JP2006291250A - 車輪支持用転がり軸受ユニット - Google Patents

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Abstract

【課題】形状の変更や高価な合金元素を含有する合金鋼への素材の変更が必要なく、応力の負荷や熱処理によるフランジの変形が生じにくい車輪支持用転がり軸受ユニットを提供する。
【解決手段】車輪支持用転がり軸受ユニット1のハブ輪2は、炭素の含有量,ケイ素の含有量,マンガンの含有量,及びクロムの含有量から算出されるA値が1.3以上となる合金鋼で構成されている。また、焼入れによる硬化層が軌道面を含む部分に形成されているとともに、焼入れが施されていない非焼入れ部が、球状化炭化物組織及び7%以下の初析フェライトを有する。さらに、前記A値と形状から導出されるB,C,Dとから算出されるL値が16.5以下である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、自動車等の車輪とローター,ドラム等の制動用回転体とを支持する車輪支持用転がり軸受ユニットに関する。
自動車等に用いられる車輪支持用転がり軸受ユニットは、一般的には、外周面に複列の軌道面を有する内方部材と、内周面に複列の軌道面を有する外方部材と、内方部材の軌道面と外方部材の軌道面との間に転動自在に配された複数の転動体と、を備えており、内方部材が回転輪、外方部材が非回転輪とされている。また、内方部材の外周面には、車輪及びブレーキローターを取り付けるためのフランジが設けられ、外方部材の外周面には、懸架装置を取り付けるためのフランジが設けられている。このような車輪支持用転がり軸受ユニットは、フランジが内方部材や外方部材に一体化されている。
このような車輪支持用転がり軸受ユニットの内方部材や外方部材は、一般に0.5〜1.0質量%程度の炭素を含んだ中炭素鋼又は軸受鋼で構成されている。そして、1000℃以上の温度に加熱して熱間鍛造した後、放冷のまま低温焼鈍し又は球状化焼鈍しを施して使用されている。亜共析鋼の場合は、鍛造後の組織が共析組成から外れた分だけ軟質な第2相の析出により切削性は良好であるが、強度が不十分である場合がある。共析組成以上では、切削性が不良となる。
特開2002−87008号公報 日本熱処理技術協会他,「熱処理技術入門」,大河出版,p.278
自動車の制動時にジャダーと呼ばれる不快な騒音を伴う振動が発生することを防ぐためには、ブレーキローターの側面を回転軸に対してできるだけ直角に保つ必要がある。回転輪のフランジの平面はブレーキローターを取り付けるための基準面となるが、フランジの薄肉化を進めた場合は、車輪(ホイール)の締結時や回転時に加わるトルクによりタップ穴周りで材料の降伏強度以上の応力が発生して、フランジの平面にμmオーダーの歪が生じる場合があった。このようなブレーキローターの取り付け面の歪は、自動車の制動時にしばしばジャダーを誘発することとなる。このため、近年においては、フランジの面振れに関する要求が厳しくなり、数十μm程度又は10μm以内に抑えることが要求されている。
未使用状態ではフランジの変形はほとんどないが、車輪の締結や回転により負荷を受けると、強度不足のため変形が生じる場合がある。このような強度不足という問題に対して、フランジの厚肉化で対応することは、軽量化・薄肉化の流れに逆行する。また、高炭素化や強化元素であるケイ素,マンガン,バナジウムの添加によって素材を高降伏強度とすることもできるが、コストアップは避けられない。さらに、特許文献1に開示されているように、必要部のみに硬化層を付与する方法もあるが、フランジに微小な熱処理変形が起こるおそれがある。
上記熱処理変形を防ぐためには、オーステナイト温度域で加熱した後に600〜700℃の温度で焼き戻しを行うという調質処理を施して、鍛造後の組織を調整することが有効である。このような調質処理により、炭素鋼特有の非調質組織の弱点である初析フェライトを微細分散させるとともに、初析フェライトの析出量を低下させることができ、これにより高い強度と良好な切削性が得られる。
また、上記のようにして得られた調質組織は、マルテンサイトをA3温度以下で焼き戻しているため、微細な球状の炭化物が存在している。そのため、軌道面等を高周波焼き入れした時に、炭化物が溶解しやすい。これは、炭素の固溶速度は小さいほど速いためで、一般的には調質組織ほど深い硬化層を容易に得られるという利点がある(非特許文献1を参照)。
しかしながら、車輪支持用転がり軸受ユニットにおいては、硬化層の形状に制限があるため、固溶しやすい微細な炭化物を有することが必ずしも良い組織であるとは限らない。具体的には、ボルトの締結で発生するフランジの変形の他に、熱処理変形によるフランジの反りの問題がある。つまり、転動体の接触によって生じる剪断応力に対して十分な強度を有していることが必要であるが、調質組織を出発にして軌道面に高周波焼き入れを施した場合は、マルテンサイト変態領域が多くなり、結果としてフランジの面振れの原因となっている。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、形状の変更や高価な合金元素を含有する合金鋼への素材の変更が必要なく、応力の負荷や熱処理によるフランジの変形が生じにくい車輪支持用転がり軸受ユニットを提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の車輪支持用転がり軸受ユニットは、略円柱面状の外周面に軌道面を有する内方部材と、前記内方部材の軌道面に対向する軌道面を内周面に有し前記内方部材の外方に配された略円筒形状の外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配された複数の転動体と、を備えるとともに、前記内方部材が回転輪、前記外方部材が非回転輪とされ、ホイールが固定されるフランジが前記内方部材の外周面の軸方向一端部に設けられた車輪支持用転がり軸受ユニットにおいて、前記内方部材が下記の4つの条件を満足することを特徴とする。
条件1:炭素の含有量C%が0.45質量%以上である合金鋼で構成されている。
条件2:下記式で定義されるA値が1.3以上である。
A=(0.2×C%+0.14)×(0.64×Si%+1)× (4.1×Mn%+1)×(2.33×Cr%+1)
なお、上記式中のC%,Si%,Mn%,及びCr%は、それぞれ前記合金鋼中の炭素の含有量,ケイ素の含有量,マンガンの含有量,及びクロムの含有量である。
条件3:焼入れによる硬化層が前記軌道面を含む部分に形成されているとともに、焼入れが施されていない非焼入れ部が、球状化炭化物組織及び7%以下の初析フェライトを有する。
条件4:下記式で定義されるL値が16.5以下である。
L=1000×A×(B/20)×C/(500+D2
なお、上記式中のA〜Dは以下の通りである。Aは前記A値である。Bは、前記ホイールのピッチ径から前記内方部材の外周面の直径を差し引いた値(単位はmm)である。Cは前記硬化層の有効硬化層深さ(単位はmm)である。Dは前記フランジの根元部における前記内方部材の肉厚(単位はmm)であり、前記内方部材の外周面と前記フランジの平面との交点を通り軸方向に対して45°をなす平面で破断した場合に生じる断面での肉厚である。
また、本発明に係る請求項2の車輪支持用転がり軸受ユニットは、外周面に軌道面を有する内方部材と、前記内方部材の軌道面に対向する軌道面を内周面に有し前記内方部材の外方に配された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配された複数の転動体と、を備えるとともに、前記内方部材及び前記外方部材の一方が回転輪、他方が非回転輪とされ、ホイールが固定されるフランジが前記回転輪に設けられた車輪支持用転がり軸受ユニットにおいて、前記内方部材及び前記外方部材のうち少なくとも前記回転輪が、炭素の含有量が0.65質量%以上0.75質量%以下、ケイ素の含有量が0.2質量%以上0.5質量%以下、マンガンの含有量が0.7質量%以上1.5質量%以下、クロムの含有量が0.02質量%以上0.6質量%以下である合金鋼で構成されていることを特徴とする。
本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットは、応力の負荷や熱処理によるフランジの変形が生じにくい。
本発明に係る車輪支持用転がり軸受ユニットの実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係る車輪支持用転がり軸受ユニットの一実施形態の構造を示す断面図である。なお、本実施形態においては、車輪支持用転がり軸受ユニットを自動車等の車両に取り付けた状態において、車両の幅方向外側を向いた部分を外端側部分と称し、幅方向中央側を向いた部分を内端側部分と称する。すなわち、図1においては、左側が外端側となり、右側が内端側となる。
図1の車輪支持用転がり軸受ユニット1は、自動車等の駆動輪を支持するためのものであり、ハブ輪2と、内輪3と、外輪4と、二列の転動体5,5と、転動体5を保持する保持器6,6と、を備えている。略円筒形状のハブ輪2の内端側部分には外径の小さい小径部11が形成されており、該小径部11に内輪3が圧入され、内輪3とハブ輪2とが一体的に固定されている(なお、加締め,ナット等により固定してもよい)。この内輪3とハブ輪2とが一体的に固定されたものの外周面は略円柱面状をなしている。そして、ハブ輪2及び内輪3の外方には、略円筒形状の外輪4が配されている。なお、内輪3とハブ輪2とが一体的に固定されたものが、本発明の構成要件である内方部材に相当し、外輪4が本発明の構成要件である外方部材に相当する。また、従動輪を支持する場合は、車輪支持用転がり軸受ユニット1のハブ輪2を、略円筒形状(中空状)から略円柱形状(中実状)に変更すると良い(図2を参照)。
ハブ輪2の外周面の軸方向中間部及び内輪3の外周面には、それぞれ軌道面が形成されており、ハブ輪2の軌道面は第一内側軌道面20a、内輪3の軌道面は第二内側軌道面20bとされている。また、外輪4の内周面には、前記両内側軌道面20a,20bに対向する軌道面が形成されており、第一内側軌道面20aに対向する軌道面は第一外側軌道面21a、第二内側軌道面20bに対向する軌道面は第二外側軌道面21bとされている。さらに、第一内側軌道面20aと第一外側軌道面21aとの間、及び、第二内側軌道面20bと第二外側軌道面21bとの間には、それぞれ複数の転動体5が転動自在に配置されている。なお、図示の例では、転動体として玉を使用しているが、車輪支持用転がり軸受ユニット1の用途等に応じて、ころを使用してもよい。
さらに、外輪4の内端側部分の内周面と内輪3の内端側部分の外周面との間、並びに、外輪4の外端側部分の内周面とハブ輪2の中間部の外周面との間には、それぞれシール装置7a,7bが設けられている。
さらに、ハブ輪2の外周面の外端側部分には、図示しないホイール(車輪)及びブレーキローターを固定するための車輪取り付け用フランジ10が設けられている。そして、外輪4の外周面には、車輪取り付け用フランジ10から離間する側の端部に、懸架装置取り付け用フランジ13が設けられている。
また、ハブ輪2の外周面のうち、小径部11の外端に形成された段差部12を含む部分及び第一内側軌道面20aを含む部分と、外輪4の内周面のうち、第一外側軌道面21aを含む部分及び第二外側軌道面21bを含む部分とには、高周波焼入れ等による硬化層22が形成されている。この硬化層22の表面硬さはHRC58を超えており、その結果、転動疲労強度及び静的強度が優れているとともに、耐摩耗性も優れている。
ハブ輪2及び外輪4のうち硬化層22が形成されていない部分には焼入れは施されておらず、この非焼入れ部は球状化炭化物組織及び7%以下の初析フェライトを有する。
そして、内輪3には浸炭処理又は浸炭窒化処理と焼入れと焼戻しとが施され、第二内側軌道面20bには硬化層(図示せず)が形成されている。
このような車輪支持用転がり軸受ユニット1を自動車に組み付けるには、懸架装置取り付け用フランジ13を懸架装置に固定し、ホイール及びブレーキロータを車輪取り付け用フランジ10に固定する。その結果、車輪支持用転がり軸受ユニット1によって車輪が懸架装置に対し回転自在に支持される。すなわち、内輪3とハブ輪2とが一体的に固定されたものが回転輪となり、外輪4が非回転輪となる。
この車輪支持用転がり軸受ユニット1においては、ハブ輪2及び外輪4は、炭素の含有量C%が0.45質量%以上0.95質量%以下、ケイ素の含有量Si%が0.2質量%以上0.5質量%以下、マンガンの含有量Mn%が0.7質量%以上1.5質量%以下、クロムの含有量Cr%が0.02質量%以上0.6質量%以下である合金鋼で構成されている。また、下記式で定義されるA値が1.3以上である。
A=(0.2×C%+0.14)×(0.64×Si%+1)× (4.1×Mn%+1)×(2.33×Cr%+1)
また、ハブ輪2は、下記式で定義されるL値が16.5以下であるという条件を満足している。
L=1000×A×(B/20)×C/(500+D2
なお、上記式中のA〜Dは以下の通りである。Aは前記A値である。Bは、前記ホイールのピッチ径からハブ輪2の外周面の直径を差し引いた値(単位はmm)である。Cはハブ輪2の硬化層22の有効硬化層深さ(単位はmm)である。Dは車輪取り付け用フランジ10の根元部におけるハブ輪2の肉厚(単位はmm)であり、ハブ輪2の外周面と車輪取り付け用フランジ10の平面との交点を通り軸方向に対して45°をなす平面で破断した場合に生じる断面での肉厚である。
このような車輪支持用転がり軸受ユニット1は、ハブ輪2及び外輪4が優れた静的強度及び疲労強度を有しているので、フランジ10,13等に過大な荷重(モーメント荷重や衝撃荷重)が負荷されても変形や損傷(割れ等)が生じにくい。また、熱処理によるフランジ10,13の変形も生じにくい。よって、自動車の制動時にジャダーが発生しにくい。また、フランジ10,13の肉厚を厚くすることにより強度向上を図る必要がないので、軽量である。さらに、合金鋼の加工性が優れているため、フランジ10,13を有するハブ輪2及び外輪4を容易に加工することができる。よって、車輪支持用転がり軸受ユニット1は、製造が容易である。
以下に、車輪支持用ハブ軸受ユニット1のハブ輪2及び外輪4に関する前述の各数値(合金鋼中の合金元素の含有量等)の臨界的意義や条件について詳細に説明する。
〔上記式で定義されるL値について〕
硬化層22は、ハブ輪2の強度向上及びシール装置7bとの摺動部の耐摩耗性の向上を目的として、ハブ輪2の第一内側軌道面20aの近傍部分から車輪取り付け用フランジ10の平面に至るまで形成されており、ハブ輪2の外周面と車輪取り付け用フランジ10の平面との交点近傍において直角に折れ曲がっている。高周波焼き入れ等の焼入れ時に車輪取り付け用フランジ10に微小変形が生じる原因は、ハブ輪2が非対称形状である点だけでなく、調質組織を有している点にあることが分かった。
具体的には、非調質組織のフェライト・パーライト組織又はパーライト組織を出発として形成された硬化層に比べて、微細な球状化炭化物を出発とした硬化層では、硬化層と非焼入れ部との境界領域が広く、したがってなだらかな硬さ勾配を示している。言い換えれば、変態領域が多く変形しやすいことになる。ここで、上記式で定義されるL値が16.5以下であると、焼入れを施す前の前組織が非調質組織であるときと同等又はそれ以上に、フランジの面振れが生じにくいことが分かった。一方、L値が16.5より大きいと、フランジの面振れが大きくなり自動車の制動時にジャダーの原因となる。
〔初析フェライトについて〕
初析フェライトは周囲に比べて軟質な組織であるため、多量に存在すると優先的に外力の影響を受け、降伏や疲労破壊に至ることになる。よって、初析フェライトによる強度低下を抑制するため、非焼入れ部の初析フェライトの量を面積率で7%以下とすることが好ましい。
〔A値について〕
A値が小さいと、必要な硬化層パターンを得ることができなくなる。よって、A値は1.3以上とすることが好ましい。
〔炭素の含有量について〕
ハブ輪2及び外輪4は優れた転動疲労強度を要求されるため、炭素の含有量は0.45質量%以上とすることが好ましく、高周波焼入れ等の熱処理における取り扱い易さを考慮して0.95質量%以下とすることが好ましい。
マルテンサイト変態による膨張は、炭素の含有量が多い場合に起こりやすいので、そのような場合においてより一層本発明が有効となる。一方、鍛造後の調質処理に際し、炭素の固溶量を多くすると変態時の割れ(焼き割れ)が生じるおそれがあるため、炭素の含有量の上限は0.75質量%とすることがより好ましい。よって、炭素の含有量は、0.65質量%以上0.75%質量%以下とすることがより好ましい。
〔ケイ素の含有量について〕
ケイ素(Si)は焼入性を向上させる作用を有しているので、合金鋼中のケイ素の含有量は0.2質量%以上とすることが好ましい。ただし、0.5質量%を超えると、鍛造時に脱炭を促進させる働きがある。焼入れ時に表面の炭素濃度が低いとMs点が上昇し、焼き割れが生じるおそれがあるため、ケイ素の含有量の上限は0.5質量%とすることが好ましい。
〔クロムの含有量について〕
クロム(Cr)は、焼入性を向上させるだけでなく、セメンタイト中に溶け込み鍛造時の不用意な粒成長を抑制する働きや、高周波焼入れ等の熱処理時に炭化物の溶け込みを制限する働きがあるので、合金鋼中のクロムの含有量は0.02質量%以上とすることが好ましい。一方、0.6質量%以上になるとコストアップの原因となるため、上限は0.6質量%とすることが好ましい。
〔マンガンの含有量について〕
マンガン(Mn)は焼入性を向上させる作用を有しているので、合金鋼中のマンガンの含有量は0.7質量%以上とすることが好ましい。ただし、1.5質量%を超えるとコストアップの原因となるため、上限は1.5質量%とすることが好ましい。
〔実施例〕
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。前述の車輪支持用ハブ軸受ユニット1とほぼ同様の構成の種々の車輪支持用ハブ軸受ユニットを用意して、各種性能の評価を行った。各車輪支持用ハブ軸受ユニットのハブ輪及び外輪は、表1〜4に示す合金元素を含有する合金鋼で構成されており、ハブ輪については前述のA〜D及びL値が表1〜4に示すような値である。
また、非焼入れ部の初析フェライトの量は、表1〜4に示すような値である。この初析フェライトの含有量(面積率)は、以下のようにして測定した。すなわち、ハブ輪の一部を切り出し、その切断面を鏡面に仕上げた後、3%ピクリン酸アルコール溶液でエッチングした。そして、白色に観察される初析フェライトを、画像処理を行うことによって分離し、その含有量を面積率で求めた。
さらに、フランジの厚さは10mm、車輪(ホイール)の締結時に使用するタップ穴の直径は14mm、内端側の軌道面と外端側の軌道面との間の距離は25mmである。
Figure 2006291250
Figure 2006291250
Figure 2006291250
Figure 2006291250
なお、ハブ輪及び外輪は、以下のようにして製造した。すなわち、合金鋼に熱間鍛造を施した後に、放冷するか、又は、840℃で2時間の焼入れと680℃で3時間の焼き戻しとを行い、さらに旋削加工を施した。そして、軌道面を含む部分に高周波焼入れ処理を施し、加熱時間や周波数を変化させることにより硬化層の厚さ(有効硬化層深さ)を変化させた。
この有効硬化層深さは、以下のようにして求めた。すなわち、ハブ輪の外周面とフランジの平面との交点を通り軸方向に対して45°をなす平面で、ハブ輪を破断し、その断面の硬さをビッカース硬度計で測定荷重9.8Nにて測定し、ビッカース硬さがHv500以上である深さを求めた。
次に、車輪支持用ハブ軸受ユニットに対して行った性能評価の内容及び方法について説明する。
〔熱処理によるフランジの面振れの測定方法について〕
ハブ輪に熱処理を施した後、ホイールのピッチ径位置におけるフランジの面振れを測定した。そして、最大変位と最小変位との差をフランジの面振れ量とした。結果を表1〜4に示す。なお、各表のフランジの面振れの数値は、比較例11のフランジの面振れ量を1とした場合の相対値で示してある。
〔ホイールの締結及び回転によるフランジの面振れの測定方法について〕
車輪支持用転がり軸受ユニットのハブ輪のフランジにホイールを締結し、0.9G相当の荷重が負荷されるように回転させた(100万回転)。回転終了後に、ホイールのピッチ径位置におけるハブ輪のフランジの面振れを測定した。そして、最大変位と最小変位との差をフランジの面振れ量とした。結果を表1〜4に示す。なお、各表のフランジの面振れの数値は、比較例4のフランジの面振れ量を1とした場合の相対値で示してある。
〔転動疲労寿命の測定方法について〕
車輪支持用転がり軸受ユニットにラジアル荷重4000Nを負荷して回転させ、寿命を測定した。形状から算出される計算寿命の7倍回転させても寿命に至らなかった場合は、回転試験を打ち切りとした。結果を表1〜4に示す。なお、各表の寿命は、前記計算寿命を1とした場合の相対値で示してある。
表1及び図3,4のグラフに示すように、実施例1〜41の車輪支持用転がり軸受ユニットは、前述の各数値が本発明で規定した好ましい範囲内にあり、L値が16.5以下であるので、調質組織の高周波熱処理後のフランジの面振れ量が、非調質組織と同等レベルであり、さらに初析フェライトの含有量が7%以下であるので、従来以上の耐変形性を有している。
これに対して、比較例1〜3の車輪支持用転がり軸受ユニットは、初析フェライトの含有量が7%を超えているため、回転により荷重を負荷した後のフランジの変形量が大きかった。また、比較例3,11は、A値が1.3以下であり十分な硬化層を得ることができなかったため、転動疲労寿命が短かった。さらに、比較例4〜7及び9は、L値が16.5を超えているため熱処理による変形が大きかった。比較例8は合金鋼の炭素の含有量が低いため、十分な転動疲労寿命を得ることができなかった。比較例9は合金鋼の炭素の含有量が高く、比較例10は合金鋼のケイ素の含有量が高く、焼き割れが発生したため、評価の対象から除外した。比較例12は合金鋼のクロムの含有量が著しく低く、高周波熱処理時の結晶粒粗大化が生じ、転動疲労寿命が短かった。
比較例13〜17は、非焼入れ部に非調質処理を適用した従来例であり、いずれも回転による荷重に対する変形が大きかった。
以上のように、前組織を調質組織とした場合の熱処理変形に関係する因子(対象物の形状、合金鋼のA値、有効硬化層深さ)をL値で整理することによって、ある形状におけるフランジの面振れを抑制するための材料及び有効硬化層深さを定量的に明らかにすることができた。その結果として、高強度で且つフランジの面振れの少ない車輪支持用転がり軸受ユニットを製造することが可能になった。
本発明に係る車輪支持用転がり軸受ユニットの一実施形態の構造を示す断面図である。 本発明に係る車輪支持用転がり軸受ユニットの別の実施形態の構造を示す断面図である。 L値とフランジの面振れ量との関係を示すグラフである。 初析フェライトの含有量とフランジの面振れ量との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 車輪支持用転がり軸受ユニット
2 ハブ輪
3 内輪
4 外輪
5 転動体
10 車輪取り付け用フランジ
13 懸架装置取り付け用フランジ
20a 第一内側軌道面
20b 第二内側軌道面
21a 第一外側軌道面
21b 第二外側軌道面
22 硬化層

Claims (2)

  1. 略円柱面状の外周面に軌道面を有する内方部材と、前記内方部材の軌道面に対向する軌道面を内周面に有し前記内方部材の外方に配された略円筒形状の外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配された複数の転動体と、を備えるとともに、前記内方部材が回転輪、前記外方部材が非回転輪とされ、ホイールが固定されるフランジが前記内方部材の外周面の軸方向一端部に設けられた車輪支持用転がり軸受ユニットにおいて、前記内方部材が下記の4つの条件を満足することを特徴とする車輪支持用転がり軸受ユニット。
    条件1:炭素の含有量C%が0.45質量%以上である合金鋼で構成されている。
    条件2:下記式で定義されるA値が1.3以上である。
    A=(0.2×C%+0.14)×(0.64×Si%+1)× (4.1×Mn%+1)×(2.33×Cr%+1)
    なお、上記式中のC%,Si%,Mn%,及びCr%は、それぞれ前記合金鋼中の炭素の含有量,ケイ素の含有量,マンガンの含有量,及びクロムの含有量である。
    条件3:焼入れによる硬化層が前記軌道面を含む部分に形成されているとともに、焼入れが施されていない非焼入れ部が、球状化炭化物組織及び7%以下の初析フェライトを有する。
    条件4:下記式で定義されるL値が16.5以下である。
    L=1000×A×(B/20)×C/(500+D2
    なお、上記式中のA〜Dは以下の通りである。Aは前記A値である。Bは、前記ホイールのピッチ径から前記内方部材の外周面の直径を差し引いた値(単位はmm)である。Cは前記硬化層の有効硬化層深さ(単位はmm)である。Dは前記フランジの根元部における前記内方部材の肉厚(単位はmm)であり、前記内方部材の外周面と前記フランジの平面との交点を通り軸方向に対して45°をなす平面で破断した場合に生じる断面での肉厚である。
  2. 外周面に軌道面を有する内方部材と、前記内方部材の軌道面に対向する軌道面を内周面に有し前記内方部材の外方に配された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配された複数の転動体と、を備えるとともに、前記内方部材及び前記外方部材の一方が回転輪、他方が非回転輪とされ、ホイールが固定されるフランジが前記回転輪に設けられた車輪支持用転がり軸受ユニットにおいて、
    前記内方部材及び前記外方部材のうち少なくとも前記回転輪が、炭素の含有量が0.65質量%以上0.75質量%以下、ケイ素の含有量が0.2質量%以上0.5質量%以下、マンガンの含有量が0.7質量%以上1.5質量%以下、クロムの含有量が0.02質量%以上0.6質量%以下である合金鋼で構成されていることを特徴とする車輪支持用転がり軸受ユニット。
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