JP5196393B2 - 転動部材、転がり軸受および転動部材の製造方法 - Google Patents

転動部材、転がり軸受および転動部材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、転動部材、転がり軸受および転動部材の製造方法に関し、より特定的には、高温環境や水が浸入する環境など苛酷な環境下においても使用可能な転動部材、転がり軸受および転動部材の製造方法に関するものである。
近年、転がり軸受を構成する軸受部品などの転動部材は、益々苛酷な環境下で使用されることが多くなっている。たとえば、製紙機械のカレンダロール支持軸受や鉄鋼圧延設備のロール支持軸受などは、常温(室温)よりも高い温度環境である高温環境下で使用されるため、軸受の潤滑油が劣化したり、潤滑油の粘度が低下したりする結果、潤滑が不十分となる場合がある。また、雰囲気中の水蒸気や、冷却水などに起因して、転動部材の表面において他の転動部材と接触する表面である転走面に、摩耗や錆ピットが発生し、これらを起点として、転動部材に早期に剥離が発生する場合がある。すなわち、潤滑が不十分となって油膜切れが発生し、転走面において転動部材同士が金属接触して表面損傷(たとえばピーリングや摩耗など)が生じたり、水蒸気や冷却水に由来する水によって転走面に錆が発生し、これを起点として表面損傷が生じたりする結果、転動部材に早期に剥離が発生する。さらに、軸受内部に侵入した水が分解することにより発生する水素や、転動部材同士の金属接触により出現する金属新生面を触媒として、潤滑油が分解することにより発生する水素が転動部材に侵入し、短期間で転走面に剥離が生じる現象(水素脆性剥離)も問題となっている。また、転がり軸受が高温環境下で使用される場合、使用中の寸法変化(経年寸法変化)、および寸法変化によるクリープを回避するため、大きなはめあいを与えて使用されることによる割れの発生などの問題もある。
これに対し、高温環境下で使用される軸受に関しては、長寿命化等を目的とした多くの検討がなされ、種々の対策が提案されている(たとえば特許文献1〜9参照)。
特開平7−19252号公報 特開2000−144331号公報 特開2003−183771号公報 特開2005−291342号公報 特開2005−344783号公報 特開平5−179404号公報 特開2000−212721号公報 特開2001−323939号公報 特開2002−60847号公報
しかしながら、上記特許文献1〜9に開示された技術を含め、従来の技術においては、高温環境下での使用を想定した転動部材においては、転動部材を構成する鋼に添加される合金元素の量が多いため、加工が困難である、製造コストが高い、浸炭や浸炭窒化を実施した場合に炭化物の粗大化や偏析が発生しやすく、割れ強度が劣る、などの問題があった。また、軸受の内部に水が侵入する環境下においては、寿命が大幅に低下するという問題点もあった。
そこで、本発明の目的は、転動部材を構成する鋼において加工性の低下や製造コストの上昇等を招来する合金元素の含有量を抑制しつつ、高温環境下や水が侵入する環境下においても長寿命な転動部材、転がり軸受および転動部材の製造方法を提供することである。
本発明に従った転動部材は、0.3質量%以上0.4%質量%以下の炭素と、0.3質量%以上0.7質量%以下の珪素と、0.3質量%以上0.8質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上1.2質量%以下のニッケルと、1.6質量%以上2.5質量%以下のクロムと、0.1質量%以上0.7質量%以下のモリブデンと、0.2質量%以上0.4質量%以下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純物からなり、珪素の含有量とマンガンの含有量との和は1.0質量%以下であり、ニッケルの含有量とクロムの含有量との和は2.3質量%以上であり、クロムの含有量とモリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和は3.0質量%以下である鋼から構成されている。表面を含む領域には、内部よりも炭素含有量の大きい硬化処理層が形成されている。硬化処理層の表層部の硬度は、725HV以上800HV以下であり、当該表層部に分布する炭化物の最大粒径は10μm以下であり、当該表層部における炭化物の面積率は、7%以上25%以下である。そして、上記内部の硬度は、450HV以上650HV以下である。
ここで、硬化処理層は、たとえば浸炭処理または浸炭窒化処理により形成された浸炭層または浸炭窒化層である。また、硬化処理層の表層部とは、硬化処理層の表面からの距離が0.1mm以内の領域である。
本発明の転動部材では、転動部材を構成する鋼において、水素脆性剥離を助長するおそれのある珪素の含有量が低減されるとともに、クロム、バナジウム、モリブデンなどの合金元素の含有量のバランスが適切に調整されつつ含有量が抑制される。また、本発明の転動部材では、硬化処理層の表層部における炭化物の大きさや面積率、および転動部材における硬度分布が適切な範囲に調整される。その結果、本発明の転動部材によれば、転動部材を構成する鋼において加工性の低下や製造コストの上昇等を招来する合金元素の含有量を抑制しつつ、高温環境下や水が侵入する環境下においても長寿命な転動部材を提供することができる。
ここで、本発明の転動部材を構成する鋼の成分範囲を上記の範囲に限定した理由について説明する。
炭素:0.3質量%以上0.4%質量%以下
転動部材に対して浸炭処理または浸炭窒化処理などを実施することにより、割れ強度を確保し、かつ表層部に圧縮応力を付与することができる。しかし、従来の浸炭鋼(肌焼鋼)のような低炭素鋼、たとえば炭素量が0.3質量%未満の鋼を転動部材の素材として採用した場合、内部硬度が低く、大きな荷重や衝撃が作用した場合に十分な強度が得られない。したがって、炭素含有量は、十分な内部硬度確保のため、0.3質量%以上とした。一方、素材の炭素量が0.4質量%を超えると、加工性が低下し、また浸炭や浸炭窒化を実施した場合に転動部材の表層部に発生する圧縮応力が低下するとともに、転動部材の靱性も低下する。したがって、炭素含有量は0.4質量%以下とした。
珪素:0.3質量%以上0.7質量%以下
従来、珪素は安価でありながら、耐熱性を与える元素であるため、積極的に活用されてきた。しかし、高温環境下や水が侵入する環境下において使用される転動部材においては、高い珪素含有量は水素脆性剥離を助長する懸念がある。また、耐熱性は、他の合金元素で補うことが可能である。これらを考慮し、また他の合金元素の添加による加工性、旋削・研削性の低下を考慮し、珪素の含有量は0.7質量%以下とした。一方、珪素は、鋼の素地を強化し、転動部材の強度および転動疲労寿命を向上させる機能を有する。珪素の含有量が0.3質量%未満となると、当該機能が十分に発揮されない。したがって、珪素量は、0.3質量%以上とした。
マンガン:0.3質量%以上0.8質量%以下
マンガンは、転動部材の焼入性の向上、転動疲労寿命の向上のためには必須の合金元素であるが、珪素同様、加工性を阻害する。そのため、他の合金元素の含有量を増加させることによる焼入性の向上、転動疲労寿命の向上とのバランスから、添加量は0.8質量%以下とした。一方、マンガンは、製鋼過程における脱酸に必須の元素であることを考慮し、その含有量は、通常の高合金鋼に含まれるレベルである0.3質量%を下限値とした。
ニッケル:0.5質量%以上1.2質量%以下
ニッケルは、転動部材の高温での転動疲労寿命確保に必須であり、高温での耐食性や耐酸化性を向上させる。この効果を確保するため、ニッケルの含有量は、0.5質量%以上とした。一方、ニッケルの含有量が多いと、転動部材中の残留オーステナイト量が増加し、転動部材に必要な硬度を確保することが困難になる。また、ニッケルは比較的高価な合金元素であり、含有量が増加すると鋼材コストが上昇する。そのため、ニッケルの含有量は、1.2質量%以下とした。
クロム:1.6質量%以上2.5質量%以下
クロムは、転動部材の転動疲労寿命や高温での硬度の確保には必須の元素である。また、転動部材を構成する鋼の素地に溶け込むことで、ニッケルと同様に耐酸化性および耐食性を向上させる。通常の軸受鋼(JIS規格)でも、クロムは1.5質量%程度含まれており、高温環境下において十分な特性を確保するためには、これより多い含有量が必要である。したがって、クロムの含有量は、1.6質量%以上とした。一方、クロムは、鋼中において炭化物を形成する。クロムの含有量が多くなり、大型の炭化物が形成された場合、転動疲労寿命を低下させるおそれがあることや、モリブデンやバナジウムなど炭化物を形成する他の合金元素の含有量とのかねあいを考慮して、クロムの含有量は2.5質量%以下とした。
モリブデン:0.1質量%以上0.7質量%以下
モリブデンは鋼の焼入性を向上させること、炭化物を形成することにより焼戻軟化抵抗を向上させることから、高温環境下における転動部材の転動疲労寿命の確保に必須である。また、モリブデン炭化物や炭窒化物が水素をトラップするとも考えられ、水素脆性剥離の抑制にも効果がある。このような効果を確保するためには、モリブデンの含有量は、0.1質量%以上とする必要がある。一方、モリブデンは高価な元素であり、コスト面からできるだけ含有量は少なく抑える必要があるので、クロムおよびバナジウムの含有量との関係を考慮し、その添加量を0.7質量%以下とした。
バナジウム:0.2質量%以上0.4質量%以下
バナジウムは微細な炭化物を形成して粒界(オーステナイト結晶粒界)に析出し、結晶粒を微細化して転動部材の強度や靱性を向上させる。さらに、炭化物が水素のトラップサイトとして機能し、水素脆性剥離を抑制する効果を有する。特に、転動部材が高温で浸炭または浸炭窒化処理され、高温焼戻が実施される場合、その効果が顕著になる。このような効果を確保するためには、0.2質量%以上の添加が必要である。一方、バナジウムは高価な元素であり、コスト面からできるだけ添加は少なく抑える必要があるので、クロム、モリブデンの添加量との関係を考慮し、その含有量を0.4質量%以下とした。
なお、リン、硫黄、アルミニウム、チタンなどの不純物元素の含有量は、軸受用鋼では通常低いレベルに抑えられている。本発明の転動部材を構成する鋼においても同様に、不純物元素の含有量は低いレベルに抑制されることが好ましい。具体的には、以下の範囲抑制されることが好ましい。
リン:0.03質量%以下
偏析による靱性の低下、転動疲労寿命の低下を抑制するため、0.03質量%以下とすることが好ましい。
硫黄:0.03質量%以下
マンガンと結合して上記マンガンの効果を低下させるとともに、転動疲労寿命を低下させるおそれのある非金属介在物を形成するので、0.03質量%以下とすることが好ましい。
アルミニウム:0.05質量%以下
耐熱性を向上させる効果があるものの、非金属介在物の原因になりやすいので、0.05質量%以下とすることが好ましい。
チタン:0.003質量%以下
非金属介在物であるTiN(窒化チタン)を形成し、転動部材の転動疲労寿命低下の原因となるとともに、水素脆性剥離の剥離起点となるおそれがあるので、0.003質量%以下とすることが好ましい。
また、本発明者は、転動部材を構成する鋼における各合金元素の含有量のバランスに関して詳細に検討した。その結果、以下の関係を満足することにより、転動部材の高温での硬度および耐摩耗性の向上のほか、焼戻軟化抵抗性の向上、さらには水素脆性剥離の抑制を達成し、かつ合金元素の含有量を抑制しつつ、高温環境下や水が侵入する環境下においても長寿命な転動部材を提供することができることを見出した。
すなわち、珪素およびマンガンは、いずれも転動部材の加工性を低下させる。珪素の含有量とマンガンの含有量との和が1.0質量%を超えると、加工性が低下し、転動部材の製造コストが上昇するおそれがある。そのため、珪素の含有量とマンガンの含有量との和は、1.0質量%以下とする必要がある。
また、ニッケルおよびクロムは、上述のように、いずれも転動部材の耐食性および耐酸化性を向上させる。高温環境下で使用される転動部材においては、ニッケルの含有量とクロムの含有量との和は、2.3質量%以上必要である。
クロム、モリブデンおよびバナジウムは、いずれも鋼中において炭化物を形成する傾向がある。クロムの含有量とモリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和が3.0質量%を超えると、鋼中に大型の炭化物が形成され、転動部材の転動疲労寿命や割れ強度が低下するおそれがある。したがって、クロムの含有量とモリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和は、3.0質量%以下とする必要がある。
さらに、本発明の転動部材の硬度および転動部材に含まれる炭化物に関する構成を上記の範囲に限定した理由は以下のとおりである。
転動部材に形成された硬化処理層の表層部、特に転動部材の転走面下の表層部は転動疲労を受ける。当該表層部の硬度が725HV(61HRC)未満である場合、転動部材の転動疲労寿命が不十分となるおそれがある。そのため、硬化処理層の表層部の硬度は、725HV以上とする必要がある。一方、硬化処理層の表層部の硬度を800HVを超える範囲とするためには、当該表層部にクロムなどの炭化物を所定量以上形成する必要がある。この場合、後述のように、転動部材の転動疲労寿命や加工性が低下するおそれがある。そのため、硬化処理層の表層部の硬度は、800HV以下とする必要がある。
転動部材に形成された硬化処理層の表層部、特に転動部材の転走面下の表層部に存在する大型の炭化物は、転動疲労を受けた場合に応力集中源となり、破壊起点となり得る。当該表層部に、10μmを超える炭化物が存在する場合、転動部材の転動疲労寿命が低下するおそれがある。そのため、当該表層部に分布する炭化物の最大粒径は、10μm以下とする必要がある。なお、厳しい環境下で使用される場合、より小さい炭化物が転動疲労寿命を低下させる可能性がある。そのため、上記炭化物の最大粒径は、5μm以下であることが好ましい。
転動部材に形成された硬化処理層の表層部における炭化物量が多くなると、当該表層部の加工性、特に研削を行なう場合の加工性が低下する。表層部における炭化物の面積率が25%を超えると、当該表層部の加工性が低下して加工コストの上昇、加工精度の低下等の問題を生じるおそれがある。そのため、硬化処理層の表層部における炭化物の面積率は、25%以下とする必要がある。一方、炭化物の面積率が7%未満では、転動部材の耐摩耗性が不足し、転動疲労寿命が低下する可能性がある。そのため、硬化処理層の表層部における炭化物の面積率は、7%以上とする必要がある。なお、加工性を一層向上させるためには、炭化物の面積率は20%以下であることが好ましい。
ここで、炭化物とは、たとえばFeC(セメンタイト)、またはクロムやモリブデンなどの合金元素によってFeが置換された炭化物(M3Cと示される)、もしくはM23C6やM7C3などである。
硬化処理層より内側の領域である転動部材の内部、より具体的には転動部材の表面から深さ1.0mm以上の領域である内部の硬度が450HV未満である場合、転動部材に比較的大きな荷重が採用した場合に当該内部において割れが発生する可能性がある(内部割れ)。そのため、内部の硬度は450HV以上とする必要がある。一方、内部の硬度が650HVを超える場合、靭性が低下し、転動部材に衝撃的な力が作用した場合に容易に破壊するおそれがある。そのため、内部の硬度は650HV以下とする必要がある。
なお、硬化処理層の表層部における炭化物の最大粒径および面積率は、たとえば、以下のように調査することができる。すなわち、転動部材を切断し、切断面を研磨した後、ピクラル(ピクリン酸アルコール溶液)にて腐食する。そして、表層部に該当する領域をランダムに20視野(倍率400倍、視野面積0.6mm)観察し、画像処理装置などを用いて炭化物の最大粒径および面積率を調査する。また、上記硬化処理層の表層部の硬度および内部の硬度は、たとえば、転動部材を切断し、硬化処理層の表層部および内部の硬度をビッカース硬度計により測定することにより調査することができる。
上記転動部材において好ましくは、転動部材を構成する鋼において、モリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和は、0.6質量%以上である。
モリブデンおよびバナジウムは、いずれも微細な炭化物や炭窒化物を形成する。そして、当該炭化物および炭窒化物は水素のトラップサイトとして機能し、水素脆性剥離を抑制する。モリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和を0.6質量%以上とすることにより、この効果が十分に発揮される。
上記転動部材において好ましくは、転動部材を構成する鋼において、モリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和は、クロムの含有量の半分以下である。
モリブデンおよびバナジウムは、上述のように比較的高価な合金元素である。モリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和を、クロムの含有量の半分以下とすることにより、製造コストを抑制することができる。
上記転動部材において好ましくは、転動部材を構成する鋼において、珪素の含有量は、モリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和以下である。
上述のように、珪素は、水素脆性剥離を助長するおそれがある一方、モリブデンおよびバナジウムは水素脆性剥離を抑制する機能を有する。珪素の含有量を、モリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和以下とすることにより、転動部材の水素脆性剥離を十分に抑制することができる。
上記転動部材において好ましくは、500℃の温度に60分間保持する処理が行なわれた場合の、硬化処理層の表層部の硬度は、550HV以上である。
転動部材が高温環境下にて使用された場合、転動部材の硬度が低下し、転動疲労寿命が低下するおそれがある。これに対し、500℃の温度に60分間保持する処理が行なわれた場合でも、硬化処理層の表層部、特に転走面下の表層部が550HV以上の硬度を有していることにより、高温環境下における転動疲労寿命が十分に確保される。
本発明に従った転がり軸受は、軌道部材と、軌道部材に接触し、円環状の軌道上に配置される複数の転動体とを備えている。そして、軌道部材および転動体の少なくともいずれか一方は、上述の本発明の転動部材である。
本発明の転がり軸受によれば、上記本発明の転動部材を備えていることにより、転動部材を構成する鋼において合金元素の含有量を抑制しつつ、高温環境下や水が侵入する環境下においても長寿命な転がり軸受を提供することができる。
本発明に従った転動部材の製造方法は、鋼製部材が準備される工程と、当該鋼製部材が焼入硬化される工程と、当該鋼製部材が焼戻される工程とを備えている。鋼製部材が準備される工程では、0.3質量%以上0.4%質量%以下の炭素と、0.3質量%以上0.7質量%以下の珪素と、0.3質量%以上0.8質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上1.2質量%以下のニッケルと、1.6質量%以上2.5質量%以下のクロムと、0.1質量%以上0.7質量%以下のモリブデンと、0.2質量%以上0.4質量%以下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純物からなり、珪素の含有量とマンガンの含有量との和は1.0質量%以下であり、ニッケルの含有量とクロムの含有量との和は2.3質量%以上であり、クロムの含有量とモリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和は3.0質量%以下である鋼からなり、転動部材の概略形状に成形された鋼製部材が準備される。
鋼製部材が焼入硬化される工程では、準備された鋼製部材に対して、浸炭処理または窒化処理が実施された後、A点以上の温度からM点以下の温度に冷却されることにより、鋼製部材が焼入硬化される。そして、鋼製部材が焼戻される工程では、焼入硬化された鋼製部材が、150℃以上300℃以下の温度域に加熱されて焼戻される。
本発明の転動部材の製造方法では、鋼製部材が準備される工程において、加工性の低下や製造コストの上昇等を招来する合金元素の含有量が抑制され、かつ高温での硬度および耐摩耗性の向上のほか、焼戻軟化抵抗性の向上、さらには水素脆性剥離の抑制が可能な上記成分組成を有する鋼からなる鋼製部材が準備される。そして、当該鋼製部材が焼入硬化される工程において、硬化処理層が形成された上で、鋼製部材が焼き戻される工程において適切な温度域に加熱されて焼戻が実施される。その結果、本発明の転動部材の製造方法によれば、転動部材を構成する鋼において加工性の低下や製造コストの上昇等を招来する合金元素の含有量を抑制しつつ、高温環境下や水が侵入する環境下においても長寿命な転動部材を製造することができる。
なお、転動部材が高温環境下で使用された場合の寸法変化を抑制し、耐久性を向上させるためには、鋼製部材が焼戻される工程において、鋼製部材が、200℃以上の温度域に加熱されて焼戻されることが好ましく、240℃以上の温度域に加熱されて焼戻されることがより好ましい。
以上の説明から明らかなように、本発明の転動部材、転がり軸受および転動部材の製造方法によれば、転動部材を構成する鋼において加工性の低下や製造コストの上昇等を招来する合金元素の含有量を抑制しつつ、高温環境下や水が侵入する環境下においても長寿命な転動部材、転がり軸受および転動部材の製造方法を提供することができる。
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態である実施の形態1における転動部材を備えた転がり軸受としての深溝玉軸受の構成を示す概略断面図である。また、図2は、図1の要部を拡大して示した概略部分断面図である。図1および図2を参照して、本発明の実施の形態1における転がり軸受としての深溝玉軸受、転動部材としての軌道輪および玉の構成について説明する。
図1を参照して、実施の形態1の深溝玉軸受1は、環状の外輪11と、外輪11の内側に配置された環状の内輪12と、外輪11と内輪12との間に配置され、円環状の保持器14に保持された転動体としての複数の玉13とを備えている。外輪11の内周面には外輪転走面11Aが形成されており、内輪12の外周面には内輪転走面12Aが形成されている。そして、内輪転走面12Aと外輪転走面11Aとが互いに対向するように、外輪11と内輪12とは配置されている。さらに、複数の玉13は、内輪転走面12Aおよび外輪転走面11Aに接触し、かつ保持器14により周方向に所定のピッチで配置されることにより、円環状の軌道上に転動自在に保持されている。また、玉13においては、その表面全体が転走面である。以上の構成により、深溝玉軸受1の外輪11および内輪12は、互いに相対的に回転可能となっている。
次に、転がり軸受である深溝玉軸受1を構成する転動部材としての外輪11、内輪12および玉13について説明する。図1および図2を参照して、外輪11、内輪12および玉13は、0.3質量%以上0.4%質量%以下の炭素と、0.3質量%以上0.7質量%以下の珪素と、0.3質量%以上0.8質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上1.2質量%以下のニッケルと、1.6質量%以上2.5質量%以下のクロムと、0.1質量%以上0.7質量%以下のモリブデンと、0.2質量%以上0.4質量%以下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純物からなり、珪素の含有量とマンガンの含有量との和は1.0質量%以下であり、ニッケルの含有量とクロムの含有量との和は2.3質量%以上であり、クロムの含有量とモリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和は3.0質量%以下である鋼から構成されている。
さらに、外輪11、内輪12および玉13の表面を含む領域には、それぞれの内部11C、12C、13Cよりも炭素含有量の大きい硬化処理層11B、12B、13Bが形成されている。硬化処理層11B、12B、13Bの表層部の硬度は、725HV以上800HV以下である。また、硬化処理層11B、12B、13Bの表層部に分布する炭化物の最大粒径は、10μm以下であり、当該表層部における炭化物の面積率は、7%以上25%以下である。さらに、外輪11、内輪12および玉13のそれぞれの内部11C、12C、13Cの硬度は、450HV以上650HV以下である。
実施の形態1の転動部材としての外輪11、内輪12および玉13では、外輪11、内輪12および玉13を構成する鋼において、水素脆性剥離を助長するおそれのある珪素の含有量が低減されるとともに、クロム、バナジウム、モリブデンなどの合金元素の含有量のバランスが適切に調整されつつ含有量が抑制されている。また、実施の形態1の外輪11、内輪12および玉13では、硬化処理層11B、12B、13Bの表層部における炭化物の大きさや面積率、および外輪11、内輪12および玉13における硬度分布が適切な範囲に調整されている。その結果、実施の形態1の外輪11、内輪12および玉13は、外輪11、内輪12および玉13を構成する鋼において加工性の低下や製造コストの上昇等を招来する合金元素の含有量が抑制されつつ、高温環境下や水が侵入する環境下においても長寿命な転動部材となっている。また、実施の形態1の転がり軸受としての深溝玉軸受1は、転動部材を構成する鋼において合金元素の含有量が抑制されつつ、高温環境下や水が侵入する環境下においても長寿命な転がり軸受となっている。
また、実施の形態1の外輪11、内輪12および玉13においては、これらを構成する鋼において、モリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和は、0.6質量%以上であることが好ましい。これにより、水素のトラップサイトとして機能するモリブデンおよびバナジウムの微細な炭化物や炭窒化物が形成され、水素脆性剥離の発生が抑制される。
また、実施の形態1の外輪11、内輪12および玉13においては、これらを構成する鋼において、モリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和は、クロムの含有量の半分以下であることが好ましい。これにより、これらの製造コストを抑制することができる。
また、実施の形態1の外輪11、内輪12および玉13においては、これらを構成する鋼において、珪素の含有量は、モリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和以下であることが好ましい。これにより、珪素による水素脆性剥離の助長を抑制しつつ、モリブデンおよびバナジウムにより水素脆性剥離を一層抑制することができる。
また、実施の形態1の外輪11、内輪12および玉13においては、500℃の温度に60分間保持する処理が行なわれた場合の、硬化処理層11B、12B、13Bの表層部の硬度は、550HV以上であることが好ましい。これにより、高温環境下における転動疲労寿命が十分に確保される。
次に、実施の形態1における転動部材および転がり軸受の製造方法を説明する。図3は、実施の形態1における転動部材および転がり軸受の製造方法の概略を示す流れ図である。
図3を参照して、まず工程(S100)において、0.3質量%以上0.4%質量%以下の炭素と、0.3質量%以上0.7質量%以下の珪素と、0.3質量%以上0.8質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上1.2質量%以下のニッケルと、1.6質量%以上2.5質量%以下のクロムと、0.1質量%以上0.7質量%以下のモリブデンと、0.2質量%以上0.4質量%以下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純物からなり、珪素の含有量とマンガンの含有量との和は1.0質量%以下であり、ニッケルの含有量とクロムの含有量との和は2.3質量%以上であり、クロムの含有量とモリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和は3.0質量%以下である鋼から構成される鋼材を準備する鋼材準備工程が実施される。具体的には、たとえば上記成分を有する棒鋼や鋼線などが準備される。
次に工程(S200)において、上記鋼材を成形することにより、転動部材の概略形状に成形された鋼製部材を作製する成形工程が実施される。具体的には、たとえば上記棒鋼や鋼線などに対して鍛造、旋削などの加工が実施されることにより、図1および図2に示される外輪11、内輪12および玉13などの概略形状に成形された鋼製部材が作製される。上記工程(S100)および(S200)は、転動部材の概略形状に成形された鋼製部材が準備される鋼製部材準備工程を構成する。
次に、工程(S300)において、鋼製部材に対して、浸炭処理または窒化処理が実施された後、A点以上の温度からM点以下の温度に冷却されることにより、当該鋼製部材が焼入硬化される焼入硬化工程が実施される。その後、工程(S400)において、焼入硬化された鋼製部材が、150℃以上300℃以下の温度域に加熱されて焼戻される焼戻工程が実施される。上記工程(S300)および(S400)は、鋼製部材が熱処理される熱処理工程を構成する。この熱処理工程の詳細については後述する。
次に工程(S500)において、仕上げ工程が実施される。具体的には、熱処理工程が実施された鋼製部材に対して研削加工などの仕上げ加工が実施されることにより、外輪11、内輪12および玉13などが仕上げられる。これにより、実施の形態1における転動部材の製造方法が完了し、転動部材としての外輪11、内輪12および玉13などが完成する。
さらに、工程(S600)において、組立て工程が実施される。具体的には、工程(S100)〜(S500)において作製された外輪11、内輪12および玉13と、別途準備された保持器14などとが組合わされて、実施の形態1における転がり軸受としての深溝玉軸受1が組立てられる。これにより、実施の形態1における転がり軸受の製造方法が完了し、転がり軸受としての深溝玉軸受1が完成する。
次に、熱処理工程の詳細について説明する。図4は、実施の形態1における転動部材の製造方法に含まれる熱処理工程を説明するための図である。図4において、横方向は時間を示しており右に行くほど時間が経過していることを示している。また、図4において、縦方向は温度を示しており上に行くほど温度が高いことを示している。
図4を参照して、工程(S200)において作製された鋼製部材は、まず、A点以上の温度である温度Tに加熱され、時間tだけ保持される。このとき、鋼製部材は、たとえばRXガスおよびアンモニアガスを含む雰囲気中において加熱される。これにより、鋼製部材の表面付近の炭素濃度および窒素濃度が所望の濃度に調整される。以上の手順により、浸炭窒化処理が完了する。その後、鋼製部材が、A点以上T以下の温度である温度Tにまで冷却され、温度Tで時間tだけ保持される拡散処理が実施される。これにより、鋼製部材に侵入した炭素および窒素が拡散し、熱処理後に残留する炭化物量や残留オーステナイト量を制御することができる。その後、鋼製部材が、たとえば油中に浸漬されることにより(油冷)、A点以上の温度からM点以下の温度に冷却される。これにより、1次焼入が完了する。さらに、鋼製部材が、A点以上T以下の温度である温度Tに再度加熱され、時間tだけ保持された後、たとえば油中に浸漬されることにより(油冷)、A点以上の温度からM点以下の温度に冷却される。これにより、2次焼入が完了する。以上の工程により、焼入硬化工程が完了する。
さらに、焼入硬化された鋼製部材がA点以下の温度である温度Tに加熱され、時間tだけ保持された後、たとえば室温まで空冷(放冷)されることにより焼戻工程が実施される。以上の工程により、本実施の形態における熱処理工程が完了する。
ここで、温度Tは、たとえば900℃以上980℃以下の温度であり、本実施の形態における鋼製部材を構成する鋼の成分組成を考慮すると、特に930℃以上960℃以下の温度であることが好ましい。また、温度Tは、たとえば850℃以上960℃以下の温度であり、本実施の形態における鋼製部材を構成する鋼の成分組成を考慮すると、特に900℃以上960℃以下の温度であることが好ましい。一方、時間tは、たとえば360分間以上720分間以下、時間tは、たとえば90分間以上300分間以下である。また、温度Tは、たとえば800℃以上900℃以下の温度であり、本実施の形態における鋼製部材を構成する鋼の成分組成を考慮すると、特に840℃以上880℃以下の温度であることが好ましい。一方、時間tは、たとえば20分間以上60分間以下である。
また、浸炭窒化処理が実施される際のカーボンポテンシャル(C)値は、たとえば0.9以上1.4以下であり、本実施の形態における鋼製部材を構成する鋼の成分組成を考慮すると、特に1.1以上1.3以下であることが好ましい。一方、拡散処理が実施される際および2次焼入が実施される際のC値は、それぞれ、たとえば0.6以上1.2以下、および0.6以上1.0以下とすることができる。さらに、浸炭窒化処理が実施される際の雰囲気中のアンモニア濃度は、たとえば5体積%以上20体積%以下であり、本実施の形態における鋼製部材を構成する鋼の成分組成を考慮すると、特に8体積%以上15体積%以下であることが好ましい。
また、温度Tは、たとえば150℃以上300℃以下の温度であり、本実施の形態における鋼製部材を構成する鋼の成分組成を考慮すると、特に200℃以上260℃以下の温度であることが好ましい。一方、時間tは、たとえば60分間以上180分間以下である。
ここで、A点とは、鋼を加熱するときに、鋼の組織がフェライトからオーステナイトへ変態を開始する温度に相当する点を示す。また、M点とは、オーステナイト化した鋼を冷却するときに、鋼の組織がマルテンサイト化を開始する温度に相当する点を示す。また、カーボンポテンシャルとは、浸炭脱炭反応が平衡に達し、鋼が含有する炭素濃度が一定の値となったときの、鋼の表層部が含有する炭素濃度を示し、鋼を加熱する雰囲気における浸炭能力を示す値である。すなわち、カーボンポテンシャルが高いほど浸炭能力が高い。雰囲気ガスのカーボンポテンシャルは、たとえば雰囲気ガスの温度と、雰囲気ガスの組成、すなわち一酸化炭素と酸素との濃度、あるいは一酸化炭素と二酸化炭素との濃度とを計測することにより、算出することができる。
図5は、実施の形態1における転動部材の製造方法に含まれる熱処理工程の変形例を説明するための図である。図5において、横方向は時間を示しており右に行くほど時間が経過していることを示している。また、図5において、縦方向は温度を示しており上に行くほど温度が高いことを示している。図5を参照して、本実施の形態における熱処理工程の変形例の詳細を説明する。
図5を参照して、本実施の形態の変形例における熱処理工程は、上記本実施の形態における熱処理工程と、基本的には同様に実施される。ただし、上記実施の形態における熱処理工程の浸炭窒化処理に代えて、本変形例では、浸炭処理が実施される。すなわち、工程(S200)において作製された鋼製部材は、まず、A点以上の温度である温度Tに加熱され、時間tだけ保持される。このとき、鋼製部材は、たとえばRXガスを含む雰囲気中において加熱される。これにより、鋼製部材の表面付近の炭素濃度が所望の濃度に調整される。以上の手順により、浸炭処理が完了する。その後、鋼製部材がA点以上T以下の温度である温度Tにまで冷却され、温度Tで時間tだけ保持される拡散処理が実施される。これにより、鋼製部材に侵入した炭素が拡散し、熱処理後に残留する炭化物量や残留オーステナイト量を制御することができる。その後、鋼製部材が、たとえば油中に浸漬されることにより(油冷)、A点以上の温度からM点以下の温度に冷却される。これにより、1次焼入が完了する。さらに、鋼製部材が、A点以上T以下の温度である温度Tに再度加熱され、時間tだけ保持された後、たとえば油中に浸漬されることにより(油冷)、A点以上の温度からM点以下の温度に冷却される。これにより、2次焼入が完了する。以上の工程により、焼入硬化工程が完了する。
さらに、焼入硬化された鋼製部材がA点以下の温度である温度Tに加熱され、時間tだけ保持された後、たとえば室温まで空冷(放冷)されることにより焼戻工程が実施される。以上の工程により、本実施の形態の変形例における熱処理工程が完了する。
ここで、温度Tは、たとえば900℃以上980℃以下の温度であり、本実施の形態における鋼製部材を構成する鋼の成分組成を考慮すると、特に930℃以上960℃以下の温度であることが好ましい。また、温度Tは、たとえば850℃以上960℃以下の温度であり、本実施の形態における鋼製部材を構成する鋼の成分組成を考慮すると、特に900℃以上960℃以下の温度であることが好ましい。一方、時間tは、たとえば360分間以上720分間以下、時間tは、たとえば90分間以上300分間以下である。また、温度Tは、たとえば800℃以上900℃以下の温度であり、本実施の形態における鋼製部材を構成する鋼の成分組成を考慮すると、特に850℃以上880℃以下の温度であることが好ましい。一方、時間tは、たとえば20分間以上60分間以下である。
また、浸炭処理が実施される際のカーボンポテンシャル(C)値は、たとえば0.9以上1.4以下であり、本実施の形態における鋼製部材を構成する鋼の成分組成を考慮すると、特に1.1以上1.3以下であることが好ましい。一方、拡散処理が実施される際および2次焼入が実施される際のC値は、それぞれ、たとえば0.6以上1.2以下、および0.6以上1.0以下とすることができる。
また、温度Tは、たとえば150℃以上300℃以下の温度であり、本実施の形態における鋼製部材を構成する鋼の成分組成を考慮すると、特に180℃以上240℃以下の温度であることが好ましい。一方、時間tは、たとえば60分間以上180分間以下である。
なお、上記実施の形態およびその変形例における熱処理工程においては、浸炭窒化処理または浸炭処理の後に2次焼入が実施されている。これにより、転動部材を構成する鋼のオーステナイト結晶粒(旧オーステナイト結晶粒)の粒度番号を大きく(結晶粒径を小さく)することが可能となり、鋼の組織を微細化することができる。その結果、転動部材の転動疲労寿命、靭性などを向上させることができる。一方、上記実施の形態およびその変形例における熱処理工程においては、転動部材の使用環境を考慮して、上記2次焼入を省略することもできる。これにより、転動部材の製造コストを低減することができる。
上記熱処理工程により、転動部材としての外輪11、内輪12および玉13の表面、より具体的には転走面を含む領域には、浸炭層または浸炭窒化層である硬化処理層11B、12B、13Bが形成される。そして、硬化処理層11B、12B、13Bの表層部の硬度は725HV以上800HV以下、硬化処理層11B、12B、13Bの表層部に分布する炭化物の最大粒径は10μm以下、硬化処理層11B、12B、13Bの表層部における炭化物の面積率は7%以上25%以下とし、また硬化処理層11B、12B、13Bの表層部より内側の領域である内部11C、12C、13Cの硬度は、450以上650HV以下とすることができる。
上記本実施の形態およびその変形例における転動部材の製造方法では、鋼製部材準備工程において、加工性の低下や製造コストの上昇等を招来する合金元素の含有量が抑制され、かつ高温での硬度および耐摩耗性の向上のほか、焼戻軟化抵抗性の向上、さらには水素脆性剥離の抑制が可能な上記成分組成を有する鋼からなる鋼製部材が準備される。そして、焼入硬化工程において、当該鋼製部材に硬化処理層11B、12B、13Bが形成された上で、焼戻工程において鋼製部材が適切な温度域に加熱されて焼戻が実施される。その結果、上記本実施の形態およびその変形例における転動部材の製造方法によれば、転動部材を構成する鋼において加工性の低下や製造コストの上昇等を招来する合金元素の含有量を抑制しつつ、高温環境下や水が侵入する環境下においても長寿命な転動部材を製造することができる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2における転動部材および転がり軸受について説明する。図6は、本発明の一実施の形態である実施の形態2における転動部材を備えた転がり軸受としての自動調心ころ軸受の構成を示す概略断面図である。
図6を参照して、自動調心ころ軸受2は、基本的には図1および図2に基づいて説明した深溝玉軸受1と同様の構成を有している。しかし、軌道輪および転動体の形状等において、実施の形態2における自動調心ころ軸受2は、実施の形態1における深溝玉軸受1とは異なっている。
すなわち、自動調心ころ軸受2は、外輪21の内周面が、中心が軸受中心に一致する球面形状であり、内輪22の外周面には2列の軌道溝が形成され、外輪21と内輪22との間に、保持器24により保持される2列の樽型のころ23を備えている。このような2列の樽型のころ23を備えることにより、軸の傾きなどに対応する調心性が得られる。なお、ころ23においては、その外周面全体が転走面である。
転動部材としての自動調心ころ軸受2の軌道輪(外輪21および内輪22)と、ころ23とは、図1に示される深溝玉軸受1の軌道輪(外輪11および内輪12)と玉13とに相当し、同様の構成を有している。すなわち、外輪21と内輪22およびころ23の表面を含む領域には、図2に基づいて説明した外輪11、内輪12および玉13と同様の硬化処理層が形成されているとともに、内部の硬度も450HV以上650HV以下となっている。
その結果、実施の形態2の外輪21、内輪22およびころ23は、外輪21、内輪22およびころ23を構成する鋼において加工性の低下や製造コストの上昇等を招来する合金元素の含有量が抑制されつつ、高温環境下や水が侵入する環境下においても長寿命な転動部材となっている。また、実施の形態2の転がり軸受としての自動調心ころ軸受2は、転動部材を構成する鋼において合金元素の含有量が抑制されつつ、高温環境下や水が侵入する環境下においても長寿命な転がり軸受となっている。したがって、自動調心ころ軸受2は、たとえば製紙機械のカレンダロール支持軸受に好適である。
なお、本実施の形態の自動調心ころ軸受2は、実施の形態1において説明した深溝玉軸受1と同様の製造方法により製造することができる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3における転動部材および転がり軸受について説明する。図7は、本発明の一実施の形態である実施の形態3における転動部材を備えた転がり軸受としての四列円錐ころ軸受の構成を示す概略断面図である。
図7を参照して、四列円錐ころ軸受3は、基本的には図1および図2に基づいて説明した深溝玉軸受1と同様の構成を有している。しかし、軌道輪および転動体の形状等において、実施の形態3における四列円錐ころ軸受3は、実施の形態1における深溝玉軸受1とは異なっている。
すなわち、四列円錐ころ軸受3は、環状の4つの外輪31と、外輪31の内側に配置される環状の2つの内輪32と、外輪31と内輪32との間に配置される複数の円錐状のころ33とを備えている。内輪32の外周面がそれぞれ2つの外輪31の内周面に対向するように、4つの外輪31と2つの内輪32とは配置されている。さらに、複数のころ33は、外輪31の内周面のそれぞれに沿って、外輪31の内周面に形成された外輪転走面31Aと内輪32の外周面に形成された内輪転走面32Aとに接触し、保持器34により保持されることにより周方向に所定のピッチで配置されて、4列の円環状の軌道上に転動自在に保持されている。以上の構成により、四列円錐ころ軸受3の外輪31および内輪32は、互いに相対的に回転可能となっている。なお、ころ33においては、その外周面全体が転走面である。
転動部材としての四列円錐ころ軸受3の軌道輪(外輪31および内輪32)と、ころ33とは、図1に示される深溝玉軸受1の軌道輪(外輪11および内輪12)と玉13とに相当し、同様の構成を有している。すなわち、外輪31と内輪32およびころ33の表面を含む領域には、図2に基づいて説明した外輪11、内輪12および玉13と同様の硬化処理層が形成されているとともに、内部の硬度も450HV以上650HV以下となっている。
その結果、実施の形態3の外輪31、内輪32およびころ33は、外輪31、内輪32およびころ33を構成する鋼において加工性の低下や製造コストの上昇等を招来する合金元素の含有量が抑制されつつ、高温環境下や水が侵入する環境下においても長寿命な転動部材となっている。また、実施の形態3の転がり軸受としての四列円錐ころ軸受3は、転動部材を構成する鋼において合金元素の含有量が抑制されつつ、高温環境下や水が侵入する環境下においても長寿命な転がり軸受となっている。したがって、四列円錐ころ軸受3は、たとえば鉄鋼圧延設備のロール支持軸受に好適である。
なお、本実施の形態の四列円錐ころ軸受3は、実施の形態1において説明した深溝玉軸受1と同様の製造方法により製造することができる。
また、上記実施の形態1〜3においては、本発明の転動部材および転がり軸受の一例として深溝玉軸受、自動調心ころ軸受、四列円錐ころ軸受およびこれらが備える軌道輪および転動体について説明したが、本発明の転動部材および転がり軸受はこれらに限られず、たとえば、スラスト型の転がり軸受およびスラスト型の転がり軸受が備える軌道輪および転動体であってもよい。
以下、実施例1について説明する。本発明の転動部材を構成する鋼からなる鋼材に対して、本発明の転動部材の製造方法における熱処理工程を実施した試験片(試験片No.1〜4)を作製し、その材質特性を調査する試験を行なった。また、比較例として、本発明の転動部材を構成する鋼の成分範囲外の鋼からなる鋼材に対して、本発明の転動部材の製造方法における熱処理工程を実施した試験片(試験片No.5〜8)、および一般に軸受用の鋼として採用される現用鋼(JIS規格SCM420およびSUJ2)に対して一般的な熱処理工程を実施した試験片(試験片No.9および10)を作製し、同様にその材質特性を調査する試験を行なった。試験の具体的手順は以下のとおりである。
まず、試験の対象となる試験片の作製方法について説明する。はじめに、表1に示す化学成分を有する鋼材を準備した。表1において、主要化学成分については、炭素(C)、珪素(Si)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)およびバナジウム(V)の各含有量が質量%で示されており、記載された成分の残部は鉄および不可避的不純物である。そして、上記鋼材を試験片の概略形状に成形し、成形部品とした。試験片の形状は直径φ12mm×長さL22mmである。なお、表1において、比較例の試験片を構成する鋼が化学成分において本発明の転動部材を構成する鋼と異なる点が、備考欄に示されている。
Figure 0005196393
次に、現用鋼からなる成形部品以外の成形部品に対して、図4に基づいて説明した実施の形態1における熱処理工程を実施した。ここで、Tは940℃でtは570分、Tは940℃でtは210分、Tは850℃でtは30分、浸炭窒化処理が行なわれる温度がTである期間のC値は1.2、浸炭窒化処理における雰囲気中のアンモニア濃度は10体積%、Tは280℃でtは120分間とした。
一方、SCM420からなる成形部品に対しては、920℃、C値1.0の雰囲気中で480分間保持することにより浸炭処理および拡散処理を実施した後、850℃に冷却し、その後急冷することにより1次焼入を実施した。さらに、850℃に再加熱し、その後急冷することにより、2次焼入を実施した。そして、180℃に加熱して120分間保持することにより焼戻を実施した。また、SUJ2からなる成形部品に対しては、850℃に加熱して40分間保持した後、急冷することにより焼入を実施した。その後、当該成形部品を180℃に加熱して120分間保持することにより焼戻を実施した。
さらに、焼入および焼戻が実施された成形部品に対して、仕上げ加工を実施することにより、本実施例における試験片を完成させた。
次に、本実施例における材質特性の評価項目および評価方法について説明する。上述の手順により完成した試験片に対し、硬化処理層の表層部の硬度(表層硬度)、表層部に分布する炭化物の最大粒径(最大炭化物径)、表層部における炭化物の面積率(炭化物面積率)、内部の硬度(内部硬度)を測定し、また500℃の温度に60分間保持する処理を行なった後の表層部の硬度(500℃焼戻硬度)を測定し、材質特性の評価を行なった。
最大炭化物径および炭化物面積率の測定は、以下のように行なった。まず、試験片を切断し、切断面を研磨した後、ピクラルにて腐食した。そして、表層部に該当する領域をランダムに20視野(倍率400倍、視野面積0.6mm)観察し、画像処理装置を用いて炭化物の最大粒径および面積率を調査した。また、表層硬度および内部硬度の測定は、試験片を切断し、硬化処理層の表層部および内部の硬度をビッカース硬度計により測定することにより調査した。また、500℃焼戻硬度は、試験片を500℃の温度に60分間保持する処理を行なった後、表層硬度と同様に硬度を測定した。試験結果を表2に示す。なお、表2において、評価結果が好ましい範囲外となった測定値には、下線が付されている。また、表2において、比較例の試験片が、材質特性において本発明の転動部材と異なる点が備考欄に示されている。
Figure 0005196393
表2を参照して、表層硬度に関しては、すべての試験片が好ましい範囲である725HV以上800HV以下の硬度を有している。しかし、現用鋼(比較例)である試験片No.9および10は、他の試験片の焼戻の温度が280℃であるのに対し、硬度を確保するために焼戻の温度が180℃とされている。その結果、500℃焼戻硬さにおいては硬度の低下が大きくなり、好ましい硬度範囲である550HV以上を確保することができていない。そのため、試験片No.9および10と同様の成分組成を有する鋼からなり、同様に熱処理された転動部材は、高温環境下において使用される場合、十分な転動疲労寿命を確保できない可能性がある。
また、最大炭化物径に関しては、比較例である試験片No.5〜8において、好ましい範囲である10μm以下を確保することができていない。そのため、試験片No.5〜8と同様の成分組成を有する鋼からなり、同様に熱処理された転動部材は、大型の炭化物が硬化処理層の表層部に存在するため、当該炭化物を起点とした剥離が発生し、転動疲労寿命が低下するおそれがある。
また、炭化物面積率に関しては、比較例である試験片No.6、7および9において、好ましい範囲である7%以上25%以下を確保することができていない。そのため、炭化物面積率が高い試験片No.6、7と同様の成分組成を有する鋼からなり、同様に熱処理された転動部材は、表層部の加工性が低下して加工コストの上昇、加工精度の低下等の問題を生じるおそれがある。一方、炭化物面積率が低い試験片No.9と同様の成分組成を有する鋼からなり、同様に熱処理された転動部材は、耐摩耗性が不足し、転動疲労寿命が低下する可能性がある。
また、内部硬度に関しては、比較例である試験片No.9および10において、好ましい範囲である450HV以上650HV以下を確保することができていない。そのため、内部硬度の低い試験片No.9と同様の成分組成を有する鋼からなり、同様に熱処理された転動部材は、転動部材に比較的大きな荷重が採用した場合に内部割れが発生する場合がある。一方、内部硬度の高い試験片No.10と同様の成分組成を有する鋼からなり、同様に熱処理された転動部材は、靭性が低下し、転動部材に衝撃的な力が作用した場合に容易に破壊するおそれがある。
これに対し、本発明の実施例である試験片No.1〜4は、表層硬度、最大炭化物径、炭化物面積率、内部硬度および500℃焼戻硬度のすべての材質特性の項目において、好ましいの範囲を確保している。そのため、試験片No.1〜4と同様の成分組成を有する鋼からなり、同様に熱処理された転動部材は、高温環境下や水の浸入する環境などの苛酷な使用環境においても長寿命であるものと考えられる。
以下、実施例2について説明する。本発明の転動部材の特性を評価するため、本発明の転動部材と同様の構成を有する試験片(試験片No.1〜4)、本発明の範囲外の構成を有する試験片(試験片No.5〜8)、および一般に軸受用の鋼として採用される現用鋼(JIS規格SCM420およびSUJ2)に対して一般的な熱処理工程を実施した試験片(試験片No.9および10)を作製し、その特性を評価する試験を行なった。試験項目は、(1)転動疲労寿命試験、(2)湿潤試験、(3)摩耗試験、(4)超音波疲労試験、(5)ピーリング試験、(6)リング圧壊試験、(7)リング回転割れ疲労試験の7項目である。以下、各試験の試験手順、試験条件について説明する。
(1)転動疲労寿命試験
上記実施例1の試験片No.1〜10と同様の化学成分を有し、同様の熱処理が実施された直径φ12mm長さL22mmの円筒状の試験片を作製した。そして、表3に示す試験条件で転動疲労寿命試験を行なった。
Figure 0005196393
転動疲労寿命試験は、φ12点接触試験機を用いて行なわれた。図8は、φ12点接触試験機の主要部の構成を示す概略正面図である。また、図9は、φ12点接触試験機の主要部の構成を示す概略側面図である。なお、図9においては、φ12点接触試験機の一部が断面で示されている。図8および図9を参照して、転動疲労寿命試験の試験機について説明する。
図8および図9を参照して、φ12点接触試験機90は、駆動ローラ92と、案内ローラ93と、鋼球94とを備えている。そして、転動疲労寿命試験片91は、駆動ローラ92によって駆動され、鋼球94と接触して回転する。鋼球94は、案内ローラ93にガイドされて、転動疲労寿命試験片91との間で高い面圧を及ぼし合いながら転動する。潤滑油は強制循環により給油される。以上のようにφ12点接触試験機90を運転し、5個の試験片を用いて、1個の試験片で場所を変えて2回の試験ができるので試験数は10回とし、試験片に剥離が発生するまでの荷重の負荷回数(寿命)を調査した。そして、得られた寿命を統計的に解析し、累積破損確率が10%となる転動疲労寿命を算出した。
(2)湿潤試験
上記実施例1の試験片No.1〜10と同様の化学成分を有し、同様の熱処理が実施された直径φ12mm長さL22mmの円筒状の試験片を作製した。その後、一方の端面にラッピングを行ない、当該端面を鏡面に仕上げた。そして、鏡面仕上げされた当該端面を試験面として、表4に示す試験条件(JIS K2246に従った試験条件)で湿潤試験を行なった。
Figure 0005196393
表4に示す温度および湿度の条件に保持した試験装置内に試験片を20時間保持した後、試験装置を大気に開放して4時間保持した。その後、試験面の面積に対する錆が発生した領域の面積の比である面積比を測定し、当該面積比の逆数を算出することにより、各試験片の錆の発生に対する抵抗性(耐食性)を評価した。面積比の測定は、試験後の試験面を写真撮影し、当該写真を画像処理装置により画像処理することにより行なった。試験片はそれぞれ2個とした。
(3)摩耗試験
この試験は、高温のために潤滑条件が悪い場合の、転動部材の摩耗状態を推定できる試験である。上記実施例1の試験片No.1〜10と同様の化学成分を有し、同様の熱処理が実施された平板状の試験片を作製した。その後、試験片の一方の主面を鏡面仕上げし、当該鏡面仕上げされた面を試験面とした。そして、表5に示す試験条件で摩耗試験を行なった。
Figure 0005196393
摩耗試験は、サバン型摩耗試験機を用いて行なわれた。図10は、サバン型摩耗試験機の主要部の構成を示す概略正面図である。また、図11は、サバン型摩耗試験機の主要部の構成を示す概略側面図である。図10および図11を参照して、サバン型摩耗試験機について説明する。
図10および図11を参照して、サバン型摩耗試験機40は、ロードセル43とエアスライダ44とを備えている。平板形状の摩耗試験片41はエアスライダ44に保持され、摩耗試験時に負荷される重錘42による荷重はロードセル43により検出される。そして、摩耗試験片41の鏡面研磨された表面と、相手材45の外周面とを接触させ、相手材45を回転させる。摩耗試験片41と相手材45との接触面には直接潤滑油が供給されず、相手材45の一部が潤滑油46に浸漬される。
以上のようにサバン型摩耗試験機40を運転し、相手材を60分間回転させた後の試験片の摩耗体積を測定した。そして、当該摩耗体積の逆数で各試験片の耐摩耗性を評価した。
(4)超音波疲労試験
この試験は、引張−圧縮モードでの高速疲労試験であって、表面滑りなどによる表面引張応力に対する疲労強度が評価可能な試験である。また、短時間で評価できるので、電解チャージなどにより水素を鋼中に侵入させた状態で試験を行なうことができる。これにより、水素脆性剥離に対する抵抗性を推定することができる。上記実施例1の試験片No.1〜10と同様の化学成分を有し、同様の熱処理が実施された試験片を作製した。試験片の形状は、中央部に、外径が小さくなった部分であるノッチが形成された丸棒状とした。作製された試験片に対して、まず、表6に示す条件で水素チャージを実施した。その後、表7に示す条件で超音波疲労試験を実施した。
Figure 0005196393
Figure 0005196393
超音波疲労試験は、超音波疲労試験機を用いて行なわれた。図12は、超音波疲労試験機の主要部の構成を示す模式図である。図12を参照して、超音波疲労試験機について説明する。
図12を参照して、超音波疲労試験機50は、超音波疲労試験片51が固定される部位に連結されるホーン部52と、ホーン部52に接続されるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)振動子53と、PZT振動子53に接続される増幅器54と、増幅器54に接続されたパーソナルコンピュータなどの制御装置55とを備えている。さらに、超音波疲労試験機50は、超音波疲労試験片51がセットされた状態において、超音波疲労試験片51のホーン部52に連結される側とは反対側の端部に対向するようにすき間ゲージ56が配置され、すき間ゲージ56はオシロスコープ57に接続される。
そして、超音波疲労試験片51を超音波疲労試験機50にセットし、制御装置55により出力を制御しつつ、増幅器54を介してPZT振動子53に電力を入力することにより、超音波振動を発生させる。この超音波振動をホーン部52を介して超音波疲労試験片51に伝達することにより超音波疲労試験片51を共振させる。このとき、超音波疲労試験片51の直径が最も細い部分において、軸方向の引張圧縮の応力振幅が最大となる。一方、オシロスコープ57に接続されたすき間ゲージ56により、超音波疲労試験片51の振動の状態を管理する。
以上のように超音波疲労試験機50を運転し、超音波疲労試験片51が剥離または破断するまでの応力の繰り返し数を調査した。さらに、当該調査を種々の応力について実施し、その結果が正規分布に従うとの仮定の下、当該結果を統計的に解析して10%の試験片が応力の繰り返し数10回で破断すると予測される応力(10回疲労強度)を算出し、水素が侵入した状態での疲労強度を評価した。
(5)ピーリング試験
この試験は、試験片を潤滑油膜が切れる条件で転動させ、表面に金属接触による疲れ損傷(ピーリング)を起こさせるもので、潤滑が十分でない場合の表面損傷に対する抵抗性を調査することができる。上記実施例1の試験片No.1〜10と同様の化学成分を有し、同様の熱処理が実施された円盤状の試験片を作製した。そして、作製された試験片を用いて、表8に示す条件でピーリング試験を実施した。
Figure 0005196393
ピーリング試験は、2円筒型転動試験機を用いて行なわれた。図13は、2円筒型転動試験機の主要部の構成を示す模式図である。図13を参照して、2円筒型転動試験機について説明する。
図13を参照して、2円筒型転動試験機60には、第1軸63まわりに回転可能なように円盤状の相手試験片61がセットされるとともに、第2軸64まわりに回転可能なように円盤状の試験片62がセットされる。第1軸63と第2軸64とは平行に配置されており、相手試験片61と試験片62とは互いに外周面が接触するように、第1軸63および第2軸64のそれぞれの一方の端部にセットされる。また、第1軸63および第2軸64の他方の端部には、いずれも回転速度計65とスリップリング66とが配置されている。
そして、相手試験片61に潤滑油が滴下されつつ、駆動軸としての第1軸63が回転する。これにより、相手試験片61が回転するとともに、試験片62が相手試験片61と接触しつつ、相手試験片61に従動して回転する。以上のように2円筒型転動試験機60を運転し、所定の回転数である4.8×10回の回転が終了したところで第1軸63の回転を停止した。そして、試験片62が2円筒型転動試験機60から取り外され、試験片62の外周面に発生したピーリングの面積が調査され、試験片62の外周面の面積に対するピーリングの面積の割合(ピーリング面積率)が算出された。そして、当該ピーリング面積率の逆数により、耐ピーリング強度を評価した。
(6)リング圧壊試験
上記実施例1の試験片No.1〜10と同様の化学成分を有し、同様の熱処理が実施されたリング状の試験片を作製した。そして、作製された試験片を用いて、リング圧壊試験を実施した。
図14は、リング圧壊試験の試験片の形状を示す概略断面図である。図14を参照して、リング圧壊試験について説明する。
図14を参照して、圧壊試験片71は外径60mm、内径45mm、幅15mmの円環状の形状を有している。そして、荷重方向72の向きに荷重が徐々に負荷されて、圧壊試験片71が破壊された時点における荷重が測定される。その後、得られた破壊荷重が、下記に示す曲がり梁の応力計算式(A)〜(C)により応力値に換算される。
すなわち、図14の圧壊試験片71の凸表面(圧壊試験片71の中心線から+eの距離にある面)における繊維応力をσ、凹表面(圧壊試験片71の中心線から−eの距離にある面)における繊維応力をσとすると、σおよびσは下記の式によって求められる(機械工学便覧A4編材料力学A4−40参照)。ここで、Nは圧壊試験片71の軸を含む断面の軸力、Aは横断面積、eは外半径、eは内半径(図14参照)を表わす。また、κは曲がり梁の断面係数である。
σ=(N/A)+{M/(Aρ)}[1+e/{κ(ρ+e)}]・・・(A)
σ=(N/A)+{M/(Aρ)}[1−e/{κ(ρ−e)}]・・・(B)
κ=−(1/A)∫{η/(ρ+η)}dA・・・(C)
そして、当該応力値を試験片の圧壊値として評価した。
(7)リング回転割れ疲労試験
上記実施例1の試験片No.1〜9と同様の化学成分を有し、同様の熱処理が実施された円環状の試験片を作製した。そして、表9に示す条件でリング回転割れ疲労試験を実施した。
Figure 0005196393
リング回転割れ疲労試験は、リング回転割れ疲労試験機を用いて行なわれた。図15は、リング回転割れ疲労試験機の主要部の構成を示す模式図である。図15を参照して、リング回転割れ疲労試験機について説明する。
図15を参照して、リング回転割れ疲労試験機80は、円筒状の形状を有する駆動ローラ82と、負荷ローラ83と、案内ローラ84とを備えている。駆動ローラ82、負荷ローラ83および案内ローラ84は、回転軸が平行になるとともに、外周面がリング回転割れ疲労試験片81に接触可能なように配置される。そして、リング回転割れ疲労試験機80は、給油ノズル86をさらに備え、当該給油ノズル86によりパッド85に給油され、リング回転割れ疲労試験片81に対して潤滑油を給油可能な構成となっている。
次に、試験の手順を説明する。まず、リング回転割れ疲労試験片81が、駆動ローラ82、負荷ローラ83および案内ローラ84に外周面において接触するように配置される。そして、リング回転割れ疲労試験片81は、駆動ローラ82および負荷ローラ83により径方向に圧縮される応力を負荷されつつ、駆動ローラ82が回転することにより駆動され、案内ローラ84に案内されて回転する。以上のようにリング回転割れ疲労試験機80を運転し、10個の試験片を用いて試験数は10回とし、リング回転割れ疲労試験片81の外周面に割れが発生するまでの時間を調査し、当該時間を割れ寿命とした。そして、得られた寿命を統計的に解析し、累積破損確率が10%となる寿命を算出し、リング回転割れ疲労強度を評価した。
次に、試験結果について説明する。表10に本実施例における試験結果を示す。表10においては、各試験結果が、現用鋼であるSUJ2を用いて作製されたNo.10の試験片の試験結果に対する比で示されている。すなわち、表10における数値が1よりも大きい場合、現用鋼を用いた従来の試験片よりも特性が優れていたといえる。なお、超音波疲労試験に関しては、No.10の試験片に関する試験が行なわれなかったため、試験結果は、現用鋼であるSCM420を用いて作製されたNo.9の試験片の試験結果に対する比で示されている。以下、表10を参照して、上記(1)〜(7)の試験結果について説明する。
Figure 0005196393
(1)転動疲労寿命試験
No.1〜8の試験片は、いずれも従来の構成を有するNo.9および10の試験片に対して、長寿命となっている。しかし、比較例であるNo.5〜8の試験片の寿命は、最大でNo.10の2.3倍であり、2倍未満のものも含まれている。これに対し、本発明の実施例であるNo.1〜4の試験片はいずれもNo.10の2.6倍以上の寿命を有しており、比較例に比べてより長寿命となっている。
(2)湿潤試験
No.1〜8の試験片は、いずれも従来の構成を有するNo.9および10の試験片に対して、高い耐食性を有している。しかし、比較例であるNo.5〜8の試験片の耐食性は、No.9および10の1.3〜2.0倍である。これに対し、本発明の実施例であるNo.1〜4の試験片はいずれもNo.9および10の2.2倍以上の耐食性を有しており、比較例に比べてより高い耐食性を有している。
(3)摩耗試験
No.1〜8の試験片は、いずれも従来の構成を有するNo.9および10の試験片に対して、高い耐摩耗性を有している。しかし、比較例であるNo.5〜8の試験片の耐摩耗性は、No.9および10の1.4〜2.0倍である。これに対し、本発明の実施例であるNo.1〜4の試験片は、比較例であるNo.5〜8の試験片と同等の硬度であるにもかかわらず、いずれもNo.9および10の2.1倍以上の耐摩耗性を有しており、比較例に比べてより高い耐摩耗性を有している。これは、比較例であるNo.5〜8の試験片に比べて、実施例であるNo.1〜4の試験片は、最大炭化物径が小さいことが影響しているものと考えられる。
(4)超音波疲労試験
No.1〜8の試験片は、いずれも従来の構成を有するNo.9の試験片に対して、長寿命となっている。しかし、比較例であるNo.5〜8の試験片の寿命は、No.9の1.2〜1.6倍である。これに対し、本発明の実施例であるNo.1〜4の試験片は、いずれもNo.9の1.6倍以上の寿命を有しており、比較例に比べてより長寿命となっている。これは、比較例であるNo.5〜8の試験片を構成する鋼の珪素含有量が好ましい範囲よりも多いことや、最大炭化物径が好ましい範囲よりも大きいことが影響しているものと考えられる。
(5)ピーリング試験
No.1〜8の試験片は、いずれも従来の構成を有するNo.10の試験片に対して、耐ピーリング強度が高くなっている。しかし、比較例においては、耐ピーリング強度が、No.10の2.0倍未満であるものも含まれる(No.6〜8)。これに対し、本発明の実施例であるNo.1〜4の試験片は、いずれもNo.9の2.2倍以上の寿命を有しており、比較例に比べてより高強度となっている。
(6)リング圧壊試験
No.1〜8の試験片は、いずれも従来の構成を有するNo.10の試験片よりもリング圧壊強度が低く、従来の構成を有するNo.9の試験片以上のリング圧壊強度を有している。これは、No.9の試験片は、従来の浸炭鋼を浸炭処理し、焼入した試験片であるため、内部硬度が低いのに対し、No.10の試験片は、従来の軸受鋼を焼入した試験片であるため、内部硬度が高いからである。そして、比較例であるNo.5〜8の試験片のリング圧壊強度は、No.10の70〜75%である。これに対し、本発明の実施例であるNo.1〜4の試験片は、いずれもNo.10の85%以上のリング圧壊強度を有しており、比較例に比べてより高強度となっている。
(7)リング回転割れ疲労試験
No.1〜8の試験片は、いずれも従来の構成を有するNo.10の試験片に対して、長寿命となっている。しかし、比較例であるNo.5〜8の試験片は、No.10の4.0〜5.0倍となっている。これに対し、本発明の実施例であるNo.1〜4の試験片は、No.10の5.0〜5.6倍の寿命を有しており、比較例に比べてより長寿命となっている。
以上(1)〜(7)の試験結果より、本発明の転動部材は、従来の転動部材に比べて、耐久性に優れていることが確認された。
なお、これまでの説明においては、浸炭窒化後に焼入を実施した試験片を用いて実施した試験結果について実施例として説明したが、浸炭後に焼入を実施した他の試験片を用いて同様に試験を実施した。その結果、浸炭窒化後に焼入を実施した試験片に比べての焼戻軟化抵抗性が僅かに低下するものの、その他の特性において遜色ない結果を示すことを確認している。
浸炭後に焼入を実施した場合の熱処理は、図5に基づいて説明した上記実施の形態の変形例における熱処理工程と同様の工程により行なった。ここで、図5において、Tは960℃でtは570分、Tは940℃でtは210分、Tは850℃でtは30分、浸炭処理が行なわれる温度がTである期間のC値は1.2、Tは260℃、tは120分間とした。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の転動部材、転がり軸受および転動部材の製造方法は、高温環境や水が浸入する環境など苛酷な環境下においても使用される転動部材、転がり軸受および転動部材の製造方法に、特に有利に適用され得る。
実施の形態1における転動部材を備えた深溝玉軸受の構成を示す概略断面図である。 図1の要部を拡大して示した概略部分断面図である。 実施の形態1における転動部材および転がり軸受の製造方法の概略を示す流れ図である。 実施の形態1における転動部材の製造方法に含まれる熱処理工程を説明するための図である。 実施の形態1における転動部材の製造方法に含まれる熱処理工程の変形例を説明するための図である。 実施の形態2における転動部材を備えた自動調心ころ軸受の構成を示す概略断面図である。 実施の形態3における転動部材を備えた四列円錐ころ軸受の構成を示す概略断面図である。 φ12点接触試験機の主要部の構成を示す概略正面図である。 φ12点接触試験機の主要部の構成を示す概略側面図である。 サバン型摩耗試験機の主要部の構成を示す概略正面図である。 サバン型摩耗試験機の主要部の構成を示す概略側面図である。 超音波疲労試験機の主要部の構成を示す模式図である。 2円筒型転動試験機の主要部の構成を示す模式図である。 リング圧壊試験の試験片の形状を示す概略断面図である。 リング回転割れ疲労試験機の主要部の構成を示す模式図である。
符号の説明
1 深溝玉軸受、2 自動調心ころ軸受、3 四列円錐ころ軸受、11,21,31 外輪、11A,21A,31A 外輪転走面、11B,12B,13B 硬化処理層、11C,12C,13C 内部、12,22,32 内輪、12A,22A,32A 内輪転走面、13 玉、23,33 ころ、14,24,34 保持器、40 サバン型摩耗試験機、41 摩耗試験片、42 重錘、43 ロードセル、44 エアスライダ、45 相手材、46 潤滑油、50 超音波疲労試験機、51 超音波疲労試験片、52 ホーン部、53 振動子、54 増幅器、55 制御装置、56 すき間ゲージ、57 オシロスコープ、60 2円筒型転動試験機、61 相手試験片、62 試験片、63 第1軸、64 第2軸、65 回転速度計、66 スリップリング、71 圧壊試験片、72 荷重方向、80 リング回転割れ疲労試験機、81 リング回転割れ疲労試験片、82 駆動ローラ、83 負荷ローラ、84 案内ローラ、85 パッド、86 給油ノズル、90 φ12点接触試験機、91 転動疲労寿命試験片、92 駆動ローラ、93 案内ローラ、94 鋼球。

Claims (7)

  1. 0.3質量%以上0.4%質量%以下の炭素と、0.3質量%以上0.7質量%以下の珪素と、0.3質量%以上0.8質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上1.2質量%以下のニッケルと、1.6質量%以上2.5質量%以下のクロムと、0.1質量%以上0.7質量%以下のモリブデンと、0.2質量%以上0.4質量%以下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純物からなり、珪素の含有量とマンガンの含有量との和は1.0質量%以下であり、ニッケルの含有量とクロムの含有量との和は2.3質量%以上であり、クロムの含有量とモリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和は3.0質量%以下である鋼から構成され、
    表面を含む領域には、内部よりも炭素含有量の大きい硬化処理層が形成され、
    前記硬化処理層の表層部の硬度は、725HV以上800HV以下であり、
    前記表層部に分布する炭化物の最大粒径は、10μm以下であり、
    前記表層部における前記炭化物の面積率は、7%以上25%以下であり、
    前記内部の硬度は、450HV以上650HV以下である、転動部材。
  2. 前記鋼において、モリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和は、0.6質量%以上である、請求項1に記載の転動部材。
  3. 前記鋼において、モリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和は、クロムの含有量の半分以下である、請求項1または請求項2に記載の転動部材。
  4. 前記鋼において、珪素の含有量は、モリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の転動部材。
  5. 500℃の温度に60分間保持する処理が行なわれた場合の、前記表層部の硬度は、550HV以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の転動部材。
  6. 軌道部材と、
    前記軌道部材に接触し、円環状の軌道上に配置される複数の転動体とを備え、
    前記軌道部材および前記転動体の少なくともいずれか一方は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の転動部材である、転がり軸受。
  7. 0.3質量%以上0.4%質量%以下の炭素と、0.3質量%以上0.7質量%以下の珪素と、0.3質量%以上0.8質量%以下のマンガンと、0.5質量%以上1.2質量%以下のニッケルと、1.6質量%以上2.5質量%以下のクロムと、0.1質量%以上0.7質量%以下のモリブデンと、0.2質量%以上0.4質量%以下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純物からなり、珪素の含有量とマンガンの含有量との和は1.0質量%以下であり、ニッケルの含有量とクロムの含有量との和は2.3質量%以上であり、クロムの含有量とモリブデンの含有量とバナジウムの含有量との和は3.0質量%以下である鋼からなり、転動部材の概略形状に成形された鋼製部材が準備される工程と、
    前記鋼製部材に対して、浸炭処理または浸炭窒化処理が実施された後、A点以上の温度からM点以下の温度に冷却されることにより、前記鋼製部材が焼入硬化される工程と、
    焼入硬化された前記鋼製部材が、150℃以上300℃以下の温度域に加熱されて焼戻される工程とを備えた、転動部材の製造方法。
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