JP2007182607A - 等速ジョイント用転動部材の製造方法、等速ジョイント用転動部材および等速ジョイント - Google Patents

等速ジョイント用転動部材の製造方法、等速ジョイント用転動部材および等速ジョイント Download PDF

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Abstract

【課題】過酷な環境下での耐久寿命を向上させた等速ジョイント用転動部材、過酷な環境下でも長寿命な等速ジョイントおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】等速ジョイント用転動部材の製造方法は、鋼製部材準備工程と、浸炭または浸炭窒化焼入工程と、高周波焼入工程と、仕上げ工程とを備える。鋼製部材準備工程では、鋼からなり、等速ジョイント用転動部材の概略形状に成形された鋼製部材が準備される。浸炭または浸炭窒化焼入工程では、鋼製部材に対して浸炭または浸炭窒化が実施された後、鋼製部材が焼入硬化される。高周波焼入工程では、等速ジョイント用転動部材の転走面となる部分を含む領域がさらに焼入硬化されて、転走面となるべき面からの深さが0.3mm以下の領域における残留オーステナイト量が50体積%以上70体積%以下とされる。仕上げ工程では、鋼製部材に対して仕上げ加工が実施される。
【選択図】図6

Description

本発明は等速ジョイント用転動部材の製造方法、等速ジョイント用転動部材および等速ジョイントに関し、より特定的には、過酷な環境下においても長寿命な等速ジョイント用転動部材の製造方法、等速ジョイント用転動部材および等速ジョイントに関するものである。
近年、等速ジョイントが使用される産業機械、輸送機械などの高性能化に伴い、等速ジョイントに負荷される荷重や回転数は増大する傾向にある。また、等速ジョイントは小型化および軽量化が進められており、等速ジョイントが使用される環境は一層過酷になっている。そのため、等速ジョイントを構成する軌道部材、転動体などの等速ジョイント用転動部材に対しては、さらなる耐久寿命の長寿命化、特に過酷な環境下における長寿命化が求められている。
等速ジョイントは、一方の軸に伝達された回転などの動力が、軌道部材、転動体などの等速ジョイント用転動部材を介して他方の軸に等速で伝達される機能を備えている。ここで、等速ジョイントが動作する際、動力の伝達を担う等速ジョイント用転動部材には、揺動荷重が繰り返し負荷される。その際、等速ジョイントにおいては、その構造上、等速ジョイント用転動部材同士の間においてすべりが発生しやすい。そのため、等速ジョイント用転動部材はすべりを伴った疲労を受ける場合が多い。したがって、等速ジョイント用転動部材に対しては、等速ジョイント用転動部材同士が接触する表面である転走面およびその直下の領域における耐摩耗性(すべりを伴った転動疲労寿命)、転動疲労寿命などの向上が求められている。
これに対し、転動部材の表層部の残留オーステナイト量や表面硬さ等を所定範囲に制御することにより、転動部材の転動疲労寿命を長寿命化させる提案がなされている。(たとえば特許文献1〜5参照)。
特開2005−90693号公報 特開2004−144279号公報 特開2003−343577号公報 特開2000−234147号公報 特開平11−101247号公報
しかし、最近の等速ジョイントに対する要求特性は更に厳しくなっており、上述のような耐久寿命向上の対策は、必ずしも十分とはいえない。また、等速ジョイントが使用される産業機械、輸送機械などの価格競争力を向上させるため、等速ジョイントに対しても、低コスト化の要求がある。そのため、たとえば等速ジョイントを構成する素材を高価な素材に変更することによる長寿命化は、前述の低コスト化の要求に反するものとなる。
そこで、本発明の目的は、製造コストの上昇を抑制しつつ、過酷な環境下における耐摩耗性および転動疲労寿命を向上させることにより耐久寿命を向上させた等速ジョイント用転動部材、過酷な環境下においても長寿命な等速ジョイントおよびその製造方法を提供することである。
本発明の等速ジョイント用転動部材の製造方法は、鋼製部材準備工程と、焼入硬化工程と、部分焼入硬化工程と、仕上げ工程とを備えている。鋼製部材準備工程では、鋼からなり、等速ジョイント用転動部材の概略形状に成形された鋼製部材が準備される。焼入硬化工程では、鋼製部材に対して浸炭または浸炭窒化が実施された後、当該鋼製部材が焼入硬化される。さらに、部分焼入硬化工程では、焼入硬化工程において焼入硬化された鋼製部材の一部の領域である、等速ジョイント用転動部材の転走面となる部分を含む領域としての転走領域がさらに焼入硬化されることにより、転走面となるべき面からの深さが0.3mm以下の鋼製部材の領域における残留オーステナイト量が50体積%以上70体積%以下とされる。仕上げ工程では、部分焼入硬化工程において転走領域が焼入硬化された鋼製部材に対して仕上げ加工が実施されることにより、等速ジョイント用転動部材が完成する。
残留オーステナイトは、転動体と軌道部材との間においてすべりが発生する転がりすべり環境や、潤滑油中に硬質の異物が混入する異物混入環境などの過酷な環境において使用される転動部材中に適量存在することにより、当該転動部材の転動疲労寿命を向上させる機能を有する。
転動部材の表層部における残留オーステナイト量は、浸炭または浸炭窒化などの熱処理により表層部における炭素濃度、または炭素濃度および窒素濃度を増加させた後、焼入を実施することにより増加させることができる。一般的条件で浸炭または浸炭窒化を実施した場合、鋼からなる転動部材の表層部における残留オーステナイト量は、最大40体積%程度であり、それ以上の残留オーステナイト量を得るためには、浸炭温度を高くしたり、浸炭時間を長くしたりする等の特殊な浸炭条件または浸炭窒化条件等を採用する必要がある。そのため、残留オーステナイト量を増加させる条件で浸炭または浸炭窒化を実施すれば、転動部材の製造コストが上昇する。
これに対し、本発明者は、等速ジョイント用転動部材における残留オーステナイト量を容易に増加させる方法について鋭意検討を行なった。その結果、以下の方法により等速ジョイント用転動部材の表層部のうち必要な部位、たとえば等速ジョイント用転動部材の耐摩耗性および転動疲労強度に大きな影響を及ぼす転走面からの深さが0.3mm以下の領域における残留オーステナイト量を容易に増加させることが可能であることが明らかとなった。
すなわち、まず、浸炭または浸炭窒化を実施することにより等速ジョイント用転動部材の表層部における炭素量、または炭素量および窒素量を増加させる。そして、等速ジョイント用転動部材の転走面となる部分を含む領域としての転走領域を再加熱することにより、当該領域に他の元素と化合した析出物として存在する炭素および窒素を鋼組織中に固溶させた上で、急冷することにより焼入硬化を実施する。これにより、容易に転走面となるべき面からの深さが0.3mm以下の領域における残留オーステナイト量を50体積%以上70体積%以下に上昇させることができる。すなわち、本発明の等速ジョイント用転動部材の製造方法によれば、容易に、かつ製造コストの上昇を抑制しつつ、転走面からの深さが0.3mm以下の領域における残留オーステナイト量の多い、具体的には残留オーステナイト量が50体積%以上70体積%以下の等速ジョイント用転動部材を製造することができる。
上記等速ジョイント用転動部材の製造方法において好ましくは、仕上げ工程では、仕上げ工程が実施されて完成した等速ジョイント用転動部材において、転走面からの深さが0.3mm以下の領域における残留オーステナイト量が50体積%以上70体積%以下となり、転走面からの深さが0.05mm以上0.1mm以下の領域における圧縮応力が250MPa以上となり、等速ジョイント用転動部材の表面からの深さが1mm以上の領域における残留オーステナイト量が10体積%以下となるように、仕上げ加工が実施される。
上述のように、残留オーステナイトは、等速ジョイント用転動部材の転動疲労寿命を向上させる機能を有する。一方、残留オーステナイトは、等速ジョイント用転動部材の使用中において、経時的にマルテンサイトに変態する。そして、当該変態は体積変化を伴うため、残留オーステナイトは、等速ジョイント用転動部材の寸法安定性を悪化させる原因となり、等速ジョイント用転動部材の耐久寿命に悪影響を及ぼすおそれがある。また、残留オーステナイトはマルテンサイトに比べて硬度が低いため、残留オーステナイトが多くなりすぎると、等速ジョイント用転動部材に必要な硬度が得られず、等速ジョイント用転動部材の転動疲労寿命や耐摩耗性が低下して、耐久寿命が短寿命化するおそれもある。
本発明者は、等速ジョイント用転動部材の残留オーステナイト量、圧縮応力、経時寸法変化および硬度と耐久寿命との関係を詳細に検討したところ、以下のような知見を得た。すなわち、等速ジョイント用転動部材において、転走面からの深さが0.3mm以下の領域における残留オーステナイト量を極めて多い状態、具体的には50体積%以上70体積%以下とすることにより、等速ジョイント用転動部材の使用中に転走面の近傍において、比較的硬度の低い残留オーステナイトが塑性変形する。この塑性変形により、転走面は、負荷される応力が緩和されるように変形するとともに、当該変形に誘起されて残留オーステナイトがマルテンサイトに変態する。その結果、当該変形部分の硬度が上昇し、かつ転走面付近に圧縮応力が生じるため、耐摩耗性および転動疲労寿命が向上し、等速ジョイント用転動部材の耐久寿命が向上する(残留オーステナイトの自己強化能)。特に、転走面のうち負荷応力の高い領域、たとえばエッジロードの生じる領域においては、上記効果が顕著となる。そのため、転走面に負荷応力の高い領域が生じるような等速ジョイント用転動部材において、耐久寿命向上の効果が大きい。
また、転走面からの深さが0.05mm以上0.1mm以下の領域における圧縮応力を250MPa以上とすることにより、等速ジョイント用転動部材の転動疲労寿命が向上する。すなわち、一般に、等速ジョイント用転動部材の仕上げ工程において転走面に対して実施される研削、研磨などの仕上げ加工の影響により、転走面には圧縮応力が生じる場合がある。しかし、転走面(表面)だけでなく、転走面からの深さが0.05mm以上0.1mm以下の領域における圧縮応力が等速ジョイント用転動部材の転動疲労寿命に大きな影響を及ぼし、当該領域における圧縮応力を250MPa以上とすることにより、転動疲労寿命が大幅に向上する。これは、転走面(表面)だけでなく、転走面直下の領域における、転動疲労による亀裂の発生および伝播が抑制されるためであると考えられる。
さらに、等速ジョイント用転動部材の表面からの深さが1mm以上の領域における残留オーステナイト量を10体積%以下とすることにより、硬度の低い残留オーステナイト量が芯部において抑制され、等速ジョイント用転動部材全体として十分な剛性が確保される。また、等速ジョイント用転動部材の芯部における、変態による体積変化を抑制することにより、等速ジョイント用転動部材全体としての経時寸法変化を抑制することができる。
ここで、転走面からの深さが0.3mm以下の領域における残留オーステナイト量が50体積%未満では、上記残留オーステナイトの自己強化能が十分ではなく、70体積%を超えると残留オーステナイトの塑性変形およびマルテンサイトへの変態に起因して、転走面の十分な精度の確保が困難となる。そのため、転走面からの深さが0.3mm以下の領域における残留オーステナイト量は上述のように50体積%以上70体積%以下とすることが好ましい。また、特に過酷な条件下で使用される等速ジョイント用転動部材においては、上記残留オーステナイト量は60体積%以上70体積%以下とすることが、より好ましい。
さらに、上記等速ジョイント用転動部材の製造方法において、残留オーステナイト量が50体積%以上70体積%以下となる領域が転走面からの深さが0.3mm以下の転走面表層領域に限定され、転走面表層領域を除く表面領域での表面からの深さが1mm未満の領域の残留オーステナイト量が40体積%以下となるように、仕上げ工程が実施されてもよい。
これにより、転動疲労寿命および耐摩耗性に大きな影響を与える転走面表層領域において必要十分な残留オーステナイト量を確保して、前述の残留オーステナイトの自己強化能を発揮させることができる。一方、残留オーステナイト量の非常に多い領域を転走面表層領域のみに限定し、転走面表層領域を除く表面領域での表面からの深さが1mm未満の領域における残留オーステナイト量を抑制することにより、等速ジョイント用転動部材全体の経時寸法変化を実用上十分な範囲に抑制することができる。その結果、等速ジョイント用転動部材の耐久寿命を一層向上させることができる。より寸法安定性を向上させるためには、転走面表層領域を除く表面領域での表面からの深さが1mm未満の領域における残留オーステナイト量を30体積%以下とすることが好ましい。
なお、本発明の等速ジョイント用転動部材の製造方法によれば、部分焼入硬化工程において転走面となるべき面からの深さが0.3mm以下の領域における残留オーステナイト量が50体積%以上70体積%以下とされている。したがって、仕上げ工程における研削、研磨などの仕上げ加工による加工誘起変態等により、残留オーステナイト量を50体積%未満に低下させないことにより、表面から所定の深さまで上述の残留オーステナイト量50体積%以上70体積%以下の条件を満たすことができる。
また、等速ジョイント用転動部材の表面では加工誘起変態により残留オーステナイト量が50体積%以下になる場合があるが、その場合でも加工の影響がなくなる領域である表面からの深さが50μmの領域において50体積%以上の残留オーステナイトがあればよい。すなわち、転走面となるべき面からの深さが0.3mm以下の領域全体として、残留オーステナイト量が50体積%以上70体積%以下となっていれば、上記残留オーステナイト量の条件は満たされる。
また、仕上げ工程における研削、研磨などの仕上げ加工の条件を調整することにより、上述の圧縮応力の条件を満たすことができる。さらに、等速ジョイント用転動部材の素材として炭素鋼、浸炭鋼、軸受鋼などを選択し、焼入硬化工程における浸炭または浸炭窒化の条件を適切に設定することにより、上述の等速ジョイント用転動部材の表面からの深さが1mm以上の領域における残留オーステナイト量を10体積%以下とする、との条件を満たすことができる。上記残留オーステナイト量および圧縮応力の条件を満たすための製造条件は、等速ジョイント用転動部材の大きさ、形状等を考慮して、実験的に決定することができる。
本発明の等速ジョイント用転動部材の製造方法において好ましくは、部分焼入硬化工程よりも後であって、仕上げ工程よりも前に、部分焼入硬化工程において転走領域が焼入硬化された鋼製部材の一部である転走面となる部分に対して、塑性加工を実施する部分塑性加工工程をさらに備えている。
これにより、等速ジョイント用転動部材の使用により、転走面が十分な塑性変形を受けない用途においても、予め塑性加工を施しておくことにより、残留オーステナイトの自己強化能の発揮を補助し、等速ジョイント用転動部材の耐久寿命を向上させることができる。
本発明の等速ジョイント用転動部材の製造方法において好ましくは、仕上げ工程では、仕上げ工程が実施されて完成した等速ジョイント用転動部材において、転走面からの深さが0.05mm以上0.1mm以下の領域における圧縮応力が500MPa以上となり、等速ジョイント用転動部材の表面からの深さが1mm以上の領域における残留オーステナイト量が10体積%以下となるように、仕上げ加工が実施される。
転走面からの深さが0.05mm以上0.1mm以下の領域における圧縮応力が500MPa以上とされることにより、転動疲労による亀裂の発生および伝播が抑制され、等速ジョイント用転動部材の転動疲労寿命を向上させることができる。また、芯部の残留オーステナイト量を抑制することにより、等速ジョイント用転動部材全体としての剛性および寸法安定性を確保することができる。
なお、上記圧縮応力の条件は、上述のように部分塑性加工工程を適切な条件で実施した上で、研削、研磨などの仕上げ加工の条件を適切に選択することにより、すなわち実験的に最適な条件を決定することにより、達成することができる。また、上述の等速ジョイント用転動部材の表面からの深さが1mm以上の領域における残留オーステナイト量を10体積%以下とする、との条件は、等速ジョイント用転動部材の素材の選択、焼入硬化工程における浸炭または浸炭窒化の条件の適正化により、達成することができる。
本発明の等速ジョイント用転動部材の製造方法において好ましくは、部分焼入硬化工程における加熱は、誘導加熱により実施される。部分加熱が比較的容易な誘導加熱、たとえば高周波加熱を部分焼入硬化工程における加熱方法に採用することにより、比較的容易に等速ジョイント用転動部材の転走面となる部分の近傍のみを加熱して焼入を実施することができる。
本発明の一の局面における等速ジョイント用転動部材は、上述の等速ジョイント用転動部材の製造方法により製造されている。上述の等速ジョイント用転動部材の製造方法により製造されることにより、製造コストの上昇が抑制されつつ、過酷な環境下における耐久寿命が向上した等速ジョイント用転動部材を提供することができる。
本発明の一の局面における等速ジョイントは、軌道部材と、軌道部材に接触して配置される複数の転動体とを備えている。そして、当該軌道部材および転動体の少なくともいずれか一方は、上述の等速ジョイント用転動部材である。
本発明の一の局面における等速ジョイントによれば、上述の優れた特性を有する等速ジョイント用転動部材を備えているため、製造コストの上昇が抑制されつつ、過酷な環境下においても長寿命な等速ジョイントを提供することができる。
本発明の他の局面における等速ジョイント用転動部材は、等速ジョイント用転動部材において、他の等速ジョイント用転動部材と接触する表面である転走面からの深さが0.3mm以下の領域における残留オーステナイト量が50体積%以上70体積%以下であり、転走面からの深さが0.05mm以上0.1mm以下の領域における圧縮応力が250MPa以上であり、表面からの深さが1mm以上の領域における残留オーステナイト量が10体積%以下である。
上述のように、残留オーステナイトは、等速ジョイント用転動部材の転動疲労寿命を向上させる機能を有する一方で、寸法安定性の悪化や硬度低下の原因となる。本発明の等速ジョイント用転動部材によれば、転走面からの深さが0.3mm以下の領域における残留オーステナイト量を50体積%以上70体積%以下とすることにより、残留オーステナイトの自己強化能を活用し、等速ジョイント用転動部材の耐久寿命を向上させることができる。特に、転走面に負荷応力の高い領域が生じるような等速ジョイント用転動部材において、耐久寿命向上の効果が大きい。
なお、転走面直下の領域における残留オーステナイト量が50体積%未満となっている場合でも、転走面となるべき面からの深さが0.3mm以下の領域全体として、残留オーステナイト量が50体積%以上70体積%以下となっていれば、上記残留オーステナイト量の条件は満たされる。また、転走面からの深さが0.05mm以上0.1mm以下の領域における圧縮応力を250MPa以上とすることにより、等速ジョイント用転動部材の転動疲労寿命が向上する。さらに、等速ジョイント用転動部材の表面からの深さが1mm以上の領域における残留オーステナイト量を10体積%以下とすることにより、等速ジョイント用転動部材全体としての剛性が確保されるとともに、経時寸法変化を抑制することができる。
ここで、転走面からの深さが0.3mm以下の領域における残留オーステナイト量が50体積%未満では、上記残留オーステナイトの自己強化が十分ではなく、70体積%を超えると転走面の十分な精度の確保が困難となる。そのため、転走面からの深さが0.3mm以下の領域における残留オーステナイト量は上述のように50体積%以上70体積%以下とすることが好ましい。
さらに、上記等速ジョイント用転動部材において、残留オーステナイト量が50体積%以上70体積%以下となる領域が転走面からの深さが0.3mm以下の転走面表層領域に限定され、転走面表層領域を除く表面領域での表面からの深さが1mm未満の領域の残留オーステナイト量が40体積%以下とされてもよい。
これにより、耐久寿命に大きな影響を与える転走面表層領域において必要十分な残留オーステナイト量を確保して、前述の残留オーステナイトの自己強化能を発揮させることができる。一方、残留オーステナイト量の非常に多い領域を転走面表層領域のみに限定し、転走面表層領域を除く表面領域での表面からの深さが1mm未満の領域における残留オーステナイト量を抑制することにより、等速ジョイント用転動部材全体の経時寸法変化を実用上十分な範囲に抑制することができる。その結果、等速ジョイント用転動部材の耐久寿命を一層向上させることができる。より寸法安定性を向上させるためには、転走面表層領域を除く表面領域での表面からの深さが1mm未満の領域における残留オーステナイト量を30体積%以下とすることが好ましい。
本発明の他の局面における等速ジョイントは、軌道部材と、軌道部材に接触して配置される複数の転動体とを備えている。そして、軌道部材および転動体の少なくともいずれか一方は、上述の本発明の他の局面における等速ジョイント用転動部材である。
本発明の他の局面における等速ジョイントによれば、上述の優れた特性を有する等速ジョイント用転動部材を備えているため、過酷な環境下においても長寿命な等速ジョイントを提供することができる。
ここで、残留オーステナイト量の測定は、たとえばX線回折計(XRD)を用いて、マルテンサイトα(211)面とオーステナイトγ(220)面との回折強度とを測定することにより、算出することができる。また、圧縮応力の測定は、たとえばX線応力測定装置により転走面に平行な方向の応力を簡単に測定することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の等速ジョイント用転動部材および等速ジョイントの製造方法によれば、製造コストの上昇を抑制しつつ、過酷な環境下における耐久寿命を向上させた等速ジョイント用転動部材および過酷な環境下においても長寿命な等速ジョイントを製造することができる。また、本発明の等速ジョイント用転動部材および等速ジョイントによれば、過酷な環境下における耐久寿命を向上させた等速ジョイント用転動部材および過酷な環境下においても長寿命な等速ジョイントを提供することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態である実施の形態1の等速ジョイントとしての固定ジョイントの構成を示す概略断面図である。また、図2は、図1の線分II−IIに沿う概略断面図である。また、図3は、図1の固定ジョイントが角度をなした状態を示す概略断面図である。なお、図1は、図2の線分I−Iに沿う概略断面図に対応する。図1〜図3を参照して、本発明の一実施の形態における等速ジョイントとしての固定ジョイントについて説明する。
図1を参照して、実施の形態1の固定ジョイント1は、軸15に連結された軌道部材としてのインナーレース11と、インナーレース11の外周側を囲むように配置され、軸16に連結された軌道部材としてのアウターレース12と、インナーレース11とアウターレース12との間に配置されたトルク伝達用の転動体としてのボール13と、ボール13を保持するケージ14とを備えている。ボール13は、インナーレース11の外周面に形成されたインナーレースボール溝11Eと、アウターレース12の内周面に形成されたアウターレースボール溝12Eとに接触して配置され、脱落しないようにケージ14によって保持されている。
インナーレース11の外周面およびアウターレース12の内周面のそれぞれに形成されたインナーレースボール溝11Eとアウターレースボール溝12Eとは、図1に示すように、軸15および軸16の中央を通る軸が一直線上にある状態において、それぞれ当該軸上のジョイント中心Oから当該軸上の左右に等距離離れた点Aおよび点Bを曲率中心とする曲線(円弧)状に形成されている。すなわち、インナーレースボール溝11Eおよびアウターレースボール溝12Eに接触して転動するボール13の中心Pの軌跡が、点A(インナーレース中心A)および点B(アウターレース中心B)に曲率中心を有する曲線(円弧)となるように、インナーレースボール溝11Eおよびアウターレースボール溝12Eのそれぞれは形成されている。これにより、固定ジョイントが角度をなした場合(軸15および軸16の中央を通る軸が交差するように固定ジョイントが動作した場合)においても、ボール13は、常に軸15および軸16の中央を通る軸のなす角(∠AOB)の2等分線上に位置する。
次に、固定ジョイント1の動作について説明する。図1および図2を参照して、固定ジョイント1においては、軸15、16の一方に軸まわりの回転が伝達されると、インナーレースボール溝11Eおよびアウターレースボール溝12Eに嵌め込まれたボール13を介して、軸15、16の他方の軸に当該回転が伝達される。
ここで、図3に示すように軸15、16が角度θをなした場合、ボール13は、前述のインナーレース中心Aおよびアウターレース中心Bに曲率中心を有するインナーレースボール溝11Eおよびアウターレースボール溝12Eに案内されて、中心Pが∠AOBの二等分線上となる位置に保持される。また、ジョイント中心Oからインナーレース中心Aまでの距離と、アウターレース中心Bまでの距離とが等しくなるように、インナーレースボール溝11Eおよびアウターレースボール溝12Eが形成されているため、ボール13の中心Pからインナーレース中心Aおよびアウターレース中心Bまでの距離はそれぞれ等しく、△OAPと△OBPとは合同である。その結果、ボール13の中心Pから軸15、16までの距離Lは互いに等しくなり、軸15、16の一方が軸まわりに回転した場合、他方も等速で回転する。このように、固定ジョイント1は、軸15、16が角度をなした場合でも、等速性を確保することができる。なお、ケージ14は、軸15、16が回転した場合に、インナーレースボール溝11Eおよびアウターレースボール溝12Eからボール13が飛び出すことをインナーレースボール溝11Eおよびアウターレースボール溝12Eとともに防止すると同時に、固定ジョイント1のジョイント中心Oを決定する機能を果たしている。
次に、固定ジョイント1を構成する等速ジョイント用転動部材としてのインナーレース11およびアウターレース12について説明する。図4は、等速ジョイント用転動部材としてのインナーレース11の構成を示す概略断面図である。図4を参照して、等速ジョイント用転動部材としてのインナーレース11は、インナーレース11において、他の等速ジョイント用転動部材である転動体としてのボール13と接触する表面である転走面としてのインナーレース溝表面11Aからの深さが0.3mm以下の領域であるインナーレース溝表層領域11Bにおける残留オーステナイト量が50体積%以上70体積%以下であり、インナーレース溝表面11Aからの深さが0.05mm以上0.1mm以下の領域における圧縮応力が250MPa以上であり、表面からの深さが1mm以上の領域であるインナーレース芯部領域11Dにおける残留オーステナイト量が10体積%以下である。
さらに、実施の形態1のインナーレース11において、残留オーステナイト量が50体積%以上70体積%以下となる領域はインナーレース溝表層領域11Bに限定されており、インナーレース溝表層領域11Bを除く表面領域での表面からの深さが1mm未満の領域であるインナーレース表層部11Cの残留オーステナイト量は40体積%以下とされている。
実施の形態1のインナーレース11によれば、インナーレース溝表層領域11Bにおける残留オーステナイト量を50体積%以上70体積%以下とすることにより、残留オーステナイトの自己強化能を活用し、インナーレース11の耐久寿命を向上させることができる。すなわち、固定ジョイント1が運転されることにより、比較的硬度の低い残留オーステナイトが塑性変形する。この塑性変形により、インナーレース溝表面11Aは、負荷される応力が緩和されるように変形するとともに、当該変形に誘起されて残留オーステナイトがマルテンサイトに変態する。その結果、当該変形部分の硬度が上昇し、かつインナーレース溝表面11A付近に圧縮応力が生じるため、インナーレース11の転動疲労寿命が向上する(残留オーステナイトの自己強化能)。特に、インナーレース溝表面11Aのうち負荷応力の高い領域、たとえばエッジロードの生じる領域においては、上記効果が顕著となり、インナーレース溝表面11Aに負荷応力の高い領域が生じるようなインナーレース11において、転動疲労寿命向上の効果が大きい。
また、実施の形態1のインナーレース11においては、インナーレース溝表面11Aからの深さが0.05mm以上0.1mm以下の領域における圧縮応力が250MPa以上とされることにより、インナーレース11の転動疲労寿命が向上する。すなわち、インナーレース溝表面11Aだけでなく、転動疲労寿命に大きな影響を及ぼすインナーレース溝表面11Aからの深さが0.05mm以上0.1mm以下の領域における圧縮応力を250MPa以上とすることにより、転動疲労寿命が大幅に向上する。なお、固定ジョイント1が運転されることにより、インナーレース溝表面11Aおよびその直下の領域は塑性加工を受け、残留オーステナイトのマルテンサイト変態が進行する。この体積膨張を伴う変態により、インナーレース溝表面11Aからの深さが0.05mm以上0.1mm以下の領域における圧縮応力が一層上昇して転動疲労寿命の向上に寄与する。
さらに、実施の形態1のインナーレース11においては、インナーレース芯部領域11Dにおける残留オーステナイト量が10体積%以下とされることにより、インナーレース11全体として十分な剛性が確保されるとともに、経時寸法変化を抑制することができる。
さらに、実施の形態1のインナーレース11においては、残留オーステナイト量が50体積%以上70体積%以下となる領域はインナーレース溝表層領域11Bに限定されるとともに、インナーレース表層部11Cの残留オーステナイト量は40体積%以下とされている。そのため、転動疲労寿命に大きな影響を与えるインナーレース溝表層領域11Bにおいて必要十分な残留オーステナイトが確保されることにより、残留オーステナイトの自己強化能が発揮されるとともに、インナーレース表層部11Cにおける残留オーステナイト量が抑制されることにより、インナーレース11の十分な寸法安定性と硬度が確保される。その結果、インナーレース11の転動疲労寿命が一層向上している。
次に、固定ジョイント1を構成する軌道部材としてのアウターレース12について説明する。図5は、等速ジョイント用転動部材としてのアウターレース12の構成を示す概略断面図である。図5を参照して、実施の形態1の軌道部材としてのアウターレース12は、基本的には図4に基づいて説明したインナーレース11と同様の構成および効果を有している。すなわち、アウターレース12は、インナーレース11におけるインナーレース溝表面11Aに該当するアウターレース溝表面12A、インナーレース溝表層領域11Bに該当するアウターレース溝表層領域12B、インナーレース表層部11Cに該当するアウターレース表層部12C、インナーレース芯部領域11Dに該当するアウターレース芯部領域12Dを有している。そして、インナーレース11と同様の構成を有していることにより、アウターレース12の耐久寿命は向上している。
次に、実施の形態1における等速ジョイント用転動部材としてのインナーレース11およびアウターレース12、および等速ジョイントとしての固定ジョイント1の製造方法について説明する。図6は実施の形態1におけるインナーレース11、アウターレース12および固定ジョイント1の製造方法の概略を示す図である。図6を参照して、実施の形態1におけるインナーレース11、アウターレース12および固定ジョイント1の製造方法について説明する。
図6を参照して、まず、鋼からなり、インナーレース11またはアウターレース12の概略形状に成形された鋼製部材を準備する鋼製部材準備工程が実施される。具体的には、浸炭鋼、炭素鋼、軸受鋼等の鋼からなる棒鋼などの素材に対して鍛造、旋削などの加工が実施されることにより、図1に示したインナーレース11またはアウターレース12の概略形状に成形された鋼製部材が準備される。
次に、図6を参照して、上記鋼製部材に対して浸炭窒化を実施した後、焼入硬化する焼入硬化工程としての浸炭窒化焼入工程と、浸炭窒化焼入工程において焼入硬化された鋼製部材の一部の領域である、インナーレース11またはアウターレース12の転走面となる部分を含む領域としての転走領域をさらに焼入硬化することにより、転走面となるべき面からの深さが0.3mm以下の鋼製部材の領域における残留オーステナイト量を50体積%以上70体積%以下とする部分焼入硬化工程としての高周波焼入工程とを含む熱処理工程が実施される。この熱処理工程の詳細については後述する。
次に、図6を参照して、仕上げ工程が実施される。具体的には、熱処理工程が実施された鋼製部材に対して研削加工などの仕上げ加工が実施されることにより、インナーレース11またはアウターレース12が仕上げられる。これにより、実施の形態1のインナーレース11またはアウターレース12が完成する。
さらに、図6を参照して、組立て工程が実施される。具体的には、たとえば図1を参照して、インナーレース11およびアウターレース12と、ボール13、ケージ14などとを組み合わせることにより、等速ジョイントとしての固定ジョイント1が組み立てられる。
次に、熱処理工程について詳細に説明する。図7は実施の形態1における等速ジョイント用転動部材としてのインナーレース、アウターレースおよび等速ジョイントとしての固定ジョイントの製造方法に含まれるインナーレースおよびアウターレースの熱処理工程の詳細を説明するための図である。図7において、横方向は時間を示しており右に行くほど時間が経過していることを示している。また、図7において、縦方向は温度を示しており上に行くほど温度が高いことを示している。図7を参照して、実施の形態1の鋼製部材に対して実施される熱処理工程の詳細を説明する。
図7を参照して、鋼製部材準備工程において準備された鋼製部材はA点以上の温度である800℃以上900℃以下の温度、たとえば850℃に加熱され、30分間以上300分間以下の時間、たとえば120分間保持される。このとき、RXガスおよびエンリッチガスにアンモニア(NH)を添加した雰囲気において加熱されることにより、鋼製部材の表層部の炭素濃度および窒素濃度が所望の濃度に調整される。その後、鋼製部材が、たとえば100℃の油中に浸漬されることにより(油冷)、A点以上の温度からM点以下の温度に冷却される。以上のように、鋼製部材が焼入硬化される浸炭窒化焼入工程が実施される。
この浸炭窒化焼入工程において、インナーレース表層部11Cおよびアウターレース表層部12Cの残留オーステナイト量が15体積%以上40体積%以下、より好ましくは15体積%以上30体積%以下となり、かつインナーレース芯部領域11Dおよびアウターレース芯部領域12Dの残留オーステナイト量が10体積%以下となるように、鋼製部材の表層部の炭素濃度および窒素濃度が調整される。なお、インナーレース表層部11Cおよびアウターレース表層部12Cの残留オーステナイト量は、少ないほど寸法安定性に優れるため40体積%以下、好ましくは30体積%以下であるが、後述する高周波焼入工程においてインナーレース溝表層領域11Bおよびアウターレース溝表層領域12Bの残留オーステナイト量を50体積%以上とするためには、15体積%以上であることが好ましい。
ここで、A点とは鋼を加熱した場合に、鋼の組織がフェライトからオーステナイトに変態を開始する温度に相当する点をいう。また、M点とはオーステナイト化した鋼が冷却される際に、マルテンサイト化を開始する温度に相当する点をいう。
さらに、焼入硬化された鋼製部材はA点以下の温度である150℃以上700℃以下の温度、たとえば180℃に加熱され、30分間以上200分間以下の時間、たとえば120分間保持されて、その後室温の空気中で冷却される(空冷)。これにより、第1の焼戻工程が完了する。ここで、針状ころ軸受用軌道部材の剛性を重視する場合、焼戻による大幅な硬度の低下を回避するため、上記焼戻の温度は150℃以上250℃以下とすることが好ましい。また、第1の焼戻工程よりも後に転走領域以外の領域に対してかしめ加工などの塑性加工が実施される場合、加工の容易性を重視して、上記焼戻の温度は500℃以上700℃以下とすることが好ましい。
次に、図7を参照して、第1の焼戻工程が完了した鋼製部材に対しては、インナーレース溝表層領域11Bおよびアウターレース溝表層領域12Bを含む領域を高周波加熱により、A点以上の温度である800℃以上1000℃以下の温度に加熱し、0.1秒間以上3秒間以下の時間、たとえば0.5秒間保持した後、水を吹き付けることにより冷却する高周波焼入工程が実施される。高周波加熱は、周波数および出力を調整することにより、比較的容易に目的の部位のみを局所的に加熱することが可能である。そのため、高周波加熱は本発明の製造方法における部分焼入硬化工程における加熱方法として好適である。
なお、所望の熱処理を実施するためには、上述の周波数、出力、加熱時間等を調整することにより、最適な加熱条件を実験的に決定することができる。特に本方法では、表層の浅い領域のみに残留オーステナイトを多くする必要があるので、被処理物を局部的に高温にすることが可能な高い周波数、たとえば100kHz以上150kHz以下での短時間、たとえば0.1秒以上1秒以下の加熱が望ましい。この高周波焼入工程において、インナーレース溝表層領域11Bおよびアウターレース溝表層領域12Bとなる領域の炭化物等が固溶することにより、M点が低下して当該領域の残留オーステナイト量を50体積%以上70体積%以下とすることが可能になる。また、当該領域におけるM点が芯部領域に比べて低くなるため、インナーレース溝表面11Aおよびアウターレース溝表面12Aからの深さが0.05mm以上0.1mm以下の領域における圧縮応力を250MPa以上とすることが可能となる。その後、第1の焼戻工程と同様の条件で第2の焼戻工程が実施される。
以上の手順により、実施の形態1における等速ジョイント用転動部材としてのインナーレースおよびアウターレース、および等速ジョイントとしての固定ジョイントの製造方法に含まれるインナーレースおよびアウターレースの熱処理工程は完了する。当該熱処理工程を含む固定ジョイントの製造方法により、実施の形態1のインナーレースおよびアウターレース、および固定ジョイントを製造することができる。
(実施の形態2)
図8は、本発明の一実施の形態である実施の形態2の等速ジョイント用転動部材を備えた等速ジョイントとしてのトリポードジョイントの構成を示す概略断面図である。また、図9は、図8の線分IX−IXに沿う概略断面図である。図8および図9を参照して、本発明の実施の形態2における等速ジョイント用転動部材を備えた等速ジョイントとしてのトリポードジョイントの構成について説明する。
図8および図9を参照して、実施の形態2のトリポードジョイント2と、実施の形態1の固定ジョイント1とは、基本的に同様の構成を有しており、同様の効果を有しているが、軌道部材および転動体の構成が異なっている。すなわち、トリポードジョイント2は、同一平面上の3つの方向に延びるトリポード軸211を有し、軸25に接続されたトリポード21と、トリポード21を囲むように配置され、軸26に接続された等速ジョイント用転動部材としてのアウターレース22と、トリポード軸211にニードルころ29を介して転動自在に取り付けられ、球面状の外周面がアウターレース22の内周面に形成されたアウターレース溝22Eに接触するように配置された環状の球面ローラ23とを備えている。
以上の構成により、トリポードジョイント2においては、軸25、26の一方に軸まわりの回転が伝達されると、トリポード21、アウターレース22および球面ローラ23を介して、軸25、26の他方の軸に当該回転が等速に伝達されるとともに、軸25、26は、軸25、26の中央を通る軸方向に互いに相対的に移動することができる。
次に、トリポードジョイント2が備えるトリポード21、アウターレース22および球面ローラ23の構成について説明する。図10は、実施の形態2におけるトリポードジョイントが備えるトリポードの構成を示す概略断面図である。また、図11は、実施の形態2におけるトリポードジョイントが備えるアウターレースの構成を示す概略断面図である。また、図12は、実施の形態2におけるトリポードジョイントが備える球面ローラの構成を示す概略断面図である。
図4〜図5および図10〜図12を参照して、実施の形態2の等速ジョイント用転動部材としてのトリポード21、アウターレース22および球面ローラ23と、実施の形態1のインナーレース11およびアウターレース12とは、基本的に同様の構成および効果を有している。より詳細に説明すると、実施の形態2のトリポード21、アウターレース22および球面ローラ23は、実施の形態1のインナーレース11およびアウターレース12におけるインナーレース溝表面11Aおよびアウターレース溝表面12Aに該当するトリポード転走面21A、アウターレース溝転走面22Aおよび球面ローラ転走面23A、インナーレース溝表層領域11Bおよびアウターレース溝表層領域12Bに該当するトリポード転走面表層領域21B、アウターレース溝表層領域22Bおよび球面ローラ転走面表層領域23B、インナーレース表層部11Cおよびアウターレース表層部12Cに該当するトリポード表層部21C、アウターレース表層部22Cおよび球面ローラ表層部23C、インナーレース芯部領域11Dおよびアウターレース芯部領域12Dに該当するトリポード芯部領域21D、アウターレース芯部領域22Dおよび球面ローラ芯部領域23Dを有している。
トリポード転走面21Aは、トリポード軸211のそれぞれの外周面に形成されている。また、アウターレース溝転走面22Aは、アウターレース22に接続された軸26に垂直な断面におけるアウターレース22の断面において、アウターレースの中央から遠ざかるように3方向に形成されたアウターレース溝22Eのそれぞれの側面に形成されている。また、球面ローラ転走面23Aは、球面ローラ23の内周面および外周面に形成されている。
しかし、実施の形態2のトリポード21、アウターレース22および球面ローラ23と実施の形態1のインナーレース11およびアウターレース12とは製造方法の違いに起因して相違点を有している。以下、実施の形態2のトリポード21、アウターレース22、球面ローラ23およびトリポードジョイント2の製造方法について説明する。
図13は、実施の形態2におけるトリポード、アウターレース、球面ローラおよびトリポードジョイントの製造方法の概略を示す図である。また、図14は実施の形態2におけるトリポード、アウターレース、球面ローラおよびトリポードジョイントの製造方法に含まれるトリポード、アウターレースおよび球面ローラの熱処理工程の詳細を説明するための図である。図14において、横方向は時間を示しており右に行くほど時間が経過していることを示している。また、図14において、縦方向は温度を示しており上に行くほど温度が高いことを示している。図13および図14を参照して、実施の形態2のトリポード、アウターレース、球面ローラおよびトリポードジョイントの製造方法を説明する。
図13を参照して、実施の形態2のトリポード、アウターレース、球面ローラおよびトリポードジョイントの製造方法は、基本的には図6に基づいて説明した実施の形態1のインナーレース、アウターレースおよび固定ジョイントの製造方法と同様の構成を有している。しかし、実施の形態2では、熱処理工程において浸炭窒化焼入工程に代えて浸炭焼入工程が実施される点、および熱処理工程において焼入硬化された鋼製部材の一部である転走面となる部分に対して、塑性加工を実施する部分塑性加工工程としてのショットピーニング工程が実施される点で、実施の形態1とは異なっている。以下、当該相違点について説明する。
図13を参照して、浸炭焼入工程では、図14に示すように、鋼製部材準備工程において準備された鋼製部材がA点以上の温度である900℃以上1000℃以下の温度、たとえば940℃に加熱され、150分間以上600分間以下の時間、たとえば480分間保持される浸炭・拡散工程が実施される。このとき、RXガスを含む浸炭ガスの雰囲気中において加熱されることにより、鋼製部材の表層部の炭素濃度が所望の濃度に調整される。その後、鋼製部材がA点以上の温度である780℃以上880℃以下の温度、たとえば840℃に保持され、たとえば100℃の油中に浸漬されることにより(油冷)、A点以上の温度からM点以下の温度に冷却される焼入工程が実施される。以上のようにして、鋼製部材が焼入硬化される浸炭焼入工程が実施される。この浸炭焼入工程において、トリポード表層部21C、アウターレース表層部22Cおよび球面ローラ表層部23Cの残留オーステナイト量が15体積%以上40体積%以下、より好ましくは15体積%以上30体積%以下となり、かつトリポード芯部領域21D、アウターレース芯部領域22Dおよび球面ローラ芯部領域23Dの残留オーステナイト量が10体積%以下となるように、鋼製部材の表層部の炭素濃度が調整される。
図13を参照して、ショットピーニング工程では、前述のように熱処理工程において焼入硬化された鋼製部材の一部である、トリポード転走面21A、アウターレース溝転走面22Aおよび球面ローラ転走面23Aとなる部分に対して、ショットピーニングが実施されることにより、塑性加工が実施される。これにより、高周波焼入工程において50体積%以上70体積%以下とされたトリポード転走面表層領域21B、アウターレース溝表層領域22Bおよび球面ローラ転走面表層領域23Bの残留オーステナイトの一部がショットピーニングによる塑性加工に誘起されてマルテンサイトに変態する。その結果、残留オーステナイト量が、たとえば25体積%以上45体積%以下に減少するとともに、トリポード転走面21A、アウターレース溝転走面22Aおよび球面ローラ転走面23Aからの深さが0.05mm以上0.1mm以下の領域における圧縮応力が500MPa以上に上昇する。
以上のように、浸炭および部分焼入硬化工程としての高周波焼入と、ショットピーニングなどの塑性加工とを組み合わせることにより、転走面直下に残留オーステナイト量の極めて多い領域を形成した上で、転走面付近を塑性加工することにより、比較的多い残留オーステナイト量を確保しつつ、転走面付近に高い圧縮応力を生じさせることができる。その結果、トリポードジョイント2に負荷される荷重が比較的小さく、トリポードジョイント2の運転によってのみでは、実施の形態1のように残留オーステナイトの自己強化能を十分に活用できない場合であっても、上述のように比較的多い残留オーステナイト量を確保しつつ、転走面付近に高い圧縮応力を生じさせることができる。その結果、トリポードジョイント2の寿命を向上させることができる。
なお、上記実施の形態1および2においては、本発明の等速ジョイントおよび等速ジョイント用転動部材の一例として固定ジョイント、トリポードジョイントおよびこれらが備える転動部材について説明したが、本発明の等速ジョイントおよび等速ジョイント用転動部材はこれらに限られない。たとえば、等速ジョイントは、ダブルオフセットジョイント(DOJ)、フリーリングトリポードジョイント(FTJ)、クロスグルーブジョイント(LJ)などであってもよい。また、本発明の等速ジョイント用転動部材および等速ジョイントの製造方法に含まれる熱処理工程において実施される浸炭工程および浸炭窒化工程は、そのいずれか一方を任意に選択することができる。また、本発明の等速ジョイント用転動部材および等速ジョイントの製造方法においては、ショットピーニングおよびローリング加工などの部分塑性加工工程を実施するか否かは、等速ジョイント用転動部材および等速ジョイントの使用環境、すなわち等速ジョイント用転動部材および等速ジョイントが使用されることによって残留オーステナイトの自己強化能を十分に活用できる使用環境であるか否かにより、決定することができる。
以下、本発明の実施例1について説明する。本発明の等速ジョイントが受ける転動疲労を想定し、本発明の等速ジョイント用軌道部材と同様の製造方法により製造されたころ軸受内輪と本発明の範囲外の製造方法により製造されたころ軸受内輪とについて転動疲労寿命を比較する試験を行なった。試験の手順は以下のとおりである。
まず、試験の対象となる試験片(ころ軸受内輪)の作製方法について説明する。実施例の試験片の作製は、実施の形態1および実施の形態2において説明した等速ジョイント用軌道部材の製造方法と同様の方法により作製した。素材の鋼として、JIS SUJ2およびJIS S53Cを採用した。まず、JIS SUJ2からなる棒鋼およびJIS S53Cからなる棒鋼に対して、旋削加工などを実施することにより、円筒ころ軸受NJ206(外径φ62mm、内径φ30mm、幅16mm)のころ軸受内輪の概略形状を有する鋼製部材を作製した。そして、焼入硬化工程として、JIS SUJ2からなる鋼製部材(実施例1A〜1D)に対しては浸炭窒化焼入、JIS S53Cからなる鋼製部材(実施例1E〜1H)に対しては浸炭焼入を実施した。浸炭窒化焼入は、当該鋼製部材をRXガスに5%のNHを添加した雰囲気中で850℃に加熱し、120分間保持した後、100℃の油中に浸漬することにより実施した。一方、浸炭焼入は、当該鋼製部材をRXガスを含む浸炭ガス雰囲気中で950℃に加熱し、480分間保持した後、850℃に降温し、その後100℃の油中に浸漬することにより実施した。
さらに、焼入硬化工程が実施された鋼製部材に対して当該鋼製部材を180℃に加熱し、120分間保持することにより、第1の焼戻工程を実施した。そして、当該鋼製部材に対して、周波数150kHzの条件で、電流を制御することにより、転走面付近(転走面下1mm程度の領域)を高周波焼入する部分焼入硬化工程を実施した。その後、第1の焼戻工程と同様の条件で第2の焼戻工程を実施した。そして、一部の試験片(実施例1C、1D、1G、1H)に対しては、ショットピーニングを実施することにより部分塑性加工工程を実施した。さらに、転走面の研削加工等の仕上げ加工を実施することにより、実施例の試験片を完成させた。
一方、比較例の試験片の作製は、上記実施例の試験片と基本的には同様の方法で作製した。ただし、比較例の試験片では焼入硬化工程として、光輝熱処理(焼入:850℃で50分間加熱後、100℃の油に浸漬することにより焼入、焼戻し:180℃で120分保持)を採用した試験片も作製した(比較例1A)。また、比較例の試験片に対しては、部分焼入硬化工程は実施されていない。
次に、試験条件について説明する。相手試験片としてのころが試験片であるころ軸受内輪の転走面に接触するようにころおよび内輪をセットし、荷重12.25kN、回転速度2000回転/分、潤滑油はタービンVG56の条件の下で試験片を回転させた。そして、試験片に剥離が生じるまでの時間を試験片寿命とした。そして、各試験片について10個ずつ試験を実施し、得られた試験片寿命を統計的に処理することにより、試験片のうち10%が剥離すると推定される寿命である10%寿命(L10寿命)を算出した。なお、本実験条件における計算寿命は33.5時間である。
Figure 2007182607
表1に実施例1における試験片および試験結果を示す。表1において、残留オーステナイト量および転走面硬度は、試験片の転走面における残留オーステナイト量および硬度を示している。また、表1において、圧縮応力は、転走面下0.05mmの領域における圧縮応力の大きさを示している。
表1を参照して、実施例の試験片のうちショットピーニングを実施していないものについては、残留オーステナイト量が55体積%以上70体積%以下、転走面硬度が450HV以上610HV以下、圧縮応力が280MPa以上420MPa以下となっている。一方、実施例の試験片のうちショットピーニングを実施したものについては、残留オーステナイト量が25体積%以上41体積%以下に低下するとともに、転走面硬度が720HV以上820HV以下、圧縮応力が710MPa以上850MPa以下に上昇している。これは、転走面付近における残留オーステナイトがショットピーニングによる塑性加工の影響によりマルテンサイトに変態したためであると考えられる。そして、ショットピーニングを実施した試験片の寿命は、ショットピーニングを実施しない試験片の寿命に比べて長寿命となる傾向にあることが分かる。
この実施例の試験片の寿命を比較例の試験片の寿命と比較すると、ショットピーニングを実施した試験片およびショットピーニングを実施しない試験片の両方において、同一の鋼種では、実施例の試験片の寿命が比較例の試験片の寿命を上回っている。このことから、本発明の等速ジョイント用転動部材と同様の構成を有する実施例のころ軸受内輪は従来のころ軸受内輪である比較例のころ軸受内輪よりも長寿命であることが確認される。なお、実施例のころ軸受内輪のうち、ショットピーニングを行なわなかったものは転走面近傍領域において残留オーステナイト量が極めて多い状態(50体積%以上)となっているが、転動疲労寿命試験中の残留オーステナイトの塑性変形およびマルテンサイト化に伴う回転の振れの増加は数μm以下であった。これは、残留オーステナイト量が極めて多い領域が転走面近傍領域に限定されているためであると考えられる。したがって、本発明の等速ジョイント用転動部材における残留オーステナイトに起因した寸法安定性の低下は、実用上問題のない範囲であると考えられる。
以下、本発明の実施例2について説明する。本発明の等速ジョイントが受ける転がりすべり疲労を想定し、本発明の等速ジョイント用軌道部材と同様の製造方法により製造されたころ軸受内輪と本発明の範囲外の製造方法により製造されたころ軸受内輪とについて耐転がりすべり疲労強度を比較する試験を行なった。試験の手順は以下のとおりである。
実施例2の実施例および比較例の試験片の作製方法は、実施例1と基本的には同様であるが、試験片の形状は外径φ52mm、厚さ10mmの円盤状である。相手試験片としての直径φ9.525mmの鋼球3個を試験片の主面に接触させて試験片をセットした。そして、揺動数500回/分、揺動量4.48mm、すべり率7.4%、最大接触面圧3.5GPa、潤滑VG10オイルの条件の下ですべりを伴った転動(揺動転動)疲労を試験片に付与し、剥離が発生するまでの時間を寿命として評価するとともに、剥離が発生した時点における試験片の摩耗量を測定して比較例2Aとの比により評価した。なお、摩耗量は、剥離部近傍を表面粗さ計(タリサーフ)により揺動方向と直角方向に形状測定し、摩耗部の断面積を求めることにより測定した。
Figure 2007182607
表2に実施例2における試験片および試験結果を示す。表2を参照して、実施例の試験片は、摩耗量において比較例の試験片よりも多くなる傾向にあるものの、寿命そのものは長くなっている。これは、実施例の試験片は残留オーステナイト量が多く、試験片表面の硬度が低いため、試験開始直後の摩耗量が多くなるが、時間の経過とともに残留オーステナイトの自己強化能が発揮されて長寿命化されたものであると考えられる。
上記実施例1および実施例2の結果より、本発明の実施例の試験片は、比較例に比べて、高面圧が作用する条件下におけるの転動疲労寿命だけでなく、すべりを伴った揺動が作用する転がりすべり疲労寿命においても優れていることが分かる。したがって、同様の構成をすべりを伴った転動疲労を受ける等速ジョイント用転動部材に適用した本発明の等速ジョイント用転動部材は、従来の等速ジョイント用転動部材に比べて耐久寿命に優れていると考えられる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の等速ジョイント用転動部材、等速ジョイントおよびその製造方法は、過酷な環境下で使用される等速ジョイント用転動部材、等速ジョイントおよびその製造方法に特に有利に適用され得る。
実施の形態1の等速ジョイントとしての固定ジョイントの構成を示す概略断面図である。 図1の線分II−IIに沿う概略断面図である。 図1の固定ジョイントが角度をなした状態を示す概略断面図である。 等速ジョイント用転動部材としてのインナーレースの構成を示す概略断面図である。 等速ジョイント用転動部材としてのアウターレースの構成を示す概略断面図である。 実施の形態1におけるインナーレース、アウターレースおよび固定ジョイントの製造方法の概略を示す図である。 実施の形態1における等速ジョイント用転動部材としてのインナーレース、アウターレースおよび等速ジョイントとしての固定ジョイントの製造方法に含まれるインナーレースおよびアウターレースの熱処理工程の詳細を説明するための図である。 実施の形態2の等速ジョイント用転動部材を備えた等速ジョイントとしてのトリポードジョイントの構成を示す概略断面図である。 図8の線分IX−IXに沿う概略断面図である。 実施の形態2におけるトリポードジョイントが備えるトリポードの構成を示す概略断面図である。 実施の形態2におけるトリポードジョイントが備えるアウターレースの構成を示す概略断面図である。 実施の形態2におけるトリポードジョイントが備える球面ローラの構成を示す概略断面図である。 実施の形態2におけるトリポード、アウターレース、球面ローラおよびトリポードジョイントの製造方法の概略を示す図である。 実施の形態2におけるトリポード、アウターレース、球面ローラおよびトリポードジョイントの製造方法に含まれるトリポード、アウターレースおよび球面ローラの熱処理工程の詳細を説明するための図である。
符号の説明
1 固定ジョイント、2 トリポードジョイント、11 インナーレース、11A インナーレース溝表面、11B インナーレース溝表層領域、11C インナーレース表層部、11D インナーレース芯部領域、11E インナーレースボール溝、12,22 アウターレース、12A アウターレース溝表面、12B,22B アウターレース溝表層領域、12C,22C アウターレース表層部、12D,22D アウターレース芯部領域、12E アウターレースボール溝、13 ボール、14 ケージ、15,16,25,26 軸、21 トリポード、211 トリポード軸、21A トリポード転走面、21B トリポード転走面表層領域、21C トリポード表層部、21D トリポード芯部領域、22A アウターレース溝転走面、22E アウターレース溝、23 球面ローラ、23A 球面ローラ転走面、23B 球面ローラ転走面表層領域、23C 球面ローラ表層部、23D 球面ローラ芯部領域、29 ニードルころ。

Claims (8)

  1. 鋼からなり、等速ジョイント用転動部材の概略形状に成形された鋼製部材を準備する鋼製部材準備工程と、
    前記鋼製部材に対して浸炭または浸炭窒化を実施した後、焼入硬化する焼入硬化工程と、
    前記焼入硬化工程において焼入硬化された前記鋼製部材の一部の領域である、前記等速ジョイント用転動部材の転走面となる部分を含む領域としての転走領域をさらに焼入硬化することにより、前記転走面となるべき面からの深さが0.3mm以下の前記鋼製部材の領域における残留オーステナイト量を50体積%以上70体積%以下とする部分焼入硬化工程と、
    前記部分焼入硬化工程において前記転走領域が焼入硬化された前記鋼製部材に対して仕上げ加工を実施することにより、前記等速ジョイント用転動部材を完成させる仕上げ工程とを備えた、等速ジョイント用転動部材の製造方法。
  2. 前記仕上げ工程では、前記仕上げ工程が実施されて完成した前記等速ジョイント用転動部材において、前記転走面からの深さが0.3mm以下の領域における残留オーステナイト量が50体積%以上70体積%以下となり、
    前記転走面からの深さが0.05mm以上0.1mm以下の領域における圧縮応力が250MPa以上となり、
    前記等速ジョイント用転動部材の表面からの深さが1mm以上の領域における残留オーステナイト量が10体積%以下となるように、前記仕上げ加工が実施される、請求項1に記載の等速ジョイント用転動部材の製造方法。
  3. 前記部分焼入硬化工程よりも後であって、前記仕上げ工程よりも前に、前記部分焼入硬化工程において焼入硬化された前記鋼製部材の一部である前記転走面となる部分に対して、塑性加工を実施する部分塑性加工工程をさらに備えた、請求項1に記載の等速ジョイント用転動部材の製造方法。
  4. 前記仕上げ工程では、前記仕上げ工程が実施されて完成した前記等速ジョイント用転動部材において、前記転走面からの深さが0.05mm以上0.1mm以下の領域における圧縮応力が500MPa以上となり、
    前記等速ジョイント用転動部材の表面からの深さが1mm以上の領域における残留オーステナイト量が10体積%以下となるように、前記仕上げ加工が実施される、請求項3に記載の等速ジョイント用転動部材の製造方法。
  5. 前記部分焼入硬化工程における加熱は、誘導加熱により実施される、請求1〜4のいずれか1項に記載の等速ジョイント用転動部材の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の等速ジョイント用転動部材の製造方法により製造された、等速ジョイント用転動部材。
  7. 等速ジョイント用転動部材において、他の等速ジョイント用転動部材と接触する表面である転走面からの深さが0.3mm以下の領域における残留オーステナイト量が50体積%以上70体積%以下であり、
    前記転走面からの深さが0.05mm以上0.1mm以下の領域における圧縮応力が250MPa以上であり、
    表面からの深さが1mm以上の領域における残留オーステナイト量が10体積%以下である、等速ジョイント用転動部材。
  8. 軌道部材と、
    前記軌道部材に接触して配置される複数の転動体とを備え、
    前記軌道部材および前記転動体の少なくともいずれか一方は、請求項6または7に記載の等速ジョイント用転動部材である、等速ジョイント。
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