JP5140463B2 - 酸性水中油型乳化食品 - Google Patents

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Description

本発明は、加熱後も安定な乳化状態を有した耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品に関する。
マヨネーズやタルタルソースなどの酸性水中油型乳化食品は、日常の食生活で広く親しまれている調味料の一種である。当該乳化食品を用いた代表的な食品としてはサラダがあるが、近年、その用途が拡大されている。例えば酸性水中油型乳化食品をスプレッドとして食パンに塗った後、オーブントースターで焼成したり、ソースとして使用し、該ソースを含有したフライ用食品をフライしたり、あるいはフライ済み食品を電子レンジで加熱したりするなどがあげられる。これらの食品はいずれも酸性水中油型乳化食品と共に強力な加熱処理を施している。
しかしながら、一般的にマヨネーズやタルタルソース等の酸性水中油型乳化食品は乳化材として卵黄を使用しているため、これに加熱処理を施すと、酸性水中油型乳化食品中の卵黄が熱変性することから乳化状態が壊れ油分離を生じ、食感及び外観を損なうという問題があった。
一方、耐熱性を有した酸性水中油型乳化食品として、特公昭53−44426号公報(特許文献1)及び特公昭55−42817号公報(特許文献2)には、ホスホリパーゼAで処理した卵黄を使用した調味料が提案されている。
しかしながら、上記提案の酸性水中油型乳化調味料を上述のような強力な加熱処理を施す食品に使用した場合、十分に油分離を抑制することができず、また、滑らかな食感が保持されないことから、耐熱性について十分に満足し得るものではなかった。
特公昭53−44426号公報 特公昭55−42817号公報 特開昭61−141861号公報
そこで、本発明の目的は、加熱後も安定な乳化状態を有した耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品を提供するものである。
本発明者は、酸性水中油型乳化食品に使用可能な様々な配合原料について鋭意研究を重ねた。その結果、特定の乾燥卵白とホスホリパーゼA処理卵黄を配合させるならば、意外にも加熱後も安定な乳化状態を有した耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品となることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)乾燥卵白およびホスホリパーゼA処理卵黄を配合し、前記乾燥卵白が脱糖処理およびpH9以上の乾燥処理物に65〜75℃で熱蔵処理が施されており、且つ乾燥卵白水溶液(乾燥卵白1部に対し清水7部)の加熱凝固物の離水率が3%以下である酸性水中油型乳化食品、
(2)乾燥卵白が68℃以上で熱蔵処理されている(1)の酸性水中油型乳化食品、
(3)乾燥卵白の配合量が製品に対し0.1〜10%である(1)または(2)記載の酸性水中油型乳化食品。
(4)ホスホリパーゼA処理卵黄の配合量が製品に対し生卵黄換算で0.5〜12%である(1)乃至(3)のいずれかに記載の酸性水中油型乳化食品、
である。
なお、乾燥卵白を配合した酸性水中油型乳化食品としては、例えば、特開昭61−141861号公報(特許文献3)に、冷凍耐性を有した酸性水中油型乳化食品として提案されている。食品用として広く流通している乾燥卵白としては、原料の液卵白を脱糖処理に最適なpH(弱酸性)に調整した後、脱糖処理および噴霧乾燥し、得られた中性程度の乾燥品を約60℃で熱蔵したものがあり、例えば、キユーピータマゴ(株)製の商品名「乾燥卵白Kタイプ」が挙げられる。
そこで、本発明者は、上記市販されている乾燥卵白を用いて酸性水中油型乳化食品を製造し、上述のような強力な加熱処理を施す食品に使用し、当該製造物が耐熱性を有するか試験を行った。しかしながら、得られた乳化食品は、耐熱性を有するとは言い難いものであった。
本発明によれば、加熱後も安定な乳化状態を有した耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品を提供できることから、加熱を伴う食品への酸性水中油型乳化食品の需要拡大が期待される。
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
本発明において酸性水中油型乳化食品とは、食用油脂が油滴として水相中に略均一に分散して水中油型の乳化状態が維持され、常温流通を可能ならしめるためにpHを4.6以下に調整され、粘度が30Pa・s以上の酸性乳化食品である。このような酸性水中油型乳化食品は、具体的には、例えば、マヨネーズ、乳化型ドレッシング等の乳化液状調味料、タルタルソース等の具材入り酸性水中油型乳化食品などが挙げられる。
本発明は、上記酸性水中油型乳化食品において、乾燥卵白およびホスホリパーゼA処理卵黄を配合し、前記乾燥卵白が脱糖処理、および65℃以上で熱蔵処理が施されており、且つ乾燥卵白水溶液(乾燥卵白1部に対し清水7部)の加熱凝固物の離水率が4%以下であることを特徴とし、これにより、加熱後も安定な乳化状態を有した耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品となる。
ここで、乾燥卵白とは、液卵白を、例えば、噴霧乾燥(スプレードライ)、静置乾燥(パンドライ)、凍結乾燥(フリーズドライ)などの任意の乾燥方法により乾燥した後、熱蔵処理を施したものである。本発明は、前記乾燥卵白において、更に熱蔵処理を65℃以上、好ましくは68℃以上、より好ましくは70℃以上で施したものであり、且つ得られた乾燥卵白1部を清水7部に溶解させた乾燥卵白水溶液の熱凝固物を後述する方法で測定したときの離水率が4%以下、好ましくは3.3%以下、より好ましくは3.0%以下のものである。
熱蔵処理を施さないと、あるいは熱蔵処理が前記温度より低いと、たとえ離水率の条件を満たし、後述するホスホリパーゼA処理卵黄を併用したとしても、後述の試験例で示しているとおり酸性水中油型乳化食品は、加熱後の状態において油分離が観察され、安定な乳化状態を有し難い傾向となる。一方、離水率が前記値より高いと、たとえ熱蔵処理条件を満たし、後述するホスホリパーゼA処理卵黄を併用したとしても、同様に加熱後油分離が観察され安定な乳化状態を有し難い傾向となり好ましくないからである。
なお、離水率は、以下の手順で測定された値である。つまり、1部の乾燥卵白に対して、7部の清水を加えて溶解し、折径60mmのナイロン製のケーシングに充填密封して80℃で40分間加熱して加熱凝固物を製する。次いで、ケーシング詰め加熱凝固物を5℃で24時間保存後、室温(20℃)に3時間放置して加熱凝固物の品温を20℃にする。次いで、加熱凝固物をケーシングから取り出して、長さ方向に対して直角に厚さ3cmにカットする。ついで、110mm直径の濾紙(定性濾紙No.2)5枚を重ねた上にカットした加熱凝固物を、カットした面のいずれか片方が底面となるようにのせた後、1時間室温(20℃)に放置して、放置前後の加熱凝固物の質量変化から下記式により離水率を求めた。
離水率(%)=(放置前の加熱凝固物の質量−放置後の加熱凝固物の質量)×100/(放置前の加熱凝固物の質量)
前記熱蔵処理条件および離水率の条件を満たす乾燥卵白の製造方法について、以下に詳述する。なお、本発明の乾燥卵白は、上記2つの条件を満たすものであればいずれのものでもよく、下記方法に限定されるものではない。
まず、乾燥卵白に用いる液卵白を用意する。液卵白としては、例えば、卵を割卵して卵黄と分離した生液卵白、これに濾過、殺菌、冷凍、濃縮などの処理を施したものの他、卵白中の成分を除去する処理、例えば、糖分を除去する脱糖処理やリゾチームを除去する処理を施したものなどが挙げられるが、本発明は、これらの液卵白の中でも、脱糖処理を施した液卵白を用いることが肝要である。脱糖処理を行わないと、熱蔵処理中に卵白蛋白質中のアミノ基と遊離の糖がメイラード反応を起こし、褐変、不快臭の発生などの品質の低下を伴うためか、本発明の乳化食品自体が得られないか、得られたとしても加熱後に油分離が観察され本発明の目的とする耐熱性に優れた酸性水中油型乳化食品が得られないからである。脱糖処理は、酵母、酵素、細菌などを用いて常法により行えばよく、液卵白中の遊離の糖含有率が好ましくは0.1%以下となるように行うことが好ましい。
一般に、液卵白を酵母脱糖、酵素脱糖などの方法で脱糖処理する際には、これらの酵母や酵素の適正pHが弱酸性から中性であり、有機酸などの酸剤を添加して液卵白のpHを弱酸性から中性とするため、得られた乾燥卵白もpHが7前後となる。しかしながら、得られた乾燥卵白の離水率は、4%を超えるものとなり、当該乾燥卵白を用いた酸性水中油型乳化食品は、加熱後に油分離が観察され好ましくない。
これに対し、乾燥卵白の離水率を4%以下とするには、例えば、前記脱糖処理の際に有機酸などの酸剤を添加しないか、またはごくわずかの添加に抑え、噴霧乾燥などの乾燥処理後のpHを9以上、好ましくは9.5以上、より好ましくは10以上とするとよい。具体的には、用いる液卵白のpHや乾燥処理方法などにもよるが、有機酸などの酸剤を添加せずに酵母で脱糖処理をした場合、pH9.9〜10.1程度の液卵白の乾燥物を得ることができる。また、本発明においては、乾燥処理後のpHが高いほうが離水率の低いものが得やすいことから、有機酸などの酸剤を添加しないほうが好ましいが、脱糖処理効率を上げるなどの目的のために、例えば、酸剤としてクエン酸等の有機酸を用いる場合は、脱糖の際の有機酸添加量を液卵白1kgに対し1000mg以下、好ましくは500mg以下、より好ましくは200mg以下、さらに好ましくは100mg以下とする。
脱糖処理前の液卵白のpHに比べて、脱糖処理後のpHはやや低下する傾向がある。例えば、脱糖処理前の液卵白のpHにもよるが、酵母で脱糖処理を行った場合、pHが0.1〜2.5程度低下する。一方、脱糖処理後の液卵白である乾燥処理前の液卵白のpHに比べて、乾燥処理後のpHはやや上昇する傾向がある。例えば、乾燥条件にもよるが、通常の噴霧乾燥条件である150〜200℃の熱風で乾燥した場合、pHが1〜3程度上昇する。したがって、これらを考慮し、乾燥処理後の液卵白の乾燥物のpHを上記範囲に調整すればよい。
また、液卵白の乾燥物のpHを前記特定範囲に調製するために、リン酸三ナトリウムなどのアルカリ剤を少量添加してもよいが、アルカリ剤に由来する塩類により、熱蔵中にタンパク質が熱変性して不溶化するいわゆる煮えが生じ易くなることから、煮えなどが発生しないように微調整しながら行う必要があり製造コストがかかって経済的でないことから、乾燥処理後のpHは10.7以下が好ましい。
乾燥処理は、特に制限はなく、例えば、噴霧乾燥(スプレードライ)、静置乾燥(パンドライ)、凍結乾燥(フリーズドライ)などの種々の方法により乾燥物の水分含量が好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下となるように常法に則り行えばよい。
なお、pHは、液卵白などの液状物の場合は、そのまま、乾燥物の場合は、1部の乾燥物に対して7部の清水を加えて溶解したものを、pHメーターで測定したときの値である。また、乾燥物の水分含量は、赤外線水分計((株)ケット科学研究所、FD−600)によって測定したときの値である。
次に、液卵白の乾燥物を65℃以上、好ましくは68℃以上、より好ましくは70℃以上で熱蔵処理を施す。上述の方法で得られた液卵白の乾燥物は、離水率4%以下の条件を満たすが、熱蔵処理を施さないと、あるいは熱蔵処理が前記温度より低いと、たとえ離水率の条件を満たし、後述するホスホリパーゼA処理卵黄を併用したとしても、後述の試験例で示しているとおり酸性水中油型乳化食品は、加熱後の状態において油分離が観察され安定な乳化状態を有し難い傾向となり好ましくないからである。また、後述する熱蔵処理の方法にもよるが、前記熱蔵処理条件により、離水率は更に0.1〜1程度低下する。
熱蔵処理の方法としては、液卵白の乾燥物を容器に封入して、あるいは乾燥物をバットなどの平坦な容器に厚さが1mm〜10cm程度に広げ、これを上記所定の温度に設定した恒温機、乾燥機、熱蔵庫などに保存して行うとよい。特に、二酸化炭素を除去しながら熱蔵処理を施す方法は、離水率をより低下させ、得られた乾燥卵白の離水率が3%以下となり、当該乾燥卵白を用いた酸性水中油型乳化食品は、耐熱性に優れ好ましい。具体的には、乾燥卵白の二酸化炭素の濃度が好ましくは1%以下、より好ましくは0.8%以下である。
なお、乾燥卵白の二酸化炭素の濃度は、乾燥卵白25gを250mL容量のバイアル瓶に密封して75℃の恒温機で24時間保存した後、恒温機から取り出して1分以内に前記バイアル瓶内の二酸化炭素濃度を二酸化炭素濃度計(PBI-Dansensor社製 Check Point O2/CO2)で測定した値である。
二酸化炭素を除去しながら熱蔵処理を施す方法としては、例えば、液卵白の乾燥物をバットなどの容器に広げて熱蔵する場合は、1)加熱空気が換気されている恒温機、乾燥機、熱蔵庫などに保存して行う。2)乾燥物を二酸化炭素透過性を有した、例えば、好ましくは20〜80μm厚、より好ましくは30〜70μm厚のポリエチレンフィルムからなるパウチなどに封入し、加熱空気が換気されている恒温機、乾燥機、熱蔵庫などに保存して行う。3)乾燥物を二酸化炭素吸収剤、具体的には、1kgの乾燥物に対し200〜600mLの吸収能を有する二酸化炭素吸収剤と共に容器に封入して、熱蔵処理を施す。あるいは前記2)と3)を組み合わせる方法などが挙げられる。
本発明において、熱蔵処理の温度は、下限値しか規定していないが、熱蔵温度があまり高すぎると煮えが生じる場合があり、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。また、熱蔵処理の処理日数は、規定していないが、好ましくは1〜30日、より好ましくは2〜20日である。熱蔵処理の処理日数が前記範囲より短いと、熱蔵処理による効果が発現されず、酸性水中油型乳化食品の加熱後の状態において油分離が観察され、一方、前記範囲より長いと、生産性に劣るばかりか、熱蔵処理による効果がそれ以上発現し難い傾向となるためである。
上述した乾燥卵白の配合量は、後述のホスホリパーゼA処理卵黄の配合量にもよるが、製品に対し0.1〜10%が好ましく、0.5〜8%がより好ましい。配合量が、前記範囲より少ないと、たとえ後述するホスホリパーゼA処理卵黄を併用したとしても、酸性水中油型乳化食品の加熱後の状態において油分離が観察され安定な乳化状態を有し難い傾向となり、一方、前記範囲より多いと、滑らかな食感を有した乳化食品が得られ難く好ましくないからである。
本発明の酸性水中油型乳化食品は、上述した乾燥卵白に加えホスホリパーゼA処理卵黄を配合したものである。ホスホリパーゼA処理卵黄は、卵黄の主成分である卵黄リポ蛋白質(卵黄リン脂質、卵黄油およびコレステロール等の卵黄脂質と卵黄蛋白の複合体)の構成リン脂質にリン脂質分解酵素であるホスホリパーゼAあるいはホスホリパーゼAを作用させてリン脂質の1位あるいは2位の脂肪酸残基を加水分解してリゾリン脂質とした卵黄をいう。
ホスホリパーゼA処理卵黄の前記酵素処理による加水分解の程度としては、リゾホスファチジルコリンとホスファチジルコリンの合計量に対するリゾホスファチジルコリンの割合がイアトロスキャン法(TLC−FID法)で分析した場合、その値(本発明の「リゾ化率」)が、10〜80%が好ましく、30〜70%がより好ましい。リゾ化率が前記値より低いと、上述の乾燥卵白を併用したとしても、酸性水中油型乳化食品の加熱後の状態において油分離が観察され安定な乳化状態を有し難い傾向となる。一方、リゾ化率を前記値より高くしたとしても、それ以上の乳化安定性の改善効果が得られ難く、またホスホリパーゼA処理卵黄の製造コストもかかり高価となり好ましくないからである。
ホスホリパーゼA処理卵黄の配合量は、食用油脂の配合量や他の原料、例えば、乳化材との組み合わせ等にもよるが、製品に対し生卵黄換算で0.5〜12%が好ましく、1〜8%がさらに好ましい。配合量が前記値より少ないと、上述の乾燥卵白を併用したとしても、後述の試験例で示しているとおり酸性水中油型乳化食品は、加熱後の状態において油分離が観察され安定な乳化状態を有し難い傾向となる。一方、配合量を前記値より多くしたとしても、それ以上の乳化安定性の改善効果が得られ難く、製品も高価となり好ましくないからである。なお、卵白を含有した全卵等をホスホリパーゼAで処理したホスホリパーゼA処理全卵等を用いた場合は、当該酵素処理された卵黄部分がホスホリパーゼA処理卵黄に相当する。
本発明の酸性水中油型乳化食品は、上述の乾燥卵白とホスホリパーゼA処理卵黄を配合する他に本発明の効果を損なわない範囲で酸性水中油型乳化食品に通常用いられている各種原料を適宜選択し含有させることができる。例えば、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油、パーム油、魚油、卵黄油などの動植物油及びこれらの精製油、並びにMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリドなどのように化学的あるいは酵素的処理を施して得られる油脂などの食用油脂、キサンタンガム、タマリンド種子ガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、グアーガム、アラビアガム、サイリュームシードガムなどのガム質、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、これらの澱粉をアルファ化、架橋などの処理を施した化工澱粉、並びに湿熱処理澱粉などの澱粉類、澱粉分解物、デキストリン、デキストリンアルコール、オリゴ糖、オリゴ糖アルコールなどの糖類、食酢、クエン酸、乳酸、レモン果汁などの酸味材、グルタミン酸ナトリウム、食塩、砂糖などの各種調味料、卵黄、全卵、液卵白、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸化澱粉などの乳化材、動植物のエキス類、からし粉、胡椒などの香辛料、各種蛋白質やこれらの分解物、ダイス状のゆで卵、きゅうりのピクルス、タマネギ、パセリなどのみじん切りにした野菜などが挙げられる。
また、本発明の製造方法は、上述の乾燥卵白とホスホリパーゼA処理卵黄を一原料として配合させる以外は、酸性水中油型乳化食品の常法に則り製造すればよく、例えば、上述の乾燥卵白とホスホリパーゼA処理卵黄を配合し均一にした水相原料をミキサー等で攪拌させながら油相原料と注加して粗乳化し、次にコロイドミル、高圧ホモゲナイザーなどで仕上げ乳化をした後、ボトル容器やガラス容器などに充填密封する。
以下、本発明の酸性水中油型乳化食品について、実施例、比較例並びに試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
[実施例1]
<乾燥卵白の調製>
殻付卵を割卵分離して得られた液卵白1000kgにパン用酵母2kgを添加し35℃で4時間脱糖処理を行った。次に、この脱糖液卵白を170℃で噴霧乾燥し液卵白の乾燥物(pH10.0、水分含量7%)を得た。この乾燥物を10kgずつ厚み60μmのポリエチレン袋に充填密封し、これらの包装体を、庫内の加熱空気が換気されている庫内温度75℃の熱蔵庫に保存して75℃、14日間の熱蔵処理を行い乾燥卵白を得た。なお、熱蔵処理する際には、包装体を熱蔵庫内の金網でできた棚に一袋ずつ重ねずに並べた。また、得られた乾燥卵白の離水率は2.5%であり、二酸化炭素濃度は0.6%であった。前記離水率は段落[0018]〜段落[0019]、前記二酸化炭素濃度は段落[0030]で説示した方法で求め、以下の実施例および比較例も同様に行った。
<タルタルソースの調製>
下記に示す配合割合で仕上がり100kgのタルタルソースを製した。つまり、乾燥卵白、ホスホリパーゼA処理卵黄、殺菌卵黄、食酢、食塩、クエン酸、胡椒、清水をミキサーに入れ、攪拌しながら(320rpm)植物油を徐々に添加して粗乳化し、更にコロイドミル(3500rpm)に通して仕上げ乳化を施すことで本発明で用いるマヨネーズを製した。次に、ゆで卵(Mサイズ)を脱殻した後、格子刃11mmのゾリア式ダイサーにてサイズ11mmのダイス状のゆで卵を製した。またタマネギ大を皮むきした後、サイレントカッターにてみじん切りにして布巾に包み、さらしてしぼりタマネギのみじん切りを得て、同じくきゅうりのピクルスをサイレントカッターにてみじん切りにしてきゅうりのピクルスのみじん切りを得た。さらにパセリをミキサーでみじん切りにしてパセリのみじん切りを得た。次に、上記方法で得られたマヨネーズ、ダイス状のゆで卵、タマネギ、きゅうりのピクルス、及びパセリのみじん切りをホバートミキサーに入れ、低速回転で2分間攪拌した後、容量300gの三層のラミネート容器に充填することにより本発明品のタルタルソースを製した。
<配合割合>
植物油 45%
乾燥卵白 1%
ホスホリパーゼA処理卵黄 3.5%
(リゾ化率55%)
殺菌卵黄 1.5%
食酢(酸度12%) 2.5%
食塩 1%
クエン酸 0.3%
胡椒 0.1%
ゆで卵(ダイス状) 20%
タマネギ(みじん切り) 5%
ピクルス(みじん切り) 4.5%
パセリ(みじん切り) 0.5%
清水 残余
―――――――――――――――――――――――
合計 100%
[比較例1]
<乾燥卵白の調製>
実施例1の乾燥卵白の調製において、液卵白を脱糖処理せずに直接噴霧乾燥した以外は同様の方法で乾燥卵白を調製した。
<タルタルソースの調製>
実施例1と同様のタルタルソースの配合割合で、同様の方法で容器詰めタルタルソースを調製したところ、マヨネーズのコロイドミルでの仕上げ乳化の段階で、油分離が発生した。
[比較例2]
<乾燥卵白の調製>
実施例1の乾燥卵白の調製において、液卵白を脱糖処理せずに直接噴霧乾燥し、熱蔵処理を1日間行った以外は同様の方法で乾燥卵白を調製した。
<タルタルソースの調製>
実施例1と同様のタルタルソースの配合割合で、同様の方法で容器詰めタルタルソースを調製した。なお、熱蔵処理を2日間以上行った乾燥卵白を用いた場合は、比較例1と同様、マヨネーズのコロイドミルでの仕上げ乳化の段階で、油分離が発生した。
[試験例1]
実施例1、ならびに比較例1および2より、乾燥卵黄の脱糖処理の有無による酸性水中油型乳化食品の乳化への影響、および耐熱性への影響を調べた。乳化への影響は、具材を投入する前のマヨネーズの仕上がり乳化状態を目視で観察し評価した。また、耐熱性への影響は、110mm直径の濾紙(定性濾紙No.2)2枚を重ねた上に、得られたタルタルソース8gを乗せ、電子レンジ(600W)で10秒間、15秒間、20秒間加熱処理し、1時間室温(20℃)に放置した後、ろ紙への油のにじみの状態を、目視で観察し評価した。
Figure 0005140463
表1より、脱糖処理を施していない乾燥卵白を用いたタルタルソース(酸性水中油型乳化食品)は、用いたマヨネーズの仕上がり乳化状態が油分離しているか(比較例1)、あるいは均一に乳化していたとしてもタルタルソースが耐熱性を有しないものであった(比較例2)。これに対し、脱糖処理を施した乾燥卵白を用いたタルタルソース(実施例1)は、用いたマヨネーズの仕上がり乳化状態が均一に乳化しており、タルタルソースも耐熱性に優れていた。これより、耐熱性を有した酸性水中油型乳化食品を得るには、脱糖処理を施した乾燥卵白を用いなければならないことが理解される。なお、比較例1において、マヨネーズの仕上がり乳化状態が油分離していたため、耐熱性に係る試験は行わなかった。
[実施例2]
<乾燥卵白の調製>
実施例1の乾燥卵白の調製において、厚さ60μmのポリエチレン袋に換えて100μmのポリエチレン袋を用い、かつ更にクラフト袋に入れて庫内の加熱空気が換気されていない状態で熱蔵処理を行った以外は同様の方法で乾燥卵白を調製した。得られた乾燥卵白は、離水率が3.3%であり、二酸化炭素濃度が1.8%であった。
なお、本実施例も含め、実施例3〜4、および比較例3〜4のタルタルソースの調製は、実施例1と同様のタルタルソースの配合割合で、同様の方法で容器詰めタルタルソースを調製した。得られたタルタルソースは、いずれもマヨネーズの仕上がり乳化状態が均一に乳化されており良好であった。
[実施例3]
<乾燥卵白の調製>
実施例1の乾燥卵白の調製において、厚さ60μmのポリエチレン袋に換えて100μmのポリエチレン袋を用い、かつ更にクラフト袋に入れて庫内の加熱空気が換気されていない庫内温度68℃の熱蔵庫で熱蔵処理を行った以外は同様の方法で乾燥卵白を調製した。得られた乾燥卵白は、離水率が3.3%であり、二酸化炭素濃度が2.0%であった。
[実施例4]
<乾燥卵白の調製>
実施例1の乾燥卵白の調製において、厚さ60μmのポリエチレン袋に換えて100μmのポリエチレン袋を用い、かつ更にクラフト袋に入れて庫内の加熱空気が換気されていない庫内温度65℃の熱蔵庫で熱蔵処理を行った以外は同様の方法で乾燥卵白を調製した。得られた乾燥卵白は、離水率が3.4%であり、二酸化炭素濃度が2.2%であった。
[比較例3]
<乾燥卵白の調製>
実施例1の乾燥卵白の調製において、厚さ60μmのポリエチレン袋に換えて100μmのポリエチレン袋を用い、かつ更にクラフト袋に入れて庫内の加熱空気が換気されていない庫内温度60℃の熱蔵庫で熱蔵処理を行った以外は同様の方法で乾燥卵白を調製した。得られた乾燥卵白は、離水率が3.5%であり、二酸化炭素濃度が2.3%であった。
[比較例4]
<乾燥卵白の調製>
殻付卵を割卵分離して得られた液卵白10kgに10%クエン酸溶液350gとパン用酵母20gを添加し35℃で4時間脱糖処理を行った。次に、この脱糖液卵白を170℃で噴霧乾燥し液卵白の乾燥物(pH7.3、水分含量7%)を得た。この乾燥物を1kgずつ厚み60μmのポリエチレン袋に充填密封し、これらの包装体を75℃の恒温機に保存して定期的に恒温機内の加熱空気を換気しながら75℃、14日間の熱蔵処理を行い乾燥卵白を得た。なお、得られた乾燥卵白の離水率は6.1%であり、二酸化炭素濃度は0.1%であった。
[試験例2]
脱糖処理した乾燥卵白において、更に65℃以上で熱蔵処理が施され、且つ乾燥卵白水溶液(乾燥卵白1部に対し清水7部)の加熱凝固物の離水率が4%以下の乾燥卵白を用いないと、たとえホスホリパーゼA処理卵黄と組み合わせたとしても、得られる酸性水中油型乳化食品は、耐熱性に優れたものとならないことを実証するため、実施例1〜4、および比較例3〜4で得られた仕上がり乳化状態の耐熱性試験を、試験例1と同様の方法で行い評価した。
Figure 0005140463
表2より、脱糖処理した乾燥卵白を用いたタルタルソースにおいて、乾燥卵白が離水率4%以下であったとしても熱蔵温度を65℃未満で行ったものを用いた乳化食品(比較例3)、あるいは乾燥卵白が熱蔵処理を65℃以上で行ったとしても離水率が4%超のものを用いた乳化食品(比較例4)は、いずれも耐熱性を有しないものであった。これに対し、乾燥卵白が熱蔵処理を65℃以上で行い、且つ離水率が4%以下のものを用いたタルタルソース(実施例1〜4)は、耐熱性に優れていることが理解される。
また、実施例1〜4の耐熱性の結果より、熱蔵温度が好ましくは68℃以上、より好ましくは70℃以上、離水率が好ましくは3.3%以下、より好ましくは3.0%以下の乾燥卵白を用いたタルタルソース(酸性水中油型乳化食品)は、より優れた耐熱性を有することが理解される。
[試験例3]
酸性水中油型乳化食品に配合した乾燥卵白およびホスホリパーゼA処理卵黄の配合量による耐熱性への影響を調べた。つまり、実施例1のタルタルソースの調製において、下表に示す配合量の乾燥卵白、ホスホリパーゼA処理卵黄、及び殺菌卵黄を配合し、当該タルタルソースの耐熱性試験を、試験例1と同様の方法で行い評価した。
Figure 0005140463
表3より、乾燥卵白の配合量が0.1〜10%、ホスホリパーゼA処理卵黄の配合量が生卵黄換算で0.5〜12%の範囲にあるタルタルソース(酸性水中油型乳化食品)は、耐熱性に優れていることが理解される。特に、乾燥卵白の配合量が0.5〜8%、ホスホリパーゼA処理卵黄の配合量が生卵黄換算で1〜8%の範囲にある酸性水中油型乳化食品は、耐熱性により優れていた。
[実施例5]
<酸性水中油型乳化食品の調製>
下記に示す配合割合で仕上がり100kgの酸性水中油型乳化食品を製した。つまり、植物油以外の原料をミキサーで均一に混合し水相部を調製した後、当該水相部を攪拌させながら植物油を徐々に注加して粗乳化物を製した。次いで、得られた粗乳化物をコロイドミルで仕上げ乳化し、200mL容量のナイロンポリ袋(外側からナイロン15μm、PE60μm)に150gずつ充填密封した。
<配合割合>
植物油 65%
食酢(酸度5%) 10%
乾燥卵白 1.5%
ホスホリパーゼA処理卵黄 5%
(リゾ化率30%)
食塩 1.5%
砂糖 1%
辛子粉 0.5%
グルタミン酸ナトリウム 0.3%
清水 残余
―――――――――――――――――――――――
合計 100%
得られた酸性水中油型乳化食品は、いずれも仕上がり乳化状態が均一に乳化されており良好であった。また、酸性水中油型乳化食品の耐熱性試験を、試験例1と同様の方法で行い評価したところ、酸性水中油型乳化食品は耐熱性に優れていた。

Claims (4)

  1. 乾燥卵白およびホスホリパーゼA処理卵黄を配合し、前記乾燥卵白が脱糖処理およびpH9以上の乾燥処理物に65〜75℃で熱蔵処理が施されており、且つ乾燥卵白水溶液(乾燥卵白1部に対し清水7部)の加熱凝固物の離水率が3%以下であることを特徴とする酸性水中油型乳化食品。
  2. 乾燥卵白が68℃以上で熱蔵処理されている請求項1記載の酸性水中油型乳化食品。
  3. 乾燥卵白の配合量が製品に対し0.1〜10%である請求項1または2記載の酸性水中油型乳化食品。
  4. ホスホリパーゼA処理卵黄の配合量が製品に対し生卵黄換算で0.5〜12%である請求項1乃至3のいずれかに記載の酸性水中油型乳化食品。
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