JP4992535B2 - 転がり軸受 - Google Patents
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Description
この用途のボールねじには制御の高速化と位置決め精度の向上が要求されるため、このボールねじを支持する転がり軸受には、トルクが低いこと、トルクスパイク等の急激なトルク変動がないことが求められている。また、この用途の転がり軸受は、機器の動作によって振動を受け易いことや、潤滑油の蒸発や飛散を抑えるために潤滑条件が厳しくなることから、軌道面にフレッチングや焼き付きが生じ易い環境にある。
車両のベルト式無段変速機で使用される転がり軸受は、ベルトによる動力伝達効率を良好にすること、ベルト駆動の騒音を抑制すること、プーリとベルトの摩耗を抑えることが求められており、これらの点からは、流動性の高い(粘度の低い)潤滑油を使用することが望ましい。
本発明の課題は、電動射出成形機やプレス機械等で使用されるボールねじを支持する転がり軸受や、ベルト式無段変速機用の転がり軸受として好適な、耐フレッチング性および耐焼き付き性に優れた転がり軸受を提供することにある。
転動面における粒径1μm以下のSi・Mn系窒化物の存在率が、面積比で10%を超えると、研削性が低下したり、靱性が低下して割れが生じる恐れがある。また、転動面の表層部の残留オーステナイトが10体積%を超えると、表面硬さが低下して耐フレッチング性が不十分となる。
炭素(C)の含有率が0.3質量%未満であると、浸炭窒化処理で表層部に十分な量の炭素を存在させるために時間がかかる。そのため、炭素(C)の含有率は0.3質量%以上とし、好ましくは0.5質量%以上とし、より好ましくは0.7質量%以上とする。
また、炭素(C)の含有率が1.2質量%を超えると、製鋼時に巨大炭化物が形成されて、焼き入れ特性や転動疲労寿命に悪影響を及ぼす恐れがある。また、冷間加工性が低下して製造コストの上昇を招く恐れもある。
また、クロム(Cr)の含有率が2.0質量%を超えると、製鋼時に巨大炭化物が形成されて、焼き入れ特性や転動疲労寿命に悪影響を及ぼす恐れがある。また、冷間加工性や被削性が低下して製造コストの上昇を招く場合がある。そのため、クロム(Cr)の含有率は1.6質量%以下であることが好ましい。
珪素(Si)の含有率が1.2質量%を超えると、鋼の靱性が不十分となる。マンガン(Mn)の含有率が1.2質量%を超えると、鍛造性および切削性が低下したり、鋼中不純物である硫黄(S)リン(P)とともに介在物として存在し易くなる。珪素(Si)とマンガン(Mn)の合計含有率が2.0質量%を超えると、Si・Mn系窒化物が多量に析出して、切削性および靱性が低下する。
なお、本発明の転がり軸受は、転動体の転動面に粒径1μm以下のSi・Mn系窒化物が面積比で1%以上10%以下の範囲で存在しているが、転動面の面積375μm2 中における0.05μm以上1μm以下のSi・Mn系窒化物の個数が100個以上となっていることが好ましい。
図1は、本発明の一実施形態に相当する深溝玉軸受を示す断面図である。
この軸受は、内輪1と外輪2と玉(転動体)3と保持器4とで構成されている。
図1の深溝玉軸受として、呼び番号6206に相当するものを以下のようにして作製した。
玉3は、下記の表1に示す各種鉄鋼からなる素材を冷間成形により所定形状に加工した後、下記の条件で熱処理し、次いで研削加工することで得た。表1では、本発明の構成から外れる数値に下線を施した。
ずぶ焼入れ:RX ガス雰囲気中で820〜870℃に0.5〜1.0時間保持後、油冷却。
浸炭後に焼入れ:エンリッチガス雰囲気中で820〜880℃に1.0〜5.0時間保持後、放冷、その後に、RX ガス雰囲気中で820〜870℃に0.5〜1.0時間保持後、油冷却。
浸炭窒化後に焼入れ:RX ガス+エンリッチガス+アンモニアガス雰囲気中で820〜920℃に1.0〜5.0時間保持後、放冷、その後に、RX ガス雰囲気中で820〜870℃に0.5〜1.0時間保持後、油冷却。
サンプル毎に上記いずれかの処理を行った後、全サンプルについて、焼戻しを150〜300℃に3時間保持することで行う。
板状試験片を各玉3と同じ工程で、研削加工による取り代を同じにして作製し、その表面を、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用い、加速電圧10kV、倍率5000倍で観察し、観察画像に占める粒径1μm以下のSi窒化物およびMn窒化物の合計面積の割合を画像解析装置により測定した。観察は3視野以上で行い、全視野の平均値を算出してSi・Mn系窒化物の存在率とした。
また、内輪1と外輪2としては、SUJ2製でずぶ焼きを含む通常の熱処理を施したものを、保持器4としては鋼製のものを用いた。
このようにして得られた各玉3と、内輪1、外輪2、および保持器4を用いて、図1の深溝玉軸受を組み立てて、回転試験機にかけた。そして、潤滑油としてトラクション油「VG68」を用い、異物混入(Hv800で、粒径が100μm以下のものが50%、100〜200μmのものが50%である鉄粉を、0.15g/L)潤滑下、アキシャル荷重:6370N(650kgf)、回転速度:3500min-1の条件で内輪を回転させた。トルクが初期値の3倍となるまでの時間を「耐久寿命」として測定した。なお、サンプル毎に10体の軸受を組み立てて試験を行い、L10寿命を算出した。
そして、各サンプルのL10寿命をサンプルNo. 9のL10寿命で除算することにより、サンプルNo. 9の焼き付き寿命を「1」とした「耐久寿命比」を得た。この結果も下記の表2に示す。
また、サンプルNo. 1〜16の各玉3と同じ方法で「二円筒摩耗試験」用の各二枚の円筒試験体を作製し、下記の条件で以下のようにして摩耗試験を行った。
先ず、上下方向で対向させた一対の回転軸に、一対の円筒試験体を装着する。次に、上側の試験体に荷重をかけて両試験体を接触させ、接触位置にノズルから潤滑油を吹き付けながら、一方の試験体を回転駆動させることにより、両試験体を互いに逆方向に滑り回転させる。そして、所定の距離分だけ回転させた後に摩耗量を測定し、単位滑り距離(1m)当たりの摩耗量(両試験体の合計重量減少量)を算出する。この算出値も下記の表2に示した。
円筒試験体の寸法:外径30mm、内径16mm、軸方向寸法10mm
円筒試験体の表面粗さ(Ra):0.005〜0.010μm
駆動側の試験体の回転速度:10min-1
従動側の試験体の回転速度:7min-1
滑り率:30%
滑り距離:3000m
潤滑油:スピンドル油#10
面圧:1.2GPa
また、サンプルNo. 1〜16の各玉3と同じ方法で、「ASTM D 2596」に準拠した四球試験機用の各四個の球(直径12.7mm)を作製し、下記の条件で焼き付き試験を行った。
この四球試験機では、先ず、3個の球を、全ての球が接触し、各球が正三角形の頂点となるように配置して固定し、これらの固定球で形成される窪みの上に、固定球と同じ球(回転球)をトラクション油「VG22」を塗布した状態で置いた。
また、サンプルNo. 1〜16の各玉3と同じ方法で、「35TAC玉軸受」用の玉(直径7mm)を作製し、内輪と外輪はSUJ2製で、ずぶ焼きを含む通常の熱処理を施すことで作製した。得られた各玉3と、内輪1、外輪2、および保持器4を用いて、図2に示す、ボールねじサポート用スラストアンギュラ玉軸受を組み立てた。
先ず、得られた各軸受をアンデロメータに取り付けて、初期の振動値(アンデロン値)を、「L.B.」、「M.B.」、「H.B.」の各周波数範囲で測定した。次に、各軸受を揺動試験装置に取り付けて、潤滑油:スピンドル油#10、予圧:14.7N、揺動角度:8°、揺動周波数:30Hz(1秒間に30回の揺動)の条件で10万回揺動させた。
なお、No. 8では、玉3、円筒状試験片、球を熱処理後に研削加工した際に割れが生じたため、試験を行うことができなかった。
また、表1および表2から分かるように、使用する鋼の珪素(Si)含有率が0.4質量%以上、マンガン(Mn)含有率が0.4質量%以上、珪素(Si)とマンガン(Mn)の合計含有率が1.0質量%以上であると、玉3の転動面に、粒径1μm以下のSi・Mn系窒化物を面積比で1%以上存在させることができる。
2 外輪
3 玉(転動体)
4 保持器
11a 転がり軸受
11b 転がり軸受
12a 転がり軸受
12b 転がり軸受
7 入力軸プーリ
8 出力軸プーリ
9 ベルト
Claims (2)
- 転動体は、
炭素(C)の含有率が0.3質量%以上1.2質量%以下、クロム(Cr)の含有率が0.5質量%以上2.0質量%以下、珪素(Si)の含有率が0.4質量%以上1.2質量%以下、マンガン(Mn)の含有率が0.4質量%以上1.2質量%以下、珪素(Si)とマンガン(Mn)の合計含有率が1.0質量%以上2.0質量%以下、残部鉄および不可避的不純物である鉄鋼製の素材を、所定形状に加工した後、窒化処理または浸炭窒化処理と焼き入れおよび焼戻しからなる熱処理が施されて得られ、
転動面に、珪素(Si)の窒化物およびマンガン(Mn)の窒化物からなり、粒径1μm以下のSi・Mn系窒化物が、面積比で1%以上10%以下の範囲で存在し、表層部の残留オーステナイトが10体積%以下となっていることを特徴とする転がり軸受。 - 軌道輪は、炭素(C)の含有率が0.2質量%以上1.2質量%以下、クロム(Cr)の含有率が0.5質量%以上2.0質量%以下、珪素(Si)の含有率が0.1質量%以上0.5質量%以下、マンガン(Mn)の含有率が0.1質量%以上0.5質量%以下、残部鉄および不可避的不純物である鉄鋼製の素材を所定形状に加工した後、熱処理が施されて得られた請求項1記載の転がり軸受。
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