1日浸漬し、酸基の40%をFeで、また0〜30%をPtイオン又はPdイオンで交換した。
[2. 試験方法]
イオン交換した電解質膜を0.3wt%の過酸化水素水に100℃×4hr浸漬した。浸漬試験後、排出されたFイオン濃度、過酸化水素の分解程度、及び膜重量変化(80℃×2hr真空乾燥後)を調査した。
[3. 結果]
図1に、イオン交換率とF排出速度との関係を示す。また、図2に、イオン交換率と重量変化との関係を示す。
Feイオンのみのイオン交換では、フェントン反応により大量のFが排出され、かつ膜の重量減少が著しかった。一方、Pdイオン又はPtイオンを共存させると、F排出と重量減少が抑制された。PtイオンでもF排出抑制効果及び重量減少抑制効果が認められるが、その作用はPdイオンの方が大きい。
以上の結果は、触媒層からPd又はPtが電解質に溶出した場合、PtイオンよりもPdイオンの方が電解質を安定化させる作用が大きいこと、及び、特に触媒層と電解質膜の界面にPdの濃化層を付与することで電解質膜の安定化が図れることを意味している。
(実施例2〜5、比較例1〜2)
[1. 試料の作製]
大きさ4.0×4.0cm、厚さ30μmのポアフィリング膜を用意した。このポアフィリング膜は、支持体が気孔率85%のPE製多孔体からなり、孔内部にパーフルオロ系電解質を含浸させたものである。Ptのテトラアンミンリン酸水素水溶液(Pt含有量1.5wt%)とPdのジニトロアンミン溶液(Pd含有量1.75wt%)とを超純水で希釈して100mLのPdイオン/Ptイオン水溶液を作り、これにポアフィリング膜を浸漬し、室温で1日放置した。Ptイオンによるイオン交換率は電解質膜の酸基の0.5〜2.5%、Pdイオンによるイオン交換率は電解質膜の酸基の0.1〜5.0%であった。イオン交換後、膜を良く水洗した。
次に、0.1M NaBH4水溶液に膜を浸漬し、除々に加温して最終的に80℃×2hrの還元処理を行った。その結果、膜表面にPd/Pt粒子が析出した。析出状態は良好であり、全面に均一にPd/Pt粒子が析出していた。
膜を0.1M H2SO4水溶液に80℃×1hr浸漬し、膜に残留するイオンを除去した。さらに、80℃での水洗を2回繰り返した。その後スプレー塗布を両面に行い、触媒層を形成した(実施例2〜5)。触媒Ptの担持量は、空気極0.5mg/cm2、燃料極0.3mg/cm2とし、面圧0.2MPa、120℃×10分のホットプレスを行った。
比較として、イオン交換を行わない試料(比較例1)、及びPtイオンのみでPdイオンを加えていない試料(比較例2)も作製した。なお、比較例2は、均一なPt黒微粒子は析出せず、まばらなPt粗粒が膜表面に析出したに過ぎなかった。
[2. 試験方法]
[2.1. 初期性能試験]
得られたMEAを用いて初期性能試験を行い、0.8A/cm2における電圧(初期電圧)を測定した。試験条件は、以下の通りである。
アノードガス: H2(100mL/min)
カソードガス: Air(100mL/min)
セル温度: 80℃
加湿器温度: アノード側45℃、カソード側55℃
[2.2. 耐久試験]
得られたMEAを用いて耐久試験を行い、耐久試験前後で0.8A/cm2における電圧の低下割合を測定した。試験条件は、以下の通りである。
アノードガス: H2(100mL/min)
カソードガス: Air(100mL/min)
セル温度: 80℃
加湿器温度: アノード側45℃
試験時間: カソード側で開回路1分、0.1A/cm2を1分とするサイクル試験を240時間
[3. 結果]
次の表1に、その結果を示す。接合界面にPtもPdも析出させなかった場合(比較例1)、初期電圧は、0.48Vであった。また、接合界面にPtのみを析出させた場合(比較例2)、初期電圧は、0.49Vであった。これに対し、接合界面のPt及びPdを析出させた場合(実施例2〜5)、初期電圧は、0.52〜0.59Vであった。
また、比較例1、2の場合、耐久試験後の電圧低下は27〜28%であるのに対し、実施例2〜5の場合、電圧低下は11〜18%であった。
表1より、接合界面にPd/Pt粒子を析出させると、初期性能及び耐久性が向上することがわかる。
Figure 0005169025
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る固体高分子型燃料電池は、車載用動力源、定置型小型発電器、コジェネレーションシステム等に適用することができる。
また、接合界面にPd/Pt粒子を形成したMEAの用途は、固体高分子型燃料電池に限定されるものではなく、水電解装置、ハロゲン化水素酸電解装置、食塩電解装置、酸素及び/又は水素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等の各種電気化学デバイスにも用いることができる。
電解質膜の酸基の40%をFeイオンで置換し、酸基の0〜30%をPdイオン又はPtイオンでイオン交換したときのPdイオン又はPtイオンのイオン交換率とF排出速度との関係を示す図である。 電解質膜の酸基の40%をFeイオンで置換し、酸基の0〜30%をPdイオン又はPtイオンでイオン交換したときのPdイオン又はPtイオンのイオン交換率と重量変化との関係を示す図である。

Claims (9)

  1. 電解質膜の両面に触媒層を含む電極が接合された膜電極接合体と、
    前記電解質膜と前記触媒層との界面に形成された、PdとPtとを含むPd/Pt粒子と、
    を備え、
    前記電解質膜は、多孔質支持体に電解質を含浸させたポアフィリング膜である固体高分子型燃料電池。
  2. 前記Pd/Pt粒子は、前記電解質膜表面及び/又は触媒シート表面にPd核を生成させ、次いで前記Pd核の表面にPtを析出させることにより得られるものからなる請求項1に記載の固体高分子型燃料電池。
  3. 前記Pd/Pt粒子は、以下の方法により得られるものからなる請求項1に記載の固体高分子型燃料電池。
    (1) 前記電解質膜及び/又は触媒シートをPdイオンを含む第1イオン交換溶液に接触させ、前記電解質膜表面及び/又は前記触媒シート表面にある酸基の水素イオンの全部又は一部をPdイオンでイオン交換する。
    (2) 前記Pdイオンを還元処理し、前記電解質膜表面及び/又は前記触媒シート表面にPd核を析出させる。
    (3) 前記Pd核を析出させた前記電解質膜及び/又は前記触媒シートをPtイオンを含む第2イオン交換溶液に接触させ、前記電解質膜表面及び/又は前記触媒シート表面にある酸基の水素イオンの全部又は一部をPtイオンでイオン交換する。
    (4) 前記Ptイオンを還元処理し、前記Pd/Pt粒子を析出させる。
  4. 前記第1イオン交換溶液及び/又は前記第2イオン交換溶液は、ハロゲンを含まない化合物を溶媒に溶解させた溶液である請求項3に記載の固体高分子型燃料電池。
  5. 前記Pd/Pt粒子は、以下の方法により得られるものからなる請求項1に記載の固体高分子型燃料電池。
    (1) 前記電解質膜及び/又は触媒シートをPdイオン及びPtイオンを含む第3イオン交換溶液に接触させ、前記電解質膜表面及び/又は前記触媒シート表面にある酸基の水素イオンの全部又は一部をPdイオン及びPtイオンでイオン交換する。
    (2) 前記Pdイオン及びPtイオンを還元処理し、前記電解質膜表面及び/又は前記触媒シート表面に前記Pd/Pt粒子を析出させる。
  6. 前記第3イオン交換溶液は、ハロゲンを含まない化合物を溶媒に溶解させた溶液である請求項5に記載の固体高分子型燃料電池。
  7. 前記還元処理は、還元剤を溶解させた水溶液を前記電解質膜及び/又は前記触媒シートと接触させるものである請求項3から6までのいずれかに記載の固体高分子型燃料電池。
  8. 前記還元剤は、アスコルビン酸、ホルムアルデヒド、ギ酸、水素化ホウ素ナトリウム、及びヒドラジンからなる群から選ばれるいずれか1以上である請求項7に記載の固体高分子型燃料電池。
  9. 前記Pd/Pt粒子の大きさは、100nm以下である請求項1から8までのいずれかに記載の固体高分子型燃料電池。
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