本発明の非水二次電池に係る正極は、正極活物質を含有する正極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものである。
正極活物質には、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物と、リチウム、ニッケル、コバルトおよびマンガン以外の異種金属元素を含有するリチウムコバルト複合酸化物とを使用する。
前記リチウムコバルト複合酸化物には、平均粒子径A(μm)が10μmを超え30μm以下のリチウムコバルト複合酸化物(A)と、平均粒子径B(μm)が1μm以上10μm以下のリチウムコバルト複合酸化物(B)とを使用するが、このとき、リチウムコバルト複合酸化物(A)の平均粒子径Aとリチウムコバルト複合酸化物(B)の平均粒子径Bとの差「A−B」が5(μm)以上となるようにする。そして、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物には、その平均粒子径をC(μm)としたときに、リチウムコバルト複合酸化物(B)の平均粒子径Bとの関係が、C>Bであるものを使用する。
前記のようなリチウムコバルト複合酸化物(A)およびリチウムコバルト複合酸化物(B)と、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物とを併用することで、正極合剤層内において、リチウムコバルト複合酸化物(A)やリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の粒子同士の隙間に、粒子径の小さなリチウムコバルト複合酸化物(B)を充填できるため、正極合剤層の密度を高めて正極合剤層内の正極活物質量を多くすることが可能となる。
また、正極活物質として使用するリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、例えばLiCoO2よりも高電圧下での安定性が高く、更に、リチウムコバルト複合酸化物(A)およびリチウムコバルト複合酸化物(B)は、前記の異種金属元素の作用によって、例えば、LiCoO2よりも高電圧下での安定性が高められている。よって、本発明の非水二次電池は、4.3V以上の終止電圧で定電流−定電圧充電を行う方法で使用しても、正極活物質の劣化が生じ難い。
本発明の非水二次電池では、これらの作用によって、高容量化を図りつつ、優れた充放電サイクル特性を確保している。
なお、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、特に粒子径が小さい場合に、電池内でのガス発生を引き起こしやすい。しかし、本発明の非水二次電池では、粒径の大きな正極活物質粒子同士の隙間に入る粒子径の小さな正極活物質に、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物よりも電池内でのガス発生を引き起こし難いリチウムコバルト複合酸化物(B)を使用するため、例えば、貯蔵時の膨れの発生を抑制することができる。よって、本発明の非水二次電池は、貯蔵特性も良好となる。
リチウムコバルト複合酸化物(A)の平均粒子径Aは、17μm以上であることがより好ましく、また、24μm以下であることがより好ましい。更に、リチウムコバルト複合酸化物(B)の平均粒子径Bは、5μm以上であることがより好ましく、また、10μm以下であることがより好ましい。
そして、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の平均粒子径は、10μm以上であることが好ましく、11μm以上であることがより好ましく、また、17μm以下であることが好ましく、16μm以下であることがより好ましい。
また、本発明の非水二次電池において、リチウムコバルト複合酸化物(A)の平均粒子径A、リチウムコバルト複合酸化物(B)の平均粒子径B、およびリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の平均粒子径C(μm)は、A≧C>Bの関係を満たしていることが好ましく、A>C>Bの関係を満たしていることがより好ましい。この場合には、正極合剤層の密度向上による正極活物質の充填量を高める効果や、正極活物質の安定性向上に伴う充放電サイクル特性向上効果、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の粒径をある程度大きくすることによる貯蔵特性向上効果が、より良好に確保できるようになる。
本明細書でいうリチウムコバルト複合酸化物(A)、リチウムコバルト複合酸化物(B)およびリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の平均粒子径は、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分布測定装置「HRA9320」を用いて測定した粒度分布の小さい粒子から積分体積を求める場合の体積基準の積算分率における50%径の値(d50)メディアン径である。
本発明の非水二次電池に係る正極に使用するリチウムコバルト複合酸化物においては、コバルトと前記異種金属元素との合計量中の前記異種金属元素の割合は、リチウムコバルト複合酸化物(A)よりもリチウムコバルト複合酸化物(B)の方が大きい。
リチウムコバルト複合酸化物は、粒子径が小さいほど、高電圧下での安定性や熱に対する安定性が劣る。よって、本発明の非水二次電池では、より平均粒子径が小さいリチウムコバルト複合酸化物(B)には、その安定性を高める作用を有している前記異種金属元素を多く含有させることで、電池の充放電や熱に対する安定性を高めて、良好な充放電サイクル特性や貯蔵特性を確保し得るようにしている。
しかしながら、前記異種金属元素は、リチウムコバルト複合酸化物の容量に寄与し得ない成分であるため、リチウムコバルト複合酸化物中の量が多くなると、リチウムコバルト複合酸化物の容量が小さくなる。そこで、より平均粒子径が大きく、安定性がより高いリチウムコバルト複合酸化物(A)においては、前記異種金属元素の含有量を少なくし、この異種金属元素の含有による容量低下を可及的に抑制して、安定性と容量とのバランスをより高めている。
リチウムコバルト複合酸化物(A)およびリチウムコバルト複合酸化物(B)は、下記一般組成式(1)で表されるものであることが好ましい。
Li1+yCozM1 1−zO2 (1)
〔前記一般組成式(1)中、−0.3≦y≦0.3、0.95≦z<1.0であり、M1は、Mg、Zr、AlおよびTiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素である。〕
前記一般組成式(1)中、M1が前記異種金属元素に該当する。リチウムコバルト複合酸化物(A)およびリチウムコバルト複合酸化物(B)の含有する異種金属元素M1は、前記の通り、Mg、Zr、Al、Tiのいずれでもよく、これらのうちの1種または2種以上であればよいが、リチウムコバルト複合酸化物(A)およびリチウムコバルト複合酸化物(B)の高電圧下での安定性や熱安定性を高める作用がより良好であることから、Mgおよび/またはZrであることが、より好ましい。
なお、リチウムコバルト複合酸化物(A)およびリチウムコバルト複合酸化物(B)において、Coは容量向上に寄与する成分である一方で、異種金属元素M1は容量向上に寄与し得ない。よって、リチウムコバルト複合酸化物(A)およびリチウムコバルト複合酸化物(B)を表す前記一般組成式(1)においては、これらの容量を高く維持する観点から、Coの量zを、0.95以上とすることが好ましい。また、前記一般組成式(1)において、Coの量zは、1.0未満であるが、異種金属元素M1を含有することによる前記の効果をより良好に確保する観点から、異種金属元素M1の量「1−z」は、0.005以上であることがより好ましく、よって、Coの量zは、0.995以下であることがより好ましい。
リチウムコバルト複合酸化物(A)およびリチウムコバルト複合酸化物(B)が、前記一般組成式(1)で表されるものである場合、リチウムコバルト複合酸化物(A)とリチウムコバルト複合酸化物(B)とは、異種金属元素M1として、同じ元素を含有していても、異なる元素を含有していてもよく、リチウムコバルト複合酸化物(A)の含有する異種金属元素M1の量を「1−z1」とし、リチウムコバルト複合酸化物(B)の含有する異種金属元素M1の量を「1−z2」としたときに、(1−z1)<(1−z2)の関係を満たしていればよい。より具体的には、「1−z1」は、0.01以上であることが更に好ましく、また、0.02以下であることが更に好ましい。そして、「1−z2」は、0.02以上であることが更に好ましく、また、0.03以下であることが更に好ましい。
リチウムコバルト複合酸化物(A)およびリチウムコバルト複合酸化物(B)は、特に化学量論比に近い組成にときに、その真密度が大きくなり、より高いエネルギー体積密度を有する材料となるが、具体的には、前記組成式において、−0.3≦y≦0.3とすることが好ましく、yの値をこのように調節することで、真密度および充放電時の可逆性を高めることができる。
リチウムコバルト複合酸化物(A)およびリチウムコバルト複合酸化物(B)は、Li含有化合物(水酸化リチウムなど)、Co含有化合物(硫酸コバルトなど)、および異種金属元素M1を含有する化合物(酸化物、水酸化物、硫酸塩など)を混合し、この原料混合物を焼成するなどして合成することができる。なお、より高い純度でリチウムコバルト複合酸化物(A)およびリチウムコバルト複合酸化物(B)を合成するには、Coおよび異種金属元素M1を含む複合化合物(水酸化物、酸化物など)とLi含有化合物などとを混合し、この原料混合物を焼成することが好ましい。
リチウムコバルト複合酸化物(A)およびリチウムコバルト複合酸化物(B)を合成するための原料混合物の焼成条件は、例えば、800〜1050℃で1〜24時間とすることができるが、一旦焼成温度よりも低い温度(例えば、250〜850℃)まで加熱し、その温度で保持することにより予備加熱を行い、その後に焼成温度まで昇温して反応を進行させることが好ましい。予備加熱の時間については特に制限はないが、通常、0.5〜30時間程度とすればよい。また、焼成時の雰囲気は、酸素を含む雰囲気(すなわち、大気中)、不活性ガス(アルゴン、ヘリウム、窒素など)と酸素ガスとの混合雰囲気、酸素ガス雰囲気などとすることができるが、その際の酸素濃度(体積基準)は、15%以上であることが好ましく、18%以上であることが好ましい。
本発明の非水二次電池の有する正極に係る正極合剤層を形成するに際しては、リチウムコバルト複合酸化物(A)とリチウムコバルト複合酸化物(B)との合計を100質量%としたとき、リチウムコバルト複合酸化物(A)の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、また、100質量%未満であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
本発明の非水二次電池に係る正極に使用するリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物としては、下記一般組成式(2)で表されるものであることが好ましい。
Li1+sM2O2 (2)
〔前記一般組成式(2)中、−0.3≦s≦0.3であり、M2は、少なくともNi、CoおよびMnを含む3種以上の元素群であり、M2を構成する各元素中で、Ni、CoおよびMnの割合(mol%)を、それぞれa、bおよびcとしたときに、30<a<65、5<b<35、15<c<50である。〕
前記一般組成式(2)で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物において、Niは、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の容量向上に寄与する成分であり、元素群M2の全元素数を100mol%としたときに、Niの割合aは、30mol%を超えていることが好ましく、50mol%以上であることがより好ましい。また、前記一般組成式(2)で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物において、Ni以外の元素を含有することによる効果を良好に確保する観点から、元素群M2の全元素数を100mol%としたときに、Niの割合aは、65mol%未満であることが好ましく、60mol%以下であることがより好ましい。
前記一般組成式(2)で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物において、Coも、Niと同様にリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の容量向上に寄与する成分であり、正極合剤層における充填密度向上にも作用する一方で、多すぎるとコスト増大や安全性低下を引き起こす虞もある。これらの理由に加えて、後述するMnの平均価数の安定化作用を良好に確保する観点から、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を表す前記一般組成式(2)における元素群Mの全元素数を100mol%としたとき、Coの割合bは、5mol%を超えていることが好ましく、20mol%以上であることがより好ましく、また、35mol%未満であることが好ましく、30mol%以下であることがより好ましい。
更に、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物においては、前記一般組成式(2)における元素群M2の全元素数を100mol%としたとき、Mnの割合cが、15mol%を超えていることが好ましく、20mol%以上であることがより好ましく、また、50mol%未満であることが好ましく、30mol%以下であることがより好ましい。リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物に前記のような量でMnを含有させ、結晶格子中に必ずMnを存在させることによって、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の熱的安定性を高めることができ、より安全性の高い電池を構成することが可能となる。
更に、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物において、MnとともにCoを含有していることで、電池の充放電でのLiのドープおよび脱ドープに伴うMnの価数変動を抑制するようにCoが作用するため、Mnの平均価数を4価近傍の値に安定させて、充放電の可逆性をより高めることができる。よって、このようなリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を使用することで、より充放電サイクル特性に優れた電池を構成することが可能となる。
リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物においては、元素群M2が、Ni、CoおよびMnのみで構成されていてもよいが、これらの元素とともに、Mg、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Al、Si、Ga、GeおよびSnよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含んでいてもよい。ただし、元素群M2の全元素数を100mol%としたときの、Mg、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Al、Si、Ga、GeおよびSnの合計割合dは、5mol%以下であることが好ましく、1mol%以下であることがより好ましい。元素群M2におけるNi、CoおよびMn以外の元素は、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物中に均一に分布していてもよく、また、粒子表面などに偏析していてもよい。
前記の組成を有するリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、その真密度が4.55〜4.95g/cm3と大きな値になり、高い体積エネルギー密度を有する材料となる。なお、Mnを一定範囲で含むリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の真密度は、その組成により大きく変化するが、前記のような狭い組成範囲では構造が安定化され、均一性を高めることができるため、例えばLiCoO2の真密度に近い大きな値となるものと考えられる。また、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の質量当たりの容量を大きくすることができ、可逆性に優れた材料とすることができる。
前記リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、特に化学量論比に近い組成のときに、その真密度が大きくなるが、具体的には、前記一般組成式(2)において、−0.3≦s≦0.3とすることが好ましく、sの値をこのように調整することで、真密度および可逆性を高めることができる。sは、−0.05以上0.05以下であることがより好ましく、この場合には、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の真密度を4.6g/cm3以上と、より高い値にすることができる。
前記一般組成式(2)で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、Li含有化合物(水酸化リチウムなど)、Ni含有化合物(硫酸ニッケルなど)、Co含有化合物(硫酸コバルトなど)、Mn含有化合物(硫酸マンガンなど)、および元素群M2に含まれるその他の元素を含有する化合物(酸化物、水酸化物、硫酸塩など)を混合し、焼成するなどして製造することができる。また、より高い純度でリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を合成するには、元素群M2に含まれる複数の元素を含む複合化合物(水酸化物、酸化物など)とLi含有化合物とを混合し、焼成することが好ましい。
焼成条件は、例えば、800〜1050℃で1〜24時間とすることができるが、一旦焼成温度よりも低い温度(例えば、250〜850℃)まで加熱し、その温度で保持することにより予備加熱を行い、その後に焼成温度まで昇温して反応を進行させることが好ましい。予備加熱の時間については特に制限はないが、通常、0.5〜30時間程度とすればよい。また、焼成時の雰囲気は、酸素を含む雰囲気(すなわち、大気中)、不活性ガス(アルゴン、ヘリウム、窒素など)と酸素ガスとの混合雰囲気、酸素ガス雰囲気などとすることができるが、その際の酸素濃度(体積基準)は、15%以上であることが好ましく、18%以上であることが好ましい。
本発明の非水二次電池の有する正極に係る正極合剤層を形成するに際しては、リチウムコバルト複合酸化物(A)とリチウムコバルト複合酸化物(B)とリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物との合計を100質量%としたとき、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の含有率は、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、また、45質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
正極活物質には、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物(A)およびリチウムコバルト複合酸化物(B)と共に、他の活物質を使用することができる。このような他の活物質としては、例えば、LiCoO2;LiMnO2、Li2MnO3などのリチウムマンガン酸化物;LiMn2O4、Li4/3Ti5/3O4などのスピネル構造のリチウム含有複合酸化物;LiFePO4などのオリビン構造のリチウム含有複合酸化物;前記の酸化物を基本組成とし各種元素で置換した酸化物;などが例示でき、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。
ただし、本発明の効果を良好に確保する観点からは、正極活物質全量中における前記他の活物質の含有率は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
正極合剤層は、通常、正極活物質の他に、バインダや導電助剤を含有している。
正極のバインダとしては、非水二次電池内で化学的に安定なものであれば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、または、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体およびそれら共重合体のNaイオン架橋体などが挙げられ、これらを1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、非水二次電池内での安定性や非水二次電池の特性などを考慮すると、PVDF、PTFE、PHFPが好ましく、また、これらを併用したり、これらのモノマーにより形成される共重合体を用いたりしてもよい。
正極の導電助剤としては、非水二次電池内で化学的に安定なものであればよい。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛質炭素材料;アセチレンブラック、ケッチェンブラック(商品名)、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;アルミニウム粉などの金属粉末;フッ化炭素;酸化亜鉛;チタン酸カリウムなどからなる導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料;などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、導電性の高い黒鉛と、吸液性に優れたカーボンブラックが好ましい。また、導電助剤の形態としては、一次粒子に限定されず、二次凝集体や、チェーンストラクチャーなどの集合体の形態のものも用いることができる。このような集合体の方が、取り扱いが容易であり、生産性が良好となる。
正極は、例えば、正極活物質やバインダ、導電助剤などを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤に添加してペースト状やスラリー状の正極合剤含有組成物を調製し、これを種々の塗工方法によって集電体上に塗布し、乾燥し、更にプレス処理によって正極合剤層の厚みや密度を調整する工程を経て製造することができる。
正極合剤含有組成物を集電体上に塗布する際の塗工方法としては、例えば、ドクターブレードを用いた基材引き上げ方式;ダイコータ、コンマコータ、ナイフコータなどを用いたコータ方式;スクリーン印刷、凸版印刷などの印刷方式:などを採用することができる。
正極合剤層においては、正極活物質を80〜99質量%とし、バインダを0.5〜10質量%とし、導電助剤を0.5〜10質量%とすることが好ましい。また、正極合剤層の厚みは、集電体の片面当たり、15〜200μmであることが好ましい。
また、正極合剤層は、前記の通り、小粒径のリチウムコバルト複合酸化物(B)を、比較的粒径の大きなリチウムコバルト複合酸化物(A)やリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物と共に使用するものであるため、正極合剤層の密度を、例えば、3.6g/cm3以上、好ましくは3.7g/cm3以上、より好ましくは3.8g/cm3以上と良好に高めて、正極合剤層中の活物質の充填量を多くすることができる。ただし、正極合剤層の密度が高すぎると、例えば非水電解液の浸透性が悪くなって、高容量化の効果が小さくなる虞がある。よって、正極合剤層の密度は、4g/cm3以下であることが好ましい。
本明細書でいう正極合剤層の密度は、以下の測定方法により求められる値である。正極を所定面積で切り取り、その質量を、最小目盛り1mgの電子天秤を用いて測定し、この質量から集電体の質量を差し引いて正極合剤層の質量を算出する。また、正極の全厚を最小目盛り1μmのマイクロメーターで10点測定し、この厚みから集電体の厚みを差し引いた値の平均値と面積から正極合剤層の体積を算出し、この体積で前記の正極合剤層の質量を割ることにより、正極合剤層の密度を算出する。
正極の集電体の材質は、構成された非水二次電池において化学的に安定な電子伝導体であれば特に限定されない。例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、炭素、導電性樹脂などの他に、アルミニウム、アルミニウム合金またはステンレス鋼の表面に炭素層またはチタン層を形成した複合材などを用いることができる。これらの中でも、アルミニウムまたはアルミニウム合金が特に好ましい。これらは、軽量で電子伝導性が高いからである。正極の集電体には、例えば、前記材質からなるフォイル、フィルム、シート、ネット、パンチングシート、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体などが使用される。また、集電体の表面に、表面処理を施して凹凸を付けることもできる。集電体の厚みは特に限定されないが、通常1〜500μmである。
なお、正極は、前記の製造方法により製造されたものに限定されず、他の製造方法により製造されたものであってもよい。また、正極には、必要に応じて、非水二次電池内の他の部材と電気的に接続するためのリード体を、常法に従って形成してもよい。
本発明の非水二次電池は、正極、負極、非水電解液およびセパレータを有しており、正極が前記の正極であればよく、その他の構成および構造については特に制限はなく、従来から知られているリチウムイオン二次電池などの非水二次電池で採用されている各種構成および構造を適用することできる。
負極には、例えば、負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて導電助剤を含有する負極合剤からなる負極合剤層を、集電体の片面または両面に有する構造のものが使用できる。
負極活物質としては、例えば、黒鉛質炭素材料〔鱗片状黒鉛などの天然黒鉛;熱分解炭素類、メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの易黒鉛化炭素を2800℃以上で黒鉛化処理した人造黒鉛;など〕、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、リチウムと合金化可能な金属(Si、Snなど)またはその合金、酸化物などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。
前記の負極活物質の中でも、特に非水二次電池の高容量化を図るには、SiとOとを構成元素に含む材料(ただし、Siに対するOの原子比xは、0.5≦x≦1.5である。以下、当該材料を「SiOx」という)を用いることが好ましい。
SiOxは、Siの微結晶または非晶質相を含んでいてもよく、この場合、SiとOの原子比は、Siの微結晶または非晶質相のSiを含めた比率となる。すなわち、SiOxには、非晶質のSiO2マトリックス中に、Si(例えば、微結晶Si)が分散した構造のものが含まれ、この非晶質のSiO2と、その中に分散しているSiを合わせて、前記の原子比xが0.5≦x≦1.5を満足していればよい。例えば、非晶質のSiO2マトリックス中に、Siが分散した構造で、SiO2とSiのモル比が1:1の材料の場合、x=1であるので、構造式としてはSiOで表記される。このような構造の材料の場合、例えば、X線回折分析では、Si(微結晶Si)の存在に起因するピークが観察されない場合もあるが、透過型電子顕微鏡で観察すると、微細なSiの存在が確認できる。
そして、SiOxは、炭素材料と複合化した複合体であることが好ましく、例えば、SiOxの表面が炭素材料で被覆されていることが望ましい。SiOxは導電性が乏しいため、これを負極活物質として用いる際には、良好な電池特性確保の観点から、導電性材料(導電助剤)を使用し、負極内におけるSiOxと導電性材料との混合・分散を良好にして、優れた導電ネットワークを形成する必要がある。SiOxを炭素材料と複合化した複合体であれば、例えば、単にSiOxと炭素材料などの導電性材料とを混合して得られた材料を用いた場合よりも、負極における導電ネットワークが良好に形成される。
SiOxと炭素材料との複合体としては、前記のように、SiOxの表面を炭素材料で被覆したものの他、SiOxと炭素材料との造粒体などが挙げられる。
また、前記の、SiOxの表面を炭素材料で被覆した複合体を、更に導電性材料(炭素材料など)と複合化して用いることで、負極において更に良好な導電ネットワークの形成が可能となるため、より高容量で、より電池特性(例えば、充放電サイクル特性)に優れた非水二次電池の実現が可能となる。炭素材料で被覆されたSiOxと炭素材料との複合体としては、例えば、炭素材料で被覆されたSiOxと炭素材料との混合物を更に造粒した造粒体などが挙げられる。
また、表面が炭素材料で被覆されたSiOxとしては、SiOxとそれよりも比抵抗値が小さい炭素材料との複合体(例えば造粒体)の表面が、更に炭素材料で被覆されてなるものも、好ましく用いることができる。前記造粒体内部でSiOxと炭素材料とが分散した状態であると、より良好な導電ネットワークを形成できるため、SiOxを負極活物質として含有する負極を有する非水二次電池において、重負荷放電特性などの電池特性を更に向上させることができる。
SiOxとの複合体の形成に用い得る前記炭素材料としては、例えば、低結晶性炭素、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維などの炭素材料が好ましいものとして挙げられる。
前記炭素材料の詳細としては、繊維状またはコイル状の炭素材料、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラックを含む)、人造黒鉛、易黒鉛化炭素および難黒鉛化炭素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の材料が好ましい。繊維状またはコイル状の炭素材料は、導電ネットワークを形成し易く、かつ表面積の大きい点において好ましい。カーボンブラック(アセチレンブラック,ケッチェンブラックを含む)、易黒鉛化炭素および難黒鉛化炭素は、高い電気伝導性、高い保液性を有しており、さらに、SiOx粒子が膨張収縮しても、その粒子との接触を保持し易い性質を有している点において好ましい。
負極活物質としてSiOxを使用する場合、後述するように黒鉛質炭素材料も負極活物質として併用することが好ましいが、この黒鉛質炭素材料を、SiOxと炭素材料との複合体に係る炭素材料として使用することもできる。黒鉛質炭素材料も、カーボンブラックなどと同様に、高い電気伝導性、高い保液性を有しており、更に、SiOx粒子が膨張収縮しても、その粒子との接触を保持し易い性質を有しているため、SiOxとの複合体形成に好ましく使用することができる。
前記例示の炭素材料の中でも、SiOxとの複合体が造粒体である場合に用いるものとしては、繊維状の炭素材料が特に好ましい。繊維状の炭素材料は、その形状が細い糸状であり柔軟性が高いために電池の充放電に伴うSiOxの膨張収縮に追従でき、また、嵩密度が大きいために、SiOx粒子と多くの接合点を持つことができるからである。繊維状の炭素としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブなどが挙げられ、これらの何れを用いてもよい。
なお、繊維状の炭素材料は、例えば、気相法にてSiOx粒子の表面に形成することもできる。
SiOxの比抵抗値が、通常、103〜107kΩcmであるのに対して、前記例示の炭素材料の比抵抗値は、通常、10−5〜10kΩcmである。また、SiOxと炭素材料との複合体は、粒子表面の炭素材料被覆層を覆う材料層(難黒鉛化炭素を含む材料層)を更に有していてもよい。
負極にSiOxと炭素材料との複合体を使用する場合、SiOxと炭素材料との比率は、炭素材料との複合化による作用を良好に発揮させる観点から、SiOx:100質量部に対して、炭素材料が、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。また、前記複合体において、SiOxと複合化する炭素材料の比率が多すぎると、負極合剤層中のSiOx量の低下に繋がり、高容量化の効果が小さくなる虞があることから、SiOx:100質量部に対して、炭素材料は、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましい。
前記のSiOxと炭素材料との複合体は、例えば下記の方法によって得ることができる。
まず、SiOxを複合化する場合の作製方法について説明する。SiOxが分散媒に分散した分散液を用意し、それを噴霧し乾燥して、複数の粒子を含む複合粒子を作製する。分散媒としては、例えば、エタノールなどを用いることができる。分散液の噴霧は、通常、50〜300℃の雰囲気内で行うことが適当である。前記の方法以外にも、振動型や遊星型のボールミルやロッドミルなどを用いた機械的な方法による造粒方法においても、同様の複合粒子を作製することができる。
なお、SiOxと、SiOxよりも比抵抗値の小さい炭素材料との造粒体を作製する場合には、SiOxが分散媒に分散した分散液中に前記炭素材料を添加し、この分散液を用いて、SiOxを複合化する場合と同様の手法によって複合粒子(造粒体)とすればよい。また、前記と同様の機械的な方法による造粒方法によっても、SiOxと炭素材料との造粒体を作製することができる。
次に、SiOx粒子(SiOx複合粒子、またはSiOxと炭素材料との造粒体)の表面を炭素材料で被覆して複合体とする場合には、例えば、SiOx粒子と炭化水素系ガスとを気相中にて加熱して、炭化水素系ガスの熱分解により生じた炭素を、粒子の表面上に堆積させる。このように、気相成長(CVD)法によれば、炭化水素系ガスが複合粒子の隅々にまで行き渡り、粒子の表面や表面の空孔内に、導電性を有する炭素材料を含む薄くて均一な皮膜(炭素材料被覆層)を形成できることから、少量の炭素材料によってSiOx粒子に均一性よく導電性を付与できる。
炭素材料で被覆されたSiOxの製造において、気相成長(CVD)法の処理温度(雰囲気温度)については、炭化水素系ガスの種類によっても異なるが、通常、600〜1200℃が適当であり、中でも、700℃以上であることが好ましく、800℃以上であることが更に好ましい。処理温度が高い方が不純物の残存が少なく、かつ導電性の高い炭素を含む被覆層を形成できるからである。
炭化水素系ガスの液体ソースとしては、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレンなどを用いることができるが、取り扱い易いトルエンが特に好ましい。これらを気化させる(例えば、窒素ガスでバブリングする)ことにより炭化水素系ガスを得ることができる。また、メタンガスやアセチレンガスなどを用いることもできる。
また、気相成長(CVD)法にてSiOx粒子(SiOx複合粒子、またはSiOxと炭素材料との造粒体)の表面を炭素材料で覆った後に、石油系ピッチ、石炭系のピッチ、熱硬化性樹脂、およびナフタレンスルホン酸塩とアルデヒド類との縮合物よりなる群から選択される少なくとも1種の有機化合物を、炭素材料を含む被覆層に付着させた後、前記有機化合物が付着した粒子を焼成してもよい。
具体的には、炭素材料で被覆されたSiOx粒子(SiOx複合粒子、またはSiOxと炭素材料との造粒体)と、前記有機化合物とが分散媒に分散した分散液を用意し、この分散液を噴霧し乾燥して、有機化合物によって被覆された粒子を形成し、その有機化合物によって被覆された粒子を焼成する。
前記ピッチとしては等方性ピッチを、熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、フラン樹脂、フルフラール樹脂などを用いることができる。ナフタレンスルホン酸塩とアルデヒド類との縮合物としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を用いることができる。
炭素材料で被覆されたSiOx粒子と前記有機化合物とを分散させるための分散媒としては、例えば、水、アルコール類(エタノールなど)を用いることができる。分散液の噴霧は、通常、50〜300℃の雰囲気内で行うことが適当である。焼成温度は、通常、600〜1200℃が適当であるが、中でも700℃以上が好ましく、800℃以上であることが更に好ましい。処理温度が高い方が不純物の残存が少なく、かつ導電性の高い良質な炭素材料を含む被覆層を形成できるからである。ただし、処理温度はSiOxの融点以下であることを要する。
負極活物質にSiOx(好ましくはSiOxと炭素材料との複合体)を使用する場合には、黒鉛質炭素材料も併用することが好ましい。SiOxは、非水二次電池の負極活物質として汎用されている炭素材料に比べて高容量である一方で、電池の充放電に伴う体積変化量が大きいため、SiOxの含有率の高い負極合剤層を有する負極を用いた非水二次電池では、充放電の繰り返しによって負極(負極合剤層)が大きく体積変化して劣化し、容量が低下する(すなわち充放電サイクル特性が低下する)虞がある。黒鉛質炭素材料は、非水二次電池の負極活物質として汎用されており、比較的容量が大きい一方で、電池の充放電に伴う体積変化量がSiOxに比べて小さい。よって、負極活物質にSiOxと黒鉛質炭素材料とを併用することで、SiOxの使用量の低減に伴って電池の容量向上効果が小さくなることを可及的に抑制しつつ、電池の充放電サイクル特性の低下を良好に抑えることができることから、より高容量であり、かつ充放電サイクル特性により優れた非水二次電池とすることが可能となる。
前記のSiOxと共に負極活物質として使用する黒鉛質炭素材料としては、例えば、鱗片状黒鉛などの天然黒鉛;熱分解炭素類、メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの易黒鉛化炭素を2800℃以上で黒鉛化処理した人造黒鉛;などが挙げられる。
負極活物質にSiOxと炭素材料との複合体と、黒鉛質炭素材料とを併用する場合、SiOxを使用することによる高容量化の効果を良好に確保する観点から、全負極活物質中におけるSiOxと炭素材料との複合体の含有率が、0.01質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、充放電に伴うSiOxの体積変化による問題をより良好に回避する観点から、全負極活物質中におけるSiOxと炭素材料との複合体の含有率が、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
負極合剤層に係るバインダおよび導電助剤には、正極合剤層に使用し得るものとして先に例示したものと同じものが使用できる。
負極は、例えば、負極活物質およびバインダ、更には必要に応じて使用される導電助剤を、NMPや水などの溶剤に分散させたペースト状やスラリー状の負極合剤含有組成物を調製し(ただし、バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥した後に、必要に応じてカレンダー処理を施す工程を経て製造される。ただし、負極は、前記の製造方法で製造されたものに限定される訳ではなく、他の方法で製造したものであってもよい。
また、負極には、必要に応じて、非水二次電池内の他の部材と電気的に接続するためのリード体を、常法に従って形成してもよい。
負極合剤層の厚みは、例えば、集電体の片面あたり10〜100μmであることが好ましい。また、負極合剤層の組成としては、例えば、負極活物質を80.0〜99.8質量%とし、バインダを0.1〜10質量%とすることが好ましい。更に、負極合剤層に導電助剤を含有させる場合には、負極合剤層における導電助剤の量を0.1〜10質量%とすることが好ましい。
負極の集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、機械的強度を確保するために下限は5μmであることが望ましい。
本発明の非水二次電池に係るセパレータは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレートや共重合ポリエステルなどのポリエステル;などで構成された多孔質膜であることが好ましい。なお、セパレータは、100〜140℃において、その孔が閉塞する性質(すなわちシャットダウン機能)を有していることが好ましい。そのため、セパレータは、融点、すなわち、JIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が、100〜140℃の熱可塑性樹脂を成分とするものがより好ましく、PEを主成分とする単層の多孔質膜であるか、PEとPPとを2〜5層積層した積層多孔質膜などの多孔質膜を構成要素とする積層多孔質膜であることが好ましい。PEとPPなどのPEより融点の高い樹脂とを混合または積層して用いる場合には、多孔質膜を構成する樹脂としてPEが30質量%以上であることが望ましく、50質量%以上であることがより望ましい。
このような樹脂多孔質膜としては、例えば、従来から知られている非水二次電池などで使用されている前記例示の熱可塑性樹脂で構成された多孔質膜、すなわち、溶剤抽出法、乾式または湿式延伸法などにより作製されたイオン透過性の多孔質膜を用いることができる。
非水電解液には、電解質塩を有機溶媒に溶解させた溶液を使用することができる。溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、燐酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトンなどの非プロトン性有機溶媒が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、これらの2種以上を併用してもよい。また、アミンイミド系有機溶媒や、含イオウまたは含フッ素系有機溶媒なども用いることができる。
非水電解液に係る電解質塩としては、リチウムの過塩素酸塩、有機ホウ素リチウム塩、トリフロロメタンスルホン酸塩などの含フッ素化合物の塩、またはイミド塩などが好適に用いられる。このような電解質塩の具体例としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiCF3CO2、Li2C2F4(SO3)2、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiCnF2n+1SO3(n≧2)、LiN(Rf3OSO2)2〔ここで、Rfはフルオロアルキル基を表す。〕などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、これらの2種以上を併用してもよい。これらの中でも、LiPF6やLiBF4などが、充放電特性が良好なことからより好ましい。これらの含フッ素有機リチウム塩はアニオン性が大きく、かつイオン分離しやすいので前記溶媒に溶解しやすいからである。非水電解液中における電解質塩の濃度は特に限定されないが、通常0.5〜1.7mol/Lである。
また、電池の安全性や充放電サイクル性、高温貯蔵性といった特性を向上させる目的で、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)などのハロゲン置換された環状カーボネート、トリエチルホスホノアセテート(TEPA)などのホスホノアセテート類、ビニレンカーボネート(VC)などのビニレンカーボネート類、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤を非水電解液に加えることもできる。
また、非水電解液には、公知のゲル化剤を添加してゲル状としたもの(ゲル状電解質)を用いることもできる。
本発明の非水二次電池は、例えば、前記の正極と前記の負極とを、前記のセパレータを介して積層した積層電極体や、更にこれを渦巻状に巻回した巻回電極体を作製し、このような電極体と、前記の非水電解液とを、常法に従い外装体内に封入して構成される。電池の形態としては、従来から知られている非水二次電池と同様に、筒形(円筒形や角筒形)の外装缶を使用した筒形電池や、扁平形(平面視で円形や角形の扁平形)の外装缶を使用した扁平形電池、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池などとすることができる。また、外装缶には、スチール製やアルミニウム製のものが使用できる。
本発明の非水二次電池は、正極活物質に、高電圧下での安定性の高いリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物と、LiCoO2よりも高電圧下での安定性を高めたリチウムコバルト複合酸化物(A)およびリチウムコバルト複合酸化物(B)を用いているため、例えば4.3V以上の終止電圧で定電流−定電圧充電を行う方法で繰り返し使用しても、正極活物質の劣化による容量などの低下を抑制することができる。そのため、本発明の非水二次電池は、前記のような条件で充電する方法でも好ましく使用することができ、これにより高容量化を図りつつ、良好な充放電サイクル特性を維持することができる。
本発明の非水二次電池は、携帯電話、ノート型パソコンなどのポータブル電子機器などの各種電子機器の電源用途を始めとして、従来の非水二次電池が適用されている各種用途に好ましく用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
実施例1
<リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の合成>
水酸化ナトリウムの添加によってpHを約12に調整したアンモニア水を反応容器に入れ、これを強攪拌しながら、この中に、硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸マンガンを、それぞれ、2.0mol/dm3、0.8mol/dm3、1.2mol/dm3の濃度で含有する混合水溶液と、25質量%濃度のアンモニア水とを、それぞれ、23cm3/分、6.6cm3/分の割合で、定量ポンプを用いて滴下して、NiとCoとMnとの共沈化合物(球状の共沈化合物)を合成した。なお、この際、反応液の温度は50℃に保持し、また、反応液のpHが12付近に維持されるように、6.4mol/dm3濃度の水酸化ナトリウム水溶液の滴下も同時に行い、更に窒素ガスを1dm3/分の流量でバブリングした。
前記の共沈化合物を水洗、濾過および乾燥させて、NiとCoとMnとを5:2:3のモル比で含有する水酸化物を得た。この水酸化物0.196molと、0.204molのLiOH・H2Oとをエタノール中に分散させてスラリー状にした後、遊星型ボールミルで40分間混合し、室温で乾燥させて混合物を得た。次いで、前記混合物をアルミナ製のるつぼに入れ、2dm3/分のドライエアーフロー中で600℃まで加熱し、その温度で2時間保持して予備加熱を行い、更に900℃に昇温して12時間焼成することにより、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を合成した。
前記のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を水で洗浄した後、大気中(酸素濃度が約20vol%)で、850℃で12時間熱処理し、その後乳鉢で粉砕して粉体とした。粉砕後のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、デシケーター中で保存した。
前記リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物について、その組成分析を、ICP法を用いて以下のように行った。まず、前記リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を0.2g採取して100mL容器に入れた。その後、純水5mL、王水2mL、純水10mLを順に加えて加熱溶解し、冷却後、さらに25倍に希釈してICP(JARRELASH社製「ICP−757」)にて組成を分析した(検量線法)。得られた結果から、前記リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の組成を導出したところ、Li1.02Ni0.5Co0.2Mn0.3O2で表される組成であることが判明した。また、前記リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の平均粒子径は、15μmであった。
<リチウムコバルト複合酸化物(A)の合成>
Co(OH)2とMg(OH)2とAl(OH)3とLi2CO3とをモル比で1.97:0.02:0.01:1.02になるように混合し、この混合物を大気中(酸素濃度が約20vol%)、950℃で12時間熱処理してリチウムコバルト複合酸化物(A)を合成し、その後乳鉢で粉砕して粉体とした。粉砕後のリチウムコバルト複合酸化物(A)は、デシケーター中で保存した。
前記リチウムコバルト複合酸化物(A)について、その組成分析を、ICP法を用いて行ったところLi1.0Co0.985Mg0.01Al0.005O2で表される組成であることが判明した。また、前記リチウムコバルト複合酸化物(A)の平均粒子径は、20μmであった。
<リチウムコバルト複合酸化物(B)の合成>
Co(OH)2とMg(OH)2とAl(OH)3とZrO2とLi2CO3とをモル比で1.946:0.03:0.02:0.004:1.02になるように混合し、この混合物を大気中(酸素濃度が約20vol%)、950℃で12時間熱処理してリチウムコバルト複合酸化物(B)を合成し、その後乳鉢で粉砕して粉体とした。粉砕後のリチウムコバルト複合酸化物(B)は、デシケーター中で保存した。
前記リチウムコバルト複合酸化物(B)について、その組成分析を、ICP法を用いて行ったところLi1.0Co0.973Mg0.015Al0.01Zr0.002O2で表される組成であることが判明した。また、前記リチウムコバルト複合酸化物(A)の平均粒子径は、8μmであった。
<正極の作製>
前記リチウムコバルト複合酸化物(A)と前記リチウムコバルト複合酸化物(B)とを80:20の質量比で混合した混合物:63質量部と、前記リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物:15質量部と、バインダであるPVDFを10質量%の濃度で含むNMP溶液:20質量部と、導電助剤である人造黒鉛:1質量部およびケッチェンブラック:1質量部とを、二軸混練機を用いて混練し、更にNMPを加えて粘度を調節して、正極合剤含有ペーストを調製した。
前記正極合剤含有ペーストを、厚みが15μmのアルミニウム箔(正極集電体)の両面に塗布した後、120℃で12時間の真空乾燥を行って、アルミニウム箔の両面に正極合剤層を形成した。その後、プレス処理を行って、正極合剤層の厚さおよび密度を調節し、アルミニウム箔の露出部にニッケル製のリード体を溶接して、長さ375mm、幅43mmの帯状の正極を作製した。得られた正極における正極合剤層は、片面あたりの厚みが55μmであり、正極合剤層の密度は3.85g/cm3であった。
<負極の作製>
負極活物質である平均粒子径D50%が8μmであるSiO表面を炭素材料で被覆した複合体(複合体における炭素材料の量が10質量%)と、平均粒子径D50%が16μmである黒鉛とを、SiO表面を炭素材料で被覆した複合体の量が3.75質量%となる量で混合した混合物:97.5質量部、バインダであるSBR:1.5質量部、および増粘剤であるカルボキシメチルセルロース:1質量部に、水を加えて混合し、負極合剤含有ペーストを調製した。
前記負極合剤含有ペーストを、厚みが8μmの銅箔(負極集電体)の両面に塗布した後、120℃で12時間の真空乾燥を行って、銅箔の両面に負極合剤層を形成した。その後、プレス処理を行って、負極合剤層の厚さおよび密度を調節し、銅箔の露出部にニッケル製のリード体を溶接して、長さ380mm、幅44mmの帯状の負極を作製した。得られた負極における負極合剤層は、片面あたりの厚みが65μmであった。
<電池の組み立て>
前記帯状の正極を、厚みが16μmの微孔性ポリエチレンセパレータ(空孔率:41%)を介して前記帯状の負極に重ね、渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状巻回構造の電極巻回体とし、この電極巻回体をポリプロピレン製の絶縁テープで固定した。次に、外寸が厚さ4.0mm、幅34mm、高さ50mmのアルミニウム合金製の角形の電池ケースに前記電極巻回体を挿入し、リード体の溶接を行うとともに、アルミニウム合金製の蓋板を電池ケースの開口端部に溶接した。その後、蓋板に設けた注入口から非水電解液(ECとMECとDECとを体積比=1:1:1で混合した溶媒にLiPF6を1.1mol/lの濃度になるよう溶解させたものに、FECを2.0質量%となる量で、およびVCを1.0質量%となる量で、それぞれ添加した溶液)を注入し、1時間静置した後注入口を封止して、図1に示す構造で、図2に示す外観の非水二次電池を得た。
ここで図1および図2に示す電池について説明すると、図1の(a)は平面図、(b)はその部分断面図であって、図1(b)に示すように、正極1と負極2はセパレータ3を介して渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状の巻回電極体6として、角形(角筒形)の電池ケース4に非水電解液と共に収容されている。ただし、図1では、煩雑化を避けるため、正極1や負極2の作製にあたって使用した集電体としての金属箔や非水電解液などは図示していない。
電池ケース4はアルミニウム合金製で電池の外装体を構成するものであり、この電池ケース4は正極端子を兼ねている。そして、電池ケース4の底部にはPEシートからなる絶縁体5が配置され、正極1、負極2およびセパレータ3からなる扁平状巻回電極体6からは、正極1および負極2のそれぞれ一端に接続された正極リード体7と負極リード体8が引き出されている。また、電池ケース4の開口部を封口するアルミニウム合金製の封口用蓋板9にはポリプロピレン製の絶縁パッキング10を介してステンレス鋼製の端子11が取り付けられ、この端子11には絶縁体12を介してステンレス鋼製のリード板13が取り付けられている。
そして、この蓋板9は電池ケース4の開口部に挿入され、両者の接合部を溶接することによって、電池ケース4の開口部が封口され、電池内部が密閉されている。また、図1の電池では、蓋板9に非水電解液注入口14が設けられており、この非水電解液注入口14には、封止部材が挿入された状態で、例えばレーザー溶接などにより溶接封止されて、電池の密閉性が確保されている。更に、蓋板9には、電池の温度が上昇した際に内部のガスを外部に排出する機構として、開裂ベント15が設けられている。
この実施例1の電池では、正極リード体7を蓋板9に直接溶接することによって外装缶5と蓋板9とが正極端子として機能し、負極リード体8をリード板13に溶接し、そのリード板13を介して負極リード体8と端子11とを導通させることによって端子11が負極端子として機能するようになっているが、電池ケース4の材質などによっては、その正負が逆になる場合もある。
図2は前記図1に示す電池の外観を模式的に示す斜視図であり、この図2は前記電池が角形電池であることを示すことを目的として図示されたものであって、この図1では電池を概略的に示しており、電池の構成部材のうち特定のものしか図示していない。また、図1においても、電極体の内周側の部分は断面にしていない。
実施例2〜5および比較例1〜7
表1に示す組成のリチウムコバルト複合酸化物〔リチウムコバルト複合酸化物(A)〕、表2に示す組成のリチウムコバルト複合酸化物〔リチウムコバルト複合酸化物(B)〕および表3に示す組成のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を用いた以外は、実施例1と同様にして正極を作製し、これらの正極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。表1に示す各リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、表2に示す各リチウムコバルト複合酸化物(A)および表3に示す各リチウムコバルト複合酸化物(B)は、必要に応じて使用する原料化合物の種類や量を変更した他は、実施例1と同様にして合成した。
なお、表1、表2、並びに本明細書の表1、表2に関する前記の記載、および以降の記載では、比較例で使用したリチウムコバルト複合酸化物について、組成や平均粒子径の点でリチウムコバルト複合酸化物(A)やリチウムコバルト複合酸化物(B)に該当し得ないものであっても、実施例との比較を容易にする観点から、便宜上、リチウムコバルト複合酸化物(A)やリチウムコバルト複合酸化物(B)として記載している。また、表1および表2ではリチウムコバルト複合酸化物(A)およびリチウムコバルト複合酸化物(B)の組成を、一般組成式(1)に則して表し、表3ではリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の組成を、一般組成式(2)に則して表している。
実施例および比較例の非水二次電池について、以下の各評価を行った。これらの結果を表4に示す。また、表4には、各非水二次電池に使用した正極合剤層の密度も併記する。
<電池容量>
実施例および比較例の各電池について、初回充放電後に、常温(25℃)で、1Cの定電流で4.4Vに達するまで充電し、その後4.4Vの定電圧で充電する定電流−定電圧充電(総充電時間:2.5時間)を行い、その後0.2Cの定電流放電(放電終止電圧:3.0V)を行って、得られた放電容量(mAh)を電池容量とした。
<貯蔵特性(電池膨れ)>
実施例および比較例の各電池について、初回充放電後に、電池容量の測定と同じ条件で充電した。充電した後、電池外装缶の厚さT1を予め測定しておき、その後、電池を85℃に設定した恒温槽内で24時間保存し、恒温槽から取り出して、常温で3時間放置後に、再び電池外装缶の厚さT2を測定した。なお、本試験でいう電池外装缶厚さとは、外装缶の側面部の幅広面間の厚さを意味する。電池外装缶の厚さ測定は、ノギス(ミツトヨ社製「CD−15CX」)を用い、幅広面の中央部を測定対象として、100分の1mm単位で計測した。
電池膨れは、85℃貯蔵前の外装缶厚さT1に対する貯蔵前後の外装缶厚さT1およびT2への変化割合から評価した。すなわち、電池膨れ(%)は下記式により求めた。
電池膨れ(%)=100×(T2−T1)/(T1)
<充放電サイクル特性>
実施例および比較例の各電池について、初回充放電後に、電池容量の測定と同じ条件の充電および放電の一連の操作を1サイクルとして充放電を繰り返し、1サイクル目に得られた放電容量に対し、80%の放電容量となったときのサイクル数を調べた。
正極活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物と、適正な組成のリチウムコバルト複合酸化物(A)およびリチウムコバルト複合酸化物(B)とを使用し、これらの平均粒子径およびそれらの関係を適正にした実施例1〜5の非水二次電池は、高容量であり、貯蔵時の電池膨れが抑えられていて貯蔵特性が良好であり、また、充放電サイクル特性評価時のサイクル数が多く、充放電サイクル特性にも優れている。
これに対し、正極に使用したリチウムコバルト複合酸化物(A)の平均粒子径が小さすぎ、リチウムコバルト複合酸化物(B)の平均粒子径との関係も不適な比較例1の電池は、正極合剤層の充填性(密度)が低く、容量が小さくなっており、また、リチウムコバルト複合酸化物(A)の安定性が低いために貯蔵時の膨れが大きく、貯蔵特性が劣っている。正極に使用したリチウムコバルト複合酸化物(A)の平均粒子径が大きすぎる比較例2の電池は、正極合剤層の充填性(密度)が低く、容量が小さくなっており、また、リチウムコバルト複合酸化物(A)の粒子内での抵抗が大きいために、充放電サイクル特性が劣っている。
正極に使用したリチウムコバルト複合酸化物(A)の異種金属元素M1の含有量が、リチウムコバルト複合酸化物(B)よりも多い比較例3の電池は、容量が劣っている。正極に使用したリチウムコバルト複合酸化物(B)の平均粒子径が大きすぎ、リチウムコバルト複合酸化物(A)の平均粒子径との関係も不適な比較例4の電池は、正極合剤層の充填性(密度)が低く、容量が劣っている。
正極に使用したリチウムコバルト複合酸化物(B)の平均粒子径が小さすぎる比較例5の電池は、このリチウムコバルト複合酸化物(B)の熱に対する安定性が低いために貯蔵時の膨れが大きく、貯蔵特性が劣っている。正極に使用したリチウムコバルト複合酸化物(B)が異種金属元素M1を含有していない比較例6の電池は、充放電に対するリチウムコバルト複合酸化物(B)の安定性が低いため、充放電サイクル特性が劣っている。
正極に使用したリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の平均粒子径とリチウムコバルト複合酸化物(B)の平均粒子径との関係が不適な比較例7の電池は、正極合剤層の充填性(密度)が低く、容量が小さくなっており、また、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の熱に対する安定性が低いために貯蔵時の膨れが大きく、貯蔵特性が劣っている。