JP5958369B2 - ポリイミド前駆体組成物、ポリイミド前駆体組成物の製造方法、転写ベルト、転写ベルトの製造方法、転写ベルトユニット、及び画像形成装置 - Google Patents

ポリイミド前駆体組成物、ポリイミド前駆体組成物の製造方法、転写ベルト、転写ベルトの製造方法、転写ベルトユニット、及び画像形成装置 Download PDF

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本発明は、ポリイミド前駆体組成物、ポリイミド前駆体組成物の製造方法、転写ベルト、転写ベルトの製造方法、転写ベルトユニット、及び画像形成装置に関する。
ポリイミド樹脂は、高耐久性、耐熱性に優れた特性を有する材料であり、電子材料用途に広く使用されている。
ポリイミド樹脂の成形体を製造する方法として、その前駆体であるポリアミック酸を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の非プロトン系極性溶剤に溶解したポリイミド前駆体組成物を基材上に塗布して、熱処理によって、乾燥・イミド化することでポリイミド成形体を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、ポリイミド前駆体組成物の製造において、NMP等の非プロトン系極性溶剤中でポリイミド前駆体樹脂を重合し、再沈殿法によりポリイミド前駆体樹脂を取り出した後にアミン塩を作用させて水に溶解させるプロセスを経ることも知られている(例えば、特許文献2〜5参照)。
なお、ポリアミック酸を溶解する溶剤としては、NMPの他、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)などが挙げられる(例えば非特許文献1参照)。
一方、非プロトン系極性溶媒として、水溶性アルコール系溶剤化合物、及び/又は水溶性エーテル系溶剤化合物を用いて、具体的には、テトラヒドロフラン(THF)及びメタノールの混合溶媒中、又はTHF及び水の混合溶媒中の反応系に3級アミンを添加することで、析出させないでポリイミド前駆体組成物を得ることが知られている(例えば、特許文献6参照)。
アミン化合物として特定構造のイミダゾールの共存下、水中でポリイミド前駆体を重合して水系ポリイミド前駆体組成物を得ることも知られている(例えば、特許文献7参照)。
米国特許第4238528号公報 特開平08−120077号公報 特開平08−015519号公報 特開2003−13351号公報 特開平08−059832号公報 特開平08−157599号公報 特開2012−036382号公報
Journal of Polymer Science. Macromolecular Reviews, Vol.11, P164(1976)
本発明の課題は、導電性粒子が均一に分散配合され、且つ機械的強度の高いポリイミド成型体が得られるポリイミド前駆体組成物を提供することである。
上記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
請求項1に係る発明は、
水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤、及び水溶性アルコール系溶剤から選択される1種以上の有機溶剤、並びに、水を含む溶剤に、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有し、且つイミド化率が0.2以下である樹脂と、有機アミン化合物と、が溶解し、且つ導電性粒子が分散しており、
前記水を、全溶剤に対して30質量%以上99.9質量%以下で含有し、
前記有機アミン化合物を、前記樹脂中に含まれるカルボキシル基に対して、50モル%以上500モル%以下で含有するポリイミド前駆体組成物
(一般式(I)中、Aは4価の芳香族系有機基を示し、Bは2価の芳香族系有機基を示す。)
請求項に係る発明は、
前記有機アミン化合物が、2級アミン化合物、及び3級アミン化合物から選択される少なくとも一種である請求項1に記載のポリイミド前駆体組成物。
請求項に係る発明は、
前記樹脂が、末端にアミノ基を有する樹脂を含む請求項1又は2に記載のポリイミド前駆体組成物。
請求項に係る発明は、
前記樹脂の数平均分子量が、1000以上100000以下である請求項1〜のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。
請求項5に係る発明は、
水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤、及び水溶性アルコール系溶剤から選択される1種以上の有機溶剤、並びに、水を含む溶剤であって、前記有機溶剤よりも前記水が少ない比率である溶剤中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して樹脂を生成する工程と、
前記樹脂を生成した後、前記溶剤に有機アミン化合物を添加する工程と、
前記有機アミン化合物を添加した後、前記溶剤に導電性粒子を分散する工程と、
を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物の製造方法。
請求項に係る発明は、
前記有機アミン化合物を添加する工程が、前記樹脂を生成した後、前記溶剤に水を添加して、前記樹脂と前記溶剤とを分離し、分離後の前記溶剤の一部を除去した後、残部に水及び前記有機アミン化合物を添加する工程である請求項に記載のポリイミド前駆体組成物の製造方法。
請求項に係る発明は、
前記有機アミン化合物を添加する工程が、前記樹脂を生成した後、前記溶剤の一部を留去した後又は前記溶剤の一部を留去しながら、残部に前記有機アミン化合物を添加する工程である請求項に記載のポリイミド前駆体組成物の製造方法。
請求項に係る発明は、
前記有機溶剤の沸点が、160℃以下である請求項のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物の製造方法。
請求項に係る発明は、
前記有機アミン化合物の沸点が、60℃以上200℃以下である請求項のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物の製造方法。
請求項に係る発明によれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の非プロトン系極性溶剤を含む場合に比べ、導電性粒子が均一に分散配合され、且つ機械的強度の高いポリイミド成形体が得られるポリイミド前駆体組成物が提供される。
請求項に係る発明によれば、水の含有量が上記範囲外の場合に比べ、製膜性に優れたポリイミド前駆体組成物が提供される。
請求項に係る発明によれば、有機アミン化合物の含有量が上記範囲外の場合に比べ、製膜性に優れたポリイミド前駆体組成物が提供される。
請求項に係る発明によれば、有機アミン化合物が1級アミン化合物である場合に比べ、製膜性に優れたポリイミド前駆体組成物が提供される。
請求項に係る発明によれば、樹脂の全末端にカルボキシル基を有する場合に比べ、製膜性に優れたポリイミド前駆体組成物が提供される。
請求項に係る発明によれば、樹脂の数平均分子量が上記範囲外である場合に比べ、製膜性に優れたポリイミド前駆体組成物が提供される。
請求項に係る発明によれば、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の非プロトン系極性溶剤を用いる場合に比べ、導電性粒子が均一に分散配合され、且つ機械的強度の高いポリイミド成形体が得られるポリイミド前駆体組成物の製造方法が提供される。
請求項に係る発明によれば、有機溶剤の沸点が上記範囲外の場合に比べ、導電性粒子が均一に分散配合され、且つ機械的強度の高いポリイミド成形体が得られるポリイミド前駆体組成物の製造方法が提供される。
請求項に係る発明によれば、有機アミン化合物の沸点が上記範囲外の場合に比べ、製膜性に優れたポリイミド前駆体組成物の製造方法が提供される。
請求項15に係る発明によれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の非プロトン系極性溶剤を含むポリイミド前駆体組成物により形成されたポリイミド樹脂層を有する転写ベルトを備える場合に比べ、導電性粒子が均一に分散配合され、且つ機械的強度の高い転写ベルトを備えた転写ベルトユニットが提供される。
請求項16、17に係る発明によれば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の非プロトン系極性溶剤を含むポリイミド前駆体組成物により形成されたポリイミド樹脂層を有する転写ベルトを備える場合に比べ、導電性粒子が均一に分散配合され、且つ機械的強度の高い転写ベルトを備えた画像形成装置が提供される。
円形電極の一例を示す概略平面図(A)及び概略断面図(B)である。 本実施形態に係る転写ベルトユニットを示す概略斜視図である。 本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。 他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<ポリイミド前駆体組成物>
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、溶剤に、下記一般式(I−1)、下記一般式(I−2)及び下記一般式(I−3)で表される繰り返し単位を有する樹脂(以下、「特定ポリイミド前駆体」と称する)と、有機アミン化合物と、が溶解し、且つ導電性粒子が分散している組成物である。つまり、特定ポリイミド前駆体及び有機アミン化合物は溶剤に溶解した状態で組成物中に含まれ、導電性粒子は溶剤に分散した状態で組成物中に含まれている。なお、溶解とは、溶解物の残存が目視にて確認でない状態を示す。
そして、溶剤として、水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤、及び水溶性アルコール系溶剤から選択される1種以上の有機溶剤(以下、「特定有機溶剤」と称する)、並びに、水を含む溶剤が適用される。
ここで、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、非プロトン系極性溶剤を含まない組成物である。
なお、非プロトン系極性溶剤とは、沸点150℃以上300℃以下で、双極子モーメントが3.0D以上5.0D以下の溶剤である。非プロトン系極性溶剤として具体的には、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチレンホスホルアミド(HMPA)、N−メチルカプロラクタム、N−アセチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に代表される非プロトン系極性溶剤は、沸点が150℃以上と高く、ポリイミド成形体の製造における乾燥工程後も、組成物中の溶剤が成形体中に残留することが多い。この非プロトン系極性溶剤が、ポリイミド成形体中に残留すると、ポリイミド前駆体の高分子鎖の再配向を引き起こし、高分子鎖のパッキング性を損なうため、得られるポリイミド成形体の機械的強度の低下を引き起こすことがある。
これに対して、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物では、溶剤として、非プロトン系極性溶剤を適用せず、特定有機溶剤及び水を含む溶剤を適用するため、得られるポリイミド成形体中に、非プロトン系極性溶剤が含まれない。
ポリイミド前駆体としての特定ポリイミド前駆体は、低分子化合物ではなく、また、一次構造に屈曲鎖や脂肪族環状構造等を導入して高分子鎖間の相互作用力を下げて、溶剤への溶解性を高めた構造ではなく、溶剤として、特定有機溶剤及び水を含む溶剤を適用し、これに特定ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)が有機アミン化合物によりアミン塩化された状態で溶解している。このため、ポリイミド前駆体を低分子化したり、構造変更を行うことに伴って生じるポリイミド成形体の機械的強度の低下が抑制される。
加えて、この特定ポリイミド前駆体が含まれる系に、導電性粒子を分散すると、その分散性が向上する。これは、カーボンブラックの表面に点在している酸性のカルボキシル基に有機アミン化合物のアミノ基と相互作用することで、カーボンブラックの凝集を抑制して溶液中への分散を容易にする、また再凝集を抑制すると考えられるためである。
このため、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、上記組成により、導電性粒子が均一に分散配合され、且つ機械的強度の高いポリイミド樹脂成形体が得られると考えられる。
また、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、溶液の安定性に優れ、長期間の保管と分散性に変化が少なく安定性にも優れると考えられる。
また、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、機械的強度に加え、耐熱性、電気特性、耐溶剤性等の諸特性に優れたポリイミド樹脂成形体が得られ易い。
また、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、溶剤として、特定有機溶剤及び水を含む混合溶剤を適用し、これに特定ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)が有機アミン化合物によりアミン塩化された状態で溶解しているため、製膜性が高く、環境適性に優れる。
また、溶剤として、特定有機溶剤及び水を含む混合溶剤を適用すると、ポリイミド前駆体組成物を用いたポリイミド成形体の成形のとき、溶剤留去のための加熱温度の低減、及び加熱時間の短縮化が実現される。
また、有機アミン化合物は、特定ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)にアミン塩化した状態で溶剤に溶解していることから、アミン化合物特有の臭気も抑えられる。
特に、一般式(I)中、Aが4価の芳香族系有機基を示し、Bが2価の芳香族系有機基を示す特定ポリイミド前駆体(つまり、芳香族系ポリイミド前駆体)を適用した場合、通常、溶剤に溶解し難い傾向があるものの、溶剤として、特定有機溶剤及び水を含む溶剤を適用し、これに特定ポリイミド前駆体が有機アミン化合物によりアミン塩化された状態で溶解する。このため、特定ポリイミド前駆体として、芳香族系ポリイミド前駆体を適用した場合であっても、製膜性が高く、環境適性に優れる。
以下、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物の各成分について説明する。
(特定ポリイミド前駆体)
特定ポリイミド前駆体は、一般式(I)で表される繰り返し単位を有し、且つイミド化率が0.2以下である樹脂(ポリアミック酸)である。

一般式(I)中、Aは4価の有機基を示し、Bは2価の有機基を示す。
ここで、一般式(I)中、Aが表す4価の有機基としては、原料となるテトラカルボン酸二無水物より4つのカルボキシル基を除いたその残基である。
一方、Bが表す2価の有機基としては、原料となるジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基である。
つまり、一般式(I)で表される繰り返し単位を有する特定ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体である。
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物が挙げられるが、芳香族系の化合物であることがよい。つまり、一般式(I)中、Aが表す4価の有機基は、芳香族系有機基であることがよい。
芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げられる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらの中でも、テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物がよく、具体的には、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物がよく、更に、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物がよく、特に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物がよい。
なお、テトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族テトラカルボン酸、又は脂肪族テトラカルボン酸を各々併用しても、芳香族テトラカルボン酸と脂肪族テトラカルボン酸とを組み合わせてもよい。
一方、ジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物である。ジアミン化合物としては、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物が挙げられるが、芳香族系の化合物であることがよい。つまり、一般式(I)中、Bが表す2価の有機基は、芳香族系有機基であることがよい。
ジアミン化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;、ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;、1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等が挙げられる。
これらの中でも、ジアミン化合物としては、芳香族系ジアミン化合物がよく、具体的には、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォンがよく、特に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンがよい。
なお、ジアミン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族ジアミン化合物、または脂肪族ジアミン化合物を各々併用しても、芳香族ジアミン化合物と脂肪族ジアミン化合物とを組み合わせてもよい。
特定ポリイミド前駆体は、イミド化率が0.2以下の樹脂である。つまり、特定ポリイミド前駆体は、一部がイミド化された樹脂であってもよい。
具体的には、特定ポリイミド前駆体としては、例えば、一般式(I−1)、一般式(I−2)及び一般式(I−3)で表される繰り返し単位を有する樹脂が挙げられる。
一般式(I−1)、一般式(I−2)及び一般式(I−3)中、Aは4価の有機基を示し、Bは2価の有機基を示す。なお、A及びBは、一般式(I)中のA及びBと同義である。
lは1以上の整数を示し、m及びnは、各々独立に0又は1以上の整数を示し、且つ(2n+m)/(2l+2m+2n)≦0.2の関係を満たす。
一般式(I−1)〜(I−3)中、lは1以上の整数を示すが、望ましくは1以上200以下の整数、より望ましくは1以上100以下の整数を示すことがよい。m及びnは、各々独立に0又は1以上の整数を示すが、望ましくは各々独立に0又は1以上200以下の整数、より望ましくは0又は1以上100以下の整数を示すことがよい。
そして、l、m及びnは、(2n+m)/(2l+2m+2n)≦0.2の関係を満たすが、望ましくは(2n+m)/(2l+2m+2n)≦0.15の関係、より望ましくは(2n+m)/(2l+2m+2n)≦0.10を満たすことである。
ここで、「(2n+m)/(2l+2m+2n)」は、特定ポリイミド前駆体の結合部(テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応部)において、イミド閉環している結合部数(2n+m)の全結合部数(2l+2m+2n)に対する割合を示している。つまり、「(2n+m)/(2l+2m+2n)」は特定ポリイミド前駆体のイミド化率を示している。
そして、特定ポリイミド前駆体のイミド化率(「(2n+m)/(2l+2m+2n)」の値)を0.2以下(望ましくは0.15以下、より望ましくは0.10)とすることにより、特定ポリイミド前駆体のゲル化や析出分離を引き起こすことが抑制される。
特定ポリイミド前駆体のイミド化率(「(2n+m)/(2l+2m+2n)」の値)は、次の方法により測定される。
−ポリイミド前駆体のイミド化率の測定−
・ポリイミド前駆体試料の作製
(i)測定対象となるポリイミド前駆体組成物を、シリコーンウェハー上に、膜厚1μm以上10μm以下の範囲で塗布して、塗膜試料を作製する。
(ii)塗膜試料をテトラヒドロフラン(THF)中に20分間浸漬させて、塗膜試料中の溶剤をテトラヒドロフラン(THF)に置換する。浸漬させる溶剤は、THFに限定されることになく、ポリイミド前駆体を溶解せず、ポリイミド前駆体組成物に含まれている溶剤成分と混和し得る溶剤より選択できる。具体的には、メタノール、エタノールなどのアルコール溶剤、ジオキサンなどのエーテル化合物が使用できる。
(iii)塗膜試料を、THF中より取り出し、塗膜試料表面に付着しているTHFにNガスを吹き付け、取り除く。10mmHg以下の減圧下、5℃以上25℃以下の範囲にて12時間以上処理して塗膜試料を乾燥させ、ポリイミド前駆体試料を作製する。
・100%イミド化標準試料の作製
(iv)上記(i)と同様に、測定対象となるポリイミド前駆体組成物をシリコーンウェハー上に塗布して、塗膜試料を作製する。
(v)塗膜試料を380℃にて60分間加熱してイミド化反応を行い、100%イミド化標準試料を作製する。
・測定と解析
(vi)フーリエ変換赤外分光光度計(堀場製作所製FT−730)を用いて、100%イミド化標準試料、ポリイミド前駆体試料の赤外吸光スペクトルを測定する。100%イミド化標準試料の1500cm−1付近の芳香環由来吸光ピーク(Ab’(1500cm−1))に対する、1780cm−1付近のイミド結合由来の吸光ピーク(Ab’(1780cm−1))の比I’(100)を求める。
(vii)同様にして、ポリイミド前駆体試料について測定を行い、1500cm−1付近の芳香環由来吸光ピーク(Ab(1500cm−1))に対する、1780cm−1付近のイミド結合由来の吸光ピーク(Ab(1780cm−1))の比I(x)を求める。
そして、測定した各吸光ピークI’(100)、I(x)を使用し、下記式に基づき、ポリイミド前駆体のイミド化率を算出する。
・式: ポリイミド前駆体のイミド化率=I(x)/I’(100)
・式: I’(100)=(Ab’(1780cm−1))/(Ab’(1500cm−1))
・式: I(x)=(Ab(1780cm−1))/(Ab(1500cm−1))
なお、このポリイミド前駆体のイミド化率の測定は、芳香族系ポリイミド前駆体のイミド化率の測定に適用される。脂肪族ポリイミド前駆体のイミド化率を測定する場合、芳香環の吸収ピークに代えて、イミド化反応前後で変化のない構造由来のピークを内部標準ピークとして使用する。
−ポリイミド前駆体の末端アミノ基−
特定ポリイミド前駆体は、末端にアミノ基を有するポリイミド前駆体(樹脂)を含むことがよく、望ましくは全ての末端にアミノ基を有するポリイミド前駆体とすることがよい。
ポリイミド前駆体の分子両末端にアミノ基を持たせるには、例えば、重合反応の際に使用するジアミン化合物のモル当量を、テトラカルボン酸二無水物のモル当量より過剰に添加することで実現される。ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とのモル当量の比は、テトラカルボン酸のモル当量を1に対して、1.0001以上1.2以下の範囲とすることが望ましく、より望ましくは、1.001以上1.2以下の範囲である。
ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とのモル当量の比が1.0001以上であれば、分子末端のアミノ基の効果が大きく、良好な分散性が得られる。また、モル当量の比が1.2以下であれば、得られるポリイミド前駆体の分子量が大きく、例えば、フィルム状のポリイミド成形体としたときに、十分なフィルム強度(引裂き強度、引張り強度)が得られ易い。
特定ポリイミド前駆体の末端アミノ基は、ポリイミド前駆体組成物にトリフルオロ酢酸無水物(アミノ基に対して定量的に反応)を作用させることによって検出される。すなわち、特定ポリイミド前駆体の末端アミノ基をトリフルオロ酢酸によりアミド化する。処理後、特定ポリイミド前駆体を再沈殿などで精製して過剰のトリフルオロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸残渣を除去する。処理後の特定ポリイミド前駆体について、核磁気共鳴(NMR)法によって定量することで、特定ポリイミド前駆体の末端アミノ基量が測定される。
特定ポリイミド前駆体の数平均分子量は、1000以上100000以下であることがよく、望ましくは5000以上50000以下、より望ましくは10000以上30000以下である。
特定ポリイミド前駆体の数平均分子量を上記範囲とすると、特定ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性の低下が抑制され、製膜性が確保され易くなる。特に、末端にアミノ基を有する特定ポリイミド前駆体を適用した場合、分子量が低くなると、末端アミノ基の存在率が高まり、ポリイミド前駆体組成物中の共存する有機アミン化合物の影響を受けて溶解性が低下し易いが、特定ポリイミド前駆体の数平均分子量の範囲を上記範囲にすることで、溶解性の低下を抑制することができる。
なお、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とのモル当量の比を、調整することで、目的する数平均分子量の特定ポリイミド前駆体が得られる。
特定ポリイミド前駆体の数平均分子量は、下記測定条件のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法で測定される。
・カラム:東ソーTSKgelα−M(7.8mm I.D×30cm)
・溶離液:DMF(ジメチルホルムアミド)/30mMLiBr/60mMリン酸
・流速:0.6mL/min
・注入量:60μL
・検出器:RI(示差屈折率検出器)
特定ポリイミド前駆体の含有量(濃度)は、全ポリイミド前駆体組成物に対して、0.1質量以上40質量%以下であることがよく、望ましくは0.5質量%以上25質量%以下、より望ましくは1質量%以上20重量%以下である。
(有機アミン化合物)
有機アミン化合物は、特定ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)をアミン塩化して、その溶剤に対する溶解性を高めると共に、イミド化促進剤としても機能する化合物である。
なお、有機アミン化合物は、水溶性の化合物であることがよい。ここで、水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。
有機アミン化合物としては、1級アミン化合物、2級アミン化合物、3級アミン化合物が挙げられる。
これらの中でも、有機アミン化合物としては、2級アミン化合物、及び3級アミン化合物から選択される少なくとも一種(特に、3級アミン化合物)がよい。有機アミン化合物として、3級アミン化合物又は2級アミン化合物を適用すると、特定ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性が高まり易くなり、製膜性が向上し易くなり、また、ポリイミド前駆体組成物の溶液安定性が向上し易くなる。
また、有機アミン化合物としては、1価のアミン化合物以外にも、2価以上の多価アミン化合物も挙げられる。2価以上の多価アミン化合物を適用すると、特定ポリイミド前駆体の分子間に疑似架橋構造を形成し易くなり、特定ポリイミド前駆体が低分子量体でも、ポリイミド組成物粘度を上げられ、製膜性が向上し易くなる。
1級アミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、2−エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロピパノール、などが挙げられる。
2級アミン化合物としては、例えば、ジメチルアミン、2−(メチルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノール、モルホリンなどが挙げられる。
3級アミン化合物としては、例えば、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノプロパノール、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、メチルモルホリン、エチルモルホリンなどが挙げられる。
多価アミン化合物としては、例えば、イソキノリン類、ピリミジン類、ピラジン類、ピペラジン類、トリアジン類、ポリアニリン、ポリピリジン、ポリアミンなどが挙げられる。
これらの中でも、有機アミン化合物としては、沸点が60℃以上(望ましくは60℃以上200℃以下、より望ましくは70℃以上150℃以下)の化合物であることがよい。有機アミン化合物の沸点を60℃以上とすると、保管時に、ポリイミド前駆体組成物から有機アミン化合物が揮発するのを抑制し、特定ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性の低下が抑制され易くなる。
有機アミン化合物は、特定ポリイミド前駆体中に含まれるカルボキシル基に対して、50モル%以上500モル%以下で含有することがよく、望ましくは80モル%以上250モル%以下、より望ましくは70モル%以上150モル%以下で含有することである。
有機アミン化合物の含有量を上記範囲とすると、特定ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性が高まり易くなり、製膜性が向上し易くなる。また、ポリイミド前駆体組成物の溶液安定性も向上し易くなる。
(溶剤)
溶剤としては、特定有機溶剤及び水の混合溶剤が適用される。そして、特定有機溶剤は、水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤、及び水溶性アルコール系溶剤から選択される1種以上の有機溶剤が適用される。ここで、水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。
混合溶剤の組合わせとしては、例えば、水溶性エーテル系溶剤と水との組合わせ、水溶性ケトン系溶剤と水との組合わせがよい。
また、特定有機溶剤は、1種単独で用いてもよいが、2種以上併用する場合、例えば、水溶性エーテル系溶剤と水溶性アルコール系溶剤との組合せ、水溶性ケトン系溶剤と水溶性アルコール系溶剤との組合せ、水溶性エーテル系溶剤と水溶性ケトン系溶剤と水溶性アルコール系溶剤とのとの組合せが挙げられる。
水溶性エーテル系溶剤は、一分子中にエーテル結合を持つ水溶性の溶剤である。水溶性エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、トリオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、水溶性エーテル系溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンが望ましい。
水溶性ケトン系溶剤は、一分子中にケトン基を持つ水溶性の溶剤である。水溶性ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。これらの中でも、水溶性ケトン系溶剤としては、アセトンが望ましい。
水溶性アルコール系溶剤は、一分子中にアルコール性水酸基を持つ水溶性の溶剤である。水溶性アルコール系溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グリセリン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられる。これらの中でも、水溶性アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、2−プロピパノール、エチレングリコールが望ましい。
特定有機溶剤は、沸点が160℃以下であることがよく、望ましくは40℃以上150℃以下、より望ましくは50℃以上120℃以下である。特定有機溶剤の沸点を上記範囲とすると、特定有機溶剤がポリイミド成形体に残留し難くなり、機械的強度の高いポリイミド成形体が得られ易くなる。
一方、水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、限外濾過水、純水等が挙げられる。
水は、全溶剤に対して30質量%以上99.9質量%以下で含有することがよく、望ましくは50質量%以上99.9質量以下、より望ましくは80質量%以上99.9質量%以下で含有することである。なお、溶剤には、全溶剤の水を除いた残部として特定有機溶剤が含まれる。
水の含有量を上記範囲とすると、アミン塩化した特定ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性が上がり、製膜性が向上する。
ここで、特定ポリイミド前駆体が溶剤に溶解する範囲は、水の含有率、有機アミン化合物の種類・量によって制御される。水の含有率の低い範囲では、有機アミン化合物の添加量が少ない領域で特定ポリイミド前駆体は溶解し易くなる。逆に、水の含有率の高い範囲では、有機アミン化合物の添加量が多い領域で特定ポリイミド前駆体は溶解し易くなる。また、有機アミン化合物が水酸基を含むなど親水性が高い場合は、水の含有率の高い領域で特定ポリイミド前駆体は溶解し易くなる。
(導電性粒子)
導電性粒子は、導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm未満、以下同様である)もしくは半導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm以上1013Ω・cm以下、以下同様である)のものが挙げられ、使用目的により選択される。
導電剤としては、例えば、カーボンブラック、金属(例えばアルミニウムやニッケル等)、金属酸化物(例えば酸化イットリウム、酸化錫等)、イオン導電性物質(例えばチタン酸カリウム、LiCl等)等が挙げられる。
これら導電性粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
これらの中でも、導電性粒子としては、カーボンブラックがよく、特に、pH5.0以下の酸性カーボンブラックがよい。
酸性カーボンブラックとしては、表面が酸化処理されたカーボンブラック、例えば、表面にカルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等を付与して得られたカーボンブラックが挙げられる。
酸性カーボンブラックとしては、得られるポリイミド成形体が転写ベルトである場合、電気抵抗の経時での安定性及び転写電圧による電界集中を抑制する電界依存性の観点から、pH4.5以下のカーボンブラックが望ましく、より望ましくはpH4.0以下の酸性カーボンブラックである。
なお、酸性カーボンブラックのpHは、JIS Z8802(2011)規定のpH測定方法によって測定される値である。
酸性カーボンブラックは、市販されているのものとして、SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0)、デグサ社製の「プリンテックス150T」(pH4.5、揮発分10.0%)、同「スペシャルブラック350」(pH3.5、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック100」(pH3.3、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック250」(pH3.1、揮発分2.0%)、同「スペシャルブラック5」(pH3.0、揮発分15.0%)、同「スペシャルブラック4A」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック550」(pH2.8、揮発分2.5%)、同「スペシャルブラック6」(pH2.5、揮発分18.0%)、同「カラーブラックFW200」(pH2.5、揮発分20.0%)、同「カラーブラックFW2」(pH2.5、揮発分16.5%)、同「カラーブラックFW2V」(pH2.5、揮発分16.5%)、キャボット社製「MONARCH1000」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1300」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1400」(pH2.5、揮発分9.0%)、同「MOGUL−L」(pH2.5、揮発分5.0%)、同「REGAL400R」(pH4.0、揮発分3.5%)などが挙げられる。
導電性粒子の一次粒径は10μm未満が望ましく、1μm以下の粒子であることがさらに望ましい。
なお、導電性粒子の一次粒子径は、次の測定方法により求められる値である。まず、得られたポリイミド成形体から、ミクロトームにより切断して、測定サンプルを採取し、本測定サンプルをTEM(透過型電子顕微鏡)により観察する。そして、カーボンブラックの粒子50個の径を測定して、その平均値を一次粒子径とする。
導電性粒子の含有量は、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物を用いて成形するポリイミド成形体の用途にもよるが、成形性、得られるポリイミド成形体の外観的・機械的・電気的品質の観点から、全樹脂成分100質量部に対して、1質量部以上40質量部以下であることが望ましく、10質量部以上30質量部以下がより望ましい。
(その他の添加剤)
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、これを用いて製造するポリイミド成形体に機械強度などの各種機能を付与することを目的として、各種フィラーなどを含んでもよいし、また、イミド化反応促進のための触媒や、製膜品質向上のためのレベリング材などを含んでもよい。
機械強度向上のため添加されるフィラーとしては、シリカ粉、アルミナ粉、硫酸バリウム粉、酸化チタン粉、マイカ、タルクなどの粒子状材料が挙げられる。また、ポリイミド成形体表面の撥水性、離型性改善のためには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂粉末などを添加してもよい。
イミド化反応促進のための触媒には、酸無水物など脱水剤、フェノール誘導体、スルホン酸誘導体、安息香酸誘導体などの酸触媒などを使用してもよい。
ポリイミド成形体の製膜品質の向上には、界面活性剤を添加してもよい。使用する界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、のいずれを用いてもよい。
その他の添加剤の含有量は、製造するポリイミド成形体の使用目的に応じて選択すればよい。
<ポリイミド前駆体組成物の製造方法>
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物の製造方法は、水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤、及び水溶性アルコール系溶剤から選択される1種以上の有機溶剤(以下、「特定有機溶剤」と称する)、並びに、水を含む溶剤中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して樹脂(以下、「ポリイミド前駆体」と称する)を生成する工程(以下「重合工程」と称する)と、樹脂を生成した後、溶剤に有機アミン化合物を添加する工程(以下、「アミン塩化工程」と称する)と、有機アミン化合物を添加した後、溶剤に導電性粒子を分散する工程(以下、「分散工程」と称する)と、を有する。また、必要に応じて、重合工程後、溶剤を置換又は溶剤組成を変更する工程(以下、「溶剤置換工程」と称する」を有してもよい。
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物の製造方法では、非プロトン系極性溶剤を含まず、特定有機溶剤及び水を含む溶剤中で、ポリイミド前駆体を生成した後、その溶剤に有機アミン化合物を添加し、ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)のアミン塩化を行う。
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物の製造方法は、溶剤として、ポリイミド成形体の機械的強度の低下の原因となる非プロトン系極性溶剤を使用しない。また、ポリイミド前駆体の生成後に、有機アミン化合物を添加する(重合工程では有機アミン化合物を添加しない)ことから、有機アミン化合物によりポリイミド前駆体の生成阻害(重合反応の阻害)が抑制される。
このため、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物の製造方法では、機械的強度の高いポリイミド成形体が得られるポリイミド前駆体組成物が製造される。
また、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物の製造方法では、機械的強度に加え、耐熱性、電気特性、耐溶剤性等の諸特性に優れたポリイミド成形体が得られ易いポリイミド前駆体組成物が製造される。
また、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物の製造方法では、溶剤として、特定有機溶剤及び水を含む混合溶剤を適用しているため、生産性も高く、ポリイミド前駆体組成物が製造される。特に、溶剤置換を行う場合、過剰な加熱が必要なく、生成されたポリイミド前駆体の熱イミド化が抑制され易い。
以下、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物の製造方法の各工程について説明する。なお、使用する各材料は、上記本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物で説明したものと同様であるため、説明を省略する。
(重合工程)
重合工程では、特定有機溶剤及び水を含む溶剤中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合してポリイミド前駆体を生成する。
ポリイミド前駆体の重合反応時の反応温度は、例えば、0℃以上70℃以下であることがよく、望ましくは10℃以上60℃以下、より望ましくは20℃以上55℃以下である。この反応温度を0℃以上とすることで、重合反応により発生する反応熱を除去して重合反応の進行を促進し、反応に要する時間が短縮され、生産性が向上し易くなる。一方、反応温度を70℃以下とすると、生成したポリイミド前駆体の分子内で生じるイミド化反応の進行が抑制され、ポリイミド前駆体の溶解性低下に伴う析出、又はゲル化が抑制され易くなる。
なお、ポリイミド前駆体の重合反応時の時間は、反応温度により1時間以上24時間以下の範囲とすることがよい。
ここで、重合工程における特定有機溶剤と水との混合溶剤の混合比率(質量比)は、重合反応の進行を阻害しない観点から、特定有機溶剤よりも水が少ない比率であることがよく、例えば、98:2乃至70:30(望ましくは90:10乃至80:20)とすることがよい。
具体的には、この混合比率(質量比)は、水溶性エーテル系溶剤と水との組合わせの場合、96:4乃至70:30(望ましくは90:10乃至80:20)、水溶性ケトン系溶剤化合物と水の場合は90:10乃至75:25(望ましくは90:10乃至80:20)がよい。
(アミン塩化工程)
アミン塩化工程では、ポリイミド前駆体を生成した後、溶剤に有機アミン化合物を添加し、ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)のアミン塩化を行う。これにより、ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性が高まる。
アミン塩化工程では、溶剤としての水も添加してもよい。
(溶剤置換工程)
溶剤置換工程は、例えば、ポリイミド前駆体の生成後の溶液中の溶剤組成を変更し、製造するポリイミド前駆体組成物の安定化、生成するポリイミド前駆体の溶解及び固形分濃度の調整等を目的として行われる。
溶剤置換工程は、水、その他溶剤を添加することや、目的とする溶剤を除去することで行われる。溶剤の除去には、加熱及び減圧を行って溶剤を留去する方法(留去法)、水を添加して、ポリイミド前駆体を析出させた後、溶剤を分離除去する再沈殿法が挙げられる。溶剤の除去は、留去法と再沈法と組み合わせて行ってもよい。
溶剤置換工程又は溶剤組成変更工程とアミン塩化工程とはどちらを先に行ってもよい。また、両工程を並行して行ってもよい。
なお、溶剤置換工程は、ポリイミド前駆体の生成後の溶液中の溶剤組成の変更が必要なければ、実施しなくてもよい任意の工程である。
ここで、溶剤置換工程を実施する場合、アミン塩化工程は、以下の第1アミン塩化工程又は第2アミン塩化工程を実施することがよい。
−第1アミン塩化工程−
第1アミン塩化工程では、ポリイミド前駆体を生成した後、溶剤に水を添加して、ポリイミド前駆体と溶剤とを分離し、分離後の溶剤の一部を除去した後、残部に水及び有機アミン化合物を添加する。
具体的には、例えば、第1アミン塩化工程では、ポリイミド前駆体を生成した後、溶剤に水を過剰に添加すると、ポリイミド前駆体の溶解性が低下し、析出する結果、ポリイミド前駆体と溶剤とが分離する。溶剤に添加する水の添加量は、全溶剤に対して、例えば、10質量%以上300質量%以下(望ましくは50質量%以上200質量%以下)がよい。
ポリイミド前駆体と溶剤とが分離すると、ポリイミド前駆体が沈降し、上澄みが溶剤となり、この上澄み液を除去することで、分離後の溶剤の一部を除去する。この溶剤の一部の除去は、上澄み液の除去に限られず、ろ過等により行ってよい。
そして、残部に、溶剤となる水と共に有機アミン化合物(例えば、有機アミン化合物が溶解した水溶液)を添加すると、溶剤置換が行われると共に、ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)のアミン塩化が行われる。
第1アミン塩化工程を行うと、純度の高いポリイミド前駆体組成物が得られ易くなる。
−第2アミン塩化工程−
第2アミン塩化工程では、ポリイミド前駆体を生成した後、溶剤の一部を留去した後又は溶剤の一部を留去しながら、残部に有機アミン化合物を添加する。
具体的には、例えば、第2アミン塩化工程では、ポリイミド前駆体を生成した後、加熱及び減圧にして、溶剤の一部を留去する。この溶剤の留去は、主に特定有機溶剤の留去である。そして、この溶剤の留去をした後又は溶剤の一部を留去しながら、有機アミン化合物を添加すると、溶剤組成変更が行われると共に、ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)のアミン塩化が行われる。なお、有機アミン化合物を添加するとき、溶剤として水も添加してもよい。
第2アミン塩化工程を行うと、ポリイミド前駆体の析出等を経ずに、簡易な工程で、溶剤置換されたポリイミド前駆体組成物が得られ易くなる。
(分散工程)
分散工程では、有機アミン化合物を添加した後、溶剤に導電性粒子を分散する。
ここで、導電性粒子の分散方法としては、ボールミル、サンドミル(ビーズミル)、ジェットミル(対抗衝突型分散機)等、公知の方法をとることができる。導電性粒子の分散の際には、分散助剤として、界面活性剤やレベリング剤等を添加してもよい。
なお、分散工程は、溶媒置換工程の前に行ってよいし、後に行ってもよい。但し、分散工程は、第1アミン塩化工程又は第2アミン塩化工程を実施する場合、当該工程の後に行うことがよい。
<ポリイミド前駆体組成物の使用例>
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、ポリイミド成形体の形成用塗工液として利用される。ポリイミド成形体の形成用塗工液としては、例えば、ポリイミドフィルム形成用塗工液、ポリイミド被膜形成用塗工液等が挙げられる。
なお、ポリイミド成形体としてのポリイミドフィルムは、銅張積層フィルム、ラミネートフィルム、分離フィルム等が例示される。
ポリイミド成形体としてのポリイミド被膜は、耐熱性皮膜、接着膜、液晶配向膜、レジスト膜、平坦化膜、マイクロレンズアレイ膜、光ファイバー被覆膜等が例示される。
その他のポリイミド成形体としては、ベルト部材が挙げられる。ベルト部材としては、電子写真方式の画像形成装置用の転写ベルト(例えば、中間転写ベルト、転写搬送ベルト等)等が例示される。
<ポリイミド成形体>
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物より成形されるポリイミド成形体には、ポリイミド前駆体組成物に含まれる特定有機溶剤(水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤、及び水溶性アルコール系溶剤から選択される1種以上の有機溶剤)と、有機アミン化合物と、を含有している。
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物より成形されるポリイミド成形体に含有される特定有機溶剤(水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤、及び水溶性アルコール系溶剤)は、ポリイミド成形体中、1ppb以上1%未満である。ポリイミド成形体中に含有される特定有機溶剤はポリイミド成形体を加熱して発生するガス分をガスクロマトグラフィー法により定量される。また、ポリイミド成形体中に含まれる有機アミン化合物についても同様にポリイミド成形体を加熱して発生するガス分をガスクロマトグラフィー法により定量される。
<転写ベルト>
本実施形態に係る転写ベルトは、上記本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物の塗膜を加熱処理して形成したポリイミド樹脂層(以下「特定ポリイミド樹脂層」と称する)を有する。つまり、この特定ポリイミド樹脂層は、ポリイミド前駆体組成物の塗膜に対して、加熱処理として乾燥処理、イミド化処理を施して形成した層である。
本実施形態に係る転写ベルトは、特定ポリイミド樹脂層を有することから、導電性粒子が均一に分散配合され、且つ機械的強度の高い転写ベルトとなる。
その結果、本実施形態に係る転写ベルトを備える画像形成装置(又は転写ベルトユニット)は、導電性粒子の分散性低下に起因する画像欠陥(例えば濃度ムラ、斑点欠陥)が抑制される。また、破断等が抑制され、長期にわたり繰り返しの画像形成が実現される。
なお、本実施形態に係る転写ベルトは、特定ポリイミド樹脂層の単層体で構成された態様であってもよいし、基材層とその外周面に表面層(表面離型層)との積層体で構成され、当該基材層及び表面層の少なくとも一方として特定ポリイミド樹脂層を適用した構成であってもよい。但し、特定ポリイミド樹脂層を表面層として適用する場合、離型材料(例えば、フッ素化合物(フッ素樹脂、又はその粒子等)等)を配合することがよい。
無論、基材層及び表面層の間に中間層を設けてもよいし、基材層自体が2層以上の積層体で構成させたものであってもよい。
本実施形態に係る転写ベルトの外周面の表面抵抗率は、中間転写体に適用する場合、常用対数値で8(LogΩ/□)以上14(LogΩ/□)以下であることが望ましく、8(LogΩ/□)以上12(LogΩ/□)以下であることがより望ましい。表面抵抗率の常用対数値が14(LogΩ/□)を超えると、二次転写時に記録媒体と中間転写体とが静電吸着し、記録媒体が剥離し難くなる場合がある。一方、表面抵抗率の常用対数値が8(LogΩ/□)未満であると、中間転写体に一次転写されたトナー像の保持力が不足し画質の粒状性や像乱れが発生する場合がある。
この表面抵抗率は、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPの「URプローブ」)を用い、JIS K6911に従って測定する。
表面抵抗率の測定方法を、図1を用いて説明する。図1は、円形電極の一例を示す(A)概略平面図及び(B)概略断面図である。図1に示す円形電極は、第一電圧印加電極Aと板状絶縁体Bとを備える。第一電圧印加電極Aは、円柱状電極部Cと、該円柱状電極部Cの外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部Cを一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極部Dとを備える。
第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと板状絶縁体Bとの間にベルトTを挟み、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cとリング状電極部Dとの間に電圧V(V)を印加したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式により、ベルトTの転写面の表面抵抗率ρs(Ω/□)を算出する。ここで、下記式中、d(mm)は円柱状電極部Cの外径を示し、D(mm)はリング状電極部Dの内径を示す。
式:ρs=π×(D+d)/(D−d)×(V/I)
なお、表面抵抗率は、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極部Cの外径Φ16mm、リング状電極部Dの内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧500V、10秒印加後の電流値を求め算出する。
本実施形態に係る転写ベルトの全体の体積抵抗率は、中間転写体に適用する場合、常用対数値で8(LogΩcm)以上14(LogΩcm)以下であることが望ましい。前記体積抵抗率の常用対数値が8(LogΩcm)未満であると、像保持体から中間転写体に転写された未定着トナー像の電荷を保持する静電的な力が働きにくくなるため、トナー同士の静電的反発力や画像エッジのフリンジ電界の力によって、画像の周囲にトナーが飛散してしまい、ノイズの大きい画像が形成される場合がある。一方、前記体積抵抗率の常用対数値が14(LogΩcm)を超えると、電荷の保持力が大きいために、一次転写での転写電界で中間転写体表面が帯電するために除電機構が必要となる場合がある。
尚、前記体積抵抗率の常用対数値は、導電材料の種類、及び導電材料の添加量により制御される。
この体積抵抗率は、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ)を用い、JIS K6911に従って測定する。前記体積抵抗率の測定方法を、図1を用いて説明する。測定は表面抵抗率と同一の装置で測定する。但し、図1に示す円形電極において、表面抵抗率測定時の板状絶縁体Bに代えて第二電圧印加電極B’を備える。そして、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと第二電圧印加電極B’との間にベルトTを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cと第二電圧印加電極Bとの間に電圧V(V)を印加した時に流れる電流I(A)を測定し、下記式により、ベルトTの体積抵抗率ρv(Ωcm)を算出する。ここで、下記式中、tは、ベルトTの厚さを示す。
式ρv=19.6×(V/I)×t
なお、体積抵抗率は、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極部Cの外径Φ16mm、リング状電極部Dの内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧500V、10秒印加後の電流値を求め算出する。
また、上記式に示される19.6は、抵抗率に変換するための電極係数であり、円柱状電極部の外径d(mm)、試料の厚さt(cm)より、πd/4tとして算出される。また、ベルトTの厚さは、サンコー電子社製渦電流式膜厚計CTR−1500Eを使用し測定する。
本実施形態に係る転写ベルトの厚みは、例えば、0.05mm以上0.5mm以下が望ましく、より望ましくは、0.06mm以上0.30mm以下、さらに望ましくは、0.06mm以上0.15mm以下である。
<転写ベルトの製造方法>
本実施形態に係る転写ベルトの製造方法は、上記本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物を被塗布物上に塗布して塗膜を形成する工程(以下「塗膜形成工程」と称する)と、塗膜を加熱処理してポリイミド樹脂層を形成する工程(以下「加熱工程」と称する)と、を有する。
以下、本実施形態に係る転写ベルトの製造方法について詳細に説明する。
(塗膜形成工程)
まず、被塗布物として芯体を準備する。準備する芯体としては、円筒状金型等が挙げられる。芯体の素材としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、ニッケル等の金属が挙げられる。芯体の長さは、目的とする無端ベルト以上の長さが必要であるが、目的とする無端ベルトの長さより、10%以上40%以下長いことが望ましい。
次に、ポリイミド前駆体溶液を芯体としての円筒状金型に塗布し、ポリイミド前駆体溶液の塗膜を形成する。
ポリイミド前駆体溶液の円筒状金型への塗布方法は、特に制限はなく、例えば、円筒状金型の外周面に浸漬塗布する方法や、円筒状金型の内周面に塗布する方法、軸を水平にして円筒状金型を回転させながら、その外周面又は内周面にらせん状に塗布する方法や、円筒状金型の外周と特定の間隔を有するダイを用い塗布する方法等が挙げられる。
(加熱工程)
次に、ポリイミド前駆体溶液の塗膜に対して、乾燥処理を行う。この乾燥処理により、皮膜(乾燥したイミド化前の塗膜)を形成する。
乾燥処理の加熱条件は、例えば80℃以上200℃以下の温度で10分間以上60分間以下がよく、温度が高いほど加熱時間は短くてよい。加熱の際、熱風を当てることも有効である。加熱のときは、温度を段階的に上昇したり、速度を変化させずに上昇してもよい。芯体の軸方向を水平にして、芯体を5rpm以上60rpm以下で回転させるのがよい。乾燥後は芯体を垂直にしてもよい。
次に、皮膜に対して、イミド化処理を行う。
イミド化処理の加熱条件としては、例えば150℃以上400℃以下(望ましくは200℃以上300℃以下)で、20分間以上60分間以下加熱することで、イミド化反応が起こり、ポリイミド樹脂の皮膜が形成される。加熱反応の際、加熱の最終温度に達する前に、温度を段階的、又は一定速度で徐々に上昇させて加熱することがよい。
以上の工程を経て、ベルト状のポリイミド樹脂層が芯体に形成される。そして、ポリイミド樹脂層を芯体から抜き取る。これにより、ベルト状のポリイミド樹脂層を有する転写ベルトが得られる。
<転写ベルトユニット>
図2は、本実施形態に係る転写ベルトユニットを示す概略斜視図である。
本実施形態に係る転写ベルトユニット130は、図2に示すように、本実施形態に係る転写ベルト10を備えており、例えば、転写ベルト10は対向して配置された駆動ロール131及び従動ロール132により張力がかかった状態で掛け渡されている(以下、単に「張架」という場合がある。)。
本実施形態に係る転写ベルトユニット130は、転写ベルト10を中間転写体として適用させる場合、これら各ロールとして、又はこれら各ロールに加えて、例えば、感光体(像保持体)表面のトナー像を転写ベルト10上に1次転写させるためのロールと、転写ベルト10上に転写されたトナー像をさらに記録媒体に2次転写させるためのロールが配置されていてもよい。なお、転写ベルト10を張架するロールの数は限定されず、使用態様に応じて配置すればよい。
このような構成の本実施形態に係る転写ベルトユニット130は、例えば、転写ユニットとして画像形成装置に組み込まれ、画像形成の際、駆動ロール131,従動ロール132の回転に伴って転写ベルト10も張架した状態で回転する。
<画像形成装置>
本実施形態に係る画像形成装置は、本実施形態に係る転写ベルトを備えて構成される。
例えば、本実施形態に係る画像形成装置は、中間転写体(中間転写ベルト)、記録媒体搬送転写部材(記録媒体搬送転写ベルト)等の転写ベルトとして、本実施形態に係る転写ベルトを備える。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、トナーにより像保持体の表面の潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、を備え、転写手段が、上記本実施形態に係る転写ベルトを備えるものである。
具体的には、本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、像保持体の表面に形成された前記トナー像が転写される中間転写ベルトと、像保持体の表面に形成された前記トナー像を前記中間転写ベルトの表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写ベルトの表面に転写されたトナー像を記録媒体に二次転写する二次転写手段と、を備え、当該中間転写ベルトとして上記本実施形態に係る転写ベルトを備える構成が挙げられる。
また、本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、転写手段が記録媒体を搬送するための記録媒体搬送転写ベルトと像保持体に形成されたトナー像を記録媒体搬送転写ベルトにより搬送して記録媒体に転写する転写手段と、を備え、当該記録媒体搬送転写ベルトとして上記本実施形態に係る転写ベルトを備える構成も挙げられる。
本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、その他、像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段、像保持体を除電する除電手段等、必要に応じてその他公知の手段を更に備えていてもよい。
本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、現像装置内に単色のトナーのみを収容する通常のモノカラー画像形成装置、像保持体上に保持されたトナー像を中間転写体に順次一次転写を繰り返すカラー画像形成装置、各色毎の現像器を備えた複数の像保持体を中間転写体上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等の周知の構成が採用される。
以下、本実施形態の画像形成装置の具体例について図面を用いてより詳細に説明する。
図3は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。本画像形成装置は、中間転写体(中間転写ベルト)として本実施形態に係る転写ベルトを用いている。
図3に示す画像形成装置100は、感光体(像保持体の一例)101Y、101M、101C、101BKを備えており、矢線A方向への回転に伴いその表面には周知の電子写真プロセス(図示せず)によって画像情報に応じた静電潜像が形成される(なお、図3中、帯電装置、露光装置およびクリーニング装置等は不図示)。
そして、この感光体101Y、101M、101C、101BKの周囲には、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(BK)の各色に対応した現像装置105〜108が配設されており、感光体101Y、101M、101C、101BKに形成された静電潜像をそれぞれの現像装置105〜108で現像してトナー像が形成される。
従って、例えば、感光体101Yに書き込まれた静電潜像はイエローの画像情報に対応したものであり、この静電潜像はイエロー(Y)のトナーを内包する現像装置105で現像され、感光体101Y上にはイエローのトナー像が形成される。
中間転写ベルト102は感光体101Y、101M、101C、101BKの表面に接触されるように配置されたベルト状の中間転写ベルトであり、背面ロール117及び支持ロール118〜119により張力を付与されつつ矢線B方向へ回転する。
感光体101Y、101M、101C、101BKに形成された未定着トナー像は、感光体101Y、101M、101C、101BKと上記中間転写ベルト102とが接するそれぞれの一次転写位置で、順次感光体101Y、101M、101C、101BKから中間転写ベルト102の表面に各色のトナー像が重ね合わされて転写される。
この一次転写位置において、中間転写ベルト102の裏面側には中間転写ベルト102の不必要な領域へ転写電界が作用するのを抑制するための遮蔽部材121〜124により転写前接触領域への帯電を防止した一次転写装置109〜112としてコロナ放電器が配設されており、この一次転写装置109〜112にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加することで、感光体101Y、101M、101C、101BK上の未定着トナー像は中間転写ベルト102外周面に静電的に転写される。この一次転写装置109〜112は、静電力を利用したものであれば、コロナ放電器に限らず電圧が印加されたロールやブラシなどでもよい。
このようにして中間転写ベルト102に一次転写された未定着トナー像は、中間転写ベルト102の回転に伴って記録媒体103の搬送経路に面した二次転写位置へと搬送される。二次転写位置では二次転写ロール120と中間転写ベルト102の裏面側に接している背面ロール117とが中間転写ベルト102を挟んで配設されている。
送りロール126によって給紙部113から搬出された記録媒体103は、この二次転写ロール120と中間転写ベルト102との接触部に挿通される。この時、上記二次転写ロール120と背面ロール117との接触部に電圧を印加しており、中間転写ベルト102に保持された未定着トナー像は上記二次転写位置において記録媒体103に転写される。
そして、未定着トナー像が転写された記録媒体103は中間転写ベルト102から剥がされ、搬送ベルト115によって加熱ロール127と加圧ロール128とが対向して設けられた定着装置の加熱ロール127と加圧ロール128との接触部に送り込まれて未定着トナー像の定着処理がなされる。このとき、二次転写工程と定着工程とを同時に行う転写同時定着工程の装置構成とすることも可能である。
中間転写ベルト102は、クリーニング装置116が備えられている。このクリーニング装置116は中間転写ベルト102と接離自在に配設されており、二次転写される迄、中間転写ベルト102から離間している。
図4は、他の本実施形態の画像形成装置を示す概略構成図である。本画像形成装置は、記録媒体搬送転写部材(記録媒体搬送転写ベルト)として本実施形態に係る転写ベルトを適用した形態である。
図4に示す画像形成装置200は、感光体、帯電装置、現像装置および感光体清掃部材を備えた画像形成ユニット200Y、200M、200C、200Bkと、記録媒体搬送転写ベルト206と、転写ロール207Y、207M、207C、207Bkと、記録媒体搬送ロール208と、定着装置209とを備えている。
画像形成ユニット200Y、200M、200C、200Bkは、矢印A方向(時計回り方向)に回転する像保持体である感光体201Y、201M、201C、201Bkが備えられている。感光体201Y、201M、201C、201Bkの周囲には、帯電装置202Y、202M、202C、202Bkと、露光装置203Y、203M、203C、203Bkと、各色現像装置(イエロー現像装置204Y、マゼンタ現像装置204M、シアン現像装置204C、ブラック現像装置204Bk)と、感光体クリーニング装置205Y、205M、205C、205Bkとがそれぞれ配置されている。
画像形成ユニット200Y、200M、200C、200Bkは、記録媒体搬送転写ベルト206に対して4つ並列に、画像形成ユニット200Bk、200C、200M、200Yの順に配置されているが、画像形成ユニット200Bk、200Y、200C、200Mの順等、画像形成方法に合わせて順序を設定する。
記録媒体搬送転写ベルト206は、支持ロール210、211、212、213によって、矢印B方向(反時計回り方向)に感光体201Bk、201C、201M、201Yと同じ周速度をもって回転可能になっており、支持ロール212、213の中間に位置するその一部が感光体201Bk、201C、201M、201Yとそれぞれ接するように配置されている。記録媒体搬送転写ベルト206は、クリーニング装置214が備えられている。
転写ロール207Bk、207C、207M、207Yは、記録媒体搬送転写ベルト206の内側であって、記録媒体搬送転写ベルト206と感光体201Bk、201C、201M、201Yとが接している部分に対向する位置にそれぞれ配置され、感光体201Bk、201C、201M、201Yと、記録媒体搬送転写ベルト206を介してトナー画像を記録媒体Pに転写する転写領域を形成している。
定着装置209は、記録媒体搬送転写ベルト206と感光体201Bk、201C、201M、201Yとのそれぞれの転写領域を通過した後に搬送できるように配置されている。
記録媒体搬送ロール208により、記録媒体Pは記録媒体搬送転写ベルト206に搬送される。
画像形成ユニット200Yにおいては、感光体201Yを回転駆動させる。これと連動して帯電装置202Yが駆動し、感光体201Yの表面を所定の極性・電位に帯電させる。表面が帯電された感光体201Yは、次に、露光装置203Yによって像様に露光され、その表面に静電潜像が形成される。
続いて該静電潜像は、イエロー現像装置204Yによって現像される。すると、感光体201Yの表面にトナー画像が形成される。なお、このときのトナーは一成分系のものでもよいし二成分系のものでもよいが、ここでは二成分系トナーである。
このトナー画像は、感光体201Yと記録媒体搬送転写ベルト206との転写領域を通過すると同じに、記録媒体Pが静電的に記録媒体搬送転写ベルト206に吸着して転写領域まで搬送され、転写ロール207Yから印加される転写バイアスにより形成される電界により、記録媒体Pの外周面に順次、転写される。
この後、感光体201Y上に残存するトナーは、感光体クリーニング装置205Yによって清掃・除去される。そして、感光体201Yは、次の転写サイクルに供される。
以上の転写サイクルは、画像形成ユニット200M、200C、200Bkでも同様に行われる。
転写ロール207Bk、207C、207M、207Yによってトナー画像を転写された記録媒体Pは、さらに定着装置209に搬送され、定着が行われる。以上により記録媒体上に所望の画像が形成される。
ここで、記録媒体としては、通常は、紙製の記録媒体(いわゆる用紙)や、プラスチックフィルムで構成された記録媒体(いわゆるOHPシート)などの比較的柔軟性の高い材料で構成されたシート状の部材が用いられるが、比較的剛性の高い材料で構成された板状の部材(例えば、厚みのあるプラスチック製のカードなど)も記録媒体として利用してもよい。
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
<実施例1>
[ポリイミド前駆体組成物(A−1)、(A−2)の作製]
−重合工程−
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコに、テトラヒドロフラン(以下、THFと表記)360g、水40gを充填した。乾燥した窒素ガスを通じながら、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(以下、ODAと表記:分子量200.24)41.23g(205.92ミリモル)を添加した。溶液温度を30℃に保ちながら撹拌を行い、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと表記:分子量294.22)58.77g(199.75ミリモル)を徐々に添加した。ジアミン化合物、テトラカルボン酸二無水物の溶解を確認後、さらに、反応温度を30℃に保持しながら、24時間反応を行った。後述の方法でポリイミド前駆体溶液(固形分20質量%)の粘度を測定したところ、100Pasであった。
なお、生成したポリイミド前駆体のイミド化率は0.02であり、既述の末端アミノ基量の測定の結果、全末端にアミノ基を有するものであった。
−アミン塩化工程−
重合工程で得たポリイミド前駆体溶液を撹拌しながら、ジメチルアミノエタノール(以下、DMAEtと表記:分子量89.14)35.62g(399.5ミリモル)と水400gを添加した。これにより、ポリイミド前駆体がアミン塩化により水溶化したポリイミド前駆体水溶液(A−1)を得た。
得られたポリイミド前駆体水溶液(A−1)の組成は以下の通りである
〜ポリイミド前駆体水溶液(A−1)の組成〜
・固形分: 10%(ポリイミドとしての固形分率)
・溶剤組成比: THF/水=360g/440g
−溶剤置換工程−
ポリイミド前駆体水溶液(A−1)を撹拌しながら、10mmHg/30℃で減圧し、THFの一部を留去して、下記組成のポリイミド前駆体水溶液(A−2)を得た。
〜ポリイミド前駆体水溶液(A−2)の組成〜
・粘度: 148Pas
・固形分: 18.0%(ポリイミドとしての固形分率)
・溶剤組成比: THF/水=6/94
−分散工程−
得られたポリイミド前駆体水溶液(A−1)及び(A−2)に、各々、カーボンブラックとしてCB(1)(「SPECIAL BLACK4(Degussa社製)」、pH4.0、揮発分:14.0%)23.66g(ポリイミド前駆体100部に対して26部)を添加して、ボールミルにて6時間で処理してCBの分散を行った。
これにより、ポリイミド前駆体組成物(A−1)及び(A−2)を得た。
なお、各測定は以下の通りである。
(粘度測定方法)
粘度は、E型粘度計を用いて下記条件で測定を行った。
・測定装置: E型回転粘度計TV−20H(東機産業株式会社)
・測定プローブ: No.3型ローター3°×R14
・測定温度: 22℃
(固形分測定方法)
固形分は、示唆熱熱重量同時測定装置を用いて下記条件で測定した。なお、380℃の測定値をもって、固形分はポリイミドとしての固形分率として測定した。
・測定装置: 示差熱熱重量同時測定装置TG/DTA6200(セイコーインスツルメンツ株式会社)
・測定範囲: 20℃以上400℃以下
・昇温速度: 20℃/分
(溶剤組成、溶剤中の水分量)
ポリイミド前駆体組成物中の水分率電量滴定方式自動水分測定装置(カールフィッシャー)を用いて、下記条件で水分率を測定した。測定値から試料中に含まれる樹脂分を除することで、溶剤中の水分量を算出した。これにより、溶剤組成を求めた。
・測定装置: 電量滴定方式自動水分測定装置(カールフィッシャー)CA−07型(三菱化学株式会社)
・試料量: 10μl
[転写ベルトの作製]
外径90mm、長さ450mmのステンレス製円筒状金型の外表面にシリコーン系離型剤(信越化学社製、商品名:KS−700)を塗布・乾燥処理(離型剤処理)を行った。
離型剤処理を施した円筒状金型を周方向に10rpmの速度で回転させながら、円筒状金型端部より、塗工液としてポリイミド前駆体組成物(A−1)を口径1.0mmのディスペンサーより吐出するとともに、金型上に設置した金属ブレードにて一様の圧力で押し付けながら塗布を行った。具体的には、ディスペンサーユニットを円筒状金型の軸方向に100mm/分の速度で移動させることによって円筒状金型上に螺旋状に塗工液を塗布した。塗布後、ブレードを解除して円筒状金型を2分間回転し続けてレベリングを行った。
その後、金型及び塗布物を乾燥炉中で150℃空気雰囲気下、10rpmで回転させながら、30分間乾燥処理を行った。乾燥処理において塗布物より溶剤が揮発することで、塗布物から自己支持性を有するポリアミック酸樹脂成形品(無端ベルト本体)を得た。
次いで、クリーンオーブン中で、300℃、30分間焼成処理を行い、溶剤を留去すると共にイミド化反応を完了させた。
その後、円筒状金型を25℃にして、円筒状金型から樹脂を取り外し、転写ベルトを得た。
同様に、ポリイミド前駆体組成物(A−2)を用いて、転写ベルトを得た。
<評価>
得られた転写ベルトについて、以下の評価を行った。
(製膜性)
転写ベルトについて、(1)ボイド痕、(2)表面ムラ・模様を評価した。
(1)ボイド痕
転写ベルト表面のボイド痕の有無を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎: ボイド痕の発生が見られない。
○: 転写ベルト表面に1個以上10個未満のボイド痕が確認できる。
△: 転写ベルト表面に10個以上の50未満のボイド痕が点在する。
×: 転写ベルト表面に無数のボイド痕が一様に発生している。
(2)表面ムラ・模様:
転写ベルト表面に発生する表面ムラ、模様の有無を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎: 表面ムラ、模様の発生が見られない。
○: 転写ベルト表面の一部に表面ムラ、模様が僅かに確認できる(転写ベルト表面面積の10%未満)。
△: 転写ベルト表面の一部に表面ムラ、模様が確認できる。
×: 転写ベルト表面に表面ムラ、模様が一様に発生している(転写ベルト表面面積の10%以上)。
(力学特性:引張り強度・伸びの測定)
作製した転写ベルトより、ダンベル3号を用いて試料片を打ち抜き成形した。試料片を引張り試験機に設置し、下記条件で、試料片が引張り破断する印加荷重(引張り強度)、破断伸び(引張り伸び)を測定した。
・試験装置 : アイコーエンイジアリング社製引張り試験機1605型
・試料長さ : 30mm
・試料幅 : 5mm
・引張り速度 :10mm/min
(電気特性:表面抵抗率/体積抵抗率の測定)
作製した転写ベルトについて、既述の方法に従って、表面抵抗率/体積抵抗率を測定した。
(画質評価)
富士ゼロックス社製ApeosPort−III C4400改造機(プロセス速度:250mm/sec、一次転写電流:35μAに改造)に、前記の得られた転写ベルトを中間転写ベルトとして装着した。低温低湿(10℃15%RH)で、シアン及びマゼンタの50%ハーフトーン画像を富士ゼロックス社製C2紙に5000枚出力し、5000枚目の出力画像の画質について濃度ムラ及び斑点欠陥を目視で評価した。なお、各評価基準は以下の通りである。
−濃度ムラ−
◎:濃度ムラが確認されない。
○:濃度ムラが僅かに確認されたが、問題のないレベルである。
×:濃度ムラがはっきりと確認された。
−斑点欠陥−
◎:斑点欠陥が確認されない。
○:斑点欠陥が僅かに確認されたが、問題のないレベルである。
×:斑点欠陥がはっきりと確認された。
得られたポリイミド前駆体組成物の組成と、得られた転写ベルトの評価の結果を表1に示す。
<実施例2〜15>
[ポリイミド前駆体組成物(A−3)〜(A−7),(B−1)〜(J−1)の作製]
表1〜表2に従って、重合工程、アミン塩化工程、溶剤置換工程の条件、並びに、分散工程を変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド前駆体組成物(A−3)〜(A−7),(B−1)〜(J−1)を作製した。但し、溶剤置換工程は、表1〜表2に示す粘度、固形分、溶剤中の水分率となるように実施した。
そして、実施例1と同様にして、転写ベルトを作製し、評価をした。評価結果を表1〜表2に示す。
なお、実施例7で生成したポリイミド前駆体は、既述の末端アミノ基量の測定の結果、両末端がカルボキシル基を有するものであった。
<実施例16>
[ポリイミド前駆体組成物(A−8)の作製]
表2に従って、重合工程、アミン塩化工程、溶剤置換工程の条件、並びに、分散工程を変更し、重合工程での反応温度を60℃とした以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド前駆体組成物(A−8)を作製した。得られたポリイミド前駆体のイミド化率は、0.18であった。
そして、得られたポリイミド前駆体組成物(A−8)を用いて、実施例1と同様にして、転写ベルトを作製し、評価をした。評価結果を表2に示す。
<実施例17>
[ポリイミド前駆体組成物(A−9)の作製]
表2に従って、重合工程、アミン塩化工程、溶剤置換工程の条件、並びに、分散工程を変更し、重合工程での反応温度を50℃とした以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド前駆体組成物(A−9)を作製した。得られたポリイミド前駆体のイミド化率は、0.13であった。
そして、得られたポリイミド前駆体組成物(A−9)を用いて、実施例1と同様にして、転写ベルトを作製し、評価をした。評価結果を表2に示す。
<実施例18>
[ポリイミド前駆体組成物(A−10)の作製]
分散工程でのカーボンブラックをCB(2)(「FW2(オリオン・エンジニアドカーボン社製)」、pH2.5、揮発分:20.0%)23.66g(ポリイミド前駆体100部に対して26部)に変更した以外は、実施例1のポリイミド前駆体組成物(A−2)と同様にして、ポリイミド前駆体組成物(A−10)を作製した。
そして、得られたポリイミド前駆体組成物(A−10)を用いて、実施例1と同様にして、転写ベルトを作製し、評価をした。評価結果を表2に示す。
<比較例1>
[ポリイミド前駆体組成物(X−1)の作製]
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコに、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと表記)400gを充填した。乾燥した窒素ガスを通じながら、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(以下、ODAと表記:分子量200.24)41.23g(205.92ミリモル)を添加した。溶液温度を30℃に保ちながら撹拌を行い、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと表記:分子量294.22)58.77g(199.75ミリモル)を徐々に添加した。ジアミン化合物、テトラカルボン酸二無水物の溶解を確認後、さらに、反応温度を30℃に保持しながら、24時間反応を行った。ポリイミド前駆体溶液(固形分20質量%)の粘度を測定したところ、120Pasであった。
次に、ポリイミド前駆体溶液に、カーボンブラックとしてCB(1)(「SPECIAL BLACK4(Degussa社製)」、pH4.0、揮発分:14.0%)23.66g(ポリイミド前駆体100部に対して26部)を添加して、ボールミルにて6時間で処理してCBの分散を行った。
得られたポリイミド前駆体溶液を、ポリイミド前駆体組成物(X−1)とした。
得られたポリイミド前駆体組成物(X−1)を用いて、実施例1と同様にして、転写ベルトを作製し、評価をした。評価結果を表3に示す。
その結果、焼成温度を実施例1と同じく、300℃とすると、膜中にNMPが残留するため、引張り強度、引張り伸びともに、実施例1に比べて低くなってしまった。ポリイミド前駆体組成物(X−1)に含まれる高沸点のNMPが転写ベルト中に残留することで、機械的強度低下を引き起こすことが原因の一つと考えられる。
<比較例2>
[ポリイミド前駆体組成物(X−2)の作製]
比較例1で作製したポリイミド前駆体溶液を、10倍容量のアセトン中に添加し、ポリイミド前駆体を再沈殿した。ろ過後、40℃/減圧(10mmHg)下で24時間乾燥した。乾燥後、ポリイミド前駆体50g(カルボキシル基101.10ミリモル当量)に、水200g、ジメチルアミノエタノール18.03g(202.20ミリモル)を加え、25℃にて6時間撹拌溶解させポリイミド前駆体溶液を得た。
次に、このポリイミド前駆体溶液に、カーボンブラックとしてCB(1)(「SPECIAL BLACK4(Degussa社製)」、pH4.0、揮発分:14.0%)23.92g(ポリイミド前駆体100部に対して25.5部)を添加して、ボールミルにて6時間で処理してCBの分散を行った。
得られたポリイミド前駆体溶液を、ポリイミド前駆体組成物(X−2)とした。
得られたポリイミド前駆体組成物(X−2)を用いて、実施例1と同様にして、転写ベルトを作製し、評価をした。結果を表3に示す。
その結果、製膜性は、実施例1同様に良好であった。引張り試験の結果、実施例1に比べ、引張り強度、引張り伸びともに低いことがわかった。
ポリイミド前駆体組成物(X−2)中に残留しているNMP含有率を液体クロマトグラフィー法にて分析したところ、溶剤中6重量%であった。ポリイミド前駆体組成物(X−2)を用いた製膜試料の引張り特性の低下の原因が、比較例1と同様に転写ベルト中のNMPが残留するためと考えられる。
<比較例3>
[ポリイミド前駆体組成物(X−3)の作製]
比較例1の重合工程時に有機アミン化合物を添加し,下記ni示すようにして重合を行った。
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコに、NMP400gを充填した。乾燥した窒素ガスを通じながら、ODA41.23g(205.92ミリモル)、DMAEt35.62g(399.5ミリモル)を添加した。溶液温度を30℃に保ちながら撹拌を行い、BPDA58.77g(199.75ミリモル)を徐々に添加した。ジアミン化合物、テトラカルボン酸二無水物の溶解を確認後、さらに、反応温度30℃に保持しながら、24時間反応を行った。ポリイミド前駆体溶液(固形分20重量%)の粘度を測定したところ、5Pasであった。
次に、このポリイミド前駆体溶液に、カーボンブラックとしてCB(1)(「SPECIAL BLACK4(Degussa社製)」、pH4.0、揮発分:14.0%)21.38g(ポリイミド前駆体100部に対して23.5部)を添加して、ボールミルにて6時間で処理してCBの分散を行った。
得られたポリイミド前駆体溶液を、ポリイミド前駆体組成物(X−3)とした。
そして、得られたポリイミド前駆体組成物(X−3)を用いて、実施例1と同様にして、転写ベルトを作製し、評価をした。評価結果を表3に示す。
<比較例4>
[ポリイミド前駆体組成物(X−4)の作製]
重合工程での反応温度を60℃、反応時間を48時間とした以外は、実施例1と同様にして(但しCB(1)添加量21.34g(ポリイミド前駆体100部に対して24部)に変更)、ポリイミド前駆体組成物(X−4)を作製したところ、ポリイミド前駆体樹脂が析出した。このため、ポリイミド前駆体組成物(X−4)は、塗液として利用できなかった。得られたポリイミド前駆体のイミド化率は、0.22であった。
<比較例5>
[ポリイミド前駆体組成物(X−5)の作製]
アミン塩化工程でのDMAEtの添加量を処理率40%となるように変えた以外は、実施例1と同様にして(但しCB(1)添加量21.38g(ポリイミド前駆体100部に対して23.5部)に変更)、ポリイミド前駆体組成物(X−5)を作製したところ、ポリイミド前駆体樹脂が析出した。このため、ポリイミド前駆体組成物(X−5)は、塗液として利用できなかった。
<比較例6>
[ポリイミド前駆体組成物(X−6)の作製]
アミン塩化工程でのDMAEtの添加量を処理率520%となるように変えた以外は、実施例1と同様にして(但しCB(1)添加量21.34g(ポリイミド前駆体100部に対して24部)に変更)、ポリイミド前駆体組成物(X−6)を得た。
そして、得られたポリイミド前駆体組成物(X−6)を用いて、実施例1と同様にして、転写ベルトを作製し、評価をした。評価結果を表3に示す。
その結果、均質な転写ベルトを得ることはできず、また、得られた転写ベルトの力学特性も低くなった。
得られたポリイミド前駆体組成物(X−6)は一部ゲル化していた。さらに、得られたポリイミド前駆体組成物(X−6)を室温環境下24時間保管したところ、増粘し、72時間後にはゲル化してしまい、塗液として使用できなくなってしまった。
<比較例7>
[ポリイミド前駆体組成物(X−7)の作製]
アミン塩化工程で添加する溶剤をTHF150g及び水150gとし、溶媒置換工程で溶剤中の水分率が25%になった時点でTHFの留去を終えた以外は、実施例1と同様にして(但しCB(1)添加量21.34g(ポリイミド前駆体100部に対して24部)に変更)、ポリイミド前駆体組成物(X−7)を得た。
そして、得られたポリイミド前駆体組成物(X−7)を用いて、実施例1と同様にして、転写ベルトを作製し、評価をした。評価結果を表3に示す。
その結果、得られたポリイミド前駆体組成物(X−7)は、アミン塩化したポリイミド前駆体が分散しており、塗液として使用した場合には、均質な転写ベルトを得ることはできず、また、得られた転写ベルトの力学特性も低くなった。
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、製膜性、力学特性、電気特性、画質の評価について良好な結果が得られたことがわかる。
なお、表1〜表3中の略称については、以下の通りである。また、表1〜表3中、「−」は未添加又は未実施を意味し、「→」は左欄と同じであることを意味している。
・テトラカルボン酸:「BPDA」(3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、「PMDA」(ピロメリット酸二無水物)
・ジアミン化合物:「ODA」(4,4’−ジアミノジフェニルエーテル)、「PDA」(p−フェニレンジアミン)
・有機アミン化合物:DMAEt(ジメチルアミノエタノール:3級アミン:沸点bp133℃から134℃)、γ−Pyc(γ−ピコリン:3級アミン:沸点bp145℃)、MAEt(N−メチルエタノールアミン:2級アミン:沸点bp156℃)、ETA(2−エタノールアミン:1級アミン:沸点bp170℃)
・溶媒:THF(テトラヒドロフラン:水溶性エーテル系溶剤:沸点bp67℃)、DOX(ジオキサン:水溶性エーテル系溶剤:沸点bp102℃)、ATN(アセトン:水溶性ケトン系溶剤:沸点bp56℃)、MEK(メチルエチルケトン:水溶性ケトン系溶剤:沸点bp80℃)、IPA(イソプロパノール:水溶性アルコール系溶剤:沸点bp82℃)
・カーボンブラック
CB(1): 「SPECIAL BLACK4(Degussa社製)」、pH4.0、揮発分:14.0%)
CB(2): 「FW2(オリオン・エンジニアドカーボン社製)」、pH2.5、揮発分:20%)
なお、本実施例において、アミン塩化工程での「処理率」は、ポリイミド前駆体中に含まれるカルボキシル基の理論量に対する有機アミン化合物量(モル%)である。ここでカルボキシル基の理論量とは、ポリイミド前駆体に含まれるテトラカルボン酸のモル量を2倍した値を示す。
100 画像形成装置、101Y、101M、101C、101BK 感光体、102 中間転写ベルト、105〜108 現像器、200 画像形成装置、200Y、200M、200C、200Bk、画像形成ユニット、206 記録媒体搬送転写ベルト

Claims (9)

  1. 水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤、及び水溶性アルコール系溶剤から選択される1種以上の有機溶剤、並びに、水を含む溶剤に、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有し、且つイミド化率が0.2以下である樹脂と、有機アミン化合物と、が溶解し、且つ導電性粒子が分散しており、
    前記水を、全溶剤に対して30質量%以上99.9質量%以下で含有し、
    前記有機アミン化合物を、前記樹脂中に含まれるカルボキシル基に対して、50モル%以上500モル%以下で含有するポリイミド前駆体組成物。


    (一般式(I)中、Aは4価の芳香族系有機基を示し、Bは2価の芳香族系有機基を示す。)
  2. 前記有機アミン化合物が、2級アミン化合物、及び3級アミン化合物から選択される少なくとも一種である請求項1に記載のポリイミド前駆体組成物。
  3. 前記樹脂が、末端にアミノ基を有する樹脂を含む請求項1又は2に記載のポリイミド前駆体組成物。
  4. 前記樹脂の数平均分子量が、1000以上100000以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。
  5. 水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤、及び水溶性アルコール系溶剤から選択される1種以上の有機溶剤、並びに、水を含む溶剤であって、前記有機溶剤よりも前記水が少ない比率である溶剤中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して樹脂を生成する工程と、
    前記樹脂を生成した後、前記溶剤に有機アミン化合物を添加する工程と、
    前記有機アミン化合物を添加した後、前記溶剤に導電性粒子を分散する工程と、
    を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物の製造方法。
  6. 前記有機アミン化合物を添加する工程が、前記樹脂を生成した後、前記溶剤に水を添加して、前記樹脂と前記溶剤とを分離し、分離後の前記溶剤の一部を除去した後、残部に水及び前記有機アミン化合物を添加する工程である請求項5に記載のポリイミド前駆体組成物の製造方法。
  7. 前記有機アミン化合物を添加する工程が、前記樹脂を生成した後、前記溶剤の一部を留去した後又は前記溶剤の一部を留去しながら、残部に前記有機アミン化合物を添加する工程である請求項5に記載のポリイミド前駆体組成物の製造方法。
  8. 前記有機溶剤の沸点が、160℃以下である請求項5〜7のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物の製造方法。
  9. 前記有機アミン化合物の沸点が、60℃以上200℃以下である請求項5〜8のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物の製造方法。
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