JP4594141B2 - ポリ−1−ブテン系樹脂組成物及びその用途 - Google Patents

ポリ−1−ブテン系樹脂組成物及びその用途 Download PDF

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Description

本発明は、柔軟性と耐熱クリープ強度のバランスに優れたポリ−1−ブテン樹脂組成物組成物に関する。
ポリ−1−ブテン樹脂は、高温でのクリープ特性、耐摩耗性、可とう性、ポリプロピレンとの相容性などに優れることから、給水給湯管、表皮材等のシート、ポリプロピレン樹脂の改質に使用されている。
昨今の給水給湯パイプに求められる特性として、柔軟性が上げられる。柔軟性が向上するとパイプの施工性が向上するため、施工日数が減少し、施工コストを抑えることができる。柔軟性の向上に関しては、1−ブテンと1−ブテン以外のα−オレフィン共重合体等のエラストマーをポリ−1−ブテン樹脂にブレンドする方法が提案されている(特許文献1参照)が、高温時の耐熱クリープ強度が低下するという点でまだ向上の余地があった。
特許第2540285号公報
本発明が解決しようとする課題は、上記のような従来技術に伴う課題を解決しようとするものであって、柔軟性と耐熱クリープ特性のバランスに優れるポリ−1−ブテン樹脂組成物組成物及びその成形体を提供することである。
本発明のポリ1−ブテン系樹脂組成物は、1−ブテン70〜100モル%及び炭素原子数2〜10の1−ブテン以外のα−オレフィン0〜30モル%を(共)重合して得られ、メルトフローレート(MFR;ASTM D1238,190℃,2.16kg)が0.01〜50g/10minであるポリ1−ブテン樹脂(A)と、アイソタクティックポリプロピレン(B)と、プロピレン成分を45〜89モル%、エチレン成分を1〜25モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の成分単位(a)として1−ブテン由来の成分単位〜30モル%の量含むプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)とを含んでなり、
ポリ1−ブテン(A)とアイソタクティックポリプロピレン(B)と、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)との合計100重量部に対して、ポリ1−ブテン(A)が80〜99.9重量部、アイソタクティックポリプロピレン(B)と、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)とが合計0.1〜20重量部の割合で含まれており、アイソタクティックポリプロピレン(B)/プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)の存在割合が重量比で1/99〜40/60の範囲にあることを特徴とする。
本発明の成形体は、前記ポリ1−ブテン系樹脂組成物からなることを特徴としており、給水給湯用パイプやパイプ用継手に好適に用いられる。
本発明のポリ1−ブテン系樹脂組成物は、柔軟性と耐熱クリープ特性のバランスに優れる。本発明の成形体は、柔軟性と耐熱クリープ特性のバランスに優れることから、施工性に優れ、かつ強度に優れた給水給湯用パイプやパイプ用継ぎ手に好適に用いられる。
以下、本発明について、具体的に説明する。
ポリ−1−ブテン樹脂(A)
本発明の組成物の主成分であるポリ−1−ブテン樹脂(A)は、1−ブテン70〜100モル%と炭素原子数2〜10の1−ブテン以外のα−オレフィンとを(共)重合して得られる、1−ブテンの単独重合体または1−ブテン・α−オレフィン共重合体である。
炭素原子数2〜10の1−ブテン以外のα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等が挙げあられる。これらのα−オレフィンは、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いられる。
1−ブテン・α−オレフィン共重合体における1−ブテン以外のα−オレフィンから導かれる構成単位の含有量は、30モル%以下、好ましくは20モル%以下であり、1−ブテンから導かれる構成単位の含有量は、70モル%以上、好ましくは80モル%以上である。
本発明で用いられるポリ−1−ブテン樹脂(A)のメルトフローレート(MFR:ASTM D1238,190℃,2.16kg荷重)は、0.01〜50g/10min、好ましくは0.1〜30g/10min、さらに好ましくは0.2〜20g/10minである。
また本発明で用いられるポリ1−ブテン樹脂(A)のGPC法で測定したMw/Mnは特には制限はなく、例えば通常1.5以上、好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上のものが用いられる。
上記のようなポリ−1−ブテン樹脂(A)は、従来公知の製法、例えばチーグラーナッタ触媒あるいはメタロセン系触媒の存在下に、1−ブテンのみを重合、または1−ブテンとエチレン、プロピレン等の1−ブテン以外のα−オレフィンとを共重合させることにより調整することができる。
本発明でも好ましく用いられるポリ−1−ブテン樹脂(A)としては、メルトフローレートが0.01〜5g/10minであり、GPC法により求められる分子量分布(Mw/Mn)が6以下であり、アイソタクチック指数(mmmm%)が90以上であるポリ−1−ブテン樹脂(a1)60〜95重量%、及びメルトフローレートが該ポリ−1−ブテン樹脂(a1)のMFR値の20倍以上であり、GPC法により求められる分子量分布(Mw/Mn)が6以下であり、かつ、アイソタクチック指数(mmmm%)が90以上であるポリ−1−ブテン樹脂(a2)5〜40重量%からなるポリ−1−ブテン樹脂(a)が挙げられる(ただし(a1)と(a2)の合計は100重量部とする)。
上記ポリ−1−ブテン樹脂(a1)は、1−ブテンから導かれる構成単位含有量が70〜100モル%である、1−ブテン単独共重合体または1−ブテンと炭素数2〜10の1−ブテン以外のα−オレフィンとの1−ブテン・α−オレフィン共重合体であって、そのメルトフローレートは、0.01〜20g/10min、好ましくは0.1〜10g/10minである。
また、このポリ−1−ブテン樹脂(a1)は、分子量分布を表す重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が6以下であり、得られるポリ−1−ブテン樹脂(a)組成物の耐衝撃性に優れる点で、5以下であることが好ましい。このMwとMnの比(Mw/Mn)は、下記の方法によって測定される。
(i)分子量既知の標準ポリスチレン(単分散ポリスチレン、東ソー(株)製)を用い、異なる分子量のポリスチレンを下記の条件で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析に供し、分子量MとEV値(Elution volume:溶媒体積)の較正曲線を作成する。
<測定条件>
装置:Water社製,ALC/GPC150−C型
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGMHHR−H(S)HT×2+TSKgelGMH6−HTL×1
(それぞれ7.8mmφ×300mm、7.5mmφ×600mm)
温度:140℃
流速:1ml/分
(ii)試料の調整
分子量を測定するポリマー試料と溶媒o−ジクロロベンゼンとをフラスコに入れ、ポリマー30mgに対して溶媒20mlの割合の溶液を調整する。
得られたポリマー溶液に、安定剤として2,6−ジ−t−ブチルクレゾールを0.1重量%の濃度になるように加える。この溶液を145℃で1時間攪拌して、ポリマー及び安定剤を完全に溶解させる。次に、145℃の温度で0.45μmのフィルターで溶液を濾過する。得られた濾過液を、上記の(i)と同じ測定条件でGPC分析に供し、得られたEV値から、前記(i)で作成しておいた較正曲線により、数平均分子量(Mn=ΣMi2Ni/ΣNi)及び重量平均分子量(Mw=ΣMi2Ni/ΣMiNi)を求め、Mw/Mnを計算する。
また、ポリ−1−ブテン樹脂(a1)のNMR法により測定されるアイソタクチック指数(mmmm%)は90以上であり、好ましくは92以上である。
上記ポリ−1−ブテン樹脂(a2)は、ポリ−1−ブテン樹脂(a1)と同様に、1−ブテン単独重合体または1−ブテンと炭素原子数2〜10の1−ブテン以外のα−オレフィンとの1−ブテン・α−オレフィン共重合体である。
このポリ−1−ブテン樹脂(a2)のメルトフローレートは、前記ポリ−1−ブテン樹脂(a1)のメルトフローレート値の20倍以上、好ましくは50〜1000倍である。
また、このポリ−1−ブテン樹脂(a2)は、GPC法により求められる分子量分布(Mw/Mn)が6以下、得られるポリ−1−ブテン樹脂(a)組成物の耐衝撃性に優れる点で、5以下であることが好ましい。
更に、ポリ−1−ブテン樹脂(a2)のNMR法により測定されるアイソタクチック指数(mmmm%)値は、90以上であり、好ましくは92以上である。
この様なポリ−1−ブテン樹脂(a1)及びポリ−1−ブテン樹脂(a2)からなるポリ−1−ブテン樹脂(A)を含有するポリ−1−ブテン樹脂樹脂組成物において、得られるポリ−1−ブテン樹脂(a)組成物の溶融パリソンのメルトテンションが高くなるため成形加工性が良好となり、高速でパイプに成形することが可能となる。また、耐衝撃性に優れる成形品が得られる点で、ポリ−1−ブテン樹脂(a1)とポリ−1−ブテン樹脂(a2)との配合割合は、重量比[(a1)/(a2)]で60/40〜95/5、好ましくは90/10〜70/30である。
このポリ−1−ブテン樹脂(a1)及びポリ−1−ブテン樹脂(a2)からなるポリ−1−ブテン樹脂(a)の製造例は、特開平5−9352号公報に記載されている。
また、本発明で好ましく用いられる他のポリ−1−ブテン樹脂(A)として、1−ブテン70〜100モル%及び炭素原子数2〜10の1−ブテン以外のα−オレフィン0〜30モル%を(共)重合して得られ、NMR法により測定されるアイソタクチック指数(mmmm%)が90以上であり、GPC法により求められる分子量分布(Mw/Mn)が3以上であり、かつ、チタン金属によって表される触媒残存量が50ppm以下であるポリ−1−ブテン樹脂(b)が挙げられる。
このようなポリ−1−ブテン樹脂(b)及びその製造方法については、EP0980396B1号公報に記載されている。
アイソタクティックポリプロピレン(B)
本発明で用いられるアイソタクティックポリプロピレン(B)としては、下記のような特性を有するプロピレン重合体が用いられる。このプロピレン重合体は、下記の特性を有していればホモポリプロピレンであっても、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体であっても、プロピレンブロック共重合体であってもよいが、好ましくはホモポリプロピレンあるいはプロピレン-αオレフィンランダム共重合体である。アイソタクティックポリプロピレンとしては、プロピレン由来の構成単位を90モル%以上、プロピレン以外の他のα−オレフィン由来の構成単位を10モル%以下の割合で有するものが用いられる。
本発明で用いられるアイソタクティックポリプロピレン(B)のメルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重下)は、0.01〜400g/10分好ましくは0.5〜90g/10分である。またDSC測定により得られる融点は、120℃以上であり、130℃以上が好ましく、150℃以上が更に好ましい。
このようなMFR値のアイソタクティックポリプロピレン(B)からは、流動性に優れ、大型品も成形することができるようなプロピレン重合体組成物が得られる。なおMFR値が400g/10分を超えるアイソタクティックポリプロピレンから形成される組成物は耐衝撃性(IZ衝撃強度)に劣ることがある。
アイソタクティックポリプロピレン(B)がプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体である場合にα-オレフィンとしては、エチレン及びまたは炭素数4〜20のαオレフィンから選ばれることが好ましく、これを0.3〜7mol%の量で、好ましくは0.3〜6mol%、更に好ましくは0.3〜5mol%の量で含有していることが好ましい。 なお本発明に用いる(B)アイソタクティックポリプロピレンにおいては、NMR法により測定したアイソタクティックペンタッド分率mmmmが0.9以上である。
なおプロピレン重合体の常温n-デカン可溶成分含量は、試料(プロピレン重合体)5gを、沸騰n-デカン200cc中に5時間浸漬して溶解した後、室温まで冷却して、析出した固相をG4ガラスフィルターで濾過した後、乾燥して測定した固相重量から逆算して求めることができる。
上記のような本発明で用いられるアイソタクティックポリプロピレン(B)は、種々の方法により製造することができるが、たとえば立体規則性触媒を用いて製造することができる。具体的には、固体状チタン触媒成分と有機金属化合物触媒成分とさらに必要に応じて電子供与体とから形成される触媒を用いて製造することができる。固体状チタン触媒成分としては、具体的に、三塩化チタンまたは三塩化チタン組成物が、比表面積が100m2/g以上である担体に担持された固体状チタン触媒成分、あるいはマグネシウム、ハロゲン、電子供与体(好ましくは芳香族カルボン酸エステルまたはアルキル基含有エーテル)およびチタンを必須成分とし、これらの必須成分が比表面積100m2/g以上である担体に担持された固体状チタン触媒成分が挙げられる。またメタロセン触媒で製造することもできる。これらのうち、特に後者の固体状チタン触媒成分が好ましい。
また有機金属化合物触媒成分としては、有機アルミニウム化合物が好ましく、有機アルミニウム化合物としては具体的に、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルアルミニウムジハライドなどが挙げられる。なお有機アルミニウム化合物は、使用するチタン触媒成分の種類に合わせて適宜選択することができる。
電子供与体としては、窒素原子、リン原子、硫黄原子、ケイ素原子あるいはホウ素原子などを有する有機化合物を使用することができ、好ましくは上記のような原子を有するエステル化合物およびエーテル化合物などが挙げられる。
このような触媒は、さらに共粉砕等の手法により活性化されてもよく、また上記のようなオレフィンが前重合されていてもよい。
プロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)
プロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体は、プロピレン成分を45〜89モル%、好ましくは45〜80モル%、好ましくは50〜75モル%、エチレン成分を1〜25モル%、好ましくは5〜23モル%、更に好ましくは10〜20モル%、必要に応じて炭素数4〜20のα−オレフィン由来の成分単位(a)を0〜30モル%、好ましくは、0〜25モル%、更に好ましくは、0〜20モル%の量含んでいる。
また(C)において、炭素数4から20のα−オレフィンが必須となる場合には、例えばプロピレン成分を好ましくは45〜89モル%、より好ましくは45〜80モル%、さらに好ましくは50〜75モル%、エチレン成分を好ましくは1〜25モル%、より好ましくは5〜23モル%、更に好ましくは10〜20モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の成分単位(a)を1〜30モル%、好ましくは、2〜25モル%、更に好ましくは、3〜20モル%の量含んでいる。
このような量でプロピレン、エチレン成分、必要に応じて炭素数4〜20のα−オレフィン成分を含有するプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)は、アイソタクティックポリプロピレンとの相溶性が良好となり、得られるプロピレン系重合体組成物は、充分な透明性、柔軟性、耐熱性、耐傷付性を発揮する傾向がある。
このようなプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/gの範囲にあることが望ましい。該プロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)の極限粘度[η]が、前記範囲内にあると、耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性、低温特性、耐動的疲労性などの特性に優れたプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体となる。
このプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)は、JIS K6301に準拠して、JIS3号ダンベルを用い、スパン間:30mm、引っ張り速度:30mm/minで23℃にて測定した、100%歪での応力(M100)が通常4Mpa以下、好ましくは3MPa以下、更に好ましくは2MPa以下である。該プロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)がこのような範囲にあると柔軟性、透明性、ゴム弾性に優れる。
このプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)は、X線回折で測定した結晶化度が通常20%以下、好ましくは0〜15%である。またプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)は単一のガラス転移温度を有し、かつ示差走査熱量計(DSC)によって測定したガラス転移温度Tgが、通常−10℃以下、好ましくは−15℃以下の範囲にあることが望ましい。該プロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)のガラス転移温度Tgが前記範囲内にあると、耐寒性、低温特性に優れる。
このプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)は、示差走査型熱量計(DSC)における吸熱曲線において融点(Tm、℃)が存在する場合には、融解熱量ΔHが通常30J/g以下であり、かつC3含量(mol%)と融解熱量ΔH(J/g)の関係において以下の関係式が成り立つことが好ましい。
ΔH<345Ln(C3含量mol%)-1492、ただしこの場合、76≦C3含量(mol%)≦90
またGPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は特に制限はないが通常4.0以下であり、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下であることが好ましい。 上記のようなプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)は、その一部が極性モノマーによりグラフト変性されていてもよい。この極性モノマーとしては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸あるいはその誘導体、ビニルエステル化合物、塩化ビニルなどが挙げられる。
変性プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体は、上記のようなプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)に、極性モノマーをグラフト重合させることにより得られる。プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)に、上記のような極性モノマーをグラフト重合させる際には、極性モノマーは、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部の量で使用される。このグラフト重合は、通常ラジカル開始剤の存在下に行なわれる。
ラジカル開始剤としては、有機過酸化物あるいはアゾ化合物などを用いることができる。
ラジカル開始剤は、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)および極性モノマーとそのまま混合して使用することもできるが、少量の有機溶媒に溶解してから使用することもできる。この有機溶媒としては、ラジカル開始剤を溶解し得る有機溶媒であれば特に限定することなく用いることができる。
またプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)に極性モノマーをグラフト重合させる際には、還元性物質を用いてもよい。還元性物質を用いると、極性モノマーのグラフト量を向上させることができる。
プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)の極性モノマーによるグラフト変性は、従来公知の方法で行うことができ、たとえばプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)を有機溶媒に溶解し、次いで極性モノマーおよびラジカル開始剤などを溶液に加え、70〜200℃、好ましくは80〜190℃の温度で、0.5〜15時間、好ましくは1〜10時間反応させることにより行うことができる。
また押出機などを用いて、無溶媒で、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)と極性モノマーとを反応させて、変性プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)を製造することもできる。この反応は、通常プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)の融点以上、具体的には120〜250℃の温度で、通常0.5〜10分間行なわれることが望ましい。
このようにして得られる変性プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体の変性量(極性モノマーのグラフト量)は、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)100重量%に対して、通常0.1〜50重量%、好ましくは0.2〜30重量%、さらに好ましくは0.2〜10重量%であることが望ましい。
本発明のプロピレン系重合体組成物に上記の変性プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体が含まれると、他の樹脂との接着性、相溶性に優れ、またプロピレン系重合体組成物から得られた成形体表面の濡れ性が改良される場合がある。
プロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)の製造
本発明に係わるプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)は上記(B)アイソタクティックポリプロピレン製造用メタロセン触媒を用いて同様に製造することができ、またメタロセン触媒を用いて製造することも出来るが、これに限定されるものではない。
ポリ−1−ブテン樹脂樹脂組成物の調整
本発明に係わるポリ−1−ブテン樹脂組成物は、上記ポリ−1−ブテン樹脂(A)と、上記アイソタクティックポリプロピレン(B)と、上記プロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)を含んでなるものであり、ポリ1−ブテン(A)とアイソタクティックポリプロピレン(B)と、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)との合計100重量部に対して、ポリ1−ブテン(A)が80〜99.9重量部、好ましくは90〜99.9重量部、より好ましくは85〜99.9重量部含まれており、アイソタクティックポリプロピレン(B)とプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)とが合計0.1〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.1〜10重量部含まれている。上記範囲にあれば、柔軟性と高温クリープ強度のバランスに優れる。またアイソタクティックポリプロピレン(B)/プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)の存在割合が1/99〜50/50、好ましくは5/95〜50/50、より好ましくは10/90〜50/50の範囲にあることが好ましい。上記範囲にあれば、柔軟性と高温クリープ強度のバランスに優れる。
また、本発明に係るポリ1−ブテン系樹脂組成物は、必要に応じて任意に核剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防かび剤、発錆防止剤、滑剤、充填剤、顔料、アンチブロッキング剤、スリップ防止剤、防曇剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。 上記核剤としては、たとえばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン(ポリアミド)、ポリカプロラクトン、タルク、酸化チタン、1,8−ナフタルイミド、フタルイミド、アリザリン、キニザリン、1,5−ジヒドリキシ-9,10-アントラキノン、キナリザリン、2-アントラキノンスルホン酸ナトリウム、2-メチル-9,10-アントラキノン、アントロン、9-メチルアントラセン、アントラセン、9,10-ジヒドロアントラセン、1,4-ナフトキノン、1,1-ジナフチル、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、酸化亜鉛、ハイドロキノン、アントラニル酸、エチレンビスステアリルアミド、ソルビトール誘導体、さらには特開平8−48838号公報に記載のポリカルボン酸系アミド化合物、ポリアミン系アミド化合物及びポリアミノ酸系アミド化合物、特公平5−58019号公報に記載のビニルシクロアルカン重合体などが挙げられる。
これらの核剤は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明の組成物に上記核剤を添加する場合、(A)+(B)+(C)の合計100重量部に対して、通常0.01〜2重量部であり、0.05〜0.5重量部であることが好ましい。
本発明に係わるポリ−1−ブテン樹脂組成物は、上記ポリ−1−ブテン樹脂(A)と、上記アイソタクティックポリプロピレン(i)と、上記プロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)、及び必要に応じて各種添加剤を溶融混練することにより調整することができる。
上記混練は、たとえば一軸押出機、二軸押出機、二軸混練機、バンバリーミキサーなどの混練装置を用いて行うことができる。
本発明においては、あらかじめアイソタクティックポリプロピレン(i)と、上記プロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(C)とからなる組成物(X)を製造し、次いでこの組成物(X)と(A)ポリ1−ブテン樹脂とから本発明のポリ1−ブテン系樹脂組成物を製造することが柔軟性と耐熱性のハ゛ランスの点から好ましい。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
[合成例1]
(a)プロピレン・エチレン・ブテン共重合体(PEBR)の合成
充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、833mlの乾燥ヘキサン、1−ブテン100gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を40℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.76MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.8MPaに調整した。次いで、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.001mmolとアルミニウム換算で0.3mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温40℃、系内圧力を0.8MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、36.4gであり、極限粘度[η]が1.81dl/gであり、ガラス転移温度Tgは−29℃であり、エチレン含量は17モル%であり、ブテン含量は7モルであり、GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)は2.1であった。またDSC測定による融解熱量は明瞭な融解ピークは確認できなかった。本PEBRの基本物性を表.1に示す。以上のようにして得られたプロピレン・ブテン・エチレン共重合体の収量は36.4gであり、[η]は1.8dl/gであり、ガラス転移温度Tgは−29℃であり、エチレン含量は17モル%であり、ブテン含量は7モルであり、GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)は2.1であった。またDSC測定による融解熱量は明瞭な融解ピークは確認できなかった。
[アイソタクティックポリプロピレン(iPP)]
MFR=7g/10min,エチレン含量=2.2mol%,ブテン含量=1.5mol%、融点140℃のランダムPPを使用した。NMRにより測定したmmmmは0.96であった。
[プロピレン系重合体組成物(X)]
iPP 20重量部と、合成例1で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体 80重量部とを200℃で2軸押出機にて混練してプロピレン系重合体組成物(X)を得た。
[ポリ−1−ブテン樹脂(A),(PB)]
表1記載の物性を有するポリ−1−ブテン樹脂を使用した。
Figure 0004594141
[実施例1]
上記のポリ−1−ブテン樹脂(A)93.75重量%とプロピレン重合体組成物(X)6.25重量%(アイソタクティックポリプロピレン(iPP)1.25重量%、プロピレン・エチレン・ブテン共重合体(iPEBR)5重量部)を、40mmφ一軸押出機によりメルトブレンドし、ペレット状のポリ−1−ブテン樹脂組成物を得た。 次いで、このポリ−1−ブテン樹脂組成物組成物を190℃、5分の条件でプレス成形することで、厚さ2mmのプレスシートを得た。
引張伸び及び引張弾性率の評価方法
JIS K7113に準拠して、得られたプレスシートから2号型試験片を用いて、引張速度=50mm/min,測定温度=23℃,95℃の条件で試験を実施し、ポリ−1−ブテン樹脂組成物の降伏点応力び引張弾性率(ヤング率)を測定した。
パイプの製造
上記のポリ−1−ブテン樹脂組成物を用いて、スクリュー径90mmのパイプ成形機にて、設定温度=180℃、冷却水温=11℃、成形速度=3m/minの条件で、内径27mm,肉厚=2.4mmのパイプを成形した。
静水圧強度試験方法
上記で得られたパイプの静水圧強度を、ISO167に従って、95℃,フープストレス=7.4MPaの条件で測定した。得られた結果を、表2に示す。
[比較例1]
実施例1において、プロピレン・エチレン・ブテン共重合体(PEBR)の代わりに、エチレン−プロピレン共重合体(EPR,MFR=0.7g/10min、密度=870kg/m3、プロピレン含量20モル%を用いた以外は、実施例1と同様にしてペレット状のポリ−1−ブテン樹脂組成物を得た。
以下、この組成物を用いて実施例1と同様に測定を行った。結果を表2に示す。
Figure 0004594141
本発明のポリ1−ブテン系樹脂組成物は、柔軟性と耐熱クリープ特性のバランスに優れる。本発明の成形体は、柔軟性と耐熱クリープ特性のバランスに優れることから、施工性に優れ、かつ強度に優れた給水給湯用パイプやパイプ用継ぎ手に好適に用いられる。

Claims (7)

  1. 1−ブテン70〜100モル%及び炭素原子数2〜10の1−ブテン以外のα−オレフィン0〜30モル%を(共)重合して得られ、メルトフローレート(MFR;ASTM D1238,190℃,2.16kg)が0.01〜50g/10minであるポリ1−ブテン樹脂(A)と、アイソタクティックポリプロピレン(B)と、プロピレン成分を45〜89モル%、エチレン成分を1〜25モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の成分単位(a)として1−ブテン由来の成分単位〜30モル%の量含むプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)とを含んでなり、
    ポリ1−ブテン(A)とアイソタクティックポリプロピレン(B)と、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)との合計100重量部に対して、ポリ1−ブテン(A)が80〜99.9重量部、アイソタクティックポリプロピレン(B)と、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)とが合計0.1〜20重量部の割合で含まれており、アイソタクティックポリプロピレン(B)/プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(C)の存在割合が重量比で1/99〜40/60の範囲にあることを特徴とするポリ1−ブテン系樹脂組成物。
  2. 前記プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体(C)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度が、0.01〜10dl/kgである請求項1に記載のポリ1−ブテン系樹脂組成物
  3. 前記ポリ1−ブテン樹脂(A)の、NMRにより測定されるアイソタクチック指数(mmmm%)が90以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリ1−ブテン系樹脂組成物
  4. 前記ポリ−1ブテン樹脂(A)が、メルトフローレート(MFR;ASTM D1238,190℃,2.16kg)が0.01〜10g/10minであり、GPC法により求められる分子量分布(Mw/Mn)が6以下であり、かつ、NMRにより測定されるアイソタクチック指数(mmmm%)が90以上であるポリ1−ブテン樹脂(a1)60〜95重量部、及びメルトフローレート(MFR;ASTM D1238,190℃,2.16kg)が該ポリ1−ブテン樹脂(a1)のMFR値の20倍以上であり、GPC法により求められる分子量分布(Mw/Mn)が6以下であり、かつ、NMRにより測定されるアイソタクチック指数(mmmm%)が90以上であるポリ1−ブテン樹脂(a2)5〜40重量部からなるポリ−1ブテン樹脂(a)(ただし(a1)と(a2)の合計は100重量部とする)であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のポリ−1ブテン樹脂組成物。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載のポリ−1ブテン系樹脂組成物からなる成形体。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載のポリ−1ブテン系樹脂組成物からなる給水給湯用パイプ
  7. 請求項1〜のいずれかに記載のポリ1−ブテン系樹脂組成物からなるパイプ用継手。
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