JP2005140275A - プラネタリギヤ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高温下において高速回転で使用しても長寿命なプラネタリギヤ装置を提供する。
【解決手段】 プラネタリギヤ装置は、同心に配されたサンギヤ1及びリングギヤ2に噛み合うピニオンギヤ3と、ピニオンギヤ3の中心に挿通されピニオンギヤ3を回転自在に支持するピニオンシャフト5と、ピニオンギヤ3の内周面に形成された軌道面とピニオンシャフト5の外周面に形成された軌道面との間に転動自在に配された複数のころと、を備えている。
このピニオンシャフト5の軸線方向中央部は、その表面層の残留オーステナイト量が15体積%未満であり、ピニオンシャフト5の軌道面が形成された部分のうち軸線方向端部は、その表面層の残留オーステナイト量が15体積%以上40体積%以下である。
【選択図】 図2

Description

本発明は、プラネタリギヤ装置に関する。
例えば自動車の自動変速機に用いられるプラネタリギヤ装置は、サンギヤ,リングギヤ,及びキャリヤを備えており、これらの回転要素は出力軸の周りに同心に配されている。また、サンギヤ及びリングギヤに噛み合うピニオンギヤが、キャリヤに固定されたピニオンシャフトに、ニードルローラのような軸受用ころを介して回転自在に支持されている。そして、各回転の遠心力によって各回転要素に潤滑油が供給されるように、油路が備えられている。
しかしながら、プラネタリギヤ装置の構造は、ピニオンギヤが自転しながら公転するという複雑なものであるので、十分な潤滑油をピニオンシャフト及びころに供給することは困難であった。また、各回転要素の中ではピニオンギヤの回転速度が最も高いので、ピニオンギヤを支持するピニオンシャフトには、ピニオンギヤに作用する遠心力を支えるために大きな荷重が負荷される傾向があった。
したがって、従来のプラネタリギヤ装置においては、ピニオンシャフトはJIS鋼種SK5等で構成され、ころが転走する部分には高周波焼入れが施されて、転動部材として必要な硬さ(Hv650以上)が付与されていた。また、潤滑不良等による剥離寿命が問題となる場合には、ピニオンシャフトはJIS鋼種SUJ2等で構成され、浸炭窒化処理等が施されて寿命が確保されていた。
特開2002−4003号公報
近年、自動車の低燃費化の要求がますます強まっており、低燃費化を目的としてトランスミッションの小型化や高効率化が行われている。そのため、ピニオンギヤの回転速度が高まっているので、ピニオンシャフトに負荷される荷重が増大し且つ温度が上昇し、さらに潤滑油量が減少する傾向となっている。
その結果、前述のような従来のプラネタリギヤ装置に用いられているピニオンシャフトでは、塑性変形が生じるおそれがあった。塑性変形が生じると、ピニオンシャフトところとの間に生じる滑りが増大し軌道面の摩耗や面荒れ等が生じるため、早期剥離に至り寿命が不十分となるという問題があった。
負荷される荷重の大きさが弾性変形の範囲内であっても、荷重が加わった状態で高温に曝されると塑性変形が生じる場合があり、これはピニオンシャフトに作用している応力を緩和する方向にピニオンシャフトの形状が近づいていく現象であると考えられる。そして、残留オーステナイト量が多いほど塑性変形量も大きくなる傾向にある。このため、塑性変形を抑制するためには、残留オーステナイト量を極力少なくすることが最も効果的である。しかしながら、ころが転動する軌道面の表面層の残留オーステナイト量が少ないと、転動疲労寿命特性が低下する傾向があり、必要な耐久性が得られないおそれがある。
シャフトの塑性変形を抑制する技術としては、浸炭窒化処理を施した後に調質処理を施し、さらに表面層のみに高周波焼入れを施すことによって、表面の残留オーステナイト量及び硬さを高くして転動疲労寿命特性を向上させ、且つ、芯部の残留オーステナイト量を0体積%として塑性変形を抑制する方法が提案されている(特許文献1を参照)。しかしながら、使用条件が高温,高速であると、塑性変形の抑制が不十分となり寿命が低下する場合があった。
そこで、本発明は、上記のような従来のプラネタリギヤ装置が有する問題点を解決し、高温下において高速回転で使用しても長寿命なプラネタリギヤ装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1のプラネタリギヤ装置は、同心に配されたサンギヤ及びリングギヤに噛み合うピニオンギヤと、前記ピニオンギヤの中心に挿通され前記ピニオンギヤを回転自在に支持するピニオンシャフトと、前記ピニオンギヤの内周面に形成された軌道面と前記ピニオンシャフトの外周面に形成された軌道面との間に転動自在に配された複数のころと、を備えるプラネタリギヤ装置において、前記ピニオンシャフトの軸線方向中央部は、その表面層の残留オーステナイト量が15体積%未満であり、前記ピニオンシャフトの前記軌道面が形成された部分のうち少なくとも一部分は、その表面層の残留オーステナイト量が15体積%以上40体積%以下であることを特徴とする。
また、本発明に係る請求項2のプラネタリギヤ装置は、同心に配されたサンギヤ及びリングギヤに噛み合うピニオンギヤと、前記ピニオンギヤの中心に挿通され前記ピニオンギヤを回転自在に支持するピニオンシャフトと、前記ピニオンギヤの内周面に形成された軌道面と前記ピニオンシャフトの外周面に形成された軌道面との間に転動自在に配された複数のころと、を備えるプラネタリギヤ装置において、前記ピニオンシャフトの軸線方向中央部は、その表面層の残留オーステナイト量が15体積%未満であり、前記ピニオンシャフトの前記軌道面が形成された部分のうち前記軸線方向端部は、その表面層の残留オーステナイト量が15体積%以上40体積%以下であることを特徴とする。
プラネタリギヤ装置の長寿命化のためには、ピニオンシャフトの塑性変形を抑制することが最も重要である。本発明者は、鋭意検討の結果、ピニオンシャフトの軸線方向(すなわち長手方向)の中央部を塑性変形しにくいようにすれば、全体がほぼ均一に塑性変形するものと比較して、塑性変形量を大幅に低減できることを見出した。
このことを説明する概念図を、図1に示す。ピニオンシャフトには単列又は複列のころが通常は軸線方向全体にわたって配されているので、全体がほぼ均一に塑性変形するピニオンシャフトの場合は、該ころを介して負荷された荷重によって、図1において破線で示すように軸線方向全体がほぼ均一に塑性変形することとなる。しかしながら、ピニオンシャフトの軸線方向中央部が塑性変形しなければ、他の部分が塑性変形したとしても、図1において一点鎖線で示すように塑性変形量は極めて小さくなる。
本発明のプラネタリギヤ装置においては、ピニオンシャフトの軸線方向中央部は、その表面層の残留オーステナイト量が15体積%未満とされており、塑性変形しにくいようになっているので、ピニオンシャフト全体の塑性変形量が小さい。
一方、ピニオンシャフトの表面層のうちころが転動する軌道面が形成された部分の残留オーステナイト量が少ないと、転動疲労寿命特性が低下する傾向があるが、本発明のプラネタリギヤ装置においては、ピニオンシャフトの軌道面が形成された部分のうち少なくとも一部分は、その表面層の残留オーステナイト量が15体積%以上40体積%以下とされているので、ピニオンシャフトの転動疲労寿命特性が優れている。これらのことから、本発明のプラネタリギヤ装置は長寿命となる。
なお、ピニオンシャフトの軌道面の軸線方向端部においては、ころとの間に滑りが発生しやすく、エッジロードによる過大荷重も発生しやすいので、ピニオンシャフトの塑性変形に由来する早期剥離が生じやすい傾向がある。よって、ピニオンシャフトの軌道面の軸線方向端部の転動疲労寿命特性を優れたものとすれば、ピニオンシャフトの耐久性が向上しプラネタリギヤ装置は長寿命となると考えられる。
本発明に係る請求項2のプラネタリギヤ装置においては、ピニオンシャフトの軌道面が形成された部分のうち軸線方向端部は、その表面層の残留オーステナイト量が15体積%以上40体積%以下とされているので、ピニオンシャフトの転動疲労寿命特性がより優れている。よって、本発明に係る請求項2のプラネタリギヤ装置はより長寿命である。
本発明のプラネタリギヤ装置は、ピニオンシャフトの塑性変形が抑制され、転動疲労寿命特性が優れているので、長寿命である。
本発明に係るプラネタリギヤ装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図2に示すプラネタリギヤ装置は、図示しない軸が挿通されたサンギヤ1と、該サンギヤ1と同心に配されたリングギヤ2と、サンギヤ1及びリングギヤ2に噛み合う複数(図2においては3個)のピニオンギヤ3と、サンギヤ1及びリングギヤ2と同心に配されピニオンギヤ3を回転自在に支持するキャリヤ4と、を備えている。
ピニオンギヤ3の中心には、キャリヤ4に固定されたピニオンシャフト5が挿通されており、また、ピニオンギヤ3の内周面に形成された軌道面とピニオンシャフト5の外周面に形成された軌道面との間には、図示しない単列又は複列のニードルローラが転動自在に配されていて、これによりピニオンギヤ3はピニオンシャフト5を軸として回転自在とされている。
ここで、ピニオンシャフト5の軸線方向中央部(すなわち長手方向中央部)は、その表面層の残留オーステナイト量が15体積%未満とされている。このため、ピニオンシャフト5の軸線方向中央部は塑性変形しにくいので、ピニオンシャフト全体の塑性変形量が小さい。
また、ピニオンシャフト5の軌道面が形成された部分(すなわちニードルローラが接触する部分)のうち軸線方向端部は、その表面層の残留オーステナイト量が15体積%以上40体積%以下とされている。ピニオンシャフト5の軌道面の軸線方向端部においては、ニードルローラとの間に滑りが発生しやすく、エッジロードによる過大荷重も発生しやすいので、ピニオンシャフト5の塑性変形に由来する早期剥離が生じやすい傾向があるが、この部分の転動疲労寿命特性が優れているので、早期剥離が生じにくい。
これらのことから、ピニオンシャフト5の耐久性が向上するため、本実施形態のプラネタリギヤ装置は長寿命であり、特に、高温下において高速回転で使用されても優れた寿命を有している。なお、本発明における表面層とは、ころの直径をDaとすると、ピニオンシャフトの表面からDaの2%の深さ位置までの部分を意味する。
以下に、ピニオンシャフト5についてさらに詳細に説明する。プラネタリギヤ装置の使用条件の高温,高速化に伴うピニオンシャフトの早期剥離は、滑りの増大や潤滑不良による表面疲労である。表面疲労は、軌道面の表面からDaの2%の深さ位置までの部分か、あるいは、表面から0.1mm程度の深さ位置までの部分の表面層に生じるものであり、最表面部分の疲労が最も大きい。このような表面疲労に対して寿命を向上させるためには、軌道面の表面層の硬さをHv650以上と高硬度に維持しながら、残留オーステナイト量を15体積%以上40体積%以下、好ましくは20体積%以上35体積%以下とする必要がある。
また、滑りの増大や潤滑不良による摩耗や面荒れも早期剥離の原因となるため、耐摩耗性を向上させて面荒れを防止することが好ましい。摩耗による面荒れを抑制するためには、表面の窒素濃度を高くすることが有効である。窒素は、浸炭窒化処理によって表面層に浸入させることが可能であり、十分な効果を得るためには0.05質量%以上浸入させる必要がある。しかしながら、過剰に浸入させても、その効果は飽和するばかりか、熱処理コストの増大や研削性の低下による生産性の低下を招くことから、上限は0.8質量%とする必要がある。より好ましい表面窒素濃度は、0.1質量%以上0.5質量%以下である。
以上のような表面層を得るためには、素材を旋削加工等によって仕上げ加工に必要な取り代を残した形状寸法にした後、浸炭窒化処理によって表面に窒素を浸入させてからそのまま焼入れを施し、引き続き焼戻し処理を施せばよい。また、浸炭窒化処理の後にそのまま焼入れを行うか放冷を行い、その後に調質処理を施してからさらに高周波焼入れを施して、表面層の硬さ及び残留オーステナイト量を確保するようにしてもよい。
ピニオンシャフトをキャリアに固定する方法には、ピニオンシャフト端部に固定用のピンを圧入する方法(以降は「ピン止めタイプ」と記す)と、ピニオンシャフト端部をかしめることによって固定する方法(以降は「かしめタイプ」と記す)とがあり、それぞれピニオンシャフト端部に必要とされる硬さが異なるが、高周波焼入れを施す方法によれば、いずれの固定方法のピニオンシャフトについても製造することが可能となる。例えば、かしめタイプの場合は、浸炭窒化処理後に放冷して650〜720℃程度の高温で調質を行うことによって端部の硬さをHv300以下にし、ピン止めタイプの場合は、浸炭窒化処理後に550℃程度以下の温度で調質を行うことによって端部の硬さをHv400以下にし、その後に軌道面となる部分に高周波焼入れを施せばよい。
このようにすれば、軌道面の寿命特性を向上させることができるが、ピニオンシャフト全体にわたって表面層の残留オーステナイト量を高くすると塑性変形に対する抵抗力が不足してしまうため、焼入れ又は焼戻しの後に、軌道面に部分的に高周波焼戻しを施して残留オーステナイトを分解させる必要がある。このとき、塑性変形を抑制するための十分な効果を得るためには、表面層の残留オーステナイト量を15体積%未満とする必要があり、8体積%以下とすることがより好ましい。
ただし、残留オーステナイトを分解させるためにあまりに高温で焼き戻すと、表面硬さが低下しすぎて転動部材としての強度が不足してしまうため、表面硬さがHv650以上となるように調整することが好ましい。また、高周波焼戻しを施す範囲は、塑性変形を防止するためには広範囲であることが好ましいが、広範囲にしすぎると軌道面の表面疲労に対する耐性が低下し、かえって耐久性が低下してしまうおそれがある。よって、軌道面のうちの少なくとも一部分、特に軌道面の軸方向端部には高周波焼戻しを施さないようにする必要がある。
表面層の残留オーステナイト量が15体積%未満である部分と、表面層の残留オーステナイト量が15体積%以上40体積%以下である部分との配置の具体例を、図3に模式的に示す。図3のピニオンシャフトにおいて斜線を付した部分が、表面層の残留オーステナイト量が15体積%未満である部分であり、この部分が塑性変形を抑制する効果を有する塑性変形防止部となる。
塑性変形防止部は、図3の(a)及び(d)に示すように、ピニオンシャフトの軸方向中央部の狭い範囲に配してもよいし、図3の(b)及び(e)に示すように、ピニオンシャフトの軸方向中央部の広い範囲に配してもよい。また、図3の(c)に示すように、ピニオンシャフトの軸方向中央部における複数の部分に配しても、塑性変形を抑制する効果が得られる。複列のニードルローラを有する場合には、複数の軌道面の位置に対応させて、塑性変形防止部を配してもよい。すなわち、図3の(a)及び(c)に示すように、軌道面部分に高周波焼入れを施し、軌道面と軌道面との間のニードルローラが転動しない部分は未焼入れ状態とする等の方法によって、ニードルローラが転動しない部分を塑性変形防止部としてもよい。
前述したように、塑性変形を抑制するためには塑性変形防止部は広範囲に配されていることが好ましいが、広範囲にしすぎると耐久性が低下するおそれがあるので、図3に示すように、軌道面の軸方向端部のうち少なくとも一部は、表面層の残留オーステナイト量が15体積%以上40体積%以下である部分とされている。図3の(b)及び(e)においては、ピニオンシャフトの軸方向中央部の広い範囲に塑性変形防止部が配されているが、優れた耐久性を付与するためには、塑性変形防止部の範囲の広さには上限がある。すなわち、軌道面の軸方向端部からニードルローラの軸方向長さの1/3の長さ位置までの範囲は、表面層の残留オーステナイト量が15体積%以上40体積%以下である部分とすることが好ましく、この範囲にまで塑性変形防止部を配することは耐久性の面から好ましくない。ただし、耐久性をより高めるためには、軌道面の軸方向端部からニードルローラの軸方向長さの1/2の長さ位置までの範囲は、表面層の残留オーステナイト量が15体積%以上40体積%以下である部分とすることがより好ましい。
なお、ピニオンシャフトの芯部の残留オーステナイト量を0体積%とすることによっても、本発明と同様に塑性変形を抑制することができる。
次に、ピニオンシャフトの素材として好ましい合金鋼について説明する。ピニオンシャフトは、炭素,クロム,ケイ素等の合金元素を含有する合金鋼で構成することが好ましく、合金元素の作用及び好ましい含有量は以下の通りである。
〔炭素について〕
炭素(C)は、基地をマルテンサイト化して焼入れ・焼戻し後の硬さを向上させるために必要な元素であり、ピニオンシャフトの表面層に浸炭窒化処理により窒素とともに添加される。
炭素の含有量が0.1質量%未満であると、ピニオンシャフトの芯部の強度を維持することが困難となり、1.3質量%超過であると、製鋼の段階において非常に粗大な炭化物が析出して、転動部材としての疲労寿命特性が不十分となるおそれがある。
〔クロムについて〕
クロム(Cr)は焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗性を向上させるのに有効な元素であり、基地を強化して転動疲労寿命特性を向上させる。また、浸炭窒化層の炭素濃度を高める作用があり、さらに、微細で高硬度な炭化物,窒化物,炭窒化物等を形成して耐摩耗性を向上させる働きも有する。
このような効果を十分に発揮させるためには、クロムの含有量は0.3質量%以上とすることが好ましい。しかし、多量に添加しても上記効果が飽和してしまうばかりか、表面に不動態膜が形成されることにより、かえって浸炭窒化特性が阻害されるおそれがあるため、クロムの含有量は2.5質量%以下とすることが好ましい。
〔ケイ素について〕
ケイ素(Si)は、製鋼時の脱酸剤として必要な元素であり、0.1質量%以上含有させることが好ましい。また、焼戻し軟化抵抗性を高めて高温環境における寿命の向上に有効な元素であり、このような効果を十分に発揮させるためには、ケイ素の含有量は0.6質量%以上とすることが好ましい。しかしながら、多量に添加しても寿命向上効果が飽和してしまうばかりか、素材の被削性が低下してコストが上昇するため、上限を2質量%とすることが好ましい。
〔マンガンについて〕
マンガン(Mn)は、製鋼時の脱酸剤及び脱硫剤として必要な元素であり、また、焼入れ性を向上させるのに有効な元素であるため、0.1質量%以上含有させることが好ましい。しかし、含有量を高くしすぎると非金属介在物が多くなり、かえって寿命が低下するおそれがある。また、素材の鍛造性及び被削性等の機械加工性が低下するため、上限は2質量%とすることが好ましい。
〔モリブデンについて〕
モリブデン(Mo)はクロムと同様に、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗性を向上させるのに有効な元素であり、また、高硬度で微細な炭化物,窒化物,炭窒化物等を形成して耐摩耗性の向上に役立つため、積極的に含有させることが好ましい。しかしながら、3質量%を超えて含有させても上記効果が飽和してしまうばかりか、製鋼の段階で粗大な炭化物を形成して、かえって寿命の低下を招くおそれがあるため、上限を3質量%とすることが好ましい。
〔バナジウムについて〕
バナジウム(V)は、耐摩耗性の向上に有効な非常に微細で高硬度な炭化物,窒化物,炭窒化物等を形成するため、積極的に含有させることが好ましい。しかしながら、多量に添加しても上記効果が飽和してしまうばかりか、加工性が低下するとともに高価であることからコスト的に不利となるので、上限を3質量%とすることが好ましい。
〔酸素について〕
酸素(O)は、転動疲労寿命特性に有害な酸化物系の非金属介在物を形成するため、その含有量は極力低くする必要がある。寿命に悪影響を及ぼさないためには、12ppm以下とすることが好ましく、9ppm以下とすることがより好ましい。
なお、ピニオンシャフトの素材として用いる合金鋼には、微量であれば、リン(P),イオウ(S),ニッケル(Ni),銅(Cu),アルミニウム(Al),及びチタン(Ti)等の不可避の不純物が含有されていても差し支えない。
〔実施例〕
以下に、さらに具体的な実施例を示して、本発明を説明する。表1に示すような組成を有する種々の合金鋼で構成されたピニオンシャフト(外径13mm、長さ75mm)を用意して、耐久試験を行った。なお、表1の鋼種Aは、JIS鋼種SUJ2である。
Figure 2005140275
ピニオンシャフトは、仕上げ加工に必要な取り代を残した形状寸法に鋼材を旋削加工した後に、表2に示すような種々の熱処理を施し、さらに研削加工によって仕上げ加工を行うことにより製造した。表2の熱処理条件イ〜ホは以下の通りである。
Figure 2005140275
(イ)まず、Rxガスと1〜3体積%のエンリッチガスと1〜7体積%のアンモニアガスとの混合ガス雰囲気中で、温度820〜900℃にて2〜4時間浸炭窒化処理を施した。その後、820〜850℃で焼入れを行い、150〜200℃で焼戻しを行った。各ピニオンシャフトの表面の炭素濃度及び窒素濃度は、浸炭窒化処理時のエンリッチガスの量及びアンモニアガスの量を調整することにより、0.7〜1.3質量%及び0.05〜0.8質量%にそれぞれ調整してある。
(ロ)上記(イ)と同様の焼入れ,焼戻しの後、周波数130kHz,最大電圧15kVの高周波焼入れ装置を用いて部分焼戻し処理を施した。高周波焼入れ装置の出力及びピニオンシャフトの移動速度を調節することにより、表面硬さ及び残留オーステナイト量を調節した。
(ハ)上記(イ)と同様に浸炭窒化処理,焼入れ,焼戻しを施した後、上記(ロ)と同様に部分焼戻し処理を施した。
(ニ)上記(イ)と同様に浸炭窒化処理を施した後、400〜720℃で調質処理を施した。さらに上記(ロ)と同様の高周波焼入れ装置を用いて高周波焼入れを施した後、上記(イ)と同様に焼戻しを施した。
(ホ)上記(ニ)と同様に浸炭窒化処理から高周波焼入れまでを行った後、上記(ロ)と同様に部分焼戻し処理を施し、さらに上記(イ)と同様に焼戻しを施した。
次に、耐久試験の方法について、図4を参照しながら説明する。
外輪11にピニオンシャフト10が挿通されており、ピニオンシャフト10の外周面に形成された軌道面と外輪11の内周面に形成された軌道面との間に転動自在に介装された2列のニードルローラ12(外径4mm、長さ24mm)によって、ピニオンシャフト10が回転可能とされている。このピニオンシャフト10の外周面には図示のように潤滑油の給油孔10aが開口しており、端面の開口部10bに注入された潤滑油が給油孔10aから軌道面に給油されるようになっている。
ラジアル荷重15kN、回転速度10000min-1、潤滑油の温度150℃の条件でピニオンシャフト10を回転させ、振動が初期値の3倍になるまでの時間を寿命として評価した。なお、ラジアル荷重は、図示しないサポート軸受を介して外輪11に負荷した。また、2列のニードルローラ12の間には、間座13を介在させてある。
耐久試験の結果を表2に示す。なお、表2中の寿命の数値は、SUJ2を用いた従来例1の寿命を1とした場合の相対値で示してある。また、ピニオンシャフト10の表面(表面層)の窒素濃度は電子プローブ微量分析装置(EPMA)で測定した値であり、表面(表面層)の残留オーステナイト量(γR 量)はX線回折装置で測定した値である。表2の中央部のγR 量は、ピニオンシャフト10の軸線方向中央部における表面層のγR 量である。また、軌道面端部のγR 量は、ピニオンシャフト10の2列の軌道面のそれぞれの軸線方向外側端部における表面層のγR 量と、各端部から8mm内側の部分における表面層のγR 量との平均値である。ここで、外側とはピニオンシャフト10の軸線方向端部を向く側を意味し、内側とはピニオンシャフト10の軸線方向中央部を向く側を意味する。
従来例1は、ピニオンシャフト10の表面全体にわたってγR 量が多いため、大きな塑性変形が生じ、短寿命であった。また、従来例2は、ピニオンシャフト10の軸方向全体にわたって高周波焼入れを施した例であるが、塑性変形を抑制する効果が不十分であるため、寿命の延長効果も不十分であった。さらに、比較例1は、軌道面端部のγR 量が少ないため、表面疲労に対する耐性が不足して短寿命であった。ただし、高周波焼戻しにより中央部のγR 量が0体積%であるため、塑性変形量は小さかった。
これに対して実施例1は、従来例1に対して中央部に高周波焼戻しを施した場合の例であるが、塑性変形が抑制された結果、軌道面端部における寿命向上効果が十分に発揮されて、従来例1の2倍以上の寿命であった。また、実施例2は、2列の軌道面の間のニードルローラが転動しない中央部を未焼入れ状態とした例であるが、従来例1の2倍以上の寿命であった。
実施例3は、従来例2に対して中央部に高周波焼戻しを施した場合の例であるが、実施例2と比べてγR 量が低い範囲を広くすることができるため、塑性変形量がより小さくなっており、寿命も長くなっている。また、実施例3と同様の熱処理方法で製造した実施例4〜8についても、塑性変形量が非常に小さく抑えられているため、長寿命であった。
本発明のプラネタリギヤ装置は、自動車,工作機械等の減速機や変速機に使用可能である。
ピニオンシャフトの塑性変形を抑制する方法を説明する概念図である。 本発明の一実施形態であるプラネタリギヤ装置の分解斜視図である。 表面層の残留オーステナイト量が15体積%未満である部分と、表面層の残留オーステナイト量が15体積%以上40体積%以下である部分との配置の具体例を説明する図である。 ピニオンシャフトの耐久試験の方法を説明する断面図である。
符号の説明
1 サンギヤ
2 リングギヤ
3 ピニオンギヤ
5,10 ピニオンシャフト
12 ニードルローラ(ころ)

Claims (2)

  1. 同心に配されたサンギヤ及びリングギヤに噛み合うピニオンギヤと、前記ピニオンギヤの中心に挿通され前記ピニオンギヤを回転自在に支持するピニオンシャフトと、前記ピニオンギヤの内周面に形成された軌道面と前記ピニオンシャフトの外周面に形成された軌道面との間に転動自在に配された複数のころと、を備えるプラネタリギヤ装置において、
    前記ピニオンシャフトの軸線方向中央部は、その表面層の残留オーステナイト量が15体積%未満であり、前記ピニオンシャフトの前記軌道面が形成された部分のうち少なくとも一部分は、その表面層の残留オーステナイト量が15体積%以上40体積%以下であることを特徴とするプラネタリギヤ装置。
  2. 同心に配されたサンギヤ及びリングギヤに噛み合うピニオンギヤと、前記ピニオンギヤの中心に挿通され前記ピニオンギヤを回転自在に支持するピニオンシャフトと、前記ピニオンギヤの内周面に形成された軌道面と前記ピニオンシャフトの外周面に形成された軌道面との間に転動自在に配された複数のころと、を備えるプラネタリギヤ装置において、
    前記ピニオンシャフトの軸線方向中央部は、その表面層の残留オーステナイト量が15体積%未満であり、前記ピニオンシャフトの前記軌道面が形成された部分のうち前記軸線方向端部は、その表面層の残留オーステナイト量が15体積%以上40体積%以下であることを特徴とするプラネタリギヤ装置。
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