JP5168958B2 - 転動軸 - Google Patents

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Description

本発明は、相手部材である転動体に対して相対的に転動する転動軸に関する。
従来の遊星歯車装置のピニオンシャフトは、JIS鋼種SK5等で構成され、針状ころが転走する部分(転走面)には高周波焼入れが施されて、ピニオンシャフトとして必要な硬さが付与されていた。また、潤滑不良等による剥離寿命が問題となる場合には、ピニオンシャフトはJIS鋼種SUJ2等で構成され、浸炭窒化処理等が施されて寿命が確保されていた。
一方、近年においては自動車の低燃費化の要求がますます強まっており、トランスミッションの小型化や高効率化が行われている。そのため、遊星歯車装置の回転速度が高まっているので、ピニオンシャフトに加わる荷重が増大し且つ温度が上昇し、さらに潤滑油量が減少する傾向となっており、ピニオンシャフトの寿命低下につながっている。
さらに、荷重の増大とともに温度も上昇しているため、ピニオンシャフトに塑性変形が発生しやすい。この変形により、針状ころとピニオンシャフトとの間の滑りが増大して軌道面の摩耗やピーリングが生じるという問題や、針状ころとピニオンシャフトとの接触がエッジロードになって早期剥離に至るという問題が生じるおそれがある。
ピニオンシャフトの塑性変形は、ピニオンシャフトに負荷される荷重を緩和する方向に曲がりが生じる現象である。この塑性曲がりは、鋼に内在している残留オーステナイト量が多いほど大きくなる傾向がある。このため、塑性曲がりを抑制するためには、残留オーステナイト量を極力少なくすることが最も重要である。しかしながら、ピニオンシャフトの転走面の残留オーステナイト量が少ないと、転動疲労寿命が低下し、必要な耐久性が得られないおそれがある。
特開2002−4003号公報 特開2005−291342号公報
そこで、特許文献1には、浸炭窒化を行った後に調質を行い、引き続き高周波焼入れを行うことにより、芯部の残留オーステナイト量を0体積%として、ピニオンシャフトの塑性曲がりを抑制する方法が開示されている。そして、表層部を高周波焼入れで硬化することにより、転動疲労寿命を向上させている。
しかしながら、特許文献1に例示されているSUJ2,S55C,SAC5160,SCr420等の鋼でピニオンシャフトが構成されていると、高速回転や潤滑剤の汚染及び供給不足に耐え得るだけの転動疲労寿命の確保が困難な場合がある。
また、特許文献2には、平均残留オーステナイト量を規定して塑性曲がりを抑制する方法が開示されている。塑性曲がりを抑制するためには芯部の残留オーステナイトを完全に消滅させなければならないが、特許文献2に例示されている鋼では焼入れ,焼戻し後の残留オーステナイト量が数体積%から10体積%以上となる場合があるので、平均残留オーステナイト量を少なくするだけでは塑性曲がりを抑制することは困難である。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、高温下、潤滑不良下、又は異物混入下で使用されても、塑性変形が生じにくく耐久性に優れる転動軸を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の転動軸は、相手部材である転動体に対して相対的に転動する転動軸において、下記の5つの条件を満足することを特徴とする。
条件1:炭素を0.3質量%以上0.5質量%以下、クロムを2質量%以上5質量%以下、モリブデンを0.1質量%以上1.5質量%以下、マンガンを0.1質量%以上1.5質量%以下、ケイ素を0.1質量%以上1.5質量%以下含有し、残部が鉄及び不可避的不純物である合金鋼で構成されている。
条件2:前記転動体と摺動する表面には、浸炭窒化処理と高周波焼入れと焼戻しとが施され硬化されてなる表層部が形成されており、その表面硬さHvは650以上900以下とされている。
条件3:前記表層部の残留オーステナイト量は15体積%以上50体積%以下である。
条件4:前記浸炭窒化処理と前記高周波焼入れとの間に施される調質又はサブゼロ処理により、前記表層部の内側の芯部の残留オーステナイト量は0体積%である。
条件5:前記表層部の厚さは軸直径の8%以上15%以下である。
さらに、本発明に係る請求項2の転動軸は、請求項1に記載の転動軸において、少なくとも一方の端部の硬さHvが150以上350以下であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項3の転動軸は、請求項1又は請求項2に記載の転動軸において、前記表層部の炭素濃度と窒素濃度との和が0.8質量%以上2質量%以下であることを特徴とする
本発明の転動軸は、高温下、潤滑不良下、又は異物混入下で使用されても、塑性変形が生じにくく耐久性に優れている。
本発明に係る転動軸の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示す遊星歯車装置は、自動車用オートマチックトランスミッション等の遊星歯車機構に好適に使用されるものであり、図示しない軸が挿通されたサンギヤ1と、該サンギヤ1と同心に配されたリングギヤ2と、サンギヤ1及びリングギヤ2に噛み合いサンギヤ1の周りを公転する1個以上(図1においては3個)のピニオンギヤ3と、サンギヤ1及びリングギヤ2と同心に配されピニオンギヤ3を回転自在に支持するキャリヤ4と、を備えている。
ピニオンギヤ3の中心穴には、加締め等によりキャリヤ4に固定されたピニオンシャフト5(本発明の転動軸に相当する)が挿通されており、また、ピニオンシャフト5の外周面とピニオンギヤ3の内周面との間には図示されない複数の針状ころ(転動軸の相手部材である転動体に相当する)が転動自在に配されていて、これによりピニオンギヤ3はピニオンシャフト5を軸として回転自在とされている(ピニオンシャフト5が転がり軸受の内輪に相当する)。
このピニオンシャフト5は、炭素を0.3質量%以上0.5質量%以下、クロムを2質量%以上5質量%以下、モリブデンを0.1質量%以上1.5質量%以下、マンガンを0.1質量%以上1.5質量%以下、ケイ素を0.1質量%以上1.5質量%以下含有する合金鋼で構成されている。また、ピニオンシャフト5には、浸炭窒化処理と高周波焼入れと焼戻しとが施されており、その外周面のうち針状ころと摺動する部分(以降は転走面と記すこともある)には、硬化された表層部が形成されている。この表層部の表面硬さHvは、650以上900以下とされている。外周面のうち転走面以外の部分には表層部は形成されていない。そして、表層部の残留オーステナイト量は15体積%以上50体積%以下、該表層部の内側の芯部の残留オーステナイト量は0体積%となっている。
このような構成の遊星歯車装置は、高温下、潤滑不良下、又は異物混入下で使用されたとしても、ピニオンシャフト5に塑性変形が生じにくく耐久性に優れている。
異物潤滑混入下における遊星歯車装置の転がり寿命の低下は、異物の噛み込みによって形成された圧痕の盛り上がり縁部における応力集中が原因とされる。ピニオンシャフト5の表面硬さHvが650以上900以下であれば、針状ころの転走面の硬さが十分であり圧痕が形成されにくいので、異物混入下で使用されても長寿命である。表面硬さHvが650未満であると、硬さが不十分であるため圧痕が形成されるおそれがあり、900超過であると、高周波焼入れ温度を高くする必要が生じるため、結晶粒径の粗大化により靱性が低下するおそれがある。
また、表層部の残留オーステナイト量が15体積%以上50体積%以下であると、上記のような応力集中が生じにくい。15体積%未満であると、表面疲労を緩和する応力集中の軽減効果が乏しく、疲労寿命が低下する。一方、50体積%超過であると、表面硬さが不十分となり耐摩耗性や耐表面疲労性が損なわれるおそれがある。このような不都合がより生じにくく、優れた疲労寿命が安定して得られるためには、表層部の残留オーステナイト量は20体積%以上45体積%以下であることがより好ましい。
さらに、焼入れ方法として高周波焼入れを採用したので、加熱時間が数秒から十数秒と短いことに加えて、ピニオンシャフト5の一部分(例えば転走面のみに)に硬化処理を施すことができる。また、被処理部である表層部に残留圧縮応力が付与されるため、耐転がり疲労性の向上に有効である。
さらに、残留オーステナイトは、荷重等の応力や熱が加わると、分解してフェライトとセメンタイトの混合物やマルテンサイトに変化するため、ピニオンシャフトに塑性変形が生じる。したがって、芯部の残留オーステナイト量を0体積%とすれば、ピニオンシャフト5の塑性曲がりを抑制することが可能である。
さらに、表層部に残留オーステナイトを存在させることにより転動疲労寿命が向上し、芯部の残留オーステナイト量を極力少なくすることによりピニオンシャフト5の塑性曲がりが抑制される。
なお、表層部の厚さは、ピニオンシャフト5の直径の15%以下であることが好ましい。そうすれば、ピニオンシャフト5の塑性曲がりや膨張が生じにくいので、これらに起因する寿命低下が抑制される。表層部の厚さがピニオンシャフト5の直径の15%超過であると、残留オーステナイトの絶対量が多くなるため、残留オーステナイトの分解による塑性変形の影響が大きくなる場合がある。なお、表層部の厚さとは、有効硬化層深さであり、表面から硬さがHv550である深さ位置までの距離である。
また、ピニオンシャフト5の少なくとも一方の端部の硬さHvは、150以上350以下であることが好ましい。そうすれば、この端部を塑性変形させて、ピニオンシャフト5を他部材(本実施形態においてはキャリヤ4)に加締めにより固定することができる。その結果、遊星歯車装置の構造が簡素となり、小型軽量化を図ることができるため、遊星歯車装置の高速化に有利となる。
端部の硬さHvが350超過であると、加締めを行いにくくなるので、遊星歯車装置の生産性が低下したり、金型の損傷頻度が増加するといった問題が生じるおそれがある。一方、端部の硬さHvが150未満であると、加締め強度が不十分となり、遊星歯車装置の使用条件によってはピニオンシャフト5がキャリヤ4から脱落したり取り付け精度が低下したりする場合がある。
さらに、表層部の炭素濃度と窒素濃度との和は、0.8質量%以上2質量%以下とすることが好ましい。このようなピニオンシャフト5は、耐摩耗性,耐転がり疲労性,耐熱性が優れている。表層部の炭素濃度と窒素濃度との和が0.8質量%未満であると、耐摩耗性の向上に有効な炭窒化物の析出が不十分となり、耐摩耗性が低下するおそれがある。また、表層部の残留オーステナイト量が15体積%未満となって、転がり寿命の低下を引き起こすおそれがある。
一方、表層部の炭素濃度と窒素濃度との和が2質量%超過であると、耐摩耗性の向上に対しては有利であるが、初析炭化物がネット状に発生して転がり寿命が低下したり、熱処理の生産性が低下したり、あるいは熱処理後の研削加工性が低下したりするおそれがある。また、Ms点が下がりすぎて残留オーステナイト量が50体積%超過となってしまい、その結果、表面硬さHvが650未満となるおそれがある。耐摩耗性,耐転がり疲労性,耐熱性等の性能をより高くするためには、表層部の炭素濃度と窒素濃度との和が1質量%以上1.8質量%以下であることがより好ましい。
さらに、ピニオンシャフト5は、調質又はサブゼロ処理が施されていることが好ましい。本実施形態においては、ピニオンシャフト5の外周面のうち転走面のみに高周波焼入れを行うことによって転動疲労寿命を向上させるとともに、外周面のうち転走面以外の部分や芯部の残留オーステナイト量を極力少なくすることによって、ピニオンシャフト5の塑性曲がりを抑制している。この場合、高周波焼入れを行う前の段階においては、ピニオンシャフト5に内在している残留オーステナイト量はできるだけ0体積%に近いことが好ましい。そこで、浸炭窒化処理と高周波焼入れとの間に、残留オーステナイト量を0体積%にするべく、調質又はサブゼロ処理を行うことが好ましい。
ここで、合金鋼に含有される合金成分の含有量の臨界的意義について説明する。
〔炭素の含有量について〕
炭素(C)は、基地に固溶して焼入れ,焼戻し後の硬さを向上させて強度を向上させるとともに、鉄,クロム,モリブデン,バナジウム等の炭化物形成元素と結合して炭化物を形成し耐摩耗性を高める作用を有する元素である。耐転がり疲労性に必要な硬さを得るために行う浸炭窒化処理の時間が長くなるとコストアップを招くことから、処理時間の短縮のために、炭素の含有量は0.3質量%以上である必要がある。ただし、0.5質量%超過であると、製鋼時に粗大な共晶炭化物が生成されやすくなり、転動寿命や強度が低下する場合がある。また、鍛造性,冷間加工性,被削性が低下して、加工コストの上昇を招く場合がある。
〔クロムの含有量について〕
クロム(Cr)は、基地に固溶して焼入れ性,焼戻し軟化抵抗性,耐食性,及び転動寿命を高める作用を有する元素である。また、炭素,窒素等の侵入型固溶元素を実質的に動きにくくして基地の組織を安定化し、水素侵入時の寿命低下を大幅に抑制する作用も有している。さらに、合金鋼中に微細に分布する炭化物が、より高硬度の(Fe,Cr)3 C、(Fe,Cr)7 3 、(Fe,Cr)236 等の炭化物からなるために、耐摩耗性を高める作用も有している。
合金鋼中のクロムの含有量が2質量%未満であると、前述の作用が十分に得られない場合があり、5質量%を超えると、冷間加工性,被削性,浸炭窒化性が低下してコストの上昇を招くおそれがある。さらに、製鋼時に粗大な共晶炭化物が生成されやすくなり、転動寿命や強度が低下する場合がある。
〔モリブデンの含有量について〕
モリブデン(Mo)は、クロムと同様に基地に固溶して焼入れ性,焼戻し軟化抵抗性,耐食性,及び転動寿命を高める作用を有する元素である。また、クロムと同様に炭素,窒素等の侵入型固溶元素を実質的に動きにくくして基地の組織を安定化し、水素侵入時の寿命低下を大幅に抑制する作用も有している。さらに、合金鋼中に微細に分布する炭化物が、より高硬度のモリブデンの炭化物等からなるために、耐摩耗性を高める作用も有している。
合金鋼中のモリブデンの含有量が0.1質量%未満であると、前述の作用が十分に得られない場合があり、1.5質量%を超えると、冷間加工性,被削性が低下してコストの上昇を招くおそれがある。さらに、製鋼時に粗大な共晶炭化物が生成されやすくなり、転動寿命や強度が低下する場合がある。
〔マンガンの含有量について〕
マンガン(Mn)は、製鋼時に脱酸剤として作用する元素であり、0.1質量以上添加する必要がある。また、クロムと同様に基地に固溶してMs点を降下させて、多量の残留オーステナイトを確保したり、焼入れ性を高める作用を有している。ただし、1.5質量%を超えて添加すると、冷間加工性,被削性が低下するだけでなく、マルテンサイト変態開始温度が低下して、浸炭窒化後に多量の残留オーステナイトが残存し十分な硬さが得られない場合がある。
〔ケイ素の含有量について〕
ケイ素(Si)は、マンガンと同様に製鋼時に脱酸剤として作用する元素であり、0.1質量以上添加する必要がある。また、クロム,マンガンと同様に焼入れ性を向上させるとともに、基地のマルテンサイト化や残留オーステナイトの安定化を促進し、軸受寿命の向上に有効な元素である。さらに、焼戻し軟化抵抗性を高める作用も有している。ただし、1.5質量%を超えて添加すると、鍛造性,冷間加工性,被削性,及び浸炭処理性が低下する場合がある。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、遊星歯車装置のピニオンシャフトを例示して説明したが、本発明の転動軸は他の種類の様々な転がり軸受の内輪に相当する部材として適用することができる。
〔実施例〕
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。以下のような方法により、上記の実施形態におけるピニオンシャフト5とほぼ同様の構成のピニオンシャフトを製造した。
Figure 0005168958
ここで、各種試験に用いるピニオンシャフトの製造方法を説明する。ピニオンシャフトの素材には、表1に示すような組成を有する10種の合金鋼を用いた。この合金鋼からなる線材に、旋削加工,熱処理,外径粗研削,外径仕上げ研削,及び超仕上げ研削を施して、直径14.17mm、長さ70mmのピニオンシャフトを得た。得られたピニオンシャフトの性状、すなわち表層部の硬さHv及び残留オーステナイト量、芯部と端部との硬さHv及び残留オーステナイト量、表層部の炭素濃度と窒素濃度との和、並びにピニオンシャフトの直径に対する表層部の厚さの比(厚さ/直径)を、表2,3に示す。
Figure 0005168958
Figure 0005168958
熱処理の内容及び条件は以下の通りである。まず、熱処理1について説明する。合金鋼製の線材を旋削加工することにより得た円柱状部材に、820〜950℃で3〜5時間浸炭窒化処理を施した後に、焼入れを行った。この浸炭窒化処理は、RXガス,エンリッチガス,アンモニアガスを含有する雰囲気下で行った。次に、150〜800℃,2時間の条件で第一焼戻しを行った(各実施例及び各比較例のうち熱処理1の条件で処理を行ったものについては、第一焼戻しの処理温度を表2,3に示す)。この第一焼戻しの処理温度が300℃以上である場合は調質(高温焼戻し)であり、300℃未満である場合は低温焼戻しである。そして、900〜950℃,1〜20秒の条件で、転走面となる部分のみに高周波焼入れを施し、最後に150〜180℃,1.5時間の条件で第二焼戻し(低温焼戻し)を施した。
次に、熱処理2について説明する。合金鋼製の線材を旋削加工することにより得た円柱状部材に、820〜950℃で3〜5時間浸炭窒化処理を施し油冷した後に、150〜250℃,1.5時間の条件で第一焼戻し(低温焼戻し)を施した。この浸炭窒化処理は、RXガス,エンリッチガス,アンモニアガスを含有する雰囲気下で行った。次に、860〜900℃,0.5時間の条件で焼入れを施し、最後に150〜180℃,1.5時間の条件で第二焼戻し(低温焼戻し)を施した。
次に、熱処理3について説明する。合金鋼製の線材を旋削加工することにより得た円柱状部材に、860〜900℃,0.5時間の条件で焼入れを施した後に、150〜180℃,1.5時間の条件で焼戻し(低温焼戻し)を施した。すなわち、浸炭窒化処理は施しておらず、熱処理の内容はズブ焼入れ及び焼戻しのみである。
このようにして得たピニオンシャフトの耐久性を評価するため、転動疲労寿命試験を行った。
〔転動疲労寿命試験について〕
ピニオンシャフトを日本精工株式会社製のプラネタリニードル試験機に装着した。すなわち、ピニオンギアの中心穴にピニオンシャフトを挿通し、ピニオンシャフトの外周面とピニオンギヤの内周面との間に、複数の針状ころを転動自在に介装した。これにより、ピニオンギヤはピニオンシャフトを軸として回転自在とされる。この針状ころは、高炭素クロム鋼(SUJ2)製であり、その寸法は直径2.5mm、長さ24.8mmである。また、針状ころは、JIS鋼種SCM415製の保持器で保持されてケージアンドローラとされている。なお、保持器には浸炭窒化処理が施されている。
そして、下記のような条件で回転試験を行い、ピニオンシャフト,ピニオンギア,針状ころのうち少なくとも一つが破損した時点で寿命に至ったとし、それまでの回転時間を転動疲労寿命とした。また、回転試験終了後に、ピニオンシャフトの曲がり量(塑性曲がり量)を測定した。結果を表4,5に示す。なお、表4,5の転動疲労寿命は、比較例11の転動疲労寿命を1とした場合の相対値で示してある。また、ピニオンシャフト,ピニオンギア,針状ころのうちどの部材が最も破損しやすいか予備試験を行い、ピニオンシャフトが最も破損しやすいことを確認した後に回転試験を行っている。
・基本動定格荷重C :15500N
・基本静定格荷重C0 :16700N
・ラジアル荷重 :5000N
・ピニオンギアの自転速度:10000min-1
・計算寿命L10 :72.4時間
・潤滑油の種類 :オートマチックトランスミッションフルード
・潤滑油の供給量 :10ml/min
・潤滑油の温度 :120℃
Figure 0005168958
Figure 0005168958
表4,5から分かるように、実施例1〜12は比較例1〜8と比べて格段に転動疲労寿命が優れていた。また、比較例10,11は、ピニオンシャフトの塑性曲がりが大きかったため、実施例1〜12と比べて短寿命であった。
〔加締め部の耐久性試験について〕
加締め部の耐久性を確認するため、加締め割れ試験と加締め部疲労試験を行った。加締め割れ試験は、ピニオンシャフトをキャリヤに加締めにより固定する際に、靱性不足から加締め部に破損が発生するか否かを確認する試験である。具体的には、日本精工株式会社製の加締めプレス試験機を用いて、加締め荷重2.0t、加締めスピード40mm/sの条件で、ピニオンシャフトをキャリヤに取り付け、加締め部であるピニオンシャフトの端部にクラック,割れ等の破損が発生するか否かを確認した。
結果を表4,5に示す。端部の硬さHvが350以下のものについては、破損は認められなかったが、端部の硬さHvが350より大きい実施例14は、靱性不足のために亀裂が生じた。
また、加締め部疲労試験は、ピニオンシャフトをキャリヤに加締めにより固定した状態で振動を加え、強度不足から加締め部に破損が発生するか否かを確認する試験である。具体的には、日本精工株式会社製の油圧式変動加振試験機を用いて、抜け荷重4.5kN、加振周波数30Hz、試験サイクル100万回の条件で、ピニオンシャフトに振動を加え、加締め部であるピニオンシャフトの端部に破損が発生するか否かを確認した。
結果を表4,5に示す。端部の硬さHvが150以上のものについては、破損は認められなかったが、端部の硬さHvが150より小さい実施例15は、強度不足のために変形が生じ、キャリヤから脱落した。
本発明の転動軸の一実施形態であるピニオンシャフトを備えた遊星歯車装置の分解斜視図である。
符号の説明
1 サンギヤ
2 リングギヤ
3 ピニオンギヤ
4 キャリヤ
5 ピニオンシャフト

Claims (3)

  1. 相手部材である転動体に対して相対的に転動する転動軸において、下記の5つの条件を満足することを特徴とする転動軸。
    条件1:炭素を0.3質量%以上0.5質量%以下、クロムを2質量%以上5質量%以下、モリブデンを0.1質量%以上1.5質量%以下、マンガンを0.1質量%以上1.5質量%以下、ケイ素を0.1質量%以上1.5質量%以下含有し、残部が鉄及び不可避的不純物である合金鋼で構成されている。
    条件2:前記転動体と摺動する表面には、浸炭窒化処理と高周波焼入れと焼戻しとが施され硬化されてなる表層部が形成されており、その表面硬さHvは650以上900以下とされている。
    条件3:前記表層部の残留オーステナイト量は15体積%以上50体積%以下である。
    条件4:前記浸炭窒化処理と前記高周波焼入れとの間に施される調質又はサブゼロ処理により、前記表層部の内側の芯部の残留オーステナイト量は0体積%である。
    条件5:前記表層部の厚さは軸直径の8%以上15%以下である。
  2. 少なくとも一方の端部の硬さHvが150以上350以下であることを特徴とする請求項1に記載の転動軸。
  3. 前記表層部の炭素濃度と窒素濃度との和が0.8質量%以上2質量%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の転動軸。
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