JP5144832B1 - 非水二次電池 - Google Patents

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Abstract

本発明の非水二次電池は、正極、負極、非水電解質及びセパレータを含み、前記正極は、正極活物質と、導電性ポリマーと、有機シラン化合物と、導電助剤と、バインダとを含有する正極合剤層を含み、前記導電性ポリマーが、ポリチオフェン又はその誘導体であり、前記導電性ポリマーの含有量は、前記正極合剤層の全質量に対して0.05〜0.5質量%であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池等の非水二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池に代表される非水二次電池は、エネルギー密度が高いという特徴から、携帯電話やノート型パーソナルコンピューター等の携帯機器の電源として広く用いられている。携帯機器の高性能化に伴ってリチウムイオン二次電池の高容量化が更に進む傾向にあり、エネルギー密度を更に向上させるための研究・開発が進められている。
一方、最近では非水二次電池の高性能化に伴い、非水二次電池が携帯機器の電源以外の電源としても用いられ始めた。例えば、自動車用やバイク用の電源、ロボット等の移動体用の電源等に非水二次電池が用いられ始めた。非水二次電池を自動車用やバイク用の電源、ロボット等の移動体用の電源等に用いる場合には、更なる高容量化を図る必要がある。
非水二次電池の高容量化を図る対策の一つとして、電極合剤層の厚さを厚くする方法がある。しかし、電極合剤層の厚さを厚くすると、高出力充放電時の容量低下を招く場合がある。これは、電極合剤層の厚さが厚くなるにつれて、集電体との距離が大きくなる活物質が増加するため、電極内の導電性が低下することが原因の一つであると考えられる。一方、電極内の導電性を向上させる方法としては、例えば、特許文献1では、正極合剤層に電子伝導性ポリマーを含有させる方法が提案されている。
また、非水二次電池の高容量化を図る他の対策として、例えば、特許文献2では、正極活物質をシラン化合物で被覆する方法が提案されている。
特開平11−273662号公報(特許第3699589号公報) 特開2002−367610号公報
しかし、特許文献1に記載の方法では、充放電を繰り返すうちに電子伝導性ポリマーが分解し、初期の良好な電池特性を保持することが困難となる問題がある。また、特許文献2に記載の方法では、正極活物質をシラン化合物で被覆しているため、正極活物質の表面の導電性が低下し、高出力充放電時の容量低下を十分に抑制できない問題がある。
本発明は上記問題を解決したもので、高出力充放電特性及び充放電サイクル特性に優れた非水二次電池を提供するものである。

本発明の非水二次電池は、正極、負極、非水電解質及びセパレータを含む非水二次電池であって、前記正極は、正極活物質と、導電性ポリマーと、有機シラン化合物と、導電助剤と、バインダとを含有する正極合剤層を含み、前記有機シラン化合物は、前記正極活物質の表面を被覆しており、前記導電性ポリマーが、ポリチオフェン又はその誘導体であり、前記導電性ポリマーの含有量は、前記正極合剤層の全質量に対して0.05〜0.5質量%であることを特徴とする。
本発明によれば、高出力充放電特性及び充放電サイクル特性に優れた非水二次電池を提供することができる。
図1は、本発明の非水二次電池の一例を示す平面図である。
本発明の非水二次電池は、正極、負極、非水電解質及びセパレータを備えている。また、上記正極は、正極活物質と、導電性ポリマーと、有機シラン化合物と、導電助剤と、バインダとを含有する正極合剤層を含み、上記導電性ポリマーは、ポリチオフェン又はその誘導体であり、上記導電性ポリマーの含有量は、上記正極合剤層の全質量に対して0.05〜0.5質量%である。
本発明の非水二次電池は、ポリチオフェン又はその誘導体(導電性ポリマー)を含む正極合剤層を備えた正極を有しているため、正極合剤層の導電性が向上し、正極合剤層を厚くしても導電性が低下しない。また、本発明の非水二次電池は、有機シラン化合物を含む正極合剤層を備えた正極を有しているため、有機シラン化合物が正極活物質の表面を被覆することにより、充放電を繰り返しても上記導電性ポリマーの分解が抑制される。このように、本発明は、上記導電性ポリマーと上記有機シラン化合物との相乗効果により、高出力充放電特性及び充放電サイクル特性に優れた非水二次電池を提供できる。
〔正極〕
本発明の非水二次電池に係る正極には、例えば、正極活物質、導電性ポリマー、有機シラン化合物、導電助剤、バインダ等を含有する正極合剤層を、集電体の片面又は両面に有する構造のものが使用できる。
<導電性ポリマー>
本発明で用いる導電性ポリマーは、ポリチオフェン又はその誘導体である。ポリチオフェン又はその誘導体は、電子伝導性とリチウムイオン伝導性を兼ね備えている。このため、ポリチオフェン又はその誘導体を正極合剤層に含有させることにより、正極合剤層の導電性が向上する。
上記導電性ポリマーの含有量は、正極合剤層の全質量に対して0.05〜0.5質量%である。この範囲の含有量であれば、正極合剤層の導電性の向上を充分に発揮することができる。
以下、本発明に係るポリチオフェン又はその誘導体を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明に係るポリチオフェン又はその誘導体は、下記一般式(1)で表されるチオフェン骨格の繰り返し単位(α)を有するポリチオフェン又はその誘導体、及び下記一般式(2)で表されるチオフェン骨格の繰り返し単位(β)を有するポリチオフェン又はその誘導体が好ましい。上記ポリチオフェン又はその誘導体は、チオフェン環の3位にエーテル基を有するため、従来のポリチオフェンに比べてリチウムイオン伝導性が向上する。このため、正極合剤層における内部抵抗と電気抵抗が大幅に低下し、出力特性の向上と高速充放電時のサイクル特性の向上が達成できる。また、導電性の観点からは、置換基の立体障害が緩和される下記一般式(2)で表されるチオフェン骨格の繰り返し単位(β)を有するポリチオフェン又はその誘導体がより好ましい。
Figure 0005144832
Figure 0005144832
上記一般式(1)又は(2)において、R1及びR4メチレン基を表わし、OR2及びOR5はオキシエチレン基を表す。また、上記一般式(1)又は(2)において、R3及びR6エチル基を表し、末端のメチル基についてはメチル基の水素がフッ素で置換されたフッ化アルキル基でもよい。フッ化アルキル基としては、水素が1〜3個置換されたフッ化アルキルが挙げられる。また、上記一般式(2)において、 7 及びR 8 は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表し、導電性の観点から好ましいのはメチル基である。更に、上記一般式(1)又は(2)において、n1は1〜10000の整数、n2は0〜5の整数、n3は1〜10000の整数、n4は0〜5の整数をそれぞれ表す。
本発明に係るポリチオフェン又はその誘導体は、それぞれのチオフェン繰り返し単位に相当するモノマーのアニオン重合や酸化重合等の公知の方法で合成することができる。
<有機シラン化合物>
本発明に係る有機シラン化合物は、正極合剤層中で正極活物質の表面を被覆し、充放電を繰り返しても上記導電性ポリマー(ポリチオフェン又はその誘導体)の分解を抑制することができる。このため、上記導電性ポリマーを正極合剤層に含有させることによる正極合剤層の導電性の向上効果を充放電を繰り返しても維持できる。
上記有機シラン化合物の含有量は、正極合剤層の全質量に対して0.05〜3.0質量%であることが好ましい。この範囲の含有量であれば、上記導電性ポリマーの分解抑制効果を充分に発揮することがきる。
上記有機シラン化合物としては、例えば、X1−Si(OR13やX2−SiR2(OR32の一般式で表わされる化合物が挙げられる。ここで、上記一般式中、R1、R2及びR3は、−CH3、−C25又は−C37を表し、R2とR3とは同じでもよく、異なっていてもよい。また、上記一般式中、X1及びX2は各種官能基を表し、−Si(OR13や−SiR2(OR32であってもよい。
上記有機シラン化合物としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有する有機シラン化合物;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有する有機シラン化合物;p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基を有する有機シラン化合物;3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクロキシ基を有する有機シラン化合物;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシ基を有する有機シラン化合物;N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等のアミノ基を有する有機シラン化合物;3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を有する有機シラン化合物;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピル基を有する有機シラン化合物;3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有する有機シラン化合物;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有する有機シラン化合物;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有する有機シラン化合物;などが挙げられる。
上記有機シラン化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記有機シラン化合物の中でも、沸点が200℃以上のものがより好ましい。沸点が200℃以下のものは正極合剤層作製中において揮発する虞があり、有機シラン化合物を使用することによる効果が小さくなることがある。
<正極活物質>
上記正極に用いる正極活物質は、構成元素としてリチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含み、且つ層状構造を有するリチウム含有複合酸化物であることが好ましい。Ni及びCoは電池の容量向上に寄与し、Mnはリチウム含有複合酸化物の熱的安定性向上に寄与する。
本発明で使用される上記リチウム含有複合酸化物には、例えば、高電位安定性といった正極活物質における他の特性も鑑み、特に、下記一般組成式(3)で表されるものを使用することが好ましい。
Li1+yMO2 (3)
但し、上記一般組成式(3)において、−0.15≦y≦0.15であり、且つ、Mは、Ni、Co及びMnを含む元素群を示し、上記元素群Mの全元素数に対する、上記元素群Mに含まれるNi、Co及びMnの元素数の割合を、それぞれa(mol%)、b(mol%)及びc(mol%)としたときに、25≦a≦90、5≦b≦35、5≦c≦35及び10≦b+c≦70で表される。
上記リチウム含有複合酸化物を表す上記一般組成式(3)における元素群Mの全元素数を100mol%としたとき、Niの割合aは、リチウム含有複合酸化物の容量向上を図る観点から、25mol%以上とすることが好ましく、50mol%以上とすることがより好ましい。但し、元素群M中のNiの割合が多すぎると、例えば、CoやMnの量が減って、これらによる効果が小さくなる虞がある。よって、上記リチウム含有複合酸化物を表す上記一般組成式(3)における元素群Mの全元素数を100mol%としたとき、Niの割合aは、90mol%以下とすることが好ましく、70mol%以下とすることがより好ましい。
また、Coはリチウム含有複合酸化物の容量に寄与し、正極合剤層における充填密度向上にも作用する一方で、多すぎるとコスト増大や安全性低下を引き起こす虞もある。よって、上記リチウム含有複合酸化物を表す上記一般組成式(3)における元素群Mの全元素数を100mol%としたとき、Coの割合bは、5mol%以上35mol%以下とすることが好ましい。
また、上記リチウム含有複合酸化物においては、上記一般組成式(3)における元素群Mの全元素数を100mol%としたとき、Mnの割合cを、5mol%以上35mol%以下とすることが好ましい。上記リチウム含有複合酸化物に上記のような量でMnを含有させ、結晶格子中に必ずMnを存在させることによって、上記リチウム含有複合酸化物の熱的安定性を高めることができ、より安全性の高い電池を構成することが可能となる。
更に、上記リチウム含有複合酸化物において、Coを含有させることによって、電池の充放電でのLiのドープ及び脱ドープに伴うMnの価数変動を抑制し、Mnの平均価数を4価近傍の値に安定させ、充放電の可逆性をより高めることができる。よって、このようなリチウム含有複合酸化物を使用することで、より充放電サイクル特性に優れた電池を構成することが可能となる。
また、上記リチウム含有複合酸化物において、CoとMnとを併用することによる上記の効果を良好に確保する観点から、上記一般組成式(3)における元素群Mの全元素数を100mol%としたとき、Coの割合bとMnの割合cとの和b+cを、10mol%以上70mol%以下とすることが好ましく、10mol%以上50mol%以下とすることがより好ましい。
<バインダ>
上記正極に用いるバインダとしては、電池内で化学的に安定なものであれば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用できる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、又は、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体及びそれら共重合体のNaイオン架橋体等の1種又は2種以上を使用できる。
上記バインダの含有量は、正極合剤層の全質量に対して5.0質量%以下が好ましく、より好ましくは4.0質量%以下である。正極合剤層中のバインダ量が多すぎると、正極合剤層と集電体との密着性が高くなりすぎて、この正極を用いた巻回電極体の内周側において、正極合剤層に亀裂等の欠陥が生じやすくなる。
また、正極の容量向上の観点からは、正極合剤層中のバインダ量を減らして、正極活物質の含有量を高めることが好ましいが、正極合剤層中のバインダ量が少なすぎると、正極合剤層の柔軟性が低下して、この正極を用いた巻回電極体の形状(特に外周側の形状)が悪化し、正極の生産性、更にはこれを用いた電池の生産性が損なわれる虞がある。よって、上記バインダの含有量は、正極合剤層の全質量に対して0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは1.0質量%以上である。
<導電助剤>
上記正極に用いる導電助剤としては、電池内で化学的に安定なものであればよい。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等のグラファイト;アセチレンブラック、ケッチェンブラック(商品名)、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維;アルミニウム粉等の金属粉末;フッ化炭素;酸化亜鉛;チタン酸カリウム等からなる導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体等の有機導電性材料;などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、導電性の高いグラファイトと、吸液性に優れたカーボンブラックが好ましい。また、導電助剤の形態としては、一次粒子に限定されず、二次凝集体や、チェーンストラクチャー等の集合体の形態のものも用いることができる。このような集合体の方が、取り扱いが容易であり、生産性が良好となる。
上記導電助剤の含有量としては、上記導電助剤の含有量を正極合剤層の全質量に対してA質量%とし、前述のバインダの含有量を正極合剤層の全質量に対してB質量%とすると、A/B≧1の関係が成立することが好ましい。この範囲の含有量であれば、正極合剤層の導電性の向上を充分に発揮することができる。
<集電体>
上記正極に用いる集電体としては、従来から知られているリチウムイオン二次電池の正極に使用されているものと同様のものが使用でき、例えば、厚さが10〜30μmのアルミニウム箔が好ましい。
<正極の製造方法>
上記正極は、例えば、前述した正極活物質、導電性ポリマー、有機シラン化合物、導電助剤及びバインダを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶剤に分散させたペースト状やスラリー状の正極合剤含有組成物を調製し(但し、バインダは溶剤に溶解していてもよい。)、これを集電体の片面又は両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダ処理を施す工程を経て製造することができる。正極の製造方法は、上記の方法に制限されるわけではなく、他の製造方法で製造することもできる。
<正極合剤層>
上記正極合剤層の厚さは、カレンダ処理後において、集電体の片面あたり、70〜300μmであることが好ましい。上記正極合剤層の厚さを上記範囲に設定し、出来るだけ厚くすることにより、非水二次電池の高容量化を図ることができる。
〔負極〕
本発明の非水二次電池に係る負極には、例えば、負極活物質、バインダ及び必要に応じて導電助剤等を含む負極合剤層を、集電体の片面又は両面に有する構造のものが使用できる。
<負極活物質>
上記負極に用いる負極活物質には、従来から知られているリチウムイオン二次電池に用いられている負極活物質、即ち、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な材料であれば特に制限はない。例えば、グラファイト、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維等の、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素系材料の1種又は2種以上の混合物が負極活物質として用いられる。また、シリコン(Si)、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)等の元素及びその合金、リチウム含有窒化物又はリチウム含有酸化物等のリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金も負極活物質として用いることができる。中でも、負極活物質としては、シリコンと酸素とを構成元素に含むSiOxで表される材料が好ましい。
SiOxは、Siの微結晶又は非晶質相を含んでいてもよく、この場合、SiとOの原子比は、Siの微結晶又は非晶質相のSiを含めた比率となる。即ち、SiOxには、非晶質のSiO2マトリックス中に、Si(例えば、微結晶Si)が分散した構造のものが含まれ、この非晶質のSiO2と、その中に分散しているSiを合わせて、上記原子比xが0.5≦x≦1.5を満足していればよい。例えば、非晶質のSiO2マトリックス中に、Siが分散した構造で、SiO2とSiのモル比が1:1の材料の場合、x=1であるので、構造式としてはSiOで表記される。このような構造の材料の場合、例えば、X線回折分析では、Si(微結晶Si)の存在に起因するピークが観察されない場合もあるが、透過型電子顕微鏡で観察すると、微細なSiの存在が確認できる。
上記SiOxは、炭素材料と複合化した複合体であることが好ましく、例えば、SiOxの表面が炭素材料で被覆されていることが望ましい。通常、SiOxは導電性が乏しいため、これを負極活物質として用いる際には、良好な電池特性確保の観点から、導電性材料(導電助剤)を使用し、負極内におけるSiOxと導電性材料との混合・分散を良好にして、優れた導電ネットワークを形成する必要がある。SiOxを炭素材料と複合化した複合体であれば、例えば、単にSiOxと炭素材料等の導電性材料とを混合して得られた材料を用いた場合よりも、負極における導電ネットワークが良好に形成される。
即ち、SiOxの比抵抗値は、通常、103〜107kΩcmであるのに対して、上記例示の炭素材料の比抵抗値は、通常、10-5〜10kΩcmであり、SiOxと炭素材料とを複合化することにより、SiOxの導電性を向上できる。
上記SiOxと炭素材料との複合体としては、上記のように、SiOxの表面を炭素材料で被覆したものの他、SiOxと炭素材料との造粒体等が挙げられる。
上記SiOxとの複合体の形成に用い得る上記炭素材料としては、例えば、低結晶性炭素、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維等の炭素材料が好ましいものとして挙げられる。
上記炭素材料の詳細としては、繊維状又はコイル状の炭素材料、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラックを含む。)、人造黒鉛、易黒鉛化炭素及び難黒鉛化炭素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の材料が好ましい。繊維状又はコイル状の炭素材料は、導電ネットワークを形成し易く、且つ表面積の大きい点において好ましい。カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラックを含む。)、易黒鉛化炭素及び難黒鉛化炭素は、高い電気伝導性、高い保液性を有しており、更に、SiOx粒子が膨張・収縮しても、その粒子との接触を保持し易い性質を有している点において好ましい。
上記例示の炭素材料の中でも、SiOxとの複合体が造粒体である場合に用いるものとしては、繊維状の炭素材料が特に好ましい。繊維状の炭素材料は、その形状が細い糸状であり柔軟性が高いために電池の充放電に伴うSiOxの膨張・収縮に追従でき、また、嵩密度が大きいために、SiOx粒子と多くの接合点を持つことができるからである。繊維状の炭素としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ等が挙げられ、これらの何れを用いてもよい。
上記負極にSiOxと炭素材料との複合体を使用する場合、SiOxと炭素材料との比率は、炭素材料との複合化による作用を良好に発揮させる観点から、SiOx:100質量部に対して、炭素材料が、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。また、上記複合体において、SiOxと複合化する炭素材料の比率が多すぎると、負極合剤層中のSiOx量の低下に繋がり、高容量化の効果が小さくなる虞があることから、SiOx:100質量部に対して、炭素材料は、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましい。
上記のSiOxと炭素材料との複合体は、例えば下記の方法によって得ることができる。
上記SiOxの表面を炭素材料で被覆して複合体とする場合には、例えば、SiOx粒子と炭化水素系ガスとを気相中にて加熱して、炭化水素系ガスの熱分解により生じた炭素を、粒子の表面上に堆積させる。このように、気相成長(CVD)法によれば、炭化水素系ガスがSiOx粒子の隅々にまで行き渡り、粒子の表面に導電性を有する炭素材料を含む薄くて均一な皮膜(炭素材料被覆層)を形成できることから、少量の炭素材料によってSiOx粒子に均一性よく導電性を付与できる。
上記炭素材料で被覆されたSiOxの製造において、CVD法の処理温度(雰囲気温度)については、炭化水素系ガスの種類によっても異なるが、通常、600〜1200℃が適当であり、中でも、700℃以上であることが好ましく、800℃以上であることが更に好ましい。処理温度が高い方が不純物の残存が少なく、且つ導電性の高い炭素を含む被覆層を形成できるからである。
上記炭化水素系ガスの液体ソースとしては、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレン等を用いることができるが、取り扱い易いトルエンが特に好ましい。これらを気化させる(例えば、窒素ガスでバブリングする)ことにより炭化水素系ガスを得ることができる。また、メタンガスやアセチレンガス等を用いることもできる。
また、SiOxと炭素材料との造粒体を作製する場合には、SiOxが分散媒に分散した分散液を用意し、それを噴霧し乾燥して、複数の粒子を含む造粒体を作製する。分散媒としては、例えば、エタノール等を用いることができる。分散液の噴霧は、通常、50〜300℃の雰囲気内で行うことが適当である。上記方法以外にも、振動型や遊星型のボールミルやロッドミル等を用いた機械的な方法による造粒方法においても、SiOxと炭素材料との造粒体を作製することができる。
上記負極においては、SiOxを使用することによる高容量化の効果を良好に確保する観点から、負極活物質中におけるSiOxと炭素材料との複合体の含有量が、0.01質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、充放電に伴うSiOxの体積変化による問題をより良好に回避する観点から、負極活物質中におけるSiOxと炭素材料との複合体の含有量が、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
<バインダ>
上記負極に用いるバインダとしては、例えば、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ジアセチルセルロース等の多糖類やそれらの変成体;ポリビニルクロリド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリアミド等の熱可塑性樹脂やそれらの変成体;ポリイミド;エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム、ポリブタジエン、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド等のゴム状弾性を有するポリマーやそれらの変成体;などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
<導電助剤>
上記負極合剤層には、更に導電助剤として導電性材料を添加してもよい。このような導電性材料としては、電池内において化学変化を起こさないものであれば特に限定されず、例えば、カーボンブラック(サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等)、炭素繊維、金属粉(銅、ニッケル、アルミニウム、銀等の粉末)、金属繊維、ポリフェニレン誘導体(特開昭59−20971号公報に記載のもの)等の材料を、1種又は2種以上用いることができる。これらの中でも、カーボンブラックを用いることが好ましく、ケッチェンブラックやアセチレンブラックがより好ましい。
<集電体>
上記負極に用いる集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタル等を用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、機械的強度を確保するために下限は5μmであることが望ましい。
<負極の製造方法>
上記負極は、例えば、前述した負極活物質及びバインダ、更には必要に応じて導電助剤を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)や水等の溶剤に分散させたペースト状やスラリー状の負極合剤含有組成物を調製し(但し、バインダは溶剤に溶解していてもよい。)、これを集電体の片面又は両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダ処理を施す工程を経て製造することができる。負極の製造方法は、上記の製法に制限されるわけではなく、他の製造方法で製造することもできる。
<負極合剤層>
上記負極合剤層においては、負極活物質の総量を80〜99質量%とし、バインダの量を1〜20質量%とすることが好ましい。また、別途導電助剤として導電性材料を使用する場合には、負極合剤層におけるこれらの導電性材料は、負極活物質の総量及びバインダ量が、上記の好適値を満足する範囲で使用することが好ましい。前述の正極合剤層の厚さを考慮して負極合剤層の厚さは、例えば、50〜400μmであることが好ましい。
〔非水電解質〕
本発明の非水二次電池に係る非水電解質としては、リチウム塩を有機溶媒に溶解した非水電解液を使用できる。
上記非水電解液に用いるリチウム塩としては、溶媒中で解離してリチウムイオンを形成し、電池として使用される電圧範囲で分解等の副反応を起こしにくいものであれば特に制限はない。例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6等の無機リチウム塩、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li224(SO32、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiCn2n+1SO3(2≦n≦7)、LiN(RfOSO22〔ここで、Rfはフルオロアルキル基〕等の有機リチウム塩等を用いることができる。
このリチウム塩の非水電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/Lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/Lとすることがより好ましい。
上記非水電解液に用いる有機溶媒としては、上記のリチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解等の副反応を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等の鎖状カーボネート;プロピオン酸メチル等の鎖状エステル;γ−ブチロラクトン等の環状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等の鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル等のニトリル類;エチレングリコールサルファイト等の亜硫酸エステル類;などが挙げられ、これらは2種以上混合して用いることもできる。より良好な特性の電池とするためには、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒等、高い導電率を得ることができる組み合わせで用いることが望ましい。
〔セパレータ〕
本発明の非水二次電池に係るセパレータには、80℃以上(より好ましくは100℃以上)170℃以下(より好ましくは150℃以下)において、その孔が閉塞する性質(即ち、シャットダウン機能)を有していることが好ましく、通常のリチウムイオン二次電池等で使用されているセパレータ、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン製の微多孔膜を用いることができる。セパレータを構成する微多孔膜は、例えば、PEのみを使用したものやPPのみを使用したものであってもよく、また、PE製の微多孔膜とPP製の微多孔膜との積層体であってもよい。
〔電池の形態〕
本発明の非水二次電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶等を外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形等)等が挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。但し、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
(実施例1)
<導電性ポリマーの合成>
下記のようにして導電性ポリマーとしてポリ{3−(2,5−ジオキサヘプチル)チオフェン}を合成した。
(1)第1ステップ:3−ブロモメチルチオフェンの合成
3−メチルチオフェン[東京化成工業社製]5質量部(50.9mmol)、N−ブロモスクシンイミド9.97質量部(56.0mmol)、ジベンゾイルパーオキサイド[東京化成工業社製]0.12質量部(0.50mmol)をベンゼン30質量部に溶解させた後、100℃まで昇温し、4時間反応させた。反応終了後、室温まで放冷し、1Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液30質量部を加え、分液ロートに移した後、水層を分離した。更に、残りの有機層を蒸留水30質量部で2回洗浄した後、ベンゼンを留去し、3−ブロモメチルチオフェンを得た。
(2)第2ステップ:3−(2,5−ジオキサヘプチル)チオフェンの合成
2−エトキシエタノール3.54質量部(39.3mmol)をテトラヒドロフラン(THF)15質量部に溶解させ、そこに水素化ナトリウム(60%パラフィン分散)を加えた。上記溶液に、上記3−ブロモメチルチオフェン6.32質量部(35.7mmol)をTHF15質量部に溶かした溶液を、2時間かけて滴下した後、100℃まで昇温し、4時間反応させた。反応終了後、室温まで放冷し、蒸留水30質量部を加え、分液ロートに移した後、水層を分離した。更に、残りの有機層を蒸留水30質量部で2回洗浄した後、THFを留去し、得られた混合物をシリカゲルカラムで精製することにより、3−(2,5−ジオキサヘプチル)チオフェンを得た。
(3)第3ステップ:2,5−ジブロモ−3−(2,5−ジオキサヘプチル)チオフェンの合成
上記3−(2,5−ジオキサヘプチル)チオフェン5.68質量部(30.5mmol)とN−ブロモスクシンイミド11.9質量部(67.1mmol)をTHFに溶解させ、室温で2時間反応させた。反応後に、酢酸エチル50質量部を加えてグラスフィルターで沈殿物を除去し、THFと酢酸エチルを留去した。得られた混合物をシリカゲルカラムで精製することにより、2,5−ジブロモ−3−(2,5−ジオキサヘプチル)チオフェンを得た。
(4)第4ステップ:ポリ{3−(2,5−ジオキサヘプチル)チオフェン}の合成
上記2,5−ジブロモ−3−(2,5−ジオキサヘプチル)チオフェン8.11質量部(23.6mmol)をTHF30質量部に溶かした後、メチルマグネシウムブロマイドTHF溶液25質量部を加え、75℃で30分反応させた。その反応溶液に[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]−ジクロロニッケル(II)0.127質量部を加え、75℃のまま更に2時間反応させた。反応溶液を室温まで放冷した後、メタノール5質量部を加えた。次に、反応混合物をソックスレー抽出器に移し、メタノール150質量部とヘキサン150質量部を用いて順に洗浄した。最後に残留物をクロロホルム150質量部で抽出し、溶剤を留去して、ポリ{3−(2,5−ジオキサヘプチル)チオフェン}を得た。
<導電性ポリマー・バインダ溶液の調製>
上記で合成した導電性ポリマーであるポリ{3−(2,5−ジオキサヘプチル)チオフェン}:0.23質量部及びバインダであるPVDF:2.3質量部に、NMPを適量添加して撹拌して、導電性ポリマー・バインダ溶液を調製した。
<正極の作製>
正極活物質であるLiNi0.5Co0.2Mn0.32:92.27質量部と、有機シラン化合物であるビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド[信越化学工業社製“KBE-846”]:0.3質量部と、導電助剤であるアセチレンブラック:4.6質量部と、分散剤であるポリビニルピロリドン(PVP):0.3質量部とを混合し、ここに、導電性ポリマーであるポリ{3−(2,5−ジオキサヘプチル)チオフェン}を0.23質量とバインダであるPVDFを2.3質量部とを含む上記導電性ポリマー・バインダ溶液を加え、更に適量のNMPを添加し、プラネタリーミキサーを用いて混合・分散を行い、正極合剤含有スラリーを調製した。次に、正極集電体となる厚さが15μmのアルミニウム箔の片面に、上記正極合剤含有スラリーを一定厚さで塗布し、85℃で乾燥した後、100℃で8時間真空乾燥した。その後、ロールプレス機を用いてプレス処理を施して、プレス処理後の厚さが90μmの正極合剤層を備えた正極を作製した。但し、上記正極合剤含有スラリーをアルミニウム箔に塗布する際には、アルミニウム箔の一部が露出するように未塗布部分を形成した。
次に、この正極を、正極合剤層の面積が30mm×30mmで、且つ、アルミニウム箔の露出部を含むように裁断し、更に、電流を取り出すためのアルミニウム製リード片をアルミニウム箔の露出部に溶接し、リード付き正極を得た。
<負極の作製>
負極活物質であるグラファイト:96質量部、並びに、バインダであるカルボキシメチルセルロース(CMC):2質量部及びスチレン・ブタジエンゴム(SBR):2質量部からなる負極合剤に、適量の水を添加し、プラネタリーミキサーを用いて混合・分散を行い、負極合剤含有スラリーを調製した。次に、負極集電体となる厚さが7μmの銅箔の片面に、上記負極合剤含有スラリーを一定厚さで塗布し、85℃で乾燥した後、100℃で8時間真空乾燥した。その後、ロールプレス機を用いてプレス処理を施して厚さが100μmの負極合剤層を備えた負極を作製した。但し、上記負極合剤含有スラリーを銅箔に塗布する際には、銅箔の一部が露出するように未塗布部分を形成した。
次に、この負極を、負極合剤層の面積が35mm×35mmで、且つ、銅箔の露出部を含むように裁断し、更に、電流を取り出すためのニッケル製リード片を、銅箔の露出部に溶接して、リード付き負極を得た。
<電池の組み立て>
上記リード付き正極と上記リード付き負極とを、PE製微多孔膜セパレータ(厚さ18μm)を介して重ね合わせて積層電極体とし、この積層電極体を、90mm×160mmのアルミニウムラミネートフィルムからなる外装体に収容した。本実施例では、正極活物質の質量/負極活物質の質量の値を1.5とした。続いて、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを2:8の体積比で混合した溶媒に、LiPF6を1.2mol/Lの濃度で溶解させた非水電解液を上記外装体内に1mL注入した後、上記外装体を封止して、ラミネート形非水二次電池を得た。
図1に得られたラミネート形非水二次電池の平面図を示す。図1において、本実施例のラミネート形非水二次電池1は、積層電極体及び非水電解液が、平面視で矩形のアルミニウムラミネートフィルムからなる外装体2内に収容されている。そして、正極外部端子3及び負極外部端子4が、外装体2の同じ辺から引き出されている。
(実施例2)
導電性ポリマーをポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン[クレヴィオス社製“PH500”]に変更した以外は、実施例1と同様にしてラミネート形非水二次電池を作製した。
(実施例3)
<正極の作製>
プレス処理後の正極合剤層の厚さを125μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてリード付き正極を作製した。
<負極の作製>
SiO(平均粒径5.0μm)を沸騰床反応器中で約1000℃に加熱し、加熱された粒子にメタンと窒素ガスからなる25℃の混合ガスを接触させ、1000℃で60分間CVD処理を行った。このようにして上記混合ガスが熱分解して生じた炭素(以下「CVD炭素」ともいう。)をSiO粒子に堆積させて被覆層を形成し、負極活物質である炭素被覆SiOを得た。
被覆層形成前後の質量変化から上記負極活物質の組成を算出したところ、SiO:CVD炭素=85:15(質量比)であった。
次に、負極活物質である上記炭素被覆SiO:5質量部及びグラファイト:85質量部と、導電助剤であるケッチェンブラック(平均粒径0.05μm):2質量部と、バインダであるCMC:4質量部及びSBR:4質量部と、水とを混合して、プラネタリーミキサーを用いて混合・分散を行い、負極合剤含有スラリーを調製した。次に、負極集電体となる厚さが7μmの銅箔の片面に、上記負極合剤含有スラリーを一定厚さで塗布し、85℃で乾燥した後、100℃で8時間真空乾燥した。その後、ロールプレス機を用いてプレス処理を施して厚さが100μmの負極合剤層を備えた負極を作製した。但し、上記負極合剤含有スラリーを銅箔に塗布する際には、銅箔の一部が露出するように未塗布部分を形成した。
次に、この負極を、負極合剤層の面積が35mm×35mmで、且つ、銅箔の露出部を含むように裁断し、更に、電流を取り出すためのニッケル製リード片を、銅箔の露出部に溶接して、リード付き負極を得た。
<電池の組み立て>
上記リード付き正極と上記リード付き負極とを用いた以外は、実施例1と同様にしてラミネート形非水二次電池を作製した。本実施例では、正極活物質の質量/負極活物質の質量の値を2.26とした。
(実施例4)
<正極の作製>
導電性ポリマーをポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン[クレヴィオス社製“PH500”]に変更し、プレス処理後の正極合剤層の厚さを125μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてリード付き正極を作製した。
<負極の作製>
実施例3と同様にしてリード付き負極を作製した。
<電池の組み立て>
上記リード付き正極と上記リード付き負極とを用いた以外は、実施例1と同様にしてラミネート形非水二次電池を作製した。
(実施例5)
プレス処理後の正極合剤層の厚さを70μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてラミネート形非水二次電池を作製した。
(比較例1)
正極合剤含有スラリーの組成について、正極活物質の含有量を92.5質量部に変更し、導電性ポリマーを添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてラミネート形非水二次電池を作製した。
(比較例2)
正極合剤含有スラリーの組成について、正極活物質の含有量を92.8質量部に変更し、導電性ポリマー及び有機シラン化合物を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてラミネート形非水二次電池を作製した。
(比較例3)
正極合剤含有スラリーの組成について、正極活物質の含有量を92.49質量部に変更し、導電性ポリマーの含有量を0.01質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてラミネート形非水二次電池を作製した。
(比較例4)
正極合剤含有スラリーの組成について、正極活物質の含有量を89.5質量部に変更し、導電性ポリマーの含有量を3.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてラミネート形非水二次電池を作製した。
(比較例5)
<正極の作製>
正極合剤含有スラリーの組成について、正極活物質の含有量を92.5質量部に変更し、導電性ポリマーを添加せず、更にプレス処理後の正極合剤層の厚さを125μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてリード付き正極を作製した。
<負極の作製>
実施例3と同様にしてリード付き負極を作製した。
<電池の組み立て>
上記リード付き正極と上記リード付き負極とを用いた以外は、実施例1と同様にしてラミネート形非水二次電池を作製した。
(比較例6)
正極合剤含有スラリーの組成について、正極活物質の含有量を92.8質量部に変更し、導電性ポリマー及び有機シラン化合物を添加せず、更にプレス処理後の正極合剤層の厚さを70μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてラミネート形非水二次電池を作製した。
(比較例7)
正極合剤含有スラリーの組成について、正極活物質の含有量を92.5質量部に変更し、導電性ポリマーを添加せず、更にプレス処理後の正極合剤層の厚さを70μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてラミネート形非水二次電池を作製した。
(比較例8)
正極合剤含有スラリーの組成について、正極活物質の含有量を92.57質量部に変更し、有機シラン化合物を添加せず、更にプレス処理後の正極合剤層の厚さを70μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてラミネート形非水二次電池を作製した。
(比較例9)
正極合剤含有スラリーの組成について、正極活物質の含有量を92.57質量部に変更し、有機シラン化合物を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてラミネート形非水二次電池を作製した。
表1に実施例1〜5及び比較例1〜9の電池の正極合剤層の各成分の含有量を示す。
Figure 0005144832
次に、実施例1〜5及び比較例1〜9の電池を用いて充放電特性と充放電サイクル特性を評価した。
<充放電特性>
各電池について、23℃で、1Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、電流値が0.1CmAになるまで4.2Vで定電圧充電した。その後、1Cの電流値で2.5Vになるまで定電流で放電して、1C放電容量を測定した。
次に、23℃で、2Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、電流値が0.2CmAになるまで4.2Vで定電圧充電した。その後、2Cの電流値で2.5Vになるまで定電流で放電して、2C放電容量を測定した。
<充放電サイクル特性>
各電池について、23℃で、2Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、電流値が0.2CmAになるまで4.2Vで定電圧充電する充電と、2Cの電流値で2.5Vになるまで定電流で行う放電とを行う一連の操作を1サイクルとして充放電を繰り返し、下記式により600サイクル目の容量維持率を算出した。
容量維持率(%)=(600サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
上記の結果を表2に示す。表2では、正極合剤層の厚さも合わせて示した。
Figure 0005144832
表2から、本発明の実施例1〜5の電池を、正極合剤層の厚さが同じ電池同士で、比較例1〜9の電池と比べると、本発明の実施例1〜5の電池は、比較例1〜9の電池と比べて、それぞれ2C放電容量及び容量維持率が高いことが分かる。一方、導電性ポリマーを添加しなかった比較例1、5及び7、導電性ポリマー及び有機シラン化合物を添加しなかった比較例2及び6、導電性ポリマーの含有量を0.01質量部とした比較例3、導電性ポリマーの含有量を3.0質量部とした比較例4、有機シラン化合物を添加しなかった比較例8及び9では、正極合剤層の厚さが同じ実施例1〜5の電池に比べて、それぞれ2C放電容量及び容量維持率が低いことが分かる。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、これらに限定はされない。本発明の範囲は、上述の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。
1 ラミネート形非水二次電池
2 外装体
3 正極外部端子
4 負極外部端子

Claims (8)

  1. 正極、負極、非水電解質及びセパレータを含む非水二次電池であって、
    前記正極は、正極活物質と、導電性ポリマーと、有機シラン化合物と、導電助剤と、バインダとを含有する正極合剤層を含み、
    前記有機シラン化合物は、前記正極活物質の表面を被覆しており、
    前記導電性ポリマーが、ポリチオフェン又はその誘導体であり、
    前記導電性ポリマーの含有量は、前記正極合剤層の全質量に対して0.05〜0.5質量%であることを特徴とする非水二次電池。
  2. 前記ポリチオフェン及びその誘導体は、チオフェン環の3位にエーテル基を有している請求項1に記載の非水二次電池。
  3. 前記有機シラン化合物の含有量は、前記正極合剤層の全質量に対して0.05〜3.0質量%である請求項1に記載の非水二次電池。
  4. 前記バインダの含有量は、前記正極合剤層の全質量に対して0.5〜5.0質量%である請求項1に記載の非水二次電池。
  5. 前記導電助剤の含有量を前記正極合剤層の全質量に対してA質量%とし、前記バインダの含有量を前記正極合剤層の全質量に対してB質量%とすると、A/B≧1の関係が成立する請求項1に記載の非水二次電池。
  6. 前記正極合剤層の厚さが、70〜300μmである請求項1に記載の非水二次電池。
  7. 前記正極活物質は、構成元素としてニッケル、コバルト及びマンガンを含み、且つ層状構造を有するリチウム含有複合酸化物を含む請求項1に記載の非水二次電池。
  8. 前記負極は、負極活物質としてシリコンと酸素とを構成元素に含む材料を含む請求項1に記載の非水二次電池。
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