JP5092337B2 - 無端ベルト及びその製造方法、画像形成装置、中間転写ベルト、転写搬送ベルト、並びに、搬送装置 - Google Patents

無端ベルト及びその製造方法、画像形成装置、中間転写ベルト、転写搬送ベルト、並びに、搬送装置 Download PDF

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Description

本発明は、無端ベルト及びその製造方法、画像形成装置、中間転写ベルト、転写搬送ベルト、並びに、搬送装置に関する。
電子写真方式の画像形成装置では、まず、光導電性材料を含む感光体上に電荷を形成し、変調した画像信号をレーザー光などで静電潜像として形成した後、帯電したトナーにより静電潜像を現像してトナー像とする。次いで、このトナー像を直接又は中間転写体を介して紙などの記録媒体に転写することにより画像を得る。
ここで、感光体上のトナー像を中間転写体に一次転写し、次いで中間転写体上のトナー像を紙などの記録媒体へ二次転写する方法、いわゆる中間転写方式を採用した画像形成装置に用いられる中間転写ベルトとして、例えば、ポリフッ化ビニリデン(例えば、特許文献1参照)、ポリカーボネート(例えば、特許文献2参照)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体とポリカーボネートとのブレンド(例えば、特許文献3参照)などの熱可塑性樹脂にカーボンブラック等の導電剤を分散させた無端ベルトが提案されている。
さらに近年、この中間転写体を加熱することで記録媒体上のトナー像を定着せしめる方法、即ち、中間転写・定着方式が開示されている(例えば、特許文献4参照)。中間転写・定着方式は、トナー像を記録媒体へ中間転写体を介して二次転写せしめた後、この中間転写体を直接又は間接的に加熱することで、この中間転写体に接触している記録媒体上のトナー像を定着する方式であり、中間転写機構と定着機構が離別していた従来装置と比較して、装置の小型化、低コスト化が可能であるという利点を有する。
ここで、中間転写方式に用いられるベルト材料には、駆動時の応力に耐える機械強度を有することが必要であり、かつ、画像の定着を行うために加えられる200℃程度の熱に耐え得ることが要求される。この要求から、中間転写・定着ベルトに用いられる材料には、機械強度と耐熱性とを併有するポリイミド樹脂が適している。
ポリイミド材料に導電性を付与させる目的に、導電性を有するカーボンブラック微粒子をポリイミド樹脂中に分散させることが行われている。カーボンブラックをポリイミド樹脂中に分散させた成型品を製造するため、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸を有機極性溶媒中に溶解させたポリアミック酸溶液中にカーボンブラックを様々な方法で分散性を安定化させたカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液が使用される。当該カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を円筒型金型内面に塗布・乾燥・焼成処理を行って製造された半導電性ポリイミドベルトが開示されている(特許文献5〜6)。
また、基材ポリイミド無端ベルト表面層に抵抗値の異なる表面層を形成して、ベルト表面の抵抗のバラツキを低減して、電子写真装置に搭載した際の、転写画質を向上させたポリイミド無端ベルトが開示されている(特許文献7〜10)。
特開平5−200904号公報 特開平6−228335号公報 特開平6−149083号公報 特開平6−258960号公報 特開2002−148951号公報 特開2002−148957号公報 特開2001−125388号公報 特開2002−86465号公報 特開2002−86599号公報 特開2004−205623号公報
本発明の課題は、層間に明確な界面が存在せず、当該界面での接合性の低下が起こらず、層間剥離が防止され力学的に強固な無端ベルト及びその製造方法を提供することである。また、本発明の課題は、当該無端ベルトを備えた画像形成装置を提供することである。また、本発明の課題は、層間に明確な界面が存在せず、当該界面での接合性の低下が起こらず、層間剥離が防止され力学的に強固な機能性膜及びその製造方法を提供することである。また、本発明の課題は、前記無端ベルトを利用した中間転写ベルト、転写搬送ベルト、及び、搬送装置を提供することである。
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
第1組成物及び第1組成物とは異なる第2組成物を少なくとも含み、且つ前記第1組成物に対する第2組成物の含有比率が膜厚方向で変化してなる層を有し、前記第1組成物と第2組成物とは、樹脂材料と導電剤とを少なくとも含む組成物であって当該樹脂材料の種類が互いに異なり、前記樹脂材料に対する導電剤の含有比率が互いに異なることを特徴とする無端ベルトである。
請求項2に係る発明は、
前記第1組成物に対する前記第2組成物の含有比率が、膜厚方向で線形的に変化してなることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルトである。
請求項に係る発明は、
第1組成物を含む第1塗工液と第1組成物とは異なる第2組成物を含む第2塗工液とを、吐出量をそれぞれ相対的に変化させつつ被塗布物上に吐出して塗膜を形成する工程を有し、前記第1組成物と第2組成物とは、樹脂材料と導電剤とを少なくとも含む組成物であって当該樹脂材料の種類が互いに異なり、前記樹脂材料に対する導電剤の含有比率が互いに異なることを特徴とする無端ベルトの製造方法。
請求項に係る発明は、
前記第1塗工液及び前記第2塗工液の吐出の方式が、インクジェット方式であることを特徴とする請求項に記載の無端ベルトの製造方法である。
請求項に係る発明は、
請求項1又は請求項2に記載の無端ベルトを備えることを特徴とする画像形成装置である。
請求項に係る発明は、
第1組成物及び第1組成物とは異なる第2組成物を少なくとも含み、且つ前記第1組成物に対する第2組成物の含有比率が膜厚方向で変化してなる層を有し、前記第1組成物と第2組成物とは、樹脂材料と導電剤とを少なくとも含む組成物であって当該樹脂材料の種類が互いに異なり、前記樹脂材料に対する前記導電剤の含有比率が互いに異なることを特徴とする中間転写ベルトである。
請求項に係る発明は、
第1組成物及び第1組成物とは異なる第2組成物を少なくとも含み、且つ前記第1組成物に対する第2組成物の含有比率が膜厚方向で変化してなる層を有し、前記第1組成物と第2組成物とは、樹脂材料を少なくとも含む組成物であって当該樹脂材料の種類が互いに異なることを特徴とする転写搬送ベルトである。
請求項に係る発明は、
請求項1又は請求項2に記載の無端ベルトを備え、該無端ベルトにより被搬送物を搬送することを特徴とする搬送装置である。
請求項1に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、層間に明確な界面が存在せず、当該界面での接合性の低下が起こらず、異なる樹脂種の積層体でも、層間剥離が防止され力学的に強固なベルトとなる、といった効果を奏する。
また、請求項1に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、電荷の蓄積しやすい明確な界面が存在しないため、ベルトに対して印加する印加電圧、温度・湿度など環境により放電させる量が異なることがなく、抵抗値の大きなバラツキが生じるこがなくなる、といった効果を奏する。また、層間剥離が生じ難いので、電気特性が長期に渡り安定する、といった効果を奏する。
更に、請求項1に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、層間剥離が生じやすい明確な界面が存在し難いため、異なる樹脂種の積層体でも、当該層間剥離が良好に防止される、といった効果を奏する。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、急激な組成変化が生じ難く、より明確な界面が存在しない、といった効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、層間に明確な界面が存在せず、界面が明確に存在せず、当該界面での接合性の低下が起こらず、層間剥離が防止され力学的に強固なベルトが得られる、といった効果を奏する。
また、請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、電荷の蓄積しやすい明確な界面が存在し難いため、ベルトに対して印加する印加電圧、温度・湿度など環境により放電させる量が異なることがなく、抵抗値の大きなバラツキが生じるこがなくなる、といった効果を奏する。また、層間剥離が生じ難いので、電気特性が長期に渡り安定する、といった効果を奏する。
更に、請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、層間剥離が生じやすい明確な界面が存在し難いため、異なる樹脂種の積層体でも、当該層間剥離が良好に防止される、といった効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、塗布液の液滴を安定して被塗布物の所定領域に正確に吐出して着弾させることができ、各組成物の含有比率を膜厚方向で変化させやすい、といった効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、長期に渡り、品質に優れた画像が得られる、といった効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、層間に明確な界面が存在せず、当該界面での接合性の低下が起こらず、層間剥離が防止され力学的に強固な中間転写ベルトとなる効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、層間に明確な界面が存在せず、当該界面での接合性の低下が起こらず、層間剥離が防止され力学的に強固な転写搬送ベルトとなる効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、長期に渡り、搬送性に優れた搬送装置を得ることができる効果を奏する。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、機能・作用が共通する機能を有する部材には、全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る無端ベルトを示す概略構成図である。図2は、第1実施形態に係る無端ベルトにおける各組成物の膜厚方向の含有比率分布を示す概念図である。図3は、第1実施形態に係る無端ベルトにおける導電剤の膜厚方向の含有比率分布を示す概念図である。図4は、第1実施形態に係る無端ベルトにおける各樹脂材料の膜厚方向の含有比率分布を示す概念図である。
第1実施形態に係る無端ベルト50は、図1に示すように、ベルト基材52と、ベルト基材52の外周面に形成された表面層54とを有している。表面層54は、ベルト基材52側からP層54A、Q層54B、R層54Cが順次積層された構成となっている。
ベルト基材52は、組成物Aから構成されている。表面層54におけるP層54Aは組成物Aから構成され、Q層54Bは組成物A及び組成物Bから構成され、R層54Cは組成物Bから構成されている。
各層を構成する組成物A及び組成物Bは、例えば樹脂材料と導電剤を少なくとも含んで構成され、互いにその組成が異なっている。そして、Q層54Bは組成物Aに対する組成物Bの含有比率が膜厚方向で変化している。
具体的には、無端ベルト50は、例えば、組成物Aの膜厚方向の含有比率に着目すると、図2(A)に示すように、ベルト基材52では100質量%で一定であり、表面層54におけるP層54Aでは100質量%で一定であり、Q層54BはP層54A側からR層側にかけて100質量%乃至0質量%に線形的(一次関数的)に減じており、R層54Cでは0質量%で一定である。ここで、「一定」とあるが、例えば±5%程度は振れてもよい。以下同様である。
一方、組成物Bの膜厚方向の含有比率に着目すると、図2(B)に示すように、ベルト基材52では0質量%で一定であり、表面層54におけるP層54Aでは0質量%で一定であり、Q層54BはP層54A側からR層側にかけて0質量%〜100質量%に線形的(一次関数的)に増加しており、R層54Cでは100質量%で一定である。
ここで、「組成物の組成が異なる」とは、組成物に含まれる成分の化学種、又はその配合量が異なることを意味する。例えば、成分の樹脂材料の化学種が異なる場合、樹脂材料を構成する個々のモノマー原料単位の化学種、その共重合体配合比、分子量、分子量分布、共重合体のモノマー配列(ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体)、高分子鎖形状(直鎖状、グラフト状、梯子状、デンドリマー)が異なることをも意味する。
そして、例えば、組成物Aと組成物Bとが異なる導電剤濃度である場合(組成物Aよりも組成物Bの方が導電剤濃度が大きい場合)、導電剤の膜厚方向の含有比率に着目すると、図3に示すように、ベルト基材52では組成物Aでの含有比率と同じで一定であり、表面層54におけるP層54Aでは組成物Aでの含有比率と同じで一定であり、Q層54BはP層54A側からR層側にかけて組成物Aでの含有比率から組成物Bでの含有比率に線形的(一次関数的)に減じており、R層54Cでは組成物Bでの含有比率で一定となる。ここで、「同じ」とあるが、例えば±5%程度は振れてもよい。以下、同様である。
また、組成物Aと組成物Bとが異なる樹脂種を含む場合、組成物Aの樹脂種の膜厚方向の含有比率に着目すると、図4(A)に示すように、ベルト基材52では組成物Aでの含有比率と同じで一定であり、表面層54におけるP層54Aでは組成物Aでの含有比率と同じで一定であり、Q層54BはP層54A側からR層側にかけて組成物Aでの含有比率から0質量%へと線形的(一次関数的)に減じており、R層54Cでは含有比率0質量%で一定となる。
一方、組成物Bの樹脂種の膜厚方向の含有比率に着目すると、図4(B)に示すように、ベルト基材52では0質量%と一定であり、表面層54におけるP層54Aでは0質量%と一定であり、Q層54BはP層54A側からR層側にかけて0質量%から組成物Bでの含有比率へと線形的(一次関数的)に増加しており、R層54Cでは組成物Bでの含有比率と同じで一定となる。
なお、Q層54Bにおける組成物A及び組成物B、並びに、導電剤及び樹脂種の含有比率は、線形的(一次関数的)に増減する形態を示しているが、これに限られず、例えば、各図中点線で示すように2次関数的に増減する形態であってもよい。以下、Q層54Bと同様な構成を濃度傾斜構造を持つ層と称する場合がある。
次に、第1実施形態に係る無端ベルト50の製造方法について説明する。ここで、図5は、第1実施形態に係る無端ベルトを製造するための塗布装置を示す概略構成図である。図6は、第1吐出ヘッド及び第2吐出ヘッドの吐出量変化を示す図である。なお、図5では、主要部を示し、他の構成は省略しており、(A)が上面図であり、(B)が正面図であり、(C)が側面図である。
第1実施形態に係る無端ベルト50は、例えば、次のようにして製造する。ここで、用いる塗工液Aに含まれる組成物A及び塗工液Bに含まれる組成物Bは、共に樹脂材料又は樹脂前駆体と導電剤とを含み、且つ互いに組成が異なっている。なお、塗工液の例えば、粘度3mPa・s程度のものから粘度300mPa・s程度の範囲で設定することができる。
まず、組成物Aを含有する塗工液Aを円筒金型に塗布して塗膜を形成した後、所定の温度で乾燥・加熱して(ポリイミド樹脂前駆体を用いた場合、加熱によりイミド転化させる)、ベルト基材52を得る。
次に、塗布装置10にベルト基材52を配置する。塗布装置10は、図5に示すように、例えば、被塗布物としてのベルト基材52を保持する円筒状の保持体14と、組成物Aを含有する塗工液Aの液滴を吐出するための第1吐出ヘッド12Aと、組成物Bを含有する塗工液Bの液滴を吐出するための第2吐出ヘッド12Bと、を備えている。
第1吐出ヘッド12Aと第2吐出ヘッド12Bとは、被塗布物であるベルト基材52の幅(軸方向長さ)と同等若しくはそれ以上の長さを持つ吐出ヘッドであり、その長手方向がベルト基材52の幅方向(軸方向)と平行(ここで平行とは厳密に平行である必要はない。以下同様である)で配置されている。なお、この平行配置に限られず、ヘッドの長手方向とベルト基材52の幅方向(軸方向)が交差するように配置してもよい。
また、第1吐出ヘッド12Aと第2吐出ヘッド12Bとは、互いに吐出する液滴の被塗布物への着弾位置が同じになるように配置されている。無論、第1吐出ヘッド12Aと第2吐出ヘッド12Bは、その吐出する液滴が被塗布物へ着弾する前に衝突して混和されつつ、被塗布物へ着弾するように配置させてもよく、着弾位置が異なるように配置してもよい。
第1吐出ヘッド12A及び第2吐出ヘッド12Bは、スプレー方式、インクジェット方式のいずれの方式でもよいが、液滴を安定して被塗布物の所定領域に正確に着弾させることができるインクジェット方式が最適である。
インクジェット方式の吐出ヘッドは、微細加工して作製された特定の解像度をもつノズルから連続的に吐出した後、液滴化する連続型でもよいし、ノズルから圧電素子や発熱抵抗素子により間欠的に塗工液の液滴を吐出する間欠型(オンデマンド方式)のいずれもよいが、比較的高粘度の塗工液を吐出する場合、連続型の吐出ヘッドであることがよい。
液滴の吐出の解像度(1インチ当たりのドット数:dpi)は、液滴が着弾したあとに液滴が拡がって隣接する液滴と接触し、最終的には膜として均一につながるように調整することが好ましく、被塗布物の表面張力や、着弾した時の液滴の広がり方、吐出時の液滴の大きさ、塗工溶剤濃度や塗工溶媒種などに起因した溶剤蒸発速度等を考慮して塗布すればよい。これらの条件は塗工液の材料種及び材料組成と被塗布物表面の物性により決まるものであり、調整することがよい。
吐出ヘッドの吐出量は、例えば、ノズルの口径、吐出圧、塗工液の粘度、塗工液の固形分率などによって決定される。塗工を安定に行うために、上記吐出される塗工液量を調整することができる。そして、吐出ヘッドの吐出量の増減は、例えば、ピエゾ素子を利用した圧電素子による方式の場合、印加する電圧周波数を調整することで行われる。この電圧周波数の範囲としては例えば100Hz以上10000Hz以下の範囲である。また、吐出ヘッドの一つのノズルから吐出される液滴の吐出量は例えば1pl以上500pl以下の範囲であることがよい。
この構成の塗布装置10では、ベルト基材52保持体14に嵌め込んで保持した後、図示しない駆動装置により保持体を回転させる。そして、塗工液Aを第1吐出ヘッド12Aから一定の吐出量で吐出し(図6参照)、塗工液Aの液滴をベルト基材52上に吐出して上にP塗膜を形成する。
続けて、第2吐出ヘッド12Bから塗工液Bの液滴吐出を開始しつつ塗工液Bの吐出量を所定時間△T毎に段階的に所定量△Dの割合で0になるまで減じると共に、これに応じて塗工液Bの吐出量を増加させ(図6参照)、Q塗膜を形成する。
この際、塗工液の吐出量の増減は、一操作によって被塗布物の塗布面全面に各塗工液を着弾させる時間△T毎に段階的に行う。具体的には、本実施形態の場合、被塗布物としてのベルト基材52が一回転する時間△T毎ごとに、塗工液の吐出量を段階的に所定量△Dの割合で増減させる。これにより、塗膜内部(層内部)の同じ厚み方向の深さでの組成が同一となる。また、本実施形態では、塗工液の吐出量を所定時間△T毎に一定量増減させた形態を説明しているが、図6中点線で示すように、所定時間△T毎に増減させる吐出量(所定量△D)を変えてもよい(例えば、増減させる吐出量を所定時間毎に一定量増加させる等)。
なお、このように段階的に吐出量を増減させても、塗工液の液滴が既に塗布されている塗膜面と混和するため、上記厚み方向で連続的に組成変化させた濃度傾斜構造を実現することができる。また、本実施形態では互いの吐出量を増減させた形態を説明しているが、吐出量は相対的に変化させれば特に制限はない。
次に、上記塗工液Aの吐出量を停止した後(即ち吐出量を0にした後)、塗工液Bの吐出をその吐出量が一定としつつ継続して(図6参照)、R塗膜を形成する。
このようにして、P塗膜、Q塗膜、R塗膜を順次形成する。なお、表現上、これら塗膜の形成工程を別々に記載したが、これら形成工程は一連の操作により行われることがよい。
そして、P塗膜、Q塗膜、R塗膜を形成後、乾燥、必要に応じて加熱を行い(例えば、樹脂材料としてポリイミド樹脂前駆体やポリアミドイミド樹脂前駆体を使用した場合、加熱によりイミド転化を行う)、P層54A、Q層54B、R層54Cが順次積層された表面層54を形成する。
このようにして、本実施形態に係る無端ベルト50を製造することができる。以下、本実施形態に係る無端ベルトを構成する材料について説明する。無端ベルト50は、ベルト基材52と表面層54とで構成されているが、いずれも樹脂材料及び導電剤を少なくとも含んでいる(但し、構成する層間で組成が異なる)。無論、導電剤を用いなくてもよい。
次に、樹脂材料について説明する。樹脂材料としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂が挙げられ、中でも、ポリイミド樹脂、又はポリアミドイミド樹脂が好適であり、特にポリイミド樹脂が好適である。
ポリイミド樹脂の前駆体は、例えば、以下に示すポリアミック酸組成物が挙げられる。 ポリアミック酸組成物は、例えば、ポリアミック酸構造を含むポリマーと、塗工溶媒と、触媒としての3級アミンと、を含有して構成されている。また、必要に応じて、カルボン酸無水物などの添加物を含むこともできる。なお、ポリイミド樹脂前駆体の組成は、一例であり、これらに限定されるわけではない。
以下、各組成物について説明する。
((A)ポリアミック酸構造を含むポリマー)
ポリアミック酸構造を含むポリマーは、ポリイミド前駆体となり得るポリマーであり、ポリアミック酸、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体が挙げられる。
ポリアミック酸としては、下記一般式(1)で表されるポリアミック酸が好適に挙げられる。また、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体としては、下記一般式(2)で表されるポリアミック酸−ポリイミド共重合体が好適に挙げられる。
一般式(1)中、R1は4価の有機基を示し、R2は2価の有機基を示す。一方、一般式(2)中、R3は4価の有機基を示し、R4は2価の有機基を示し、R5は4価の有機基を示し、R6は2価の有機基を示す。
ここで、2価の有機基R2、R4、R6は、対応するジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基構造として表される。また、4価の有機基R1、R3、R5は、対応するテトラカルボン酸化合物より4つのカルボニル基を除いたその残基として表される。
以下、ポリアミック酸、及びポリアミック酸−ポリイミド共重合体をより詳細に説明する。
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを等モル量を有機極性溶媒中で重合反応させて得られる。また、ポリイミド−ポリアミック酸共重合体は、ポリアミック酸重合後、部分的にイミド化反応を行い合成される。
−テトラカルボン酸二無水物−
ポリアミック酸の製造に用いられ得るテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も使用できる。
芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げることができる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物が好ましく、さらに、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、が好適に使用される。
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
−ジアミン化合物−
次にポリアミック酸の製造に用いられ得るジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等を挙げることができる。
ジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、が好ましい。
これらのジアミン化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
−テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との組み合わせ−
ポリアミック酸としては、望ましくは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族系ジアミンと含むものが好ましい。
−合成溶媒−
このポリアミック酸の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンの如き芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミック酸及びポリアミック酸−ポリイミド共重合体を溶解するものであれば特に限定されない。
−ポリアミック酸重合時の固形分濃度−
ポリアミック酸溶液の固形分濃度は特に規定されるものではないが、例えば5質量%以上50質量%以下が好ましく、さらに10質量%以上30質量%以下が好ましい。
−ポリアミック酸重合温度−
ポリアミック酸重合時の反応温度としては、例えば0℃以上80℃以下の範囲で行われる。
−イミド化反応−
ポリアミック酸−ポリイミド共重合体は、上記ポリアミック酸を加熱処理してイミド化する方法、又は脱水剤及び/又は触媒を作用させる化学的イミド化方法により、ポリアミック酸中のポリアミック酸構造の少なくとも一部を脱水閉環反応によってイミド基に転換して得られる。
加熱処理による方法における加熱温度は、例えば、通常60℃以上200℃以下とされ、望ましくは100℃以上170℃以下とされる。
一方、化学的イミド化方法は、ポリアミック酸溶液中に脱水剤及び/又は触媒を添加し化学的にイミド化反応を進行させる。脱水剤は、1価カルボン酸無水物であれば特に限定はされない。例えば、無水酢酸、プロピオン酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、ブタン酸無水物及びシュウ酸無水物などの酸無水物から選ばれる1種類又は2種類以上を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01モル以上2モル以下とするのが好ましい。
触媒としては、例えばピリジン、ピコリン、コリジン、ルチジン、キノリン、イソキノリン、トリエチルアミンなどの3級アミンから選ばれる1種類又は2種類以上を用いることができるが、これらに限定されるものではない。触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01モル以上2モル以下とするのが好ましい。
この化学的イミド化反応は、ポリアミック酸溶液中に脱水剤及び/又は触媒を添加し必要に応じて加熱することにより行われる。脱水閉環の反応温度は、通常0℃以上180℃以下、望ましくは60℃以上150℃以下とされる。
部分的にイミド化されていれば、特に制限はないが、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比は、0/100(モル/モル)乃至80/20(モル/モル)であることが好ましい。イミド基とアミック酸基との組成比が、80/20(モル/モル)を超えると、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体が不溶化する可能性がある。
ポリアミック酸−ポリイミド共重合体に、作用させた脱水剤及び/又は触媒は除去しなくとも良いが、以下の方法で除去しても良い。作用させた脱水剤及び/又は触媒を除去する方法としては、減圧加熱、又は再沈殿法を用いることができる。減圧加熱は、真空下80℃以上120℃以下の温度で行われ、触媒として使用される3級アミン、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸を留去する。また、再沈殿法は、触媒、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸を溶解させ、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体は溶解させない貧溶媒を用い、この貧溶媒の大過剰中に、反応液を加えることによって行われる。貧溶剤としては、特に制限はなく、水や、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、アセトンやメチルエチルケトンの如きケトン系溶剤、ヘキサンなどの如き炭化水素系溶剤、などが使用できる。析出するポリアミック酸−ポリイミド共重合体は、ろ別・乾燥後、再度γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に溶解させる。
ポリアミック酸構造を含むポリマーは、そのポリアミック酸組成物中の固形分濃度が、ベルト材料として所望の厚みを得る観点から10質量%以上であることが好ましい。この固形分濃度として望ましくは、15質量%以上であり、その上限は50質量%である。
(塗工溶剤)
塗工溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンの如き芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミック酸及びポリアミック酸−ポリイミド共重合体を溶解するものであれば特に限定されない。
塗工溶媒は、先のポリアミック酸合成時から使用しても、ポリアミック酸重合後に所定の溶媒に置換してもよい。溶媒の置換には、ポリアミック酸溶液に所定量の溶剤を添加して希釈する方法、ポリマーを再沈殿した後に所定溶媒中に再溶解させる方法、溶剤を徐々に留去しながら所定溶媒を添加して組成を調整する方法のいずれかでもよい。
(3級アミン)
3級アミンは、イミド化反応の触媒と働くものであり、例えば、ピリジン、ピコリン、コリジン、ルチジン、キノリン、イソキノリン、トリエチルアミンから選ばれる1種又は2種以上を好適に使用することができる。
3級アミンの含有率は、例えば、ポリアミック酸組成物中樹脂分100質量部に対して0.1以上30質量部以下添加されうる。
(カルボン酸無水物)
カルボン酸無水物は、イミド化反応時の脱水剤として働き、イミド化反応を促進するものである。カルボン酸無水物としては、無水酢酸、トリフルオロ酢酸無水物、プロピオン酸無水物、ブタン酸無水物及びシュウ酸無水物などが挙げられ、これらの中でも無水酢酸が好適である。これらは、1種類又は2種類以上用いてもよい。
カルボン酸無水物の含有率は、例えばポリアミック酸組成物中樹脂分100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下添加されうる。
次に、導電剤について説明する。導電剤としては、導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm未満、以下同様である)もしくは半導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm以上1013Ω・cm以下、以下同様である)の粉末(1次粒径が10μm未満の粒子からなる粉末が好ましく、さらに好ましくは1次粒径が1μm以下の粒子からなる粉末)が使用でき、所望の電気抵抗を得ることができれば、特に制限はないが、ケッチエンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、アルミニウムやニッケル等の金属、酸化錫等の酸化金属化合物、チタン酸カリウム等が例示できる。そしてこれらを単独、あるいは併用して使用してもよい。これら中でも、pH5以下の酸性カーボンブラックを望ましくは添加することがよい。
―酸性カーボンブラック―
酸性カーボンブラックは、カーボンブラックを酸化処理することで、表面にカルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等を付与して製造することができる。この酸化処理は、高温(例えば、300℃以上800℃以下)雰囲気下で、空気と接触され、反応させる空気酸化法、常温(例えば25℃、以下同様)下で窒素酸化物やオゾンと反応させる方法、及び高温(例えば300以上800℃以下)下での空気酸化後、低い温度(例えば20以上200℃以下)下でオゾン酸化する方法などにより行うことができる。
具体的には、酸性カーボンブラックは、例えばコンタクト法により製造することができる。このコンタクト法としては、チャネル法、ガスブラック法等が挙げられる。また、酸性カーボンブラックは、ガス又はオイルを原料とするファーネスブラック法により製造することもできる。必要に応じて、これらの処理を施した後、硝酸などで液相酸化処理を行ってもよい。
なお、酸性カーボンブラックは、コンタクト法で製造することができるが、密閉式のファーネス法によって製造するのが通常である。ファーネス法では通常高pH・低揮発分のカーボンブラックしか製造されないが、これに上述の液相酸処理を施してpHを調整することができる。このためファーネス法製造により得られるカーボンブラックで、後工程処理によりpHが5以下となるように調節されたカーボンブラックも、適用し得る。
酸性カーボンブラックのpH値は、例えば、pH5.0以下であるが、望ましくはpH4.5以下であり、より望ましくはpH4.0以下である。
ここで、pHは、カーボンブラックの水性懸濁液を調整し、ガラス電極で測定することで求められる。また、酸性カーボンブラックのpHは、酸化処理工程での処理温度、処理時間等の条件によって、調整することができる。
酸性カーボンブラックは、例えば、その揮発成分が1%以上25%以下、望ましくは2%以上20%以下、より望ましくは、3.5%以上15%以下含まれていることが好適である。
酸性カーボンブラックとして、具体的には、例えば、デグサ社製の「プリンテックス150T」(pH4.5、揮発分10.0%)、同「スペシャルブラック350」(pH3.5、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック100」(pH3.3、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック250」(pH3.1、揮発分2.0%)、同「スペシャルブラック5」(pH3.0、揮発分15.0%)、同「スペシャルブラック4」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック4A」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック550」(pH2.8、揮発分2.5%)、同「スペシャルブラック6」(pH2.5、揮発分18.0%)、同「カラーブラックFW200」(pH2.5、揮発分20.0%)、同「カラーブラックFW2」(pH2.5、揮発分16.5%)、同「カラーブラックFW2V」(pH2.5、揮発分16.5%)、キャボット社製「MONARCH1000」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1300」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1400」(pH2.5、揮発分9.0%)、同「MOGUL−L」(pH2.5、揮発分5.0%)、同「REGAL400R」(pH4.0、揮発分3.5%)等が挙げられる。
−酸性カーボンブラックの添加量−
酸性カーボンブラックは、導電性粉末としての添加量を高くしてもよい。
酸性カーボンブラックの含有量は、例えば、10質量%以上30質量%以下が望ましく、より望ましくは18質量%以上30質量%以下である。
以下、上記ポリイミド樹脂の前駆体としてのポリアミック酸組成物を用いた樹脂層(ベルト基材、表面層)の形成方法の一例について詳細に説明する。
まず、例えば、上記本発明のポリアミック酸組成物を次のようにして調整する。まず、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を有機溶媒中で重合反応させて得られたポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸溶液をメタノールなどの貧溶媒中に添加してポリアミック酸を析出させ再沈殿精製する。析出したポリアミック酸ろ別した後、γ−ブチロラクトンなどの溶媒に再溶解させ、ポリアミック酸溶液を得る。
ポリアミック酸溶液に、所定量の3級アミン、必要に応じて無水カルボン酸を加えて攪拌溶解させ、ポリアミック酸組成物を得る。
次に、この溶液に、カーボンブラックなどの導電剤をポリアミック酸樹脂の乾燥質量100質量部に対して合計5質量部以上60質量部以下含有せしめる。
ここで、この導電剤を分散させ、その凝集体を壊砕する方法としては、ミキサーや攪拌子による攪拌、平行ロール、超音波分散などの物理的手法、さらには分散剤の導入などの化学的手法が例示されるが、これらに限定されるものではない。
次に、この溶液を被塗布物の塗布面に塗布して塗膜を形成する。そして、この塗膜を、加熱環境に置き、含有溶媒の30質量%以上望ましくは50質量%以上を揮発させるための乾燥を行う。乾燥温度は、例えば、50℃以上200℃以下の温度範囲で乾燥を行う。
更に、塗膜を150℃以上450℃以下で加熱し、イミド転化反応を進行させる。イミド化の温度は、原料のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類、又は添加される3級アミンによって、それぞれ異なるが、イミド化が完結する温度に設定することがよい。
このようにして、ポリイミド樹脂の層を形成することができる。
以上、説明した本実施形態に係る無端ベルトは、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、これらの複合装置といった電子写真方式の画像形成装置における中間転写ベルト、転写搬送ベルト、搬送ベルト、定着ベルトなど種々の用途に供することが可能である。
なお、本実施形態では、ベルト基材52、表面層54ともに樹脂材料及び導電剤を含む組成物により構成した形態を説明したが、当該表面層54の代わりに、フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等)などを含む離型層などを設けた形態であってもよい。フッ素樹脂被膜の厚さは2μm以上30μm以下の範囲が好ましい。また、離型性の樹脂被膜には、耐久性の向上や帯電防止のためにカーボンブラックなどの導電剤が分散含有されていてもよい。この形態の場合、例えば、ベルト基材と離型層との間に上記Q層と同様に樹脂材料及び導電剤を含む組成物とフッ素樹脂を含む組成物との濃度傾斜構造を持った層を介在させる。この離型層をベルト基材(但し導電剤を含まなくても良い)に外周面に形成した無端ベルトは、電子写真方式の画像形成装置における定着ベルトとして適用され得る。
本実施形態では、無端ベルト50を、ベルト基材52と表面層54とで構成したが、これに限られず、例えば、表面層54の層構成、即ちP層54A、Q層54B、R層54Cで構成したベルトであってもよい。
本実施形態では、異なる組成物を2種使用した形態を説明したが、これに限られず、3種以上の互いに異なる組成物を使用した形態であってもよい。加えて、層構成も上記形態に限られず、所望の積層構成とすることができる。具体的には、例えば、以下に示す層構成とすることができる。なお、以下、「X−Y層」とは、厚み方向で連続して組成物Yに対する組成物Xの含有比率が低減し、組成物Xに対する組成物Yの含有比率が増加する濃度傾斜構造を持つ層を意味する。
・組成物A−組成物B層(この単独層)
・組成物A/組成物A−組成物B層
・組成物A−組成物B層/組成物B層
・組成物A層/組成物A−組成物B層/組成物B−組成物C層/組成物C
ここで、3種以上の互いに異なる組成物を用いる場合、3種以上の互いに異なる組成物の含有比率が互いに膜厚方向で変化してなる層としてもよい。
本実施形態では、濃度傾斜構造を持った層を無端ベルトに適用した形態を説明したが、これに限られず、各種電子デバイス、各種光学デバイスなどに使用される電子機能素子、光学機能素子などの機能性膜及びその製造方法に適用することもでき得る。
この形態の場合、例えば、半導体素子、抵抗体素子、発熱体素子、などの各種電子デバイス。ホログラフィック光学素子、光メモリー素子、光導波路、光非可逆回路素子、光分波素子、光分岐結合素子、光スイッチ素子、な液晶ディスプレイに使用されている、直線偏光板、楕円光偏光板、視野角拡大フィルム、光拡散板などの光学シートなどの光学デバイス等に利用される機能性膜などが挙げられる。
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。第2実施形態に係る画像形成装置は、中間転写ベルトとして上記第1実施形態に係る無端ベルトを適用した形態である。
第2実施形態に係る画像形成装置100は、図7に示すように感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cを備えており、矢線A方向への回転に伴いその表面には周知の電子写真プロセス(図示せず)によって画情報に応じた静電潜像が形成されるものであり。
そして、この感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cの周囲には、それぞれ、ブラック(BK)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色に対応した現像器105〜108が配設されており、感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cに形成された静電潜像をそれぞれの現像器105〜108で現像してトナー像を形成するようになっている。従って、例えば、感光体ドラム101Yに書き込まれた静電潜像はイエローの画情報に対応したものであり、この静電潜像はイエロー(Y)のトナーを内包する現像器106で現像され、感光体ドラム101Y上にはイエローのトナー像が形成される。
中間転写体102は感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cの表面に接触されるように配置されたベルト状の中間転写ベルトであり、複数のロール117〜120に張架されて矢線B方向へ回転する。
中間転写体102には、既述の第1実施形態に係るポリイミド無端ベルトが適用されている。
上記感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cに形成された未定着トナー像は、感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cと上記中間転写体102とが接するそれぞれの1次転写位置で、順次感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cから中間転写体102の表面に各色が重ね合わされて転写される。
この1次転写位置において、中間転写体102の裏面側には中間転写体102の不必要な領域へ転写電界が作用するのを防止するための遮蔽部材121〜124により転写前接触領域(転写プレニップ)への帯電を防止したコロナ放電器109〜112が配設されており、このコロナ放電器109〜112にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加することで、感光体ドラム101BK、101Y、101M、101C上の未定着トナー像は中間転写体102に静電吸引される。この1次転写手段は、静電力を利用したものであ*れば、コロナ放電器に限らず電圧が印加された導電性ロールや導電性ブラシなどでも良い。
このようにして中間転写体102に1次転写された未定着トナー像は、中間転写体102の回転に伴って記録媒体103の搬送経路に面した2次転写位置へと搬送される。2次転写位置ではセラミックヒーターやハロゲンランプなどの加熱源を内蔵した加熱転写ロール120が中間転写体102の裏面側に接している。また、2次転写位置において上記加熱転写ロール120に対向して加圧ロール125が配設されている。加圧ロール125は、その表面にフッ素樹脂を被覆したものが好ましく、また、加熱転写ロール120と同様に加熱源を内蔵してもよい。
送りローラ126によって所定のタイミングで給紙部113から搬出された記録媒体103は、この加圧ロール125と中間転写体102との間に挿通される。この時、上記加熱転写ロール120と加圧ロール125との間に電圧を印加しても良い。中間転写体102に保持された未定着トナー像は上記2次転写位置において記録媒体103に熱溶融転写される。
そして、未定着トナー像が転写された記録媒体103は剥離爪114によって中間転写体102から剥がされ、搬送ベルト115によって定着器(図示せず)に送り込まれて未定着トナー像の定着処理がなされる。このとき、前記2次転写装置(加熱転写ロール120及び加圧ロール125)により定着を兼ねてもよいが、上記のように定着工程を独立させることが好ましい。
なお、上記加圧ロール125、剥離爪114及びクリーニング装置116は中間転写体102と接離自在に配設されており、2次転写される迄、これら部材は中間転写体102から離間している。
なお、本実施形態に係る画像形成装置の構成としては、上記形態に限定されるわけではなく、例えば、像保持体、像保持体表面を帯電する帯電手段、像保持体表面を露光し静電潜像を形成する露光手段、像保持体表面に形成された潜像を現像剤にて現像し、トナー像を形成する現像手段、被転写材上のトナー像を転写する転写手段、被転写材上のトナー像を定着する定着手段、像保持体に付着したトナーやゴミ等を除去するクリーニング手段、像保持体表面に残留している静電潜像を除去する除電手段、など必要に応じて公知の方法で備えた画像形成装置であればよい。
この構成の画像形成装置において、中間転写ベルトを利用した2次転写方式の転写手段や、定着ベルトを利用したベルト方式の定着手段のベルトとして、上記第1実施形態に係る無端ベルトをその構成に応じて適用し得る。
ここで、第1の実施形態の無端ベルトをベルト方式の定着手段における定着ベルトに適用する場合、その装置構成は例えば、1つ以上の駆動部材と、前記1つ以上の駆動部材により従動回転可能な無端ベルト(定着ベルト)と、押圧部材とを少なくとも備え、前記1つ以上の駆動部材のいずれか1つの駆動部材表面と、前記無端ベルト外周面とが、前記無端ベルト内周面に接して配置され、前記無端ベルト外周面を前記駆動部材表面へと押圧する前記押圧部材により圧接部(ニップ部)を形成し、未定着トナー像をその表面に保持する記録媒体を加熱しながら前記ニップ部を通過させることにより、前記未定着トナー像を前記記録媒体体表面に定着させる画像定着装置において、前記無端ベルトとして第1実施形態の無端ベルトを用いることが好ましい。
なお、定着手段は、上記に説明したような構成・機能の他にも必要に応じて他の構成・機能を有していてもよく、例えば、無端ベルトの内周面に潤滑剤を塗布して用いてもよい。潤滑剤としては公知の液体状の潤滑剤(例えば、シリコーンオイル等)を用いることができる。また潤滑剤は、無端ベルト内周面と接して設けられたフェルト等を介して連続的に供給することができる。
また、定着手段は、押圧部材により、ニップ部の無端ベルト軸方向の圧力分布が調整できることが好ましい。例えば、潤滑剤を用いる場合には、圧力分布を調整することにより、潤滑剤を無端ベルトの一端に寄せたり、中央部に集めたり等、内周面に塗布された潤滑剤の存在状態を任意に制御することができる。このため、例えば、無端ベルトの一端に余分な潤滑剤を集めて回収したり、無端ベルトの中央部に潤滑剤を移動させるようにしたりすることができ、無端ベルト端部からの潤滑剤の漏れによる装置内の汚染を防ぐことができる。
なお、このような圧力分布の調整は、潤滑剤を用いると共に、更に使用する無端ベルトの内周面に既述したような筋状凹凸粗さが付与されている場合に特に有用である。この場合、筋状凹凸粗さの筋の方向も考慮してニップ部の圧力分布を調整することにより、内周面に塗布された潤滑剤の存在状態の制御がより容易となる。
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。第3実施形態に係る画像形成装置は、転写搬送ベルトとして上記第1実施形態に係る無端ベルトを適用した形態である。
第3実施形態に係る画像形成装置200は、図8に示すように、ユニット200Y、200M、200C、200Bkと、記録紙(被転写体)搬送用ベルト(転写搬送ベルト)206と、転写ロール207Y、207M、207C、207Bkと、記録紙搬送ロール208と、定着手段209とを備えている。この記録紙(被転写体)搬送用ベルト206として、前記第1の実施形態の無端ベルトを備える。
ユニット200Y、200M、200C、200Bkは、矢印の時計方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転可能にそれぞれ像保持体である感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkが備えられている。感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkの周囲には、帯電手段202Y、202M、202C、202Bkと、露光手段203Y、203M、203C、203Bkと、各色現像器(イエロー現像器204Y、マゼンタ現像器204M、シアン現像器204C、ブラック現像器204Bk)と、感光体クリーナー205Y、205M、205C、205Bkとがそれぞれ配置されている。
ユニット200Y、200M、200C、200Bkは、記録紙搬送用ベルト206に対して4つ並列に、ユニット200Y、200M、200C、200Bkの順に配置されているが、ユニット200Bk、200Y、200C、200Mの順等、画像形成方法に合わせて適当な順序を設定することができる。
記録紙搬送用ベルト206は、支持ロール210、211、212、213によって、矢印の反時計方向に感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkと同じ周速度をもって回転可能になっており、支持ロール212、213の中間に位置するその一部が感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkとそれぞれ接するように配置されている。記録紙搬送用ベルト206は、ベルト用クリーニング装置214が備えられている。
転写ロール207Y、207M、207C、207Bkは、記録紙搬送用ベルト206の内側であって、記録紙搬送用ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkとが接している部分に対向する位置にそれぞれ配置され、感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkと、記録紙搬送用ベルト221を介してトナー画像を記録紙(被転写材)Pに転写する転写領域(ニップ部)を形成している。
定着器209は、記録紙搬送用ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkとのそれぞれの転写領域(ニップ部)を通過した後に搬送できるように配置されている。
記録紙搬送ロール208により、記録紙Pは記録紙搬送用ベルト206に搬送される。
ユニット200Yにおいては、感光体ドラム201Yを回転駆動させる。これと連動して帯電手段202Yが駆動し、感光体ドラム201Yの表面を所定の極性・電位に一様に帯電させる。表面が一様に帯電された感光体ドラム201Yは、次に、露光手段203Yによって像様に露光され、その表面に静電潜像が形成される。
続いて該静電潜像は、イエロー現像器204Yによって現像される。すると、感光体ドラム201Yの表面にトナー画像が形成される。なお、このときのトナーは一成分系のものでもよいし二成分系のものでもよいが、ここでは二成分系トナーである。
このトナー画像は、感光体ドラム201Yと記録紙搬送用ベルト206との転写領域(ニップ部)を通過すると同じに、記録紙Pが静電的に記録紙搬送用ベルト221に吸着して転写領域(ニップ部)まで搬送され、転写ロール207Yから印加される転写バイアスにより形成される電界により、記録紙Pの外周面に順次、転写される。
この後、感光体ドラム201Y上に残存するトナーは、感光体ドラムクリーナ205Yによって清掃・除去される。そして、感光体ドラム201Yは、次の転写サイクルに供される。
以上の転写サイクルは、ユニット200M、200C、200Bkでも同様に行われる。
転写ロール207Y、207M、207C、207Bkによってトナー画像を転写された記録紙Pは、さらに定着器209に搬送され、定着が行われる。以上により記録紙上に所望の画像が形成される。
第3の実施形態では、第1の実施形態における無端ベルトを転写搬送ベルトとして用い、記録紙などの被搬送体を搬送しているが、記録紙の搬送に限定されるものではなく、記録紙以外の被搬送体、例えば、プラスチックで出来た媒体(例えばOHPシートなど)、カード、板などの搬送にも無端ベルトをすることができる。
なお、上記実施形態では、第1実施形態に係る無端ベルトを画像形成装置用のベルト部材(中間転写ベルト、転写搬送ベルト等)に適用した形態を説明したが、これに限られず、例えばシート等の被搬送物を搬送するためのベルトを備えた搬送装置における、当該ベルトに適用することもできる。
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
−塗工液(A−1)の作製−
N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略す)800g中に、ジアミン化合物として4,4‘−ジアミノジフェニルエーテル(以下ODAと略す)81.00g(404.6ミリモル)を加え、25℃で攪拌させながら溶解した。次いで、テトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下BPDAと略す)119.00g(404.6ミリモル)を徐々に添加した。テトラカルボン酸二無水物の添加・溶解後、反応液の温度を60℃まで加熱して、その後反応液温度を保持したまま20時間重合反応を行った。反応液を、#800のステンレスメッシュを用いてろ過して25℃まで冷却をして溶液粘度10Pa・s(E型粘度計)のポリアミック酸溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液1000gに、ポリビニル−2−ピロリドン(PVP)10gを添加・溶解させた後、導電剤としての乾燥した酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4:Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%:以下CBと略す)60gを徐々に添加した。ポールミルにて25℃の温度下12時間分散処理することによりカーボンブラックをポリアミック酸溶液に分散した後、#400ステンレスメッシュでろ過して以下の組成のカーボン分散ポリアミック酸溶液を得た。得られたカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液は、塗工液(A−1)として用いる。
なお、塗工液(A−1)の組成:ポリアミック酸(BPDA/ODA)/NMP/CB=200/800/60
−塗工液(A−2)の作製−
N−メチル−2−ピロリドン800g中に、ジアミン化合物として1,4−ジアミノベンゼン(以下PDAと略す)53.75g(497.1ミリモル)を加え、25℃で攪拌させながら溶解した。次いで、テトラカルボン酸二無水物としてBPDA146.25g(497.1ミリモル)を徐々に添加した。テトラカルボン酸二無水物の添加・溶解後、反応液の温度を60℃まで加熱して、その後反応液温度を保持したまま20時間重合反応を行った。反応液を、#800のステンレスメッシュを用いてろ過して25℃まで冷却をして溶液粘度10Pa・s(E型粘度計)のポリアミック酸溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液1000gに、ポリビニル−2−ピロリドン(PVP)10gを添加・溶解させた後、導電剤としての乾燥した酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4:Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%:以下CBと略す)60gを徐々に添加した。ポールミルにて25℃の温度下12時間分散処理することによりカーボンブラックをポリアミック酸溶液に分散した後、#400ステンレスメッシュでろ過して以下の組成のカーボン分散ポリアミック酸溶液を得た。得られたカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液は、塗工液(A−2)として用いる。
なお、塗工液(A−2)の組成:ポリアミック酸(BPDA/PDA)/NMP/CB=200/800/60
−塗工液(A−3)の作製−
N−メチル−2−ピロリドン800g中に、ジアミン化合物としてODA95.72g(478.0ミリモル))を加え、25℃で攪拌させながら溶解した。次いで、テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物(以下PMDAと略す)104.28g(478.0ミリモル)を徐々に添加した。テトラカルボン酸二無水物の添加・溶解後、反応液の温度を60℃まで加熱して、その後反応液温度を保持したまま20時間重合反応を行った。反応液を、#800のステンレスメッシュを用いてろ過して25℃まで冷却をして溶液粘度10Pa・s(E型粘度計(東機産業製:RE550L、標準コーンローター使用、回転速度60rpm、25℃で測定))のポリアミック酸溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液1000gに、ポリビニル−2−ピロリドン(PVP)10gを添加・溶解させた後、導電剤としての乾燥した酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4:Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%:以下CBと略す)60gを徐々に添加した。ポールミルにて25℃の温度下12時間分散処理することによりカーボンブラックをポリアミック酸溶液に分散した後、#400ステンレスメッシュでろ過して以下の組成からなるカーボン分散ポリアミック酸溶液を得た。得られたカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液は、塗工液(A−3)として用いる。
なお、塗工液(A−3)の組成:ポリアミック酸(PMDA/ODA)/NMP/CB=200/800/60
−塗工液(A−4)〜(A−7)の作製−
CBの配合量を0〜50gと変量した以外は塗工液(A−1)と同様にして、塗工液(A−4)〜(A−7)を作製した。
なお、(塗工液(A−4)の組成:ポリアミック酸(BPDA/ODA)/NMP/CB=200/800/0
塗工液(A−5)の組成:ポリアミック酸(BPDA/ODA)/NMP/CB=200/800/20
塗工液(A−6)の組成:ポリアミック酸(BPDA/ODA)/NMP/CB=200/800/40
塗工液(A−7)の組成:ポリアミック酸(BPDA/ODA)/NMP/CB=200/800/50
−塗工液(A−8)〜(A−11)の作製−
CBの配合量を0〜50gと変量した以外は塗工液(A−2)と同様にして、塗工液(A−8)〜(A−11)を作製した。
なお、塗工液(A−8)の組成:ポリアミック酸(BPDA/PDA)/NMP/CB=200/800/0
塗工液(A−9)の組成:ポリアミック酸(BPDA/PDA)/NMP/CB=200/800/20
塗工液(A−10)の組成:ポリアミック酸(BPDA/PDA)/NMP/CB=200/800/40
塗工液(A−11)の組成:ポリアミック酸(BPDA/PDA)/NMP/CB=200/800/50
−塗工液(A−12)〜(A−15)の作製−
CBの配合量を0〜50gと変量した以外は塗工液(A−2)と同様にして、塗工液(A−12)〜(A−15)を作製した。
なお、塗工液(A−12)の組成:ポリアミック酸(PMDA/ODA)/NMP/CB=200/800/0
塗工液(A−13)の組成:ポリアミック酸(PMDA/ODA)/NMP/CB=200/800/20
(塗工液(A−14)の組成:ポリアミック酸(PMDA/ODA)/NMP/CB=200/800/40
(塗工液(A−15)の組成:ポリアミック酸(PMDA/ODA)/NMP/CB=200/800/50
−塗工液(B−1)の作製−
NMP950.0gに、塗工液(A−1)53.0gを徐々に添加・希釈して塗工液(B−1)を調整した。
なお、塗工液(B−1)の組成:ポリアミック酸(BPDA/ODA)/NMP/CB=10/990/3
−塗工液(B−2)〜(B−15)の作製−
使用する塗工液をそれぞれ、(A−2)53.0g、(A−3)53.0g、(A−4)50.0g、(A−5)51.0g、(A−6)52.0g、(A−7)52.5g、(A−8)50.0g、(A−9)51.0g、(A−10)52.0g、(A−11)52.5g、(A−12)50.0g、(A−13)51.0g、(A−14)52.0g、(A−15)52.5g、とする以外は、塗工液(B−1)と同様にして、塗工液(B−2)〜(B−15)を得た。
なお、塗工液(B−2)の組成:ポリアミック酸(BPDA/PDA)/NMP/CB=10/990/3(なお、数値は質量部を示す。以下同様である)
塗工液(B−3)の組成:ポリアミック酸(PMDA/ODA)/NMP/CB=10/990/3
塗工液(B−4)の組成:ポリアミック酸(BPDA/ODA)/NMP/CB=10/990/0
塗工液(B−5)の組成:ポリアミック酸(BPDA/ODA)/NMP/CB=10/990/1
塗工液(B−6)の組成:ポリアミック酸(BPDA/ODA)/NMP/CB=10/990/2
塗工液(B−7)の組成:ポリアミック酸(BPDA/ODA)/NMP/CB=10/990/2.5
塗工液(B−8)の組成:ポリアミック酸(BPDA/PDA)/NMP/CB=10/990/0
塗工液(B−9)の組成:ポリアミック酸(BPDA/PDA)/NMP/CB=10/990/1
塗工液(B−10)の組成:ポリアミック酸(BPDA/PDA)/NMP/CB=10/990/2
塗工液(B−11)の組成:ポリアミック酸(BPDA/PDA)/NMP/CB=10/990/2.5
塗工液(B−12)の組成:ポリアミック酸(PMDA/ODA)/NMP/CB=10/990/0
塗工液(B−13)の組成:ポリアミック酸(PMDA/ODA)/NMP/CB=10/990/1
塗工液(B−14)の組成:ポリアミック酸(PMDA/ODA)/NMP/CB=10/990/2
塗工液(B−15)の組成:ポリアミック酸(PMDA/ODA)/NMP/CB=10/990/2.5
なお、表中の略称は以下の通りである。
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
ODA:4,4‘−ジアミノジフェニルエーテル
PDA:1,4−ジアミノベンゼン
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
CB:カーボンブラック
<実施例1>
A/A−B型:ポリイミド無端ベルト(C−1)の製造
外径90mm、長さ450mmのSUS材料製円筒型金型を用意し、その外表面にシリコーン系離型剤を塗布・乾燥処理を行った(離型剤処理)。離型剤処置を施した円筒型金型を周方向に10rpmの速度で回転させながら、円筒型金型端部より塗工液(A−1)を口径1.0mmディスペンサーより吐出しながら、金型上に設置した金属ブレードにて一定圧で押し付けながら塗布を行った。ディスペンサーユニットを円筒型金型の軸方向に一定速度(100mm/分)で移動させることによって円筒型金型上に螺旋状に塗工液を塗布した。塗工液塗布後、ブレードを解除して円筒型金型を2分間回転し続けレベリングを行った。
その後、金型ならびに塗布物を乾燥炉中で150℃空気雰囲気下、10rpmで回転させながら1時間乾燥処理を行った。乾燥後、塗布物より溶媒が揮発することで塗布物は自己支持性を有するベルト基材(ポリアミック酸樹脂成形品)を得た。
得られたベルト基材の端部を切り取り、その膜厚を測定したところ、100μmであった。
得られたベルト基材を、図5に示す塗布装置に配置させ、上記第1実施形態に従って(但しR層(R塗膜)は形成しない)表5の条件で2種の塗工液を用いた塗布を行い表面層となる塗膜を形成した。具体的には、ベルト基材を周方向に60rpmで回転させながら、第1吐出ヘッド(ノズル径0.1mm、ノズル中心間隔0.5mmピッチで一列に450mmに渡り配置したもの。565Hzで連続吐出。表中ノズルAと表記)から塗工液(B−1)を初期吐出量10μl/s・μmで塗工を開始した。この第1吐出ヘッドからの吐出を3秒間を行い(この間に形成される塗膜をP塗膜とする)、その後、ベルト基材が一回転する毎に(1秒毎に)吐出量を−0.5μl/s・μmの割合で段階的に減量した(図6参照)。この第1吐出ヘッドからの吐出量を減じ始めると同時に、第2吐出ヘッド(ノズル径0.1mm、ノズル中心間隔0.5mmピッチで一列に450mmに渡り配置したもの。565Hzで連続吐出。表中、ノズルBと表記)から塗工液(B−2)の吐出を開始し、ベルト基材が一回転する毎に吐出量を0から+0.5μl/s・μmの割合で段階的に増加させた。第1吐出ヘッドからの吐出量減量・第2吐出ヘッドからの吐出開始から20秒後、ノズルAの吐出量が0となり(図6参照)、ノズルBからの吐出量は10μl/s・μmとなった(この間に形成される塗膜をQ塗膜とする)。
次に、保持体(金型)を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥処理を行い、各塗膜の乾燥を行った。乾燥処理後、膜厚を測定したところ、110μmであった。次いで、クリーンオーブン中で、300℃、30分間焼成処理を行い、イミド化反応を進行させた。その後、放冷し、保持体(金型)からベルトを取り外し、目的のポリイミド無端ベルト(C−1)を得た。
−評価−
得られたポリイミド無端ベルトについて以下に示す方法によって、各種試験を実施した。結果を表6に示す。
(膜厚の測定)
ベルト膜厚測定には、サンコー電子社製渦電流式膜厚計CTR−1500Eを用い、同一試料ついて5回測定を行い、その平均値をベルと膜厚とした。
・表面抵抗率・体積抵抗率
得られたそれぞれのポリイミド無端ベルトを円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極の外径Φ16mm、リング状電極部の内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧100V印加して、抵抗値を測定した。
・耐折性の測定
得られたポリイミドベルトから150mm×15mmの試験片を作製した。ベルト膜厚については、塗工時に条件を様々制御して、80μmになるように調整した。
JIS−C5016に準じて、試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数を測定した。同一試料について10回の測定を行い、その平均値をもって耐折性の評価結果とした。測定データとした。測定機は、東洋精機MIT耐揉疲労試験機MIT−DAを使用した。
・印字画質(コピー画質)
富士ゼロックス社製DocuCentre Color2220改造機(プロセス速度:250mm/sec、一次転写電流:35μAに改造)を使用し、実施例1で作製した無端ベルトを中間転写ベルトとして搭載して、高温高湿(28℃85%RH)及び低温低湿(10℃15%RH)で、Cyan、Magentaの50%ハーフトーンを富士ゼロックス社製C2紙に出力し、以下の規準で濃度ムラ及び斑点欠陥を目視で評価した。
・濃度ムラ
10枚目の印字サンプルの印字部を3×3=9等分に分割してそれぞれの色度を色彩色度計CR-210(ミノルタ社製)を用いて測定して色度の最大と最小との差である色差ΔEを求めた。
◎:色差ΔEが0.3未満濃度ムラが確認されない。
○:色差ΔEが0.3以上0.5未満
△:色差ΔEが0.5以上1.0未満
×:色差ΔEが1.0以上
・斑点欠陥
10枚目の印字試料の印字部内を目視観察した。
◎:0.5mm未満の大きさの斑点が10個未満。
○:0.5mm未満の大きさの斑点が10個以上50個未満発生する。
△:0.5mm未満の大きさの斑点が50個以上100個未満発生する。又は、0.5mm以上1.0mm未満の大きさの斑点が50個未満発生する。
×:0.5mm未満の大きさの斑点が100個以上発生する。又は、0.5mm以上1.0mm未満の大きさの斑点が50個以上発生する。又は、1.0mm以上の大きさの斑点が1個以上発生する。
なお、膜厚、表面抵抗率・体積抵抗率、耐折性については、 1000枚の通紙テスト後(30%ハーフトーン画像形成後)の特性(△(通紙後−初期))についても評価した。
<実施例2、7、、比較例10〜13
表5に従って塗工液の種類、吐出量を変えた以外は実施例1と同様にしてポリイミド無端ベルト(C−2)〜(C−8)を製造した。得られたポリイミド無端ベルトの特性・評価結果については表6に示す。
<実施例9>A/A−B/B型 ポリイミド無端ベルト(C−9)の製造
外径90mm、長さ450mmのSUS材料からなる円筒型金型を用意し、その外表面にシリコーン系離型剤を塗布・乾燥処理を行った(離型剤処理)。離型剤処置を施した円筒型金型を周方向に10rpmの速度で回転させながら、円筒型金型端部より第1塗工液(A−1)を口径1.0mmディスペンサーより吐出しながら、金型上に設置した金属ブレードにて一定圧で押し付けながら塗布を行った。ディスペンサーユニットを円筒型金型の軸方向に一定速度(100mm/分)で移動させることによって円筒型金型上に螺旋状に第1塗工液を塗布した。第1塗工液塗布後、ブレードを解除して円筒型金型を2分間回転し続けレベリングを行った。
その後、金型ならびに塗布物を乾燥炉中で150℃空気雰囲気下、10rpmで回転させながら1時間乾燥処理を行った。乾燥後、塗布物より溶媒が揮発することで塗布物は自己支持性を有するベルト基材を得た。
得られたベルト基材の端部を切り取り、その膜厚を測定したところ、100μmであった。
得られたベルト基材を、図5に示す塗布装置に配置させ、上記第1実施形態に従って表7の条件で2種の塗工液を用いた塗布を行い表面層となる塗膜を形成した。具体的には、ベルト基材を周方向に60rpmで回転させながら、第1吐出ヘッド(ノズル径0.1mm、ノズル中心間隔0.5mmピッチで一列に450mmに渡り配置したもの。565Hzで連続吐出。表中ノズルAと表記)から塗工液(B−1)を初期吐出量10μl/s・μmで塗工を開始した。この第1吐出ヘッドからの吐出を3秒間を行い(この間に形成される塗膜をP塗膜とする)、その後、ベルト基材が一回転する毎に(1秒毎に)吐出量を−0.5μl/s・μmの割合で段階的に減量した(図6参照)。この第1吐出ヘッドからの吐出量を減じ始めると同時に、第2吐出ヘッド(ノズル径0.1mm、ノズル中心間隔0.5mmピッチで一列に450mmに渡り配置したもの。565Hzで連続吐出。表中、ノズルBと表記)から塗工液(B−2)の吐出を開始し、ベルト基材が一回転する毎に(1秒毎に)吐出量を0から+0.5μl/s・μmの割合で段階的に増加させた。第1吐出ヘッドからの吐出量減量・第2吐出ヘッドからの吐出開始から20秒後、ノズルAの吐出量が0となり(図6参照)、ノズルBからの吐出量は10μl/s・μmとなった(この間に形成される塗膜をQ塗膜とする)。その後、第2吐出ヘッドより10μl/s・μmの吐出量にて3秒間塗布を行った(この間に形成される塗膜をR塗膜とする)。
次に、保持体(金型)を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥処理を行い、各塗膜の乾燥を行った。乾燥処理後、膜厚を測定したところ、110μmであった。次いで、クリーンオーブン中で、300℃、30分間焼成処理を行い、イミド化反応を進行させた。その後、室温で放冷し、保持体(金型)からベルトを取り外し、目的のポリイミド無端ベルト(C−9)を得た。
<実施例10、15、16、比較例14〜17
表7に従って塗工液の種類、吐出量を変えた以外は実施例9と同様にしてポリイミド無端ベルト(C−10)〜(C−16)を製造した。得られたポリイミド無端ベルトの特性・評価結果については表8に示す。
<比較例1>単層無端ベルト
外径90mm、長さ450mmのSUS材料からなる円筒型金型を用意し、その外表面にシリコーン系離型剤を塗布・乾燥処理を行った(離型剤処理)。離型剤処置を施した円筒型金型を周方向に10rpmの速度で回転させながら、円筒型金型端部より第1の塗工液(A−1)を口径1.0mmディスペンサーより吐出しながら、金型上に設置した金属ブレードにて一定圧で押し付けながら塗布を行った。ディスペンサーユニットを円筒型金型の軸方向に一定速度(100mm/分)で移動させることによって円筒型金型上に螺旋状に第1の塗工液を塗布した。第1の塗工液塗布後、ブレードを解除して円筒型金型を2分間回転し続けレベリングを行った。
その後、金型ならびに塗布物を乾燥炉中で150℃空気雰囲気下、10rpmで回転させながら1時間乾燥処理を行った。乾燥後、塗布物より溶媒が揮発することで塗布物は自己支持性を有するポリアミック酸樹脂成形品と変化した。
次いで、クリーンオーブン中で、300℃、30分間焼成処理を行い、イミド化反応を進行させた。その後、金型を放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルト(D−1)を得た。
得られたポリイミド無端ベルトについて実施例に示す方法によって、各種試験を実施した。結果を表9に示す。
<比較例2〜3>単層無端ベルト
表9に従って塗工液の種類を変えた以外は比較例1に倣ってにしてポリイミド無端ベルト(D−2)〜(D−3)を作製した。得られたポリイミド無端ベルトについて同様に試験を行った。結果を表9に示す。
<比較例4>単純積層無端ベルト
外径90mm、長さ450mmのSUS材料からなる円筒型金型を用意し、その外表面にシリコーン系離型剤を塗布・乾燥処理を行った(離型剤処理)。離型剤処置を施した円筒型金型を周方向に10rpmの速度で回転させながら、円筒型金型端部より第1の塗工液(A−1)を口径1.0mmディスペンサーより吐出しながら、金型上に設置した金属ブレードにて一定圧で押し付けながら塗布を行った。ディスペンサーユニットを円筒型金型の軸方向に一定速度(100mm/分)で移動させることによって円筒型金型上に螺旋状に第1の塗工液を塗布した。塗工液塗布後、ブレードを解除して円筒型金型を2分間回転し続けレベリングを行った。
その後、金型ならびに塗布物を乾燥炉中で150℃空気雰囲気下、10rpmで回転させながら1時間乾燥処理を行った。乾燥後、塗布物より溶媒が揮発することで塗布物は自己支持性を有するベルト基材を得た。
得られたベルト基材に対し、1種の塗工液を用いた塗布を行い表面層となる塗膜を形成した。具体的には、ベルト基材を周方向に10rpmで回転させながら、第1吐出ヘッド(表中ノズルAと表記)から塗工液(B−1)を、吐出量10μl/s・μmで23秒間吐出して塗工を行い表面層となる塗膜を形成した。
次に、保持体(金型)を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥処理を行い、乾燥を行った。乾燥処理後、ベルトの膜厚を測定したところ、110μmであった。次いで、クリーンオーブン中で、300℃、30分間焼成処理を行い、イミド化反応を進行させた。その後、保持体(金型)を放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルト(D−4)を得た。
得られたポリイミド無端ベルトについて実施例1と同様にして、各種試験を実施した。結果を表9に示す。
<比較例5〜9>単純積層無端ベルト
表9に従って塗工液の種類を変えた以外は比較例4と同様にしてポリイミド無端ベルト(D−5)〜(D−10)を作製した。得られたポリイミド無端ベルトについて同様に試験を行った。結果を表9に示す。
<実施例17>
実施例1で作製した無端ベルトを図3の装置における記録紙搬送ベルトとして組み込んで富士ゼロックス製C2紙を用いて画像形成評価をおこなったところ問題なく良好な画像を形成することが出来た。
上記結果から実施例では、比較例よりも機械的強度、電気的特性に優れ、かつ安定性に優れたベルトであることがわかる。
本発明における実施の態様の他の例を以下に示す。
第1組成物及び第1組成物とは異なる第2組成物を少なくとも含み、且つ前記第1組成物に対する第2組成物の含有比率が膜厚方向で変化してなる層を有することを特徴とする無端ベルトにおいて、
(1)前記第1組成物を少なくとも含む第1層と、
前記第1層上に形成される第2層であって、前記第1組成物及び前記第2組成物を少なくとも含み、且つ前記第1層側から遠ざかるにしたがって前記第1組成物に対する第2組成物の含有比率が膜厚方向で連続的に増加する第2層と、
を有する無端ベルトとすることで第1層と第2層との界面が明確に存在せず、当該界面での接合性の低下が起こらず、層間剥離が防止され力学的に強固なベルトとなる、といった効果を奏する。
(2)前記第1組成物を少なくとも含む第1層と、
前記第1層上に形成される第2層であって、前記第1組成物及び前記第2組成物を少なくとも含み、且つ前記第1層側から遠ざかるにしたがって前記第1組成物に対する第2組成物の含有比率が膜厚方向で連続的に増加する第2層と、
前記第2層上に形成される第3層であって、前記第2組成物を少なくとも含む層をさらに有する無端ベルトとすることで第1層と第2層と第3層の界面が明確に存在せず、当該界面での接合性の低下が起こらず、層間剥離が防止され力学的に強固なベルトとなる、といった効果を奏する。
(3)ベルト基材と、
前記ベルト基材上に形成される第1層であって、前記ベルト基材を構成する組成物と同一の第1組成物を少なくとも含む第1層と
前記第1層上に形成される第2層であって、前記第1組成物及び前記ベルト基材を構成する組成物と異なる第2組成物を少なくとも含み、且つ前記第1層側から遠ざかるにしたがって前記第1組成物に対する前記第2組成物の含有比率が膜厚方向で増加してなる層と、を有する無端ベルトとすることでベルト基材と第1層と第2層と界面が明確に存在せず、当該界面での接合性の低下が起こらず、層間剥離が防止され力学的に強固なベルトとなる、といった効果を奏する。
(4)ベルト基材と、
前記ベルト基材上に形成される第1層であって、前記ベルト基材を構成する組成物と同一の第1組成物を少なくとも含む第1層と
前記第1層上に形成される第2層であって、前記第1組成物及び前記ベルト基材を構成する組成物と異なる第2組成物を少なくとも含み、且つ前記第1層側から遠ざかるにしたがって前記第1組成物に対する前記第2組成物の含有比率が膜厚方向で増加してなる層と、を有し、前記第2層上に形成される第3層であって、前記第2組成物を少なくとも含む第3層をさらに有する無端ベルトとすることでベルト基材と第1層と第2層と第3層の界面が明確に存在せず、当該界面での接合性の低下が起こらず、層間剥離が防止され力学的に強固なベルトとなる、といった効果を奏する。
(5)第1組成物を含む第1塗工液と第1組成物とは異なる第2組成物を含む第2塗工液とを、吐出量をそれぞれ相対的に変化させつつ被塗布物上に吐出して塗膜を形成する工程を有することを特徴とする無端ベルトの製造方法において、
前記第1塗工液を被塗布物上に吐出して第1塗膜を形成する第1工程と、
前記第2塗工液の吐出を開始しつつ前記第1塗工液の吐出量を減じると共に、これに応じて前記第2塗工液の吐出量を増加させて、第2塗膜を形成する第2工程と、
を有する無端ベルトの製造方法とすることで、第1塗膜と第2塗膜との明確な界面が明確に存在せず、各塗膜から得られる層間の界面での接合性の低下も起こらず、層間剥離が生じず力学的に強固なベルトとなる、といった効果を奏する。
(6)前記第2塗工液の吐出を継続して、第3塗膜を形成する第3工程を、さらに有することを特徴とする無端ベルトの製造方法とすることで、第1塗膜と第2塗膜と第3塗膜の明確な界面が明確に存在せず、各塗膜から得られる層間の界面での接合性の低下が起こらず、層間剥離が防止され力学的に強固なベルトが得られる、といった効果を奏する。
(7)ベルト基材上に当該ベルト基材を構成する組成と同一の第1組成物を含む第1塗工液を被塗布物上に吐出して第1塗膜を形成する第1工程と、
前記ベルト基材を構成する組成とは異なる第2組成物を含む第2塗工液の吐出を開始しつつ前記第1塗工液の吐出量を減じると共に、これに応じて前記第2塗工液の吐出量を増加させて、第2塗膜を形成する第2工程と、
を有することを特徴とする無端ベルトの製造方法とすることで、ベルト基材と第1塗膜と第2塗膜との明確な界面が明確に存在せず、ベルト基材も含め各塗膜から得られる層間の界面での接合性の低下が起こらず、層間剥離が防止され力学的に強固なベルトが得られる、といった効果を奏する。
(8)前記第1塗工液の吐出量を停止すると共に、前記第2塗工液の吐出を継続して、第3塗膜を形成する第3工程を、さらに有することを特徴とする無端ベルトの製造方法とすることで、ベルト基材と第1塗膜と第2塗膜と第3塗膜との明確な界面が明確に存在せず、ベルト基材も含め各塗膜から得られる界面での接合性の低下が起こらず、層間剥離が防止され力学的に強固なベルトが得られる、いった効果を奏する。
第1実施形態に係る無端ベルトを示す概略構成図である。 第1実施形態に係る無端ベルトにおける各組成物の膜厚方向の含有比率分布を示す概念図である。 第1実施形態に係る無端ベルトにおける導電剤の膜厚方向の含有比率分布を示す概念図である。 第1実施形態に係る無端ベルトにおける各樹脂材料の膜厚方向の含有比率分布を示す概念図である。 第1実施形態に係る無端ベルトを製造するための塗布装置を示す概略構成図である。 第1吐出ヘッド及び第2吐出ヘッドの吐出量変化を示す図である。 第2実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。 第3実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
符号の説明
10 塗布装置
12A 第1吐出ヘッド
12B 第2吐出ヘッド
14 保持体
50 無端ベルト
52 ベルト基材
54 表面層
54A P層
54B Q層
54C R層
101 感光体ドラム
102 中間転写体
103 記録媒体
105〜108 現像器
109 コロナ放電器
113 給紙部
114 剥離爪
115 搬送ベルト
116 クリーニング装置
117 ロール
120 加熱転写ロール
121〜124 転写バッフル
125 プレッシャーロール
126 フィードローラ

Claims (8)

  1. 第1組成物及び第1組成物とは異なる第2組成物を少なくとも含み、且つ前記第1組成物に対する第2組成物の含有比率が膜厚方向で変化してなる層を有し、前記第1組成物と第2組成物とは、樹脂材料と導電剤とを少なくとも含む組成物であって当該樹脂材料の種類が互いに異なり、前記樹脂材料に対する導電剤の含有比率が互いに異なることを特徴とする無端ベルト。
  2. 前記第1組成物に対する前記第2組成物の含有比率が、膜厚方向で線形的に変化してなることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルト。
  3. 第1組成物を含む第1塗工液と第1組成物とは異なる第2組成物を含む第2塗工液とを、吐出量をそれぞれ相対的に変化させつつ被塗布物上に吐出して塗膜を形成する工程を有し、前記第1組成物と第2組成物とは、樹脂材料と導電剤とを少なくとも含む組成物であって当該樹脂材料の種類が互いに異なり、前記樹脂材料に対する導電剤の含有比率が互いに異なることを特徴とする無端ベルトの製造方法。
  4. 前記第1塗工液及び前記第2塗工液の吐出の方式が、インクジェット方式であることを特徴とする請求項に記載の無端ベルトの製造方法。
  5. 請求項1又は請求項2に記載の無端ベルトを備えることを特徴とする画像形成装置。
  6. 第1組成物及び第1組成物とは異なる第2組成物を少なくとも含み、且つ前記第1組成物に対する第2組成物の含有比率が膜厚方向で変化してなる層を有し、前記第1組成物と第2組成物とは、樹脂材料と導電剤とを少なくとも含む組成物であって当該樹脂材料の種類が互いに異なり、前記樹脂材料に対する前記導電剤の含有比率が互いに異なることを特徴とする中間転写ベルト。
  7. 第1組成物及び第1組成物とは異なる第2組成物を少なくとも含み、且つ前記第1組成物に対する第2組成物の含有比率が膜厚方向で変化してなる層を有し、前記第1組成物と第2組成物とは、樹脂材料と導電剤とを少なくとも含む組成物であって当該樹脂材料の種類が互いに異なり、前記樹脂材料に対する前記導電剤の含有比率が互いに異なることを特徴とする転写搬送ベルト。
  8. 請求項1又は請求項2に記載の無端ベルトを備え、該無端ベルトにより被搬送物を搬送することを特徴とする搬送装置。
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