以下、添付図面を参照して本発明の自動変速機の制御装置の好適な実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態における自動変速機の制御装置を備えた車両の動力伝達系統および制御系統を概略的に示すブロック図である。車両の動力伝達系統は、動力源であるエンジン1と、エンジン1の回転出力を変速ギア機構3に伝達するための流体継手であるトルクコンバータ2と、トルクコンバータ2の回転出力を入力して設定された速度比で変速して出力する変速ギア機構3と、変速ギア機構3の出力回転を左右の車輪(例えば後輪)5に分配するディファレンシャルギア機構4とを含む。トルクコンバータ2および変速ギア機構3に付属して油圧制御装置6が設けられており、この油圧制御装置6は、トルクコンバータ2および変速ギア機構3内に設けられている油圧制御型の複数の摩擦係合要素(クラッチなど)を所定の組み合わせで締結または解放することにより、トルクコンバータ2のロックアップや、変速ギア機構3における入出力速度比を所要の変速段に設定することを行う。車両の自動変速機は、これらのトルクコンバータ2、変速ギア機構3、油圧制御装置6などによって構成される。
車両の動力伝達系統を制御するための制御系統は、車両の各部に設けられたセンサと、該各センサの出力が入力される電子制御ユニット(ECU)10と、該電子制御ユニット10によって制御される油圧制御装置6などで構成される。回転センサ11はトルクコンバータ2の入力軸の回転数(エンジン回転数)Neを検出し、回転センサ12は変速ギア機構3の入力軸(すなわち、トルクコンバータ2の出力軸)の回転数Niを検出し、回転センサ13は変速ギア機構3の出力軸の回転数Noを検出し、車速センサ14は車両の走行速度(車速)Nvを検出する。なお、車速Nvを専用に検出する車速センサ14を設けることなく、入力軸回転数Niまたは出力軸回転数Noから車速Nvを算出するようにしてもよい。例えば、「Nv=Ni×変速レシオ×タイヤ周長」あるいは「Nv=No×タイヤ周長」のような関係式に基づいて車速Nvを検出(算出)することができる。シフトレバーポジションセンサ15は、運転者によって操作されるシフトレバーのポジションを検出する。シフトレバーのポジションには、公知のように、例えば、P(パーキング)、R(後進走行)、N(ニュートラル)、D(自動変速モードでの前進走行)などがあり、さらに、3速、2速、1速等の特定の変速段を手動で指定するためのポジションが設けられてもよい。
ブレーキセンサ16は、運転者によりブレーキペダルが所定量以上踏み込まれるとブレーキがかけられたことを検出する。スロットルセンサ17は、アクセルペダルの踏み込みに応じて開度が設定されるエンジン1のスロットルの開度を検出する。アクセルペダルセンサ22は、アクセルペダルの踏み込みに応じたアクセルペダル開度APATを検出する。ATF温度センサ18は、油圧制御装置6における作動油の温度(ATF油温)TATFを検出する。油圧センサ21は、油圧制御装置6において図示しないリニアソレノイドバルブにより調圧されたライン圧Pを検出する。冷却水温センサ19は、エンジン冷却液の温度(冷却水温)を検出する。傾斜センサ20は、車両の傾斜状態における傾きθを検出する。
本発明の自動変速機の制御装置は、シフトレバーポジションセンサ15により検出されたシフトレンジ(シフトレバーのポジション)が走行レンジとされているときであっても、所定の条件が成立したときに、変速ギア機構3を擬似的なニュートラル状態(以下、「アイドルニュートラル状態」という)にする擬似ニュートラル制御(以下、「アイドルニュートラル制御」という)と、トルクコンバータ2の入力軸回転数Neと変速ギア機構3の入力軸回転数(トルクコンバータ2の出力軸回転数)Niとの比からなるトルクコンバータ2のスリップ率ETRに基づいて、アイドルニュートラル制御時のクラッチが所定のトルク伝達容量となるように油圧制御装置6のクラッチ油圧を制御するクラッチ油圧制御とを行うものである。
図1に示した車両の動力伝達系統および制御系統の具体的構成は、公知の構成を適宜採用すればよい。本発明に係る自動変速機の制御装置は、電子制御ユニット10を含むものであり、該電子制御ユニット10が実現可能な種々の制御機能のうちの一つとして実施される。以下述べる実施形態においては、本発明に係る自動変速機の制御装置は、電子制御ユニット10が具備するコンピュータプログラムによって実行されるものとする。しかしながら、本発明に係る自動変速機の制御装置は、このようなコンピュータプログラムに限らず、専用の電子回路ハードウェアで構成することができるのは勿論である。
図2は、本発明の自動変速機の制御装置において実行されるETR学習制御処理の制御系統を示すブロック図である。図2に示すように、電子制御ユニット10は、アイドルニュートラル制御における上述の所定の条件の成立を判断する手段(以下では、これらの判断手段をまとめて「所定条件成立判断手段」という)として、アクセルペダルセンサ22の検出結果に基づいて、アクセルペダル開度APATが所定値以下であるか否かを判断するアクセルペダル開度判断手段101と、ブレーキセンサ16の検出結果に基づいて、ブレーキが踏み込まれているか否かを判断するブレーキ判断手段102と、車速センサ14の検出結果に基づいて、車速Nvが所定値以下であるか否かを判断する車速判断手段103とを含む。
また、電子制御ユニット10は、所定条件成立判断手段のそれぞれが対応する条件の成立を判断したときに、変速ギア機構3をアイドルニュートラル状態に移行させるアイドルニュートラル制御実行手段104をさらに含む。なお、変速ギア機構3をアイドルニュートラル状態に移行させるために、電子制御ユニット10のアイドルニュートラル制御実行手段104は、ATF温度センサ18により検出された作動油の油温TATFに基づいて、油圧制御装置6に後述する目標スリップ率ETRTGTを出力し、油圧制御装置6は、トルクコンバータ2のスリップ率ETRがこの目標スリップ率ETRTGTになるようにLowクラッチに供給する作動油の油圧を制御する。
また、電子制御ユニット10は、図2に示すように、スリップ率学習開始判定手段105と、スリップ率学習手段106と、目標スリップ率算出手段107と、メモリ108とをさらに含む。
スリップ率学習開始判定手段105は、トルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習するための学習開始条件の成立を判定するものである。例えば、スリップ率学習開始判定手段105は、傾斜センサ20により検出された車両の傾きθが所定の範囲内にないときに学習開始条件が成立していないと判定すればよい。車両が傾斜している場合には、当然に変速ギア機構3(ミッション)に対して作動油の油面が傾斜している状態となるが、このような状態でトルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習すると、ミッションフリクションの変化により学習値にばらつきが生じてしまう。このため、本実施形態では、スリップ率学習開始判定手段105は、車両の傾きθに基づいて学習開始条件の成立を判定している。これにより、トルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習における学習値のばらつきを回避することができる。なお、学習開始条件が成立する車両の傾きθの所定の範囲としては、例えば、−3°〜+3°の範囲とすればよい。
また、スリップ率学習開始判定手段105は、本実施形態では、アイドルニュートラル状態におけるエンジン1の回転数Neに対して油圧制御装置6に設けられたリニアソレノイドバルブ(図示せず)のフィードバック安定時の指示電流が変化したときのみ学習開始条件が成立したと判定してもよい。このフィードバック安定時のリニアソレノイドバルブの指示電流が変化する要因としては、例えば、I−T(電流−トルク)特性の変化、変速ギア機構3のミッションフリクションの変化、トルクコンバータ2の特性変化等が考えられるが、ミッションフリクションの変化やトルクコンバータ2の特性変化は、トルクコンバータ2の目標スリップ率ETRTGTに影響を与える可能性があるため、本実施形態では、リニアソレノイドバルブのフィードバック安定時の指示電流が変化したときという条件をトルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習するための学習開始条件としている。これは、リニアソレノイドバルブのフィードバック安定時の指示電流が変化するとき、変速ギア機構3の状態に変化があるものと自動変速機の制御装置が自己診断をすることができるものであり、このようなときのみトルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習することにより、真に必要なときにのみトルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習することができる。
さらに、スリップ率学習開始判定手段105は、本実施形態では、学習開始条件に含まれる学習前の運転条件として、車両のエンジン1のストール直後またはトルクコンバータ2の発熱量が大きいときには、学習開始条件が成立しないと判定すればよい。エンジン1のストール直後やトルクコンバータ2の発熱量が大きいときは、トルクコンバータ2の状態が不安定であるため、本実施形態では、スリップ率ETRの学習値の精度を上げるためにこのような状態のときにはトルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習をしないものである。エンジン1がストールするのは、例えば、エンジン1およびトルクコンバータ2に対する負荷が大きいとき等が考えられる。また、トルクコンバータ2における発熱量が大きくなるのは、例えば、エンジン1の回転数とトルクコンバータ2の出力軸回転数Niとの差回転が大きいときである。この場合、トルクコンバータ2近傍では作動油の油温が高くなり、ATF温度センサ18により検出される作動油の油温TATFと乖離してしまう。このような状況においてはトルクコンバータ2のスリップ率ETRを精度良く学習することができないので、本実施形態では、このような状況では学習開始条件が成立しないものとしている。なお、アイドルニュートラル状態においていわゆるクリープ現象がある程度継続した後も車両が停止している状態においては、ATF温度センサ18により検出される作動油の油温TATFとトルクコンバータ2近傍における作動油の温度がほとんど同じであると推定され得る。本実施形態では、トルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習はこのような安定した状態において実施(開始)される。
ここで、トルクコンバータ2の負荷が増大するのは、例えば、運転者が車両の走行中にアクセルペダルとブレーキペダルとを同時に踏んだとき等が考えられる。このとき、アクセルペダルを踏むことによりエンジン1の負荷が大きくなるとともに、ブレーキペダルを踏むことにより変速ギア機構3の入力軸回転数Niが下がってトルクコンバータ2におけるスリップが増大することにより、トルクコンバータ2のスリップ率ETRが大幅に低下する。したがって、学習前の運転条件として、トルクコンバータ2のスリップ率ETRが所定値以下になったときにアクセルペダル開度APATが所定値以上であるときには、スリップ率学習開始判定手段105は、例えば所定時間(例えば、5分)が経過するまで学習開始条件が成立しないと判定すればよい。また、トルクコンバータ2の発熱量が大きいときの判定条件としては、トルクコンバータ2の入力軸回転数Neと入力トルクTiとの積から同出力軸回転数Niと出力トルクToとの積を減算して得られるトルクコンバータ2の発熱量が所定値(例えば、5kJ/秒)以上であるか否かを判定すればよい。このような場合にも、スリップ率学習開始判定手段105は、例えば所定時間(例えば、5分)が経過するまで学習開始条件が成立しないと判定することになる。
スリップ率学習開始判定手段105は、車両の走行距離、作動油(ATF)の交換時期および電子制御ユニット10のキャンセル時の少なくとも一つに基づいて、スリップ率学習手段106によるトルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習頻度を変更可能に構成される。図3は、車両の走行距離とトルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習頻度(学習頻度条件)との関係の一例を示す図である。このスリップ率ETRの学習では、第1の走行距離D1(例えば、100km)までの初期ばらつき補正期間と、第1の走行距離D1から第2の走行距離D2(例えば、1000km)までの慣らし変化補正期間と、第2の走行距離D2以上の耐久劣化補正期間とで適宜学習頻度を変更している。具体的には、図3に示す一例として、初期ばらつき補正期間には、車両のユーザ(購入者)への納車時から連続して例えば5回トルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習を行い、慣らし変化補正期間には、所定の時間間隔DI1(例えば、100km)毎に学習要求フラグが立てられ、例えば5回トルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習を行い、耐久劣化補正期間には、所定の時間間隔DI2(例えば、1000km)毎に学習開始要求フラグが立てられ、例えば5回トルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習を行うものとする。このような走行距離による学習頻度に加え、図示のように、作動油であるATFの交換時や、電子制御ユニット10のキャンセル時、例えば、車両に搭載されるバッテリ(図示せず)のリセットまたは交換時にも学習開始要求フラグが立てられ、例えば強制的に10回トルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習を行えばよい。なお、図3に示すATF交換フラグは、例えばスピードメータから算出された車両の走行距離やATF温度センサ18により検出された作動油の油温TATFに基づいて電子制御ユニット10により作動油(ATF)の劣化を判断することにより立てられればよい。そして、ATF交換フラグが立つことにより、ATF交換回数をインクリメントし、作動油(ATF)が交換されたものと認識して、スリップ率学習開始判定手段105は、学習開始条件が成立したと判定し、スリップ率学習手段106は、トルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習をすればよい。このように車両の走行距離、作動油の交換時期あるいは電子制御ユニット10のキャンセル時に応じてトルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習頻度を変更することにより、自動変速機の初期ばらつきや耐久劣化の特性に合わせて必要なタイミングでトルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習することができる。
スリップ率学習手段106は、アイドルニュートラル制御実行手段104により自動変速機をアイドルニュートラル状態に移行させ、かつ、スリップ率学習開始判定手段105により学習開始条件が成立したと判定されたときに、トルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習し、このスリップ率ETRの学習値(学習結果)を取得する。取得された学習値はメモリ108に格納される。
また、スリップ率学習手段106は、トルクコンバータ2のスリップ率ETRおよびエンジン1の回転数Neが安定したときに、トルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習を開始して、実学習値を取得すればよい。図4は、本実施形態の自動変速機におけるトルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習のタイミングチャートである。以下、図4のタイミングチャートを用いてトルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習のタイミングを説明する。本実施形態では、スリップ率学習手段106は、エンジン1の回転数(トルクコンバータ2の入力軸回転数)Neが所定の範囲内にあるとともに、トルクコンバータ2の入力軸回転数Neおよび出力軸回転数Niから算出されるトルクコンバータ2のスリップ率ETRの単位時間当たりの変動量が所定の範囲内にある状態で所定時間が経過すると、トルクコンバータ2のスリップ率ETRが安定したものとしてトルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習を開始する(学習値を取得する)。具体的には、エンジン1の回転数Neが所定の範囲、すなわち、目標エンジン回転数(目標回転数Ne)レンジ(NeL<Ne<NeH、例えば、550<Ne<650(rpm))に入っているか否かを判断し、エンジン1の回転数Neが目標エンジン回転数レンジに入ると、Ne安定判断フラグを立てる。トルクコンバータ2のスリップ率ETRには学習開始のタイミングを示すような目標値が設定されていないため、単位時間当たりのスリップ率ETRの変動量(差分)が所定の範囲内になったか否かに基づいて、トルクコンバータ2のスリップ率ETRの安定性を判断する。すなわち、トルクコンバータ2のスリップ率ETRの単位時間当たりの変動量DETR(差分ETR)が所定の範囲(DETRL<DETR<DETRH、例えば、−0.05<DETR<0.05(秒−1))内に入ると、ETR安定判断フラグを立てる。Ne安定判断フラグおよびETR安定判断フラグが立つと、電子制御ユニット10内の図示しないタイマにより安定判断タイマを作動して、所定時間(例えば、3秒)を計時する。安定判断タイマにより所定時間の計時が終了した時点において、スリップ率学習手段106は、トルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習値として取得し、メモリ108に実学習値として格納するとともに、学習完了フラグを立てる。このようなタイミングチャートでトルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習することにより、学習値として得られたトルクコンバータ2のスリップ率ETRを安定させた状態で取得することができるので、目標スリップ率ETRTGTを精度良く算出(設定)することができる。
なお、アイドルニュートラル制御時におけるトルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習時のクラッチ油圧制御では、クラッチ油圧は、クラッチ油圧により作動され、その押圧によりクラッチを締結させるピストン(図示せず)のストロークを完了するときの無効ストローク完了圧(ピストンのストロークの遊びを詰める程度の油圧)より所定値(例えば、1.0kgf/cm2)だけ減圧するように制御されればよい。これにより、トルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習する際に、クラッチを非係合とするとともにクラッチ油圧として待機圧を残すことができる。したがって、トルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習する際に油圧制御装置6がある程度の油圧を出力するよう制御することにより、車両の発進商品性の耐性(タフネス)を向上させることができる。
ここで、スリップ率学習手段106により取得された学習値の反映方法を説明する。スリップ率ETRの学習時には、ATF温度センサ18により作動油の油温TATFを検出し、検出された実際の学習時の作動油の油温を学習時油温TATFLとしてメモリ108に格納する。なお、メモリ108は、変速ギア機構3のクラッチの非係合時におけるトルクコンバータ2のスリップ率ETRと作動油の油温TATFとの関係をマップ化した油温−ETR特性データ(マップ化データ)を予め格納するものである。そして、スリップ率学習手段106は、図5(a)に示すように、この学習時油温TATFL、スリップ率学習手段106により実際の学習値として取得されたスリップ率ETR(実学習値)、およびメモリ108に格納されたマップ化データとに基づいて学習時油温TATFLを基準油温(学習標準温度)TATFBに換算して、最終的なトルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習値(基準学習値)を取得する。具体的には、上述のように、メモリ108には、クラッチの非係合時におけるトルクコンバータ2のスリップ率ETRと作動油の油温TATFとの関係を二次元マップ化したデータ(ベースETRデータ)が予め格納されており、スリップ率学習手段106は、学習時油温TATFL、基準油温TATFBにおけるベースETRの値ETRb1、ETRb2と、スリップ率ETRの実学習値、基準学習値との比(a:b=c:d)に基づいて、スリップ率ETRの基準学習値を算出し、算出された基準学習値をメモリ108に格納する。なお、二次元マップ化データ(ベースETRデータ)は、車両の種類やエンジン1の型番、自動変速機のタイプ等に応じて作動油の油温に対するトルクコンバータ2のスリップ率ETRを実測あるいは演算することにより得られたものである。このように、本実施形態の自動変速機の制御装置では、トルクコンバータ2のスリップ率ETRの実学習値(実際の学習により得られた学習値)は、基準油温TATFBに相当する値に変換され、基準学習値(学習スリップ率ETRLRN)として管理されている。これにより、学習値(学習結果)を基準油温TATFBの1点で管理することができるので、従来のような学習値の学習領域毎のばらつきを排除することができ、作動油の油温毎に学習頻度がばらつくなどの問題を生じることがない。
なお、スリップ率学習手段106は、アイドルニュートラル制御実行手段104により自動変速機をアイドルニュートラル状態に移行させたときだけでなく、自動変速機がニュートラル状態(すなわち、シフトレバーがニュートラルポジションにある)のときであっても、スリップ率学習開始判定手段105により学習開始条件が成立したと判定されたときには、従来と同様に、トルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習してもよい。このようなニュートラル状態におけるトルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習であっても同様に学習値(学習結果)を基準油温TATFBの1点で管理することができるので、同様の効果を奏することができる。
目標スリップ率算出手段107は、スリップ率学習手段106により得られ、基準油温TATFBに対応する値に換算された基準学習値に基づいて、クラッチ油圧制御の目標スリップ率ETRTGTを算出する。具体的には、図5(b)に示すように、基準油温TATFBに対応する値である基準学習値に換算してメモリ108に格納された学習スリップ率ETRLRN、目標スリップ率ETRTGTを参照するときにATF温度センサ18により検出された作動油の油温(参照時油温)TATFR、およびメモリ108に格納されたマップ化データに基づいて基準油温TATFBを参照時油温TATFRに換算して、最終的なトルクコンバータ2の目標スリップ率ETRTGTを算出する。そして、油圧制御装置6は、目標スリップ率算出手段107により算出された目標スリップ率ETRTGTに基づいて、上記クラッチ油圧制御を行う。
次に、アイドルニュートラル制御時におけるLowクラッチ引き摺りトルクについて説明する。図6は、アイドルニュートラル制御時におけるクラッチ引き摺りトルクとエンジン1の回転数Neとの関係を示すグラフである。アイドルニュートラル制御時のLowクラッチ引き摺りトルクが満足すべき条件として、図6に示すように、エンジン1の回転数Neに対してフィードバック制御可能領域に引き摺りトルクを設定する。フィードバック制御可能領域の上限値としては、例えば、Lowクラッチの発熱基準値が303J/秒を超えてしまう引き摺りトルクを設定すればよく、ここでは、エンジン1の回転数Neが650rpmのとき、引き摺りトルク最大値(上限値)が0.6kgfmとなることを基準として、エンジン1の回転数Ne毎に設定される。また、フィードバック制御可能領域の下限値としては、例えば、フィードバック制御が困難となる引き摺りトルクを設定すればよく、ここでは、エンジン1の回転数Neの所定の範囲全域でクラッチ引き摺りトルクが0.2kgfmと設定される。図6に示すように、Lowクラッチ引き摺りトルクは、回転数Neにおけるフィードバック制御可能領域内の中心付近にその目標値が設定される。本実施形態では、目標スリップ率算出手段107は、このクラッチ引き摺りトルクの目標値が一定になるように、トルクコンバータ2の目標スリップ率ETRTGTを算出するものである。具体的な算出方法を以下に説明する。
図7は、アイドルニュートラル制御時における、Lowクラッチ引き摺りトルクTlow、自動変速機のフリクショントルクTfr、およびトルクコンバータ2の目標スリップ率ETRTGTとの関係を示す図である。図7(a)に示すように、トルクコンバータ2の目標スリップ率ETRTGTを一定としてアイドルニュートラル制御を行った場合には、変速ギア機構3(自動変速機)のフリクショントルクTfrが変化したときであっても、変速ギア機構3の出力トルク(メインシャフトトルク)Toutが一定になるように制御されてしまう。この場合、図示のように、フリクショントルクTfrの大小に応じてLowクラッチ引き摺りトルクTlowが変化してしまい、引き摺りトルクの目標値に規定することができない。このため、本実施形態では、図7(b)に示すように、Lowクラッチ引き摺りトルクTlowを目標値に一定に保つために、変速ギア機構3(自動変速機)のフリクショントルクTfrに応じてトルクコンバータ2の目標スリップ率ETRTGTを適宜変更して設定している。
図8は、自動変速機のフリクショントルクTfrとトルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習との関係を示す図である。このスリップ率ETRを学習する目的は、アイドルニュートラル制御時におけるクラッチ引き摺りトルクを目標値あるいは目標範囲内に制御することである。この目的を達成するために、本実施形態では、アイドルニュートラル制御時と同等の条件においてクラッチを完全に開放(OFF)した状態、すなわち、完全なニュートラル状態で得られるトルクコンバータ2のスリップ率ETRから、変速ギア機構3のフリクションの変化やトルクコンバータ2の特性ばらつき等の影響を推定し(すなわち、完全なニュートラル状態において得られたトルクコンバータ2のスリップ率ETRを100%(ETR=1.0)と推定することにより)、最適な目標スリップ率ETRTGTを設定している。この目標スリップ率ETRTGTは以下の式を用いて算出される。
ここで、e
frはクラッチ解放時におけるスリップ率ETR、T
lowはメインシャフト上換算のLowクラッチ引き摺りトルク(目標引き摺りトルク)、T
frは変速ギア機構3(自動変速機)のフリクショントルク、T
outは変速ギア機構3の出力トルク(メインシャフトトルク)、Neは変速ギア機構3(自動変速機)の入力軸回転数、eは目標スリップ率ETRTGTである。
式(1)では、すべてのクラッチを開放したときのトルクコンバータ2のスリップ率ETRから変速ギア機構3(自動変速機)のフリクショントルクTfrを推定し、式(2)では、目標引き摺りトルクTlowと変速ギア機構3のフリクショントルクTfrとを加算して、出力すべきメインシャフトトルク(出力トルク)Toutを算出し、式(1)を式(2)に代入して、さらに式(2)を式(3)に代入することにより、式(3)を満たすeを算出して、それを目標スリップ率ETRTGTと決定する。このようにして得られた目標スリップ率ETRTGTにより、メモリ108に格納されている図5に示すようなマップ化データのように、作動油の油温TATFとトルクコンバータ2のスリップ率ETRとの関係をマップ化し、ベースとなるスリップ率曲線(ベースETR)を作成することができる。そして、このマップ化データを用いることにより、上述のようにトルクコンバータ2のスリップ率ETR(目標スリップ率ETRTGT)を1つの基準油温TATFBで管理することができる。
次に、本発明の一実施形態における自動変速機の制御装置の動作を説明する。この自動変速機の制御装置では、上述のように、トルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習するためのETR学習制御処理と、ETR学習制御処理において得られたトルクコンバータ2の学習スリップ率ETRLRNに基づいて、アイドルニュートラル制御を実行するためのアイドルニュートラル制御処理とが実行される。
まず、本発明の一実施形態における自動変速機の制御装置で実行されるETR学習制御処理を説明する。図9は、本発明の一実施形態において実行されるETR学習制御処理を示すフローチャートであり、図10は、図9のETR学習制御処理のサブルーチンであるETR値学習処理を示すフローチャートである。
ETR学習制御処理では、ステップS101において、シフトレバーポジションセンサ15により検出されたシフトレバーのポジションがP(パーキング)またはN(ニュートラル)レンジであるか否かを判断し、PまたはNレンジであると判断した場合には、ステップS103に移行し、PまたはNレンジではないと判断した場合には、ステップS102に移行する。
ステップS102において、所定条件成立判断手段により、アイドルニュートラル制御を開始するための条件が成立しているか否かを判断する。具体的には、アクセルペダル開度判断手段101は、アクセルペダルセンサ22の検出結果に基づいて、アクセルペダル開度APATが所定値以下であるか否かを判断し、ブレーキ判断手段102は、ブレーキセンサ16の検出結果に基づいて、ブレーキが踏み込まれているか否かを判断し、車速判断手段103は、車速センサ14の検出結果に基づいて、車速Nvが所定値以下であるか否かを判断する。これらすべての条件のいずれかが成立しないと判断した場合には、このETR学習制御処理を終了する。なお、シフトレバーのポジションがR(後進)レンジである場合にも、アイドルニュートラル制御開始条件が成立しないと判断し、このETR学習制御処理を終了すればよい。すべての条件が成立していると判断した場合には、ステップS103に移行する。
ステップS103において、傾斜センサ20により検出された車両の傾きθが所定の範囲内にあるか否かを判断する。車両の傾きθが所定の範囲内にないと判断した場合には、このETR学習制御処理を終了し、車両の傾きθが所定の範囲内にあると判断した場合には、ステップS104に移行する。
ステップS104において、学習前の運転条件、すなわち、エンジン1のストール条件やトルクコンバータ2の発熱条件が成立しているか否かを判断する。車両のエンジン1のストール直後またはトルクコンバータ2の発熱量が大きいときなどのように、学習前の運転条件が成立しないと判断した場合には、このETR学習制御処理を終了し、学習前の運転条件が成立していると判断した場合には、ステップS105に移行する。
ステップS105において、図3において説明したような学習頻度条件が成立しているか否かを判断する。ここでは、車両の走行距離や作動油の交換などに応じて学習要求フラグが立っているか否かにより、学習頻度条件が成立するか否かを判断すればよい。学習頻度条件が成立しないと判断した場合には、このETR学習制御処理を終了し、学習頻度条件が成立していると判断した場合には、ステップS106に移行する。
ステップS106において、リニアソレノイドバルブのフィードバック安定時の指示電流が変化したか否かを判断する。このフィードバック安定時の指示電流が変化していないと判断した場合には、このETR学習制御処理を終了し、このフィードバック安定時の指示電流が変化したと判断した場合には、油圧制御装置6は、トルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習するための油圧、すなわち上述の無効ストローク完了圧を出力し(ステップS107)、図4のタイミングチャートに示すようなトルクコンバータ2の入力軸回転数Neとスリップ率ETRとが安定状態となったか否か(安定条件が成立したか否か)を判断する(ステップS108)。トルクコンバータ2の入力軸回転数Neとスリップ率ETRとが安定状態となったと判断した場合には、後述するETR値学習処理(図10参照)を実行し(ステップS109)、このETR学習制御処理を終了する。また、トルクコンバータ2の入力軸回転数Neとスリップ率ETRとが安定状態ではないと判断した場合には、そのままこのETR学習制御処理を終了する。
なお、このETR学習制御処理は、例えば、車両のエンジン1がONしている状態において繰り返し実行されるものである。本実施形態では、ステップS102〜S106およびS108のすべての判断(条件)がクリアされると、図10に示すETR値学習処理を実行するように構成されているが、例えば、ステップS108の安定条件の判断において所定時間以内にこの安定条件が成立しない場合のみETR学習制御処理を終了するものとし、所定時間が経過するまではステップS108で待機するように構成してもよい。
ステップS108において安定条件が成立したと判断すると、電子制御ユニット10は、図10に示すETR値学習処理を実行する。ATF温度センサ18により検出された作動油の油温TATFを学習時油温TATFLとして読み込み(ステップS201)、回転センサ11により検出されたトルクコンバータ2の入力軸回転数Neを読み込み(ステップS202)、学習時油温TATFLおよび基準油温TATFBにおけるベースETRの各値ETRb1とETRb2とを読み込む(ステップS203)。そして、図4のタイミングチャートにおける学習開始点において、トルクコンバータ2の入力軸回転数Neと出力軸回転数Niとに基づいてトルクコンバータ2のスリップ率ETRを読み込み(ステップS204)、これを実学習値としてメモリ108に格納する。最終的に、スリップ率学習手段106は、ベースETRの各値ETRb1、ETRb2、および実学習値としてのトルクコンバータ2のスリップ率ETRに基づいて、学習スリップ率ETRLRNとなるスリップ率ETRを算出し(ステップS205)、これを基準学習値としてメモリ108に格納して、このETR値学習処理を終了する。
次いで、本発明の一実施形態における自動変速機の制御装置で実行されるアイドルニュートラル制御処理を説明する。図11は、本発明の一実施形態において実行されるアイドルニュートラル制御処理を示すフローチャートであり、図12は、図11のアイドルニュートラル制御処理のサブルーチンである目標ETR値算出処理を示すフローチャートである。
アイドルニュートラル制御処理では、後述する目標ETR値算出処理(図12参照)を実行し(ステップS301)、これにより得られたトルクコンバータ2の目標スリップ率ETRTGTに基づいて、アイドルニュートラル制御時において、フィードバック制御を実行して(ステップS302)、このアイドルニュートラル制御処理を終了する。
目標ETR値算出処理では、ATF温度センサ18により検出された作動油の油温を参照時油温TATFRとして読み込み(ステップS401)、回転センサ11により検出されたトルクコンバータ2の入力軸回転数Neを読み込み(ステップS402)、参照時油温TATFRおよび基準油温TATFBにおけるベースETRの各値ETRb1とETRb2とを読み込む(ステップS403)。そして、メモリ108に格納された基準学習値としてのトルクコンバータ2のスリップ率ETR(学習スリップ率ETRLRN)を読み込み(ステップS404)、最終的に、目標スリップ率算出手段107は、ベースETRの各値ETRb1、ETRb2、および学習スリップ率ETRLRNに基づいて、目標スリップ率ETRTGTを算出し(ステップS405)、この目標ETR値算出処理を終了する。
以上のように、本発明の一態様における自動変速機の制御装置によれば、トルクコンバータ2を有する自動変速機のシフトレンジが走行レンジ(Dレンジ)とされているときであっても、所定の条件が成立したときに、自動変速機をアイドルニュートラル状態にするアイドルニュートラル制御と、トルクコンバータ2の入力軸回転数Neと自動変速機の入力軸回転数Niとの比からなるトルクコンバータ2のスリップ率ETRに基づいて、擬似ニュートラル制御時のクラッチが所定のトルク伝達容量となるようにクラッチ油圧を制御するクラッチ油圧制御とを行う自動変速機の制御装置において、所定の条件が成立したことによりアイドルニュートラル制御実行手段104により自動変速機をアイドルニュートラル状態に移行させ、かつ、スリップ率学習開始判定手段105により学習開始条件が成立したと判定されたときに、スリップ率学習手段106は、トルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習し、目標スリップ率算出手段107は、スリップ率学習手段106により得られた学習値(基準学習値(学習スリップ率)ETRLRN)に基づいて、クラッチ油圧制御におけるトルクコンバータ2の目標スリップ率ETRTGTを算出し、電子制御ユニット10は、目標スリップ率算出手段107により算出された目標スリップ率ETRTGTに基づいて、クラッチ油圧制御を行うこととした。したがって、このようにアイドルニュートラル制御時においてトルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習することにより、アイドルニュートラル制御時におけるトルクコンバータ2の目標スリップ率ETRTGTをより精度良く設定することができる。
上述の実施形態における自動変速機の制御装置では、スリップ率学習手段106は、ATF温度センサ18により検出された作動油の油温TATFとメモリ108に格納されたマップ化データとに基づいて、ATF温度センサ18により検出された作動油の油温(学習時油温TATFL)を学習標準温度(基準油温TATFB)に換算して、トルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習するように構成されるので、学習値(学習結果)を学習標準温度の1点で管理することができ、従来のような学習値の学習領域毎のばらつきを排除することができるとともに、作動油の油温毎に学習頻度がばらつくなどの問題を生じることがない。
上述の実施形態における自動変速機の制御装置では、スリップ率学習開始判定手段105は、アイドルニュートラル状態におけるエンジン1の回転数Neに対してリニアソレノイドバルブのフィードバック安定時の指示電流が変化したときのみ学習開始条件が成立したと判定するように構成されるので、リニアソレノイドバルブのフィードバック安定時の指示電流が変化するとき、自動変速機の状態に変化があるものと電子制御ユニット10が自己診断をすることができるとともに、このようなときにのみトルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習することにより、真に必要なときにのみトルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習することができる。
上述の実施形態における自動変速機の制御装置では、トルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習時のクラッチ油圧制御では、クラッチ油圧は、クラッチ油圧により作動され、その押圧によりクラッチを締結させるピストンのストロークを完了するときの無効ストローク完了圧より所定値だけ減圧するように制御されるので、トルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習する際に、クラッチを非係合とするとともにクラッチ油圧として待機圧を残すことができ、車両の発進商品性の耐性(タフネス)を向上させることができる。
上述の実施形態における自動変速機の制御装置では、スリップ率学習手段106は、トルクコンバータ2の入力軸回転数Neが所定の範囲内にあるとともに、スリップ率ETRの単位時間当たりの変動量DETRが所定の範囲内にある状態で所定時間が経過すると、トルクコンバータ2のスリップ率ETRが安定したものとしてトルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習を開始するように構成されるので、学習値として得られたトルクコンバータ2の学習スリップ率ETRLRNを安定させた状態で取得することができ、目標スリップ率ETRTGTを精度良く算出(設定)することができる。
本発明の別の態様における自動変速機の制御装置によれば、スリップ率学習手段106は、自動変速機がニュートラル状態であり、かつ、スリップ率学習開始判定手段105により学習開始条件が成立したと判定されたときに、ATF温度センサ18により検出された作動油の油温TATFとメモリ108に格納されたマップ化データとに基づいて、ATF温度センサ18により検出された作動油の油温TATFLを基準油温TATFBに換算して、トルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習するように構成されるので、学習値(学習結果)を学習標準温度の1点で管理することができ、従来のような学習値の学習領域毎のばらつきを排除することができるとともに、作動油の油温毎に学習頻度がばらつくなどの問題を生じることがない。
上述の実施形態における自動変速機の制御装置では、スリップ率学習開始判定手段105は、傾斜センサ20により検出された車両の傾きθが所定の範囲内にないときに学習開始条件が成立していないと判定するよう構成されるので、トルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習における学習値のばらつきを回避することができる。
上述の実施形態における自動変速機の制御装置では、学習開始条件の学習前の運転条件として、車両のエンジン1のストール直後またはトルクコンバータ2の発熱量が大きいときには、スリップ率学習開始判定手段105は、学習開始条件が成立しないと判定するように構成されるので、トルクコンバータ2のスリップ率ETRの学習値の精度を上げることができる。
上述の実施形態における自動変速機の制御装置では、スリップ率学習開始判定手段105は、車両の走行距離、作動油の交換時期および電子制御ユニット10のキャンセル時の少なくとも一つに基づいて、スリップ率学習手段106によるスリップ率ETRの学習頻度を変更可能に構成されるので、自動変速機の初期ばらつきや耐久劣化の特性に合わせて必要なタイミングでトルクコンバータ2のスリップ率ETRを学習することができる。
以上、本発明の自動変速機の制御装置の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明したが、本発明は、これらの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲、明細書および図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお、直接明細書および図面に記載のない形状・構造・機能を有するものであっても、本発明の作用・効果を奏する以上、本発明の技術的思想の範囲内である。すなわち、自動変速機の制御装置(油圧制御回路を含む)を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。