JP5233305B2 - ころ軸受及びその製造方法 - Google Patents
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Description
異物混入潤滑環境下での転がり疲れ寿命の確保を図る為の技術を記載した刊行物として、他にも特許文献4〜6に記載されたものが知られているが、同様の問題を有する。
特に、本発明のころ軸受に於いては、上記各ころが、JISに規定した高炭素クロム軸受鋼2種(SUJ2)製である。そして、これら各ころの芯部の硬さの値Xを、ビッカース硬度で770〜830Hvとしている。又、これら各ころの表面の硬さのビッカース硬度での値をYとした場合に、1.006×X≦Y≦1.050×Xを満たすべく、上記各ころの表面の硬さを規制している。又、上記各ころの芯部の残留オーステナイト量を15〜25容量%としている。更に、これら各ころの表面から50μmの深さでの圧縮残留応力の最大値を、300〜900MPaとしている。
その後、これら各ころ用中間素材を、850〜880℃に加熱保持後焼き入れしてから、140〜180℃で焼き戻しを施し、更に、バレル研磨による仕上加工とピーニング加工とのうちの少なくとも一方の加工を、上記ころ用中間素材に施す。
これらの熱処理及び加工により、上記各ころ用中間素材を、複数本のころとする。これら各ころは、それぞれ、芯部の硬さのビッカース硬度での値Xが770〜830Hvであり、表面のビッカース硬度での値Yが1.006×X≦Y≦1.050×Xを満たす。又、芯部の残留オーステナイト量が15〜25容量%であり、且つ、表面から50μmの深さでの圧縮残留応力の最大値が300〜900MPaである。
この様な性状を有する各ころは、その後、1対の軌道輪に互いに対向する状態で設けた1対の軌道面同士の間に組み込む。
第一に、芯部の硬さを770〜830Hv確保する事で、表面の硬さを芯部の硬さの1.006〜1.050倍程度に抑えても、この表面の硬さを十分に大きく(775〜871Hvに)できる。又、ピーリングの発生を抑える為の圧縮残留応力の値を、表面から50μmの深さでの最大値で300〜900MPaの範囲に抑えている。従って、異物混入潤滑環境下での転がり疲れ寿命の確保を図る為に必要な、上記表面の硬さ(775〜871Hv)及び圧縮残留応力(最大値で300〜900MPa)を、バレル研磨又は軽いピーニング加工により得るとしても、加工誘起マルテンサイト変態による残留オーステナイト量の減少を抑えられる。そして、本発明の場合には、上記各ころの芯部の残留オーステナイトの量を15〜25容量%確保しているので、これら各ころの表面部分の残留オーステナイトの量が多少低減しても、耐久性確保の為に必要とする残留オーステナイト量を確保できる。
これに対して、残りの試料のうち、実施例9及び比較例7〜8に関しては、ピーニング加工として回転バレルを用い、5〜120min のバレル加工を施し、更に仕上加工として上記バレル研磨を施す事により、表面の硬さを芯部の硬さよりも高めた。
又、実施例10〜11に関しては、ピーニング加工として上記バレル加工のみを施す事により、表面の硬さを芯部の硬さよりも高めた。尚、実施例10の場合には、仕上加工としてセンタレス研磨を施した後に、転動面の表面状態を悪化させない程度の上記バレル加工を施した。
更に、比較例6に就いては、表面の硬さを芯部の硬さよりも高くする為の処理は行わなかった。
ラジアル荷重 : 5500N
回転速度 : 8000min-1
潤滑油温度 : 130℃
尚、耐久試験の前に、予め、鉄粉を300ppm混入したグリースを、試験用のころ軸受の内部に封入した状態で10分間運転する事により、軌道面に圧痕を形成した。その後洗浄したものを、試験用のころ軸受とした。
先ず、実施例1〜11は、何れも、所定の熱処理により芯部の硬さ並びに残留オーステナイト量を確保すると共に、この芯部の硬さに対する表面硬さを高める程度、並びに、表面近くの残留圧縮応力の値を抑えている為、比較例1(従来例)に対して、耐久性(寿命)が、何れも2倍以上となった。この理由は、上記各要素を適正に規制する事により、上記各ころの表面の硬さ、残留オーステナイト量、圧縮残留応力が、高次元でバランスした為である。
又、比較例3は、焼き入れ温度が高く、この為に、芯部の残留オーステナイト量が過度に多くなって、耐久性を必ずしも十分に向上させられなかった。これは、残留オーステナイトの分解に伴う寸法及び形状の悪化が要因と考えられる。
又、比較例4は、焼き戻し温度が120℃と低く、各部の硬さが過度に高いままとなって、耐久性を必ずしも十分に向上させられなかった。これは、比較例3と同様に、寸法及び形状の安定性が不十分であった事が要因と考えられる。
又、比較例5は、焼き戻し温度が200℃と高く、硬さ及び残留オーステナイト量が何れも不足した為、短寿命であった。
又、比較例6は、前記ピーニング加工も前記バレル研磨も施しておらず、適度な圧縮残留応力を発生させられなかった為、耐久性を必ずしも十分に向上させられなかった。
更に、比較例7及び比較例8は、上記ピーニング加工が不適切(過度)であり、短寿命であった。これは、過度の加工により最表面における残留オーステナイト量が減少し過ぎた事と、過度の圧縮残留応力が付与された事が要因と考えられる。
更に、仕上加工の方法もバレル研磨に限らず、同様の効果が得られる加工方法を採用する事ができる。
2a、2b、2c スラストころ軸受
3、3a、3b ころ
4a、4b、4c 保持器
5a、5b、5c 保持器
6 シェル
7、7b、7c スラスト軌道輪
8 内輪
9 回転軸
10 外輪
Claims (2)
- 互いに対向する面をそれぞれ軌道面として互いに同心に配置された1対の軌道輪と、これら両軌道面同士の間に転動自在に設けられた複数本のころとを備えたころ軸受に於いて、これら各ころが、JISに規定した高炭素クロム軸受鋼2種製で、且つ、これら各ころの芯部の硬さの値Xが、ビッカース硬度で770〜830Hvであり、これら各ころの表面の硬さのビッカース硬度での値をYとした場合に、1.006×X≦Y≦1.050×Xを満たすと共に、上記各ころの芯部の残留オーステナイト量が15〜25容量%であり、且つ、これら各ころの表面から50μmの深さでの圧縮残留応力の最大値が300〜900MPaである事を特徴とするころ軸受。
- JISに規定した高炭素クロム軸受鋼2種製の素材を所定の形状に加工して複数本のころ用中間素材とした後、これら各ころ用中間素材を、850〜880℃に加熱保持後焼き入れしてから、140〜180℃で焼き戻しを施し、更に、バレル研磨による仕上加工とピーニング加工とのうちの少なくとも一方の加工を上記ころ用中間素材に施す事により、芯部の硬さのビッカース硬度での値Xが770〜830Hvであり、表面のビッカース硬度での値Yが1.006×X≦Y≦1.050×Xを満たし、芯部の残留オーステナイト量が15〜25容量%であり、且つ、表面から50μmの深さでの圧縮残留応力の最大値が300〜900MPaである複数本のころとした後、これら各ころを、1対の軌道輪に互いに対向する状態で設けた1対の軌道面同士の間に組み込む、ころ軸受の製造方法。
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