JP2023080749A - 転動部品及び転がり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】残留オーステナイトの分解に伴う寸法変化及び表面からの水素侵入に伴う水素脆性の発生を抑制可能な水素利用機器用の転動部品を提供する。【解決手段】転動部品は、表面を有しており、鋼製である。転動部品は、表面からの深さが20μmまでの領域である表層部を備えている。転動部品は、水素利用機器用である。鋼は、0.70質量パーセント以上1.10質量パーセント以下の炭素と、0.15質量パーセント以上0.35質量パーセント以下のシリコンと、0.30質量パーセント以上0.60質量パーセント以下のマンガンと、1.30質量パーセント以上1.60質量パーセント以下のクロムと、0.01質量パーセント以上0.50質量パーセント以下のモリブデンと、0.01質量パーセント以上0.50質量パーセント以下のバナジウムとを含有するとともに、残部が鉄及び不可避不純物からなる。表層部における鋼中の窒素濃度は、0.2質量パーセント以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、転動部品及び転がり軸受に関する。より特定的には、本発明は、水素利用機器用の転動部品及び転がり軸受に関する。
特許文献1(特許第3990212号公報)には、転動部品が記載されている。特許文献1に記載の転動部品は、JIS規格に定められている高炭素クロム軸受鋼であるSUJ2製である。特許文献1に記載の軸受部品は、浸窒処理、焼入れ及び焼戻しが行われることにより形成されている。
特許第3990212号公報
しかしながら、特許文献1に記載の転動部品は、水素利用機器に用いられる場合、すなわち、水素に曝されている環境下において、水素脆性に起因して接触面に早期剥離が生じてしまうおそれがある。また、特許文献1に記載の転動部品は、耐圧痕形成能が不十分となるおそれがある。
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本発明は、表面からの水素侵入に伴う水素脆性の発生を抑制可能であり、耐圧痕形成能が改善された水素利用機器用の転動部品を提供するものである。
本発明に係る転動部品は、表面を有し、鋼製である。表面からの深さが20μmまでの領域である表層部を備える。転動部品は、水素利用機器用である。鋼は、0.70質量パーセント以上1.10質量パーセント以下の炭素と、0.15質量パーセント以上0.35質量パーセント以下のシリコンと、0.30質量パーセント以上0.60質量パーセント以下のマンガンと、1.30質量パーセント以上1.60質量パーセント以下のクロムとを含有している。表層部における鋼中には、クロム又はバナジウムを主成分とする析出物が析出している。表面からの距離が50μmの位置での圧縮残留応力は、80MPa以上である。
上記の転動部品では、鋼が、0.01質量パーセント以上0.50質量パーセント以下のバナジウムと、0.01質量パーセント以上0.5質量パーセント以上のモリブデンとをさらに含有していてもよい。
上記の転動部品では、鋼が、0.90質量パーセント以上1.10質量パーセント以下の炭素と、0.20質量パーセント以上0.30質量パーセント以下のシリコンと、0.40質量パーセント以上0.50質量パーセント以下のマンガンと、1.40質量パーセント以上1.60質量パーセント以下のクロムと、0.10質量パーセント以上0.30質量パーセント以下のモリブデンと、0.20質量パーセント以上0.30質量パーセント以下のバナジウムとを含有するとともに、残部が鉄及び不可避不純物からなっていてもよい。
上記の転動部品では、析出物の最大粒径が、2.0μm以下であってもよい。上記の転動部品では、析出物の平均面積率が、1.0パーセント以上であってもよい。上記の転動部品では、表面からの距離が50μmの位置での鋼の硬さが、64HRC以上であってもよい。上記の転動部品では、表面からの距離が50μmの位置での鋼中の残留オーステナイト量が、25体積パーセント未満であってもよい。
上記の転動部品では、表層部における鋼中の窒素濃度が、0.2質量パーセント以上であってもよい。上記の転動部品では、表層部における鋼中の上位面積率50パーセントでのマルテンサイトブロック粒の平均粒径が、1.5μm以下である。
本発明に係る転がり軸受は、内輪と、外輪と、転動体とを備える。内輪、外輪及び転動体の少なくともいずれかは、上記の転動部品である。転がり軸受は、水素利用機器用である。
本発明の転動部品及び転がり軸受によると、表面からの水素侵入に伴う水素脆性の発生を抑制可能であるとともに、耐圧痕形成能を改善可能である。
転がり軸受100の断面図である。 ボール弁200の拡大断面図である。 水素循環ポンプ300の断面図である。 転がり軸受100の製造方法を示す工程図である。 転がり軸受100の製造方法の変形例を示す工程図である。 サンプル1の軌道面付近における断面のEBSDによる相マップである。 サンプル2の軌道面付近における断面のEBSDによる相マップである。 サンプル3の軌道面付近における断面のEBSDによる相マップである。 サンプル4の軌道面付近における断面のEBSDによる相マップである。 サンプル1からサンプル4の軌道面からの深さが20μmまでの領域における鋼中のマルテンサイトブロック粒の平均粒径を示すグラフである。
本発明の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
以下に、実施形態に係る転がり軸受(以下「転がり軸受100」とする)の構成を説明する。転がり軸受100は、例えば、深溝玉軸受である。但し、転がり軸受100は、これに限られるものではない。転がり軸受100は、例えば、アンギュラ玉軸受、円筒ころ軸受、円錐ころ軸受又は自動調心ころ軸受であってもよい。
転がり軸受100は、水素利用機器用である。水素利用機器は、例えば水素ステーション向けのボール弁又は圧縮機である。なお、圧縮機の方式は特に限定されない。例えば、圧縮機は、往復式(レシプロ)、回転式(スクリュ)、遠心式又は軸流式のいずれであってもよい。水素利用機器は、燃料電池車向けの高圧水素減圧弁又は水素循環ポンプであってもよい。転がり軸受100は、水素に曝される用途に用いられるものであればよい。
図1は、転がり軸受100の断面図である。図1に示されるように、転がり軸受100は、中心軸Aを有している。図1には、中心軸Aに平行であり、かつ中心軸Aを通る断面が示されている。転がり軸受100は、内輪10と、外輪20と、複数の転動体30と、保持器40とを有している。内輪10及び外輪20は、リング状である。転動体30は、玉である(球状である)。
中心軸Aに沿う方向を、軸方向とする。中心軸Aを通り、かつ中心軸Aに直交する方向を、径方向とする。中心軸Aを中心とする円周に沿う方向を、周方向とする。
内輪10は、第1端面10aと、第2端面10bと、内周面10cと、外周面10dとを有している。第1端面10a、第2端面10b、内周面10c及び外周面10dは、内輪10の表面を構成している。第1端面10a及び第2端面10bは、軸方向における内輪10の端面である。第2端面10bは、第1端面10aの反対面である。
内周面10cは、周方向に沿って延在している。内周面10cは、中心軸A側を向いている。図示されていないが、内輪10は、内周面10cにおいて、軸に嵌め合わされる。内周面10cは、軸方向における一方端において第1端面10aに連なっており、軸方向における他方端において第2端面10bに連なっている。
外周面10dは、周方向に沿って延在している。外周面10dは、中心軸Aとは反対側を向いている。つまり、外周面10dは、径方向における内周面10cの反対面である。外周面10dは、軸方向における一方端において第1端面10aに連なっており、軸方向における他方端において第2端面10bに連なっている。
外周面10dは、軌道面10daを有している。軌道面10daは、転動体30に接触する外周面10dの部分である。軌道面10daは、周方向に沿って延在している。軌道面10daは、軸方向における外周面10dの中央部に位置している。断面視において、軌道面10daは、内周面10c側に向かって窪む部分円弧形状である。
外輪20は、第1端面20aと、第2端面20bと、内周面20cと、外周面20dとを有している。第1端面20a、第2端面20b、内周面20c及び外周面20dは、外輪20の表面を構成している。外輪20は、内周面20cが外周面10dと間隔を空けて対向している状態で、内輪10の径方向外側に配置されている。
第1端面20a及び第2端面20bは、軸方向における外輪20の端面である。第2端面20bは、第1端面20aの反対面である。
内周面20cは、周方向に沿って延在している。内周面20cは、中心軸A側を向いている。内周面20cは、軸方向における一方端において第1端面20aに連なっており、軸方向における他方端において第2端面20bに連なっている。
内周面20cは、軌道面20caを有している。軌道面20caは、転動体30に接触する内周面20cの部分である。軌道面20caは、周方向に沿って延在している。軌道面20caは、軸方向における内周面20cの中央部に位置している。断面視において、軌道面20caは、外周面20d側に向かって窪む部分円弧形状である。
外周面20dは、周方向に沿って延在している。外周面20dは、中心軸Aとは反対側を向いている。つまり、外周面20dは、径方向における内周面20cの反対面である。図示されていないが、外輪20は、外周面20dにおいてハウジングに嵌め合わされる。外周面20dは、軸方向における一方端において第1端面20aに連なっており、軸方向における他方端において第2端面20bに連なっている。
転動体30は、外周面10dと内周面20cとの間、より具体的には、軌道面10daと軌道面20caとの間に配置されている。複数の転動体30は、周方向に沿って並んでいる。転動体30は、表面30aを有している。保持器40は、複数の転動体30を保持している。保持器40は、隣り合う2つの転動体30の間の周方向における距離が一定範囲内となるように、複数の転動体30を保持している。
内輪10、外輪20及び転動体30は、鋼製である。より具体的には、内輪10、外輪20及び転動体30は、表1に示される組成(「第1組成」とする)の鋼により形成されている。
Figure 2023080749000002
炭素は、焼入れ後における転動部品(内輪10、外輪20及び転動体30)の表面における鋼の硬さに影響を与える。鋼中の炭素の含有量が0.70質量パーセント未満である場合、転動部品の表面において、十分な硬さを確保することが困難である。鋼中の炭素の含有量が0.70質量パーセント未満である場合、浸炭処理等により転動部品の表面における炭素含有量を補う必要があり、生産効率の低下及び製造コスト増加の要因となる。他方で、鋼中の炭素の含有量が1.10質量パーセントを超える場合、焼入れ時の割れ(焼割れ)が発生するおそれがある。そのため、第1組成の鋼では、炭素の含有量が0.70質量パーセント以上1.10質量パーセント以下とされている。
シリコンは、鋼の精錬時の脱酸及び浸窒処理前の加工性確保のために加えられている。鋼中のシリコンの含有量が0.15質量パーセント未満である場合、焼戻し軟化抵抗が不十分となる。その結果、焼入れ後の焼戻し又は転がり軸受100の使用時の温度上昇により、転動部品の表面における硬さが低下するおそれがある。また、この場合、転動部品を加工する際の加工性が不十分となる。
鋼中のシリコンの含有量が0.35質量パーセントを超える場合、鋼が硬くなり過ぎ、転動部品を加工する際の加工性がかえって低下する。また、この場合、鋼の材料コストが上昇してしまう。そのため、第1組成の鋼では、シリコンの含有量が0.15質量パーセント以上0.35質量パーセント以下とされている。
マンガンは、鋼の焼入れ性及び硬さを確保するために加えられている。鋼中のマンガンの含有量が0.30質量パーセント未満である場合、鋼の焼入れ性を確保することが困難である。鋼中のマンガンの含有量が0.60質量パーセントを超える場合、不純物であるマンガン系の非金属介在物が増加してしまう。そのため、第1組成の鋼では、マンガンの含有量が0.30質量パーセント以上0.60質量パーセント以下とされている。
クロムは、鋼の焼入れ性の確保するため及び浸窒処理に伴って微細な析出物(窒化物、炭窒化物)を形成させるために加えられている。鋼中のクロムの含有量が1.30質量パーセント未満である場合、鋼の焼入れ性を確保すること及び微細な析出物を十分形成することが困難である。鋼中のクロムの含有量が1.60質量パーセントを超える場合、鋼の材料コストが上昇してしまう。そのため、第1組成の鋼では、クロムの含有量が1.30質量パーセント以上1.60質量パーセント以下とされている。
モリブデンは、鋼の焼入れ性を確保するため及び浸窒処理に伴って微細な析出物を形成させるために加えられている。モリブデンは、炭素に対して強い親和性があるため、浸窒処理の際に鋼中に未固溶炭化物として析出している。このモリブデンの未固溶炭化物が焼入れ時に析出核となるため、モリブデンは、焼入れ後の析出物の量を増加させる。
鋼中のモリブデンの含有量が0.01質量パーセント未満である場合、鋼の焼入れ性を確保すること及び微細な析出物を十分に形成することが困難である。鋼中のモリブデンの含有量が0.50質量パーセントを超える場合、鋼の材料コストが上昇してしまう。そのため、第1組成の鋼では、モリブデンの含有量が0.01質量パーセント以上0.50質量パーセント以下とされている。
バナジウムは、鋼の焼入れ性を確保するため及び浸窒処理に伴って微細な析出物を形成させるために加えられている。鋼中のバナジウムの含有量が0.01質量パーセント未満である場合、鋼の焼入れ性を確保すること及び微細な析出物を十分に形成することが困難である。鋼中のバナジウムの含有量が0.50質量パーセントを超える場合、鋼の材料コストが上昇してしまう。そのため、第1組成の鋼では、バナジウムの含有量が0.01質量パーセント以上0.50質量パーセント以下とされている。
内輪10、外輪20及び転動体30は、表2に示される組成(「第2組成」とする)の鋼により形成されていてもよい。内輪10、外輪20及び転動体30は、表3に示される組成(「第3組成」とする)の鋼により形成されていてもよい。内輪10、外輪20及び転動体30が第1組成又は第2組成の鋼により形成されている場合、後述する表層部50の鋼中に析出物がより微細に分散される。なお、内輪10、外輪20及び転動体30の全てが第1組成、第2組成又は第3組成の鋼により形成されている必要はなく、内輪10、外輪20及び転動体30の少なくともいずれかが第1組成、第2組成又は第3組成の鋼により形成されていればよい。
Figure 2023080749000003
Figure 2023080749000004
図1に示されるように、内輪10、外輪20及び転動体30は、表層部50を有している。内輪10では、内輪10の表面からの深さが20μmまでの領域が、表層部50である。外輪20では、外輪20の表面からの深さが20μmまでの領域が、表層部50である。転動体30では、表面30aからの深さが20μmまでの領域が表層部50である。表層部50は、浸窒処理により形成される。なお、内輪10では表層部50が少なくとも軌道面10daに形成されていればよく、外輪20では表層部50が軌道面20caに形成されていればよい。
表層部50における鋼中には、析出物が析出している。析出物は、クロム又はバナジウムを主成分としている。析出物は、クロム又はバナジウムを主成分とする窒化物である。析出物は、クロム又はバナジウムを主成分とする炭窒化物であってもよい。析出物は、上記の窒化物及び炭窒化物が混在していてもよい。
また、表層部50は、内輪10の表面、外輪20の表面及び転動体30の表面の全てに形成されている必要はなく、内輪10の表面、外輪20の表面及び転動体30の表面の少なくともいずれかに形成されていればよい。
クロム(バナジウム)を主成分とする窒化物は、クロム(バナジウム)の窒化物又は当該窒化物中のクロム(バナジウム)のサイトの一部がクロム(バナジウム)以外の合金元素により置換されているものである。クロム(バナジウム)を主成分とする炭窒化物は、クロム(バナジウム)の炭化物中の炭素のサイトの一部が窒素により置換されているものである。クロム(バナジウム)を主成分とする炭窒化物のクロム(バナジウム)のサイトは、クロム(バナジウム)以外の合金元素により置換されていてもよい。
内輪10の表面からの深さが50μmとなる位置、外輪20の表面からの深さが50μmとなる位置及び転動体30の表面(表面30a)からの深さが50μmとなる位置における圧縮残留応力は、80MPa以上である。内輪10の表面からの深さが50μmとなる位置及び外輪20の表面からの深さが50μmとなる位置における圧縮残留応力は、例えば周方向において測定される。上記の圧縮残留応力は、X線回折法により測定される。
析出物の最大粒径は、好ましくは、2.0μm以下である。析出物の平均面積率は、好ましくは、1.0パーセント以上である。析出物の最大粒径が2.0μm以下であり、析出物の平均面積率が1.0パーセント以上である場合には、析出物の微細分散により、内輪10の表面、外輪20の表面及び転動体30の表面における耐摩耗性が改善される。析出物の最大粒径は、さらに好ましくは、1.0μm以下である。析出物の平均面積率は、さらに好ましくは、2.0パーセント以上である。
析出物の平均面積率は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM:Field Emission Scanning Electron Microscope)を用いて倍率5000倍で表層部50の断面画像を取得するとともに、当該断面画像を二値化し、二値化された当該断面画像に対して画像処理を行うことにより算出される。表層部50の断面画像は、3視野以上で取得され、平均面積率は、それら複数の断面画像から得られた析出物の面積率の平均値である。
各々の析出物の粒径は、上記と同様の方法を用いて各々の析出物の面積を取得するとともに、当該面積をπで除した値の平方根に2を乗じることにより得られる。そして、得られた析出物の粒径のうちで最大のものが、析出物の粒径の最大値とされる。
表層部50における鋼中の窒素濃度は、0.2質量パーセント以上であることが好ましい。表層部50における鋼中の窒素濃度は、電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)により測定される。なお、表層部50における鋼中の窒素濃度は、例えば0.5質量パーセント以下である。
内輪10の表面からの深さが50μmとなる位置、外輪20の表面からの深さが50μmとなる位置及び転動体30の表面(表面30a)からの深さが50μmとなる位置における鋼の硬さは、64HRC以上であることが好ましい。
内輪10の表面からの深さが50μmとなる位置、外輪20の表面からの深さが50μmとなる位置及び転動体30の表面(表面30a)からの深さが50μmとなる位置における鋼の硬さは、JIS規格(JIS Z 2245:2016)に規定されているロックウェル硬さ試験法により測定される。
表層部50における鋼は、マルテンサイトブロック粒を有している。隣り合う2つのマルテンサイトブロック粒は、粒界において、結晶方位の差が15°以上になっている。このことを別の観点から言えば、結晶方位にずれがある箇所が存在していても、結晶方位の差が15°未満である場合、当該箇所は、マルテンサイトブロック粒の結晶粒界とは見做されない。マルテンサイトブロック粒の粒界は、EBSD(Electron Back Scattered Diffraction)法により決定される。
表層部50における鋼は、上位面積率が50パーセントでのマルテンサイトブロック粒の平均粒径が1.5μm以下であることが好ましい。表層部50の鋼中において、上位面積率50パーセントでの平均粒径が1.5μm以下となるようにマルテンサイトブロック粒が微細化されている場合には、表層部50の高靭性化により、内輪10、外輪20及び転動体30の表面近傍における剪断抵抗が改善される。
上位面積率が50パーセントでのマルテンサイトブロック粒の平均粒径は、以下の方法により測定される。第1に、表層部50を含む断面において、断面観察が行われる。この際、EBSD法により観察視野に含まれているマルテンサイトブロック粒が特定される。この観察視野は、倍率1500倍において観察される領域である。第2に、EBSD法により得られた結晶方位データから、観察視野に含まれているマルテンサイトブロック粒の各々の面積が解析される。
第3に、観察視野に含まれているマルテンサイトブロック粒の各々の面積を、面積が大きいものから順に加算していく。この加算は、観察視野に含まれているマルテンサイトブロック粒の合計面積の50パーセントに達するまで行われる。上記の加算の対象になったマルテンサイトブロック粒の各々について、円相当径が算出される。この円相当径は、マルテンサイトブロック粒の面積をπ/4で除した値の平方根である。上記の加算の対象になったマルテンサイトブロック粒の円相当径の平均値が、上位面積率が50パーセントでのマルテンサイトブロック粒の平均粒径と見做される。
内輪10の表面からの深さが50μmの位置、外輪20の表面からの深さが50μmの位置及び転動体30の表面(表面30a)からの深さが50μmの位置における鋼中の残留オーステナイト量は、25体積パーセント未満であることが好ましい。この場合には、残留オーステナイトの分解に伴う内輪10、外輪20及び転動体30の寸法の経時変化が抑制される。内輪10の表面からの深さが50μmの位置、外輪20の表面からの深さが50μmの位置及び転動体30の表面(表面30a)からの深さが50μmの位置における鋼中の残留オーステナイト量は、さらに好ましくは、20体積パーセント未満である。
内輪10の表面からの深さが50μmの位置、外輪20の表面からの深さが50μmの位置及び転動体30の表面(表面30a)からの深さが50μmの位置における鋼中の残留オーステナイト量は、X線回折法により測定される。より具体的には、内輪10の表面からの深さが50μmの位置、外輪20の表面からの深さが50μmの位置及び転動体30の表面(表面30a)からの深さが50μmの位置における鋼中の残留オーステナイト量は、株式会社リガク製のMSF-3Mを用いて測定される。
上記においては、実施形態に係る転動部材が転がり軸受100の構成要素である場合について説明をしたが、実施形態に係る転動部材は、滑り軸受であってもよい。
<実施形態に係る転動部材の適用例>
実施形態に係る転動部材は、ボール弁200に用いられる。図2は、ボール弁200の拡大断面図である。図2に示されるように、ボール弁200は、ボディ210と、シートリテーナ220と、ボール230と、ステム231及びステム232と、滑り軸受240とを有している。
シートリテーナ220は、ボディ210の内部に配置されている。シートリテーナ220には、内部空間220aと、流路220b及び流路220cとが形成されている。流路220b及び流路220cは、内部空間220aに接続されている。ボール230は、内部空間220aに配置されている。内部空間220aの壁面は、シール部220aaにおいてボール230の表面に接触している。
ステム231及びステム232は、それぞれ、ボール230の上端及び下端に接続されている。ステム231及びステム232が中心軸回りに回転することにより、ボール230に形成されている貫通穴(図示せず)を介して、流路220b及び流路220cが接続される。ステム231及びステム232は、ボディ210及びシートリテーナ220に形成されている貫通穴に通されている。なお、流路220b、流路220c及びボール230に形成されている貫通穴には、水素が流れる。
滑り軸受240は、筒状になっており、外周面においてボディ210に取り付けられている。滑り軸受240は、ステム231(ステム232)を回転可能に軸支している。滑り軸受240は、実施形態に係る転動部材である。すなわち、滑り軸受240は、第1組成、第2組成又は第3組成の鋼製であり、かつ接触面に表層部50が形成されている。
<実施形態に係る転がり軸受の適用例>
図3は、水素循環ポンプ300の断面図である。水素循環ポンプ300は、モータハウジング310と、ポンプハウジング320と、回転軸331及び回転軸332と、モータステータ341及びモータロータ342と、ギア351及びギア352と、ロータ361及びロータ362と、転がり軸受371、転がり軸受372、転がり軸受373、転がり軸受374、転がり軸受375及び転がり軸受376とを有している。
モータハウジング310は、ポンプハウジング320に取り付けられている。回転軸331の一方端側はモータハウジング310内に配置されており、回転軸331の他方端側はポンプハウジング320内に配置されている。回転軸331の一方端及び他方端は、それぞれ、モータハウジング310内に配置されている転がり軸受371及びポンプハウジング320内に配置されている転がり軸受372により回転可能に軸支されている。回転軸331は、一方端と他方端との間において、ポンプハウジング320内に配置されている転がり軸受373及び転がり軸受374により回転可能に軸支されている。
回転軸332は、ポンプハウジング320内に配置されている。回転軸332の一方端は、ポンプハウジング320内に配置されている転がり軸受375により回転可能に軸支されている。回転軸332は、一方端から離れた位置において、ポンプハウジング320内に配置されている転がり軸受376により回転可能に軸支されている。
モータステータ341は、モータハウジング310内に配置されている。モータロータ342は、モータステータ341と対向するように回転軸331に取り付けられている。モータステータ341及びモータロータ342により、回転軸331は回転される。回転軸331及び回転軸332には、それぞれ、ギア351及びギア352が取り付けられている。ギア351及びギア352により、回転軸331の回転が、回転軸332に伝達される。なお、ギア351は転がり軸受373と転がり軸受374との間にあり、ギア352は転がり軸受375と転がり軸受376との間にある。
ポンプハウジング320内には、ポンプ室320aが形成されている。ポンプ室320a内には、ロータ361及びロータ362が配置されている。ロータ361及びロータ362は、それぞれ、回転軸331及び回転軸332に取り付けられている。回転軸331の回転に伴ってロータ361が回転するとともに、回転軸332の回転に伴ってロータ362が回転することにより、ポンプ室320a内に水素が吸入され、ポンプ室320a内から水素が吐出される。
転がり軸受371、転がり軸受372、転がり軸受373及び転がり軸受375は、深溝玉軸受である。転がり軸受374及び転がり軸受375は、複列アンギュラ玉軸受である。転がり軸受371、転がり軸受372、転がり軸受373、転がり軸受374、転がり軸受375及び転がり軸受376は、実施形態に係る転がり軸受である。すなわち、転がり軸受371、転がり軸受372、転がり軸受373、転がり軸受374、転がり軸受375及び転がり軸受376では、軌道部材及び転動体が第1組成、第2組成又は第3組成の鋼製であり、接触面に表層部50が形成されている。
図4は、転がり軸受100の製造方法を示す工程図である。図4に示されるように、転がり軸受100の製造方法は、準備工程S1と、浸窒処理工程S2と、第1焼入れ工程S3と、第1焼戻し工程S4と、第2焼入れ工程S5と、第2焼戻し工程S6と、後処理工程S7と、組み立て工程S8とを有している。なお、転がり軸受100の製造方法は、第1焼戻し工程S4及び第2焼入れ工程S5を有していなくてもよい。
準備工程S1においては、加工対象部材が準備される。加工対象部材としては、内輪10及び外輪20を形成しようとする場合はリング状の部材が準備され、転動体30を形成しようとする場合は球状の部材が準備される。この加工対象部材は、第1組成又は第2組成の鋼により形成されている。
浸窒処理工程S2においては、加工対象部材の表面に対する浸窒処理が行われる。この浸窒処理は、窒素源となるガス(例えばアンモニアガス)を含む雰囲気ガス中において、加工対象部材をA変態点以上の温度で所定時間保持することにより行われる。第1焼入れ工程S3においては、加工対象部材に対する焼入れが行われる。この焼入れは、加工対象部材をA変態点以上の温度で所定時間保持した後に加工対象部材をMs変態点以下の温度まで冷却することにより行われる。
第1焼戻し工程S4においては、加工対象部材に対する焼戻しが行われる。この焼戻しは、加工対象部材をA変態点未満の温度で所定時間保持することにより行われる。
第2焼入れ工程S5においては、加工対象部材に対する焼入れが行われる。この焼入れは、加工対象部材をA変態点以上の温度で所定時間保持した後に加工対象部材をMs変態点以下の温度まで冷却することにより行われる。
第2焼戻し工程S6においては、加工対象部材に対する焼戻しが行われる。この焼戻しは、加工対象部材をA変態点未満の温度で所定時間加熱保持することにより行われる。
後処理工程S7においては、加工対象部材に対する仕上げ加工(研削・研磨)及び洗浄が行われる。これにより、内輪10、外輪20及び転動体30が形成される。組み立て工程S8においては、内輪10、外輪20及び転動体30が、保持器40とともに組み立てられる。以上により、図1に示される構造の転がり軸受100が製造される。
第2焼入れ工程S5における保持温度は、浸窒処理工程S2及び第1焼入れ工程S3における保持温度よりも低い。浸窒処理工程S2及び第1焼入れ工程S3における保持温度は、例えば850℃である。第2焼入れ工程S5における保持温度は、例えば810℃である。第1焼戻し工程S4及び第2焼戻し工程S6における保持温度及び保持時間は、例えば、それぞれ180℃及び2時間である。
図5は、転がり軸受100の製造方法の変形例を示す工程図である。図5に示されるように、転がり軸受100の製造方法は、第1焼戻し工程S4を有していなくてもよく、第2焼入れ工程S5に代えてサブゼロ処理工程S9を有していてもよい。サブゼロ処理工程S9においては、加工対象部材を例えば-100℃以上室温以下の温度まで冷却することにより行われる。
(実施形態に係る転がり軸受の効果)
以下に、転がり軸受100の効果を説明する。
転がり軸受100では、内輪10、外輪20及び転動体30が第1組成、第2組成又は第3組成の鋼で形成されているため、浸窒処理により形成された表層部50における鋼中に微細な析出物が析出する。表層部50中の微細な析出物の近傍が水素のトラップサイトになるため、表層部50における水素侵入量が低下する。そのため、転がり軸受100においては、水素脆性に起因した早期剥離損傷が生じにくい。
転がり軸受100では、内輪10の表面からの深さが50μmとなる位置、外輪20の表面からの深さが50μmとなる位置及び転動体30の表面(表面30a)からの深さが50μmとなる位置における圧縮残留応力が80MPa以上になっている。この圧縮残留応力により、内輪10の表面、外輪20の表面及び転動体30の表面(表面30a)における圧痕形成が抑制されるとともに、圧痕を起点とする亀裂の進展が抑制される。このように、転がり軸受100によると、表面からの水素侵入に伴う水素脆性の発生を抑制可能であるとともに、耐圧痕形成能を改善可能である。
(実施例)
軌道輪のサンプルとして、サンプル1からサンプル4が準備された。サンプル1及びサンプル2は表4に示される組成の鋼により形成され、サンプル3及びサンプル4は表5に示される組成の鋼により形成された。表4に示される鋼の組成は、第1組成(第2組成)に対応しており、表5に示される組成はJIS規格に定められているSUJ2の組成(第3組成)に対応している。
Figure 2023080749000005
Figure 2023080749000006
サンプル1に対しては、浸窒処理工程S2、第1焼入れ工程S3、サブゼロ処理工程S9及び第2焼戻し工程S6が行われた。サンプル2に対しては、浸窒処理工程S2、第1焼入れ工程S3、第1焼戻し工程S4、第2焼入れ工程S5及び第2焼戻し工程S6が行われた。サンプル3に対しては、浸窒処理工程S2、第1焼入れ工程S3及び第2焼戻し工程S6が行われた。サンプル4に対しては、第1焼入れ工程S3及び第1焼戻し工程S4が行われた。
表6に示されるように、サンプル1からサンプル3では、軌道面近傍における(軌道面からの深さが50μmとなる位置における)周方向の圧縮残留応力が80MPa以上になっていた。他方で、サンプル4では、軌道面近傍における(軌道面からの深さが50μmとなる位置における)周方向の圧縮残留応力が30MPa以下になっていた。サンプル1からサンプル3では、軌道面の耐圧痕形成能が、サンプル4と比較して優れていた。この比較から、軌道面近傍における圧縮残留応力が80MPa以上とされることにより軌道面の耐圧痕形成能が改善されることが明らかになった。
表6に示されるように、サンプル1及びサンプル2では、軌道面からの深さが20μmまでの領域における鋼中の窒素濃度が、0.2質量パーセント以上0.5質量パーセント以下であった。サンプル3では、軌道面からの深さが20μmまでの領域における鋼中の窒素濃度が、0.3質量パーセント以上0.5質量パーセント以下であった。サンプル4では、軌道面からの深さが20μmまでの領域における鋼中に、窒素が含まれていなかった。
表6に示されるように、サンプル1からサンプル3では、軌道面からの深さが20μmまでの領域に、クロム又はバナジウムを主成分とする析出物が微細(最大粒径が2.0μm以下)かつ高密度(平均面積率が1.0パーセント以上)に析出していた。サンプル4では、軌道面からの深さが20μmまでの領域に、クロム又はバナジウムを主成分とする析出物が析出していなかった。
表6に示されるように、サンプル1及びサンプル2では、軌道面からの深さが20μmまでの領域に、クロム又はバナジウムを主成分とする析出物が特に微細かつ高密度(最大粒径が1.0μm以下かつ平均面積率が2.0パーセント以上)に分散していた。これに伴い、サンプル1及びサンプル2では、軌道面からの深さが50μmとなる位置における鋼の硬さが64HRC以上になっており、軌道面の耐圧痕形成能が特に良好であった。
表6に示されるように、サンプル1では軌道面からの深さが50μmとなる位置における鋼中の残留オーステナイト量が20体積パーセント未満になっており、サンプル2では軌道面からの深さが50μmとなる位置における鋼中の残留オーステナイト量が25体積パーセント未満となっていた。サンプル3では軌道面からの深さが50μmとなる位置における鋼中の残留オーステナイト量が25体積パーセントを超えており、サンプル4では軌道面からの深さが50μmとなる位置における鋼中の残留オーステナイト量が20体積パーセント未満となっていた。このことから、サンプル1及びサンプル2では、軌道面近傍における鋼中の残留オーステナイト量が20体積パーセント未満又は25体積パーセント未満になっていることにより残留オーステナイトの分解に伴う寸法の経時変化が抑制されていることが明らかになった。
Figure 2023080749000007
図6は、サンプル1の軌道面付近における断面のEBSDによる相マップである。図7は、サンプル2の軌道面付近における断面のEBSDによる相マップである。図8は、サンプル3の軌道面付近における断面のEBSDによる相マップである。図9は、サンプル4の軌道面付近における断面のEBSDによる相マップである。図6から図9中では、マルテンサイトブロック粒が、白色の領域により示されている。
図10は、サンプル1からサンプル4の軌道面からの深さが20μmまでの領域における鋼中のマルテンサイトブロック粒の平均粒径を示すグラフである。図10の縦軸は、軌道面からの深さが20μmまでの領域における鋼中のマルテンサイトブロック粒の平均粒径(単位:μm)である。図10及び表7に示されるように、サンプル1及びサンプル2では、軌道面からの深さが20μmまでの領域における鋼中の上位面積率50パーセントでのマルテンサイトブロック粒の平均粒径が1.5μm以下になっていた。
他方で、サンプル3では、軌道面からの深さが20μmまでの領域における鋼中の上位面積率50パーセントでのマルテンサイトブロック粒の平均粒径が1.5μmを超えていた。このことから、サンプル1及びサンプル2では、軌道面からの深さが20μmまでの領域において、鋼中にクロム又はバナジウムを主成分とする析出物が微細かつ高密度に析出している結果、マルテンサイトブロック粒が微細化され、軌道面近傍における剪断抵抗が改善されること、ひいては軌道面の耐久性が改善されることが明らかになった。
Figure 2023080749000008
<水素侵入特性>
サンプル1からサンプル4の表層部への水素侵入特性を、以下の方法により評価した。この評価では、第1に、上記の使用前のサンプル1からサンプル4を室温から400℃まで加熱することにより、使用前のサンプル1からサンプル4からの水素放出量が測定された。第2に、水素環境下で50時間使用された後のサンプル1からサンプル4を室温から400°まで加熱することにより、水素環境下で50時間使用された後のサンプル1からサンプル4の軌道部材からの水素放出量が測定された。
表8に示されるように、サンプル4では、使用前後での水素放出量の比(すなわち、使用後の水素放出量を使用前の水素放出量で除した値)が、3.0以上になっていた。他方で、サンプル1及びサンプル2では、使用前後での水素放出量の比が0.9以上1.2以下の範囲内にあった。サンプル3では、使用前後での水素放出量の比が1.3以上2.0以下の範囲内にあった。
Figure 2023080749000009
上記のとおり、サンプル1からサンプル3では軌道面からの深さが20μmまでの領域にクロム又はバナジウムを主成分とする析出物が析出している一方、サンプル4では軌道面からの深さが20μmまでの領域に、クロム又はバナジウムを主成分とする析出物が析出していなかった。この比較から、表層部50にクロム又はバナジウムを主成分とする析出物が析出することによりその周囲が水素のトラップサイトになること、すなわち、表層部50への水素侵入が抑制されて水素脆性に起因した早期剥離が抑制されることが明らかにされた。
以上のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上記の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上記の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
100 転がり軸受、10 内輪、10a 第1端面、10b 第2端面、10c 内周面、10d 外周面、10da 軌道面、20 外輪、20a 第1端面、20b 第2端面、20c 内周面、20ca 軌道面、20d 外周面、30 転動体、30a 表面、40 保持器、50 表層部、A 中心軸、S1 準備工程、S2 窒処理工程、S3 第1焼入れ工程、S4 第1焼戻し工程、S5 第2焼入れ工程、S6 第2焼戻し工程、S7 後処理工程、S8 組み立て工程、S9 サブゼロ処理工程。

Claims (10)

  1. 表面を有する鋼製の転動部品であって、
    前記表面からの深さが20μmまでの領域である表層部を備え、
    前記転動部品は、水素利用機器用であり、
    前記鋼は、0.70質量パーセント以上1.10質量パーセント以下の炭素と、0.15質量パーセント以上0.35質量パーセント以下のシリコンと、0.30質量パーセント以上0.60質量パーセント以下のマンガンと、1.30質量パーセント以上1.60質量パーセント以下のクロムとを含有しており、
    前記表層部における前記鋼中には、クロム又はバナジウムを主成分とする析出物が析出しており、
    前記表面からの距離が50μmの位置での圧縮残留応力は、80MPa以上である、転動部品。
  2. 前記鋼は、0.01質量パーセント以上0.50質量パーセント以下のバナジウムと、0.01質量パーセント以上0.50質量パーセント以上のモリブデンとをさらに含有している、請求項1に記載の転動部品。
  3. 前記鋼は、0.90質量パーセント以上1.10質量パーセント以下の炭素と、0.20質量パーセント以上0.30質量パーセント以下のシリコンと、0.40質量パーセント以上0.50質量パーセント以下のマンガンと、1.40質量パーセント以上1.60質量パーセント以下のクロムと、0.10質量パーセント以上0.30質量パーセント以下のモリブデンと、0.20質量パーセント以上0.30質量パーセント以下のバナジウムとを含有するとともに、残部が鉄及び不可避不純物からなる、請求項1又は請求項2に記載の転動部品。
  4. 前記析出物の最大粒径は、2.0μm以下である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の転動部品。
  5. 前記析出物の平均面積率は、1.0パーセント以上である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の転動部品。
  6. 前記表面からの距離が50μmの位置での前記鋼の硬さは、64HRC以上である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の転動部品。
  7. 前記表面からの距離が50μmの位置での前記鋼中の残留オーステナイト量は、25体積パーセント未満である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の転動部品。
  8. 前記表層部における前記鋼中の窒素濃度は、0.2質量パーセント以上である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の転動部品。
  9. 前記表層部における前記鋼中の上位面積率50パーセントでのマルテンサイトブロック粒の平均粒径は、1.5μm以下である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の転動部品。
  10. 転がり軸受であって、
    内輪と、
    外輪と、
    転動体とを備え、
    前記転がり軸受は、水素利用機器用であり、
    前記内輪、前記外輪及び前記転動体の少なくともいずれかは、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の前記転動部品である、転がり軸受。
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