JP4023157B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、擬似ニュートラル制御を実施する自動変速機の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】
自動車用の自動変速機は、エンジンの動力をトルクコンバータを介して変速機構の入力軸に伝達し、この変速機構で変速して出力軸に伝達し、駆動軸を回転駆動するようにしている。最も一般的な変速機構は、入力軸と出力軸との間に複数の歯車要素を配列して、入力軸と出力軸との間に変速比の異なる複数の動力伝達経路を構成し、各動力伝達経路中にクラッチやブレーキ等の摩擦係合と開放を選択的に切り替えて、入・出力軸間の動力伝達経路を切り換えて変速比を切り換えるようにしている。
【0003】
ところで、このような自動変速機においては、P(パーキング)レンジ、R(リバース)レンジ、N(ニュートラル)レンジ、D(ドライブ)レンジ、S(セカンド)レンジ、L(ロー)レンジ等を選択することができるようになっているが、例えば、シフトレバーによってNレンジからDレンジに切り換えると、アイドリング状態のエンジンの回転がトルクコンバータを介して変速装置に伝達され、アクセルペダルを踏み込まなくても車両が少しずつ前進するクリープ現象が発生する。
【0004】
これに対して、特許第2804229号に開示される技術では、車両を前進させるためのDレンジ、Sレンジ、Lレンジ(以下「前進レンジ」と称する。)が選択され、アクセルペダルが解放され、ブレーキペダルが踏み込まれ、かつ、車速が実質的に“0km/h”であることが検出された場合には、変速装置前進走行時に係合されるフォワードクラッチ、すなわち、ロークラッチを滑らせて擬似的なニュートラル状態を形成する擬似ニュートラル制御に関する技術が知られている。
【0005】
一般的に、この擬似的なニュートラル状態を形成する目的は、ロークラッチの係合状態として係合力を低下させて滑り係合させることで、トルクコンバータの入出力回転速度差を小さくしてトルクロスを低減することである。すなわち、トルクロスを低減することで燃費を低減することを目的としている。
【0006】
また、アクセルが踏み込まれて擬似ニュートラル状態から通常の運転モードに復帰する際に、ロークラッチのピストンストロークが大きいとロークラッチ再係合時にエンジンの吹き上がりを生じてしまう。そこで、擬似ニュートラル状態では、ロークラッチのピストンストロークを0にしてロークラッチ再係合時の応答遅れを抑制している。このため、ロークラッチの目標とする係合領域は極めて狭く、従って、ロークラッチの係合状態を油圧によって制御するための制御弁の制御値も当然狭い範囲となる。
【0007】
ところで、上述の特許第2804229号に開示される擬似ニュートラル制御では、擬似ニュートラル制御の開始条件として、ブレーキペダルが踏み込まれていること、車速が“0km/h”であること、スロットル開度θが所定開度以下であること、油の温度が所定温度以上であることとを条件として擬似ニュートラル制御の開始している。なお、この技術において車速“0km/h”推定の具体的な手法としては、ある時点での車速の減速度合いを検出し、このときの減速度合いに基づいて車速が“0km/h”であることを推定している。そして、上述の条件がすべて満足されると擬似ニュートラル制御の開始条件が成立し、見込み制御として所定期間Δt毎に油圧をΔPずつ減圧してロークラッチを滑り係合させるようにしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ドライバによってブレーキの踏み込み具合が変化した場合に、上記特許第2804229号の技術のように車速“0km/h”を推定すると実際に車速が“0km/h”になっていないにも関わらず、車速が“0km/h”であると誤判定しまう可能性がある。そして、誤判定により実際に車速が“0km/h”になっていないにも関わらず、擬似ニュートラル制御の開始条件が成立し、所定圧力ΔPずつ減圧してしまうという不都合を生じる可能性がある。このとき実際に車速が“0km/h”になっていないにも関わらずロークラッチが滑り係合を始めた場合、トルク抜けが発生してドラビリが悪化してしまう虞がある。
【0009】
また、車速センサにより実際の車速を検出しようとすると、速度“0km/h”付近でのセンサ出力が固定してしまう。すなわち、車速センサでの“0km/h”検出ではセンサの信頼性が低いため、正確に車速が“0km/h”となる時点を検出することは困難であり、車速推定を行った場合と同様の不都合が生じる虞がある。
【0010】
そこで、本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車速が実際には“0km/h”にならなくても、トルク抜けによるドラビリ悪化を防止することができる自動変速機の制御装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで、請求項1の発明のように、見込み制御開始判定手段により見込み制御を開始すると判定されてからの所定期間は、見込み制御手段は、第1の油圧制御弁制御手段により前進用クラッチが滑り係合を発生する直前の係合状態になるように前記第1の油圧制御弁を調整する。
【0012】
このように第1の油圧制御弁を制御することで、見込み制御の開始条件が成立して所定期間の間に実際に車速が“0km/h”になっていなくとも、常に前進用クラッチが滑り係合を発生する直前の係合状態で制御されるので、トルク抜けが発生することを防止でき、ドラビリが悪化することを防止することができる。
そして、その後は過渡制御手段と定常制御手段とにより前進用クラッチの係合状態をクラッチが離れる直前の滑り係合に制御することで、擬似ニュートラル状態を形成する。また、定常制御手段による擬似ニュートラル状態を形成するための第1の油圧制御弁を調整するための制御値を学習する学習手段を備え、前進用クラッチが滑り係合を発生する直前の係合状態となるように第1の油圧制御弁制御手段により第1の油圧制御弁を調整するための制御値は、学習手段により学習された学習値に基づいて設定される。擬似ニュートラル状態を形成するための第1の油圧制御弁を調整するための制御値は、前進用クラッチの係合状態として前進用クラッチが離れる直前の係号領域、言い換えれば係合開始領域となるように制御しているので、前進用クラッチの係合開始領域から完全係合までの係合特性が分かる。従って、この特性に基づいて滑り係合が発生する直前の係合状態となるように第1の油圧制御弁を制御することが可能となる。
【0013】
なお、請求項2の発明において、請求項1の見込み制御開始判定手段は、ブレーキ状態検出手段により検出される車両のブレーキが踏み込まれている状態、前記スロットル開度検出手段により検出されるスロットル開度が全閉位置、若しくは、前記停止状態検出手段により検出、若しくは推定される車両の状態が停止状態のうちいずれか一つ以上の条件に基づいて前記見込み制御の開始を判断すると良い。
【0016】
ところで、請求項3の発明では、見込み制御開始判定手段により前記見込み制御の開始条件であると判定されると、前記見込み制御は前記第2の油圧制御弁制御手段により前記第2の油圧制御弁を係合させると良い。
【0017】
これにより、後進用ブレーキが係合されるので車両の停止位置が登坂道路であっても車両が後退することを防止することができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、見込み制御の実施中にタービン回転速度検出手段により検出されるタービン回転速度が変化したときに、前進用クラッチが滑り係合を発生する直前の係合状態となるように前記第1の油圧制御弁制御手段により前記第1の油圧制御弁を調整するための制御値は、滑り係合の発生を防止する側に学習する。
【0019】
これにより、見込み制御が開始されてからの所定期間内に滑り係合が発生しても学習手段により、制御値を滑り係合の発生を防止する側に学習することができるため次回以降の見込み制御では滑り係合の発生を防止することができ、また、個体差や経時変化に対しても前進用クラッチに滑り係合が発生することを防止することができる。
【0020】
請求項5の発明では、見込み制御開始判定手段により見込み制御を開始すると判定されてから所定期間内に、車速センサの出力が検出されたときには、見込み制御を終了して、見込み制御開始判定を再度実行すると良い。
【0021】
【実施の形態】
<第1の実施の形態>
以下、本発明に係る第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
まず、図1及び図2に基づいて自動変速機11の概略構成図を説明する。図2に示すように、エンジン(図示せず)の出力軸には、トルクコンバータ12の入力軸13が連結され、このトルクコンバータ12の出力軸14に油圧駆動式の変速歯車機構15(変速機構)が連結されている。トルクコンバータ12の内部には、流体継手を構成するポンプインペラ31とタービンライナ32が対向して設けられ、ポンプインペラ31とタービンライナ32との間には、オイルの流れを整流するステータ33が設けられている。ポンプインペラ31は、トルクコンバータ12の入力軸13に連結され、タービンライナ32は、トルクコンバータ12の出力軸14に連結されている。
【0023】
また、トルクコンバータ12には、入力軸13側と出力軸14側との間を係合または切り離しするためのロックアップクラッチ16が設けられている。エンジンからの出力軸としてのクランクシャフト13は、トルクコンバータ12を介してタービンシャフト14に伝達される。タービンシャフト14は変速歯車機構15に伝送され、変速歯車機構15のフロントプラネタリギヤ23,リアプラネタリギヤ22における複数のクラッチと各ブレーキとを切り換えることによって歯車変速機構15の変速比を切り換えるようになっている。一方、リダクションドライブシャフト35は、フロントプラネタリギヤ23のリングギヤおよびリアプラネタリギヤ22のキャリアに連結されている。
【0024】
2つのプラネタリギア22,23における複数の変速段を切り換えるための摩擦係合要素である各クラッチとして、リバースクラッチRC,ハイクラッチHC,ロークラッチLCが設けられ、各ブレーキとして、2&4ブレーキ(以下、ブレーキ2&4B),ロー&リバースブレーキ(以下、ブレーキL&RB)と、ローワンウェイクラッチ34とが設けられている。
【0025】
なお、図3は4速自動変速機のクラッチRC,HC,LC,とブレーキ2&4B,L&RBの係合の組み合わせを示すもので、○印はその変速段での係合状態(トルク伝達状態)に保持されるクラッチとブレーキを示し、無印は解放状態を示している。また、◎印は、該当する駆動時にのみ係合されていることを示しており、△印は、発進時だけ解放し、所定の車速以上になったときに係合することを示している。例えば、3速から2速にダウンシフトする場合は、3速で係合状態に保持されていた2つのクラッチHC,LCのうち、クラッチHCを解放し、新たにブレーキ2&4Bを係合することで2速にダウンシフトする。また、3速から4速にシフトアップする場合には、3速で係合状態に保持されていた2つのクラッチHC,LCのうちの片方のクラッチLCを解放し、その代わりに、ブレーキ2&4Bを係合することで、4速にシフトアップする。
【0026】
図1に示すように変速歯車機構15には、エンジン動力で駆動される油圧ポンプ18が設けられ、作動油(オイル)を貯留するオイルパン(図示せず)内には、油圧制御回路17が設けられている。この油圧制御回路17は、ライン圧制御回路19、自動変速制御回路20、ロックアップ制御回路21、手動切換弁26等から構成され、オイルパンから油圧ポンプ18で汲み上げられた作動油がライン圧制御回路19を介して自動変速制御回路20とロックアップ制御回路21に供給される。ライン圧制御回路19には、油圧ポンプ18からの油圧を所定のライン圧に制御するライン圧制御用の油圧制御弁(図示せず)が設けられ、自動変速制御回路20には、変速歯車機構15の各クラッチRC,HC,LCと各ブレーキ2&4B,L&LBに供給する油圧を制御する複数の変速用の油圧制御弁(図示せず)が設けられている。この油圧制御弁は構成はノーマリオープンであり、各クラッチRC,HC,LCと各ブレーキ2&4B,L&RBに供給する油圧をカットしたい場合に油圧制御弁への通電を100%デューティに設定する。
【0027】
また、ロックアップ制御回路21には、ロックアップクラッチ16に供給する油圧を制御するロックアップ制御用の油圧制御弁(図示せず)が設けられている。また、ライン圧制御回路19と自動変速制御回路20との間には、シフトレバー25の操作に連動して切り換えられる手動切替弁26が設けられている。シフトレバー25がNレンジまたはPレンジに操作されているときには、自動変速制御回路20の油圧制御弁への通電停止(OFF)された状態になっていても、手動切換弁26によって変速歯車機構15に供給する油圧が変速歯車機構15をニュートラル状態とするように切り換えられる。
【0028】
一方、エンジンには、クランクシャフト13の回転速度Neを検出するクランク回転速度センサ27が設けられ、変速歯車機構15には、タービンシャフト14の回転速度Ntを検出するタービン回転速度センサ28と、変速歯車機構15からのリダクションドライブシャフト35の回転速度Noを検出するリダクション回転速度センサ29が設けられている。
【0029】
これら各種センサの出力信号は、自動変速機電子制御回路(以下「AT−ECU」と表記する)30に入力される。このAT−ECU30は、マイクロコンピュータを主体として構成される。このAT−ECU30は、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された予め設定した図3の変速パターンに従って変速歯車機構15の変速が行われるように、シフトレバー25の操作位置や運転条件(スロットル開度、車速等)に応じて自動変速制御回路20の各油圧制御弁への通電を制御する。そして、各油圧制御弁に対して通電制御することにより、変速歯車機構15の各クラッチRC,HC,LCと各ブレーキ2&4B,L&RBの係合/解放を切り換え、動力を伝達するギヤの組み合わせを切り換えることで、変速歯車機構15の変速比を切り換える。以下では、クラッチLCへの油圧をメインクラッチ圧、ブレーキ2&4Bへの油圧をヒルホールド圧とし、これらの油圧を調整するための油圧制御弁の開度を設定する制御は油圧制御弁に対するデューティ(以下、DUTY)制御により行う。さらに、トルクコンバータ12の入力側と出力側の差回転速度、すなわちクランクシャフト13の回転速度Neとタービンシャフト14の回転速度Ntとの差回転速度をスリップ量とそれぞれ称して説明を行う。
【0030】
このように構成される自動変速機において、本実施の形態では擬似ニュートラル状態を形成する。擬似ニュートラル状態は、クラッチLCの再係合時に生ずる応答遅れを防止することと、トルクコンバータ12にてトルクが消費されること、すなわち燃費が悪化することを抑制するという2つのことを目的として、スリップ量を所望の値に制御する。このとき、所望のスリップ量としては、例えば100rpmが設定され、これによってトルクコンバータ12にて消費されるトルクを低減し、エンジンに対する負荷を軽減することで燃費が悪化することを抑制することとともに、クラッチLCのピストンストロークを小さく制御することで、ロークラッチ再係合時の応答遅れを防止することを目的としている。
【0031】
ここで、図4のタイムチャートと図5の擬似ニュートラル制御ルーチンを用いて、擬似ニュートラル状態の制御について説明する。擬似ニュートラル制御は、見込み制御と過渡制御と定常制御との3つの制御からなり、この3つの制御についてそれぞれの概要を説明する。まず、図5のフローチャートのステップS100にて、見込み制御の開始条件が成立しているか否かを判定する。見込み制御の開始条件は、図4(a)に示すようにドライバによってブレーキが踏み込まれることによりブレーキ信号がオンされていること、図4(b)に示すように、図示しないスロットルセンサからの信号が0であること、図4(c)に示すように、車速が“0km/h”であること等である。なお、本実施の形態では、車速が“0km/h”であることを推定することによって実施している。
【0032】
そして、これらの条件が成立すると図5のステップS100が肯定(Yes)されて、ステップS200に進み、見込み制御を実行する。ここでは、見込み制御の目的について記すとともに制御の概要についてのみ説明し、詳述については後述する。見込み制御は図4のタイムチャートの時刻T1から予め設定された所定期間にて(図4中の時刻T2に達するまで)実行される制御であり、クラッチLCの係合状態として、滑り係合が発生する直前の係合状態にすることと、ブレーキL&RBを完全に係合させることとの2つを目的として制御を実施している。
【0033】
クラッチLCの係合状態を滑り係合が発生する直前の係合領域となるように制御する目的は、仮に実際の車速が“0km/h”となっていない場合でもトルク抜けが発生することを防止するためである。
【0034】
また、見込み制御が実施される所定期間については、次の目的により予め設定されている。ドライバのブレーキの踏み具合が変更された場合に、車速が“0km/h”であると推定されても、実際に車速が“0km/h”ではないときがある。このような時でも、本実施の形態ではクラッチLCの係合状態を滑り係合が発生する直前の値に設定しているので、トルク抜けが発生しない。しかしながら、この所定期間を短く設定した場合には、後述する過渡・定常制御が実行されてクラッチLCの係合状態としてスリップが発生してしまうため、実際の車速が“0km/h”でない場合にはトルク抜けが発生する。このため、この所定期間は、例えブレーキの踏み具合が変更されようとも車速が必ず“0km/h”となっている期間が設定される必要がある。そして、この期間が経過した後に過渡・定常制御の開始条件が成立する。
【0035】
見込み制御の概要については、図4(f)に示すように、クラッチLCに対する目標メインクラッチ圧の制御値は、開始(時刻T1)と同時に所定DUTY大きく設定することで、実際のメインクラッチ圧が所定圧力減圧される。そして、その後は所定DUTY大きくしていくことで、前記所定圧力より十分小さな圧力ずつ徐々に減圧して、見込み制御の所定期間終了時にクラッチLCに滑り係合が発生しない直前の圧力になるようにメインクラッチ圧の制御DUTYを設定する。なお、この滑り係合が発生しない程度の圧力はクラッチLCの係合状態として滑り係合が発生しない程度の値であるため、仮に実際の車速が“0km/h”となっていない場合であってもトルク抜けが発生することを防止することができる。
【0036】
このようにクラッチLCに対する制御DUTYを設定する理由は、車速が“0km/h”であることが推定されるとともに、速やかに滑り係合が発生しない程度の係合領域にクラッチLCを制御するのだが、滑り係合が発生しない程度の係合領域にメインクラッチ圧を瞬時に減圧することで油圧が不安定になってしまい、係合状態が不安定になってしまう。このため、油圧が不安定となることを防止するために本実施の形態では上述に示すように、所定圧力を減圧後に油圧を安定させることを目的として徐々に油圧を減圧してスリップが発生しない程度の係合領域になるように制御DUTYを設定している。また、図4(g)に示すヒルホールド圧の制御DUTYは、ブレーキ2&4Bの油圧制御弁に対する制御値を示しており、時刻T1にてブレーキ2&4Bに対する油の急速充填を行うために制御DUTYを0%に設定し、油圧を瞬時に増圧させる。この油圧の急速充填が終了すると、一度ヒルホールド圧を減圧するために所定の制御DUTYに設定し、そこから徐々にヒルホールド圧を増圧するために制御DUTYを徐々に小さく設定する。
【0037】
そして、所定期間が終了(図4中の時刻T2)し、過渡・定常制御の実行条件が成立すると、図5のステップS100の見込み制御実行条件が否定(NO)されて、ステップS300に進む。そして、ステップS300では、既に過渡・定常制御の開始条件が成立しているので、ここでの判定が肯定(YES)されてステップS400に進み、過渡・定常制御を実行する。
【0038】
上述した通り、擬似ニュートラル制御の目的は、スリップ量を例えば100rpmに設定することで、エンジンに対する負荷を軽減して燃費を向上させることと、クラッチLCのピストンストロークを0にすることで再係合時の応答遅れを抑制することとを目的としている。この2つの目的を達成するためには、クラッチLCの係合状態の制御領域として、極めて狭い制御領域に制御することとなる。そこで、クラッチLCをこの目標となる係合領域に制御するために、時刻T2にて過渡・定常制御が開始される。この過渡・定常制御が開始されると、制御の進行度合いに応じて異なる設定方法にて目標スリップ量を設定する。そして、目標スリップ量と実スリップ量との偏差に基づいて図4(f)のメインクラッチ圧の制御DUTYをフィードバック制御することにより応答性と安定性を両立して精度良くクラッチLCの係合状態を制御することができる。そして、目標となる係合状態にクラッチLCの係合状態に到達すると、時刻T3にて、この係合状態を維持すべく定常制御を実行する。なお、前述した通り図4の時刻T3以降に実施する定常制御中の平均メインクラッチ圧を学習することで、見込み制御において、滑り係合が発生する直前の係合状態にクラッチLCがなるように制御DUTYを設定している。
【0039】
以上のようにしてスリップ量が、例えば100rpmとなるように制御することで、トルクコンバータ12にて消費されるトルクを低減することと、再係合時の応答遅れを考慮した擬似ニュートラル状態に制御することが可能となる。ちなみに、ドライバによりアクセルペダルが踏み込まれ、運転状態からアイドル状態から走行モードへと移行する際には、図5のステップS500の再係合開始条件が成立することにより、ステップS300が否定(NO)される。そして、ステップS400での判定は、肯定(YES)されるので、ステップS600にてクラッチLCを係合するべくメインクラッチ圧が増圧するように制御DUTYを設定して再係合制御を実行する。このとき、ステップS100,S300,S500の判定が全て否定(NO)されれば、このまま擬似ニュートラル制御ルーチンの処理は実行せずに終了する。
【0040】
次に、本実施の形態の特徴部分である見込み制御について図6乃至図12のフローチャートを用いて詳細に説明する。本実施の形態では、実際の車速が“0km/h”となっていなくとも、必ず実際の車速が“0km/h”となる所定期間内にて、クラッチLCの係合状態を滑り係合が発生する直前の値に制御することでトルク抜けの発生を防止する。まず、本実施の形態の前提条件として、見込み制御の実行条件の一つである本実施の形態の車速“0km/h”推定と、定常制御中に実行される学習処理とについて説明する。
【0041】
図12のフローチャートは、本実施の形態の車速“0km/h”推定に関わる処理であり、所定期間Δt毎に起動されるプログラムである。本プログラムにおいては、車速の代用としてタービン回転速度Ntを検出している。これは、見込み制御においては、クラッチLCの係合状態としては、スリップが発生しない状態に制御されているため、車速の代用としてタービン回転速度Ntを用いても良いためである。もちろんリダクション回転速度Noを用いても良いし、図示しない車速センサを用いても良い。
【0042】
まず、ステップS800にて、タービン回転速度Nt(i)が所定回転速度CNTよりも大きいか否かが判定される。所定回転速度CNTは、タービン回転速度センサ28が精度良く回転速度を検出できなくなる直前の値である。すなわち、タービン回転速度NT(i)が所定回転速度CNTよりも小さい場合には、センサ出力の精度が低下するために車速を精度良く検出することが出来なくなる。このため、タービン回転速度Ntが所定回転速度CNTよりも大きい場合にはステップS801乃至ステップS803の処理へ進み、毎回タービン回転速度Ntの減速度合いから車速が“0km/h”となる時間T(i)を算出する。
【0043】
具体的には、ステップS701にて、今回のタービン回転速度Nt(i)と前回のタービン回転速度Nt(i−1)との偏差をとることによって回転速度偏差ΔNt(i)を演算する。そして、ステップS802にて減速度合いAとして、回転速度偏差ΔNt(i)を本プログラムの演算周期である期間Δtで除算することによって求める。ステップS803では、現在のタービン回転速度Nt(i)を減速度合いAで除算することによって今回の演算タイミングから車速が“0km/h”となるまでの時間T(i)を更新して本ルーチンを終了する。この時間T(i)を更新する処理は、ステップS800の判定が否定(NO)されるまで繰り返し実行される。
【0044】
ステップS800の判定において、タービン回転速度Ntがタービン回転速度センサ28により精度良く範囲よりも小さくなると、すなわちこの判定が否定(NO)されると、ステップS804へ進む。ステップS804では、ステップS800の判定が否定(NO)されてから時間T(i)経過したかが判定される。ここで、時間T(i)経過していなければ本ルーチンを終了し、経過したと判定されるとステップS705へ進み、車速が“0km/h”であるとして本ルーチンを終了する。
【0045】
次に、図11のフローチャートを用いて、本実施の形態の学習処理について説明する。この学習ルーチンは、前述した定常制御におけるメインクラッチ圧の平均制御DUTY値を学習するプログラムである。定常制御では、クラッチLCの係合状態を擬似ニュートラル状態になるように制御DUTYを設定する。擬似ニュートラル状態では、クラッチLCの係合によってタービンシャフト14が回されることにより、トルクコンバータ12を介したクランクシャフト13に対する引きずりトルクが発生することを抑制することと、クラッチLCのピストンストロークを0にすることで再係合時の応答遅れを抑制することとを考慮してクラッチLCに対するメインクラッチ圧が制御される。故に、定常制御におけるメインクラッチ圧に対する制御DUTY値の平均値を求めることによってクラッチLCの係合開始状態を求めることができる。従って、完全に係合するためのメインクラッチ圧と、係合開始状態のメインクラッチ圧とからメインクラッチ圧の係合特性が分かる。そして、係合特性が分かるので、定常制御中の平均制御DUTY値を求めることで、滑り係合が発生する直前の係合状態とするメインクラッチ圧の制御DUTY値を推定することができる。
【0046】
以上のように滑り係合が発生する直前のメインクラッチ圧の制御DUTY値を求めるために、図11に示す学習処理を実行する。まず、ステップS700にて定常制御の実行中であるかが判定される。定常制御が実行されていない場合には、ステップS700の判定が否定(NO)されて、そのまま本ルーチンを終了する。一方、定常制御の実行中であれば、ステップS700の判定が肯定(YES)されてステップS701へ進む。ステップS701では、定常制御中に制御されるメインクラッチ圧の制御DUTY値Pcl(n)と前回のなまし処理によって求められた制御DUTY値の平均値avPcl(n−1)とに基づいて以下の数式により今回の制御DUTY値の平均値avPcl(n)を算出する。
【0047】
smPcl(n)={(1−B)/C}*avPcl(n−1)+B/C*Pcl(n)…(1)
上式において、Bは1より小さい所定定数、Cは所定定数であり、このようななまし処理によって今回の制御DUTY値の平均値avPcl(n)を演算する。平均値avPcl(n)の演算方法は、これに限られるものではなく、所定データ数の制御DUTY値Pclを、所定データの数で除すことによって制御DUTY値の平均値smPclを求めても良い。このように平均制御DUTY値のavPcl(n)を演算すると、ステップS702へ進む。ステップS702では、定常制御が開始されてから所定期間TM3が経過したかを判定する。ここで、所定期間TM3はなまし処理によって求められる平均値avPcl(n)が、所定個数のデータ数に基づいて算出されているかを判定するための値である。そして、所定期間TM3が経過していない場合は、ステップS702の判定が否定(NO)されてそのまま本ルーチンを終了する。
【0048】
一方、定常制御が開始されてから所定期間TM3が経過した場合には、ステップS702の判定が肯定(YES)されて、ステップS703へ進む。ステップS703では、学習が完了したことを示すフラグFstdに1を入力する。すなわち、所定期間TM3が経過して、平均値avPcl(n)が学習値として信頼性の高い値となっている場合には、学習値を見込み制御でのメインクラッチ圧制御に反映させるために学習完了フラグFstdを立てるのである。以上のようにして、学習完了フラグFstdに1を入力すると本ルーチンを終了する。
【0049】
次に、図6に示すフローチャートを用いて、本実施の形態の見込み制御について詳細に説明する。まず、ステップS210にて、所定期間TM1が経過したか否かが判定される。この所定期間TM2は、見込み制御の実行条件が成立してから、見込み制御が終了するまでの期間のことであり、前述したように必ず実際の車速が“0km/h”となる所定期間である。本実施の形態ではこの所定期間として例えば2秒が設定される。このステップS210で、見込み制御が開始されてから所定期間TM1が経過していないと判定されると、ステップS210の判定が否定(NO)されてステップS220へ進む。ステップS220では、見込み制御の初期設定が終了したかを判定するためのフラグFfst1が1であるかを判定する。
【0050】
初期設定が終了していない場合は、フラグFfst1が0であるためステップS220の判定が否定されてステップS230に示す初期設定の処理へと進む。初期設定の処理は、図7に示すサブルーチンが呼び出されて実行される。この図7の初期設定ルーチンが起動されると、まず、ステップS231にて、後述する学習完了を示すフラグFstdが1であるか否かを判定する。ここで、フラグFstdが1である場合には、ステップS231の判定が肯定(YES)されて、ステップS232へ進む。ステップS232では、学習によって算出された制御DUTY値の平均値avPclに、クラッチLCの係合特性より定まる所定係数COEF1を乗じる。この値は、クラッチLCの係合状態として、滑り係合が発生する直前の係合領域にするための制御DUTY値である。従って、この値に滑り係合が発生しないように余裕度を持たせるべく所定DUTY値CPcl1を減算して、初回の制御DUTY値Pclを設定する。そして、ステップS235へ進む。
【0051】
なお、ステップS232にて設定した学習処理に基づく制御DUTYでは、後述するステップS233にて予め設定されている制御DUTYに比して、経時変化や個体差に対応して精度良くクラッチLCを滑り係合が発生する直前の係合状態に制御することができる。なお、所定DUTY値CPcl1は、制御DUTY値Pclを設定したときに油圧ポンプ18の油圧が不安定になっても、滑り係合が発生しないように余裕度を持たせるための値である。
【0052】
一方、ステップS231にて、フラグFstdが1ではないと判定されると、ステップS231の判定は否定(NO)されて、ステップS233へ進む。ステップS233では、学習が完了していないので、制御DUTY値として予め設定された所定値COEF2を設定する。これによって、滑り係合が発生する直前の係合状態にクラッチLCを制御することができる。そして、ステップS235へ進み、クラッチLCを係合するための圧力が徐々に減圧するために、制御DUTY値の増加度合いΔPclを設定する。この増加度合いΔPclは、所定期間TM2が経過するときに、クラッチLCの係合状態が滑り係合が発生する直前の値となるように設定される。そして、ステップS236にてメインクラッチ圧の制御DUTY値の初期設定が終了したとして、初期設定フラグFfst1に1を立てて本ルーチンから、メインルーチンである図6のステップS240へ進む。
【0053】
図6のステップS240では、ヒルホールド圧の初期設定を実施するために図8のサブルーチンが起動される。このルーチンが起動されるとステップS241にて、ヒルホールド圧の制御DUTY値Phhとして、所定制御DUTY値Phhminを設定する。制御DUTY値Phminとしては、例えば0%DUTYにすることで、ブレーキ2&4Bの係合状態を制御するための油圧が最大となるように設定する。そして、ステップS242にて、ヒルホールド圧が徐々に増圧されるように、制御DUTY値の減少度合いΔPhhを設定し、ステップS243へ進む。ステップS243では、ヒルホールド圧の制御DUTY値の初期設定が終了したとして、初期設定フラグFfst2に1を立てて、本ルーチンを終了し、そして、図6のメインルーチンを終了する。
【0054】
以上のようにして、メインクラッチ圧とヒルホールド圧に対する初期設定がそれぞれ終了すると、それぞれの初期設定フラグFfst1,Ffst2には1がセットされているので、図6のメインルーチンのステップS220の判定が肯定(YES)されてステップS250,S260へ進む。まず、ステップS250では、メインクラッチ圧に対する制御DUTY値を設定するために、図9に示すサブルーチンが起動される。図9のステップS251では、前回のメインクラッチ圧の制御DUTY値Pcl(n−1)が読み込まれる。そして、図7のフローチャートのステップS235にて設定したメインクラッチ圧制御DUTY値の増加度合いΔPclを前回の制御DUTY値Pcl(n−1)に加算し、今回の制御DUTY値Pcl(n−1)を設定する。このようにして、メインクラッチ圧に対する制御DUTY値Pcl(n)を設定すると、図6のメインルーチンに戻り、ステップS260の処理を実行する。
【0055】
ステップS260では、ヒルホールド圧制御として図10のサブルーチンが起動され、実行される。このサブルーチンが起動されると、まず、ステップS261にて前回のヒルホールド圧に対する制御DUTY値Phh(n−1)を読みこみ、ステップS262へ進む。ステップS262ではヒルホールド圧に対する制御DUTY値Phhの初期設定が終了してから所定期間TM2が経過したかが判定される。所定期間TM2は、ブレーキ2&4Bに対して油を急速充填するために設定される値である。この期間TM2においては、ステップS262の判定が否定(NO)されて、ステップS263へ進む。ステップS263では、油を急速充填するために制御DUTY値Phh(n)として、初期設定で設定された制御DUTY値Phhminを設定するために前回の制御DUTY値Phh(n−1)を設定する。すなわち、制御DUTY値Phh(n)として、例えば0%が設定することによって、油圧制御弁を全開にして油の急速充填を実施し、本ルーチンを終了する。
【0056】
一方、制御DUTY値Phhの初期設定が終了してから、油を急速充填するための所定期間TM2が経過した場合、ステップS262の判定が肯定(YES)されてステップS264へ進む。ステップS264では、後述するフラグFfst3が1であるか否かが判定される。ここで、フラグFfst3は、最初0が設定されているため、ステップS264の判定は否定(NO)されてステップS265へ進む。急速充填するための所定期間TM2が終了して最初に設定する制御DUTY値Phh(n)は、ブレーキ2&4Bの係合によってトルクショックが発生しないような所定DUTY値CPhhが設定される。そして、この設定が終了するとステップS266へ進み、この設定が終了したことを示すフラグFfst3に1をセットして、本ルーチンを終了する。
【0057】
このフラグFfst3に1がセットされることで、この処理以降ではステップS264の判定が必ず肯定(YES)されて、ステップS267へ進む。ステップS267では、前回設定されたヒルホールド圧に対する制御DUTY値Phh(n−1)から、図8のフローチャートのステップS242にて設定された制御DUTY値の減少度合いΔPhhを減算して今回の制御DUTY値Phh(n)を設定する。そして、この処理が終了すると図6のメインルーチンも終了する。
【0058】
以上のようにして、本実施の形態では、実際の車速が“0km/h”ではなくとも、クラッチLCの係合状態として滑り係合が発生しないように制御することでトルク抜けが発生することが防止できる。つぎに、本実施の形態の制御動作について図13のタイムチャートを用いて説明する。
【0059】
まず、車速が“0km/h”であることが推定、若しくは検出されるタイミングが時刻t1である。時刻t1では見込み制御の実行条件が成立し、メインクラッチ圧に対する制御DUTY値Pclを所定DUTY大きく設定することで、メインクラッチ圧が所定圧力小さくなる。そして、メインクラッチ圧に対する制御DUTY値Pclの演算周期毎にメインクラッチ圧が一定圧力減圧されるように、メインクラッチ圧に対する制御DUTY値をΔPclずつ大きく設定する。図13では、所定周期毎にメインクラッチ圧に対する制御DUTY値Pclが大きく設定されている。何れの設定方法にせよ、見込み制御の実行期間である所定期間TM1が経過する時刻t3までに、クラッチLCの係合状態として滑り係合が発生する直前の値となるように徐々にメインクラッチ圧が減圧される。なお、本実施の形態では、この滑り係合が発生する直前の値が定常制御時の平均制御DUTY値の学習値から求まる。
【0060】
一方、図13のタイムチャートに示すヒルホールド圧に対する制御DUTY値Phhは、見込み制御の開始と共に所定DUTY値Phhminが設定されて急速充填制御が開始され時刻t2まで継続される。そして、時刻t2にて一旦ヒルホールド圧を減圧するために、制御DUTY値Phhを所定DUTY値CPhhに設定する。その後、時刻t3の過渡制御の開始時期までメインクラッチ圧が所定圧力ずつ増加していくように、制御DUTY値Phhを減少度合いΔPhhずつ小さく設定する。なお、図13のタイムチャートでは時刻t3にて定常制御が開始されると、その後の減少度合いΔPhhよりも大きな減少度合いで制御DUTY値Phhを小さくしていく。そして、最終的にブレーキ2&4Bを完全に係合させる。
【0061】
なお、図14に示すようにメインクラッチ圧に対する制御DUTY値Pclを設定しても良い。なお、この図においてt1〜t4は、図13の時刻t1〜t4に一致する。図14の上図において、メインクラッチ圧に対する制御DUTY値Pclの設定方法は、時刻t1から時刻t2にて制御DUTYを100%に設定することで、クラッチLCの油圧制御弁を閉弁してメインクラッチ圧が加わらないようにする。そして、時刻t2においてクラッチLCの係合状態として滑り係合が生じない値に、制御DUTY値Pclを設定する。そして、その後制御DUTY値Pclの演算周期毎に徐々にメインクラッチ圧が小さくなるように、制御DUTY値の減衰度合いΔPclを加算して、徐々に油圧制御弁が閉弁するように制御する。
【0062】
また、同様に、図14の下図においては、演算周期よりも大きな周期で徐々にメインクラッチ圧が減衰するように、制御DUTY値Pclを設定しても良い。上記何れのメインクラッチ圧の制御方法においても、見込み制御実行中に滑り係合が発生しないように制御することは勿論である。
【0063】
一方、これらのメインクラッチ圧の制御方法に加えて、図15に示すヒルホールド圧の制御方法をそれぞれ組み合わせて用いても良い。なお、この図においても時刻t1〜t4は、図13の時刻t1〜t4に一致する。図15の上図において、ヒルホールド圧を制御するための油圧制御弁に対する制御DUTY値Phhの設定方法では、時刻t1から時刻t2において、ブレーキ2&4Bに対する急速充填を行うと、時刻t2以降では、圧力を一旦減圧させる。これによってブレーキ2&4Bが係合するときのトルクショックを低減させている。その後は、完全にブレーキ2&4Bが係合するまで所定周期でヒルホールド圧を増加させる。
【0064】
また、図15の中図では急速充填を実行せずに、ヒルホールド圧を所定圧力上昇させる。そして、その後所定周期毎に徐々にヒルホールド圧Phhが増加するように、制御DUTY値Phhの減少度合いΔPhhを設定する。そして時刻t3にて過渡制御が開始されると、時刻t2から時刻t3で設定された減少度合いΔPhhより大きな減少度合いで制御DUTY値Phhを減少させ、最終的にブレーキ2&4Bが係合するように制御DUTY値Phhを設定する。図15の下図では、見込み制御の開始時刻t1にヒルホールド圧を中図と同様に所定圧力増圧し、その後一定の増加度合いで圧力が増加するように制御DUTY値Pclの減少度合いΔPclを設定する。
【0065】
以上のように、図14のメインクラッチ圧制御と図15のヒルホールド圧制御とを組み合わせて実施することで、時刻t3の過渡制御開始時までに油圧ポンプ18の油圧を安定させることができる。故に、過渡制御実行時に安定した制御を実施することができる。
【0066】
なお、本実施の形態では、滑り係合が発生する直前の値を学習するために定常制御実行時のメインクラッチ圧の制御DUTY値Pclに基づいて学習しているが、これに代えて、タービン回転速度Ntが変化した場合に、滑り係合が発生する直前の係合状態にクラッチLCを制御するための制御値を滑り係合の発生を防止する側に学習すると良い。
【0067】
また、本実施の形態では、車両の車速を演算により算出しているが、これに代えて図示しない車速センサの出力に基づいて見込み制御の開始判定を実施しても良い。この場合、車速センサの出力値は“0km/h”付近で出力値が貼りつく等の現象を生ずるため、“0km/h”付近では信頼性が低い。そこで見込み制御の開始条件が成立しても所定期間TM1内に、車速センサ出力があった場合には見込み制御の開始判定を再度実行すると良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の全体構成図である。
【図2】本発明の自動変速機構を示す概略図である。
【図3】本発明の変速パターンを示すマップである。
【図4】本実施の形態における擬似ニュートラル制御を示すタイムチャートである。
【図5】本発明の擬似ニュートラル制御のメインプログラムである。
【図6】本発明の見込み制御のメインプログラムを示すフローチャートである。
【図7】本実施の形態におけるメインクラッチ圧制御の初期設定を示すフローチャートである。
【図8】本実施の形態におけるヒルホールド圧制御の初期設定を示すフローチャートである。
【図9】本実施の形態におけるメインクラッチ圧制御を示すフローチャートである。
【図10】本実施の形態におけるヒルホールド圧制御を示すフローチャートである。
【図11】本実施の形態における定常制御中の平均メインクラッチ圧制御DUTY値の学習プログラムを示すフローチャートである。
【図12】本実施の形態における車速“0km/h”推定を示すフローチャートである。
【図13】本実施の形態におけるメインクラッチ圧制御DUTY値とヒルホールド圧制御DUTY値とを示すタイムチャートである。
【図14】その他の実施例としてのメインクラッチ圧制御DUTY値の設定方法を示すタイムチャートである。
【図15】その他の実施例としてのヒルホールド圧制御DUTY値の設定方法を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
11…自動変速機、
12…トルクコンバータ、
16…ロックアップクラッチ、
17…油圧制御回路、
18…油圧ポンプ、
19…ライン圧制御回路、
20…自動変速制御回路、
21…ロックアップ制御回路、
26…手動切換弁、
27…エンジン回転速度センサ、
30…AT−ECU、LC,HC,RC…クラッチ(摩擦係合要素)、
2&4B,L&RB…ブレーキ(摩擦係合要素)。
Claims (5)
- 前進走行レンジが選択され、車両が停止状態にあり、かつ、エンジンがアイドル運転状態にあるときに、擬似ニュートラル状態を形成するための見込み制御手段と、過渡制御手段と、定常制御手段とを備える自動変速機の制御装置において、
前進走行レンジが選択されたときに係合される前進用クラッチと、
油圧の供給によって前記前進用クラッチを係合させるための第1の油圧制御弁と、
擬似ニュートラル状態を形成するために見込み制御を実行するか否かを判定する見込み制御開始判定手段と、
前記油圧制御弁を調整することにより前記前進用クラッチへ供給する油圧を制御する第1の油圧制御弁制御手段と、
前記定常制御手段による前記擬似ニュートラル状態を形成するための前記第1の油圧制御弁を調整するための制御値を学習する学習手段を備え、
前記見込み制御開始判定手段により見込み制御を開始すると判定されてから所定期間は、前記見込み制御手段は、前記第1の油圧制御弁制御手段により前記前進用クラッチが完全に係合している係合状態から滑り係合を発生する直前の係合状態になるように前記第1の油圧制御弁を調整する手段であり、
前記過渡制御手段は、前記前進用クラッチが前記滑り係合が発生する直前の係合状態から、前記前進用クラッチが離れる直前の滑り係合状態になるように前記第1の油圧制御弁を調整する手段であり、
前記定常制御手段は、前記前進用クラッチが前記前進用クラッチが離れる直前の滑り係合状態を維持して、前記擬似ニュートラル状態を形成するように前記第1の油圧制御弁を調整する手段であり、
前記前進用クラッチが滑り係合を発生する直前の係合状態となるように前記第1の油圧制御弁制御手段により前記第1の油圧制御弁を調整するための制御値は、前記学習手段により学習された学習値に基づいて設定されることを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 車両のブレーキの状態を検出するブレーキ状態検出手段と、
内燃機関の吸気通路中に配設されるスロットル弁の開度を検出するスロットル開度検出手段と、
車速が停止状態であることを検出、若しくは推定する停止態検出手段とを備え、
前記見込み制御開始判定手段は、ブレーキ状態検出手段により検出される車両のブレーキが踏み込まれている状態、前記スロットル開度検出手段により検出されるスロットル開度が全閉位置、若しくは、前記停止状態検出手段により検出、若しくは推定される車両の状態が停止状態のうちいずれか一つ以上の条件に基づいて前記見込み制御の開始を判断することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の制御装置。 - 前記自動変速機の出力軸が車両の後進方向へ回転することを阻止する後進禁止用ブレーキと、
前記後進禁止用ブレーキの係合を調整する第2の油圧制御弁と、
前記第2の油圧制御弁を調整することにより前記後進用ブレーキに供給する油圧を制御する第2の油圧制御弁制御手段と備え、
前記見込み制御開始判定手段により前記見込み制御手段の開始条件であると判定されると、前記見込み制御手段は前記第2の油圧制御弁制御手段により前記第2の油圧制御弁を係合させることを特徴とする請求項1または2に記載の自動変速機の制御装置。 - 内燃機関のクランクシャフトからの回転をトルクコンバータを介して自動変速機に伝達するタービンシャフトと、
前記タービンシャフトの回転速度を検出するタービン回転速度検出手段とを備え、
前記見込み制御手段による見込み制御の実施中に前記タービン回転速度検出手段により検出されるタービン回転速度が変化したときに、前記前進用クラッチが滑り係合を発生する直前の係合状態となるように前記第1の油圧制御弁制御手段により前記第1の油圧制御弁を調整するための制御値は、前記前進用クラッチに滑り係合が発生することを防止する側に学習されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の自動変速機の制御装置。 - 車両の速度を検出する車速センサと、
前記車速センサの出力を検出する車速センサ出力検出手段とを備え、
前記見込み制御開始判定手段により、前記見込み制御を開始すると判定されてから前記所定期間内に、前記車速センサの出力により車速が生じていることが検出されたときには、前記見込み制御手段による見込み制御を終了して、前記見込み制御開始判定を再度実行することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の自動変速機の制御装置。
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