JP2020050937A - ピニオンピンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】炭化物の量と残留オーステナイトの量とを両立できる技術を提供する。【解決手段】ピニオンピンの製造方法は、鋼材で形成されたピニオンピンを750℃以上かつ950℃以下のピーク温度で加熱する加熱工程と、前記加熱工程において加熱された前記ピニオンピンのうちのピニオンの回転軸方向の中央部を第1冷却速度で冷却し、前記ピニオンピンのうち前記回転軸方向において前記中央部よりも端の部分である端部を前記第1冷却速度よりも遅い第2冷却速度で冷却することにより、前記端部における残留オーステナイトの量を前記中央部よりも大きくする冷却工程と、を含む。【選択図】図2

Description

本発明は、ピニオンピンの製造方法に関する。
ピニオンピンのうち靱性を確保したい部位において他の部位よりも残留オーステナイトの量を多くする技術が知られている。具体的に、部品全体を浸炭焼入れした後に、靱性を確保したい部位のみ部分的に高周波焼入れを行うことにより、靱性を確保したい部位における残留オーステナイトの量を多くする技術が知られている(特許文献1,2、参照)。
特開2007−182607号公報 特開2007−182609号公報
特許文献1,2のように、高周波焼入れにおいて800〜1000℃まで加熱すると、固溶炭素量が増大する一方で、炭化物の量が減少することとなる。ここで、炭化物は、焼戻し時や部品使用時における発熱によって軟化することを阻害する因子である。従って、特許文献1,2においては、炭化物の量が減少することにより軟化を抑制することができなくなり、結果的に耐疲労性が低下してしまうという問題があった。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、炭化物の量と残留オーステナイトの量とを両立できる技術を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するため、本発明のピニオンピンの製造方法は、鋼材で形成されたピニオンピンを750℃以上かつ950℃以下のピーク温度で加熱する加熱工程と、加熱工程において加熱されたピニオンピンのうちのピニオンの回転軸方向の中央部を第1冷却速度で冷却し、ピニオンピンのうち回転軸方向において中央部よりも端の部分である端部を第1冷却速度よりも遅い第2冷却速度で冷却することにより、端部における残留オーステナイトの量を中央部よりも大きくする冷却工程と、を含む。
以上説明した本発明の構成において、オーステナイトを冷却する際の冷却速度を遅くすると、マルテンサイトへの変態が抑制されて残留オーステナイトの量が増大することが知られている。そこで、冷却工程における端部の冷却速度を遅くすることにより、端部における残留オーステナイトの量を中央部よりも大きくすることができる。また、加熱工程におけるピーク温度を950℃以下に抑制することにより、炭化物を構成している炭素の固溶を抑制し、炭化物の量を維持することができる。従って、ピニオンピンの端部において炭化物の量と残留オーステナイトの量とを両立でき、耐摩耗性と靱性とを両立できる。
図1Aはピニオンピンの側面図、図1Bは熱処理の模式図である。 図2Aは誘導加熱装置の断面模式図、図2Bは冷却装置の断面模式図である。 図3は残留オーステナイトの量のグラフである。 図4Aは焼戻しのための誘導加熱装置の断面模式図、図4Bは冷却装置の断面模式図である。 図5Aは残留応力のグラフ、図5Bは亀裂発生エネルギーのグラフである。
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)本発明の原理と実施例:
(2)他の実施形態:
(1)本発明の原理と実施例:
図1Aは、本発明の製造方法によって製造されるピニオンピン1の側面図である。図1Aにおいて、ピニオンピン1の内部構造を破線で示す。ピニオンピン1は円柱状であり、円筒状のローラ部品2の貫通穴2aに挿入される。ローラ部品2は、円筒状の歯車部材3の貫通穴3aに挿入される。ピニオンピン1は、歯車部材3の回転軸を構成し、ローラ部品2は側面に備えられたローラ2cが回転することにより歯車部材3の摩擦抵抗を低減する。ピニオンピン1の中心軸は歯車部材3の回転軸Zと一致する。ピニオンピン1の中心軸の方向を軸方向と表記する。歯車部材3の側面には歯が形成されており、例えば車両用自動変速機の遊星歯車として用いられる。
ピニオンピン1の内部には、円柱状のオイル穴1aが形成されている。ピニオンピン1とオイル穴1aの中心軸は一致する。さらに、オイル穴1aとピニオンピン1の側面とを連通するオイル通路1bがピニオンピン1に形成されている。オイル穴1aにはATF(Automatic Transmission Fluid)が供給され、さらにATFはオイル通路1bを介して、ピニオンピン1の側面とローラ部品2のローラ2cとの接触部位に供給される。オイル通路1bは、ピニオンピン1およびローラ部品2の軸方向の中央部に形成されている。これにより、ピニオンピン1とローラ2cの接触部位にバランスよくATFを供給できる。
図1Aに示すように、ピニオンピン1のうち歯車部材3の回転軸方向における両端部の表面を端部Aと定義し、端部Aによって挟まれた部分の表面を中央部Bと定義する。端部Aは、ピニオンピン1の軸方向の端面から全体の長さの10%以内の部分である。端部Aには、ピニオンピン1の側面に直交する円柱状の非貫通穴である位置決め穴1cが形成されている。位置決め穴1cは、当該位置決め穴1cとほぼ同形状の位置決めピンを圧入する穴である。位置決めピンを位置決め穴1cに圧入することにより、ピニオンピン1の位置ずれが防止されることとなる。位置決め穴1cは、ローラ部品2が接触しない箇所、すなわち端部Aに形成しておく必要がある。一方、オイル通路1bは、ローラ部品2が接触する箇所、すなわち中央部Bに形成しておく必要がある。ピニオンピン1は、例えばJIS-SCM420によって形成されている。
図1Bは、本実施形態の各工程と残留オーステナイトの量とを説明する模式図である。本実施形態において、加熱工程と冷却工程と焼戻し工程とが行われる。なお、加熱工程を行うにあたり、予めピニオンピン1の歯切りと浸炭徐冷とが行われている。浸炭においては、目標の炭素濃度を1.35%とし、温度を1000℃とし、浸炭・拡散時間を4時間とした。浸炭後、窒素ガスや不活性ガス中において徐冷を行う。浸炭徐冷を行うことにより、鉄と炭素が化合した炭化物をピニオンピン1の表面に形成することができる。
次に、加熱工程と冷却工程を順に行う。加熱工程と冷却工程とは、いわゆる高周波焼入れである。加熱工程は、鋼材で形成されたピニオンピン1を750℃以上かつ950℃以下のピーク温度で加熱する工程である。具体的に、加熱工程においては、ピニオンピン1を820℃のピーク温度で加熱した状態で30分保持する。また、加熱工程においては、浸炭によって炭素濃度が増大したピニオンピン1の表面全体が加熱され、オーステナイト相が形成される。加熱工程のピーク温度は、鉄と炭素の炭化物が維持できる程度に低温であればよく、950℃以下であればよい。加熱工程のピーク温度が高すぎると、炭化物を構成していた炭素がマトリクスに固溶してしまい、結果として、耐摩耗性が低下することとなる。加熱工程のピーク温度は、ピニオンピン1の表面をオーステナイト化できる程度に高温であればよく、750℃以上であればよい。
図2Aは、加熱工程に用いる誘導加熱装置10の断面構造を示す。誘導加熱装置10は、円筒状の誘導コイル12を備える。誘導コイル12は、内部に円柱状の加熱空間11を形成し、加熱工程にて加熱されたピニオンピン1が加熱空間11内に導入される。ピニオンピン1は、軸方向の両側から一対の治具13によって挟み込まれて保持される。ピニオンピン1と加熱空間11の中心軸C(一点鎖線)が一致するようにピニオンピン1が加熱空間11内に保持される。誘導コイル12に高周波電流を供給することにより、ピニオンピン1の軸方向の全域において表面を加熱することができる。その結果、誘導加熱装置10によって端部Aと中央部Bの双方が加熱される。
冷却工程においては、このオーステナイト相を急冷し、マルテンサイトに変態させることにより、ピニオンピン1の表面の硬度を確保する。図1Bに示すように、冷却工程においては、中央部Bを第1冷却速度V1(破線の傾きの大きさ)で急冷し、端部Aを第1冷却速度V1よりも遅い第2冷却速度V2(実線の傾きの大きさ)で急冷する。これにより、端部Aにおける残留オーステナイトの量を中央部Bにおける残留オーステナイトの量よりも多くすることができる。例えば、図1Bの下グラフに示すように、冷却工程後における端部A表面における残留オーステナイトの量を35体積%とし、中央部B表面における残留オーステナイトの量を10体積%としてもよい。
図2Bは、冷却工程に用いる冷却装置20の断面構造を示す。冷却装置20は、円筒状の水冷壁面22を備える。水冷壁面22は、内部に円柱状の水冷空間21を形成し、加熱工程にて加熱されたピニオンピン1が水冷空間21内に導入される。ピニオンピン1は、軸方向の両側から一対の治具23によって挟み込まれて保持される。ピニオンピン1の回転軸Zと水冷空間21の中心軸Cが一致するようにピニオンピン1が水冷空間21内に保持される。中心軸Cの方向は鉛直方向である。
冷却装置20は、中心軸Cに関して回転対称の構造を有している。水冷壁面22の外側側面に沿うように4個の冷媒室P1〜P4が備えられている。冷媒室P1〜P4は、円環状に形成されおり内部の中空空間に冷媒としての水が供給される。図示しない小型ポンプによって冷媒室P1〜P4のそれぞれに水が供給され、冷媒室P1〜P4内の水圧は個別に調整可能となっている。
水冷壁面22には多数のノズルが形成されており、当該ノズルを介して冷媒室P1〜P4内の水が水冷壁面22の内側の水冷空間に向けて噴射される。水冷壁面22のノズルを貫通し、水冷空間に向けて噴射される水をグレーの矢印で示す。水冷壁面22のノズルのうち、上から数えて1,2番目に配置された冷媒室P1,P2と連通するノズルは、水平方向に対して10度だけ下方に傾斜している。上から数えて3番目に配置された冷媒室P3と連通する水冷壁面22のノズルは水平方向となっている。最も下方に配置された冷媒室P4と連通する水冷壁面22のノズルは水平方向に対して10度だけ上方に傾斜している。
最も上方と最も下方の冷媒室P1,P4(薄いグレー)に連通する水冷壁面22の各ノズルから10L/minの流量で水が噴射されるように冷媒室P1,P4内の水圧が調整されている。一方、上から数えて2,3番目の冷媒室P2,P3(濃いグレー)に連通する水冷壁面22の各ノズルから40L/minの流量で水が噴射されるように冷媒室P2,P3内の水圧が調整されている。
ここで、冷媒室P1,P4に連通する水冷壁面22のノズルから噴射された水によって冷却される部位が図1Aの端部Aとなる。すなわち、10L/minの流量で噴射された水によって冷却される部位が端部Aとなる。一方、冷媒室P2,P3に連通する水冷壁面22のノズルから噴射された水によって冷却される部位が図1Aの中央部Bとなる。すなわち、40L/minの流量で噴射された水によって冷却される部位が中央部Bとなる。
このように、中央部Bよりも端部Aの方が供給される冷媒の流量が小さいため、図1Bに示すように中央部Bの第1冷却速度V1(破線の傾きの大きさ)よりも端部Aの第2冷却速度V2(実線の傾きの大きさ)の方が小さくなる。その結果、端部Aの残留オーステナイトの量を35体積%とし、中央部Bの残留オーステナイトの量を20体積%とすることができる。
図3は、冷却工程における冷却速度と残留オーステナイトの量との関係を示すグラフである。同図の横軸は固溶炭素量を示し、縦軸は残留オーステナイトの体積分率を示す。固溶炭素量とは、冷却工程の直前においてマルテンサイト変態前のオーステナイトに固溶している炭素の質量濃度を意味する。図3において、冷却速度が750℃/sec、1250℃/sec、1750℃/secである場合の残留オーステナイトの体積分率をそれぞれ破線、一点鎖線、実線によって示す。
図3に示すように、冷却速度が遅いほど残留オーステナイトの量が大きくなり、冷却速度が速いほど残留オーステナイトの量が小さくなる傾向が見られた。本実施形態においては、冷却工程の直前において、約0.78質量%の炭素がマルテンサイト変態前のオーステナイトに固溶していると推定できる。そのため、第1冷却速度V1を1250℃/secとすることにより、中央部Bの残留オーステナイトの量を20体積%とすることができる。一方、第2冷却速度V2を750℃/secとすることにより、端部Aの残留オーステナイトの量を35体積%とすることができる。
冷却装置20は、中央部Bよりも端部Aの冷却速度を遅くすることができればよく、図2Bに示す装置に限られない。例えば、冷却装置20は、中心軸Cが水平となるようにピニオンピン1が保持された状態で、ピニオンピン1を冷却する装置であってもよい。また、冷媒室P1〜P4に供給される冷媒の温度や濃度が異なっていてもよい。
次に、焼戻しを行う。焼戻しは、冷却工程の後に、端部Aを焼戻しすることにより、端部Aの残留オーステナイトの一部をマルテンサイトに変態させる工程である。焼戻しにおいては、ピニオンピン1の端部Aを180℃のピーク温度で加熱した状態で45〜75分(例えば60分)保持する。加熱工程のピーク温度は、残留オーステナイトの一部をマルテンサイト変態させることが可能な温度であればよく、150℃以上であればよい。加熱工程のピーク温度は、すでに形成されているマルテンサイトを維持できる程度に低温であればよく、200℃以下であればよい。焼戻しの加熱後おいては、ピニオンピン1を空冷する。その結果、端部Aの残留オーステナイトのうち5体積%をマルテンサイト変態させ、残った残留オーステナイトの量を30体積%とすることができる。
図4Aは、焼戻しに用いる誘導加熱装置30の断面構造を示す。誘導加熱装置30は、円筒状に形成された上下一対の誘導コイル32を備える。誘導コイル32は、それぞれ内部に円柱状の加熱空間31を形成する。焼戻しにおいて加熱されたピニオンピン1は、端部Aが加熱空間31に近接した位置に存在するように誘導加熱装置30に導入される。ピニオンピン1は、軸方向の両側から一対の治具33によって挟み込まれて保持される。ピニオンピン1と加熱空間31の中心軸C(一点鎖線)が一致するようにピニオンピン1が誘導加熱装置30内に保持される。誘導コイル32のそれぞれに高周波電流を供給することにより、ピニオンピン1の端部Aを加熱することができる。なお、図4Bに示すように、端部Aに接触するように形成された磁場コイル42によって端部Aを加熱する誘導加熱装置40を使用して焼戻しを行ってもよい。
以上説明した本実施形態の構成において、冷却工程における端部Aの冷却速度を遅くすることにより、端部Aにおける残留オーステナイトの量を中央部Bよりも大きくすることができる。また、加熱工程におけるピーク温度を950℃以下に抑制することにより、炭化物を構成している炭素の固溶を抑制し、表面における面積率が5〜20%となるように炭化物の量を維持することができる。従って、ピニオンピン1の端部Aにおいて炭化物の量と残留オーステナイトの量とを両立でき、耐摩耗性と靱性とを両立できる。
また、冷却工程の後に、端部Aを焼戻しすることによって端部Aの残留オーステナイトの一部をマルテンサイトに変態させることにより、変態した部分の体積を増大させることができ、圧縮の内部応力を残留させることができる。
図5Aは、焼戻しの有無と残留応力との関係を示すグラフである。同図の縦軸は残留応力を示し、横軸は残留オーステナイトの体積分率を示す。残留応力が負であることは圧縮の残留応力が存在することを意味し、残留応力が小さいほど圧縮の残留応力が大きくなることを意味する。図5Aにおいて、黒四角および実線は焼戻しを行わなかった場合の残留応力を示し、白四角および破線は焼戻しを行った場合の残留応力を示す。図5Aに示すように、焼戻しを行うことにより圧縮の残留応力をさらに増大させることができる。
以上のように、圧縮の内部応力を残留させることにより、亀裂を広げようとする力の反力を付与することができ、端部Aに亀裂が生じる可能性を低減できる。図5Bは、焼戻しの有無と亀裂の発生しにくさとの関係を示すグラフである。同図の縦軸は亀裂発生エネルギーを示し、横軸は残留オーステナイトの体積分率を示す。亀裂発生エネルギーはシャルピー衝撃試験において亀裂が生じるまでに要したエネルギーを意味し、亀裂発生エネルギーが大きいほど亀裂が発生しにくいことを意味する。図5Bにおいて、黒四角および実線は焼戻しを行わなかった場合の亀裂発生エネルギーを示し、白四角および破線は焼戻しを行った場合の亀裂発生エネルギーを示す。図5Bに示すように、焼戻しを行うことによりさらに亀裂を発生しにくくすることができる。
本実施形態おいては、端部Aに含まれる位置決め穴1cにおける残留オーステナイトの量と残留応力とを大きくすることができるため、位置決め穴1c周辺の靱性と耐亀裂性とを向上させることができる。従って、位置決めピンが圧入される際に亀裂が生じる可能性を低減できる。位置決め穴1cが形成されない側の端部Aにおいては必ずしも残留オーステナイトの量と残留応力とを大きくする必要はない。しかし、製造工程における取り扱いの容易さや熱履歴の対称性を考慮して、端部Aは軸方向に関して対象となることが望ましい。一方、中央部Bにおいてはマルテンサイトの量を確保することができるため、ピニオンピン1全体の強度を確保することができる。また、マルテンサイトの量を確保した中央部Bにおいてローラ部品2が接触するため、ローラ部品2による摩耗を軽減できる。
(2)他の実施形態:
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。例えば、加熱工程はピニオンピン1の形状(端部A,中央部B)がある程度形成された後に行われればよく、加熱工程の前工程は浸炭徐冷でなくてもよい。また、残留オーステナイトの量はあくまでも例示に過ぎず、ピニオンピン1に要求される靱性や亀裂への耐性に応じて適宜調整されればよい。また、ピニオンピン1の冷却速度は2段階に調整されるものに限らず、3段階以上の冷却速度でピニオンピン1が冷却されてもよい。
前記実施形態においては、位置決め穴1cが設けられた端部Aの残留オーステナイトの量を中央部Bよりも大きくしたが、逆に中央部Bの残留オーステナイトの量を端部Aよりも大きくしてもよい。そのために、図4Bに示す冷却装置120を使用して冷却工程を行ってもよい。
図4Bは、冷却装置120の断面模式図である。冷却装置120において、最も上方と最も下方の冷媒室P1,P4(濃いグレー)に連通する水冷壁面122の各ノズルから40L/minの流量で水が噴射されるように冷媒室P1,P4内の水圧が調整されている。一方、上から数えて2,3番目の冷媒室P2,P3(薄いグレー)に連通する水冷壁面22の各ノズルから10L/minの流量で水が噴射されるように冷媒室P2,P3内の水圧が調整されている。これにより、中央部Bの冷却速度を端部Aの冷却速度よりも小さくすることができ、中央部Bにおける残留オーステナイトの量を端部Aにおける残留オーステナイトの量よりも大きくすることができる。さらに、中央部Bに対してのみ焼戻しを行うことにより、中央部Bにおける圧縮の残留応力を増大させてもよい。
このようにすることにより、中央部Bに含まれるオイル通路1bにおける残留オーステナイトの量と残留応力とを大きくすることができるため、オイル通路1b周辺の靱性と耐亀裂性とを向上させることができる。従って、ローラ2cとの接触が繰り返されるオイル通路1bの周辺に亀裂が生じる可能性を低減できる。ローラ2cの角度や回転状態の異常によりローラ2cがオイル通路1bの周辺が強く衝突した場合でもオイル通路1bの周辺に亀裂が生じる可能性を低減できる。一方、端部Aにおいてはマルテンサイトの量を確保することができるため、ピニオンピン1全体の強度を確保することができる。
本発明において、ピニオンピンを構成する鋼材は、炭化物を生成するC以外の合金元素を含み、Cを0.05〜2.00質量%だけ含むことが望ましい。また、本発明の前工程として浸炭が行われてもよい。具体的に、鋼材は、Moを0.15〜0.35質量%だけ含んでもよいし、Crを0.5〜2.0質量%だけ含んでもよい。加熱工程は、いわゆる焼入れを行う工程である。そのため、加熱工程のピーク温度の下限値は、ピニオンピンの組織を一旦オーステナイト相に変化させることができる温度の下限値(750℃)以上の温度であればよい。一方、加熱工程のピーク温度の上限値は、炭化物を構成する炭素が固溶する量を低減できる温度の上限値(950℃)以下の温度であればよい。
少なくとも第2冷却速度を第1冷却速度よりも遅くすることにより、端部における残留オーステナイトの量を中央部よりも大きくすることができる。具体的に、第2冷却速度は第1冷却速度の0.25〜0.75倍であってもよい。また、第1冷却速は1250〜1750℃/secであってもよく、第2冷却速は750〜1250℃/secであってもよい。さらに、第1冷却速度と第2冷却速度は、1000〜400℃の冷却温度範囲以内における冷却速度であってもよい。
また、冷却工程の後に、端部を焼戻しすることにより、端部の残留オーステナイトの一部をマルテンサイトに変態させてもよい。端部の残留オーステナイトの一部をマルテンサイトに変態させることにより、変態した部分の体積を増大させることができ、圧縮の内部応力を残留させることができる。圧縮の内部応力を残留させることにより、亀裂を広げようとする力の反力を付与することができ、端部に亀裂が生じる可能性を低減できる。ただし、冷却工程の後に端部を焼戻しすることは必須ではなく、焼戻しが省略されてもよい。
また、冷却工程において、端部に供給される冷媒の流量は、中央部に供給される冷媒の流量よりも小さくてもよい。これにより、端部における冷却速度を中央部の冷却速度よりも遅くすることができる。ただし、必ずしも冷却速度は冷媒の流量によって調整されなくてもよく、冷媒の温度や濃度によって冷却速度が調整されてもよい。
1…ピニオンピン、1a…オイル穴、1b…オイル通路、1c…位置決め穴、2…ローラ部品、2a…貫通穴、2c…ローラ、3…歯車部材、3a…貫通穴、10…誘導加熱装置、11…加熱空間、12…誘導コイル、13…治具、20…冷却装置、21…水冷空間、22…水冷壁面、23…治具、30…誘導加熱装置、31…加熱空間、32…誘導コイル、33…治具、40…誘導加熱装置、42…磁場コイル、A…端部、B…中央部、C…中心軸、P1〜P4…冷媒室、P4…冷媒室、V1…第1冷却速度、V2…第2冷却速度、Z…回転軸

Claims (4)

  1. 鋼材で形成されたピニオンピンを750℃以上かつ950℃以下のピーク温度で加熱する加熱工程と、
    前記加熱工程において加熱された前記ピニオンピンのうちのピニオンの回転軸方向の中央部を第1冷却速度で冷却し、前記ピニオンピンのうち前記回転軸方向において前記中央部よりも端の部分である端部を前記第1冷却速度よりも遅い第2冷却速度で冷却することにより、前記端部における残留オーステナイトの量を前記中央部よりも大きくする冷却工程と、
    を含むピニオンピンの製造方法。
  2. 前記冷却工程の後に、前記端部を焼戻しすることにより、前記端部の前記残留オーステナイトの一部をマルテンサイトに変態させる、
    請求項1に記載のピニオンピンの製造方法。
  3. 前記冷却工程において、前記端部に供給される冷媒の流量は、前記中央部に供給される冷媒の流量よりも小さい、
    請求項1または請求項2のいずれかに記載のピニオンピンの製造方法。
  4. 鋼材で形成されたピニオンピンを750℃以上かつ950℃以下のピーク温度で加熱する加熱工程と、
    前記加熱工程において加熱された前記ピニオンピンのうちのピニオンの回転軸方向の端部を第1冷却速度で冷却し、前記ピニオンピンのうち前記回転軸方向において前記端部よりも中央に近い部分である中央部を前記第1冷却速度よりも遅い第2冷却速度で冷却することにより、前記中央部における残留オーステナイトの量を前記中央部よりも大きくする冷却工程と、
    を含むピニオンピンの製造方法。
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