JP5108754B2 - 水酸基含有アルケンの製造方法及び水酸基含有アルケン - Google Patents

水酸基含有アルケンの製造方法及び水酸基含有アルケン Download PDF

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Description

本発明は、水酸基含有アルケンの製造方法及び水酸基含有アルケンに関する。より詳しくは、水酸基含有アルケンの工業的な製造に好適に用いることができる水酸基含有アルケンの製造方法及び電子情報材料用重合体や機能性化学品用重合体の材料として好適な水酸基含有アルケンに関する。
水酸基含有アルケンは、例えば、高屈折率や耐熱性、耐候性等を備えた重合体を製造するための単量体として使用され、得られる重合体は、光学材料やレジスト材料をはじめとする電子情報材料や、塗料、接着剤、洗剤等の機能性材料等の各種化学品の製造原料となるほか、抗がん剤、抗ウイルス剤等の医薬品中間体等として用いることができるため、化学、医薬等の分野において有用な化合物である。
従来の水酸基含有アルケンの製造方法としては、ビニル化合物とアルデヒド化合物とを、第三級アミン化合物及び反応終了時において水層を形成するに足る水の存在下で反応させる製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、アクリレート化合物とアルデヒド化合物とを第三級アミン触媒及び水の存在下で反応させて、α−ヒドロキシメチルアクリレート化合物を製造するに当たり、該反応をアクリレート化合物、第三級アミン触媒及び水の三成分中の水のモル分率が5〜45%となる量の水の存在下に行う製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、これらの製造方法においては、反応工程において、β―ヒドロキシ飽和エステル化合物、及び、第三級アミン化合物がアクリレート化合物にマイケル付加した後、加水分解することにより生じる両性イオン化合物が副生成物として多く生成することから、これらの副生成物の生成を低減する等の工夫の余地があった。
また、第三級アミン化合物及び水の存在下に、アクリレート化合物とアルデヒド化合物とを反応させて、水酸基含有ビニル化合物を製造する際に、窒素含有非プロトン性溶媒を反応開始時に反応液が二層系を形成しないような量を反応液に添加して反応させる製造方法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、窒素含有非プロトン性溶媒を使用した場合には、用いる基質や溶媒によっては精製工程が複雑になり、また目的物である水酸基含有ビニル化合物が着色する場合もあることから、精製工程をより簡略化し、水酸基含有ビニル化合物の着色を防止する等の工夫の余地があった。
更に、第三級アミン化合物の存在下に、アクリレート化合物とアルデヒド化合物とを水と有機化合物の混合溶媒中で反応させる製造方法が開示されている(例えば、非特許文献1参照。)。しかしながら、この製造方法は第三級アミン化合物を基質に対して多量に使用する方法であり、また、水量が非常に多く、更に有機溶媒を使用とするため、精製工程が複雑であり、経済的には非常に不利である。更に、用いる基質によっては反応の再現性が低いという問題があるため、工業的に用いることは難しいものであった。したがって、工業的に用いることができるようにする等の工夫の余地があった。
水酸基含有アルケンの貯蔵に関して、特定の一般式で示される水酸基含有ビニル化合物と、一次酸化防止剤と、アルコールおよび/または水とを共存させる水酸基含有ビニル化合物の安定化方法が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、水酸基含有アルケンを製造する方法についてはなんら開示されておらず、工業的に用いることができる水酸基含有アルケンの製造方法について検討する等の工夫の余地があった。
特開平7-285906号公報 特開2000-319228号公報 特開2001-302586号公報 特許3120037号 チェンチー (Chengzhi Yu)、他2名「ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー (Journal of Organic Chemistry)」、(米国)、アメリカンケミカルソサエティ (American Chemical Society)、2001年、第66巻、第16号、p5413−5418
本発明は上記現状に鑑みてなされたものである。水酸基含有アルケンを製造するに際し、副生成物の量を低減することにより、精製工程を簡略化し、また、基質と触媒を効率的に利用することを可能とし、水酸基含有アルケンの工業的な製造に好適に用いることができる水酸基含有アルケンの製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、水酸基含有アルケンの効率的な製造方法について種々検討したところ、α,β−不飽和エステルを原料とする水酸基含有アルケンの製造において、水を溶媒として用いると、α,β−不飽和エステルに水が付加して飽和エステル化合物が副生すること、及び、系中で第三級アミン化合物がアクリレート化合物にマイケル付加した後、加水分解することにより両性イオン化合物が副生成物として生じる結果、基質や触媒が不可逆的に損失し、水酸基含有アルケンの製造が非効率なものとなること、及び、特に副生する飽和エステル化合物は、目的物である水酸基含有アルケンと比揮発度が非常に小さいために、分離が困難であり、分離するために、従来では蒸留塔に大きな段数か、又は、大きな還流比が必要であったため、装置やユーティリティーの面で効率よく安価に製造できない原因となっていた。そのため、反応工程において生じる不純物を少しでも抑制できれば、精製工程にかかる負担を少なくすることができ、大幅に製造費を下げることができることに着目した。
そして、α,β−不飽和エステルとアルデヒド化合物とを、アルデヒド化合物に対する水のモル比を0.6〜1.9として反応させる工程を含むことにより、飽和エステル化合物及び両性イオン化合物の副生を最小限に抑制することができることから、効率的に目的物である水酸基含有アルケンを製造することができることを見いだし、上記課題をみごと解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。本発明者等は、更に、α,β−不飽和エステルに対する水のモル比を0.25以上、0.63未満として上記反応工程を行うことによってもまた、本発明の効果が発揮されることをも見いだした。本発明の水酸基含有アルケンの製造方法は、基質と触媒を効率的に利用でき、更に、有機溶媒を使用しない場合は、精製工程を簡略化することができ、また経済的にも有利であるため、工業的製造に用いることができる有用な方法である。
すなわち本発明は、α,β−不飽和エステルとアルデヒド化合物とを、第三級アミン化合物及び水の存在下で反応させて水酸基含有アルケンを製造する方法であって、上記製造方法は、アルデヒド化合物に対する水のモル比を0.6〜1.9として反応させる工程を含む水酸基含有アルケンの製造方法である。
本発明はまた、α,β−不飽和エステルとアルデヒド化合物とを、第三級アミン化合物及び水の存在下で反応させて水酸基含有アルケンを製造する方法であって、上記製造方法は、α,β−不飽和エステルに対する水のモル比を0.25以上、0.63未満として反応させる工程を含む水酸基含有アルケンの製造方法でもある。
本発明は更に、α,β−不飽和エステルとアルデヒド化合物とから得られる水酸基含有アルケンであって、上記水酸基含有アルケンは、飽和エステル化合物の含有量が1.5質量%以下である水酸基含有アルケンでもある。
以下に本発明を詳述する。
本発明の製造方法は、α,β−不飽和エステルとアルデヒド化合物とを第三級アミン化合物及び水の存在下で反応させる反応工程を含むものである限り、その他の工程を含んでもよい。また、α,β−不飽和エステル、アルデヒド化合物、第三級アミン化合物は、それぞれ1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明の水酸基含有アルケンの製造方法は、α,β−不飽和エステルとアルデヒド化合物とを、第三級アミン化合物及び水の存在下で反応させて水酸基含有アルケンを製造する方法であって、上記製造方法は、アルデヒド化合物に対する水のモル比を0.6〜1.9として反応させる工程を含む水酸基含有アルケンの製造方法である。
上記アルデヒド化合物に対する水のモル比(水/アルデヒド化合物)が0.6未満であると、α,β−不飽和エステルとアルデヒド化合物との反応が進行しにくくなり、水酸基含有アルケンの反応収率が低下するおそれがある。また、上記モル比が1.9を超えると、不純物であるβ−ヒドロキシ飽和エステルの生成量が増加し、水酸基含有アルケンの品質が低下するおそれがあると共に、触媒と基質の不可逆的損失を招く両性イオンの生成量が増加するため、反応工程が経済的に非効率なものとなるおそれがある。
上記アルデヒド化合物に対する水のモル比は、0.7〜1.8であることが好ましい。上記モル比としてより好ましくは0.8〜1.75であり、更に好ましくは0.9〜1.7であり、特に好ましくは0.95〜1.67であり、最も好ましくは0.95〜1.4である。
本発明の水酸基含有アルケンの製造方法はまた、α,β−不飽和エステルに対する水のモル比(水/α,β−不飽和エステル)を0.25以上、0.63未満として反応させる工程を含むものであるが、上記モル比が0.25未満であると、本発明の製造方法の目的物である水酸基含有アルケンの収率が下がってしまうおそれがある。また、上記モル比が0.63以上であると、β−ヒドロキシ飽和エステルの割合と共に、触媒と基質の不可逆的損失を招く両性イオンの割合が上昇するため、反応工程が経済的に非効率なものとなるおそれがある。上記モル比は、0.25以上、0.61以下であることが好ましい。より好ましくは、0.25以上、0.58以下である。更に好ましくは、0.25以上、0.54以下である。最も好ましくは、0.25以上、0.50以下である。
本発明の水酸基含有アルケンの製造方法において、上記反応工程がアルデヒド化合物に対する第三級アミン化合物が有するアミン部位のモル比を0.05〜1.0として行われることも、本発明の好ましい実施形態の1つである。上記モル比が0.05〜1.0であると、副生成物の生成をより低減することが可能となり、水酸基含有アルケンの工業的製造方法としてより好適なものとなる。上記モル比が0.05以下であると、第三級アミンによる触媒活性が充分ではなく、目的物の収率が低下するおそれがある。上記モル比が1.0以上であると、高価な第三級アミンを多量に使用するため、経済的に不利であり、また、上記反応工程において生じる副生成物を充分に低減できないおそれがある。上記モル比として、より好ましくは0.07 〜0.6である。更に好ましくは0.1〜 0.5であり、最も好ましくは0.1〜 0.3である。
上記アミン部位とは、第三級アミン化合物の構造中において、有機基が3つ結合した窒素原子の構造であって、上記反応工程において、第三級アミン触媒として触媒活性点を有する構造を意味するものである。上記反応工程において、N個のアミン部位を有する第三級アミン化合物を用いる場合は、1個のアミン部位を有する第三級アミン化合物を用いる場合に比較して、N倍の触媒活性を有することとなる。したがって、第三級アミン化合物の構造中に含まれているアミン部位がN個の場合、アルデヒド化合物に対する第三級アミン化合物の必要量は、アミン部位を1個のみ有する第三級アミン化合物を用いる場合に比較して、1/Nモルとなる。そのため、本発明においては、上述したように、アミン部位のモル数に応じて、アルデヒド化合物に対する第三級アミン化合物の使用量を規定する。
本発明はまた、α,β−不飽和エステルとアルデヒド化合物とを、第三級アミン化合物及び水の存在下で反応させて水酸基含有アルケンを製造する方法であって、上記製造方法は、水、α,β−不飽和エステル、及び、第三級アミン化合物が有するアミン部位の総和を100モル%としたとき、α,β−不飽和エステルを59〜79モル%として反応させる工程を含む水酸基含有アルケンの製造方法でもある。
上記反応工程において、水、α,β−不飽和エステル、及び、第三級アミン化合物が有するアミン部位の総和を100モル%としたとき、α,β−不飽和エステルを59〜79モル%として反応させることによってもまた、飽和エステル化合物及び両性イオン化合物の副生成を低減することができ、効率的に目的物である水酸基含有アルケンを製造することができる。上記α,β−不飽和エステルのモル%の上限は、より好ましくは78モル%であり、更に好ましくは76モル%である。上記α,β−不飽和エステルのモル%の下限は、より好ましくは61モル%であり、更に好ましくは64モル%である。α,β−不飽和エステルの濃度の範囲はとして、より好ましくは61〜78モル%であり、更に好ましくは、64〜76モル%である。
本発明はまた、α,β−不飽和エステルとアルデヒド化合物とを、第三級アミン化合物及び水の存在下で反応させて水酸基含有アルケンを製造する方法であって、上記製造方法は、水、α,β−不飽和エステル、第三級アミン化合物が有するアミン部位、及び、アルデヒド化合物の総和を100モル%としたとき、水を16〜29モル%として反応させる工程を含む水酸基含有アルケンの製造方法でもある。
上記反応工程において、水、α,β−不飽和エステル、第三級アミン化合物が有するアミン部位、及び、アルデヒド化合物の総和を100モル%としたとき、水を16〜29モル%として反応させることによってもまた、飽和エステル化合物及び両性イオン化合物の副生成を低減することができ、効率的に目的物である水酸基含有アルケンを製造することができる。上記水量の上限として、より好ましくは28モル%であり、更に好ましくは27モル%である。上記水量の下限として、より好ましくは17モル%であり、更に好ましくは18モル%である。上記水量の範囲として、より好ましくは17〜28モル%であり、更に好ましくは18〜27モル%である。
本発明の水酸基含有アルケンの製造方法は、上述した実施形態を適宜組み合わせて行うことが好適である。すなわち、本発明の製造方法は、α,β−不飽和エステルとアルデヒド化合物とを、第三級アミン化合物及び水の存在下で反応させる工程を、下記(1)〜(5)の実施形態を適宜組み合わて行うことが好適である。
(1)アルデヒド化合物に対する水のモル比を0.9〜1.9として反応させる実施形態。;
(2)α,β−不飽和エステルに対する水のモル比を0.25以上、0.63未満として反応させる実施形態。;
(3)アルデヒド化合物に対する第三級アミン化合物が有するアミン部位のモル比を0.05〜1.0として反応させる実施形態。;
(4)水、α,β−不飽和エステル、及び、第三級アミン化合物が有するアミン部位の総和を100モル%としたとき、α,β−不飽和エステルを59〜79モル%として反応させる実施形態。;
(5)水、α,β−不飽和エステル、第三級アミン化合物が有するアミン部位、及び、アルデヒド化合物の総和を100モル%としたとき、水を16〜29モル%として反応させる実施形態。
本発明の水酸基含有アルケンの製造方法は、これらの実施形態の中でも、上記反応工程が上記実施形態(1)及び(2)を満たすことが好ましい。上記製造方法の実施形態としてより好ましくは、上記実施形態(1)〜(5)をできるだけ数多く満たすものである。
なお、本明細書中において、本発明の製造方法という場合、特に断りがなければ、上記(1)〜(5)の実施形態の少なくとも1つを満たす製造方法を意味する。すなわち、上記(1)〜(5)の実施形態の少なくとも1つを満たすものは、本発明の水酸基含有アルケンの製造方法である。
本発明の水酸基含有アルケンの製造方法において、水酸基含有アルケンの反応収率が55モル%以上であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
本発明の製造方法が上記実施形態を有すると、更に効率的に水酸基含有アルケンを製造することが可能になる。
上記水酸基含有アルケンの収率は、60モル%以上であることが好ましい。より好ましくは65モル%以上であり、更に好ましくは70モル%以上である。特に好ましくは75モル%以上であり、最も好ましくは80モル%以上である。
なお、上記水酸基含有アルケンの収率(モル%)とは、原料として用いられたアルデヒド化合物に対する水酸基含有アルケンの収率である。
本発明の水酸基含有アルケンの製造方法は、飽和エステル化合物の反応収率が0.1%〜0.7モル%であることが好ましい。
上記飽和エステル化合物の反応収率が0.1%〜0.7モル%であるとは、上記反応工程において基質として仕込むアルデヒド化合物の量を100モル%としたとき、精製工程を行う前において含まれる飽和エステル化合物の量が0.1〜0.7モル%である水酸基含有アルケンを意味する。上記飽和エステル化合物の量の上限として、より好ましくは、0.65モル%以下、更に好ましくは0.6モル%以下、最も好ましくは0.5モル%以下である。上記飽和エステル化合物の反応収率が0.7モル%以上であると、精製工程における負担が大きくなり、経済的に非効率となるおそれがある。
本発明はまた、α,β−不飽和エステルとアルデヒド化合物とから得られる水酸基含有アルケンであって、上記水酸基含有アルケンは、飽和エステル化合物の含有量が1.5質量%以下である水酸基含有アルケンでもある。
なお、上記含有量は、単離生成物中の水酸基含有アルケンを100質量%としたときの飽和エステル化合物含有量である。上記水酸基含有アルケンは、本発明の水酸基含有アルケンの製造方法によって得られるものであることが好ましい。
上記飽和エステル化合物の含有量は、1.3質量%以下であることが好ましい。より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.6質量%以下、最も好ましくは0.4質量%以下である。
上記飽和エステル化合物の含有量の下限値としては、できる限り小さく、実質的には0質量%であることが好ましいが、0質量%以上である場合には、0.3質量%以上であることが好ましい。より好ましくは0.2質量%以上であり、更に好ましくは0.1質量%以上である。なお、後述する反応収率と組み合わせて設定された水酸基含有アルケンであることが、本発明の好ましい形態であるといえる。
上記飽和エステル化合物の含有量が1.5質量%を超えると、例えば、水酸基含有アルケンを重合させる時に加えられる熱による発泡が多くなり、後述する電子情報材料用及び/又は機能性化学品用重合体を製造するために適しないものとなるおそれがある。これに対して、上記水酸基含有アルケンは、加熱時の発泡が充分に抑制され、電子情報材料用重合体や機能性化学品用重合体を製造するために好適なものである。
上記水酸基含有アルケンは、言い換えれば、α,β−不飽和エステルとアルデヒド化合物とを、第三級アミン化合物及び水の存在下で反応させて得られる水酸基含有アルケンと飽和エステル化合物等の不純物とを含んでなる組成物であって、上記組成物は、組成物に含まれる水酸基含有アルケンを100質量%としたときの飽和エステル化合物の含有量が1.5質量%以下である組成物である。
上記水酸基含有アルケンは、反応収率が55モル%以上のものであることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記反応収率を55モル%とするには、上述した本発明の製造方法を適宜採用すればよい。上記水酸基含有アルケンは、反応収率が55モル%以上のものであると、1回あたりの反応で得られる水酸基含有アルケンの生産性が増すばかりでなく、相対的に飽和エステル化合物の含有量が低下することになり、電子情報材料用重合体や機能性化学品用重合体の製造に好適に用いることができるものとなる。
上記反応収率は、60モル%以上であることが好ましい。上記水酸基含有アルケンの収率として、より好ましくは65モル%以上であり、更に好ましくは70モル%以上であり、特に好ましくは75モル%以上であり、最も好ましくは80モル%以上である。
本発明の水酸基含有アルケンの製造方法において、上述した反応工程における反応条件としては、例えば、反応温度は、0℃以上が好ましく、また、200℃以下が好ましい。より好ましくは、20℃以上、150℃以下である。反応時間は、0.5時間以上が好ましく、また、48時間以下が好ましい。より好ましくは、1時間以上、24時間以下である。また、反応初期の反応釜内の圧力としては、ケージ圧0kPa以上、1961.3kPa以下が好ましい。より好ましくは、49.0kPa以上、980.6kPa以下である。
上記反応工程に用いられるα,β−不飽和エステルは、特に制限されるものではないが、下記一般式(1)で表されるものが好ましい。
Figure 0005108754
上記一般式(1)で表されるものについて以下に説明する。式中、R1は、炭素原子数1〜20の直鎖状、分枝上又は環状の飽和及び/又は不飽和アルキル基を表す。R及びRは同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。
上記Rで示される有機基は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、アリール基、炭素数1〜12のヒドロキシアルキル基、−(CHNR基、−(CHN+R・M基、又は、−(CO)基を表す。上記R、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1〜12の直鎖状又は枝分かれ鎖状のアルキル基を表す。mは、2〜5の整数である。Mで示される陰イオンは、Cl、Br、CHCOO、HCOO、SO 2−又はPO 3−を表す。Rは、炭素数1〜18の直鎖状又は枝分かれ鎖状のアルキル基であることが好ましい。nは、1〜80の整数である。上記Rとして、より好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数4〜8のシクロアルキル基、フェニル基、ニトロフェニル基、メチルフェニル基、ハロゲン化フェニル基、ベンジル基、アルキル基含有ベンジル基、ナフチル基、2−ヒドロキシエチル基である。更に好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、フェニル基、メチルフェニル基、ベンジル基、メチルベンジル基、ナフチル基、2−ヒドロキシエチル基である。
上記R及びRで示される有機基は、特に限定されず、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基、ニトロフェニル基、メチルフェニル基、ハロゲン化フェニル基、ベンジル基、ナフチル基であることが好ましい。より好ましくは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜8のシクロアルキル基、フェニル基、ニトロフェニル基、メチルフェニル基、ベンジル基、ナフチル基である。更に好ましくは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基である。特に好ましくは、水素原子である。
上記α,β−不飽和エステル化合物の中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸メチルベンジル、アクリル酸ナフチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、桂皮酸メチル、桂皮酸エチルが更に好ましい。
上記アルデヒド化合物としては、目的物である水酸基アルケンに導入する構造に応じて適宜用いることができ、上記反応工程を妨げない限り、特に限定されるものではないが、下記一般式(2)で表されるアルデヒド化合物のうち、Rが水素原子若しくは炭素数1〜12の有機基であるものが、本発明の製造方法によって好適に製造することができる代表例として挙げられる。
Figure 0005108754
上記アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、エチルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソプロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ペンチルアルデヒド、ピバルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デカニルアルデヒド、ウンデカニルアルデヒド、ドデカニルアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、フッ化ベンズアルデヒド、塩化ベンズアルデヒド、臭化ベンズアルデヒド、桂皮アルデヒド、フェニルプロパナール、ナフチルアルデヒド、フルフラール等が好適である。
上記アルデヒド系化合物としては、特に、アセトアルデヒド、パラアセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドの20重量%〜50重量%水溶液、及び、ホルムアルデヒドの濃度が20重量%〜50重量%であるメタノール水溶液が好ましい。より好ましくは、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドである。ここでいうパラホルムアルデヒドとはホルムアルデヒドの重合体(8〜100量体)であり、常温において粒状又は粉体などの性状を有する固体である。工業的に入手可能なパラホルムアルデヒドは通常水分を含有しており、水分が20重量%以下含有していてもよい。前記アルデヒド系化合物は、1種類のみを用いてもよく、また、本発明を工業的に実施する際は該アルデヒド系化合物の取扱いの容易さ等を考慮に入れて、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
上記反応工程において用いられる第三級アミン化合物は、特に制限されるものではなく、α,β−不飽和エステルとアルデヒド化合物とから水酸基含有アルケンの製造に一般に用いられる第三級アミンを用いることができる。
上記第三級アミン化合物は、第三級モノアミン化合物、第三級ジアミン化合物、及び、第三級トリアミン化合物からなる群より選択される少なくとも一種のアミン化合物であることが好ましい。その中でも、本発明に用いるものとしては、第三級モノアミン化合物、又は、第三級ジアミン化合物がより好ましい。
上記第三級モノアミン化合物は、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、キヌクリジン、3−ヒドロキシキヌクリジン、キナアルカロイド類や、N,N−ジメチルエチルアミン、N,N−ジメチル−n−プロピルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン、N,N−ジメチル−n−ブチルアミン、N,N−ジメチル−t−ブチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノピリジン等のジメチルアミン類、N−メチルジエチルアミン、N−メチルジ−n−プロピルアミン、N−メチルジイソプロピルアミン、N−メチルジ−n−ブチルアミン、N−メチルジ−t−ブチルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン−2−メタノール、N−メチルピロリジン−2−メタノール、N−メチルピロリジン−2−エタノール等のメチルジアルキルアミン類の1種又は2種類以上が好適である。
上記第三級ジアミン化合物としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン等が好適である。
上記第三級トリアミン化合物としては、例えば、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジプロピレントリアミン等が好適である。
上記第三級アミン化合物の中でも、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、キヌクリジン、3−ヒドロキシキヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、キナアルカロイド類や、N,N−ジメチルエチルアミン、N,N−ジメチル−n−プロピルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン、N,N−ジメチル−n−ブチルアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルジエチルアミン、N−メチルジ−n−プロピルアミン、N−メチルジイソプロピルアミン、N−メチルジ−n−ブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン−2−メタノール、N−メチルピロリジン−2−メタノール、N−メチルピロリジン−2−エタノール等の1種又は2種類以上がより好適である。また、アミノ基を有する高分子化合物、イオン交換樹脂、マイクロカプセル、粘土化合物、ヘテロポリ酸、ゼオライト、オキシナイトライド等の固体化合物も使用できる。
上記反応工程における第三級アミン触媒の使用形態は、特に制限されるものではなく、固体状、液体状、ガス状等の種々の状態での使用が可能である。上記使用形態のうちでも、液体状、ガス状が好ましく、第三級アミン化合物が水溶性の場合には、5〜80質量%水溶液として使用することも可能である。
上記第三級アミン化合物の揮発度が高い場合には、密閉系で上記反応工程を行うことにより、更に目的物の収率を高めることができる。上記密閉系としては、オートクレーブ装置等が好適である。
上記製造方法によって製造することができる水酸基含有アルケンは、特に制限されるものではないが、下記一般式(3)で表されるα−ヒドロキシメチルアクリレートが、上記製造方法によって好適に製造される水酸基含有アルケンの代表例として挙げられる。
Figure 0005108754
上記一般式(3)で表されるものについて以下に説明する。式中、R、R、及び、Rは、上記一般式(1)が有するものと同様であり、Rは、上記一般式(2)が有するRと同様である。上記一般式(3)で表される水酸基含有アルケンの中でも、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸n−ブチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸2−エチルヘキシル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸2−ヒドロキシエチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸フェニル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ベンジル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルベンジル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ナフチル等が、上記製造方法によって、より好適に製造される代表例として挙げられる。
上記反応工程における反応溶液として、必要に応じて有機溶媒を用いることもできるが、精製工程を簡略化するため、有機溶媒を用いないで行うことが好ましい。上記反応溶液を水系とすることで、例えばホルムアルデヒドを基質に用いた場合には、アルデヒド化合物の系中への溶解性が増すと同時に、アルデヒド化合物やヘミホルマール化合物の解重合も促進され、また、反応場の極性も向上することから、反応速度が向上することとなる。また、本発明により、有機溶媒を用いなくても、反応溶液中に含まれる水のモル%を上述したように特定することによって、副生成物を低減し、高い収率で目的物である水酸基アルケンを製造することが可能である。したがって、上記反応工程を有機溶媒を用いないことは、本発明の好ましい実施形態の一つである。
上記反応工程において有機溶媒を使用する場合は、基質や触媒、及び、水を相溶化させることができる極性溶媒であることが好ましい。例えば、アセトニトリル、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミド、N−メチルピロリドン、ジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン、ポリエチレングリコール類、イオン性液体等の有機溶媒を使用することができる。上記有機溶媒は、1種類のみを用いてもよく、また、2種類以上を適宜混合して用いてもよく、その種類及び使用量は、基質や触媒に応じて適宜設定することができる。
上記反応工程においては、反応の更なる促進を目的として、添加剤を反応液に添加することができる。添加剤としては、反応に悪影響を及ぼさない限り特に限定されないが、例えばブレンステッド酸や、アルカリ金属及び/又はアリカリ土類金属を含む化合物、有機ハロゲン化物塩、水酸基含有化合物、エーテル化合物等が好ましい。より好ましくは、ブレンステッド酸としては、鉱酸類、カルボン酸類、アミノ酸類、フェノール、ナフトール、ビナフトール等の芳香環に結合した水酸基含有化合物;尿素、チオ尿素及びその誘導体;シリカゲル、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカアルミナ、ゼオライト等の無機固体類等であり、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む化合物としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化バリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化バリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、フェノール類アルカリ金属塩、フェノール類アルカリ土類金属塩、ナフトール類アルカリ金属塩、ナフトール類アルカリ土類金属塩、ビナフトール類アルカリ金属塩、ドデシル硫酸ナトリウム、ゼオライト等の無機固体類等であり、有機ハロゲン化物塩としては、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラヘキシルアンモニウム、塩化テトラオクチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ピリジニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラヘキシルアンモニウム、臭化テトラオクチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ピリジニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウテトラヘキシルアンモニウム、ヨウ化テトラオクチルアンモニウム、ヨウ化セチルトリメチルアンモニウム、ヨウ化ピリジニウム等であり、水酸基含有化合物としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ポリエチレングリコール、トリエタノールアミン等であり、エーテル化合物としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クラウンエーテル、ポリエチレングリコールエーテル等である。場合によっては、第三級アミン化合物の化合物骨格に、上記ブレンステッド酸部位やアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む部位、有機ハロゲン化物塩部位、水酸基部位、エーテル部位が含まれていてもよい。
上記反応工程における水の添加方法は、特に制限されるものではなく、α,β−不飽和エステルを水溶液として必要量の水を加えてもよく、アルデヒド化合物を水溶液として必要量の水を加えてもよく、あるいは、第三級アミンを水溶液として必要量の水を加えても良い。また、水を別途添加してもよい。
上記反応工程において、α,β−不飽和エステル、及び、目的物である水酸基含有アルケンは、共に重合し易い性質を有していることから、反応時の重合を抑制するために、反応系に重合防止剤(又は重合禁止剤)や分子状酸素を添加することが好ましい。
上記重合防止剤としては、重合防止剤としての作用を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、2,4−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2,4−ジメチルヒドロキノン等のヒドロキノン類;フェノチアジン等のアミン化合物;2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、p−メトキシフェノール等のフェノール類;p−tert−ブチルカテコール等の置換カテコール類;置換レゾルシン類;テトラメチルピペリジン−N−オキシド、4−ヒドロキシ−テトラメチルピペリジン−N−オキシド等の安定遊離基含有化合物;ジチオカルバミン酸銅等の金属含有化合物等の1種又は2種類以上を好適に用いることができる。
反応終了後は、必要に応じて、蒸留、ろ過、抽出、遠心分離、再結晶、乾燥等の工程を経て分離・精製することにより、目的の水酸基含有アルケンを得ることができる。このような分離・精製工程としては、反応溶液が有機相と水相とを含む場合、分液等の所定の操作を行い、反応溶液を有機相と水相とに分離し、有機相を常圧蒸留(精留)又は減圧蒸留(精留)等することにより、生成物である水酸基含有アルケンを単離・精製することができ、同時に、未反応のα,β−不飽和エステル又は溶媒を分離・回収することができる。未反応のα,β−不飽和エステル及び溶媒は、高純度で回収されるので、反応に再度使用することができる。
本発明の好適な実施形態としてはまた、上記水酸基含有アルケンを用いて形成される電子情報材料用及び/又は機能性化学品用重合体でもある。
上記電子情報材料用重合体や機能性化学品用重合体を用いて形成される光学用面状成型体は、例えば、厚さが均一でありかつ高い透明性を有すると同時に、ヘイズや異物等の不連続点がない等の優れた特性を有することになる。その理由は、下記のように考えられる。
従来の製造方法で得られる水酸基含有アルケンは、上記のような飽和エステル化合物を含んでいるから、例えば、フィルムを形成する場合には、重合工程、環化工程、成型工程等で加えられる熱によって低い分子量を有する飽和エステル化合物が気化し、発泡が生じる原因の一つとなる。また、これによって、フィルムの表面を均一にすることが難しく、電子情報材料及び機能性化学品の用途に適した性質を充分に発揮するものではなかった。これに対して、本発明の電子情報材料用重合体や機能性化学品用重合体は、飽和エステル化合物の含有量が充分に少ない水酸基含有アルケンを用いることにより、重合時の発泡が充分に防止されることになり、上記のような優れた特性を有することになる。また、上記電子情報材料用及び/又は機能性化学品用重合体は、上記水酸基含有アルケンの製造方法によって得られる水酸基含有アルケンを用いて形成されるものであることが好ましい。
本発明はまた、上記水酸基含有アルケンを電子情報材料用及び/又は機能性化学品用重合体の材料として使用する水酸基含有アルケンの使用方法でもある。
上記水酸基含有アルケンの使用方法については、本発明の電子情報材料用及び/又は機能性化学品用重合体についての詳細な説明を参照することができる。例えば、上記水酸基含有アルケンの使用方法は、上記水酸基含有アルケンの製造方法によって得られる水酸基含有アルケンを用いるものであることが好ましい。
また、上記水酸基含有アルケンの使用方法の用途は、光学用面状成型体の用途であることが好ましい。上記使用方法の用途としてより好ましくは、導光体、光学レンズ、光学用フィルム、光学プリズム、光学ディスク等の光学部品の用途である。更に好ましくは導光体、光学レンズ、光学用フィルムの用途である。特に好ましくは光学用フィルムの用途である。
すなわち、本発明はまた、上記水酸基含有アルケンを光学用フィルムの材料として使用する水酸基含有アルケンの使用方法でもある。
上記電子情報材料用及び/又は機能性化学品用重合体は、上記水酸基含有アルケンを含んでなる熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られるものであることが好ましい。上記熱硬化性樹脂組成物は、電子情報材料及び機能性化学品の用途によって異なるが、例えば、熱硬化性樹脂組成物を100質量%としたとき、上記水酸基含有アルケンを20質量%以上含むことが好ましい。上記水酸基含有アルケンの含有量としてより好ましくは、30質量%以上であり、更に好ましくは40質量%以上である。
上記熱硬化性樹脂組成物において用いる無機成分の種類及び量は、電子情報材料及び機能性化学品に要求される特性に応じて、適宜調整することが好適である。また、上記熱硬化性樹脂組成物は、水酸基含有アルケンと共重合可能なその他の単量体成分を含んでいてもよい。上記その他の単量体成分の種類及び量は、要求される特性に応じて、適宜選択することが好適であるが、例えば、上記熱硬化性樹脂組成物において、水酸基含有アルケンが熱硬化性樹脂成分の主成分であることが好ましい。なお、水酸基含有アルケンが熱硬化性樹脂成分の主成分であることは、熱硬化性樹脂成分を100質量%としたとき、水酸基含有アルケンが占める質量比が少なくとも50質量%以上であることを意味する。上記重量比は、80質量%以上であることが好ましい。より好ましくは90質量%であり、更に好ましくは95質量%である。
本発明の電子情報材料用重合体や機能性化学品用重合体は、用途に応じて様々な形状に成形することができる。通常、本発明の水酸基含有アルケンから得られる樹脂は、加熱造粒してなる、例えば、ペレット等の成形材料とした後、様々な形状に2次成形されることが好ましい。成形可能な形状としては、例えば、フィルム、シート、プレート、ディスク、ブロック、ボール、レンズ、ロッド、ストランド、コード等が挙げられる。成形方法は、形状に応じて、従来の成形方法から適宜選択することが好適である。
上記電子情報材料用及び/又は機能性化学品用重合体は、光学用面状成型体であることが好適である。また、上記光学用面状成型体は、導光体、光学レンズ、光学用フィルム、光学プリズム、光学ディスク等の光学部品であることが好ましい。上記光学用面状成型体は、より好ましくは導光体、光学レンズ、光学用フィルムであり、更に好ましくは光学用フィルムである。
すなわち、本発明はまた、上記水酸基含有アルケンを用いて形成される光学用フィルムでもある。
上記光学用フィルムは、例えば、上記水酸基含有アルケンから光学用フィルムを製造する場合、オムニミキサー等の公知の混合機でフィルム原料をプレブレンドした後、得られた混合物を押出混練することが好ましい。この場合、押出混練に用いる混合機は、特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機などの押出機や加圧ニーダー等の混合機を用いることができる。フィルム成形の方法としては、例えば、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法等、公知のフィルム成形法が挙げられる。これらのフィルム成形法のうち、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が好ましい。
溶液キャスト法(溶液流延法)に使用する溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチエルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド;等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。溶液キャスト法(溶液流延法)を行うための装置としては、例えば、ドラム式キャスティングマシン、バンド式キャスティングマシン、スピンコーター等が挙げられる。
溶融押出法としては、例えば、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられ、その際の成形温度は、フィルム原料のガラス転移温度に応じて適宜調節すればよい。上記成形温度は、例えば、150〜350℃であることが好ましい。上記成形温度としてより好ましくは200〜300℃である。
Tダイ法でフィルム成形する場合は、公知の単軸押出機や二軸押出機の先端部にTダイを取り付け、フィルム状に押出されたフィルムを巻取って、ロール状のフィルムを得ることができる。この際、巻取りロールの温度を適宜調整して、押出方向に延伸を加えることで、1軸延伸することも可能である。また、押出方向と垂直な方向にフィルムを延伸することにより、同時2軸延伸、逐次2軸延伸等を行うこともできる。
本発明の光学用フィルムは、未延伸フィルム又は延伸フィルムのいずれでもよい。上記光学用フィルムが延伸フィルムである場合は、1軸延伸フィルム又は2軸延伸フィルムのいずれでもよい。上記光学用フィルムが2軸延伸フィルムである場合は、同時2軸延伸フィルム又は逐次2軸延伸フィルムのいずれでもよい。2軸延伸した場合は、機械的強度が向上し、フィルム性能が向上する。本発明の水酸基含有アルケンは、その他の熱可塑性樹脂を混合することにより、延伸しても位相差の増大を抑制することができ、光学的等方性を保持したフィルムを得ることができる。
上記延伸フィルム形成における延伸温度は、フィルム原料である水酸基含有アルケンのガラス転移温度近傍であることが好ましい。上記延伸温度は、より好ましくは(ガラス転移温度−30℃)〜(ガラス転移温度+100℃)、更に好ましくは(ガラス転移温度−20℃)〜(ガラス転移温度+80℃)の範囲内である。延伸温度が(ガラス転移温度−30℃)未満であると、充分な延伸倍率が得られないことがある。逆に、延伸温度が(ガラス転移温度+100℃)超えると、重合体の流動(フロー)が起こり、安定な延伸が行えなくなることがある。
上記延伸フィルム形成において、面積比で定義した延伸倍率は、1.1〜25倍であることが好ましい。上記延伸倍率は、より好ましくは1.3〜10倍である。延伸倍率が1.1倍未満であると、延伸に伴う靭性の向上につながらないことがある。逆に、延伸倍率が25倍を超えると、延伸倍率を上げるだけの効果が認められないことがある。
上記延伸フィルム形成における延伸速度は、一方向で10〜20000%/minであることが好ましい。上記延伸速度は、より好ましくは100〜10000%/minである。延伸速度が10%/min未満であると、充分な延伸倍率を得るために時間がかかり、製造コストが高くなることがある。逆に、延伸速度が20000%/minを超えると、延伸フィルムの破断などが起こることがある。
なお、本発明の光学用フィルムは、その光学的等方性や機械的特性を安定化させるために、延伸処理後に熱処理(アニーリング)などを行うことができる。熱処理の条件は、公知の延伸フィルムに対して行われる熱処理の条件と同様に適宜選択することが好適である。
上記光学用フィルムの厚さは、5〜200μmであることが好ましい。上記光学用フィルムの厚さは、より好ましくは10〜100μmである。厚さが5μm未満であると、フィルムの強度が低下するだけでなく、他の部品に貼着して耐久性試験を行うと捲縮が大きくなることがある。逆に、上記光学用フィルムの厚さが200μmを超えると、透明性が低下するだけでなく、透湿性が小さくなり、他の部品に貼着する際に水系接着剤を用いた場合、その溶剤である水の乾燥速度が遅くなることがある。
上記光学用フィルムは、その表面の濡れ張力が40mN/m以上であることが好ましい。上記濡れ張力は、より好ましくは50mN/m以上、更に好ましくは55mN/m以上である。表面の濡れ張力が40mN/m以上であると、本発明の水酸基含有アルケンから形成される光学用フィルムと他の部品との接着強度がさらに向上する。表面の濡れ張力を調整するために、例えば、コロナ放電処理、オゾン吹き付け、紫外線照射、火炎処理、化学薬品処理、その他の従来公知の表面処理を施すことができる。
上記水酸基含有アルケンから光学用フィルムを形成する際は、種々の添加剤を含有してもよい。上記添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;フェニルサリチレート、(2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機充填剤や無機充填剤;樹脂改質剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;等が挙げられる。
本発明の水酸基含有アルケンの製造方法及び水酸基含有アルケンは、上述の構成よりなり、反応工程における副生成物の生成を低減することにより、水酸基含有アルケンを効率的に製造することができるため、工業的製造に利用することができる有用な製造方法、及び、電子情報材料用重合体や機能性化学品用重合体の材料として好適な水酸基含有アルケンである。
実施例1における反応工程の概略を示した図である。Meはメチル基を表す。nは0以上の正数である。実施例1において、α,β−不飽和エステルはアクリル酸メチルであり、飽和エステル化合物は3−ヒドロキシプロピオン酸メチルであり、水酸基含有アルケンはα−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「モル%」を意味するものとする。
実施例1
(α,β−不飽和エステルとアルデヒド化合物とを、第三級アミン化合物及び水の存在下で反応させてることによる、水酸基含有アルケンの製造)
以下の条件により、水酸基含有アルケンの製造を行った。
1Lオートクレーブにアクリル酸メチル(344.3g、4.0mol)、92%(8%水分含有)パラホルムアルデヒド(32.6g、1.0mol)、イオン交換水(19.0g、1.2mol)、p−メトキシフェノール(0.20g、1.6mmol)、を加えて70℃に加熱した。ここに、30%トリメチルアミン水溶液(19.7g、0.1mol)を加え、8時間攪拌した。なお、アルデヒド化合物に対する水のモル比は、1.2であった。冷却後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、目的の2−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルの収率が71%、両性イオンの収率(メタノールの収率に対応)が、5.6%、α−ヒドロキシプロピオン酸メチルの収率が0.46%であった。両性イオン化合物の存在は、H−NMRにより確認した。(δ=2.5(t)、2.95(s)、3.4(t)/DO溶媒使用)
実施例1における反応工程の概略について、図1に示した。実施例2−20、比較例1−5についても、表1にある組成、及び、下記に示される手順を変えた以外は、図1に示される実施例1の反応工程と同様に行った。なお、実施例2−20では、α,β−不飽和エステル及びアルデヒド化合物等の原料に第三級アミン化合物を加えた後に、気相部に2.75%酸素/窒素標準ガスを全圧が284.1kPaとなるまで加えた後に攪拌を行った。また、実施例2−20では、反応液をガスクロマトグラフィーで分析する前に気相部をパージした。これらの結果を表1に示す。
Figure 0005108754
表1について、以下に説明する。RHMAとは、本発明の製造方法による目的物である水酸基含有アルケンを表す。RHMA、及び、3−ヒドロキシプロピオン酸メチルの収率は、反応後の有機層と水層に含まれるRHMA、及び、3−ヒドロキシプロピオン酸メチルの合計収率である。HOは、反応開始時に系中に存在する水の総モル数を表す。MeNとは、無水トリメチルアミンを表し、比較例3のDMFとは、N,N−ジメチルホルムアミドを表し、DABCOとは、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを表す。両性イオン化合物の収率は、有機層と水層に含まれるメタノールの合計収率に対応する。
実施例21
1Lオートクレーブにアクリル酸ブチル(320.4g、2.5mol)、92%(8%水分含有)パラホルムアルデヒド(32.6g、1.0mol)、イオン交換水(25.0g、1.4mol)、アセトニトリル(123.5g、3.0mol)、p−メトキシフェノール(0.20g、1.6mmol)、を加えて70℃に加熱した。ここに、無水トリメチルアミン(11.8g、0.20mol)を加え、気相部に2.75%酸素/窒素標準ガスを全圧が294.1kPaとなるまで加え、8時間攪拌した。なお、アルデヒド化合物に対する水のモル比は、1.4であった。冷却後、気相部をパージし、反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、目的のα−ヒドロキシメチルアクリル酸ブチルの収率が80.2%、両性イオン収率(ブタノールの収率に対応)が、1.3%、3−ヒドロキシプロピオン酸ブチルの収率が0.69%であった。1M塩酸水溶液(200mL)で中和し、続いてイオン交換水(200mL)で洗浄した。得られた溶液にCB剤(ジチオカルバミン酸銅)(1000ppm)を投入して減圧蒸留することにより、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ブチル(沸点:108〜109℃/5mmHg)を単離した。(114.9g、72.6%単離収率)。
実施例22
1Lオートクレーブにアクリル酸メチル(690.1g、8.0mol)、n−ブチルアルデヒド(144.3g、2.0mol)、イオン交換水(40g、2.2mol)、p−メトキシフェノール(0.20g、1.6mmol)を加えて、70℃に加熱した。ここに、1,4アザビシクロ[2.2.2]オクタン(112g、1.0mol)を加え、20時間攪拌した。なお、アルデヒド化合物に対する水のモル比は、1.1であった。冷却後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、目的のα−(プロピルヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの収率が55.7%、両性イオンの収率(メタノールの収率に対応)が、12.3%、3−ヒドロキシプロピオン酸メチルの収率が0.05%であった。1M塩酸水溶液(200mL)で中和し、続いてイオン交換水(200mL)で洗浄した。得られた溶液にCB剤(ジチオカルバミン酸銅)(1000ppm)を投入して減圧蒸留することにより、α−(プロピルヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(沸点98〜100℃/10mmHg)を単離した。(169.9g、53.7%単離収率)。
実施例23
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した30L反応釜に、実施例1で得られたα−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル3500g、メタクリル酸メチル6500g、メチルイソブチルケトンとメチルエチルケトンとからなる混合溶媒(重量比9:1)6667gを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温し、還流したところで、開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(商品名:ルパゾール570、アトケマ吉富(株)製)12.0gを添加すると同時に、t−アミルパーオキシイソノナノエート12.0g、メチルイソブチルケトンとメチルエチルケトンとからなる混合溶媒(重量比9:1)3315gからなる溶液を3.5時間かけて滴下しながら、還流下(約95〜110℃)で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。得られた重合体溶液をメチルエチルケトン5000gで希釈し、リン酸オクチル/リン酸ジオクチル混合物(商品名:Phoslex A−8、堺化学(株)製)5gを加え、還流下(約85〜100℃)で2時間、環化縮合反応を行い、さらに、オートクレーブ中で240℃、加圧下で1.5時間環化縮合反応を行った。次いで、上記環化縮合反応で得られた重合体溶液を、バレル温度265℃、回転数100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時間の処理速度で導入しながら、該押出し機内で環化縮合反応と脱揮を行った。また、この際、オクチル酸亜鉛(商品名:ニッカオクチックス亜鉛18%、日本化学産業(株)製)6.6gとトルエン85.9gとからなる溶液を20g/時間の速度で投入しながら、押出すことにより、透明なペレット(1A)を得た。得られたペレット(1A)について、重量平均分子量は119000であり、メルトフローレートは3.5g/10分、ガラス転移温度は147℃であった。次に、リップ開度0.4mm、幅150mmのTダイを装着した押出し機を用いて、得られたペレット(1A)を280℃で押し出し、110℃に調温したロールで引き取ることにより、厚さ100μmの透明で実質的に欠陥(不連続点)を有しないフィルムを得ることができた。なお、重合体の重量平均分子量は、GPC(東ソー(株)製GPCシステム、カラム:東ソー(株)製 TSK−GEL SUPER HZM−M、クロロホルム溶媒)のポリスチレン換算により求めた。メルトフローレートは、JIS K6874に基づき、試験温度を240℃、荷重10kgで測定した。樹脂およびフィルムの熱分析は、試料約10mg、昇温速度10℃/min、窒素フロー50cc/minの条件で、DSC(装置名:DSC−8230、(株)リガク社製)を用いて行った。ガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418に従い、中点法で求めた。
比較例6
実施例1で得られたα−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルに代えて、比較例1で得られたα−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルを用いた以外は、実施例23と同様にペレット(2A)を製造した。得られたペレット(2A)の重量平均分子量は120000であり、メルトフローレートは3.4g/10分、ガラス転移温度は147℃であった。次に、リップ開度0.4mm、幅150mmのTダイを装着した押出し機を用いて、得られたペレット(2A)を280℃で押し出し、110℃に調温したロールで引き取ったところ、発泡によるスジが発生し、きれいなフィルムを得ることが出来なかった。なお、重合体の重量平均分子量は、GPC(東ソー(株)社製GPCシステム、カラム:東ソー(株)製 TSK−GEL SUPER HZM−M、クロロホルム溶媒)のポリスチレン換算により求めた。メルトフローレートは、JIS K6874に基づき、試験温度を240℃、荷重10kgで測定した。樹脂およびフィルムの熱分析は、試料約10mg、昇温速度10℃/min、窒素フロー50cc/minの条件で、DSC(装置名:DSC−8230、(株)リガク社製)を用いて行った。ガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418に従い、中点法で求めた。
上述した実施例及び比較例から、すなわち、上記反応工程において、アルデヒド化合物に対する水のモル比を0.6〜1.9として反応させる工程を含むことにより、飽和エステル化合物及び両性イオン化合物の副生を低減することができるという有利な効果を発揮することがわかった。エステル化合物及び両性イオン化合物の副生を低減することによって、基質と触媒を効率的に利用することが可能となり、精製工程を簡略化し、水酸基含有アルケンを効率的に製造できることは明らかである。
実施例3は、アルデヒド化合物に対する水のモル比(水/アルデヒド化合物)を1.2として行ったものであるが、目的物の収率は80モル%、両性イオンの収率は14.0モル%、飽和エステル化合物の収率は0.49モル%、単離生成物中に含まれる飽和エステル化合物は0.8質量%であり、目的物の収率は充分に高いまま、副生成物を低減することができていることが確認された。比較例1は、上記モル比を4として行ったものであるが、目的物の収率は80モル%、両性イオンの収率は47.2モル%、飽和エステル化合物の収率は0.77モル%、単離生成物中に含まれる飽和エステル化合物は1.8質量%であった。したがって、実施例3と比較例1とを比較すると、目的物の収率にはほとんど差がないにもかかわらず、実施例3の副生成物の収量が低減されていることがわかる。
また、実施例2は、上記モル比を1として行ったものであるが、目的物の収率は78モル%、両性イオンの収率は11.8モル%、飽和エステル化合物の収率は0.44モル%となり、目的物の収率は充分に高いまま、副生成物を低減することができていることが確認された。比較例5は、上記モル比を0.53として行ったものであるが、目的物の収率は52モル%となり、実施例2と比べると収率が大きく下がっており、効率的に水酸基含有アルケンを生産できるものではなかった。
なお、実施例19は、2個のアミン部位を有する第三級アミン化合物である1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を触媒として用いているため、他の実施例及び比較例と比較して、触媒活性点が2倍であることを考慮する必要がある。
また、実施例23は、アルデヒド化合物に対する水のモル比を1.2として反応させ、単離生成物中の飽和エステル化合物である3−ヒドロキシプロピオン酸メチルの含有量が0.4質量%である水酸基含有アルケンを用いて調製した重合体からフィルムを形成したものである。これによれば、実用的な厚さのフィルムにおいて、透明で実質的に欠陥(不連続点)を有しないものとすることができることがわかった。
これに対して、比較例6は、アルデヒド化合物に対する水のモル比を4.4として反応させ、単離生成物中の飽和エステル化合物である3−ヒドロキシプロピオン酸メチルの含有量が1.8質量%である水酸基含有アルケンを用いて調製した重合体からフィルムを形成したものであるが、発泡によるスジが発生し、きれいなフィルムを得ることができなかった。
これらの結果から、本発明によって得られる水酸基含有アルケンは、電子情報材料用及び/又は機能性化学品用重合体の原料として好適なものであり、該重合体は、電子情報材料及び機能性化学品としてのフィルムを形成・製造するための原料として好適なものであることが確認された。製造されたフィルムは、透明で欠陥を有しない性質等を有するものであることから、光学用フィルムとして、特に光学用面状成型体の用途に好適であるといえる。このようなフィルムにおいては、透明であることと、表面に不連続点等の欠陥がないことが優れた光学特性を発揮するために重要であり、本発明によって得られる水酸基含有アルケン、電子情報材料用及び/又は機能性化学品用重合体は、この点で優れた効果を発揮するものである。

Claims (7)

  1. α,β−不飽和エステルとアルデヒド化合物とを、第三級アミン化合物及び水の存在下で反応させて水酸基含有アルケンを製造する方法であって、
    該製造方法は、α,β−不飽和エステルに対する水のモル比を0.25以上、0.50以下として反応させる工程を含む
    ことを特徴とする水酸基含有アルケンの製造方法。
  2. 前記反応工程は、アルデヒド化合物に対する水のモル比を0.6〜1.9として行われることを特徴とする請求項1に記載の水酸基含有アルケンの製造方法。
  3. 前記反応工程は、アルデヒド化合物に対する第三級アミン化合物が有するアミン部位のモル比を0.05〜1.0として行われる
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の水酸基含有アルケンの製造方法。
  4. α,β−不飽和エステルとアルデヒド化合物とを、第三級アミン化合物及び水の存在下で反応させて水酸基含有アルケンを製造する方法であって、
    該製造方法は、水、α,β−不飽和エステル、及び、第三級アミン化合物が有するアミン部位の総和を100モル%としたとき、α,β−不飽和エステルを59〜79モル%として反応させる工程を含む
    ことを特徴とする水酸基含有アルケンの製造方法。
  5. 前記反応工程は、α,β−不飽和エステルに対する水のモル比を0.25以上、0.63未満として行われる
    ことを特徴とする請求項4に記載の水酸基含有アルケンの製造方法。
  6. 前記反応工程は、アルデヒド化合物に対する水のモル比を0.6〜1.9として行われることを特徴とする請求項4又は5に記載の水酸基含有アルケンの製造方法。
  7. 前記製造方法は、水酸基含有アルケンの反応収率が55モル%以上である
    ことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の水酸基含有アルケンの製造方法。
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