JP6101014B2 - 転がり軸受 - Google Patents

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Description

本発明は転がり軸受に関し、より特定的には、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立しつつ、低トルク化を達成することが可能な転がり軸受に関するものである。
近年、機械の長寿命化やメンテナンスフリー化が進められている。その結果、当該機械に使用される転がり軸受に対しても、転動疲労寿命の長寿命化が求められている。転動疲労寿命の長寿命化を達成するためには、転がり軸受を構成する部品である軸受部品(軌道部材および転動体)の材料を変更する対策が考えられる。具体的には、軸受部品の代表的な材料である鋼に対して長寿命化に有効な合金成分を添加することにより、転動疲労寿命の長寿命化を図ることができる。
しかし、軸受部品の素材に特殊な材料を採用した場合、世界各国に製造拠点が広がりつつある現状を考慮すると、製造地によっては材料の調達が困難になるおそれがある。そのため、このような状況を考慮すると、特殊な材料を用いた転動疲労寿命の長寿命化は、必ずしも好ましいとはいえない。
一方、転動疲労寿命の長寿命化の他の方策として、熱処理による軸受部品および転がり軸受の長寿命化が提案されている(たとえば、特許文献1〜3参照)。
特開平7−190072号公報 特開2003−226918号公報 特開2000−161363号公報
一方、自動車の省燃費化をはじめとして、機械の省エネルギー化が求められている。これに伴い、自動車などの機械に用いられる転がり軸受には、低トルク化が要求されている。機械において転がり軸受によるエネルギー損失を低減するためには、円錐ころ軸受などのころ軸受が採用されている箇所に深溝玉軸受などの玉軸受を採用し、低トルク化を図る対策が有効である。また、更なる省エネルギー化のためには、ころ軸受から玉軸受への変更だけでなく、玉軸受の低トルク化を達成することが好ましい。
しかし、玉軸受は、ころ軸受に比べて耐圧痕性(転動体が軌道部材に押し付けられた場合の圧痕の形成されにくさ)が低いという問題がある。そのため、ころ軸受に代えて玉軸受を採用する場合、玉軸受の耐圧痕性の向上が必要となる。さらに、自動車用のデファレンシャルやトランスミッションなどにおいて動力伝達軸を支持するために使用される軸受をはじめとして、多くの機械で使用される軸受に対しては、当該機械のコンパクト化に伴い、小型化が求められるため、上記耐圧痕性の向上は重要である。そして、上記特許文献1〜3を含めて従来の熱処理による転動疲労寿命の長寿命化が図られた場合でも、耐圧痕性については不十分になるという問題があった。
本発明は上述のような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、材料の入手の容易性を確保しつつ、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立し、かつ低トルク化を達成することが可能な転がり軸受を提供することである。
本発明に従った転がり軸受は、内輪と、内輪の外周側を取り囲むように配置される外輪と、内輪および外輪に接触して配置される複数のボールと、複数のボールを円環状の軌道上に所定のピッチで保持する保持器とを備えている。内輪および外輪は、0.90質量%以上1.05質量%以下の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.50質量%以下のマンガンと、1.30質量%以上1.65質量%以下のクロムとを含有し、残部鉄および不純物からなる焼入硬化された鋼からなり、ボールと接触する面である内輪および外輪の転走面における窒素濃度が0.25質量%以上であり、転走面における残留オーステナイト量が6体積%以上12体積%以下である高強度軸受部品である。転走面は、直径19.05mmのSUJ2製標準転がり軸受用鋼球を最大接触面圧を4.4GPaとする荷重3.18kNで押し付け10秒間保持することにより形成される圧痕深さが0.4μm未満となる面である。保持器は、円周方向に沿って所定間隔で配設された半球状膨出部を有する2枚の環状保持板が組み合わされてなり、対向する上記半球状膨出部にてボールを保持するポケットを形成している。ポケットにおいてボールに対向する面であるボール対向面にボール非接触部が設けられている。そして、ポケットにおけるボールとの接触面積が、ボール非接触部を設けないときのボールとの接触面積よりも15%〜30%低減されている。
本発明者は、世界各国で入手容易なJIS規格SUJ2相当材料(JIS規格SUJ2、ASTM規格52100、DIN規格100Cr6、GB規格GCr5もしくはGCr15、およびΓOCT規格ЩX15)を材料として採用することを前提に、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立するための方策について検討を行なった。
上記成分組成を採用することにより、世界各国で入手容易な上記各国規格鋼を材料として使用することができる。そして、当該成分組成の鋼の使用を前提として、接触面における窒素濃度が0.25質量%以上にまで高められ、かつ焼入硬化されることにより、転動疲労寿命を長寿命化することができる。ここで、残留オーステナイト量について特に調整を行なわない場合、接触面における残留オーステナイト量は窒素量との関係から20〜40体積%程度となる。しかし、このように残留オーステナイト量が多い状態では、耐圧痕性が低下するという問題が生じる。そして、残留オーステナイト量を12体積%以下にまで低減することにより、耐圧痕性を向上させることができる。一方、残留オーステナイト量が6体積%未満にまで低下すると、転動疲労寿命、特に軸受内に硬質の異物が侵入する環境(異物混入環境)での転動疲労寿命が低下する。そのため、接触面における残留オーステナイト量は6体積%以上とすることが好ましい。
これに対し、本発明の転がり軸受では、軸受部品(軌道部材および複数のボールの少なくともいずれか一方)において、世界各国で入手容易なJIS規格SUJ2相当材料を材料として採用しつつ、接触面における窒素濃度が0.25質量%以上、残留オーステナイト量が6体積%以上12体積%以下とされている。その結果、本発明の転がり軸受を構成する軸受部品は、材料の入手の容易性を確保しつつ、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立することが可能な高強度軸受部品となっている。なお、耐圧痕性を一層向上させる観点から、接触面における残留オーステナイト量を10%以下としてもよい。また、接触面における窒素濃度が0.5質量%を超えると、鋼中に窒素を侵入させるためのコストが高くなるとともに、残留オーステナイト量を所望の範囲に調整することが難しくなる。そのため、接触面における窒素濃度は0.5質量%以下とすることが好ましく、0.4質量%以下としてもよい。
さらに、本発明の転がり軸受を構成する保持器においては、ボール対向面にボール非接触部を設けたことによって、ポケット内部を潤滑剤が通過する際の抵抗を低減することができる。また、ボール非接触部を設けたことによって、ボールとポケットとの間に形成される油膜量を少なくできる。ここで、ボール非接触部が小さすぎると、せん断する油膜量の減少量も少なく、トルク低減を達成できない。一方、ボール非接触部が大きすぎると、ボールとポケットとの間に形成される油膜量が小さくなり過ぎて、ボールの滑らかな転動を損なう。ボール非接触部を設けることによって低減されるボールとの接触面積が30%よりも大きいと、保持器の強度が低下する。ボール非接触部を設けることによって低減されるボールとの接触面積が15%よりも小さいと、トルクを十分に低減することができない。そのため、本発明の転がり軸受を構成する保持器においては、ボール非接触部を設けることによってボールとの接触面積が15%〜30%低減されている。
以上のように、本発明の転がり軸受によれば、材料の入手の容易性を確保しつつ、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立し、かつ低トルク化を達成することが可能な転がり軸受を提供することができる。さらに、内輪および外輪の転走面は、直径19.05mmのSUJ2製標準転がり軸受用鋼球を最大接触面圧を4.4GPaとする荷重3.18kNで押し付け10秒間保持することにより形成される圧痕深さが0.4μm未満となる面である。これにより、十分なレベルの耐圧痕性を確保することができる。
上記転がり軸受においては、上記軌道部材は高強度軸受部品であってもよい。耐圧痕性の向上が特に求められる軌道部材が上記高強度軸受部品であることにより、ころ軸受が適用されていた箇所に玉軸受を適用することが一層容易となる。
上記転がり軸受においては、上記接触面の硬度は60.0HRC以上であってもよい。これにより、転動疲労寿命および耐圧痕性を一層向上させることができる。
上記転がり軸受においては、上記接触面の硬度は64.0HRC以下であってもよい。窒素濃度が0.25質量%以上にまで高められた接触面の硬度を、64.0HRCを超える状態を維持した場合、残留オーステナイトを12体積%以下に調整することが困難となる。接触面の硬度を64.0HRC以下とすることにより、12体積%以下の範囲に残留オーステナイト量を調整することが容易となる。
上記転がり軸受においては、上記半球状膨出部において、ボール対向面に反ボール側へ凹む凹部を設け、当該凹部をもってボール非接触部としてもよい。また、上記転がり軸受においては、上記半球状膨出部においてスリットを設け、当該スリットをもってボール非接触部としてもよい。このような構造を採用することにより、ボール非接触部を容易に形成することができる。
上記転がり軸受においては、ボール非接触部を、上記複数のボールのピッチ円よりも外径側に配置してもよい。これにより、周速の高い位置でのせん断抵抗を低減することができ、より安定してトルクの低減を図ることができる。
上記転がり軸受においては、上記保持器は、金属製であってプレス加工に成型されていてもよい。また、上記転がり軸受においては、上記保持器は、金属製であって鋳造にて成型されていてもよい。また、上記転がり軸受においては、上記保持器は、削り加工にて成型されていてもよい。また、上記転がり軸受においては、上記保持器は、樹脂製であって射出成型にて成型されていてもよい。これにより、保持器を容易に成形し、低コスト化することができる。
上記転がり軸受においては、上記軌道部材は、内輪と、内輪の外周側を取り囲むように配置される外輪とを含み、内輪のボールに対する溝曲率は1.02以上1.06以下であってもよい。
また、上記転がり軸受においては、上記軌道部材は、内輪と、内輪の外周側を取り囲むように配置される外輪とを含み、外輪のボールに対する溝曲率は1.02以上1.08以下であってもよい。
ころ軸受は、比較的大きな荷重が負荷される箇所に採用される。したがって、ころ軸受が適用されていた箇所に玉軸受である本発明の転がり軸受を適用する場合、本発明の転がり軸受には比較的大きな荷重が負荷される。そうすると、軌道部材とボールとの間の接触楕円が大きくなって軌道部材とボールとの間のすべり成分(差動すべりおよびスピンすべり)が大きくなるため、転がり軸受の回転トルクが大きくなる。これに対し、内輪および外輪の少なくともいずれか一方のボールに対する溝曲率を1.02以上にまで大きくすることにより、すべり成分を低減し、より確実に低トルク化を図ることができる。具体的には、JIS規格6207型番の玉軸受においてラジアル荷重Fr=500N、アキシアル荷重Fa=0N、回転数4000rpmの条件を想定すると、内輪および外輪の溝曲率を1.02にまで大きくした場合、通常の構造に比べて差動すべりが半分程度となる。
一方、内輪および外輪の溝曲率を大きくすると、内輪および外輪とボールとの接触面圧が大きくなり、軸受の寿命が短くなるおそれがあるため、内輪および外輪の溝曲率は所定値以下とすることが好ましい。具体的には、内輪のボールに対する溝曲率は1.06以下、外輪のボールに対する溝曲率は1.08以下とすることが好ましい。ここで、外輪の溝曲率の上限が内輪に比べて大きいのは、通常の設計の下では、外輪とボールとの接触面圧が内輪とボールとの接触面圧に比べて小さく、外輪は内輪に比べて溝曲率を大きする余地が大きいためである。なお、本願において「溝曲率」とは、軌道輪の周方向に垂直な断面における転走面の曲率半径の、ボールの半径に対する比を意味する。
上記転がり軸受は、自動車の動力伝達軸を支持するために用いられてもよい。また、上記自動車は、二輪車であってもよい。長寿命化、低トルク化およびコンパクト化が重要な上記用途に、本発明の転がり軸受は好適である。
以上の説明から明らかなように、本発明の転がり軸受によれば、材料の入手の容易性を確保しつつ、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立し、かつ低トルク化を達成することが可能な転がり軸受を提供することができる。
実施の形態1における深溝玉軸受の構成を示す概略断面図である。 保持器の構造を示す概略部分断面図である。 図2の矢印Xの方向から見た保持器の概略図である。 図1の保持器の凸部を説明するための概略図である。 保持器の凸部の第1変形例を示す概略図である。 保持器の凸部の第2変形例を示す概略図である。 保持器の凸部の第3変形例を示す概略図である。 保持器の凸部の第4変形例を示す概略図である。 保持器の凸部の第5変形例を示す概略図である。 他の深溝玉軸受の構成を示す概略断面図である。 実施の形態2における深溝玉軸受の構成を示す概略断面図である。 実施の形態2における保持器の構成を示す概略図である。 他の深溝玉軸受の構成を示す概略断面図である。 転がり軸受の製造方法の概略を示すフローチャートである。 マニュアルトランスミッションの構成を示す概略断面図である。 デファレンシャルの構成を示す概略断面図である。 図16のピニオンギアの配置を示す概略図である。 焼戻温度と圧痕深さの関係を示す図である。 焼戻温度と硬度との関係を示す図である。 真ひずみと真応力との関係を示す図である。 図20の領域αを拡大して示す図である。 接触面積低減率とトルク低減率との関係を示す図である。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施の形態である実施の形態1について説明する。図1を参照して、実施の形態1における転がり軸受である深溝玉軸受1は、軸受部品である第1軌道部材としての外輪11と、軸受部品である第2軌道部材としての内輪12と、軸受部品である複数の転動体としてのボール13と、保持器14と、外輪11と内輪12とに挟まれた軸受空間を閉じるように外輪11と内輪12との間に配置された環状のシール部材17とを備えている。
外輪11には、円環状の第1転走面しての外輪転走面11Aが形成されている。内輪12には、外輪転走面11Aに対向する円環状の第2転走面としての内輪転走面12Aが形成されている。また、複数のボール13には、転動体転走面としてのボール転動面13A(ボール13の表面)が形成されている。外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよびボール転動面13Aは、これらの軸受部品の接触面である。そして、当該ボール13は、外輪転走面11Aおよび内輪転走面12Aの各々にボール転動面13Aにおいて接触し、円環状の保持器14により周方向に所定のピッチで配置されることにより円環状の軌道上に転動自在に保持されている。以上の構成により、深溝玉軸受1の外輪11および内輪12は、互いに相対的に回転可能となっている。また、外輪11の内周面(内径面)の軸方向両端部には、装着溝20が形成されている。一方、内輪12の外周面(外径面)の軸方向両端部には、凹溝21が形成されている。そして、この装着溝20にシール部材17の径方向外端部がはめ込まれている。これにより、シール部材17の径方向内端部に形成されたリップ部22が、凹溝21の底面に接触している。
軸受部品である外輪11、内輪12およびボール13は、0.90質量%以上1.05質量%以下の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.50質量%以下のマンガンと、1.30質量%以上1.65質量%以下のクロムとを含有し、残部鉄および不純物からなる焼入硬化された鋼からなっている。そして、接触面としての外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよびボール転動面13Aを含む領域には、内部11C,12C,13Cに比べて窒素濃度が高い窒素富化層11B,12B,13Bが、それぞれ形成されている。窒素富化層11B,12B,13Bの表面である接触面としての外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよびボール転動面13Aにおける窒素濃度は0.25質量%以上となっている。さらに、外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよびボール転動面13Aにおける残留オーステナイト量は、6体積%以上12体積%以下となっている。
保持器14は、たとえば冷間圧延鋼(JIS規格のSPCC系等)の帯鋼をプレス加工して作成されている。また、シール部材17は、芯金18と、この芯金18を被覆する合成樹脂やゴム材等からなる被覆部19とを備える。
本実施の形態における軸受部品である外輪11、内輪12およびボール13は、上記JIS規格SUJ2相当鋼の成分組成を有する鋼からなることにより、その素材が世界各国にて入手容易となっている。そして、当該成分組成の鋼の使用を前提として、外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよびボール転動面13Aにおける窒素濃度が0.25質量%以上にまで高められ、かつ焼入硬化されていることにより、転動疲労寿命が長寿命化されている。そして、残留オーステナイト量が12体積%以下にまで低減されることにより、耐圧痕性が向上するとともに、残留オーステナイト量が6体積%以上とされることにより、転動疲労寿命、特に異物混入環境での転動疲労寿命が適切なレベルに維持されている。その結果、外輪11、内輪12およびボール13は、材料の入手の容易性を確保しつつ、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立することが可能な軸受部品となっている。
また、保持器14は、図2および図3に示すように、円周方向に沿って所定間隔で配置された半球状膨出部26を有する2枚の環状保持板27A,27Bが組み合わされて形成されている。すなわち、各環状保持板27A,27Bは、円周方向に沿って所定の間隔で配置される半球状膨出部26と、隣合う半球状膨出部26の間のそれぞれに形成された平坦部28とを含んでいる。この2枚の環状保持板27A,27Bが組み合わされるように平坦部28,28が重ね合わされ、この平坦部28、28がリベット等の固着具29によって連結されている。その結果、各半球状膨出部26が対向して、リング状のボール嵌合部(ポケット)30が形成されている。
そして、この保持器14においては、ポケット30のボール対向面にボール非接触部31が設けられている。このポケット30におけるボール13との接触面積は、ボール非接触部31を設けない場合のボール13との接触面積よりも15%〜30%低減されている。
反ボール対向面に反ボール側へ突出する矩形状の凸部32を形成することによ
って、ボール対向面に反ボール側へ凹む矩形状の凹部33が設けられている。この凹部33がボール非接触部31である。凸部32としては、図4〜図9に示すように、種々のものを採用することができる。
すなわち、図4に示す形状Aは、円周方向長さLがLAとされ、その幅寸法WがWAとされている。また、図5に示す形状Bは、円周方向長さLがLAよりも短いLBとされ、その幅寸法WがWAと同一のWBとされている。図6に示す形状Cは、円周方向長さLがLBと同一のLCとされ、その幅寸法WがWAよりも大きいWCとされている。図7に示す形状Dは、円周方向長さLがLAと同一のLDとされ、その幅寸法WがWAと同一のWDとされている。
図8に示す形状Eは、円周方向長さLがLBと同一のLEとされ、その幅寸法WがWAと同一のWEとされている。図9に示す形状Fは、円周方向長さLがLBと同一のLFとされ、その幅寸法WがWAと同一のWFとされている。
図4に示す形状Aと、図5に示す形状Bと、図9に示す形状Fとは、凸部32の中央線Oがボール13のピッチ円PCDに一致しているものであって、凸部32がピッチ円PCD上に配設されている。図6に示す形状Cと、図7に示す形状Dと、図8に示す形状Eとは、凸部32の中央線Oが、ボール13のピッチ円PCDよりも軸受外径側へずれている。この場合、図6に示す形状Cでは、そのずれは僅かであるが、図7に示す形状Dと、図8に示す形状Eでは、そのずれは大きく、一方の長辺がボール13のピッチ円PCDに一致している。
すなわち、凸部32としては図4〜図9の示すような種々形状を有するのものを採用することができる。そして、これによって形成される凹部33により構成されるボール非接触部31は、ポケット30において、ボール非接触部31を設けない場合に比べて、保持器14とボール13との接触面積を15%〜30%低減させる。
凸部32としては、径方向寸法に対して周方向寸法が長い矩形(長方形)であっても、逆に周方向に対して径方向寸法が長い矩形(長方形)であっても、回
転方向寸法と径方向寸法とが同一の正方形であってもよい。また、長方形とせずに、長円または楕円形状であってもよい。このような楕円形状である場合でも、径方向寸法に対して周方向寸法が長いものであっても、逆に周方向寸法に対して径方向寸法が長いものであってもよい。さらに、円形であってもよい。
本実施の形態における保持器14においては、ボール対向面にボール非接触部31を設けたことによって、ポケット内部を潤滑剤が通過する際の抵抗を低減することができる。また、ボール非接触部31を設けたことによって、ボール13とポケット30との間に形成される油膜量を少なくすることができる。
ここで、ボール非接触部が小さすぎると、せん断する油膜量の減少量が少なく、トルク低減を充分に達成できない。一方、ボール非接触部31が大きすぎると、ボール13とポケット30との間に形成される油膜量が小さくなり過ぎて、ボール13の滑らかな転動を損なう。このため、本実施の形態のように、ボール非接触部31の範囲を設定することによって、ポケット内部を潤滑剤が通過する際の抵抗と、せん断する油膜量の減少との両立が可能となる。このため、本実施の形態における保持器14を採用することにより、深溝玉軸受1の回転トルク低減を図ることができる。
以上のように、本実施の形態における深溝玉軸受1によれば、材料の入手の容易性を確保しつつ、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立し、かつ低トルク化を達成することができる。
ボール非接触部31は、ボール対向面に反ボール側へ凹む凹部33を設けることによって、確実に形成することができる。
ボール非接触部31を、ボール13のピッチ円よりも外径側に配置すれば、周速の高い位置でのせん断抵抗を低減することができ、より安定してトルクの低減を図ることができる。
なお、上記外輪11、内輪12およびボール13においては、接触面である外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよびボール転動面13Aの硬度は60.0HRC以上であることが好ましい。これにより、転動疲労寿命および耐圧痕性を一層向上させることができる。
また、上記外輪11、内輪12およびボール13においては、外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよびボール転動面13Aの硬度は64.0HRC以下であることが好ましい。これにより、外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよびボール転動面13Aにおける残留オーステナイト量を12体積%以下の範囲に調整することが容易となる。
図10に示す深溝玉軸受1は、シール部材17を有さないタイプである。すなわち、図10に示す深溝玉軸受は、シール部材17、シール部材17が装着される装着溝20、およびシール部材17のリップ部22が接触する凹溝21を有さない点を省いて、図1に示す深溝玉軸受1と同様の構造を有している。
このため、図10に示す深溝玉軸受1は、図1に示す深溝玉軸受1と同様の作用効果を奏する。
(実施の形態2)
次に、本発明の他の実施の形態である実施の形態2について説明する。図11および図1を参照して、実施の形態2における深溝玉軸受1は、実施の形態1の場合と基本的には同様の構造を有し、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態2の深溝玉軸受1は、保持器14のボール非接触部31の構造において実施の形態1の場合とは異なっている。
図11を参照して、実施の形態2における深溝玉軸受1の保持器14では、半球状膨出部26にスリット35が形成されている。そして、このスリット35が、ボール非接触部31として機能する。スリット35は、図12に示すように矩形状であって、その中心線O1がボール13のピッチ円PCDに一致する。
スリット35は、径方向寸法に対して周方向寸法が長い矩形(長方形)であっても、逆に周方向寸法に対して径方向寸法が長い矩形(長方形)であっても、回転方向寸法と径方向寸法とが同一の正方形であってもよい。また、長方形とせずに、長円または楕円形状であってもよい。このような楕円形状である場合でも、径方向寸法に対して周方向寸法が長いものであっても、逆に周方向寸法に対して径方向寸法が長いものであってもよい。さらに、円形であってもよい。
スリット35の配置位置としては、図12に示すように、ボール13のピッチ円PCD上に配設されものであっても、ピッチ円PCDよりも外径側へ配設されるものであってもよい。この場合のずれ量も、任意に設定できる。すなわち、スリット35によって構成されるボール非接触部31が、ポケット30において、ボール非接触部31を設けない場合のボール13との接触面積よりも当該接触面積を15%〜30%低減させるものであればよい。なお、図11に示す軸受の他の構成は図1に示す軸受と同様であるので、これらの説明を省略する。
図11および図12に示すように、ボール非接触部31がスリット35によって構成される場合であっても、ポケット内部を潤滑剤が通過する際の抵抗を低減することができる。また、ボール13とポケット30との間に形成される油膜量を少なくすることができる。このように、図11および図12に示す保持器は、図1に示す保持器と同様の作用効果を奏する。また、スリット35を設けた保持器14は、凸部32を設けた保持器14とは異なり、保持器14の軸受軸方向の寸法が大きくならず、コンパクト化を図ることができる。すなわち、ボール非接触部31を有さない従来の保持器と同じ寸法を維持しつつ、トルクを低減させることができる。
図13に示す深溝玉軸受1は、シール部材17を有さないタイプである。すなわち、図13に示す深溝玉軸受は、シール部材17、シール部材17が装着される装着溝20、およびシール部材17のリップ部22が接触する凹溝21を有さない点を省いて、図11に示す深溝玉軸受1と同様である。
このため、図13に示す深溝玉軸受1であっても、図11に示す深溝玉軸受1と同様の作用効果を奏する。
なお、上記実施の形態においては、保持器14がプレス加工されて形成された金属製保持器である場合について説明したが、本発明の転がり軸受が備える保持器はこれに限られない。すなわち、保持器14は、鋳造による成型された金属からなるものであってもよい。また、削り加工や放電加工(ワイヤーカットを含む)によって成形されたものであってもよい。ここで、放電加工とは、電極と被加工物との間に短い周期で繰り返されるアーク放電によって、被加工物表面の一部を除去する機械加工の方法である。ワイヤーカットとは、放電加工の一種で、ワイヤ線に張力を与え、放電を利用して金属材料を加工する方法である。
また、保持器14は金属製に限られず、合成樹脂の成形品であってもよい。樹脂製保持器の樹脂材料としては、この種の保持器に従来から使用されるもの、たとえばえば、ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下、PPS樹脂と称する)やポリアミド46(PA46)などを用いることができる。たとえば自動車のオルタネータ用の軸受など、高温(たとえば200℃程度以上)での長期耐熱性が要求される場合、保持器14を構成する材料としてポリイミド樹脂(以下、PI樹脂と称する)、ポリアミドイミド樹脂(以下、PAI樹脂と称する)、あるいはポリエーテルエーテルケトン樹脂(以下、PEEK樹脂と称する)等の材料が用いることができる。
上記樹脂製保持器は、たとえば射出成型にて成型することができる。また、削り加工にて成型してもよい。樹脂製保持器であっても、ボール非接触部31を設け、ポケット30におけるボール13との接触面積を、ボール非接触部31を設けない場合のボール13との接触面積よりも15%〜30%低減させる。
樹脂製保持器において、ボール非接触部31を設ける場合、図1に示すように、反ボール対向面に反ボール側へ突出する矩形状の凸部32を形成することによって、ボール対向面に反ボール側へ凹む矩形状の凹部33を設け、この凹部33をもってボール非接触部31とするものであってよい。また、スリット35を設けて、このスリット35をもってボール非接触部31とするものであってよい。
このため、樹脂製保持器であっても、図1に示すような金属製保持器と同様の作用効果を奏する。
以上、保持器の構成について例示的に説明したが、本発明の転がり軸受を構成する保持器は上記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。たとえば、ボール非接触部31は、上記実施形態では、回転方向に沿って配置されていたが、回転方向に対して傾斜するものであってもよい。また、形成されるボール非接触部31は、半球状膨出部26に対して1個に限るものではなく、各半球状膨出部26に2個以上のボール非接触部31を設けてもよい。この場合、周方向に沿って複数個配置するものであっても、径方向に沿って複数個配置するものであってもよい。
また、ボール非接触部31の形成のためには、長方形状あるいは正方形状の凸部32を設けてもよいし、長方形状あるいは正方形状のスリット35を設けてもよい。また、各コーナ部をアール形状としても、アール形状としないものであってもよい。また、長方形状あるいは正方形状の凸部32を設ける場合、凸部32の突出量(凹部33の深さ)は、環状保持板27A,27Bの40%以下とするのが好ましい。40%を越えると、凸部32の突出量が大きくなりすぎて、シール部材の装着が困難となったり、大型化したりするおそれがある。
(実施の形態3)
次に、上記実施の形態1および2における軸受部品(高強度軸受部品;軌道部材およびボール)、および転がり軸受の製造方法について、実施の形態3として説明する。図14を参照して、まず、工程(S10)として鋼材準備工程が実施される。この工程(S10)では、JIS規格SUJ2、ASTM規格52100、DIN規格100Cr6、GB規格GCr5もしくはGCr15、およびΓOCT規格ЩX15などのJIS規格SUJ2相当鋼からなる鋼材が準備される。具体的には、たとえば上記成分組成を有する棒鋼や鋼線などが準備される。
次に、工程(S20)として成形工程が実施される。この工程(S20)では、たとえば工程(S10)において準備された棒鋼や鋼線などに対して鍛造、旋削などの加工が実施されることにより、図1、10、11および13に示される外輪11、内輪12、ボール13などの形状に成形された成形部材が作製される。
次に、工程(S30)として浸炭窒化工程が実施される。この工程(S30)では、工程(S20)において作製された成形部材が浸炭窒化処理される。この浸炭窒化処理は、たとえば以下のように実施することができる。まず、上記成形部材が780℃以上820℃以下程度の温度域で、30分間以上90分間以下の時間予熱される。次に、予熱された成形部材が、エンリッチガスとしてのプロパンガスやブタンガスが添加されることによりカーボンポテンシャルが調整されたRXガスなどの吸熱型ガスに、さらにアンモニアガスが導入された雰囲気中において加熱されて浸炭窒化処理される。浸炭窒化処理の温度は、たとえば820℃以上880℃以下とすることができる。また、浸炭窒化処理の時間は、成形部材に形成すべき窒素富化層の窒素濃度に合わせて設定することができ、たとえば3時間以上9時間以下とすることができる。これにより、成形部材の脱炭を抑制しつつ窒素富化層を形成することができる。
次に、工程(S40)として焼入工程が実施される。この工程(S40)では、工程(S30)において浸炭窒化処理されることにより窒素富化層が形成された成形部材が、所定の焼入温度から急冷されることにより焼入処理される。この焼入温度は、860℃以下とされることにより、後続の焼戻工程における炭素の固溶量と析出量とのバランス、および残留オーステナイト量の調整が容易となる。また、焼入温度が820℃以上とされることにより、後続の焼戻工程における炭素の固溶量と析出量とのバランス、および残留オーステナイト量の調整が容易となる。焼入処理は、たとえば所定の温度に保持された冷却剤としての焼入油中に成形部材を浸漬することにより実施することができる。
次に、工程(S50)として焼戻工程が実施される。この工程(S50)では、工程(S40)において焼入処理された成形部材が焼戻処理される。具体的には、たとえば210℃以上300℃以下の温度域に加熱された雰囲気中において成形部材が0.5時間以上3時間以下の時間保持されることにより、焼戻処理が実施される。
次に、工程(S60)として仕上げ加工工程が実施される。この工程(S60)では、工程(S50)において焼戻処理された成形部材を加工することにより他の部品と接触する面である接触面が、すなわち深溝玉軸受1の外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよびボール転動面13Aが形成される。仕上げ加工としては、たとえば研削加工を実施することができる。以上の工程により、本実施の形態における軸受部品である外輪11、内輪12、ボール13などが完成する。
さらに、工程(S70)として組立工程が実施される。この工程(S70)では、工程(S10)〜(S60)において作製された外輪11、内輪12、ボール13と、別途準備された保持器14などとが組合わされて、上記実施の形態1および2における深溝玉軸受1などの転がり軸受(玉軸受)が組立てられる。保持器14については、上記実施の形態1および2において説明したように、金属のプレス加工、樹脂の射出成型など、種々の方法により製造することができる。これにより、実施の形態1および2における転がり軸受の製造方法が完了する。
ここで、上記工程(S30)では、後続の工程(S60)における仕上げ加工によって接触面である深溝玉軸受1の外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよびボール転動面13Aの窒素濃度が0.25質量%以上となるように成形部材が浸炭窒化処理される。つまり、工程(S60)での取り代などを考慮して、接触面完成後における表面の窒素濃度を0.25質量%以上とすることが可能なように窒素量を調整した窒素富化層11B,12B,13Bが形成される。
さらに、上記工程(S50)では、後続の工程(S60)における仕上げ加工によって接触面である深溝玉軸受1の外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよびボール転動面13Aの残留オーステナイト量が6体積%以上12体積%以下となるように成形部材が焼戻処理される。つまり、工程(S60)での取り代などを考慮して、接触面完成後における表面の残留オーステナイト量を6体積%以上12体積%以下とすることが可能なように、焼戻処理によって残留オーステナイト量が調整される。これにより、上記本実施の形態1および2における高強度軸受部品を製造することができる。
また、工程(S50)では、成形部材が240℃以上300℃以下の温度域にて焼戻処理されることが好ましい。これにより、焼入処理によって素地に固溶した炭素が適切な割合で炭化物として析出する。その結果、固溶強化と析出強化との適切なバランスが達成され、軸受部品である外輪11、内輪12、ボール13の耐圧痕性が向上する。
(実施の形態4)
次に、上記実施の形態1および2における転がり軸受の用途の一例について説明する。図15を参照して、マニュアルトランスミッション100は、常時噛合い式のマニュアルトランスミッションであって、入力シャフト111と、出力シャフト112と、カウンターシャフト113と、ギア(歯車)114a〜114kと、ハウジング115とを備えている。
入力シャフト111は、深溝玉軸受1によりハウジング115に対して回転可能に支持されている。この入力シャフト111の外周にはギア114aが形成され、内周にはギア114bが形成されている。
一方、出力シャフト112は、一方側(図中右側)において深溝玉軸受1によりハウジング115に回転可能に支持されているとともに、他方側(図中左側)において転がり軸受120Aにより入力シャフト111に回転可能に支持されている。この出力シャフト112には、ギア114c〜114gが取り付けられている。
ギア114cおよびギア114dはそれぞれ同一部材の外周と内周に形成されている。ギア114cおよびギア114dが形成される部材は、転がり軸受120Bにより出力シャフト112に対して回転可能に支持されている。ギア114eは、出力シャフト112と一体に回転するように、かつ出力シャフト112の軸方向にスライド可能なように、出力シャフト112に取り付けられている。
また、ギア114fおよびギア114gの各々は同一部材の外周に形成されている。ギア114fおよびギア114gが形成されている部材は、出力シャフト112と一体に回転するように、かつ出力シャフト112の軸方向にスライド可能なように、出力シャフト112に取り付けられている。ギア114fおよびギア114gが形成されている部材が図中左側にスライドした場合には、ギア114fはギア114bと噛合い可能であり、図中右側にスライドした場合にはギア114gとギア114dとが噛合い可能である。
カウンターシャフト113には、ギア114h〜114kが形成されている。カウンターシャフト113とハウジング115との間には、2つのスラストニードルころ軸受2が配置され、これによってカウンターシャフト113の軸方向の荷重(スラスト荷重)が支持されている。ギア114hは、ギア114aと常時噛合っており、かつギア114iはギア114cと常時噛合っている。また、ギア114jは、ギア114eが図中左側にスライドした場合に、ギア114eと噛合い可能である。さらに、ギア114kは、ギア114eが図中右側にスライドした場合に、ギア114eと噛合い可能である。
次に、マニュアルトランスミッション100の変速動作について説明する。マニュアルトランスミッション100においては、入力シャフト111に形成されたギア114aと、カウンターシャフト113に形成されたギア114hとの噛み合わせによって、入力シャフト111の回転がカウンターシャフト113へ伝達される。そして、カウンターシャフト113に形成されたギア114i〜114kと出力シャフト112に取り付けられたギア114c、114eとの噛み合わせ等によって、カウンターシャフト113の回転が出力シャフト112へ伝達される。これにより、入力シャフト111の回転が出力シャフト112へ伝達される。
入力シャフト111の回転が出力シャフト112へ伝達される際には、入力シャフト111およびカウンターシャフト113の間で噛合うギアと、カウンターシャフト113および出力シャフト112の間で噛合うギアとを変えることによって、入力シャフト111の回転速度に対して出力シャフト112の回転速度を段階的に変化させることができる。また、カウンターシャフト113を介さずに入力シャフト111のギア114bと出力シャフト112のギア114fとを直接噛合わせることによって、入力シャフト111の回転を出力シャフト112へ直接伝達することもできる。
以下に、マニュアルトランスミッション100の変速動作をより具体的に説明する。ギア114fがギア114bと噛合わず、ギア114gがギア114dと噛合わず、かつギア114eがギア114jと噛合う場合には、入力シャフト111の駆動力は、ギア114a、ギア114h、ギア114jおよびギア114eを介して出力シャフト112に伝達される。これが、たとえば第1速とされる。
ギア114gがギア114dと噛合い、ギア114eがギア114jと噛合わない場合には、入力シャフト111の駆動力は、ギア114a、ギア114h、ギア114i、ギア114c、ギア114dおよびギア114gを介して出力シャフト112に伝達される。これが、たとえば第2速とされる。
ギア114fがギア114bと噛合い、ギア114eがギア114jと噛合わない場合には、入力シャフト111はギア114bおよびギア114fとの噛合いにより出力シャフト112に直結され、入力シャフト111の駆動力は直接出力シャフト112に伝達される。これが、たとえば第3速とされる。
上述のように、マニュアルトランスミッション100は、回転部材(二輪車を含む自動車の動力伝達軸)としての入力シャフト111および出力シャフト112をこれに隣接して配置されるハウジング115に対して回転可能に支持するために、深溝玉軸受1を備えている。このように、上記実施の形態1および2における深溝玉軸受1は、マニュアルトランスミッション100内において使用することができる。そして、材料の入手の容易性を確保しつつ、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立し、かつ低トルク化を達成することが可能な深溝玉軸受1は、転動体と軌道部材との間に高い面圧が付与されるマニュアルトランスミッション100内での使用に好適である。
(実施の形態5)
次に、上記実施の形態1および2における転がり軸受の用途の他の一例について説明する。図16および図17を参照して、デファレンシャル200は、デフケース201と、ピニオンギア202aおよび202bと、サンギア203と、ピニオンキャリア204と、アーマチュア205と、パイロットクラッチ206と、電磁石207と、ロータークラッチ(デフケース)208と、カム209を備えている。
デフケース201の内周に設けられた内歯201aと4つのピニオンギア202aの各々とが互いに噛みあっており、4つのピニオンギア202aの各々と4つのピニオンギア202bの各々とが互いに噛み合っており、4つのピニオンギア202bの各々とサンギア203とが互いに噛み合っている。サンギア203は第1の駆動軸としての左駆動軸220の端部に接続されており、これによりサンギア203と左駆動軸220とは一体となって自転することができる。また、ピニオンギア202aの回転軸202cの各々と、ピニオンギア202bの回転軸202dとの各々が、ともにピニオンキャリア204によって自転可能に保持されている。ピニオンキャリア204は第2の駆動軸としての右駆動軸221の端部に接続されており、これによりピニオンキャリア204と右駆動軸221とは一体となって自転することができる。
また、電磁石207、パイロットクラッチ206、ロータークラッチ(デフケース)208、アーマチュア205、およびカム209によって電磁クラッチが構成されている。
デフケース201の外歯201bは図示しないリングギアの歯車と噛み合っており、デフケース201はリングギアからの動力を受けて自転する。左駆動軸220および右駆動軸221の間に差動がない場合には、ピニオンギア202aおよび202bは自転せず、デフケース201、ピニオンキャリア204、およびサンギア203の3つの部材が一体となって回転する。つまり、リングギアから左駆動軸220へは、矢印Bで示されるように動力が伝達され、リングギアから右駆動軸221へは、矢印Aで示されるように動力が伝達される。
一方、左駆動軸220および右駆動軸221のうちいずれか一方、たとえば左駆動軸220に抵抗が加わる場合には、左駆動軸220と接続したサンギア203に抵抗が加わり、ピニオンギア202aおよび202bの各々が自転する。そして、ピニオンギア202aおよび202bの回転によってピニオンキャリア204の自転が速められ、左駆動軸220と右駆動軸221との間に差動が発生する。
また、電磁クラッチは、左駆動軸220と右駆動軸221との間に一定以上の差動が生じると通電し、電磁石207によって磁界が発生される。パイロットクラッチ206およびアーマチュア205は、磁気誘導作用により電磁石207に引き付けられて摩擦トルクを発生する。摩擦トルクはカム209によりスラスト方向に変換される。そして、スラスト方向に変換された摩擦トルクにより、ピニオンキャリア204を介してメーンクラッチがデフケース208に押し付けられ、これにより差動制限トルクが発生する。スラストニードルころ軸受2はカム209で生じたスラスト方向の反力を受け、この反力をデフケース208に伝達する。その結果、摩擦トルクに比例したカム209による倍のスラスト力が発生される。このように、電磁石207は、パイロットクラッチ206のみを制御し、そのトルクを倍力機構により増幅することができ、また任意に摩擦トルクをコントロールすることができる。
ここで、デフケース208とデフケース208の外周側に配置される部材との間には、実施の形態1または2における深溝玉軸受1が配置されている。このように、上記実施の形態1および2における深溝玉軸受1は、デファレンシャル200内において使用することができる。そして、材料の入手の容易性を確保しつつ、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立し、かつ低トルク化を達成することが可能な深溝玉軸受1は、転動体と軌道部材との間に高い面圧が付与されるデファレンシャル200内での使用に好適である。
軸受部品の特性に及ぼす熱処理条件等の影響を調査する実験を行なった。まず、JIS規格SUJ2からなる平板を準備し、800℃で1時間予熱した後、RXガスにアンモニアガスを添加した雰囲気中において850℃に加熱し、4時間保持することにより浸炭窒化処理した。その後、浸炭窒化処理における加熱温度である850℃から、そのまま上記平板を焼入油中に浸漬することにより焼入硬化させた。さらに、当該平板に対して種々の温度で焼戻処理を施した。得られた平板に対して直径19.05mmのSUJ2製標準転がり軸受用鋼球を荷重3.18kN(最大接触面圧4.4GPa)で押し付け、10秒間保持した後、除荷した。そして、この鋼球の押し付けによって平板に形成された圧痕の深さを測定することにより、耐圧痕性を調査した。また、同じ試験片について、ロックウェル硬度計にて表面硬度を測定した。耐圧痕性の調査結果を図18に、硬度の測定結果を図19に示す。
図18および図19を参照して、焼戻温度が高くなるにつれて表面硬度が低下する一方で、圧痕深さは極小値を有している。具体的には、焼戻温度を240℃以上300℃以下とすることにより、圧痕深さが0.2μm以下となっている。このことから、耐圧痕性を向上させる観点からは、焼戻温度は240℃以上300℃以下とすることが好ましいといえる。
ここで、上記焼戻温度の最適値は、以下のようにして決定されているものと考えられる。焼入処理を行なうと、鋼の素地には炭素が固溶した状態となる。一方、焼戻処理を行なうと、素地中に固溶した炭素の一部が炭化物(たとえばFeC)として析出する。このとき、焼戻処理の温度が高くなるほど鋼の降伏強度に対する固溶強化の寄与が低下するとともに、析出強化の寄与が大きくなる。そして、240℃以上300℃以下の温度域で焼戻処理を実施することにより、これらの強化機構のバランスが最適となり、降伏強度が極大値をとるため、耐圧痕性が特に高くなる。
また、上記圧痕深さの測定の場合と同様に圧痕を押し付けることによる鋼の変形に基づいて測定される表面硬度が単調減少するにもかかわらず、耐圧痕性が極大値をとる理由は以下の通りであると考えられる。
図20は、上記平板に対する熱処理において浸炭窒化処理のみを省略した処理を施した引張試験片(JIS Z2201 4号試験片)の各焼戻温度における真応力と真ひずみとの関係を示す図である。図20は、n乗硬化弾塑性体でモデル化した真応力−真ひずみ線図である。σ降伏応力を境目に次式の通り特性が異なる。
Figure 0006101014
ここで、σは真応力、Eはヤング率、εは真ひずみ、Kは塑性係数、nは加工硬化指数、σは降伏応力である。ただし、ヤング率Eは共振法で実測し、加工効果指数nおよび組成係数Kは、引張試験により実測した。そして、これらを上記2式に代入し、交点をσとした。
ここで、圧痕深さの測定における真ひずみの水準は、図20における領域αに相当するのに対し、硬度測定における真ひずみの水準は、図20における領域β以上に相当する。そして、図21を参照して、圧痕深さの測定領域に対応する領域αにおける降伏点を確認すると、焼戻温度が240℃〜300℃の範囲において降伏点が高くなっており、これよりも低温の場合、降伏点が低下している。一方、図20を参照して、表面硬度の測定領域に対応する領域βでは、同じひずみ量を与えようとすると、焼戻温度が低くなるにつれて、より大きな応力が必要となることが分かる。このような現象に起因して、焼戻温度が180℃〜220℃の場合に比べて硬度が低下するにもかかわらず、焼戻温度を240℃〜300℃とすることにより、耐圧痕性が向上するものと考えられる。
また、焼戻温度のほか、表面窒素濃度および焼入温度を変化させた条件で熱処理した試験片について、表面の残留オーステナイト量、圧痕深さ、寿命、リング圧砕強度、経年変化率を調査した。
ここで、圧痕深さは、上記の場合と同様に測定した。圧痕深さが0.2μm未満の場合をB、0.2〜0.4μmの場合をC、0.4μm以上の場合をDと評価した。寿命は、圧痕深さの測定の場合と同様の条件にて軌道面に圧痕を形成した後、清浄油潤滑のもとで油膜パラメータが0.5となる条件で、軸受がトランスミッションに使用される場合の荷重条件を模擬して実施した。そして、焼入温度850℃、焼戻温度240℃、表面窒素量0.4質量%の試験片の寿命を基準(B)として、基準寿命よりも長い場合をA、短い場合をC、著しく短い場合をDと評価した。リング圧砕強度は、外径60mm、内径54mm、幅15のリングを作製し、これを径方向に平板にて圧縮し亀裂が発生した荷重を調査することにより評価した。亀裂発生時の荷重が5000kgf以上の場合をA、3500〜5000kgfの場合をB、3500kgf未満の場合をDと評価した。また、経年変化率は、試験片を230℃で2時間保持し、当該熱処理前からの外径寸法変化量を測定することにより評価した。変化量が10.0×10以下の場合をA、10.0×10〜30.0×10の場合をB、30.0×10〜90.0×10の場合をC、90.0×10以上の場合をDと評価した。試験結果を表1に示す。
Figure 0006101014
表1を参照して、表面窒素濃度が0.25〜0.5質量%、焼入温度が820〜860℃、焼戻温度が240〜300℃の条件をすべて満たす試験片において、上記全ての項目において優れた評価が得られている。
(実施例A)
図4〜図9に示す形状A、B、C、D、E、Fの保持器(金属製保持器:プレス加工品)を製作して、これらを用いて図1に示す玉軸受を組立て、発生するトルクを測定した。その結果を次の表2に示す。表2において標準品とは、ボール非接触部31が形成されていない従来品である。
Figure 0006101014
表2において、形状Dは、形状Aにおいて、凸部32をPCDから外径側へ0.8mmシフトするように形成したものである。形状Eは、形状Bにおいて、凸部32をPCDから外径側へ0.8mmシフトするように形成したものである。表2において、鋼球−保持器接触面積の欄は、標準品の面積を100%とした場合の割合(%)にて表示している。また、軸受としては、外輪11の外径寸法が72.0mmであり、外輪11の内径寸法が60.2mmであり、内輪12の外径寸法が47.0mmであり、内輪12の内径寸法が35.0mmであり、ボール(鋼球)13の外径寸法が11.1mmのものを用いた。
実験条件は以下の通りである。軸受に対して500Nのラジアル荷重を付与した状態で、4000r/minの回転速度を与えた。30℃の潤滑油(トヨタ純正ATF T−4)に軸受の一部を浸漬させた。より具体的には、軸受軸心線を水平に保って、この鉛直方向最下位のボールのみが完全に浸漬するようにした。
図22に、ボール13と保持器14との接触面積を変更させた場合と、凸部32をPCDから外径側へシフトさせた場合のトルクの変化を示すグラフを示す。表2および図22から明らかなように、接触面積を15%程度低減することにより、トルクを約50%低減することができた。また、接触面積を30%低減させるとともに、凸部32をPCDから外径側へ0.8mmシフトさせることにより、トルクを約60%低減することができた。
(実施例B)
図12に示すように、スリット35を有する保持器(金属製保持器:プレス加工品)を製作して、これを用いて図11に示す玉軸受を組立て、発生するトルクを測定した。保持器14にスリット35を形成することにより、保持器14とボール13との接触面積を標準品(スリット35を有さない保持器)よりも30%低減した。上記実施例1の場合と同様に、軸受に対して500Nのラジアル荷重を付与した状態で、4000r/minの回転速度を与えた。上記実施例Aの場合と同様に、軸受は、30℃の潤滑油(トヨタ純正ATF T−4)に一部を浸漬させた。これにより、約40%のトルク低減が得られた。すなわち、標準品のトルクが0.152Nmであるのに対し、スリット35を有する保持器を採用した場合、トルクは0.093Nmとなった。また、軸受としては、外輪11の外径寸法が72.0mmであり、外輪11の内径寸法が60.2mmであり、内輪12の外径寸法が47.0mmであり、内輪12の内径寸法が35.0mmであり、ボール(鋼球)13の外径寸法が11.1mmのものを用いた。なお、後述する実施例C、Dにおいても、同一サイズのものを用いた。
(比較例C)
凸部32やスリット35に代えて、半球状膨出部26の軸受内径及び軸受外径側をカットした金属製保持器を製作して、これを用いて図11に示す玉軸受を組立て、発生するトルクを測定した。保持器14とボール13との接触面積を標準品(スリット35を有さない保持器)よりも25%低減させた。測定条件は上記実施例と同様とした。この場合、約11%のトルク低減が得られた。すなわち、標準品が0.152Nmであったのに対し、軸受内径及び軸受外径側をカットした保持器では0.135Nmとなった。
(実施例D)
また、半球状膨出部26の軸受外径側をカットした樹脂製保持器を製作して、これを用いて図11に示す玉軸受を組立て、発生するトルクを測定した。保持器の素材は、樹脂材料(PA66)とした。保持器14とボール13との接触面積を標準品よりも30%低減した。測定条件は上記実施例と同様とした。この場合、約18%のトルク低減が得られた。すなわち、標準品が0.152Nmであったのに対し、軸受外径側をカットした保持器では0.124Nmとなった。
なお、上記実施の形態および実施例においては、本発明の転がり軸受の一例として深溝玉軸受について説明したが、本発明の転がり軸受はこれに限られず、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、タンデム型アンギュラ玉軸受など、種々の形式の転がり軸受(玉軸受)に適用可能である。また、本発明の転がり軸受の用途として、トランスミッションおよびデファレンシャルを例示したが、本発明の転がり軸受の用途はこれに限られず、種々の機械に適用可能であり、高い荷重が負荷されることにより耐圧痕性が求められる用途に特に好適である。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の転がり軸受は、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立することが求められる転がり軸受に、特に有利に適用され得る。
1 深溝玉軸受、2 スラストニードルころ軸受、11 外輪、11A 外輪転走面、11B,12B,13B 窒素富化層、11C,12C,13C 内部、12 内輪、12A 内輪転走面、13 玉、13A 玉転動面、14 保持器、17 シール部材、18 芯金、19 被覆部、20 装着溝、21 凹溝、22 リップ部、26 半球状膨出部、27A,27B 環状保持板、28 平坦部、29 固着具、30 ポケット、31 非接触部、32 凸部、33 凹部、35 スリット、100 マニュアルトランスミッション、111 入力シャフト、112 出力シャフト、113 カウンターシャフト、114a〜k ギア、115 ハウジング、120A,120B 転がり軸受、200 デファレンシャル、201 デフケース、201a 内歯、201b 外歯、202a〜b ピニオンギア、202c〜d 回転軸、203 サンギア、204 ピニオンキャリア、205 アーマチュア、206 パイロットクラッチ、207 電磁石、208 デフケース、209 カム、220 左駆動軸、221 右駆動軸。

Claims (8)

  1. 内輪と、前記内輪の外周側を取り囲むように配置される外輪と、
    前記内輪および前記外輪に接触して配置される複数のボールと、
    前記複数のボールを円環状の軌道上に所定のピッチで保持する保持器とを備え、
    前記内輪および前記外輪は、
    0.90質量%以上1.05質量%以下の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.50質量%以下のマンガンと、1.30質量%以上1.65質量%以下のクロムとを含有し、残部鉄および不純物からなる焼入硬化された鋼からなり、前記ボールと接触する面である前記内輪および前記外輪の転走面における窒素濃度が0.25質量%以上であり、前記転走面における残留オーステナイト量が6体積%以上12体積%以下である高強度軸受部品であり、
    前記転走面は、直径19.05mmのSUJ2製標準転がり軸受用鋼球を最大接触面圧を4.4GPaとする荷重3.18kNで押し付け10秒間保持することにより形成される圧痕深さが0.4μm未満となる面であり、
    前記保持器は、
    円周方向に沿って所定間隔で配設された半球状膨出部を有する2枚の環状保持板が組み合わされてなり、
    対向する前記半球状膨出部にて前記ボールを保持するポケットを形成しており、
    前記ポケットにおいて前記ボールに対向する面であるボール対向面にボール非接触部が設けられ、
    前記ポケットにおける前記ボールとの接触面積が、前記ボール非接触部を設けないときの前記ボールとの接触面積よりも15%〜30%低減されている、転がり軸受。
  2. 前記内輪および前記外輪は前記高強度軸受部品である、請求項1に記載の転がり軸受。
  3. 前記転走面の硬度は60.0HRC以上である、請求項1または2に記載の転がり軸受。
  4. 前記転走面の硬度は64.0HRC以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の転がり軸受。
  5. 記内輪の前記ボールに対する溝曲率は1.02以上1.06以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の転がり軸受。
  6. 記外輪の前記ボールに対する溝曲率は1.02以上1.08以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の転がり軸受。
  7. 自動車の動力伝達軸を支持するために用いられる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の転がり軸受。
  8. 前記自動車は二輪車である、請求項7に記載の転がり軸受。
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