JP2014231878A - 遊星歯車用支持軸 - Google Patents
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Abstract
【課題】焼き入れ性を低く抑える事ができ、且つ、転動寿命の向上を図れる支持軸4aの構造を実現する。【解決手段】支持軸4aを、Cを0.8〜1.2質量%、Crを0.1〜0.5質量%、Mnを0.4〜0.8質量%、Siを0.5〜1.0質量%、それぞれ含有し、残部がFeと不可避不純物からなり、DI=D0?FMn?FCr?FSiにより算出される焼き入れ指数DIが、2<DI<3なる関係を満たす合金鋼により造る。又、外径寸法Daと、軸方向孔15aの内径寸法dbと、焼き入れ硬化層18aの有効硬化層厚さYoとを、1.5<{(Da−db)/2}/Yo<10の関係を満たす様にする。焼き入れ硬化層18aの最表面層に関して硬度をHv650〜900、残留オーステナイト量を20〜45容量%とする。更に、芯部20に関して硬度をHv200〜300、残留オーステナイト量を0容量%とする。【選択図】図1
Description
本発明は、例えば自動車用自動変速機やトランスアクスルを構成する遊星歯車装置に組み込まれる遊星歯車をキャリアに対して回転自在に支持する為の、遊星歯車用支持軸の改良に関する。
自動車用自動変速機を構成する遊星歯車装置が従来から、例えば特許文献1〜5等、多くの刊行物に記載されて広く知られると共に、広く実施されている。この従来から知られた遊星歯車装置は、例えば図2〜4に示す様に、外周面に歯1aを形成した太陽歯車1と、この太陽歯車1と同心に配置され、内周面に歯2aを形成したリング歯車2との間に、複数個(一般的には3〜4個)の遊星歯車3、3を、円周方向に関して等間隔に配置している。そして、これら複数個の遊星歯車3、3の外周面に形成した歯3aを、前記両歯1a、2aに噛合させている。
前記複数個の遊星歯車3、3は、それぞれ支持軸4の周囲に、それぞれ複数本ずつのニードル5、5を介して回転自在に支持している。これら各支持軸4の基端部(図3〜4の右端部)は、前記太陽歯車1を中心として回転自在なキャリア6の基板7に支持固定している。図示の例では、前記各支持軸4の基端部をこの基板7に形成した通孔8aに締まり嵌めで内嵌すると共に、これら各支持軸4と基板7との間に係止ピン9を掛け渡して、これら各支持軸4が前記通孔8aから脱落するのを防止している。
又、図示の例では、前記太陽歯車1を円筒状に形成し、前記基板7を、断面L字形で全体を円輪状に形成している。そして、図3に示す様に、この基板7の内周縁部に形成した円筒部10を、回転軸11の外周面にスプライン係合させている。前記太陽歯車1は、この回転軸11の周囲に、この回転軸11に対する相対回転を自在に支持している。又、前記リング歯車2は前記各部材1、6、11の周囲に、これら各部材1、6、11に対する相対回転を自在に支持している。
又、前記各支持軸4の先端部(図3〜4の左端部)は、前記基板7と共に前記キャリア6を構成する、円輪状に形成された連結板12に形成した通孔8bに内嵌固定し、前記各支持軸4の先端部同士を連結している。これら複数の支持軸4の中間部外周面で、前記キャリア6と前記連結板12との間部分は、円筒面状の内輪軌道13としている。一方、前記遊星歯車3の内周面は、円筒面状の外輪軌道14としている。そして、これら内輪軌道13と外輪軌道14との間部分に前記各ニードル5、5を設けて、前記遊星歯車3を、前記支持軸4の中間部周囲で連結板12とキャリア6との間部分に、回転自在に支持している。尚、前記支持軸4の軸方向両端部を拡径(直径を拡げる方向に塑性変形)させて、前記キャリア6にかしめ固定する構造も従来から知られている。
又、前記各支持軸4の内部には、図4に示す様に、通油孔として機能する軸方向孔15及び径方向孔16を設け、前記各ニードル5、5の設置部分に潤滑油を送り込み自在としている。即ち、前記各支持軸4の中心部に設けた、前記軸方向孔15の上流端を、前記キャリア6の基板7内に設けた潤滑油供給路17に通じさせると共に、前記径方向孔16の両端部を、前記支持軸4の外周面と前記軸方向孔15の内周面とに開口させている。そして、遊星歯車式変速機の運転時に、前記各ニードル5、5の設置部分に潤滑油を送り込み自在としている。
上述の様な遊星歯車3及び支持軸4等を含んで構成する遊星歯車装置は、例えば、前記回転軸11を駆動軸又は従動軸とし、前記太陽歯車1又は前記リング歯車2の中心を従動軸又は駆動軸に結合する。そして、何れの歯車1、2、3を回転自在とし、何れの歯車1、2、3を回転不能とするかを切り換える事により、前記駆動軸と従動軸との間の変速並びに回転方向の変換を行う。この様な遊星歯車装置自体の構成及び作用は、従来から周知であり、本発明の要旨とも関係しないから、全体構造の図示並びに詳しい説明は省略する。
上述の様な遊星歯車装置の運転時に前記支持軸4の外周面(ラジアルニードル軸受の内輪軌道13)乃至表面層部分には、前記各ニードル5、5の転動面との転がり接触に基づいて大きな面圧(高面圧)が加わり、この表面層部分に、数GPa程度にも達する、大きな接触応力が発生する。この為に従来から、前記支持軸4を構成する金属材料として、硬くて大きな負荷に耐えられ、転動寿命が長く、且つ、滑りに対する耐摩耗性が良好なSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼等が使用されている。
又、前記支持軸4の外周面乃至は表面層部分は、前記各ニードル5、5の公転運動に基づき、高面圧下で繰り返し剪断応力を受ける為、転動寿命確保の面から、厳しい使用条件となる。この為、上述の様な金属材料により造られる前記支持軸4の表面層部分には、浸炭処理や浸炭窒化処理等の表面熱処理を施して、前記繰り返し加わる剪断応力に拘らず(この剪断応力に耐えて)、前記表面層部分の転動寿命を確保できる様にしている。更にこの表面層部分には、前記表面熱処理に加えて(この表面熱処理に引き続いて)高周波焼き入れ等により焼き入れ処理を施して焼き入れ硬化層18を形成する事により、表面硬度を確保して、転動寿命の一層の向上を図っている。
例えば、特許文献5には、支持軸をSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼により造り、この支持軸の表面層部分に浸炭処理や浸炭窒化処理等の表面熱処理を施した後、この支持軸に高周波焼き入れ処理を施す事が記載されている。そして、硬度がHv700〜Hv900で残留オーステナイト量(γR)が15〜40容量%である焼き入れ硬化層を、高周波焼入れ処理により形成する事が記載されている。
ところで、SUJ2(高炭素クロム軸受鋼2種)は、焼き入れ性が高い(焼きが入り易い)金属である為、SUJ2製の支持軸の外周面に、焼き入れ硬化層を形成した場合、必要以上に焼きが入ってしまう場合がある。
例えば、前記支持軸4の様に、その中心部に前記軸方向孔15が形成された構造の場合、この支持軸4の外周面とこの軸方向孔15の内周面との径方向距離が小さくなる。この為、この支持軸4を構成する素材の焼き入れ性が高いと、当該部分(環状部分)の断面全体が焼き入れ硬化された状態となり、当該部分の靱性が低下し、前記支持軸4の耐衝撃性が損なわれる可能性がある。特に、この支持軸4の外径寸法が10mm以下の場合、この支持軸4の外周面と前記軸方向孔15の内周面との径方向距離が小さくなり、当該部分の断面全体が焼き入れ硬化され易くなってしまう。尚、特許文献6には、SUJ2よりも焼き入れ性が低い金属製の支持軸に、高周波焼き入れを施す事により焼き入れ硬化層を形成する発明が記載されているが、硬度がHv550以上である焼き入れ硬化層の有効硬化層の径方向厚さを、支持軸の外周面と軸方向孔の内周面との径方向距離との関係で規制する事、及び、合金鋼を構成する元素にケイ素(Si)を加える事に就いては記載されていない。
例えば、前記支持軸4の様に、その中心部に前記軸方向孔15が形成された構造の場合、この支持軸4の外周面とこの軸方向孔15の内周面との径方向距離が小さくなる。この為、この支持軸4を構成する素材の焼き入れ性が高いと、当該部分(環状部分)の断面全体が焼き入れ硬化された状態となり、当該部分の靱性が低下し、前記支持軸4の耐衝撃性が損なわれる可能性がある。特に、この支持軸4の外径寸法が10mm以下の場合、この支持軸4の外周面と前記軸方向孔15の内周面との径方向距離が小さくなり、当該部分の断面全体が焼き入れ硬化され易くなってしまう。尚、特許文献6には、SUJ2よりも焼き入れ性が低い金属製の支持軸に、高周波焼き入れを施す事により焼き入れ硬化層を形成する発明が記載されているが、硬度がHv550以上である焼き入れ硬化層の有効硬化層の径方向厚さを、支持軸の外周面と軸方向孔の内周面との径方向距離との関係で規制する事、及び、合金鋼を構成する元素にケイ素(Si)を加える事に就いては記載されていない。
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、焼き入れ性を低く抑えられ、且つ、転動寿命の向上を図れる、遊星歯車用支持軸の構造を実現すべく発明したものである。
本発明の遊星歯車用支持軸は、Cを0.8〜1.2質量%、Crを0.1〜0.5質量%、Mnを0.4〜0.8質量%、Siを0.5〜1.0質量%、それぞれ含有し、残部がFeと不可避不純物からなり、D0=0.14+0.2×C(質量%)とし、FMn=1+4.1×Mn(質量%)とし、FCr=1+2.33×Cr(質量%)とし、FSi=1+0.64×Si(質量%)とした場合に、DI=D0×FMn×FCr×FSiなる関係式により算出される焼き入れ指数DIが、2<DI<3なる関係を満たす鉄系合金製である。
又、上述の様な鉄系合金製である本発明の遊星歯車用支持軸は、前述した従来から知られている遊星歯車用支持軸と同様に、軸方向孔と、径方向孔と、焼き入れ硬化層とを有する。
このうちの軸方向孔は、中心部に、軸方向一端面に開口すると共に、軸方向中間部に迄達する状態で形成されている。
又、前記径方向孔は、軸方向中間部に、外周面と前記軸方向孔の内周面とを連通させる状態に形成されている。
又、前記焼き入れ硬化層は、少なくとも軸方向中間部の外周寄り部分に、高周波焼き入れ処理及び焼き戻し処理を施す事により形成されている。
又、外径寸法をDaとし、前記軸方向孔の内径寸法をdbとし、硬度がHv550以上である前記焼き入れ硬化層の有効硬化層厚さ(深さ)をYoとした場合に、{(Da−db)/2}/Yoにより算出される有効硬化層比が、1.5<{(Da−db)/2}/Yo<10なる関係を満たす。
又、前記焼き入れ硬化層の最表面層に関して、硬度がHv650〜900であり、残留オーステナイト量が20〜45容量%である。
又、前記焼き入れ硬化層よりも径方向内側部分である芯部に関して、硬度がHv200〜300であり、残留オーステナイト量が容量0%である。
そして、軸方向両端部を遊星歯車式変速機を構成するキャリアに支持固定し、この焼き入れ硬化層を設けた部分の周囲に、ニードル等の転動体を介して遊星歯車を回転自在に支持する。
又、上述の様な鉄系合金製である本発明の遊星歯車用支持軸は、前述した従来から知られている遊星歯車用支持軸と同様に、軸方向孔と、径方向孔と、焼き入れ硬化層とを有する。
このうちの軸方向孔は、中心部に、軸方向一端面に開口すると共に、軸方向中間部に迄達する状態で形成されている。
又、前記径方向孔は、軸方向中間部に、外周面と前記軸方向孔の内周面とを連通させる状態に形成されている。
又、前記焼き入れ硬化層は、少なくとも軸方向中間部の外周寄り部分に、高周波焼き入れ処理及び焼き戻し処理を施す事により形成されている。
又、外径寸法をDaとし、前記軸方向孔の内径寸法をdbとし、硬度がHv550以上である前記焼き入れ硬化層の有効硬化層厚さ(深さ)をYoとした場合に、{(Da−db)/2}/Yoにより算出される有効硬化層比が、1.5<{(Da−db)/2}/Yo<10なる関係を満たす。
又、前記焼き入れ硬化層の最表面層に関して、硬度がHv650〜900であり、残留オーステナイト量が20〜45容量%である。
又、前記焼き入れ硬化層よりも径方向内側部分である芯部に関して、硬度がHv200〜300であり、残留オーステナイト量が容量0%である。
そして、軸方向両端部を遊星歯車式変速機を構成するキャリアに支持固定し、この焼き入れ硬化層を設けた部分の周囲に、ニードル等の転動体を介して遊星歯車を回転自在に支持する。
又、上述の様な本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、外径寸法を、10mm以下とする。
又、上述の様な本発明を実施する場合に例えば、請求項3に記載した発明の様に、前記焼き入れ硬化層を、外周面のうちの軸方向両端部に形成しない(軸方向両端部を除く部分全体に形成する)様にする。そして、当該部分の残留オーステナイト量を0%とする。
又、この様な請求項3に記載した発明を実施する場合に例えば、請求項4に記載した発明の様に、軸方向両端面に円形凹部を形成すると共に、前記軸方向孔の一方の開口部をこれら両円形凹部のうちの一方の円形凹部の底面に開口させる。そして、外周面のうちの少なくともこれら各円形凹部と軸方向に整合する部分に、前記焼き入れ硬化層を形成しない様にする。
尚、前記焼き入れ硬化層は、高周波焼き入れにより形成するが、この高周波焼き入れは、単に高周波焼き入れの後、低温焼き戻しする方法により形成する。この様な方法を採用する事により、上述の様に、芯部の残留オーステナイト量を0容量%とし、焼き入れ硬化層の最表面層の残留オーステナイト量を20〜45容量%以下にできる。
又、上述の様な本発明を実施する場合に例えば、請求項3に記載した発明の様に、前記焼き入れ硬化層を、外周面のうちの軸方向両端部に形成しない(軸方向両端部を除く部分全体に形成する)様にする。そして、当該部分の残留オーステナイト量を0%とする。
又、この様な請求項3に記載した発明を実施する場合に例えば、請求項4に記載した発明の様に、軸方向両端面に円形凹部を形成すると共に、前記軸方向孔の一方の開口部をこれら両円形凹部のうちの一方の円形凹部の底面に開口させる。そして、外周面のうちの少なくともこれら各円形凹部と軸方向に整合する部分に、前記焼き入れ硬化層を形成しない様にする。
尚、前記焼き入れ硬化層は、高周波焼き入れにより形成するが、この高周波焼き入れは、単に高周波焼き入れの後、低温焼き戻しする方法により形成する。この様な方法を採用する事により、上述の様に、芯部の残留オーステナイト量を0容量%とし、焼き入れ硬化層の最表面層の残留オーステナイト量を20〜45容量%以下にできる。
上述の様に構成する本発明によれば、焼き入れ性を低く抑えられ、且つ、転動寿命の向上を図れる、遊星歯車用支持軸の構造を実現できる。
先ず、焼き入れ性を低く抑えられる理由は、金属材料の組成を、前述の様に規制しているからである。即ち、金属材料の組成を規制する事により、上述の関係式により算出される焼き入れ指数DIを、SUJ2と比べて小さく(焼き入れ性を低く)する事ができる。
この様に焼き入れ指数DIを小さく規制する事により、例えば、請求項2に記載した発明の様に外径寸法が10mm以下と小さく、支持軸の外周面と軸方向孔の内周面との径方向距離が比較的小さい構造を採用した場合でも、中間部外周面に十分な硬さを有する焼き入れ硬化層を備え、且つ、この焼き入れ硬化層の内径側に十分な靱性を有する芯部を備えた構造を実現できる。
先ず、焼き入れ性を低く抑えられる理由は、金属材料の組成を、前述の様に規制しているからである。即ち、金属材料の組成を規制する事により、上述の関係式により算出される焼き入れ指数DIを、SUJ2と比べて小さく(焼き入れ性を低く)する事ができる。
この様に焼き入れ指数DIを小さく規制する事により、例えば、請求項2に記載した発明の様に外径寸法が10mm以下と小さく、支持軸の外周面と軸方向孔の内周面との径方向距離が比較的小さい構造を採用した場合でも、中間部外周面に十分な硬さを有する焼き入れ硬化層を備え、且つ、この焼き入れ硬化層の内径側に十分な靱性を有する芯部を備えた構造を実現できる。
又、転動寿命の向上を図れる理由は、焼き入れ硬化層の有効硬化層厚さ(深さ)Yoと、前記支持軸の外周面と前記軸方向孔の内周面との径方向距離{(Da−db)/2}とを、上述の関係に規制すると共に、焼き入れ硬化層の最表面層の硬度及び残留オーステナイト量と、芯部の硬度及び残留オーステナイト量とを前述の範囲に規制しているからである。即ち、中間部外周面に十分な硬さを有する焼き入れ硬化層を備え、且つ、この焼き入れ硬化層の内径側に靱性の高い芯部を存在させている。この為、遊星歯車用支持軸に欠損等の損傷が発生しにくくできて、転動寿命の向上を図れる。
又、合金鋼を構成する元素にケイ素(Si)を加えると共に、このケイ素の含有量を適切な量に規制している。この為、前述した特許文献2に記載された支持軸と比べて、基地のマルテンサイト化や残留オーステナイトの安定化を促進し、軸受寿命の向上を図れる。
又、合金鋼を構成する元素にケイ素(Si)を加えると共に、このケイ素の含有量を適切な量に規制している。この為、前述した特許文献2に記載された支持軸と比べて、基地のマルテンサイト化や残留オーステナイトの安定化を促進し、軸受寿命の向上を図れる。
又、請求項3或いは請求項4に記載した発明の場合、前記遊星歯車用支持軸の外周面のうちの軸方向両端部に前記焼き入れ硬化層を形成していない。この為、軸方向両端部の硬度を抑える事ができる。この結果、軸方向両端部をキャリアにかしめ固定すべく、この軸方向両端部を拡径(直径を広げる方向に塑性変形)させる際の加工荷重を小さくする事ができる。
[実施の形態の1例]
図1は、総ての請求項に対応する本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本発明の特徴は、遊星歯車用の支持軸4aを構成する金属材料の組成及び焼き入れ性を規制すると共に、この支持軸4aに形成した焼き入れ硬化層18aの性状を規制した点にある。この特徴部分以外の構造は、図2〜4に示した従来構造の遊星歯車用の支持軸4を含め、従来から知られている遊星歯車用の支持軸の構造とほぼ同様であるから、従来と同様に構成する部分に就いては説明を省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
図1は、総ての請求項に対応する本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本発明の特徴は、遊星歯車用の支持軸4aを構成する金属材料の組成及び焼き入れ性を規制すると共に、この支持軸4aに形成した焼き入れ硬化層18aの性状を規制した点にある。この特徴部分以外の構造は、図2〜4に示した従来構造の遊星歯車用の支持軸4を含め、従来から知られている遊星歯車用の支持軸の構造とほぼ同様であるから、従来と同様に構成する部分に就いては説明を省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
本例の遊星歯車用の支持軸4aは、炭素(C)を0.8〜1.2質量%、クロム(Cr)を0.1〜0.5質量%、マンガン(Mn)を0.4〜0.8質量%、ケイ素(Si)を0.5〜1.0質量%、それぞれ含有する合金鋼により構成されている。尚、残部は、主成分であるFeと、不可避不純物とからなる。以下、本発明の支持軸4aを構成する合金鋼の各構成元素及びその含有量の臨界的意義について説明する。
[炭素の含有量について]
炭素(C)は、基地に固溶して焼き入れ、焼き戻し後の硬さを向上させて強度を向上させると共に、鉄、クロム等の炭化物形成元素と結合して炭化物を形成し、耐摩耗性を高める作用を有する元素である。耐転がり疲労性に必要な硬さ及び所定の残留オーステナイト量を得る為に、炭素の含有量は0.8質量%以上とする必要がある。但し、1.2質量%を超えると、製鋼時に粗大な共晶炭化物が生成され易くなり、転動寿命や強度が低下する場合がある。又、鍛造性、冷間加工性、被削性が低下して、加工コストの上昇を招く場合がある。
炭素(C)は、基地に固溶して焼き入れ、焼き戻し後の硬さを向上させて強度を向上させると共に、鉄、クロム等の炭化物形成元素と結合して炭化物を形成し、耐摩耗性を高める作用を有する元素である。耐転がり疲労性に必要な硬さ及び所定の残留オーステナイト量を得る為に、炭素の含有量は0.8質量%以上とする必要がある。但し、1.2質量%を超えると、製鋼時に粗大な共晶炭化物が生成され易くなり、転動寿命や強度が低下する場合がある。又、鍛造性、冷間加工性、被削性が低下して、加工コストの上昇を招く場合がある。
〔クロムの含有量について〕
クロム(Cr)は、基地に固溶して焼き入れ性、焼き戻し軟化抵抗性、耐食性、及び転動寿命を高める作用を有する元素である。又、炭素、窒素などの侵入型固溶元素を実質的に動きにくくして、基地の組織を安定化し、水素侵入時の寿命低下を大幅に抑制する作用も有している。この様な作用を十分に得る為に、クロムの含有量は、0.1質量%以上とする。但し、0.5質量%を超えると、高周波焼き入れにより形成した焼き入れ硬化層の径方向厚さ(深さ)が必要以上に深くなる可能性があり、支持軸の転動寿命や強度が低下する場合がある。
クロム(Cr)は、基地に固溶して焼き入れ性、焼き戻し軟化抵抗性、耐食性、及び転動寿命を高める作用を有する元素である。又、炭素、窒素などの侵入型固溶元素を実質的に動きにくくして、基地の組織を安定化し、水素侵入時の寿命低下を大幅に抑制する作用も有している。この様な作用を十分に得る為に、クロムの含有量は、0.1質量%以上とする。但し、0.5質量%を超えると、高周波焼き入れにより形成した焼き入れ硬化層の径方向厚さ(深さ)が必要以上に深くなる可能性があり、支持軸の転動寿命や強度が低下する場合がある。
〔マンガンの含有量について〕
マンガン(Mn)は、製鋼時に脱酸剤として作用する元素である。又、クロムと同様に基地に固溶し、Ms点を降下させて残留オーステナイトを確保したり、焼き入れ性を高めたりする作用を有している。この様な作用を十分に得る為に、マンガンの含有量は、0.4質量%以上とする。但し、0.8質量%を超えると、冷間加工性、被削性が低下したり、マルテンサイト変態開始温度が低下して、多量の残留オーステナイトが残存し十分な硬さが得られない場合があるだけでなく、高周波焼き入れにより形成した焼き入れ硬化層の径方向厚さ(深さ)が必要以上に深くなる可能性があり、支持軸の転動寿命や強度が低下する場合がある。
マンガン(Mn)は、製鋼時に脱酸剤として作用する元素である。又、クロムと同様に基地に固溶し、Ms点を降下させて残留オーステナイトを確保したり、焼き入れ性を高めたりする作用を有している。この様な作用を十分に得る為に、マンガンの含有量は、0.4質量%以上とする。但し、0.8質量%を超えると、冷間加工性、被削性が低下したり、マルテンサイト変態開始温度が低下して、多量の残留オーステナイトが残存し十分な硬さが得られない場合があるだけでなく、高周波焼き入れにより形成した焼き入れ硬化層の径方向厚さ(深さ)が必要以上に深くなる可能性があり、支持軸の転動寿命や強度が低下する場合がある。
〔ケイ素の含有量について〕
ケイ素(Si)は、マンガンと同様に、製鋼時に脱酸剤として作用する元素である。又、クロム,マンガンと同様に、焼き入れ性を向上させると共に、基地のマルテンサイト化や残留オーステナイトの安定化を促進し、転動寿命の向上に有効な元素である。更に、焼き戻し軟化抵抗性を高める作用も有している。この様な作用を十分に得る為に、ケイ素の含有量は、0.5質量%以上とする。但し、1.0質量%を超えると、鍛造性、冷間加工性、被削性が低下する場合がある。
ケイ素(Si)は、マンガンと同様に、製鋼時に脱酸剤として作用する元素である。又、クロム,マンガンと同様に、焼き入れ性を向上させると共に、基地のマルテンサイト化や残留オーステナイトの安定化を促進し、転動寿命の向上に有効な元素である。更に、焼き戻し軟化抵抗性を高める作用も有している。この様な作用を十分に得る為に、ケイ素の含有量は、0.5質量%以上とする。但し、1.0質量%を超えると、鍛造性、冷間加工性、被削性が低下する場合がある。
又、本例の支持軸を構成する合金鋼は、D0=0.14+0.2×C(質量%)とし、FMn=1+4.1×Mn(質量%)とし、FCr=1+2.33×Cr(質量%)とし、FSi=1+0.64×Si(質量%)とした場合に、DI=D0×FMn×FCr×FSiなる関係式により算出される焼き入れ指数DIが、2<DI<3なる関係を満たしている。
尚、焼き入れ指数DIが2以下の場合には、焼き入れ性が低く(焼きが入りにくく)なり過ぎて、十分な焼き入れ硬化層の深さ、表面硬さ、残留オーステナイトが確保できない場合がある。一方、焼き入れ指数DIが3以上の場合には、焼き入れ性能が高く(焼きが入り易く)なり、前記支持軸4aの外周面と後述する軸方向孔15aの内周面との間の部分の断面全体が焼き入れ硬化されてしまう(焼き入れ硬化層が貫通してしまう)場合がある。
この様な事情に鑑みて、本例の場合には、焼き入れ指数DIを2<DI<3に規制している。
尚、焼き入れ指数DIが2以下の場合には、焼き入れ性が低く(焼きが入りにくく)なり過ぎて、十分な焼き入れ硬化層の深さ、表面硬さ、残留オーステナイトが確保できない場合がある。一方、焼き入れ指数DIが3以上の場合には、焼き入れ性能が高く(焼きが入り易く)なり、前記支持軸4aの外周面と後述する軸方向孔15aの内周面との間の部分の断面全体が焼き入れ硬化されてしまう(焼き入れ硬化層が貫通してしまう)場合がある。
この様な事情に鑑みて、本例の場合には、焼き入れ指数DIを2<DI<3に規制している。
以上の様な合金鋼により構成される本例の支持軸4aは、その外径寸法が、例えば10mm以下で一定の丸棒状であり、軸方向孔15aと、複数個(本例の場合2個)の径方向孔16a、16aと、焼き入れ硬化層18aとを有している。
このうちの軸方向孔15aは、前記支持軸4aの中心部に形成されている。又、この軸方向孔15aの軸方向一端(図1の左端)は、この支持軸4aの軸方向両端面に形成された1対の円すい台状の円形凹部19a、19bのうちの、一方の円形凹部19aの底部に開口している。一方、軸方向他端(図1の右端)は前記支持軸4aの軸方向中間部の他端寄り部分(前記焼き入れ硬化層18aの軸方向他端と、軸方向に関してほぼ整合する位置)に迄達している。
このうちの軸方向孔15aは、前記支持軸4aの中心部に形成されている。又、この軸方向孔15aの軸方向一端(図1の左端)は、この支持軸4aの軸方向両端面に形成された1対の円すい台状の円形凹部19a、19bのうちの、一方の円形凹部19aの底部に開口している。一方、軸方向他端(図1の右端)は前記支持軸4aの軸方向中間部の他端寄り部分(前記焼き入れ硬化層18aの軸方向他端と、軸方向に関してほぼ整合する位置)に迄達している。
又、前記各径方向孔16a、16aは、前記支持軸4aの軸方向中央寄り部分の円周方向に関して互いに反対側位置に設けられている。この様な各径方向孔16a、16aは、それぞれの径方向内端が、前記軸方向孔15aの軸方向中間部に開口すると共に、径方向外端が前記支持軸4aの外周面の軸方向中央寄り部分に開口している。
又、前記焼き入れ硬化層18aは、外周面の軸方向中間部のうち、前記各径方向孔16a、16aの径方向外側の開口部を除く部分に、軸方向の全長に亙りほぼ均一な深さに形成されている。尚、本例の場合、前記支持軸4aの軸方向両端部で前記両円形凹部19a、19bと軸方向に整合する部分(両円形凹部19a、19bの周囲部分)は、焼き入れ硬化せずに生のままとしている。
又、前記焼き入れ硬化層18aは、外周面の軸方向中間部のうち、前記各径方向孔16a、16aの径方向外側の開口部を除く部分に、軸方向の全長に亙りほぼ均一な深さに形成されている。尚、本例の場合、前記支持軸4aの軸方向両端部で前記両円形凹部19a、19bと軸方向に整合する部分(両円形凹部19a、19bの周囲部分)は、焼き入れ硬化せずに生のままとしている。
又、前記支持軸4aは、この支持軸4aの外径寸法をDaとし、前記軸方向孔15aの内径寸法をdbとし、硬度がHv550以上である前記焼き入れ硬化層18aの有効硬化層厚さをYoとした場合に、{(Da−db)/2}/Yoにより算出される有効硬化層比が、1.5<{(Da−db)/2}/Yo<10なる関係を満たしている。尚、有効硬化層比が、1.5以下の場合には、前記支持軸4aの外周面と前記軸方向孔15aの内周面との間の部分の断面全体が焼き入れ硬化されて(焼き入れ硬化層が貫通して)、当該部分の靱性が低下し、前記支持軸4aの耐衝撃性が損なわれてしまう場合がある。一方、有効硬化層比が、10以上の場合には、十分な焼き入れ硬化層の深さ、表面硬さ、及び残留オーステナイトの量を確保できない場合がある。この様な事情に鑑みて、本例の場合には、有効硬化層比を上述の範囲に規制している。
又、前記焼き入れ硬化層18aの最表面層の硬度がHv650〜900であり、当該部分の残留オーステナイト量を20〜45容量%としている。尚、前記焼き入れ硬化層18aの最表面層とは、外周面から50μmの深さまでの領域をいう。
異物混入下に於いて転がり疲労特性が低下するのは、異物の噛み込みによって圧痕やピーリングが形成され、当該部分に応力集中が生じる事が一因と考えられる。従って、前記支持軸4aの最表面層の硬度がHv650〜900の範囲であれば、内輪軌道13の硬さが十分であり圧痕が形成されにくい。硬度がHv650未満であると、表面硬さが不十分である為、圧痕が形成される場合がある。一方、硬度がHv900を超えると、高周波焼き入れ温度を高くする必要が生じる為、結晶粒径の粗大化により靱性が低下する場合がある。
異物混入下に於いて転がり疲労特性が低下するのは、異物の噛み込みによって圧痕やピーリングが形成され、当該部分に応力集中が生じる事が一因と考えられる。従って、前記支持軸4aの最表面層の硬度がHv650〜900の範囲であれば、内輪軌道13の硬さが十分であり圧痕が形成されにくい。硬度がHv650未満であると、表面硬さが不十分である為、圧痕が形成される場合がある。一方、硬度がHv900を超えると、高周波焼き入れ温度を高くする必要が生じる為、結晶粒径の粗大化により靱性が低下する場合がある。
又、最表面層の残留オーステナイト量が20〜45容量%の範囲であると、上述の様な圧痕やピーリングの発生を抑え、転動寿命を確保できる。即ち、比較的軟らかい金属組織であり、緩衝作用を有する残留オーステナイトを適正量含有させる事で、摩耗粉等の硬い異物が混入した潤滑油での潤滑を行う等、厳しい使用条件下でも圧痕やピーリングの発生を抑え、転動寿命を確保できる。但し、前記最表面層部分の残留オーステナイト量が20容量%未満の場合には、前記作用・効果を十分に得られない。これに対して、45容量%を越えると、残留オーステナイトの分解に伴う前記支持軸4aの変形や寸法変化を抑えにくくなる。
又、前記支持軸4aの、焼き入れ硬化層18aよりも径方向内側部分に存在する芯部20及び前記支持軸4aの軸方向両端部の硬度がHv200〜300であり、残留オーステナイト量を0容量%としている。この様に芯部20の残留オーステナイト量を0容量%としている為、残留オーステナイトの分解に伴う前記支持軸4aの変形や寸法変化を抑えられて、長期間に亙る使用によっても、この支持軸4aによる遊星歯車3(図2〜4参照)の支持精度を十分に良好なままに維持できる。尚、この硬度がHv200未満の場合には、完成後の支持軸4aの曲げ剛性を確保する事が難しくなる。これに対して、前記硬度がHv300を越えると、軸方向両端部をキャリア6(図3、4参照)にかしめ固定すべく、この軸方向両端部を拡径(直径を広げる方向に塑性変形)しにくくなる。又、完成後の支持軸4aの靱性確保も難しくなる。
次いで、上述の様な本例の支持軸4aの製造方法に就いて簡単に説明する。
先ず、前述の様な組成を有する合金鋼から成り、所定の外径を有する長尺な素材(断面円形の線材)を、アンコイラから引き出して、所定長さ(完成後の長さに、軸方向両端面の形状を整える為に必要とする削り代を加えた長さ)に切断する。尚、合金鋼自体の(焼き入れせずに生のままの状態での)硬さが、Hv200〜300のものを使用する。
先ず、前述の様な組成を有する合金鋼から成り、所定の外径を有する長尺な素材(断面円形の線材)を、アンコイラから引き出して、所定長さ(完成後の長さに、軸方向両端面の形状を整える為に必要とする削り代を加えた長さ)に切断する。尚、合金鋼自体の(焼き入れせずに生のままの状態での)硬さが、Hv200〜300のものを使用する。
上述の様にして所定長さに切断した素材は、その後、鍛造等の塑性加工、或は旋削等の切削加工を施す事により、軸方向両端面に前記円形凹部19a、19bを形成された第一中間素材とする。この第一中間素材は、未だ前記焼き入れ硬化層18aを形成しておらず、全体が生のままである。
この様な第一中間素材には、続く工程で、軸方向中間部の1乃至複数個所(本例の場合2箇所)に前記各径方向孔16a、16aを、ほぼ前記第一中間素材の中心部まで形成して第二中間素材とする。尚、これら各径方向孔16a、16aを穿設する作業は、ボール盤等を使用した切削加工により行うが、前記第一中間素材は、焼き入れ硬化せずに全体が生のままである為、この切削加工は容易に行える。又、前記各径方向孔16a、16aの内径R16aは、1mm以上(例えば1〜4mm程度)とする。
次いで、前記第二中間素材に、前記軸方向孔15aを形成して、第三中間素材とする。この様な軸方向孔15aは、ボール盤等を使用した切削加工により、前記第二中間素材の軸方向端面に形成した一方の円形凹部19aの底面中心部から、前記支持軸4aの軸方向中間部の他端寄り部分に達した部分にまで形成する。又、前記軸方向孔15aの内径は1mm以上(例えば1〜4mm)としている。尚、この軸方向孔15aを形成する、前記第二中間素材も、焼き入れ硬化されていない生の(比較的軟らかい)部分であるから、前記軸方向孔15aを形成する作業は容易に行える。又、前記各径方向孔16a、16aと前記軸方向孔15aとの形成順序は逆にする事もできる。
次いで、前記第三中間素材の外周面の軸方向中間部に、熱処理(高周波焼き入れ処理及び焼き戻し処理)を施して第四中間素材とする。この第四中間素材は、軸方向中間部に前記焼き入れ硬化層18aを形成すると共に、軸方向両端部で前記両円形凹部19a、19bの周囲部分は、焼き入れ硬化せずに生のままとしている。尚、前記熱処理のうち、高周波焼入れ処理は、焼き入れ温度が900〜950℃の範囲で、1〜20秒間保持して行う。又、同じく焼き戻し処理は、所謂低温焼き戻しであり、焼き戻し温度が150〜180℃の範囲で、約1.5時間保持して行う。
最後に、前記第四中間素材に、外径荒研削、外径仕上研削、及び超仕上研削を施して、前記支持軸4aを得る。
最後に、前記第四中間素材に、外径荒研削、外径仕上研削、及び超仕上研削を施して、前記支持軸4aを得る。
前述の様な本例の支持軸4aによれば、焼き入れ性を低く抑えられ、且つ、転動寿命の向上を図れる構造を実現できる。
先ず、焼き入れ性を低く抑えられる理由は、金属材料(合金鋼)の組成を、前述の様に規制しているからである。即ち、金属材料の組成を規制する事により、上述の関係式により算出される焼き入れ指数DIを、SUJ2と比べて小さく(焼き入れ性を低く)する事ができる。
この様に焼き入れ指数DIを小さく規制する事により、例えば、外径寸法が10mm以下と小さく、前記支持軸4aの外周面と前記軸方向孔15aの内周面との径方向距離が比較的小さい構造を採用した場合でも、中間部外周面に十分な硬さを有する焼き入れ硬化層18aを備え、且つ、この焼き入れ硬化層18aの内径側に十分な靱性を有する前記芯部20を備えた構造を実現できる。
先ず、焼き入れ性を低く抑えられる理由は、金属材料(合金鋼)の組成を、前述の様に規制しているからである。即ち、金属材料の組成を規制する事により、上述の関係式により算出される焼き入れ指数DIを、SUJ2と比べて小さく(焼き入れ性を低く)する事ができる。
この様に焼き入れ指数DIを小さく規制する事により、例えば、外径寸法が10mm以下と小さく、前記支持軸4aの外周面と前記軸方向孔15aの内周面との径方向距離が比較的小さい構造を採用した場合でも、中間部外周面に十分な硬さを有する焼き入れ硬化層18aを備え、且つ、この焼き入れ硬化層18aの内径側に十分な靱性を有する前記芯部20を備えた構造を実現できる。
又、転動寿命の向上を図れる理由は、前記焼き入れ硬化層18aの有効硬化層厚さ(深さ)Yoと、前記支持軸4aの外周面と前記軸方向孔15aの内周面との径方向距離{(Da−db)/2}とを、上述の関係に規制すると共に、前記焼き入れ硬化層18aの最表面層の硬度及び残留オーステナイト量と、前記芯部20の硬度及び残留オーステナイト量とを前述の範囲に規制しているからである。即ち、中間部外周面に十分な硬さを有する前記焼き入れ硬化層18aを備え、且つ、この焼き入れ硬化層18aの内径側に靱性の高い前記芯部20を存在させる事ができる。この為、遊星歯車用支持軸に欠損等の損傷が発生しにくくできて、転動寿命の向上を図れる。
又、合金鋼を構成する元素にケイ素(Si)を加えると共に、このケイ素の含有量を適切な量に規制している。この為、前述した特許文献2に記載された支持軸と比べて、基地のマルテンサイト化や残留オーステナイトの安定化を促進し、軸受寿命の向上を図れる。
又、合金鋼を構成する元素にケイ素(Si)を加えると共に、このケイ素の含有量を適切な量に規制している。この為、前述した特許文献2に記載された支持軸と比べて、基地のマルテンサイト化や残留オーステナイトの安定化を促進し、軸受寿命の向上を図れる。
又、前記支持軸4aの外周面のうちの軸方向両端部には、前記焼き入れ硬化層18aを形成していない。この為、軸方向両端部の硬度を抑える事ができる。この結果、軸方向両端部を前記キャリア6にかしめ固定すべく、この軸方向両端部を拡径(直径を広げる方向に塑性変形)させる際の加工荷重を小さくする事ができる。
[実施例]
次に、本発明の効果を確認する為に行った試験の結果に就いて説明する。
この実験には、表1に示す合金鋼A〜Gを用いて、表2に示す実施例1〜6及び比較例1〜6の様な支持軸4aを作製し、後述する試験機に組み込んで行った。
尚、表1に示す合金鋼A〜Gのうち、合金鋼A〜Fを構成する各構成元素の含有量は、本願発明の範囲に属するものであり、合金鋼Gは、SUJ2である。又、表2の有効硬化層比に就いては、後述する様に、試験に用いた各支持軸4aはその外径を10mmで統一している為、軸方向孔15aの内径dbを変える事により設定している。
次に、本発明の効果を確認する為に行った試験の結果に就いて説明する。
この実験には、表1に示す合金鋼A〜Gを用いて、表2に示す実施例1〜6及び比較例1〜6の様な支持軸4aを作製し、後述する試験機に組み込んで行った。
尚、表1に示す合金鋼A〜Gのうち、合金鋼A〜Fを構成する各構成元素の含有量は、本願発明の範囲に属するものであり、合金鋼Gは、SUJ2である。又、表2の有効硬化層比に就いては、後述する様に、試験に用いた各支持軸4aはその外径を10mmで統一している為、軸方向孔15aの内径dbを変える事により設定している。
この試験の条件は次の通りである。
試験機:NSK製プラネタリニードル試験機
支持軸の外径:10mm
支持軸の長さ:35mm
ニードルの材質:SUJ2
ニードルの外径:2.5mm
ニードルの長さ:12.8mm
保持器の材質:JIS規格SCM415を浸炭窒化処理したもの
基本動定格荷重:7600N
基本静定格荷重:6350N
ラジアル荷重:3000N
ピニオン自転数:5000min−1
計算寿命:74時間
潤滑油:ATF
潤滑油温度:100℃
試験機:NSK製プラネタリニードル試験機
支持軸の外径:10mm
支持軸の長さ:35mm
ニードルの材質:SUJ2
ニードルの外径:2.5mm
ニードルの長さ:12.8mm
保持器の材質:JIS規格SCM415を浸炭窒化処理したもの
基本動定格荷重:7600N
基本静定格荷重:6350N
ラジアル荷重:3000N
ピニオン自転数:5000min−1
計算寿命:74時間
潤滑油:ATF
潤滑油温度:100℃
上述の条件で、表2に示す実施例1〜6及び比較例1〜6の試料毎に転動寿命試験を行った。この試験は、これら各試料を前記NSK製プラネタリニードル試験機に装着した状態、即ち、遊星歯車の中心孔に試料である支持軸を挿通し、この支持軸の外周面とこの遊星歯車の内周面との間に、保持器により保持された複数のニードルを転動自在に設け、この遊星歯車を前記支持軸に対して回転自在に支持した状態で行った。
そして、ニードル、支持軸、及び遊星歯車のうち、少なくとも一つの部材が破損した時点で試験を中止し、その時点までの試験稼働時間を転動寿命とした。尚、上述の様な状態で行う試験に於いて、ニードル、支持軸、及び遊星歯車のうち、支持軸が、最も破損し易い部材である事は、事前に行った予備試験により確認している。
そして、ニードル、支持軸、及び遊星歯車のうち、少なくとも一つの部材が破損した時点で試験を中止し、その時点までの試験稼働時間を転動寿命とした。尚、上述の様な状態で行う試験に於いて、ニードル、支持軸、及び遊星歯車のうち、支持軸が、最も破損し易い部材である事は、事前に行った予備試験により確認している。
上述の試験の結果は、表2に示した通りである。尚、表2に示す転動寿命に就いては、表1に示す合金鋼G製(SUJ2製)の支持軸である比較例6の転動寿命を1(基準)とした場合の比として記載している。又、表2に示す、硬化層貫通の有無に就いては、支持軸の外周面と軸方向孔の内周面との間の部分の断面全体が焼き入れ硬化されているか否かを示している。
前記表2に示した実験の結果を考察する。先ず、実施例1〜6の転動寿命は、基準である比較例6の転動寿命よりも、少なくとも3倍以上延びている事が分かる。
次いで、比較例1は、有効硬化層比が本発明の範囲よりも小さく、硬化層が貫通している。この為、支持軸の靱性が低下し、支持軸の耐衝撃性が損なわれていると考えられる。この様な比較例1の場合、比較例6の転動寿命よりも短い時間で破損した。
次いで、比較例1は、有効硬化層比が本発明の範囲よりも小さく、硬化層が貫通している。この為、支持軸の靱性が低下し、支持軸の耐衝撃性が損なわれていると考えられる。この様な比較例1の場合、比較例6の転動寿命よりも短い時間で破損した。
次いで、比較例2は、高周波焼き入れの温度を抑えた為、硬化層は貫通していないものの、有効硬化層比が本発明の範囲よりも小さい。又、最表面層の硬さ及び残留オーステナイト量(γR)が本発明の範囲よりも小さい。この為、支持軸の靱性の低下、或いは耐摩耗性の低下等により、転がり疲労特性が低下している事が考えられる。この様な比較例2の場合、比較例6の転動寿命の半分以下の転動寿命となった。
次いで、比較例3は、有効硬化層比が本発明の範囲よりも大きい。又、最表面層の硬さ及び残留オーステナイト量(γR)が本発明の範囲よりも小さい。この為、十分な焼き入れ硬化層の深さ、表面硬さ、及び残留オーステナイト量が確保できず、転がり疲労特性が低下している事が考えられる。この様な比較例3の場合、比較例6の転動寿命の半分以下の転動寿命となった。
次いで、比較例4は、焼き入れ指数DIが本発明の範囲よりも大きい。又、有効硬化層比が本発明の範囲よりも小さく、焼き入れ硬化層も貫通している。この為、支持軸の靱性が低下し、支持軸の耐衝撃性が損なわれていると考えられる。この様な比較例4の場合、比較例6の転動寿命よりも短い時間で破損してしまった。
次いで、比較例5は、焼き入れ指数DIが本発明の範囲よりも小さい。又、有効硬化層比が本発明の範囲よりも小さく、焼き入れ硬化層も貫通している。この為、支持軸の靱性が低下し、支持軸の耐衝撃性が損なわれていると考えられる。この様な比較例5の場合、比較例6の転動寿命よりも短い時間で破損してしまった。
最後に、比較例6は、SUJ2製であり、最表面層の残留オーステナイト量(γR)が本願発明の範囲よりも小さい。又、焼き入れ指数DIが本発明の範囲よりも大きい。更に、有効硬化層比が本発明の範囲よりも小さく、焼き入れ硬化層も貫通している。この様な比較例6は、最表面層に剥離が発生して寿命に達した。
以上の試験結果から、本発明の技術的範囲に属する前記各実施例1〜6は、外径が10mm以下の細径の支持軸を製造した場合にも、十分な転動寿命を得られる事が分かる。一方、本発明の技術的範囲から外れる前記各比較例1〜6は、前記細径の支持軸を製造した場合に、十分な転動寿命を得る事ができていない事が分かる。
以上の試験結果から、本発明の技術的範囲に属する前記各実施例1〜6は、外径が10mm以下の細径の支持軸を製造した場合にも、十分な転動寿命を得られる事が分かる。一方、本発明の技術的範囲から外れる前記各比較例1〜6は、前記細径の支持軸を製造した場合に、十分な転動寿命を得る事ができていない事が分かる。
1 太陽歯車
1a 歯
2 リング歯車
2a 歯
3 遊星歯車
3a 歯
4、4a 支持軸
5 ニードル
6 キャリア
7 基板
8a、8b 通孔
9 係止ピン
10 円筒部
11 回転軸
12 連結板
13 内輪軌道
14 外輪軌道
15、15a 軸方向孔
16、16a 径方向孔
17 潤滑油供給路
18、18a、18b 焼き入れ硬化層
19a、19b 円形凹部
20 芯部
1a 歯
2 リング歯車
2a 歯
3 遊星歯車
3a 歯
4、4a 支持軸
5 ニードル
6 キャリア
7 基板
8a、8b 通孔
9 係止ピン
10 円筒部
11 回転軸
12 連結板
13 内輪軌道
14 外輪軌道
15、15a 軸方向孔
16、16a 径方向孔
17 潤滑油供給路
18、18a、18b 焼き入れ硬化層
19a、19b 円形凹部
20 芯部
Claims (4)
- Cを0.8〜1.2質量%、Crを0.1〜0.5質量%、Mnを0.4〜0.8質量%、Siを0.5〜1.0質量%、それぞれ含有し、残部がFeと不可避不純物からなり、
D0=0.14+0.2×Cとし、FMn=1+4.1×Mnとし、FCr=1+2.33×Crとし、FSi=1+0.64×Siとした場合に、DI=D0×FMn×FCr×FSiなる関係式により算出される焼入れ指数DIが、2<DI<3なる関係を満たす鉄系合金製であり、
中心部に、軸方向一端面に開口すると共に、軸方向中間部に迄達する状態で形成された軸方向孔と、
軸方向中間部に、外周面と前記軸方向孔の内周面とを連通させる状態で形成された径方向孔と、
少なくとも軸方向中間部の外周寄り部分に、高周波焼き入れ処理及び焼き戻し処理を施す事により形成された焼き入れ硬化層とを、それぞれ有し、
外径寸法をDaとし、前記軸方向孔の内径寸法をdbとし、硬度がHv550以上である前記焼き入れ硬化層の有効硬化層厚さをYoとした場合に、{(Da−db)/2}/Yoにより算出される有効硬化層比が、1.5<{(Da−db)/2}/Yo<10なる関係を満たし、
前記焼き入れ硬化層の最表面層に関して、硬度がHv650〜900であり、残留オーステナイト量が20〜45容量%であり、
前記焼き入れ硬化層よりも径方向内側部分である芯部に関して、硬度がHv200〜300であり、残留オーステナイト量が0容量%であり、
軸方向両端部を遊星歯車式変速機を構成するキャリアに支持固定し、前記焼き入れ硬化層を設けた部分の周囲に転動体を介して遊星歯車を回転自在に支持する事を特徴とする遊星歯車用支持軸。 - 外径寸法が、10mm以下である、請求項1に記載した遊星歯車用支持軸。
- 外周面のうちの軸方向両端部に前記焼き入れ硬化層を形成せず、当該部分の残留オーステナイト量が0%である、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した遊星歯車用支持軸。
- 軸方向両端面に円形凹部が形成されていると共に、前記軸方向孔の一方の開口部がこれら両円形凹部のうちの一方の円形凹部の底面に開口しており、
外周面のうちの少なくとも前記各円形凹部と軸方向に整合する部分に、前記焼き入れ硬化層を形成していない、請求項3に記載した遊星歯車用支持軸。
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---|---|---|---|---|
JP2020056357A (ja) * | 2018-10-02 | 2020-04-09 | 日立オートモティブシステムズ株式会社 | 内燃機関のバルブタイミング制御装置 |
-
2013
- 2013-05-29 JP JP2013113150A patent/JP2014231878A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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