JP6534632B2 - 深溝玉軸受 - Google Patents

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Description

本発明は深溝玉軸受およびその検査方法に関し、より特定的には、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立することが可能な深溝玉軸受およびその検査方法に関するものである。
近年、機械の長寿命化やメンテナンスフリー化が進められている。その結果、当該機械に使用される転がり軸受に対しても、転動疲労寿命の長寿命化が求められている。転動疲労寿命の長寿命化を達成するためには、転がり軸受を構成する部品である軸受部品(軌道部材および転動体)の材料を変更する対策が考えられる。具体的には、軸受部品の代表的な材料である鋼に対して長寿命化に有効な合金成分を添加することにより、転動疲労寿命の長寿命化を図ることができる。
しかし、軸受部品の素材に特殊な材料を採用した場合、世界各国に製造拠点が広がりつつある現状を考慮すると、製造地によっては材料の調達が困難になるおそれがある。そのため、このような状況を考慮すると、特殊な材料を用いた転動疲労寿命の長寿命化は、必ずしも好ましいとはいえない。
一方、転動疲労寿命の長寿命化の他の方策として、熱処理による軸受部品および転がり軸受の長寿命化が提案されている(たとえば、特許文献1〜3参照)。
特開平7−190072号公報 特開2003−226918号公報 特開2000−161363号公報
一方、たとえば自動車用のデファレンシャルやトランスミッションに用いられる円すいころ軸受、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、タンデム型アンギュラ玉軸受など、大きな荷重を支持する必要がある転がり軸受においては、転動疲労寿命の長寿命化とともに、耐圧痕性(転動体が軌道部材に押し付けられた場合の圧痕の形成されにくさ)が求められる。しかしながら、上記特許文献1〜3を含めて従来の熱処理による転動疲労寿命の長寿命化が図られた場合でも、耐圧痕性については不十分になるという問題があった。
本発明は上述のような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、材料の入手の容易性を確保しつつ、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立することが可能な深溝玉軸受およびその検査方法を提供することである。
本発明に従った深溝玉軸受は、軌道輪と玉とを備え、スラスト荷重を受ける、デファレンシャル用またはトランスミッション用の深溝玉軸受である。少なくとも軌道輪は、0.90質量%以上1.05質量%以下の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.50質量%以下のマンガンと、1.30質量%以上1.65質量%以下のクロムとを含有し、残部不純物からなる焼入硬化された鋼からなる。少なくとも軌道輪に、窒素濃度が0.25質量%以上であって残留オーステナイト量が6体積%以上12体積%以下である窒素富化層が形成されており、かつ、当該軌道輪の少なくとも軌道面は、窒素富化層を有している。
上記深溝玉軸受においては、軌道面の硬度は60.0HRC以上であってもよい。上記深溝玉軸受においては、軌道面の硬度は64.0HRC以下であってもよい。
本発明に従った深溝玉軸受の検査方法は、軌道輪と玉とを備え、スラスト荷重を受ける深溝玉軸受の軌道輪の圧痕深さの検査方法である。軌道輪に対応する、0.90質量%以上1.05質量%以下の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.50質量%以下のマンガンと、1.30質量%以上1.65質量%以下のクロムとを含有し、残部不純物からなる焼入硬化された鋼からなり、少なくとも一部の表面において、窒素濃度が0.25質量%以上であって残留オーステナイト量が6体積%以上12体積%以下である窒素富化層を有している平板を準備する工程と、上記平板の上記表面に直径19.05mmのSUJ2製標準転がり軸受用鋼球を荷重3.18kN、最大接触面圧4.4GPaで押し付け、10秒間保持した後、除荷する工程を備える。
本発明に従った軸受部品は、0.90質量%以上1.05質量%以下の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.50質量%以下のマンガンと、1.30質量%以上1.65質量%以下のクロムとを含有し、残部不純物からなる焼入硬化された鋼からなり、他の部品と接触する面である接触面における窒素濃度が0.25質量%以上であり、接触面における残留オーステナイト量が6体積%以上12体積%以下である。
本発明者は、世界各国で入手容易なJIS規格SUJ2相当材料(JIS規格SUJ2、ASTM規格52100、DIN規格100Cr6、GB規格GCr5もしくはGCr15、およびΓOCT規格ЩX15)を材料として採用することを前提に、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立するための方策について検討を行なった。その結果、以下のような知見を得て、本発明に想到した。
上記成分組成を採用することにより、世界各国で入手容易な上記各国規格鋼を材料として使用することができる。そして、当該成分組成の鋼の使用を前提として、接触面における窒素濃度が0.25質量%以上にまで高められ、かつ焼入硬化されることにより、転動疲労寿命を長寿命化することができる。ここで、残留オーステナイト量について特に調整を行なわない場合、接触面における残留オーステナイト量は窒素量との関係から20〜40体積%程度となる。しかし、このように残留オーステナイト量が多い状態では、耐圧痕性が低下するという問題が生じる。そして、残留オーステナイト量を12体積%以下にまで低減することにより、耐圧痕性を向上させることができる。一方、残留オーステナイト量が6体積%未満にまで低下すると、転動疲労寿命、特に軸受内に硬質の異物が侵入する環境(異物混入環境)での転動疲労寿命が低下する。そのため、接触面における残留オーステナイト量は6体積%以上とすることが好ましい。
これに対し、本発明の軸受部品においては、世界各国で入手容易なJIS規格SUJ2相当材料を材料として採用しつつ、接触面における窒素濃度が0.25質量%以上、残留オーステナイト量が6体積%以上12体積%以下とされている。その結果、本発明の軸受部品によれば、材料の入手の容易性を確保しつつ、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立することが可能な軸受部品を提供することができる。なお、耐圧痕性を一層向上させる観点から、接触面における残留オーステナイト量を10%以下としてもよい。また、接触面における窒素濃度が0.5質量%を超えると、鋼中に窒素を侵入させるためのコストが高くなるとともに、残留オーステナイト量を所望の範囲に調整することが難しくなる。そのため、接触面における窒素濃度は0.5質量%以下とすることが好ましく、0.4質量%以下としてもよい。
上記軸受部品においては、接触面の硬度は60.0HRC以上であってもよい。これにより、転動疲労寿命および耐圧痕性を一層向上させることができる。
上記軸受部品においては、接触面の硬度は64.0HRC以下であってもよい。窒素濃度が0.25質量%以上にまで高められた接触面の硬度を、64.0HRCを超える状態を維持した場合、残留オーステナイトを12体積%以下に調整することが困難となる。接触面の硬度を64.0HRC以下とすることにより、12体積%以下の範囲に残留オーステナイト量を調整することが容易となる。
本発明に従った転がり軸受は、軌道部材と、軌道部材に接触して配置される複数の転動体とを備えている。そして、軌道部材および転動体の少なくともいずれか一方は、上記本発明の軸受部品である。
本発明の転がり軸受は、上記本発明の軸受部品を軌道部材および転動体の少なくともいずれかとして備えている。その結果、本発明の転がり軸受によれば、材料の入手の容易性を確保しつつ、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立することが可能な転がり軸受を提供することができる。
上記転がり軸受は、デファレンシャルまたはトランスミッション内において回転する回転部材を、当該回転部材に隣接して配置される他の部材に対して回転自在に支持するものであってもよい。
デファレンシャルやトランスミッションにおいて使用される軸受には、転動体と軌道部材との間に高い面圧が負荷される。そのため、このような用途の軸受には、転動疲労寿命の長寿命化のみならず、耐圧痕性の向上が要求される。そのため、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立することが可能な本発明の転がり軸受は、デファレンシャルやトランスミッションにおいて使用される軸受として好適である。
本発明に従った軸受部品の製造方法は、0.90質量%以上1.05質量%以下の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.50質量%以下のマンガンと、1.30質量%以上1.65質量%以下のクロムとを含有し、残部不純物からなる鋼を成形することにより成形部材を作製する工程と、成形部材を浸炭窒化処理する工程と、浸炭窒化処理された成形部材を焼入硬化処理する工程と、焼入硬化処理された成形部材を焼戻処理する工程と、焼戻処理された成形部材を加工することにより他の部品と接触する面である接触面を形成する工程とを備えている。成形部材を浸炭窒化処理する工程では、接触面を形成する工程において接触面の窒素濃度が0.25質量%以上となるように成形部材が浸炭窒化処理される。そして、成形部材を焼戻処理する工程では、接触面を形成する工程において接触面の残留オーステナイト量が6体積%以上12体積%以下となるように成形部材が焼戻処理される。
本発明の軸受部品の製造方法によれば、上記本発明の軸受部品を製造することができる。
上記軸受部品の製造方法においては、成形部材を焼戻処理する工程では、成形部材が240℃以上300℃以下の温度域にて焼戻処理されてもよい。これにより、接触面の残留オーステナイト量を6体積%以上12体積%以下の範囲に調整することが容易となる。また、焼入処理された鋼には炭素が固溶している。この固溶した炭素は接触面付近の材料(鋼)の固溶強化に寄与している。一方、焼入処理された鋼を焼戻処理すると、固溶している炭素の一部が炭化物として析出する。この析出した炭化物は接触面付近の材料(鋼)の析出強化に寄与する。焼戻処理の処理温度が240℃未満では、接触面付近の材料の固溶強化は十分であるものの、析出強化が不十分となる。一方、焼戻処理の処理温度が300℃を超えると、接触面付近の材料の析出強化は十分であるものの、固溶強化が不十分となる。そして、焼戻処理の処理温度を240℃以上300℃以下とすることにより、固溶強化と析出強化のバランスが良好となり、耐圧痕性が向上する。
上記軸受部品の製造方法においては、成形部材を焼入処理する工程では、成形部材が860℃以下の温度域から急冷されることにより焼入処理されてもよい。これにより、焼入硬化後における炭素の固溶量と析出量とのバランス、および残留オーステナイト量の焼戻処理での調整が困難になることを抑制することができる。
上記軸受部品の製造方法においては、成形部材を焼入処理する工程では、成形部材が820℃以上の温度域から急冷されることにより焼入処理されてもよい。これにより、焼入硬化後における炭素の固溶量と析出量とのバランス、および残留オーステナイト量の焼戻処理での調整が困難になることを抑制することができる。
本発明に従った転がり軸受の製造方法は、軌道部材を準備する工程と、複数の転動体を準備する工程と、複数の転動体を軌道部材に接触するように組み合わせることにより、転がり軸受を組み立てる工程とを備えている。そして、軌道部材を準備する工程および複数の転動体を準備する工程との少なくともいずれか一方は、上記本発明の軸受部品の製造方法を用いて実施される。これにより、上記本発明の転がり軸受を製造することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の深溝玉軸受およびその検査方法によれば、材料の入手の容易性を確保しつつ、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立することが可能な深溝玉軸受およびその検査方法を提供することができる。
深溝玉軸受の構成を示す概略断面図である。 図1の要部を拡大して示した概略部分断面図である。 スラストころ軸受の構成を示す概略断面図である。 図3の軌道輪の概略部分断面図である。 図3のころの概略断面図である。 転がり軸受の製造方法の概略を示すフローチャートである。 マニュアルトランスミッションの構成を示す概略断面図である。 デファレンシャルの構成を示す概略断面図である。 図8のピニオンギアの配置を示す概略図である。 焼戻温度と圧痕深さの関係を示す図である。 焼戻温度と硬度との関係を示す図である。 真ひずみと真応力との関係を示す図である。 図12の領域αを拡大して示す図である。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施の形態である実施の形態1について説明する。図1および図2を参照して、実施の形態1における転がり軸受である深溝玉軸受1は、軸受部品である第1軌道部材としての外輪11と、軸受部品である第2軌道部材としての内輪12と、軸受部品である複数の転動体としての玉13と、保持器14とを備えている。外輪11には、円環状の第1転走面しての外輪転走面11Aが形成されている。内輪12には、外輪転走面11Aに対向する円環状の第2転走面としての内輪転走面12Aが形成されている。また、複数の玉13には、転動体転走面としての玉転動面13A(玉13の表面)が形成されている。外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよび玉転動面13Aは、これらの軸受部品の接触面である。そして、当該玉13は、外輪転走面11Aおよび内輪転走面12Aの各々に玉転動面13Aにおいて接触し、円環状の保持器14により周方向に所定のピッチで配置されることにより円環状の軌道上に転動自在に保持されている。以上の構成により、深溝玉軸受1の外輪11および内輪12は、互いに相対的に回転可能となっている。
図2を参照して、軸受部品である外輪11、内輪12および玉13は、0.90質量%以上1.05質量%以下の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.50質量%以下のマンガンと、1.30質量%以上1.65質量%以下のクロムとを含有し、残部不純物からなる焼入硬化された鋼からなっている。そして、接触面としての外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよび玉転動面13Aを含む領域には、内部11C,12C,13Cに比べて窒素濃度が高い窒素富化層11B,12B,13Bが、それぞれ形成されている。窒素富化層11B,12B,13Bの表面である接触面としての外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよび玉転動面13Aにおける窒素濃度は0.25質量%以上となっている。さらに、外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよび玉転動面13Aにおける残留オーステナイト量は、6体積%以上12体積%以下となっている。
本実施の形態における軸受部品である外輪11、内輪12および玉13は、上記JIS規格SUJ2相当鋼の成分組成を有する鋼からなることにより、その素材が世界各国にて入手容易となる。そして、当該成分組成の鋼の使用を前提として、外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよび玉転動面13Aにおける窒素濃度が0.25質量%以上にまで高められ、かつ焼入硬化されていることにより、転動疲労寿命が長寿命化されている。そして、残留オーステナイト量が12体積%以下にまで低減されることにより、耐圧痕性が向上するとともに、残留オーステナイト量が6体積%以上とされることにより、転動疲労寿命、特に異物混入環境での転動疲労寿命が適切なレベルに維持されている。その結果、外輪11、内輪12および玉13は、材料の入手の容易性を確保しつつ、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立することが可能な軸受部品となっている。
なお、上記外輪11、内輪12および玉13においては、接触面である外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよび玉転動面13Aの硬度は60.0HRC以上であることが好ましい。これにより、転動疲労寿命および耐圧痕性を一層向上させることができる。
また、上記外輪11、内輪12および玉13においては、外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよび玉転動面13Aの硬度は64.0HRC以下であることが好ましい。これにより、外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよび玉転動面13Aにおける残留オーステナイト量を12体積%以下の範囲に調整することが容易となる。
図3〜図5を参照して、実施の形態1の変形例における転がり軸受であるスラストニードルころ軸受2は、上記深溝玉軸受1と基本的には同様の構成を有し、同様の効果を奏する。しかし、スラストニードルころ軸受2は、軌道部材および転動体の構成において、深溝玉軸受1とは異なっている。すなわち、スラストニードルころ軸受2は、円盤状の形状を有し、互いに一方の主面が対向するように配置された軌道部材としての一対の軌道輪21と、転動体としての複数のニードルころ23と、円環状の保持器24とを備えている。複数のニードルころ23は、ニードルころ23の外周面であるころ転動接触面23Aにおいて、一対の軌道輪21の互いに対向する一方の主面に形成された軌道輪転走面21Aに接触し、かつ保持器24により周方向に所定のピッチで配置されることにより円環状の軌道上に転動自在に保持されている。以上の構成により、スラストニードルころ軸受2の一対の軌道輪21は、互いに相対的に回転可能となっている。
そして、スラストニードルころ軸受2の軌道輪21は、深溝玉軸受の外輪11および内輪12に、スラストニードルころ軸受2のニードルころ23は深溝玉軸受の玉13にそれぞれ相当し、同様の素材からなるとともに、同様の窒素濃度および残留オーステナイト量の窒素富化層21B,23B、内部21C,23C、軌道輪転走面21Aおよび転動接触面23Aを有している。これにより、軌道輪21およびニードルころ23は、材料の入手の容易性を確保しつつ、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立することが可能な軸受部品となっている。
次に、本実施の形態における軸受部品および転がり軸受の製造方法について説明する。図6を参照して、まず、工程(S10)として鋼材準備工程が実施される。この工程(S10)では、JIS規格SUJ2、ASTM規格52100、DIN規格100Cr6、GB規格GCr5もしくはGCr15、およびΓOCT規格ЩX15などのJIS規格SUJ2相当鋼からなる鋼材が準備される。具体的には、たとえば上記成分組成を有する棒鋼や鋼線などが準備される。
次に、工程(S20)として成形工程が実施される。この工程(S20)では、たとえば工程(S10)において準備された棒鋼や鋼線などに対して鍛造、旋削などの加工が実施されることにより、図1〜図5に示される外輪11、内輪12、玉13、軌道輪21、ニードルころ23などの形状に成形された成形部材が作製される。
次に、工程(S30)として浸炭窒化工程が実施される。この工程(S30)では、工程(S20)において作製された成形部材が浸炭窒化処理される。この浸炭窒化処理は、たとえば以下のように実施することができる。まず、上記成形部材が780℃以上820℃以下程度の温度域で、30分間以上90分間以下の時間予熱される。次に、予熱された成形部材が、エンリッチガスとしてのプロパンガスやブタンガスが添加されることによりカーボンポテンシャルが調整されたRXガスなどの吸熱型ガスに、さらにアンモニアガスが導入された雰囲気中において加熱されて浸炭窒化処理される。浸炭窒化処理の温度は、たとえば820℃以上880℃以下とすることができる。また、浸炭窒化処理の時間は、成形部材に形成すべき窒素富化層の窒素濃度に合わせて設定することができ、たとえば3時間以上9時間以下とすることができる。これにより、成形部材の脱炭を抑制しつつ窒素富化層を形成することができる。
次に、工程(S40)として焼入工程が実施される。この工程(S40)では、工程(S30)において浸炭窒化処理されることにより窒素富化層が形成された成形部材が、所定の焼入温度から急冷されることにより焼入処理される。この焼入温度は、860℃以下とされることにより、後続の焼戻工程における炭素の固溶量と析出量とのバランス、および残留オーステナイト量の調整が容易となる。また、焼入温度が820℃以上とされることにより、後続の焼戻工程における炭素の固溶量と析出量とのバランス、および残留オーステナイト量の調整が容易となる。焼入処理は、たとえば所定の温度に保持された冷却材としての焼入油中に成形部材を浸漬することにより実施することができる。
次に、工程(S50)として焼戻工程が実施される。この工程(S50)では、工程(S40)において焼入処理された成形部材が焼戻処理される。具体的には、たとえば210℃以上300℃以下の温度域に加熱された雰囲気中において成形部材が0.5時間以上3時間以下の時間保持されることにより、焼戻処理が実施される。
次に、工程(S60)として仕上げ加工工程が実施される。この工程(S60)では、工程(S50)において焼戻処理された成形部材を加工することにより他の部品と接触する面である接触面が、すなわち深溝玉軸受1の外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよび玉転動面13A、ならびにスラストニードルころ軸受2の軌道輪転走面21Aおよび転動接触面23Aが形成される。仕上げ加工としては、たとえば研削加工を実施することができる。以上の工程により、本実施の形態における軸受部品である外輪11、内輪12、玉13、軌道輪21、ニードルころ23などが完成する。
さらに、工程(S70)として組立工程が実施される。この工程(S70)では、工程(S10)〜(S60)において作製された外輪11、内輪12、玉13、軌道輪21、ニードルころ23と、別途準備された保持器14,24などとが組合わされて、上記実施の形態における深溝玉軸受1やスラストニードルころ軸受2が組立てられる。これにより、本実施の形態における転がり軸受の製造方法が完了する。
ここで、上記工程(S30)では、後続の工程(S60)における仕上げ加工によって接触面である深溝玉軸受1の外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよび玉転動面13A、ならびにスラストニードルころ軸受2の軌道輪転走面21Aおよび転動接触面23Aの窒素濃度が0.25質量%以上となるように成形部材が浸炭窒化処理される。つまり、工程(S60)での取り代などを考慮して、接触面完成後における表面の窒素濃度を0.25質量%以上とすることが可能なように窒素量を調整した窒素富化層11B,12B,13B,21B,23Bが形成される。
さらに、上記工程(S50)では、後続の工程(S60)における仕上げ加工によって接触面である深溝玉軸受1の外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよび玉転動面13A、ならびにスラストニードルころ軸受2の軌道輪転走面21Aおよび転動接触面23Aの残留オーステナイト量が6体積%以上12体積%以下となるように成形部材が焼戻処理される。つまり、工程(S60)での取り代などを考慮して、接触面完成後における表面の残留オーステナイト量を6体積%以上12体積%以下とすることが可能なように、焼戻処理によって残留オーステナイト量が調整される。これにより、上記本実施の形態における軸受部品を製造することができる。
また、工程(S50)では、成形部材が240℃以上300℃以下の温度域にて焼戻処理されることが好ましい。これにより、焼入処理によって素地に固溶した炭素が適切な割合で炭化物として析出する。その結果、固溶強化と析出強化との適切なバランスが達成され、軸受部品である外輪11、内輪12、玉13、軌道輪21、ニードルころ23の耐圧痕性が向上する。
(実施の形態2)
次に、上記実施の形態1における転がり軸受の用途の一例について説明する。図7を参照して、マニュアルトランスミッション100は、常時噛合い式のマニュアルトランスミッションであって、入力シャフト111と、出力シャフト112と、カウンターシャフト113と、ギア(歯車)114a〜114kと、ハウジング115とを備えている。
入力シャフト111は、深溝玉軸受1によりハウジング115に対して回転可能に支持されている。この入力シャフト111の外周にはギア114aが形成され、内周にはギア114bが形成されている。
一方、出力シャフト112は、一方側(図中右側)において深溝玉軸受1によりハウジング115に回転可能に支持されているとともに、他方側(図中左側)において転がり軸受120Aにより入力シャフト111に回転可能に支持されている。この出力シャフト112には、ギア114c〜114gが取り付けられている。
ギア114cおよびギア114dはそれぞれ同一部材の外周と内周に形成されている。ギア114cおよびギア114dが形成される部材は、転がり軸受120Bにより出力シャフト112に対して回転可能に支持されている。ギア114eは、出力シャフト112と一体に回転するように、かつ出力シャフト112の軸方向にスライド可能なように、出力シャフト112に取り付けられている。
また、ギア114fおよびギア114gの各々は同一部材の外周に形成されている。ギア114fおよびギア114gが形成されている部材は、出力シャフト112と一体に回転するように、かつ出力シャフト112の軸方向にスライド可能なように、出力シャフト112に取り付けられている。ギア114fおよびギア114gが形成されている部材が図中左側にスライドした場合には、ギア114fはギア114bと噛合い可能であり、図中右側にスライドした場合にはギア114gとギア114dとが噛合い可能である。
カウンターシャフト113には、ギア114h〜114kが形成されている。カウンターシャフト113とハウジング115との間には、2つのスラストニードルころ軸受2が配置され、これによってカウンターシャフト113の軸方向の荷重(スラスト荷重)が支持されている。ギア114hは、ギア114aと常時噛合っており、かつギア114iはギア114cと常時噛合っている。また、ギア114jは、ギア114eが図中左側にスライドした場合に、ギア114eと噛合い可能である。さらに、ギア114kは、ギア114eが図中右側にスライドした場合に、ギア114eと噛合い可能である。
次に、マニュアルトランスミッション100の変速動作について説明する。マニュアルトランスミッション100においては、入力シャフト111に形成されたギア114aと、カウンターシャフト113に形成されたギア114hとの噛み合わせによって、入力シャフト111の回転がカウンターシャフト113へ伝達される。そして、カウンターシャフト113に形成されたギア114i〜114kと出力シャフト112に取り付けられたギア114c、114eとの噛み合わせ等によって、カウンターシャフト113の回転が出力シャフト112へ伝達される。これにより、入力シャフト111の回転が出力シャフト112へ伝達される。
入力シャフト111の回転が出力シャフト112へ伝達される際には、入力シャフト111およびカウンターシャフト113の間で噛合うギアと、カウンターシャフト113および出力シャフト112の間で噛合うギアとを変えることによって、入力シャフト111の回転速度に対して出力シャフト112の回転速度を段階的に変化させることができる。また、カウンターシャフト113を介さずに入力シャフト111のギア114bと出力シャフト112のギア114fとを直接噛合わせることによって、入力シャフト111の回転を出力シャフト112へ直接伝達することもできる。
以下に、マニュアルトランスミッション100の変速動作をより具体的に説明する。ギア114fがギア114bと噛合わず、ギア114gがギア114dと噛合わず、かつギア114eがギア114jと噛合う場合には、入力シャフト111の駆動力は、ギア114a、ギア114h、ギア114jおよびギア114eを介して出力シャフト112に伝達される。これが、たとえば第1速とされる。
ギア114gがギア114dと噛合い、ギア114eがギア114jと噛合わない場合には、入力シャフト111の駆動力は、ギア114a、ギア114h、ギア114i、ギア114c、ギア114dおよびギア114gを介して出力シャフト112に伝達される。これが、たとえば第2速とされる。
ギア114fがギア114bと噛合い、ギア114eがギア114jと噛合わない場合には、入力シャフト111はギア114bおよびギア114fとの噛合いにより出力シャフト112に直結され、入力シャフト111の駆動力は直接出力シャフト112に伝達される。これが、たとえば第3速とされる。
上述のように、マニュアルトランスミッション100は、回転部材としての入力シャフト111および出力シャフト112をこれに隣接して配置されるハウジング115に対して回転可能に支持するために、深溝玉軸受1を備えている。また、マニュアルトランスミッション100は、回転部材であるカウンターシャフト113をこれに隣接して配置されるハウジング115に対して回転可能に支持するために、スラストニードルころ軸受2を備えている。このように、上記実施の形態1における深溝玉軸受1およびスラストニードルころ軸受2は、マニュアルトランスミッション100内において使用することができる。そして、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立することが可能な深溝玉軸受1およびスラストニードルころ軸受2は、転動体と軌道部材との間に高い面圧が付与されるマニュアルトランスミッション100内での使用に好適である。
(実施の形態3)
次に、上記実施の形態1における転がり軸受の用途の他の一例について説明する。図8および図9を参照して、デファレンシャル200は、デフケース201と、ピニオンギア202aおよび202bと、サンギア203と、ピニオンキャリア204と、アーマチュア205と、パイロットクラッチ206と、電磁石207と、ロータークラッチ(デフケース)208と、カム209を備えている。
デフケース201の内周に設けられた内歯201aと4つのピニオンギア202aの各々とが互いに噛みあっており、4つのピニオンギア202aの各々と4つのピニオンギア202bの各々とが互いに噛み合っており、4つのピニオンギア202bの各々とサンギア203とが互いに噛み合っている。サンギア203は第1の駆動軸としての左駆動軸220の端部に接続されており、これによりサンギア203と左駆動軸220とは一体となって自転することができる。また、ピニオンギア202aの回転軸202cの各々と、ピニオンギア202bの回転軸202dとの各々が、ともにピニオンキャリア204によって自転可能に保持されている。ピニオンキャリア204は第2の駆動軸としての右駆動軸221の端部に接続されており、これによりピニオンキャリア204と右駆動軸221とは一体となって自転することができる。
また、電磁石207、パイロットクラッチ206、ロータークラッチ(デフケース)208、アーマチュア205、およびカム209によって電磁クラッチが構成されている。
デフケース201の外歯201bは図示しないリングギアの歯車と噛み合っており、デフケース201はリングギアからの動力を受けて自転する。左駆動軸220および右駆動軸221の間に差動がない場合には、ピニオンギア202aおよび202bは自転せず、デフケース201、ピニオンキャリア204、およびサンギア203の3つの部材が一体となって回転する。つまり、リングギアから左駆動軸220へは、矢印Bで示されるように動力が伝達され、リングギアから右駆動軸221へは、矢印Aで示されるように動力が伝達される。
一方、左駆動軸220および右駆動軸221のうちいずれか一方、たとえば左駆動軸220に抵抗が加わる場合には、左駆動軸220と接続したサンギア203に抵抗が加わり、ピニオンギア202aおよび202bの各々が自転する。そして、ピニオンギア202aおよび202bの回転によってピニオンキャリア204の自転が速められ、左駆動軸220と右駆動軸221との間に差動が発生する。
また、電磁クラッチは、左駆動軸220と右駆動軸221との間に一定以上の差動が生じると通電し、電磁石207によって磁界が発生される。パイロットクラッチ206およびアーマチュア205は、磁気誘導作用により電磁石207に引き付けられて摩擦トルクを発生する。摩擦トルクはカム209によりスラスト方向に変換される。そして、スラスト方向に変換された摩擦トルクにより、ピニオンキャリア204を介してメーンクラッチがデフケース208に押し付けられ、これにより差動制限トルクが発生する。スラストニードルころ軸受2はカム209で生じたスラスト方向の反力を受け、この反力をデフケース208に伝達する。その結果、摩擦トルクに比例したカム209による倍のスラスト力が発生される。このように、電磁石207は、パイロットクラッチ206のみを制御し、そのトルクを倍力機構により増幅することができ、また任意に摩擦トルクをコントロールすることができる。
ここで、カム209とデフケース208との間には、実施の形態1におけるスラストニードルころ軸受2が配置されている。また、デフケース208とデフケース208の外周側に配置される部材との間には、実施の形態1における深溝玉軸受1が配置されている。このように、上記実施の形態1における深溝玉軸受1およびスラストニードルころ軸受2は、デファレンシャル200内において使用することができる。そして、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立することが可能な深溝玉軸受1およびスラストニードルころ軸受2は、転動体と軌道部材との間に高い面圧が付与されるデファレンシャル200内での使用に好適である。
軸受部品の特性に及ぼす熱処理条件等の影響を調査する実験を行なった。まず、JIS規格SUJ2からなる平板を準備し、800℃で1時間予熱した後、RXガスにアンモニアガスを添加した雰囲気中において850℃に加熱し、4時間保持することにより浸炭窒化処理した。その後、浸炭窒化処理における加熱温度である850℃から、そのまま上記平板を焼入油中に浸漬することにより焼入硬化させた。さらに、当該平板に対して種々の温度で焼戻処理を施した。得られた平板に対して直径19.05mmのSUJ2製標準転がり軸受用鋼球を荷重3.18kN(最大接触面圧4.4GPa)で押し付け、10秒間保持した後、除荷した。そして、この鋼球の押し付けによって平板に形成された圧痕の深さを測定することにより、耐圧痕性を調査した。また、同じ試験片について、ロックウェル硬度計にて表面硬度を測定した。耐圧痕性の調査結果を図10に、硬度の測定結果を図11に示す。
図10および図11を参照して、焼戻温度が高くなるにつれて表面硬度が低下する一方で、圧痕深さは極小値を有している。具体的には、焼戻温度を240℃以上300℃以下とすることにより、圧痕深さが0.2μm以下となっている。このことから、耐圧痕性を向上させる観点からは、焼戻温度は240℃以上300℃以下とすることが好ましいといえる。
ここで、上記焼戻温度の最適値は、以下のようにして決定されているものと考えられる。焼入処理を行なうと、鋼の素地には炭素が固溶した状態となる。一方、焼戻処理を行なうと、素地中に固溶した炭素の一部が炭化物(たとえばFeC)として析出する。このとき、焼戻処理の温度が高くなるほど鋼の降伏強度に対する固溶強化の寄与が低下するとともに、析出強化の寄与が大きくなる。そして、240℃以上300℃以下の温度域で焼戻処理を実施することにより、これらの強化機構のバランスが最適となり、降伏強度が極大値をとるため、耐圧痕性が特に高くなる。
また、上記圧痕深さの測定の場合と同様に圧痕を押し付けることによる鋼の変形に基づいて測定される表面硬度が単調減少するにもかかわらず、耐圧痕性が極大値をとる理由は以下の通りであると考えられる。
図12は、上記平板に対する熱処理において浸炭窒化処理のみを省略した処理を施した引張試験片(JIS Z2201 4号試験片)の各焼戻温度における真応力と真ひずみとの関係を示す図である。図12は、n乗硬化弾塑性体でモデル化した真応力−真ひずみ線図である。σ降伏応力を境目に次式の通り特性が異なる。
Figure 0006534632
ここで、σは真応力、Eはヤング率、εは真ひずみ、Kは塑性係数、nは加工硬化指数、σは降伏応力である。ただし、ヤング率Eは共振法で実測し、加工効果指数nおよび組成係数Kは、引張試験により実測した。そして、これらを上記2式に代入し、交点をσとした。
ここで、圧痕深さの測定における真ひずみの水準は、図12における領域αに相当するのに対し、硬度測定における真ひずみの水準は、図12における領域β以上に相当する。そして、図13を参照して、圧痕深さの測定領域に対応する領域αにおける降伏点を確認すると、焼戻温度が240℃〜300℃の範囲において降伏点が高くなっており、これよりも低温の場合、降伏点が低下している。一方、図12を参照して、表面硬度の測定領域に対応する領域βでは、同じひずみ量を与えようとすると、焼戻温度が低くなるにつれて、より大きな応力が必要となることが分かる。このような現象に起因して、焼戻温度が180℃〜220℃の場合に比べて硬度が低下するにもかかわらず、焼戻温度を240℃〜300℃とすることにより、耐圧痕性が向上するものと考えられる。
また、焼戻温度のほか、表面窒素濃度および焼入温度を変化させた条件で熱処理した試験片について、表面の残留オーステナイト量、圧痕深さ、寿命、リング圧砕強度、経年変化率を調査した。
ここで、圧痕深さは、上記の場合と同様に測定した。圧痕深さが0.2μm未満の場合をB、0.2〜0.4μmの場合をC、0.4μm以上の場合をDと評価した。寿命は、圧痕深さの測定の場合と同様の条件にて軌道面に圧痕を形成した後、清浄油潤滑のもとで油膜パラメータが0.5となる条件で、軸受がトランスミッションに使用される場合の荷重条件を模擬して実施した。そして、焼入温度850℃、焼戻温度240℃、表面窒素量0.4質量%の試験片の寿命を基準(B)として、基準寿命よりも長い場合をA、短い場合をC、著しく短い場合をDと評価した。リング圧砕強度は、外径60mm、内径54mm、幅15のリングを作製し、これを径方向に平板にて圧縮し亀裂が発生した荷重を調査することにより評価した。亀裂発生時の荷重が5000kgf以上の場合をA、3500〜5000kgfの場合をB、3500kgf未満の場合をDと評価した。また、経年変化率は、試験片を230℃で2時間保持し、当該熱処理前からの外径寸法変化量を測定することにより評価した。変化量が10.0×10以下の場合をA、10.0×10〜30.0×10の場合をB、30.0×10〜90.0×10の場合をC、90.0×10以上の場合をDと評価した。試験結果を表1に示す。
Figure 0006534632
表1を参照して、表面窒素濃度が0.25〜0.5質量%、焼入温度が820〜860℃、焼戻温度が240〜300℃の条件をすべて満たす試験片において、上記全ての項目において優れた評価が得られている。
なお、上記実施の形態においては、本発明の軸受部品を含む転がり軸受の一例として深溝玉軸受およびスラストニードルころ軸受について説明したが、本発明の転がり軸受はこれに限られず、円すいころ軸受、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、タンデム型アンギュラ玉軸受など、種々の形式の転がり軸受に本発明の軸受部品を適用可能である。また、本発明の転がり軸受の用途として、トランスミッションおよびデファレンシャルを例示したが、本発明の転がり軸受の用途はこれに限られず、種々の機械に適用可能であり、高い荷重が負荷されることにより耐圧痕性が求められる用途に特に好適である。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の軸受部品、転がり軸受およびこれらの製造方法は、耐圧痕性と転動疲労寿命とを高いレベルで両立することが求められる軸受部品、転がり軸受およびこれらの製造方法に、特に有利に適用され得る。
1 深溝玉軸受、2 スラストニードルころ軸受、11 外輪、11A 外輪転走面、11B,12B,13B,21B,23B 窒素富化層、11C,12C,13C,21C,23C 内部、12 内輪、12A 内輪転走面、13 玉、13A 玉転動面、14,24 保持器、21 軌道輪、21A 軌道輪転走面、23 ニードルころ、23A ころ転動接触面、100 マニュアルトランスミッション、111 入力シャフト、112 出力シャフト、113 カウンターシャフト、114a〜k ギア、115 ハウジング、120A,120B 転がり軸受、200 デファレンシャル、201 デフケース、201a 内歯、201b 外歯、202a〜b ピニオンギア、202c〜d 回転軸、203 サンギア、204 ピニオンキャリア、205 アーマチュア、206 パイロットクラッチ、207 電磁石、208 デフケース、209 カム、220 左駆動軸、221 右駆動軸。

Claims (3)

  1. 軌道輪と玉とを備え、スラスト荷重を受ける深溝玉軸受であって、
    少なくとも前記軌道輪が、0.90質量%以上1.05質量%以下の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.50質量%以下のマンガンと、1.30質量%以上1.65質量%以下のクロムとを含有し、残部不純物からなる焼入硬化された鋼からなり、
    少なくとも前記軌道輪に、窒素濃度が0.25質量%以上0.50質量%以下であって残留オーステナイト量が6体積%以上10体積%以下である窒素富化層が形成されており、かつ、前記軌道輪の少なくとも軌道面は、前記窒素富化層を有している、デファレンシャル用またはトランスミッション用の深溝玉軸受。
  2. 前記軌道面の硬度は60.0HRC以上である、請求項1に記載の深溝玉軸受。
  3. 前記軌道面の硬度は64.0HRC以下である、請求項1または2に記載の深溝玉軸受。
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