JP2008308706A - 円錐ころ軸受 - Google Patents

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【課題】耐摩耗性及び耐焼付き性に優れ、高速回転条件や異物混入潤滑環境下のような厳しい条件で使用されても長寿命な円錐ころ軸受を提供する。
【解決手段】円錐ころ軸受の転動体3は、ケイ素及びマンガンを含有する鋼で構成されており、該鋼中のケイ素の含有量が0.4質量%以上、マンガンの含有量が0.4質量%以上であり、且つ、ケイ素の含有量とマンガンの含有量との和が1質量%以上である。そして、窒化処理又は浸炭窒化処理,焼入れ,焼戻しが順次施されている。このようにして製造された転動体3は、表面から深さ0.01mmまでの表層部に、最大径が1μm以下のSi−Mn系窒化物が析出しており、その量は面積率で1%以上10%以下である。また、表層部におけるSi−Mn系窒化物の量の最小値と最大値の比、又は、表層部における窒素濃度の最小値と最大値の比が、0.9以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は円錐ころ軸受に関する。
円錐ころ軸受は、厳しい潤滑条件下で使用されると焼付き,摩耗等が生じる。近年においては自動車のエンジンのさらなる低燃費化が求められているため、エンジンに使用される円錐ころ軸受の小型化や高効率化が進み、その使用条件が過酷なものとなっている。例えば、高速回転条件で使用される場合には、摩擦条件を表すPV値(Pは面圧、Vは速度)が高くなるため、潤滑条件が厳しくなって、転動体と軌道輪とに滑り摩耗が生じる。
一方、自動車用トランスミッション等に使用される円錐ころ軸受は、駆動系ギア等と潤滑機構を共有しているため、潤滑油中に多量の酸化鉄摩耗粉が存在する。このような劣悪な潤滑環境下(以降においては、摩耗粉等の異物が潤滑剤中に混入した潤滑環境を「異物混入潤滑環境」と記すこともある)においては、円錐ころ軸受の内部に前記摩耗粉が噛み込まれて、軌道輪の軌道面等に圧痕が生じる。この圧痕の縁部には、転動体が通過するたびに応力が集中するので、繰り返し剪断応力の影響により剥離が生じ、円錐ころ軸受の寿命が定格疲れ寿命の十分の一程度となってしまうという問題があった。
従来は、上記のような剥離,摩耗,焼付きによる円錐ころ軸受の寿命低下を抑制するため、JIS鋼種であるSUJ2鋼で軌道輪及び転動体を構成して、円錐ころ軸受に要求される高負荷性,高耐久性を満足し、さらに軌道輪及び転動体に窒化処理又は浸炭窒化処理を施し強化して、軸受性能を満足してきた。
しかしながら、従来は軌道輪,転動体を全て強化しており、一方の部材が他方の部材へ与える影響を考慮した設計はなされていなかったので、一方の部材の機能低下が他方の部材への攻撃性を増加させ、結果として軸受性能が著しく低下するという問題や、コストが過剰に上昇するという問題が生じていた。また、昨今の円錐ころ軸受の高機能化に対する市場からの要求は非常に高くなっているため、従来の円錐ころ軸受では、その要求を満足するには至らなくなった。
その要求を満足するため、特許文献1には、表面に窒化層が形成された高クロム鋼製のころを備えるころ軸受が開示されている。この窒化層の硬さをHv900以上とするとともに、窒化層の内側の芯部の硬さをHv500以上とすることにより、優れた転動疲労寿命を有し、焼付き,かじり,異常摩耗等が生じにくいとされている。
また、特許文献2には、軌道輪や転動体の表層部に、浸炭窒化処理により微細な炭化物及び炭窒化物が分散しているとともに、表層部の表面硬さと残留オーステナイト量とが所定の関係を満足する転がり軸受が開示されている。そして、この転がり軸受は異物混入潤滑環境下において長寿命とされている。
さらに、特許文献3には、軌道輪や転動体が所定の合金元素を含有する鋼で構成されているとともに、浸炭窒化処理により表層部に炭窒化物が分散しており、さらに表面硬さと残留オーステナイト量とが規定された転がり軸受が開示されている。そして、この転がり軸受は異物混入潤滑環境下において長寿命とされている。
さらに、特許文献4には、炭素,ケイ素,マンガン,クロムをそれぞれ所定量含有する鋼で転動体が構成され、浸炭窒化処理を施して表層部の窒素濃度及び炭素濃度を所定量に設定することにより表層部の硬さをHv650以上とし、焼戻し温度を規定することにより表層部の残留オーステナイト量を0質量%以上20質量%以下とし、さらに転動体の表面粗さを軌道面の表面粗さよりも小さくしたころ軸受が開示されている。そして、このころ軸受は異物混入潤滑環境下において長寿命とされている。
特開2001−187916号公報 特開平4−26752号公報 特開平5−78814号公報 特開2005−337361号公報 特開平9−76029号公報
しかしながら、特許文献1〜4に記載の転がり軸受では、耐摩耗性や耐焼付き性が十分とは言えず、前述の要求を満足するには至らなかった。また、圧痕が生じにくいような十分な表面硬さを有しているとは言えなかったので、異物混入潤滑環境下においては寿命が不十分であった。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、耐摩耗性及び耐焼付き性に優れ、高速回転条件や異物混入潤滑環境下のような厳しい条件で使用されても長寿命な円錐ころ軸受を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の円錐ころ軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配された複数の転動体と、を備える円錐ころ軸受において、前記転動体は下記の3つの条件を満足することを特徴とする。
条件A:ケイ素及びマンガンを含有する鋼で構成されており、該鋼中のケイ素の含有量が0.4質量%以上、マンガンの含有量が0.4質量%以上であり、且つ、ケイ素の含有量とマンガンの含有量との和が1質量%以上である。
条件B:窒化処理又は浸炭窒化処理とその後の焼戻しとを含む熱処理が施されて、その表面から深さ0.01mmまでの表層部に、ケイ素とマンガンとを含有し且つ最大径が1μm以下である窒化物が析出しており、析出している前記窒化物の量は面積率で1%以上10%以下である。
条件C:前記表層部における前記窒化物の量の最小値と最大値の比(最小値/最大値)、又は、前記表層部における窒素濃度の最小値と最大値の比(最小値/最大値)が、0.9以上である。
このような構成の円錐ころ軸受は、耐摩耗性及び耐焼付き性に優れ、高速回転条件や異物混入潤滑環境下のような厳しい条件で使用されても長寿命である。
本発明者らが鋭意検討した結果、円錐ころ軸受の耐摩耗性及び耐焼付き性を向上させるためには、ケイ素とマンガンとを含有する窒化物(以降はSi−Mn系窒化物と記すこともある)が転動体の表層部に析出していることが効果的であることが判明した。また、JIS鋼種であるSUJ2鋼では十分な量のSi−Mn系窒化物が析出せず、耐摩耗性及び耐焼付き性が十分に向上しないおそれがあるが、ケイ素の含有量が0.4質量%以上、マンガンの含有量が0.4質量%以上であり、且つ、ケイ素の含有量とマンガンの含有量との和が1質量%以上である鋼であれば、耐摩耗性及び耐焼付き性が向上するのに十分な量のSi−Mn系窒化物が析出することが判明した。
さらに、転動体の転動面においてSi−Mn系窒化物の析出状態が不均一であると、その不均一部分で耐圧痕性や耐摩耗性が低下するので、表層部においてはSi−Mn系窒化物の量が均一であることが好ましいことが判明した。すなわち、表層部においては部位によってSi−Mn系窒化物の量に若干のバラツキがあるが、最大径が1μm以下であるSi−Mn系窒化物の量が最小の部位と最大の部位とにおいてその量比(最小値/最大値)をとると、0.9以上である必要があることが判明した。あるいは、Si−Mn系窒化物の量ではなく、窒素濃度の量比(最小値/最大値)が0.9以上であってもよい。
以下に、鋼中のケイ素及びマンガンの含有量,Si−Mn系窒化物の量等の上記各数値の臨界的意義について説明する。
〔ケイ素の含有量について〕
ケイ素(Si)は、製鋼時に脱酸剤として作用するとともに、鋼の焼戻し軟化抵抗性を高める作用も有している。このような作用を十分に得るためには、ケイ素の含有量は0.1質量%以上とする必要がある。
また、ケイ素の含有量が多いほど、浸炭処理や浸炭窒化処理において表層部の炭素濃度や窒素濃度が高濃度化するため、十分な量のSi−Mn系窒化物を析出させるためには、ケイ素の含有量は0.4質量%以上とする必要がある。ただし、ケイ素の含有量が多すぎると、鋼の靱性が低下したり芯部への窒素の拡散が阻害されたりするので、1.2質量%以下とすることが好ましく、0.7質量%以下とすることがより好ましい。
〔マンガンの含有量について〕
マンガン(Mn)は、製鋼時に脱酸剤として作用することから、0.1質量%以上添加する必要がある。また、マンガンは、鋼の焼入性を向上させる作用も有している。
さらに、十分な量のSi−Mn系窒化物を析出させるためには、マンガンの含有量は0.4質量%以上とする必要があり、0.9質量%以上とすることが好ましい。ただし、マンガンの含有量が多すぎると、鋼の鍛造性,切削性が低下したり鋼中の不純物である硫黄やリンと介在物を形成することから、マンガンの含有量の上限は1.2質量%とすることが好ましく、1.15質量%とすることがより好ましい。
〔ケイ素の含有量とマンガンの含有量との和について〕
十分な量のSi−Mn系窒化物を析出させて耐摩耗性,耐焼付き性を向上させるためには、鋼中のケイ素とマンガンの含有量をともに多量とした上で、窒素を十分に固溶させなければならないので、ケイ素の含有量とマンガンの含有量との和は1質量%以上とする必要がある。
ただし、鋼中の窒素濃度が多すぎると、クロムと結合して巨大な窒化物を形成し、内部応力集中部となって円錐ころ軸受の機能を低下させるおそれがある。また、円錐ころ軸受の生産時に、熱処理時間が長くなってコスト増となる。さらに、過度にSi−Mn系窒化物を析出させると、研削性が著しく低下する。このようなことから、ケイ素の含有量とマンガンの含有量との和の上限は、2質量%とすることが好ましい。
〔炭素の含有量について〕
鋼には、合金成分として炭素も添加される。炭素は、焼入れにより鋼をマルテンサイト組織に変化させ、基地組織を硬化させる作用を有している。転動体の芯部の硬さを転動部材として必要な程度に向上させるためには、炭素の含有量は0.3質量%以上とすることが好ましい。浸炭窒化処理,窒化処理の処理時間を短縮するためには、炭素の含有量は0.95質量%以上とすることがより好ましい。
一方、炭素を過剰に添加するとセメンタイトの析出が過剰となり、浸炭窒化処理,窒化処理によって粗大化して靱性が低下するおそれがあるため、炭素の含有量は1.2質量%以下とすることが好ましく、1.1質量%以下とすることがより好ましい。
〔クロムの含有量について〕
鋼には、合金成分としてクロムも添加されることが多い。クロムは、焼入れ性を向上させるとともに炭化物形成元素であり、鋼を強化する炭化物の析出を促進し、さらに微細化させる作用を有している。このような作用を十分に得るためには、クロムの含有量は0.5質量%以上とすることが好ましく、0.9質量%以上とすることがより好ましい。ただし、クロムの含有量が多すぎると、炭化物が過度に形成され、浸炭窒化処理,窒化処理の際に表面にクロム酸化膜が形成されて、炭素や窒素の拡散が阻害されるおそれがあるので、クロムの含有量は2質量%以下とすることが好ましく、1.2質量%以下とすることがより好ましい。
なお、転動体を構成する鋼には、必要に応じて、モリブデン(Mo),ニッケル(Ni),バナジウム(V)等の他の合金成分をさらに添加してもよい。
〔Si−Mn系窒化物について〕
ケイ素及びマンガンを含有する鋼の窒素濃度を増加させると、微細で高硬度なSi−Mn系窒化物が析出し、転動体の表層部が強化される。耐摩耗性,耐焼付き性を十分に向上させるためには、析出しているSi−Mn系窒化物の量は面積率で1%以上とする必要がある。ただし、転動体の表層部に析出しているSi−Mn系窒化物の量が多すぎると、高硬度となり過ぎて、熱処理後の研削性が低下するおそれがある。また、靱性が低下して、割れが生じるおそれがある。このような問題を防止するためには、析出しているSi−Mn系窒化物の量は面積率で10%以下とする必要がある。
なお、Si−Mn系窒化物の最大径は1μm以下である必要がある。最大径が1μmを超えるSi−Mn系窒化物は鋼の強化にあまり寄与せず、微細なSi−Mn系窒化物が鋼中に分散していることが強化に対して有効である。この理由としては、析出強化の理論において析出粒子間の距離が小さい方が強化性能に優れることが考えられる。Si−Mn系窒化物の量(面積率)が同じであっても、析出粒子の数が多い方が析出粒子間の距離が小さくなるため、強化の度合いが大きい。
すなわち、鋼中のSi−Mn系窒化物の量を多く(面積率で1%以上10%以下)するとともに、平均粒径が0.05μm以上1μm以下の微細なSi−Mn系窒化物の個数を増やす(面積375μm2 中に100個以上)ことが好ましい。特に、平均粒径が0.05μm以上0.5μm以下のSi−Mn系窒化物の個数を、Si−Mn系窒化物全体の20%以上とすると、強化の度合いをさらに大きくすることができる。
〔Si−Mn系窒化物の量又は窒素濃度の比について〕
転動体の転動面においてSi−Mn系窒化物の析出状態が不均一であると、その不均一部分で耐圧痕性や耐摩耗性が低下するので、表層部においてはSi−Mn系窒化物の量が均一であることが好ましい。表層部においては部位によってSi−Mn系窒化物の量に若干のバラツキがあるが、耐圧痕性や耐摩耗性の局所的な低下を避けるためには、表層部におけるSi−Mn系窒化物の量の最小値と最大値の比(最小値/最大値)、又は、表層部における窒素濃度の最小値と最大値の比(最小値/最大値)が、0.9以上である必要がある。
〔表層部の硬さについて〕
転動体の表面強度を十分なものとするためには、表層部のビッカース硬さHvを700以上とすることが好ましい。また、異物混入潤滑環境のような圧痕が発生しやすい劣悪な環境下で円錐ころ軸受が使用される場合には、表層部のビッカース硬さHvを800以上とすることがより好ましい。
ただし、表層部のビッカース硬さHvが1000を超えると、靱性の低下からクラックや割れが生じやすくなる。また、研削性が低下するため、円錐ころ軸受の生産時に加工時間が長くなってコスト増の要因となるおそれがある。
また、本発明に係る請求項2の円錐ころ軸受は、請求項1に記載の円錐ころ軸受において、前記転動体は、前記鋼製の素材を鍛造型で円錐形に成形した素形品に前記熱処理を施すことにより製造されたものであるとともに、前記鍛造型は、前記素材が充填される円錐形の凹部を有し、前記凹部の内面のうち前記転動体の転動面に対応する部分には、前記鍛造型を複数に分割する境界部が位置していないことを特徴とする。
転動体は転がり軸受1個当たり多数個必要であるため、転動体の製造のリードタイムはできるだけ短くする必要があった。そのため、素材から素形品を製造する際には、生産効率の高い冷間鍛造が採用されていた。その際には、例えば図5のような分割タイプの金型が使用されていた(特許文献5を参照)。すなわち、金型が上型51と下型52とからなり、両型51,52に形成された凹部53内に素材を配して上下から圧縮することにより鍛造し、円錐形の素形品を得ていた。この時、素形品の外周面には、上型51と下型52との境界部に対応する位置に、ころの径方向外方に突出する突起(すなわち余肉、バリである)が形成される。通常は、この突起は転動面となる位置に形成されるため、研削加工等によって取り除いていた。
しかしながら、このような転動体の製造方法では、浸炭窒化処理等の熱処理の前に突起を取り除く研削加工を行う必要がある上、熱処理の後に研削加工やバレル処理による仕上げ加工を行う必要があった。そのため、工程数が多くなり、生産性の低下や製造コストの向上に繋がっていた。
突起を取り除かずに熱処理を行って、その後の仕上げ加工で突起の除去を行えば、工程数は多くならないが、仕上げ加工時に取り除く部分(研削しろ)が多くなるという問題があった。また、突起が存在していた部分には、他の部分と同様の深さまでは炭素や窒素が浸透しにくいので、突起を取り除いた後に露出する表面には十分な量の炭化物や炭窒化物が存在しないおそれがあった。その結果、転動体の転動面において、部位によって炭素濃度や窒素濃度にバラツキが生じるため、耐圧痕性や耐摩耗性の局所的な低下が発生するおそれがあった。
そこで、このような問題が生じないためには、前記突起が生じないような方法で転動体を製造することが好ましい。すなわち、素材から素形品を製造する際に、図5のように複数の部材で構成された分割タイプの鍛造型を使用せず、一つの部材で構成された一体タイプの鍛造型を使用するとよい。そうすれば、鍛造型には、該鍛造型を分割する境界部が存在しないので、鍛造時に余肉やバリに相当する突起が生成することがない。
よって、転動体の製造において工程数が多くなることがない。また、転動体の転動面において、部位によって炭素濃度や窒素濃度にバラツキが生じにくく均一となるので、Si−Mn系窒化物の量の最小値と最大値の比や表層部における窒素濃度の最小値と最大値の比が0.9以上となりやすい。その結果、耐圧痕性や耐摩耗性の局所的な低下がなく、これらの性能が優れている。
なお、鍛造型を分割する境界部が転動体の転動面に対応する部分に位置しないならば、分割タイプの鍛造型を使用してもよい。その際には、転動体の外面の境界部に対応する位置に突起が形成されるので、熱処理前又は熱処理後に突起を取り除く。この突起は、転動体の転動面には形成されないので、熱処理後取り除いても前述のような不都合が生じることはない。
本発明の円錐ころ軸受は、耐摩耗性及び耐焼付き性に優れ、高速回転条件や異物混入潤滑環境下のような厳しい条件で使用されても長寿命である。
本発明に係る円錐ころ軸受の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1の円錐ころ軸受は、内輪1と、外輪2と、内輪1の軌道面1aと外輪2の軌道面2aとの間に転動自在に配された複数の転動体3と、複数の転動体3を両輪1,2の間に保持する保持器4と、を備えている。なお、保持器4は備えていなくてもよい。
転動体3は、ケイ素及びマンガンを含有する鋼で構成されている。この鋼中のケイ素の含有量は0.4質量%以上、マンガンの含有量は0.4質量%以上であり、これらケイ素の含有量とマンガンの含有量との和は1質量%以上である。そして、転動体3は、上記鋼からなる素材を円錐形に成形して素形品とした後に、窒化処理又は浸炭窒化処理に続いて焼戻しを行うという熱処理を施し、さらに表面に研削加工,バレル処理等を施して仕上げることにより製造されたものである。
このようにして製造された転動体3は、表面から深さ0.01mmまでの表層部に、最大径が1μm以下であるSi−Mn系窒化物が析出しており、析出しているSi−Mn系窒化物の量は面積率で1%以上10%以下である。また、表層部におけるSi−Mn系窒化物の量の最小値と最大値の比(最小値/最大値)、又は、表層部における窒素濃度の最小値と最大値の比(最小値/最大値)が、0.9以上である。
このような本実施形態の円錐ころ軸受は、耐摩耗性及び耐焼付き性に優れているので、高速回転条件や異物混入潤滑環境下のような厳しい条件で使用されても長寿命である。
なお、素材を成形して素形品とする際には、一つの部材で構成された一体タイプの鍛造型を用いることが好ましい。鍛造型の円錐形の凹部に素材を充填し加圧すると、素材が鍛造されて円錐形の素形品が得られるが、一体タイプの鍛造型は一つの部材で構成されており、複数の部材で構成された分割タイプの鍛造型のように凹部の内面に鍛造型を複数に分割する境界部が位置しているということがないので、素形品の表面のうち転動面となる部分に余肉やバリに相当する突起が生成することがない。よって、転動体の転動面において、部位によって炭素濃度や窒素濃度にバラツキが生じにくく均一となるので、Si−Mn系窒化物の量の最小値と最大値の比や表層部における窒素濃度の最小値と最大値の比が0.9以上となりやすい。
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
〔耐摩耗性に関する試験について〕
耐摩耗性は、二円筒摩耗試験により評価した。まず、試験片の製造方法を説明する。表1に示すような組成を有する鋼を円筒形(内径23mm,外径30mm,長さ10mm)に加工した後に、浸炭処理,窒化処理,又は浸炭窒化処理を施し(表2,3を参照)、さらにその後に焼入れと焼戻しとを順次施した。そして、さらに外周面に仕上げ加工を施した。
熱処理の内容は下記の通りである。なお、比較例1については、焼入れ,焼戻しを施したのみで、浸炭処理,窒化処理,浸炭窒化処理はいずれも施していない。また、試験片の外周面の表面粗さは、いずれも0.005〜0.010μmRaである。
浸炭処理:エンリッチガス雰囲気中において820〜880℃で1〜5時間保持した後に放冷する。
窒化処理:RXガスとアンモニアガスを含有する雰囲気中において820〜920℃で1〜5時間保持した後に放冷する。
浸炭窒化処理:RXガス,エンリッチガス,アンモニアガスを含有する雰囲気中において820〜920℃で1〜5時間保持した後に放冷する。
焼入れ :RXガス雰囲気中において820〜870℃で0.5〜1時間保持した後に油冷する。
焼戻し :150〜300℃に保持した後に放冷する。
Figure 2008308706
Figure 2008308706
Figure 2008308706
このようにして製造した試験片について、表面から深さ0.01mmまでの表層部に析出しているSi−Mn系窒化物の量(面積率)及び前記表層部の表面硬さHvをそれぞれ測定した。
Si−Mn系窒化物の量は、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて測定した。すなわち、加圧電圧10kVで表面を観察し、5000倍に拡大した写真を少なくとも3視野撮影し、その写真を2値化してから画像解析装置にてSi−Mn系窒化物の量を面積率で算出した。なお、最大径が0.05μm以上のSi−Mn系窒化物について測定した。
また、表面硬さHvは、測定荷重を0.98Nとしてビッカース硬度計で測定した。Si−Mn系窒化物の量,及びビッカース硬さHvの測定結果を、それぞれ表2,3にまとめて示す。
次に、二円筒摩耗試験の方法について説明する。上下に並んだ2つの円筒形の軸にそれぞれ円筒形の試験片を装着し、上方から荷重を負荷しながら2つの試験片を互いに接触状態で逆方向に低速で回転させた。そして、所定のすべり率で所定のすべり距離となるまで回転させた後に、両試験片の摩耗量を求め、単位すべり距離当たりの摩耗量を算出した。下側の試験片はモーターにより回転駆動される駆動側試験片であり、上側の試験片はギアを介してモーターにより回転駆動される従動側試験片である。また、上側の試験片の外周面は円筒面であるのに対し、下側の試験片の外周面は略球面状であり、両試験片は略楕円接触している。
試験条件は以下の通りである。
荷重(面圧):1.18MPa
回転速度 :駆動側試験片は10min-1、従動側試験片は7min-1
すべり率 :30%
すべり距離 :3000m
潤滑剤 :ISO粘度グレードがISO VG10である工作機械油
摩耗量の測定結果を表2,3に示す。表2,3に記載の摩耗量の数値から分かるように、実施例1〜6は、比較例1〜12と比べて耐摩耗性が優れていた。
〔耐焼付き性に関する試験について〕
耐焼付き性は、円錐ころ軸受を用いて評価した。まず、試験体である呼び番号HR30206Cの円錐ころ軸受の製造方法を説明する。
表1に示すような組成を有する鋼で構成された線材を切断して、円柱状の素材を得た。この素材の外形寸法は、円錐ころの外形寸法よりも大とする。そして、この素材を鍛造して円錐ころの素形品を製造した。鍛造に用いる鍛造型としては、前述した一体タイプのものか、又は、図5に示すような分割タイプのものを用いた。
一体タイプの鍛造型を用いた場合には、まず第一工程として、図2に示すような予備ダイス21の貫通孔21aの中に前記素材23を入れ、第一のパンチ25とカウンターピン27とで挟んで両側から押圧することにより、素材23の片端部に凹部23aを形成した。次に、第二工程として、予備ダイス21から取り出した素材23を図3に示すような成形ダイス31の貫通孔31aの中に入れ、第二のパンチ33とカウンターピン35とで挟んで両側から押圧した。成形ダイス31の貫通孔31aは、その内面が円錐形状をなしているので、素材23が円錐形に成形され素形品が得られた。このように一体タイプの鍛造型を用いたので、素形品の表面のうち転動面となる部分に、余肉やバリに相当する突起が生成することはない。
一方、分割タイプの鍛造型を用いた場合には、図5のような二つの部材の凹部内に素材を配し、軸方向両側から押圧して円錐形に成形された素形品を得た。このように分割タイプの鍛造型を用いた場合は、鍛造型の凹部の内面に鍛造型を複数に分割する境界部が位置しているので、素形品の表面のうち転動面となる部分に余肉やバリに相当する突起が生成する。
上記のようにして得られた素形品に、耐摩耗性に関する試験の場合と同様の熱処理(浸炭処理,窒化処理,又は浸炭窒化処理、並びに、焼入れ及び焼戻し)を施した。そして、転動面となる部分に研削により仕上げ加工を施して、円錐ころを得た。分割タイプの鍛造型を用いたものには突起が形成しているので、仕上げ加工の際に取り除いた。なお、比較例9については、研削による仕上げ加工の際にクラックが発生したため、試験に供することはできなかった。
得られた円錐ころについて、表面から深さ0.01mmまでの表層部に析出しているSi−Mn系窒化物の量(面積率),及び前記表層部のビッカース硬さHvを、前述と同様の方法でそれぞれ測定したが、その結果は耐摩耗性に関する試験の場合と同様であった(表2,3に記載の数値であった)。
また、円錐ころの表層部の窒素濃度を測定したところ、部位によってバラツキがあるものがあった。表層部における窒素濃度の最小値と最大値の比(最小値/最大値)によってそのバラツキを評価したところ、表2,3に示すように、一体タイプの鍛造型を用いて鍛造した方が分割タイプの鍛造型を用いて鍛造したものよりもバラツキが小さく窒素濃度が均一であった。なお、表層部に析出している最大径が1μm以下のSi−Mn系窒化物の量(面積率)と表層部の窒素濃度との関係を、図4のグラフに示す。
次に、耐焼付き性の試験方法について説明する。上記のようにして製造した円錐ころを、一般的な内輪及び外輪と組み立てて、円錐ころ軸受を製造した。そして、スラスト荷重4000Nを負荷しながら、その円錐ころ軸受を回転速度6000min-1で回転させた(内輪回転)。その際には、給油量480ml/minで潤滑剤を供給した。潤滑剤には、ISO粘度グレードがISO VG68であるトラクション油を用いた。そして、潤滑剤の供給を停止して回転を続け、潤滑剤の供給を停止してからトルクが急上昇するまでの時間(焼付き時間)の長さによって耐焼付き性を評価した。
結果を表2,3に示す。なお、表2,3の焼付き時間の数値は、比較例1の軸受の焼付き時間を1とした場合の相対値で示してある。表2,3に記載の焼付き時間から分かるように、実施例1〜6は、比較例1〜12と比べて耐焼付き性が優れていた。
〔耐久性に関する試験について〕
耐久性は、円錐ころ軸受を用いて評価した。用いた円錐ころ軸受の製造方法は、耐焼付き性に関する試験の場合と同様である。また、円錐ころの表層部に析出しているSi−Mn系窒化物の量(面積率),前記表層部のビッカース硬さHv,及び表層部における窒素濃度の最小値と最大値の比(最小値/最大値)を、前述と同様の方法でそれぞれ測定したが、その結果は耐焼付き性に関する試験の場合と同様であった(表2,3に記載の数値であった)。
次に、耐久性の試験方法について説明する。劣悪な潤滑環境を再現するため、異物混入潤滑環境下において下記のような条件で回転試験を行い、寿命を測定した。円錐ころ軸受の端面に取り付けた振動計により、回転時の振動を測定し、振動値が回転初期の2倍になったら、軌道輪の軌道面又は転動体の転動面に剥離が発生して寿命に至ったと判断した。そして、1種の円錐ころ軸受につき10個耐久性試験を行い、ワイブル分布関数に基づくL10寿命を算出した。
軸受の呼び番号:L44649R/L44610R
スラスト荷重:4000N
ラジアル荷重:20000N
回転速度 :4000min-1
潤滑剤 :ISO粘度グレードがISO VG68であるトラクション油
なお、潤滑剤中には、硬さHv900の鉄粉を混入してある。混入量は、潤滑剤1Lあたり0.5gである。また、鉄粉の50%は、粒径が100μm未満のものであり、残り50%は粒径が100μm以上200μm以下のものである。
結果を表2,3に示す。なお、表2,3の寿命の数値は、比較例1の軸受の寿命を1とした場合の相対値で示してある。表2,3に記載の寿命から分かるように、実施例1〜6は、比較例1〜12と比べて耐久性が優れていた。
自動車,産業機械,建設機械,鉄鋼機械等のトランスミッション,エンジン,減速機等に使用される円錐ころ軸受は、近年の高速化,高温化により潤滑条件がさらに厳しくなっているが、本発明の円錐ころ軸受は、そのような厳しい潤滑条件下においても使用可能である。
本発明に係る円錐ころ軸受の一実施形態を示す部分縦断面図である。 一体タイプの鍛造型を用いて円錐ころを製造する方法を説明する断面図である。 一体タイプの鍛造型を用いて円錐ころを製造する方法を説明する断面図である。 表層部に析出している最大径が1μm以下のSi−Mn系窒化物の量と窒素濃度との関係を示すグラフである。 分割タイプの鍛造型の断面図である。
符号の説明
1 内輪
2 外輪
3 転動体
21 予備ダイス
23 素材
31 成形ダイス

Claims (2)

  1. 内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配された複数の転動体と、を備える円錐ころ軸受において、前記転動体は下記の3つの条件を満足することを特徴とする円錐ころ軸受。
    条件A:ケイ素及びマンガンを含有する鋼で構成されており、該鋼中のケイ素の含有量が0.4質量%以上、マンガンの含有量が0.4質量%以上であり、且つ、ケイ素の含有量とマンガンの含有量との和が1質量%以上である。
    条件B:窒化処理又は浸炭窒化処理とその後の焼戻しとを含む熱処理が施されて、その表面から深さ0.01mmまでの表層部に、ケイ素とマンガンとを含有し且つ最大径が1μm以下である窒化物が析出しており、析出している前記窒化物の量は面積率で1%以上10%以下である。
    条件C:前記表層部における前記窒化物の量の最小値と最大値の比(最小値/最大値)、又は、前記表層部における窒素濃度の最小値と最大値の比(最小値/最大値)が、0.9以上である。
  2. 前記転動体は、前記鋼製の素材を鍛造型で円錐形に成形した素形品に前記熱処理を施すことにより製造されたものであるとともに、前記鍛造型は、前記素材が充填される円錐形の凹部を有し、前記凹部の内面のうち前記転動体の転動面に対応する部分には、前記鍛造型を複数に分割する境界部が位置していないことを特徴とする請求項1に記載の円錐ころ軸受。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017166525A (ja) * 2016-03-14 2017-09-21 株式会社ジェイテクト 転がり摺動部材及び転がり軸受
JP2019207165A (ja) * 2018-05-29 2019-12-05 山陽特殊製鋼株式会社 試験片、及び、転がり疲れ試験方法

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