JP5194532B2 - 転がり軸受 - Google Patents

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Description

本発明は転がり軸受に関する。
軸受の潤滑油中に混入している金属の切粉,削り屑,バリ,及び摩耗粉等の異物が転がり軸受の軌道輪や転動体に損傷を与え、転がり軸受の寿命の大幅な低下をもたらすことはよく知られている。そこで、潤滑剤に異物が混入している環境下(以降は異物混入潤滑環境下と記すこともある)で転がり軸受を使用する場合でも、軸受の転がり表面層の炭素の含有量,残留オーステナイト量,及び炭窒化物の含有量を適性値にすることによって、異物により生じる圧痕のエッジ部における応力の集中を緩和し、クラックの発生を抑えて、転がり軸受の寿命を向上する技術が提案されている(特許文献1を参照)。
特開昭64−55423号公報
特許文献1にも記載されているように、異物混入潤滑環境下で転がり軸受を使用した際に生じる早期剥離は、転動体と軌道輪との間に異物が噛み込まれることによって形成された圧痕を起点として生じており、圧痕縁に生じる応力集中がその原因であると言われている。
また、上記のような圧痕起点型剥離は、圧痕縁の応力集中のみが原因ではなく、転動体と軌道輪との間に作用する接線力が影響していることも明らかになってきている。接線力に影響を及ぼす因子としては、すべり速度や面圧の他に表面粗さや表面形状があげられる。表面粗さが小さく表面形状が良好なほど、転動体と軌道輪との間に作用する接線力は小さくなり、異物混入潤滑環境下における軸受寿命は長くなる。
しかしながら、特許文献1の技術のように転動体の転動面や軌道輪の軌道面の残留オーステナイト量を多くすると、表面硬さが低下して耐摩耗性が不十分となるだけでなく、耐圧痕性が低下するという問題が生じる。つまり、転動面や軌道面の残留オーステナイト量が多い場合には、異物により圧痕が形成されやすくなる。圧痕が形成された面は形状崩れや表面粗さの悪化を起こし、圧痕の大きさが大きく数が多いほど形状崩れや表面粗さの悪化が顕著となる。すなわち、異物混入潤滑環境下においては、転動面や軌道面の残留オーステナイト量が多いほど圧痕が形成されやすいので、転動体と軌道輪との間に作用する接線力は大きくなる。
ただし、特許文献1にも記載されているように、残留オーステナイトの影響による応力集中緩和効果のため、残留オーステナイト量が多い部材自身の寿命はそれほど低下せず、それに接触する相手部材の寿命が低下する。これは、接触する2つの物体には同じ大きさの接線力が作用するためである。例えば、軌道輪の軌道面の残留オーステナイト量が多い場合には、応力集中緩和効果のため軌道輪は長寿命となるが、相手部材である転動体の寿命は接線力増加のため低下してしまう。
転動体の転動面と軌道輪の軌道面とのいずれが剥離した場合でも転がり軸受の寿命となるので、転がり軸受を長寿命とするためには転動体と軌道輪の両方の寿命を延ばす必要がある。すなわち、単に転動体の転動面や軌道輪の軌道面の残留オーステナイト量を多くしただけでは、十分な寿命延長効果は得られない。
一方、近年においては地球温暖化などの環境問題が深刻化する中、燃費向上を目的とした機械や輸送機の小型化,軽量化が進んでいる。そのため、機械部品の一つである転がり軸受の小型化に対する要求も厳しくなっている。転がり軸受の小型化に対して障害となることとしては、前述した転がり疲労寿命(動定格荷重)の他に、静的な過大荷重に対する塑性変形抵抗性(静定格荷重)がある。したがって、転がり軸受の性能としては長寿命なだけでは十分とは言えない場合があり、塑性変形抵抗性に優れていることが好ましい。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、圧痕起点型剥離が生じにくく長寿命な転がり軸受を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の転がり軸受は、軌道面を有する内輪と、前記内輪の軌道面に対向する軌道面を有する外輪と、前記両軌道面間に転動自在に配された複数の転動体と、を備える転がり軸受において、下記の5つの条件を満足することを特徴とする。
条件A:前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方は、高炭素クロム軸受鋼で構成されている。
条件B:前記転動体は、炭素の含有量が0.3質量%以上1.2質量%以下、ケイ素の含有量が0.3質量%以上2.2質量%以下、マンガンの含有量が0.2質量%以上2質量%以下、クロムの含有量が0.5質量%以上2質量%以下で、残部が鉄及び不可避的不純物である鋼で構成されており、その転動面には、浸炭窒化処理又は窒化処理を含む熱処理により硬化されてなる表層部が形成されている。
条件C:前記表層部の窒素濃度は0.2質量%以上2質量%以下である。
条件D:前記表層部には、ケイ素とマンガンとを含有する窒化物が析出しており、析出している前記窒化物の量は面積率で1.56%以上20%以下である。
条件E:前記窒化物の最大径は1μm以下である。
また、本発明に係る請求項2の転がり軸受は、請求項1に記載の転がり軸受において、前記内輪及び前記外輪のうち高炭素クロム軸受鋼で構成された軌道輪の軌道面の残留オーステナイト量γR(AB) と、前記転動体の転動面の残留オーステナイト量γR(C)とが、下記の3つの式を満足することを特徴とする。
γR(AB) −15≦γR(C)≦γR(AB) +15
γR(AB) ≧0
γR(C)≦50
ただし、前記3つの式における数値の単位は体積%である。
さらに、本発明に係る請求項3の転がり軸受は、請求項2に記載の転がり軸受において、前記内輪及び前記外輪のうち高炭素クロム軸受鋼で構成された軌道輪の軌道面には、浸炭処理又は浸炭窒化処理を含む熱処理により硬化されてなる表層部が形成されており、この表層部の硬さはHRC58以上66以下であるとともに、この表層部の内側の芯部の硬さはHRC56以上64以下であることを特徴とする
本発明者らは、圧痕起点型剥離による寿命を延長する方法として、前述した知見に基づく方法を検討した。すなわち、ある部材(例えば転動体)の圧痕起点型剥離による寿命を十分に確保するとともに、その部材の耐圧痕性及び耐摩耗性を向上させて表面粗さと表面形状の悪化を抑制し、それにより2つの物体間に作用する接線力を抑制して相手部材(例えば軌道輪)の寿命をも延長させるという方法である。その結果、耐圧痕性及び耐摩耗性を向上させる材料に関する因子としては、表面硬さの他に、残留オーステナイト量,表面の窒素濃度,表面に析出した窒化物の量があることが分かった。
また、本発明者らが、転動体の転動面及び軌道輪の軌道面の表面粗さの影響及び表面形状の悪化の影響について検討したところ、軌道輪の軌道面のみについて表面粗さを小さくしたり表面形状の悪化を抑制したりした場合と比べて、転動体の転動面のみについて表面粗さを小さくしたり表面形状の悪化を抑制したりした場合に、表面起点型剥離を効果的に抑制できることが分かった。すなわち、軌道輪の軌道面よりも転動体の転動面の表面粗さを小さくしたり表面形状の悪化を抑制したりした方が、転がり軸受の寿命を効果的に延長させることができる。
一方、転がり軸受の塑性変形抵抗性を向上させるためには、転がり軸受の軸受部品を構成する材料の硬さを向上させることが最も効果的であり、しかも、軸受部品の表面のみならず芯部の硬さも高いほど効果的である。表面硬さを向上させる方法としては、浸炭処理や浸炭窒化処理がある。炭素や窒素を固溶させ硬い炭化物や窒化物を析出させることにより、硬さを向上させることが可能である。また、焼入れ後の芯部の硬さについては、素材の炭素含有量が大きく影響し、低炭素,中炭素の肌焼鋼に比べて高炭素の軸受鋼の方が芯部の硬さが高くなる。すなわち、塑性変形抵抗性を向上させるためには、高炭素鋼をズブ焼き入れし(より好ましくは、高炭素鋼に浸炭処理又は浸炭窒化処理を施し)、表面から芯部まで硬さを向上させることが重要である。
したがって、転動体の表層部の残留オーステナイト量,窒素濃度,ケイ素とマンガンとを含有する窒化物の量を規定することによって耐圧痕性及び耐摩耗性が向上し、転がり軸受の回転時に転動体の転動面と軌道輪の軌道面との間に生じる接線力の増大が抑制されるため、異物混入潤滑環境下で使用した場合に生じやすい圧痕起点型剥離が抑制されて転がり軸受の長寿命化が達成される。さらに、軌道輪を高炭素クロム軸受鋼で構成し、さらに軌道面に浸炭処理又は浸炭窒化処理を施して表面から芯部まで硬くすることにより、塑性変形抵抗性が向上する。
本発明の転がり軸受は、異物混入潤滑環境下のような厳しい条件で使用されても圧痕起点型剥離が生じにくいため長寿命である。
本発明に係る転がり軸受の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る転がり軸受の一実施形態である深溝玉軸受の構造を示す部分縦断面図である。この深溝玉軸受は、軌道面1aを外周面に有する内輪1と、内輪1の軌道面1aに対向する軌道面2aを内周面に有する外輪2と、両軌道面1a,2a間に転動自在に配された複数の転動体3と、内輪1及び外輪2の間に転動体3を保持する保持器4と、内輪1及び外輪2の間の隙間の開口を覆うシール5,5と、を備えていて、両軌道面1a,2aと転動体3の転動面3aとの間の潤滑が、グリース,潤滑油等の潤滑剤6により行われている。なお、保持器4やシール5は備えていなくてもよい。
この深溝玉軸受においては、内輪1及び外輪2は高炭素クロム軸受鋼で構成されおり、転動体3は、炭素の含有量が0.3質量%以上1.2質量%以下、ケイ素の含有量が0.3質量%以上2.2質量%以下、マンガンの含有量が0.2質量%以上2質量%以下である鋼で構成されている。
転動体3には浸炭窒化処理又は窒化処理を含む熱処理が施されていて、該熱処理により硬化されてなる表層部(図示せず)が転動面3aに形成されている。この表層部の窒素濃度は0.2質量%以上2質量%以下である。また、この表層部には、ケイ素とマンガンとを含有する窒化物(以降はSi−Mn系窒化物と記すこともある)が析出しており、析出しているSi−Mn系窒化物の量は面積率で1%以上20%以下である。
一方、内輪1及び外輪2には浸炭処理又は浸炭窒化処理を含む熱処理が施されていて、該熱処理により硬化されてなる表層部(図示せず)が軌道面1a,2aに形成されている。軌道面1a,2aに形成された表層部の硬さはHRC58以上66以下であるとともに、この表層部の内側の芯部の硬さはHRC56以上64以下である。
さらに、軌道面1a,2aの残留オーステナイト量γR(AB) と、転動面3aの残留オーステナイト量γR(C)とが、下記の3つの式を満足する。
γR(AB) −15≦γR(C)≦γR(AB) +15
γR(AB) ≧0
γR(C)≦50
ただし、前記3つの式における数値の単位は体積%である。
このような本実施形態の深溝玉軸受は、圧痕起点型剥離が生じにくいことに加えて塑性変形抵抗性が優れているため、異物混入潤滑環境下のような厳しい条件で使用されても長寿命である。
以下に、本発明の構成とその作用効果について、詳細に説明する。
〔内輪及び外輪の少なくとも一方が高炭素クロム軸受鋼で構成される点について〕
本発明においては、内輪及び外輪の少なくとも一方は、高炭素クロム軸受鋼(例えば、日本工業規格JIS G4805に規定されたSUJ2,SUJ3)で構成する必要がある。高炭素クロム軸受鋼は清浄度を含めてその品質が極めて安定しているので、高炭素クロム軸受鋼で構成された軌道輪は、介在物等を起点とした内部起点型のフレーキングが生じにくく、十分な転がり寿命を確保できる。また、高炭素鋼であるため、適切な焼入れ,焼戻しを行うことにより、表面から芯部まで高硬度とすることができる。なお、本発明においては、高炭素クロム軸受鋼の品質は、日本工業規格JIS G4805に規定された清浄度規制を満足するレベル(ベアリング クオリティー)以上のものであることが好ましい。
さらに、例えばSCR420,SCM420等の肌焼鋼に浸炭処理又は浸炭窒化処理を施す場合には、過大な静的荷重に耐え得る十分な硬化層を形成させるために非常に長時間の熱処理が必要となるので、熱処理コストが著しく大きくなる。これに対して高炭素クロム軸受鋼は、浸炭処理,浸炭窒化処理の有無にかかわらず、焼入れのみでも十分な硬さが確保される(例えば、焼入れ,焼戻しに必要な均熱時間相当の短時間でも可能である)。よって、熱処理を低コストで行うことができる。
なお、高炭素クロム軸受鋼としてSUJ2,SUJ3を例示したが、本発明において使用可能な高炭素クロム軸受鋼はこれらに限定されるものではない。過共析組成を有する高炭素鋼であれば、SUJ2,SUJ3と同等の強度を有することが可能であるので、清浄度等の品質がベアリング クオリティーを満足するものであれば、過共析組成を有する高炭素鋼、例えば炭素の含有量が0.8質量%以上1.2質量%以下の炭素鋼や合金鋼を使用することが可能である。ただし、SUJ2は、安価であることに加えて、素材時の加工性及び熱処理後の加工性が良好であるので、軸受の寿命,加工性,コスト等のバランスを考慮すると、SUJ2を用いることが好ましい。
〔軌道面に形成された表層部の硬さと芯部の硬さについて〕
前述したように、転がり軸受に要求される2大機能は、寿命(動定格荷重)と塑性変形抵抗性(静定格荷重)である。寿命と塑性変形抵抗性を向上させる材料に関する因子は硬さであり、硬さが高いほど寿命は長く、塑性変形抵抗性は向上する。特に、接線力や大きな剪断応力が作用する表層部は、寿命の延長や塑性変形抵抗性の向上のために高硬度であることが必要とされる。
さらに、表層部の硬さが高いと、異物混入潤滑環境下において転がり軸受が使用された際に圧痕が形成されにくいため、圧痕起点型剥離による寿命が長寿命であるだけでなく、転がり軸受の音響性能や振動を良好とすることに対してもにも効果的である。
浸炭処理又は浸炭窒化処理を含む熱処理を施すことにより、硬化されてなる表層部を軌道輪の軌道面に形成することが好ましく、その軌道面に形成された表層部の硬さはHRC58以上、さらにこの表層部の内側の芯部の硬さはHRC56以上であることが好ましい。そして、これら表層部及び芯部の硬さは、ともにHRC60以上であることがより好ましい。ただし、硬さが高すぎると、靭性が低下して割れが生じるおそれがある。したがって、表層部の硬さはHRC66以下であることが好ましく、HRC64以下であることがより好ましい。また、芯部の硬さはHRC64以下であることが好ましい。なお、本発明における表層部とは、表面から深さ200μmまでの部分である。
〔転動面に形成された表層部の窒素濃度及びSi−Mn系窒化物の量について〕
本発明においては、転動体の表層部に窒素を富化させるために浸炭窒化処理又は窒化処理を施す。窒素は炭素と同様にマルテンサイトの固溶強化及び残留オーステナイトの安定化に作用するだけでなく、窒化物又は炭窒化物を形成して耐圧痕性,耐摩耗性を向上させる作用がある。
図2,3に、耐圧痕性と耐摩耗性とに及ぼす窒素の影響を示す。図2は、表層部の窒素濃度と表層部に生じた圧痕の深さとの関係を示すグラフであり、図3は、表層部の窒素濃度と摩耗量との関係を示すグラフである。
図2のグラフの圧痕の深さは、図4に示すような耐圧痕性試験により求め、図3のグラフの摩耗量は、図5に示すような二円筒摩耗試験により求めた。耐圧痕性試験は、表層部が形成された試料の上に直径2mmの鋼球を載置し、この鋼球に5GPaの荷重を上方から負荷した際に試料に生じた圧痕の深さを測定することにより行った(図4を参照)。
次に、二円筒摩耗試験の方法について説明する。図5に示すように、上下に並んだ2つの円筒形の軸51,51にそれぞれ円筒形の試験片50,50を装着し、上方から荷重を負荷しながら2つの試験片50,50を互いに接触状態で逆方向に低速で回転させた。そして、所定のすべり率で20時間回転させた後に、両試験片50,50の摩耗量を求め、両者の平均値を摩耗量とした。
下側の試験片50はモーターにより回転駆動される駆動側試験片であり、回転速度10min-1で回転される。上側の試験片50はギアを介してモーターにより回転駆動される従動側試験片であり、ギアにより減速されて回転速度7min-1で回転される。2つの試験片50,50の回転速度が異なるため、強制的にすべりが生じることとなる。なお、2つの試験片50,50の間に作用する面圧は0.8GPaである。また、上側の試験片50の外周面は円筒面であるのに対し、下側の試験片50の外周面は図5のように略球面状であり、両試験片は略楕円接触している。
表層部の窒素濃度は、電子線マイクロアナライザー(EPMA)で測定した。窒素濃度の影響のみを調査するため、表層部の窒素濃度以外の要素、すなわち硬さや残留オーステナイト量については、どの試料も一定にしてある。
図2,3のグラフから、表層部の窒素濃度が高いほど耐摩耗性,耐圧痕性が優れていることが分かる。そして、窒素濃度が0.2質量%以上であれば効果が顕著であるが、0.45質量%以上がより好ましいことが分かる。
一方、窒素濃度が高すぎると靭性や静的強度が低下してしまうおそれがある。転がり軸受の転動体にとって靭性や静的強度は必要な性能であるため、窒素濃度が高すぎることは好ましくない。図6に示すシャルピー衝撃試験の結果から分かるように、窒素濃度が2質量%を超えると急激に靱性が低下する。したがって、表層部の窒素濃度の上限値は2質量%とした。
前述したように、表層部の窒素濃度が高いほど、材料の耐圧痕性,耐摩耗性が向上する。しかし、本発明者らは、窒素濃度が同じ場合でも材料内部の窒素の存在状態(窒素は材料内部に固溶して存在する場合と窒化物として析出して存在する場合とがある)によって、耐圧痕性,耐摩耗性が変化するという知見を得た。詳細な数値については後述するが、ケイ素やマンガンを多く含む材料に浸炭窒化処理を施した場合には、同じ窒素濃度であっても、材料中に固溶して存在する窒素量よりも、表層部に析出したSi−Mn系窒化物として存在する窒素量の方が多くなる。
図7,8に、耐圧痕性と耐摩耗性とに及ぼすSi−Mn系窒化物の量の影響を示す。図7は、表層部のSi−Mn系窒化物の量と表層部に生じた圧痕の深さとの関係を示すグラフであり、図8は、表層部のSi−Mn系窒化物の量と摩耗量との関係を示すグラフである。
図7のグラフの圧痕の深さは、図4に示すような耐圧痕性試験により前述と同様にして求め、図8のグラフの摩耗量は、図5に示すような二円筒摩耗試験により前述と同様にして求めた。Si−Mn系窒化物の量の影響のみを調査するため、表層部のSi−Mn系窒化物の量以外の要素、すなわち硬さ,残留オーステナイト量,窒素濃度については、どの試料も一定にしてある。
表層部のSi−Mn系窒化物の量は、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて測定した。すなわち、加圧電圧10kVで表面を観察し、5000倍に拡大した写真を少なくとも3視野撮影し、その写真を2値化してから画像解析装置にてSi−Mn系窒化物の量を面積率で算出した。
図7,8のグラフから、表層部のSi−Mn系窒化物の量が多いほど耐摩耗性,耐圧痕性が優れていることが分かる。そして、Si−Mn系窒化物の量が面積率で1%以上であれば効果が顕著であるが、2%以上がより好ましいことが分かる。
次に、表層部のSi−Mn系窒化物の量が圧痕起点型剥離による寿命に及ぼす影響を調査するため、異物混入潤滑環境下におけるスラスト型寿命試験を行った。表1に示すような組成の鋼材(鋼種1がSUJ3に相当し、鋼種2がSUJ2に相当する)を、直径65mm,厚さ6mmの円板に旋削加工し、下記のような熱処理を施した。すなわち、RXガス,プロパンガス,及びアンモニアガスの混合ガス中で820〜900℃で2〜10時間浸炭窒化処理を施した後に油焼入れし、さらに160〜270℃で2時間の焼戻しを行った。浸炭窒化処理の処理温度,処理時間,及びアンモニアガスの流量を変化させて、種々の窒素濃度の表層部を有する試験片を作製した。このような熱処理後、表層部を削り取らない程度に試験片の表面に研摩及びラッピングを施して、鏡面仕上げした。
Figure 0005194532
上記のようにして得られた円板を用いて、スラスト型寿命試験を行った。すなわち、呼び番号51305のスラスト玉軸受の軌道輪を回転輪、前記円板を固定輪とし、これら両輪の間に6個の転動体(直径3/8インチの鋼球)と鋼製の保持器とを配してスラスト玉軸受を得て、このスラスト玉軸受を異物混入潤滑環境下で回転させた。そして、円板に圧痕起点型剥離が生じたら寿命とした。試験条件は下記の通りである。
荷重 :5880N
回転速度:1000min-1
潤滑剤 :ISO粘度グレードがISO VG68である潤滑油
なお、潤滑剤中には、硬さHv870、粒径74〜147μmの微粉を異物として200ppm混入してある。
試験片の表層部の窒素濃度,Si−Mn系窒化物の量,及び寿命を表2に示す。また、表層部の窒素濃度とSi−Mn系窒化物の量との関係を図9のグラフに示し、Si−Mn系窒化物の量と寿命との関係を図10のグラフに示す。なお、表2及び図10のグラフの寿命の数値は、比較例1のL10寿命を1とした場合の相対値で示してある。
Figure 0005194532
図9のグラフから、析出するSi−Mn系窒化物の量は、窒素濃度に比例して増大することが分かる。詳細は後述するが、同一窒素量で比較した場合には、Si,Mnの含有量が多い鋼の方が、Si−Mn系窒化物の量が多く、寿命が長いことが分かる。耐圧痕性及び耐摩耗性と同様に、Si−Mn系窒化物の量が面積率で1%以上、窒素濃度が0.2質量%であると、寿命が著しく向上する。
一方で、窒素濃度と同様にSi−Mn系窒化物の量が多すぎると、靭性や静的強度が低下してしまうという問題がある。転がり軸受の転動体にとって靭性や静的強度は必要な性能であるため、Si−Mn系窒化物の量が多すぎることは好ましくない。図11に示すシャルピー衝撃試験の結果から分かるように、Si−Mn系窒化物の量が20%を超えると靭性が急激に低下する。したがって、Si−Mn系窒化物の量の上限値は20%とし、より好ましくは10%である。
なお、Si−Mn系窒化物の最大径は1μm以下であることが好ましい。最大径が1μmを超える窒化物は鋼の強化にあまり寄与せず、微細な窒化物が鋼中に分散していることが強化に対して有効である。この理由としては、析出強化の理論において析出粒子間の距離が小さい方が強化性能に優れることが考えられる。窒化物の量(面積率)が同じであっても、析出粒子の数が多い方が析出粒子間の距離が小さくなるため、強化の度合いが大きい。
すなわち、鋼中のSi−Mn系窒化物の量を多く(面積率で2%以上10%以下)するとともに、平均粒径が0.05μm以上1μm以下の微細なSi−Mn系窒化物の個数を増やす(面積375μm2 中に100個以上)ことが好ましい。特に、平均粒径が0.05μm以上0.5μm以下のSi−Mn系窒化物の個数を、Si−Mn系窒化物全体の20%以上とすると、強化の度合いをさらに大きくすることができる。図15に、平均粒径が0.05μm以上1μm以下のSi−Mn系窒化物の個数(面積375μm2 中の個数)と寿命との関係を示す。このグラフから、面積375μm2 の範囲内に100個以上のSi−Mn系窒化物を分散させることにより、基地組織が強化されて、異物混入潤滑環境下での寿命が向上することが分かる。
このような窒化物を得るためには、熱処理における浸炭窒化処理温度を800℃以上880℃以下とする。浸炭窒化処理温度が880℃超過であると、窒化物が粗大化して微細なSi−Mn系窒化物の個数が少なくなる場合がある。また、窒素の固溶源が大きくなるため窒化物の量が少なくなり、所望の量が得られなくなるおそれがある。浸炭窒化処理の初期からRXガスとエンリッチガスとの混合ガスを雰囲気とし、カーボンポテンシャル値は1.2以上とする。
また、浸炭窒化処理後の焼入れは、油温が60℃以上120℃以下の油焼入れとする。油温が120℃超過であると、十分な硬さが得られないおそれがある。また、この焼入れ後の焼戻しの際の加熱温度は、160℃以上270℃以下とする。なお、所望により、浸炭窒化処理後の焼入れと焼戻しとの間にサブゼロ処理を行ってもよい。
〔残留オーステナイト量について〕
前述したように、残留オーステナイト量が少ないと耐圧痕性及び耐摩耗性が向上する一方で、表面の残留オーステナイト量が多いほど剥離寿命が延長することが明らかになっている。すなわち、転動体を中心に考えると、転動体の転動面の残留オーステナイト量が少ないほど転動体の耐圧痕性及び耐摩耗性が向上し、軌道輪の寿命は延長するが、転動体自身の寿命は低下する。したがって、軸受寿命を最長とするために最適な転動体の残留オーステナイト量が存在するが、その最適な範囲は軌道輪の残留オーステナイト量によって異なる。
軌道輪の転動面の残留オーステナイト量が多い場合には、軌道輪の寿命が長くなり、軌道輪の耐圧痕性が低下して軌道輪と転動体との間に作用する接線力も大きくなるため、転動体の耐圧痕性及び耐摩耗性を向上させるよりも、転動体の寿命を延ばす必要がある。そのため、軌道輪の軌道面の残留オーステナイト量が多い場合には、転動体の転動面の残留オーステナイト量も多くしなければならない。すなわち、軸受寿命を最長とする転動体の転動面の残留オーステナイト量(γR(C))の範囲は、軌道輪の軌道面の残留オーステナイト量(γR(AB) )によって変化するため、下記の3つの式を満足することが好ましい。ただし、この3つの式における数値の単位は体積%である。
γR(AB) −15≦γR(C)≦γR(AB) +15
γR(AB) ≧0
γR(C)≦50
また、残留オーステナイト量が多すぎると硬さが低下し、耐圧痕性及び耐摩耗性が低下するだけでなく、高温で使用される場合の寸法安定性も悪化するため、転動体の転動面の残留オーステナイト量は50体積%以下であることが好ましい。
〔転動体の転動面の表面硬さについて〕
転動体の転動面の表面硬さHvは、750以上であることが好ましく、800以上であることがより好ましく、820以上であることがさらに好ましい。耐圧痕性及び耐摩耗性を向上させる材料に関する因子として最も重要なものが表面硬さである。耐圧痕性,耐摩耗性に及ぼす表面硬さの影響を調査するため、前述した耐圧痕性試験と二円筒摩耗試験を行った。その結果を図12,13に示す。
図12は、表面硬さと耐圧痕性との関係を示すグラフであり、図13は、表面硬さと耐摩耗性との関係を示すグラフである。これらのグラフから、表面硬さが高いほど耐圧痕性及び耐摩耗性が優れていることが分かる。特に、表面硬さがHv750以上であると、耐圧痕性,耐摩耗性ともに極めて優れていることが分かる。また、表面硬さが高いほど疲労強度が高いことが知られており、転動体の転動面の表面硬さを高くすることによって、耐圧痕性,耐摩耗性だけでなく圧痕起点型剥離強度も向上させることが可能である。
次に、転動体を構成する鋼に含まれる合金元素(炭素,ケイ素,マンガン等)について説明する。
〔炭素の含有量について〕
炭素は、鋼に必要な強度と寿命を得るために重要な元素である。炭素の含有量が少なすぎると十分な強度が得られないだけでなく、後述する浸炭処理又は浸炭窒化処理の際に、必要な硬化層深さを得るための熱処理時間が長くなり、熱処理コストの増大につながる。そのため、炭素の含有量は0.3質量%以上とすることが好ましく、0.5質量%以上とすることがより好ましく、0.95質量%以上とすることがさらに好ましい。一方、炭素の含有量が多すぎると製鋼時に巨大な炭化物が生成され、その後の焼入れ性や転動疲労寿命に悪影響を与えるほか、へッダー性が低下してコストの上昇を招くおそれがある。そのため、炭素の含有量は1.2質量%以下とすることが好ましく、1.1質量%以下とすることがより好ましい。
〔ケイ素及びマンガンの含有量について〕
ケイ素及びマンガンはSi−Mn系窒化物の析出に必要な元素であり、十分な量のSi−Mn系窒化物を析出させるためには、ケイ素及びマンガンが鋼中に多く含まれている必要がある。一般的な軸受材料であるSUJ2(Siの含有量0.25質量%、Mnの含有量0.4質量%)では、浸炭窒化処理等で窒素を過剰に付加しても、Si−Mn系窒化物の量が不十分である。このため、ケイ素及びマンガンの含有量は、以下のような値であることが好ましい。
十分な量のSi−Mn系窒化物を析出させるためには、ケイ素の含有量は0.3質量%以上とすることが好ましく、0.4質量%以上とすることがより好ましい。ただし、ケイ素の含有量が多すぎると、鋼の靱性が低下したり芯部への窒素の拡散が阻害されたりするので、2.2質量%以下とすることが好ましく、0.7質量%以下とすることがより好ましい。また、マンガンの含有量が0.2質量%以上(好ましくは0.9質量%以上)であると、Si−Mn系窒化物の析出が促進される。ただし、マンガンは残留オーステナイトを安定化する働きがあるので、マンガンの含有量がが多すぎると熱処理後の残留オーステナイト量が必要以上の量となってしまうおそれがある。よって、マンガンの含有量は、2%質量以下とすることが好ましく、1.15質量%以下とすることがより好ましい。
〔ケイ素とマンガンの比率について〕
本発明におけるSi−Mn系窒化物は、焼戻しによる窒化物とは異なり、マンガンを取り込みながら窒素がケイ素と反応して形成される。よって、鋼中のケイ素の含有量に対してマンガンの含有量が少ないと、窒素を十分に拡散させてもSi−Mn系窒化物の析出が促進されない。ケイ素の含有量が0.3質量%以上2.2質量%以下で且つマンガンの含有量が0.2質量%以上2質量%以下である鋼に、窒素を侵入させる場合に、Si−Mn系窒化物の析出を促進するためには、ケイ素の含有量とマンガンの含有量の比率Si/Mnを5以下とすることが好ましい。
〔クロムの含有量について〕
鋼には、合金成分としてクロムも添加されることが多い。クロムは、焼入れ性を向上させるとともに炭化物形成元素であり、鋼を強化する炭化物の析出を促進し、さらに微細化させる作用を有している。このような作用を十分に得るためには、クロムの含有量は0.5質量%以上とすることが好ましく、0.9質量%以上とすることがより好ましい。0.5質量%未満であると、焼入れ性が低下して十分な硬さが得られなかったり、浸炭窒化処理時に炭化物が粗大化するおそれがある。
ただし、クロムの含有量が多すぎると、浸炭窒化処理の際に表面にクロム酸化膜が形成されて、炭素や窒素の拡散が阻害されるおそれがあるので、2質量%以下とすることが好ましく、1.2質量%以下とすることがより好ましい。
本発明においては、必要に応じて、転動体を構成する鋼にモリブデン(Mo),ニッケル(Ni),バナジウム(V)等の他の合金成分をさらに添加してもよい。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては転がり軸受の例として深溝玉軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。種々の構成の円すいころ軸受(呼び番号L44649/610)を用意して、寿命試験及び過大静的荷重負荷試験を行った。
まず、試験に用いた円すいころ軸受について説明する(表3〜6を参照)。実施例1〜43、参考例、及び比較例2,3の円すいころ軸受の内外輪は、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)で構成されている。そして、浸炭窒化処理,浸炭処理,又はズブ焼入れと焼戻しとからなる熱処理が施されている。浸炭窒化処理の条件は、RXガス,エンリッチガス,アンモニアガスからなる雰囲気中において830〜850℃で1〜3時間保持するというものである。浸炭処理の条件は、RXガスとエンリッチガスからなる雰囲気中において830〜850℃で1〜3時間保持するというものである。ズブ焼入れは、RXガス雰囲気中において830〜850℃で1時間保持した後に油冷するというものである。また、焼戻しの条件は、180〜240℃に保持した後に放冷するというものである。
このような熱処理により、内外輪の軌道面の残留オーステナイト量は、10体積%,20体積%,又は30体積%とされている。
一方、比較例1の円すいころ軸受の内外輪は、肌焼鋼SCr420で構成されている。そして、浸炭焼入れ処理と焼戻しとからなる熱処理が施されている。浸炭焼入れ処理の条件は、RXガスとエンリッチガスからなる雰囲気中において920〜950℃で3〜8時間保持した後に油冷するというものである。また、焼戻しの条件は、180〜240℃に保持した後に放冷するというものである。
Figure 0005194532
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次に、実施例1〜43、参考例、及び比較例1〜3の円すいころ軸受の転動体は、表3〜6に示す組成の鋼で構成されている。これらの転動体の製造方法について説明すると、まず、ヘッダー加工,粗研削加工により鋼製の線材から円すいころ形状の部材を製造し、この部材にRXガス,エンリッチガス,及びアンモニアガスの混合ガス雰囲気下で830℃で5〜20時間浸炭窒化焼入れを施した後、180〜270℃で焼戻しを施した。そして、仕上げ加工等の後工程を行って、転動体を得た。
このようにして得られた軌道輪及び転動体について、軌道輪の軌道面の表面硬さHRC(表層部の硬さ),軌道輪の芯部の硬さHRC,軌道輪の軌道面の残留オーステナイト量,転動体の転動面の表面硬さHv(表層部の硬さ),転動体の転動面の残留オーステナイト量,転動体の表層部の窒素濃度,及び転動体の表層部に析出しているSi−Mn系窒化物の量(面積率)をそれぞれ測定した。
窒素濃度は、電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いた定量分析により測定した。また、残留オーステナイト量はX線回折法により測定した。いずれも、転動体の表面を直接分析して測定した。さらに、Si−Mn系窒化物の量は、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて測定した。すなわち、加圧電圧10kVで表面を観察し、5000倍に拡大した写真を少なくとも3視野撮影し、その写真を2値化してから画像解析装置にてSi−Mn系窒化物の量を面積率で算出した。さらに、硬さは、硬度計で測定した。測定結果を、表3〜6にまとめて示す。
次に、寿命試験及び過大静的荷重負荷試験の方法について説明する。寿命試験は、異物混入潤滑環境下で円すいころ軸受を下記のような条件で回転させることにより行った。そして、軌道輪の軌道面又は転動体の転動面に剥離が発生したら、それまでの回転時間を寿命とした。
寿命試験は、1種の軸受につき12個試験を行った。そして、ワイブルプロットを作成し、ワイブル分布の結果からL10寿命を求め、これを寿命とした。結果を表3〜6及び図14のグラフに示す。なお、表3〜6及び図14の寿命は、最も短寿命であった比較例2の寿命を1とした場合の相対値で示してある。
ラジアル荷重 :12kN
アキシアル荷重:3.5kN
回転速度:3000min-1
潤滑剤 :ISO粘度グレードがISO VG68である潤滑油
なお、潤滑剤中には、硬さHv870、粒径74〜134μmの微粉を異物として200ppm混入してある。
一方、過大静的荷重負荷試験は、寿命試験に用いたものと同様の円すいころ軸受に、ラジアル荷重32kNを30秒間負荷し、軌道輪と円すいころとに永久変形を生じさせることにより行った。そして、除荷後に内輪に生じた永久変形と円すいころの中央部に生じた永久変形とを測定し、両者の永久変形量の和を算出して、これを円すいころ軸受の永久変形量とした。永久変形量の測定はTaylor Hobson社製のフォームタリサーフを用いて行った。結果を表3〜6に示す。なお、表3〜6の永久変形量の値は、最も永久変形量が大きかった比較例1の値を1とした場合の相対値で示してある。
本発明の転がり軸受は、自動車,農業機械,建設機械,及び鉄鋼機械等のトランスミッション,エンジン等に好適に使用可能である。
本発明に係る転がり軸受の一実施形態である深溝玉軸受の構造を示す部分縦断面図である。 表層部の窒素濃度と圧痕の深さとの関係を示すグラフである。 表層部の窒素濃度と摩耗量との関係を示すグラフである。 耐圧痕性試験の試験方法を説明する概略図である。 二円筒摩耗試験の試験方法を説明する概略図である。 表層部の窒素濃度とシャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーとの関係を示すグラフである。 表層部のSi−Mn系窒化物の量と圧痕の深さとの関係を示すグラフである。 表層部のSi−Mn系窒化物の量と摩耗量との関係を示すグラフである。 表層部の窒素濃度とSi−Mn系窒化物の量との関係を示すグラフである。 Si−Mn系窒化物の量と寿命との関係を示すグラフである。 Si−Mn系窒化物の量とシャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーとの関係を示すグラフである。 転動体の転動面の表面硬さと圧痕の深さとの関係を示すグラフである。 転動体の転動面の表面硬さと摩耗量との関係を示すグラフである。 転動体の転動面の残留オーステナイト量と軸受の寿命との関係を示すグラフである。 平均粒径が0.05μm以上1μm以下のSi−Mn系窒化物の個数(面積375μm2 中の個数)と寿命との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 内輪
1a 軌道面
2 外輪
2a 軌道面
3 転動体
3a 転動面

Claims (3)

  1. 軌道面を有する内輪と、前記内輪の軌道面に対向する軌道面を有する外輪と、前記両軌道面間に転動自在に配された複数の転動体と、を備える転がり軸受において、下記の5つの条件を満足することを特徴とする転がり軸受。
    条件A:前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方は、高炭素クロム軸受鋼で構成されている。
    条件B:前記転動体は、炭素の含有量が0.3質量%以上1.2質量%以下、ケイ素の含有量が0.3質量%以上2.2質量%以下、マンガンの含有量が0.2質量%以上2質量%以下、クロムの含有量が0.5質量%以上2質量%以下で、残部が鉄及び不可避的不純物である鋼で構成されており、その転動面には、浸炭窒化処理又は窒化処理を含む熱処理により硬化されてなる表層部が形成されている。
    条件C:前記表層部の窒素濃度は0.2質量%以上2質量%以下である。
    条件D:前記表層部には、ケイ素とマンガンとを含有する窒化物が析出しており、析出している前記窒化物の量は面積率で1.56%以上20%以下である。
    条件E:前記窒化物の最大径は1μm以下である。
  2. 前記内輪及び前記外輪のうち高炭素クロム軸受鋼で構成された軌道輪の軌道面の残留オーステナイト量γR(AB) と、前記転動体の転動面の残留オーステナイト量γR(C)とが、下記の3つの式を満足することを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
    γR(AB) −15≦γR(C)≦γR(AB) +15
    γR(AB) ≧0
    γR(C)≦50
    ただし、前記3つの式における数値の単位は体積%である。
  3. 前記内輪及び前記外輪のうち高炭素クロム軸受鋼で構成された軌道輪の軌道面には、浸炭処理又は浸炭窒化処理を含む熱処理により硬化されてなる表層部が形成されており、この表層部の硬さはHRC58以上66以下であるとともに、この表層部の内側の芯部の硬さはHRC56以上64以下であることを特徴とする請求項2に記載の転がり軸受。
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