JP5141230B2 - ポリプロピレン系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
そして、従来から、ポリプロピレンの耐衝撃性を改良するために、ポリプロピレンとエチレン系共重合体とを含有するポリプロピレン組成物を用いることが知られている。
例えば、特開平10−87714号公報には非メタロセン触媒によりプロピレン重合体を製造する工程の後に、少なくともメタロセン化合物と助触媒成分からなる触媒によりエラストマーを製造する工程を有するプロピレン重合体組成物の製造方法が記載されている。(特許文献1)
かかる状況の下、本発明の目的は、剛性、耐衝撃性に優れるポリプロピレン系樹脂組成物を提供することにある。
要件(1) DSCによって測定される上記プロピレン単独重合体の融解温度が163℃以上、170℃以下である。
要件(2) 13C−NMRスペクトルによって測定される上記プロピレン単独重合体の全プロピレン単位中の2,1−挿入および1,3−挿入に起因する異種結合の割合が0.01以下である。
要件(3) 上記ポリプロピレン系樹脂組成物中のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体の量をA重量%、上記ポリプロピレン系樹脂組成物の室温キシレン可溶分の量をB重量%とするとき、比B/Aが0.9以上である。
要件(4) 上記エチレン−α−オレフィンランダム共重合体の分子量分布が2.0以上4.0以下である。
要件(5) 上記ポリプロピレン系樹脂組成物から温度190℃、圧力35kgf/cm2、3分間の熱プレス成形で作成した厚さ0.5mmのシートの断面の透過型電子顕微鏡による観察において、前記ポリプロピレン系樹脂組成物中のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体の粒子の体積平均円相当粒子径が1.0μm以下である。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含まれるプロピレン単独重合体は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定される融解温度が163℃以上、170℃以下の範囲内であり、13C核磁気共鳴(13C−NMR)スペクトルによって測定される全プロピレン単位中の2,1−挿入および1,3−挿入に起因する異種結合の割合が0.01以下であるプロピレンの単独重合体である。また、プロピレン単独重合体中の室温キシレン可溶分量は0.1重量%以下であることが好ましい。
重合時、プロピレンモノマーは通常1,2−挿入するが、稀に2,1−挿入や1,3−挿入することがある。プロピレン単独重合体の「全プロピレン単位中の2,1−挿入および1,3−挿入に起因する異種結合の割合」とは、筒井等のPOLYMER, 30, 1350 (1989)に記載された方法に基づき13C−NMRにより測定されるポリプロピレン分子鎖中の2,1−挿入反応に起因する異種結合の存在割合および1,3−挿入反応に起因する異種結合の存在割合の合計である。
また、ポリプロピレンの分子量を調節するために、水素等の連鎖移動剤を添加しても良い。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含まれるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体は、エチレンとα−オレフィンを共重合して得られ、エチレンに由来する構造単位とαオレフィンに由来する構造単位を含有する共重合体である。
α−オレフィンとしては、例えば、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルネン等が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂組成物に含まれるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体の分散粒子のDvは、ポリプロピレン系樹脂組成物を適当な条件下で溶融混練することにより調節することができる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、前記プロピレン単独重合体60〜85重量%と、前記エチレン−α−オレフィンランダム共重合体15〜40重量%とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物である(ただし、前記重量%はともに、前記単独重合体と前記共重合体の合計量を基準とする)。
前記プロピレン単独重合体の含有量が85重量%を超える場合(すなわち、前記エチレン−α−オレフィンランダム共重合体が15重量%未満の場合)、耐衝撃強度が不充分なことがあり、前記プロピレン単独重合体の含有量が60重量%未満の場合(すなわち、前記エチレン−α−オレフィンランダム共重合体が40重量%を超えた場合)、剛性が不充分なことがある。
前記プロピレン単独重合体の含有量として、好ましくは65〜85重量%であり、前記エチレン−α−オレフィンランダム共重合体として、好ましくは15〜35重量%である。
(1)前記プロピレン単独重合体を生成させた後、連続して前記エチレン−α−オレフィンランダム共重合体を重合して製造する方法
(2)前記プロピレン単独重合体と、前記エチレン−α−オレフィンランダム共重合体を、同時に溶融混練して製造する方法、
(3)前記プロピレン単独重合体と、前記エチレン−α−オレフィンランダム共重合体を、逐次的に混合装置へ装入した後、溶融混練して製造する方法
(4)プロピレン単独重合体、及びエチレン−α−オレフィンランダム共重合体の両者を溶解する物質を用いて溶解混合し、該混合物をプロピレン単独重合体、及びエチレン−α−オレフィンランダム共重合体の両者を溶解しない物質に投入してポリプロピレン樹脂組成物を析出させ製造する方法、
等が挙げられ、これらの中でも、ポリプロピレン系樹脂組成物中の前記エチレン−α−オレフィンランダム共重合体の分散性に優れる方法(4)が好ましい。
以下、本発明について、実施例及び比較例を用いて説明する。実施例及び比較例における各物性値は、下記の方法に従い測定した。
プロピレン単独重合体を熱プレス成形(230℃で5分間予熱後、3分間かけて50kgf/cm2まで昇圧し2分間保圧した後、30℃、30kgf/cm2で5分間冷却)して、厚さ0.5mmのシートを作成した。示差走査型熱量計(TAインスツルメンツ社製、DSC Q100)を用い、作成されたシートの10mgを窒素雰囲気下220℃で5分間熱処理後、降温速度300℃/分で150℃まで冷却し、150℃において1分間保温し、さらに降温速度5℃/分で50℃まで冷却し、50℃において1分間保温した後、50℃から180℃まで昇温速度5℃/分で加熱した際に得られた融解曲線において、最大吸熱ピークを示す温度(℃)を測定した。
プロピレン単独重合体の「全プロピレン単位中の2,1−挿入および1,3−挿入に起因する異種結合の割合」は、下記の条件で測定した13C−NMRスペクトルから、Tsutsuiらの報告(POLYMER, 30, 1350 (1989))に基づいて求めた。10mmΦの試験管中で約200mgのプロピレン単独重合体を3mlのオルソジクロロベンゼンに均一に溶解させて試料を調製し、その試料の13C−NMRスペクトルを下記の条件下で測定した。
機種:Bruker AVANCE600
測定温度:135℃
パルス繰り返し時間:10秒
パルス幅:45°
積算回数:2500回
下記の条件で測定した13C−NMRスペクトルから、Kakugoらの報告(Macromolecules,15,1150-1152(1982))に基づいて求めた。10mmΦの試験管中で約200mgのプロピレン系樹脂組成物を3mlのオルソジクロロベンゼンに均一に溶解させて試料を調製し、その試料の13C−NMRスペクトルを下記の条件下で測定した。
機種:日本電子データム EX270
測定温度:135℃
パルス繰り返し時間:10秒
パルス幅:45°
積算回数:2500回
ポリプロピレン系樹脂組成物1gに対してキシレン200mLを加え、沸騰させて完全に溶解させた後降温し、20℃で1時間以上状態調整を行った。その後、ろ紙を用いて可溶部と不溶部に分離した。ろ液から溶剤を除去して乾固して可溶部の試料とし、試料の重量を測定して含有量を求めた。
GPCによって、下記条件により重量平均分子鎖長(Aw)と数平均分子鎖長(An)を求め、さらにそれらの比(Aw/An)を算出した。
機種:ウォーターズ社製 150C型
カラム:TSK−GEL GMH6−HT 7.5Φmm×300mm×3本
測定温度:140℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン
測定濃度:5mg/5ml
ウベローデ型粘度計を用いて、濃度が0.1g/dl、0.2dl/g、及び0.5dl/gの3点について還元粘度を測定した。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491項に記載の計算方法、すなわち、還元粘度を濃度に対してプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法により求めた。下記条件により測定を行った。
測定溶媒:テトラリン
測定温度:135℃
温度190℃、圧力35kg/cm、3分間の熱プレス成形により成形された試験片(厚さ0.5mmのシート)の断面を−80℃でミクロトームを用い切り出し、ルテニウム酸の蒸気で60℃、90分間染色後、−50℃でダイヤモンドカッターを用い厚さ800オングストローム程度の超薄切片を作成した。この超薄切片を透過型電子顕微鏡(日立製作所製H−8000型透過型電子顕微鏡)を用いて、3,000倍の観察倍率で観察した。黒く染色された部分がエチレン−α−オレフィンランダム共重合体に相当する。異なる3個所の視野を撮影した写真から旭エンジニアリング社製 高精度画像解析ソフト「IP−1000」を用いて、以下に示した画像解析処理を行い、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体の分散粒子の体積平均円相当粒子径(Dv)を求めた。
(画像解析処理)EPSON社製スキャナーGT−9600で透過型電子顕微鏡から得られた写真をコンピュータに取り込み(100dpi、8bit),旭エンジニアリング社製 高精度画像解析ソフト「IP−1000」で2値化した。解析面積は1,116μm2であった。エチレン−アルファオレフィンランダム共重合体部分に相当する分散粒子の形状は不定形であるので、エチレン−アルファオレフィンランダム共重合体部分と同じ面積となる円の直径(円相当粒子径:Di、単位:μm)を求め、下記式から体積平均円相当粒子径(Dv)を求めた。
(式中、iは1〜nの整数であり、Diは各粒子の円相当粒子径である。)
引張弾性率、及び、引張衝撃強度は、ASTM D1822−Lに準拠した方法で測定した。190℃温度190℃、圧力35kg/cm、3分間の熱プレス成形により作成された0.5mmの厚みのプレスシートから試験片を作成し、シングルコラム型引張圧縮試験機 STA−1225(エー・アンド・デイ)を用いて測定した。
(1−1)HPP−1の重合
特開2002−012734(これは、米国特許公開第2002035209号としても発行されている)の実施例記載の方法に従い重合を行った。得られたポリマーの極限粘度は1.18dl/gであった。
窒素ガス雰囲気下、トルエン40mLに触媒成分(A)(ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−ナフチルインデニル)ジルコニウムジクロライド)6.6mgと、濃度を1mmol/mLに調整したトリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液1mLを加えた。このトルエン溶液に触媒成分(B)(特開2003−171412号公報実施例1(2)記載の方法により合成した)150.3mgを懸濁させ、重合触媒成分のトルエンスラリーを準備した。
減圧乾燥、窒素ガス置換後、冷却した内容積3リットルの撹拌機付きステンレス製オートクレーブ内を真空とし、上記触媒成分のトルエンスラリーを導入した。次に水素を0.030MPa、さらにプロピレンを780g導入した後、オートクレーブの内温を20℃に調整し5分間攪拌した。その後、オートクレーブを65℃に昇温し30分間攪拌することで、プロピレン単独重合体(HPP−2)を267.5g得た。得られたポリマーの極限粘度は、1.75dl/gであった。
(2−1)RCP−1(エチレン−プロピレンランダム共重合体)
窒素ガス雰囲気下、トルエン40mLに触媒成分(C)(ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタンジメトキシド:特開2006−193749の参考例1記載の金属錯体)5mgと、濃度を1mmol/mLに調整したトリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液1mLを加えたトルエン溶液を準備した。
減圧乾燥、窒素ガス置換後、冷却した内容積3リットルの撹拌機付きステンレス製オートクレーブ内を真空とし、トルエンを1000mL、エチレンを42g、プロピレンを28g、及び上記触媒のトルエン溶液を導入した。その後、トリフェニルカルベニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートのトルエン溶液(1mmol/ml)を3.8mL加え、オートクレーブの内温を80℃に昇温し90分間攪拌することで、エチレン−プロピレンランダム共重合体を69g得た。得られたポリマーのα−オレフィン(プロピレン)含量は34wt%、極限粘度は3.28であった。
α−オレフィン(ブテン)含量が33wt%であるエチレン−ブテンランダム共重合体、タフマーA2050S(三井化学社製)を用いた。
減圧乾燥、窒素ガス置換後、冷却した内容積3リットルの撹拌機付きステンレス製オートクレーブ内を真空とし、ヘプタン1000mL導入した。トリエチルアルミニウム 4.4ミリモル、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン0.44ミリモル及び特開2004−182981実施例1(2)記載の固体触媒成分11.7ミリグラムを、ガラスチャージャー内のヘプタン中で接触させた後、上記オートクレーブに一括に投入した。
上記3リットルオートクレーブと連結した内容積24リットルボンベを真空として、エチレン260g、プロピレン170g、水素ガス0.01Mpaを添加した後、80℃に昇温することで調製した混合ガスを上記3リットルオートクレーブへ連続的にフィードし、重合圧力を0.3MPa、重合温度を70℃として3時間重合を行い、118gのポリマーを得た。得られたポリマーのα−オレフィン(プロピレン)含量は32wt%、極限粘度は2.61であった。
プロピレン単独重合体として15gのHPP−1と、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体として5gのRCP−1を200mlの沸騰キシレンに溶解し、このキシレン溶液を14Lのメタノール中に投入した。その後、沈殿物をろ過、乾燥することで、HPP−1とRCP−1からなるポリプロピレン系樹脂組成物(BCPP−1)を20g得た。BCPP−1の各物性値の測定結果を1に示す。
HPP−1を16g、RCP−2を4gを用いたこと以外は、実施例1記載の方法をと同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物(BCPP−2)を20g得た。BCPP−2の各物性値の測定結果を表1に示す。
15gのHPP−2を15g、5gのRCP―1を用いたこと以外は、実施例1記載の方法をと同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物(BCPP−3)を20g得た。BCPP−3の各物性値の測定結果を表1に示す。
HPP−1を15g、RCP−3を5g用いたこと以外は、実施例1記載の方法をと同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物(BCPP−4)を20g得た。BCPP−4の各物性値の測定結果を表1に示す。
Claims (2)
- プロピレン単独重合体60〜85重量%と、エチレンと1−ブテンの重量比が45/55〜70/30であるエチレン−1−ブテンランダム共重合体15〜40重量%とを含有し、下記要件(1)から下記要件(5)を満足するポリプロピレン系樹脂組成物(ただし、前記重量%はともに、前記単独重合体と前記共重合体の合計量を基準とする)。
要件(1) DSCによって測定される上記プロピレン単独重合体の融解温度が163℃以上、170℃以下である。
要件(2) 13C−NMRスペクトルによって測定される上記プロピレン単独重合体の全プロピレン単位中の2,1−挿入および1,3−挿入に起因する異種結合の割合が0.01%以下である。
要件(3) 上記ポリプロピレン系樹脂組成物中の前記エチレン−1−ブテンランダム共重合体の量をA重量%、上記ポリプロピレン系樹脂組成物の室温キシレン可溶分の量をB重量%とするとき、比B/Aが0.9以上である。
要件(4) 上記エチレン−1−ブテンランダム共重合体の分子量分布が2.0以上4.0以下である。
要件(5) 上記ポリプロピレン系樹脂組成物から温度190℃、圧力35kgf/cm2、3分間の熱プレス成形で作成した厚さ0.5mmのシートの断面の透過型電子顕微鏡による観察において、前記ポリプロピレン系樹脂組成物中のエチレン−1−ブテンランダム共重合体の粒子の体積平均円相当粒子径が1.0μm以下である。 - 請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物を含有する成形体。
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