JP5161851B2 - 鮮明性ポリエステル繊維 - Google Patents
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Description
すなわち本発明はポリエステル繊維であって、下記一般式(I)で表されるリン化合物と、
アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物とを、下記式(a)及び(b)を同時に満たすように添加して得られる粒子を含有し、更に下記式(c)及び(d)を同時に満たし、
(a)アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物含有量(M)
ポリエステル繊維のポリエステルを構成する全酸成分に対し、アルカリ金属原子及び/又はアルカリ金属原子のモル量として
500mmol%≦M≦1000mmol%
(b)リン化合物と、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の含有モル比(P/M)
アルカリ金属原子及び/又はアルカリ金属原子のモル量と、リン原子のモル量として
0.8≦P/M≦1.5
(c)ポリエステル繊維の固有粘度([η]f)
0.58≦[η]f≦0.80
(d)ジエチレングリコール含有量(DEG)
1.3重量%≦DEG≦2.0重量%
且つ下記式(e)〜(i)の繊維特性を同時に満足するポリエステル繊維であり、当該ポリエステル繊維よって上記課題を解決することができる。
(e)(100)面の結晶子サイズ(X)
40オングストローム≦X
(f)非晶部配向度(Δna)
0.03≦Δna≦0.09
(g)原糸物性熱応力ピーク温度(ST)
140℃≦ST
(h)10%伸張時の応力[強度](S10)
2.7g/dtex≦S10≦3.2g/dtex
(i)沸水収縮率(BWS)
8.0%≦BWS≦9.0%
(ポリエステル組成物の基本骨格)
本発明におけるポリエステル繊維を構成するポリエステルは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、少なくとも1種のグリコール、好ましくはエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールから選ばれた少なくとも1種のアルキレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。また、そのテレフタル酸の一部を他の二官能性カルボン酸成分で置き換えたポリエステルであっても良く、及び/またはグリコール成分の一部を主成分以外の前記グリコール、若しくは他のジオール成分で置換たポリエステルであっても良い。ここで使用されるテレフタル酸以外の成分としては、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸などを挙げることができるが、得られるポリエステル組成物の基本品質を維持するためには、該ジカルボン酸成分の全モル数に対して80モル%以上はテレフタル酸であることが好ましく、より好ましくは90モル%以上である。また、前記のグリコール以外のジオール成分としては、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチレングリコール)、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジメチロールプロピオン酸、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等を挙げることができる。得られるポリエステル組成物の基本品質を維持するためには、該ジオール成分の全モル数に対して80モル%以上はエチレングリコールであることが好ましく、より好ましくは90モル%以上である。
なお、本発明におけるポリエステルにはトリメリット酸、トリメシン酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメリット酸モノカリウム塩などの多価カルボン酸、グリセリン、ペンタエリトリトール、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウムなどの多価ヒドロキシ化合物を、本発明の目的を達成する範囲内であれば、上記該酸成分の1モル%以内で共重合してもよい。
かかるポリエステルは任意の方法によって合成したもので良い。例えばポリエチレンテレフタレートについて説明すれば、通常、テレフタル酸とエチレングリコールを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのごときテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか、またはテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応さえるかしてテレフタル酸のグリコールエステル及び/またはその低重合体を生成させる第一段階の反応と、第一段階の反応性生物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第二段階の反応によって製造される。第一段階の反応、第二段階の反応ともそれぞれ公知の反応器、温度、圧力、時間によって実施することができる。さらに具体的には第二段階の反応である重縮合反応は一般に230〜320℃の温度において、常圧下、又は減圧下(0.1Pa〜0.1MPa)において、或はこれらの条件を組み合わせて、15〜300分間重縮合することが好ましい。
本発明のポリエステル繊維は、下記一般式(I)
で表されるリン化合物と、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の反応により析出した内部析出系の微細粒子を含有せしめたポリエステル組成物からなる。ここでいう内部析出系とは、前記リン化合物とアルカリ金属化合物及び/またはアルカリ土類金属化合物とをあらかじめ反応させることなく、個別にポリエステル製造段階に添加し、ポリエステルの合成反応中にアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物とリン化合物を反応させて、ポリエステルに実質的に不溶性の微細粒子を均一に析出せしめることを示し、あらかじめ外部で所望の粒径に粒度調製した、ポリエステルに実質的に不溶性の微細粒子を、好ましくはグリコール、アルコール、水などに分散させて、ポリエステル製造段階に添加する外部添加系とは区別される。これを反応槽内部で反応することによって形成される微粒子であることから、以下「内部析出系粒子」と称することがある。
本発明にかかるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素に関しては、Li,Na,Mg,Ca,Sr,Baが好ましく、特にCa,Sr,Baが好ましく用いられる。そのなかでもCaが最も好ましく用いられる。また、本発明にかかるアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物としては、上記リン化合物と反応して含金属リン化合物を形成するものであれば特に限定されない。具体的には、有機カルボン酸との塩が好ましく、なかでも酢酸塩は反応により副生する酢酸を容易に除去できるので、特に好ましく用いられる。前記アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物は1種のみに単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
上記のアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物はポリエステル繊維のポリエステルを構成する全酸成分に対してアルカリ金属原子及び/又はアルカリ金属原子のモル量として下記式の範囲で添加する必要がある。
500mmol%≦M≦1000mmol%
添加量が500mmol%未満では、後述するリン化合物とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物から形成される粒子量が減少するため、得られるポリエステルを溶融紡糸し、次いでアルカリ減量することで得られるポリエステル繊維の表面凹凸構造の形成が不十分となり、十分な鮮明性を発現できない。一方、1000mmol%を越えると、これらのリン化合物とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物から形成される粒子が粗大な粒子を形成するため、得られるポリエステルを溶融紡糸し、次いでアルカリ減量することで得られるポリエステル繊維の表面凹凸構造の形成が不十分となるうえ、溶融紡糸工程での製糸性を著しく悪化させるため好ましくない。これらのアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の添加量は、金属元素換算として700〜900mmol%の範囲が好ましい。
上記のアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物のポリエステル組成物の製造工程中への添加時期は、エステル化反応工程、重縮合反応工程の中の任意の段階を選択することができるが、エステル化反応及び重縮合反応へ及ぼす影響から、エステル化反応中、若しくはエステル化反応終了後、重縮合反応開始の前半(30分以内)で添加することが望ましい。
本発明にかかるリン化合物に関しては、下記一般式(I)で表される化合物である必要がある。
m及びnは1又は2の整数で、m+n=3である。よってm、nの組合せとしては(m,n)=(1,2)、(2,1)を挙げることができる。
上記リン化合物のポリエステル中への添加時期は、前述のアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の添加前若しくは添加後のどちらでも良い。リン化合物はアルカリ金属化合物及び/アルカリ土類金属化合物と反応して、ポリエステルに不溶の粒子を形成するが、どちらを先に添加しても同様の粒子が形成される。但し、リン化合物をエステル化反応の初期に添加すると、エステル化反応を阻害する可能性があるため、望ましくはエステル化反応の後半、若しくはエステル化反応終了後、重縮合反応開始の前半(30分以内)で添加することが望ましい。
しかしながらポリエステルに添加する前に、あらかじめリン化合物とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物とを反応させたものをポリエステルに添加する方法では、あらかじめ調整されるリン化合物とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物とから形成される粒子の大きさが大きくなる。そのため、それをポリエステル中に添加して得られるポリエステルを溶融紡糸し、次いでアルカリ減量することで得られるポリエステル繊維の表面凹凸構造が、所望の微細化した凹凸構造を形成することができず、目的の鮮明性を発現するポリエステル繊維を得ることができない。さらに、粗大なリン化合物とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が生成するため、溶融紡糸時のパック圧上昇速度が速くなり、生産性低下に繋がるため好ましくない。従って本願のポリエステル繊維を製造するにおいては、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物とリン化合物を、オリゴマーを生成する工程及び/又は重縮合反応を行う工程に添加する前に反応させる事なく、個別にポリエステルの製造工程に添加する方法を好ましく採用することができる。但し必要に応じて、双方の化合物の単なる混合物として添加することは本発明の範囲に含まれる。
リン化合物とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の添加量は、下記式で示す比率で添加する必要がある。
(b)リン化合物とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の添加モル比(P/M)アルカリ金属原子及び/又はアルカリ金属原子のモル量と、リン原子のモル量として
0.8≦P/M≦1.5
P/Mが0.8未満では、リン化合物とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物から形成される粒子量が減少するため、得られるポリエステルを溶融紡糸し、次いでアルカリ減量することで得られるポリエステル繊維の表面凹凸構造の形成が不十分となり、十分な鮮明性を発現できないうえ、ポリエステル中のアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物量が過剰となり、過剰な金属原子成分がポリエステルの熱分解を促進し、熱安定性を著しく損なうため好ましくない。一方、P/Mが1.5を越えると、逆にリン化合物が過剰となり、過剰なリン化合物がポリエステルの重合反応を阻害するため好ましくない。P/Mは0.9〜1.3の範囲が好ましい。
本発明のポリエステル組成物には、ポリエステルの製造時に通常用いられるアンチモン、ゲルマニウム、チタンなどの化合物の金属化合触媒、着色防止剤としてのリン化合物、その他として酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤又は艶消し剤などを、本発明の目的を奏する範囲内で含有していても良い。
本発明の鮮明性ポリエステル繊維は、このようにして得られるポリエステルからなり、且つ下記式(e)〜(i)の繊維特性を同時に満足することが必要であり、アルカリ減量処理を施されてなることが好ましい。
(e)(100)面の結晶子サイズ(X)
40オングストローム≦X
(f)非晶部配向度(Δna)
0.03≦Δna≦0.09
(g)原糸物性熱応力ピーク温度(ST)
140℃≦ST
(h)10%伸張時の応力[強度](S10)
2.7g/dtex≦S10≦3.2g/dtex
(i)沸水収縮率(BWS)
8.0%≦BWS≦9.0%
このようなポリエステル繊維を得るには、前記内部析出系微粒子を含有するポリエステル、すなわち前記一般式(I)で表されるリン化合物の含有量(P)と、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の含有量(M)とを、下記式(a)及び(b)を同時に満足する形で添加して得られる内部析出系微粒子を含有するポリエステル組成物を、
(a)アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の総添加量(M)
ポリエステル繊維のポリエステルを構成する全酸成分に対し、アルカリ金属原子及び/又はアルカリ金属原子のモル量として
500mmol%≦M≦1000mmol%
(b)リン化合物とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の添加モル比(P/M)
アルカリ金属原子及び/又はアルカリ金属原子のモル量と、リン原子のモル量として
0.8≦P/M≦1.5
図1に示す装置で紡糸速度3400m/min以上、4500m/min未満で溶融紡糸し、第1ゴデットローラー(5)と第2ゴデットローラー(6)の間で延伸し、第2ゴデットローラー(6)で熱セットし、次いで得られるポリエステル繊維を必要に応じてアルカリ減量処理することによって得ることができる。
かかる溶融紡糸において、紡糸に供給するポリエステルの固有粘度([η]c、25℃、オルトクロロフェノール中)を0.60〜0.85とすることが、得られる本発明のポリエステル繊維を構成するポリエステルの固有粘度([η]f)を0.58〜0.80にすることができるため好ましい。[η]cが0.60未満のポリエステルを紡糸に供すると、[η]fが0.58未満となりやすく、得られる微細孔繊維に摩擦変色が生じやすくなる傾向がある、[η]cが0.85を超えるポリエステルの場合には高速紡糸性が低下する傾向がある。
また、ポリエステル繊維に含有されるジエチレングリコール含有量は1.3〜2.0重量%の範囲である必要がある。1.3重量%未満では得られる微細孔繊維の染料吸着性が低下し、優れた深色性を呈する事ができない。一方、2.0重量%を越えるとポリエステルの配向結晶性が低下するため、前述の繊維物性を満足することが困難になる上、ポリエステル自身の耐熱性が低下するために、溶融紡糸段階での熱分解が大きくなるなどの問題が発生するため好ましくない。
さらに、前記紡糸条件を調整して、得られるポリエステル繊維の繊維特性が前記(h)及び(i)を同時に満足させるようにする。また、複屈折率(Δn)が0.07<Δn≦0.12であるように調整することが好ましい。かくして得られる繊維は、撚数2000T/m以上、例えば3100T/mの強撚を施した後、該撚糸を緯糸に用いて布帛とするが、前記の如く繊維の熱応力ピークが140℃以上なので、幅入れを大きくすることができ、得られる布帛のふくらみや厚さといった特性が大きくなって良好な風合いが達成される。
本発明の鮮明性ポリエステル繊維は、その全表面にわたってアルカリ減量処理による微細孔が形成されており、繊維表面における鏡面反射を著しく低減することができるため、深色性と優れた鮮明性を呈する。この微細孔は、繊維軸表面に配向し、度数分布の最大値において繊維軸直角方向の幅が0.1〜0.3μmの範囲であって、繊維軸方向の長さが0.2〜0.3μmのものが好ましい。
ポリエステル組成物を100℃、60分間でオルトクロロフェノールに溶解した希薄溶液を、25℃でウベローデ粘度計を用いて測定した値から求めた。
ヒドラジンヒドラート(抱水ヒドラジン)を用いてポリエステル試料チップを分解し、この分解生成物中のジエチレングリコールの含有量をガスクロマトグラフィー(ヒューレットパッカード社製(HP6850型))を用いて測定した。
ポリエステル組成物を150℃×6時間乾燥させた後、一軸スクリュー型押出機と2400メッシュ金網フィルターを用いて、290℃にて溶融させ25g/minの吐出量で溶融濾過し、フィルターの濾過圧上昇速度を測定した。本測定方法では10MPa/h以下を良とした。
JIS L1013記載の方法に準拠して測定を行った。
アルカリ減量後の布帛を、走査型電子顕微鏡にて4000倍にて観察した。参考例1の方法で得られた繊維表面構造を基準とし、凹凸構造の形成状態を評価した。
色の深みを示す尺度として深色度(K/S)を用いた。サンプル布帛の分光反射率を、島津製作所製RC−330型自記分光光度計にて測定し、下記のクベルカ・ムンクの式により求めた。この値が大きいほど深色効果が大きい事を示す。
K/S=(1−R)2/2R
なお、Rは反射率、Kは吸収計数、Sは散乱計数を示す。
摩擦堅牢度試験用の学振型平面磨耗機を使用して、摩擦布としてポリエチレンテレフタレート100%よりなるジョーゼットを用い、試験布を500gの荷重下で所定回数平面磨耗して、変色の発生の頻度を変褪色用グレースケールで判定した。耐磨耗性が極めて低い場合を1級とし、極めて高い場合を5級とした。実用上4級以上が必要である。
強撚後布帛のぬめり、ふくらみ、こし、はり、しゃりを総合評価し、極めて高い場合を5級とし、極めて低い場合を1級として、4級以上を良とした。
下記の式より求めた。
Δna=(Δn−fc・Δnc0・Xv)/(1−Xv)
なお、Δnは複屈折率を、Xvは結晶化度(密度法)を、fcは結晶部配向度(X線屈折法)を、Δnc0は固有極限値0.212(ポリエステル)を示す。
X線広角回折法によって測定した強度分布曲線において、(010)面、(100)面の半価巾を求め、シェラーの式を用いて結晶子サイズを算出した。
試料に初荷重2.5gをかけセットし、昇温(120秒/300℃)を行って得られる試料の最大応力値から求めた温度である。
ポリエステル組成物サンプルを重水素化トリフルオロ酢酸/重水素化クロロホルム=1/1混合溶媒に溶解後、沈殿を濾過により除き、得られた溶液を日本電子(株)製JEOL A−600 超伝導FT−NMRを用いて核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)を測定した。そのスペクトルパターンから常法に従ってポリエステルの繰り返し単位の化学構造を同定した。またポリエステル組成物の溶液にメタノールを添加しポリエステル成分を沈殿させた後、上澄み液を濃縮して核磁気共鳴スペクトル分析を行うことによりチタン化合物、ホスホン酸化合物の化学構造を同定した。
ポリエステル組成物中のリン金属原子含有量、金属原子含有量は粒状のポリエステル組成物(繊維)サンプルをスチール板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平坦面を有する試験成形体を作成した。この試験成形体を使って蛍光X線装置(理学電機工業株式会社製3270E型)を用いて求めた。触媒としてチタン化合物を使用したものについては、サンプルをオルトクロロフェノールに溶解した後、0.5規定塩酸で抽出操作を行った。この抽出液について日立製作所製Z−8100型原子吸光光度計を用いて定量を行った。ここで0.5規定塩酸抽出後の抽出液中に酸化チタンの分散が確認された場合は遠心分離機で酸化チタン粒子を沈降させた。次に傾斜法により上澄み液のみを回収して、同様の操作を行った。これらの操作によりサンプル中に酸化チタンを含有していても触媒として添加しているポリエステルに可溶性のチタン元素の定量が可能となる。
エステル化反応槽にて、テレフタル酸86部とエチレングリコール40部とを、常法に従ってエステル化反応させオリゴマーを得た。このオリゴマーに、テレフタル酸86部とエチレングリコール40部を65分間かけて連続的に供給し、245℃にてエステル化反応を行った。ついで三酸化アンチモン0.045部を添加して20分後、追加供給したテレフタル酸とエチレングリコールとから生成されるオリゴマー量と等モル量のオリゴマーを重縮合反応槽へ送液した。送液終了後直ちに酢酸カルシウムをポリマー中の酸成分に対して800mmol%を重縮合反応槽に添加した。さらに5分後にジブチルホスフェート(DBP)をポリマー中の酸成分に対して880mmol%を重縮合反応槽に添加した。その後290℃まで昇温し、0.03kPa以下の高真空化にて重縮合反応を行い、固有粘度が0.64dL/gのポリエステルチップを得た。
(い)紡糸条件
紡糸口金温度:295℃
吐出量:44g/min
ポリマー温度:290℃
口金下10mmの温度:280〜290℃
(ろ)冷却条件
冷却開始位置:口金下90mm
冷却風吹き出し長:60cm
冷却風量:0.3m/sec
(は)紡糸ドラフト:120
(に)紡糸引取速度[第1ゴデットローラー(5)の周速]:3400m/min
この際に、図1の第1ゴデットローラー(5)と第2ゴデットローラー(6)との間で、表1に示す延伸倍率で延伸し、第2ゴデットローラー(6)を同表に示す温度で熱セットして得られた原糸(75de/36フィラメント)を、撚数3100T/m、撚止セット温度75℃の加工条件を用いて加工し、緯糸用として使用し、巾148cm、長さ55m、目付け98g/m2の織物を作成した。
得られた黒色布の深色性、磨耗200回後の耐磨耗変色性を評価し、微細孔形成剤の添加量、紡糸引取速度、減量率、繊維特性などと共に表1に示した。さらに風合いの評価結果を表1に併せて示した。またアルカリ減量後のポリエステル繊維表面を走査型電子顕微鏡にて観察を行った。
実施例1において、微細孔形成剤の種類、及びその添加量、紡糸引取速度、減量率を表1に示すように変更するほかは、実施例1と同様にして黒色布を得て、この黒色布について実施例1と同様に評価した。結果を表1に併せて示した。なお比較例12はDBPと酢酸カルシウムの反応生成物をリン化合物、アルカリ金属化合物等の代わりに添加しているので、一般式(I)で表されるリン化合物そのものを添加しているわけではない。
2 糸
3 冷却装置
4 油剤付与装置
5 第1ゴデットローラー
6 第2ゴデットローラー
7 ワインダー
8 インターレースノズル
Claims (1)
- ポリエステル繊維であって、下記一般式(I)で表されるリン化合物と、
アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物とを、下記式(a)及び(b)を同時に満たすように添加して得られる粒子を含有し、更に下記式(c)及び(d)を同時に満たし、
(a)アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物含有量(M)
ポリエステル繊維のポリエステルを構成する全酸成分に対し、アルカリ金属原子及び/又はアルカリ金属原子のモル量として
500mmol%≦M≦1000mmol%
(b)リン化合物と、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の含有モル比(P/M)
アルカリ金属原子及び/又はアルカリ金属原子のモル量と、リン原子のモル量として
0.8≦P/M≦1.5
(c)ポリエステル繊維の固有粘度([η]f)
0.58≦[η]f≦0.80
(d)ジエチレングリコール含有量(DEG)
1.3重量%≦DEG≦2.0重量%
且つ下記式(e)〜(i)の繊維特性を同時に満足するポリエステル繊維。
(e)(100)面の結晶子サイズ(X)
40オングストローム≦X
(f)非晶部配向度(Δna)
0.03≦Δna≦0.09
(g)原糸物性熱応力ピーク温度(ST)
140℃≦ST
(h)10%伸張時の応力(S10)
2.7g/dtex≦S10≦3.2g/dtex
(i)沸水収縮率(BWS)
8.0%≦BWS≦9.0%
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