JP2014237871A - 軸受部品および転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価でかつ降伏強度および寿命を向上した軸受部品および当該軸受部品を備える転がり軸受を提供する。
【解決手段】0.95質量%以上1.1質量%以下の炭素と、0.3質量%未満の珪素と、0.5質量%未満のマンガンと、0.008質量%未満の硫黄と、1.4質量%以上1.6質量%未満のクロムとを含み、残部鉄および不純物からなる鋼からなり、他の部品と接触する面である接触面(11A,12A,13A)を含む表層部に浸炭窒化層が形成された軸受部品(11,12,13)である。上記表層部における平均窒素濃度が0.3質量%以上0.6質量%以下であり、かつ、上記表層部における窒素濃度のばらつきが0.1質量%以下である。上記表層部における残留オーステナイト量が8体積%以下である。ac *が0.88以上1.27以下、αが0.012以上0.020以下で浸炭窒化層が形成される。
【選択図】図1
【解決手段】0.95質量%以上1.1質量%以下の炭素と、0.3質量%未満の珪素と、0.5質量%未満のマンガンと、0.008質量%未満の硫黄と、1.4質量%以上1.6質量%未満のクロムとを含み、残部鉄および不純物からなる鋼からなり、他の部品と接触する面である接触面(11A,12A,13A)を含む表層部に浸炭窒化層が形成された軸受部品(11,12,13)である。上記表層部における平均窒素濃度が0.3質量%以上0.6質量%以下であり、かつ、上記表層部における窒素濃度のばらつきが0.1質量%以下である。上記表層部における残留オーステナイト量が8体積%以下である。ac *が0.88以上1.27以下、αが0.012以上0.020以下で浸炭窒化層が形成される。
【選択図】図1
Description
本発明は、軸受部品および転がり軸受に関し、より特定的には、安価でかつ降伏強度および寿命が向上し、さらに製造コストが低減された軸受部品および当該軸受部品を備える転がり軸受に関する。
転がり軸受などに用いられる軸受部品の耐久性を向上させる対策として、浸炭窒化処理が知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。浸炭窒化処理は、鋼をA1変態点以上の温度に加熱して炭素および窒素を鋼中に侵入拡散させた後、当該鋼を焼入れする熱処理である。浸炭窒化処理は、転がり軸受の重要な性能である異物混入潤滑下における寿命の延命に対して有効である。
また、転がり軸受の他の重要な機能には機械の回転運動時の低トルク化があり、これを達成するためには回転中のエネルギー損失の低減が重要である。転がり軸受の回転中のエネルギー損失の原因としては、転がり粘性抵抗、差動すべり、弾性ヒステリシス損失、または潤滑油の撹拌抵抗などが挙げられる。転がり軸受において玉軸受ところ軸受とを比べると、転がり粘性抵抗の差により玉軸受の方がエネルギー損失がより少ない。そのため、機械の回転運動時の低トルク化という観点からは玉軸受の方がより好ましい構造であるといえる。
ころ軸受は、玉軸受と比べて軸受部品(軌道輪や玉)同士の接触面積が大きいため、軸受部品に加わる接触面圧がより小さい。そのため、大きな荷重を支えるという観点からはころ軸受が有効である。一方、玉軸受において大きな荷重を支えると、接触面圧が過大となり軌道輪や玉において塑性変形が生じる。これにより、機械の回転運動が高トルク化し、さらに異音の発生や回転精度の低下などが起こり、結果として軸受としての機能を満たすことが困難になる。このように、軸受としての機能不全にまで至らしめる過大な荷重(接触面圧)を、転がり軸受の「静的負荷容量」という。したがって、転がり軸受の低トルク化においては、塑性変形し難い(降伏強度が高い)材料を用いた玉軸受を採用することが好ましいといえる。
塑性変形が生じ難い代表的な材料としては、窒化珪素などのセラミック材料が挙げられる。しかし、このセラミック材料は、塑性変形し難い一方で難加工性を有するため、軸受材料として採用した場合には加工コストが上昇するという問題がある。そのため、セラミック材料に代えて、加工コストを含むトータルコストが安価でかつ塑性変形が生じ難い材料の開発が求められる。なお、「塑性変形の生じ難さ」とは、HV硬度やHRC硬度で表わされる硬度ではなく、弾性限や降伏強度などに近い塑性変形量が微小な領域に関するものである。
近年の軸受部品への耐久性向上の要求を考慮すると、従来の浸炭窒化処理では用途によっては十分な耐久性を付与することが困難である場合がある。また、従来では、低トルク
化において有利な構造を有する玉軸受において、窒化珪素などの加工コストが高い材料を用いずに塑性変形を防ぐことが困難であった。さらに、浸炭窒化処理の効率化を図ることにより軸受部品の製造コストを低減することも必要である。
化において有利な構造を有する玉軸受において、窒化珪素などの加工コストが高い材料を用いずに塑性変形を防ぐことが困難であった。さらに、浸炭窒化処理の効率化を図ることにより軸受部品の製造コストを低減することも必要である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、安価でかつ降伏硬度および寿命が向上し、さらに製造コストが低減された軸受部品および当該軸受部品を備える転がり軸受を提供することである。
本発明に従った軸受部品は、0.95質量%以上1.1質量%以下の炭素と、0.3質量%未満の珪素と、0.5質量%未満のマンガンと、0.008質量%未満の硫黄と、1.4質量%以上1.6質量%未満のクロムとを含み、残部鉄および不純物からなる鋼からなり、他の部品と接触する面である接触面を含む表層部に浸炭窒化層が形成された軸受部品である。上記軸受部品では、上記表層部における平均窒素濃度が0.3質量%以上0.6質量%以下であり、かつ、上記表層部における窒素濃度のばらつきが0.1質量%である。また、上記軸受部品では、上記表層部における残留オーステナイト量が8体積%以下である。上記軸受部品では、未分解アンモニア分圧をPN、水素分圧をPHとした場合に、以下の式(1)で定義されるac *が0.88以上1.27以下、式(2)で定義されるαが0.012以上0.020以下となるように浸炭窒化処理を行うことにより浸炭窒化層が形成されている、
本発明者は、加工コストが高い材料を用いずに降伏強度を向上させ、かつ寿命も向上させ、さらに製造コストを低減するための方策について鋭意検討を行った。その結果、以下のような知見を得て、本発明に想到した。
軸受部品において、他の部品と接触する接触面(たとえば軌道輪の転走面や玉およびころの転動面など)およびその直下では、亀裂などの損傷が発生し易い。これに対して、上記接触面に浸炭窒化処理を施すことにより軸受部品の耐久性の向上を図ることができる。
本発明者の検討によると、上記接触面を含む表層部の窒素濃度が0.2質量%未満である場合には、異物混入潤滑下における軸受部品の寿命が低下する。そのため、軸受部品の寿命の低下を抑制するためには、上記表層部の窒素濃度を少なくとも0.2質量%以上に
する必要がある。一方、上記表層部の窒素濃度が0.7質量%を超える場合には母地中のクロムが殆ど消失するために焼入性が低下し、その結果不完全焼入が発生し易くなる。そのため、焼入性の低下および不完全焼入の発生を抑制するためには、上記表層部の窒素濃度は0.7質量%以下にする必要がある。
する必要がある。一方、上記表層部の窒素濃度が0.7質量%を超える場合には母地中のクロムが殆ど消失するために焼入性が低下し、その結果不完全焼入が発生し易くなる。そのため、焼入性の低下および不完全焼入の発生を抑制するためには、上記表層部の窒素濃度は0.7質量%以下にする必要がある。
また、軸受部品は、成形された鋼材に対して浸炭窒化処理や焼戻処理などの熱処理を施し、その後上記接触面に仕上げ加工を施すことにより製造される。そして、上記熱処理を施すことにより鋼材が変形する場合があり(たとえば軌道輪が楕円形となり真円度が崩れる場合がある)、仕上げ加工時の研削取り代にばらつきが生じる場合がある。そのため、従来の軸受部品では、上記表層部において窒素濃度のばらつきが大きくなるという問題がある。
これに対して、本発明に従った軸受部品では、上記表層部における平均窒素濃度が0.3質量%以上0.6質量%以下であり、かつ、上記表層部における窒素濃度のばらつきが0.1質量%以下にまで低減されている。そのため、上記軸受部品では、上記表層部の窒素濃度が0.2質量%以上0.7質量%以下となっており、異物混入潤滑下における寿命の低下が抑制されている。したがって、本発明に従った軸受部品によれば、寿命が向上した軸受部品をより確実に提供することができる。
また、本発明者の検討によると、焼戻処理時の加熱温度を従来よりも高くすることにより、表層部の残留オーステナイト量が8体積%以下にまで低下し、その結果材料の降伏強度が向上する。つまり、表層部の残留オーステナイト量が8体積%以下にまで低下した上記軸受部品では、加工コストが高い窒化珪素などの材料を用いることなく材料の塑性変形を抑制することができる。
また、上述のように、軸受部品においては表層部の窒素濃度を高めることで寿命を向上させることができる。しかし、従来の軸受部品では、表層部の窒素濃度が高くなるのに伴い材料の降伏強度が低下するため、降伏強度の向上と寿命の向上とを両立することは困難であった。これに対し、本発明者の検討によると、焼戻温度を従来よりも高くした場合には、降伏強度と寿命との相反関係が解消される。つまり、焼戻温度を上げて表層部の残留オーステナイト量を8体積%以下にすることにより、表層部の窒素濃度を上記範囲にまで高めた場合でも降伏強度の低下を抑制することができる。したがって、本発明に従った軸受部品によれば、安価でかつ降伏強度および寿命が向上した軸受部品を提供することができる。
また、本発明者のさらなる検討によると、αの値が0.012以下においては、浸炭窒化処理により所定時間内に鋼に侵入する窒素侵入量はαの値が大きくなるにつれて、ほぼ一定の割合で増加するが、αの値が0.012を超えると上記窒素侵入量の増加割合は低下する。したがって、αの値を0.012以上とすることにより、浸炭窒化における鋼への窒素の導入を効率よく実施することができる。一方、αの値が0.020を超えると所定時間内の窒素侵入量が飽和するとともに、スーティング(熱処理炉内に煤が発生して処理対象物に付着する現象)が発生し易くなり、処理対象物において表面浸炭などの品質上の不具合が発生するおそれがある。そのため、αの値は、0.012以上0.020以下にすることが好ましく、0.013以上0.018以下にすることがより好ましい。
さらに、ac *の値は、鋼の表層部が脱炭することを防止するために0.88以上とすることが好ましい。一方、ac *の値が1.27を超えると、鋼の表層部に過大な炭化物(セメンタイト:Fe3C)が形成され、鋼の特性に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、ac *の値は、0.88以上1.27以下であることが好ましく、0.9以上1.1以下であることがより好ましい。さらに、さらに、ac *の値を1.00よりも大きく
すると、スーティングが発生するおそれがあるとともに、鋼が過浸炭となる。そのため、特に過浸炭を防止する観点から、ac *の値は1.00以下とすることがより好ましい。このように、αが0.012以上0.020以下、ac *が0.88以上1.27以下となる雰囲気下で浸炭窒化処理を行うことにより、軸受部品の表層部における炭素濃度が適切に保持されるとともに、浸炭窒化処理の効率化が図られる。その結果、軸受部品の製造コストの低減を図ることができる。したがって、本発明に従った軸受部品によれば、安価でかつ降伏硬度および寿命が向上し、さらに製造コストが低減された軸受部品を提供することができる。
すると、スーティングが発生するおそれがあるとともに、鋼が過浸炭となる。そのため、特に過浸炭を防止する観点から、ac *の値は1.00以下とすることがより好ましい。このように、αが0.012以上0.020以下、ac *が0.88以上1.27以下となる雰囲気下で浸炭窒化処理を行うことにより、軸受部品の表層部における炭素濃度が適切に保持されるとともに、浸炭窒化処理の効率化が図られる。その結果、軸受部品の製造コストの低減を図ることができる。したがって、本発明に従った軸受部品によれば、安価でかつ降伏硬度および寿命が向上し、さらに製造コストが低減された軸受部品を提供することができる。
また、本発明に従った軸受部品において、「表層部」とは上記接触面から上記軸受部品の厚み方向において深さ20μmまでの領域を意味する。また、「表層部における平均窒素濃度」および「表層部における窒素濃度のばらつき」は、後述する本発明の実施の形態において規定される通りである。
次に、本発明に従った軸受部品を構成する鋼の成分組成を上記範囲に設定した理由について説明する。
炭素:0.95質量%以上1.1質量%以下
炭素含有量は、焼入硬化後における軸受部品の硬度および炭化物量に大きな影響を与える。鋼の炭素含有量が0.95質量%以上である場合には、熱処理により鋼中に多くの炭素を導入することなく、十分な硬度および炭化物量を達成することができる。一方、炭素含有量が1.1質量%を超える場合には、鋼の製造時点において大型の炭化物が形成され、当該炭化物が軸受部品の耐久性に悪影響を与える可能性がある。そのため、炭素含有量は0.95質量%以上1.1質量%以下とした。
炭素含有量は、焼入硬化後における軸受部品の硬度および炭化物量に大きな影響を与える。鋼の炭素含有量が0.95質量%以上である場合には、熱処理により鋼中に多くの炭素を導入することなく、十分な硬度および炭化物量を達成することができる。一方、炭素含有量が1.1質量%を超える場合には、鋼の製造時点において大型の炭化物が形成され、当該炭化物が軸受部品の耐久性に悪影響を与える可能性がある。そのため、炭素含有量は0.95質量%以上1.1質量%以下とした。
珪素:0.3質量%未満
珪素は、鋼中の水素吸蔵量を増加させ、水素脆性を助長する。鋼の珪素含有量が0.3質量%以上である場合には、水素が鋼中に入り易い用途において水素脆性による剥離が起こり易くなる。そのため、上記軸受部品では、鋼の珪素含有量を0.3質量%未満に低く設定した。
珪素は、鋼中の水素吸蔵量を増加させ、水素脆性を助長する。鋼の珪素含有量が0.3質量%以上である場合には、水素が鋼中に入り易い用途において水素脆性による剥離が起こり易くなる。そのため、上記軸受部品では、鋼の珪素含有量を0.3質量%未満に低く設定した。
マンガン:0.5質量%未満
マンガンは、鋼の焼入性と焼入前の鋼の硬度に寄与する。しかし、マンガン含有量が0.5質量%以上である場合には焼入前の素材の硬度が高くなり、冷間工程における加工性が低下する。そのため、マンガン含有量は0.5質量%未満とした。
マンガンは、鋼の焼入性と焼入前の鋼の硬度に寄与する。しかし、マンガン含有量が0.5質量%以上である場合には焼入前の素材の硬度が高くなり、冷間工程における加工性が低下する。そのため、マンガン含有量は0.5質量%未満とした。
硫黄:0.008質量%未満
硫黄は、マンガンなどと化学結合して硫化マンガンなどの非金属介在物を形成する。この非金属介在物は、軸受の寿命に悪影響を与える可能性がある。そのため、上記軸受部品では、鋼の硫黄含有量を0.008質量%未満に低く設定した。
硫黄は、マンガンなどと化学結合して硫化マンガンなどの非金属介在物を形成する。この非金属介在物は、軸受の寿命に悪影響を与える可能性がある。そのため、上記軸受部品では、鋼の硫黄含有量を0.008質量%未満に低く設定した。
クロム:1.4質量%以上1.6質量%未満
クロムは、鋼の焼入性の向上に寄与する。また、本発明に従った軸受部品では、水素脆性による剥離を防ぐために珪素含有量が低くなっているため、焼入性が低下している。そこで、珪素含有量を低くしたことによる焼入性の低下を補うために、上記軸受部品では、鋼のクロム含有量を1.4質量%以上1.6質量%未満に高く設定した。
クロムは、鋼の焼入性の向上に寄与する。また、本発明に従った軸受部品では、水素脆性による剥離を防ぐために珪素含有量が低くなっているため、焼入性が低下している。そこで、珪素含有量を低くしたことによる焼入性の低下を補うために、上記軸受部品では、鋼のクロム含有量を1.4質量%以上1.6質量%未満に高く設定した。
上記軸受部品では、上記表層部における残留オーステナイト量が5体積%以下であってもよい。
焼戻温度をさらに高くした場合には、表層部の残留オーステナイト量が5体積%以下にまで低下する。これにより、材料の降伏強度をさらに向上させることができる。
上記軸受部品では、上記軸受部品の厚み方向における窒素濃度の傾きが−15(1/m)以上であってもよい。上記窒素濃度の傾きは、後述する実施例において説明するように測定される。これにより、上記接触面に仕上げ加工を施した後の上記表層部における窒素濃度のばらつきを容易に低減することができる。
また、「窒素濃度の傾き」とは、上記接触面に研削処理などの仕上げ加工を施す前における窒素濃度の傾きでもよいし、上記接触面に仕上げ加工を施した後(すなわち製品状態)の窒素濃度の傾きでもよい。すなわち、上記軸受部品では、上記接触面に仕上げ加工を施す前において上記窒素濃度の傾きが−15(1/m)以上でもよいし、上記仕上げ加工を施した後において上記窒素濃度の傾きが−15(1/m)以上でもよいし、上記仕上げ加工を施す前および施した後のいずれにおいても上記窒素濃度の傾きが−15(1/m)以上でもよい。
上記軸受部品において、上記表層部には、直径が0.3μm以上0.5μm以下である炭窒化物が100μm2当たり5個以上存在していてもよい。
本発明者の検討によると、上記表層部に直径0.3μm以上0.5μm以下の炭窒化物が100μm2当たり5個以上存在する場合には、当該炭窒化物の析出強化によって軸受部品の静的負荷容量が向上する。したがって、上記表層部における上記炭窒化物の存在量を上記範囲に規定することにより、軸受部品の静的負荷容量をより向上させることができる。なお、この場合には、上記表層部における炭素濃度は0.9質量%以上1.1質量%以下となる。
ここで、「表層部に直径0.3μm以上0.5μm以下の炭窒化物が100μm2当たり5個以上存在する」とは、上記接触面に垂直な断面で上記軸受部品を切断し、得られた断面の表層部を顕微鏡で観察した場合に直径0.3μm以上0.5μm以下の炭窒化物が100μm2当たり5個以上確認されることをいう。また、「炭窒化物」とは、鉄の炭化物または当該炭化物の炭素の一部が窒素に置換されたものであり、Fe−C系の化合物およびFe−C−N系の化合物を含む。また、この炭窒化物は、クロムなど、鋼に含まれる合金元素を含んでいてもよい。
上記軸受部品では、上記接触面以外の面である非研削面を含む非研削部における窒素濃度が0.7質量%未満であってもよい。
本発明者の検討によると、上記非研削部の窒素濃度が0.7質量%以上である場合には焼入性が低下して不完全焼入組織が発生し易くなる。したがって、焼入性の低下および不完全焼入組織の発生を抑制するため、上記非研削部における窒素濃度を0.7質量%未満とすることが好ましい。なお、「非研削部」とは、上記非研削面から上記軸受部品の厚み方向において深さ20μmまでの領域を意味する。また、この場合には、上記非研削面から0.1mmの深さの位置における硬度が700HV以上となる。
上記軸受部品では、加熱温度を500℃、保持時間を1時間とした熱処理を行った後において、上記接触面から0.4(mm)の深さの位置におけるビッカース硬度が、上記軸受部品の厚み方向において上記浸炭窒化層が形成されていない領域におけるビッカース硬度より80HV以上高くなっていてもよい。
これにより、上記接触面における窒素濃度が0.4質量%以上であることを保証するこ
とができる。
とができる。
本発明に従った転がり軸受は、降伏強度および寿命が向上した上記本発明に従った軸受部品を備えている。したがって、本発明に従った転がり軸受によれば、耐久性が向上した転がり軸受を提供することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明に従った軸受部品によれば、安価でかつ降伏強度および寿命が向上し、さらに製造コストが低減された軸受部品を提供することができる。また、本発明に従った転がり軸受によれば、耐久性が向上し、かつ製造コストが低減された転がり軸受を提供することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る転がり軸受としての深溝玉軸受1の構造について説明する。深溝玉軸受1は、環状の外輪11と、外輪11の内側に配置された環状の内輪12と、外輪11と内輪12との間に配置され、円環状の保持器14に保持された転動体である複数の玉13とを備えている。外輪11の内周面には外輪転走面11Aが形成されており、内輪12の外周面には内輪転走面12Aが形成されている。内輪12は、内輪転走面12Aが外輪転走面11Aと対向するように外輪11の内側に配置されている。複数の玉13は、転動面13Aにおいて外輪転走面11Aおよび内輪転走面12Aに接触し、かつ保持器14により周方向に所定のピッチで配置されている。これにより、複数の玉13は、外輪11および内輪12の円環状の軌道上に転動自在に保持されている。このような構成により、深溝玉軸受1の外輪11および内輪12は、互いに相対的に回転可能となっている。また、外輪11、内輪12および玉13は、後述する本実施の形態に係る軸受部品である。
次に、本実施の形態に係る軸受部品(外輪11、内輪12、玉13)の構造について説明する。上記軸受部品は、0.95質量%以上1.1質量%以下の炭素と、0.3質量%未満の珪素と、0.5質量%未満のマンガンと、0.008質量%未満の硫黄と、1.4質量%以上1.6質量%未満のクロムとを含み、残部鉄および不純物からなる鋼からなっている。上記軸受部品は、他の部品と接触する接触面(外輪転走面11A、内輪転走面12A、転動面13A)を有しており、上記接触面を含む表層部には浸炭窒化層が形成されている。
上記軸受部品では、上記表層部における平均窒素濃度が0.3質量%以上0.6質量%以下となっており、かつ上記表層部における窒素濃度のばらつきが0.1質量%以下となっている。これにより、上記軸受部品では、異物混入潤滑下における寿命が向上しており、かつ不完全焼入組織の発生も抑制されている。また、上記軸受部品では、上記表層部における残留オーステナイト量が8体積%以下(好ましくは5体積%以下)となっている。また、上記軸受部品では、浸炭窒化層が形成されていない内部(未窒化領域)における析出物の面積率が11%以上(好ましくは12%以上)となっている。これにより、上記軸受部品の材料の降伏強度が向上している。また、上記軸受部品では、後述するように未分解アンモニア分圧をPN、水素分圧をPHとした場合に、上記の式(1)で定義されるac *が0.88以上1.27以下、上記の式(2)で定義されるαが0.012以上0.020以下となるように浸炭窒化処理を行うことにより浸炭窒化層が形成されている。そのため、上記軸受部品は、製造コストがより低減されたものとなっている。したがって、上記軸受部品(外輪11、内輪12、玉13)は降伏強度および寿命が向上し、さらに製造コストが低減されたものとなっており、上記軸受部品を備える深溝玉軸受1は耐久性が
向上し、かつ製造コストが低減されたものとなっている。
向上し、かつ製造コストが低減されたものとなっている。
また、上記軸受部品において、「表層部における平均窒素濃度」および「表層部における窒素濃度のばらつき」は以下のように測定される。ここでは、内輪12について測定する場合を例として説明する。
図2を参照して、まず、内輪12の接触面(内輪転走面12A)上の任意の箇所に測定点S1が設定される。次に、測定点S1から見て円周方向にθ(30°)ずれた測定点S2と、測定点S2から見て円周方向にθ(30°)ずれた測定点S3と、測定点S3から見て円周方向にθ(30°)ずれた測定点S4と、測定点S4から見て円周方向にθ(30°)ずれた測定点S5と、測定点S5から見て円周方向にθ(30°)ずれた測定点S6とがそれぞれ設定される。このようにして、内輪12の接触面上に円周方向に沿って30°ずつずれた複数の測定点S1〜S6が設定される。なお、測定点S1〜S6は、内輪12の接触面上において軸方向中央部に設定される。
内輪12などの軌道輪は熱処理により楕円形に変形して真円度が崩れる場合があり、これにより研削加工後の表層部における窒素濃度にばらつきが生じる場合がある。これに対して、円周方向に沿って30°ずつずれた測定点S1〜S6を設定した場合には、測定点が円周方向のほぼ半周分の領域に分散配置されるため、実質的に測定点S1〜S6に窒素濃度の最大値および最小値を含めることができる。そのため、測定点S1〜S6での測定値に基づいた評価を行うことにより、「表層部における平均窒素濃度」および「表層部における窒素濃度のばらつき」をより正確に評価することができる。
図3は、測定点S1〜S6(横軸)において測定された表層部の窒素濃度(縦軸)を示している。図3中の縦軸に示される各々の窒素濃度の平均値を、「表層部における平均窒素濃度」とすることができる。また、当該「表層部における平均窒素濃度」と測定点S1〜S6における測定値との差のうち最も大きい値を、「表層部における窒素濃度のばらつき」とすることができる。
また、上記軸受部品(外輪11、内輪12、玉13)では、上記接触面(外輪転走面11A、内輪転走面12A、転動面13A)に仕上げ加工を施す前において、厚み方向における窒素濃度の傾きが−15(1/m)以上となっていてもよい。これにより、上記接触面に仕上げ加工を施した後において、上記表層部における窒素濃度のばらつきを0.1質量%以下にまで低減することができる。なお、上記軸受部品では、上記接触面に仕上げ加工を施した後においても、厚み方向における窒素濃度の傾きが−15(1/m)以上となっていてもよい。
また、上記軸受部品(外輪11、内輪12、玉13)では、上記表層部に直径が0.3μm以上0.5μm以下である炭窒化物が100μm2当たり5個以上存在していてもよい。これにより、軸受部品の静的負荷容量をより向上させることができる。
また、上記軸受部品(外輪11、内輪12、玉13)では、上記接触面(外輪転走面11A、内輪転走面12A、転動面13A)以外の面である非研削面11B,12Bを含む非研削部における窒素濃度が0.7質量%未満であってもよい。これにより、焼入性の低下および不完全焼入組織の発生を抑制することができる。
また、上記軸受部品(外輪11、内輪12、玉13)では、加熱温度を500℃、保持時間を1時間とした熱処理を行った後において、上記接触面(外輪転走面11A、内輪転走面12A、転動面13A)から0.4(mm)の深さの位置におけるビッカース硬度が、上記軸受部品の厚み方向において浸炭窒化層が形成されていない領域におけるビッカー
ス硬度より80HV以上高くなっていてもよい。これにより、上記接触面における窒素濃度が0.4質量%以上であることを保証することができる。
ス硬度より80HV以上高くなっていてもよい。これにより、上記接触面における窒素濃度が0.4質量%以上であることを保証することができる。
次に、本実施の形態に係る軸受部品の製造方法について説明する。本実施の形態に係る軸受部品の製造方法では、上記本実施の形態に係る軸受部品(外輪11、内輪12、玉13)を製造することができる。
図4を参照して、まず、工程(S10)として、鋼材準備工程が実施される。この工程(S10)では、まず、0.95質量%以上1.1質量%以下の炭素と、0.3質量%未満の珪素と、0.5質量%未満のマンガンと、0.008質量%未満の硫黄と、1.4質量%以上1.6質量%未満のクロムとを含み、残部鉄および不純物からなる鋼材が準備される。そして、当該鋼材が軸受部品の概略形状に成形される。たとえば、棒鋼、鋼線などを素材とし、当該棒鋼、鋼線などに対して切断、鍛造、旋削などの加工が施されることにより、軸受部品である外輪11、内輪12および玉13などの概略形状に成形された鋼材が準備される。
次に、工程(S20)として、焼入硬化工程が実施される。この工程(S20)では、上記工程(S10)において準備された鋼材に対して浸炭窒化処理および窒素拡散処理が順に施された後、当該鋼材がMs点(マルテンサイト変態開始点)以下の温度にまで冷却される。この工程(S20)については後に詳述する。
次に、工程(S30)として、焼戻工程が実施される。この工程(S30)では、上記工程(S20)において焼入硬化された鋼材に対して、A1点以下の温度で熱処理が施される。より具体的には、上記工程(S20)が完了した後、A1点以下の温度である240℃以上の温度、好ましくは240℃以上260℃以下の温度で鋼材が所定時間(たとえば2時間)保持されることにより当該鋼材に焼戻処理が施される。その後、当該鋼材は室温の空気により冷却される(空冷)。これにより、鋼材の靭性などを向上させることができる。
次に、工程(S40)として、仕上げ工程が実施される。この工程(S40)では、焼戻処理が施された鋼材の接触面(外輪転走面11A、内輪転走面12Aおよび転動面13A)に対する研削加工が実施される。これにより、本実施の形態に係る軸受部品である外輪11、内輪12および玉13(図1参照)が製造され、本実施の形態に係る軸受部品の製造方法が完了する。そして、製造された外輪11、内輪12および玉13が組み合わされることにより深溝玉軸受1(図1参照)が製造される。
次に、焼入硬化工程(S20)について、図5〜図8を参照して詳細に説明する。図5は、当該焼入硬化工程(S20)を詳細に説明するための図である。図6は、図5の雰囲気制御工程に含まれる未分解アンモニア(NH3)分圧制御工程を説明するための図である。また、図7は、図5の雰囲気制御工程に含まれる水素(H2)分圧制御工程を説明するための図である。また、図8は、図5の浸炭窒化工程に含まれる加熱パターン制御工程における加熱パターン(温度履歴)の一例を示す図である。図8において、横方向は時間を示しており、右に行くほど時間が経過していることを示している。
図5を参照して、焼入硬化工程(S20)では、まず、上記工程(S10)において準備された鋼材が浸炭窒化される浸炭窒化工程が実施される。次に、浸炭窒化工程において鋼中に侵入した窒素を拡散させるための窒素拡散工程が実施される。そして、窒素拡散工程が完了した後に、鋼材をMs点以下の温度にまで冷却する冷却工程が実施される。浸炭窒化工程では、アンモニア、一酸化炭素、二酸化炭素および水素を含む雰囲気中において鋼材が加熱される。
浸炭窒化工程は、熱処理炉内の雰囲気が制御される雰囲気制御工程30と、熱処理炉内において被処理物である鋼材に付与される温度履歴が制御される加熱パターン制御工程40とを備えている。この雰囲気制御工程30と加熱パターン制御工程40とは、独立に、かつ並行して実施することができる。そして、雰囲気制御工程30は、熱処理炉内の未分解アンモニア分圧が制御される未分解NH3分圧制御工程31と、熱処理炉内の水素分圧が制御されるH2分圧制御工程32と、熱処理炉内の一酸化炭素および二酸化炭素の少なくともいずれか一方の分圧が制御されるCO/CO2分圧制御工程33とを含んでいる。
CO/CO2分圧制御工程33では、下記の式(1)を参照して、熱処理炉内の一酸化炭素および二酸化炭素の少なくともいずれか一方の分圧が制御されることにより、炭素活量(ac *)が制御される。なお、活量の定義上、厳密にはac>1となることはない。よって、ac *≦1である場合にはac *=acとし、ac *>1の場合(たとえば一酸化炭素の分圧(PCO)が高く、二酸化炭素の分圧(PCO2)が低い場合など)には、ac *は下記の式(1)に従う変数であるとする。
そして、雰囲気制御工程30においては、上記の式(1)で定義されるac *が0.88以上1.27以下(好ましくは0.9以上1.1以下)となり、かつ下記の式(2)で表わされるαの値が0.012以上0.020以下(好ましくは0.013以上0.018以下)の範囲になるように、未分解NH3分圧制御工程31、H2分圧制御工程32およびCO/CO2分圧制御工程33が実施される。式(2)においてPN(atm)は未分解アンモニアの分圧であり、PH(atm)は水素の分圧である。
具体的には、図6を参照して、未分解NH3分圧制御工程31では、まず、熱処理炉内の未分解アンモニア分圧を測定する未分解NH3分圧測定工程(S11)が実施される。未分解アンモニア分圧の測定は、たとえばガスクロマトグラフや赤外線分析計を用いて実施することができる。そして、工程(S11)において測定された未分解アンモニア分圧に基づいて、熱処理炉へのアンモニアガスの供給量を増減させるNH3供給量調節工程(S13)の実施の要否を判断する、未分解NH3分圧判断工程(S12)が実施される。当該判断は、αの値が0.012以上0.020以下の範囲になるように予め決定された目標の未分解アンモニア分圧と、測定された未分解アンモニア分圧とを比較し、測定された未分解アンモニア分圧が目標の未分解アンモニア分圧になっているかどうかを判定することにより実施される。
未分解アンモニア分圧が目標の未分解アンモニア分圧になっていない場合には、熱処理炉内の未分解アンモニア分圧を増減させるための工程(S13)が実施された後、工程(S11)が再度実施される。工程(S13)は、たとえば、熱処理炉に配管を介して連結されたアンモニアガスのボンベから単位時間に熱処理炉に流入するアンモニアの量(アンモニアガスの流量)を当該配管に取り付けられたマスフローコントローラなどを備えた流量制御装置により調節することにより実施することができる。すなわち、測定された未分解アンモニア分圧が目標の未分解アンモニア分圧よりも高い場合、上記流量を低下させ、低い場合、上記流量を増加させることにより、工程(S13)を実施することができる。この工程(S13)において、測定された未分解アンモニア分圧と目標の未分解アンモニア分圧との間に所定の差がある場合、どの程度流量を増減させるかについては、予め実験的に決定したアンモニアガスの流量の増減と未分解アンモニア分圧の増減との関係に基づいて決定することができる。
一方、未分解アンモニア分圧が目標の未分解アンモニア分圧になっている場合には、工程(S13)が実施されることなく、工程(S11)が再度実施される。
また、H2分圧制御工程32は、上述の未分解NH3分圧制御工程31と同様に実施される。すなわち、図7を参照して、H2分圧制御工程32では、まず、熱処理炉内の水素分圧を測定するH2分圧測定工程(S21)が実施される。水素分圧の測定は、たとえば熱伝導ガス分析計を用いて実施することができる。そして、工程(S21)において測定された水素分圧に基づいて、熱処理炉への水素ガスの供給量を増減させるH2供給量調節工程(S23)の実施の要否を判断する、水素分圧判断工程(S22)が実施される。当該判断は、αの値が0.012以上0.020以下の範囲になるように予め決定された目標の水素分圧と、測定された水素分圧とを比較し、測定された水素分圧が目標の水素分圧になっているかどうかを判定することにより実施される。
水素分圧が目標の水素分圧になっていない場合には、熱処理炉内の水素分圧を増減させるための工程(S23)が実施された後、工程(S21)が再度実施される。工程(S23)は、たとえば、熱処理炉に配管を介して連結された水素ガスのボンベから単位時間に熱処理炉に流入する水素の量(水素ガスの流量)を当該配管に取り付けられたマスフローコントローラなどを備えた流量制御装置により調節することにより実施することができる。すなわち、測定された水素分圧が目標の水素分圧よりも高い場合、上記流量を低下させ、低い場合、上記流量を増加させることにより、工程(S23)を実施することができる。この工程(S23)において、測定された水素分圧と水素分圧との間に所定の差がある場合、どの程度流量を増減させるかについては、アンモニアの場合と同様に、予め実験的に決定した水素ガスの流量の増減と水素分圧の増減との関係に基づいて決定することができる。
一方、水素分圧が目標の水素分圧になっている場合には、工程(S23)が実施されることなく、工程(S21)が再度実施される。
図5を参照して、CO/CO2分圧制御工程33では、エンリッチガスとしてのプロパン(C3H8)ガス、ブタンガス(C4H10)などの供給量が調節されることにより、COおよびCO2の分圧の少なくともいずれか一方の分圧が制御され、ac *が調整される。具体的には、たとえば、赤外線ガス濃度測定装置を用いて雰囲気中の一酸化炭素の分圧PCOおよび二酸化炭素の分圧PCO2が測定される。そして、当該測定値に基づいて、上記の式(1)で定義されるac *が0.88以上1.27以下の範囲内の目標の値となるように、エンリッチガスとしてのプロパン(C3H8)ガス、ブタンガス(C4H10)などの供給量が調節される。
ここで、αの値は、上記の式(2)を参照して、未分解NH3分圧制御工程31、H2分圧制御工程32およびCO/CO2分圧制御工程33により、それぞれ未分解アンモニア分圧、水素分圧およびac *の少なくともいずれか1つを変化させることにより制御することができる。すなわち、αの値は、たとえば未分解NH3分圧制御工程31およびCO/CO2分圧制御工程33により、未分解アンモニア分圧およびac *を一定に保持した状態で、H2分圧制御工程32により水素分圧を変化させて制御してもよいし、H2分圧制御工程32およびCO/CO2分圧制御工程33により、水素分圧およびac *値を一定に保持した状態で、未分解NH3分圧制御工程31により未分解アンモニア分圧を変化させて制御してもよい。
さらに、図5を参照して、加熱パターン制御工程40では、鋼材に付与される加熱履歴が制御される。具体的には、図8に示すように、鋼材が上述の雰囲気制御工程30によって制御された雰囲気中で、A1変態点以上である820℃以上880℃以下(好ましくは830℃以上870℃以下)の温度で加熱され、180分以上600分以下(好ましくは240分以上480分以下)の時間保持される。そして、上記保持時間が経過するとともに加熱パターン制御工程40は終了し、同時に雰囲気制御工程30も終了する。
図5を参照して、浸炭窒化工程が終了した後に窒素拡散工程が実施される。この工程では、上記浸炭窒化工程での処理温度以下の温度で鋼材が加熱され、30分以上120分以下(好ましくは45分以上90分以下)の時間保持される。これにより、鋼中に侵入した窒素を拡散させることができる。また、この工程では、ac *が0.88以上1.27以下(好ましくは0.9以上1.1以下)となり、かつ、αの値が0.003以上0.012以下(好ましくは0.003以上0.008以下)の範囲となるように熱処理炉内の雰囲気が制御される。ac *値およびα値の制御は、上記浸炭窒化工程の場合と同様に実施することができる。
図5を参照して、窒素拡散工程が終了した後に冷却工程が実施される。この工程では、鋼材が油中に浸漬(油冷)されることにより、MS点以下の温度にまで冷却される。以上の工程(浸炭窒化工程、窒素拡散工程および冷却工程)が順に実施されることにより、鋼材の表層部が浸炭窒化されるとともに焼入硬化される。
(実施例1)
まず、軸受部品の耐久性に対して、表層部の平均窒素濃度および窒素濃度のばらつきが及ぼす影響を調査した。具体的には、圧痕起点型はく離寿命および清浄油潤滑寿命を評価した。実験手順は以下の通りである。
まず、軸受部品の耐久性に対して、表層部の平均窒素濃度および窒素濃度のばらつきが及ぼす影響を調査した。具体的には、圧痕起点型はく離寿命および清浄油潤滑寿命を評価した。実験手順は以下の通りである。
試験は、JIS規格6206型番の深溝玉軸受(内径30mm、外径62mm、幅16mm、転動体9個)を用いて実施した。まず、上記本実施の形態と同様の手順により内輪を作製した(浸炭窒化温度:850℃、焼戻温度:240℃)。浸炭窒化工程では未分解アンモニア分圧、水素分圧、炭素の活量、熱処理時間および焼入温度を調整することにより、内輪の表面付近に侵入する窒素の濃度分布を制御した。また、比較のため、浸炭窒化工程後に窒素拡散工程を実施しない内輪も作製した。
(圧痕起点型はく離寿命試験)
作製した内輪の転走面の溝底部中央に円すい型ダイヤモンドのロックウェル硬さ測定用圧子を荷重196Nで押し付けて圧痕を形成した。圧痕は内輪1個当り30個形成し、周方向に等間隔に(すなわち中心角12°ごとに)形成した。
(圧痕起点型はく離寿命試験)
作製した内輪の転走面の溝底部中央に円すい型ダイヤモンドのロックウェル硬さ測定用圧子を荷重196Nで押し付けて圧痕を形成した。圧痕は内輪1個当り30個形成し、周方向に等間隔に(すなわち中心角12°ごとに)形成した。
次に、作製した内輪と、外輪、転動体および保持機とを組合わせて軸受を作製した。そ
して、作製した軸受を用いて圧痕起点型はく離寿命試験を行った。試験機には、2個の軸受に対して均等にラジアル荷重を負荷する構造のものを用いた。1個の軸受に対して約3.04GPaの荷重を負荷し、3000rpmの回転数で軸受を回転させて試験を行った。また、潤滑は試験軸受が配置されたハウジング内に定量の油を流し続けることにより行った。
(清浄油寿命試験)
作製した内輪と、外輪、転動体および保持器とを組合わせて軸受を作製した。ここで、内輪、外輪および転動体の表層部における窒素濃度を0.4質量%とした。そして、作製した軸受を用いて清浄油寿命試験を行った。1個の軸受に対して約3.04GPaの荷重を負荷し、2000rpmの回転数で軸受を回転させて試験を行った。また、潤滑は試験軸受が配置されたハウジング内に定量の油を流し続けることにより行った。
して、作製した軸受を用いて圧痕起点型はく離寿命試験を行った。試験機には、2個の軸受に対して均等にラジアル荷重を負荷する構造のものを用いた。1個の軸受に対して約3.04GPaの荷重を負荷し、3000rpmの回転数で軸受を回転させて試験を行った。また、潤滑は試験軸受が配置されたハウジング内に定量の油を流し続けることにより行った。
(清浄油寿命試験)
作製した内輪と、外輪、転動体および保持器とを組合わせて軸受を作製した。ここで、内輪、外輪および転動体の表層部における窒素濃度を0.4質量%とした。そして、作製した軸受を用いて清浄油寿命試験を行った。1個の軸受に対して約3.04GPaの荷重を負荷し、2000rpmの回転数で軸受を回転させて試験を行った。また、潤滑は試験軸受が配置されたハウジング内に定量の油を流し続けることにより行った。
上記圧痕起点型はく離寿命試験により、内輪の表層部における窒素濃度と寿命との関係について調査した。また、上記清浄油寿命試験により、内輪、外輪および転動体の表層部の窒素濃度を一定(0.4質量%)にした場合において、表層部における窒素濃度のばらつきと寿命との関係についても調査した。なお、「表層部の窒素濃度のばらつき」は、上記実施の形態と同様の方法により測定した(図2および図3参照)。
上記試験結果を図9および図10に示す。図9は、内輪の表層部の窒素濃度(横軸、質量%)と、圧痕起点型はく離寿命のL10寿命(縦軸、h)との関係を示している。図10は、内輪の表層部の窒素濃度のばらつき(横軸、質量%)と寿命のL10寿命(縦軸、h)との関係を示している。
図9に示すように、表層部における窒素濃度が0.2質量%(図9中破線に示す)未満である場合には、0.4質量%である場合に比べてL10寿命が1/2以下に低下した。一方で、0.7質量%を超えるまで窒素を入れた場合には650HV未満にまで硬度が低下したため、試験を実施することができなかった。これは、軸受の焼入性が低下して不完全焼入組織が発生したためである。
また、図10に示すように、窒素濃度のばらつきが0.1質量%(図10中破線に示す)以下である場合には一定以上のL10寿命が確保されているのに対して、0.1質量%を超える場合にはL10寿命が大きく低下した。これらの結果より、異物混入潤滑下での寿命および接触面の硬度の低下を抑制するためには、表層部の窒素濃度を0.2質量%以上0.7質量%以下にすること、つまり表層部の平均窒素濃度を0.3質量%以上0.6質量%以下とし、かつ表層部の窒素濃度のばらつきを0.1質量%以下にすることが有効であることが分かった。
(実施例2)
次に、表層部の窒素濃度のばらつきと窒素濃度の傾きとの関係について調査した。まず、上記本実施の形態と同様の手順により工程(S10)〜(S30)を実施して内輪を作製した(実施例)。浸炭窒化工程の時間は4時間とし、窒素拡散工程の時間は1時間とした。また、比較のため、浸炭窒化工程後に窒素拡散工程を実施しない内輪も作製した(比較例)。そして、仕上げ工程(S40)を実施する前に作製した内輪について表層付近の窒素濃度分布を調査した。
(実施例2)
次に、表層部の窒素濃度のばらつきと窒素濃度の傾きとの関係について調査した。まず、上記本実施の形態と同様の手順により工程(S10)〜(S30)を実施して内輪を作製した(実施例)。浸炭窒化工程の時間は4時間とし、窒素拡散工程の時間は1時間とした。また、比較のため、浸炭窒化工程後に窒素拡散工程を実施しない内輪も作製した(比較例)。そして、仕上げ工程(S40)を実施する前に作製した内輪について表層付近の窒素濃度分布を調査した。
図11は、作製した内輪の深さ方向における窒素濃度分布を示している。図11において、横軸は内輪の深さ(mm)を示し、縦軸は窒素濃度(質量%)を示している。また、図11において(A)は実施例の測定結果を示し、(A’)は実施例の測定結果に対する近似曲線を示し、(B)は比較例の測定結果を示し、(B’)は比較例の測定結果に対する近似曲線を示している。たとえば、窒素濃度が0.3質量%および0.1質量%の深さの2点で窒素濃度の傾きを算出すると((0.3−0.1)/距離(m))、実施例では
比較例よりも窒素濃度の傾きが大きくなった(−15(1/m)以上であった)。また、熱処理による内輪の変形量を0.2mmとして表層部の平均窒素濃度が0.4質量%になるように仕上げ工程(S40)を実施すると、比較例では表層部の窒素濃度のばらつきが0.25質量%であったのに対して、実施例では0.08質量%(0.1質量%以下)であった。この結果より、浸炭窒化工程後に窒素拡散工程を実施することが、仕上げ加工後の表層部の窒素濃度のばらつきの低減に対して有効であることが分かった。
(実施例3)
次に、軸受部品の静的負荷容量に対して、表層部に存在する炭窒化物が及ぼす影響について調査した。クロム(Cr)を含有する鋼は、浸炭窒化処理などにより鋼中に窒素を侵入させると、母材中のクロム濃度が低下してオーステナイト単相領域が拡大するため、炭素の固溶限濃度が上昇する。その結果、特に対策を講じることなく高濃度の浸炭窒化処理を施すと、脱炭は生じなくとも、炭窒化物が減少または消失する。ここで、軸受部品の高強度化の観点からは、炭窒化物を残存させ、当該炭窒化物による析出強化機能を利用することが好ましいと考えられる。
比較例よりも窒素濃度の傾きが大きくなった(−15(1/m)以上であった)。また、熱処理による内輪の変形量を0.2mmとして表層部の平均窒素濃度が0.4質量%になるように仕上げ工程(S40)を実施すると、比較例では表層部の窒素濃度のばらつきが0.25質量%であったのに対して、実施例では0.08質量%(0.1質量%以下)であった。この結果より、浸炭窒化工程後に窒素拡散工程を実施することが、仕上げ加工後の表層部の窒素濃度のばらつきの低減に対して有効であることが分かった。
(実施例3)
次に、軸受部品の静的負荷容量に対して、表層部に存在する炭窒化物が及ぼす影響について調査した。クロム(Cr)を含有する鋼は、浸炭窒化処理などにより鋼中に窒素を侵入させると、母材中のクロム濃度が低下してオーステナイト単相領域が拡大するため、炭素の固溶限濃度が上昇する。その結果、特に対策を講じることなく高濃度の浸炭窒化処理を施すと、脱炭は生じなくとも、炭窒化物が減少または消失する。ここで、軸受部品の高強度化の観点からは、炭窒化物を残存させ、当該炭窒化物による析出強化機能を利用することが好ましいと考えられる。
上記本実施の形態では、浸炭窒化工程における炭素活量ac *の値を0.88以上1.27以下に設定し、窒素富化層の炭素固溶限の上昇よりも早く浸炭を行うことにより炭窒化物の消失が抑制されている。この炭窒化物の残存による効果を確認する実験を行った。
図12は従来の方法により浸炭窒化を行った場合における試験片の断面SEM(Scanning Electron Microscope)写真であり(倍率5000倍)、図13は上記本実施の形態と同様の手順により浸炭窒化を行った場合(ac *=1)における試験片の断面SEM写真である(倍率5000倍)。図12の写真では炭窒化物がほとんど消失しているのに対して、図13の写真では直径0.3μm以上0.5μm以下の炭窒化物が100μm2当たりに少なくとも5個以上存在していた。
次に、上記炭窒化物の効果を確認するため、試験片に浸炭窒化処理を異なった条件で実施し、炭化物の存在量(数密度)を変化させつつ、硬度を750HVとしたサンプルを作製し、当該サンプルの表面に直径(φ)9.525mmの窒化珪素製の玉を押し付けることにより、形成される圧痕深さを測定する実験を行った。実験結果を図14に示す。図14において、横軸は窒化珪素製の玉の押し付ける圧力(GPa)を示し、縦軸は玉の押し付けにより形成された圧痕の深さ(μm)を示している。また、図14において正方形印は炭窒化物が消失したサンプル(比較例)、菱形印は直径0.3μm以上0.5μm以下の炭窒化物が100μm2当たりに5個以上存在したサンプル(実施例)の測定結果を示している。
図14に示すように、炭窒化物が消失したサンプルに比べて、直径0.3μm以上0.5μm以下の炭窒化物が100μm2当たりに5個以上存在するサンプルでは、圧痕の深さが小さくなっていることが確認された。この結果より、軸受部品の静的負荷容量の向上のためには、表層部において直径0.3μm以上0.5μm以下の炭窒化物が100μm2当たりに5個以上存在することが有効であることが分かった。
(実施例4)
次に、軸受部品の接触面における窒素濃度が0.4質量%以上であることを保証するための断面硬度の測定位置および断面硬度差分の基準値などを決定するための方法について説明する。
(実施例4)
次に、軸受部品の接触面における窒素濃度が0.4質量%以上であることを保証するための断面硬度の測定位置および断面硬度差分の基準値などを決定するための方法について説明する。
(1) 試験片および実験方法について
(1−1) はじめに
まず、窒素濃度と相関関係が高い高温焼戻での加熱温度および保持時間を決定する必要がある。ここで、高温焼戻による変態は熱活性化過程であるため、加熱温度の高温化と保
持時間の長時間化とは同じ意味を持ち、両者を共に変数にすることには意味はないと考えられる。そこで、本実施例では、保持時間を一定(1時間)に固定した上で、加熱温度を300℃、400℃、500℃、600℃、700℃と変更し、硬度の差が最も明確になる加熱温度を調べることにより最適な加熱温度を決定した。
(1−1) はじめに
まず、窒素濃度と相関関係が高い高温焼戻での加熱温度および保持時間を決定する必要がある。ここで、高温焼戻による変態は熱活性化過程であるため、加熱温度の高温化と保
持時間の長時間化とは同じ意味を持ち、両者を共に変数にすることには意味はないと考えられる。そこで、本実施例では、保持時間を一定(1時間)に固定した上で、加熱温度を300℃、400℃、500℃、600℃、700℃と変更し、硬度の差が最も明確になる加熱温度を調べることにより最適な加熱温度を決定した。
また、各材料の化学成分の違いによる焼入性の差や焼入時の冷却速度の差は、焼入後の硬度に影響を及ぼし、また高温焼戻後の硬度にも影響を及ぼすと考えられる。そのため、本実施例では断面硬度の絶対値そのものを使用せず、窒化されていない表層から深い位置(芯部)での硬度(ここではたとえば熱処理後最表面から1mmという深さでの硬度とした)と、窒化された領域内における任意の深さの位置での硬度との硬度差(硬度差分)を指標として採用した。つまり、材料の化学成分は各材料ロット間で違う場合があり、当該硬度差分はこのような違いをオフセットするためのものである。
(1−2) 対象試験片
調査対象とした試験片の化学成分を表1に示す。材料は全て上記成分範囲内とし、これらを様々な熱処理炉、熱処理雰囲気で浸炭窒化処理を施した。なお、浸炭窒化処理の温度は840℃以上860℃以下という範囲に含まれていた。
調査対象とした試験片の化学成分を表1に示す。材料は全て上記成分範囲内とし、これらを様々な熱処理炉、熱処理雰囲気で浸炭窒化処理を施した。なお、浸炭窒化処理の温度は840℃以上860℃以下という範囲に含まれていた。
具体的には、試験片番号1については、処理温度を850℃、処理時間を120分(min)とし(以下、「850℃×120min」というように表記する)、未分解アンモニア分率:0.2体積%、炭素の活量:0.9で浸炭窒化処理を行なった。また、試験片番号2については、840℃×70min、未分解アンモニア分率:0.1体積%、炭素の活量:0.85で浸炭窒化処理を行なった。また、試験片番号3については、850℃×120min、未分解アンモニア分率:0.1体積%、炭素の活量:0.9で浸炭窒化処理を行なった。また、試験片番号4については、850℃×90min、未分解アンモニア分率:0.1体積%、炭素の活量:0.9で浸炭窒化処理を行なった。また、試験片番号5については、850℃×90min、未分解アンモニア分率:0.1体積%、炭素の活量:0.9で浸炭窒化処理を行なった。
また、試験片番号6については、850℃×90min、未分解アンモニア分率:0.13体積%、炭素の活量:0.9で浸炭窒化処理を行なった。また、試験片番号7については、850℃×150min、未分解アンモニア分率:0.1体積%、炭素の活量:0
.85で浸炭窒化処理を行なった。また、試験片番号8については、850℃×150min、未分解アンモニア分率:0.25体積%、炭素の活量:0.9で浸炭窒化処理を行なった。また、試験片番号9については、850℃×180min、未分解アンモニア分率:0.3体積%、炭素の活量:0.95で浸炭窒化処理を行なった。また、試験片番号10については、850℃×90min、未分解アンモニア分率:0.2体積%、炭素の活量:0.9で浸炭窒化処理を行なった。
.85で浸炭窒化処理を行なった。また、試験片番号8については、850℃×150min、未分解アンモニア分率:0.25体積%、炭素の活量:0.9で浸炭窒化処理を行なった。また、試験片番号9については、850℃×180min、未分解アンモニア分率:0.3体積%、炭素の活量:0.95で浸炭窒化処理を行なった。また、試験片番号10については、850℃×90min、未分解アンモニア分率:0.2体積%、炭素の活量:0.9で浸炭窒化処理を行なった。
(1−3) 窒素濃度測定方法
高温焼戻後のサンプルの断面硬度と窒素濃度との相関を調査するため、サンプル(鋼)中の窒素濃度分布を測定する必要がある。浸炭窒化処理後の鋼中窒素濃度の測定には、EPMAの線分析を用いた。定量化は既知の窒素濃度を有する校正用試験片を分析し、その検量線を用いて実施した。EPMA分析(Electron Probe Micro Analysis)に用いたサンプルおよび測定方法の模式図は、図15に示す通りである。
高温焼戻後のサンプルの断面硬度と窒素濃度との相関を調査するため、サンプル(鋼)中の窒素濃度分布を測定する必要がある。浸炭窒化処理後の鋼中窒素濃度の測定には、EPMAの線分析を用いた。定量化は既知の窒素濃度を有する校正用試験片を分析し、その検量線を用いて実施した。EPMA分析(Electron Probe Micro Analysis)に用いたサンプルおよび測定方法の模式図は、図15に示す通りである。
図15に示すように、たとえば内輪12をサンプルとして用いる場合を考える。当該サンプルについて、浸炭窒化処理後のサンプルの窒素濃度を測定した。具体的には、当該サンプルから図15に示すような試験片12Aを切り出し、当該試験片の外周面12Bから内周面12Cに向かう方向に沿って、試験片12Aの高さ方向の中央部(半幅となる位置)において、切り出し端面についてEPMA線分析を行った。
(1−4) 断面硬度測定方法
上記(1−3)で述べた試験片12Aにおいて、EPMA分析を行なった切り出し端面にて硬度測定を行なった。測定方法としては、マイクロビッカース硬度計を用いてビッカース硬度測定を行なった。
上記(1−3)で述べた試験片12Aにおいて、EPMA分析を行なった切り出し端面にて硬度測定を行なった。測定方法としては、マイクロビッカース硬度計を用いてビッカース硬度測定を行なった。
(2) 高温焼戻の保持温度の探索
(2−1) 実験内容
窒素濃度と相関関係の高い焼戻温度(加熱温度)を探索するため、浸炭窒化処理後に180℃という加熱温度で2時間の保持時間という焼戻を施した試験片12Aに、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃というそれぞれの加熱温度で保持時間を1時間とした5種類の高温焼戻を行った。なお、高温焼戻時の雰囲気は大気雰囲気とした。そして、それぞれの高温焼戻条件で処理された試験片について断面硬度を測定した。なお、ここでは窒素侵入量が多いと考えられる浸炭窒化処理条件の試験片番号8、9の試験片について測定を行なった。
(2−1) 実験内容
窒素濃度と相関関係の高い焼戻温度(加熱温度)を探索するため、浸炭窒化処理後に180℃という加熱温度で2時間の保持時間という焼戻を施した試験片12Aに、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃というそれぞれの加熱温度で保持時間を1時間とした5種類の高温焼戻を行った。なお、高温焼戻時の雰囲気は大気雰囲気とした。そして、それぞれの高温焼戻条件で処理された試験片について断面硬度を測定した。なお、ここでは窒素侵入量が多いと考えられる浸炭窒化処理条件の試験片番号8、9の試験片について測定を行なった。
(2−2) 実験結果
実験結果をまとめたグラフを図16に示す。図16に示したグラフは、焼戻温度(℃)を横軸とし、断面硬度の差分(すなわち(断面硬度の最大値)−(熱処理後最表面から1mmの深さ位置での断面硬度):ΔHVとも表示する)を縦軸にして実験結果を整理したものである。図16から分かるように、断面硬度の差分ΔHVは、加熱温度を500℃とし、保持時間を1時間とした高温焼戻後に最も大きくなっていた。この加熱温度を500℃としたときの断面硬度の差分ΔHVは、加熱温度を300℃または700℃とした高温焼戻後の当該断面硬度の差分ΔHVの約2倍の値を示していた。したがって、相対的に窒素濃度と相関の高い焼戻後の硬度は、加熱温度を500℃程度とした焼戻後の硬度であると考えられる。このため、以下の実験では、断面硬度の測定を、加熱温度を500℃とし、保持時間を1時間とした高温焼戻後の試験片について実施した。
実験結果をまとめたグラフを図16に示す。図16に示したグラフは、焼戻温度(℃)を横軸とし、断面硬度の差分(すなわち(断面硬度の最大値)−(熱処理後最表面から1mmの深さ位置での断面硬度):ΔHVとも表示する)を縦軸にして実験結果を整理したものである。図16から分かるように、断面硬度の差分ΔHVは、加熱温度を500℃とし、保持時間を1時間とした高温焼戻後に最も大きくなっていた。この加熱温度を500℃としたときの断面硬度の差分ΔHVは、加熱温度を300℃または700℃とした高温焼戻後の当該断面硬度の差分ΔHVの約2倍の値を示していた。したがって、相対的に窒素濃度と相関の高い焼戻後の硬度は、加熱温度を500℃程度とした焼戻後の硬度であると考えられる。このため、以下の実験では、断面硬度の測定を、加熱温度を500℃とし、保持時間を1時間とした高温焼戻後の試験片について実施した。
(3) 窒素濃度と断面硬度の差分(ΔHV)との関係の調査
ここでは表1に示した組成の各試験片について浸炭窒化処理を施し、さらに高温焼戻と
して加熱温度を500℃、保持時間を1時間という熱処理を行なった後、図15を用いて説明したように試験片12Aの窒素濃度をEPMA分析により測定した。浸炭窒化処理は、加熱温度が850℃、炭素の活量/未分解アンモニア分率(γ)の値が4.75となる条件で行った。また、当該試験片12Aについて、図15に示した切り出し端面において深さ方向での断面硬度を測定した。そして、当該深さ方向でのある位置における断面硬度と熱処理後最表面から1(mm)という深さ位置における断面硬度との差分(断面硬度差分(ΔHV))の関係を調査した。その結果を図17および図18に示す。
ここでは表1に示した組成の各試験片について浸炭窒化処理を施し、さらに高温焼戻と
して加熱温度を500℃、保持時間を1時間という熱処理を行なった後、図15を用いて説明したように試験片12Aの窒素濃度をEPMA分析により測定した。浸炭窒化処理は、加熱温度が850℃、炭素の活量/未分解アンモニア分率(γ)の値が4.75となる条件で行った。また、当該試験片12Aについて、図15に示した切り出し端面において深さ方向での断面硬度を測定した。そして、当該深さ方向でのある位置における断面硬度と熱処理後最表面から1(mm)という深さ位置における断面硬度との差分(断面硬度差分(ΔHV))の関係を調査した。その結果を図17および図18に示す。
図17および図18において、横軸は窒素濃度(質量%)であり、縦軸は断面硬度差分(ΔHV)(単位はビッカース硬度)である。また、図18は、図17から窒素濃度が0〜0.1質量%という範囲での窒素濃度と断面硬度差分との関係を抜き出したものである。図17より、窒素濃度が0を超え0.1質量%以下の範囲においては、窒素濃度と断面硬度差分との相関が強く、一方で窒素濃度が0.1質量%を超える範囲では窒素濃度と断面硬度差分との相関は相対的に弱いことが分かった。これは窒素濃度が高い領域で不完全焼入が発生する場合があること、ならびに試験片中に固溶した窒素は必ずしもマルテンサイトの分解速度低下に寄与するとは限らないためと考えられる。また、図18より窒素濃度が0を超え0.1質量%以下の範囲において窒素濃度と断面硬度差分との相関係数を算出すると、両者の相関係数は0.8348と高い。このため、0〜0.1質量%という窒素濃度の範囲であれば、断面硬度差分から窒素濃度を予測することが可能であると考えられる。したがって、以下の実験では、窒素濃度と断面硬度差分とが正の相関を持つ領域(0〜0.1質量%)の略中間位置である、窒素濃度が0.06質量%と断面硬度差分が80ΔHVとの関係を用いることにした。
(4) 浸炭窒化処理の時間と窒素濃度分布との関係
転がり軸受の構成部品の場合、その形状を整えるために焼入および焼戻後に研削加工を行う。したがって、一定の処理条件で浸炭窒化処理を行うと、その研削加工の取代により製品最表面(転走面または転動面)における窒素濃度が変化することになる。このため、製品最表面における窒素濃度を0.4質量%以上に保つためには、片側研削取代により浸炭窒化処理の条件を変更する必要がある。
転がり軸受の構成部品の場合、その形状を整えるために焼入および焼戻後に研削加工を行う。したがって、一定の処理条件で浸炭窒化処理を行うと、その研削加工の取代により製品最表面(転走面または転動面)における窒素濃度が変化することになる。このため、製品最表面における窒素濃度を0.4質量%以上に保つためには、片側研削取代により浸炭窒化処理の条件を変更する必要がある。
図19には、上記成分範囲内の鋼材に加熱温度が850℃、炭素の活量/未分解アンモニア分率(γ)の値が4.75の条件で、処理時間を4時間(図中(A))、6時間(図中(B))、8時間(図中(C))、10時間(図中(D))として浸炭窒化処理をした場合の窒素濃度分布(高温焼戻を行う前)を示している。図19の横軸は表面からの深さ(mm)、縦軸は窒素濃度(質量%)を示している。ここで、γの値が5より大きい条件で浸炭窒化処理をした場合、窒素侵入量が低下して窒素濃度が高い領域がより表面側に偏ることになる。この結果、処理時間を非常に長くする方法以外では、製品表面における窒素濃度を0.4質量%以上にすることが事実上困難になる。また、浸炭窒化処理の温度が860℃以上の場合にはγの値を5以下に保つことが困難であり、また840℃以下の場合には窒素の鋼中への拡散速度が遅くなり、結果として処理時間が長くなる。このため、上記鋼材の浸炭窒化処理には、850℃程度の温度が適切である。なお、浸炭窒化処理時の加熱温度は焼入後の旧オーステナイト結晶粒の大きさで判別することが可能であり、加熱温度が850℃である場合には上記鋼材では旧オーステナイト結晶粒の大きさがJIS規格で9番〜11番の範囲となる。
図19より、製品最表面の片側研削取代が0.125(mm)である場合には浸炭窒化処理の時間を4時間、0.15(mm)である場合には6時間、0.175(mm)である場合には8時間、0.2(mm)である場合には10時間とすることにより、製品最表面における窒素濃度を0.4質量%以上にすることが可能であることが分かった。
(5) 窒素拡散処理と窒素濃度分布との関係
不完全焼入組織の発生や残留オーステナイト量の過多による硬度低下を防止するためには、浸炭窒化処理後に窒素拡散処理を行うことが有効である。図20は、窒素拡散処理後の鋼中の窒素濃度分布(測定値および計算値)を示している。図20において、横軸は表面からの深さ(mm)を示し、縦軸は窒素濃度(質量%)を示している。図20中において、(A)は浸炭窒化処理の処理時間が6時間、窒素拡散処理の処理時間が2時間(未分解NH3濃度が0.1体積%)である場合の計算値、(B)は浸炭窒化処理の処理時間が6時間、窒素拡散処理の処理時間が1時間(未分解NH3濃度が0.05体積%)である場合の計算値、(C)は浸炭窒化処理の処理時間が6時間、窒素拡散処理の処理時間が2時間(未分解NH3濃度が0.05体積%)である場合の計算値、(D)は浸炭窒化処理の処理時間が4時間、窒素拡散処理の処理時間が2時間(未分解NH3濃度が0.1体積%)である場合の計算値を示している。これらの計算値は、窒素の拡散係数を1.2×10−6(m2/s)として算出した。(A)〜(D)に示す計算値は、実測値とほぼ合致した。
不完全焼入組織の発生や残留オーステナイト量の過多による硬度低下を防止するためには、浸炭窒化処理後に窒素拡散処理を行うことが有効である。図20は、窒素拡散処理後の鋼中の窒素濃度分布(測定値および計算値)を示している。図20において、横軸は表面からの深さ(mm)を示し、縦軸は窒素濃度(質量%)を示している。図20中において、(A)は浸炭窒化処理の処理時間が6時間、窒素拡散処理の処理時間が2時間(未分解NH3濃度が0.1体積%)である場合の計算値、(B)は浸炭窒化処理の処理時間が6時間、窒素拡散処理の処理時間が1時間(未分解NH3濃度が0.05体積%)である場合の計算値、(C)は浸炭窒化処理の処理時間が6時間、窒素拡散処理の処理時間が2時間(未分解NH3濃度が0.05体積%)である場合の計算値、(D)は浸炭窒化処理の処理時間が4時間、窒素拡散処理の処理時間が2時間(未分解NH3濃度が0.1体積%)である場合の計算値を示している。これらの計算値は、窒素の拡散係数を1.2×10−6(m2/s)として算出した。(A)〜(D)に示す計算値は、実測値とほぼ合致した。
次に、浸炭窒化処理の時間および窒素拡散処理の時間を変更したFEM解析を行い(浸炭窒化処理時間:4、5、6、7、8、9、10時間、窒素拡散処理時間:1、2時間)、各処理条件での窒素濃度分布を計算した。そして、当該計算結果を目的変数とした回帰式を算出した。さらに、上記高温焼戻(加熱温度:500℃、保持時間:1時間)により窒素が0.03mm内部に拡散すること、および熱処理後の仕上げ加工における研削取り代(0.1〜0.2mm)などを考慮して、上記高温焼戻後における断面硬度差分の測定位置を決定する下記の式(3)および(4)を構築した。下記の式(3)は、製品最表面の窒素濃度が0.4質量%以上であることを保証するための断面硬度の測定位置(x1)を示し、式(4)は、製品最表面の窒素濃度が0.3質量%以上であることを保証するための断面硬度の測定位置(x2)を示している。なお、この場合には窒素拡散処理における加熱温度を850℃、未分解NH3濃度を0.06体積%、炭素の活量を0.9として計算した。
(6) 品質保証の手順
上記(1)〜(5)の検討結果より、熱処理後に製品最表面における窒素濃度が0.4質量%以上であることを保証する手順は以下の通りになる。まず、浸炭窒化処理の時間T
1(h)、窒素拡散処理の時間T2(h)を上記式(3)に代入して高温焼戻後の断面硬度の測定位置x1(mm)を算出する。次に、加熱温度を500℃、保持時間を1時間として高温焼戻を施す。次に、上記高温焼戻後の製品から試験片を切り出し、算出した上記測定位置x1(mm)および窒化されていない内部における断面硬度を測定し、当該測定値の差より断面硬度差分を算出する。そして、当該断面硬度差分が80ΔHV以上であるか否かを判別する。これにより、当該断面硬度差分が80ΔHV以上であれば、研削加工後の製品最表面における窒素濃度が0.4質量%以上であることを保証することができる。
上記(1)〜(5)の検討結果より、熱処理後に製品最表面における窒素濃度が0.4質量%以上であることを保証する手順は以下の通りになる。まず、浸炭窒化処理の時間T
1(h)、窒素拡散処理の時間T2(h)を上記式(3)に代入して高温焼戻後の断面硬度の測定位置x1(mm)を算出する。次に、加熱温度を500℃、保持時間を1時間として高温焼戻を施す。次に、上記高温焼戻後の製品から試験片を切り出し、算出した上記測定位置x1(mm)および窒化されていない内部における断面硬度を測定し、当該測定値の差より断面硬度差分を算出する。そして、当該断面硬度差分が80ΔHV以上であるか否かを判別する。これにより、当該断面硬度差分が80ΔHV以上であれば、研削加工後の製品最表面における窒素濃度が0.4質量%以上であることを保証することができる。
浸炭窒化処理の時間T1が6時間、窒素拡散処理の時間T2が2時間である場合には、上記式(3)より0.4mmの深さ位置の断面硬度差分が80ΔHV以上であるときに製品最表面の窒素濃度が0.4質量%以上であることが保証される。また、浸炭窒化処理の時間T1が6時間未満であり、また窒素拡散処理の時間T2が2時間未満である場合にも、同様に0.4mmの深さ位置での断面硬度差分により評価することができる。
(実施例5)
安価でかつ降伏強度および寿命が向上した軸受部品を得ることを目的として以下の実験を行った。まず、上記成分範囲内の鋼材を準備し、当該鋼材に浸炭窒化、焼入および焼戻処理を順に施し、その後研削および仕上げ加工後を施して軸受部品を製造した。そして、表層部における窒素濃度および焼戻温度を変更した場合において以下の試験を行った。
(実施例5)
安価でかつ降伏強度および寿命が向上した軸受部品を得ることを目的として以下の実験を行った。まず、上記成分範囲内の鋼材を準備し、当該鋼材に浸炭窒化、焼入および焼戻処理を順に施し、その後研削および仕上げ加工後を施して軸受部品を製造した。そして、表層部における窒素濃度および焼戻温度を変更した場合において以下の試験を行った。
浸炭窒化処理時の雰囲気は、γの値を4.75、加熱温度を850℃とした。γの値が5より大きい場合には、窒素侵入速度が低下して窒素濃度が高い領域が表層に留まり易くなり、研削加工における取代を考慮すると浸炭窒化処理の時間が非常に長くなり実用的ではない。また、上記成分範囲内の鋼材を用いた場合には、850℃よりも大幅に高い温度では未分解アンモニア分率を高く保つために多量のアンモニアが必要となるためプロセスが高コスト化する。一方、850℃よりも大幅に低い温度では窒素の鋼中への拡散速度が遅くなり処理時間が長くなる。そのため、上記鋼材の浸炭窒化処理においては850℃付近の温度が適切であるといえる。
(1) 表層部における窒素濃度および焼戻温度と残留圧痕深さとの関係
まず、表面部における窒素濃度および焼戻温度が残留圧痕深さに及ぼす影響について調査した。まず、表層部における窒素濃度および焼戻温度を変更した平面試験片を作製した。具体的には、当該窒素濃度が0質量%、0.1質量%、0.25質量%および0.4質量%の試験片を準備し、それぞれの試験片について180℃、210℃、240℃および260℃の温度で焼戻処理を行った。そして、当該試験片の平面に最大接触面圧が4.5GPa(完全弾性体として仮定)となる荷重でセラミック球(サイズ:3/8インチ)を押し付け、荷重を除いた後の残留圧痕深さを調査した。なお、4.5GPaの値は、市場において転がり軸受に付与される最大接触面圧の最大値とほぼ同じ値である。
まず、表面部における窒素濃度および焼戻温度が残留圧痕深さに及ぼす影響について調査した。まず、表層部における窒素濃度および焼戻温度を変更した平面試験片を作製した。具体的には、当該窒素濃度が0質量%、0.1質量%、0.25質量%および0.4質量%の試験片を準備し、それぞれの試験片について180℃、210℃、240℃および260℃の温度で焼戻処理を行った。そして、当該試験片の平面に最大接触面圧が4.5GPa(完全弾性体として仮定)となる荷重でセラミック球(サイズ:3/8インチ)を押し付け、荷重を除いた後の残留圧痕深さを調査した。なお、4.5GPaの値は、市場において転がり軸受に付与される最大接触面圧の最大値とほぼ同じ値である。
図21に、表層部における窒素濃度および焼戻温度と残留圧痕深さとの関係を調査した結果を示す。図21において、横軸は窒素濃度(質量%)を示し、縦軸は残留圧痕深さ(μm)を示している。図21から明らかなように、焼戻温度が180℃および210℃である場合に比べて、焼戻温度が240℃および260℃である場合には残留圧痕深さが大きく低下した。また、焼戻温度が180℃および210℃である場合には、窒素濃度が高くなるに伴い残留圧痕深さが大きくなったのに対し、焼戻温度が240℃および260℃である場合には窒素濃度が高くなるに伴い残留圧痕深さは逆に小さくなった(塑性変形し難くなる)。この結果より、上記実験の範囲(焼戻温度が180℃以上260℃以下)では、窒素を含む上記鋼材において、焼戻温度が高くなるに伴い降伏強度が高くなり、高い静的負荷容量が得られることが分かった。
(2) 表層部における窒素濃度と圧痕起点型はく離寿命との関係
次に、高温焼戻(240℃、260℃)を施した場合における表層部における窒素濃度と圧痕起点型はく離寿命との関係について調査した。まず、玉軸受(軸受型番:6206)の内輪形状に加工した試験片を作製した。そして、当該試験片の転走面溝底部において6°等配の人工圧痕を形成し、転動疲労試験を実施した。人工圧痕は、ロックウェル圧子を荷重196Nで負荷することにより形成した。転動疲労試験は、最大接触面圧を3.2GPa、内輪回転数を3000rpmとし、潤滑油をタービン油VG56の循環給油とした。
次に、高温焼戻(240℃、260℃)を施した場合における表層部における窒素濃度と圧痕起点型はく離寿命との関係について調査した。まず、玉軸受(軸受型番:6206)の内輪形状に加工した試験片を作製した。そして、当該試験片の転走面溝底部において6°等配の人工圧痕を形成し、転動疲労試験を実施した。人工圧痕は、ロックウェル圧子を荷重196Nで負荷することにより形成した。転動疲労試験は、最大接触面圧を3.2GPa、内輪回転数を3000rpmとし、潤滑油をタービン油VG56の循環給油とした。
図22に、表層部における窒素濃度と圧痕起点型はく離寿命との関係について調査した結果を示す。図22は、圧痕起点型はく離寿命のワイブルプロットであり、横軸は寿命(h)、縦軸は累積破損確率(%)を示している。また、図22中において、窒素濃度および焼戻温度は、「窒素濃度−焼戻温度」の表示により示されている。たとえば、「0.4質量%−240℃」の表示は、窒素濃度が0.4質量%であり、焼戻温度が240℃であることを示している。また、参考として、窒素濃度が0.4質量%で焼戻温度が180℃である場合の結果も示している。図22から明らかなように、窒素濃度が0.4質量%で焼戻温度が240℃である場合には、窒素濃度が0質量%で焼戻温度が180℃である場合とほぼ同じ結果が得られた。しかし、窒素濃度が小さくなるに伴い、圧痕起点型はく離寿命は低下した。したがって、降伏強度の向上と寿命の向上とを両立させるためには、上述のように焼戻温度を高温(240℃、260℃)とし、かつ表層部における窒素濃度を0.4質量%以上にまで高くすることが必要であることが分かった。
(3) 表層部における窒素濃度および焼戻温度と水素脆性はく離寿命との関係
次に、表層部における窒素濃度および焼戻温度が、転動疲労における耐水素性に及ぼす影響について調査した。ここで、転動疲労における水素源は、潤滑剤そのものや潤滑剤に混入した水であり、これらが接触要素間で生じるすべりなどにより分解して水素が発生し、この水素の一部が鋼中に侵入すると考えられている。
次に、表層部における窒素濃度および焼戻温度が、転動疲労における耐水素性に及ぼす影響について調査した。ここで、転動疲労における水素源は、潤滑剤そのものや潤滑剤に混入した水であり、これらが接触要素間で生じるすべりなどにより分解して水素が発生し、この水素の一部が鋼中に侵入すると考えられている。
スラスト軸受(軸受型番:51106)の軌道輪を試験片として用いて転動疲労試験を行った。運転パターンは、図23に示す急加減速パターンを用いた。図23において、横軸は時間(sec)を示し、縦軸は回転速度(min−1)を示している。また、図23に示すように、0〜0.1secの間に2500min−1の回転速度にまで加速し、その後0.3secの間当該回転速度を維持し、0.1secの間に0min−1にまで減速する。このサイクルを繰り返すことにより試験を行った。ボールは、SUS440C製のものを用い、数は17個(標準個数)から12個に減らした。保持器としては、12等配にするための樹脂製のものを作製し、最大接触面圧を2.3GPaとした。潤滑油には水溶性のポリグリコール油を用い、これに水素源としての純水を混合した(純水濃度:40質量%)。試験機は、軌道輪にはく離が起こり、振動が大きくなった時に自動で停止するようにした。
ここで、水素源である純水が寿命に及ぼす影響(耐水素寿命)が、純水濃度が20質量%以上においては変化ないことは予め確認されている。試験後には、潤滑油における純水の割合が若干低下する。そのため、試験後に純水の混合割合を測定して20質量%以上であることを確認することで、上記実験の耐水素性の評価としての妥当性を担保している。なお、上記実験後には、35質量%程度の純水が残留していた。
図24および表2に、表面窒素濃度および焼戻温度と水素脆性はく離寿命との関係を調査した結果を示す。図24は、耐水素寿命のワイブルプロットであり、横軸は寿命(h)を示し、縦軸は累積破損確率(%)を示している。また、図24中において、窒素濃度および焼戻温度は、図22の場合と同様に「窒素濃度−焼戻温度」の表示により示されてい
る。表2には、各熱処理条件(窒素濃度−焼戻温度)毎のL10寿命(h)、L50寿命(h)およびワイブルスロープの値を示している。
る。表2には、各熱処理条件(窒素濃度−焼戻温度)毎のL10寿命(h)、L50寿命(h)およびワイブルスロープの値を示している。
図24および表2から明らかなように、0質量%−180℃の場合にはL10寿命が44hであったのに対し、0.4質量%−180℃の場合には138h(3.1倍)、0.4質量%−240℃の場合には173h(3.9倍)、0.4質量%−260℃の場合には185h(4.2倍)となっており、焼戻温度が高くなるに伴い寿命が長くなった。これは、図21に示す結果を用いて説明したように、焼戻温度が高くなるに伴い塑性変形し難くなることに起因すると考えられる。塑性変形に対して水素が及ぼす作用としては、転位の動きを容易にすることや、転位間の相互作用で生成した原子空孔を安定化し増殖をもたらすことなどが知られている。したがって、塑性変形し難いほど長寿命化したものと考えられる。
なお、最長寿命は、0質量%−180℃の場合には212hであり、0.4質量%−180℃の場合には242hであり、0.4質量%−240℃の場合には251hであり、0.4質量%−260℃の場合には266hであったため、最長寿命としては大きな差はなかった。一方、0質量%−180℃の場合には寿命のばらつきが大きく、その結果L10寿命が短くなっているのに対し、0.4質量%−180℃、0.4質量%−240℃および0.4質量%−260℃の場合はいずれも安定して長寿命になると考えられる。
(4) 焼戻温度と残留オーステナイト(γ)量との関係
次に、焼戻温度と残留オーステナイト量との関係について調査した。上述のように、焼戻温度により軸受の静的負荷容量や寿命が変化するが、製品状態の軸受から焼戻温度の条件を直接的に得ることは困難である。しかし、焼戻温度が一定である場合、窒素濃度が0.4質量%である位置における残留オーステナイト量と焼戻温度との間に相関があるため、当該残留オーステナイト量から間接的に焼戻温度を明らかにすることが可能である。
次に、焼戻温度と残留オーステナイト量との関係について調査した。上述のように、焼戻温度により軸受の静的負荷容量や寿命が変化するが、製品状態の軸受から焼戻温度の条件を直接的に得ることは困難である。しかし、焼戻温度が一定である場合、窒素濃度が0.4質量%である位置における残留オーステナイト量と焼戻温度との間に相関があるため、当該残留オーステナイト量から間接的に焼戻温度を明らかにすることが可能である。
図25は、焼戻温度と残留オーステナイト量との関係を示している。図25において、横軸は焼戻温度(℃)、縦軸は窒素濃度が0.4質量%の位置における残留オーステナイト量(体積%)を示している。また、焼戻処理の保持時間は2hで一定である。図25に示すように、焼戻温度が240℃である場合には残留オーステナイト量が8体積%以下となり、焼戻温度が260℃である場合には5体積%以下にまで低下することが分かった。
(5) 内部の析出物の面積率と焼戻温度との関係
次に、内部の析出物の面積率と焼戻温度との関係について調査した。製品状態から焼戻温度を間接的に明らかにする方法としては、残留オーステナイト量の他に析出物の面積率を測定する方法がある。これは、焼入処理時の加熱温度(ここでは850℃であり、旧オーステナイト結晶粒はJIS規格で9〜11番になる)および焼戻処理時の保持時間が一定である場合には、焼戻温度が高くなるに伴い母地に固溶した炭素が析出し、大きなセメ
ンタイト(Fe3C)が形成されるからである。
次に、内部の析出物の面積率と焼戻温度との関係について調査した。製品状態から焼戻温度を間接的に明らかにする方法としては、残留オーステナイト量の他に析出物の面積率を測定する方法がある。これは、焼入処理時の加熱温度(ここでは850℃であり、旧オーステナイト結晶粒はJIS規格で9〜11番になる)および焼戻処理時の保持時間が一定である場合には、焼戻温度が高くなるに伴い母地に固溶した炭素が析出し、大きなセメ
ンタイト(Fe3C)が形成されるからである。
図26は、内部の未窒化領域における析出物の面積率と焼戻温度との関係を調査した結果を示している。図26において、横軸は焼戻温度(℃)を示し、縦軸は析出物の面積率(%)を示している。また、焼戻処理における保持時間は2時間で一定とした。また、図27〜図30は、焼戻温度を180℃、210℃、240℃および260℃とした場合における鋼材断面の写真であり、鋼材中の析出物が黒く見えている。図26は、図27〜図30の写真より黒く見える析出物の面積率を算出し、焼戻温度との関係を示したものである。また、図31は、焼入処理時の加熱温度を850℃とした場合での、内部の未窒化領域における旧オーステナイト結晶粒の写真である。
図26より、焼戻温度が240℃である場合には面積率が11%以上となり、260℃である場合には12%以上にまで増加することが分かった。なお、析出物の面積率の判定を内部の未窒化領域で行う理由は、窒化された表層部は炭素の固溶限濃度が変化しているため、析出物の面積率が大きく変動するからである。また、浸炭窒化処理温度や焼入加熱温度でも当該面積率は変動するが、これらは旧オーステナイト結晶粒の平均粒径により推定することが可能である。図31に示すように、加熱温度が850℃である場合での未窒化領域における旧オーステナイト結晶粒の粒度番号は9.5番であった。上記(1)〜(5)の検討より、上記成分範囲内の鋼材に浸炭窒化処理および焼入処理を施して表面(転走面または転動面)における窒素濃度を0.4質量%以上とし、かつ240℃以上の温度で焼戻処理を行うことにより、安価でかつ降伏強度および寿命が向上した軸受部品が得られることが分かった。
(実施例6)
次に、浸炭窒化処理時の雰囲気と炭素濃度および窒素濃度分布との関係について調査した。まず、浸炭窒化処理時の雰囲気と炭素濃度分布との関係について調査した。図32は、ac *の値が0.80、αの値が0.017の雰囲気下で2.5時間浸炭窒化処理を行った場合の炭素濃度および窒素濃度分布を示している(比較例)。また、図33は、ac *の値が0.95、αの値が0.017の雰囲気下で2.5時間浸炭窒化処理を行った場合の炭素濃度および窒素濃度分布を示している(実施例)。図32および図33において、横軸は表面からの距離(mm)を示し、縦軸は炭素濃度および窒素濃度(質量%)を示している。また、図32および図33中における「C」および「N」は、炭素濃度および窒素濃度の分布をそれぞれ示している。
(実施例6)
次に、浸炭窒化処理時の雰囲気と炭素濃度および窒素濃度分布との関係について調査した。まず、浸炭窒化処理時の雰囲気と炭素濃度分布との関係について調査した。図32は、ac *の値が0.80、αの値が0.017の雰囲気下で2.5時間浸炭窒化処理を行った場合の炭素濃度および窒素濃度分布を示している(比較例)。また、図33は、ac *の値が0.95、αの値が0.017の雰囲気下で2.5時間浸炭窒化処理を行った場合の炭素濃度および窒素濃度分布を示している(実施例)。図32および図33において、横軸は表面からの距離(mm)を示し、縦軸は炭素濃度および窒素濃度(質量%)を示している。また、図32および図33中における「C」および「N」は、炭素濃度および窒素濃度の分布をそれぞれ示している。
図32および図33を参照して、実施例および比較例ではαの値が同じであるため、窒化については実施例および比較例のそれぞれにおいて正常に行われていた。しかし、比較例では表面付近の炭化物が消失して炭素濃度が低下しており、さらに母相においても僅かに脱炭が確認されたのに対し(図32参照)、実施例では表面付近の炭素濃度は母相における炭素濃度とほぼ同等となっていた(図33参照)。この結果から、浸炭窒化処理時の雰囲気を管理することにより(適切なac *値とすることにより)、鋼の表層部における適切な炭素濃度を保持することが可能であることが確認された。
次に、浸炭窒化処理時の雰囲気と窒素濃度分布との関係について調査した。図34は、ac *の値が1、αの値が0.017の雰囲気下で5時間浸炭窒化処理を行った場合の窒素濃度分布を示している(実施例)。また、図35は、ac *の値が1、αの値が0.005の雰囲気下で5時間浸炭窒化処理を行った場合の窒素濃度分布を示している(比較例)。図34および図35を参照して、実施例および比較例では浸炭窒化処理の時間は同じであるが、比較例では実施例よりも窒素侵入量が少なく、窒素濃度が低くなった。この結果から、浸炭窒化処理時の雰囲気を適切に管理することにより(適切なα値とすることにより)、窒素の侵入速度が向上し、浸炭窒化処理の効率化が可能であることが確認された。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の軸受部品および転がり軸受は、安価でかつ降伏強度および寿命を向上させ、さらに製造コストの低減が要求される軸受部品および転がり軸受において、特に有利に適用され得る。
1 深溝玉軸受、2 円錐ころ軸受、11,21 外輪、11A,21A 外輪転走面、11B,12B,22B 非研削面、12,22 内輪、12A,22A 内輪転走面、13 玉、13A,23A 転動面、14,24 保持器、23 ころ、30 雰囲気制御工程、31 未分解NH3分圧制御工程、32 H2分圧制御工程、33 CO/CO2分圧制御工程、40 加熱パターン制御工程。
Claims (7)
- 0.95質量%以上1.1質量%以下の炭素と、0.3質量%未満の珪素と、0.5質量%未満のマンガンと、0.008質量%未満の硫黄と、1.4質量%以上1.6質量%未満のクロムとを含み、残部鉄および不純物からなる鋼からなり、他の部品と接触する面である接触面を含む表層部に浸炭窒化層が形成された軸受部品であって、
前記表層部における平均窒素濃度が0.3質量%以上0.6質量%以下であり、かつ、前記表層部における窒素濃度のばらつきが0.1質量%以下であり、
前記表層部における残留オーステナイト量が8体積%以下であり、
未分解アンモニア分圧をPN、水素分圧をPHとした場合に、以下の式(1)で定義されるac *が0.88以上1.27以下、式(2)で定義されるαが0.012以上0.020以下となるように浸炭窒化処理を行うことにより前記浸炭窒化層が形成されている、軸受部品。
- 前記残留オーステナイト量が5体積%以下である、請求項1に記載の軸受部品。
- 前記軸受部品の厚み方向における窒素濃度の傾きが−15(1/m)以上である、請求項1または2に記載の軸受部品。
- 前記表層部には、直径が0.3μm以上0.5μm以下である炭窒化物が100μm2当たり5個以上存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の軸受部品。
- 前記接触面以外の面である非研削面を含む非研削部における窒素濃度が0.7質量%未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の軸受部品。
- 加熱温度を500℃、保持時間を1時間とした熱処理を行った後において、前記接触面から0.4(mm)の深さの位置におけるビッカース硬度が、前記軸受部品の厚み方向において前記浸炭窒化層が形成されていない領域におけるビッカース硬度より80HV以上高い、請求項1〜5のいずれか1項に記載の軸受部品。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の軸受部品を備える、転がり軸受。
Priority Applications (5)
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- 2013-06-06 JP JP2013120145A patent/JP2014237871A/ja active Pending
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