JP2004190127A - 球状化炭化物組織を有する軸受け用線材・棒鋼およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 圧延ままで球状化組織を有し冷間成形性が優れた軸受け用線材・棒鋼、及びこのような軸受け用線材・棒鋼を経済的でかつ操業容易に製造できる方法を提案する。
【解決手段】 鋼組成を、質量%で、C:0.6〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、Si:0.05〜1.2%、Cr:0.5〜2.5%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、残部:鉄および不可避的不純物からなるものとし、且つセメンタイトのうちアスペクト比(長径/短径)が2以下であるものの割合を70%以上とする。上記鋼組成には、さらに、質量%で、Al:0.01〜0.03%、Cu:0.2%以下、Ni:0.2%以下及びMo:0.1%以下から選んだ1種又は2種以上を含有させることができる。
【解決手段】 鋼組成を、質量%で、C:0.6〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、Si:0.05〜1.2%、Cr:0.5〜2.5%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、残部:鉄および不可避的不純物からなるものとし、且つセメンタイトのうちアスペクト比(長径/短径)が2以下であるものの割合を70%以上とする。上記鋼組成には、さらに、質量%で、Al:0.01〜0.03%、Cu:0.2%以下、Ni:0.2%以下及びMo:0.1%以下から選んだ1種又は2種以上を含有させることができる。
Description
本発明は、自動車部品や電気部品等の機械部品に使用される軸受け用線材および棒鋼、およびその製造方法に関し、特に、熱間圧延ままで球状化組織を有する軸受け用線材・棒鋼及びその製造方法を提供しようとするものである。
自動車等の製造に用いられる軸受けは、熱間加工によって製造された線材や棒鋼等の素材を冷間成形加工や切削等によって成形加工して製造されるため、素材である線材や棒鋼等には高い冷間成形性が要求される。このような要求に応えるため、熱間圧延された素材には、一般に球状化焼鈍を施して組織中の炭化物(セメンタイト)を球状化させている。
その代表的な手段は、例えば特許文献1に記載されている。一般に、この球状化焼鈍は、素材である線材あるいは棒鋼のArl点近傍で長時間、例えば20〜30h保持することによって行われる。そのため、特別の焼鈍炉が必要であるほか、多大の熱エネルギーを要し、設備費削減、省エネルギー及び生産性向上の大きな障害となっている。
このような問題を解決するために、例えば特許文献2、特許文献3、特許文献4等には、圧延によって発生する加工発熱を利用する技術が開示されている。これらの方法では、仕上げ圧延前に一旦Ar1点以下に冷却したのち、仕上げ圧延の際に大きな塑性加工を加え、それによって発生する変形熱を利用して鋼材温度を再上昇させたのち保持することによって、特にオフラインでの球状化焼鈍を施すことなく圧延ままで炭化物を球状化することができる。
また、特許文献5には、熱延された鋼材の冷却過程において引張応力を加えて400〜600℃の温度域にまで冷却してパーライト中のセメンタイトを引張応力にて機械的に分断し、しかるのち600℃以上に再加熱することによって短時間の焼鈍で炭化物を球状化させる手段が開示されている。
さらに、特許文献6には、熱間圧延における仕上げ圧延温度、仕上げ圧延後の冷却速度を調整することにより、初析セメンタイトのアスぺクト比が10以下、且つ、その短径が2μm以下であり、さらに、初析セメンタイトに囲まれた領域の平均径が20μm以下である鋼組織を得て、伸線前の熱処理を省略可能とする技術が開示されている。
特開平6-33190号公報
特公平5−76524号公報
特公平5−76525号公報
特公平5−40006号公報
特公平6-74453号公報
特開2003−129176号公報
しかしながら、特許文献2、特許文献3、特許文献4等に記載の加工発熱の制御はかなり困難であり、熱延鋼材が棒鋼の場合には鋼材断面での組織のばらつきを引き起こしやすいという問題がある。また、特許文献5に記載の提案では、熱間圧延終了後に改めて再加熱が必要であり、コストダウンの観点から問題が残っている。さらにパーライト中のセメンタイトを引張応力によって分断するため応力を線材に付与するために新たな設備導入を必要とするという問題がある。また、特許文献6に開示されている手段では、得られる鋼材のセメンタイトの球状化は未だ不十分であり、十分な冷間成形性が得られるものとはいい難い。
本発明は、圧延ままで球状化組織を有し冷間成形性が優れた軸受け用線材・棒鋼、及びこのような軸受け用線材・棒鋼を経済的でかつ操業容易に製造できる方法を提案することを目的とする。特に本発明は、特別の加工や再加熱処理を必要とせず、熱間圧延の仕上げ圧延条件及び仕上げ圧延後の冷却速度を制御するだけで熱間圧延ままでの状態で十分な炭化物の球状化分散状況を確保し得る技術を提案することを目的とする。
発明者らは、熱間圧延ままの線材や棒鋼であっても、該熱間圧延時の仕上げ圧延条件、および仕上げ圧延後の冷却条件を調整することによって、鋼中のセメンタイトのアスペクト比(長径/短径)が2以下のものが70%以上となるようにすることが可能であり、この程度までセメンタイトを球状化することによって別段の球状化焼鈍を施すことなく、熱間圧延ままで冷間成形性を備えた線材、棒鋼を得ることができることを知見した。そしてその条件を鋼素材成分とともに定めて、上記の従来技術よりもより熱間圧延まま組織でのセメンタイトの球状化が進行した鋼材を得て、本発明を完成した。
具体的には、本発明の軸受け用線材・棒鋼は、質量%で、C:0.6〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、Si:0.05〜1.2%、Cr:0.5〜2.5%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、残部:鉄および不可避的不純物からなる鋼組成を有し、且つセメンタイトのうちアスペクト比(長径/短径)が2以下であるものの割合が70%以上であることを特徴とする。上記鋼組成は、さらに、質量%で、Al:0.01〜0.03%、Cu:0.2%以下、Ni:0.2%以下及びMo:0.1%以下から選んだ1種又は2種以上を含有させることができる。
また、本発明の軸受け用線材・棒鋼の製造方法は、質量%で、C:0.6〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、Si:0.05〜1.2%、Cr:0.5〜2.5%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、残部:鉄および不可避的不純物からなる鋼組成を有する鋼素材に対し、熱間圧延の仕上圧延を該鋼素材の(Ar1−50℃)〜(Ar1+50℃)の温度域で減面率が20%以上となるように行い、直ちに冷却速度0.5℃/s以下で、500℃以下まで冷却することを特徴とする。上記鋼組成にはさらに、質量%で、Al:0.01〜0.03%、Cu:0.2%以下、Ni:0.2%以下及びMo:0.1%以下から選んだ1種又は2種以上を含有させることができる。
この発明により、特別の加工や再加熱処理を必要とせず、熱間圧延の仕上げ圧延条件及び仕上げ圧延後の冷却速度を制御するだけで、比較的高炭素の線材や棒鋼について熱間圧延ままの状態で十分なセメンタイトの球状化分散状況を確保し、極めて経済的に冷間鍛造性、さらには転動疲労特性の優れた軸受け鋼材を提供することができる。
本発明に係る軸受け用線材・棒鋼は、その組成が以下に示すように限定される。
C:0.6〜1.5%(質量%、以下同様)
Cは軸受鋼として必要な強度を確保するために必須の元素であり、0.6%以上を必要とする。しかし、1.5%を超えると本発明において特定する仕上げ圧延条件等を適用しても軟質化が困難となり、冷間鍛造性が著しく低下し、あるいは鍛造後の熱処理において割れ等の欠陥が発生しやすくなる。
Cは軸受鋼として必要な強度を確保するために必須の元素であり、0.6%以上を必要とする。しかし、1.5%を超えると本発明において特定する仕上げ圧延条件等を適用しても軟質化が困難となり、冷間鍛造性が著しく低下し、あるいは鍛造後の熱処理において割れ等の欠陥が発生しやすくなる。
Mn:0.2〜1.5%
Mnは脱酸に必要な元素であり、固溶強化により機械的特性の向上のため0.2%以上必要であるが1.5%を超えると冷間鍛造性の低下が著しい。そのため、Mnの含有量は0.2〜1.5%とする。
Mnは脱酸に必要な元素であり、固溶強化により機械的特性の向上のため0.2%以上必要であるが1.5%を超えると冷間鍛造性の低下が著しい。そのため、Mnの含有量は0.2〜1.5%とする。
Si:0.05〜1.2%
Siは脱酸に必要な元素である。その効果は0.05%以上で得られる。しかし1.2%を超えると疲労寿命等の機械的性質が劣化し、また冷間鍛造性の低下が著しくなる。
Siは脱酸に必要な元素である。その効果は0.05%以上で得られる。しかし1.2%を超えると疲労寿命等の機械的性質が劣化し、また冷間鍛造性の低下が著しくなる。
Cr:0.5〜2.5%
Crはセメンタイトの形成を著しく促進させ、またパーライトラメラー間隔およびパーライト粒を細かくする効果を有し、最終的にセメンタイト球状化による鍛造性向上に必要な元素である。その効果は0.5%以上の添加で発揮される。しかし、2.5%を超えて添加してもその効果は増加せず、かえって疲労強度や延性等の機械的特性に悪影響を与える。
Crはセメンタイトの形成を著しく促進させ、またパーライトラメラー間隔およびパーライト粒を細かくする効果を有し、最終的にセメンタイト球状化による鍛造性向上に必要な元素である。その効果は0.5%以上の添加で発揮される。しかし、2.5%を超えて添加してもその効果は増加せず、かえって疲労強度や延性等の機械的特性に悪影響を与える。
P:0.03%以下、S:0.02%以下
Pは鋼の粒界に偏析し、鋼を脆化させるので0.03%以下に制限する必要がある。Sは鋼の粒界に偏析し、鋼を脆化させるので0.02%以下に制限する必要がある。
Pは鋼の粒界に偏析し、鋼を脆化させるので0.03%以下に制限する必要がある。Sは鋼の粒界に偏析し、鋼を脆化させるので0.02%以下に制限する必要がある。
Al:0.01〜0.03%、Cu:0.2%以下、Ni:0.2%以下、Mo:0.1%以下から選んだ1種又は2種以上
Alは、Siと同様に脱酸の目的で添加してもよい。0.01%未満では所望の効果が得られず、逆に0.03%を超えると疲労寿命等の機械的特性や特に冷間鍛造性の低下が著しくなるため添加する場合は0.03%以下とする。Cuは鋼の焼入れ性を高め、最終的に軸受けに加工した後の強度を維持するために添加してもよい。ただし、0.2%以上添加すると圧延まま投階でベイナイトやマルテンサイトが生成して鋼が硬くなりすぎて鍛造性が低下するため、添加する場合は0.2%を上限とする。
Alは、Siと同様に脱酸の目的で添加してもよい。0.01%未満では所望の効果が得られず、逆に0.03%を超えると疲労寿命等の機械的特性や特に冷間鍛造性の低下が著しくなるため添加する場合は0.03%以下とする。Cuは鋼の焼入れ性を高め、最終的に軸受けに加工した後の強度を維持するために添加してもよい。ただし、0.2%以上添加すると圧延まま投階でベイナイトやマルテンサイトが生成して鋼が硬くなりすぎて鍛造性が低下するため、添加する場合は0.2%を上限とする。
Niは鋼の焼入れ性を高め、最終的に軸受けに加工した後の強度を維持するために添加してもよい。ただし、0.2%以上添加すると圧延まま段階でベイナイトやマルテンサイトが生成し鋼が硬くなりすぎて鍛造性が低下するため、添加する場合は0.2%を上限とする。Moは鋼の焼入れ性を高め、最終的に軸受けに加工した後の強度を維持するために添加してもよい。ただし0.1%以上添加すると圧延まま段階でベイナイトやマルテンサイトが生成し鋼が硬くなりすぎて鍛造性が低下するため、添加する場合は0.1%を上限とする。
残部:鉄および不可避的不純物
以上説明した元素以外の残部は鉄および不可避的不純物である。不可避的不純物としては、トランプエレメントや脱酸生成物などがある。これらは少ないほうがよい。特に、O(酸素)は鋼中でAl、Siと結合してAl2O3やSiO2などの酸化物系介在物を生成し、転動疲労強度を大幅に低下させる元素である。そのためOは20ppm以下とすることが好ましい。また、Ti、V、NはTiNやVNなどの窒化物系介在物を形成させ、これも転動疲労強度を大幅に低下させる。そのため、N:100ppm、Ti:0.005%以下、V:0.01%以下とすることが好ましい。
以上説明した元素以外の残部は鉄および不可避的不純物である。不可避的不純物としては、トランプエレメントや脱酸生成物などがある。これらは少ないほうがよい。特に、O(酸素)は鋼中でAl、Siと結合してAl2O3やSiO2などの酸化物系介在物を生成し、転動疲労強度を大幅に低下させる元素である。そのためOは20ppm以下とすることが好ましい。また、Ti、V、NはTiNやVNなどの窒化物系介在物を形成させ、これも転動疲労強度を大幅に低下させる。そのため、N:100ppm、Ti:0.005%以下、V:0.01%以下とすることが好ましい。
セメンタイトのうちアスペクト比(長径/短径)が2以下であるものの割合が70%以上
鋼中のセメンタイトの球状化が十分でないと、冷間鍛造性等の冷間成形性が悪くなる。発明者らの調査によれば、鋼中のセメンタイトのうちアスペクト比が2以下であるものの割合が70%以上であれば、熱間圧延ままでも十分な冷間成形が可能である。よって、熱間圧延ままの組織でセメンタイトのうちアスペクト比(長径/短径)が2以下であるものの割合が70%以上であることを必要とする。
鋼中のセメンタイトの球状化が十分でないと、冷間鍛造性等の冷間成形性が悪くなる。発明者らの調査によれば、鋼中のセメンタイトのうちアスペクト比が2以下であるものの割合が70%以上であれば、熱間圧延ままでも十分な冷間成形が可能である。よって、熱間圧延ままの組織でセメンタイトのうちアスペクト比(長径/短径)が2以下であるものの割合が70%以上であることを必要とする。
なお、本発明でいう、熱間圧延ままとは、熱間圧延後に炭化物の球状化焼鈍処理が施されていないもののことをいい、熱間圧延の仕上げ圧延の出側において冷却処理をした後のものをいう。また、セメンタイトのアスペクト比は、製品棒鋼から試験片を切り出し、圧延方向と直角な方向の面を研磨後、ピラクールまたはナイタールで腐食した後、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により倍率5000倍で10視野(22μm×16μm×l0視野)の組織観察を行い、各視野内にあるセメンタイトについて画像解析によって長径および短径を測定して(長径/短径)の比によって算出することができ、アスペクト比が2以下であるものの割合とは、全セメンタイト数のうち、アスペクト比が2以下を有するセメンタイトの数の割合(以下これを「球状化率」という)をいう。
本発明の製造条件に当たっては、通常のとおり例えば転炉で溶製し、連続鋳造など適当な手段にて鋳造した鋼片を、加熱後、粗圧延、中間圧延、及び仕上げ圧延して最終寸法の製品まで熱間圧延する。本発明では、この仕上げ圧延を鋼素材のAr1変態点温度を基準として(Ar1−50℃)〜(Ar1+50℃)の温度域で減面率20%以上となるように行う。
仕上げ圧延の温度が(Ar1+50℃)を超えると、圧延後生成するパーライトのラメラー間隔が大きくなり、後の徐冷を行ってもセメンタイトの球状化が進行しない。一方、仕上げ圧延の温度が(Arl−50℃)を下回ると、圧延エネルギーが過大になるばかりでなく、続く徐冷の温度が低くなりすぎ、セメンタイトの球状化が進行せず、アスペクト比が2以下であるセメンタイトの割合を70%以上とすることができない。Arl点近傍の温度で圧延加工を施すことにより、加工歪の蓄積により層状パーライトを構成している板状セメンタイトが微細に分断され、同時にパーライトおよびフェライト組織全体も加工を受けて、転位密度の上昇や各相間の界面エネルギーが増加し、続く徐冷によりセメンタイトが球状化されるのである。
上記温度範囲内での仕上げ圧延における減面率は20%以上である。減面率が20%より小さいと前記の加工歪の蓄積による効果が十分得られず、その結果、徐冷を行ってもセメンタイトの十分な球状化がなされない。なお、上記減面率は、仕上げ圧延機列を被圧延材が通過するとき、被圧延材の温度が上記範囲内にあるときの累積減面率である。すなわち、被圧延材が仕上げ圧延機列を通過している際、被圧延材の温度が上記(Ar1+50℃)に降下してから、(Ar1−50℃)に達するまでの減面率をいう。なお、上記減面率は70%以下とすることが好ましい。減面率が70%超では、圧延負荷が過大となり、また、減面率を70%超としても得られる組織改善効果は大きくないからである。
上記条件での仕上げ圧延後、冷却速度を0.5℃/s以下として徐冷する。冷却速度が0.5℃を超えると、セメンタイトの球状化が進行せず、アスペクト比が2以下であるセメンタイトの割合を70%以上とすることができない。また、冷却過程にベイナイトが生成し、強度が過度に上昇し、冷間鍛造性を害する。好ましい冷却速度は0.3℃/s未満である。一方、冷却速度が小さすぎると冷却に長時間を要し、生産性に不利になるので、冷却速度は0.005℃/s以上とすることが好ましい。
上記徐冷は少なくとも500℃まで継続する。徐冷停止温度が500℃より高いと、冷却速度にもよるがセメンタイトの球状化が十分でない場合が生ずる。一方、徐冷を500℃未満の領域まで継続しても、セメンタイトの球状化のさらなる向上効果は認められず、かえって冷却時間が長くなり、生産性を害する。
(実施例1)
表1に化学組成を示す鋼(SUJ2相当組成)を、真空熔解炉にて溶製し、これを100kgの試験鋼塊とした。試験鋼塊のArl点はフオーマスター試験によって求めた結果764℃であった。得られた鋼塊を表2に示す仕上げ圧延条件で外径が60mmの棒鋼に熱間圧延し、さらに同表に示す条件で徐冷して製品とした。
表1に化学組成を示す鋼(SUJ2相当組成)を、真空熔解炉にて溶製し、これを100kgの試験鋼塊とした。試験鋼塊のArl点はフオーマスター試験によって求めた結果764℃であった。得られた鋼塊を表2に示す仕上げ圧延条件で外径が60mmの棒鋼に熱間圧延し、さらに同表に示す条件で徐冷して製品とした。
得られた製品棒鋼から図1に示す直径15mm、高さ22.5mmのタブレットを圧延方向に一致するように切り出して冷間鍛造試験片とした。得られた試験片について圧縮率を種々に変化させて、ひとつの圧縮率条件あたり各10個の圧縮試験を行い、割れの有無によつて冷間鍛造性の良否を判別した。典型的なわれの発生状況は図1に示す。各圧縮率での割れ発生率と圧縮率との関係をグラフにプロットし、試験片の50%(10個中5個)が割れる圧縮率(%)をもって鍛造性評価値とした。この値は大きいほど鍛造性が良い。
また、上記製品棒鋼について組織観察を行った。組織観察は、製品棒鋼から試験片を切り出し、圧延方向と直角な方向の面を研磨後、ピラクールまたはナイタールで腐食した後、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により組織観察を行った。組織観察においては、製品を構成する主組織を特定するとともに、セメンタイトのアスペクト比(長径/短径)を求めて球状化率を算出した。
さらに、得られた製品棒鋼に対し950℃で30分保持後に油焼入れを施し、180℃で2時間の焼戻しを行い、切削およびラッピング仕上げにて、直径60mm、高さ5mmの円盤型の転動疲労試験片を作成して、転動疲労試験を行った。この転動疲労試験には森式スラスト型転動疲労試験機を用いて、ヘルツ最大接触応力:5260MPa、繰り返し応力数:30Hz、潤滑油:♯68タービン油の条件で行った。その試験結果をワイブル分布に従うものとして確率紙上にまとめてB10寿命を求めた。実験結果を表3にまとめて示す。
熱間圧延条件が適当な本発明例(処理条件2,6〜10,12)では、全セメンタイトのうちのアスペクト比が2以下のセメンタイトの比率が70%以上となっており、球状化炭化物組織が得られていることがわかる。そして、これらの発明例においては、冷間鍛造性も高く、疲労特性にも優れた鋼材が得られている。しかし、本発明の規定外の圧延条件による処理条件1,4の場合は、パーライトと粗大セメンタイトの組織であり、冷間鍛造性は急激に低下し疲労特性が顕著に低下している。また、処理条件3の場合は、冷却速度が大きいためにマルテンサイトが混在した組織となり、鍛造性が低い。また、処理条件5の場合は、徐冷停止温度が高いためベイナイトが混在した組織となり、鍛造性、疲労特性が劣る。さらに、処理条件11の場合は、徐冷を600℃の高温で停止し、さらにその後1℃/s以上で冷却してしたため、セメンタイトの球状化率が低く鍛造性も悪い。これらの結果から、仕上げ圧延温度域と冷却速度が適正値にあるときにアスペクト比2以下のセメンタイトが70%以上である球状化炭化物組織となり、優れた冷間鍛造性および優れた疲労特性を有することが確認できた。
(実施例2)
表4に示す8種類の鋼材を真空溶解炉で溶製し100kg鋼塊とした。これらの鋼のAr1点はフォーマスター試験によって求められ、表4に併せて示す。得られた鋼塊に対し熱間圧延を行い、(Arl−50℃)〜(Arl+50℃)となる温度範囲で20%の減面率を加える仕上圧延を行って直径が60mmの棒鋼に仕上げ、続いて冷却速度0.05℃/sで500℃以下まで徐冷して製品とした。得られた製品に対し実施例1と同様の評価を行った。評価結果は表5に示す。
表4に示す8種類の鋼材を真空溶解炉で溶製し100kg鋼塊とした。これらの鋼のAr1点はフォーマスター試験によって求められ、表4に併せて示す。得られた鋼塊に対し熱間圧延を行い、(Arl−50℃)〜(Arl+50℃)となる温度範囲で20%の減面率を加える仕上圧延を行って直径が60mmの棒鋼に仕上げ、続いて冷却速度0.05℃/sで500℃以下まで徐冷して製品とした。得られた製品に対し実施例1と同様の評価を行った。評価結果は表5に示す。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.6〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、Si:0.05〜1.2%、Cr:0.5〜2.5%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、残部:鉄および不可避的不純物からなる鋼組成を有し、かつセメンタイトのうちアスペクト比(長径/短径)が2以下であるものの割合が70%以上であることを特徴とする熱間圧延ままで球状化炭化物組織を有する軸受け用線材・棒鋼。
- 鋼組成は、さらに、質量%で、Al:0.01〜0.03%、Cu:0.2%以下、Ni:0.2%以下及びMo:0.1%以下から選んだ1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の熱間圧延ままで球状化炭化物組織を有する軸受け用線材・棒鋼。
- 質量%で、C:0.6〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、Si:0.05〜1.2%、Cr:0.5〜2.5%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、残部:鉄および不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に対し、熱間圧延の仕上圧延を該鋼素材の(Ar1−50℃)〜(Ar1+50℃)の温度域で減面率が20%以上となるように行い、直ちに冷却速度0.5℃/s以下で、500℃以下まで冷却することを特徴とする、熱間圧延ままで球状化炭化物組織を有する軸受け用線材・棒鋼の製造方法。
- 鋼素材は、さらに、質量%で、Al:0.01〜0.03%、Cu:0.2%以下、Ni:0.2%以下及びMo:0.1%以下から選んだ1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項3記載の熱間圧延ままで球状化炭化物組織を有する軸受け用線材・棒鋼の製造方法。
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