JP7163770B2 - 転がり軸受部品及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、転がり軸受部品及びその製造方法に関する。
例えば、自動車用の軸受部品は、近年、エンジンの高出力化や部品の軽量化が求められるに従い、過酷な使用条件のもとで、より長い転動疲労寿命が必要となっている。軸受部品の疲労寿命を高める技術としては、転動面を加工硬化させるものや残留圧縮応力を付加するものがあり、例えば、特許文献1および2に開示されている。
特許文献1には、ショットピーニングを施すことで転動疲労寿命を改善した転動軸が開示されている。特許文献1では、ショットピーニング処理を施して、表面硬化層を形成することで転動疲労寿命の向上を図っている。
特許文献2には、金属部材に対して、すくい面をネガティブ方向に30~50°の範囲で傾けた工具を用いて旋削加工を施す技術が開示されている。特許文献2では、当該技術により、ショットピーニングのような工程を施さなくても、圧縮残留応力を付与して曲げ疲労強度を高めることができるとされている。
特開2015-7265号公報 特開2007-210070号公報
特許文献1で開示されている部品は、ショットピーニング処理を施して、表面硬化層を形成することで転動疲労寿命の向上を図っている。しかし、ショット球回収のための装置が必要となりコストが上昇するうえ、ショット球の大きさに制限がある。そのため、大きな圧縮残留応力を付与することが困難であった。また、表面から深い領域まで圧縮残留応力が付与されていないため内部からき裂が発生して剥離に至る場合、転動疲労特性が向上しない可能性がある。
特許文献2で開示されている技術は、ショットピーニングのような工程を施さなくても、圧縮残留応力を付与して曲げ疲労強度を高めることができるとされているが、転動疲労特性の向上には言及されていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた転動疲労寿命を備えた転がり軸受部品及びその製造方法を提供することにある。
上記課題は、以下の手段により解決される。
(1) 質量%で、
C :0.90~1.20%、
Si:0.15~0.35%、
Mn:0.20~0.50%、
P :0.025%以下、
S :0.010%以下、
Cr:1.00~1.80%
Cu:0~0.20%、
Ni:0~0.20%
B :0~0.0050%
Nb:0~0.05%
Ti:0~0.10%
を含み、残部Feおよび不純物からなる成分組成を有し、
転動面の表面から300μm深さの範囲の残留オーステナイト面積率が8%以下であり、
転動面の表面から800μm深さの範囲のビッカース硬さが760HV以上であり、
転動面の表面から300μm深さの範囲の圧縮残留応力が750MPa~2000MPaであり、
転動面の表面から1~20μmの深さの範囲に塑性流動層を有する転がり軸受部品。
(2)前記成分組成が、さらに、質量%で、Cu:0超え~0.20%、Ni:0超え~0.20%、及び、B:0超え~0.0050%の1種又は2種以上を含む請求項1に記載の転がり軸受部品。
(3)前記成分組成が、さらに、質量%で、Nb:0超え~0.05%以下、及び、Ti:0超え~0.10%以下の1種又は2種を含む請求項1又は2に記載の転がり軸受部品。
(4)(1)~(3)いずれか1項に記載の転がり軸受の製造方法であって、転がり軸受部品に焼入れ焼戻し処理を施した後に、転動面に超音波衝撃加工を施す工程を有する転がり軸受部品の製造方法。
本発明によれば、優れた転動疲労寿命を備えた転がり軸受部品及びその製造方法を提供できる。
以下、本発明の一例である実施形態について詳しく説明する。
なお、本明細書中において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、「~」の前後に記載される数値に「超」または「未満」が付されている場合の数値範囲は、これら数値を下限値または上限値として含まない範囲を意味する。
また、成分組成の各元素の含有量の「%」は、「質量%」を意味する。
本実施形態に係る転がり軸受部品(以下、単に「軸受部品」とも称する)は、所定の成分組成を有し、下記(1)~(4)の特性を有する。
(1)転動面の表面から300μm深さの範囲の残留オーステナイト面積率が8%以下である。
(2)転動面の表面から800μm深さの範囲のビッカース硬さが760HV以上である。
(3)転動面の表面から300μm深さの範囲の圧縮残留応力が750MPa~2000MPaである。
(4)転動面の表面から1~20μmの深さの範囲に塑性流動層を有する。
本実施形態に係る転がり軸受部品は、上記構成により、優れた転動疲労寿命を備えた転がり軸受部品となる。本実施形態に係る転がり軸受部品は、次の知見により見出された。
一般に、転動疲労破壊は、転走面に生じた圧痕や鋼材中に存在する介在物に応力が集中することによってき裂が生じ、その後、繰り返し荷重によってき裂が徐々に進展し、最終的に剥離に至る現象であると理解されている。
本発明者らは、検討の結果、次の重要な知見を得た。焼入れ焼戻し後の軸受転動面に対して、超音波衝撃加工を施すと、超音波衝撃加工による静水圧効果によって転動面表層に存在する空隙が圧着される。それとともに、マルテンサイトの加工硬化および残留オーステナイトの加工誘起変態によって大きな圧縮残留応力が付与される。そのため、転動面に発生したき裂の進展が抑制されて転動疲労寿命が向上する。
つまり、所定の成分組成を有すると共に、上記(1)~(4)の特性を有すると、軸受部品の転動疲労寿命が向上する。
以上の知見により、本実施形態に係る軸受部品は、優れた転動疲労寿命を備えた転がり軸受部品となることが見出された。
このように本実施形態に係る軸受部品は、転動疲労による破損に対して良好な耐久性を有し、転動疲労寿命が長い。そのため、各種の産業機械および自動車に使用される玉軸受又はころ軸受といった転がり軸受部品として好適に用いることができる。
以下、本実施形態に係る軸受部品について詳細に説明する。
「軸受部品の成分組成」
本実施形態に係る軸受部品の成分組成は、C、Si、Mn、P、S、Cr、Cu、Ni、B、NbおよびTiを含み、残部Feおよび不純物からなる。ただし、Cr、Cu、Ni、B、NbおよびTiは、任意元素である。つまり、これら任意元素の含有量の下限は0%である。そして、これら任意元素の1種又は2種以上を含有させる場合、元素の含有量の上限値は、後述する範囲の上限値とする。各元素の含有量は、0%超え後述する範囲の上限値以下が好ましく、後述する範囲がより好ましい。
C(炭素):0.90~1.20%
Cは、焼入れ時の硬さを確保して転動疲労寿命を向上させる元素である。そのため、C含有量は、0.90%以上とする必要がある。しかしながら、C含有量が1.20%を超えると、耐摩耗性は増大するものの,未溶解炭化物量が増量するため転動疲労寿命は低下する。よって、C含有量は、1.20%以下とする。
C含有量の好ましい下限は0.97%である。好ましい上限は1.1%である。
Si(ケイ素):0.15~0.35%
Siは、焼戻し軟化抵抗を高めて転動疲労寿命を向上させるのに必要な元素である。そのため、Si含有量は、0.15%以上とする必要がある。しかしながら、0.35%を超えてSiを含有させると、残留オーステナイトの安定性が高くなりすぎ,超音波衝撃加工時に十分な加工誘起変態が生じない。よって、Si含有量は、0.35%以下とする。
Siの好ましい下限は0.18%である。好ましい上限は0.30%である。
Mn(マンガン):0.20~0.50%
Mnは、鋼の焼入れ性を高めるとともに、鋼中の残留オーステナイトを増加させる。その結果、部品の転動疲労特性が向上する。しかし、Mnの含有量が0.20%未満では、この効果が得られない。よって、Mn含有量は、0.2%以上とする。
一方、Mn含有量が0.50%を超えると、残留オーステナイトの安定性が高くなり過ぎ、超音波衝撃加工時に十分な加工誘起変態が生じない。よって、Mn含有量は、0.50%以下とする。
Mnの好ましい下限は0.25%であり、好ましい上限は0.45%である。
P(リン):0.025%以下
Pは、不純物として鋼中に含まれ、結晶粒界に偏析して転動疲労寿命を低下させる。特に、P含有量が0.025%を超えると、転動疲労寿命の低下が著しくなる。よって、P含有量は、0.25%以下とする。P含有量は、好ましくは0.020%以下である。
P含有量は極力低くすることがよく、P含有量の下限値は0%である。つまり、Pは含有しなくてもよい。しかし、Pの除去を必要以上に行った場合、製造コストが増大する。よって、P含有量の実質的な下限値は、例えば、0.003%となる。
S(硫黄):0.010%以下
Sは、不純物として鋼中に含まれ、硫化物を形成し、鋼の靭性、冷間鍛造性、転動疲労寿命を低下させる。特に、S含有量が0.010%を超えると、靭性、冷間鍛造性、転動疲労寿命の低下が著しくなる。よって、S含有量は、0.010%以下とする。S含有量は、好ましくは0.008%以下である。
一方、S含有量は極力低くすることがよく、S含有量の下限値は0%である。つまり、Sは含有しなくてもよい。しかし、Sの除去を必要以上に行った場合、製造コストが増大する。よって、S含有量の実質的な下限値は、例えば、0.002%となる。
Cr(クロム):1.00~1.80%
Crは、鋼の焼入れ性を高めるとともに、セメンタイトを熱的に安定させ、高温域におけるセメンタイトのマトリックス中への固溶を抑止する作用を有する。また、Crには、鋼材のMs点を低下させる効果がある。その結果、焼入れ後に残留オーステナイトが生成し、転動疲労寿命向上に有効な元素である。この効果はCrの含有量が1.00%以上で発揮される。よって、Cr含有量は、1.00%以上とする。
しかしながら、Cr含有量が1.80%を超えると、残留オーステナイトの安定性が高くなり過ぎ、超音波衝撃加工時に十分な加工誘起変態が生じない。そのため、転動疲労寿命の低下を招く。よって、Cr含有量は、1.80%以下とする。
Cr含有量の好ましい下限は1.10%であり、好ましい上限は1.60%である。
Cu(銅):0又は0超え~0.20%
Cuは、鋼の焼入れ性を高める作用を有するので、さらなる焼入れ性向上のために含有してもよい。しかしながら、Cuは熱間加工性の低下を招く。特に、Cu含有量が0.20%を超えると、熱間加工性の低下が著しくなる。よって、Cu含有量は、0.20%以下とする。Cu含有量は、好ましくは0.18%以下である。
一方、Cuを含有することによる焼入れ性向上効果を得るためには、Cuの含有量は0.05%以上とすることが好ましい。
Ni(ニッケル):0又は0超え~0.20%
Niは、鋼の焼入れ性を高める作用を有する。Niはさらに、焼入れ後の鋼材の靱性を高める。しかしながら、Niは高価な元素である。よって、Ni含有量は0.20%以下とする。
一方、Niの効果を得るためには、Ni含有量は0.05%以上とすることが好ましい。
B(ボロン):0又は0超え~0.0050%
Bは、鋼の焼入れ性を高める。Bはさらに、焼入れ時のオーステナイト粒界におけるPやSの偏析を抑制する。しかしながら、B含有量が0.0050%を超えれば、BNが生成して鋼の靱性が低下する。よって、B含有量は0.0050%とする。
一方、Bの効果を得るためには、B含有量は0.0003%以上とすることが好ましい。
Nb(ニオブ):0又は0超え~0.05%
Nbは、微細な炭化物等を形成し、結晶粒を微細化する。これにより、鋼の強度が高まる。しかしながら、Nb含有量が0.05%を超えれば、鋼の靱性が低下する。よって、Nb含有量は0.05%以下とする。
一方、Nbの効果を得るためには、Nb含有量は0.005%以上とすることが好ましい。
Ti(チタン):0又は0超え~0.10%
Tiは、微細な炭化物等を形成し、結晶粒を微細化する。これにより、鋼の強度が高まる。しかしながら、Ti含有量が0.10%を超えれば、鋼の靱性が低下する。よって、Ti含有量は0.10%以下とする。
一方、Tiの効果を得るためには、Tiの含有量は0.010%以上とすることが好ましい。
残部
残部は、Feおよび不純物からなるものである。
なお、「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入するものであって、本実施形態に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
不純物としては、P、S、O、As、Co、Ni、Mg、Zr、Te、Bi、Pb、Sn、Zn等が挙げられる。これらの中で、特に、PはP:0.025%以下、Sは0.010%以下、Oは0.003%以下に制限される。As、Co、Ni、Mg、Zr、Te、Bi、Pb、Sn及びZn等は、本実施形態の効果を阻害しない範囲に制限される。
[残留オーステナイト面積率:8%以下]
本実施形態に係る軸受部材の金属組織は、残留オーステナイトを含む。残留オーステナイト以外の残部組織は、マルテンサイトが好ましい。つまり、軸受部材の金属組織は、オーステナイトおよび残留オーステナイトからなる組織が好ましい。ただし、微量、他の組織が混在していてもよい。
そして、転動面の表面から300μm深さの範囲の残留オーステナイト面積率は8%以下である。
ここで、残留オーステナイトはマルテンサイト中に含まれるため、光学顕微鏡による組織観察では、マルテンサイトと残留オーステナイトを区別することは困難である。軸受部品の残留オーステナイト面積率は、例えば次の方法で測定することができる。
転がり軸受け転動面の表面に直径3mmの穴が開いたマスキングを施し、電解研磨を施す。電解研磨は、次の通り実施する。11.6%の塩化アンモニウムと35.1%のグリセリンと53.3%の水とを含有する電解液を準備する。この電解液を用いて、マスキングで穴を開けた箇所の鋼材表面を+20Vの電圧で電解研磨する。電解研磨の時間を変化させることで研磨量を調整することができる。
続いて、電解研磨された穴底面の残留オーステナイトの面積率を測定する。
測定には、例えば、(株)リガク製微小部X線応力装置 Auto MATE MSシステムを用いる。ただし、他の市販のX線回折装置を使用することもできる。光源にはCr管球を使用する。
X線回折により得られたbcc構造の(221)面とfcc構造の(220)面の回折曲線の面積比から、残留オーステナイト面積率を測定する。具体的には、マスキングに空けたφ3mmの穴の中心にコリメーターでφ2mmに絞ったX線を、bcc構造の測定の際は、測定面に垂直な方向から11.8度、残留オーステナイト(fcc構造)の際は25.8度傾けた方向から入射し、それぞれ同じ角度傾けた方向に検出器を設置してX線強度をbcc構造は60秒、残留オーステナイト(fcc構造)は180秒測定する。それぞれのX線積分強度比を残留オーステナイトとそれ以外の相の面積比率として求める。従って、fcc構造の積分強度をbcc構造とfcc構造の積分強度を足した強度で割った値(fcc構造の積分強度/(bcc構造の積分強度+fcc構造の積分強度))が、残留オーステナイトの面積比率となる。
そして、電解研磨による研磨深さを、転動面の表面から、深さ50μmの位置、深さ100μmの位置、深さ200μmの位置、深さ300μmの位置とした上記残留オーステナイト面積率の測定を行う。
この操作を任意の5箇所の断面で実施し、計20個の位置のオーステナイト面積率の算術平均値を上記範囲の残留オーステナイト面積率とする。
なお、X線回折で測定される残留オーステナイト面積率は、測定面直下のX線到達深さまでの残留オーステナイトの平均体積率と同じである。
残留オーステナイトは、焼入れ焼戻し後の超音波衝撃加工時に、加工誘起マルテンサイト変態する。これにより、軸受の転動疲労特性が向上する。基準位置における残留オーステナイト面積率が高すぎれば、この効果が得られない。したがって、転動面の表面から300μm深さの範囲の残留オーステナイト面積率は8%以下とする。残留オーステナイト面積率は、好ましくは6%以下である。ただし、残留オーステナイト面積率が2%未満とするためには、超音波衝撃処理時間が長くなり、コストの観点から、残留オーステナイト面積率は、例えば、2%以上とする。
[ビッカース硬さ:760HV以上]
本実施形態に係る軸受部品は、転動面の表面から800μm深さの範囲のビッカース硬さが760HV以上である。
ビッカース硬さは次の方法で測定することができる。
転がり軸受けの転動面を転動面と垂直に、断面の硬さ測定ができるように切断する。その後、切断面を鏡面研磨する。鏡面研磨された断面上の転動面直下において、マイクロビッカース硬度計により、試験力2.94Nとして、転動面の表面から深さ100μmの位置と、転動面の表面から深さ800μm位置まで200μmピッチで4つの位置(つまり、転動面の表面から、深さ200μmの位置、深さ400μm、深さ600μm、深さ800μmの位置の計4つの位置)と、のビッカース硬度をJIS Z 2244(2009)に準拠して測定する。
この操作を任意の5箇所の断面で実施し、計25個の位置でのビッカース硬度の算出平均硬さを、上記範囲のビッカース硬度とする。
マルテンサイトの加工硬化および残留オーステナイトの加工誘起変態による硬さの向上によって、軸受の転動疲労特性が向上する。上記測定範囲におけるビッカース硬さが低すぎれば、この効果が得られない。また、硬さが上昇する範囲は、超音波衝撃加工が影響を及ぼす範囲と等しい。超音波衝撃加工による静水圧の効果によって、部品中に存在する空隙が圧着し、軸受の転動疲労特性が向上する。超音波衝撃加工の影響が及んでいる範囲は深い程良いが、深い位置まで超音波衝撃加工の影響を及ぼすための加工は工具への負担が大きくなり、工具寿命が低下する。したがって、転動面の表面から800μm深さの範囲のビッカース硬さは760Hv以上とする。ビッカース硬さは、好ましくは770Hv以上である。ただし、工具寿命の観点から、ビッカース硬さは、例えば、850Hv以下とする。
[圧縮残留応力:750MPa~2000MPa]
本実施形態に係る軸受部品は、表面から300μm深さの範囲での圧縮残留応力が750MPa~2000MPaである。
軸受部品の圧縮残留応力は次の方法で測定することができる。
転がり軸受け転動面の表面に直径3mmの穴が開いたマスキングを施し、電解研磨を施す。電解研磨は、次の通り実施する。11.6%の塩化アンモニウムと35.1%のグリセリンと53.3%の水とを含有する電解液を準備し、この電解液を用いて、測定範囲を含む表面を+20Vの電圧で電解研磨する。電解研磨の時間を変化させることで研磨量を調整することができる。
続いて、電解研磨された穴底面の圧縮残留応力を測定する。
測定には、例えば、リガク製微小部X線応力装置 Auto MATE MSシステムを用いる。ただし、他の市販のX線回折装置を使用することもできる。光源にはCr管球を使用する。
そして、電解研磨による研磨深さを、転動面の表面から、深さ50μmの位置、深さ100μmの位置、深さ200μmの位置、深さ300μmの位置とした上記圧縮残留応力の測定を行う。
この操作を任意の5箇所の断面で実施し、計20個の位置の圧縮残留応力の算術平均値を上記範囲の圧縮残留応力とする。
圧縮残留応力は、軸受の転動疲労特性を向上させる。上記測定範囲における圧縮残留応力が低すぎれば、この効果が得られない。一方、上記測定範囲における圧縮残留応力が高い程、転動疲労特性が向上すると考えられるが、高い圧縮残留応力を得るための加工は工具への負担が大きくなり、工具寿命が低下する。したがって、転動面の表面から300μm深さの範囲の圧縮残留応力は750MPa~2000MPaとする。圧縮残留応力は、好ましくは900MPa~1950MPaである。
[塑性流動層]
本実施形態に係る軸受部品は、転動面の表層に厚さ1~20μmの塑性流動層を有している。
ここで、塑性流動層は、転動面を転動面と垂直な切断面において、軸受部品の中心部に対して組織が湾曲している塑性流動組織からなる層である。塑性流動層の厚さは、当該切断面において、転動面の表面から、軸受部品の中心部に対して湾曲している組織の端までの距離とする。
部品の塑性流動層の厚さは、次の方法で測定することができる。
転がり軸受けの転動面を転動面と垂直に切断する。その後、切断面を鏡面研磨し、ミクロ組織を観察する。具体的には次の通りである。鏡面研磨された断面を5%ナイタール溶液で腐食させる。腐食された断面を、倍率5000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察する。断面において、塑性流動層の厚さを5つ測定する。
そして、この操作を任意の5箇所の断面で実施し、計25個の厚さの算術平均値を塑性流動層の厚さとする。
本実施形態に係る軸受部品を製造する際には、超音波衝撃加工時に、表層に変形が生じ、塑性流動層が形成される。この塑性流動層は硬質であることから、厚さが1μm以上になると部品の転動疲労寿命が向上する。一方、塑性流動層は脆いため、その厚さが薄い場合にはある程度変形が可能であるが、厚さが20μmを超えると、割れが生じてき裂の発生起点となる。そのため、部品の転動疲労寿命が低下する。さらに、厚さが20μmを超えるような加工は、衝撃工具への負担が大きくなり、工具寿命が著しく低下する。したがって、転動面の表層の塑性流動層の厚さは1~20μmに限定する。塑性流動層の厚さは、好ましくはで3~15μmある。
次に、本実施形態に係る軸受部材の製造方法の一例について説明する。
本実施形態に係る軸受部材の製造方法は、転がり軸受部品に焼入れ焼戻し処理を施した後に、転動面に超音波衝撃加工を施す工程を有する。
転動面に超音波衝撃加工は、例えば、振動数20,000~100,000Hz、加工時間1cm当たり1~100秒の条件で実施する。
転動面に超音波衝撃加工を施すことにより、上記(1)~(4)の特性を有する軸受部品が得られる。
なお、超音波衝撃加工前の転がり軸受部品は、周知の方法により製造できる。
以上示したように、本実施形態に係る転がり軸受部品では、マルテンサイトの加工硬化および残留オーステナイトの加工誘起変態による圧縮残留応力の付与によって、転動疲労寿命を高めることができる。
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
真空溶解炉を用いて、表1に示す化学組成を有する300kgの溶鋼1~28を得た。
次に、種の溶鋼を用いて、造塊法によりインゴットを得た。各インゴットを1250℃で4時間加熱した後、熱間鍛伸を行って直径70mmの棒鋼を得た。熱間鍛伸時の仕上げ温度は1000℃であった。
次に、各棒鋼に対して焼準処理を施した。焼準処理温度は900℃であり、焼準処理時間は3時間であった。焼準処理後、丸棒を室温(25℃)まで放冷した。
次に、焼準を施した棒鋼に対して球状化焼鈍処理を施した。780℃で3時間保持した後、8時間かけて650℃まで炉冷後、室温(25℃)まで放冷した。
次に、球状化焼鈍処理後の棒鋼(直径70mm)から、直径60mm、厚さ5.5mmの円板状の粗試験片を作製した。粗試験片の厚さ(5.5mm)は、棒鋼の長手方向に相当した。
次に、各試験番号の粗試験片に対して、830℃で1時間保持した後、油冷する焼入れ処理を施した。焼入れした試験片に対して、180℃で2時間保持した後、空冷する焼戻し処理を施した。
次に、焼戻し後の試験片の表面に対して、HRc63.5の超硬から作製した直径3mmのストレートピンを衝撃工具とし、周波数27kHzの条件で超音波衝撃加工を施した。
次に、超音波衝撃加工を施した試験片の表面を鏡面加工することによって転動疲労試験片を作製した。仕上げ加工後の転動疲労試験片の表面の算術平均粗さRaは0.5μm以下であった。
この転動疲労試験片を用いて、残留オーステナイト面積率測定、ビッカース硬さ測定、圧縮残留応力測定、ミクロ組織観察による塑性流動層厚さ測定、転動疲労試験を実施した。
なお、残留オーステナイト面積率、ビッカース硬さ、圧縮残留応力、塑性流動層厚さは、既述の方法に従って測定した。
表2中の「残留オーステナイト面積率、ビッカース硬さ、圧縮残留応力」の欄の「位置」は、転動面の表面から深さ方向の位置での測定値を意味する。
転動疲労試験は、スラスト型の転動疲労試験機を用いて実施した。試験時における最大接触面圧を5.3GPaとし、繰り返し速度を1800cpm(cycle per minute)とした。試験時に使用する鋼球として、焼入れ―焼戻しが施された直径9.52mmのSUJ2を3個用いた。潤滑油は、クリセフオイルF8(商品名)を用いた。
転動疲労試験結果をワイブル確率紙上にプロットし、10%破損確率を示すL10寿命を「転動疲労寿命」と定義した。L10寿命が30×10回以上であれば、転動疲労寿命に優れると判断した(表2中で「OK」印で表記)。一方、L10寿命が30×10回未満であれば、転動疲労寿命が短いと判断した(表2中で「NG」印で表記)。
表1~表2に、各例の詳細と共に、試験結果を示す。
Figure 0007163770000001

Figure 0007163770000002

上記表2に示すように、試験番号1~17の軸受の化学組成は適切であり、残留オーステナイト面積率、ビッカース硬さ、残留応力、塑性流動層厚さを満たした。その結果、これらの軸受は、優れた転動疲労寿命を示した。
これに対し、表2から明らかなように、所定の製造方法によって得られていない軸受部品であって所定の条件を満たさない(すなわち、軸受部品の成分組成、残留オーステナイト面積率、ビッカース硬度、圧縮残留応力、塑性流動層厚さの少なくともいずれかについて改良を加えていない)試験番号18~27については優れた転動疲労寿命が得られていないことがわかる。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C :0.90~1.20%、
    Si:0.15~0.35%、
    Mn:0.20~0.50%、
    P :0.025%以下、
    S :0.010%以下、
    Cr:1.00~1.80%、
    Cu:0~0.20%、
    Ni:0~0.20%、
    B :0~0.0050%、
    Nb:0~0.05%、および
    Ti:0~0.10%、
    を含み、残部Feおよび不純物からなる成分組成を有し、
    転動面の表面から300μm深さの範囲の残留オーステナイト面積率が8%以下であり、
    転動面の表面から800μm深さの範囲のビッカース硬さが760HV以上であり、
    転動面の表面から300μm深さの範囲の圧縮残留応力(絶対値)が750MPa~2000MPaであり、
    転動面の表層に厚さ1~20μmの塑性流動層を有する転がり軸受部品。
  2. 前記成分組成が、さらに、質量%で、Cu:0超え~0.20%、Ni:0超え~0.20%、及び、B:0超え~0.0050%の1種又は2種以上を含む請求項1に記載の転がり軸受部品。
  3. 前記成分組成が、さらに、質量%で、Nb:0超え~0.05%以下、及び、Ti:0超え~0.10%以下の1種又は2種を含む請求項1又は2に記載の転がり軸受部品。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の転がり軸受の製造方法であって、転がり軸受部品に焼入れ焼戻し処理を施した後に、転動面に超音波衝撃加工を施す工程を有する転がり軸受部品の製造方法。
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