JP2009235444A - 鋼の熱処理方法、機械部品の製造方法、機械部品および転がり軸受 - Google Patents

鋼の熱処理方法、機械部品の製造方法、機械部品および転がり軸受 Download PDF

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Abstract

【課題】準高温環境における硬度低下の抑制および寸法安定性の向上とともに、硬度レベルの向上を達成可能な鋼の熱処理方法、機械部品の製造方法、機械部品および当該機械部品を含む転がり軸受を提供する。
【解決手段】鋼の熱処理方法は、0.4質量%以上0.7質量%未満の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.6質量%以上1.3質量%以下のマンガンとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼を準備する工程と、当該鋼を、A点以上の温度において浸炭窒化することにより、鋼の表面を含む領域に窒素富化層を形成する工程と、鋼を、窒素富化層のM点を超え、M点よりも50℃高い温度以下の温度に保持することにより、窒素富化層の残留オーステナイト量が5体積%以下となるように窒素富化層をベイナイト変態させる工程とを備えている。
【選択図】図12

Description

本発明は鋼の熱処理方法、機械部品の製造方法、機械部品および転がり軸受に関し、より特定的には、0.4質量%以上0.7質量%未満の炭素を含有する鋼の熱処理方法、0.4質量%以上0.7質量%未満の炭素を含有する鋼からなる機械部品の製造方法、機械部品および当該機械部品を含む転がり軸受に関するものである。
近年、転がり軸受などの機械要素が用いられる装置の高性能化に伴い、機械要素が従来よりも高温の環境下で使用される場合が多くなっている。機械要素を構成する部品である機械部品が鋼からなる場合、高温に曝されることにより機械部品が軟化し、十分な耐久性が確保できないという問題が生じ得る。200℃を超えるような高温環境下において鋼からなる機械部品が使用される場合、当該機械部品を構成する鋼には、3質量%を超えるクロムやモリブデンなどの合金元素を多量に含んだ耐熱性に優れた鋼が採用される。これにより、機械部品が高温に曝された場合でも、機械部品の軟化が抑制され、十分な耐久性が確保される。
一方、機械部品が100℃以上200℃以下の温度域である準高温環境で使用される場合でも、上述のような耐熱性に優れた鋼を機械部品の素材として採用すれば、十分な耐久性が確保される。しかし、上記耐熱性に優れた鋼からなる機械部品は、準高温環境において使用される機械部品として要求される特性に対して過剰な特性を有している場合が多い一方、多量の合金元素の含有に起因して、加工や熱処理が難しく、製造コストが大幅に上昇するという問題がある。さらに、近年、クロムなどの金属の価格が高騰している。このような状況を考慮すると、準高温環境で使用される機械部品を構成する鋼としては、合金元素の添加量が抑制された鋼が採用されることが好ましい。
また、機械要素が用いられる装置の高性能化に伴い、機械要素に対しては寸法精度の向上、特に使用中の寸法変化量の低減が求められている。そのため、機械要素を構成する機械部品に対しても、寸法安定性の向上が要求されている。
合金元素の添加量が抑制された鋼の準高温環境における硬度低下を抑制し、かつ寸法安定性を向上させる方法として、鋼の組織をベイナイト化する方法が知られている。ベイナイト組織は準高温環境において安定であるため、ベイナイト組織を含む機械部品は、準高温環境における硬度の低下が抑制されるとともに寸法安定性が向上する。このベイナイト組織は、上記準高温環境における硬度低下の抑制、寸法安定性の向上の他にも優れた特性を有しており、これを利用した機械部品が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
特開2001−50282号公報
しかしながら、上記ベイナイト組織は、準高温環境における硬度低下が小さいものの、焼入硬化により形成されるマルテンサイト組織に比べて硬度レベルが低いため、高い応力が負荷される環境下で使用される機械部品への適用は難しいという問題があった。
そこで、本発明の目的は、準高温環境における硬度低下の抑制および寸法安定性の向上とともに、硬度レベルの向上を達成可能な鋼の熱処理方法、準高温環境における硬度低下が抑制されるとともに寸法安定性が向上し、かつ硬度レベルが向上した機械部品の製造方法、機械部品および当該機械部品を含む転がり軸受を提供することである。
本発明の一の局面における鋼の熱処理方法は、0.4質量%以上0.7質量%未満の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.6質量%以上1.3質量%以下のマンガンとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼を準備する工程と、当該鋼を、A点以上の温度において浸炭窒化することにより、鋼の表面を含む領域に内部よりも窒素濃度が高い層である窒素富化層を形成する工程と、当該鋼を、窒素富化層のM点を超え、M点よりも50℃高い温度以下の温度に保持することにより、窒素富化層の残留オーステナイト量が5体積%以下となるように窒素富化層をベイナイト変態させる工程とを備えている。
上述のように、鋼をベイナイト変態させることにより形成されるベイナイト組織は、焼入硬化により形成されるマルテンサイト組織に比べて硬度レベルが低い。したがって、当該ベイナイト組織を高い応力が負荷される環境下で使用される機械部品に適用するためには、ベイナイト組織の硬度レベルを向上させる必要がある。
一方、鋼の表面硬化方法として、鋼をA点以上の温度において浸炭窒化することにより表面付近に窒素を侵入させた窒素富化層(鉄中に窒素を侵入させて固溶体を形成させた層)を形成する方法が知られている。ここで、鋼に浸炭窒化処理を実施した場合、鋼への窒素の侵入に起因して、硬度レベルの上昇だけでなく、鋼の組織中に含まれる残留オーステナイト量が多くなるという効果が生じる。残留オーステナイトを組織中に含む機械部品においては、使用中に当該残留オーステナイトがマルテンサイトに変態し、機械部品の表面に圧縮応力が生成する場合がある。この場合、機械部品の表層部における亀裂の発生および伝播が抑制され、機械部品の耐久性が向上するという効果を奏する。しかしながら、残留オーステナイトのマルテンサイトへの変態は体積変化を伴うため、浸炭窒化が実施された機械部品は寸法安定性が低下するという問題を生じる。そのため、浸炭窒化による鋼の表面硬化処理は、残留オーステナイトを積極的に利用可能な機械部品、すなわち寸法安定性よりもむしろ圧縮応力の生成等の効果が重視される機械部品を構成する鋼の熱処理に適用されている。その結果、寸法安定性を重視してベイナイト組織を含む機械部品に対しては、硬度レベルを向上させる手段として、浸炭窒化は採用されなかった。
このような従来技術の問題点に鑑み、本発明者は、準高温環境における硬度低下の抑制および寸法安定性の向上とともに、硬度レベルを向上させる鋼の熱処理方法について詳細に検討した。その結果、鋼を浸炭窒化して窒素富化層を形成した上で、当該鋼を窒素富化層のM点よりも僅かに高い温度に冷却し、残留オーステナイト量が5体積%以下となるのに十分な時間保持してベイナイト変態させることにより、寸法安定性を確保しつつ、ベイナイト組織を有する鋼の硬度レベルを、高い応力が負荷される環境下で使用される機械部品に対しても十分な程度に向上させることが可能であることを見出した。
本発明の一の局面における鋼の熱処理方法においては、合金元素の添加量が抑制された上記成分組成を有する鋼に対して浸炭窒化を行ない、窒素富化層を形成した上で、当該鋼を、窒素富化層のM点を超え、M点よりも50℃高い温度以下の温度に保持することにより、窒素富化層の残留オーステナイト量が5体積%以下となるように窒素富化層をベイナイト変態させるプロセスが採用される。そのため、鋼の表面を含む領域に形成された窒素富化層は、ベイナイト組織を含み、残留オーステナイト量が5体積%以下に抑制される。したがって、本発明の一の局面における鋼の熱処理方法によれば、合金元素の添加量が抑制された鋼の準高温環境における硬度低下の抑制および寸法安定性の向上とともに、硬度レベルの向上を達成可能な鋼の熱処理方法を提供することができる。
本発明の他の局面における鋼の熱処理方法は、0.4質量%以上0.7質量%未満の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.6質量%以上1.3質量%以下のマンガンとを含有し、さらに0.5質量%以下のクロムおよび0.5質量%以下のモリブデンのうち少なくともいずれか一方を含み、残部鉄および不純物からなる鋼を準備する工程と、当該鋼を、A点以上の温度において浸炭窒化することにより、鋼の表面を含む領域に内部よりも窒素濃度が高い層である窒素富化層を形成する工程と、当該鋼を、窒素富化層のM点を超え、M点よりも50℃高い温度以下の温度に保持することにより、窒素富化層の残留オーステナイト量が5体積%以下となるように窒素富化層をベイナイト変態させる工程とを備えている。
本発明の他の局面における鋼の熱処理方法は、基本的には上記本発明の一の局面における鋼の熱処理方法と同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。しかし、本発明の他の局面における鋼の熱処理方法では、熱処理後の鋼の用途等を考慮し、準備される鋼が、さらに0.5質量%以下のクロムおよび0.5質量%以下のモリブデンのうち少なくともいずれか一方を含む点で、上記本発明の一の局面における鋼の熱処理方法とは異なっている。
本発明の他の局面における鋼の熱処理方法によれば、準備される鋼が、0.5質量%以下のクロムおよび0.5質量%以下のモリブデンのうち少なくともいずれか一方を含むことにより、合金元素の添加量を抑制しつつ、硬度レベルをさらに向上させるとともに、準高温環境における硬度低下を一層抑制することができる。なお、硬度レベルを確実に上昇させるためには、クロム含有量は0.3質量%以上、モリブデン含有量は0.2質量%以上とすることが望ましい。
ここで、A点とは鋼を加熱した場合に、鋼の組織がフェライトからオーステナイトに変態を開始する温度に相当する点をいう。また、M点とはオーステナイト化した鋼が冷却される際に、マルテンサイト化を開始する温度に相当する点をいう。
また、窒素富化層をベイナイト変態させる工程において鋼が保持される上記温度(以下、ベイナイト変態温度という)がM点よりも50℃高い温度を超えると、鋼の硬度が低くなり、機械部品として使用した場合の耐久性が低下するおそれがある。そのため、ベイナイト変態温度はM点よりも50℃程度高い温度以下とする必要があり、30℃高い温度以下とすることが望ましい。一方、鋼がM点以下の温度に冷却されると、当該鋼はマルテンサイト変態する。そのため、ベイナイト変態温度はM点よりも高いことが必要であるが、温度制御の精度等を考慮し、M点よりも10℃高い温度以上とすることが好ましい。
さらに、窒素富化層の残留オーステナイト量が5体積%以下となるように窒素富化層をベイナイト変態させるためには、A点以上の温度に加熱した鋼をベイナイト変態温度に十分な時間保持する必要がある。当該保持時間は、ベイナイト変態温度および鋼の成分組成などの条件により変化するため、当該条件に合わせて設定する必要があるが、上記成分組成の鋼において、残留オーステナイト量を5体積%以下とするためには、60分間以上とすることが好ましく、120分間以上とすることにより、残留オーステナイト量を、より好ましい範囲である2体積%以下に低減することができる。また、ベイナイト変態温度に鋼が保持される際、当該鋼の温度は、上記温度の範囲において変動してもよいが、残留オーステナイト量を容易に制御したい場合、一定の温度とすることが望ましい。さらに、窒素富化層が形成された後、A点からベイナイト変態温度までの冷却速度は、強度の低いパーライトの生成を抑制する観点から、パーライト変態を抑制可能な冷却速度とすることが好ましく、具体的にはA点から500℃までの冷却速度を200℃/秒以上とすることが好ましい。以下、上記鋼の成分範囲を上記の範囲に限定した理由について説明する。
炭素:0.4質量%以上0.7質量%未満
機械部品を構成する鋼において、炭素が0.4質量%未満では、機械部品の硬度が不十分となるおそれがある。また、表層部に浸炭を行ない、表層部の炭素濃度を増加させる場合、当該浸炭に長時間を要し、機械部品の製造コストが上昇するおそれがある。一方、炭素が0.7質量%以上となると、機械部品の靱性が低下するおそれがある。したがって、炭素は0.4質量%以上0.7質量%未満とする必要がある。
珪素:0.15質量%以上0.35質量%以下
機械部品を構成する鋼において、珪素が0.15質量%未満では、機械部品の耐久性が低下するおそれがある。一方、珪素が0.35質量%を超えると、素材の硬度が上昇し、冷間加工性が低下するという問題が発生し得る。したがって、珪素は0.15質量%以上0.35質量%以下とする必要がある。
マンガン:0.6質量%以上1.3質量%以下
機械部品を構成する鋼において、マンガンが0.6質量%未満では、機械部品の耐久性が低下するおそれがある。一方、マンガンが1.3質量%を超えると、素材の硬度が上昇し冷間加工性が低下するという問題が発生し得る。したがって、マンガンは0.6質量%以上1.3質量%以下とする必要がある。
本発明に従った機械部品の製造方法は、鋼からなり、機械部品の概略形状に成形された鋼部材を準備する工程と、鋼部材に対して熱処理を実施する工程とを備えている。そして、当該熱処理は、上記鋼の熱処理方法を用いて実施される。
本発明の機械部品の製造方法によれば、機械部品の概略形状に成形された鋼部材に対して、準高温環境における硬度低下の抑制および寸法安定性の向上を達成するとともに、硬度レベルを向上させることが可能な上記本発明の鋼の熱処理方法が実施されるため、準高温環境における硬度低下が抑制されるとともに寸法安定性が向上し、かつ硬度レベルが向上した機械部品を製造することができる。
本発明の一の局面における機械部品は、上記機械部品の製造方法により製造されている。本発明の一の局面における機械部品によれば、上記本発明の機械部品の製造方法により製造されていることにより、準高温環境における硬度低下が抑制されるとともに寸法安定性が向上し、かつ硬度レベルが向上した機械部品を提供することができる。
本発明の他の局面における機械部品は、0.4質量%以上0.7質量%未満の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.6質量%以上1.3質量%以下のマンガンとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼から構成されている。表面を含む領域には、内部よりも窒素濃度が高い層である窒素富化層が形成されている。そして、当該窒素富化層は、ベイナイト組織を含み、残留オーステナイト量が5体積%以下に抑制されている。
本発明の他の局面における機械部品においては、表面を含む領域に窒素富化層が形成され、当該窒素富化層はベイナイト組織を含んでいる。すなわち、当該機械部品においては、表層部に形成されたベイナイト組織の窒素濃度が高められている。上述のように、ベイナイト組織は準高温環境において安定であるため、本発明の他の局面における機械部品においては、準高温環境における硬度の低下が抑制されている。また、当該ベイナイト組織の窒素濃度が高められていることにより、ベイナイト組織の硬度レベルが向上している。さらに、窒素富化層の残留オーステナイト量が5体積%以下に抑制されることにより、寸法安定性が向上している。その結果、本発明の他の局面における機械部品によれば、準高温環境における硬度低下が抑制されるとともに寸法安定性が向上し、かつ硬度レベルが向上した機械部品を提供することができる。
本発明のさらに他の局面における機械部品は、0.4質量%以上0.7質量%未満の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.6質量%以上1.3質量%以下のマンガンとを含有し、さらに0.5質量%以下のクロムおよび0.5質量%以下のモリブデンのうち少なくともいずれか一方を含み、残部鉄および不純物からなる鋼から構成されている。表面を含む領域には、内部よりも窒素濃度が高い層である窒素富化層が形成されている。そして、当該窒素富化層は、ベイナイト組織を含み、残留オーステナイト量が5体積%以下に抑制されている。
本発明のさらに他の局面における機械部品は、基本的には上記本発明の他の局面における機械部品と同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。しかし、本発明のさらに他の局面における機械部品では、機械部品の用途等を考慮し、当該機械部品を構成する鋼が、さらに0.5質量%以下のクロムおよび0.5質量%以下のモリブデンのうち少なくともいずれか一方を含む点で、上記本発明の他の局面における機械部品とは異なっている。
本発明のさらに他の局面における機械部品によれば、機械部品を構成する鋼が、0.5質量%以下のクロムおよび0.5質量%以下のモリブデンのうち少なくともいずれか一方を含むことにより、合金元素の添加量を抑制しつつ、硬度レベルをさらに向上させるとともに、準高温環境における硬度低下を一層抑制することができる。なお、硬度レベルを確実に上昇させるためには、クロム含有量は0.3質量%以上、モリブデン含有量は0.2質量%以上とすることが望ましい。
ここで、上記他の局面およびさらに他の局面における機械部品においては、窒素富化層の残留オーステナイト量は2体積%以下であることが好ましい。これにより、機械部品の寸法安定性が一層向上する。また、一般に、転がり軸受などの機械部品においては、当該機械部品の表層部、具体的には表面を含む厚み0.15mm程度の領域の強度が重要になる場合が多い。そのため、上記他の局面およびさらに他の局面における機械部品においては、窒素富化層の厚みは0.15mm以上であることが好ましい。さらに、上記窒素富化層は、硬度レベルを向上させる観点から、ベイナイト組織と、マルテンサイト組織と、5体積%以下の残留オーステナイトとからなっていることが好ましく、寸法安定性を向上させる観点から、ベイナイト組織が80%体積以上を占めていることが好ましい。
上記他の局面およびさらに他の局面における機械部品において好ましくは、窒素富化層は、0.8質量%以上1.2質量%以下の炭素と、0.1質量%以上0.8質量%以下の窒素とを含んでいる。
炭素の含有量は、鋼の硬度に大きな影響を及ぼす。そして、機械部品を構成する鋼の硬度は、当該機械部品の耐久性を支配する重要な要因の1つである。鋼中の炭素含有量が0.8質量%未満では、機械部品の用途によっては表層部の硬度が不十分となるおそれがある。そのため、窒素富化層における炭素含有量は0.8質量%以上であることが好ましい。また、鋼中の炭素含有量が1.2質量%を超えると、鋼中に大型の鉄の炭化物が形成され、機械部品の耐久性に悪影響を与えるおそれがある。そのため、窒素富化層における炭素含有量は、1.2質量%以下であることが好ましい。
一方、窒素富化層における窒素含有量が0.1質量%未満では、ベイナイト組織の硬度レベルを向上させる効果が小さくなる。そのため、窒素富化層における窒素含有量は0.1質量%以上であることが好ましい。また、鋼中の窒素含有量が0.8質量%を超えると、鋼中にボイドが形成され、当該鋼からなる機械部品の耐久性を低下させるおそれがある。そのため、窒素富化層における窒素含有量は、0.8質量%以下とすることが好ましい。
上記機械部品は、軸受を構成する部品として用いられてもよい。準高温環境における硬度低下が抑制されるとともに寸法安定性が向上し、かつ硬度レベルが向上した本発明の機械部品は、軸受を構成する部品として好適である。
本発明に従った転がり軸受は、軌道部材と、軌道部材に接触し、円環状の軌道上に配置される複数の転動体とを備えている。そして、軌道部材および転動体の少なくともいずれか一方は、上記機械部品である。これにより、準高温環境における耐久性および寸法安定性が向上した転がり軸受を提供することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の鋼の熱処理方法によれば、準高温環境における硬度低下の抑制および寸法安定性の向上とともに、硬度レベルの向上を達成可能な鋼の熱処理方法を提供することができる。また、本発明の機械部品の製造方法、機械部品および転がり軸受によれば、準高温環境における硬度低下が抑制されるとともに寸法安定性が向上し、かつ硬度レベルが向上した機械部品の製造方法、機械部品および当該機械部品を含む転がり軸受を提供することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰り返さない。
図1は、本発明の一実施の形態における機械部品を備えた転がり軸受としての深溝玉軸受の構成を示す概略断面図である。また、図2は、図1の要部を拡大して示す概略部分断面図である。図1および図2を参照して、本発明の一実施の形態における転がり軸受としての深溝玉軸受について説明する。
図1を参照して、深溝玉軸受1は、軌道部材としての環状の外輪11と、外輪11の内側に配置された環状の内輪12と、外輪11と内輪12との間に配置され、円環状の保持器14に保持された転動体としての複数の玉13とを備えている。外輪11の内周面には外輪転走面11Aが形成されており、内輪12の外周面には内輪転走面12Aが形成されている。そして、内輪転走面12Aと外輪転走面11Aとが互いに対向するように、外輪11と内輪12とは配置されている。さらに、複数の玉13は、その表面である玉転走面13Aにおいて内輪転走面12Aおよび外輪転走面11Aに接触し、かつ保持器14により周方向に所定のピッチで配置されることにより、円環状の軌道上に転動自在に保持されている。以上の構成により、深溝玉軸受1の外輪11および内輪12は、互いに相対的に回転可能となっている。
ここで、機械部品である外輪11、内輪12および玉13は、0.4質量%以上0.7質量%未満の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.6質量%以上1.3質量%以下のマンガンとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼から構成されている。そして、図2を参照して、外輪11、内輪12および玉13の表面である外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよび玉転走面13Aを含む領域には、内部11C,12C,13Cよりも窒素濃度が高い層である外輪窒素富化層11B、内輪窒素富化層12Bおよび玉窒素富化層13Bがそれぞれ形成されている。さらに、外輪窒素富化層11B、内輪窒素富化層12Bおよび玉窒素富化層13Bは、ベイナイト組織を含み、残留オーステナイト量が5体積%以下に抑制されている。ここで、上記不純物は、鋼の原料に由来するもの、あるいは製造工程において混入するものなどの不可避的不純物を含む。
本実施の形態における機械部品である外輪11、内輪12および玉13においては、上記適切な成分組成を有する鋼からなるとともに、表面に形成された外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよび玉転走面13Aを含む領域に、それぞれ外輪窒素富化層11B、内輪窒素富化層12Bおよび玉窒素富化層13Bが形成されている。そして、外輪窒素富化層11B、内輪窒素富化層12Bおよび玉窒素富化層13Bは、ベイナイト組織を含んでいる。すなわち、外輪11、内輪12および玉13においては、表層部に形成されたベイナイト組織の窒素濃度が、外輪窒素富化層11B、内輪窒素富化層12Bおよび玉窒素富化層13Bにより高められている。そのため、外輪11、内輪12および玉13においては、準高温環境における表層部の硬度の低下が抑制されるとともに、硬度レベルが向上している。さらに、外輪窒素富化層11B、内輪窒素富化層12Bおよび玉窒素富化層13Bの残留オーステナイト量が5体積%以下に抑制されることにより、寸法安定性が向上している。その結果、外輪11、内輪12および玉13は、準高温環境における硬度低下が抑制されるとともに寸法安定性が向上し、かつ硬度レベルが向上した機械部品となっている。また、外輪11、内輪12および玉13を備えた転がり軸受である深溝玉軸受1は、準高温環境における耐久性および寸法安定性が向上した転がり軸受となっている。
ここで、上記外輪11、内輪12および玉13は、上記鋼に代えて、0.4質量%以上0.7質量%未満の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.6質量%以上1.3質量%以下のマンガンとを含有し、さらに0.5質量%以下のクロムおよび0.5質量%以下のモリブデンのうち少なくともいずれか一方を含み、残部鉄および不純物からなる鋼から構成されていてもよい。これにより、合金元素の添加量を抑制しつつ、硬度レベルをさらに向上させるとともに、準高温環境における硬度低下を一層抑制することができる。
さらに、外輪窒素富化層11B、内輪窒素富化層12Bおよび玉窒素富化層13Bは、0.8質量%以上1.2質量%以下の炭素と、0.1質量%以上0.8質量%以下の窒素とを含んでいることが好ましい。これにより、表層部、特に外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよび玉転走面13Aにおける硬度を十分に確保しつつ、過剰な炭素による大型の炭化物の形成や過剰な窒素によるボイドの形成を抑制し、外輪11、内輪12および玉13の耐久性を向上させることができる。
図3は、本実施の形態における第1の変形例である機械部品を備えた転がり軸受としてのスラストニードルころ軸受の構成を示す概略断面図である。また、図4は、図3のうち軌道輪の要部を拡大して示す概略部分断面図である。また、図5は、図3のうちニードルころを拡大して示す概略断面図である。図3〜図5を参照して、第1の変形例であるスラストニードルころ軸受について説明する。
図3を参照して、スラストニードルころ軸受2は、円盤状の形状を有し、互いに一方の主面が対向するように配置された転動部材としての一対の軌道輪21と、転動部材としての複数のニードルころ23と、円環状の保持器24とを備えている。複数のニードルころ23は、一対の軌道輪21の互いに対向する主面に形成された軌道輪転走面21Aに、その外周面であるころ転走面23Aにおいて接触し、かつ保持器24により周方向に所定のピッチで配置されることにより円環状の軌道上に転動自在に保持されている。以上の構成により、スラストニードルころ軸受2の一対の軌道輪21は、互いに相対的に回転可能となっている。
ここで、図3〜図5を参照して、本変形例におけるスラストニードルころ軸受2の軌道輪21は、上記深溝玉軸受1の外輪11および内輪12に、ニードルころ23は玉13に該当し、同様の構成を有しており、同様の効果を奏する。すなわち、軌道輪21およびニードルころ23は、上記外輪11、内輪12および玉13と同様の鋼からなっている。そして、軌道輪転走面21Aを含む領域には外輪窒素富化層11Bおよび内輪窒素富化層12Bに相当する軌道輪窒素富化層21B(内部21Cよりも窒素濃度が高い層)が、ころ転走面23Aを含む領域には玉窒素富化層13Bに相当するころ窒素富化層23B(内部23Cよりも窒素濃度が高い層)がそれぞれ形成されている。その結果、軌道輪21およびニードルころ23は、準高温環境における硬度低下が抑制されるとともに寸法安定性が向上し、かつ硬度レベルが向上した機械部品となっている。また、軌道輪21およびニードルころ23を備えた転がり軸受であるスラストニードルころ軸受2は、準高温環境における耐久性および寸法安定性が向上した転がり軸受となっている。
図6は、本実施の形態における第2の変形例である機械部品を備えた等速ジョイントの構成を示す概略断面図である。また、図7は、図6の線分VII−VIIに沿う概略断面図である。また、図8は、図6の等速ジョイントが角度をなした状態を示す概略断面図である。また、図9は、図6の要部を拡大して示す概略部分断面図である。また、図10は、図7の要部を拡大して示す概略部分断面図である。なお、図6は、図7の線分VI−VIに沿う概略断面図に対応する。図6〜図10を参照して、第2の変形例である等速ジョイントについて説明する。
図6および図7を参照して、等速ジョイント3は、軸35に連結されたインナーレース31と、インナーレース31の外周側を囲むように配置され、軸36に連結されたアウターレース32と、インナーレース31とアウターレース32との間に配置されたトルク伝達用のボール33と、ボール33を保持するケージ34とを備えている。ボール33は、インナーレース31の外周面に形成されたインナーレースボール溝31Aと、アウターレース32の内周面に形成されたアウターレースボール溝32Aとにボール転走面33Aにおいて接触して配置され、脱落しないようにケージ34によって保持されている。
インナーレース31の外周面およびアウターレース32の内周面のそれぞれに形成されたインナーレースボール溝31Aとアウターレースボール溝32Aとは、図6に示すように、軸35および軸36の中央を通る軸が一直線上にある状態において、それぞれ当該軸上のジョイント中心Oから当該軸上の左右に等距離離れた点Aおよび点Bを曲率中心とする曲線(円弧)状に形成されている。すなわち、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aに接触して転動するボール33の中心Pの軌跡が、点A(インナーレース中心A)および点B(アウターレース中心B)に曲率中心を有する曲線(円弧)となるように、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aのそれぞれは形成されている。これにより、等速ジョイントが角度をなした場合(軸35および軸36の中央を通る軸が交差するように等速ジョイントが動作した場合)においても、ボール33は、常に軸35および軸36の中央を通る軸のなす角(∠AOB)の2等分線上に位置する。
次に、等速ジョイント3の動作について説明する。図6および図7を参照して、等速ジョイント3においては、軸35、36の一方に軸まわりの回転が伝達されると、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aに嵌め込まれたボール33を介して、軸35、36の他方の軸に当該回転が伝達される。ここで、図8に示すように軸35、36が角度θをなした場合、ボール33は、前述のインナーレース中心Aおよびアウターレース中心Bに曲率中心を有するインナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aに案内されて、中心Pが∠AOBの二等分線上となる位置に保持される。ここで、ジョイント中心Oからインナーレース中心Aまでの距離と、アウターレース中心Bまでの距離とが等しくなるように、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aが形成されているため、ボール33の中心Pからインナーレース中心Aおよびアウターレース中心Bまでの距離はそれぞれ等しく、三角形OAPと三角形OBPとは合同である。その結果、ボール33の中心Pから軸35、36までの距離Lは互いに等しくなり、軸35、36の一方が軸まわりに回転した場合、他方も等速で回転する。このように、等速ジョイント3は、軸35、36が角度をなした場合でも、等速性を確保することができる。なお、ケージ34は、軸35、36が回転した場合に、インナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aからボール33が飛び出すことをインナーレースボール溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aとともに防止すると同時に、等速ジョイント3のジョイント中心Oを決定する機能を果たしている。
ここで、図6〜図10を参照して、本変形例における等速ジョイント3のインナーレース31、アウターレース32およびボール33は、それぞれ上記深溝玉軸受1の内輪12、外輪11および玉13該当し、同様の構成を有しており、同様の効果を奏する。すなわち、インナーレース31、アウターレース32およびボール33は、上記外輪11、内輪12および玉13と同様の鋼からなっている。そして、インナーレース31、アウターレース32およびボール33の表面に形成されたインナーレースボール溝31Aの表面、アウターレースボール溝32Aの表面およびボール転走面33Aを含む領域には、それぞれ内輪窒素富化層12B、外輪窒素富化層11Bおよび玉窒素富化層13Bに相当するインナーレース窒素富化層31B、アウターレース窒素富化層32Bおよびボール窒素富化層33B(内部31C,32C,33Cよりも窒素濃度が高い層)が形成されている。その結果、インナーレース31、アウターレース32およびボール33は、準高温環境における硬度低下が抑制されるとともに寸法安定性が向上し、かつ硬度レベルが向上した機械部品となっている。また、インナーレース31、アウターレース32およびボール33を備えた等速ジョイント3は、準高温環境における耐久性および寸法安定性が向上した等速ジョイントとなっている。
次に、上記本発明の一実施の形態における機械部品、および上記機械部品を備えた転がり軸受、等速ジョイントなどの機械要素の製造方法について説明する。図11は、本発明の一実施の形態における機械部品および当該機械部品を備えた機械要素の製造方法の概略を示す図である。
図11を参照して、本実施の形態における機械部品および機械要素の製造方法では、まず、工程(S100)として、鋼材準備工程が実施される。具体的には、この工程(S100)では、0.4質量%以上0.7質量%未満の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.6質量%以上1.3質量%以下のマンガンとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼、たとえばJIS規格S50C、S53Cからなる棒鋼、鋼線などが準備される。なお、工程(S100)においては、0.4質量%以上0.7質量%未満の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.6質量%以上1.3質量%以下のマンガンとを含有し、さらに0.5質量%以下のクロムおよび0.5質量%以下のモリブデンのうち少なくともいずれか一方を含み、残部鉄および不純物からなる鋼からなる棒鋼、鋼線などが準備されてもよい。
次に、工程(S200)として、成形工程が実施される。具体的には、工程(S200)では、工程(S100)において準備された鋼材に対して、切断、鍛造、旋削などの加工が実施されることにより、当該鋼材が機械部品としての外輪11、軌道輪21、インナーレース31などの概略形状に成形される。この工程(S100)および(S200)は、鋼からなり、機械部品の概略形状に成形された鋼部材を準備する鋼部材準備工程を構成する。
次に、工程(S300)として実施される浸炭窒化工程、および工程(S400)として実施されるベイナイト変態工程を含む熱処理工程が実施される。この熱処理工程の詳細については後述する。
次に、工程(S500)として、熱処理工程が実施された鋼部材に対して、仕上げ加工などが施される仕上げ工程が実施される。具体的には、たとえば、熱処理工程が実施された鋼部材の内輪転走面12A、軌道輪転走面21A、アウターレースボール溝32Aなどに対する研磨加工が実施される。これにより、本実施の形態における機械部品は完成し、本実施の形態における機械部品の製造方法は完了する。
さらに、工程(S600)として、完成した機械部品が組合わされて機械要素が組立てられる組立て工程が実施される。具体的には、上述の工程により製造された本実施の形態における機械部品である、たとえば外輪11、内輪12、玉13と保持器14とが組合わされて、深溝玉軸受1が組立てられる。これにより、本発明の機械部品を備えた機械要素が製造される。
次に、上記熱処理工程の詳細について説明する。図12は、本実施の形態における機械部品の製造方法に含まれる熱処理工程の詳細を説明するための図である。図12において、横方向は時間を示しており右に行くほど時間が経過していることを示している。また、図12において、縦方向は温度を示しており上に行くほど温度が高いことを示している。
図11を参照して、本実施の形態における熱処理工程においては、まず、被処理物としての鋼部材が浸炭窒化処理される浸炭窒化工程(工程(S300))が実施される。具体的には、図12を参照して、たとえば鋼部材が一酸化炭素と水素を含む浸炭ガスとアンモニアガスとの混合雰囲気中でA変態点以上の温度である温度Tに加熱され、時間tの間保持されることにより、鋼部材の表層部に炭素および窒素が侵入する。これにより、鋼部材の表面を含む領域に、当該表面を含む領域以外の領域である内部領域に比べて炭素濃度および窒素の高い浸炭窒化層が形成される。この浸炭窒化層は、上記本実施の形態における外輪窒素富化層11B、軌道輪窒素富化層21B、インナーレース窒素富化層31Bなどに相当する。
次に、図12を参照して、浸炭窒化処理が終了した鋼部材が、A点以上の温度から窒素富化層のM点以上M点よりも50℃高い温度以下の温度である温度Tに冷却される冷却工程が実施される。具体的には、浸炭窒化処理が実施された鋼部材が、たとえばソルト浴に浸漬され、温度Tに冷却される。この冷却工程における鋼部材の冷却は、鋼部材がパーライト変態しない冷却速度で実施される。鋼部材がパーライト変態しない冷却速度は、たとえば鋼部材を構成する鋼のCCT(Continuous Cooling Transformation;連続冷却変態)線図を考慮して決定することができる。
次に、図12を参照して、鋼部材が温度Tに保持されるベイナイト変態工程(工程(S400))が実施される。具体的には、工程(S400)では、冷却工程において温度Tに冷却された鋼部材が、温度Tに時間tの間保持されることにより、当該鋼部材に形成された窒素富化層(外輪窒素富化層11B、軌道輪窒素富化層21B、インナーレース窒素富化層31Bなど)がベイナイト変態し、ベイナイト組織が形成される。その後、鋼部材が窒素富化層のM点以下の温度に、たとえば空冷されることにより、本実施の形態における熱処理工程は完了する。ここで、温度T、Tおよび時間t、tは、鋼部材の組成や当該熱処理工程が適用される機械部品の用途等に合わせて決定することができるが、たとえば温度Tは800℃以上900℃以下、Tは180℃以上250℃以下、時間tは0.5時間以上4時間以下、時間tは0.5時間以上6時間以下とすることができる。
以上の熱処理工程を含む機械部品および機械要素の製造方法により、上記実施の形態における深溝玉軸受1、スラストニードルころ軸受2および等速ジョイント3などの機械要素および当該機械要素を構成する上記実施の形態における機械部品を製造することができる。
なお、本実施の形態においては、本発明の機械部品の一例として、深溝玉軸受、スラストニードルころ軸受、等速ジョイントを構成する機械部品について説明したが、本発明の機械部品はこれに限られず、準高温環境において使用され得る機械部品、たとえばハブ、ギア、シャフト等を構成する機械部品であってもよい。また、本発明の鋼の熱処理方法、機械部品の製造方法、機械部品および転がり軸受に適用可能な鋼としては、具体的には、JIS規格S38C、S40C、S43C、S45C、S48C、S50C、S53C、S55C、S58CおよびSAE規格1070などの鋼、あるいはこれらの鋼においてマンガンを1.3質量%以下の範囲で増量したもの、これらの鋼に対してクロムやモリブデンを0.5質量%以下の範囲で添加したものなどが挙げられる。
以下、本発明の実施例1について説明する。上記実施の形態における熱処理工程により熱処理を行なったサンプルを作製し、当該サンプルの材料特性および耐久性を調査する実験を行なった。実験の手順は以下のとおりである。
まず、サンプルの作製方法について説明する。サンプルの作製においては、まず、0.4質量%以上0.7質量%未満の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.6質量%以上1.3質量%以下のマンガンとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼であるJIS規格S53Cからなる鋼材を準備し、後述する各試験項目に応じたサンプルの形状に対応する鋼部材に成形した。その後、当該鋼部材に対して以下の4通りの熱処理を実施した上で、仕上げ加工を実施することによりサンプルを作製した。熱処理は、本発明の機械部品と同様の構成を有するサンプルを作製する実施例の熱処理と、本発明の範囲外のサンプルを作製する比較例A〜Cの熱処理とを実施した。
(実施例)
図12に基づいて説明した上記実施の形態における熱処理工程により当該鋼部材を熱処理した。ここで、図12を参照して、浸炭窒化工程は、雰囲気のカーボンポテンシャル(C)値を1.05、未分解アンモニアの濃度を0.25体積%に制御したRXガスおよびアンモニアの混合ガス雰囲気の炉内に鋼部材を挿入して加熱することにより行なった。ここで、温度Tは850℃、時間tは90分間とした。その後ベイナイト変態工程は、浸炭窒化が実施された鋼部材を焼入ソルト浴中に浸漬し、一定温度で保持することにより実施した。このとき、温度Tは290℃、時間tは4時間とした。これにより、鋼部材の表面における窒素濃度は0.4質量%程度、窒素の侵入深さは0.4mm程度となり、窒素が侵入した表層部はベイナイト組織となっていた。この鋼部材に仕上げ加工を実施することにより、サンプルを完成させた(浸炭窒化+ベイナイト変態;実施例)。
(比較例A)
上記実施例と同様にJIS規格S53Cの鋼材から鋼部材を作製し、同様の条件で浸炭窒化工程を実施した。その後、当該鋼部材を100℃に保持された焼入油中に浸漬し、A点以上の温度からM点以下の温度に冷却することにより、焼入を実施した。さらに、当該鋼部材を180℃に加熱して120分間保持することにより焼戻を実施した後、260℃に加熱して120分間保持することにより高温焼戻を実施した。これにより、上記実施例と同様に、鋼部材の表面における窒素濃度は0.4質量%程度、窒素の侵入深さは0.4mm程度となっていた。この鋼部材に仕上げ加工を実施することにより、サンプルを完成させた(浸炭窒化+焼入+高温焼戻;比較例A)。
(比較例B)
上記実施例と同様にJIS規格S53Cの鋼材から鋼部材を作製した。そして、C値が0.85に調整されたRXガス雰囲気の炉内に当該鋼部材を挿入して850℃に加熱し、30分間保持した。このとき、RXガスにはアンモニアガスを添加しなかったため、鋼部材には窒素は侵入していない。その後、実施例と同様に290℃に保持した焼入ソルト浴中に浸漬して4時間保持することにより、鋼部材の表層部をベイナイト変態させた。この鋼部材に仕上げ加工を実施することにより、サンプルを完成させた(浸炭+ベイナイト変態;比較例B)。
(比較例C)
上記実施例と同様にJIS規格S53Cの鋼材から鋼部材を作製した。そして、C値が0.85に調整されたRXガス雰囲気の炉内に当該鋼部材を挿入して850℃に加熱し、30分間保持した。その後、当該鋼部材を100℃に保持された焼入油中に浸漬し、A点以上の温度からM点以下の温度に冷却することにより、焼入を実施した。さらに、当該鋼部材を180℃に加熱して120分間保持することにより焼戻を実施した後、260℃に加熱して120分間保持することにより高温焼戻を実施した。この鋼部材に仕上げ加工を実施することにより、サンプルを完成させた(浸炭+焼入+高温焼戻;比較例C)。
次に、材料特性および耐久性の調査方法について説明する。材料特性および耐久性の調査は、(1)硬度、(2)残留オーステナイト量、(3)寸法安定性、(4)割れ強度、(5)割れ疲労強度、(6)試験片の転動疲労寿命、(7)玉軸受の転動疲労寿命(清浄油)、(8)玉軸受の転動疲労寿命(異物混入油)、(9)玉軸受の転動疲労寿命(準高温清浄油)、(10)シャルピー衝撃値、(11)破壊靱性値(KIC)の11項目について実施した。以下、各項目の調査方法について説明する。
(1)硬度
直径φ12mm、長さL22mmの円筒型の試験片(以下φ12試験片という)およびJIS規格6206型番玉軸受の内輪および外輪を作製し、その硬度を測定した。測定位置は、φ12試験片、玉軸受の内輪および外輪ともに、その端面とし、当該測定位置をロックウェル硬度計により測定した。
(2)残留オーステナイト量
(1)と同様のφ12試験片および6206型番玉軸受の内輪および外輪の作製において、仕上げ加工を省略し、その端面から深さ0.15mmの位置(仕上げ加工後の表面に相当する位置)における残留オーステナイト量を測定した。残留オーステナイト量の測定は、マルテンサイト(211)面に対応するX線の回折強度と、オーステナイト(200)面に対応するX線の回折強度とに基づき算出した。
(3)寸法安定性
JIS規格6206型番玉軸受の外輪を作製し、当初の外径と、230℃に加熱し、2時間保持した後の外径との比を算出することにより評価した。
(4)割れ強度
外径φ24mm、内径φ18.5mm、厚みt7.5mmのリング状の試験片を作製し、アムスラー型試験機により当該試験片を径方向に圧縮し、破壊した時点における応力値を割れ強度として記録した。そして、比較例Cに対する強度の比を割れ強度比として評価した。
(5)割れ疲労強度
(4)と同様の外径φ24mm、内径φ18.5mm、厚みt7.5mmのリング状の試験片を作製し、油圧加振機(島津製作所製 サーボパルサー)により、径方向に50Hzの繰返し速度で内周面に800〜1500MPaの応力が負荷される条件で試験片に繰返し応力を負荷した。そして、試験片が破壊した応力の繰り返し数と荷重とを記録し、これを複数回実施した上で、試験結果を統計的に処理し、試験片が10回の応力負荷の繰り返しで破壊すると予測される応力値(10回強度)を算出した。そして、これを比較例Cの10回強度との比で評価した。
(6)試験片の転動疲労寿命
φ12試験片の転動疲労寿命試験は、点接触転動寿命試験機を用いて行なわれた。図13は、点接触転動寿命試験機の主要部の構成を示す概略正面図である。また、図14は、点接触転動寿命試験機の主要部の構成を示す概略側面図である。図13および図14を参照して、点接触転動寿命試験機について説明する。
図13および図14を参照して、点接触転動寿命試験機90は、駆動ローラ92と、案内ローラ93と、鋼球94とを備えている。そして、φ12試験片91は、駆動ローラ92によって駆動され、鋼球94と接触して回転する。鋼球94は、案内ローラ93にガイドされて、φ12試験片91との間で高い面圧を及ぼし合いながら転動する。以上のように点接触転動寿命試験機90を運転し、5個のφ12試験片91を用いて、各φ12試験片91について2箇所ずつ試験を実施することにより試験回数を10回とし、φ12試験片91に剥離が発生するまでの荷重の負荷回数(寿命)を調査した。鋼球94の直径は19.05mm、鋼球94とφ12試験片91との接触応力Pmaxは5.88GPa、応力の負荷速度は46240回/分、潤滑油はタービン油VG68とした。得られた寿命を統計的に解析し、累積破損確率が10%となる転動疲労寿命(L10寿命)を算出した。そして、比較例Aの転動疲労寿命に対する比で転動疲労寿命を評価した。
(7)玉軸受の転動疲労寿命(清浄油)
JIS規格6206型番の玉軸受を作製し、荷重:6.86kN、潤滑:タービン油VG68の循環給油、温度60℃の条件下で、外輪を固定し、内輪を3000rpmの回転速度で回転させた。潤滑油には異物を混入しない清浄油を用いた。そして、剥離が発生するまでの荷重の負荷回数(寿命)を調査して統計的に解析し、L10寿命を算出した。そして、比較例AのL10寿命に対する比で転動疲労寿命を評価した。
(8)玉軸受の転動疲労寿命(異物混入油)
潤滑を、硬さ800HV、粒径100〜180μmのJIS規格SKH材(高速度工具鋼)の粉末を1L(リットル)あたり0.4g混入させたタービン油VG68の油浴潤滑とする点を除き、(7)と同様の条件下でJIS規格6206型番の玉軸受のL10寿命を調査した。そして、比較例AのL10寿命に対する比で転動疲労寿命を評価した。
(9)玉軸受の転動疲労寿命(準高温清浄油)
潤滑を高温用エーテル油により行なう点、内輪の回転速度を2000rpmとする点および試験温度を200℃とする点を除き、(7)と同様の条件下でJIS規格6206型番の玉軸受のL10寿命を調査した。そして、比較例AのL10寿命に対する比で転動疲労寿命を評価した。
(10)シャルピー衝撃値
JIS規格Z2242に従い、ノッチ深さ2mm、ノッチ底半径1mmのUノッチを形成した試験片を用いてシャルピー衝撃試験を実施した。そして、比較例Aの衝撃値に対する比でシャルピー衝撃値を評価した。
(11)破壊靱性値(KIC
JIS規格G0564に従い、平面ひずみ破壊靱性試験を実施した。破壊靱性値(KIC)は以下の式により算出した。
Figure 2009235444
そして、比較例Aの破壊靱性値に対する比で破壊靱性値を評価した。
次に、試験結果について説明する。上記(1)〜(11)の試験結果を表1に示す。
Figure 2009235444
(1)硬度
表1を参照して、実施例の硬度は58.5HRCとなっており、比較例Aと遜色ない硬度となっている。一方、比較例BおよびCは、実施例および比較例Aに比べて明確に低硬度となっている。また、実施例および比較例Bの測定結果から、窒素を侵入させることにより、ベイナイト組織の硬度レベルが大幅に向上することが確認される。
(2)残留オーステナイト量
表1に示すように、実施例および比較例A〜Cのいずれにおいても、残留オーステナイト量は1%未満となっている。これは、実施例および比較例A〜Cのいずれにおいても、ベイナイト変態あるいは高温焼戻が260℃以上の高温で実施されているため、残留オーステナイトの分解がほぼ完了しているためであると考えられる。
(3)寸法安定性
表1に示すように、実施例および比較例A〜Cのいずれにおいても、寸法変化量は0に近い値となっている。このことから、実施例および比較例A〜Cと同様の構成を有する機械部品は、準高温環境において使用された場合でも、十分な寸法安定性が確保されているといえる。
(4)割れ強度
表1を参照して、比較例BおよびCが同等の強度であったのに対し、比較例Aはこれらの1.5倍、実施例はこれらの1.7倍の強度となっていた。比較例BおよびCと実施例および比較例Aとの割れ強度の差は、硬度の差に起因しているものと考えられる。また、実施例と比較例Aとを比較すると、実施例は比較例Aに比べてやや硬度が低いにもかかわらず、割れ強度が高くなっている。
(5)割れ疲労強度
表1を参照して、比較例BおよびCに比べて、実施例および比較例Aは大幅に高い割れ疲労強度を有していた。これは、硬度の差に起因するものと考えられる。また、実施例と比較例Aとを比較すると、実施例は比較例Aに比べてやや硬度が低いにもかかわらず、割れ強度が高くなっている。
(6)試験片の転動疲労寿命
表1に示すように、実施例の転動疲労寿命は比較例Aの1.5倍となっており、高い耐久性を有していることが確認された。一方、比較例BおよびCにおいては、試験片の表面を起点とした剥離が多発し、実施例および比較例Aに比べて極端に寿命が短くなっていた。これは、比較例BおよびCの試験片の硬度が、実施例および比較例Aに比べて大幅に低かったことに起因していると考えられる。なお、強度および耐久性において比較例BおよびCが実施例および比較例Aを大幅に下回るという(4)〜(6)の結果に鑑み、以下の項目については、比較例BおよびCの評価は行なわず、実施例および比較例Aについてのみ評価した。
(7)玉軸受の転動疲労寿命(清浄油)
表1を参照して、上記(6)の結果と同様に、実施例の転動疲労寿命は比較例Aの1.5倍となっており、高い耐久性を有していることが確認された。
(8)玉軸受の転動疲労寿命(異物混入油)
表1を参照して、実施例の転動疲労寿命は比較例Aの2.1倍となっており、軸受の内部に硬質の異物が侵入する環境下においても高い耐久性を有していることが確認された。
(9)玉軸受の転動疲労寿命(準高温清浄油)
表1を参照して、実施例の転動疲労寿命は比較例Aの1.8倍となっており、準高温環境の下においても高い耐久性を有していることが確認された。
(10)シャルピー衝撃値
表1を参照して、実施例の衝撃値は比較例Aの1.2倍となっていた。
(11)破壊靱性値(KIC
表1を参照して、実施例の破壊靱性値は比較例Aの1.2倍となっており、(10)の結果と合わせて、実施例は比較例Aに比べて靭性においても優れていることが確認された。
以上の実験結果より、本発明の実施例によれば、寸法安定性および靭性を確保しつつ、常温環境だけでなく準高温環境および異物混入環境においても耐久性に優れた機械部品を提供できることが確認された。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の鋼の熱処理方法、機械部品の製造方法、機械部品および転がり軸受は、0.4質量%以上0.7質量%未満の炭素を含有する鋼の熱処理方法、0.4質量%以上0.7質量%未満の炭素を含有する鋼からなる機械部品の製造方法、機械部品および当該機械部品を含む転がり軸受に、特に有利に適用され得る。
本発明の一実施の形態における深溝玉軸受の構成を示す概略断面図である。 図1の要部を拡大して示す概略部分断面図である。 本実施の形態における第1の変形例であるスラストニードルころ軸受の構成を示す概略断面図である。 図3のうち軌道輪の要部を拡大して示す概略部分断面図である。 図3のうちニードルころを拡大して示す概略断面図である。 本実施の形態における第2の変形例である等速ジョイントの構成を示す概略断面図である。 図6の線分VII−VIIに沿う概略断面図である。 図6の等速ジョイントが角度をなした状態を示す概略断面図である。 図6の要部を拡大して示す概略部分断面図である。 図7の要部を拡大して示す概略部分断面図である。 本発明の一実施の形態における機械部品および当該機械部品を備えた機械要素の製造方法の概略を示す図である。 熱処理工程の詳細を説明するための図である。 点接触転動寿命試験機の主要部の構成を示す概略正面図である。 点接触転動寿命試験機の主要部の構成を示す概略側面図である。
符号の説明
1 深溝玉軸受、2 スラストニードルころ軸受、3 等速ジョイント、11 外輪、11A 外輪転走面、11B 外輪窒素富化層、11C,12C,13C 内部、12 内輪、12A 内輪転走面、12B 内輪窒素富化層、13 玉、13A 玉転走面、13B 玉窒素富化層、14,24 保持器、21 軌道輪、21A 軌道輪転走面、21B 軌道輪窒素富化層、21C,23C 内部、23 ニードルころ、23A ころ転走面、23B ころ窒素富化層、31 インナーレース、31A インナーレースボール溝、31B インナーレース窒素富化層、31C,32C,33C 内部、32 アウターレース、32A アウターレースボール溝、32B アウターレース窒素富化層、33 ボール、33A ボール転走面、33B ボール窒素富化層、34 ケージ、35,36 軸、90 点接触転動寿命試験機、91 φ12試験片、92 駆動ローラ、93 案内ローラ、94 鋼球。

Claims (9)

  1. 0.4質量%以上0.7質量%未満の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.6質量%以上1.3質量%以下のマンガンとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼を準備する工程と、
    前記鋼を、A点以上の温度において浸炭窒化することにより、前記鋼の表面を含む領域に内部よりも窒素濃度が高い層である窒素富化層を形成する工程と、
    前記鋼を、前記窒素富化層のM点を超え、前記M点よりも50℃高い温度以下の温度に保持することにより、前記窒素富化層の残留オーステナイト量が5体積%以下となるように前記窒素富化層をベイナイト変態させる工程とを備えた、鋼の熱処理方法。
  2. 0.4質量%以上0.7質量%未満の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.6質量%以上1.3質量%以下のマンガンとを含有し、さらに0.5質量%以下のクロムおよび0.5質量%以下のモリブデンのうち少なくともいずれか一方を含み、残部鉄および不純物からなる鋼を準備する工程と、
    前記鋼を、A点以上の温度において浸炭窒化することにより、前記鋼の表面を含む領域に内部よりも窒素濃度が高い層である窒素富化層を形成する工程と、
    前記鋼を、前記窒素富化層のM点を超え、前記M点よりも50℃高い温度以下の温度に保持することにより、前記窒素富化層の残留オーステナイト量が5体積%以下となるように前記窒素富化層をベイナイト変態させる工程とを備えた、鋼の熱処理方法。
  3. 鋼からなり、機械部品の概略形状に成形された鋼部材を準備する工程と、
    前記鋼部材に対して熱処理を実施する工程とを備え、
    前記熱処理は、請求項1または2に記載の鋼の熱処理方法を用いて実施される、機械部品の製造方法。
  4. 請求項3に記載の機械部品の製造方法により製造された、機械部品。
  5. 0.4質量%以上0.7質量%未満の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.6質量%以上1.3質量%以下のマンガンとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼から構成され、
    表面を含む領域には、内部よりも窒素濃度が高い層である窒素富化層が形成され、
    前記窒素富化層は、ベイナイト組織を含み、残留オーステナイト量が5体積%以下に抑制されている、機械部品。
  6. 0.4質量%以上0.7質量%未満の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.6質量%以上1.3質量%以下のマンガンとを含有し、さらに0.5質量%以下のクロムおよび0.5質量%以下のモリブデンのうち少なくともいずれか一方を含み、残部鉄および不純物からなる鋼から構成され、
    表面を含む領域には、内部よりも窒素濃度が高い層である窒素富化層が形成され、
    前記窒素富化層は、ベイナイト組織を含み、残留オーステナイト量が5体積%以下に抑制されている、機械部品。
  7. 前記窒素富化層は、0.8質量%以上1.2質量%以下の炭素と、0.1質量%以上0.8質量%以下の窒素とを含んでいる、請求項5または6に記載の機械部品。
  8. 軸受を構成する部品として用いられる、請求項4〜7のいずれか1項に記載の機械部品。
  9. 軌道部材と、
    前記軌道部材に接触し、円環状の軌道上に配置される複数の転動体とを備え、
    前記軌道部材および前記転動体の少なくともいずれか一方は、請求項8に記載の機械部品である、転がり軸受。
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