JP5144721B2 - 重荷重用ラジアルタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、トレッド部の偏摩耗を抑制した重荷重用ラジアルタイヤに関する。
重荷重用ラジアルタイヤでは、図8(A)に略示するように、トレッド踏み面aの輪郭形状(トレッド輪郭形状という場合がある。)を単一円弧で形成した場合、インフレート時、高内圧によってタイヤ赤道面Coと接地端Teとの中間位置でトレッド踏み面aが半径方向外側により大きく膨出する傾向がある。そのため、その膨出部分jと接地端Teとの間でタイヤ半径が急激に変化し、それに伴う路面との滑りによって、接地端側が摩耗する肩落ち摩耗m(図8(C)に示す。)等の偏摩耗が発生しやすくなる。
そこで、下記の特許文献1には、前記膨出部分jと接地端Teとのタイヤ半径差Δrを小さくするために、図8(B)に示すように、加硫成型時におけるトレッド輪郭形状を、タイヤ赤道面に中心を有する曲率半径TR1のクラウン部a1と、このクラウン部a1に交点Pで交差してタイヤ軸方向にのびる直線からなるショルダー部a2とで形成している。
この場合、インフレート時のトレッド輪郭形状が単一円弧に近づいて前述のタイヤ半径差Δrが減じるため、「接地入り」から「接地出」にかけての路面との滑りは抑えられる。しかしながら、逆に接地端Teでの接地圧が高まるため、「接地出」の瞬間に滑りが発生する。その結果、図8(C)に示すように、ショルダー部a2の接地端Te近傍のみが段差状に摩耗する所謂段差摩耗nが生じる傾向を招く。
ここで、タイヤ半径差Δrが少なく接地圧が高い場合、図9に、路面とショルダー部a2との接地状態を概念的に示すように、ショルダー部a2には、「接地入り」において剪断変形が発生し、又その剪断変形が生じたまま「接地出」側に進んでいく。そして「接地出」においては、接地圧が減じるため前記剪断変形が急激に元に戻ろうとし、路面との間にタイヤ回転方向Fと同方向の滑りKが瞬間的に発生し、これが原因として前記段差摩耗nが発生すると推測される。
なお前記肩落ち摩耗mは、タイヤ半径差に原因して「接地入り」から「接地出」にかけて連続的に発生する路面との滑り(タイヤ回転方向Fと同方向の滑り)によって生じるものであり、前記段差摩耗nとは発生メカニズムが相違し、しかも傾斜面状に発生するなど摩耗形状も相違する。
特開2006−76359号公報
そこで本発明は、肩落ち摩耗及び段差摩耗の双方を抑制してタイヤの摩耗寿命を高めうる重荷重用ラジアルタイヤを提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本願請求項1の発明は、正規リムに装着されかつ正規内圧を充填した正規内圧状態におけるタイヤ軸心を含むタイヤ子午断面において、
トレッド部のトレッド踏み面は、タイヤ赤道面に中心を有する曲率半径TR1の第1円弧からなるクラウン部と、このクラウン部に交点Pで交差する曲率半径TR2の第2円弧からなるショルダー部とからなり、かつ前記第2円弧の前記交点Pにおける接線は、タイヤ軸方向線に対して7°以下の角度をなすとともに、
前記曲率半径TR2は、前記曲率半径TR1の0.6〜0.95倍の範囲であり、
しかも前記ショルダー部に、前記トレッド踏み面の接地端からタイヤ赤道面側にのびかつ該ショルダー部内で途切れる複数のサイピングを、タイヤ周方向に隔設したことを特徴としている。
又請求項2の発明では、一方のショルダー部に形成されるサイピングの形成数N(本)と、トレッド踏み面のタイヤ赤道面上におけるタイヤ一周長さLL(単位mm)との比N/LLは、0.15〜0.22(本/mm)の範囲であることを特徴としている。
又請求項3の発明では、前記交点Pのタイヤ赤道面からのタイヤ軸方向距離Lpは、タイヤ赤道面から接地端までの距離Twの60〜70%であることを特徴としている。
又請求項4の発明では、前記曲率半径TR1は、タイヤ呼称幅の1.8〜2.2倍であることを特徴としている。
又請求項5の発明では、前記トレッド部は、最も接地端側に配されかつタイヤ周方向に連続してのびるショルダー溝を具えるとともに、該ショルダー溝のタイヤ軸方向外側の溝側縁は、前記交点Pに位置することを特徴としている。
又請求項6の発明では、前記トレッド踏み面上において、前記サイピングのタイヤ軸方向の長さL1は、前記ショルダー部のタイヤ軸方向の幅Wsの0.05〜0.10倍であることを特徴としている。
又請求項7の発明では、前記サイピングの深さは、前記ショルダー溝の深さの0.8〜1.2倍であることを特徴としている。
又請求項8の発明では、前記サイピングは、トレッド踏み面上におけるタイヤ軸方向内側のサイプ内端点からサイピングの深さが最大となる最深部までのびる内端縁を有し、かつこの内端縁は、前記サイプ内端点からバットレス面と略平行にのびるバットレス平行領域を含むとともに、該バットレス平行領域の半径方向内端のトレッド踏み面からの深さは、前記サイピングの深さの0.1〜0.9倍であることを特徴としている。
本明細書において、「接地端」とは、正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した正規内圧状態のタイヤに正規荷重を負荷した時にトレッド踏み面が接地しうるタイヤ軸方向最外端を意味する。
又前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば "Measuring Rim"を意味する。又前記「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE"を意味する。又前記「正規荷重」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"を意味する。
又本明細書では、特に断りがない限り、タイヤの各部の寸法等は、前記正規内圧状態にて特定される値とする。
本発明は叙上の如く、インフレート時のトレッド輪郭形状において、ショルダー部を、第1円弧からなるクラウン部に交点Pで交差する曲率半径TR2の第2円弧によって形成している。前記曲率半径TR2は、前記クラウン部の曲率半径TR1の0.6〜0.95倍の範囲であり、かつ第2円弧の前記交点Pにおける接線は、ほぼタイヤ軸方向線に沿って配されている。これにより、接地端での接地圧を適度に減じることができる。
他方、前記ショルダー部には、接地端からタイヤ赤道面側にのびる複数のサイピングがタイヤ周方向に隔設される。このサイピングを設けることで、図7(A)に実線で示すように、ショルダー部が接地して剪断変形を生じる際、「接地入り」側と「接地出」側とで剪断応力の方向(+−)が逆向きとなる。即ち、図7(B)に示すように、剪断変形の向きが「接地入り」側と「接地出」側とで逆向きとなる。そのため、「接地出」においては、前記逆向の剪断変形が元に戻ろうとし、路面との間にタイヤ回転方向Fと逆方向の滑り(−K)を発生させる。この滑り(−K)は、タイヤ転動に伴って必然的に生じるタイヤ回転方向の滑りとは逆方向となって打ち消し合うため、小なものとなる。そして、ショルダー部を第2円弧で形成することによる接地圧の軽減効果との相乗作用によって、肩落ち摩耗と段差摩耗とを両立して抑制することが可能となる。
本発明の重荷重用ラジアルタイヤの一実施例を示す正規内圧状態におけるタイヤ軸心を含むタイヤ子午断面である。 そのトレッドパターンを平面に展開して示す展開図である。 トレッド踏み面の輪郭形状を示す線図である。 ショルダー部の第2円弧による効果を説明する線図である。 (A)、(B)はサイピングをショルダー部とともに示す断面図、及び斜視図である。 バットレス平行領域を説明する断面図である。 (A)は接地時にショルダー部に生じる剪断応力と時間との関係を示すグラフ、(B)は接地時にショルダー部に生じる剪断変形を概念的に示す周方向の断面図である。 (A)、(B)は重荷重用ラジアルタイヤにおける従来のトレッド踏み面の輪郭形状を示す線図、(C)は肩落ち摩耗及び段差摩耗を説明する部分断面図である。 段差摩耗の発生メカニズムを説明するためのショルダー部の接地状態を示す周方向の断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の重荷重用ラジアルタイヤ1(以下タイヤ1という。)の正規内圧状態におけるタイヤ軸心を含むタイヤ子午断面であって、前記タイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6の半径方向外側かつ前記トレッド部2の内部に配されるベルト層7とを少なくとも具える。
前記カーカス6は、カーカスコードをタイヤ周方向に対して70〜90°の角度で配列した1枚以上、本例では1枚のカーカスプライ6Aからなる。カーカスコードとして、スチールコード等の金属コードが好適に使用される。前記カーカスプライ6Aは、前記ビードコア5、5間に跨るトロイド状のプライ本体部6aの両側に、前記ビードコア5の周りを内から外に折り返して係止される折返し部6bを一連に具える。そして前記プライ本体部6aと折返し部6bとの間には、前記ビードコア5から半径方向外方に先細状にのびるビード補強用のエーペックスゴム8が配される。
前記ベルト層7は、ベルトコードとして金属コードを用いた2枚以上のベルトプライから形成される。本例では、スチールコードをタイヤ周方向に対して例えば60±15°の角度で配列した半径方向最内側の第1のベルトプライ7A、及び、その半径方向外側に順次重ね置きされるとともにスチールコードをタイヤ周方向に対して例えば10〜35°の小角度で配列した第2〜4のベルトプライ7B、7C、7Dとの4枚構造の場合を例示している。このベルト層7では、第1のベルトプライ7Aのタイヤ軸方向のプライ巾は、第2のベルトプライ7Bのプライ巾に比して小かつ第3のベルトプライ7Cのプライ巾と略同一としており、最大巾となる第2のベルトプライ7Bのプライ巾を接地幅2×Twの0.80〜0.95倍とすることにより、トレッド部2の略全巾をタガ効果を有して補強し、かつトレッド剛性を高めている。なお最も巾狭となる第4のベルトプライ7Dは、第1〜3のベルトプライ7A〜7D及びカーカス6を外傷より保護するブレーカとして機能している。
前記トレッド部2には、タイヤ周方向に連続してのびる複数本の周方向主溝Gが配される。この周方向主溝Gは、溝幅Wgを5mm以上とした排水用の幅広溝であって、ウエットグリップ性のために形成される。前記周方向主溝Gは、最も接地端Te側に配されるショルダー溝Gsを含み、本例では、このショルダー溝Gsと、その内側に配されるクラウン溝Gcとの4本からなる場合が示される。このうち少なくとも、前記ショルダー溝Gsは、図2に示すように、タイヤ軸方向両側の溝側縁Ei、Eoがタイヤ周方向に直線状にのびるストレート溝として形成される。残る周方向主溝G、本例ではクラウン溝Gcは、ジグザグ溝とすることができるが、本例の如くストレート溝とすることが偏摩耗の観点から好ましい。
又前記接地端Teとショルダー溝Gsとの間の領域は、タイヤ軸方向に連続するリブ体9として形成される。なおショルダー溝Gsとクラウン溝Gcとの間、及びクラウン溝Gc、Gc間の領域は、それぞれタイヤ軸方向に連続するリブ体とすることも、又横溝或いはサイピングによって区分されるブロックの列とすることもでき、本例では、サイピング10によって区分されるブロックの列11とした場合が示されている。
次に、本実施形態のタイヤでは、図3に示すように、正規内圧状態におけるタイヤ子午断面において、前記トレッド部2のトレッド踏み面Tは、タイヤ赤道面Coに中心を有する曲率半径TR1の第1円弧12Aからなるクラウン部TCと、このクラウン部TCに交点Pで交差する曲率半径TR2の第2円弧12Bからなるショルダー部TSとから形成される。なお前記曲率半径TR1は、タイヤ呼称幅の1.8〜2.2倍の範囲とするのが好ましい。
前記第2円弧12Bの曲率半径TR2は、第1円弧12Aの曲率半径TR1の0.6〜0.95倍の範囲であって、しかも第2円弧12Bの前記交点Pにおける接線Yは、タイヤ軸方向線に対する角度αが7°以下、即ち、接線Yは、ほぼタイヤ軸方向線に沿って配されている。前記角度αは、接線Yがタイヤ軸方向外側に向かって半径方向内側に傾斜する向きを+とする。
又前記ショルダー溝Gsのタイヤ軸方向外側の溝側縁Eoは、前記交点Pに位置するとともに、この交点Pのタイヤ赤道面Coからのタイヤ軸方向距離Lpは、タイヤ赤道面Coから接地端Teまでのタイヤ軸方向の距離Tw(接地半幅Twという場合がある。)の60〜70%の範囲にある。
ここで、前記図8(B)に示すように、インフレート前のトレッド輪郭形状において、ショルダー部a2を、ほぼタイヤ軸方向線に沿ってのびる直線状とした前記特許文献1のタイヤ(比較タイヤtと呼ぶ。)の場合、インフレート(正規内圧充填)によって交点P付近が膨出した場合にも、ショルダー部a2が直線状をなすため、接地端Teでの荷重負担が大であり、前記タイヤ半径差Δrの減少と相俟って接地端Teでの接地圧は高いものとなる。これに対して図4に示すように、本実施形態のショルダー部TSは第2円弧12Bをなすため、接地端Teと交点Pとを結ぶ直線Vよりも半径方向外側に突出する凸円弧状部分iでの荷重負担が相対的に増加する。従って、タイヤ半径差Δrが比較タイヤtと同じ場合にも、接地端Teでの荷重負担を相対的に低減でき、肩落ち摩耗を改善しながら、接地端Teでの接地圧を軽減することができる。
なお前記接線Yの角度αが7°を越えると、接地端Teと交点Pとのタイヤ半径差Δrが大きくなるため、肩落ち摩耗が発生傾向となる。又前記曲率半径TR2が曲率半径TR1の0.6倍未満の場合にも、タイヤ半径差Δrが大となって肩落ち摩耗の発生傾向を招く。逆に前記曲率半径TR2が曲率半径TR1の0.95倍を越えると、前記凸円弧状部分iでの荷重負担が減るとともにタイヤ半径差Δrが小さくなるため、接地端Teでの接地圧が増加し、段差摩耗の発生傾向を招く。
又前記交点Pの距離Lpが接地半幅Twの60%未満の場合、タイヤ半径差Δrが大となって肩落ち摩耗の発生傾向を招き、逆に70%を越えると接地端Teでの接地圧が増加し、段差摩耗の発生傾向を招く。
又本実施形態のタイヤ1では、図5(A)、(B)に示すように、段差摩耗のさらなる抑制を図るため、前記ショルダー部TSに、前記接地端Teからタイヤ赤道面Co側に向かってタイヤ軸方向にのびる複数のサイピング15を、タイヤ周方向に隔設している。このサイピング15は、タイヤ軸方向内端がショルダー部TS内で途切れ、かつタイヤ軸方向外端がバットレス面3Sbで開口している。なお前記バットレス面3Sbとは、周知のようにタイヤ外側面のうちの、接地端Teに連なる接地端近傍の領域を意味する。
本例では、前記サイピング15は、トレッド踏み面T上におけるタイヤ軸方向の長さL1が、前記ショルダー部TSのタイヤ軸方向の幅Wsの0.05〜0.10倍の範囲であり、又トレッド踏み面Tからのサイピング深さhsは、前記ショルダー溝Gsの深さhgの0.8〜1.2倍の範囲である。
又前記サイピング15は、トレッド踏み面T上におけるタイヤ軸方向内側のサイプ内端点15aからサイピングの深さが最大となる最深部15bまでのびる内端縁15Eを有する。この内端縁15Eは、本例では、前記サイプ内端点15aから前記バットレス面3Sbと略平行にのびるバットレス平行領域16を含むとともに、該バットレス平行領域16の半径方向内端16bのトレッド踏み面Tからの深さhbを、前記サイピング深さhsの0.1〜0.9倍としている。
なお前記サイピング深さhsは、トレッド踏み面Tから前記最深部15bまでの最大深さを意味する。又前記バットレス平行領域16は、具体的には、図6に示すように、前記サイプ内端点15aを通りかつ前記バットレス面3Sbと平行な基準線をX、この基準線Xから両側にそれぞれ0.5mmの距離を隔たる境界線をXa、Xaとしたとき、前記内端縁15Eがこの境界線Xa、Xa間内を通る部分を意味する。
このように形成されるサイピング15は、接地端Te側のショルダー剛性を緩和させる。そのため、前記図7(A)に実線で示すように、ショルダー部TSが接地して剪断変形を生じる際、「接地入り」側と「接地出」側とでショルダー部TSに生じる剪断応力の方向を逆向きにすることができる。即ち、図7(B)に示すように、ショルダー部TSにおける剪断変形の向きが「接地入り」側と「接地出」側とで逆向きとなる。そのため、「接地出」においては、前記逆向の剪断変形が元に戻ろうとし、路面との間にタイヤ回転方向Fとは逆方向の滑り(−K)を発生させる。この滑り(−K)は、タイヤ転動に伴って必然的に生じるタイヤ回転方向の滑りとは逆方向となって打ち消し合うため、小なものとなる。その結果、ショルダー部TSを第2円弧で形成することによる接地端Teでの接地圧の軽減効果との相乗作用によって、肩落ち摩耗と段差摩耗とを両立して抑制することが可能となる。
そのためには、一方のショルダー部TSに形成されるサイピング15の形成数N(本)、トレッド踏み面Tのタイヤ赤道面Co上におけるタイヤ一周長さLL(単位mm)との比N/LLは、0.15〜0.22(本/mm)の範囲とするのが好ましい。サイピング15の形成数N(本)が前記範囲を下回ると、サイピング15、15間の間隔が過大となって、剛性緩和が不充分となり所望の段差摩耗抑制効果を充分発揮することができなくなる。逆に前記範囲を上回ると、サイピング15、15間の間隔が過小となって剛性不足を招き、走行中にゴム欠けが発生する傾向を招く。このような観点から、前記形成数N(本)と、タイヤ一周長さLLとの比N/LLは、下限が0.17(本/mm)以上、又上限が0.2(本/mm)以下が好ましい。
又同様に、前記サイピング15の長さL1が、ショルダー部TSの幅Wsの0.05倍未満、及びサイピング深さhsがショルダー溝Gsの深さhgの0.8倍未満の場合、剛性緩和が不充分となって段差摩耗抑制効果が不充分となる。逆に前記長さL1がショルダー部TSの幅Wsの0.1倍より大、及びサイピング深さhsがショルダー溝Gsの深さhgの1.2倍より大の場合、剛性が過小となって、サイピング15、15間が周方向に動きすぎ、ヒール&トゥ摩耗を招くとともに、サイピング15の内端点15a或いは内端縁15Eを起点としてクラック等の損傷を招く傾向となる。このような観点から前記長さL1の下限は、幅Wsの0.06倍以上、上限は0.08倍以下がより好ましい。
又前記内端縁15Eにバットレス平行領域16を設け、かつその深さhbをサイピング深さhsの0.1倍以上、さらには0.5倍以上とすることが、接地端Te及びその近傍の接地圧を均一に軽減して段差摩耗を抑制する上で好ましい。なお前記深さhbがサイピング深さhsの0.9倍を超えると、サイプ底で応力が集中しサイプ底を起点としてクラック等の損傷を招く傾向となる。
なお正規内圧状態におけるトレッド輪郭形状は、例えば、ベルト層7からのトレッド部2の厚さを調整するなどの周知の技術によってコントロールすることができる。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
図1に示す構造をなす重荷重用ラジアルタイヤ(タイヤサイズ:12R22.5)を表1の仕様に基づいて試作するとともに、各試供タイヤにおけるショルダー部での耐偏摩耗性能についてテストし、その結果を表1に示す。各タイヤとも内部構造、及びトレッドパターンは実質的に同一であり、トレッド輪郭形状、及びショルダー部におけるサイピングのみ相違している。
各タイヤにおいて、
・タイヤ呼称幅:−−−12インチ(=304.8mm)、
・接地半幅Tw:−−−100mm、
・第1円弧と第2円弧との交点Pの距離Lp:−−−0.6×Tw、
・タイヤ赤道面上におけるタイヤ一周長さLL:−−−3360mm、
・ショルダー溝の深さhg:−−−15.0mm、
・バットレス平行領域の深さhb:−−−サイピング深さhsの80%、
としている。
(1)耐偏摩耗性能:
試供タイヤを、リム(8.25×22.5)、内圧(800kPa)の条件にて最大積載量10tのトラック(2−2・Dタイプ)の全輪に装着し、ショルダー溝の溝深さが新品時の溝深さの70%となる30%摩耗にいたるまで、一般道路を走行した。そして、走行後のショルダー部における肩落ち摩耗の発生状況、段差摩耗の発生状況、及びサイピングに起因するゴム欠けの発生状況などを、目視検査によって測定し、5点法で評価した。評価は、表1の試験タイヤのうちで最も優れているものを5点、最も劣っているものを1点として評価した。
Figure 0005144721
Figure 0005144721
比較例1のように、インフレート前のトレッド輪郭形状が、図8(A)の如き単一円弧をなす場合、肩落ち摩耗が大であるのが確認できる。又比較例2のように、インフレート前のトレッド輪郭形状において、ショルダー部が図8(B)の如き直線状をなす場合、段差摩耗が大であるのが確認できる。又比較例3のように、インフレート時のトレッド輪郭形状が、図2の如き第1、第2円弧からなるタイヤにおいても、曲率半径の比TR2/TR1が0.5と下限値(0.6)を下回る場合には、サイピングがなくても段差摩耗は良好であるが、肩落ち摩耗は大となるのが確認できる。又比較例4のように、インフレート時のトレッド輪郭形状が、図2の如き第1、第2円弧からなるタイヤにおいて、曲率半径の比TR2/TR1が0.91と適正値の場合、肩落ち摩耗は良好であるが、サイピングがないことにより段差摩耗が発生するのが確認できる。又比較例5のように、比較例3のタイヤにサイピングを形成しても、偏摩耗の評価は比較例3と同じであり、比TR2/TR1が下限値(0.6)を下回るタイヤに対しては、サイピングは偏摩耗に寄与しないことが確認できる。
又実施例1では、比TR2/TR1が0.6(下限値)と低いため、肩落ち摩耗が発生傾向となっているのが確認できる。実施例3では、比TR2/TR1が0.95(上限値)と高いため、段差摩耗に不利であるが、サイピングの効果によってこの段差摩耗の発生が効果的に抑えられているのが確認できる。又比較例6では、比TR2/TR1が1.0と上限値(0.95)を越えるため、サイピングによっても段差摩耗の発生を充分に抑えることができないのが確認できる。実施例4では、比TR2/TR1が0.8と適正値であるが、接線の角度αが7°(上限値)と大きいため、肩落ち摩耗が発生傾向となっているのが確認できる。実施例5は、サイピングの形成数の比N/LLが0.3と上限(0.22)を越えているため、サイピング間の剛性が不足しゴム欠けの発生傾向となっているのが確認できる。実施例6では、サイピングの形成数の比N/LLが上限値(0.22)以下であるため、サイピング間の剛性が確保され、ゴム欠けが抑制されているのが確認できる。実施例7では、サイピングの形成数の比N/LLが下限値(0.15)と低いため、サイピングの効果が減じ、段差摩耗が発生傾向となっているのが確認できる。実施例8では、サイピング深さが上限値(hs/hg=1.2)をなすため、サイピング間の剛性が減じ、ゴム欠けが発生傾向となっているのが確認できる。実施例9では、サイピング長さが上限値(L1/Ws=0.1)をなすため、サイピング間の剛性が減じ、ゴム欠けが発生傾向となっているのが確認できる。実施例10では、サイピング長さが下限値(L1/Ws=0.05)をなすため、サイピングの効果が減じ、段差摩耗が発生傾向となっているのが確認できる。
2 トレッド部
3Sb バットレス面
12A 第1円弧
12B 第2円弧
15 サイピング
15b 最深部
15E 内端縁
16 バットレス平行領域
Co タイヤ赤道面
Eo 溝側縁
Gs ショルダー溝
T トレッド踏み面
TC クラウン部
Te 接地端
TS ショルダー部
Y 接線

Claims (8)

  1. 正規リムに装着されかつ正規内圧を充填した正規内圧状態におけるタイヤ軸心を含むタイヤ子午断面において、
    トレッド部のトレッド踏み面は、タイヤ赤道面に中心を有する曲率半径TR1の第1円弧からなるクラウン部と、このクラウン部に交点Pで交差する曲率半径TR2の第2円弧からなるショルダー部とからなり、かつ前記第2円弧の前記交点Pにおける接線は、タイヤ軸方向線に対して7°以下の角度をなすとともに、
    前記曲率半径TR2は、前記曲率半径TR1の0.6〜0.95倍の範囲であり、
    しかも前記ショルダー部に、前記トレッド踏み面の接地端からタイヤ赤道面側にのびかつ該ショルダー部内で途切れる複数のサイピングを、タイヤ周方向に隔設したことを特徴とする重荷重用ラジアルタイヤ。
  2. 一方のショルダー部に形成されるサイピングの形成数N(本)と、トレッド踏み面のタイヤ赤道面上におけるタイヤ一周長さLL(単位mm)との比N/LLは、0.15〜0.22(本/mm)の範囲であることを特徴とする請求項1記載の重荷重用ラジアルタイヤ。
  3. 前記交点Pのタイヤ赤道面からのタイヤ軸方向距離Lpは、タイヤ赤道面から接地端までの距離Twの60〜70%であることを特徴とする請求項1又は2記載の重荷重用ラジアルタイヤ。
  4. 前記曲率半径TR1は、タイヤ呼称幅の1.8〜2.2倍であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の重荷重用ラジアルタイヤ。
  5. 前記トレッド部は、最も接地端側に配されかつタイヤ周方向に連続してのびるショルダー溝を具えるとともに、該ショルダー溝のタイヤ軸方向外側の溝側縁は、前記交点Pに位置することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の重荷重用ラジアルタイヤ。
  6. 前記トレッド踏み面上において、前記サイピングのタイヤ軸方向の長さL1は、前記ショルダー部のタイヤ軸方向の幅Wsの0.05〜0.10倍であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の重荷重用ラジアルタイヤ。
  7. 前記サイピングの深さは、前記ショルダー溝の深さの0.8〜1.2倍であることを特徴とする請求項5又は6に記載の重荷重用ラジアルタイヤ。
  8. 前記サイピングは、トレッド踏み面上におけるタイヤ軸方向内側のサイプ内端点からサイピングの深さが最大となる最深部までのびる内端縁を有し、かつこの内端縁は、前記サイプ内端点からバットレス面と略平行にのびるバットレス平行領域を含むとともに、該バットレス平行領域の半径方向内端のトレッド踏み面からの深さは、前記サイピングの深さの0.1〜0.9倍であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の重荷重用ラジアルタイヤ。
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