JP5161851B2 - 鮮明性ポリエステル繊維 - Google Patents

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Description

本発明はポリエステル組成物の製造方法に関する。さらに詳しくはポリエステル組成物に繊維の形状を付与したとき、その繊維表面に微細孔を容易に形成することができ、これを染色すると改善された色の深みと鮮明性を呈することができるポリエステル繊維に関する。
ポリエステルは多くの優れた特性を有するため、合成繊維として広く使用されている。しかしながら、ポリエステル繊維は羊毛や絹のごとき天然繊維、レーヨン、アセテート、アクリル系繊維に比較して、染料にて染色した際に色の深みが無く、発色性・鮮明性に劣るという欠点がある。この欠点を解消すべく、染料の改善はポリエステルの化学的改質が試みられてきたが、いずれも十分な効果は得られなかった。
かかる欠点を解消すべく、例えば特許文献1及び特許文献2では、繊維中に微粒子不活性物質を含有させ、繊維が侵されず微粒子状不活性物質が溶解する酸やアルカリで処理して微粒子状不活性物質を除去し、繊維表面を凹凸化する方法が知られている。また、例えば特許文献3では、シリカゾルなどを用いて繊維表面に不規則に凹凸なランダム表面を形成し、さらにそのランダム表面を形成する凹凸内に、さらに微細な凹凸構造を形成せしめたポリエステルが知られている。
微細孔形成剤として有機化合物を用いる例としては、例えば特許文献4〜5では、微細孔形成剤としてリン化合物や分子内にカルボン酸金属塩を有しているスルホン酸化合物などを用い、アルカリ減量処理により繊維表面及び内部に微細孔を形成させる方法が知られている。
しかし、いずれの公知技術においても、繊維を溶剤処理する事で繊維表面に凹凸形状を付与することは可能でも、色の深みを改善する効果が不十分であり、また、複雑な凹凸構造のためフィブリル化しやすいなどの問題があり、さらに高速製糸性、技術的安定性、工業的生産性などから見て問題は解決されていなかった。
このような欠点を解消するため、例えば特許文献6では、ポリエステル合成反応が完了する前の段階で、特定のリン化合物と、リン化合物に対して0.5〜1.2倍モルのアルカリ土類金属とを添加し、しかる後にポリエステルの合成を完了し、得られたポリエステルを溶融紡糸した後にアルカリ減量処理する事により微細孔を有する合成繊維の製造方法が提案されている。この方法によれば優れた色の深みを有するポリエステル繊維を得る事ができる。
確かに本方法によれば、反応中に不活性粒子をポリエステル中に均一な超微粒子分散状態で生成しせしめることができる。しかしながら、本方法は酸成分として有機カルボン酸エステルを用いた、いわゆるエステル交換反応法において非常に有効である一方、近年主流となっているジカルボン酸を原料として使用する直接エステル化反応法では、リン化合物を該リン化合物の溶解性が非常に低いオリゴマー内に添加するため、添加時にリン化合物が反応系内で析出してしまい、スケール状の粗大粒子を多量に生成する。このため、溶融紡糸等の成形加工を行う事ができず、このような組成物はいわゆる有機カルボン酸エステルを原料として製造するしかないのが実情であった。
これらの問題を解決するため、例えば特許文献7〜8では、添加条件を調整して析出量を低減させる方法が提案されている。しかしながら本方法によっても析出物を完全に抑制することは困難であり、また、溶解性改善のために反応の途中で多量にエチレングリコールを添加する必要があるために反応時間が長くなるなどの問題もあった。
特公昭43−014186号公報 特公昭43−016665号公報 特開昭55−107512号公報 特開平08−158157号公報 特開2000−027032号公報 特開昭58−104215号公報 特開平01−068568号公報 特開平05−132855号公報
本発明の目的は、上記の課題を解決し、繊維製造工程での濾過圧上昇速度が低減され、且つ染色した際に改善された色の深みと鮮明性とを呈する繊維が得られるポリエステル組成物の製造方法及びその繊維を提供することにある。
上記の課題に鑑み本発明者らは鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明はポリエステル繊維であって、下記一般式(I)で表されるリン化合物と、
Figure 0005161851
[上記式(I)中、Rは未置換若しくは置換された1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、未置換若しくは置換された6〜20個の炭素原子を有するアリール基又は未置換若しくは置換された7〜20個の炭素原子を有するベンジル基を表す。m及びnは1又は2の整数で、m+n=3である。]
アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物とを、下記式(a)及び(b)を同時に満たすように添加して得られる粒子を含有し、更に下記式(c)及び(d)を同時に満たし、
(a)アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物含有量(M)
ポリエステル繊維のポリエステルを構成する全酸成分に対し、アルカリ金属原子及び/又はアルカリ金属原子のモル量として
500mmol%≦M≦1000mmol%
(b)リン化合物と、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の含有モル比(P/M)
アルカリ金属原子及び/又はアルカリ金属原子のモル量と、リン原子のモル量として
0.8≦P/M≦1.5
(c)ポリエステル繊維の固有粘度([η]f)
0.58≦[η]≦0.80
(d)ジエチレングリコール含有量(DEG)
1.3重量%≦DEG≦2.0重量%
且つ下記式(e)〜(i)の繊維特性を同時に満足するポリエステル繊維であり、当該ポリエステル繊維よって上記課題を解決することができる。
(e)(100)面の結晶子サイズ(X)
40オングストローム≦X
(f)非晶部配向度(Δna)
0.03≦Δna≦0.09
(g)原糸物性熱応力ピーク温度(ST)
140℃≦ST
(h)10%伸張時の応力[強度](S10
2.7g/dtex≦S10≦3.2g/dtex
(i)沸水収縮率(BWS)
8.0%≦BWS≦9.0%
本発明によれば、繊維の表面に特異な微細孔を容易に形成することができるので、染色した際に改善された色の深みと鮮明性を呈することのでき、強度・伸度にも優れたポリエステル繊維を提供することができる。またそのポリエステル繊維はジエチレングリコール等の副生成物の共重合量が少なく耐熱性も良好である。さらにこのようなポリエステル繊維から得られた布帛は耐摩擦変色性、風合いにも優れる。
本発明の鮮明性ポリエステル繊維の製造工程の一部を示す概略図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
(ポリエステル組成物の基本骨格)
本発明におけるポリエステル繊維を構成するポリエステルは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、少なくとも1種のグリコール、好ましくはエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールから選ばれた少なくとも1種のアルキレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。また、そのテレフタル酸の一部を他の二官能性カルボン酸成分で置き換えたポリエステルであっても良く、及び/またはグリコール成分の一部を主成分以外の前記グリコール、若しくは他のジオール成分で置換たポリエステルであっても良い。ここで使用されるテレフタル酸以外の成分としては、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸などを挙げることができるが、得られるポリエステル組成物の基本品質を維持するためには、該ジカルボン酸成分の全モル数に対して80モル%以上はテレフタル酸であることが好ましく、より好ましくは90モル%以上である。また、前記のグリコール以外のジオール成分としては、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチレングリコール)、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジメチロールプロピオン酸、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等を挙げることができる。得られるポリエステル組成物の基本品質を維持するためには、該ジオール成分の全モル数に対して80モル%以上はエチレングリコールであることが好ましく、より好ましくは90モル%以上である。
(原料:その他)
なお、本発明におけるポリエステルにはトリメリット酸、トリメシン酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメリット酸モノカリウム塩などの多価カルボン酸、グリセリン、ペンタエリトリトール、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウムなどの多価ヒドロキシ化合物を、本発明の目的を達成する範囲内であれば、上記該酸成分の1モル%以内で共重合してもよい。
(製造方法)
かかるポリエステルは任意の方法によって合成したもので良い。例えばポリエチレンテレフタレートについて説明すれば、通常、テレフタル酸とエチレングリコールを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのごときテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか、またはテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応さえるかしてテレフタル酸のグリコールエステル及び/またはその低重合体を生成させる第一段階の反応と、第一段階の反応性生物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第二段階の反応によって製造される。第一段階の反応、第二段階の反応ともそれぞれ公知の反応器、温度、圧力、時間によって実施することができる。さらに具体的には第二段階の反応である重縮合反応は一般に230〜320℃の温度において、常圧下、又は減圧下(0.1Pa〜0.1MPa)において、或はこれらの条件を組み合わせて、15〜300分間重縮合することが好ましい。
(内部析出粒子)
本発明のポリエステル繊維は、下記一般式(I)
Figure 0005161851
[上記式(I)中、Rは未置換若しくは置換された1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、未置換若しくは置換された6〜20個の炭素原子を有するアリール基又は未置換若しくは置換された7〜20個の炭素原子を有するベンジル基を表す。m及びnは1又は2の整数で、m+n=3である。]
で表されるリン化合物と、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の反応により析出した内部析出系の微細粒子を含有せしめたポリエステル組成物からなる。ここでいう内部析出系とは、前記リン化合物とアルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属化合物とをあらかじめ反応させることなく、個別にポリエステル製造段階に添加し、ポリエステルの合成反応中にアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物とリン化合物を反応させて、ポリエステルに実質的に不溶性の微細粒子を均一に析出せしめることを示し、あらかじめ外部で所望の粒径に粒度調製した、ポリエステルに実質的に不溶性の微細粒子を、好ましくはグリコール、アルコール、水などに分散させて、ポリエステル製造段階に添加する外部添加系とは区別される。これを反応槽内部で反応することによって形成される微粒子であることから、以下「内部析出系粒子」と称することがある。
(アルカリ金属・アルカリ土類金属化合物)
本発明にかかるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素に関しては、Li,Na,Mg,Ca,Sr,Baが好ましく、特にCa,Sr,Baが好ましく用いられる。そのなかでもCaが最も好ましく用いられる。また、本発明にかかるアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物としては、上記リン化合物と反応して含金属リン化合物を形成するものであれば特に限定されない。具体的には、有機カルボン酸との塩が好ましく、なかでも酢酸塩は反応により副生する酢酸を容易に除去できるので、特に好ましく用いられる。前記アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物は1種のみに単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
上記アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物は、溶媒に溶解させた状態で使用されることが望ましい。このときの溶媒としては、公知の溶媒から適切なものを選択することができるが、対象のポリエステルの原料として使用するグリコールを使用することが最も好ましい。すなわち本発明においては上記の説明から明らかなようにエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールを用いることである。
(金属化合物添加量)
上記のアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物はポリエステル繊維のポリエステルを構成する全酸成分に対してアルカリ金属原子及び/又はアルカリ金属原子のモル量として下記式の範囲で添加する必要がある。
500mmol%≦M≦1000mmol%
添加量が500mmol%未満では、後述するリン化合物とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物から形成される粒子量が減少するため、得られるポリエステルを溶融紡糸し、次いでアルカリ減量することで得られるポリエステル繊維の表面凹凸構造の形成が不十分となり、十分な鮮明性を発現できない。一方、1000mmol%を越えると、これらのリン化合物とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物から形成される粒子が粗大な粒子を形成するため、得られるポリエステルを溶融紡糸し、次いでアルカリ減量することで得られるポリエステル繊維の表面凹凸構造の形成が不十分となるうえ、溶融紡糸工程での製糸性を著しく悪化させるため好ましくない。これらのアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の添加量は、金属元素換算として700〜900mmol%の範囲が好ましい。
(金属化合物添加時期)
上記のアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物のポリエステル組成物の製造工程中への添加時期は、エステル化反応工程、重縮合反応工程の中の任意の段階を選択することができるが、エステル化反応及び重縮合反応へ及ぼす影響から、エステル化反応中、若しくはエステル化反応終了後、重縮合反応開始の前半(30分以内)で添加することが望ましい。
(リン化合物)
本発明にかかるリン化合物に関しては、下記一般式(I)で表される化合物である必要がある。
Figure 0005161851
[上記式(I)中、Rは未置換若しくは置換された1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、未置換若しくは置換された6〜20個の炭素原子を有するアリール基又は未置換若しくは置換された7〜20個の炭素原子を有するベンジル基を表す。m及びnは1又は2の整数で、m+n=3である。]
Rで示される官能基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ジメチルフェニル基等を挙げることができる。更にこれらの炭化水素基中の1または2以上の水素原子がカルボキシル基、エステル基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、アルキルオキシ基等に置換されていても良い。
m及びnは1又は2の整数で、m+n=3である。よってm、nの組合せとしては(m,n)=(1,2)、(2,1)を挙げることができる。
このような一般式(I)の化合物としては、例えばエチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ヘキシルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、ノニルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ドデシルアシッドホスフェート、テトラデシルアシッドホスフェート、ヘキサデシルアシッドホスフェート、オクタデシルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ナフチルアシッドホスフェート、アントラニルアシッドホスフェート、ジエチルホスフェート、ジノルマルプロピルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジヘキシルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジデシルホスフェート、ジドデシルホスフェート、ジトリルホスフェート、ジキシリルホスフェート、ブチルエチルアシッドホスフェート、ブチルへキシルアシッドホスフェート、エチルヘキシルアシッドホスフェート、ブチルオクチルアシッドホスフェート、(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートホスフェート、ヒドロキシエチルアシッドホスフェート、ビス(ヒドロキシエチル)アシッドホスフェート、ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、ビス(ヒドロキシプロピル)アシッドホスフェート、ヒドロキシブチルアシッドホスフェート、ビス(ヒドロキシブチル)アシッドホスフェート、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、ヒドロキシエチルヒドロキシブチルアシッドホスフェート、ヒドロキシプロピルヒドロキシブチルアシッドホスフェート等が例示されるが、中でもジブチルホスフェートがもっとも好ましく用いられる。上記のリン化合物は溶媒に溶解させた状態で使用されることが望ましい。このときの溶媒としては、公知の溶媒から適切なものを選択することができるが、対象のポリエステルの原料として使用するグリコールを使用することが最も好ましい。すなわち本発明においては上記の説明から明らかなようにエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールを用いることである。
(リン化合物添加時期)
上記リン化合物のポリエステル中への添加時期は、前述のアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の添加前若しくは添加後のどちらでも良い。リン化合物はアルカリ金属化合物及び/アルカリ土類金属化合物と反応して、ポリエステルに不溶の粒子を形成するが、どちらを先に添加しても同様の粒子が形成される。但し、リン化合物をエステル化反応の初期に添加すると、エステル化反応を阻害する可能性があるため、望ましくはエステル化反応の後半、若しくはエステル化反応終了後、重縮合反応開始の前半(30分以内)で添加することが望ましい。
(リン化合物とアルカリ金属化合物等の事前反応禁止)
しかしながらポリエステルに添加する前に、あらかじめリン化合物とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物とを反応させたものをポリエステルに添加する方法では、あらかじめ調整されるリン化合物とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物とから形成される粒子の大きさが大きくなる。そのため、それをポリエステル中に添加して得られるポリエステルを溶融紡糸し、次いでアルカリ減量することで得られるポリエステル繊維の表面凹凸構造が、所望の微細化した凹凸構造を形成することができず、目的の鮮明性を発現するポリエステル繊維を得ることができない。さらに、粗大なリン化合物とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が生成するため、溶融紡糸時のパック圧上昇速度が速くなり、生産性低下に繋がるため好ましくない。従って本願のポリエステル繊維を製造するにおいては、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物とリン化合物を、オリゴマーを生成する工程及び/又は重縮合反応を行う工程に添加する前に反応させる事なく、個別にポリエステルの製造工程に添加する方法を好ましく採用することができる。但し必要に応じて、双方の化合物の単なる混合物として添加することは本発明の範囲に含まれる。
(リン原子/金属原子比)
リン化合物とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の添加量は、下記式で示す比率で添加する必要がある。
(b)リン化合物とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の添加モル比(P/M)アルカリ金属原子及び/又はアルカリ金属原子のモル量と、リン原子のモル量として
0.8≦P/M≦1.5
P/Mが0.8未満では、リン化合物とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物から形成される粒子量が減少するため、得られるポリエステルを溶融紡糸し、次いでアルカリ減量することで得られるポリエステル繊維の表面凹凸構造の形成が不十分となり、十分な鮮明性を発現できないうえ、ポリエステル中のアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物量が過剰となり、過剰な金属原子成分がポリエステルの熱分解を促進し、熱安定性を著しく損なうため好ましくない。一方、P/Mが1.5を越えると、逆にリン化合物が過剰となり、過剰なリン化合物がポリエステルの重合反応を阻害するため好ましくない。P/Mは0.9〜1.3の範囲が好ましい。
(重合触媒、その他の添加剤)
本発明のポリエステル組成物には、ポリエステルの製造時に通常用いられるアンチモン、ゲルマニウム、チタンなどの化合物の金属化合触媒、着色防止剤としてのリン化合物、その他として酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤又は艶消し剤などを、本発明の目的を奏する範囲内で含有していても良い。
(原糸物性)
本発明の鮮明性ポリエステル繊維は、このようにして得られるポリエステルからなり、且つ下記式(e)〜(i)の繊維特性を同時に満足することが必要であり、アルカリ減量処理を施されてなることが好ましい。
(e)(100)面の結晶子サイズ(X)
40オングストローム≦X
(f)非晶部配向度(Δna)
0.03≦Δna≦0.09
(g)原糸物性熱応力ピーク温度(ST)
140℃≦ST
(h)10%伸張時の応力[強度](S10
2.7g/dtex≦S10≦3.2g/dtex
(i)沸水収縮率(BWS)
8.0%≦BWS≦9.0%
結晶子サイズ(X)が40オングストローム未満、あるいは非晶部分配向度(Δna)が0.09を超える繊維をアルカリ減量処理する場合には、得られる微細孔繊維の染料吸着性が低下し、優れた深色性を呈する事ができない。一方、Δnaが0.03未満の繊維は、織編工程で変形を受けやすくなるため、最終的に得られる織編品の品位が低下する。
また、原糸物性の熱応力ピーク(ST)が140℃未満の繊維を強撚、撚止セット後に布帛形成したとき、リラックスの幅入れ、ふくらみが低下し、優れた風合いが得られない。このSTは試料に初荷重2.5gをかけセットし、昇温(120秒/300℃)を行って得られる試料の最大応力値から求めた温度である。
さらに、10%伸張時の応力[強度](S10)が2.7g/dtex未満、または3.2g/dtexを超えると布帛の張り、腰が弱すぎたり強すぎたりし風合いに影響する。また、沸水収縮率(BWS)が8.0%未満では、緯糸の幅入れ不足が生じ、9.0%を超えると熱応力ピーク温度(ST)が下がり、同様の幅入れ不足が生じ風合いに影響する。本発明の微細孔繊維においては、深色性に優れた鮮明性が得られ、微細孔繊維の磨耗変色を著しく低減でき、且つ均斉でソフト感を有する強撚織編物を得ることができる。
(溶融紡糸方法)
このようなポリエステル繊維を得るには、前記内部析出系微粒子を含有するポリエステル、すなわち前記一般式(I)で表されるリン化合物の含有量(P)と、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の含有量(M)とを、下記式(a)及び(b)を同時に満足する形で添加して得られる内部析出系微粒子を含有するポリエステル組成物を、
(a)アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の総添加量(M)
ポリエステル繊維のポリエステルを構成する全酸成分に対し、アルカリ金属原子及び/又はアルカリ金属原子のモル量として
500mmol%≦M≦1000mmol%
(b)リン化合物とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の添加モル比(P/M)
アルカリ金属原子及び/又はアルカリ金属原子のモル量と、リン原子のモル量として
0.8≦P/M≦1.5
図1に示す装置で紡糸速度3400m/min以上、4500m/min未満で溶融紡糸し、第1ゴデットローラー(5)と第2ゴデットローラー(6)の間で延伸し、第2ゴデットローラー(6)で熱セットし、次いで得られるポリエステル繊維を必要に応じてアルカリ減量処理することによって得ることができる。
図1は本発明において用いる繊維の製造方法を示す概略図である。図1において、内部析出系微粒子を含有するポリエステルを、紡糸口金(1)から溶融吐出し、冷却装置(3)から吹き出す冷却風によって冷却固化せしめた後、油剤付与装置(4)で給油してから第1ゴデットローラー(5)に引取り、引き続き第2ゴデットローラー(6)を通過させてからワインダー(7)に巻き取る。
この際、285℃〜300℃に保持されている溶融ポリマーを290〜300℃に加熱されている紡糸口金から口金面下10mmの位置で250〜300℃に加熱されている雰囲気中に吐出し、引き続き口金面下少なくとも90mmの地点から60cm以上の長さにわたって冷却風を吹き付けて冷却固化させた後、ドラフト率150〜400で、紡糸速度3000m/min以上、4500m/min未満、好ましくは3400〜4000/min未満、延伸倍率1.5倍以上1.7倍未満、好ましくは1.55〜1.65倍で引取り、第2ゴデットローラー(6)で130℃の熱セット温度をかけることによって、結晶子サイズが40オングストローム以上、非晶部配向度が0.03〜0.09、熱応力ピーク温度140℃以上、10%伸張時の応力[強度]3.0〜3.5g/de、沸水収縮率8.0〜9.0%のポリエステル繊維を工業的に得ることができる。
(固有粘度)
かかる溶融紡糸において、紡糸に供給するポリエステルの固有粘度([η]c、25℃、オルトクロロフェノール中)を0.60〜0.85とすることが、得られる本発明のポリエステル繊維を構成するポリエステルの固有粘度([η]f)を0.58〜0.80にすることができるため好ましい。[η]cが0.60未満のポリエステルを紡糸に供すると、[η]fが0.58未満となりやすく、得られる微細孔繊維に摩擦変色が生じやすくなる傾向がある、[η]cが0.85を超えるポリエステルの場合には高速紡糸性が低下する傾向がある。
(DEG含有量)
また、ポリエステル繊維に含有されるジエチレングリコール含有量は1.3〜2.0重量%の範囲である必要がある。1.3重量%未満では得られる微細孔繊維の染料吸着性が低下し、優れた深色性を呈する事ができない。一方、2.0重量%を越えるとポリエステルの配向結晶性が低下するため、前述の繊維物性を満足することが困難になる上、ポリエステル自身の耐熱性が低下するために、溶融紡糸段階での熱分解が大きくなるなどの問題が発生するため好ましくない。
(その他の繊維物性)
さらに、前記紡糸条件を調整して、得られるポリエステル繊維の繊維特性が前記(h)及び(i)を同時に満足させるようにする。また、複屈折率(Δn)が0.07<Δn≦0.12であるように調整することが好ましい。かくして得られる繊維は、撚数2000T/m以上、例えば3100T/mの強撚を施した後、該撚糸を緯糸に用いて布帛とするが、前記の如く繊維の熱応力ピークが140℃以上なので、幅入れを大きくすることができ、得られる布帛のふくらみや厚さといった特性が大きくなって良好な風合いが達成される。
(アルカリ減量)
本発明の鮮明性ポリエステル繊維は、その全表面にわたってアルカリ減量処理による微細孔が形成されており、繊維表面における鏡面反射を著しく低減することができるため、深色性と優れた鮮明性を呈する。この微細孔は、繊維軸表面に配向し、度数分布の最大値において繊維軸直角方向の幅が0.1〜0.3μmの範囲であって、繊維軸方向の長さが0.2〜0.3μmのものが好ましい。
このような微細孔繊維は、前記のようにして得られた繊維をアルカリ減量処理し、繊維表面に微細孔を形成して得られる。この際アルカリ減量は得られた繊維を織編成して織編物となした後、アルカリ化合物の水溶液をパッド/スチーム処理することによってその一部を除去することにより行われる。ここで使用されるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどを挙げることができる。中でも水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが特に好ましい。また、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどの如きアルカリ減量促進剤を適宜使用することができる。
このアルカリ減量処理によって減量する量は、繊維重量に対して3重量%以上の範囲とすることが好ましく、3重量%未満の減量率では、満足すべき表面凹凸が形成されず、充分な効果が得られない傾向にある。なお、本発明のポリエステル繊維は、適宜公知の深色化後加工や親水化後加工などを施されていても良い。かかる深色化後加工としては、例えばジメチルポリシロキサン、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体の如きポリエステルよりも低い屈折率を有する重合体でポリエステル繊維の表面を被覆する方法などが好ましく採用できる。親水化後加工としては、例えばテレフタル酸及び/又はイソフタル酸、若しくはそれらの低級アルキルエステル、低級アルキレングリコールからなるポリエステルポリエーテルブロック共重合体の水分散体液でポリエステル繊維を処理する方法が好ましく採用できる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例中の分析項目などは、下記記載の方法により測定した。
(ア)固有粘度:
ポリエステル組成物を100℃、60分間でオルトクロロフェノールに溶解した希薄溶液を、25℃でウベローデ粘度計を用いて測定した値から求めた。
(イ)ジエチレングリコール含有量:
ヒドラジンヒドラート(抱水ヒドラジン)を用いてポリエステル試料チップを分解し、この分解生成物中のジエチレングリコールの含有量をガスクロマトグラフィー(ヒューレットパッカード社製(HP6850型))を用いて測定した。
(ウ)濾過圧上昇速度:
ポリエステル組成物を150℃×6時間乾燥させた後、一軸スクリュー型押出機と2400メッシュ金網フィルターを用いて、290℃にて溶融させ25g/minの吐出量で溶融濾過し、フィルターの濾過圧上昇速度を測定した。本測定方法では10MPa/h以下を良とした。
(エ)繊維の10%伸長時の応力[強度](引張強度・伸度)及び沸水収縮率(BWS)[熱水収縮率]:
JIS L1013記載の方法に準拠して測定を行った。
(オ)繊維表面の凹凸構造:
アルカリ減量後の布帛を、走査型電子顕微鏡にて4000倍にて観察した。参考例1の方法で得られた繊維表面構造を基準とし、凹凸構造の形成状態を評価した。
(カ)深色度:
色の深みを示す尺度として深色度(K/S)を用いた。サンプル布帛の分光反射率を、島津製作所製RC−330型自記分光光度計にて測定し、下記のクベルカ・ムンクの式により求めた。この値が大きいほど深色効果が大きい事を示す。
K/S=(1−R)/2R
なお、Rは反射率、Kは吸収計数、Sは散乱計数を示す。
(キ)耐摩擦変色性:
摩擦堅牢度試験用の学振型平面磨耗機を使用して、摩擦布としてポリエチレンテレフタレート100%よりなるジョーゼットを用い、試験布を500gの荷重下で所定回数平面磨耗して、変色の発生の頻度を変褪色用グレースケールで判定した。耐磨耗性が極めて低い場合を1級とし、極めて高い場合を5級とした。実用上4級以上が必要である。
(ク)風合い:
強撚後布帛のぬめり、ふくらみ、こし、はり、しゃりを総合評価し、極めて高い場合を5級とし、極めて低い場合を1級として、4級以上を良とした。
(ケ)非晶部配向度(Δna):
下記の式より求めた。
Δna=(Δn−fc・Δnc・Xv)/(1−Xv)
なお、Δnは複屈折率を、Xvは結晶化度(密度法)を、fcは結晶部配向度(X線屈折法)を、Δncは固有極限値0.212(ポリエステル)を示す。
(コ)結晶子サイズ(X):
X線広角回折法によって測定した強度分布曲線において、(010)面、(100)面の半価巾を求め、シェラーの式を用いて結晶子サイズを算出した。
(サ)原糸物性熱応力ピーク温度(ST):
試料に初荷重2.5gをかけセットし、昇温(120秒/300℃)を行って得られる試料の最大応力値から求めた温度である。
(シ)ポリエステル繊維(ポリエステル組成物)の繰り返し単位、含有化合物の化学構造
ポリエステル組成物サンプルを重水素化トリフルオロ酢酸/重水素化クロロホルム=1/1混合溶媒に溶解後、沈殿を濾過により除き、得られた溶液を日本電子(株)製JEOL A−600 超伝導FT−NMRを用いて核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)を測定した。そのスペクトルパターンから常法に従ってポリエステルの繰り返し単位の化学構造を同定した。またポリエステル組成物の溶液にメタノールを添加しポリエステル成分を沈殿させた後、上澄み液を濃縮して核磁気共鳴スペクトル分析を行うことによりチタン化合物、ホスホン酸化合物の化学構造を同定した。
(ス)ポリエステル組成物中のリン原子および金属原子含有量:
ポリエステル組成物中のリン金属原子含有量、金属原子含有量は粒状のポリエステル組成物(繊維)サンプルをスチール板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平坦面を有する試験成形体を作成した。この試験成形体を使って蛍光X線装置(理学電機工業株式会社製3270E型)を用いて求めた。触媒としてチタン化合物を使用したものについては、サンプルをオルトクロロフェノールに溶解した後、0.5規定塩酸で抽出操作を行った。この抽出液について日立製作所製Z−8100型原子吸光光度計を用いて定量を行った。ここで0.5規定塩酸抽出後の抽出液中に酸化チタンの分散が確認された場合は遠心分離機で酸化チタン粒子を沈降させた。次に傾斜法により上澄み液のみを回収して、同様の操作を行った。これらの操作によりサンプル中に酸化チタンを含有していても触媒として添加しているポリエステルに可溶性のチタン元素の定量が可能となる。
[実施例1]
エステル化反応槽にて、テレフタル酸86部とエチレングリコール40部とを、常法に従ってエステル化反応させオリゴマーを得た。このオリゴマーに、テレフタル酸86部とエチレングリコール40部を65分間かけて連続的に供給し、245℃にてエステル化反応を行った。ついで三酸化アンチモン0.045部を添加して20分後、追加供給したテレフタル酸とエチレングリコールとから生成されるオリゴマー量と等モル量のオリゴマーを重縮合反応槽へ送液した。送液終了後直ちに酢酸カルシウムをポリマー中の酸成分に対して800mmol%を重縮合反応槽に添加した。さらに5分後にジブチルホスフェート(DBP)をポリマー中の酸成分に対して880mmol%を重縮合反応槽に添加した。その後290℃まで昇温し、0.03kPa以下の高真空化にて重縮合反応を行い、固有粘度が0.64dL/gのポリエステルチップを得た。
得られたチップを常法により乾燥し、下記に示す条件で図1に示す方法で溶融紡糸した。
(い)紡糸条件
紡糸口金温度:295℃
吐出量:44g/min
ポリマー温度:290℃
口金下10mmの温度:280〜290℃
(ろ)冷却条件
冷却開始位置:口金下90mm
冷却風吹き出し長:60cm
冷却風量:0.3m/sec
(は)紡糸ドラフト:120
(に)紡糸引取速度[第1ゴデットローラー(5)の周速]:3400m/min
この際に、図1の第1ゴデットローラー(5)と第2ゴデットローラー(6)との間で、表1に示す延伸倍率で延伸し、第2ゴデットローラー(6)を同表に示す温度で熱セットして得られた原糸(75de/36フィラメント)を、撚数3100T/m、撚止セット温度75℃の加工条件を用いて加工し、緯糸用として使用し、巾148cm、長さ55m、目付け98g/mの織物を作成した。
この織物を常法によりヒートセット後、3.5%の水酸化ナトリウム水溶液で沸騰温度にて表1に示す減量率で処理した。このアルカリ減量後の布帛を、Dianoix Black HG−FS(三菱化学製)15%owfを用いて130℃で60分間染色した後、水酸化ナトリウム1g/L及びハイドロサルファイト1g/Lを含む水溶液にて70℃で20分間還元洗浄して黒染布を得た。
得られた黒色布の深色性、磨耗200回後の耐磨耗変色性を評価し、微細孔形成剤の添加量、紡糸引取速度、減量率、繊維特性などと共に表1に示した。さらに風合いの評価結果を表1に併せて示した。またアルカリ減量後のポリエステル繊維表面を走査型電子顕微鏡にて観察を行った。
[実施例2〜5、比較例1〜14]
実施例1において、微細孔形成剤の種類、及びその添加量、紡糸引取速度、減量率を表1に示すように変更するほかは、実施例1と同様にして黒色布を得て、この黒色布について実施例1と同様に評価した。結果を表1に併せて示した。なお比較例12はDBPと酢酸カルシウムの反応生成物をリン化合物、アルカリ金属化合物等の代わりに添加しているので、一般式(I)で表されるリン化合物そのものを添加しているわけではない。
Figure 0005161851
本発明によれば、繊維の表面に特異な微細孔を容易に形成することができるので、染色した際に改善された色の深みと鮮明性を呈することのできるポリエステル繊維が提供される。
1 紡糸口金
2 糸
3 冷却装置
4 油剤付与装置
5 第1ゴデットローラー
6 第2ゴデットローラー
7 ワインダー
8 インターレースノズル

Claims (1)

  1. ポリエステル繊維であって、下記一般式(I)で表されるリン化合物と、
    Figure 0005161851
    [上記式(I)中、Rは未置換若しくは置換された1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、未置換若しくは置換された6〜20個の炭素原子を有するアリール基又は未置換若しくは置換された7〜20個の炭素原子を有するベンジル基を表す。m及びnは1又は2の整数で、m+n=3である。]
    アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物とを、下記式(a)及び(b)を同時に満たすように添加して得られる粒子を含有し、更に下記式(c)及び(d)を同時に満たし、
    (a)アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物含有量(M)
    ポリエステル繊維のポリエステルを構成する全酸成分に対し、アルカリ金属原子及び/又はアルカリ金属原子のモル量として
    500mmol%≦M≦1000mmol%
    (b)リン化合物と、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の含有モル比(P/M)
    アルカリ金属原子及び/又はアルカリ金属原子のモル量と、リン原子のモル量として
    0.8≦P/M≦1.5
    (c)ポリエステル繊維の固有粘度([η]f)
    0.58≦[η]≦0.80
    (d)ジエチレングリコール含有量(DEG)
    1.3重量%≦DEG≦2.0重量%
    且つ下記式(e)〜(i)の繊維特性を同時に満足するポリエステル繊維。
    (e)(100)面の結晶子サイズ(X)
    40オングストローム≦X
    (f)非晶部配向度(Δna)
    0.03≦Δna≦0.09
    (g)原糸物性熱応力ピーク温度(ST)
    140℃≦ST
    (h)10%伸張時の応力(S10
    2.7g/dtex≦S10≦3.2g/dtex
    (i)沸水収縮率(BWS)
    8.0%≦BWS≦9.0%



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