JP5110524B2 - 転がり軸受 - Google Patents

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Description

本発明は、転がり軸受に関し、より特定的には、焼付きの発生が抑制された転がり軸受に関するものである。
近年、転がり軸受が使用される機械装置の高性能化、高効率化などの進行に伴い、転がり軸受に対しては、過酷な使用環境下における高い耐久性が求められる傾向にある。具体的には、内部に硬質の異物が侵入する異物混入環境において用いられる転がり軸受では、当該異物の噛み込みに起因して転がり軸受が早期に(軸受の計算寿命よりも短い運転時間で)損傷する場合がある。また、潤滑が不十分な環境下において使用される転がり軸受においては、焼付きが発生する場合がある。特に、転がり軸受を構成する保持器と当該保持器を案内する内輪または外輪などの軌道部材との間では焼付きが発生しやすい。さらに、転がり軸受が高温、たとえば200℃を超える高温環境下で使用される場合、転がり軸受を構成する軌道部材や転動体などの部品の硬度が低下し、耐久性が低下する場合もある。
これに対し、軌道部材や転動体などの部品が鋼からなる場合、当該鋼に3.75質量%以上のクロムを添加して鋼の焼戻軟化抵抗を向上させることにより、高温での強度を向上させ、転がり軸受の高温環境下における耐久性を向上させることができる。また、異物混入環境における耐久性を向上させるためには、軌道部材や転動体などの部品に対し、表層部に他の領域に比べて窒素濃度が高い層である窒素富化層を形成する処理、たとえば窒化処理を行なう対策を採用することができる。
ここで、クロム含有量の高い鋼、たとえば3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなる部品においては、表層部に化学的に安定な酸化膜が形成される。そのため、通常の窒化処理を実施しても、表層部に窒素が侵入せず、窒素富化層が形成されないという問題が生じる。これに対し、プラズマ窒化処理を実施することにより、窒素富化層を形成する対策が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。そして、プラズマ窒化処理の制御については、たとえばグロー放電の分光分析に基づいて行なう方法や、被処理物を流れる電流の電流密度に基づいて行なう方法が提案されている(たとえば特許文献2および3参照)。これにより、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなる軌道部材や転動体などの部品の表層部に窒素富化層を形成することが可能となる。
また、耐焼付き性を向上させるために、転動体である玉を有機リン化合物中に浸漬し、表面に反応膜を形成する対策が提案されている(たとえば、特許文献4参照)。
特開平2−57675号公報 特開平7−118826号公報 特開平9−3646号公報 特開平9−133130号公報
しかしながら、上述のようなプラズマ窒化処理を用いて、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなる軌道部材や転動体などの部品の表層部に窒素富化層を形成した場合でも、当該部品の特性が十分に向上しない場合がある。すなわち、上述のような部品に応力が繰返し負荷された場合、早期に剥離や破断が発生することがある(疲労強度の低下)。また、上述のような部品に衝撃的な応力が負荷された場合、容易に破損が発生することもある(靭性の低下)。つまり、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなる軌道部材や転動体などの部品においては、単に窒素富化層を形成するのみでは、表層部の硬度は上昇するものの、特に疲労強度や靭性の点で、必ずしも十分な特性が得られない場合があるという問題があった。
また、転がり軸受が使用される環境はますます過酷化している。たとえば、航空機などのジェットエンジンに使用される転がり軸受においては、高温環境下における部品の硬度低下の抑制および異物混入環境における耐久性の向上のみならず、潤滑が一時的に遮断された場合における耐焼付性の向上(いわゆるドライラン性能の向上)が求められる。ドライラン性能を向上させるためには、特に、軌道部材と保持器との間の焼付きを有効に抑制する必要がある。そのため、上記特許文献1〜4に開示された対策を含め、従来の対策では必ずしも十分であるとはいえない。
そこで、本発明の目的は、高温環境下における部品の硬度低下の抑制および異物混入環境における耐久性の向上のみならず、ドライラン性能の向上をも達成可能な転がり軸受を提供することである。
本発明に従った転がり軸受は、0.77質量%以上0.85質量%以下の炭素と、0.01質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.35質量%以下のマンガンと、0.01質量%以上0.15質量%以下のニッケルと、3.75質量%以上4.25質量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下のモリブデンと、0.9質量%以上1.1質量%以下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼から構成され、表面を含む領域には、焼入処理された上記鋼がプラズマ窒化処理されて生成した、窒素濃度が0.05質量%以上である窒素富化層が形成されており、窒素富化層における炭素濃度と窒素濃度との合計値は0.82質量%以上1.9質量%以下である軌道部材と、軌道部材に接触し、円環状の軌道上に配置された複数の転動体と、転動体を軌道上に保持する保持器とを備えている。軌道部材は、保持器と接触する軌道部材接触面を含んでいる。一方、保持器は、軌道部材と接触する保持器接触面を含んでいる。そして、軌道部材接触面および保持器接触面の少なくともいずれか一方を含む領域には、軌道部材を構成する材料とは異なる材料からなる焼付き防止層が配置されている。上記窒素富化層を顕微鏡にて観察した場合、アスペクト比2以上、長さ7.5μm以上の鉄の窒化物の数が、一辺150μmの正方形領域5視野内に1個以下である。
本発明者は、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなる軌道部材や転動体などの部品に窒素富化層を形成した場合に、疲労強度や靭性が低下する原因について詳細な検討を行なった。その結果、以下のような現象が起こることに起因して、部品の疲労強度や靭性が低下することが分かった。
すなわち、上述のようにプラズマ窒化により3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなる部品に窒素富化層を形成した場合、表層部における窒素量が、部品を構成する鋼の固溶限(析出物に含まれる窒素も含めた固溶限)を超える。そのため、部品を構成する鋼には、結晶粒界に沿って析出する鉄の窒化物(FeN、FeNなど)が形成される。そして、アスペクト比2以上で、かつ7.5μm以上の長さで形成された鉄の窒化物(以下、アスペクト比2以上、かつ7.5μm以上の長さを有し、結晶粒界に沿って形成される鉄の窒化物を粒界析出物という)は、剥離や破断の起点となるおそれがある。
より具体的には、粒界析出物が形成された部品に応力が繰返し負荷された場合、当該粒界析出物が応力の集中源となり、亀裂が発生することがある。そして、この亀裂が進展し、剥離や破断に至るため、部品の疲労強度が低下する。また、粒界析出物が形成された部品に衝撃的な応力が負荷されると、当該粒界析出物が亀裂の発生や進展を助長するため、靭性が低下する場合がある。つまり、軌道部材や転動体などの部品の表層部において過剰な量の窒素が侵入する結果、粒界析出物が形成され、これが原因となって当該部品の疲労強度や靭性が低下し得る。
これに対し、本発明の転がり軸受を構成する軌道部材においては、適切な成分組成を有する鋼からなる軌道部材の表面を含む領域に窒素濃度が0.05質量%以上の窒素富化層を形成した上で、当該窒素富化層における炭素濃度と窒素濃度との合計値を適切な範囲とすることにより、粒界析出物の形成を抑制することが可能となっている。その結果、本発明の転がり軸受を構成する軌道部材によれば、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなることにより高温環境下における硬度低下が抑制されるとともに、表層部に窒素富化層が形成されており、かつ疲労強度および靭性が十分に確保された軌道部材を提供することができる。以下、軌道部材を構成する鋼の成分範囲および窒素富化層における窒素および炭素の濃度を上記の範囲に限定した理由について説明する。
炭素:0.77質量%以上0.85質量%以下
軌道部材を構成する鋼において、炭素が0.77質量%未満では、十分な母材硬度が得られないという問題が発生し得る。一方、炭素が0.85質量%を超えると、粗大な炭化物(セメンタイト;FeC)が形成されるという問題が発生し得る。したがって、炭素は0.77質量%以上0.85質量%以下とする必要がある。
珪素:0.01質量%以上0.25質量%以下
軌道部材を構成する鋼において、珪素が0.01質量%未満では、鋼の製造コスト上昇という問題が発生し得る。一方、珪素が0.25質量%を超えると、素材の硬度が上昇し冷間加工性が低下するという問題が発生し得る。したがって、珪素は0.01質量%以上0.25質量%以下とする必要がある。
マンガン:0.01質量%以上0.35質量%以下
軌道部材を構成する鋼において、マンガンが0.01質量%未満では、鋼の製造コスト上昇という問題が発生し得る。一方、マンガンが0.35質量%を超えると、素材の硬度が上昇し冷間加工性が低下するという問題が発生し得る。したがって、マンガンは0.01質量%以上0.35質量%以下とする必要がある。
ニッケル:0.01質量%以上0.15質量%以下
軌道部材を構成する鋼において、ニッケルが0.01質量%未満では、鋼の製造コスト上昇という問題が発生し得る。一方、ニッケルが0.15質量%を超えると、残留オーステナイト量の増加という問題が発生し得る。したがって、ニッケルは0.01質量%以上0.15質量%以下とする必要がある。
クロム:3.75質量%以上4.25質量%以下
軌道部材を構成する鋼において、クロムが3.75質量%未満では、焼戻軟化抵抗の低下という問題が発生し得る。一方、クロムが4.25質量%を超えると、焼入が実施される際に炭化物の固溶が阻害されるという問題が発生し得る。したがって、クロムは3.75質量%以上4.25質量%以下とする必要がある。
モリブデン:4質量%以上4.5質量%以下
軌道部材を構成する鋼において、モリブデンが4質量%未満では、焼戻軟化抵抗の低下という問題が発生し得る。一方、モリブデンが4.5質量%を超えると、鋼の製造コスト上昇という問題が発生し得る。したがって、モリブデンは4質量%以上4.5質量%以下とする必要がある。
バナジウム:0.9質量%以上1.1質量%以下
軌道部材を構成する鋼において、バナジウムが0.9質量%未満では、焼戻軟化抵抗の低下やバナジウム添加による組織の微細化の効果が少なくなるという問題が発生し得る。一方、バナジウムが1.1質量%を超えると、鋼の製造コスト上昇という問題が発生し得る。したがって、バナジウムは0.9質量%以上1.1質量%以下とする必要がある。
窒素富化層の窒素濃度:0.05質量%以上
上記鋼からなる軌道部材において、表層部に十分な硬度を付与して耐摩耗性等を確保するためには、表面を含む領域に窒素濃度が0.05質量%以上である窒素富化層が形成されている必要がある。また、耐摩耗性等を一層向上させるためには、軌道部材の表面における窒素濃度は、0.15質量%以上であることが好ましい。
窒素富化層における窒素濃度と炭素濃度との合計値:0.82質量%以上1.9質量%以下
上記鋼からなる軌道部材において、表層部に十分な硬度を付与して耐摩耗性等を確保するためには、窒素濃度だけでなく炭素濃度をも管理することが重要である。そして、窒素富化層における窒素濃度と炭素濃度との合計値が0.82質量未満では、表層部に十分な硬度を付与して耐摩耗性等を確保することが難しくなることを、本発明者は見出した。したがって、窒素富化層における窒素濃度と炭素濃度との合計値は、0.82質量%以上とする必要がある。また、表層部に十分な硬度を付与して耐摩耗性等を確保することを容易にするためには、窒素富化層における窒素濃度と炭素濃度との合計値は、0.97質量%以上とすることが好ましい。
一方、上記鋼からなる軌道部材において、表層部の窒素濃度が高くなると粒界析出物が形成されやすくなり、炭素濃度が高くなるとその傾向がより強くなる。そして、窒素富化層における窒素濃度と炭素濃度との合計値が1.9質量%を超えると、粒界析出物の形成を抑制することが難しくなることを、本発明者は見出した。したがって、窒素富化層における窒素濃度と炭素濃度との合計値は、1.9質量%以下とする必要がある。また、粒界析出物の形成を一層抑制するためには、窒素富化層における窒素濃度と炭素濃度との合計値は、1.7質量%以下とすることが好ましい。なお、上記炭素濃度および窒素濃度とは、鉄、クロムなどの炭化物以外の領域である素地(母相)における濃度をいう。
さらに、本発明の転がり軸受においては、軌道部材接触面および保持器接触面の少なくともいずれか一方を含む領域には、軌道部材を構成する材料とは異なる材料からなる焼付き防止層が配置されている。上述のように、転がり軸受の耐焼付き性の向上、特にドライラン性能の向上を達成するためには、軌道部材と保持器との間の焼付きを有効に抑制する必要がある。一方、上述のように本発明に係る軌道部材は鋼からなり、保持器も、通常、鋼などの金属材料からなる。このように、軌道部材および保持器が同種材料からなる場合、潤滑が不十分な環境下では、焼付きが発生しやすくなる傾向にある。これに対し、軌道部材接触面および保持器接触面の少なくともいずれか一方を含む領域に軌道部材を構成する材料とは異なる材料からなる焼付き防止層を配置することにより、転がり軸受の耐焼付き性の向上、特にドライラン性能の向上を達成することができる。なお、軌道部材の製造過程において、軌道部材の表面のうち転動体と接触する領域(転走面)だけでなく、軌道部材接触面にも窒素富化層が形成された場合、軌道部材と保持器との間の焼付きが発生しやすくなる場合がある。窒素富化層を形成するための窒化処理において、軌道部材接触面への窒素富化層の形成を回避するためには、窒化処理を実施する前に、軌道部材接触面に窒化を防止する膜などを形成した上で窒化処理を実施し、その後、当該膜を除去するという煩雑なプロセスが必要となる。したがって、軌道部材への窒素富化層の形成を前提とする本発明の転がり軸受では、焼付き防止層を形成することで、製造過程における上記煩雑なプロセスを回避することができる。
以上のように、本発明の転がり軸受においては、軌道部材が3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなることにより、高温環境下における部品の硬度低下が抑制される。また、適切な成分組成を有する鋼からなる軌道部材の表層部に、炭素濃度と窒素濃度との合計値を適切な範囲とした窒素富化層を形成することにより、異物混入環境における部品の耐久性が向上する。さらに、軌道部材接触面および保持器接触面の少なくともいずれか一方を含む領域に焼付き防止層を配置することにより、耐焼付き性の向上、特にドライラン性能の向上が達成される。その結果、本発明の転がり軸受によれば、高温環境下における部品の硬度低下の抑制および異物混入環境における耐久性の向上のみならず、ドライラン性能の向上をも達成可能な転がり軸受を提供することができる。
ここで、焼付き防止層を構成する材料としては、たとえばDLC(Diamond Like Carbon)、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、ジルコニアなどのセラミックスや、ポリイミド系樹脂、PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)、PFA(Perfluoro Alkoxyl Alkane)、FEP(Fluorinated Ethylene Propylene Copolymer)、ETFE(Ethylene Tetra Fluoro Ethylene)、PVdF(Poly Vinylidene Fluoride)などのフッ素樹脂、PEEK(Poly Ether Ether Keton)、PPS(Poly Phenylene Sulfide)、フェノール樹脂などの200℃以上の温度において使用可能な樹脂などを採用することができる。
上記転がり軸受においては、焼付き防止層はDLCからなるものとすることができる。DLCは高硬度であり、かつ鋼との動摩擦係数が鋼よりも小さいため、焼付き防止層を構成する素材として好適である。
上記転がり軸受においては、焼付き防止層は低動摩擦係数樹脂からなるものとすることができる。ポリイミド系樹脂、PTFE、PFA、FEP、ETFE、PVdFなどのフッ素樹脂、PEEK、PPS、フェノール樹脂などの低動摩擦係数樹脂は、動摩擦係数が鋼よりも小さく、かつ仮に潤滑が不十分となった場合でも、焼付き防止層が摩耗することにより焼付きの発生を抑制するため、焼付き防止層を構成する素材として好適である。
上記転がり軸受において好ましくは、低動摩擦係数樹脂は多孔質構造を有することにより、潤滑剤が含浸可能となっている。これにより、軸受の運転中において、潤滑剤が低動摩擦係数樹脂に含浸し、仮に潤滑が不十分となった場合でも、含浸された潤滑剤により潤滑が確保され、焼付きの発生が抑制される。ここで、多孔質構造を有する低動摩擦係数樹脂としては、フェノール樹脂などを採用することができる。
上記転がり軸受において好ましくは、上記窒素富化層の厚みは0.05mm以上である。軌道部材においては、表面および表面直下、具体的には表面からの距離が0.05mm以内の領域の強度が重要となる場合が多い。そのため、上記窒素富化層の厚みを0.05mm以上とすることにより、軌道部材に十分な強度を付与することが可能となる。なお、軌道部材の強度を一層十分なものとするためには、上記窒素富化層の厚みは0.10mm以上であることが好ましい。
上記転がり軸受において好ましくは、上記窒素富化層は、830HV以上の硬度を有している。表層部に形成される窒素富化層の硬度を830HV以上とすることにより、軌道部材の強度を一層確実に確保することが可能となる。
上記転がり軸受においては、上記窒素富化層を顕微鏡にて観察した場合、アスペクト比2以上、長さ7.5μm以上の鉄の窒化物の数が、一辺150μmの正方形領域5視野内に1個以下である。
上述のように、アスペクト比2以上、長さ7.5μm以上の鉄の窒化物である粒界析出物は、部品の疲労強度、靭性などの特性を低下させるおそれがある。そして、本発明者が上記成分組成を有する鋼からなる部品について、疲労強度と粒界析出物の数密度との関係について調査したところ、上記窒素富化層を顕微鏡にて観察した場合、粒界析出物が一辺150μmの正方形領域5視野内に1個を超える数密度で存在すると、部品の疲労強度が低下することが分かった。したがって、窒素富化層を顕微鏡にて観察した場合、粒界析出物の数が一辺150μmの正方形領域5視野内に1個以下であることにより、軌道部材の疲労強度を向上させることができる。なお、軌道部材の疲労強度を一層向上させるためには、上記粒界析出物の数は、一辺150μmの正方形領域60視野内に1個以下であることが好ましい。
上記転がり軸受において好ましくは、転動体は、セラミックスからなっている。これにより、互いに接触する軌道部材と転動体とが異種材料となるため、耐焼付き性が向上する。また、鋼に比べて硬度の高いセラミックスを転動体の素材に採用することにより、異物混入環境における転動体の耐久性が向上する。また、転動体がセラミックスからなることにより、高温環境下における転動体の硬度低下が抑制される。ここで、転動体を構成するセラミックスとしては、たとえば窒化珪素、サイアロン、アルミナ、ジルコニアなどを採用することができる。
また、転がり軸受において、転動体は、軌道部材と同様の上記成分組成を有する鋼からなっていてもよい。この場合、さらに、転動体には、上記軌道部材と同様の構成を有する窒素富化層が形成されていることが好ましい。
上記転がり軸受は、ガスタービンエンジンの内部において、主軸または主軸の回転を受けて回転する部材である回転部材を、当該回転部材に隣接する部材に対して回転自在に支持する軸受として用いてもよい。ガスタービンエンジンの内部において回転部材(主軸または主軸の回転を受けて回転する部材)を支持する軸受には、高温環境下における部品の硬度低下の抑制、異物混入環境における耐久性の向上およびドライラン性能の向上が求められる。そのため、高温環境下における部品の硬度低下の抑制および異物混入環境における耐久性の向上のみならず、ドライラン性能の向上を達成可能な本発明の転がり軸受は、ガスタービンエンジンの内部において回転部材を支持する軸受として好適である。
なお、上記窒素富化層における窒素および炭素の濃度は、たとえばEPMA(Electron Probe Micro Analysis)により調査することができる。また、上記鉄の窒化物(粒界析出物)の数密度は、たとえば以下のように調査することができる。すなわち、まず部品を表面に垂直な断面で切断し、当該断面を研磨する。その後、適切な腐食液にて当該断面腐食した上で、窒素富化層をSEM(Scanning Electron Microscope;走査型電子顕微鏡)あるいは光学顕微鏡にて観察して写真を撮影する。そして、表面が視野の一辺として規定された一辺150μmの正方形の視野を画像解析装置により解析し、粒界析出物の数を調査する。これをランダムに5視野以上において実施し、5視野あたりの粒界析出物の数を算出する。
以上の説明から明らかなように、本発明の転がり軸受によれば、高温環境下における部品の硬度低下の抑制および異物混入環境における耐久性の向上のみならず、ドライラン性能の向上をも達成可能な転がり軸受を提供することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の転がり軸受を適用可能なガスタービンエンジンであるターボファンエンジンの構成を示す概略図である。図1を参照して、本実施の形態におけるターボファンエンジンの構成について説明する。
図1を参照して、ターボファンエンジン70は、圧縮部71と、燃焼部72と、タービン部73とを備えている。そして、ターボファンエンジン70は、圧縮部71から、燃焼部72を通り、タービン部73に至るように配置された、低圧主軸74と、低圧主軸74の外周面を取り囲むように配置された高圧主軸77とを備えている。
圧縮部71は、低圧主軸74に接続され、低圧主軸74から径方向外側に突出するように形成された複数のファンブレード75Aを有するファン75と、ファン75の外周側を取り囲むとともに燃焼部72に向けて延在するファンナセル76と、ファン75から見て燃焼部72側に配置されたコンプレッサ81とを含んでいる。コンプレッサ81は、低圧コンプレッサ81Aと、低圧コンプレッサ81Aから見て燃焼部72側に配置される高圧コンプレッサ81Bとを有している。低圧コンプレッサ81Aは、低圧主軸74に接続され、低圧主軸74側から径方向外側に向けて突出し、かつファン75側から燃焼部72に近づく方向に並べて配置される複数のコンプレッサブレード88を有している。また、高圧コンプレッサ81Bは、高圧主軸77に接続され、高圧主軸77側から径方向外側に向けて突出し、かつファン75側から燃焼部72に近づく方向に並べて配置される複数のコンプレッサブレード88を有している。さらに、低圧コンプレッサ81Aの外周側を取り囲むように、コアカウル78が配置されている。このコアカウル78とファンナセル76との間の環状の空間は、バイパス流路79を構成する。
燃焼部72は、圧縮部71の高圧コンプレッサ81Bに接続され、燃料供給部材および点火部材(図示しない)を有する燃焼室82を含んでいる。タービン部73は、高圧タービン83Bと、高圧タービン83Bから見て燃焼部72とは反対側に配置される低圧タービン83Aとを有するタービン83を含んでいる。さらに、低圧タービン83Aから見て高圧タービン83Bとは反対側には、タービン83内の燃焼ガスを外部に排出するタービンノズル84が配置されている。低圧タービン83Aは、低圧主軸74に接続され、低圧主軸74側から径方向外側に向けて突出し、かつ燃焼室82側からタービンノズル84に近づく方向に並べて配置される複数のタービンブレード87を有している。また、高圧タービン83Bは、高圧主軸77に接続され、高圧主軸77側から径方向外側に向けて突出し、かつ燃焼室82側からタービンノズル84に近づく方向に並べて配置される複数のタービンブレード87を有している。
そして、主軸または当該主軸の回転を受けて回転する部材である回転部材としての低圧主軸74および高圧主軸77は、転がり軸受89により、低圧主軸74および高圧主軸77に隣接して配置される部材に対して回転自在に支持されている。すなわち、転がり軸受89は、ガスタービンエンジンであるターボファンエンジン70の内部において、主軸または当該主軸の回転を受けて回転する部材である回転部材としての低圧主軸74または高圧主軸77を、低圧主軸74または高圧主軸77に隣接する部材に対して回転自在に支持している。
次に、本実施の形態におけるターボファンエンジン70の動作について説明する。図1を参照して、ファン75から見て燃焼部72とは反対側、すなわちターボファンエンジン70の前方側の空気は、低圧主軸74の軸周りに回転するファン75により、ファンナセル76に囲まれる空間に取り込まれる(矢印α)。取り込まれた空気の一部は、矢印βに沿った方向に流れ、バイパス流路79を通って空気噴流として外部に排出される。この空気噴流は、ターボファンエンジン70によって発生される推力の一部となる。
一方、ファンナセル76に囲まれる空間に取り込まれた空気の残部は、矢印γに沿ってコンプレッサ81の内部に流入する。コンプレッサ81の内部に流入した空気は、低圧主軸74の軸周りに回転する複数のコンプレッサブレード88を有する低圧コンプレッサ81Aの内部を高圧コンプレッサ81Bに向けて流れることにより圧縮され、高圧コンプレッサ81Bに流入する。さらに、高圧コンプレッサ81Bに流入した空気は、高圧主軸77の軸周りに回転する複数のコンプレッサブレード88を有する高圧コンプレッサ81Bの内部を燃焼室82に向けて流れることによりさらに圧縮され、燃焼室82に流入する(矢印δ)。
コンプレッサ81において圧縮され、燃焼室82に流入した空気は、燃料供給部材(図示しない)により燃焼室内に供給された燃料と混合された上で、点火部材(図示しない)により点火される。これにより、燃焼ガスが燃焼室82内に発生する。この燃焼ガスは、燃焼室82から流出し、タービン83内に流入する(矢印ε)。
タービン83内に流入した燃焼ガスは、高圧タービン83B内において、高圧主軸77に接続されたタービンブレード87に衝突することにより、高圧主軸77を軸周りに回転させる。これにより、高圧主軸77に接続されたコンプレッサブレード88を有する高圧コンプレッサ81Bが駆動される。さらに、高圧タービン83B内を通過した燃焼ガスは、低圧タービン83A内において、低圧主軸74に接続されたタービンブレード87に衝突することにより、低圧主軸74を軸周りに回転させる。これにより、低圧主軸74に接続されたコンプレッサブレード88を有する低圧コンプレッサ81Aと、低圧主軸74に接続されたファンブレード75Aを有するファン75とが駆動される。
そして、低圧タービン83A内を通過した燃焼ガスは、タービンノズル84から外部へと排出される。この排出される燃焼ガスの噴流は、ターボファンエンジン70によって発生される推力の一部となる。
ここで、ターボファンエンジン70の内部において、低圧主軸74または高圧主軸77を、低圧主軸74または高圧主軸77に隣接する部材に対して回転自在に支持する転がり軸受89は、ターボファンエンジン70において発生する熱の影響により、高温環境下で使用される。また、転がり軸受89の内部には、金属粉やカーボン粉などの硬質の異物が侵入するおそれがある。そのため、転がり軸受89には、高温環境下における部品の硬度低下の抑制および異物混入環境における耐久性の向上が求められる。さらに、ターボファンエンジン70が航空機に装備される場合、何らかの原因で転がり軸受89の潤滑が一時的に遮断された場合でも、当該潤滑が回復するまでの間、焼き付くことなく低圧主軸74または高圧主軸77を回転自在に支持し続けるドライラン性能が転がり軸受89には求められる。
これに対し、転がり軸受89が、以下に説明する実施の形態1における転がり軸受であることにより、上記要求を満たすことができる。
図2は、実施の形態1における転がり軸受としての3点接触玉軸受の構成を示す概略断面図である。また、図3は、図2の要部を拡大して示す概略部分断面図である。図2および図3を参照して、実施の形態1における転がり軸受としての3点接触玉軸受について説明する。
図2を参照して、3点接触玉軸受1は、軌道部材である環状の外輪11と、外輪11の内側に配置された軌道部材である環状の内輪12と、外輪11と内輪12との間に配置され、円環状の保持器14に保持された転動体としての複数の玉13とを備えている。外輪11の内周面には外輪転走面11Aが形成されており、内輪12の外周面には内輪転走面12Aが形成されている。そして、内輪転走面12Aと外輪転走面11Aとが互いに対向するように、外輪11と内輪12とは配置されている。内輪12は、第1内輪121と第2内輪122とを含んでおり、軸方向中央部において分割された構造を有している。第1内輪121および第2内輪122の外周面には、それぞれ第1内輪転走面121Aおよび第2内輪転走面122Aが形成されている。この第1内輪転走面121Aおよび第2内輪転走面122Aは、内輪転走面12Aを構成する。さらに、複数の玉13は、外周面である玉転走面13Aにおいて、第1内輪転走面121A、第2内輪転走面122Aおよび外輪転走面11Aに接触可能となっており、かつ保持器14により周方向に所定のピッチで配置されることにより、円環状の軌道上に転動自在に保持されている。以上の構成により、3点接触玉軸受1の外輪11および内輪12は、互いに相対的に回転可能となっている。
ここで、軌道部材である外輪11および内輪12は、0.77質量%以上0.85質量%以下の炭素と、0.01質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.35質量%以下のマンガンと、0.01質量%以上0.15質量%以下のニッケルと、3.75質量%以上4.25質量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下のモリブデンと、0.9質量%以上1.1質量%以下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼から構成されている。そして、図2を参照して、外輪11および内輪12の表面である外輪転走面11Aおよび内輪転走面12Aを含む領域には、窒素濃度が0.05質量%以上である外輪窒素富化層11Bおよび内輪窒素富化層12Bが形成されている。さらに、外輪窒素富化層11Bおよび内輪窒素富化層12Bにおける炭素濃度と窒素濃度との合計値は0.82質量%以上1.9質量%以下である。ここで、上記不純物は、鋼の原料に由来するもの、あるいは製造工程において混入するものなどの不可避的不純物を含む。
さらに、図3を参照して、軌道部材である外輪11は、保持器14と接触する軌道部材接触面としての外輪接触面11D(保持器案内面)を含んでいる。また、保持器14は、外輪11と接触する保持器接触面14Dを含んでいる。すなわち、3点接触玉軸受1の保持器14は外輪11により案内されている。そして、外輪接触面11Dを含む領域には、DLCからなる焼付き防止層としてのDLCコーティング層11Eが配置されている。
また、転動体である玉13はセラミックスからなっている。より具体的には、本実施の形態においては、玉13は、窒化珪素を主成分とし、残部不純物からなる焼結体からなっている。なお、当該焼結体は、酸化アルミニウム(Al)、酸化イットリウム(Y)などの焼結助剤を含んでいてもよい。
ここで、玉13は、外輪11および内輪12と同様の上記成分組成を有する鋼からなっていてもよい。この場合、さらに、玉13には、外輪11および内輪12と同様の構成を有する窒素富化層が形成されていることが好ましい。
本実施の形態における3点接触玉軸受1の軌道部材である外輪11および内輪12においては、上記適切な成分組成を有する鋼からなるとともに、表面に形成された外輪転走面11Aおよび内輪転走面12Aを含む領域に窒素濃度が0.05質量%以上である外輪窒素富化層11Bおよび内輪窒素富化層12Bが形成されている。そして、外輪窒素富化層11Bおよび内輪窒素富化層12Bにおける炭素濃度と窒素濃度との合計値が適切な範囲である0.82質量%以上1.9質量%以下とされることにより、表層部に十分な硬度が付与されるとともに、粒界析出物の形成が抑制されている。その結果、本実施の形態における軌道部材である外輪11および内輪12は、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなるとともに、表層部に窒素富化層が形成されており、かつ疲労強度および靭性が十分に確保された部品となっている。
さらに、本実施の形態における3点接触玉軸受1においては、外輪接触面11Dを含む領域に、DLCコーティング層11Eが配置されている。これにより、3点接触玉軸受1は、耐焼付き性の向上、特にドライラン性能の向上が達成された転がり軸受となっている。
また、本実施の形態における3点接触玉軸受1においては、転動体である玉13がセラミックスからなっている。これにより、互いに接触する外輪11および内輪12と玉13とが異種材料となるため、耐焼付き性が向上する。その結果、潤滑が不十分な環境下における耐久性、たとえばドライラン性能の向上が達成される。また、鋼に比べて硬度の高いセラミックスを玉13の素材に採用することにより、異物混入環境における玉13の耐久性が向上する。さらに、玉13がセラミックスからなることにより、高温環境下における玉13の硬度低下が抑制される。また、玉13がセラミックスからなることにより、玉13が鋼からなる場合に比べて玉13が軽量化され、玉13に作用する遠心力が低減されるため、3点接触玉軸受1は、特に高速回転する部材を支持する転がり軸受として好適である。
なお、玉13は、外輪11および内輪12と同様の成分組成を有する鋼からなり、同様の窒素富化層が形成されている場合、玉13は、上記外輪11および内輪12と同様に、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなるとともに、表層部に窒素富化層が形成されており、かつ疲労強度および靭性が十分に確保された部品となる。その結果、高温環境下における玉13の硬度低下が抑制されるとともに、異物混入環境における玉13の耐久性が向上する。
以上のように、本実施の形態における3点接触玉軸受1においては、軌道部材である外輪11および内輪12が3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなることにより高温環境下における部品の硬度低下が抑制されている。また、適切な成分組成を有する鋼からなる外輪11および内輪12の外輪転走面11Aおよび内輪転走面12Aを含む領域に、炭素濃度と窒素濃度との合計値を適切な範囲とした外輪窒素富化層11Bおよび内輪窒素富化層12Bを形成することにより、異物混入環境における部品の耐久性が向上している。さらに、外輪接触面11Dを含む領域にDLCコーティング層11Eが配置されていることにより、ドライラン性能の向上が達成されている。その結果、3点接触玉軸受1は、高温環境下における部品の硬度低下の抑制および異物混入環境における耐久性の向上のみならず、ドライラン性能の向上をも達成した転がり軸受となっている。
さらに、外輪11および内輪12に形成された外輪窒素富化層11Bおよび内輪窒素富化層12Bの厚みは、0.05mm以上であることが好ましい。これにより、外輪11、内輪12および玉13に十分な強度が付与される。
さらに、外輪窒素富化層11Bおよび内輪窒素富化層12Bは、830HV以上の硬度を有していることが好ましい。これにより、外輪11および内輪12の強度を一層確実に確保することが可能となる。
さらに、外輪窒素富化層11Bおよび内輪窒素富化層12Bを顕微鏡にて観察した場合、アスペクト比2以上、長さ7.5μm以上の鉄の窒化物の数が、一辺150μmの正方形領域5視野内に1個以下であることが好ましい。これにより、外輪11および内輪12の疲労強度を向上させることができる。
次に、上記本発明の一実施の形態における転がり軸受の製造方法について説明する。図4は、実施の形態1における転がり軸受の製造方法の概略を示すフローチャートである。
図4を参照して、本実施の形態における転がり軸受の製造方法は、工程(S10)〜(S100)を含む軌道部材作製工程と、工程(S210)〜(S230)を含む保持器作製工程と、工程(S300)として実施される組立て工程とを備えている。
まず、軌道部材作製工程について説明する。工程(S10)として実施される鋼部材準備工程では、0.77質量%以上0.85質量%以下の炭素と、0.01質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.35質量%以下のマンガンと、0.01質量%以上0.15質量%以下のニッケルと、3.75質量%以上4.25質量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下のモリブデンと、0.9質量%以上1.1質量%以下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼からなり、軌道部材の概略形状に成形された鋼部材が準備される。具体的には、たとえば、上記成分を含有する棒鋼、鋼線などを素材とし、当該棒鋼、鋼線などに対して切断、鍛造、旋削などの加工が実施されることにより、軌道部材としての外輪11、内輪12などの概略形状に成形された鋼部材が準備される。
次に、工程(S10)において準備された上述の鋼部材に対して、焼入処理および窒化処理を含む熱処理を行なう熱処理工程が実施される。熱処理工程は、工程(S20)として実施される焼入工程、工程(S30)として実施される第1焼戻工程、工程(S40)として実施されるサブゼロ工程、工程(S50)として実施される第2焼戻工程、工程(S60)として実施される第3焼戻工程、工程(S70)として実施されるプラズマ窒化工程および工程(S80)として実施される拡散工程を含んでいる。この熱処理工程の詳細については後述する。
次に、熱処理工程が実施された鋼部材に対して、仕上げ加工などが施される仕上げ加工工程が工程(S90)として実施される。具体的には、たとえば、熱処理工程が実施された鋼部材の外輪転走面11A、内輪転走面12Aなどに対する研磨加工が実施される。また、後述する工程(S100)においてDLCコーティング層11Eが形成されるべき領域に対しても、仕上げ加工が実施されることが好ましい。
次に、工程(S100)として、焼付き防止層形成工程が実施される。具体的には、工程(S90)が実施された鋼部材のうち、外輪11となるべき鋼部材にDLCコーティング層11Eが形成される。このDLCコーティング層11Eの形成は、たとえばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition;化学蒸着)法、PVD(Physical Vapor Deposition;物理蒸着)法などの方法により実施することができる。これにより、本実施の形態における軌道部材は完成し、本実施の形態における軌道部材作製工程は完了する。
次に、上述の熱処理工程の詳細について説明する。図5は、本実施の形態における軌道部材作製工程に含まれる熱処理工程の詳細を説明するための図である。図5において、横方向は時間を示しており右に行くほど時間が経過していることを示している。また、図5において、縦方向は温度を示しており上に行くほど温度が高いことを示している。
図5を参照して、本実施の形態における熱処理工程においては、まず、被処理物としての鋼部材が焼入処理される焼入工程が実施される。具体的には、鋼部材が減圧雰囲気中(真空中)または塩浴中でA変態点以上の温度である温度Tに加熱され、時間tの間保持された後、A変態点以上の温度からM点以下の温度に冷却されることにより、鋼部材が焼入処理される。
ここで、A点とは鋼を加熱した場合に、鋼の組織がフェライトからオーステナイトに変態を開始する温度に相当する点をいう。また、M点とはオーステナイト化した鋼が冷却される際に、マルテンサイト化を開始する温度に相当する点をいう。
次に、焼入処理が実施された鋼部材に対し、焼戻処理を行なう第1焼戻工程が実施される。具体的には、たとえば鋼部材が真空中でA変態点未満の温度である温度Tに加熱され、時間tの間保持された後、冷却されることにより鋼部材が焼戻処理される。これにより、鋼部材の焼入処理による残留応力を緩和し、熱処理によるひずみが抑制される等の効果が得られる。
次に、第1焼戻工程が実施された鋼部材に対し、サブゼロ処理を行なうサブゼロ工程が実施される。具体的には、鋼部材がたとえば液体窒素を噴霧されて0℃未満の温度である温度Tに冷却され、時間tの間保持されることによりサブゼロ処理される。これにより、鋼部材の焼入処理により生成した残留オーステナイトがマルテンサイトに変態し、鋼の組織が安定化する等の効果が得られる。
次に、サブゼロ工程が実施された鋼部材に対し、焼戻処理を行なう第2焼戻工程が実施される。具体的には、たとえば鋼部材が真空中でA変態点未満の温度である温度Tに加熱され、時間tの間保持された後、冷却されることにより焼戻処理される。これにより、鋼部材のサブゼロ処理による残留応力が緩和され、ひずみが抑制される等の効果が得られる。
次に、第2焼戻工程が実施された鋼部材に対し、再度焼戻処理を行なう第3焼戻工程が実施される。具体的には、たとえば上記第2焼戻工程と同様に鋼部材が真空中でA変態点未満の温度である温度Tに加熱され、時間tの間保持された後、冷却されることにより、焼戻処理される。ここで、温度Tおよびtは第2焼戻工程の温度Tおよびtと同様の条件とすることができる。これにより、第2焼戻工程と同様に、鋼部材のサブゼロ処理による残留応力を緩和し、ひずみが抑制される等の効果が得られる。なお、第2焼戻工程および第3焼戻工程は、1つの工程で実施してもよい。
次に、第3焼戻工程が実施された鋼部材に対し、プラズマ窒化処理を行なうプラズマ窒化工程が実施される。具体的には、たとえば圧力50Pa以上5000Pa以下となるように窒素(N)と、水素(H)、メタン(CH)およびアルゴン(Ar)からなる群から選択される少なくともいずれか1つ以上とが導入されたプラズマ窒化炉に、鋼部材が挿入され、放電電圧50V以上1000V以下、放電電流0.001A以上100A以下の条件下で温度Tに加熱されて時間tの間保持された後、冷却されることにより鋼部材がプラズマ窒化処理される。これにより、鋼部材の表層部に窒素が侵入して窒素富化層が形成され、当該表層部の強度が向上する。ここで、温度Tは、たとえば300℃以上550℃以下、時間tは1時間以上80時間以下とすることができる。この温度T、時間tなどの熱処理条件は、仕上げ加工工程で実施される仕上げ加工における取りしろを考慮し、プラズマ窒化処理において形成される粒界析出物層の厚みが、仕上げ加工において除去可能な厚みとなるように決定することができる。
なお、鋼部材を構成する鋼がAMS規格6490または6491(AISI規格M50)である場合、プラズマ窒化工程における上記圧力は50Pa以上1000Pa以下、放電電圧は50V以上600V以下、放電電流は0.001A以上300A以下、温度Tは350℃以上450℃以下、時間tは1時間以上50時間以下とすることが好ましい。
次に、プラズマ窒化工程が実施された鋼部材に対し、拡散処理を行なう拡散工程が実施される。具体的には、たとえば真空中で温度Tに加熱され、時間tの間保持されることにより鋼部材が拡散処理される。ここで、温度Tは、300℃以上480℃以下、好ましくは300℃以上430℃以下、時間tは50時間以上300時間以下とすることができる。これにより、窒化層形成による表層部の硬度上昇が相殺されることを抑制しつつ、鋼に侵入した窒素を所望の領域にまで到達させることができる。そして、この拡散工程を実施することにより、プラズマ窒化工程において窒素が侵入する深さを、仕上げ加工での粒界析出物層の除去が可能な範囲にとどめても、鋼に侵入した窒素を所望の領域にまで到達させることができる。以上の工程により、本実施の形態における熱処理工程は完了する。
以上のように、本実施の形態における熱処理方法によれば、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼の表層部を窒化処理して高硬度な窒素富化層を形成するとともに、粒界析出物の発生を抑制することができる。
また、上記実施の形態における軌道部材作製工程によれば、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなり、表層部が窒化処理されて高硬度な窒素富化層が形成されるとともに、粒界析出物の発生が抑制された軌道部材(外輪11,21、内輪12,22など)を製造することができる。その結果、上述のように、本実施の形態における軌道部材(外輪11、内輪12など)の表面(外輪転走面11A、内輪転走面12Aなど)を含む領域に窒素濃度が0.05質量%以上、炭素濃度と窒素濃度との合計値が0.82質量%以上1.9質量%以下である厚み0.05mm以上、硬度830HV以上の窒素富化層を形成するとともに、当該窒素富化層を表面に垂直な断面で切断し、当該断面を光学顕微鏡またはSEMを用いて、表面を含む一辺150μmの正方形の視野をランダムに5視野観察した場合、粒界析出物の検出数を1個以下とすることができる。ここで、窒素富化層における炭素濃度および窒素濃度は、たとえばプラズマ窒化工程において実施されるプラズマ窒化の処理時間、および拡散工程において実施される拡散処理の処理時間を調整することにより、コントロールすることができる。
一方、図4を参照して、保持器作製工程においては、まず、工程(S210)として、保持器の概略形状の成形した成形部材を準備する成形部材準備工程が実施される。具体的には、たとえばSAE規格4340からなる鋼材が準備され、切削加工などの加工が施されることにより、成形部材が準備される。
次に、工程(S220)として、成形部材に対して熱処理が施される熱処理工程が実施される。具体的には、準備されたSAE4340からなる成形部材に対して、焼入処理および焼戻処理が実施されることにより、成形部材に適切な硬度が付与される。
次に、工程(S230)として仕上げ加工工程が実施される。具体的には、たとえば、熱処理工程が実施された成形部材に対して仕上げ加工などが施される。以上の工程により、本実施の形態における保持器作製工程は完了する。
そして、図4を参照して、完成した部品が組合わされて転がり軸受が組立てられる組立て工程が、工程(S300)として実施される。具体的には、たとえば上述の工程により作製された外輪11、内輪12および保持器14と別途準備されたと玉13が組合わされて、3点接触玉軸受1が組立てられる。これにより、上記本実施の形態における転がり軸受が完成する。
ここで、玉13がセラミックスからなる場合、玉13は以下のように作製することができる。まず、転動体を構成する素材として採用されるセラミックス、たとえば窒化珪素の粉末が準備される。次に、準備されたセラミックスの粉末に、焼結助剤を添加して混合する。さらに、上記セラミックスの粉末と焼結助剤との混合物を、玉13の概略形状に成形する。具体的には、上記セラミックスの粉末と焼結助剤との混合物に、プレス成形、鋳込み成形、押し出し成形、転動造粒などの手法を用いた成形を実施することにより、転動体である玉13の概略形状に成形された成形体が作製される。さらに、当該成形体が焼結される。具体的には、上記成形体が、HIP(Hot Isostatic Press;熱間静水圧焼結法)、GPS(Gas Pressure Sintering;ガス圧焼結法)などの加圧焼結法を用いて焼結されることにより、玉13の概略形状を有する焼結体が得られる。次に、得られた焼結体の表面(転走面)を研磨することにより、転動体としての玉13を完成させる。
また、玉13が外輪11および内輪12と同様の鋼からなる場合、上記工程(S10)〜(S90)と同様の工程により、玉13を作製することができる。なお、窒素富化層の形成が不要の場合、工程(S70)および(S80)を省略することができる。
(実施の形態2)
次に、本発明の他の実施の形態である実施の形態2について説明する。図6は、実施の形態2における転がり軸受としての円筒ころ軸受の構成を示す概略断面図である。また、図7は、図6の要部を拡大して示す概略部分断面図である。
図6および図7を参照して、実施の形態2における円筒ころ軸受2は、実施の形態1における3点接触玉軸受1と基本的には同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。すなわち、円筒ころ軸受2は、環状の外輪21と、外輪21の内側に配置された環状の内輪22と、外輪21と内輪22との間に配置され、円環状の保持器24に保持された転動体としての複数のころ23とを備えている。ころ23は、円筒形状を有している。外輪21の内周面には外輪転走面21Aが形成されており、内輪22の外周面には内輪転走面22Aが形成されている。そして、内輪転走面22Aと外輪転走面21Aとが互いに対向するように、外輪21と内輪22とは配置されている。さらに、複数のころ23は、外周面であるころ転走面23Aにおいて内輪転走面22Aおよび外輪転走面21Aに接触し、かつ保持器24により周方向に所定のピッチで配置されることにより、円環状の軌道上に転動自在に保持されている。以上の構成により、円筒ころ軸受2の外輪21および内輪22は、互いに相対的に回転可能となっている。
ここで、図7を参照して、本実施の形態における円筒ころ軸受2の外輪21および内輪22は、上記実施の形態1における3点接触玉軸受1の外輪11および内輪12に、ころ23は玉13に該当し、同様の構成を有しており、同様の効果を奏する。つまり、外輪21および内輪22は、上記外輪11および内輪12と同様の鋼からなっている。そして、外輪21および内輪22の表面である外輪転走面21Aおよび内輪転走面22Aを含む領域には、それぞれ窒素濃度が0.05質量%以上である外輪窒素富化層21Bおよび内輪窒素富化層22Bが形成されている。また、外輪窒素富化層21Bおよび内輪窒素富化層22Bにおける炭素濃度と窒素濃度との合計値は0.82質量%以上1.9質量%以下である。また、外輪21および保持器24は、外輪接触面11Dおよび保持器接触面14Dに相当する外輪接触面21Dおよび保持器接触面24Dを有している。すなわち、円筒ころ軸受2の保持器24は外輪21により案内されている。
しかし、実施の形態2における円筒ころ軸受2は、焼付き防止層の構成において、実施の形態1における3点接触玉軸受1とは異なっている。具体的には、図7を参照して、円筒ころ軸受2の外輪接触面21Dを含む領域には、多孔質構造を有することにより潤滑剤が含浸可能なフェノール樹脂などからなる樹脂リング21Eが配置されている。潤滑剤としては、たとえばMIL−PRF−23699を採用することができる。
実施の形態2における円筒ころ軸受2では、焼付き防止層として樹脂リング21Eが採用されることにより、外輪21と保持器24との間の動摩擦係数が低減され、かつ仮に潤滑が不十分となった場合でも、樹脂リング21Eが摩耗することにより焼付きの発生が抑制される。さらに、潤滑が不十分となった場合、軸受の運転中に樹脂リング21Eに含浸した潤滑剤により潤滑が確保され、焼付きの発生が一層抑制される。また、コーティング層ではなく、樹脂リング21Eを採用することで、転がり軸受の製造プロセスにおいて、手順の煩雑なコーティング処理を必要とせず、たとえば樹脂リング21Eを外輪21にはめ込むことにより、焼付き防止層を形成することが可能となる。
次に、実施の形態2における円筒ころ軸受2の製造方法について説明する。円筒ころ軸受2は、基本的には、上記実施の形態1における3点接触玉軸受1と同様に製造することができる。しかし、焼付き防止層の構成の相違に起因して、製造方法も一部異なっている。
すなわち、図4を参照して、円筒ころ軸受2の製造方法では、工程(S10)において、外輪21の樹脂リング21Eを配置すべき領域に、樹脂リング21Eを嵌め込むための溝部が内周面に沿って形成される。そして、実施の形態1の場合と同様に工程(S20)〜(S90)までが実施された上で、工程(S100)において、別途準備された樹脂リング21Eが上記溝部には嵌め込まれる。他の工程は、実施の形態1と同様に実施される。これにより、手順の煩雑なコーティング処理を実施することなく、実施の形態2における円筒ころ軸受2を完成させることができる。
なお、焼付き防止層を上述のように樹脂リングの嵌め込みにより形成する場合、保持器の外周面に対して樹脂リングを嵌め込んでもよいが、この場合、転がり軸受の運転時において、樹脂リングが保持器から外れやすくなる向きに遠心力が作用する。そのため、軌道部材接触面が外輪の内周面となる場合(つまり、保持器が外輪案内の場合)、上述のように、樹脂リングは外輪の内周面に嵌め込まれることが好ましい。一方、軌道部材接触面が内輪の外周面となる場合(つまり、保持器が内輪案内の場合)、樹脂リングは保持器の内周面に嵌め込まれることが好ましい。
(実施の形態3)
次に、本発明のさらに他の実施の形態である実施の形態3について説明する。図8は、実施の形態3における転がり軸受としての円筒ころ軸受の構成を示す概略断面図である。また、図9は、図8の要部を拡大して示す概略部分断面図である。
図8および図9を参照して、実施の形態3における円筒ころ軸受3は、実施の形態1および2における3点接触玉軸受1および円筒ころ軸受2と基本的には同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。すなわち、円筒ころ軸受3は、外輪11,21に相当する外輪31、内輪12,22に相当する内輪32、玉13およびころ23に相当し、ころ転走面33Aにおいて外輪31および内輪32に接触するころ33および保持器14,24に相当する保持器34を備えている。また、外輪31および内輪32は、外輪転走面31Aおよび内輪転走面32Aを含む領域に、それぞれ外輪窒素富化層11B,21Bに相当する外輪窒素富化層31Bおよび内輪窒素富化層12B,22Bの相当する内輪窒素富化層32Bを含んでいる。
しかし、実施の形態3における円筒ころ軸受3は、軌道部材接触面、保持器接触面および焼付き防止層の構成において、実施の形態1および2における転がり軸受とは異なっている。すなわち、図9を参照して、円筒ころ軸受3の内輪32および保持器34は、それぞれ互いに接触する軌道部材接触面としての内輪接触面32Dおよび保持器接触面34Dを有している。すなわち、円筒ころ軸受3の保持器34は内輪32により案内されている。そして、保持器接触面34Dを含む領域には、焼付き防止層としての樹脂コーティング層34Eが配置されている。これにより、保持器接触面34Dと内輪接触面32Dとの間における焼付きの発生が抑制されている。
次に、実施の形態3における円筒ころ軸受3の製造方法について説明する。図10は、実施の形態3における転がり軸受の製造方法の概略を示すフローチャートである。図10および図4を参照して、実施の形態3における円筒ころ軸受3の製造方法は、実施の形態1における3点接触玉軸受1の製造方法と基本的には同様に実施される。しかし、上記軌道部材接触面、保持器接触面および焼付き防止層の構成の相違に起因して、実施の形態3における転がり軸受の製造方法は、実施の形態1の場合とは、一部異なっている。
すなわち、実施の形態3における円筒ころ軸受3の製造方法の軌道部材作製工程では、実施の形態1の場合と同様に工程(S10)〜(S90)が実施され、工程(S100)が省略される。一方、保持器作製工程では、実施の形態1の場合と同様に工程(S210)〜(S230)までが実施される。その後、実施の形態3においては、さらに工程(S240)として、焼付き防止層形成工程が実施される。具体的には、仕上げ加工工程が完了した成形部材の外周面に、樹脂コーティング層34Eが形成される。この樹脂コーティング層34Eの形成は、たとえば圧縮成形、押出成形、射出成形、粉体塗装などの方法により実施することができる。これにより、本実施の形態における保持器は完成し、本実施の形態における保持器作製工程は完了する。
そして、実施の形態1の場合と同様に、工程(S300)として組立工程が実施されることにより、実施の形態3における円筒ころ軸受3が完成する。
なお、上記実施の形態においては、本発明の転がり軸受の一例として、3点接触玉軸受および円筒ころ軸受について説明したが、本発明の転がり軸受はこれに限られず、たとえば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、スラストニードルころ軸受、自動調心玉軸受、自動調心ころ軸受などであってもよい。また、上記実施の形態においては、互いに接触する軌道部材接触面および保持器接触面のうち一方に焼付き防止層が形成される場合について説明したが、両方に形成されていてもよい。
さらに、本願の特許請求の範囲、明細書および要約書において、軌道部材は保持器と接触する軌道部材接触面を含み、保持器は軌道部材と接触する保持器接触面を含む、との表現を採用したが、これは、転がり軸受の運転時において互いに接触し得る状態に配置されることを意味する。
以下、本発明の実施例1について説明する。本発明の転がり軸受を構成する軌道部材と同様の構成を有するサンプルを、上記実施の形態における熱処理方法を用いて実際に作製し、表層部における粒界析出物の発生が抑制されていることを確認する実験を行なった。実験の手順は以下のとおりである。
まず、0.77質量%以上0.85質量%以下の炭素と、0.01質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.35質量%以下のマンガンと、0.01質量%以上0.15質量%以下のニッケルと、3.75質量%以上4.25質量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下のモリブデンと、0.9質量%以上1.1質量%以下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼であるAMS規格6490(AISI規格M50)の鋼材を準備し、これを加工することにより外径φ40mm、内径φ30mm、厚みt16mmの試験片を作製した。
次に、この試験片に対し、上記実施の形態において図5に基づいて説明した熱処理方法を用いた熱処理工程を実施した。ここで、T、t、T、t、T、t、T、t、Tおよびtは、第3焼戻工程後の試験片の硬度が58HRC以上65HRC以下となるように決定し、Tは430℃、tは10時間、Tは430℃、tは160時間とした。また、プラズマ窒化工程においては、プラズマ窒化時の処理温度Tが430℃となるように、放電電圧を200V以上450V以下、放電電流を1A以上5A以下の範囲で制御した。さらに、プラズマ窒化工程においては、プラズマ窒化時の炉内の圧力が267Pa以上400Pa以下となるように、窒素(N):水素(H)=1:1の割合で炉内にガスを導入した。
さらに、拡散工程では、窒素雰囲気に調整された雰囲気炉内において試験片が加熱され、試験片の表面における炭素濃度と窒素濃度との和が1.9質量%以下となるように、拡散処理が実施された。以上のように上記実施の形態と同様の熱処理工程が実施された試験片を、本発明の実施例のサンプルとした(実施例A)。
一方、同様に作製されたAMS規格6490からなる試験片に対し、上記実施の形態において図5に基づいて説明した鋼の熱処理方法から、拡散工程を省略した熱処理工程を実施した。ここで、T、t、T、t、T、t、T、t、Tおよびtは、第3焼戻工程後の試験片の硬度が58HRC以上65HRC以下となるように決定し、Tは480℃、tは30時間とした。また、プラズマ窒化工程においては、プラズマ窒化時の処理温度Tが480℃となるように、放電電圧を200V以上450V以下、放電電流を1A以上5A以下の範囲で制御した。さらに、プラズマ窒化工程においては、プラズマ窒化時の炉内の圧力が267Pa以上400Pa以下となるように、窒素(N):水素(H):メタン(CH)=79:80:1の割合で炉内にガスを導入した。以上の熱処理方法が実施された試験片を、本発明の比較例のサンプルとした(比較例A)。
そして、上述のように作製された実施例Aおよび比較例Aのサンプルを表面に垂直な断面にて切断し、当該断面を研磨した。さらに、研磨された断面を腐食液にて腐食した後、表面を含む一辺150μmの正方形の視野をランダムに5視野観察した。
次に、実験結果について説明する。図11は、実施例Aの表面付近におけるミクロ組織の光学顕微鏡写真である。また、図12は、実施例Aの表面付近における硬度分布を示す図である。また、図13は、実施例Aの表面付近における炭素および窒素の濃度の分布を示す図である。また、図14は、比較例Aの表面付近におけるミクロ組織の光学顕微鏡写真である。また、図15は、比較例Aの表面付近における硬度分布を示す図である。また、図16は、比較例Aの表面付近における炭素および窒素の濃度の分布を示す図である。図11および図14において、写真上部がサンプルの表面側に該当する。また、図12および図15において、横軸は表面からの深さ(距離)、縦軸は硬度(単位はビッカース硬さ)を示している。また、図13および図16において、横軸は表面からの深さ(距離)、縦軸は炭素および窒素の濃度を示しており、図中に炭素濃度(C濃度)、窒素濃度(N濃度)および炭素濃度と窒素濃度との合計値(C+N濃度)が示されている。
図11を参照して、本発明の実施例Aのサンプルにおける表層部には、粒界析出物(アスペクト比2以上で、かつ7.5μm以上の長さで形成された鉄の窒化物)は観察されず、良好なミクロ組織となっている。また、図12および図13を参照して、実施例Aのサンプルの表面から深さ0.05mm以内の領域は、950HV以上という十分な硬度を有しているとともに、十分な量の窒素が侵入している。そのため、実施例Aと同様の熱処理を実施した鋼部材の表面に対して研磨などの仕上げ加工を施すことにより、窒素濃度が0.05質量%以上、炭素濃度と窒素濃度との合計値が0.82質量%以上1.9質量%以下、厚み0.05mm以上、硬度830HV以上の窒素富化層が形成されるとともに、当該窒素富化層を顕微鏡にて観察した場合、粒界析出物が一辺150μmの正方形領域5視野内に1個以下である軌道部材を製造することができる。
一方、図14を参照して、本発明の範囲外である比較例Aのサンプルにおける表層部には、多数の粒界析出物90が観察される。また、図15および図16を参照して、比較例Aのサンプルの表面から深さ0.05mm以内の領域は、実施例Aと同様に、950HV以上という十分な硬度を有しているとともに、十分な量の窒素が侵入している。そのため、比較例Aと同様の熱処理を実施した鋼部材の表面に対して研磨などの仕上げ加工を施しても、高硬度な表層部が形成されているものの、表層部に粒界析出物が残存する部品が得られる。このような部品は、上述のように、十分な疲労強度や靭性を有しているとはいえない。
以上より、上記実施の形態における熱処理方法を採用した軌道部材の製造方法によれば、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からなるとともに、表層部に窒素富化層が形成されており、かつ疲労強度および靭性が十分に確保された軌道部材を製造可能であることが確認された。
以下、本発明の実施例2について説明する。上記実施の形態において説明した熱処理方法の拡散工程における、適切な加熱温度の範囲を調査する実験を行なった。実験の手順は以下のとおりである。
まず、0.77質量%以上0.85質量%以下の炭素と、0.01質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.35質量%以下のマンガンと、0.01質量%以上0.15質量%以下のニッケルと、3.75質量%以上4.25質量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下のモリブデンと、0.9質量%以上1.1質量%以下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼であるAMS規格6490(AISI規格M50)の鋼材を準備し、これを加工することにより外径φ40mm、内径φ30mm、厚みt16mmの試験片を作製した。
次に、この試験片に対し、上記実施の形態において図5に基づいて説明した鋼の熱処理方法を用いた熱処理工程のうち、焼入工程から第3焼戻工程までを上記実施例1の実施例Aの場合と同様に実施した。そして、当該試験片を430℃〜570℃の温度に種々の時間保持することにより、拡散工程と同様の工程を実施し、試験片の硬度を測定した。さらに、当該測定結果を反応速度論に基づき解析し、拡散工程の各加熱温度における加熱処理時間(拡散時間)と硬度との関係を算出した。
一方、同様の試験片に焼入工程から第3焼戻工程までを上記実施例1の実施例Aの場合と同様に実施した後、実際にプラズマ窒化工程および拡散工程を実施して、試験片の硬度分布を確認する実験も行なった。プラズマ窒化工程においては、プラズマ窒化時の処理温度Tが480℃となるように、放電電圧を200V以上450V以下、放電電流を1A以上5A以下の範囲で制御し、1時間保持することによりプラズマ窒化を行なった。さらに、プラズマ窒化工程では、プラズマ窒化時の炉内の圧力が267Pa以上400Pa以下となるように、窒素(N):水素(H)=1:1の割合で炉内にガスを導入した。さらに、プラズマ窒化工程が完了した試験片に対して、480℃で50時間保持する拡散工程を行なった。そして、拡散工程を実施する前後における試験片の表層部における硬度分布を測定した。
次に、実験の結果について説明する。図17は、上記反応速度論に基づく解析の結果得られた、拡散工程の各加熱温度における加熱処理時間(拡散時間)と試験片の硬度との関係を示す図(アブラミプロット)である。図17において、横軸は加熱処理時間(拡散時間)、縦軸は試験片の硬度を示している。また、図18は、拡散工程を行なう前の試験片、および480℃で50時間保持する拡散工程を行なった試験片の表層部の硬度分布を示す図である。図18において、横軸は表面からの深さ(距離)、縦軸は硬度を示している。また、図18において、菱形は拡散工程を行なう前の試験片、四角形は480℃で50時間保持する拡散工程を行なった試験片の硬度を示している。
図17を参照して、試験片の硬度は、拡散温度が高いほど短時間で低下しているが、拡散温度が480℃になると、200時間拡散処理を行なった場合でも硬度の低下幅が40HV以下となり、母材の硬度(プラズマ窒化による窒素の侵入の影響がない領域における硬度)の低下が表層部の硬度に及ぼす影響が小さくなる。また、拡散温度が460℃になると、200時間拡散処理を行なった場合でも硬度の低下幅が25HV以下となり、母材の硬度の低下が表層部の硬度に及ぼす影響が一層小さくなる。さらに、拡散温度が430℃になると、200時間拡散処理を行なった場合でも硬度の低下幅が10HV以下となり、母材の硬度の低下は、表層部の硬度にほとんど影響を及ぼさなくなる。
一方、図18を参照して、480℃で50時間保持する拡散工程を行なった場合、実際の母材硬度の低下幅は、図17の解析結果とほぼ一致しており、図17の解析結果は、実際の熱処理の結果に一致しているものと考えられる。
以上の実験結果より、拡散工程における加熱温度(拡散温度)は、母材の硬度の低下が表層部の硬度に及ぼす影響を抑制しつつ、鋼に侵入した窒素を所望の領域にまで到達させる観点から、480℃以下とする必要があり、460℃以下とすることが好ましい。さらに、当該加熱温度を430℃以下とすることにより、母材の硬度の低下を表層部の硬度にほとんど影響させることなく、拡散工程を実施することができる。なお、母材の硬度の低下が表層部の硬度に及ぼす影響を抑制する観点からは、拡散工程における加熱温度を一層低くすることが好ましいが、鋼に侵入した窒素を所望の領域にまで到達させるために要する時間が実際の生産工程における許容限度を超えて長くなることを回避するため、当該加熱温度は300℃以上とすることが好ましい。
以下、本発明の実施例3について説明する。上記実施の形態において説明した熱処理方法を用いて転走面を含む領域に窒素富化層を形成し、当該窒素富化層による転がり軸受の耐久性の向上を確認する実験を行なった。実験の手順は以下のとおりである。
まず、試験軸受の作製方法について説明する。素材としてAISI規格M50を採用し、実施の形態1の場合と同様に図4の工程(S10)〜(S90)までのプロセスを実施することにより、転走面に窒素富化層を形成したJIS規格6206型番の内輪、外輪および玉を作製した。そして、当該内輪、外輪および玉を軸受に組立てた(実施例)。一方、比較のため、同様のプロセスにおいて、工程(S70)および(S80)を省略することにより、転走面に窒素富化層を形成しない内輪、外輪および玉も作製し、JIS規格6206型番の軸受に組立てた(比較例)。
次に、試験条件について説明する。上記実施例および比較例の試験軸受に対して、ラジアル方向に6.9kNの荷重を負荷し、アルミナからなる粒径45μm〜105μmの粉末を1L(リットル)あたり0.4g添加した潤滑油により潤滑する異物混入環境において、2000rpmの回転速度で回転させた。そして、転走面に剥離が発生するまでの時間を寿命として記録した。この試験を9個の試験軸受について実施し、その結果を統計的に処理することにより、累積破損確率が10%となる寿命値(L10寿命)を算出した。そして、当該L10寿命を、比較例のL10寿命に対する比で評価した。また、同様の試験において、試験開始時から振動値(振動加速度)が0.1G上昇するまでの時間(振動値増大時間)を調査し、当該振動値増大時間を比較例の振動値増大時間に対する比で評価した。
次に、試験結果について説明する。図19は、実施例3におけるL10寿命の調査結果を示す図である。また、図20は、実施例3における振動値増大時間の調査結果を示す図である。図19において、縦軸は、比較例に対するL10寿命の比を示している。また、図20において、縦軸は比較例に対する振動値増大時間の比を示している。
図19および図20を参照して、同一材料を採用した場合でも、窒素富化層を形成することにより、異物混入環境における寿命が30倍以上、振動値増大時間が3.5倍以上となっている。このことから、上記実施の形態1と同様の熱処理方法を用いて窒素富化層を形成することにより、転がり軸受の耐久性の大幅な向上が可能であることが確認された。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の転がり軸受は、過酷な条件下における耐久性の向上が求められる転がり軸受に、特に有利に適用され得る。
ターボファンエンジンの構成を示す概略図である。 実施の形態1における3点接触玉軸受の構成を示す概略断面図である。 図2の要部を拡大して示す概略部分断面図である。 実施の形態1における転がり軸受の製造方法の概略を示すフローチャートである。 軌道部材作製工程に含まれる熱処理工程の詳細を説明するための図である。 実施の形態2における円筒ころ軸受の構成を示す概略断面図である。 図6の要部を拡大して示す概略部分断面図である。 実施の形態3における円筒ころ軸受の構成を示す概略断面図である。 図8の要部を拡大して示す概略部分断面図である。 実施の形態3における転がり軸受の製造方法の概略を示すフローチャートである。 実施例Aの表面付近におけるミクロ組織の光学顕微鏡写真である。 実施例Aの表面付近における硬度分布を示す図である。 実施例Aの表面付近における炭素および窒素の濃度の分布を示す図である。 比較例Aの表面付近におけるミクロ組織の光学顕微鏡写真である。 比較例Aの表面付近における硬度分布を示す図である。 比較例Aの表面付近における炭素および窒素の濃度の分布を示す図である。 拡散工程の各加熱温度における加熱処理時間と試験片の硬度との関係を示す図(アブラミプロット)である。 拡散工程を行なう前の試験片、および480℃で50時間保持する拡散工程を行なった試験片の表層部の硬度分布を示す図である。 実施例3におけるL10寿命の調査結果を示す図である。 実施例3における振動値増大時間の調査結果を示す図である。
符号の説明
1 3点接触玉軸受、2,3 円筒ころ軸受、11,21,31 外輪、11A,21A,31A 外輪転走面、11B,21B,31B 外輪窒素富化層、11D,21D 外輪接触面、11E DLCコーティング層、12,22,32 内輪、12A,22A,32A 内輪転走面、12B,22B,32B 内輪窒素富化層、13 玉、13A 玉転走面、14,24,34 保持器、14D,24D,34D 保持器接触面、21E 樹脂リング、23,33 ころ、23A,33A ころ転走面、32D 内輪接触面、34E 樹脂コーティング層、70 ターボファンエンジン、71 圧縮部、72 燃焼部、73 タービン部、74 低圧主軸、75 ファン、75A ファンブレード、76 ファンナセル、77 高圧主軸、78 コアカウル、79 バイパス流路、81 コンプレッサ、81A 低圧コンプレッサ、81B 高圧コンプレッサ、82 燃焼室、83 タービン、83A 低圧タービン、83B 高圧タービン、84 タービンノズル、87 タービンブレード、88 コンプレッサブレード、89 転がり軸受、90 粒界析出物、121 第1内輪、121A 第1内輪転走面、122 第2内輪、122A 第2内輪転走面。

Claims (8)

  1. 0.77質量%以上0.85質量%以下の炭素と、0.01質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.35質量%以下のマンガンと、0.01質量%以上0.15質量%以下のニッケルと、3.75質量%以上4.25質量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下のモリブデンと、0.9質量%以上1.1質量%以下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼から構成され、表面を含む領域には、焼入処理された前記鋼がプラズマ窒化処理されて生成した、窒素濃度が0.05質量%以上である窒素富化層が形成されており、前記窒素富化層における炭素濃度と窒素濃度との合計値は0.82質量%以上1.9質量%以下である軌道部材と、
    前記軌道部材に接触し、円環状の軌道上に配置された複数の転動体と、
    前記転動体を前記軌道上に保持する保持器とを備え、
    前記軌道部材は、前記保持器と接触する軌道部材接触面を含み、
    前記保持器は、前記軌道部材と接触する保持器接触面を含み、
    前記軌道部材接触面および前記保持器接触面の少なくともいずれか一方を含む領域には、前記軌道部材を構成する材料とは異なる材料からなる焼付き防止層が配置されており、
    前記窒素富化層を顕微鏡にて観察した場合、アスペクト比2以上、長さ7.5μm以上の鉄の窒化物の数が、一辺150μmの正方形領域5視野内に1個以下である、転がり軸受。
  2. 前記焼付き防止層はDLCからなる、請求項1に記載の転がり軸受。
  3. 前記焼付き防止層は低動摩擦係数樹脂からなる、請求項1に記載の転がり軸受。
  4. 前記低動摩擦係数樹脂は多孔質構造を有することにより、潤滑剤が含浸可能となっている、請求項3に記載の転がり軸受。
  5. 前記窒素富化層の厚みは0.05mm以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の転がり軸受。
  6. 前記窒素富化層は、830HV以上の硬度を有している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の転がり軸受。
  7. 前記転動体は、セラミックスからなっている、請求項1〜のいずれか1項に記載の転がり軸受。
  8. ガスタービンエンジンの内部において、主軸または前記主軸の回転を受けて回転する部材である回転部材を、前記回転部材に隣接する部材に対して回転自在に支持する、請求項1〜のいずれか1項に記載の転がり軸受。
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